説明

酸素還元のための触媒

本発明は、新規な硫化ルテニウム触媒及び工業用電解槽における酸素の還元のためのこれを取り入れたガス拡散電極に関する。本触媒は腐食に対して高度に耐性があり、従って酸素−減極水性塩酸電気分解において使用するのに特に適しているという結果になる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
水性HCl溶液の電気分解は、高価な塩素ガスの周知の回収方法である。水性塩酸は、特に塩素を反応物として利用する化学プラントにおける豊富な化学的副産物であり、この場合には、電解槽のアノード区画室において発生する塩素を化学プラントへの原料として再循環することができる。関連するエネルギー消費の低減という理由から、標準的な水素発生カソードを酸素消費ガス拡散電極で置き換える場合に、電気分解は非常に魅力的になる。これに関連して、ガス拡散電極が成功裏に作動する能力は、触媒の性質及び性能に、並びにガス拡散電極の構造にも大きく依存する。
【0002】
白金は一般に、広範囲の条件での酸素の電解還元のための最も有効な触媒として認められている。白金に基づく触媒を有するガス拡散電極の活性化は、当分野において周知であり、燃料電池及び多くの種類の電解槽において広範な用途に供される。しかしながら、水性HClの電気分解の場合、カソード触媒としての白金の使用に対して幾つかの重大な欠点が提起され、これは、塩化物イオン及び溶存塩素を含む液体電解液と少なくとも部分的に接触するガス拡散カソードの場合には避けられないものである。第1に、白金は、酸素還元に対するその活性にマイナスに影響する塩化物イオンの毒作用を受けやすい。毒作用の第2の源は、大部分の場合、電気分解を受ける副産物塩酸中に溶解している汚染物種、特に有機種によって生じる。さらに重要なことには、塩酸及び溶存塩素ガスを組み合わせた錯体形成作用は、白金金属を可溶性塩に変え、これは溶解除去され、この材料を、ガス拡散電極において使用するのに不適切なものにする。その上、電解槽の定期的な停止の間中非常に慎重な予防措置を講じなければならず、さもなければ、カソード電位の突然の変化は、高度に攻撃的な化学的環境と合わせて、かなりの量の触媒の溶解及び残存している部分の部分不活性化を引き起こす。電解槽の計画的停止のために適合させた手順を追加のコストに備えて準備することはできるが、電気回路網における電力不足のような予測できない原因による突然の制御されない停止の場合にはほとんどまたは全くなすすべがない。
【0003】
こうした問題は、幾つかのロジウムに基づく触媒の開示によって部分的に軽減されており、この触媒は、酸素還元反応に対して白金よりも活性が少ないことが判明したが、系中に存在する塩化物イオンによってより少なく影響され、従って、ガス拡散電極中に取り入れられた時に作動電圧の点で許容可能以上の結果を与える。特に、米国特許第5,958,197号において開示されているロジウム金属/酸化ロジウム触媒は、溶存塩素及び酸素の存在下で塩酸環境に対する耐性がかなりあることが判明したが、その耐食性形態を完全に発達させるために面倒な活性化手順を必要とする。
【0004】
米国特許第6,149,782号は、硫化ロジウムに基づくさらに耐性がある触媒を開示し、これは、いかなる活性化工程も必要とせず、酸原料中の有機汚染物に対して敏感でないという追加の利点を示す。
【0005】
こうした触媒は、水性塩酸減極電気分解に関連する厳しい環境において活性及び化学的耐性の両方の点で非常に良好な性能を示すが、それらの価格及び利用可能性は、有効な工業的利用の点で大きな問題である。当分野における専門家には周知のように、ロジウムは、今までのところ貴金属のうちで最も高価であり、その価格はオスミウムのものさえも超え、例えば、ルテニウム及びイリジウムのものを1桁超え;減極水性塩酸電気分解は高い市場需要を有する技術であるが、それらの標準の触媒の価格は成功裏に商品化することを可能にするには高すぎる。
【0006】
酸性媒質における酸素還元のために有用である可能性がある妥当な価格の貴金属の中で、ルテニウムは明らかな選択であると思われ、その活性はロジウムのものと同等であり、その価格は平均して約20倍低い。RuClから水性沈殿(aqueous precipitation)によって製造されたRuOは周知の触媒であり;あいにく、塩素飽和塩酸媒質中のその化学的安定性(熱的安定化の前の)は不満足であり、触媒は比較的に短時間で溶解除去される。材料が熱的安定化されない限り、他の硫化物も同じ運命をたどるようである。近頃、水性沈殿によって製造された硫化ロジウムが良好な代替物を提供している(米国特許第6,149,782号を参照されたい)。同様に得られた硫化ルテニウムは、塩素飽和塩酸環境においてほとんど安定ではないことが判明した。酸素還元のための唯一の同様の触媒であり、従来技術において開示されているシェブレル相タイプ触媒、すなわちMoRuS/Cもまた、高温及び酸濃度に対して不安定である(J. Chem. Soc., Faraday Trans., 1996, 92, 4311を参照されたい)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術の欠点を解決する、溶存塩素及び所望により溶存酸素の存在下で塩酸環境において化学的に安定な、酸素還元のための触媒を提供することにある。
