酸素濃縮装置及びその製造方法
【課題】酸素濃縮装置の酸素分離膜(ディンプル膜)の強度を担保する。
【解決手段】酸素濃縮装置1が、ペロブスカイト型酸化物材料で形成されたディンプル膜2と、隣接するディンプル膜2の間に、ディンプル膜2の端に接して設けられたシール材3、4と、隣接するディンプル膜2の間に、ディンプル膜2の端から離れて設けられた支持柱11とを具備する。
【解決手段】酸素濃縮装置1が、ペロブスカイト型酸化物材料で形成されたディンプル膜2と、隣接するディンプル膜2の間に、ディンプル膜2の端に接して設けられたシール材3、4と、隣接するディンプル膜2の間に、ディンプル膜2の端から離れて設けられた支持柱11とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素濃縮装置及びその製造方法に関し、特に、酸素濃縮装置を構成する酸素透過膜を支持するための支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高濃度の酸素を得る一つの手法は、空気に含まれている酸素を選択的に通過させる酸素分離膜を備える酸素濃縮装置を用いることである。酸素分離膜としては、例えば、ペロブスカイト型酸化物材料(例えば、BSCF(BaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3))のセラミックスが使用される。酸素濃縮装置には、このような酸素分離膜が適宜の間隔をあけて保持される。
【0003】
多くの酸素を収率よく得るためには、酸素分離膜の効率を向上させることが重要であり、酸素分離膜の効率を向上させるための一つの手法は、凹凸を設けて表面積を増大することである。図1は、凹凸を有する酸素分離膜を備える酸素濃縮装置1の構造の例を示す断面図であり、図2は、図1の酸素濃縮装置101のA−A断面の構造を示す断面図であり、図3は、B−B断面の構造を示す断面図である。これらの図では、酸素濃縮装置101の厚さ方向にz軸をとったxyz直交座標系が規定されており、以下では、このxyz直交座標系を用いて説明を行う。なお、図1乃至図3に図示されているのは、あくまで酸素濃縮装置101の構造の例であり、出願人は、図示されている酸素濃縮装置101が公知であると認めるものではない。
【0004】
図1に図示されているように、酸素濃縮装置101は、ディンプルが形成された酸素分離膜であるディンプル膜2を複数備えている。ディンプル膜2は、適宜の間隔をあけてz軸方向に積層されて保持されている。ディンプル膜2は、酸素を選択的に通過させる性質を持つ、ペロブスカイト型酸化物材料(例えば、BSCF(BaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3))のセラミックスで形成されている。
【0005】
隣接する2枚のディンプル膜2の間に、空気流路7又は酸素流路8が形成される。ここで、空気流路7とは、図2に図示されているように、酸素の生成の原料となる空気をx軸方向に流通させる通路である。空気流路7は、該空気流路7を形成する2枚のディンプル膜2の間にシール材3を充填することで形成されている。このシール材3は、セラミックスで形成される。シール材3は、各空気流路7を形成する2枚のディンプル膜2のy軸方向の2つの端の近傍に充填されている。
【0006】
一方、図3に図示されているように、酸素流路8は、ディンプル膜2を通過した酸素がy軸方向に流れる通路である。酸素流路8は、該酸素流路8を形成する2枚のディンプル膜2の間にシール材4を充填することで形成されている。このシール材4も、セラミックスで形成される。シール材4は、各酸素流路8を形成する各ディンプル膜2のx軸方向の2つの端、及び+y方向の端の近傍に充填されている。空気流路7と酸素流路8は、z軸方向(ディンプル膜2の積層方向)において交互に設けられている。
【0007】
最も上方に位置するディンプル膜2の上面には補強用の支持体5が接合され、最も下方に位置するディンプル面の下面には補強用の支持体6が接合される。支持体5、6も、セラミックスで形成される。
【0008】
このような酸素濃縮装置101では、酸素濃縮装置101を動作温度に保持した状態で空気流路7に空気が供給されると、その空気に含まれている酸素が選択的にディンプル膜2を通過して酸素流路8に到達し、酸素流路8に到達した酸素が最終生成物として回収される。
【0009】
酸素濃縮装置101の酸素の生成能力を向上させるためには、ディンプル膜2の面積を増大させることが好ましい。その一方で、セラミックスでできたディンプル膜2がその端部においてのみ支持されているため、ディンプル膜2の面積を増大させると(例えば、10cm〜20cm角にまで大きくすると)、強度の問題が発生する。例えば、空気流路7に供給する空気に過剰な圧力変動があると、ディンプル膜2の中央部が割れてしまう恐れがある。
【0010】
本発明に関連し得る技術として、特開平8−45534号公報は、円錐台形の容器に単セルとセパレータとを交互に収納する構造の固体電解質側燃料電池のガスシール構造を開示している。このガスシール構造では、容器が円錐台形になっているため単セルとセパレータとが下方に移動せず、移動によるシール性能の低下を防止できる。しかしながら、このガスシール構造でも、単セルとセパレータとが端部のみで支持されているため、強度の問題は解消されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−45534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、酸素濃縮装置の酸素分離膜の強度を担保するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一の観点では、酸素濃縮装置が、ペロブスカイト型酸化物材料で形成された複数の酸素分離膜と、複数の酸素分離膜の各2つの隣接する酸素分離膜の間に、各2つの隣接する酸素分離膜の端に接して設けられたシール材と、複数の酸素分離膜の各2つの隣接する酸素分離膜の間に、該各2つの隣接する酸素分離膜の端から離れて設けられた少なくとも一の第1支持柱とを具備する。このような構造の酸素濃縮装置では、酸素分離膜の端に接して設けられたシール材と共に酸素分離膜の端から離れて設けられた第1支持柱で酸素分離膜が支持されており、酸素分離膜の強度を担保することができる。
【0014】
第1支持柱は、30℃から1000℃の温度範囲での平均の線膨張係数が、複数の酸素分離膜の温度範囲での平均の線膨張係数と同一か、その±3%以内の範囲にあるセラミックス材料で形成されることが好ましい。また、線膨張係数を同一にするという観点では、第1支持柱は、複数の酸素分離膜と同一の材料で形成されることが好ましい。
【0015】
酸素分離膜がBaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95)で形成される場合には、第1支持柱は、AxB(1−x)CoyFe(1−y)O3(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x<1、0<y<1)で形成されることが好ましい。
【0016】
一実施形態では、複数の酸素分離膜のうちの第1及び第2酸素分離膜の間に空気が供給される空気流路が形成され、第2及び第3酸素分離膜の間に空気に含まれる酸素のうち第2分離膜を通過した酸素が流れる酸素流路が形成される。この場合、当該酸素濃縮装置は、更に、空気流路の入口及び/又は出口に位置し、第1酸素分離膜と第2酸素分離膜の端に接して設けられた、少なくとも一の第2支持柱を備えていてもよい。この場合、第2支持柱は、30℃から1000℃の温度範囲での平均の線膨張係数が、複数の酸素分離膜の温度範囲での平均の線膨張係数と同一か、その±3%以内の範囲にあるセラミックス材料で形成されることが好ましい。
【0017】
このような酸素濃縮装置の構成は、特に、酸素分離膜にディンプルが形成されている場合に好適である。
【0018】
本発明の他の観点では、ペロブスカイト型酸化物材料で形成された複数の酸素分離膜を備える酸素濃縮装置を製造する製造方法が提供される。当該製造方法は、
(a)複数の酸素分離膜の各2つの隣接する酸素分離膜の間に、少なくとも一の第1支持柱を、該各2つの隣接する酸素分離膜の端から離れて設ける工程と、
(b)該各2つの隣接する酸素分離膜の間に、シール材を、該各2つの隣接する酸素分離膜の端に接して設ける工程
とを具備する。
【0019】
