説明

重ねられた機構を有する光学フィルムを製作するための方法及びシステム

光学フィルムを製作するために使用されるマスター工具を作製するための手法は、一連の基本構造を切削する工程を含む。修正機構は、基本構造と重ねられ、基本構造の形状の、急峻な非連続的変化を生成する。回折素子が、基本構造及び修正機構の一方又は両方に形成されてもよい。修正機構は、切削工具をx方向、z方向、又はx成分及びz成分の両方を有する軌道に沿って動かすことによって形成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修正機構を重ねられた基本構造を含む、マスター工具の製作に関し、マスター工具は、光学フィルムを含む、様々な種類の微細複製構成要素を製造するために使用される。
【背景技術】
【0002】
マスター工具は、研磨材、接着剤、摩擦制御、ミクロファスナー、及び光学的構成要素を含む、微細複製された構成要素の製造に使用される。例えば、マスター工具の機械加工によって形成される微細複製された構造は、光学フィルムに直接的又は間接的に転写され得る。マスター工具から転写された機構は、微細複製された光学的構造を形成し、これは、フィルムの光学的特性に影響する。このようなプロセスによって形成される光学フィルムは、様々な目的に使用されてもよく、視覚ディスプレイの特性を修正するために特に有用である。ディスプレイ装置は、輝度を向上し、欠陥を隠し、光拡散を向上し、コントラストを改善し、及び/又は他の望ましい効果を提供する、光学構造を有する、1つ又はいくつかの異なる種類の光学フィルムを使用し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
様々な種類の微細複製された構成要素を作製するために使用される、向上されたマスター工具を製造することができる、製作プロセス及びシステムに対する必要性が存在する。より具体的には、望ましいディスプレイの特性を向上すると同時に、ディスプレイの欠損の顕在化を低減させる、光学フィルムを製造するために使用される方法の必要性が存在する。本発明は、これら及びその他の要求を満たし、先行技術に勝る他の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のいくつかの実施形態は、基本構造に重ねられる複数の機構を有する、基本構造を有する光学フィルムを対象とする。各基本構造は、頂部を有し、各重ねられた機構は、その区域の下部基本構造の頂部を高くすることによって、下部基本構造の区域を修正する。修正機構の頂部の半径は、下部基本構造の頂部の半径とは異なってもよい。基本構造は、高さ及び/又はピッチが異なることがあり、これらの高さ及び/又はピッチの変化は、修正機構によって生成されるあらゆる高さ及び/又はピッチの変化とは別個である。
【0005】
本発明のある態様により、各機構によって修正される区域は、下部基本構造の傾斜又は形状の急峻な断絶部を伴う外辺部を有する。例えば、急峻な断絶部は、例えば、1マイクロメートル当たりの、約0.1°超、約0.2°超、又は約1°超のテーパ角若しくは傾斜における変化を含み得る。各修正機構は、下部基本構造の頂部を、例えば約0.5マイクロメートル〜約3マイクロメートル高くしてもよい。
【0006】
1つの実施では、基本構造は、約40°〜約150°の範囲の内角を有する鋭い先端の頂部を有する、線状の三角形のプリズムである。修正機構の区域における高くした頂部は、約3マイクロメートル〜約8マイクロメートルの範囲の半径を有し得る。
【0007】
様々な実施において、回折素子が、基本構造及び修正機構の一方又は両方に配置されてもよい。複数の追加的な機構が、基本構造の頂部を実質的に修正することなく、基本構造の側部を修正してもよい。基本構造を修正する機構は、基本構造の頂部〜谷部間距離の大部分、かつ基本構造の長さの半分未満に沿って、これを行い得る。
【0008】
別の実施形態は、1つ以上の基本光学構造と、基本構造に重ねられる複数の修正光学機構とを有する、光学フィルムを対象とする。各修正機構は、下部基本構造の頂部を高くする。修正機構の区域の頂部の半径は、下部基本構造の頂部の半径と実質的に同等である。
【0009】
更に別の実施形態は、1つ以上の細長い基本構造と、細長い基本構造に重ねられる複数の分離性の機構とを含む、光学フィルムを対象とする。各基本構造は、対向する側部及び頂部を有する。各機構は、下部基本構造の長さの半分未満において、下部基本構造の少なくとも一方の側部を修正する。この実施形態では、機構は、下部基本構造の頂部を高くしない。
【0010】
本発明のいくつかの態様により、各機構は、区域の外辺部に沿った下部基本構造の急峻な断絶部を伴う区域を含む。例えば、急峻な断絶部は、例えば、約0.1°超、約0.2°超、又は約1°超のテーパ角と関連し得る。いくかの実施において、各機構は、下部基本構造の頂部〜谷部間寸法の大部分に沿って下部基本構造の側部を修正する。機構は、基本構造の一方の切子面又は一方の側部にのみ生じ、他方の切子面又は側部は機構を有さない。
【0011】
更なる実施形態は、1つ以上の基本光学構造と、基本構造に重ねられる複数の機構とを含む好学フィルムを対象とする。基本構造は、対向する側部及び頂部を有する。各機構は、下部基本構造の少なくとも一方の側部の頂部〜谷部間距離の大部分、及び下部基本構造の長さの半分未満に沿って、下部基本構造を修正する。各機構と下部基本構造との間の外辺部に急峻な断絶部が存在する。
【0012】
いくつかの実施形態では、各機構は、下部基本構造の両方の側部を修正する。いくつかの実施形態では、1つ以上の機構が、この区域の下部基本構造の頂部を高くすることによって、下部基本構造の区域を修正する。いくつかの実施形態では、高くした頂部の半径が、下部基本構造の頂部の半径と異なる。例えば、修正機構によって生成された、高くした頂部の半径は、下部基本構造の頂部の半径よりも、大きいか、又は小さい場合がある。いくつかの実施では、回折素子が、修正機構の少なくともいくつか、及び/又は基本構造の少なくともいくつかに配置される。
【0013】
本発明の別の実施形態は、光学フィルムを作製するためのマスター工具を形成するために、表面を修正する方法を含む。溝を含む基本機構が、マスターの表面に切削される。基本機構が切削される前又は後のいずれかにおいて、1つ以上の修正機構が、マスターの表面に切削される。基本機構及び修正機構が重ねられて、溝に沿った、急峻な非連続的変化を生成する。例えば、基本機構が、連続的な溝であり、修正機構が溝を修正する分離性の機構であってもよい。いくつかの実施では、回折素子が、基本構造のいくつか、及び/又は修正機構のいくつかに形成されてもよい。
【0014】
急峻な非連続的変化は、約0.1°超、約0.2°超、又は約1°超のテーパ角の変化を含む。修正機構は、例えば、約0.5マイクロメートル〜約3マイクロメートルの溝深さの、急峻な非連続的変化を生成し得る。
【0015】
修正機構を切削する工程は、切削工具をマスター工具の表面と実質的に垂直に動かして切削工具を溝に刻ませる工程を含んでもよい。修正機構を切削する工程は、マスター工具の表面と実質的に平行に切削工具を動かして切削工具を溝の側部の一方又は両方により深く刻ませる工程を含んでもよい。修正機構を切削する工程は、マスター工具の表面と平行な成分、及びマスター工具の表面と垂直な成分を含む軌道に沿って切削工具を動かす工程を含んでもよい。修正機構は、溝の深さを修正することなく、溝の側部の一方又は両方の傾斜中の急峻な変化を伴う区域を含んでもよい。溝及び/又は修正機構を切削する工程は、同期されたフライカッティング、動的に同期されたフライカッティング、ねじ切り、又はプランジカッティングを含み得る。
【0016】
いくつかの実施では、溝は、第1切削工具プロファイルを有する第1切削工具を使用して切削される。修正機構は、第1切削工具プロファイルとは異なる第2切削工具プロファイルを有する第2切削工具を使用して切削される。例えば、第1切削工具プロファイルは、第2切削工具プロファイルの切削先端半径よりも小さな切削先端半径を有してもよい。溝及び/又は修正機構は、丸い、平坦な又は鈍い切削工具プロファイルを有する切削工具を使用して切削されてもよい。
【0017】
いくつかの実施により、溝を切削する工程及び/又は修正機構を切削する工程は、第1及び第2切削工具を、表面にわたる切削ヘッドの単一のパスで共に動かすことにより、溝及び修正機構を切削する工程を含む。
【0018】
本発明の別の実施形態は、光学フィルムを作製するためのマスター工具を形成するために、表面を修正するためのシステムを含む。システムは、1つ以上の切削工具を含む。駆動システムは、1つ以上の切削工具と表面との間の相対的な動きを提供するように構成される。切削メカニズムは、マスター表面に溝を含む基本構造を切削するために切削工具を制御するように構成される。切削メカニズムはまた、溝と重ねられる修正機構を切削し、溝の形状における、急峻な非連続的変化を生成するように構成される。修正機構は通常、溝の切削の後に切削されるが、修正機構は、溝の切削の前に切削される場合がある。
【0019】
切削メカニズムは、同期されたフライカッティングによって基本機構及び修正機構の一方又は両方を作製するために切削工具を制御するように構成された、同期されたフライカッティングメカニズム又は動的に同期されたフライカッティングメカニズムを含み得る。切削メカニズムは、基本構造を切削するために使用される第1プロファイルを有する1つ以上の切削工具、及び修正機構を切削するために使用される第2プロファイルを有する1つ以上の第2切削工具を含み得る。例えば、第1プロファイル及び第2プロファイルの少なくとも一方が、丸い、平坦な又は鈍い先端を有してもよい。切削メカニズムは、表面にわたる、第1及び第2切削工具の単一のパスの間に、基本機構及び修正機構の両方を切削するように構成されてもよい。第1切削工具及び第2切削工具は、同期的に動くように構成される。
【0020】
いくつかの実施では、表面にわたる切削工具の1つ以上の第1パスの間に基本機構を切削し、表面にわたる切削工具の1つ以上の第2パスの間に修正機構を切削するように構成される。他の実施では、切削メカニズムは、表面にわたる切削工具の単一のパスの間に、切削工具を共に動かすことによって、基本及び修正機構を切削するように構成される。
【0021】
別の実施形態は、光学フィルムを製作するために使用可能なマスター工具を含み、マスター工具は表面を有する。複数の溝及び修正機構が、マスター工具の表面に重ねられる。各機構は、関連する溝の長さよりも短く延び、その外辺部の関連する溝の傾斜における、急峻な断絶部によって画定される区域を包含する。例えば、急峻な断絶部は、例えば、約0.1°超、約0.2°超、又は1°超のテーパ角を有し得る。
【0022】
様々な構成において、1つ以上の機構が、溝の深さを修正し、溝の内角は、機構の内角とは異なるか、これより大きいか、又はこれより小さい。いくつかの構成では、機構は、溝の区域の深さを修正し、溝の半径は、区域の半径よりも小さい。
【0023】
少なくとも機構のいくつかは、溝の深さを修正することなく、溝の側部を修正することができる。溝のいくつかは、深さ及び/又はピッチが変化し得る。機構は、溝の頂部〜谷部間距離に沿って溝を修正してもよい。機構は、溝の深さを変化させてもよく、させなくてもよい。
【0024】
本発明の別の一実施形態は、光学フィルムを作製するためのマスターを形成するために、表面を修正するためのシステムを目的とする。システムは、表面を調整するように構成された第1切削工具を含む。第2切削工具は、表面に機構を切削するように構成される。駆動システムが、切削工具と表面との間の相対的な動きを提供する。切削機構は、表面にわたる第1及び第2切削工具の単一のパスの間に、第1切削工具及び第2切削工具を動かして、表面を調整し、機構を切削する。表面の調整の後の表面の粗さが、最も小さい機構よりも実質的に少ない。
【0025】
上記の本発明の概要は、本発明のそれぞれの実施形態又は全ての実現形態を説明することを意図したものではない。本発明の利点及び効果、並びに本発明に対する更なる理解は、以下に記載する発明を実施するための形態及び特許請求の範囲を添付図面と併せて参照することによって明らかになり、理解するに至るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態によって製造されるマスター工具を使用して製造される、フィルムの一部の例を表す。
【図2】本発明の実施形態に沿って修正構造と重ねられた、重なる基本構造を有する、マスター工具を製造するように構成された、回転システムを例示する図。
【図3】本発明の実施形態によるマスター工具を機械加工するために座標系を例示する。
【図4A】工具先端キャリアの斜視図。
【図4B】工具先端を保持する工具先端キャリアの正面図。
【図4C】工具先端キャリアの側面図。
【図4D】工具先端キャリアの平面図。
【図5A】工具先端の斜視図。
【図5B】工具先端の正面図。
【図5C】工具先端の底面図。
【図5D】工具先端の側面図。
【図6A】切削工具及びニ単軸作動装置を旋盤に搭載するように構成された、工具搭載アセンブリの一部を例示する。
【図6B】切削工具作動装置での使用のための、代表的な圧電変換器(PZT)スタックの図。
【図7A】実質的に等しい、加工物に入るテーパイン角度、及び加工物から出るテーパアウト角度を有する、修正機構を作るために使用される、断続的な切削部を例示する図。
【図7B】加工物に入るテーパイン角度が、加工物から出るテーパアウト角度より小さい、修正機構を作るために使用される、断続的な切削部を例示する図。
【図7C】加工物に入るテーパイン角度が、加工物から出るテーパアウト角度より大きい、修正機構を作るために使用される、断続的な切削部を例示する図。
【図8】本発明の実施形態による断続切削プロセスを使用して作製され得る修正機構を概念的に例示する図。
【図9A】本発明の実施形態による軌道切削のための、旋盤に切削工具、及び単軸作動装置を搭載するように構成される工具搭載台の一部を示す。
【図9B】図9Aに示されている単軸作動装置構成のX−Z面における切削工具の軌道を示す。
【図9C】本発明の実施形態に従って、切削工具先端のマスターロールの表面に対する角度を実質垂直に維持するために使用される、作動装置と切削工具との間に取り付けたスペーサを示す。
【図9D】本発明の実施形態に従って、切削工具先端のマスターロールの表面に対する角度を実質垂直に維持するための、切削工具取り付け用の工具シャンクを示す。
【図9E】本発明の実施形態に従って、マスターロールの表面に対して実質垂直な切削工具先端を提供するために、研削された切削工具を示す。
【図10】重ねられた基本構造及び修正機構を、本発明の実施形態により、マスター工具の表面にわたり、単一パスで切削することができる、切削メカニズムを有する旋盤を示す。
【図11】本発明の実施形態による、フライカッティングヘッドの分解図。
【図12】本発明の実施形態による、フライカッティングシステムのr図。
【図13A】加工物の表面に、長手方向に沿った、各溝をフライカッティングすることによって形成される溝を例示する。
【図13B】加工物の表面の周囲で放射状に切削された溝区分を交差させることによって形成される溝を例示する。
【図14】ヘッドが、加工物に対して傾いている、フライカッティングヘッド及び加工物の立面斜視図。
【図15】本発明の実施形態による作動装置に搭載された切削要素の図。
【図16】切削要素及び作動装置の位置が、本発明の実施形態による第2作動装置により更に制御され得る、作動装置に搭載された切削要素の図。
【図17A】本発明の実施形態によるマスター工具に基本構造及び/又は修正機構を形成するために使用される工具先端構造を例示する。
【図17B】図17Aの工具先端構造をそれぞれ組み込む、マスター工具及び光学フィルム上の基本構造及び/又は修正機構を例示する。
【図17C】図17Aの工具先端構造をそれぞれ組み込む、マスター工具及び光学フィルム上の基本構造及び/又は修正機構を例示する。
【図18A】本発明の実施形態によるマスター工具に基本構造及び/又は修正機構を形成するために使用される工具先端構造を例示する。
【図18B】図18Aの工具先端構造をそれぞれ組み込む、マスター工具及び光学フィルムに形成される基本構造を例示する。
【図18C】図18Aの工具先端構造をそれぞれ組み込む、マスター工具及び光学フィルムに形成される基本構造を例示する。
【図19A】本発明の実施形態によるマスター工具に基本構造又は修正機構を形成するために使用される工具先端構造を例示する。
【図19B】図19Aの工具先端構造をそれぞれ組み込む、マスター工具及び光学フィルムに形成される基本構造を例示する。
【図19C】図19Aの工具先端構造をそれぞれ組み込む、マスター工具及び光学フィルムに形成される基本構造を例示する。
【図20A】本発明の実施形態によるマスター工具に基本構造又は修正機構を形成するために使用される工具先端構造を例示する。
【図20B】図20Aの工具先端構造をそれぞれ組み込む、マスター工具及び光学フィルムに形成される基本構造を例示する。
【図20C】図20Aの工具先端構造をそれぞれ組み込む、マスター工具及び光学フィルムに形成される基本構造を例示する。
【図21A】本発明の実施形態によるマスター工具に基本構造又は修正機構を形成するために使用される工具先端構造を例示する。
【図21B】図21Aの工具先端構造をそれぞれ組み込む、マスター工具及び光学フィルムに形成される基本構造を例示する。
【図21C】図21Aの工具先端構造をそれぞれ組み込む、マスター工具及び光学フィルムに形成される基本構造を例示する。
【図22A】両方の切子面に回折要素を備える工具先端の側面図。
【図22B】両方の切子面に回折要素を備える別の工具先端の側面図。
【図23】一方の切子面に回折要素を備える工具先端の側面図。
【図24A】ステップ高度変化を使用する回折要素を備える工具先端の側面図。
【図24B】ステップ高度変化を使用する回折要素を備える別の工具先端の側面図。
【図25】90°の切子面側部に沿って回折要素を備える工具先端の側面図。
【図26】平坦な先端に沿って回折要素を備える工具先端の側面図。
【図27】湾曲した先端に沿って回折要素を備える工具先端の側面図。
【図28】階段状に形成される回折要素を備える工具先端の側面図。
【図29】レンズ形状を有する回折要素を備える工具先端の側面図。
【図30】湾曲した切子面に沿って回折要素を備える工具先端の側面図。
【図31】複数の線状切子面に沿って回折素子を備える工具先端の側面図。
【図32】本発明の実施形態により、基本構造の高さの変化を生じる、x方向の切削工具の低周波運動を使用した、マスター工具の切削によって生成される基本構造を例示する。
【図33】本発明の実施形態により、ピッチの変化を生じる、z方向の切削工具の低周波運動を使用した、マスターの切削によって生成される、光学フィルム構造の構成を例示する。
【図34】本発明により、それらの長さに沿ってピッチが変化する第2組の基本構造と交互配置される、それらの長さに沿って高さが変化する第1組の基本構造を例示する。
【図35】本発明の実施形態による、切削工具の低周波のz方向の運動、及び切削工具の高周波のx方向の運動を使用して、マスター工具を切削することによって形成される基本構造を例示する。
【図36A】本発明の実施形態による、軌道に沿ったマスター工具の切削によって形成される、x及びz軸運動を有する基本構造を例示する。
【図36B】本発明の実施形態による、軌道に沿ったマスター工具の切削によって形成される、x及びz軸運動を有する基本構造を例示する。
【図36C】実質的な高さの変化がなく、ピッチの変化を有するプリズムを有する、構造の断面図。
【図37A】本発明の実施形態により、頂部を高くし、頂部に半径を組み込むことによって、下部基本構造の区域を修正する機構を有する構成を例示する。
【図37B】本発明の実施形態により、頂部を高くすることによって下部基本構造の区域を修正する機構を有し、更に修正機構の区域の頂部の半径が、基本構造の頂部の半径とは異なる構成を例示する。
【図38】本発明の実施形態により、頂部を高くすることによって下部基本構造の区域を修正する機構を有し、修正機構はまた、基本構造の頂部〜谷部間距離の大部分に影響する、構成を例示する。
【図39】本発明の実施形態により、溝の両方の側部に影響する、基本構造の溝及び修正機構を含む構成を例示する。
【図40】本発明の実施形態により、溝の一方の側部のみに影響する、基本構造の溝及び修正機構を含む構成を例示する。
【図41A】本発明の実施形態により、修正機構が回折素子を含む構成を例示する。
【図41B】本発明の実施形態により、基本構造及び2種類の修正機構を含む構成を例示する。
【図42】本発明の実施形態により、修正機構が、湾曲した側部を有し、修正機構の区域内の頂部内角が、基本構造の内角よりも大きい構成を例示する。
【図43】本発明により、修正機構と重ねられ、ピッチ変化を有するプリズムと交互配置される基本構造として、直線的な三角形プリズムを例示する構成を例示する。
【図44】本発明の実施形態により、基本プリズムを形成する半径を有する、より狭い内角を有する、様々な深さの溝、及び切削工具の連続的なz軸の動きでの溝に沿った再切削により形成され得る構造を例示する。
【図45A】本発明の実施形態により、修正機構と重ねられた、一連の基本構造を含む、光学フィルムの異なる倍率の写真の図を示す。
【図45B】本発明の実施形態により、修正機構と重ねられた、一連の基本構造を含む、光学フィルムの異なる倍率の写真の図を示す。
【図45C】本発明の実施形態により、修正機構と重ねられた、一連の基本構造を含む、光学フィルムの異なる倍率の写真の図を示す。
【0027】
