説明

酸素濃縮器

【課題】使用者の呼吸に応じて高濃度酸素が正常に供給されているかを検出できる安全性の高い呼吸同調式の酸素濃縮器を提供する。
【解決手段】呼吸同調式の酸素濃縮器において、酸素供給部の同調弁が、酸素貯留部側に接続される第1ポート、酸素出口側に接続される第2ポート、圧力センサに接続される第3ポートを有し、第1ポートと第2ポートを結ぶ第1流路と、第2ポートと第3ポートを結ぶ第2流路のいずれか一方を開通可能で、第2流路を開通させている状態で圧力センサによって使用者の吸気が検出された場合に、第1流路を閉鎖して前記第2流路を開通させるように構成される。また、呼吸検出用の圧力センサが、第2ポートから酸素出口に向かう流路に対して流量制限オリフィスを介して接続され、第1流路が開通されて使用者に高濃度酸素が供給されるときの圧力変動を検出可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を導入して高濃度の酸素を放出する酸素濃縮器に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素濃縮器は主として、呼吸器疾患の患者が在宅で酸素を吸入する在宅酸素療法(HOT:home oxygen therapy)において使用されるもので、PSA式と酸素富化膜式が知られている。
図1は、一般的なPSA式の酸素濃縮器の概略構成を示す図である。図1に示すように、PSA式の酸素濃縮器1は、空気取入部10、空気圧縮部20、PSA部30、酸素貯留部40、及び酸素供給部50を備えている。
【0003】
酸素濃縮器1において、空気取入部10から導入された原料空気は、空気圧縮部20で圧縮されて圧縮空気となり、この圧縮空気がPSA部30に送出される。
PSA部30は、酸素より窒素を早く吸着する性質を有するゼオライト等の吸着剤が充填された2本のシーブベッド(吸着塔)33A、33Bを有している。シーブベッド33A、33Bに圧縮空気が送り込まれて加圧状態になると、窒素及び水分が吸着されて酸素だけが通過し、高濃度酸素が生成される。一方、窒素を吸着したシーブベッド33A、33Bが減圧状態(例えば大気圧)に戻されると、吸着していた窒素が脱離して放出され、シーブベッド33A、33Bの吸着能力が再生される。つまり、PSA部30において、2本のシーブベッド33A、33Bで交互に加圧減圧を繰り返すことにより、連続して高濃度酸素を生成することができる。
【0004】
PSA部30で生成された高濃度酸素は、一旦酸素貯留部40の製品タンク41に貯留された後、圧力調整部(圧力レギュレータ)42により一定圧力に調整される。そして、高濃度酸素は酸素供給部50から一定流量で放出され、当該酸素濃縮器1に接続された鼻カニューラや酸素マスク等を介して使用者(患者)の体内に供給される。
【0005】
ところで、携帯型の酸素濃縮器においては、省電力化を実現して長時間にわたって連続運転できるように、使用者の呼吸に同調して高濃度酸素を供給する呼吸同調式の酸素濃縮器が提案されている(例えば特許文献1)。この呼吸同調式の酸素濃縮器では、酸素供給部50に設けられた圧力センサにより使用者の呼吸に伴う圧力変動(吸気開始時の陰圧)を検出し、同調弁を“開”状態とすることにより、吸気検出後、瞬時(約0.1秒後)に一定量の高濃度酸素を供給する。
【0006】
従来の酸素濃縮器における酸素供給部の一例を図2、3に示す。
図2では、同調弁52として二方弁を用いた酸素供給部の構成を示している。図2に示す例では、同調弁52のポートP2と酸素出口の間に圧力センサ53が接続される。この場合、同調弁52を開いたとき、ポートP1とポートP2を結ぶ流路が開通され、高濃度酸素が酸素出口から放出される。一方、同調弁52を閉じたとき、ポートP1とポートP2を結ぶ流路が遮断され、使用者の呼吸に伴う圧力変動を圧力センサ53によって検出可能となる。
【0007】