第1支持柱を設ける工程は、各2つの隣接する酸素分離膜を所望の間隔に維持しながら各2つの隣接する酸素分離膜の間にペロブスカイト型酸化物材料のセラミックス粉を含むペーストを絞り出す工程と、ペーストを乾燥させる工程とを備えていてもよい。この場合、該ペーストが焼結されることにより、第1支持柱が形成される。
【0020】
ペーストを乾燥する工程での収縮を抑制するためには、ペーストが、ペロブスカイト型酸化物材料のセラミックス粉と溶剤と分散材とを含み、セラミックス粉が、粒径が10〜45μmの粗粒と粒径が2μm以下の細粒とを含み、細粒と粗粒との重量比が、1:2.0〜5.0であることが好ましい。ペーストを乾燥する工程での収縮を一層に抑制するためには、細粒と粗粒との重量比が、1:3.0〜5.0であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、酸素濃縮装置の酸素分離膜の強度を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】酸素濃縮装置の構成の一例を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面における酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【図3】図1のB−B断面における酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【図5】図4のC−C断面における酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【図6】図5のD−D断面における酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【図7A】第1の実施形態の酸素濃縮装置の製造方法を示す断面図である。
【図7B】第1の実施形態の酸素濃縮装置の製造方法を示す断面図である。
【図7C】第1の実施形態の酸素濃縮装置の製造方法を示す断面図である。
【図7D】第1の実施形態の酸素濃縮装置の製造方法を示す断面図である。
【図7E】第1の実施形態の酸素濃縮装置の製造方法を示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【図9】図4のC−C断面における酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【図10】図5のD−D断面における酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図4は、本発明の第1の実施形態における酸素濃縮装置1の構成を示す断面図であり、図5は、図4の酸素濃縮装置1のC−C断面の構造を示す断面図であり、図6は、D−D断面の構造を示す断面図である。図4乃至図6では、酸素濃縮装置1の厚さ方向にz軸をとったxyz直交座標系が規定されており、以下では、このxyz直交座標系を用いて説明を行う。
【0024】
本実施形態の酸素濃縮装置1の構成は、図1乃至図3に図示された酸素濃縮装置101の構成に類似している。相違点は、本実施形態の酸素濃縮装置1では、隣接するディンプル膜2の間に支持柱11、12が設けられている点である。支持柱11は、ディンプル膜2の端から離れた位置に設けられ、支持柱12は、空気流路7の空気が供給される入口、及び空気が排出される出口に設けられている。支持柱11、12は、いずれも、ディンプル膜2を支持してディンプル膜2を補強する。これにより、ディンプル膜2の強度を担保し、強度不足の問題を解消することができる。以下、本実施形態の酸素濃縮装置1の構造について詳細に説明する。
【0025】
酸素濃縮装置1は、ディンプル形状に構成された酸素分離膜であるディンプル膜2を複数備えている。ディンプル膜2は、適宜の間隔をあけてz軸方向に積層されて保持されている。ディンプル膜2は、酸素を選択的に通過させる性質を持つ、ペロブスカイト型酸化物材料のセラミックスで形成されている。本実施形態では、ディンプル膜2は、BSCF(BaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3)で形成される。ただし、0.3<x<0.7、0.7<y<0.95である。
【0026】
隣接する2枚のディンプル膜2の間に、空気流路7又は酸素流路8が形成される。ここで、空気流路7とは、図2に図示されているように、酸素の生成の原料となる空気をx軸方向に流通させる通路である。空気流路7は、該空気流路7を形成する2枚のディンプル膜2の間にシール材3を充填することで形成されている。シール材3は、各空気流路7を形成する2枚のディンプル膜2のy軸方向の2つの端に接して形成されている。
【0027】
一方、図3に図示されているように、酸素流路8は、ディンプル膜2を通過した酸素がy軸方向に流れる通路である。酸素流路8は、該酸素流路8を形成する2枚のディンプル膜2の間にシール材4を充填することで形成されている。シール材4は、各酸素流路8を形成する各ディンプル膜2のx軸方向の2つの端、及び+y方向の端に接して形成されている。空気流路7と酸素流路8は、z軸方向(ディンプル膜2の積層方向)において交互に配置されている。
【0028】
加えて、最も上方に位置するディンプル膜2の上面には、補強用の支持体5が接合され、最も下方に位置するディンプル膜2の下面には、補強用の支持体6が接合される。
【0029】
上述のように、隣接するディンプル膜2の間には、支持柱11、12が設けられる。図5、図6に図示されているように、支持柱11は、ディンプル膜2の端から離れた位置に設けられ、ディンプル膜2の中央部の補強の役割を果たす。一方、図6に図示されているように、支持柱12は、空気流路7の空気が供給される入口、及び空気が排出される出口に設けられており、ディンプル膜2の、空気流路7の入口及び出口の周辺の部分の補強の役割を果たす。ここで、支持柱12は、空気流路7への空気の導入及び排出を妨げないために、入口及び出口を完全には塞がないように配置される。
【0030】
支持柱11、12は、室温(30℃)から1000℃の温度範囲での平均の熱膨張係数(厳密には、線膨張係数。以下同じ。)が、ディンプル膜2の該温度範囲での平均の熱膨張係数と同一か、その±3%以内の範囲にあるセラミックス材料で形成されることが好ましい。ここで、室温(30℃)から1000℃の範囲での平均の熱膨張係数αAVEとは、特定の長さLの試料を室温から1000℃まで温度を上昇させたときの長さの変化をΔL(RT−1000)として、αAVE=(ΔL(RT−1000)/L)/(1000−30)で定義される値である。支持柱11、12を上記のような平均の熱膨張係数を有するセラミックス材料で形成することで、酸素濃縮装置1を所定の動作温度(例えば、850℃)で動作させても、熱応力によってディンプル膜2、支持柱11、12に損傷が起こることを防ぐことができる。
【0031】
より具体的には、ディンプル膜2がBaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95)で形成される場合、室温(30℃)から1000℃の温度範囲での平均の熱膨張係数が20.0×10−6(1/K)である。この場合、支持柱11、12は、AxB(1−x)CoyFe(1−y)O3で形成されることが望ましい。ここで、Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x<1、0<y<1である。
【0032】
より理解しやすい形に書き換えれば、ディンプル膜2がBaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95)で形成される場合、支持柱11、12は、以下の材料のいずれかで作製されることが望ましい:
(1)BaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3 (0<x<1、0<y<1)
(2)LaxCa(1−x)CoyFe(1−y)O3 (0<x<1、0<y<1)
(3)LaxBa(1−x)CoyFe(1−y)O3 (0<x<1、0<y<1)
【0033】
熱応力の低減の観点では、支持柱11、12の室温(30℃)から800℃の温度範囲での平均の熱膨張係数(線膨張係数)が、ディンプル膜2の該温度範囲での平均の熱膨張係数と同一であることが望ましい。これを実現する最も簡便な手法は、支持柱11、12をディンプル膜2と同一の組成の材料で形成することである。例えば、ディンプル膜2がBSCF(BaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95))で形成される場合、支持柱11、12も同一組成のBSCFで形成されることが望ましい。