本発明は種々の修正及び代替の形態に容易に応じるが、その細部は一例として図面に示しており、また詳しく説明することにする。ただし、本発明は記載される特定の実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。むしろ、付随する請求項によって定義される本発明の範囲内に入る修正、等価物、及び代替物すべてを網羅することを意図するものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
例示される実施形態の以下の説明では、本明細書の一部を構成し、本発明を実施され得る様々な実施形態を実例として示す添付の図面が参照される。他の実施形態が利用されてもよく、及び構造的又は機能的な変更が、本発明の範囲から逸脱することなくなされてもよいことが理解される。
【0029】
マスター工具は、光学及び/又は他の種類の微細複製フィルムの製造に使用される。例えば、微細複製機構は、望ましい光学的構造のネガ、すなわち、補完物として、マスター工具の表面へと切削され得る。マスター工具は次に、例えば、エンボス加工、押出成形、キャスティング、及び硬化、並びに/又は他のプロセスにより、フィルムに微細複製された光学的構造を形成することによって、フィルムを製造するために使用される。
【0030】
光学フィルムは、バックライト式ディスプレイの光学的特性の制御において特に有用である。例えば、輝度向上フィルム(BEF)は、光学構造を使用して望ましい表示軸に沿って光を方向付け、それによって見る人によって知覚される光の輝度を向上させる。バックライト式コンピュータディスプレイ画面は、高コントラスト及び全体的な高輝度を有し、特定の選択された方向における均一な高輝度、及び他の方向におけるより低い輝度を同時に維持する画面を作製するために、数多くの異なるフィルムを使用することがある。このような画面は、プリズム状BEFフィルム、又はレンズ状フィルムとの組み合わせによる、拡散フィルムなど、いくつかの種類のフィルムを使用してもよい。
【0031】
コンピュータディスプレイなどの近距離で見ることを意図されたディスプレイについては、外観の要件が非常に高い。ディスプレイは長時間にわたって近距離で見られるため、非常に小さな欠陥でも検知され、見る人の気を散らす原因となり得る。物理的欠陥としては、斑点、塵、擦り傷、含有物などの欠陥が挙げられる。欠陥はまた、光学的現象と関連し得る。中でも最も一般的な光学的欠陥は、「ウェットアウト」、ニュートン環、及びモアレ効果である。加えて、一定の条件下では、バックライト構成要素、例えば、抽出機構は、見る人により、ディスプレイを通して観察され得る。これらは意図的に配置された機構であるが、これらが観察可能となった場合、これらは、見る人に対するディスプレイの外観を悪化させるという点で、欠陥と同様である。
【0032】
本発明の実施形態は、光学的特性が向上した光学フィルムを形成し、フィルムを、ディスプレイ用途における使用のために特に有用なものにするために使用される、マスター工具の機械加工のための方法及びシステムを対象とする。この手法は、マスター表面の基本構造の形成、及び基本機構と重ねられる修正機構の形成を含む、製作プロセスを含む。基本機構及び修正機構は、任意の順序で形成され得るが、修正機構は、これらが下部基本機構の構造を修正するため、簡便さのためにそのように称される。本発明の実施形態によって形成されるマスター工具は、光学フィルムの主表面上の一体型微細構造区域の製作を可能にする。
【0033】
例えば、いくつかの実施形態では、基本構造は連続的な機構であり、修正機構は、基本機構と重ねられる分離性の機構である。これらの実施形態では、連続的な基本構造の長さは、分離性の修正機構の長さよりも、多数の桁数で、著しく長い。いくつかの実施形態では、基本構造の長さは、修正機構の長さよりも、著しく長くなくてもよい。一実施形態では、基本構造は、三角形のプリズムを含み、修正機構は、x方向(マスター表面の平面と垂直)、及びz方向(マスター表面の平面と平行)の一方又は両方で、基本構造を修正する。修正機構は、基本構造の傾斜、又は形状における急峻な断絶部が存在する、外辺部によって画定される区域において、基本構造を修正する。
【0034】
修正機構は、基本構造の上部及び/又は側部を修正し得る。いくつかの実施形態では、修正機構は、基本構造の溝の深さを増加させる。いくつかの実施形態では、修正機構は、高さ寸法を変えることなく、基本構造の側部のみに影響する。更に他の実施形態では、修正機構は、深さを増加させ、基本構造の側部を修正してもよい。
【0035】
基本構造及び修正機構の重ね合わせが利用されて、マスター工具から形成されるフィルムにおける、望ましい光学的特性の組み合わせを生成してもよい。基本構造を修正する機構を使用して達成され得る、望ましい光学的特性の非限定的な、代表的組み合わせとしては、向上した光の拡散特性による光の方向付け及び/又は再利用、本明細書において記載される追加的な有利な特性に伴う、改善された耐久性、及び強度、欠陥隠し、及び/又は光学的欠陥の低減が挙げられる。輝度向上フィルムに関連し、例えば、本発明の手法は、特定の設計基準、又は望ましい光学的特性(例えば、ゲイン、強度、拡散、欠陥の低減、及び欠陥隠し)の組み合わせに合うように調整される、光学フィルムを製造する能力を向上させる。
【0036】
本明細書において記載される手法によって製造されるマスター工具を使用して製造されるフィルム100の一部の例が、図1に例示される。この実施例では、他の実施例と同じように、マスター工具に形成される機構は、フィルム機構の補完物(ネガ)である。したがって、フィルムの構造、及びマスター工具の構造は対応し、それによって、フィルムが作製された際に、マスター表面の局所的最低がフィルムの局所的最高と対応する。
【0037】
この実施例では、フィルム100が導光フィルム(例えば、光再利用輝度向上フィルム)に使用される構造を代表する。フィルム100は、マスター工具に切削される溝に対応する、多数の線状三角形プリズム105を含む、基本構造を含む。この実施例では、線状の三角形プリズムが、基本構造として例示されているが、他のプリズム状又は非プリズム状の形状もまた適用可能である。
【0038】
代表的なフィルム100では、修正機構110が、線状三角形プリズム105の切子面に沿って、基本構造105に重ねられる。図1に例示されるように、修正機構110は、線状プリズム105によって画定される下部基本構造の側部106の修正と関連している。この実施例では、修正機構110は、マスター工具内の、プリズムの溝の側部に沿った位置に、分離性の、断絶した切削部を作製することによって形成され得る。断絶した切削部は、切削工具のz方向(マスター工具表面と平行)での急速運動によって作製することができ、加えて、又は別の方法として、マスター工具表面と垂直な、x方向の急速運動を生じてもよく、又はx成分、z成分の両方を有する方向の切削工具の急速運動、あるいは切削工具を、マスター工具表面内に、下部基本構造よりも深く刻ませるような方法での切削工具の他の運動を生じてもよい。本明細書に記載される断続切削は、切削工具が、基本機構の形状を変える、急峻に断絶する外辺部によって画定される区域を生成する、分離性の切削部を作製するプロセスを含む。フィルム100、及びマスター工具に使用される座標系が、図1に例示され、図3に関連してより詳細に記載される。
【0039】
記載される断続切削技術により形成される分離性の光学的機構は、下部基本構造の形状からの急峻な断絶部を有する外辺部によって画定される、基本構造中の区域を迅速に形成する。例えば、分離性の機構110は、外辺部125を有する区域を形成し、ここで、傾斜における急峻で、非連続的な変化が、下部三角形プリズム105の側部106において生じる。これらの急峻な非連続的な外辺部125は、本明細書においてより詳細に記載される動的に制御されたプランジカッティング、又は動的に制御され、同期されたフライカッティングによる断続切削を含む、動的に制御された断続的な切削プロセスにより達成され得る。
【0040】
急峻で断続的な外辺部を有する修正機構を組み込んだ光学フィルムは、このような機構を有さないフィルムと比較した際に、向上した拡散特性を有利に提供することができる。急峻で非連続的な修正機構の基本構造上への重ね合わせは、ゲイン、光拡散、及び/又は欠陥低減特性(例えば、ウェットアウト防止及び/又はモワレ防止)を制御する能力を提供し、これは、特定の用途に指定されるフィルムを製造する能力を向上する。
【0041】
連続的な、断続的でない切削技術は、動的に制御されていても、より段階的な推移を生成し、断続的でない切削で、本明細書に記載されるフィルムの向上した光学的特性を提供する、急峻な断絶部を形成することを困難にする。修正機構は、基本構造の形成前、又は基本構造の形成後のいずれかにおいて形成され得る。断続的な切削部は、例えば、高速工具サーボ作動装置を使用して動的に制御された、プランジカッティング又はフライカッティングにより、作製され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、基本構造及び/又は修正機構は、旋盤の使用により形成される。旋盤は、切削工具がマスター内に食い入る深さと、マスターの表面に沿った工具の横方向の動きとを、別々に制御することができる。加えて、旋盤は、円筒形マスターの回転速度を別々に制御することができる。
【0043】
本発明の実施形態により、重ねられた基本構造210及び修正機構211を有する、円筒形マスター工具を製造するように構成された回転システムが、図2に例示される。円筒形マスターロール200が、ドラム駆動204によって、軸202の周囲で回転する。この実施例では、マスター200は、円筒形の形状で示されているが、別の構成では、マスターは、平面的であるか、又は他の形状をとることができる。基本機構210を、同軸円溝をプランジカッティングすることにより、又はマスター200上に溝をねじ切りすることにより(すなわち、マスター200の表面上に切削しながら切削工具208をz方向に移動させることにより)、マスター200に切削することができる。修正機構を形成する分離性の切削部211は、基本機構210と重ねたマスターに切削され得る。例えば、修正機構は、切削工具208の急速運動による、断続切削によって形成され得る。
【0044】
いくつかの実施においては、コントローラ206は切削工具搭載台209をz方向に横方向に駆動させ、回転するマスター200に沿って切削工具208を動かし、ねじ切り又は同軸円切削を行う。コントローラ206はドラム駆動204の速度を制御し、マスター200の角度位置Ψを監視してもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、切削工具208は、実質的に一定の深さ及びピッチを有するマスター200の、連続的な溝210を切削するように向けられている場合がある。他の実施形態では、連続的機構210の深さ及び/又はピッチは、「高速」及び/又は「低速」運動を含んでもよい。連続的な機構を切削する場合、特定の連続的な機構の長さに沿った変化を有するフィルムを製造するために、切削工具の「高速」運動が使用され得る。機構ごとに異なる、連続的な機構を製造するために、切削工具の「低速」運動が使用され得る。
【0046】
例えば、細長いv形の溝を切削する場合、マスター表面の表面と垂直な方向に沿った切削工具の高速運動が使用されて、各プリズムに沿って異なる高さを呈するフィルムを生成することができる。マスター表面の表面と垂直な方向に沿った、切削工具の低速運動が使用されて、各プリズムの長さに沿って一定の高さを有するプリズムを有するが、プリズムごとに異なる高さを有し、それによって第1プリズムが、隣接するプリズムのものと異なる高さを有する、フィルムを製造することができる。マスターを切削する際に、切削工具の連続的な、高速及び低速運動が共に使用され、それにより、マスターから生成されるフィルムが、プリズムごとの変化に加えて、各プリズムの長さに沿って連続的に変化するプリズムを含んでもよい。高速及び/又は低速運動が、x、y及びz寸法のいずれか1つ又はそれ以上において行われてもよい。
【0047】
コントローラ206は、切削工具搭載台209の運動を制御し、マスター表面に対して平行なz方向に切削工具の低速運動を生成し、かつマスター表面に対して垂直のx方向に切削工具の低速運動を生成するように構成することができる。搭載台209の動きは、高速サーボ作動装置238の接触長さを超える振幅を有する、マスター200への表面切削における変化を生成するために使用されてもよい。
【0048】
コントローラ206はまた、1つ以上の高速サーボ作動装置238によって、切削工具208の高速運動を制御し、溝の深さ及び/又はピッチにおける連続的な高周波変化を形成し得る、切削工具の高速運動を生成し得る。切削工具の非常に急速な運動はまた、マスター200内の急峻な非連続的な機構を形成する、分離性の、断続的な切削部211を作製するために使用され得る。断続的な切削部211は、高速工具サーボ(FTS)による、切削工具の運動によって作製され得る。急峻な非連続的な機構の形成は、断続切削により可能であり、切削工具が、マスター工具の表面に急速に挿入され、その後引き抜かれる。
【0049】
連続的切削により形成される機構と、断続切削により形成される機構との重ね合わせは、表面にわたる切削ヘッドの単一のパス、又は多数のパスにおいて達成され得る。例えば、基本構造は、1つ以上のパスにおいて形成されてもよく、修正機構は、別の1つ以上のパスにおいて形成されてもよい。いくつかの実施形態において、多数のパスが、各パスの間に同じ切削工具プロファイルを使用して、表面にわたって作製される。いくつかの実施形態において、表面にわたり、異なるパスの間に、異なるプロファイルの切削工具が使用される。図10に例示されるように、いくつかの実施形態では、基本構造及び修正機構の両方が、マスター工具表面にわたり、共に動く2つ以上の切削ヘッドを使用して、単一パスで、マスター内に切削され得る。
【0050】
切削工具208とマスター表面200とのなす角度θも制御することができる。切削工具208のサイズ及び形状は、マスター200を使用して作製するフィルムの個々のタイプに応じて選択される。
【0051】
コントローラ206は、切削工具208の運動を制御する、制御信号を生成する。例えば、コントローラ206は、切削工具208をx方向に動かしてマスター200の表面内に実質的に一定の深さの機構を切削するか、又は切削工具208をz方向に動かして、ねじ切り又は同軸円溝切削によって、切削工具208に実質的に一定のピッチを有する溝を切削させる、搭載台209に向けた信号を生成してもよい。コントローラ206は、切削工具搭載台209に向けた信号の緩やかな変化を生成してもよく、これは、マスター200内に切削される機構の深さの、対応する緩やかな変化を生成する。コントローラは、工具搭載台209に向けた信号の緩やかな変化を生成してもよく、これは、溝の間のピッチの、対応する緩やかな変化を生成する。
【0052】
コントローラ206は、x及び/又はz方向における切削工具208の位置を更に制御する、1つ以上の高速工具サーボ(FTS)作動装置238に信号を提供し得る。作動装置238は、切削工具208の、x及び/又はz方向における切削工具208の、連続的な高速運動を生成するために使用され得る。作動装置238はまた、切削工具の、x及び/又はz方向における非常に急速な動きを提供して、分離性の、急峻な非連続的な修正機構211を形成する、断続的な切削部を作製し得る。
【0053】
各修正機構は、例えば、マイクロメートルより小さい桁、数マイクロメートル、数十マイクロメートル、又はそれ以上の長さを有してもよい。修正機構は、例えば、下部基本構造の頂部を、約0.5マイクロメートル〜約3マイクロメートル高くしてもよい。
【0054】
コントローラ206によって生成される制御信号は、マスター200の回転と同期的であってもよい。切削工具208の運動は、規則的又は不規則的であり得る。切削工具の規則的運動は、周期的であっても、非周期的であってもよい。いくつかの実施においては、各マスター工具に対して同じ信号を反復することが好ましく、それによってこれらが同じパターンを含み、生じる構造はロール同士で同じである。コントローラの制御下において、切削工具は、ランダムなパターン又は擬似乱数的なパターンを生成するような方法で動いてもよい。
【0055】
1つ以上の作動装置238は、切削工具搭載台207の運動によって通常は達成できないような速度で切削工具208を動かすよう作動し得る。各作動装置238には、最終的に切削工具208の動きを制御するための、コントローラ206からの電気信号を作動装置238の動きに変換するための圧電変換器(PZT)又はその他の変換器を有する、単軸高速工具サーボが含まれる。切削工具208は、x及びz方向の運動が可能であるように、1つ又は多数の単軸作動装置238によって制御され得る。
【0056】
高速サーボ作動装置の応答の周波上限は、数キロヘルツから数十キロヘルツの範囲でよく、一方、切削工具搭載台209の応答周波は通常、5Hzを超えることはない。例えば、工具搭載台209の動きは、約209マイクロメートルの距離(波長)にわたり、約0.5マイクロメートル〜約50マイクロメートルの溝ピッチにおいて、低周波の変化を達成することができる。工具搭載台109の動きは、約2,000,000マイクロメートルの波長で、約0.5マイクロメートル〜約50マイクロメートルの溝深さにおいて、低周波の変化を達成することができる。作動装置238がなすストローク長さは、波長約5マイクロメートル〜約500マイクロメートルの範囲で、例えば50マイクロメートル未満、又は約0.5マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲であり得る。ストロークの長さと上方周波応答との間にはトレードオフ関係があり得ることが認識されるだろう。
【0057】
微細複製マスター工具は、本明細書において例示される、基本機構及び急峻な非連続的な修正機構を含む、望ましい光学的形状と補完的な機構を有する、円筒形のロールとして形成され得る。マスターは、円筒形ロールとして本明細書では例示されているが、これはあるいは、平面状、曲線状、凸状又は凹状など、他の形状をとってもよい。マスターの表面は典型的には硬銅であるが、アルミニウム、ニッケル、鋼、又はプラスチック(アクリルなど)の他の材質も使用することができる。
【0058】
一度、微細複製マスター工具が形成されると、これは、微細複製光学フィルムを作るためのマスターとして使用され得る。光学フィルムは、工具上でのポリマー材料のキャスティングと硬化、エンボス加工、押出成形、圧縮成形、及び/又は射出成形などの方法によって、本発明により調製された工具を使用して作製されてもよい。キャスティングと硬化が一般的には好ましく、光学フィルムが作製され得る材料としては、ポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。光学フィルムは、単一層(単体)で作製されてもよく、又は2つ以上の層を含み、それによって支持層が1つの材料を含み、基本構造及び修正機構(溝及び/又は他の構造)を含む微細構造層は別の材料を含んでもよい。微細構造層は、本明細書において記載されるように製作されるマスター工具を使用して、一体構造として形成され得る。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態では、マスター工具の構造は、製造工具を形成するために、キャスティングと硬化プロセスにより、他の媒体、例えば、ポリマー材料のベルト又はウェブに転写されてもよい。この製造工具は、次に、本明細書において記載される種類の、微細複製された物品を作製するために使用される。この結果、マスター工具の表面に対応した表面を有する物品が得られる。電鋳法などの他の方法を用いてマスター工具を複製することもできる。中間工具と称され得るこの複製は、次に、微細複製された物品を製造するために使用され得る。
【0060】
図3は、図2に例示される切削工具208などの、切削工具のための座標系を例示する図である。座標系は、加工物364に対する工具先端362の運動のために例示される。工具先端362は、典型的にはキャリア360に取り付けられ、これは作動装置(図示されない)に取り付けられる。この代表的な実施形態において、座標系は、x方向366、y方向368、及びz方向370を包含する。x方向366における運動は、加工物364に対して実質的に垂直な方向の運動を指す。y方向368の運動は、加工物364の回転軸に対して実質的に垂直な方向など、加工物364を横断する方向の運動を指す。z方向370の運動は、加工物364の回転軸に対して実質的に平行な方向など、加工物364の横に沿った方向への運動を指す。加工物の回転は、矢印353で表わされるようにc方向と呼ばれる。ロール形状とは対照的に、加工物が平面状に構成される際、y方向及びz方向とは、x方向に対して実質垂直な方向に加工物を横断して互いに直交する方向の運動を指す。平面状の加工物には、例えば、回転ディスク又はいずれかの平面材料の他の構成が挙げられる。
【0061】
図4A〜4Dは、代表的な工具先端キャリア490の図であり、これは作動装置によって制御するために、PZTスタックに搭載される。図4Aは、工具先端キャリア490の斜視図である。図4Bは、工具チップキャリア490の正面図である。図4Cは、工具先端キャリア490の側面図である。図4Dは、工具先端キャリア490の平面図である。
【0062】
図4A〜4Dに示すように、工具先端キャリア490は、平面裏面492、テーパ状前面494、及び角度を有するか、又はテーパ状の側部を有する隆起表面490を包含する。開口部496は、工具先端キャリア7490をPZTスタックのポスト上に装着するのに対応する。テーパ状表面498は、加工物の機械加工において工具先端の装着に使用され得る。この代表的な実施形態において、工具先端キャリア490は、PZTスタックに搭載される際により多くの表面積を提供することで、工具先端キャリア490の搭載の安定性を向上する平面を含む。工具先端キャリア490は、質量を低減するために、テーパ状前面を含む。工具チップキャリア490は、接着剤、ろう付け、はんだ付け、ボルトのような締結具、又は他の方法によってPZTスタックのポストに搭載され得る。