【0008】
別の態様の下で、本発明の目的は、減極塩酸電解セルにおいて使用するための酸素還元のための触媒を取り入れたガス拡散電極を提供することにある。
【0009】
さらなる態様の下で、本発明の目的は、従来技術の欠点を解決する、溶存塩素及び所望により溶存酸素の存在下で塩酸環境において化学的に安定な、酸素還元のための触媒の製造方法、並びにこれを取り入れたガス拡散電極の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の上述した目的及び利点並びに他の目的及び利点は、以下の詳細な説明から明瞭になろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様の下で、本発明の触媒は化学的に安定な形態の担持型硫化ルテニウムからなり;本発明の触媒は、減極塩酸電気分解のためのガス拡散カソードにおける使用に関するので、以下の説明において、“化学的に安定な形態”とは、塩酸環境においてまた溶存塩素及び所望により溶存酸素の存在下で化学的に安定な形態を意図する。
【0012】
第2の態様の下で、本発明のガス拡散電極は、所望により疎水性バインダーと混合した化学的に安定な形態の担持型硫化ルテニウム触媒でコーティングした伝導性ウェブ、好ましくは炭素の布(carbon cloth)を含む。
【0013】
第3の態様の下で、本発明の触媒の製造方法は、伝導性担体を、ルテニウム及び所望により別の遷移金属の前駆体を用いた初期湿式含浸に供することと、含浸済み担体を乾燥することと、得られた生成物を硫化水素を含む雰囲気下で処理することと、を含む。
【0014】
第4の態様の下で、本発明の触媒の製造方法は、担持型酸化ルテニウム化合物、所望により炭素担持型RuOを、硫化水素を含む雰囲気中で硫化反応に供することを含む。
【0015】
第5の態様の下で、本発明のガス拡散電極の製造方法は、導電性ウェブを、所望により疎水性バインダーに混合した本発明の触媒でコーティングすることと、所望によりコーティング済みウェブを焼結することとを含む。
【0016】
一つの好適な具体例においては、本発明の触媒は、一般式Ruの二元化合物である。より好適な具体例においては、本発明の触媒は、一般式RuS[式中、Mは一般的な遷移金属である。]の三元化合物である。別の好適な具体例においては、本発明の触媒は、ルテニウム及び1を超える他の一般的な遷移金属の混合硫化物である。さらに好適な具体例においては、本発明の触媒は、ルテニウム並びにコバルト、ニッケル、レニウム、クロム、モリブデン及びイリジウムの間で選択した別の遷移金属の三元硫化物である。従来ルテニウム前駆体の水溶液と硫化水素とから生じるか、または、ルテニウム前駆体の有機溶液と元素状硫黄とから生じる湿式化学によって得られた以前に当分野において周知の硫化ルテニウム触媒は、溶存塩素を含む塩酸中の化学的安定性の点で不満足な性能を示すが、本願発明者らは驚くべきことに、気体−固体反応によって得られた硫化ルテニウム触媒は同じ環境において安定であり、同時に満足な電気触媒活性を保持することを見い出した。一つの好適な具体例においては、本発明の触媒をガス拡散電極構造中に取り入れることは、触媒を伝導性不活性担体の例えばカーボンブラック表面に担持することによって促進される。この場合には、炭素担体は、高表面積カーボンブラックであり、例えば120m/gを超える表面積を有するカーボンブラックであることが好ましい。
【0017】
1好適な具体例においては、本発明の触媒は、化学的に安定な形態の一般式RuCoS[式中、Ru:Coの原子比は、好ましくは1:5と5:1との間に含まれ、より好ましくは約3:1、例えば2.8:1と3.2:1との間に含まれる。]のルテニウム及びコバルトの硫化物である。
【0018】
従来技術の硫化ルテニウム触媒は、米国特許第6,149,782号において開示されているように硫化ロジウムの製造のために使用するものと非常に良く似た手順に従って得られ、これはすなわち、所望により伝導性不活性担体の存在下で、通常塩化物であるルテニウム前駆体の水溶液中に硫化水素を散布することによる。沈殿物を次に通常乾燥し、熱処理する。しかしながら、このようにして得られたルテニウム触媒は、塩酸環境において、特に溶存塩素が存在する場合にほとんど安定ではない。本発明の硫化ルテニウム触媒は反対に、気体−固体反応によって得られ:伝導性不活性担体、好ましくは高表面積カーボンブラックは、前駆体の水溶液中に分散せずむしろこれを用いた初期湿式含浸に供される。このために、前駆体溶液が、2−プロパノール、または同等の好ましくは水混和性の揮発性溶媒を含むことは有用である。前駆体溶液を粉状担体表面に噴霧してよく、または溶液を吸収できるまで溶液を担体に徐々に加えてよい。担体の初期湿式含浸が完了したら、得られた含浸済み担体を好ましくは真空下、90℃を超える温度で注意深く乾燥しなければならない。この操作は通常数時間を必要とし;得られた乾燥した生成物を、最終的に、硫化水素を含む雰囲気下で、好ましくは流通反応器中で硫化反応に供する。