図3では、同調弁52として三方弁を用いた酸素供給部の構成を示している。図3に示す例では、同調弁52のポートP3に圧力センサ53が接続される。この場合、例えば、同調弁52のバルブを開いたとき、ポートP1とポートP2を結ぶ流路が開通され、高濃度酸素が酸素出口から放出される。一方、同調弁52のバルブを閉じたとき、ポートP2とポートP3を結ぶ流路が開通され、使用者の呼吸に伴う圧力変動を圧力センサ53によって検出可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図2に示すように同調弁52として二方弁を使用した場合、高濃度酸素の供給時(吸気時)に、高濃度酸素の高圧(例えば200kPa程度)が圧力センサ53に直接印加されることとなる。したがって、圧力センサ53には、耐圧の高い(測定レンジの広い)センサを使用しなければならない。つまり、使用者の呼吸を検出するには測定レンジが±3kPa程度であれば十分であるにも関わらず、測定レンジの広い圧力センサを使用せざるを得ないため、呼吸検出の感度が低下してしまう。
【0010】
一方、図3に示すように同調弁52として三方弁を使用した場合、高濃度酸素の供給時に、高濃度酸素の供給流路から圧力センサ53が遮断されるため、測定レンジの狭い高感度の圧力センサを使用することができる。しかしながら、圧力センサ53では、図4に示すように吸気初期の陰圧を検出できるだけであり、その後の酸素供給時の圧力変動を検出することはできない。つまり、圧力センサ53では、使用者の呼吸に応じて高濃度酸素が正常に供給されているか(同調弁52から放出されているか)を検出することができないため、安全性の面で問題がある。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、使用者の呼吸に応じて高濃度酸素が正常に供給されているかを検出できる安全性の高い呼吸同調式の酸素濃縮器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る酸素濃縮器は、高濃度酸素を貯留する酸素貯留部と、
前記酸素貯留部から送出された高濃度酸素を、使用者の呼吸に同調して酸素出口から放出する酸素供給部と、を備えた呼吸同調式の酸素濃縮器であって、
前記酸素供給部が、使用者の呼吸に伴う圧力変動を検出する圧力センサと、
前記圧力センサによる検出結果に基づいて、高濃度酸素の供給流路を開閉する同調弁と、を備え、
前記同調弁が、前記酸素貯留部側に接続される第1ポート、前記酸素出口側に接続される第2ポート、前記圧力センサに接続される第3ポートを有し、前記第1ポートと前記第2ポートを結ぶ第1流路と、前記第2ポートと前記第3ポートを結ぶ第2流路のいずれか一方を開通可能で、前記第2流路を開通させている状態で前記圧力センサによって使用者の吸気が検出された場合に、前記第1流路を閉鎖して前記第2流路を開通させるように構成され、
前記圧力センサが、前記第2ポートから前記酸素出口に向かう流路に対して流量制限オリフィスを介して接続され、前記第1流路が開通されて使用者に高濃度酸素が供給されるときの圧力変動を検出可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、呼吸検出用の圧力センサによって酸素供給時の圧力変動を検出することができるので、この圧力変動に基づいて高濃度酸素が同調弁から正常に放出されているか否かを判定することができる。また、高感度の圧力センサを使用することができるので、吸気時の圧力変動(圧力波形)に基づいて酸素濃縮器に接続されている鼻カニューラの閉塞程度を判定することもできる。したがって、安全に優れた酸素濃縮器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一般的なPSA式の酸素濃縮器の概略構成を示す図である。
【図2】従来の酸素濃縮器における酸素供給部の一例を示す図である。
【図3】従来の酸素濃縮器における酸素供給部の他の一例を示す図である。
【図4】従来の酸素濃縮器における呼吸検出用の圧力センサによって取得される圧力波形を示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る酸素濃縮器の配管系統の概略構成を示す図である。
【図6】実施の形態に係る酸素濃縮器の制御系統の概略構成を示す図である。
【図7】実施の形態に係る酸素濃縮器における呼吸検出用の圧力センサによって取得される圧力波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図5は、本発明の一実施の形態に係る酸素濃縮器の配管系統の概略構成を示す図である。図5に示す酸素濃縮器1は、空気取入部10、空気圧縮部20、PSA部30、酸素貯留部40、酸素供給部50を備えたPSA式の酸素濃縮器である。