【0063】
例えば、特定の実施形態における必要性に応じて、工具先端キャリアの他の構成が可能である。「先端工具キャリア」という用語は、加工物を機械加工するために工具先端を保持するのに使われる、いかなる種類の構造をも含むことを意図している。工具先端キャリア490は、例えば、以下の材料、焼結炭化物、窒化ケイ素、炭化ケイ素、鋼、チタン、ダイヤモンド、又は合成ダイヤモンド材料、の1つ以上で構成することができる。工具先端キャリア490における材料は、好ましくは剛性があり低質量である。
【0064】
図5A〜5Dは代表的な工具先端500の図であり、これは、接着剤、ろう付け、はんだ付けを使用して、又は他の方法などで工具先端キャリア490の表面498に固定され得る。図5Aは、工具先端500の斜視図である。図5Bは、工具先端500の正面図である。図5Cは、工具チップ500の底面図である。図5Dは、工具先端500の側面図である。図5A〜5Dに示されるように、工具先端500は、側部504、テーパ状、及び角度を有する前面506、工具先端キャリア490の表面498にこれを固定するための底面502を含む。工具先端505の前側部分500は、作動装置の制御下で加工物を機械加工するのに使用される。工具先端500は、例えばダイヤモンドスラブで構成され得る。工具先端500は、以下で更に詳細に例示されるような、様々な切削プロファイルを達成するために、様々な構成を有するように作製され得る。
【0065】
図6Aは、工具搭載アセンブリ600の一部を例示し、これは、切削工具635、工具先端キャリア636、及び高速工具作動装置618、616を旋盤に搭載するために使用され得る。工具搭載アセンブリ600は、x方向作動装置618、z方向作動装置616、及び切削工具635を保持することができる本体612を含む。この実施例において、作動装置616、618はPZT積層物である。PZT積層物618、616は、それぞれが切削工具をx方向及びz方向に動かすよう配置される。いくつかの適用においては、PZTスタックのみが使用され得る。PZT積層物618、616は、切削工具635の正確に制御された動きのために必要な安定性を得るため、工具搭載台アセンブリ612にしっかりと固定される。PZT積層物618、616には、コントローラからの信号を受信するための電気的接続630、634が含まれる。PZTスタック618、616は、事前に搭載するために、スタックと工具先端キャリア636との間に位置付けられる、1つ以上のベルビルワッシャを含み得る。
【0066】
図6Bは、切削工具に使用する代表的なPZTスタック672の図である。PZTスタックはそれと連結される工具先端の運動を提供するために使用され、当該技術分野において既知である圧電効果に従って動作する。圧電効果によると、特定の種類の材料に適用される電界によって、その材料は1つの軸に沿って膨張を、他の軸に沿って収縮を生じる。PZTスタックは、典型的に、ケーシング684に内包され、ベースプレート686上に装着される複数の材料674、676、及び678を備える。この例示的な実施形態において、材料は、PZT効果の対象となるセラミック材料で構成される。例示のみを目的として、1つのディスク674、676、及び678が示されるが、例えば特定の実施形態における要件に基づいて、いずれかの数のディスク又は他の材料、及びいずれかの種類の形状を使用することができる。ポスト688はディスクに付着し、ケーシング684から突出している。ディスクは、例えば、チタン酸バリウム、ジルコン酸鉛、又はチタン酸鉛材料を混合、圧縮、主材料とし、焼結したようないずれかのPZT材料で構成することができる。ディスクは、例えば、磁歪材料で構成することもできる。
【0067】
線680及び682で表されるように、ディスク674、676、及び678への電気的接続によって、ポスト688が移動するための電場をそれらへ提供する。PZT効果によって及び適用される電場の種類に基づいて、数マイクロメートル以内の移動のようにポスト688の正確かつ僅かな移動を達成できる。また、ポスト688を有するPZTスタック672の末端部は、PZTスタックを予め搭載できる672つ以上のベルビルワッシャに装着することが可能である。ベルビルワッシャは、ポスト688及びそれに取り付けられる工具先端を移動させるために若干の可撓性を有する。
【0068】
マスター工具を切削するために多数の作動装置を使用するシステムについては、米国特許出願第11/274723号、同第11/273875号、同第11/273981号、及び同第11/273884号(全て2005年11月15日出願)に記載される。
【0069】
図7A〜7Cは、上記の代表的な作動装置及びシステムを使用するプランジカッティングによる、マスター工具の断続切削機械加工を例示する。特に、図7A〜7Cは、工具先端の可変テーパイン角度及び可変テーパアウト角度の使用を例示し、これらの角は、マスター及び切削工具の運動の制御によって制御することができる。図7A〜7Cの各々は、様々なテーパイン角度及びテーパアウト角度で切削される前後のマスターの例を例示している。テーパイン角度はλINとして言及され、テーパアウト角度はλOUTとして言及される。用語「テーパイン角度」、「テーパアウト角度」はそれぞれ、機械加工中に工具先端が加工物に挿入され、加工物から離れる角度を意味する。テーパイン角度及びテーパアウト角度は、加工物内を移動する時の工具先端の角度に必ずしも対応せず、むしろ工具先端が加工物に接触し、離れる角度を指す。図7A〜7Cにおいて、工具先端及びマスターは、例えば上記のシステム、及び構成要素で構成することができる。
【0070】
図7Aは、加工物753に入るテーパイン、及び加工物753から出るテーパアウト角度が実質的に等しい断続切削部750を例示する図である。図7Aに示されるように、加工物753に入る工具先端751のテーパイン角度752は、テーパアウト角度754と実質的に等しい(λIN≒λOUT)。加工物753内に工具先端751が留まる時間によって、生じるミクロ構造の長さL(756)が決まる。実質的に等しいテーパイン角度及びテーパアウト角度を使用し、工具先端によって加工物から材料を取り除くことで実質的に対称なミクロ構造758が作製される。このプロセスは、距離D(762)によって隔てられるミクロ構造760のような付加的なミクロ構造を作製するために繰り返すことができる。
【0071】
図7Bは、加工物767に入るテーパイン角度が加工物767から出るテーパアウト角度より小さい断続切削を例示する図である。図7Bに示されるように、加工物767に入る工具先端765のテーパイン角度766は、テーパアウト角度766より小さい(λIN<λOUT)。加工物767内に工具先端765が留まる時間によって、生じるミクロ構造の長さ770が決まる。テーパアウト角度より小さいテーパイン角度を使用し、工具先端によって加工物から材料を取り除くことで、例えばミクロ構造772のような非対称のミクロ構造が作製される。このプロセスは、距離776によって隔てられるミクロ構造774のような付加的なミクロ構造を作製するために繰り返すことができる。
【0072】
図7Cは、加工物781に入るテーパイン角度が加工物781から出るテーパアウト角度より大きい断続切削を例示する図である。図7Cに示されるように、加工物781に入る工具先端779のテーパイン角度780は、テーパアウト角度782よりも大きい(λIN>λOUT)。加工物781内に工具先端779が留まる時間によって、生じるミクロ構造の長さ784が決まる。テーパアウト角度より大きいテーパイン角度を使用し、工具先端によって加工物から材料を取り除くことで、例えばミクロ構造786のように非対称のミクロ構造が作製される。このプロセスは、距離790によって隔てられるミクロ構造788のような付加的なミクロ構造を作製するために繰り返すことができる。
【0073】
図7A〜7Cにおいて、テーパイン角度、及びテーパアウト角度の破線(752、754、766、768、780、782)は、工具先端が加工物を出入りする角度の例を概念的に例示することを意図している。加工物を切削する間、工具先端は、例えば、線形経路、湾曲経路、線形及び湾曲運動の組み合わせを含む経路、又は特別な機能によって確定される経路等のいずれかの決まった種類の経路を移動することができる。工具先端の経路は、加工物の切削を完了するための総時間などの切削パラメータを最適化するように選択され得る。
【0074】
本発明の実施形態は、外辺部に画定される区域を含む修正機構を形成する断絶切削に依存するプロセスを対象としており、下部基本構造の傾斜には急峻な断絶部が存在する。例えば、急峻な断絶部は、例えば、約0.1°超、約0.2°超、又は約1°超のテーパイン角度、又はテーパアウト角度(又は1マイクロメートル当たりの、傾斜における変化)を含み得る。各修正機構は、約0.5マイクロメートル〜約3マイクロメートルで、x又はz方向に基本構造を刻んでもよい。修正機構は、1マイクロメートル未満〜数マイクロメートル〜数十マイクロメートルの範囲の長さであり得る。
【0075】
図8は、機械加工された加工物を作製するための断続切削FTS作動装置を有する切削工具システムを使用し、構造化フィルムを作製するためにこの加工物を使用して作製される、フィルム内の微細構造を概念的に例示する図である。本明細書において記載されるように、微細構造806、808、及び810と同様の機構が、基本機構上に重ねられてもよい。
【0076】
図8に示されるように、物品800は、上面802、及び底面804を含む。上面802は、構造806、808、及び810のような断続切削された微細構造を含み、これらの微細構造は、加工物を機械加工するための上述の作動装置及びシステムを使用し、そしてコーティング技術を使用してフィルム、又は物品を作製するためのこの加工物を使用して作製され得る。本実施例において、各ミクロ構造は長さLを有し、連続切削ミクロ構造は距離Dによって隔てられ、隣接したミクロ構造はピッチPによって隔てられる。断続切削された微細構造、例えば、基本構造に重ねられた図8に例示されるものを有するフィルムを含む追加的な例が、本明細書において例示される。
【0077】
いくつかの実施形態においては、基本構造を形成する際の切削工具の連続的な切削運動における変化、修正切削部を生成する工具先端運動のいずれか又は両方が、マスターの表面に関する、x及びz成分の両方を有する軌道に沿った運動を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書においては軌道切削と称される、軌道に沿った切削は、図6Aの工具搭載アセンブリによって例示されるように、1つのx軸作動装置、及び別のz軸作動装置を含み得る。いくつかの実施形態では、軌道切削は、切削軌道に対して位置合わせされる、短軸作動装置を使用して達成され得る。
【0078】
図9Aは、切削工具910及び単軸作動装置920を旋盤に取り付けるよう構成された工具搭載台900の一部を示す。切削工具910、及び作動装置920は、作動装置920(例えばPZT作動装置)の動作が切削工具910の軌道運動を生成するように向けられる。PZT作動装置920の動作によって、切削工具910が、x及びz成分両方を有し、かつマスターの表面に対して軸外となる軌道に沿って動く。
【0079】
図9Bは、図9Aに示されている単軸作動装置構成のX−Z面における切削工具910の軌道950を示す。基本構造を切削する際、切削工具910は、軌道950に沿って前後に動かされ、マスター工具の表面に様々な深さ及び様々なピッチの溝を切削することができる。基本構造を修正する際、軌道切削は、例えば、図40の構造によって例示されるように、基本構造の側部を切削するように実行され得る。軌道950は、望ましいx成分及びz成分の量に応じて単軸作動装置について調整することができる。単軸作動装置の移動能力によって、最大の斜辺長さが示される。
【0080】
例えば、20マイクロメートルの移動が可能なPZTスタックでは、作動装置は、3マイクロメートルのx軸成分が生成されるように回転され得る。x軸成分が3マイクロメートルに等しく、斜辺が20マイクロメートルに等しいとき、作動装置はマスター表面に対して8.6度の角度Γに向けられる。ピタゴラスの定理を使用して、z軸成分は19.7マイクロメートルと算出される。
【0081】
切削工具910の先端は、マスターの表面に対して垂直、又はマスター表面に対してある角度をなす方向に向けることができる。工具先端の向きは、様々な方法で達成することができる。図9Cに示すように、方向付けスペーサ970をPZT作動装置920と工具シャンク360との間に使用することができる。図9Dに示すように、工具シャンク965には望ましい形状を直接もたせることができる。工具910は、図9Aに示すように、シャンク966上で望む角度に向けることができる。工具先端905は、図9Eに示すように、望ましい方向を含むように研磨又は成形することができる。
【0082】
前述のように、図2〜9に例示される旋盤、切削工具、及び技術は、様々な方法のいずれか1つ以上によって、基本構造及び/又は修正機構を切削するために使用されてもよい。例えば、基本構造及び修正機構の切削は、マスター内のねじ切りによる連続的な溝又は一連の同軸円溝を第1切削する工程、及び次に、旋盤を使用して分離性の溝を、前に切削した溝に重ねる工程を含む、多工程プロセスで行われてもよい。あるいは、修正機構は、最初にマスター表面の表面に切削され、その後の工程で、修正機構にわたって重ねられるねじ切りによる溝又は同軸円溝が切削されてもよい。
【0083】
更に別の実施例では、基本構造及び修正機構が、単一パスで、又は多数のパスで、2つ以上の切削工具を含む切削メカニズムを有する旋盤を使用して、切削されてもよい。図10は、2つの切削工具1007、1008を備える切削メカニズム1030を有する旋盤を例示し、これらは、マスター表面1000にわたる切削工具1007、1008の単一パスにより、基本構造及び修正機構を切削するために実行され得る。例示の目的のために、図10では2つの切削工具のみの例示されているが、任意の数の切削工具がこの方法で使用され得る。
【0084】
マスター工具は、コントローラ1006の制御下の、ドラム駆動1004の制御下で、軸1002の周囲で回転し、切削工具1008、1007の一方が使用されて、例えば、連続的な切削部を作製してマスター工具の表面1000内に溝1010を生成することによって、基本構造を作製してもよい。切削工具1007、1008のもう一方が使用されて、例えば、断続切削部を作製することによって、修正機構1011を作製してもよい。いくつかの実施形態では、断続切削は、一定の深さ及びピッチを有する溝1010を生成し得る。他の実施形態では、連続的な切削部は、深さ及び/又はピッチの、急な若しくは緩やかな変化を含む溝1010を生成してもよい。
【0085】
図10の旋盤は、切削工具1007、1008、関連する工具搭載台1027、1028、及び関連する作動装置1037、1038を組み込む、切削メカニズム1030を例示する。各切削工具1007、1008の、x及び/又はz軸に沿った、別個の高速及び/又は低速運動が可能である。各切削工具1007、1008の低速運動は、これらの対応する工具搭載台1027、1028の別個の運動によって、各切削工具1007、1008について別々に達成され得る。いくつかの実施形態では、切削工具1007、1008の両方が、共通の工具搭載台に取り付けられる。いくつかの実施形態では、工具搭載台1027、1028は共に連結され、これによって連結された工具搭載台1027、1028の両方が、切削工具1007、1008の両方を共に動かす。
【0086】
各切削工具1007、1008は、1つ以上の工具作動装置1037、1038によって別々に実行され、切削工具の高速運動を提供してもよい。x、y及び/又はz軸に沿った三次元における、切削工具1007、1008の運動は、別々又は一緒であってよく、切削工具1007、1008の一方又は両方の高速運動を生成する。高速運動は、溝1010の深さ及び/又はピッチの連続的な変化をもたらすために使用されてもよく、分離性の機構1011を生成する急峻な非連続的な断続切削部を形成するためにプランジカッティングを達成するために使用されてもよい。
【0087】
例えば、各切削工具1007、1008は、x軸作動装置及びz軸作動装置の一方又は両方によって、別々に実行されてもよい。あるいは、各切削工具1007、1008は単軸作動装置によって実行され、上記のように、x及びz成分を含む軌道に沿って動いてもよい。
【0088】
本発明の実施形態に適用可能なマスター工具における連続的及び/又は分離性の機構の切削の使用に関する追加的な情報は、S/N 11/952438号(2007年12月7日出願)、及び同S/N 60/974245号(2007年9月21日出願)によって特定される同一所有者による米国特許出願に記載される。
【0089】
いくつかの実施形態では、図10に例示される1つの切削工具1008が使用されて表面1000を調製し、別の切削工具1007が使用されて、調製された表面に機構を切削してもよい。例えば、表面1000の調製は、表面の平滑化、表面の模様付け、並びに/あるいは連続的機構、分離性の機構、三角形の溝、レンズ状の溝、角錐、半球、接頭構造、及び/若しくは他の機構、又はこれらの組み合わせの表面への切削が挙げられる。第2切削工具1007が利用され、第1切削工具1008を使用して調製された表面を修正してもよい。例えば、第2切削工具1007による表面の修正は、連続的及び/若しくは分離性の機構、又は連続的及び/若しくは分離性の機構の様々な組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施では、表面の調整の後の表面の粗さが、最も小さい機構よりも実質的に少ない。
【0090】
いくつかの実施形態では、基本構造及び/又は修正機構の切削は、フライカッティングによって達成され得る。フライカッティングは回転するフライカッティングヘッドを使用して、切削工具をマスターの表面と接触させる。フライカッティングヘッドが回転すると、切削工具は、定期的に加工物内へと切り込む。フライカッティングヘッド及び加工物は、互いに関して動かすことができ、これによって切削要素が、例えば、加工物中に長い溝を切削することができる。例えば、加工物が円筒形ロールである場合、フライカッティングヘッドは、ロールの外側表面の長さだけ加工物を切削することができ、ロールは、溝の間の間隔又はピッチに相当する距離を指示されることができ、次いで第1の溝に隣接して、ロールの長さだけ別の溝を切削することができる。この方法では、全体ロールは、基本構造、例えば、連続的な長手方向の溝を提供され得る。フライカッティングはまた、切削ヘッドを加工物に対して動かし、マスター表面の分離性の位置に切削部を作製することにより、マスター表面に多くの修正機構を形成するために使用されてもよい。
【0091】
ミリング加工の一種であるフライカッティングは、典型的には不連続的な切削作業である。つまり、各切削要素は加工物に一定時間接触した後、フライカッティングヘッドがその切削要素を円の残りの部分にわたって回転させ、再びその切削要素が加工物と接触するに至るまでの間は、加工物とは接触しない。フライカッティング作業は典型的には非連続的であるが、フライカッターによって加工物に形成される、生じる溝又はその他の表面機構は、所望により連続的(例えば、個々の、しかしながら接続している切削部の連続によって形成されている)又は非連続的(断続的な切削部によって形成されている)であり得る。
【0092】
上記のように、フライカッティングを使用して加工物に切削される機構は、ヘッドが回転する際に、切削要素によって作製された連続的な溝区分によって形成され、加工物の長さに沿って長手方向に延びる溝であり得る。この構成では、フライカッティングヘッドの回転軸に対して、個々の切削要素がどこにあるかを知ることは重要ではなく、これは、切削要素が、これが加工物から外されるか、又はモーターが停止されるまで、加工物から材料を単純に切削し続けるためである。
【0093】
同様の構成の別の実施例は、フライカッターが使用されて、らせん状の溝を円筒形加工物の表面に切削する場合(マスター表面にねじ切り溝を生成するプロセス)である。この状況でも同様に、フライカッティングヘッドの回転軸に対する、いかなる個別の切削要素の位置も重要ではなく、これは切削要素が、加工物に対して一度位置付けられると、これらが停止されまで、この加工物を単純に切削し続けるためである。換言すれば、切削要素が加工物と最初に接触する点を0°とすると(フライカッターヘッドの回転軸に対し)、切削要素が任意の時点において、回転軸の周囲の回転の5°、165°、又は275°に位置するかどうかを知ることは重要ではない。
【0094】
いくつかのフライカッティングの実施形態では、時間の関数として、加工物に対するフライカッティングヘッドの位置を決定することが必要である。この情報は、加工物若しくは他の機構、又は両方に対する特定の位置で、加工物中に連続的な機構、例えば、溝区分又は分離性の機構を形成するようにフライカッティングヘッドが位置付けられる、フライカッティング作業のために有用である。位置の決定は絶対的であってもよく(つまり、フライカッティングヘッドの回転位置が、ある開始点又は基準点に対して既知である)、又は相対的(つまり、フライカッティングヘッドの回転位置は、ある前の位置に対して既知である)であってもよい。例えば、上記の単純な角度位置の表現を使用して、フライカッティングシステムのいくつかの実施形態は、ユーザー又はシステムが、第1時点(t)において、切削要素が第1角度位置(a)にあったこと、第2時点(t)において、切削要素が第2角度位置(a)にあったことなどを決定することを可能にする。角度位置が、例えば、切削要素が最初に加工物に接触する位置(位置a)、及び切削要素が加工物の溝、又は他の機構の既知の部分を切削する位置(位置a)として指定される場合、位置aと位置aとの間の切削要素の位置若しくは向き、又は両方を変えるための作動装置を備えるフライカッティングヘッドは、そうするように起動し得る。要するに、時間の関数としての切削要素の位置を知ることは、操作者が任意の時点における、この切削要素の位置を指定することを可能にし、これは、システムが加工物中に連続的及び/又は分離性の機構を形成することを可能にする場合がある。