【0019】
別の好適な具体例においては、本発明の触媒を得るための出発物質は、担持型酸化ルテニウム、例えば当分野において周知の炭素担持型二酸化ルテニウムである。この担持型酸化ルテニウムを、前の場合におけるように、硫化水素を含む雰囲気下で、好ましくは流通反応器中で気体−固体硫化反応に供する。
【0020】
両方の場合に、硫化水素を好ましくは窒素または別の不活性キャリアを用いて希釈し;0.5と4との間に含まれるモル比を有する窒素/硫化水素混合物を好ましくは使用する。
【0021】
減極塩酸電気分解のためのカソードとして有用なガス拡散電極構造中に本発明の触媒を取り入れることは、当業者には周知のように幾つかの様式で成し遂げることができ;一つの好適な具体例においては、本発明のガス拡散電極は、伝導性ウェブ、例えば炭素の布を、所望により第1のポリマーバインダー、例えば疎水性バインダーと混合した本発明の触媒を含むペーストでコーティングすることによって得られる。バインダーとして、過フッ化バインダーの例えばPTFEを好ましくは使用するが、部分フッ化または非フッ化バインダーも使用できる。触媒/バインダー混合物を伝導性ウェブ表面に直接に施用して、いわゆる“流通形”ガス拡散電極を得ることができ;別の具体例においては、伝導性ウェブに予め伝導性フィラー(例えばカーボンブラック)及び第2のバインダーの混合物で片面または両面の表面にコーティングできる。第1及び第2のバインダーは場合によっては同じ材料としてよい。一旦触媒/バインダー混合物でコーティングしたら、ガス拡散電極を通常その使用の前に乾燥し;場合によっては、ガス拡散電極製造の分野において十分に確立された手順に従ってその使用の前に電極を焼結することも有利なことがある。にもかかわらず、本願発明者らは驚くべきことに、本発明の触媒をガス拡散電極構造に取り入れる場合、焼結工程を有利に省略してよいことを見い出した。本発明の触媒は、焼結されない場合にも非常に安定になるが、焼結を実施して、ガス拡散電極構造全体の長期安定性を改良してよい。この場合には、雰囲気温度から約100〜120℃への第1の勾配加熱を還元雰囲気(例えば、水素雰囲気)下で実施し、一方、通常300〜350℃の温度に達する最終熱処理をアルゴン下または他の不活性ガス下で達成する場合に、最良の結果が得られる。
【0022】
以下の実施例において、本発明を示すための幾つかの好適な具体例を説明する。しかしながら、本発明は、特定の具体例に限定されるものでないことは理解できるはずである。
【実施例】
【0023】
実施例1
約230m/gの表面積を有するカボットCorp./USA(Cabot Corp./USA)製の10gのバルカンXC−72(Vulcan XC-72)カーボンブラック粉末を、RuCl.3HO(37.8%のRu)及びCo(NO.6HO(20.2%のCo)前駆体塩の2−プロパノール溶液を用いた初期湿式含浸に供し;3:1(Ru:Co)の原子比を使用した。注いだ液体を完全に吸着できる限りは、溶液をカーボンブラック粉末に徐々に加えた。溶媒を真空オーブン中110℃で蒸発させ、一晩乾燥した。得られた生成物をその後流通反応器中で1時間、400℃、2:1のN及びHSの雰囲気下で硫化した。同じ雰囲気を維持しながら、気体−固体反応の完了後に試料を冷却した。カーボンブラック担持型RuCoS触媒が得られ、これはXRDデータによって確認された。
【0024】
実施例2
10gのバルカンXC−72粉末で実施例1の同じ手順を繰り返し、唯一の相違は、前駆体塩溶液は2−プロパノール中にRuCl.3HOのみを含み、コバルト前駆体は加えなかった。この結果、カーボンブラック担持型Ru触媒が得られ、これはXRDデータによって確認された。
【0025】
実施例3
pH5で炭素の存在下でRuCl溶液と酸性炭酸塩からの沈殿によって、または、炭素の存在下で亜硫酸Ru酸(HRu(SOOH)及び過酸化水素(H)を含む酸化反応によって製造されたRuO/Cは、当分野において周知の触媒である。本実施例の場合には、このタイプの触媒を、気体−固体反応によって本発明に従って安定な形態の硫化ルテニウムへと転換した。20gのバルカンXC−72カーボンブラック粉末を水溶液中に分散させ、これに20gのRuCl.1.5HOを加えた。酸化ルテニウム中間体を、6.7重量%の濃度のNaHCO溶液を徐々に加えることで沈殿させた。得られた生成物を乾燥し、それに続いて流通反応器中で2時間、400℃、2:1のN及びHSの雰囲気下で硫化した。同じ雰囲気を維持しながら、気体−固体反応の完了後に試料を冷却した。カーボンブラック担持型Ru触媒が得られ、これはXRDデータによって確認された。