【0034】
シール材3、4及び支持体5、6についても同様である。シール材3、4及び支持体5、6は、室温(30℃)から1000℃の温度範囲での平均の熱膨張係数(線膨張係数)が、ディンプル膜2の該温度範囲での平均の熱膨張係数と同一か、その±3%以内の範囲にあるセラミックス材料で形成されることが好ましい。シール材3、4及び支持体5、6を上記のような平均の熱膨張係数を有するセラミックス材料で形成することで、酸素濃縮装置1を所定の動作温度(例えば、850℃)で動作させても、熱応力によってディンプル膜2、支持柱11、12に損傷が起こることを防ぐことができる。
【0035】
より具体的には、ディンプル膜2がBaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95)で形成される場合、シール材3、4、5、6は、AxB(1−x)CoyFe(1−y)O3で形成されることが望ましい。ここで、Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x<1、0<y<1である。
【0036】
続いて、本実施形態の酸素濃縮装置1の製造方法について説明する。支持柱11、12を備えている本実施形態の酸素濃縮装置1では、支持柱11、12の形成においてディンプル膜2が凹凸形状を有していることが問題になり得る。平板状の2枚の酸素透過膜については、その間に容易に支持柱を設けることができるが、本実施形態のように凹凸を有するディンプル膜2に支持柱11、12を形成することは、必ずしも、一般的な技術であるとは言えない。以下では、本実施形態の酸素濃縮装置1の製造方法、特に、凹凸を有するディンプル膜2の間に支持柱11、12を形成する方法について詳細に説明する。
【0037】
まず、未焼結のディンプル膜2が必要な枚数だけ作製される。未焼結のディンプル膜2は、例えば、ドクターブレード法によって未焼結のシートを作成し、該未焼結のシートにディンプル加工を行うことで行われる。
【0038】
続いて、図7Aに図示されているように、一枚のディンプル膜2の四隅の近傍にスペーサ13が置かれ、その上に、もう1枚のディンプル膜2が置かれる。この2枚のディンプル膜2は、最下層の酸素流路8の形成に使用される。スペーサ13により当該2枚のディンプル膜2が所望の間隔に保持される。なお、図7Aには、2枚のスペーサ13しか図示されていない。
【0039】
続いて、図7Bに図示されているように、支持柱11の原料となるセラミックス粉を含んだペースト14が、所望の位置にディペンサー(注射器)によって絞り出される。ペースト14の調製手順については、後に詳細に説明される。ペースト14は、ディンプル膜2の上での高さがスペーサ13の厚さよりも高くなるように絞り出されて設置される。
【0040】
その後、ペースト14の乾燥が行われ、これにより未焼結の支持柱11が作製される。その後、図7Cに図示されているように、スペーサ13が除去される。ここで、ペースト14が乾燥したときに、ペースト14の収縮が小さいことが重要であり、ペースト14が収縮しないことが理想的である。ペースト14が乾燥したときに収縮が小さい又は収縮しないことで、スペーサ13の除去後にも2枚のディンプル膜2の間の間隔が適正に保持される。収縮が小さいペースト14の調製方法については、後に詳細に説明する。
【0041】
その後、当該2枚のディンプル膜2の間に(未焼結の)シール材4がディンプル膜2の端部に施工される。具体的には、図7Dに図示されているように、シール材4の原料となるセラミックス粉を含んだペースト15をディンプル膜2の端部にディスペンサーによって絞り出し、その後、ペースト15を乾燥することで(未焼結の)シール材4が作製される。このペースト15も、乾燥したときに収縮が小さいことが重要であり、収縮しないことが理想的である。
【0042】
同様の手順で、当該2枚のディンプル膜2の上に必要な枚数のディンプル膜2が積層される。このとき、隣接する2枚のディンプル膜2の間には支持柱11が設けられる。加えて、当該2枚のディンプル膜2の間に空気流路7が形成される場合には、更にシール材3と支持柱12が設けられ、当該2枚のディンプル膜2の間に酸素流路8が形成される場合にはシール材4が設けられる。空気流路7の入口及び出口に設けられる支持柱12の形成の手順は、位置が異なる点以外は支持柱11と同じである。また、空気流路7を構成する2枚のディンプル膜2の間に設けられるシール材3の形成の手順は、酸素流路8を構成する2枚のディンプル膜2の間に設けられるシール材4の形成の手順と同じである。
【0043】
所望の枚数のディンプル膜2が積層された後、最下層のディンプル膜2の下面全体に未焼結の支持体6が施工され、最上層のディンプル膜2の上面全体に未焼結の支持体5が施工される。支持体5、6の施工は、シール材3、4と同一の組成のペーストをディンプル膜2の上面又は下面に塗布し、塗布されたペーストを乾燥することで行われる。
【0044】
以上のプロセスによって未焼結の酸素濃縮装置1の構造体が作成された後、脱脂(例えば、600℃の加熱)及び焼結(例えば、1150℃の加熱)が行われ、酸素濃縮装置1の作製が完了する。
【0045】
上述のように、支持柱11、12、シール材3、4及び支持体5、6の作製においては、ペースト14、15に対して乾燥処理を行ったときの収縮が小さいことが重要であり、収縮が無いことが理想的である。以下では、ペースト14、15の調製について説明する。
【0046】
本実施形態で使用されるペースト14、15は、セラミックス粉と、溶剤と、分散材(界面活性剤)とを含んでいる。セラミックス粉は、目的とする支持柱11、12、シール材3、4及び支持体5、6と同一の材料で構成される。例えば、支持柱11がBSCF(BaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3)で形成される場合、同一組成のBSCFのセラミックス粉のペースト14が使用される。溶剤としては、例えば、適宜の量の水又はエタノールが使用される。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸又はポリアクリル酸が使用される。ペースト14、15の固体成分(即ち、セラミックス粉と分散剤)に占める分散材の割合は、例えば、1wt%である。
【0047】
本実施形態で使用されるペースト14、15の一つの特徴は、それに含まれるセラミックス粉が、粒径が10〜45μmの粗粒と、粒径が2μm以下の細粒とを含んでいることにある。ペースト14、15が、上記の粒径の粗粒と細粒とを含んでいることにより、乾燥処理における収縮を抑制することができる。即ち、ペースト14に含まれるセラミックス粉のうちの粗粒は、ペースト14、15を乾燥したときに、支持柱11、12、シール材3、4及び支持体5、6の骨格を形成する。一方、細粒は粗粒の隙間に入り込み、該隙間を埋める。これにより、ペースト14、15を乾燥したときの収縮を抑制し、又は、収縮をなくすことができる。
【0048】
粒径が10〜45μmの粗粒と、粒径が2μm以下の細粒とは、所望の材料のセラミックスの固まりを粉砕し、更に分級することで得ることができる。粉砕は、例えば、ボールミルで行うことができる。分級は、篩い分け法によって、より具体的には、篩の上部に旋回気流を発生させる旋回気流式篩い分け法や、超音波により篩を振動させる超音波振動式篩い分け法によって行われる。
【0049】
得られた粗粒と細粒から、以下の手順でペースト14、15が調製される。まず細粒に対して溶剤と分散剤とを加え、スラリーを生成する。一実施形態では、溶剤としては適量の水、分散剤(界面活性剤)としては1wt%のポリカルボン酸が使用される。分散剤(界面活性剤)は、スラリーに細粒を均一に分散させる作用がある。このスラリーに粗粒が混入され、ペースト14、15が調製される。粗粒の混入は、例えば、ボールミルで行うことができる。
【0050】
乾燥処理における収縮を抑制する上では、粗粒と細粒の比率が重要である。発明者は、粗粒と細粒の比率と、乾燥したときの収縮との関係について実験を行った。本実施形態では、セラミックス粉のうち細粒の重量を[細粒]、粗粒の重量を[粗粒]と記載したとき、細粒と粗粒との比率を重量比[細粒]:[粗粒]で定義する。以下の試料について、粗粒と細粒の重量比と乾燥処理による収縮の関係を調べた:
[細粒]:[粗粒]=1:1.0
[細粒]:[粗粒]=1:2.0
[細粒]:[粗粒]=1:3.0
[細粒]:[粗粒]=1:3.5