【0095】
図11に示される、フライカッティングシステム及び方法の実施形態では、フライカッティングヘッド1100は、切削要素1102、1103を含み、これは、シャンク又は工具ホルダー1104によって保持されるか、若しくはこれに組み込まれ、これは今度は、カートリッジ1106によってヘッド1100に取り付けられ得る。切削要素1102、1103は、例えば、ダイヤモンドであってもよく、これは工具ホルダー1104に保持される。あるいは、ダイヤモンドのなどの切削要素は、フライカッティングヘッド又はディスクに直接結合され、加工物中に機構を形成するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、切削要素1102は、切削要素1103のものとは異なる輪郭形状を有してもよい。例えば、切削要素1103は、マスター工具加工物中に基本構造を切削するために使用されてもよく、切削要素1102は、修正機構を切削するために使用されてもよい。
【0096】
例えば、フライカッティングヘッド1100は、通常、基部又はプラットフォームに固定されているハウジング1110、ハウジングに固定される固定子(図示されない)を含むDCモーターなどのモーター、及びポート1108を含み得る、空気軸受け1114によって支持される回転スピンドル1112を含む。フライカッティングヘッド1100はまた、ヘッドの静止部分と回転部分との間の信号若しくは電力、又は両方を伝送するための、スリップリング又は他のアセンブリを含み得る。
【0097】
フライカッティングヘッド1100はまた、エンコーダ、例えば、ハウジング1110に対する回転スピンドルの位置(又は位置の変化)を測定する回転エンコーダを含む。エンコーダの一部は、典型的には静止的であり、ハウジング若しくは固定子、又は両方に対して固定された位置にある(及び、典型的には内部に収容される)。エンコーダの第2部分は、典型的にはフライカッティングヘッドの回転部分、例えば、スピンドル1112に固定され、これは、エンコーダの静止部分と相互作用して、2つの部分の間の相対的運動を示す信号を生成するように適合される。例えば、エンコーダの回転部分は、一連の線又は他のしるしを有してもよく、エンコーダの静止部分は、2つの部分の間の相対運動の範囲を決定するための、これらの線の存在又は不在を光学的に検出してもよい。エンコーダ(典型的には静止部分)は次に、フライカッティングヘッドの位置に関する情報を含む、少なくとも1つの位置信号を伝送し、これは、コントローラによって受信され、命令信号を生成するために使用され得る。例えば、命令信号は、フライカッティングヘッド、又はプラットフォームと関連するモーターに伝送されてもよい。命令信号は、例えば、フライカッティングヘッドの速度、又は加工物に対するその位置を変化させてもよい。
【0098】
本記載においては、フライカッティングヘッドに保持される単一の切削要素が参照され得るが、多数の切削要素が、フライカッティングヘッドによって保持されてもよく、切削要素は、互いに同一であるか、又は異なっていてもよい。切削要素は単結晶又は多結晶ダイヤモンド、カーバイド、鋼、キュービック窒化ホウ素(CBN)、又は他の任意の好適な材料であってよい。好適なダイヤモンドカッティングチップは、Quebec,CanadaのK&Y Diamond Companyから入手可能である。ダイヤモンドなどの切削要素の形状、及び切削要素のためのシャンク又はホルダーの設計は、加工物に所望される表面機構、又は効果を生じるように特定され得る。切削要素は典型的には交換可能であるが、例えば米国特許出願公開第2003/0223830号(Bryan et al.)に記載されるように、2つ以上の切削先端、又は他の機構を含んでよく、上記特許の内容は本明細書に組み込まれる。ダイヤモンド製の切削要素は、例えばイオンミリングによるなどしてサブマイクロメートルスケールでミリングすることで、ほとんどあらゆる所望の構成の形状を形成する切削要素を作製することができる。フライカッティングヘッドの他のプロファイルは所望に応じて選択することができる。例えば、より大きな直径のフライカッティングヘッドは、より大きな切削半径に起因して、当然、より小さな直径を有するフライカッティングヘッドによって切削される溝に比べてより平らな底を有する溝の形成に用いることができる。
【0099】
本発明によるフライカッティングシステムは、図12に例示される。記載の容易化のため、座標系は、フライカッティングヘッド1200及び加工物1299に対して指定され得る。座標系の指定は任意であり、本発明の範囲を制限するためではなく、提供される図面に関連して本発明の理解を容易にするために提供される。座標系は、切削要素の先端に対して示され、相互に垂直なx、y及びz軸を含む。前述の座標系と一致して、x軸は、ロール1299と垂直であり、例示される実施形態では、ロール200の長手方向軸を通過する。図12に示されるように、y軸は垂直に延び、例示される実施形態では、ロールの外側表面の接線と平行であるか、又は一致する。z軸はロールの中心軸と水平及び平行に延びる。
【0100】
加工物は、例示される実施形態では、また、回転軸cをも有し、加工物は、この軸に対していずれかの方向に回転され得る。フライカッティングヘッド1200は、回転軸Aを有し、これは、図12においてy軸と平行である。例示される加工物は円筒形ロールであり、加工物の特定の形状が重要ではない本記載において加工物及びロールの表記は互換的に使用され得るが、他の形状及び寸法の加工物が、本発明に関連して使用され得る。加工物が円筒形ではなく、(平板又は円板のような)平面状である場合には、この関連で本発明の理解が容易になるように、様々な軸の事前指定における対応する適合がなされ得る。
【0101】
この実施形態では、円筒形加工物1299は、スピンドル1225上に固定的支持され、エンコーダ1226は、固定点、又は開始点に対するスピンドルの位置又は位置の変化を検出するために、位置付けられ、適合される。加工物はステンレス鋼のような金属から作製されるロール1299であり、より加工の容易な真鍮、アルミニウム、ニッケル、リン、硬銅、又はポリマーなどの材料から作製される外層を有してもよい。簡易化のため、本記載において、加工物は多くの場合「ロール」と称されるが、システムに好適な構成で、平面、凸状、凹状、複合的なもの、又はその他の形状であり得る。同様に、本記載において「ロール」という用語も、任意の好適な形状の加工物を例示することを意図されている。
【0102】
図13Bに示されるように、加工物は、一方の端部にテストバンド1310を含んでもよく、ここで、フライカッティングヘッドは、ヘッド及び加工物が、互いに対して適切に位置付けられ、同期されているかを決定するために、テストパターンを切削するようにプログラムされ得る。次に、テストバンドに形成された機構のプロファイルを評価することができ、いったんフライカッティングヘッド及び加工物の動作を最適化してから、加工物の異なる部分で実際の機械加工作業を行うことができる。テストバンドは必須ではないが、システムの実際の動作をシステムの所望の又は理論上の動作に合わせるためにはどのような調整を行う必要があるかを決めるために、有用であり得る。
【0103】
フライカッティングシステムは、好ましくは、コンピュータ、又はコントローラ1218によって制御され、これらは、1つ以上のアプリケーションを記憶するためのメモリ、情報の不揮発性記憶のための二次記憶装置、作動装置、若しくはその他の装置に出力され得る波形データファイルを生成する関数発生器、情報若しくは命令を受信するための入力装置、メモリ若しくは二次記憶装置に記憶されるか、若しくは別のソースから受信されるアプリケーションを実行するためのプロセッサ、情報の視覚的表示を出力する表示装置、又はスピーカー若しくはプリンターのように情報を他の形態で出力する出力装置、あるいは先行のいずれか2つ以上の組み合わせを含むか又はこれらに動作可能に接続され得る。コントローラはケーブル1220又は好適な無線接続により、データ又は信号を交換し得る。1つの有用な制御システムは、入力及び出力回路、並びにChatsworth,CaliforniaのDelta Tau Data Systemsから入手可能なPMAC制御を含む。このPMAC制御は、多軸PMAC2コントローラを増幅器と組み合わせて、例えば、フライカッティングヘッド及びロールの運動制御を提供する。
【0104】
本発明の制御システムは、本明細書に記載した結果をもたらすために既知の方法で設計され得るソフトウェア、ファームウェア、又はその両方を使用する。具体的には、ソフトウェアは、好ましくは、操作者が、個別の溝区分又はその他の表面機構のマクロレベル形状と、加工物における溝区分及び/又は分離性の機構のマクロレベルパターン(規則的又は不規則的、周期的又は非周期的)との両方を表す波形データファイルを作製することを可能にする。これらのデータファイルはその後、各種のシステム構成要素に伝達されてその動作と、好ましくは加工物に対する切削要素の同期とを制御する。
【0105】
各種の構成要素の運動をプログラムし、協調させるために、典型的には、所望のパラメータを入力してデータファイルを作成するためにソフトウェアが用いられ、次に波形生成装置が、作成データファイルを、駆動装置、作動装置、及び必要とされるその他の構成要素に送信される信号に変換する。例えば、ロール速度はほぼ0.001〜ほぼ1000回転毎分に設定されてもよく、フライカッティングヘッド速度はほぼ1000〜ほぼ100,000回転毎分に設定されてもよい。毎分およそ5000、およそ10,000、およそ25,000回転、及びおよそ40,000回転のフライカッティングヘッド速度が試験され、かつ一般的に好ましいが、これは、より高い速度は、微細複製マスター工具などの最終加工物を作るために必要とされる時間を低減するためである。
【0106】
例示される実施形態の加工物1299は、コントローラにより操作され、これからの命令信号を受信するモーターにより駆動されるスピンドルシステム上に固定的に支持され得る。スピンドルシステムは1つ以上の空気又は静圧ベアリングなどのベアリング1222を含んでよい。簡略化のために、ベアリング1222は、図12のロールの一方の端部にのみ示されるが、これらは、加工物1299に対して任意の好適な位置に位置付けられ、支持されてもよい。ロールは、モーター1224によっていずれかの方向に回転され得るか、あるいは、加工物1299が円筒形ではないか、若しくは異なるシステムを使用して位置付けられる場合、コントローラ1218によって提供される指示に反応して位置付けられる。代表的なモーター化されたスピンドルシステムは、4Rの表記で、又は10Rの表記で(これは空気軸受けを含む)、Professional Instruments of Hopkins,Minnesota,から、又はより大きな加工物については、油静圧スピンドルシステムが、Whitnon Spindle Division,Whitnon Manufacturing Company,of Farmington,Connecticutから入手可能である。スピンドルシステムは、好ましくはまた、加工物1299の位置を、望ましい範囲内の精度で検出し、この情報をコントローラへと伝送し、コントローラが加工物1299、及びフライカッティングヘッド1200を下記の方法で同期することを可能にするように適合される、回転エンコーダ1226を含む。
【0107】
図12に示されるように、フライカッティングヘッド1200は、好ましくは、フライカッティングテーブル1230(これは、「xテーブル」と称される場合がある)上に支持される。xテーブル1230は、x、y及びz軸の少なくとも1つに沿った、好ましくはx、及びzの両方に沿った、並びに更に好ましくはx、y及びz軸の3つ全て沿った運動に適合され、連続的又は好ましくは同時に、フライカッティングヘッド1200及びカッティング要素1202を加工物1299に対して位置付ける。当該技術分野において既知であるように、xテーブル1230は、2つ以上の次元又は方向に本質的に同時に動くことができ、このため、切削先端1202の位置は、コントローラ1218による制御下で、3次元空間内で容易に位置付けることができる。
【0108】
その他の従来の機械加工技術も、本発明のシステム及びその構成要素との関連において有用であり得る。例えば、切削要素1202、フライカッティングヘッド1200、作動装置(図示されない)又はその他の構成要素の温度を制御するために、冷却流体を使用してもよい。温度制御部を備え、冷却流体が循環する間、冷却流体を実質定温に維持するようにしてもよい。温度制御部及び冷却流体容器は、各種の構成要素を通して又はそれらに向けて流体を循環させるポンプを備えることができ、また典型的には、流体からの熱を取り除き流体を実質的に定温に維持するための冷房システムを備える。流体を循環させ、温度制御を提供する冷却及びポンプシステムは、当該技術分野において既知である。ある実施形態では、加工物1299が機械加工される間に、実質的に一定の表面温度を維持するために、加工物1299に冷却流体が適用され得る。冷却流体は低粘度オイルのようなオイル製品であってよい。
【0109】
機械加工プロセスのその他の態様もまた当業者には既知である。例えば、ロールは乾式切削又はオイル若しくはその他の加工助剤を用いて切削されてもよく、高速作動装置は冷却を必要とすることがあり、スピンドルを支持するもののようないずれの空気ベアリングにも清浄で乾燥した空気を使用すべきであり、及び、スピンドルはオイル冷却ジャケット又はこれに類するものを使用して冷却してもよい。この種類の機械加工システムは、典型的には、様々なパラメータ、例えば、構成要素の調整された速度、並びに、加工物材料の特性、例えば機械加工される材料の所定の体積に対する特定のエネルギー、並びに加工物材料の熱安定性及び特性を説明するように適合される。最後に、一定のダイヤモンド回転構成要素、及びPCT国際公開特許WO 00/48037号に記載される種類の技術、並びにフライカッティング構成要素、及び米国特許出願第2004/0045419(A1)号(Bryan et al)(これは本出願の譲受人に譲渡される)に記載される種類の技術がまた、本発明の関連において有用であり得る。
【0110】
例えば、円筒形ロールの場合、スピンドル(その上に、回転の長手方向軸の周囲で回転するためにロール1299が固定的に搭載される)と関連するエンコーダ1226を使用することにより、時間の関数として、加工物1299の位置が決定される。フライカッティングヘッド及びスピンドル又は他の加工物支持システムに使用されるエンコーダは、フライカッティングシステムと共に使用されるいくつかの従来的なエンコーダのように、速度の測定の目的のみではなく、位置を測定するために使用され得る。そして、エンコーダは次に、フライカッティングヘッド又はスピンドルの位置の位置信号指標をそれぞれ伝送することができる。これは、加工物1299と、フライカッティングヘッド1200の切削要素1202の位置を同期することを補助する。具体的には、エンコーダはロールの回転位置、フライカッティングヘッド1200のヘッド自体の回転軸に対する位置、Z軸などの別の軸に対するフライカッターヘッド1200の位置、及びフライカッター1200をロール1299に対して移動させるxテーブル1230の位置を決定するために提供されてもよい。したがって、用語フライカッティングヘッド1200の「位置の決定」は、一般的に、ヘッド1200の回転中のその位置の決定に関して使用されるが、これは、フライカッティングヘッド1200の、その軸に沿った軸位置又は軸周囲での回転位置に関する位置の決定を追加的に含み得る。一般にフライカッティングヘッド1200はいずれの軸に対して角度をもたせても、又はいずれの軸の周りに回転させても(又はいずれの軸に対して傾けても)よい。
【0111】
一実施形態では、この同期は、加工物1299に関連する(角度エンコーダのような)位置エンコーダ、及びフライカッティングヘッド1200に関連する別の位置エンコーダを提供することによって実現され得る。現在、インクリメンタルとアブソリュートの、少なくとも2つのタイプのエンコーダが入手可能である。インクリメンタルエンコーダはより安価であり得、例えば、ロール又はフライカッティングヘッドの既知の位置を示すインデックス信号と共に用いるならば、アブソリュートエンコーダと同様に効果的に機能し得る。加工物1299(又はその上にロールが搭載されたスピンドル)に関連するエンコーダ1226は、加工物1299のその回転軸に沿った位置を、所望の溝ピッチ、又は加工物129へと機械加工されるその他の寸法の機構の、極僅かな範囲内で検出するために十分な解像度を有するべきである。溝ピッチは1つの溝の中央から次の隣接する溝の中央までの距離、又は1つの頂部から次の隣接する頂部までの距離であり、他の表面機構についても通常、相応の寸法が計算可能である。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態において、フライカッティングヘッドに関連して有用な1つのエンコーダは、Vancouver,WashingtonのU.S.Digital Corpから、E5D−100−250−Iの表記で入手可能であり、これは、ヘッドの角度位置を測定するためにフライカッティングヘッド上に位置付けられる。本発明のある実施形態における加工物又はロールとの関連で有用なエンコーダは、Renishaw Signum RESM、直径413mm、ラインカウント64,800の表記で、Hoffman Estates,IllinoisのRenishaw Inc.から入手可能である。用途のために選択1226される具体的なエンコーダは、所望の解像度、フライカッティングヘッド1200又はその他の構成要素の最大速度及び最大信号速度による。
【0113】
加工物の表面に切削される機構の深さは0〜150マイクロメートル、又は好ましくは0〜35マイクロメートル、又は光学フィルムのための微細複製工具を作製するために更に好ましくは0〜15マイクロメートル、又は0〜3マイクロメートルの範囲であってもよい。これらの範囲は、本発明の範囲を限定することを意図したものではないが、このような工具を使用して製造されるフィルムに特定の光学的効果を提供するために有用な機構の大きさを代表し得るものである。ロール加工物については、個別の機構のいずれの長さも、ロールがその長手方向軸の周りに回転する速度の影響を受けるが、これは、より高い速度で運動するロールに長い機構を切削することは困難であるからである。切削要素が加工物の反対の向きに運動している場合は、切削要素が加工物と同じ向きに運動している場合よりも、長い溝が一般的により容易に形成され得る。個別の切削部が接続されて連続的な機構を生成するため、連続的な機構はほとんどあらゆる長さを有することができる。例えば、本発明のフライカッティングヘッドは、円筒形ロールの外辺部周囲のねじ切り部に似た連続的な機構を作るために使用され得る。分離性の機構では、それらの長さは、例えば、約1マイクロメートル〜数ミリメートルであり得るが、この範囲は本発明の範囲を限定することを意図しない。ネジ切りに関しては、ピッチ又は隣接する溝の間の距離は、約1〜約1000マイクロメートルに設定することができる。機構は、例えば、対称、非対称、プリズム型、及びほぼ楕円体のような任意のタイプの3次元形状を有することができる。
【0114】
本明細書に記載されている作動装置とシステムを用いて作製する微細構造は、1000マイクロメートルピッチ、100マイクロメートルピッチ、1マイクロメートルピッチ、又は更には200ナノメートル(nm)前後という可視波長以下のピッチを有することができる。あるいは、他の実施形態においては、微細構造におけるピッチは1000マイクロメートルを超えることができる。これらの寸法は例示することだけを目的とし、本明細書に記載の作動装置及びシステムを使用して作られる機構又は微細構造は、システムを使用して加工可能な範囲内であらゆる寸法を有することができる。
【0115】
加工物がその長手方向軸の周りに回転する円筒状のロールである場合には、この軸に平行な溝又は溝の連続を切削すべく配置されたフライカッティングヘッドは、生じる溝又は溝の連続が実際に平行となるように向きを変える必要があり得る。換言すれば、切削要素が、ロールが静止しているときにロールに平行な溝を切削するならば、切削中にロールが回転を許される場合には、(他のパラメータが一定に保たれるとすると)切削要素はわずかに曲がった溝をロールに切削することになる。この効果を相殺する1つの方法は、カッティングヘッドに角度をもたせることで、切削要素が、切削終了時には切削開始時に比べてロールの回転方向に更に進んでいるようにすることである。切削要素は、ロールとごくわずかな距離で接触しているので、結果は、ロールの回転にかかわらず、ロール表面の切削部はほぼ平行となり得る。他の方法でシステムを構成することによって、同様又は類似の目的を達成することも可能である。例えば、実施はより高価につくかもしれないが、フライカッティングヘッドをロールの中心軸の周りに回転可能とし、これにより、ロールが回転するにつれてヘッドがロールに追随するようにする方法がある。
【0116】
図12に示される円筒形加工物1299などの、加工物を機械加工するための有用なシステム及び方法では、その回転軸Aがy軸と平行に延びるようにフライカッティングヘッド1200が位置付けられ、それによってZ軸と平行に延びる溝又は機構が、加工物1299の表面内に切削される。