【0026】
比較例1
ガス状HSを、微細に分散したバルカンXC−72カーボンブラック粉末を含むRuCl.3HOの水溶液中に散布した。得られた沈殿物を、650℃で2時間、アルゴン雰囲気下でか焼した。この結果、カーボンブラック担持型Ru触媒が得られ、これはXRDデータによって確認された。
【0027】
実施例4
実施例1、2及び3並びに比較例1の触媒に、塩酸電気分解の同じ化学的環境において、しかしはるかに厳しい温度条件において加速安定性試験を受けさせた。各触媒の試料を、最初に室温で、溶存塩素を有する水性HCl溶液からなる実験室HCl電解セルから得た100mlのアノード液中に浸漬させた。液に分散した触媒試料を含む容器を次に加熱し、沸点(約103℃)で20分間保持した。試験の完了後に、実施例1、2及び3の触媒を含む容器中の液は依然として無色であるが、比較例1の触媒を含む液は茶色に変わっていた。3つの溶液に関するそれに続く分析は、実施例1、2及び3から得た触媒を含む容器の場合極微量のルテニウムを示したが、比較例1の場合には、分析は多量のルテニウム浸出が起きたことを示した。
【0028】
実施例5
実施例1及び2の触媒をPTFE分散系に混合し、炭素の布の表面上の慣用の流通形ガス拡散電極構造中に取り入れた。PTFE/触媒ペーストを炭素の布に施用し、これを乾燥した後に、2つの電極の各々を切断して4つの部片にし、その中の3つを異なる焼結手順に供した。従って以下の試料が得られた。
【0029】
試料1a及び1b:RuCoS及びRu:それぞれH中最高110℃までにし、温度を30分間保持し、次にArに切り換え、最高335℃まで上昇させ、温度を15分間保持して焼結したもの。
【0030】
試料2a及び2b:RuCoS及びRu:それぞれAr中最高335℃までにし、温度を15分間保持して焼結したもの。
【0031】
試料3a及び3b:RuCoS及びRu:それぞれ空気中で最高335℃までにし、温度を15分間保持し、焼結したもの。
【0032】
試料4a及び4b:それぞれ未焼結のRuCoS及びRu
【0033】
8つの試料の全てを、減極塩酸電気分解の分野において通例のように、0.5〜0.8mg/cmのペルフルオロカーボンイオノマー溶液でコーティングした。8つのイオノマー・コーティング済み試料に、20分間HCl電解セルアノード液中で同じ安定性試験を受けさせ、同時に沸騰する電解液中に酸素を通気し、対応する溶液によって以下の色が示された:
試料1a:非常に淡い黄色
試料1b:無色
試料2a:暗黄色
試料2b:薄いオレンジ色
試料3a:鮮やかなオレンジ色
試料3b:暗いオレンジ色/茶色
試料4a:無色
試料4b:無色
こうした定性的なデータはその後、様々な溶液に関するXRF分析によるルテニウムの測定によって得られたものと一致することが見い出された。水素中、続いてアルゴン中で焼結した電極は、他の焼結手順と比較してはるかに安定であり、空気焼結が最悪の結果を与えた。にもかかわらず驚くべきことは、未焼結電極は、水素中で焼結したものと少なくとも同程度に安定であることが判明し、未焼結電極の安定性データは、ガス拡散電極構造中に取り入れる前の未加工の触媒のものと一致した点である。
【0034】
実施例6
試料1a、1b、2a、3a及び4aと同等の電極をサイズ50cmで製造し、米国特許第6,149,782号の教示に従った塩酸電気分解のための標準的なRhS電極(試料0)と比較した。このような電極を、イソシアナートプラントから得た副産物水性塩酸溶液を利用し、50cmの作用面積の実験室セル中の酸素消費カソードとして、標準的なアノードと組み合わせて試験した。全槽電圧を2つの異なる電流密度(すなわち3及び6kA/m)で記録し、対応する値を表1において報告する。
【0035】
【表1】

【0036】
試験した電極試料の全てが許容可能な触媒活性を示し、標準の硫化ロジウム電極(試料0)と比較して、小さなまたは無視できる電圧増大を生じた。
【0037】
上記の説明は本発明を限定するものと理解されるものではなく、本発明はその範囲から逸脱することなく様々な具体例に従って実施でき、その範囲は添付の請求の範囲によってのみ定義される。
【0038】
本出願の説明及び請求の範囲において、“含む(comprise)”という語は、他の要素または追加の成分の存在を除外するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶存塩素及び所望により溶存酸素の存在下で塩酸環境において化学的に安定な、硫化ルテニウムを含む酸素還元のための触媒。