[細粒]:[粗粒]=1:4.0
[細粒]:[粗粒]=1:5.0
なお、乾燥したときの収縮は、セラミックス粉の材料(例えば、BaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3、LaxCa(1−x)CoyFe(1−y)O3、LaxBa(1−x)CoyFe(1−y)O3)には依存しないことに留意されたい。
【0051】
細粒と粗粒の重量比が[細粒]:[粗粒]=1:1.0である場合、ペースト14、15に対して乾燥処理を行ったときに顕著な収縮が見られた。一方、細粒と粗粒の重量比が[細粒]:[粗粒]=1:2.0である場合、乾燥処理による収縮の程度に改善が認められ、収縮が極めて小さくなった。細粒と粗粒の重量比が[細粒]:[粗粒]=1:3、[細粒]:[粗粒]=1:3.5、[細粒]:[粗粒]=1:4.0、[細粒]:[粗粒]=1:5.0では、事実上、乾燥処理による収縮が見られなかった。従って、乾燥処理を行ったときの収縮の観点では、[細粒]:[粗粒]=1:2.0〜5.0が好適であり、[細粒]:[粗粒]=1:3.0〜5.0が一層に好適である。
【0052】
ただし、一般に、分級を完全に行うことは困難であるから、ペースト14、15に、2〜10μmの粒径又は45μmを超える粒径のセラミックス粒が含まれることは避けられない。即ち、ペースト14、15に、粒径が10〜45μmでなく、粒径が2μm以下でもない粒径のセラミックス粒が多少含まれていてもよい。また、細粒と粗粒の重量比については、篩い分けで得られた細粒と粗粒をそれぞれサンプリングし、サンプリングで得られた細粒と粗粒の粒度分布を調べ、得られた粒度分布から細粒と粗粒の重量比を算出してもよい。粒度分布は、例えば、レーザ回折・散乱法で測定することができる。
【0053】
シール材3、4の作製に用いられるペースト15については、シール材3、4のガス透過量を小さくすることも重要である。発明者は、細粒と粗粒の比率と、単位時間当たりのガス透過量との関係について実験を行った。試料のシール材の体積及び形状は、同一であった。[細粒]:[粗粒]=1:1.0である場合の単位時間当たりのガス透過量を1としたとき、単位時間当たりのガス透過量は、次の通りであった:
[細粒]:[粗粒]=1:2.0の場合: 2
[細粒]:[粗粒]=1:3.0の場合: 5
[細粒]:[粗粒]=1:3.5の場合: 6
[細粒]:[粗粒]=1:4.0の場合: 10
[[細粒]:[粗粒]=1:5.0の場合: 20
したがって、シール材3、4の作製に用いられるペースト15については、細粒と粗粒の重量比を[細粒]:[粗粒]=1:2.0〜3.5に調節することが好ましい。
【0054】
図8乃至図10は、本発明の第2の実施形態における酸素濃縮装置1の構成を示す断面図である。ここで、図9は、図8の酸素濃縮装置1のC−C断面の構造を示す断面図であり、図10は、D−D断面の構造を示す断面図である。
【0055】
第2の実施形態の酸素濃縮装置1の構成は、第1の実施形態の酸素濃縮装置1の構成(図4乃至図6を参照)に類似している。相違点は、第2の実施形態の酸素濃縮装置1では、空気流路7の入口及び出口に支持柱12が設けられていない点である。強度の問題が無ければ支持柱12は必要なく、不必要な支持柱12を作製しないことは、酸素濃縮装置1の製造工程の簡便化に好適である。
【0056】
以上には、本発明の実施形態を具体的に説明してきたが、本発明は、上記の実施形態に限定して解釈してはならない。本発明は、当業者に自明な様々な変更を行って実施され得る。例えば、支持柱11、12の数は、図4乃至図6及び図8乃至図10に図示されている数から適宜に変更され得る。また、第2の実施形態では、全ての支持柱12を設けていない構成が図8乃至図10に図示されているが、空気流路7の入口のみ支持柱12を残し、又は、空気流路7の出口のみ支持柱12を残す構成も可能である。
【符号の説明】
【0057】
1、101:酸素濃縮装置
2:ディンプル膜
3、4:シール材
5、6:支持体
7:空気流路
8:酸素流路
11、12:支持柱
13:スペーサ
14、15:ペースト
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素濃縮装置及びその製造方法に関し、特に、酸素濃縮装置を構成する酸素透過膜を支持するための支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高濃度の酸素を得る一つの手法は、空気に含まれている酸素を選択的に通過させる酸素分離膜を備える酸素濃縮装置を用いることである。酸素分離膜としては、例えば、ペロブスカイト型酸化物材料(例えば、BSCF(BaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3))のセラミックスが使用される。酸素濃縮装置には、このような酸素分離膜が適宜の間隔をあけて保持される。
【0003】
多くの酸素を収率よく得るためには、酸素分離膜の効率を向上させることが重要であり、酸素分離膜の効率を向上させるための一つの手法は、凹凸を設けて表面積を増大することである。図1は、凹凸を有する酸素分離膜を備える酸素濃縮装置1の構造の例を示す断面図であり、図2は、図1の酸素濃縮装置101のA−A断面の構造を示す断面図であり、図3は、B−B断面の構造を示す断面図である。これらの図では、酸素濃縮装置101の厚さ方向にz軸をとったxyz直交座標系が規定されており、以下では、このxyz直交座標系を用いて説明を行う。なお、図1乃至図3に図示されているのは、あくまで酸素濃縮装置101の構造の例であり、出願人は、図示されている酸素濃縮装置101が公知であると認めるものではない。
【0004】
図1に図示されているように、酸素濃縮装置101は、ディンプルが形成された酸素分離膜であるディンプル膜2を複数備えている。ディンプル膜2は、適宜の間隔をあけてz軸方向に積層されて保持されている。ディンプル膜2は、酸素を選択的に通過させる性質を持つ、ペロブスカイト型酸化物材料(例えば、BSCF(BaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3))のセラミックスで形成されている。
【0005】
隣接する2枚のディンプル膜2の間に、空気流路7又は酸素流路8が形成される。ここで、空気流路7とは、図2に図示されているように、酸素の生成の原料となる空気をx軸方向に流通させる通路である。空気流路7は、該空気流路7を形成する2枚のディンプル膜2の間にシール材3を充填することで形成されている。このシール材3は、セラミックスで形成される。シール材3は、各空気流路7を形成する2枚のディンプル膜2のy軸方向の2つの端の近傍に充填されている。
【0006】
一方、図3に図示されているように、酸素流路8は、ディンプル膜2を通過した酸素がy軸方向に流れる通路である。酸素流路8は、該酸素流路8を形成する2枚のディンプル膜2の間にシール材4を充填することで形成されている。このシール材4も、セラミックスで形成される。シール材4は、各酸素流路8を形成する各ディンプル膜2のx軸方向の2つの端、及び+y方向の端の近傍に充填されている。空気流路7と酸素流路8は、z軸方向(ディンプル膜2の積層方向)において交互に設けられている。
【0007】
最も上方に位置するディンプル膜2の上面には補強用の支持体5が接合され、最も下方に位置するディンプル面の下面には補強用の支持体6が接合される。支持体5、6も、セラミックスで形成される。
【0008】
このような酸素濃縮装置101では、酸素濃縮装置101を動作温度に保持した状態で空気流路7に空気が供給されると、その空気に含まれている酸素が選択的にディンプル膜2を通過して酸素流路8に到達し、酸素流路8に到達した酸素が最終生成物として回収される。
【0009】
酸素濃縮装置101の酸素の生成能力を向上させるためには、ディンプル膜2の面積を増大させることが好ましい。その一方で、セラミックスでできたディンプル膜2がその端部においてのみ支持されているため、ディンプル膜2の面積を増大させると(例えば、10cm〜20cm角にまで大きくすると)、強度の問題が発生する。例えば、空気流路7に供給する空気に過剰な圧力変動があると、ディンプル膜2の中央部が割れてしまう恐れがある。
【0010】