【0016】
空気取入部10は、原料空気となる外気を筐体内に取り入れる部分で、吸気フィルタ11、ヘパフィルタ12等を備えている。吸気フィルタ11は、筐体に設けられた空気取入口13を介して導入された原料空気からゴミや埃等の空中浮遊粒子を除去する。ヘパフィルタ12は、吸気フィルタ11により除去されなかった微細粒子を除去する。空気取入口13から導入された原料空気は、吸気フィルタ11、ヘパフィルタ12によって濾過され、空気圧縮部20に送出される。
【0017】
空気圧縮部20は、導入された原料空気を圧縮して圧縮空気を生成する、いわゆるコンプレッサである。空気圧縮部20の下流には、温度上昇した圧縮空気を冷却するために放熱効果に優れた冷却パイプ21が配管される。原料空気は空気圧縮部20で圧縮されることにより温度上昇しており、そのままではPSA部30における窒素の吸着効率が低下するため、冷却パイプ21を通過させることにより原料空気を冷却するようになっている。
空気圧縮部20で生成された圧縮空気は、冷却パイプ21において冷却され、PSA部30に送出される。
なお、空気圧縮部20の上流(ヘパフィルタ12の下流)には、空気圧縮部20の動作音に対して消音効果を発揮する膨張型消音器(サイレンサ)を配設するのが望ましい。
【0018】
空気圧縮部20及び冷却パイプ21の近傍には、これらを冷却するための冷却ブロワ70が配設される。冷却ブロワ70は、筐体に設けられた吸気口(図示略)から外気を吸引し、空気圧縮部20及び冷却パイプ21に向けて送風する。送風された冷却風は、筐体に設けられた排気口(図示略)から排気される。なお、冷却ブロワ70の吸気口として、前述の空気取入口13を共用してもよい。
冷却ブロワ70は、例えば筐体内部に設けられた温度センサ71(図6参照)による検出結果(測定温度)に基づいて必要風量が設定され、一定風量となるように駆動モータの回転数が制御される(例えばインバータ制御)。
【0019】
PSA部30は、空気圧縮部20で生成された圧縮空気から窒素を分離して高濃度酸素を生成し、酸素貯留部40に送出する部分で、流路切換部31、排気サイレンサ32、シーブベッド(吸着塔)33A、33B、パージオリフィス34、均圧弁35、逆止弁36、36等を備えている。
【0020】
流路切換部31は、4つの切替弁SV1〜SV4を備えたマニホールド(多岐管)で構成され、空気圧縮部20で生成された圧縮空気をシーブベッド33A、33Bに交互に送出するとともに、シーブベッド33A、33Bを交互に大気圧に開放して窒素富化空気を排出させる。
具体的には、流路切換部31では、切替弁SV1が“開”、切替弁SV2が“閉”とされることにより、空気圧縮部20からシーブベッド33Aに向かう流路が開通される一方で、シーブベッド33Aから排気サイレンサ32に向かう流路が閉鎖される。同時に、流路切換部31では、切替弁SV3が“閉”、切替弁SV4が“開”とされることにより、空気圧縮部20からシーブベッド33Bに向かう流路が閉鎖される一方で、シーブベッド33Bから排気サイレンサ32に向かう流路が開通される。この場合、空気圧縮部20で生成された圧縮空気がシーブベッド33Aに送出され、シーブベッド33Bからは窒素富化空気が放出されて排気サイレンサ32を介して排気されることとなる。
また、切替弁SV1〜SV4が上記と逆の状態となっている場合は、空気圧縮部20で生成された圧縮空気がシーブベッド33Bに送出され、シーブベッド33Aからは窒素富化空気が放出されて排気サイレンサ32を介して排気されることとなる。切替弁SV1〜SV4の開閉状態は、例えば10秒間隔で切り替えられる。
【0021】
排気サイレンサ32は、酸素濃縮器1の筐体に設けられた排気口(図示略)に接続され、シーブベッド33A、33Bから放出された窒素富化空気を筐体の外部に排出する際の排気音を消音する。
【0022】
シーブベッド33A、33Bは、流路切換部31を介して送られてきた圧縮空気から窒素を分離し、高濃度酸素を生成する。シーブベッド33A、33Bには、酸素より窒素を早く吸着する性質を有するゼオライト等の吸着剤が充填されている。ゼオライトとは、結晶中に微細孔をもつアルミノ珪酸塩(例えばアルカリ土類金属を含む結晶性含水アルミノ珪酸塩)からなる多孔質材料であり、市販されている各種のゼオライトを使用することができる。
