説明

酸素濃縮装置

【課題】従来の酸素濃縮装置は、磁石を筒の中に設置したりしていたが、これでは空気中の酸素を有効に取り込めなかった。更には、酸素を簡単かつ大量にしかも安価に濃縮することが難しかった。
【解決手段】三相交流コイル14等の電磁石18で構成される回転磁界装置3と、永久磁石4と、回転軸8と、モーター11からなり、前記永久磁石4のN極5とS極6の中間に前記回転軸9を設け、前記回転軸9に回転を与える前記モーター11を設けた回転磁界装置3の、どちらか一の回転磁界装置3を、非磁性体気体流路17の一端に近接設置したことを特徴とする。好ましくは、前記非磁性体気体流路17にファン10を加えて設けるのが望ましい。更に好ましくは、前記非磁性体気体流路17が、非磁性体パイプ9などであることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中からの酸素を濃縮する酸素濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の主な組成は、窒素、酸素がそれぞれ78.08%、20.93%であり、残りがアルゴン、水蒸気、二酸化炭素などである。また、空気を1としたときの窒素、酸素のそれぞれの比重は0.9673、1.1053となっている。従って、空気中で体積が最も大きな窒素を1としたときの酸素の質量比は1.1427であり、窒素と比較すると14.27%も重たい。空気の組成気体にこのような質量の差があるにもかかわらず、空気中の各組成気体が分離することはない。それは空気には対流があるからで、同じ容器の中に組成気体を一緒にしておくと対流によって拡散して交じり合うこととなる。また、窒素は反磁性体で、酸素は常磁性体である。更に磁化率は窒素、酸素それぞれ−0.4×10-6、104×10-6であり、酸素は空気中の気体では最大の磁化率である。従って、空気のような酸素、窒素などが混在した気体中に磁石を置いた場合は、磁化率が高く常磁性体である酸素が磁石に吸い寄せられ酸素濃度が高くなることが知られている。
【0003】
酸素濃縮装置は、バーナーなどの燃焼装置、エンジンなどの内燃機関及び外燃機関における燃焼改善のために使用されている。また、近年では、空気を吸って高濃度酸素を得ることの出来る医療機器のほかに、健康増進向けとしても販売、使用されている。
【0004】
従来、空気中に含まれる酸素を濃縮する方法・装置としては、次のようなものがある。酸素選択透過膜(酸素富化膜)を用いた膜分離型で、空気中の酸素濃度が約21%であるのに対して濃縮性能は酸素28%から40%程度である。また、窒素を選択的に吸着する吸着剤を使用した吸着型で、これは医療用酸素濃縮器に使用され、酸素濃度は97%程度まで濃縮が可能であるが一般製品としては酸素87%から95%程度である。これらのほか、酸素イオンを選択的に透過する固体電解質膜を利用して電気化学的に酸素を生成する型などがある。更に、工業的に大規模に酸素濃縮する方法としては、深冷分離法があり、空気の圧縮と減圧によって空気を液化させ、得た液化空気を分留することによってほぼ100%近い酸素を得ることが出来る。
【0005】
上述のように、空気中の酸素を分離する方法・装置は多くあるが、それぞれに欠点があった。例えば、酸素富化膜による気体分離の場合には家庭用にも使用されるが、これでも非常な高額の定価となっている。また、医療用酸素濃縮器の主流は吸着型であるが、日本国内では数十万円で流通しており、個人が購入する際もこの程度の価格で、使用する側にとってはかなりの負担を強いられ、しかも装置は重く、移動は困難であった。更に、電気化学的に酸素を生成する型、あるいは深冷分離法は、装置が非常に大きいことから医療現場、家庭用には適さない。
【0006】