本発明に関連し得る技術として、特開平8−45534号公報は、円錐台形の容器に単セルとセパレータとを交互に収納する構造の固体電解質側燃料電池のガスシール構造を開示している。このガスシール構造では、容器が円錐台形になっているため単セルとセパレータとが下方に移動せず、移動によるシール性能の低下を防止できる。しかしながら、このガスシール構造でも、単セルとセパレータとが端部のみで支持されているため、強度の問題は解消されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−45534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、酸素濃縮装置の酸素分離膜の強度を担保するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一の観点では、酸素濃縮装置が、ペロブスカイト型酸化物材料で形成された複数の酸素分離膜と、複数の酸素分離膜の各2つの隣接する酸素分離膜の間に、各2つの隣接する酸素分離膜の端に接して設けられたシール材と、複数の酸素分離膜の各2つの隣接する酸素分離膜の間に、該各2つの隣接する酸素分離膜の端から離れて設けられた少なくとも一の第1支持柱とを具備する。このような構造の酸素濃縮装置では、酸素分離膜の端に接して設けられたシール材と共に酸素分離膜の端から離れて設けられた第1支持柱で酸素分離膜が支持されており、酸素分離膜の強度を担保することができる。
【0014】
第1支持柱は、30℃から1000℃の温度範囲での平均の線膨張係数が、複数の酸素分離膜の温度範囲での平均の線膨張係数と同一か、その±3%以内の範囲にあるセラミックス材料で形成されることが好ましい。また、線膨張係数を同一にするという観点では、第1支持柱は、複数の酸素分離膜と同一の材料で形成されることが好ましい。
【0015】
酸素分離膜がBaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95)で形成される場合には、第1支持柱は、AxB(1−x)CoyFe(1−y)O3(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x<1、0<y<1)で形成されることが好ましい。
【0016】
一実施形態では、複数の酸素分離膜のうちの第1及び第2酸素分離膜の間に空気が供給される空気流路が形成され、第2及び第3酸素分離膜の間に空気に含まれる酸素のうち第2分離膜を通過した酸素が流れる酸素流路が形成される。この場合、当該酸素濃縮装置は、更に、空気流路の入口及び/又は出口に位置し、第1酸素分離膜と第2酸素分離膜の端に接して設けられた、少なくとも一の第2支持柱を備えていてもよい。この場合、第2支持柱は、30℃から1000℃の温度範囲での平均の線膨張係数が、複数の酸素分離膜の温度範囲での平均の線膨張係数と同一か、その±3%以内の範囲にあるセラミックス材料で形成されることが好ましい。
【0017】
このような酸素濃縮装置の構成は、特に、酸素分離膜にディンプルが形成されている場合に好適である。
【0018】
本発明の他の観点では、ペロブスカイト型酸化物材料で形成された複数の酸素分離膜を備える酸素濃縮装置を製造する製造方法が提供される。当該製造方法は、
(a)複数の酸素分離膜の各2つの隣接する酸素分離膜の間に、少なくとも一の第1支持柱を、該各2つの隣接する酸素分離膜の端から離れて設ける工程と、
(b)該各2つの隣接する酸素分離膜の間に、シール材を、該各2つの隣接する酸素分離膜の端に接して設ける工程
とを具備する。
【0019】
第1支持柱を設ける工程は、各2つの隣接する酸素分離膜を所望の間隔に維持しながら各2つの隣接する酸素分離膜の間にペロブスカイト型酸化物材料のセラミックス粉を含むペーストを絞り出す工程と、ペーストを乾燥させる工程とを備えていてもよい。この場合、該ペーストが焼結されることにより、第1支持柱が形成される。
【0020】
ペーストを乾燥する工程での収縮を抑制するためには、ペーストが、ペロブスカイト型酸化物材料のセラミックス粉と溶剤と分散材とを含み、セラミックス粉が、粒径が10〜45μmの粗粒と粒径が2μm以下の細粒とを含み、細粒と粗粒との重量比が、1:2.0〜5.0であることが好ましい。ペーストを乾燥する工程での収縮を一層に抑制するためには、細粒と粗粒との重量比が、1:3.0〜5.0であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、酸素濃縮装置の酸素分離膜の強度を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】酸素濃縮装置の構成の一例を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面における酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【図3】図1のB−B断面における酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【図5】図4のC−C断面における酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【図6】図5のD−D断面における酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【図7A】第1の実施形態の酸素濃縮装置の製造方法を示す断面図である。
【図7B】第1の実施形態の酸素濃縮装置の製造方法を示す断面図である。
【図7C】第1の実施形態の酸素濃縮装置の製造方法を示す断面図である。
【図7D】第1の実施形態の酸素濃縮装置の製造方法を示す断面図である。
【図7E】第1の実施形態の酸素濃縮装置の製造方法を示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【図9】図4のC−C断面における酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【図10】図5のD−D断面における酸素濃縮装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図4は、本発明の第1の実施形態における酸素濃縮装置1の構成を示す断面図であり、図5は、図4の酸素濃縮装置1のC−C断面の構造を示す断面図であり、図6は、D−D断面の構造を示す断面図である。図4乃至図6では、酸素濃縮装置1の厚さ方向にz軸をとったxyz直交座標系が規定されており、以下では、このxyz直交座標系を用いて説明を行う。
【0024】
本実施形態の酸素濃縮装置1の構成は、図1乃至図3に図示された酸素濃縮装置101の構成に類似している。相違点は、本実施形態の酸素濃縮装置1では、隣接するディンプル膜2の間に支持柱11、12が設けられている点である。支持柱11は、ディンプル膜2の端から離れた位置に設けられ、支持柱12は、空気流路7の空気が供給される入口、及び空気が排出される出口に設けられている。支持柱11、12は、いずれも、ディンプル膜2を支持してディンプル膜2を補強する。これにより、ディンプル膜2の強度を担保し、強度不足の問題を解消することができる。以下、本実施形態の酸素濃縮装置1の構造について詳細に説明する。
【0025】
酸素濃縮装置1は、ディンプル形状に構成された酸素分離膜であるディンプル膜2を複数備えている。ディンプル膜2は、適宜の間隔をあけてz軸方向に積層されて保持されている。ディンプル膜2は、酸素を選択的に通過させる性質を持つ、ペロブスカイト型酸化物材料のセラミックスで形成されている。本実施形態では、ディンプル膜2は、BSCF(BaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3)で形成される。ただし、0.3<x<0.7、0.7<y<0.95である。
【0026】
隣接する2枚のディンプル膜2の間に、空気流路7又は酸素流路8が形成される。ここで、空気流路7とは、図2に図示されているように、酸素の生成の原料となる空気をx軸方向に流通させる通路である。空気流路7は、該空気流路7を形成する2枚のディンプル膜2の間にシール材3を充填することで形成されている。シール材3は、各空気流路7を形成する2枚のディンプル膜2のy軸方向の2つの端に接して形成されている。
【0027】
一方、図3に図示されているように、酸素流路8は、ディンプル膜2を通過した酸素がy軸方向に流れる通路である。酸素流路8は、該酸素流路8を形成する2枚のディンプル膜2の間にシール材4を充填することで形成されている。シール材4は、各酸素流路8を形成する各ディンプル膜2のx軸方向の2つの端、及び+y方向の端に接して形成されている。空気流路7と酸素流路8は、z軸方向(ディンプル膜2の積層方向)において交互に配置されている。
【0028】