【0023】
シーブベッド33A、33Bは、流路切換部31によって空気圧縮部20からの流路が開通されているとき、圧縮空気が送り込まれて加圧状態となる。このとき、シーブベッド33A、33Bでは、窒素及び水分が吸着され、酸素だけが通過するため、高濃度酸素が生成される(吸着工程)。
シーブベッド33A、33Bで生成される高濃度酸素の濃度は、例えば90%程度に調整される。また、ゼオライトは窒素のみならず水分をも吸着するので、シーブベッド33A、33Bで生成される高濃度酸素は極めて乾燥した状態となる(例えば湿度0.1〜0.2%)。
【0024】
一方、シーブベッド33A、33Bは、流路切換部31によって排気サイレンサ32への流路が開通されているとき、大気圧に開放されて減圧状態となる。このとき、ゼオライトに吸着していた窒素及び水分が脱離され、シーブベッド33A、33Bから窒素富化空気が放出され、排気サイレンサ32を介して排気される。これにより、シーブベッド33A、33Bの吸着能力が再生される(再生工程)。
【0025】
シーブベッド33A、33Bは、逆止弁36、36を介して酸素貯留部40の製品タンク41に接続されている。逆止弁36、36は、製品タンク41に貯留された高濃度酸素がシーブベッド33A、33Bに逆流するのを防止する。
【0026】
また、シーブベッド33A、33Bの下流側は、パージオリフィス34を有する配管で接続されている。一方のシーブベッド33A(又は33B)で生成された高濃度酸素は、逆止弁36を介して酸素貯留部40に送出されるとともに、パージオリフィス34を介して他方のシーブベッド33B(又は33A)に送出される。生成された高濃度酸素の一部が他方のシーブベッド33B(又は33A)に送り込まれることにより、当該シーブベッド33B(又は33A)の再生工程が効率よく行われる。パージオリフィス34のオリフィス径によって、それぞれの流路における高濃度酸素の流量が制御される。
【0027】
また、シーブベッド33A、33Bの下流側は、均圧弁35を有する配管で接続されている。再生工程にあるシーブベッド33A、33Bを吸着工程に切り替える際、減圧(大気圧)下にそのまま圧縮空気を流入させると窒素の吸着効率が悪い。そのため、切換時に均圧弁35が“開”とされ、シーブベッド33A、33Bの圧力が平均化される。
【0028】
酸素貯留部40は、PSA部30で生成された高濃度酸素を一時的に貯留しておく部分で、製品タンク41、圧力調整部(圧力レギュレータ)42、酸素センサ43、及び圧力センサ44等を備えている。
【0029】
製品タンク41は、シーブベッド33A、33Bで生成された高濃度酸素を貯留するための容器である。シーブベッド33A、33Bから送出された高濃度酸素を一旦製品タンク41に貯留しておくことにより、高濃度酸素の濃度変動及び圧力変動が抑制されるので、使用者に安定した濃度および流量で高濃度酸素を供給できる。
【0030】
圧力調整部42は、供給する高濃度酸素の流量を制御するために、高濃度酸素の圧力を使用に適した一定圧に調整する。製品タンク41に貯留されている高濃度酸素の圧力は、製品タンク41への流入又は製品タンク41からの流出がある限り少なからず変動する。この場合、正確な流量制御が困難となる上、酸素センサ43による正確な濃度測定が困難となる。そのため、圧力調整部42により高濃度酸素が一定圧に調整されるようになっている。
【0031】
酸素センサ43は、圧力調整部42から送出された高濃度酸素の濃度を、所定の間隔(例えば20分)又は連続して検出する。酸素センサ43には、例えばジルコニア式や超音波式のセンサが好適である。測定対象となる高濃度酸素の圧力が変動していると正確な測定が困難となるため、一般には、酸素センサ43は圧力調整部42の下流に流量制限オリフィス45を介して接続される。
【0032】
圧力センサ44は、製品タンク41に貯留された高濃度酸素の圧力を検出する。圧力センサ44による検出結果に基づいて、製品タンク41に貯留された高濃度酸素の圧力が正常な範囲に保持されているかを確認できる。圧力センサ44は、200kPa程度の圧力を検出可能な測定レンジの比較的広いものであればよく、微少な圧力変動を検出できる程度の精度は要求されない。
【0033】