【0117】
様々な実施形態によるマスター工具を形成するため、円筒形ロールなどの加工物1299は、望ましい表面機構を提供するためにミリングされる。未完成のロールは、その中に構造又はパターンが切削されるべき外層を有し得る。この外層には、ランダム又はその他のパターンが切削された後で、パターンを保護するために、フィルムを正確に形成若しくは容易に剥離できるようにするために、又はその他の有用な機能を果たすために、1つ以上の追加的な層を塗布してもよい。例えば、クロム又は同様の材料の薄層が工具に適用されてもよいが、この種類の層は工具の鋭い縁部を「鈍くする」ことがあるので望ましくない。任意の機械加工可能な材料を使用することができ、例えば、加工物は、アルミニウム、ニッケル、銅、黄銅、鋼、又はプラスチック(例えばアクリルなど)で作製することが可能である。使用される特定の材料は、例えば、機械加工された加工物を使用して作製される様々なフィルムのような特定の望ましい用途に応じて決めることができる。
【0118】
一実施形態では、フライカッティングヘッド1200は、加工物1299に対して長手方向に動き、加工物1299の長さにわたる全体的な溝を切削する加工物1299の回転は次に増加され、別の溝が加工物1299の長さにわたって切削される。このプロセスによって生成されるマスターロール1350の溝1351が、図13Aに例示される。
【0119】
別の実施形態では、単一の溝区分が切削され、加工物が隣接する溝の望ましい位置の間の望ましいピッチ又は距離と等しい距離(外側表面で)で回転される。次に、第2溝区分が切削され、加工物が次の隣接する溝の望ましい位置の間のピッチと等しい第2距離で回転される。このプロセスは、溝区分が加工物の外辺部周囲に形成されるまで繰り返される。加工物が完全に一回転されると、コントローラは(これが加工物に関連するエンコーダによって送信される位置信号を受信するため)続く回転における工程中に加工物に切削される溝区分と、前の回転の工程中に切削される溝区分とを正確に位置合わせし、加工物の外側表面の長手方向に延びる溝又は他の望ましい機構との等価物を形成することができる。
【0120】
図13Bは、理想的な加工物1300を例示し、ここで個別の溝区分1301が加工物の第1回転中のフライカッティングによって形成され、その後溝区分1302が第2回転中に形成され、その後溝区分1303が第3回転中に形成され、同様に続く。第2及び続く回転中に形成される溝区分が、第1回転中に形成される溝区分と位置合わせされ、結果は、第1端部と第2端部との間に延びる、連続的な長手方向の溝である。溝区分を延ばし、加工物の全体長さにわたる溝を生じることは可能であるが、テストバンドの形成又は他の目的のために、ロールブランクの各端部の領域を残すことが望ましいことがある。
【0121】
加工物のその外辺部に、連続的な溝区分を切削することは、従来的なフライカッティング作業と比較した際にいくつかの利点を有するものと考えられるが、連続的な溝区分が重複する加工物の領域の視覚的外観は、望ましくないことがある。これらの機構の重複は、ロールの長さに沿って、1331(第2回転中に形成される溝区分が、第1回転中に形成される溝区分と重複する)、1332(第3回転中に形成される溝区分が、第2回転中に形成される溝区分と重複する)などに示される。工具上に作製される物品の光学的性能を改善するために、重複区域の視覚的又は非視覚的効果を最小化することが望ましいことがある。
【0122】
上記のように、フライカッティングヘッドの位置は、エンコーダを使用して決定され、加工物1299がその上に保持されるスピンドルの位置が、図12のエンコーダ1226を使用して同様に決定される。切削要素は、典型的にはフライカッティングヘッドに対して固定位置にあり、加工物は、典型的には、スピンドルに対して固定位置にあるため、フライカッティングヘッド及びスピンドルの位置を知ることは、本質的に、操作者が切削要素及び加工物の位置を知ることを可能にする。図12に示されるように、これらのエンコーダからのデータは、コントローラ1218に送信され、これは次に命令信号を、例えば、フライカッティングヘッドの回転運動を生じるモーター、若しくはフライカッティングヘッドのZ軸運動を生じるモーター、若しくはその上に加工物が保持されるスピンドルの回転運動を生じるモーター、又はこれらの2つ以上に伝送し得る。フライカッティングヘッドの位置と加工物の位置との間の関係が決定されると、フライカッティングヘッドは、加工物に電気的に「連動している」とされてよく、これは2つの部品の間に実際の機械的連動が存在しないためである。本発明に従って、フライカッティングヘッドが、加工物に電気的に連動すると、コントローラは、切削要素の軌道においていつ、これが加工物と接触するか、加工物のどこでこれが接触するかを決定することができる。上記の同時係属米国特許出願に詳述される、本発明の更なる態様では、切削要素が、これらの運動を生じることができる作動装置に接続される場合、ユーザーはまた、コントローラにより、フライカッティングヘッドに対する切削要素の位置又は向きを変えることができる。例えば、ユーザーは、切削要素が所定の切削パスに従うように毎秒数千回、切削要素の位置を変えることができる作動装置を起動することにより、本質的に線状の底部を加工物中に有する溝区分を作るように、コントローラをプログラムしてもよい。
【0123】
フライカッティングヘッド、及び加工物の両方の位置が制御されているとき、実際、一方が、通常は一定の、又は所定の速度で回転するように設定され、他方がこれに連動し(例えば、減速、又は加速する)、それによって2つが互いに対して正確な位置にある。フライカッティングヘッドは、毎分数線回転で動作するため、これは、かなりの量のエネルギー、慣性、及び/又は運動量を有し、ヘッドを加速又は減速して加工物の位置に適合させようとすることは、実際的ではないことがある。代わりに、フライカッティングヘッドは、本質的に一定の速度で回転するようにプログラムされてもよく、上に加工物が保持されるスピンドルが加速又は減速され、それによって切削要素及び加工物が、互いに対して適切な位置にくる。このシステムは、フライカッティングヘッドが「マスター」であり、加工物及びその対応するスピンドルがこれに対する「スレーブ」であるものとして称されることがある。逆もまた可能であり(フライカッティングヘッドを加工物のスレーブとする)、フライカッティングヘッドの回転、加工物の回転、及びフライカッティングヘッドのz軸運動が全て同期的に制御されている、第3実施形態である。フライカッティングシステムの、加工物の試験ストリップ部分における実験的試験は、典型的には、ヘッド及び加工物が、望ましい結果を生じるために、共に適切に連動しているかを決定するために有用である。
【0124】
上記のように、z軸と平行な溝又は機構は、加工物の中又は上に形成され得る。同じ手法のバリエーションは、例えば、図14に示されるように、フライカッティング装置を、図12のその位置に対して45°回転させることによって、若しくはヘッドを、図12のその位置に対して90°回転させるか、又は他の任意の配置によって、z軸に対してある角度をもつように、加工物中に溝又は機構を形成することである工具は、加工物に対して任意の角度で配置された線状の溝、又は非線状の機構又は更には相互に交差する機構でつくってもよい。プリズム又はその他の微細構造をロール又は加工物の表面上に作製するために異なる角度で切削される一連の平行な溝などを含む、他の角度配置もまた可能である。
【0125】
y及びz軸の両方に角度を有するように、加工物中に所定のパターンで溝又は機構を形成することは、z軸と平行にこれらを形成することよりも複雑である。これは、上述したいくつかの他の実施形態とは異なり、加工物の回転ごとに次の溝を形成すべくフライカッティングヘッドを単純にZ方向に一定の距離だけ進ませるものではないため、より複雑である。代わりに、加工物の回転ごとにフライカッティングヘッドのZ方向走行距離を分析的又は実験的に決定すべきであり、その結果、位置合わせされた溝区分が所望される場合には、加工物の次の回転において、次の溝セグメントが先行する溝に並ぶ。例えば、ロールの外周の周りに一連の45度の溝セグメントが、1個ずつ、先行のセグメントに比較してZ方向にわずかに進んで形成される場合には、ロールの回転完了後、第2の回転中に形成された溝セグメントは、第1の回転中に形成された溝セグメントに平行となるが、必ずしもそれらと端部同士を一致させて並ぶわけではない。この問題の1つの解決法は、第2の回転中に形成される溝セグメントが第1の回転中に形成されるセグメントとその端部同士を合わせて並ぶようにするために、ロールの回転完了後に第2の回転中に形成される溝セグメントに調整を加えるべき距離を算出することにある。この距離は、その後、1回の回転の間に形成される溝区分の数によって除され、得られた分数がそれぞれの連続する溝区分間のピッチに加えられ、その結果、加工物の1回の完全な回転の後、第2の回転中に形成される溝区分が第1の回転中に形成される溝区分に対して所望の距離だけ有効に前進する。これに続く回転においても同様のプロセスを用いることができる。
【0126】
フライカッティングヘッドは例示した軸の1つ以上に対して角度を有してもよく、及びまた、又はその代わりに、これらの軸の2つ以上の周りに回転してもよく、それによって、切削要素が予め定めた位置又は向きで加工物に接触する。例えば、フライカッティングヘッドは、図12に関してx軸の周囲で90度回転することができ、それによってこれは、y軸に位置合わせされ、次にy軸の周りに例えば45度の角度で回転することができ、それによって切削要素が加工物に一定の方法で接触する。
【0127】
円筒状の加工物の長手方向軸に対して一定の角度で溝を形成する能力は、工具の長手方向軸に平行又は垂直な、本質的に線状の溝を含む従来の円筒状工具に比較して、有利である。これは、溝がシートの辺に対して45度の角度をなすようにしてシートを使用しようとするユーザーであれば、通常、長手方向又は横方向に延在する溝を有する大きな片のシートから、一定角度でシートをダイカットすることが必要だったからである。この方法では、大きな片のシートの辺付近に著しい無駄を生じる恐れがある。本発明では、シートの辺に対して45度の角度(又はその他の任意の選択角度)で延在する溝を有するシートが工具上で直接形成でき、このシートを使用のためにカットする場合でも、シートの辺に沿った部分の無駄は最小限である。
【0128】
図14は、フライカッティングヘッド1450をy軸に対してαの角度で配置し、これが、加工物1400に、加工物1400の長手方向軸に対してほぼ45度の角度で機構を形成することを可能にする一実施形態を例示する。角度αが測定される座標系は任意であり、他の位置又は向きにヘッドが位置決めされ得ることを制限することを意図するものではない。角度αは0〜360度の範囲であり得る。一般にフライカッティングヘッド1450はいずれの軸に対して角度をもたせても、又はいずれの軸の周りに回転させても(又はいずれの軸に対して傾けても)よい。
【0129】
本明細書において記載される、連続的及び/又は分離性の機構は、任意の好適なフライカッティングヘッドを使用して提供され得る。図15、及び16に示されるフライカッティングヘッド1512、1612は、それぞれ、切削要素1516、1616がヘッドに固定され得る位置を含む(例えば、一実施形態では、切削要素1516、1616が固定され得るカートリッジ1532、1632の使用を介して)。ヘッド1512、1612は更に、空気軸受けを含み、ヘッド1512、1612を駆動するDCモーターなどのモーターに連結されている。フライカッティングヘッド1512、1612と関連する回転エンコーダは、ヘッドを支持する回転シャフトの回転位置を検知するが、これは、切削要素の位置が、次に、本明細書に記載するように、加工物に対するこれらの回転位置に同期して動的に制御できるようになることから、有用である。フライカッティングヘッドの他のプロファイルは所望に応じて選択することができる。例えば、より大きな直径のフライカッティングヘッドは、より大きな切削半径に起因して、当然、より小さな直径を有するフライカッティングヘッドによって切削される溝に比べてより平らな底を有する溝の形成に用いることができる。
【0130】
切削要素1516、1616は、好ましくは切削要素カートリッジ又はキャリア1532、1632によって保持され、切削要素1516、1616は(単独で又はカートリッジ若しくはキャリアと共にのいずれかで)、作動装置を用いて位置決めされ、又は再位置決めされる。カートリッジ1532、1632は、本発明のいくつかの実施形態において、切削要素の置換、及び正確な位置付けを促進するために有用であり得るが、切削要素1516、1616を、このようなキャリアなしに、作動装置上に直接搭載することが可能であり得る。キャリア1532、1632は、使用される場合、以下の材料:焼結炭化物、窒化ケイ素、炭化ケイ素、鋼、チタン、ダイヤモンド、又は合成ダイヤモンド材料の1つ以上で作製され得る。切削要素キャリア1632、1532のための材料は、剛性であり低質量であることが好ましい。切削要素は1516、1616、接着剤、ろう付け、はんだ付け、又はその他の方法で切削要素キャリア又は作動装置に直接固定され得る。
【0131】
フライカッティングヘッドによって保持される1つ以上の切削要素の位置の、急速な変化を生成するために、少なくとも1つの作動装置1528、1628、1629が提供される。作動装置1528、1628、1629は、切削要素の位置又は向きの変化を生じさせる任意の装置であってよく、高速工具サーボ(FTS)の構成要素であってもよい。高速工具サーボは、典型的にはソリッドステートPZTスタックを含み、これは、PZTスタックに取り付けられた切削工具の位置を迅速に調整することができる。PZTスタックは、サブナノメートルの位置解像度を有するものが入手可能であり、きわめて迅速に反応すると共に、何百万、又は更には何十億というサイクルの後でも実質全く磨耗を呈することがない。作動装置1528、1628、1629は、コントロールワイヤ1540、1640、1642によって、コントローラに電気的に連結される。コントローラは、コントローラが位置付け誤差を調節することを可能にする、位置センサからの情報を使用して、開ループ動作又は閉ループ動作の作動装置の運動に影響し得る。
【0132】
本発明の一実施形態では、作動装置1528、1628は、フライカッティングヘッドに対して切削要素の位置又は向きを定めるために、フライカッティングヘッド1512、1612と切削要素1516、1616との間に位置付けられる。他の実施例では、1つを超える作動装置が提供され、各切削要素に関連付けられることで、切削要素の位置及び向きが、対応する数の方向又は向き、又はその両方について制御可能となる。例えば、図16では1つの作動装置1628が切削要素の位置をx軸に沿って変化させ、第2作動装置1629が切削要素の位置をZ軸に沿って変化させる。
【0133】
有用であることが示されている1つの作動装置は、Hayward,CaliforniaのKinetic Ceramics Companyから表記D1CN10で、所望により搭載を容易にするために作動装置に貫通孔をあけた状態で入手可能なものなどの、PZT作動装置である。この作動装置は、電気信号の変化に応じて長さを変え、その最長移動距離はほぼ9マイクロメートルであり、共振周波数はほぼ25kHz(工具先端などのシステムについて)又は90kHz(圧電素子自体について)である。音声コイル作動装置、又は磁歪作動装置(現在、Ames,IowaのEtrema Products,Inc.より入手可能な、表記「Terfenol−D」の材料を用いたもの)、又はその他の圧電素子と同様、より長い移動距離が所望される場合には運動増幅PZT作動装置もまた、有用であり得る。用途のために選択された特定の作動装置は、変位、周波数応答、剛性、及び回転若しくは屈曲運動など、その用途に所望の運動要件による。
【0134】
フライカッティングヘッドと共に1つを超える切削要素が用いられる実施形態では、本明細書に記述されるように、1つの、1つを超える、又は全ての切削要素を1つの作動装置と共に使用し得る。例えば、1つの固定位置切削要素、及び第2の動的制御可能切削要素を有するフライカッティングヘッドを使用して、前者が加工物からより大量の材料を除去する傾向を有するようにし、後者が、固定位置切削要素によって事前に形成された機構の内部、又は近傍に特定の機構を形成する傾向を有するようにすることが有用であり得る。あるいは、このタイプの一実施形態では、「固定位置」切削要素は、作動装置によって動的制御可能なものではあるがその動的制御機能を使用しないということであってもよい。換言すれば、作動装置は切削要素の位置を変えることが可能ではあるが、制御システムは、切削要素を固定位置に単純に保持する。また、切削要素は、加工物に接している間、フライカッティングヘッドに対して一定の位置に保持可能であり、その後、切削要素が加工物に接触していない間に、切削要素の位置若しくは向き、又はその両方が変化されてもよい。
【0135】
作動装置は1つを超える信号又は1つを超えるタイプの信号を1つ以上の電線、光ファイバ、又はその他の信号伝送デバイスを通して受信してもよい。作動装置はAC又はDC電力を受信して、工具ホルダーの位置又は向きを変えるのに必要な駆動力を生成してもよい。作動装置はまた、駆動信号を受信してもよく、この信号は、作動装置によってもたらされる位置又は向きの変化に比例し得る。作動装置は、作動装置の初期状態、位置、又は向きへの復帰を許可し又は行うゼロボルト信号などの基準信号を受信してもよい。最後に、作動装置又は関連するハードウェアは、工具ホルダー又は切削要素の位置又は相対位置に関する情報を供給するフィードバック信号を送信してもよく、例えば、これにより、その後の工具ホルダー又は切削要素の位置又は向きの変化を適切に構成することができる。記載したタイプの信号又はその他の信号は、専用の電線又は光ファイバを通して送信されてよく、又は適切な場合には単一の電線又は光ファイバ上で多重化されてもよい。本明細書に記載されている電力及び信号、並びに他の必要又は有用な任意の信号の伝送にはまた、静止している構成要素から回転している構成要素へと信号を伝送するために、当該技術分野において既知であるように、スリップリング又はその他の機構の使用が必要となることもある。有用であり得る1つのスリップリングは、South El Monte,CaliforniaのFabricastから、製品番号表記09014で入手可能である。電力、若しくは信号、又は両方を伝送するための他の構成要素としては、水銀湿潤スリップリング、光ファイバ回転ジョイント(FORJ)、及び非接触磁気スリップリングが挙げられる。
【0136】
本発明の別の実施態様は、作動装置に関するヒステリシス効果の存在についての補正に関係する。「ヒステリシス効果」という用語は、本発明に関して用いられる場合、作動装置(並びに、ひいては工具ホルダー及びこれに関連する切削要素又はそれに類するもの)が1方向に移動する経路が、始点及び終点が実質同一でありながらも、反対方向に移動する経路と完全に一致しない場合があり得る、ということを意味する。このヒステリシス効果が補正されなければ、実際の機構の形状は、前提とした機構の形状とは異なり、望ましくないことがあり得る。
【0137】
記載されたタイプのシステムにおいてヒステリシス効果を克服する1つの方法は、電荷制御増幅器などの改良型の信号増幅器を用いて、作動装置に対して電圧の代わりに電荷を制御することである。この方法は、ヒステリシス効果を10〜20倍削減すると考えられている。別の方法は、光子プローブを含むシステムなどのフィードバックシステムを使用して作動装置(又は工具ホルダー若しくは切削要素)の位置又は向きを、移動の両方向において検出し、その情報を使用して、作動装置に送信される信号を制御することによってヒステリシス効果を補正することである。これら最初の2つの方法は、共に用いることもできる。第3の方法は、既知のヒステリシス効果を補正するように、作動装置に向けられる信号の波形を構成することである。例えば、作動装置に、工具ホルダーを既知の距離だけ延出させるために5ボルトの信号を、作動装置に、元の位置に戻す(しかしながらヒステリシス効果に起因して異なる経路による)ようにするために0ボルトの信号を送信する代わりに、「行き」と「帰り」の経路が基本的に同一になるように、これらの信号を構成することができる。この方法は加工物に同じ機構が繰り返し形成される場合には、1つの補正波形が繰り返し利用できるので有効に働くが、一連の機構が異なる場合には、各一連の機構ごとに補正波形を再発生しなければならないので、それほど有効ではないと考えられる。
【0138】
作動装置への信号又は電力伝送用の接続は、ライン1540、1540、及び1640で表され、これらは、上述したように例えば電線又は光ファイバであり得るが、これらを通して信号又は電力又はその両方がコントローラから作動装置へと、及び、例えば、フィードバックシステムの場合であれば作動装置からコントローラへと伝達される。PZT効果により、かつ印加される電界のタイプに基づいて、切削要素1516、1616の小さくて精密な動きを生じさせることができる。また、作動装置1528、1628、1629の端部を1つ以上のベルビル(Belleville)ワッシャに対して搭載することにより、作動装置を予め装着することもできる。ベルビルワッシャは幾分の可撓性を備え、作動装置及びそれに付された切削要素が動けるようになっている。作動装置が複数のPZTスタックを有する場合、別個の増幅器を用いて、スタックに取り付けられた切削工具の動きを独立に制御するのに用いるための各PZTスタックを独立に制御することができる。
【0139】