【請求項2】
前記硫化ルテニウムは伝導性不活性担体表面に担持されていて、前記担体は、所望により、120g/mを超える表面積を有する炭素からなる、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記炭素はバルカンXC−72である、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記硫化物は、炭素表面に担持されたRuである、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
所望により塩化ルテニウムを含むルテニウムの前駆体塩を用いた前記炭素の初期湿式含浸と、溶媒を蒸発させることと、得られた生成物を、所望により不活性キャリヤガスを用いて希釈した硫化水素の雰囲気下で処理することとによって得られる、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
前記炭素表面への酸化ルテニウムの水性沈殿と、乾燥することと、得られた生成物を、所望により不活性キャリヤガスを用いて希釈した硫化水素の雰囲気下で処理することとによって得られる、請求項4に記載の触媒。
【請求項7】
前記硫化物は一般式RuSを有し、Mは遷移金属である、請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
前記金属MはNi、Re、Cr、Mo、Irからなる群から選択される、請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
前記硫化物は、炭素表面に担持されたRuCoSである、請求項1に記載の触媒。
【請求項10】
Ru:Coの原子比は、0.2〜5、好ましくは2.8〜3.2である、請求項9に記載の触媒。
【請求項11】
ルテニウム及び遷移金属Mの前駆体塩(所望により塩化物)を用いた前記炭素の初期湿式含浸と、溶媒を蒸発させることと、得られた生成物を、所望により不活性キャリヤガスを用いて希釈した硫化水素の雰囲気下で処理することとによって得られる、請求項7に記載の触媒。
【請求項12】
ルテニウム及びコバルトの前駆体塩を用いた前記炭素の初期湿式含浸と、溶媒を蒸発させることと、得られた生成物を、所望により不活性キャリヤガスを用いて希釈した硫化水素の雰囲気下で処理することとによって得られる、請求項9または10に記載の触媒。
【請求項13】
前記前駆体塩はRuCl及びCo(NO)のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の触媒。
【請求項14】
前記溶媒は2−プロパノールを含む、請求項11〜13のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項15】
前記溶媒の蒸発は、真空下、90℃を超える温度で実施される、請求項11〜13のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項16】
硫化水素の雰囲気下での前記処理は、流通反応器中で実施される、請求項11〜13のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項17】
硫化水素の雰囲気下での前記処理は、100℃を超え、好ましくは300〜500℃の温度で実施される、請求項11〜13のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項18】
硫化水素の雰囲気下での前記処理は、30分間を超え、好ましくは1時間〜4時間の時間継続される、請求項11〜13のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項19】
前記不活性キャリヤガスは窒素であり、前記窒素対前記硫化水素のモル比は0.5〜4である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項20】
伝導性ウェブを含むガス拡散電極であって、請求項1〜19のいずれか1項に記載の触媒が前記伝導性ウェブの少なくとも1つの面の表面に施用されている、ガス拡散電極。
【請求項21】
前記伝導性ウェブは炭素の布である、請求項20に記載のガス拡散電極。
【請求項22】
前記触媒は、所望により過フッ化された疎水性バインダーと混合されている、請求項20に記載のガス拡散電極。
【請求項23】
伝導性担体を、少なくとも1つのルテニウムの前駆体を含む溶液を用いた初期湿式含浸に供する工程と、含浸済み担体を乾燥する工程と、得られた生成物を、所望により不活性キャリヤガスを用いて希釈した硫化水素の雰囲気下で処理する工程と、を含む、酸素還元のための触媒の製造方法。
【請求項24】