加えて、最も上方に位置するディンプル膜2の上面には、補強用の支持体5が接合され、最も下方に位置するディンプル膜2の下面には、補強用の支持体6が接合される。
【0029】
上述のように、隣接するディンプル膜2の間には、支持柱11、12が設けられる。図5、図6に図示されているように、支持柱11は、ディンプル膜2の端から離れた位置に設けられ、ディンプル膜2の中央部の補強の役割を果たす。一方、図6に図示されているように、支持柱12は、空気流路7の空気が供給される入口、及び空気が排出される出口に設けられており、ディンプル膜2の、空気流路7の入口及び出口の周辺の部分の補強の役割を果たす。ここで、支持柱12は、空気流路7への空気の導入及び排出を妨げないために、入口及び出口を完全には塞がないように配置される。
【0030】
支持柱11、12は、室温(30℃)から1000℃の温度範囲での平均の熱膨張係数(厳密には、線膨張係数。以下同じ。)が、ディンプル膜2の該温度範囲での平均の熱膨張係数と同一か、その±3%以内の範囲にあるセラミックス材料で形成されることが好ましい。ここで、室温(30℃)から1000℃の範囲での平均の熱膨張係数αAVEとは、特定の長さLの試料を室温から1000℃まで温度を上昇させたときの長さの変化をΔL(RT−1000)として、αAVE=(ΔL(RT−1000)/L)/(1000−30)で定義される値である。支持柱11、12を上記のような平均の熱膨張係数を有するセラミックス材料で形成することで、酸素濃縮装置1を所定の動作温度(例えば、850℃)で動作させても、熱応力によってディンプル膜2、支持柱11、12に損傷が起こることを防ぐことができる。
【0031】
より具体的には、ディンプル膜2がBaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95)で形成される場合、室温(30℃)から1000℃の温度範囲での平均の熱膨張係数が20.0×10−6(1/K)である。この場合、支持柱11、12は、AxB(1−x)CoyFe(1−y)O3で形成されることが望ましい。ここで、Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x<1、0<y<1である。
【0032】
より理解しやすい形に書き換えれば、ディンプル膜2がBaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95)で形成される場合、支持柱11、12は、以下の材料のいずれかで作製されることが望ましい:
(1)BaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3 (0<x<1、0<y<1)
(2)LaxCa(1−x)CoyFe(1−y)O3 (0<x<1、0<y<1)
(3)LaxBa(1−x)CoyFe(1−y)O3 (0<x<1、0<y<1)
【0033】
熱応力の低減の観点では、支持柱11、12の室温(30℃)から800℃の温度範囲での平均の熱膨張係数(線膨張係数)が、ディンプル膜2の該温度範囲での平均の熱膨張係数と同一であることが望ましい。これを実現する最も簡便な手法は、支持柱11、12をディンプル膜2と同一の組成の材料で形成することである。例えば、ディンプル膜2がBSCF(BaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95))で形成される場合、支持柱11、12も同一組成のBSCFで形成されることが望ましい。
【0034】
シール材3、4及び支持体5、6についても同様である。シール材3、4及び支持体5、6は、室温(30℃)から1000℃の温度範囲での平均の熱膨張係数(線膨張係数)が、ディンプル膜2の該温度範囲での平均の熱膨張係数と同一か、その±3%以内の範囲にあるセラミックス材料で形成されることが好ましい。シール材3、4及び支持体5、6を上記のような平均の熱膨張係数を有するセラミックス材料で形成することで、酸素濃縮装置1を所定の動作温度(例えば、850℃)で動作させても、熱応力によってディンプル膜2、支持柱11、12に損傷が起こることを防ぐことができる。
【0035】
より具体的には、ディンプル膜2がBaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95)で形成される場合、シール材3、4、5、6は、AxB(1−x)CoyFe(1−y)O3で形成されることが望ましい。ここで、Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x<1、0<y<1である。
【0036】
続いて、本実施形態の酸素濃縮装置1の製造方法について説明する。支持柱11、12を備えている本実施形態の酸素濃縮装置1では、支持柱11、12の形成においてディンプル膜2が凹凸形状を有していることが問題になり得る。平板状の2枚の酸素透過膜については、その間に容易に支持柱を設けることができるが、本実施形態のように凹凸を有するディンプル膜2に支持柱11、12を形成することは、必ずしも、一般的な技術であるとは言えない。以下では、本実施形態の酸素濃縮装置1の製造方法、特に、凹凸を有するディンプル膜2の間に支持柱11、12を形成する方法について詳細に説明する。
【0037】
まず、未焼結のディンプル膜2が必要な枚数だけ作製される。未焼結のディンプル膜2は、例えば、ドクターブレード法によって未焼結のシートを作成し、該未焼結のシートにディンプル加工を行うことで行われる。
【0038】
続いて、図7Aに図示されているように、一枚のディンプル膜2の四隅の近傍にスペーサ13が置かれ、その上に、もう1枚のディンプル膜2が置かれる。この2枚のディンプル膜2は、最下層の酸素流路8の形成に使用される。スペーサ13により当該2枚のディンプル膜2が所望の間隔に保持される。なお、図7Aには、2枚のスペーサ13しか図示されていない。
【0039】
続いて、図7Bに図示されているように、支持柱11の原料となるセラミックス粉を含んだペースト14が、所望の位置にディペンサー(注射器)によって絞り出される。ペースト14の調製手順については、後に詳細に説明される。ペースト14は、ディンプル膜2の上での高さがスペーサ13の厚さよりも高くなるように絞り出されて設置される。
【0040】
その後、ペースト14の乾燥が行われ、これにより未焼結の支持柱11が作製される。その後、図7Cに図示されているように、スペーサ13が除去される。ここで、ペースト14が乾燥したときに、ペースト14の収縮が小さいことが重要であり、ペースト14が収縮しないことが理想的である。ペースト14が乾燥したときに収縮が小さい又は収縮しないことで、スペーサ13の除去後にも2枚のディンプル膜2の間の間隔が適正に保持される。収縮が小さいペースト14の調製方法については、後に詳細に説明する。
【0041】
その後、当該2枚のディンプル膜2の間に(未焼結の)シール材4がディンプル膜2の端部に施工される。具体的には、図7Dに図示されているように、シール材4の原料となるセラミックス粉を含んだペースト15をディンプル膜2の端部にディスペンサーによって絞り出し、その後、ペースト15を乾燥することで(未焼結の)シール材4が作製される。このペースト15も、乾燥したときに収縮が小さいことが重要であり、収縮しないことが理想的である。
【0042】
同様の手順で、当該2枚のディンプル膜2の上に必要な枚数のディンプル膜2が積層される。このとき、隣接する2枚のディンプル膜2の間には支持柱11が設けられる。加えて、当該2枚のディンプル膜2の間に空気流路7が形成される場合には、更にシール材3と支持柱12が設けられ、当該2枚のディンプル膜2の間に酸素流路8が形成される場合にはシール材4が設けられる。空気流路7の入口及び出口に設けられる支持柱12の形成の手順は、位置が異なる点以外は支持柱11と同じである。また、空気流路7を構成する2枚のディンプル膜2の間に設けられるシール材3の形成の手順は、酸素流路8を構成する2枚のディンプル膜2の間に設けられるシール材4の形成の手順と同じである。
【0043】
所望の枚数のディンプル膜2が積層された後、最下層のディンプル膜2の下面全体に未焼結の支持体6が施工され、最上層のディンプル膜2の上面全体に未焼結の支持体5が施工される。支持体5、6の施工は、シール材3、4と同一の組成のペーストをディンプル膜2の上面又は下面に塗布し、塗布されたペーストを乾燥することで行われる。
【0044】
以上のプロセスによって未焼結の酸素濃縮装置1の構造体が作成された後、脱脂(例えば、600℃の加熱)及び焼結(例えば、1150℃の加熱)が行われ、酸素濃縮装置1の作製が完了する。