酸素供給部50は、酸素貯留部40から送出された高濃度酸素を、使用者の呼吸に同調して酸素出口55から放出する部分で、バクテリアフィルタ51、同調弁52、及び圧力センサ53等を備えている。
【0034】
バクテリアフィルタ51は、使用者に清浄な高濃度酸素を供給するために、高濃度酸素に含まれる細菌類を捕集して除菌する。
【0035】
同調弁52は、ポートP1〜P3を有する3方弁で構成され、使用者の呼吸に応じて開通する流路を切り替えるとともに、流路の開度を調整することで使用者に供給する高濃度酸素の流量を制御する。同調弁52のポートP1にバクテリアフィルタ51が接続され、ポートP2に酸素出口55に接続され、ポートP3に圧力センサ53が接続される。
例えば、同調弁52が開いたとき、ポートP1とポートP2を結ぶ流路(第1流路)が開通され、高濃度酸素が酸素出口55から放出される。一方、同調弁52が閉じたとき、ポートP2とポートP3を結ぶ流路(第2流路)が開通され、使用者の呼吸に伴う圧力変動が圧力センサ53によって検出可能となる。
【0036】
圧力センサ53は、使用者の呼吸を検出するためのセンサであり、同調弁52のポートP3に接続されるとともに、同調弁52の下流側(ポートP2と酸素出口55を結ぶ流路)に流量制限オリフィス54を介して接続されている。したがって、同調弁52が“閉”となっている状態(第2流路が開通している状態)では使用者の呼吸に伴って変化する圧力を検出することができ、同調弁52が“開”となっている状態(第1流路が開通している状態)では酸素供給に伴って変化する圧力を検出することができる。
【0037】
ここで、流量制限オリフィス54のオリフィス径は、ポートP2と酸素出口55を結ぶ流路における圧力が1/50〜1/200に減圧される程度(例えばφ0.2mm)に設定される。
これにより、圧力が1/50〜1/200程度に減圧されて圧力センサ53に印加されるので、圧力センサ53として、測定レンジの狭い高精度なセンサを適用することができる。つまり、吸気時に同調弁52が“閉”から“開”に切り替えられると、高圧の高濃度酸素が供給されることになるが、このとき圧力センサ53に印加される圧力は流量制限オリフィス54によって減圧されるため、高感度の圧力センサを使用しても不具合は生じない。そして、圧力センサ53によって酸素供給時の圧力変動を検出できるため、同調弁52から高濃度酸素が正常に放出されているか否かを検出することができる。
なお、使用者の呼吸に伴う微少な圧力変動を確実に検出するため、圧力センサ53としては、測定レンジが±4kPaのものが好適である。
【0038】
酸素濃縮器1では、圧力センサ53による検出結果に基づいて、同調弁52の開閉状態が制御される。具体的には、同調弁52が“閉”となっている状態で、圧力センサ53により陰圧が検出されると、同調弁52が瞬時に“開”とされ、高濃度酸素の供給が開始される。そして、所定時間(例えば0.08秒)経過後、同調弁52が“閉”とされることにより、所定量の高濃度酸素が放出される。酸素供給部50から放出された高濃度酸素は、酸素出口55に接続された鼻カニューラや酸素マスクを介して使用者に供給される。
なお、高濃度酸素は極めて乾燥した状態となっているので、酸素出口55の上流に、高濃度酸素を加湿するための加湿部を配設してもよい。
【0039】
図6は、本実施の形態に係る酸素濃縮器の制御系統の概略構成を示す図である。
図6に示すように、制御部60は、CPU(Central Processing Unit)61、RAM(Random Access Memory)62、ROM(Read Only Memory)63等を備えている。CPU61は、処理内容に応じたプログラムをROM63から読み出してRAM62に展開し、展開したプログラムと協働して酸素濃縮器1の各ブロックの動作を制御する。
【0040】
具体的に説明すると、制御部60には、酸素貯留部40の酸素センサ43、酸素供給部50の圧力センサ53、筐体内部に設置される温度センサ71、その他の各種センサからの検出信号が入力される。また、制御部60には、操作ボタン等を有する操作部81において、例えば使用者による供給流量の設定が行われた場合に、設定流量を指示する操作信号が入力される。
