説明

酸素燃焼室

本発明は、少なくとも1つの燃料噴射手段(2)と、少なくとも1つの酸化剤噴射手段(3)と、少なくとも1つの燃焼煙除去手段(5)とを有する包囲体(1)を備え、包囲体(1)が、任意の断面を備えた閉曲管の形状を有し、燃料噴射手段(2)と酸化剤噴射手段(3)とが、包囲体(1)の中心(C)に対する、酸化剤噴射位置および燃料噴射位置のそれぞれによって形成される角度θであって、10°から90°までの範囲にある角度θだけ互いにずれるように、包囲体上に配置され、酸化剤噴射手段が、酸素濃度が90%を超える気体である酸化剤を噴射する手段である、燃焼室に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素燃焼の分野に関し、特に、その形状により煙の自然な再循環が可能となる燃焼装置であって、その形状が液体または気体供給物の酸素燃焼に関連した制約に適合している燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の経済活動と増加するエネルギー需要とが、化石燃料の使用を通じて、大気へのCO、つまり温室効果ガスの排出を増加させている。これらのCO排出が、観測されている気候変動、特に地球温暖化の原因であるとみられている。
【0003】
これらの排出を削減する解決策は、排出されるCOを捕らえて、隔離することにある。しかしながら、投資という点での関連追加コストと、装置の全体効率に対する不利益とは、さしあたり法外なものになる。今までに、経済的に納得のいく解決策は与えられていない。現在、既存の技術、特に捕捉技術を改善するための研究が行われている。
【0004】
現在、研究中の主なCO捕捉技術は、以下の通りである。
−燃焼後捕捉、すなわち、空気燃焼煙中に存在するCOの直接捕捉。この捕捉には、専用のCO分離ユニットの追加が必要となる。
−燃焼前捕捉、すなわち、合成ガスへの変換の第1段階後での供給時におけるCOの事前捕捉。この変換はHリッチガスを生成し、そのガスは、炭素含有合成物からいったん分離されると、燃焼中にCOを放出しない。
−酸素燃焼捕捉:燃焼段階において空気の代わりに酸素が用いられる。したがって、COの含有量が多い煙は、燃焼装置の出口に存在し、その後、CO分離ユニットでの処理を必要することなく直接隔離可能となる。その一方で、専用の酸素生成ユニットが必要となる。
【0005】
本発明は、最後に述べた酸素燃焼技術に関連するものである。実際、この技術によって、以下のような多くの利点がもたらされる。
−(純粋なOの場合、および供給物中に窒素化合物が存在しない場合に)生成される窒素酸化物(NO)の減少。
−等出力条件下で発生する煙量の減少。
−(燃焼サイクルを通じた、窒素の「無駄な」加熱に相当する)熱損失量の減少。
−窒素酸化物(NO)や硫黄酸化物(SO)などの、発生しうる汚染物質の濃度が高くなるにつれて、分離がより容易になる。
−ほとんどの成分を圧縮によって凝縮することができ、その凝縮熱を処理体系全体で有利に使用することができる。
【0006】
依然として、酸素燃焼のために解決すべき多くの問題は存在している。実際、酸素(O)中での燃焼によって、火炎温度は著しく高くなり、それは局所的には2500℃に達す場合もある。一般に、O雰囲気下では、断熱構造内での空気で得られる温度(単位は℃)が30%から45%の範囲で温度上昇することは、一般的な燃料で見られることである。したがって、このような温度が、どのような合金や耐火部材を使用しても通常設計の小型の燃焼室内では「管理可能」とならないため、この制約によって、特定の技術が必要とされる。
【0007】
このような高温点を減少させるための優先される解決策の1つは、改良された燃焼ガス再循環を実施して、それらを希釈し、温度プロファイルをその平均値の周りで均一にすることにある。したがって、不活性ガスによるこのような希釈と、このスワール(当業者はスワール強度を定量化するためにエントレインメント(飛沫同伴)率と呼ぶ)とによって、燃焼室の壁および内部の少なくとも一方に局所的な損傷を与える原因となる高温点の形成が回避される。再循環は、NO形成と熱効率とに関連する理由のために本質的に必要である。再循環の必要性は、酸素燃焼に対するよりも、空気中での燃焼に対して制約が弱いことに注意されたい。
【0008】
燃焼と温度との均一性に作用できるだけでなく、燃焼室を冷却することで平均温度に作用して、例えば、供給物を良好に燃焼させながら汚染物質の形成を最小限に抑えることができる温度範囲にすることが必要である。
【0009】
いくつかの特許では、酸素燃焼によって発生するこれらの問題を解決することを試みる装置が提供されている。
【0010】