本発明の特定の実施形態では、使用のために選択される作動装置は、動的制御可能な作動装置である。「動的制御可能」という用語及びその変化形は、フライカッティングヘッドを停止させることなしに工具ホルダー(及びこれに伴う任意の切削要素)の位置又は向きを調整することを可能にする、本発明の特徴を指す。好ましい実施形態では、工具ホルダー(及び任意の関連する切削要素)の位置若しくは向き、又はその両方は、切削要素が加工物を切削している間に変化されてもよく、又は切削要素が加工物を切削していない間に変化されてもよい。例えば、本発明の動的制御可能なフライカッティングヘッドは、切削要素の有効長をx軸に沿って変化させる電気信号などの信号を作動装置が受信したときに、切削要素の効果的な切削経路を調整することができる。動的制御可能なフライカッティングヘッドは、上記に代えて、又はこれに加えて、切削要素の位置をその他の軸に沿って、又は1つ以上の軸の周りに回転的に、又はこれらの1つを超える組み合わせで、変化させてもよい。このことは、切削プロファイルを変化させるために、例えばフライカッティングヘッドの停止中にレンチ又はその他の工具を使用することにより、ヘッドの静的調整が行えるだけである他のカッティングヘッドとは対照的である。
【0140】
作動装置は、作動装置を制御するためにコンピュータ数値制御(CNC)信号のセットを作動装置に供給する、開ループ制御システムを使用して制御してもよく、又は、回転中に切削要素の位置を検出し、その位置情報を継続的に利用して作動装置を制御するのに用いる信号を生成若しくは調節する、閉ループ制御システムを使用して制御してもよい。本明細書に記載したタイプの作動装置は、(受信信号に基づいて)シーケンス命令を10kHz又は更には50kHz以上の速度で実行でき、それに50応じて、きわめて高い解像度を呈する表面機構、又はフライカッティングシステムで過去には容易に形成されなかった機構を提供するために、切削経路の増分調整を行うことができる。一方、作動装置は、0Hz(カッティングチップの位置及び向きが動的に制御されない固定信号の場合)又は0HZより高い低速信号の実行にも使用され得る。
【0141】
本発明の別の実施形態では、本発明の動的制御動作特性が加工物の位置と同期されて、いくつかの、特に有益な効果を得る。すなわち、動的制御可能な作動装置を、切削要素の位置にかかわらず固定された命令セットに応じて動作させる代わりに、切削要素の位置がロールの位置と同期される。一実施形態では、ロールの回転位置は、非線形である溝セグメントをロールに作製するために予め定めた範囲内で変化するフライカッティングヘッドのZ軸位置と協調(同期)し、切削要素のx軸位置はフライカッティングヘッドの回転位置と協調する。規則的又は不規則的であり得る、切削要素の位置におけるx軸の変化は、変化する深さ及び/又は幅を有する溝区分を生成することができ、これは様々な高さ及び/又はピッチを備える溝を有する工具を生成するために使用され得る。
【0142】
切削要素は磨耗を経験し、磨耗によりロールに切削される機構のプロファイルに微妙な変化が生じることから、ロール又はロール上に形成された加工物の精密な検査により、一連の溝区分が先に最初に述べたようにロールのZ軸に沿って作製されたか、又は2番目に述べたように外辺部に沿って作製されたか、を示すことができると考えられている。換言すれば、上で1番目に記述したZ軸切削方法を用いた場合、切削要素は、一連の溝のそれぞれを切削するたびに磨耗し、その結果、最初の溝に並んで最後の溝が切削されるときまでに、磨耗した切削要素によって形成されるその最後の溝は、磨耗のない、又は磨耗の少ない切削要素によって形成された最初の溝からは、少なくともミクロスケールでは著しく異なった外観を呈することとなり得る。これは、隣接する2つの溝又はその他の機構の間の違いのため、「仮想シーム」とでも呼べるものである。2番目に上述した外周切削方法を用いて小さな個々の溝セグメントをロールの外周の周りに形成する場合、磨耗のない、又は磨耗の少ない切削要素によって形成される機構はロールの第1の端部にあり、磨耗した切削要素によって形成される機構はロールの第2の端部に生じることになる。上述したような「仮想シーム」を有するロール及び「端部間」の磨耗パターンを有するロール、並びに、それらの形成方法及びそれらを用いて製造されるシートその他の物品は、全て本発明の範囲内にある。
【0143】
図11〜16に例示されるフライカッティング技術は、様々な方法により、基本構造及び/又は修正機構を切削するために使用され得る。例えば、基本構造及び修正機構の切削は、最初に基本構造をフライカッティングし、次に修正機構をフライカッティングすることを含む、2工程プロセスで行われてもよく、それによって修正機構が、基本機構に重ねられる。あるいは、修正機構は、最初にマスター表面の表面にフライカッティングされ、その後の工程で、修正機構にわたって基本構造をフライカッティングしてもよい。
【0144】
本明細書において記載されるような、基本機構及び/又は修正光学機構に適用され得るフライカッティングの使用に関する追加的な態様は、代理人整理番号第62782US002号及び代理人整理番号第63327US002号(共に、2007年8月6日に出願)によって特定される、同一所有者の特許出願に見出され得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、2つの異なる切削プロセスは、基本構造及び修正機構を切削するために共に使用され得る。例えば、一実施形態では、旋盤を使用して基本構造が形成され、修正機構がフライカッティングによって形成される。あるいは、基本構造フライカッティングによって作製されもよく、修正機構は旋盤によって作製される。
【0146】
重ねられた基本構造及び修正機構を有する、製作された光学フィルムが、向上した光学特性を有する導光フィルムを作るために特に有用である。例えば、本発明の実施形態による導光フィルムは、実質的に平行に配置された、線状三角形プリズムの配列を含んでもよく、これは、光の方向付け又は再利用によって、輝度の向上を提供する。線状プリズムの上に重ねられた、急峻な非連続的な別個の機構は、向上した拡散及び欠陥隠し特性を提供する。いくつかの実施形態では、基本構造及び/又は修正機構は、フィルムの拡散特性を更に向上する複数の追加的回折素子組み込んでもよい。これらの追加的な回折素子は、基本及び/又は修正機構の構造を修正する、平面的又は湾曲した形状を含んでもよい。例えば、基本構造と共に使用される場合、回折素子は、機構の1つ以上の側部、機構の上部及び/又は底部の構造を修正してもよい。あるいは、又は追加的に、回折素子は、修正機構と共に使用されて、機構の表面を修正してもよく、それによって修正機構の光散乱を増加させる。回折素子は、望ましい構造の工具先端を使用して形成され得る。本明細書で例示されるものなどの工具先端が、旋盤又はフライカッティング技術を使用した基本構造及び/又は修正機構の切削のために利用されてもよい。
【0147】
旋盤及びフライカッティングのプロセスでは、工具先端の形状が、工具先端を使用して形成される機構に特徴的な形状を付与する。図17〜21は、工具先端構造(図17A、18A、19A、20A、21A)、対応する工具先端で切削された微細複製マスター工具切削部の部分(図17B、18B、19B、20B、21B)、及び対応するマスター工具を使用して形成される連続的な基本構造を有する光学フィルムの部分(図17C、18C、19C、20C、21C)の図を例示する。例示される工具先端は、旋盤用途に特に適用可能であるが、旋盤、又はフライカッティング用途のいずれかに使用され得る。単純化のために、修正機構は、これらの図には示されない。光学フィルムに形成される基本構造は、実質的に平面的である1つ以上の側部(図17、20、21)又は1つ以上の湾曲した側部(図19)を含み得る。基本構造の頂部は、鋭くても(図17、18、20、21)又は平坦(図18、20)であってもよい。基本構造は、対称である必要はない(図21)。図17〜21に例示される基本機構の形成の前又は後に、同じ又は異なる工具先端構造を使用して、修正機構が形成されてもよい。
【0148】
図22〜31は、回折素子を含む、代表的な構造の図である。これらの構造を組み込む工具先端は、基本構造及び/又は修正機構に追加的な回折素子を付与するために使用され得る。例えば、代表的な構造を呈する工具先端は、旋盤用途に使用されて、微細複製マスター工具に対応する構造をつくってもよく、これは今度は、フィルムの製作に使用される。構造はまた、フライカッティング用途で実施されてもよい。本明細書において例示される構造は、必ずしも縮尺通りに示されない。むしろ、これらは、回折を提供する機構及び構造の、形状及び構成の例を示すことを意図される。機構は、望ましい特性によって、あらゆる寸法及び間隔を有することができる。
【0149】
いくつかの実施形態において、回折素子は、光の回折を生じるフィルム、若しくは物品の機構を指し、あるいは、フィルム又は物品を作製するために使用されるときにフィルム又は物品の回折機構を生じる工具の機構を指す。上記のように、回折素子を有するフィルム又は物品は、対応する回折機構を有するマスター工具から作製される。回折機構は、マスター工具から作製されるフィルム又は物品において、所望の量の回折を得るべく調整することができる。具体的には、回折素子の寸法及び形状は、回折素子間の間隔とともに、特定用途に所望される光の回折の量又は程度に関して設計することが可能である。例えば、回折素子間の間隔が低減すると、回折素子は、光の回折の増加を生じる。したがって、より広く離れた間隔の回折素子は、より小さな回折を生じ、互いにより近い間隔の回折素子は、より大きな回折を生じる。特定の実施形態において、例えば、溝などの回折素子は、10マイクロメートル、5マイクロメートル、1マイクロメートルの範囲内で、あるいは、光の特定の波長付近の距離の範囲内で離間することができる。一実施形態において、回折素子は、実質的に三角形の断面形状及びそれらの間に650nmの間隔を有する多数の機構を含む。例えば、一実施形態において、それぞれがおよそ650nm離間した28個のかかる機構を包含する。いくつかの実施形態においては、回折機構はナノスケール機構を参照する。例えば、回折素子はおよそ100nmの大きさ、又は更に僅かおよそ10nmの大きさを有することができる。工具先端の回折素子の大きさは、以下に示されるように回折工具先端で機械加工された加工物から作製されるフィルム内の回折素子と実質的には同じ大きさに帰する。
【0150】
図22〜31に示される構造を有する先端工具は、例えば、ダイヤモンドスラブで実施され得る。工具先端上の回折素子は、好ましくはイオンミリングにより作製することができる。工具先端に回折機構を作製するための他の技術には、微細放電加工、研削、研磨、切除、又は工具先端にスクラッチ若しくは機構を付与するその他の方法が挙げられる。あるいは、ダイヤモンドを従来のやり方で研磨し、一緒に正確に固着させて、回折機構を有するマクロ工具アセンブリを作製してもよい。くぼみ回折機構の代替として、機械加工された工具先端は、突起した回折機構、又は圧痕と突起の回折機構の組み合わせを有することができる。
【0151】
マスター工具は、図22〜31に示される構造を組み込むように機械加工される場合があり、マスター工具は、上記のフィルムを作製するために使用され得る。例えば、マスターは機械加工されて連続的な基本構造、及び/又は分離性の修正機構を生成し、これはまた図22〜31に例示される回折形状を含み得る。マスター工具から作製される光学フィルムは、補完的構造を有し、独自の回折及び屈折力を有するように作製され得る。向上フィルムにおけるこれら特有の回折及び屈折光学形態の例示的な目的は、単に工具の先端上に半径を設けるよりも更に多くの用途で中央視域から光を移動させるために、より多くの選択肢を提供することである。
【0152】
マスター工具は、上記のように、プランジ研削又はイオンミリングされたダイヤモンドを用いたねじ切りを通して実現することができる。プランジカッティング、及びねじ切りは、米国特許第7,140,812号及び同第6,707,611号に記載される。これらの工具先端で機械加工されるマスター工具から作製されるフィルムでは、回折素子がフィルムの全ての基本機構又は修正機構に存在する必要はない。例えば、プランジカッティングは、回折素子を有する回折素子を有する基本機構及び/又は修正機構と、回折素子を有さない基本機構及び/又は修正機構とを交互配置するために使用され得る。いくつかの実施形態では、回折機構は、プリズムの切子面の1つのみに存在し得る。このような工具先端は、より細かい輝度プロファイルの光学的な調整を可能にする。回折素子はまた、BEFなどの光学フィルムにおける、より平滑なカットオフ、又は輝度特性を促進する。回折素子はまた、基本及び/又は修正機構、並びに回折素子を別々に作るための、多数の工具先端の使用と比較した際に、光学フィルムの切削時間の削減を促進することもできる。
【0153】
図22Aは、両方の切子面に回折素子2202及び2204を提供するために使用され得る断面構造2200を例示する。回折素子2202及び2204は、この例においてV字溝、又はノッチとして示される。回折格子間の格子間隔2203は、価値又は重要性のある異なる特性を生み出すため一定又は多様であり得る。例えば、格子間隔を変化させることにより、一定の格子間隔と比較して、対応する光学フィルムにおける発散プロファイルを平滑化することができる。この間隔は、波長依存性に役立ち、色彩効果を改善することもできる。イオンミリングされた格子の形状は、V字形である必要はないが、通常は負の抜き勾配(negative draft angle)を避けるべきである。格子溝又はノッチの幅及び深さは、一般に1マイクロメートル未満であるが、1マイクロメートルを超えることができる。ノッチ又は溝を生み出すために利用できる形状は非常に多く存在する。可視光線用途の場合、格子溝の間の距離2203は、一般に0.5マイクロメートル〜10マイクロメートル間隔の範囲であるが、設計目標を達成するため他の範囲が使用されてもよい。
【0154】
ダイヤモンド工具は、5マイクロメートル離間した(距離2203)回折素子2202及び2204を備え、溝にわたり1マイクロメートルの幅を有する各回折素子を備える、この設計を使用して生成された。この場合、回折溝は、フィルム試料において約31°でカットオフする最高点を通る、屈折区域から離れた光の散乱を制御することが示された。ゴニオメーターによる光度測定を使用して、このフィルムの回折素子が、輝度特性を円滑に拡大することが示された。輝度プロファイルは、格子間隔をより大きくすること、及び溝又は機構の数を減らすことにより調整することができる。あるいは、プロファイルを微調整するために、格子間隔の低減、及び溝又は素子の数の増加がまた使用され得る。
【0155】
図22Bは、両方の切子面に回折素子2205及び2207を提供するために使用され得る断面構造2201を例示する。図22Bに例示される構造2201は、回折素子2205及び2207が平坦な部分ではなく、湾曲した部分によって隔てられているという点において、図22Aに示されるもののバリエーションである。図23〜31に関して後述するイオンミリングされたダイヤモンド形状の例は、輝度プロファイルを調整するための他の実施形態を示す。
【0156】
図23は、1つの切子面に回折素子2308を有し、他方の切子面2310に素子を有さない、構造2306を例示する。回折素子2308は、V字溝又はノッチを含み、一定の又は様々な格子間隔を含み得る。
【0157】
図24Aは、ステップ高変化2413を使用する回折素子2414を備える構造2412を例示し、これは素子間で一定であるか、又は様々であってよい。
【0158】
図24Bは、ステップ高変化2415を使用する回折素子2411を備える構造2409を例示し、これは素子間で一定であるか、又は変化してもよい。工具先端2409は、回折素子2411が、回折素子の両側部上において、ステップ高の変化を有するのではなく、単一の角度のステップ高変化を有するという点において、工具先端2412の構成のバリエーションである。
【0159】
図25は、90°(2518)の切子面側部2517、及び2519に沿って、回折素子2520及び2522を有する構造工具先端2516を例示する。回折素子2520及び2522は、設計に対して適切に、又は所望に応じて、先端付近、又は(先端から離れた)谷部付近であり得る。また、回折素子2520及び2522は、任意により90°切子面壁部に沿って位置することができる。
【0160】
図26は、平坦な先端2625に沿って回折素子2624を有する構造2623を例示する。一実施例において、工具先端上の回折素子のこの種類の配置は、1マイクロメートル離間した11個のV字溝(2624)を有する10マイクロメートル幅(2625)を有するダイヤモンドから作製された。
【0161】
図27は、湾曲した先端2727に沿って回折素子2728を有する構造2726を例示する。
【0162】
図28は、例えば、90°の切子面に沿って高さ2833を有する、ステップに形成される回折素子2832を有する構造2830を例示する。
【0163】
図29は、工具先端の実質的に平坦な部分に沿って、レンズ状の形状を有する回折素子2936を有する構造2934を例示する。
【0164】
図30は、切子面に沿った隣接する凹部、及び凸部から形成される、湾曲した切子面3040に沿った、回折素子を有する構造3038を例示する。
【0165】
図31は、切子面に沿った隣接して角度を有する部分から形成される、多数の直線による切子面3144に沿った、回折素子を有する構造3142を例示する。
【0166】
上記のもののような構造の使用は、多くの有利な又は望ましい特性を提供し得る、回折素子を有するフィルムなどの微細複製物品を作製するために使用され得る。例えば、それらは、光の方向付け(light direction)、カットオフ角軟化(softening cutoff angles)、光ガイドに関する光の抽出(extraction of light for light guides)、又は断続切削小型レンズ上のレインボー効果など、既存の機構上の装飾効果に対する光管理用途に使用することができる。更に、より大きな微細構造上の回折素子は、光を向け直すための追加の自由度を提供する。
【0167】
上述した構造は、マクロスケール(1マイクロメートル以上の寸法)及びナノスケール(1マイクロメートル未満の寸法)で機構を作製するのに使用でき、機構は、連続、及び/又は断続切削方式で1つ以上の工具先端を使用して作製することができる。加えて、工具先端を使用する切削は、x方向、y方向、若しくはz方向、又はこれらの方向の組み合わせで工具中へと達成することができ、あるいは、回折素子は、作動装置を使用せずに工具中に切削することができ、これは、例えば、低周波サーボを使用して、工具の表面に実質的に一定又は一定でない深さに保持される工具先端での連続的切削を含むことができる。
【0168】
前述のように、いくつかの実施形態では、微小複製マスター、及びマスターを使用して作られるフィルムは、x軸、z軸、及び両方に沿った切削工具の運動によって生じる、様々な機構を有する機構を含み得る。ピッチ、及び/又は高さにおけるこれらの変化は、一般的に生じる様々な光学的欠陥を改善するためにフィルムに組み込まれ得る。プリズムのピッチにおける変化は、光学フィルムのモワレ干渉パターンの外観を有利に低減し、プリズム高さの変化は、ウェットアウト区域の発生を有利に低減する。
【0169】
いくつかの実施形態では、x及び/又はz方向の変化を呈する、連続的な基本機構が、急峻な連続的な分離性の機構と重ねられてもよい。図32に例示されるように、切削工具のx方向の運動は、より高い機構3201(マスターのより深い溝と対応する)、及びより低い機構3202(マスターのより浅い溝と対応する)の、機構間のパターンによって特徴付けられる構造を生成するために使用され得る。z方向における切削工具の運動は、図33に例示されるピッチの変化を有する、機構間のパターンによって特徴付けられる構造を生成するために使用され得る。図33では、第1組の機構3301がピッチpを有し、第2組の機構3302がピッチpを有する。前述のように、機構間、又は任意の特定の機構に沿って生じる変化は、規則的又は不規則的であり得ることに留意する。規則的パターンは、周期的又は非周期的であり得る。様々な特性を有する機構が、交互配置されてもよい。
【0170】
いくつかの実施形態では、機構に沿って、x及び/又はz方向に、変化を呈する基本機構が、急峻な非連続的な修正機構と重ねられてもよい。x及び/又はz方向における切削工具の運動が使用されて、特定の機構に沿って生じる機構の変化を生成してもよい。図34は、機構長さに沿ってピッチが変化する機構3402、3404、3406、3408と交互配置される、機構長さに沿って高さが変化する機構3401、3403、3405、3407を例示する。他の実施形態は、高さの変化なしにピッチの変化を、又はピッチの変化なしに高さの変化を組み込んでよい。
【0171】
いくつかの実施形態では、x及び/又はz方向の切削工具の運動の、比較的速い連続的な変化が、x及び/又はz方向におけるより遅い連続的変化と共に使用され得る。図35は、切削工具のz方向の運動が、p≠pとなるように、ピッチの機構間の変化を生成する、実施形態を例示する。切削工具のx方向におけるより急速な運動が、各機構3510に沿った、高さの変化を生成する。
【0172】