仮に、空気中の酸素を簡単な装置で濃縮可能となれば、産業界、医療界にとって大きな力となるのは間違いのないところである。また、空気中から窒素を除いて濃縮酸素を得ることが出来れば、車のエンジンからの公害の元凶となるNOxを減少させることが出来る。更にダイオキシンは高温で燃焼させると発生しなくなるので、濃縮酸素を使用すると効果的であると期待される。この改善策として、永久磁石または電磁石の磁力を利用した空気から酸素を濃縮する酸素濃縮装置が開示されているが、装置が大掛かりであり、かつ複雑であることから製造価格も高かった。なお、先行技術として、常磁性体の酸素分子は反対極に磁化し反磁性体の窒素分子は同極に磁化する性質と、電磁コイルの環状中心位置に強磁性体を配設すると磁束が強磁性体に収斂して強力に磁化する性質を応用する事により、空気流を酸素富化空気流層と窒素富化空気流層に分流するという特許が開示されているが、この方法では装置がかなり大きくなるのと、単に電磁コイルで磁力を強くしただけでは効率的には酸素の濃縮は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-118731公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする点は、従来の酸素濃縮装置は、磁石を筒の中に設置したりしていたが、これでは空気中の酸素を有効に取り込めなかった。更には、空気を構成する酸素を簡単かつ大量にしかも安価に濃縮することが難しい点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、課題を解決するために、第1の発明は、磁石を使用して空気を構成する酸素と窒素の磁性の違いにより空気から酸素を濃縮する酸素濃縮装置において、三相交流コイル、単相交流コイル、リニアモーター固定子コイルの群の中から選択される一を用いた電磁石で構成される回転磁界装置と、永久磁石と回転軸とモーターからなり前記永久磁石のN極とS極の中間に前記回転軸を設け、前記回転軸に回転を与える前記モーターを設けた回転磁界装置の、少なくともどちらか一の回転磁界装置を、非磁性体気体流路の一端に近接設置したことを特徴とする酸素濃縮装置。
【0010】
また、第2の発明は、請求項1に記載の酸素濃縮装置において、前記非磁性体気体流路にファンとモーターを加えて設けたことを特徴とする。
【0011】
また、第3の発明は、請求項1乃至請求項3に記載の酸素濃縮装置において、前記非磁性体気体流路が、非磁性体案内板、非磁性体パイプ、非磁性体円筒、非磁性体角筒、漏斗状非磁性体の群の中から選択される少なくとも一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を発揮する。本発明の酸素濃縮装置は、主要構成要素がモーター、磁石と非磁性体パイプのみで構成された極めて簡単な装置であるにもかかわらず、酸素を濃縮して供給するという大変重要な仕事を行うことが出来る。これによって、酸素の必要な家庭、病院の患者、航空機、高山での酸素吸入、あるいは燃焼装置にいたるまで高濃度の酸素を供給することができる。しかも、非常に安価で、簡単な装置であるため、ランニングコストもモーター駆動にかかる電気代のみであり、故障がしにくい装置が実現した。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の酸素濃縮装置の一実施例で回転磁界装置として永久磁石と非磁性体パイプを使用した原理図を示した説明図である。(実施例1)
【図2】本発明の酸素濃縮装置の一実施例で、図1にファンとモーターを加えた実施例の説明図である。(実施例2)
【図3】本発明の酸素濃縮装置の一実施例で、回転磁界装置として非磁性体パイプを複数使用した説明図である。(実施例3)
【図4】本発明の酸素濃縮装置の一実施例で、回転磁界装置として永久磁石を複数使用した説明図である。(実施例4)
【図5】本発明の酸素濃縮装置の一実施例で、回転磁界装置として三相交流コイルを使用した説明図である。(実施例5)
【図6】本発明の酸素濃縮装置の一実施例で、回転磁界装置として単相交流コイルを使用した説明図である。(実施例6)
【図7】本発明の酸素濃縮装置の一実施例で、回転磁界装置としてリニアモーター固定子コイルを使用した説明図である。(実施例7)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の酸素濃縮装置は、永久磁石と非磁性体パイプと回転軸とモーターからなる、また電磁石を使用する場合は電磁石と非磁性体パイプからなる、簡単な装置でありながら、回転磁界を用いて酸素を濃縮するという目的を、簡便にしかも安価に最小の部品点数により実現した。