特に言及できるのは、特許文献1である。この特許には、再循環の使用に焦点を合わせた特定のバーナーが記載されている。それは、バーナーと内部(管、壁など)との間に広い空間を備えた大気炉などの通常の燃焼室で使用可能な低NOバーナーである。そのため、この装置には特別なバーナーが必要となる。燃料と酸化剤とが同時に噴射され、それにより再循環が乱されて、燃焼室の容積全体にわたって分布する燃焼を行うことができなくなる。
【0011】
特許文献2は、楕円形状に基づく装置に関するものであり、その装置によって、煙のループ状再循環が促進されて反応物質は希釈されるが、非常に良好な燃焼の均一化はもたらされない。燃焼室を貫通して延びる管によって交換が達成されるが、それによって再循環が乱される場合がある。
【0012】
特許文献3には、燃焼を均一にするために燃焼ガスのループ状再循環を可能にするタービンバーナーが記載されている。この装置では、気体はループ内だけを循環するが、それによって均一な再循環はできなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願出願第2005/0239005号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/065848号
【特許文献3】米国特許第7318317号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の目的は、酸素燃焼に特有の制約を回避可能にする、具体的で独自な構成を提供することで、従来技術の1つ以上の欠点を克服することである。そのために、燃焼室は、煙の自然な再循環を可能にする形状であって、酸素燃焼の制約に適合した形状を有している。さらに、反応物質の再循環と希釈とが行われるように、噴射がさまざまな時点で実施され、それにより、専用のバーナーを使用することなく燃焼室の容積全体にわたって分布する燃焼を実現することができる。
【0015】
したがって、本発明は、少なくとも1つの燃料噴射手段と、少なくとも1つの酸化剤噴射手段と、少なくとも1つの燃焼煙除去手段とを有する包囲体を備え、包囲体が、任意の断面を備えた閉曲管の形状を有し、燃料噴射手段と酸化剤噴射手段とが、包囲体の中心に対する、酸化剤噴射位置および燃料噴射位置のそれぞれによって形成される角度θであって、10°から90°までの範囲にある角度θだけ互いにずれるように、包囲体上に配置され、酸化剤噴射手段が、酸素濃度が90%を超える気体である酸化剤を噴射する手段である、燃焼室を提供する。
【0016】
本発明の一実施態様によれば、包囲体は、閉じた円状に曲げられた管形状を有している。
【0017】
本発明の別の実施態様では、包囲体は、楕円状に曲げられた管形状を有している。
【0018】
本発明の一実施態様によれば、管の断面は、円形、楕円形、または多角形である。
【0019】
本発明の一実施態様では、管の断面は三角形である。
【0020】
本発明の燃焼室では、除去手段は、小角での除去を実現するように、包囲体によって形成された円の内側に配置されている。
【0021】
本発明の一実施態様によれば、燃料噴射手段は、包囲体の外側で包囲体の放射状面内に配置された少なくとも1つの噴射パイプから構成されている。
【0022】
本発明の一実施態様では、燃料噴射パイプは、そのパイプの長手方向軸と、燃料噴射点を通過し、その噴射点の後ろでガス循環の軌跡に接する線とによって形成される傾斜角度αであって、5°から80°までの範囲にある傾斜角度αを形成している。
【0023】
本発明の一実施態様によれば、燃料噴射手段は、包囲体に対向配置された少なくとも2つの小角パイプであって、第1のパイプによって包囲体の上部で噴射を行うことができ、第2のパイプによって包囲体の下部で噴射を行うことができる、少なくとも2つの小角パイプから構成されている。
【0024】
本発明の一実施態様では、燃料噴射パイプは、そのパイプの長手方向軸と包囲体の放射状面とに対して定義される傾斜角度α’であって、5°から80°までの範囲にある傾斜角度α’を形成している。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、酸化剤噴射手段は、包囲体の外側で包囲体の放射状面内に配置された少なくとも1つの噴射パイプから構成されている。
【0026】
本発明の一実施態様では、酸化剤噴射パイプは、そのパイプの長手方向軸と、燃料噴射点を通過し、その噴射点の後ろでガス循環の軌跡に接する線(21)とによって形成される傾斜角度βであって、5°から80°までの範囲にある傾斜角度βを形成している。
【0027】
本発明の一実施態様によれば、酸化剤噴射手段は、包囲体に対向配置された少なくとも2つの小角パイプであって、第1のパイプによって包囲体の上部で噴射を行うことができ、第2のパイプによって包囲体の下部で噴射を行うことができる、少なくとも2つの小角パイプから構成されている。