これらの入力信号に基づいて、制御部60は、空気圧縮部20や冷却ブロワ70の駆動モータの回転数を制御したり、流路切換部31の切替弁SV1〜SV4や同調弁52の開閉状態や開度を制御したりする。このような制御により、酸素濃縮器1から設定流量で高濃度酸素が供給される。
【0041】
また、制御部60は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などからなる表示部82における表示に係る制御や、スピーカ83からの音声出力に係る制御を行う。表示部82及びスピーカ83は、使用者に各種の情報を報知する際に用いられる。
図示を省略するが、酸素濃縮器1に無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(等力商標)等の通信ネットワークに接続可能なインターフェースを設け、外部機器との間で各種データを送受信できるようにしてもよい。
【0042】
図7は、呼吸検出用の圧力センサ53によって取得される圧力波形の一例を示す図である。
使用者の呼気時は、同調弁52が“閉”(第2流路が開通)とされており、同調弁52から酸素出口55に向かう流路(酸素供給流路)における圧力変動が、圧力センサ53で直接検出される(圧力センサ53から流量制限オリフィス54を介して酸素出口55に向かう流路における圧力変動は無視できる)。このとき、図7に示すように、圧力変動はほとんどない。
【0043】
その後、吸気が開始されると、図7に示すように一瞬陰圧になる。圧力センサ53によって、この陰圧が検出されると、同調弁52が所定時間“開”(第1流路が開通)とされ、所定量の高濃度酸素が放出される。したがって、図7に示すように圧力は急激に上昇する。なお、このときの酸素供給流路における圧力変動は、流量制限オリフィス54を介して圧力センサ53で検出される。同調弁52が“閉”とされて高濃度酸素の放出が停止すると、圧力は急激に下降して基準圧に戻る。
【0044】
ここで、圧力センサ53によって検出された圧力変動のピークに基づいて、同調弁52から所定量の高濃度酸素が放出されたか否かを判定できる。例えば、所定量の高濃度酸素が正常に放出されるときのピークに基づいて予め閾値(例えばピークの70%程度)を設定しておき、圧力変動のピークが閾値を連続して(例えば連続5回)下回った場合に、同調弁52から所定量の高濃度酸素が放出されていないと判定する。この場合、高濃度酸素の供給流路が詰まっている等の何らかの異常が発生していると判断できる。また、圧力変動のピークによって、高濃度酸素の供給量を推測することもできる。
【0045】
また、吸気開始時の陰圧波形に基づいて、酸素濃縮器1に接続されている鼻カニューラ等の閉塞程度を判断することもできる。例えば、鼻カニューラのチューブが捻れたりしていると、呼吸に伴う圧力変動が酸素濃縮器1内に正常に反映されない。つまり、吸気開始時の陰圧波形に乱れが生じた場合に、鼻カニューラが閉塞されていると判断できる。
【0046】
上述したように、酸素濃縮器1における動作異常が発生した場合や、鼻カニューラが閉塞している可能性がある場合は、表示部82による表示やスピーカ83からの音声で、何らかの異常が発生していることを使用者に報知するのが望ましい。これにより、使用者は、酸素濃縮器1に不具合が生じていることを察知できるので、早期に異常事態を解消することができる。
【0047】
このように、本実施の形態に係る酸素濃縮器1は、酸素供給部(50)が、使用者の呼吸に伴う圧力変動を検出する圧力センサ(53)と、圧力センサ(53)による検出結果に基づいて、高濃度酸素の供給流路を開閉する同調弁(52)と、を備えている。
また、同調弁(52)が、酸素貯留部(40)側に接続される第1ポート(P1)、酸素出口(55)側に接続される第2ポート(P2)、圧力センサ(53)に接続される第3ポート(P3)を有し、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)を結ぶ第1流路と、第2ポート(P2)と第3ポート(P3)を結ぶ第2流路のいずれか一方を開通可能で、第2流路を開通させている状態で圧力センサ(53)によって使用者の吸気が検出された場合に、第1流路を閉鎖して第2流路を開通させるように構成されている。