【実施例】
【0015】
本発明の実施例を図1〜図7により説明する。
【0016】
図1において、1は酸素、2は窒素、3は回転磁界装置、4は永久磁石、5はN極、6はS極、7は磁力線、8は回転軸、9は非磁性体パイプ、17は非磁性体気体流路である。まず、図1は、本発明の酸素濃縮装置の一実施例であり、磁力線7を含めた本発明の基本原理・動作を示した説明図である。永久磁石4のN極5とS極6の中央に回転軸8を設け、前記永久磁石4を回転させた時に、前記永久磁石4と非磁性体パイプ9の一端の縁にすれすれに前記永久磁石4が回転可能な状態にして配置する。空気中には、その構成気体として、前述のように酸素1、窒素2などがある程度均一に混在している。しかし、ここに磁力の強い永久磁石4などの磁場が存在すると状況は違ってくる。図1に模式的に示しているように、前記永久磁石4の周囲には磁力線7があり、空気中の酸素1、窒素2はその影響を受けることになる。つまり、酸素1は常磁性の性質があり、酸素1がN極5に近づくと酸素1はS極6の極性を示して前記永久磁石4に引かれる。反対に窒素2は反磁性の性質があるため、永久磁石4のN極5に窒素2が近づくと窒素2はN極5と同極に誘導される。つまり同極同士だと反発する力になり、窒素2は永久磁石4から反発して離れようとする。このことはN極5ばかりではなくS極6でも同様である。従って、永久磁石4の周りは磁力線7に沿って酸素1の占める割合が増え、図1にあるようにN極5、S極6には酸素1が多く分布し、窒素2は永久磁石4とは反発するためにあまりない状態になる。そこで永久磁石4をモーター11で回転させると、N極5、S極6に吸引されている酸素1が非磁性体パイプ9の一端の縁でそぎ取られるようにして非磁性体パイプ9内に入っていくことになる。この繰り返しで酸素1は非磁性体パイプ9内に増えて、非磁性体パイプ9の他端からは濃度の高い酸素1が出てくる。この濃縮酸素1を使用して酸素吸引、エンジンなどの燃費改善など諸々の用途に利用することが出来る。
【0017】
図2は本発明の一実施例である。図2において、1、4、5、6、8、9は図1と同様である。10はファン、11はモーター、12は非磁性体案内板、13は空気流、17は非磁性体気体流路、18は非磁性体角筒である。本実施例においては、図1の実施例に濃縮酸素吸引のためのファン10、モーター11と、更に図1に比べて濃縮効率を上げるために永久磁石4を長く大きくして、それに合う非磁性体案内板12を加えて設け、前記非磁性体案内板12の縁に前記永久磁石4を回転させることによって、非磁性体案内板12の縁で酸素1をそぎ取るようにして空気流13中の酸素1のみを選択して非磁性体パイプ9へ誘導させ、前記ファン10、前記モーター11を設置して吸引して効率向上させた実施例を示している。なお、図2においては、簡単のために磁力線7、窒素2は図示を省略してある。なお、本実施例の場合、ファン10、モーター11は回転磁界装置3の磁力の強さが充分に強い場合には省略しても構わず、このことは以下の図3乃至図7についても同様である。
【0018】
図3は図1の実施例の非磁性体パイプ9を二本にしたものであり、一つの永久磁石4で二倍の効率となるようにした酸素濃縮装置の一実施例である。図3においては、1、4、5、6、8、9、17は図1と同様である。10はファン、11はモーター、13は空気流である。本実施零の場合は、図1の回転軸8に与えるモーター11からの入力エネルギーが同じであるにもかかわらず非磁性体パイプ9の配置を逆向きに取り付けたことによって二倍の効率が得られるという利点がある。もちろん、本実施例に非磁性体パイプ9に非磁性体案内板12を取り付けても良い。
【0019】
図4は、図3の実施例の非磁性体パイプ9を一本にして、永久磁石4、回転軸8を二セット配置したものであり、濃縮酸素の密度を高くする場合の実施例である。図4において、1、4、5、6、8、9、10、11、13、17は図3と同様である。本実施例のように配置すると、前述のように濃縮率の高い酸素1を得ることが可能であるという利点がある。
【0020】