【0028】
本発明の一実施態様では、酸化剤噴射パイプが、そのパイプの長手方向軸と包囲体の放射状面とに対して定義される傾斜角度β’であって、5°から80°までの範囲にある傾斜角度β’を形成している。
【0029】
本発明の燃焼室では、除去手段は、その除去手段の長手方向軸と、包囲体によって形成され、煙の循環方向を向いた円の半径とに対して定義される角度γを形成している。
【0030】
本発明の一実施態様によれば、角度γは、20°から85°までの範囲にある。
【0031】
本発明の一実施態様によれば、管は、寸法が100mmから2000mmまでの範囲にある断面を有する。
【0032】
本発明の他の特徴と利点は、例として示す添付の図面を参照しながら行う以下の説明によって明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の装置の変形例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の装置の変形例を示す概略側面図である。
【図3】本発明の装置の図2の変形例を示す概略縦断面図である。
【図4】本発明の装置の第2の変形例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に示すように、本発明の燃焼室は、閉じた円または閉じた楕円を形成する曲管形状を有する包囲体(1)を備えている。管と呼ばれるものは、任意の断面を備えた、細長い形状で中空の構成部材である。管の断面は、特に、円形(9)、楕円形(図2および図3)、または多角形、好ましくは三角形(9’)(図4)であってよく、しかしながら、正方形つまり直角であってもよい。包囲体を形成する曲管の断面が円形(9)のときは、環状燃焼室と呼ばれる。
【0035】
包囲体は、任意の生成表面をその重心の軌跡を表す閉曲線の方向に移動させることで生成される中空容積として規定することもできる。
【0036】
包囲体を形成する管の断面の寸法d(例えば、直径または辺)は、100mmから2000mmまでの範囲にある。
【0037】
燃焼室の壁は、Haynes 230(商品名)、Kanthal APM(商品名)、MA956(商品名)、またはHR120(商品名)などの特定の合金、あるいは同様の種類の他の材料で作られている。外部については、反応炉を外側から冷却することができる材料によって、これらの壁を被覆することができる。したがって、燃焼室の出口温度が調整され、壁は燃焼室内に発生した高温点から保護される。燃焼室を専用の装置によって冷却しない場合には、燃焼室内部の耐火性化を考慮することもできる。耐火性化に使用される材料としては、例えば、セラミックや耐火セメント、あるいは同様の種類の他の材料がある。
【0038】
燃焼室は、燃料噴射手段(2)と酸化剤噴射手段とを有している。
【0039】
燃料が液体の場合、燃料噴射手段はノズルであり、このノズルは、燃料と噴射流体との混合を確実に行う内部を備えていることが有利である。
【0040】
燃料が例えば天然ガスのような気体の場合、噴射ノズルは、好ましくは100m/sを超える速度を達成可能な高速ノズルであり、例えば、WS社によって使用されるRegeMAT(商品名)タイプの市販の噴射ノズルである。
【0041】
もちろん本発明は、これら2種類の燃料に限定されるものではなく、固体燃料の使用も含まれる。この場合、噴射ノズルを排出弁によって構成することができ、燃料は、蒸気などの流体によって運ばれる。
【0042】
燃焼室は、酸化剤噴射手段(3)を有し、酸化剤は、本発明の範囲内では、通常90%を超える非常に高い酸素濃度の気体か、純酸素かのいずれかである。
【0043】
このような酸化剤噴射手段は、好ましくは筒状でかつ耐火性材料で作られた噴射ノズルであってよい。
【0044】
酸化剤の噴射は、再利用煙などの任意の手段によって補助することができ、それにより、酸素の噴射による濃度の不均一性を制限しながら酸化剤噴射速度を速める利点がもたらされる。
【0045】
蒸気によって酸化剤の噴射を補助することも可能であり、それにより、例えば煤煙などの未燃の固形物の形成を減少させることができる。
【0046】
通常、酸化剤は高い推進力で噴射され、それにより、高速な煙の循環を維持することができる。
【0047】
いずれにしても、噴射手段は、以後の説明では、パイプ、つまり円形、楕円形、または多角形の管であると理解される。
【0048】
本発明による装置の特徴の1つは、噴射と除去とが行われ、高温点の発生が制限されることである。したがって、燃料と酸化剤とは、包囲体の外側軸上に独立して(したがって予め混合されずに)噴射され、噴射を可能にするパイプの入射角度は、壁に対する高温ガスの衝撃を回避するように最適化されている。