そして、圧力センサ(53)が、第2ポート(P2)から酸素出口(55)に向かう流路に対して流量制限オリフィス(54)を介して接続され、第2流路が開通されて使用者に高濃度酸素が供給されるときの圧力変動を検出可能となっている。
【0048】
酸素濃縮器1では、呼吸検出用の圧力センサ53によって酸素供給時の圧力変動を検出することができるので、この圧力変動に基づいて高濃度酸素が同調弁52から正常に放出されているか否かを判定することができる。また、高感度の圧力センサ53を使用することができるので、吸気時の圧力変動(圧力波形)に基づいて酸素濃縮器1に接続されている鼻カニューラの閉塞程度を判定することもできる。すなわち、酸素濃縮器1は、極めて安全性の高い酸素濃縮器である。
【0049】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、PSA部30の流路切換部31を2つの三方弁を用いた構成とすることもできる。その他、酸素濃縮器の基本的な酸素濃縮機能に係る構成は実施の形態で示した態様に限定されない。
また例えば、実施の形態ではPSA式の酸素濃縮器について説明したが、本発明は酸素貯留部として酸素ボンベを備えた酸素供給器にも適用することができる。
【0050】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1 酸素濃縮器
10 空気取入部
11 吸気フィルタ
12 ヘパフィルタ
13 空気取入口
20 空気圧縮部
21 冷却パイプ
30 PSA部
31 流路切換部
32 排気サイレンサ
33A、33B シーブベッド
34 パージオリフィス
35 均圧弁
36 逆止弁
40 酸素貯留部
41 製品タンク
42 圧力調整部
43 酸素センサ
44 圧力センサ
45 流量制限オリフィス
50 酸素供給部
51 バクテリアフィルタ
52 同調弁
53 圧力センサ
54 流量制限オリフィス
55 酸素出口
60 制御部
61 CPU
62 RAM
63 ROM
70 冷却ブロワ
71 温度センサ
81 操作部
82 表示部
83 スピーカ
SV1〜SV4 切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度酸素を貯留する酸素貯留部と、
前記酸素貯留部から送出された高濃度酸素を、使用者の呼吸に同調して酸素出口から放出する酸素供給部と、を備えた呼吸同調式の酸素濃縮器であって、
前記酸素供給部が、
使用者の呼吸に伴う圧力変動を検出する圧力センサと、
前記圧力センサによる検出結果に基づいて、高濃度酸素の供給流路を開閉する同調弁と、を備え、
前記同調弁が、前記酸素貯留部側に接続される第1ポート、前記酸素出口側に接続される第2ポート、前記圧力センサに接続される第3ポートを有し、前記第1ポートと前記第2ポートを結ぶ第1流路と、前記第2ポートと前記第3ポートを結ぶ第2流路のいずれか一方を開通可能で、前記第2流路を開通させている状態で前記圧力センサによって使用者の吸気が検出された場合に、前記第1流路を閉鎖して前記第2流路を開通させるように構成され、
前記圧力センサが、前記第2ポートから前記酸素出口に向かう流路に対して流量制限オリフィスを介して接続され、前記第2流路が開通されて使用者に高濃度酸素が供給されるときの圧力変動を検出可能となっていることを特徴とする酸素濃縮器。
【請求項2】
前記流量制限オリフィスのオリフィス径により、前記第2ポートから前記酸素出口に向かう流路における圧力が1/50〜1/200に減圧されることを特徴とする請求項1に記載の酸素濃縮器。
【請求項3】
原料空気を導入する空気取入部と、
前記空気取入部を介して導入された前記原料空気から圧縮空気を生成する空気圧縮部と、
前記空気圧縮部で生成された圧縮空気から窒素を分離して高濃度酸素を生成し、前記酸素貯留部に送出するPSA部と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸素濃縮器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−183159(P2012−183159A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47622(P2011−47622)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)