図5は、本発明の一実施例で、回転磁界装置3として、三相交流コイル14を用いたものを示した。図5中、1、9、10、11、12、17は図4と同様である。3は回転磁界装置、14は三相交流コイルである。前記三相交流コイル14に三相交流を流すことによって回転磁界を発生し、図1乃至図4までと同様に非磁性体パイプ9に濃縮酸素1を流し込むことが出来るものである。本実施例の場合には、図1乃至図4までと違い、回転磁界そのものには機械的に動く部品がないので故障がしずらいという利点がある。
【0021】
図6は、本発明の一実施例で、回転磁界装置3として、単相交流コイル15を用いたものを示した。図6中、1、3、9〜13、17は図5と同様である。15は単相交流コイルである。前記単相コイル15に単相交流を流すことによって回転磁界3を発生し、図1乃至図6までと同様に濃縮酸素1を得るものである。本実施例も動く部品がないことから故障がしずらいという利点がある。
【0022】
図7は、本発明の一実施例で、回転磁界装置3として、リニアモーター固定子コイル16を用いたものを示した。図7中、1、3、9〜13、17は図6と同様である。16はリニアモーター固定子コイルである。前記リニアモーターの固定子コイル16に電流を流すことによって回転磁界3を発生し、図1乃至図6までと同様に濃縮酸素1を得るものである。本実施例も動く部品がないことから故障がしずらいという利点がある。なお、リニアモーター固定子コイル16は本来は直線であるが、本実施例においては、それを円弧に曲げて使用しているが、これは簡単に実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の酸素濃縮装置は、各種内燃機関・外燃機関の燃焼効率向上のほか、医療用・家庭用・スポーツ用の酸素源としても有効活用出来る。医療用又は家庭用の酸素吸入器、バーナーなどの燃焼機器、エンジンなどの内燃機関・外燃機関の高効率化とNOxの減少などの用途にも適用出来る。更に、ダイオキシンを発生せずに処理する焼却装置も可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 酸素
2 窒素
3 回転磁界装置
4 永久磁石
5 N極
6 S極
7 磁力線
8 回転軸
9 非磁性体パイプ
10 ファン
11 モーター
12 非磁性体案内板
13 空気流
14 三相交流コイル
15 単相交流コイル
16 リニアモーター固定子コイル
17 非磁性体気体流路
18 非磁性体角筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石を使用して空気を構成する酸素と窒素の磁性の違いにより空気から酸素を濃縮する酸素濃縮装置において、三相交流コイル、単相交流コイル、リニアモーター固定子コイルの群の中から選択される一を用いた電磁石で構成される回転磁界装置と、永久磁石と回転軸とモーターからなり前記永久磁石のN極とS極の中間に前記回転軸を設け、前記回転軸に回転を与える前記モーターを設けた回転磁界装置の、少なくともどちらか一の回転磁界装置を、非磁性体気体流路の一端に近接設置したことを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項2】
請求項1に記載の酸素濃縮装置において、前記非磁性体気体流路にファンとモーターを加えて設けたことを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の酸素濃縮装置において、前記非磁性体気体流路が、非磁性体案内板、非磁性体パイプ、非磁性体円筒、非磁性体角筒、漏斗状非磁性体の群の中から選択される少なくとも一であることを特徴とする酸素濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−95658(P2013−95658A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242980(P2011−242980)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(390008095)
【Fターム(参考)】