【0049】
噴射手段の位置決めには、パイプ位置の制約を考慮することも必要である。
【0050】
図1に示す第1の変形例による燃料の噴射のために、噴射ノズルは、包囲体によって形成された円の外側、つまり包囲体の放射状面(P)内に配置されている。角度αによって、パイプの傾斜が特徴付けられ、この角度は、パイプの長手方向軸(20)と、噴射点を通過し、噴射点の後ろでガス循環軌跡(4)の中央環状軸(A)に接する線(21)とによって形成される角度として定義されていることが好ましい。
【0051】
しかしながら、本発明の燃焼室を製作するには、いくつかの構成部材を溶接することが必要であり、したがって、場合によっては、正確に外側で噴射することができなくなる。そのため、本発明の第2の変形例によれば、噴射手段は、図2、図3、および図4に示すように、放射状面(P)に関して対向し、対になった小角パイプ(2’,2”)からなる装置で構成されている。これらのパイプは、管の断面を考慮して、包囲体の上部および下部で噴射が行えるように配置されている。これらのパイプの角度α’は、パイプの長手方向軸(20’,20”)と包囲体(1)の放射状面(P)とに対して定義されている。
【0052】
これらの角度α,α’は、構造上の制限と噴霧角度(8)とによって制約されている。角度αは、エントレインメントを補償するため、および包囲体の中央への噴射を維持するために必要な傾斜に相当する。この角度は、5°から80°までの範囲にあって、15°から50°までの範囲にあることが好ましい。角度α’は、5°から80°までの範囲にある。
【0053】
ノズルは流量に対する柔軟性が非常に低く、始動空気には噴射の幅広い振幅が要求されるため、少なくとも1つの噴射点が指定されるが、連続したいくつかの噴射点を要求することができる。したがって、使用されるパイプの数は、ノズルあたりの流量を大幅に変更することなく流量に対する柔軟性を増加させるように調整される。パイプの数は、1個から15個までの範囲にあって、2個から10個までの範囲にあることが好ましい。その上、この装置によって燃料分布が改善され、それにより、燃焼性を改善するとともに、高温点の形成を回避することができる。
【0054】
酸化剤と、特に酸素(または始動空気)との噴射のために、使用されるパイプ(3)は、包囲体(1)によって形成された円の外側、つまり包囲体の放射状面内に配置され、包囲体に沿った混合後の循環が確実に行われるように、角度βに沿って傾斜している。この角度によって、パイプの傾斜が特徴付けられ、この角度は、パイプの長手方向軸(30)と、噴射点を通過し、噴射点の後ろでガス循環軌跡(4)の中央環状軸(A)に接する線(31)とによって形成される角度として定義されている。この角度は、5°から80°までの範囲にあって、15°から45°までの範囲にあることが好ましい。セッティングに問題がある場合、燃料噴射の場合と同様に、対向配置された2つのパイプによる噴射を用いることができる。これらのパイプは、包囲体の上部および下部で噴射が行えるように配置されている。この場合、パイプは、パイプの長手方向軸と包囲体(1)の放射状面とに対して定義された角度β’(図示せず)をそれぞれ形成している。この角度は、誘起されるエントレインメントが最大になるように極小である必要があり、5°から80°までの範囲にある。
【0055】
包囲体の中心に対する燃料と酸化剤との各噴射位置によって形成される角度θ、つまり燃料および酸化剤の噴射点と包囲体の中心(C)とを通過する2つの線(22,32)によって形成される角度は、10°から150°までの範囲にあって、好ましくは15°から90°までの範囲になければならない。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、動作時の燃料/酸化剤の流量の比と、化学量論的条件下での燃料/酸化剤の流量の比との商として定義されるリッチネスは、0.5から3までの範囲にある。
【0057】
燃焼室は、燃焼煙を除去する手段(5)をさらに有している。この除去手段は、再循環ガスの循環(A)を乱さない位置に配置されている。したがって、除去手段(5)は、包囲体(1)によって形成された円の内側に配置され、小角での除去を実現している。そのため、除去パイプの長手方向軸(51)は、除去手段の排出点に描かれた、円の半径(r)と角度γをなしている。この除去パイプは、煙の循環方向を向いており、角度γは、20°から85°までの範囲にあることが有利である。したがって、除去の軌跡は、煙の循環(4)からつながっている。除去パイプは、10mmから250mmまでの範囲の直径Sを有している。
【0058】