いくつかの実施形態では、切削工具の高周波数z方向運動、及び高周波数x方向運動の両方が使用されて、微細複製マスター、及び光学フィルムの、基本機構及び/又は修正機構を作る。これらの構造は、切削工具の運動により、x及びz軸それぞれに沿った運動を生成する第1及び第2作動装置の結果として、達成され得る。2つの作動装置を含む切削ヘッドが、図6Aに例示される。x、及びz変化の両方を有する構造がまた、x成分及びz成分の両方を有する軌道に沿って切削する、短軸作動装置の使用によって達成され得る。この種類の軌道切削のための、切削ヘッド構成が、図9Aに例示され、図36A及び36Bは、軌道に沿った切削によって形成される、x及びz軸の運動を有する基本構造3600を例示する。図36A〜36Cの構造に示される線は、プリズムの高さ変化をより明確に例示することを意図される。構造3600は、プリズムピッチpのモワレ防止変化、及びプリズム高さhのウェットアウト防止の両方変化を提供するプリズム3610を含む。図36Bは、図36Aのプリズムフィルム3600のプリズム頂部3610の断面図であり、プリズム高さ及びピッチの変化を示している。比較のため、図36Cは、高さの変化がなくピッチ変化のみを有するプリズムを有する、構造3650の断面図である。
【0173】
本発明の実施形態は、微細複製マスター工具、及び/又はこれから作られるフィルム中の、重ねられた基本構造及び修正機構の形成を含む、プロセスを対象とする。例えば、本発明の実施形態による基本構造は、一定のx軸及び/又はz軸寸法を有してもよく、あるいは変化するx軸又はz軸寸法を有してもよい。機構のx軸及び/又はz軸寸法における可能な変化は、遅い又は速い変化を含んでもよい。基本構造及び/又は修正機構は、図17〜31に例示されるように、様々な回折素子を含んでもよい。例えば、図32〜36に例示される形状において例示される基本機構は、いくつかの実施形態において、回折素子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、修正機構が回折素子を含んでもよく、いくつかの実施形態では、基本構造及び修正機構の両方が、回折素子を含んでもよい。加えて、一定の特性、又は特定の種類の回折素子を有する機構が、他の特性、又は他の種類の回折素子を有するものと、任意のパターンで交互配置されてもよい。基本構造、修正機構、及び/又は回折素子は、旋盤切削、フライカッティング、及び/又は他の処理方法の任意の組み合わせを使用して、マスターの表面に切削されてもよい。基本構造、修正機構、及び/又は回折素子の機構パターン、密度、面積、深さ、及び比率は、最適化されたフィルム性能のために調節され得る。
【0174】
図37〜44は、様々な実施形態と共に使用され得る、重ねられた基本構造及び修正機構の代表的な構成を例示するが、基本構造及び修正機構の多くの追加的な組み合わせが可能であることが、本開示を読んだ際に、当業者には明らかになるだろう。
【0175】
図37A、及び37Bは、ランダムなパターンで重ねられた、基本構造と修正構造を含む、プリズムフィルムを例示し、修正機構は、ランダムに位置する、より高い頂部高さの区域を生成する。基本構造は、図37Aに例示される、鋭い頂部を有するプリズムを含んでもよく、基本構造プリズムは、丸い頂部を有してもよい。修正機構は、図37Aに例示されるような、丸い頂部を有してもよく、又は図37Bに例示されるような、鋭い頂部を有してもよい。基本構造及び修正機構のいずれか又は両方が回折素子を含んでもよい。図37A、及び図37Bに例示される実施形態では、修正機構は、基本構造3751の頂部ー谷部間の距離3707の実質的に半分未満を含み、及び基本機構3751の長さ3709の半分未満に沿った、分離区域における、基本機構3751の側部を修正する。
【0176】
図37Aは、プリズムフィルム3750の構造を例示し、これはまた、フィルム3750を形成するために使用されるマスター工具の補完的構造に対応する。図37Aに例示されるように、マスター工具構造は、連続的な基本構造3751を切削し、続いて基本構造のために使用される切削工具プロファイルとは異なる切削工具プロファイルを有する切削工具を使用して、修正機構3755を切削することによって形成することができ、ここで修正切削部は、マスターの表面に、x方向においてより深く刻まれる。プリズムフィルム3750は、基本構造3751として、鋭い先端のプリズムをねじ切りすることによって形成され得る。基本構造、及び丸い先端に使用される特性よりも、狭い夾角を有する第2切削工具プロファイルは、基本機構3751の頂部〜谷部間間の深さを増加させる、不規則に配置された修正機構3755を切削するために使用される。例えば、基本構造3751は、約90°、又は約40°〜約150°の夾角を有してもよく、修正機構は約40°の夾角を有してもよい。修正機構を作製するために使用される切削工具先端は、切子面を可能な限り維持するが、耐久性を加えるため、半径、例えば、約3マイクロメートル〜約8マイクロメートルの半径を有し得る。
【0177】
実際的な問題として、全ての切削工具先端、及び/又はプリズム頂部は、一定の半径の大きさを有し、したがって、用語「鋭い先端の」、及び「丸い先端の」とは、他のプリズム頂部との関係におけるプリズム頂部に対して適用され得る。例えば、2つの異なる半径の頂部を含む構成において、「鋭い先端の頂部」とは、他の頂部との関係においてそのように称され、「丸い先端の頂部」は、より大きな半径を有する。
【0178】
いくつかの実施形態では、基本機構及び/又は修正機構は、回折素子、例えば、図22〜31に例示される素子を追加的に含んでもよい。いくつかの実施形態では、基本機構は、丸い切削工具プロファイルで切削されてもよい。丸い先端プロファイルは、プリズムの強度を向上するが、輝度向上フィルムにおけるゲインを低減し得る。したがって、いくつかの用途では、分離性の、不規則的に配置された修正機構を、丸い先端プロファイルで切削することが有利である場合がある。図35Aに例示される特定の構造は、光学フィルムの全体的なゲインを実質的に維持し、一方で頂部高さにおけるウェットアウト防止変化を提供する。修正構造を形成するための、丸い、又は平坦な工具プロファイルの使用は、比較的脆弱な頂部先端を、丸くするか、又は鈍くすることによって、これらのウェットアウト防止構造を、より耐久性のあるものにする。
【0179】
例えば、プランジカッティングによる、修正機構を形成するための断続切削の使用は、下部基本構造の傾斜における、急峻で非連続的な変化が生じる、外辺部によって画定される分離区域の形成を可能にする。下部基本構造の断続切削は、多くの切削波形を重ねること、例えば、断続的な切削部を伴う波形と、連続的な波形を重ねることを含む。この手法は、例えば、約0.1°超、約0.2°超、又は約1°の、テーパイン角度、又はテーパアウト角度(又はマイクロメートル当たりの変化)を有する、急峻な断絶部を達成するために使用され得る。各修正機構は、例えば、約0.5マイクロメートル〜約3マイクロメートルで下部基本構造の頂部を高くし得る。修正機構は、1マイクロメートル未満〜数十マイクロメートルの範囲であり得る。
【0180】
高さの急峻な変化は、何倍も大きい基本構造の上に、小さな分離性の微細構造を形成することを可能にする。個別の修正機構の長さ若しくは面積の低減、及び/又は修正機構の長さ若しくは面積と、基本機構の長さ若しくは面積の全体的な比率を制御することは、例えば、光学フィルムのゲイン及び/若しくは他の特性を得る、又は維持する能力を促進する。例えば、鋭い先端の三角形プリズムを使用する輝度向上フィルムでは、ゲインを維持するために、基本構造(鋭い先端のプリズム)の面積を最大化し、一方でまた修正構造の小さな区域(より高い、丸い先端の頂部)を提供し、これが積層分離及び/又はウェットアウト防止機構として機能することが望ましい場合がある。連続的な鋭い先端のプリズムと、小さな丸い先端の分離性の機構との有利な組み合わせが、下部連続的なプリズム構造の切削プロファイルと、分離性の修正機構のものとを重ねることによって可能である。
【0181】
個別の修正機構の長さ、及び/又は全体面積の制御は、多くの用途において望ましいフィルムと隣接するフィルムとの間の接触面積を制御する能力を提供する。ゲインの維持、及び/又は接触面積の低減における向上は、修正機構の外辺部における高さの、急峻な推移を生成する能力のために、本明細書に記載される手法を使用して達成可能である。急峻な非連続的な修正機構の仕様は、多くのパラメータ仕様、例えば、ゲイン、導光、フィルム強度、光拡散、欠陥隠し能力、及び欠陥防止特性、並びに他のフィルム特性に対応するフィルムを、最適に設計する能力を向上する。
【0182】
図37Aに例示されるように、いくつかの実施形態では、基本構造3701及び修正機構3705は、本明細書においてより詳細に記載される、同期されたフライカッティング方法を使用して、マスターに形成される。溝構造が、加工物の周囲で半径方向に、加工物の円柱軸に沿って、又は加工物の円柱軸に対して任意の角の傾きを有する方向に形成され得る。これらの実施形態では、フライカッターヘッドの多数のパスが実行されて、分離性の機構を形成し得る。あるいは、フライカッターヘッドの多数の切削工具が、分離性の機構を形成する。分離性の機構を形成するために使用される切削工具は、高速工具サーボ(FTS)によって起動されてもよく、例えば、下部の連続的機構の形状から、急峻に断絶した、分離性の機構の外辺部を形成する。
【0183】
いくつかの実施形態では、ねじ切り、及び同期されたフライカッティング方法が組み合わせて使用され、最初の基本溝及び分離性の修正機構の両方を切削してもよい。例えば、図37Aの例では、ねじ切りが使用されて最初に連続的な溝3751を作り、続いて同期されたフライカッティングが、分離性の修正機構3755を形成し得る。基本構造及び/又は修正構造の形成は、表面にわたる切削工具の多数のパス又は多数の切削工具の単一のパスに依存することがある。
【0184】
対照的に、フライカッティング方法が最初に使用されて、基本構造を作り、ねじ切り方法が次に利用されてその後分離性の修正機構を形成し得る。切削工具のFTS作動は、急峻な非連続的な外辺部を有する修正機構の形成を促進する。
【0185】
図37Bは、プリズムフィルム3700の構造を例示し、これはまた、フィルム3700を形成するために使用されるマスター工具の補完的構造に対応する。この実施例では、鋭い先端のプリズムは、基本構造3701を形成する。例えば、基本機構は、約90°又は他の角度の内角を有し得る。分離性の修正機構3705は、基本機構3701の頂部に沿って、x方向により深く刻まれることによって形成される。修正機構3705は、この実施形態において、鋭い先端の切削工具を使用して形成される。例えば、修正機構3705の内角は、約40°又は他の角度であり得る。
【0186】
図38は、プリズムフィルム3800の構造を例示し、これはまた、フィルム3800を形成するために使用されるマスター工具の構造に対応する。この実施例では、基本機構3801及び修正機構3805は、前述の、連続的、及び断続的切削技術によって形成され得る。例えば、基本構造3801は、FTS動作を含まない連続的な切削技術の使用によって形成され得る。修正機構3805は、切削工具がx軸FTS作動装置を使用して動かされる、動的切削プロセスによって、断続切削部を作製することによって形成され得る。基本機構3801及び修正機構3805は、同じ切削工具プロファイル構造を使用して形成され得る。修正機構3805を形成する断続切削部は、連続的基本構造3801を形成する溝に沿ったマスターの表面により深く刻まれる。この実施例では、修正機構がプリズムの高さ(マスター表面の溝の深さと対応する)を増加させる。加えて、修正機構3805はまた、基本構造3801の側部を、基本構造3801の頂部〜谷部間距離3807の大部分に沿って、基本構造3801の長さ3809の半分未満で延びる分離区域で修正する。いくつかの実施形態では、修正機構3805は、基本構造3801の側部を、頂部〜谷部間距離3807の実質的に全てに沿って修正してもよい。基本構造3801の修正機構3805に対する割合は、光学フィルムの望ましい特性を達成するために調整されてもよい。いくつかの実施形態では、基本構造及び修正機構の一方又は両方が、丸い先端の切削工具で切削され得る。修正機構の区域の全体面積の、修正されていない基本構造に対する比率、例えば、25%、35%、又は他の値までが、選択されて、例えば、特定のゲイン、欠陥隠し能力、フィルム強度を提供してもよい。
【0187】
いくつかの実施形態では、分離性の機構が、マスターに沿ったz方向における、横方向の切削工具の動きによって形成される。図39は、プリズムフィルム3900の構造を例示し、これはまた、フィルム3900を形成するために使用されるマスター工具の構造に対応する。フィルム3900は、例えば、実質的に一定の深さ及びピッチを有する溝を形成する切削プロセスで、マスターに切削される細長い溝に対応する基本構造3901を含む。1つ以上の続く切削工程の間、基本構造を切削するために使用される工具と同じ構造又は異なる構造を有し得る切削工具が、FTS作動装置によってz軸に沿って動かされ、溝の側部により深く刻まれる。生じるフィルムは、溝3901の側部に沿った位置で、連続的な機構3701の傾斜を修正する、修正機構3905を含む。基本構造3901の頂部は、z軸の刻みに影響されることも、されないこともある。
【0188】
いくつかの実施形態では、修正機構は、x及びz軸両方に沿った軌道切削による、切削工具の運動によって形成され得る。例えば、図40に例示されるように、修正機構4005は、図9A〜9Eに例示されるプロセスによる短軸作動装置を使用した起動切削によって、又は切削工具を動かすための別個のx及びz作動装置の使用によって形成され得る。起動切削は、基本構造4001の頂部に影響することも、しないこともある。図40に例示されるように、修正機構4005は、溝4001の一方の側部のみに、非対称に形成され得る。
【0189】
基本構造、修正機構のいずれか又は両方が、図22〜31に関して前述されたように、回折素子を追加的に含んでもよい。図41Aは、基本構造4101が、回折素子を含まない、鋭い先端の頂部を含み、修正機構4105が丸い頂部を含む、実施形態を例示する。修正機構4105の1つ以上が、回折素子4106を含む。修正機構4105は、基本構造4101を形成する、連続的な溝に沿った、規則的又は不規則的な位置において、x方向により深く刻まれる切削工具によって形成される。回折素子は、修正機構のいくつかのみに使用されてもよく、同じ回折素子パターンが、各修正機構に対して使用される必要はない。例えば、1つのパターンの回折素子を有する修正機構が、回折素子を有さない、又は異なるパターンの回折素子を有する、1つ以上の他の修正機構と交互配置されてもよい。図41Aに例示される実施例では、修正機構4105は、基本構造4101の頂部、及び基本構造4101に沿った分離性の位置での、頂部〜谷部間間に沿った切子面の少なくとも大部分に沿った側部の両方に影響する。いくつかの実施形態では、修正機構は、基本構造の上部に対して主に、若しくはこれだけに影響してもよく、又は基本構造の側部に対して主に、若しくはこれだけに影響してもよい。
【0190】
図41Bは、基本構造に重ねられた、2種類の修正機構を含むプリズムフィルムの構造を例示する。この実施例では、基本構造4151は鋭い先端の頂部を有する。第1の種類の修正機構4155は、鋭い先端の頂部及び回折素子4156を含む。第2の種類の修正機構4160は、丸い頂部を含む。図41Bに例示される構成は、鋭い先端の頂部4151を形成するために使用される溝のある基本構造を第1切削し、続いて回折素子4156を有する機構4155を第1修正し、最後に丸い機構4160を切削することによって、マスター工具に形成され得る。丸い機構4160は、回折素子を有する機構4155と、同時に生じても、生じなくてもよい。
【0191】
基本構造及び/又は修正機構(あるいは基本構造及び/又は修正機構の部分)は、様々な形状を取り得る。例えば、基本機構、若しくは修正機構のいずれか又は両方が、湾曲した、凹状、凸状、若しくは切子状の側部、及び/又は湾曲した、凹状、凸状、若しくは切子状の頂部を含んでもよい。全ての基本構造が、同じ形状を呈するのではなく、及び/又は全ての修正機構が同じ方法で基部構造を修正するわけではないという点において、基部構造及び/又は修正機構間には、形態的な多様性が存在し得る。例として、1つ以上の種類の修正機構は、各基本構造に沿って、同時に又は別個に生じてもよく、1つ以上の種類の修正機構が、基本構造間で交互配置されてもよく、1つ以上の種類の基本構造が交互配置されてもよく、又は基本構造及び修正構造が、様々な他の組み合わせで生じてよいことを考慮する。複数の形状を有する修正機構は、ランダム、セミランダム、又は他の任意のパターンで基本構造に重ねられてもよい。
【0192】
図42は、基本構造4201が三角形のプリズムであり、修正機構4205が、基本構造4201の頂部〜谷部間距離4207に沿った基本構造の切子面の主要部分にわたって延びる湾曲した側部を含む、構成を例示する。いくつかの構成では、修正機構は、頂部〜谷部間距離4207に沿った切子面の実質的全部にわたって基本構造を修正する。この実施例では、修正機構4205は、「ゴシックアーチ」形状を形成する、一般的に湾曲した又は丸い側部を有する。ゴシックアーチ形状は、例えば、図2Bに示される切削工具先端の上部によって例示される。図42の構成は、光を拡散し、同時にまた、より高い光学的ゲインを維持するために特に有用である。向上した光拡散能力は、バルブ隠しのために有利であり、光源の真上の区域における明るい点を生じ得る光の突き抜け現象を低減する。
【0193】
図43は、基本構造上に重ねられる、修正機構を含む構成を例示する。修正された基本構造は、追加的なプリズムの種類と交互配置される。図43に例示される構成は、鋭い頂部を有する三角形のプリズムを含む基本構造4301を含む。丸い頂部を有する不規則に配置された修正機構4308が、基本構造4301と重ねられる。プリズムピッチ変化を組み込むプリズム4302が、修正された基本構造4301と交互配置される。
【0194】
図43に例示される構成は、線状プリズムに対して溝を第1切削し、次の工程では、修正機構を溝に重ね、その後、最後に、切削工具のz軸運動での変化を使用して形成される溝を交互配置することによって達成され得る。これら工程の順番を変更されてもよい。工程は、マスター工具表面にわたる、切削ヘッドの多数のパスによって行われてもよく、多数の切削工具を使用した、単一パスで行われてもよく、そのいくつかは動的に制御され、図10の回転システム、又は図11のフライカッティングシステムに例示される、1つの切削ヘッドに搭載される。軌道切削は、プリズムピッチ変化を形成するために使用されてもよく、二次プリズム4302に沿ったプリズム高さに変化を差し込む。図43に例示されるものなどのプリズム構成は、修正機構4308によって生成される増加した高さによって形成されるウェットアウト防止要素、及び交互配置されるプリズムによって提供されるプリズムピッチの変化によって形成されるモワレ防止要素の両方を有利に含む。
【0195】
図44に例示される光学フィルムでは、基本構造4401は、頂部高さが変化し、丸い先端の頂部を有する三角形のプリズムを含むが、鋭い、平坦な又は鈍い先端が使用されてもよい。z軸の動きを有する連続的な切削部は、プリズムフィルムに連続的な修正機構4405を形成する。プロセスは、頂部高さの変化を含むフィルムを生成することができ、これは、ウェットアウト防止、耐久性を改善する増加した頂部半径、及び/又はモワレ防止のために有用な、溝に沿った頂部ピッチの変化のため有用である。いくつかの実施形態では、修正機構4405は、平坦、又は鈍い頂部を有する工具を使用して形成され得る。別の有用な構造は、本明細書において記載される軌道切削技術を使用した、連続的な動きで、線状の溝を再切削することによって形成される。
【0196】
図45A〜45Cは、修正機構と重ねられた、一連の基本プリズム構造を含むフィルムの、異なる倍率における写真の図を示す。図45Cに最もよく見られるように、修正機構4505は、基本構造4501の形状における、急峻な断絶部を呈する外辺部4506によって画定される分離区域を含む。修正機構4505は、基本構造4501と共に使用され得、様々な種類の光学フィルム(一連の連続的な実質的に線状のプリズムを利用する、輝度向上フィルムを含む)に対して、向上した拡散特性、改善された耐久性、欠陥の低減、及び/又は欠陥隠しを提供する。
【0197】
本発明の実施形態によるマスター工具及び/又はマスター工具から作製されるフィルムは、本明細書において記載される1つ以上の機構、構造、方法、又はこれらの組み合わせを含み得る。例えば、光学フィルム、マスター工具、並びにこれらの構成要素を製造するために使用されるシステム及び方法は、記載される1つ以上の有利な機構及び/又はプロセスを含むように実施され得る。このような光学フィルム、及びマスター工具、加えてこのような構成要素を形成するために使用されるシステム、及び方法は、本明細書に記載される全ての機構を含む必要はなく、有用な構造及び/又は機能性を提供する、選択される機構を含むように実施され得ることが意図される。
【0198】
周囲の光学的機構の高さ、傾斜、又は一般的には形状を修正する、急峻な非連続的な区域を有する光学フィルムは、光学フィルムの様々な特性を制御するために使用され得る。より高い機構の区域を有するフィルムは、例えば、ウェットアウト防止機構を提供し、フィルムをより耐久性のあるものにし(すなわち、傷の影響をより受け難い)、かつフィルムの強度分布を修正して、高角度でより多くの光を提供するために有用である。輝度向上フィルムでは、より鋭い先端のプリズム、すなわち、より小さな夾角、又は半径を有するプリズムがより高いゲインを生じる。より小さい夾角のプリズムと、より大きな内角を有するプリズムとの相対量を変化させることにより、所定の用途のための、ゲイン、耐久性、バルブ隠し、及びウェットアウト防止機構の間の望ましいバランスが得られることがある。加えて、不規則に配置された分離性の機構が、連続的機構の規則的な配置によって生じるモワレ効果を緩和するために使用され得る。
【0199】