【0045】
上述のように、支持柱11、12、シール材3、4及び支持体5、6の作製においては、ペースト14、15に対して乾燥処理を行ったときの収縮が小さいことが重要であり、収縮が無いことが理想的である。以下では、ペースト14、15の調製について説明する。
【0046】
本実施形態で使用されるペースト14、15は、セラミックス粉と、溶剤と、分散材(界面活性剤)とを含んでいる。セラミックス粉は、目的とする支持柱11、12、シール材3、4及び支持体5、6と同一の材料で構成される。例えば、支持柱11がBSCF(BaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3)で形成される場合、同一組成のBSCFのセラミックス粉のペースト14が使用される。溶剤としては、例えば、適宜の量の水又はエタノールが使用される。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸又はポリアクリル酸が使用される。ペースト14、15の固体成分(即ち、セラミックス粉と分散剤)に占める分散材の割合は、例えば、1wt%である。
【0047】
本実施形態で使用されるペースト14、15の一つの特徴は、それに含まれるセラミックス粉が、粒径が10〜45μmの粗粒と、粒径が2μm以下の細粒とを含んでいることにある。ペースト14、15が、上記の粒径の粗粒と細粒とを含んでいることにより、乾燥処理における収縮を抑制することができる。即ち、ペースト14に含まれるセラミックス粉のうちの粗粒は、ペースト14、15を乾燥したときに、支持柱11、12、シール材3、4及び支持体5、6の骨格を形成する。一方、細粒は粗粒の隙間に入り込み、該隙間を埋める。これにより、ペースト14、15を乾燥したときの収縮を抑制し、又は、収縮をなくすことができる。
【0048】
粒径が10〜45μmの粗粒と、粒径が2μm以下の細粒とは、所望の材料のセラミックスの固まりを粉砕し、更に分級することで得ることができる。粉砕は、例えば、ボールミルで行うことができる。分級は、篩い分け法によって、より具体的には、篩の上部に旋回気流を発生させる旋回気流式篩い分け法や、超音波により篩を振動させる超音波振動式篩い分け法によって行われる。
【0049】
得られた粗粒と細粒から、以下の手順でペースト14、15が調製される。まず細粒に対して溶剤と分散剤とを加え、スラリーを生成する。一実施形態では、溶剤としては適量の水、分散剤(界面活性剤)としては1wt%のポリカルボン酸が使用される。分散剤(界面活性剤)は、スラリーに細粒を均一に分散させる作用がある。このスラリーに粗粒が混入され、ペースト14、15が調製される。粗粒の混入は、例えば、ボールミルで行うことができる。
【0050】
乾燥処理における収縮を抑制する上では、粗粒と細粒の比率が重要である。発明者は、粗粒と細粒の比率と、乾燥したときの収縮との関係について実験を行った。本実施形態では、セラミックス粉のうち細粒の重量を[細粒]、粗粒の重量を[粗粒]と記載したとき、細粒と粗粒との比率を重量比[細粒]:[粗粒]で定義する。以下の試料について、粗粒と細粒の重量比と乾燥処理による収縮の関係を調べた:
[細粒]:[粗粒]=1:1.0
[細粒]:[粗粒]=1:2.0
[細粒]:[粗粒]=1:3.0
[細粒]:[粗粒]=1:3.5
[細粒]:[粗粒]=1:4.0
[細粒]:[粗粒]=1:5.0
なお、乾燥したときの収縮は、セラミックス粉の材料(例えば、BaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3、LaxCa(1−x)CoyFe(1−y)O3、LaxBa(1−x)CoyFe(1−y)O3)には依存しないことに留意されたい。
【0051】
細粒と粗粒の重量比が[細粒]:[粗粒]=1:1.0である場合、ペースト14、15に対して乾燥処理を行ったときに顕著な収縮が見られた。一方、細粒と粗粒の重量比が[細粒]:[粗粒]=1:2.0である場合、乾燥処理による収縮の程度に改善が認められ、収縮が極めて小さくなった。細粒と粗粒の重量比が[細粒]:[粗粒]=1:3、[細粒]:[粗粒]=1:3.5、[細粒]:[粗粒]=1:4.0、[細粒]:[粗粒]=1:5.0では、事実上、乾燥処理による収縮が見られなかった。従って、乾燥処理を行ったときの収縮の観点では、[細粒]:[粗粒]=1:2.0〜5.0が好適であり、[細粒]:[粗粒]=1:3.0〜5.0が一層に好適である。
【0052】
ただし、一般に、分級を完全に行うことは困難であるから、ペースト14、15に、2〜10μmの粒径又は45μmを超える粒径のセラミックス粒が含まれることは避けられない。即ち、ペースト14、15に、粒径が10〜45μmでなく、粒径が2μm以下でもない粒径のセラミックス粒が多少含まれていてもよい。また、細粒と粗粒の重量比については、篩い分けで得られた細粒と粗粒をそれぞれサンプリングし、サンプリングで得られた細粒と粗粒の粒度分布を調べ、得られた粒度分布から細粒と粗粒の重量比を算出してもよい。粒度分布は、例えば、レーザ回折・散乱法で測定することができる。
【0053】
シール材3、4の作製に用いられるペースト15については、シール材3、4のガス透過量を小さくすることも重要である。発明者は、細粒と粗粒の比率と、単位時間当たりのガス透過量との関係について実験を行った。試料のシール材の体積及び形状は、同一であった。[細粒]:[粗粒]=1:1.0である場合の単位時間当たりのガス透過量を1としたとき、単位時間当たりのガス透過量は、次の通りであった:
[細粒]:[粗粒]=1:2.0の場合: 2
[細粒]:[粗粒]=1:3.0の場合: 5
[細粒]:[粗粒]=1:3.5の場合: 6
[細粒]:[粗粒]=1:4.0の場合: 10
[[細粒]:[粗粒]=1:5.0の場合: 20
したがって、シール材3、4の作製に用いられるペースト15については、細粒と粗粒の重量比を[細粒]:[粗粒]=1:2.0〜3.5に調節することが好ましい。
【0054】
図8乃至図10は、本発明の第2の実施形態における酸素濃縮装置1の構成を示す断面図である。ここで、図9は、図8の酸素濃縮装置1のC−C断面の構造を示す断面図であり、図10は、D−D断面の構造を示す断面図である。
【0055】
第2の実施形態の酸素濃縮装置1の構成は、第1の実施形態の酸素濃縮装置1の構成(図4乃至図6を参照)に類似している。相違点は、第2の実施形態の酸素濃縮装置1では、空気流路7の入口及び出口に支持柱12が設けられていない点である。強度の問題が無ければ支持柱12は必要なく、不必要な支持柱12を作製しないことは、酸素濃縮装置1の製造工程の簡便化に好適である。
【0056】
以上には、本発明の実施形態を具体的に説明してきたが、本発明は、上記の実施形態に限定して解釈してはならない。本発明は、当業者に自明な様々な変更を行って実施され得る。例えば、支持柱11、12の数は、図4乃至図6及び図8乃至図10に図示されている数から適宜に変更され得る。また、第2の実施形態では、全ての支持柱12を設けていない構成が図8乃至図10に図示されているが、空気流路7の入口のみ支持柱12を残し、又は、空気流路7の出口のみ支持柱12を残す構成も可能である。
【符号の説明】
【0057】
1、101:酸素濃縮装置
2:ディンプル膜
3、4:シール材
5、6:支持体
7:空気流路
8:酸素流路
11、12:支持柱
13:スペーサ
14、15:ペースト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト型酸化物材料で形成された複数の酸素分離膜と、
前記複数の酸素分離膜の各2つの隣接する酸素分離膜の間に、前記各2つの隣接する酸素分離膜の端に接して設けられたシール材と、
前記複数の酸素分離膜の各2つの隣接する酸素分離膜の間に、前記各2つの隣接する酸素分離膜の端から離れて設けられた少なくとも一の第1支持柱
とを具備する
酸素濃縮装置。
【請求項2】
請求項1に記載の酸素濃縮装置であって、
前記第1支持柱は、30℃から1000℃の温度範囲での平均の線膨張係数が、前記複数の酸素分離膜の前記温度範囲での平均の線膨張係数と同一か、その±3%以内の範囲にあるセラミックス材料で形成された
酸素濃縮装置。
【請求項3】
請求項2に記載の酸素濃縮装置であって、
前記第1支持柱は、前記複数の酸素分離膜と同一の材料で形成された
酸素濃縮装置。
【請求項4】
請求項2に記載の酸素濃縮装置であって、
前記酸素分離膜がBaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95)で形成され、