燃焼室の動作中、高温の燃焼煙の大きな流れは、環状体のループ内を永久的に循環および再循環する。この場合は、(酸素燃焼のために考慮されていてもよい)外部再利用技術と対照的に、内部再利用と呼ばれる。煙のこの大きな流れは、燃焼室内での高い噴射速度によって維持されている。その結果、酸化剤および燃料が燃焼室に進入すると、それらの噴流は、強いスワールを受け、煙によって大きく希釈される。スワールにより、できるだけ希釈され均一な条件下で反応物質との接触が行われるだけでなく、燃焼室全体にわたって反応領域が広げられる。これらの煙は、反応物質を自動点火させるほど十分に高温である。
【0059】
まず、燃料が噴射され、高温の煙の中でスワールされる。これらの煙は、わずかな割合の残留酸素を含んでいる。そのため、燃料噴射点から酸化剤(空気またはO)噴射までの混合物の経路によって、気体を混合し、希釈し、そして部分的に反応させることができる。
【0060】
それから、酸化剤は高い推進力で噴射される。この推進力により、煙の高速循環とさらなるスワールとを維持することができる。燃焼は、ループを通じた移動の間ずっと継続する。
【0061】
これらの煙の一部が、煙の流れが乱されない領域で取り出される。
【0062】
煙の温度と組成とは、包囲体全体で実質的に均一である。この温度は、公称動作条件下では、600℃から2000℃までの範囲、好ましくは800℃から1500℃までの範囲にあり、これにより、起こり得る寄生空気流入または酸化剤中の窒素に関連したNO形成を制限することができる。
【0063】
空気/Oの高い噴射速度は、20m/sから500m/sまでの範囲、好ましくは100m/sから250m/sまでの範囲にあり、燃焼室内に存在する気体の高いエントレインメントを維持する。この高速再循環が、その存在している種のスワールと希釈とを促進し、それにより、燃焼室の容積内で、できるだけ均一に分布した燃焼を実現することができる。
【0064】
このような種類の動作の結果は、以下の通りである。すなわち、
−燃焼が2段階で行われ、
−噴射点で強いスワールが得られ、
−高温の煙の高い循環速度によって、燃焼が、環状体の容積全体にわたって広がるとともに維持される。
【0065】
こうして、高温点の形成を防止するとともに、燃焼室全体にわたって容積燃焼を達成させる装置が実現される。
【0066】
さらに、燃焼は、包囲体全体にわたって分布し、噴射点の位置で炎の形態として集中していないため、温度は決して2000℃を超えることはなく、高温点は環状体の中心に位置している。外側からの壁の冷却と、高温ガスの直接の衝撃が存在しないことと、燃焼の均一性とを組み合わせた効果によって、壁の温度を1000℃以下にすることができる。
【0067】
この構成(包囲体の形状、独立した噴射、中央での除去)により、燃焼煙の再循環と燃焼室の容積全体にわたる均一な燃焼とが促進される。
【0068】
その上、想像される概念は、特に、低出力に適していて興味深い。純酸素の使用により、低出力の通常形状では、一般に低すぎるエントレインメントが引き起こされるが、実際、この出力範囲では、本発明による燃焼室の形状により、小さな容積にわたって良好な再循環を確実に行うことができる。このガス再循環は、再循環ガス流量に対する出口でのガス流量の比を最小にする遠心力に起因するものである。
【0069】
それ以外に、高温の煙の再循環による予備加熱によって、動作の柔軟性を広げるとともに、例えば、広いリッチネス範囲をカバーすることができる。
【0070】
さらに、小さな形状により、高い表面積と体積との比が、燃焼室の可能な冷却と、それによる燃焼室の平均温度の制御を通じた燃焼性制御とを円滑にする。
【0071】
燃焼を停止させずに(空気燃焼室とは異なり)比較的低い温度まで炉の温度を低下させることができることで、適切なリッチネスにより、部分的な酸化や、メタノールなどの酸素合成物または水素の生成などの他の用途と併せて検討することができる。
【0072】
本発明が、上述の詳細な説明に限定されるべきものではなく、本発明の応用分野から逸脱することなく他の多くの具体的な形態において実施可能であることは、当業者にとっては明らかである。したがって、本実施形態は、実例と考えるべきであるが、添付した特許請求の範囲によって規定される範囲を逸脱することなく修正することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの燃料噴射手段(2)と、少なくとも1つの酸化剤噴射手段(3)と、少なくとも1つの燃焼煙除去手段(5)とを有する包囲体(1)を備え、該包囲体(1)が、任意の断面を備えた閉曲管の形状を有し、前記燃料噴射手段(2)と前記酸化剤噴射手段(3)とが、前記包囲体(1)の中心(C)に対する、酸化剤噴射位置および燃料噴射位置のそれぞれによって形成される角度θであって、10°から90°までの範囲にある角度θだけ互いにずれるように、前記包囲体(1)上に配置され、前記酸化剤噴射手段が、酸素濃度が90%を超える気体である酸化剤を噴射する手段である、燃焼室。