いくつかの実施形態では、基本構造は、例えば、基本構造の一方の側部、又は切子面上で主に、若しくはここだけに修正機構を含めることにより、非対称的に修正されてもよい。これらの実施形態は、例えば、フィルムからの好ましい光の方向を達成するか、又は支持するために、非対称的な光学特性が所望される場合に特に有用である。非対称的な光の方向は、例えば、手持ち式装置のディスプレイにおいて望ましい場合があり、この場合、ユーザーが装置に向って下方を見、ディスプレイの輝度が、光を見る人に向けて上方に向けることによって最適化されることが予測される。
【0200】
本明細書において記載される技術は、例えば、同じ加工物に異なるプリズム構造を提供するために利用された、連続的な光学フィルムプリズムの多条並行切削に関する、多くの利点を提供する。多条並行切削方法は、プリズム形状の一定の比率(すなわち、2つのパスに関して、1つの形状50%、第2の形状50%)を含み、これは、光学的性能又は製造制約のために、最適でない場合がある。更に、この方法は、プリズム形状の規則的パターン(すなわち、2つのパスに関して、1つおきのプリズムが同じである)を生成し、これは、モワレパターン又は欠陥隠しの緩和にとって最適でない場合がある。
【0201】
例えば、フィルム構成において、より高い頂部〜谷部間高さの、鋭い先端及び丸い先端のプリズムの両方が望ましい場合、2つのパスの多条並行切削方法が、この構造を作るために使用され得る。しかしながら、構成は、1つおきのプリズム配列における、50%の丸い先端のプリズム、及び50%の鋭い先端のプリズムに限定される。50%の比率は、耐久性及び光学的性能を調和させるために最適でないことがあり、規則的配列パターンは、モワレの問題を生じ得る。規則的又は不規則的なパターンで修正される基本構造の使用は、これらの問題に対処し、優れたフィルム構成を生成するために使用され得る。
【0202】
様々な実施形態による光学フィルム製造プロセスが、フィルムの面積にわたって任意の比率で、ランダムに配置された機構を有する、BEFを生成することができるという、利点を有する。加えて、修正機構は、既存のBEF切子面の下部構造を一般的に維持し、それによってフィルムの軸上ゲインを維持するような方法で加えられてもよい。修正機構は、ウェットアウト防止機構、モワレ防止機構、耐久性機構、積層分離、バルブ隠し、欠陥隠し機構、拡散機構、及び/又は回折機構を含むように実施されてもよく、そのいずれかが、異なる用途のための光学フィルム特性を改善し得る。下部基本構造に対する修正機構の比率の最適化は、光学的性能と、機械的な、製造の及び/又は環境の問題を調和させることを助けるために使用され得る。
【0203】
例えば、連続的な基本構造プリズムと共に、分離性の機構を生成する断続切削プロセスは、層状のプリズムフィルム構成における相互作用を低減するための分離の形成を可能にする。更に、これらの分離機構の比率、及び/又は位置は、積層接着、光学的性能、及びモワレ緩和を調和させるために最適化され得る。モニターの、耐久性のある第1表面フィルムとしての、輝度向上フィルムの使用は、本明細書において記載されるように形成されるフィルムが特に有利である、別の例である。前述のように、規則的又は不規則的に配置される丸い、平坦な又は鈍い先端の修正機構が組み込まれて、フィルム耐久性及び傷耐性を改善することができる。丸い、又は平坦な機構の比率、及び位置が、耐久性と、光学的性能を調和させ、同時にモワレ効果を緩和するために最適化され得る。
【0204】
本発明の様々な実施形態の上述の説明を、例証及び説明の目的で提示してきた。これまでの記述は、包括的であることも、開示されたそのままの形態に本発明を限定することも意図しない。以上の教示を考慮すれば、多くの修正形態及び変形形態が可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明によってではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムであって、
各基本構造が頂部を有する、1つ以上の基本光学構造と、
前記基本構造に重ねられる複数の修正機構であって、該各機構は、区域における下部基本構造の頂部を高くすることによって、前記下部基本構造の前記区域を修正し、前記高くした頂部は、前記下部基本構造の前記頂部の半径とは異なる半径を有する、複数の修正機構と、を含む、光学フィルム。
【請求項2】
前記各修正機構が、前記下部基本構造の傾斜における、急峻な断絶部を伴う外辺部を有する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記急峻な断絶部が、1マイクロメートルにわたり、約0.1°超の、傾斜における変化を含む、請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
各機構が、前記下部基本構造の前記頂部を約0.5マイクロメートルを超えて高くする、請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記基本構造の頂部が、約40°〜約150°の範囲内の内角を有し、
前記修正機構の前記頂部が、約3マイクロメートル〜約8マイクロメートルの範囲内の半径を有する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記基本構造及び前記修正機構の一方又は両方に配置される回折素子を更に含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記基本構造の少なくともいくつかは、ピッチが変化する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記基本構造の少なくともいくつかは、高さが変化する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記基本構造の少なくともいくつかは、ピッチ及び高さが変化する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記基本構造の1つ以上の側部を修正し、前記基本構造の前記頂部を実質的に修正しない、複数の追加的な機構を更に含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記基本構造が、対向する側部を有する線状三角形プリズムを含み、
前記修正機構が、前記切子面の頂部〜谷部間距離の大部分、及び前記プリズムの長さの半分未満に沿って、各前記プリズムの少なくとも1つの切子面を修正する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項12】
光学フィルムであって、
各基本構造が頂部を有する、1つ以上の基本光学構造と、
各修正機構は下部基本構造の区域の頂部を高くし、前記高くした頂部は、前記下部基本構造の前記頂部の半径と実質的に同等の頂部半径を有する、前記基本構造に重ねられる複数の修正機構と、を含む、光学フィルム。
【請求項13】
前記各修正機構が、前記下部基本構造の急峻な断絶部を伴う外辺部を有する、請求項12に記載の光学フィルム。
【請求項14】
前記急峻な断絶部が、1マイクロメートルにわたり、約0.1°超の、傾斜の変化を含む、請求項13に記載の光学フィルム。
【請求項15】
前記各修正機構が、前記下部基本構造の前記頂部を約0.5マイクロメートルを超えて高くする、請求項12に記載の光学フィルム。
【請求項16】
前記基本構造及び前記修正機構の一方又は両方に配置される回折素子を更に含む、請求項12に記載の光学フィルム。
【請求項17】
前記基本構造の少なくともいくつかのピッチが変化する、請求項12に記載の光学フィルム。
【請求項18】
前記基本構造の少なくともいくつかは、高さが変化する、請求項12に記載の光学フィルム。
【請求項19】
前記基本構造の側部を修正し、前記基本構造の前記頂部を実質的に修正しない、複数の追加的な機構を更に含む、請求項12に記載の光学フィルム。
【請求項20】
前記基本構造が、対向する切子面を有する線状三角形プリズムを含み、
前記修正機構が、前記プリズムの前記長さの半分未満にわたる、前記切子面の頂部〜谷部間距離の大部分にわたり、各前記プリズムの少なくとも1つの切子面を修正する、請求項12に記載の光学フィルム。
【請求項21】
光学フィルムであって、
各基本構造が対向する側部及び頂部を有する、1つ以上の基本構造と、
前記基本構造に重ねられる複数の分離性の機構であって、前記各機構は、下部基本構造の長さの半分未満において前記下部基本構造の少なくとも一方の側部の傾斜を修正し、前記下部基本構造の頂部を実質的に修正しない、複数の分離性の機構とを有する、光学フィルム。
【請求項22】
前記各機構が、前記下部基本構造の急峻な断絶部を伴う外辺部を有する区域を含む、請求項21の光学フィルム。
【請求項23】
前記急峻な断絶部が、約1°を超えるテーパ角を伴う、請求項22に記載の光学フィルム。
【請求項24】
前記各機構が、前記側部の頂部〜谷部間距離の大部分に沿って前記下部基本構造の側部を修正する、請求項21に記載の光学フィルム。
【請求項25】
前記各下部基本構造の一方の側部が、前記機構を有さない、請求項21に記載の光学フィルム。
【請求項26】
光学フィルムであって、
各基本構造が対向する側部、長さ及び頂部を有する、1つ以上の基本光学構造と、
各機構が、前記下部基本構造の少なくとも一方の側部の頂部〜谷部間距離の大部分、及び前記下部基本構造の前記長さの半分未満に沿って、前記下部基本構造を修正する、前記基本構造に重ねられる複数の機構と、を含む、光学フィルム。
【請求項27】
前記機構の1つ以上が、前記下部基本構造の両側部を修正する、請求項26に記載の光学フィルム。
【請求項28】
前記修正機構の1つ以上が、分離区域の前記下部基本構造の頂部を高くする、請求項27の光学フィルム。
【請求項29】
前記分離区域の前記頂部の半径が、前記下部基本構造の前記頂部の半径とは異なる、請求項28に記載の光学フィルム。
【請求項30】
前記分離区域の前記頂部の半径が、前記下部基本構造の前記頂部の半径よりも大きい、請求項28に記載の光学フィルム。
【請求項31】
前記分離区域の前記頂部の半径が、前記下部基本構造の前記頂部の半径よりも小さい、請求項28に記載の光学フィルム。
【請求項32】
回折素子が、前記修正機構及び前記基本構造の一方又は両方に配置される、請求項26に記載の光学フィルム。
【請求項33】
前記各修正機構と前記下部基本構造との間の外辺部に急峻な断絶部が存在し、前記急峻な断絶部が1°を超えるテーパ角を伴う、請求項26に記載の光学フィルム。
【請求項34】
光学フィルムを作製するためのマスター工具を形成するために、表面を修正する方法であって、
該マスター工具の該表面に、基本構造であって前記マスター表面に溝を含む基本構造を切削する工程と、
前記マスターの前記表面に1つ以上の修正機構を切削し、前記基本構造及び該修正機構が重ねられて、前記溝に沿った急峻な非連続的変化を生成する、工程と、を含む方法。
【請求項35】
前記基本構造を切削する工程が、連続的な溝を切削する工程を含み、
前記修正機構を切削する工程が、前記連続的な溝を修正する、1つ以上の分離性の機構を切削する工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記修正機構を切削する工程が、前記基本構造を切削する工程の後に、前記修正機構を切削する工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記基本構造を切削する工程が、前記修正機構を切削する工程の後に、前記基本構造を切削する工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記基本構造を切削する工程が、前記基本構造に回折素子を切削する工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記修正機構を切削する工程が、前記修正機構の少なくともいくつかに回折素子を切削する工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記修正機構を切削する工程が、切削工具を動かして前記切削工具を前記溝により深く刻ませる工程を含み、前記切削工具の運動が、前記マスター工具の前記表面と実質的に垂直な成分を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記修正機構を切削する工程が、切削工具を動かして前記切削工具を前記溝の一方又は両方の側部により深く刻ませる工程を含み、前記切削工具の運動が、前記マスター工具の前記表面と実質的に平行な成分を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記修正機構を切削する工程が、前記マスター工具の表面と平行な成分、及び前記マスター工具の前記表面と垂直な成分を含む軌道に沿って前記切削工具を動かす工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記修正機構を切削する工程が、前記溝の深さを修正することなく、前記溝の一方又は両方の側部の傾斜を変化させる、分離性の機構を切削する工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記急峻な非連続的変化が、1°を超えるテーパ角の変化を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
前記修正機構が、0.5マイクロメートル超の溝深さの、急峻な非連続的変化を生成する、請求項34に記載の方法。
【請求項46】
前記基本構造及び前記修正機構の1つ以上を切削する工程が、同期されたフライカッティングを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項47】
前記基本構造及び前記修正機構の1つ以上を切削する工程が、動的に同期されたフライカッティングを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項48】
前記基本構造及び前記修正機構の1つ以上を切削する工程が、同期されたプランジカッティングを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項49】
前記基本構造及び前記修正機構の1つ以上を切削する工程が、ねじ切りを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項50】
前記基本機構を切削する工程が、第1切削工具プロファイルを有する切削工具を使用して、前記基本構造を切削する工程を含み、
前記修正機構を切削する工程が、前記第1切削工具プロファイルとは異なる第2切削工具プロファイルを有する切削工具を使用して、前記修正機構を切削する工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項51】
前記第1切削工具プロファイルが、前記第2切削工具プロファイルの切削先端半径より小さい切削先端半径を有する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記基本構造及び前記修正機構の1つ以上を切削する工程が、球、平板、又は鈍磨な形状の切削工具プロファイルを有する切削工具を使用して切削する工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項53】
前記基本構造を切削する工程、及び前記修正機構を切削する工程が、第1及び第2切削工具を、前記表面にわたる切削ヘッドの単一のパスで共に動かすことにより、前記基本構造及び前記修正機構を切削する工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項54】
光学フィルムを作製するためのマスターを形成するために、表面を修正するためのシステムであって、
1つ以上の切削工具と、
該1つ以上の切削工具及び前記表面の間で相対的な動きを提供するように構成された駆動システムと、
前記マスターの前記表面に基本構造を切削し、前記溝に沿って修正機構を切削するように制御するように構成された切削メカニズムであって、前記基本構造及び前記修正機構が重ねられて前記基本構造の形状における急峻な非連続的変化を生成する、切削メカニズムと、を含む、システム。
【請求項55】
前記切削メカニズムが、同期されたフライカッティングによって前記基本機構及び前記修正機構の一方又は両方を作製するために前記切削工具を制御するように構成された、同期されたフライカッティングメカニズムを含む、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
前記同期されたフライカッティングメカニズムが、動的に同期されたフライカッティングメカニズムである、請求項55に記載のシステム。
【請求項57】
前記切削メカニズムが、前記基本構造を切削するために使用される第1プロファイルを有する1つ以上の切削工具と、前記修正機構を切削するために使用される第2プロファイルを有する1つ以上の第2切削工具とを含む、請求項54に記載のシステム。
【請求項58】
前記第1プロファイル及び前記第2プロファイルの少なくとも1つが、球、平板、又は鈍磨な形状の先端を含む、請求項57に記載のシステム。
【請求項59】
前記切削メカニズムが、前記表面にわたる前記切削工具の単一のパスの間に、前記基本構造及び前記修正機構を切削するように構成される、請求項54に記載のシステム。
【請求項60】
前記切削メカニズムが、前記表面にわたる前記切削工具の1つ以上の第1パスの間に前記基本機構を切削し、前記表面にわたる前記切削工具の1つ以上の第2パスの間に前記修正機構を切削するように構成される、請求項54に記載のシステム。
【請求項61】
光学フィルムを製作するために使用可能なマスター工具であって、
表面に配置される複数の溝と、
前記溝を修正する機構であって、各機構は関連する溝の長さよりも短く延び、該関連する溝の傾斜における、急峻な断絶部によって画定される区域を包含する機構と、を含む表面を有する、マスター工具。
【請求項62】
前記急峻な断絶部は、1°超のテーパ角を有する、請求項61に記載のマスター工具。
【請求項63】
少なくとも1つの機構が、前記関連する溝の深さを修正し、前記関連する溝の内角とは異なる内角を有する、請求項61に記載のマスター工具。
【請求項64】
少なくとも1つの機構が、前記関連する溝の深さと、前記関連する溝の内半径とは異なる内半径とを修正する、請求項61に記載のマスター工具。
【請求項65】
少なくとも1つの機構が、前記関連する溝の深さを修正し、前記関連する溝の内半径より小さい内半径を有する、請求項61に記載のマスター工具。
【請求項66】
前記機構の少なくともいくつかが、前記溝の深さを修正することなく、前記溝の側部を修正する、請求項61に記載のマスター工具。
【請求項67】
前記溝の少なくともいくつかのピッチ及び深さの一方又は両方が変化する、請求項61に記載のマスター工具。
【請求項68】
前記機構の少なくともいくつかが、前記溝の頂部〜谷部間距離の大部分に沿って、前記各溝の少なくとも一方の側部を修正する、請求項61に記載のマスター工具。
【請求項69】
前記機構の少なくともいくつかが、前記溝の深さを修正しない、請求項61に記載のマスター工具。
【請求項70】
光学フィルムを作製するためのマスターを形成するために、表面を修正するためのシステムであって、
前記表面を調整するように構成された第1切削工具と、
前記表面に機構を切削するように構成された第2切削工具と、
前記切削工具及び前記表面の間に相対的な動きを提供するように構成された駆動システムと、
前記表面にわたる前記切削工具の単一のパスの間に、前記第1切削工具及び前記第2切削工具を動かして、前記表面を調整し、前記機構を切削するように構成された切削メカニズムと、を含む、システム。
【請求項71】
前記表面の調整の後の前記表面の粗さが、最も小さい機構よりも実質的に少ない、請求項70に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36A】
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【図36B】
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【図36C】
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【図37A】
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【図37B】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41A】
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【図41B】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45A】
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【図45B】
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【図45C】
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【公表番号】特表2011−519054(P2011−519054A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503126(P2011−503126)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/039072
【国際公開番号】WO2009/146055
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】