前記第1支持柱は、AxB(1−x)CoyFe(1−y)O3(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x<1、0<y<1)で形成される
酸素濃縮装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の酸素濃縮装置であって、
前記複数の酸素分離膜は、第1乃至第3酸素分離膜を備え、
前記第1酸素分離膜と前記第2酸素分離膜の間に、空気が供給される空気流路が形成され、
前記第2酸素分離膜と前記第3酸素分離膜の間に、前記空気に含まれる酸素のうち前記第2分離膜を通過した酸素が流れる酸素流路が形成される
酸素濃縮装置。
【請求項6】
請求項5に記載の酸素濃縮装置であって、
更に、
前記空気流路の入口及び/又は出口に位置し、前記第1酸素分離膜と前記第2酸素分離膜の端に接して設けられた、少なくとも一の第2支持柱を備えており、
前記第2支持柱は、30℃から1000℃の温度範囲での平均の線膨張係数が、前記複数の酸素分離膜の前記温度範囲での平均の線膨張係数と同一か、その±3%以内の範囲にあるセラミックス材料で形成された
酸素濃縮装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の酸素濃縮装置であって、
前記複数の酸素分離膜には、ディンプルが形成されている
酸素濃縮装置。
【請求項8】
ペロブスカイト型酸化物材料で形成された複数の酸素分離膜を備える酸素濃縮装置を製造する製造方法であって、
(a)前記複数の酸素分離膜の各2つの隣接する酸素分離膜の間に、少なくとも一の第1支持柱を、前記各2つの隣接する酸素分離膜の端から離れて設ける工程と、
(b)前記各2つの隣接する酸素分離膜の間に、シール材を、前記各2つの隣接する酸素分離膜の端に接して設ける工程
とを具備する
酸素濃縮装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法であって、
前記第1支持柱は、30℃から1000℃の温度範囲での平均の線膨張係数が、前記複数の酸素分離膜の前記温度範囲での平均の線膨張係数と同一か、その±3%以内の範囲にあるセラミックス材料で形成された
酸素濃縮装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の製造方法であって、
前記少なくとも一の第1支持柱を設ける工程は、
前記各2つの隣接する酸素分離膜を所望の間隔に維持しながら、前記各2つの隣接する酸素分離膜の間に前記ペロブスカイト型酸化物材料のセラミックス粉を含むペーストを絞り出す工程と、
前記ペーストを乾燥させる工程
とを備え、
前記ペーストが焼結されることにより、前記第1支持柱が形成される
酸素濃縮装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法であって、
前記ペーストは、前記ペロブスカイト型酸化物材料のセラミックス粉と、溶剤と、分散材とを含み、
前記セラミックス粉は、粒径が10〜45μmの粗粒と、粒径が2μm以下の細粒とを含み、
前記細粒と前記粗粒との重量比が、1:2.0〜5.0である
酸素濃縮装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法であって、
前記細粒と前記粗粒との重量比が、1:3.0〜5.0である
酸素濃縮装置の製造方法。
【請求項1】
ペロブスカイト型酸化物材料で形成された複数の酸素分離膜と、
前記複数の酸素分離膜の各2つの隣接する酸素分離膜の間に、前記各2つの隣接する酸素分離膜の端に接して設けられたシール材と、
前記複数の酸素分離膜の各2つの隣接する酸素分離膜の間に、前記各2つの隣接する酸素分離膜の端から離れて設けられた少なくとも一の第1支持柱
とを具備する
酸素濃縮装置。
【請求項2】
請求項1に記載の酸素濃縮装置であって、
前記第1支持柱は、30℃から1000℃の温度範囲での平均の線膨張係数が、前記複数の酸素分離膜の前記温度範囲での平均の線膨張係数と同一か、その±3%以内の範囲にあるセラミックス材料で形成された
酸素濃縮装置。
【請求項3】
請求項2に記載の酸素濃縮装置であって、
前記第1支持柱は、前記複数の酸素分離膜と同一の材料で形成された
酸素濃縮装置。
【請求項4】
請求項2に記載の酸素濃縮装置であって、
前記酸素分離膜がBaxSr(1−x)CoyFe(1−y)O3(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95)で形成され、
前記第1支持柱は、AxB(1−x)CoyFe(1−y)O3(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x<1、0<y<1)で形成される
酸素濃縮装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の酸素濃縮装置であって、
前記複数の酸素分離膜は、第1乃至第3酸素分離膜を備え、
前記第1酸素分離膜と前記第2酸素分離膜の間に、空気が供給される空気流路が形成され、
前記第2酸素分離膜と前記第3酸素分離膜の間に、前記空気に含まれる酸素のうち前記第2分離膜を通過した酸素が流れる酸素流路が形成される
酸素濃縮装置。
【請求項6】
請求項5に記載の酸素濃縮装置であって、
更に、
前記空気流路の入口及び/又は出口に位置し、前記第1酸素分離膜と前記第2酸素分離膜の端に接して設けられた、少なくとも一の第2支持柱を備えており、
前記第2支持柱は、30℃から1000℃の温度範囲での平均の線膨張係数が、前記複数の酸素分離膜の前記温度範囲での平均の線膨張係数と同一か、その±3%以内の範囲にあるセラミックス材料で形成された
酸素濃縮装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の酸素濃縮装置であって、
前記複数の酸素分離膜には、ディンプルが形成されている
酸素濃縮装置。
【請求項8】
ペロブスカイト型酸化物材料で形成された複数の酸素分離膜を備える酸素濃縮装置を製造する製造方法であって、
(a)前記複数の酸素分離膜の各2つの隣接する酸素分離膜の間に、少なくとも一の第1支持柱を、前記各2つの隣接する酸素分離膜の端から離れて設ける工程と、
(b)前記各2つの隣接する酸素分離膜の間に、シール材を、前記各2つの隣接する酸素分離膜の端に接して設ける工程
とを具備する
酸素濃縮装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法であって、
前記第1支持柱は、30℃から1000℃の温度範囲での平均の線膨張係数が、前記複数の酸素分離膜の前記温度範囲での平均の線膨張係数と同一か、その±3%以内の範囲にあるセラミックス材料で形成された
酸素濃縮装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の製造方法であって、
前記少なくとも一の第1支持柱を設ける工程は、
前記各2つの隣接する酸素分離膜を所望の間隔に維持しながら、前記各2つの隣接する酸素分離膜の間に前記ペロブスカイト型酸化物材料のセラミックス粉を含むペーストを絞り出す工程と、
前記ペーストを乾燥させる工程
とを備え、
前記ペーストが焼結されることにより、前記第1支持柱が形成される
酸素濃縮装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法であって、
前記ペーストは、前記ペロブスカイト型酸化物材料のセラミックス粉と、溶剤と、分散材とを含み、
前記セラミックス粉は、粒径が10〜45μmの粗粒と、粒径が2μm以下の細粒とを含み、
前記細粒と前記粗粒との重量比が、1:2.0〜5.0である
酸素濃縮装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法であって、
前記細粒と前記粗粒との重量比が、1:3.0〜5.0である
酸素濃縮装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−206009(P2012−206009A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73003(P2011−73003)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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