【請求項2】
前記包囲体(1)が、閉じた円状に曲げられた管形状を有する、請求項1に記載の燃焼室。
【請求項3】
前記包囲体(1)が、楕円状に曲げられた管形状を有する、請求項1に記載の燃焼室。
【請求項4】
前記管の前記断面が、円形(9)、楕円形、または多角形である、請求項1から3のいずれか1項に記載の燃焼室。
【請求項5】
前記管の前記断面が三角形(9’)である、請求項1から4のいずれか1項に記載の燃焼室。
【請求項6】
前記除去手段(5)が、小角での除去を実現するように、前記包囲体(1)によって形成された円の内側に配置されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の燃焼室。
【請求項7】
前記燃料噴射手段が、前記包囲体(1)の外側で該包囲体の放射状面内に配置された少なくとも1つの噴射パイプ(2)から構成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の燃焼室。
【請求項8】
前記燃料噴射パイプが、該パイプの長手方向軸(20)と、燃料噴射点を通過し、該噴射点の後ろでガス循環軌跡(4)の中央環状軸(A)に接する線(21)とによって形成される傾斜角度αであって、5°から80°までの範囲にある傾斜角度αを形成している、請求項7に記載の燃焼室。
【請求項9】
前記燃料噴射手段が、前記包囲体(1)に対向配置された少なくとも2つの小角パイプ(2、2’)であって、第1のパイプによって前記包囲体(1)の上部で噴射を行うことができ、第2のパイプによって前記包囲体(1)の下部で噴射を行うことができる、少なくとも2つの小角パイプ(2、2’)から構成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の燃焼室。
【請求項10】
前記燃料噴射パイプが、該パイプの長手方向軸(20’,20”)と前記包囲体(1)の放射状面とに対して定義される傾斜角度α’であって、5°から80°までの範囲にある傾斜角度α’を形成している、請求項9に記載の燃焼室。
【請求項11】
前記酸化剤噴射手段が、前記包囲体(1)の外側で該包囲体の放射状面内に配置された少なくとも1つの噴射パイプ(3)から構成されている、請求項1から10のいずれか1項に記載の燃焼室。
【請求項12】
前記酸化剤噴射パイプが、該パイプの長手方向軸(30)と、前記燃料噴射点を通過し、該噴射点の後ろでガス循環軌跡(4)の中央環状軸(A)に接する線(21)とによって形成される傾斜角度βであって、5°から80°までの範囲にある傾斜角度βを形成している、請求項11に記載の燃焼室。
【請求項13】
前記酸化剤噴射手段が、前記包囲体(1)に対向配置された少なくとも2つの小角パイプであって、第1のパイプによって前記包囲体(1)の上部で噴射を行うことができ、第2のパイプによって前記包囲体(1)の下部で噴射を行うことができる、少なくとも2つの小角パイプから構成されている、請求項1から10のいずれか1項に記載の燃焼室。
【請求項14】
前記酸化剤噴射パイプが、該パイプの長手方向軸(20’,20”)と前記包囲体(1)の放射状面とに対して定義される傾斜角度β’であって、5°から80°までの範囲にある傾斜角度β’を形成している、請求項13に記載の燃焼室。
【請求項15】
前記除去手段が、該除去手段の長手方向軸と、前記包囲体によって形成され、前記煙の循環方向(A)を向いた円の半径(r)とに対して定義される角度γを形成している、請求項1から14のいずれか1項に記載の燃焼室。
【請求項16】
前記角度γが、20°から85°までの範囲にある、請求項15に記載の燃焼室。
【請求項17】
前記管は、寸法(d)が100mmから2000mmまでの範囲にある断面を有する、請求項1から16のいずれか1項に記載の燃焼室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−530690(P2011−530690A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522534(P2011−522534)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000875
【国際公開番号】WO2010/018315
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】