前記溶液は遷移金属の前駆体も含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記遷移金属はCo、Ni、Re、Cr、Mo、Irからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記溶液はRuCl及びCo(NO)のうちの少なくとも1つを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記溶液中のRu:Coのモル比は、0.2〜5、好ましくは2.8〜3.2である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記溶液は2−プロパノールを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記乾燥は、真空下、90℃を超える温度で実施される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
水溶液中に分散させた伝導性担体表面に酸化ルテニウムを沈殿させる工程と、含浸済み担体を乾燥する工程と、得られた生成物を、所望により不活性キャリヤガスを用いて希釈した硫化水素の雰囲気下で処理する工程と、を含む、酸素還元のための触媒の製造方法。
【請求項31】
硫化水素の雰囲気下での前記処理は、流通反応器中で実施される、請求項23または30に記載の方法。
【請求項32】
硫化水素の雰囲気下での前記処理は、100℃を超え、好ましくは300〜500℃の温度で実施される、請求項23または30に記載の方法。
【請求項33】
硫化水素の雰囲気下での前記処理は、30分間を超え、好ましくは1時間〜4時間の時間継続される、請求項23または30に記載の方法。
【請求項34】
前記不活性キャリヤガスは窒素であり、前記窒素対前記硫化水素のモル比は0.5〜4である、請求項23または30に記載の方法。
【請求項35】
前記酸化ルテニウムは、ルテニウム化合物、所望によりRuClを含む水溶液と酸性炭酸ナトリウムとを反応させることによって、または亜硫酸ルテニウム酸と過酸化水素とを反応させることによって沈殿したRuOである、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記伝導性ウェブを、その少なくとも1つの面の表面に、所望により第1の疎水性バインダーと混合した前記触媒でコーティングすることを含む、請求項20〜22のいずれか1項に記載のガス拡散電極の製造方法。
【請求項37】
前記伝導性ウェブは炭素の布である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の疎水性バインダーは過フッ化される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記触媒で前記コーティングをする前に、前記伝導性ウェブは、その少なくとも1つの面の表面に、炭素粉末と第2の所望により過フッ化された疎水性バインダーとの混合物でコーティングされる、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
最終焼結工程をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記最終焼結工程は、水素雰囲気下で室温から中間温度まで加熱することと、それに続いて不活性雰囲気下で前記中間温度から最終温度まで加熱することとを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記中間温度は100〜120℃である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記最終温度は300〜350℃である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記不活性雰囲気はアルゴン雰囲気である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
減極塩酸電解セル中の酸素供給ガス拡散カソードとしての、請求項20〜22のいずれか1項に記載のガス拡散電極の使用。

【公表番号】特表2007−504950(P2007−504950A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529940(P2006−529940)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005761
【国際公開番号】WO2004/106591
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(500480609)デ・ノラ・エレートローディ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (8)
【Fターム(参考)】