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重元素同位体比組成を利用した穀物の産地判別方法
説明

重元素同位体比組成を利用した穀物の産地判別方法

【課題】穀物の産地を理化学分析により判別する。
【解決手段】穀物に含まれるストロンチウム及び鉛のそれぞれの同位体比を分析し、それらの分析情報を利用して穀物の産地を判別する。工程としては(i)穀物を酸分解して無機成分を主に含む溶液を調製する工程、(ii)工程(i)で調製した溶液からストロンチウムと鉛とを分離、濃縮して、ストロンチウムを含む溶液及び鉛を含む溶液を調製する工程、(iii)工程(ii)で調製したストロンチウムを含む溶液及び鉛を含む溶液を質量分析装置により分析して、ストロンチウム同位体比及び鉛同位体比を決定する工程、及び(iv)工程(iii)で決定された試料のストロンチウム同位体比及び鉛同位体比と、判別したい産地由来の穀物のストロンチウム同位体比及び鉛同位体比とを比較する工程、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米、小麦、大麦等の穀物の産地を判別する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米、小麦、大麦等の穀物のうち理化学分析により産地を判別する方法については米を対象とした研究が最も進んでいる。その方法として、(i)DNA分析をすることにより各産地の米に存在する塩基配列の違いを確認し産地を判別する方法(特許文献1)、(ii)米中の様々な元素を定量分析することにより各産地の米に存在する元素組成の違いから産地を判別する方法(非特許文献1)、(iii)水素、炭素、窒素、酸素などの軽元素の同位体比を分析することにより各産地の米に存在する同位体比情報の違いから産地を判別する方法(特許文献2及び非特許文献2)、(iv)前記の軽元素の同位体比の分析と、カルシウム、銅、鉄、ストロンチウム等の微量元素の定量分析を組み合わせて、それらの情報の違いから産地を判別する方法(特許文献3)、(v)重元素であるストロンチウムの同位体比を分析することにより各産地の米の同位体比の違いから産地を判別する方法(非特許文献3)などの研究報告がある。
【0003】
前記(i)の方法は判別したい産地の米の間で品種が違うなど塩基配列に違いがある場合にしか判別できない。前記(ii)の方法は判別できる可能性は示されているがまだ研究段階であり、検査等に利用できるだけの技術にはなっていない。前記(iii)の方法は安定同位体比質量分析装置により軽元素の同位体比を測定し、各産地の米の同位体比情報の違いから産地を判別する。同一産地で栽培された米でも栽培時の気温、湿度及び施肥条件の違い、海からの近さ、標高など様々な要因により変動するため、検査等に使えるようにするには様々な産地についてのデータを年毎に収集する必要があり、膨大なデータベースの構築が必要になる。前記(iv)の方法は、前記(iii)の方法に前記(ii)の方法を組み合わせたものに相当するが、前述したそれぞれの方法の問題を解消するには至っていない。前記(v)の方法で対象とする重元素同位体は軽元素と異なり同位体分別がされにくい。このため同じ地域で栽培された穀物であれば、部位、年、品目による変動はほとんどなく、穀物中の重元素同位体比は、土壌中の可給態の重元素同位体比と一致する。即ち、栽培土壌から穀物の同位体比の推定及びその逆が可能であり、これは元素組成や軽元素同位体比による判別法にはない特徴である。また、ストロンチウム及び鉛は通常の農業資材にはほとんど含まれておらず、農業活動による同位体比の変動は無視できる。これらのことから重元素同位体比による産地判別はこれまで非常に期待されてきた技術であるが、後述する理由により研究例は非常に限られている。
【0004】
重元素同位体比を利用した産地判別研究ではストロンチウムを利用する例がほとんどである。これは地球化学や考古学で既に多く利用されており、産地間で異なる同位体組成を示す可能性があると共に、穀物等に比較的多く含まれているので、分析しやすいためである。これまでの研究報告において、ストロンチウム同位体比により一部産地間の判別の可能性が得られているが、異なる産地であっても類似のストロンチウム同位体比となる場合があり、ストロンチウム同位体比のみに頼る判別には限界がある。他に鉛同位体比も地球化学や考古学で多く利用されており、また産地間で異なる同位体組成を示す可能性があるが、穀物中の濃度が極めて低いために産地判別研究への利用は進んでいない。鉛同位体比を産地判別に利用する試みも行われたが、分析精度やデータ数の少なさに問題があり、判別できる可能性が示唆されただけに留まっていた。
【0005】
ストロンチウム同位体比(質量数:87/86)を精確に決定するには、質量分析装置で分離できないルビジウムを除去する必要がある。これは質量数87のストロンチウムと質量数87のルビジウムは機器測定で分離できないためである。これまでは分離に陽イオン交換樹脂を用い、多くの時間を要していた。また、穀物に含まれる鉛の量はカリウムやカルシウムのような他のミネラル分に比べて著しく少ないため、鉛同位体比を精確に決定するには鉛を選択的に抽出して濃縮する必要があるが、農作物から簡便にストロンチウム及び鉛を抽出し濃縮する方法はなかった。
【0006】
また、重元素同位体比の産地間の差はごく僅かであるため、産地判別に利用するには精確な分析が求められる。そのための装置として表面電離型質量分析装置と多重検出器型誘導結合プラズマ質量分析装置が多く用いられてきた。前者は高精度な測定が可能であるが、精確な測定値を得るには高度に熟練している必要がある点が問題となっている。後者は高価で特殊な装置であるため保有している機関は少なく、産地判別研究への利用が限られており、また実際の検査等を行う現場での利用の障害になる。より安価な単一検出器高分解能型誘導結合プラズマ質量分析装置によるワインの産地判別の検討も行われた(非特許文献4)が、穀物の産地判別に適用するには測定精度が十分ではなかった。
【0007】
まとめると、鉛同位体比分析には、(i)使用する器具などからサンプルへのコンタミネーションを抑制する技術、(ii)植物中の濃度がストロンチウムより更に低いため分離濃縮する技術、(iii)マルチコレクタ型誘導結合プラズマ質量分析装置による同時多重高感度測定技術など分析上の課題があり、これらの課題をクリアする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−141079号公報
【特許文献2】特開2006−189351号公報
【特許文献3】国際公開第2007/124068号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】安井明美、進藤久美子、「分析化学」、日本分析化学会、49巻6号、2000年発行、p405−410
【非特許文献2】伊永隆史、鈴木彌生子、中下留美子、「化学」、化学同人、63巻11号、2008年発行、p12−16
【非特許文献3】織田久男、川崎晃、「ぶんせき」、日本分析化学会、2002年12号、2002年発行、p678−683
【非特許文献4】B. Medina, et al., Food Additives and Contaminants, 2000, Vol. 17, No. 6, p435-445
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、穀物の産地を理化学分析により判別する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、従来から研究されているストロンチウムに加えて鉛の同位体比情報を利用することにより穀物の産地を判別できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)穀物に含まれるストロンチウム及び鉛のそれぞれの同位体比を分析し、それらの分析情報を用いて穀物の産地を判別する穀物の産地判別方法。
(2)次の工程:
(i)穀物を酸分解して無機成分を主に含む溶液を調製する工程、
(ii)工程(i)で調製した溶液からストロンチウムと鉛とを分離、濃縮して、ストロンチウムを含む溶液及び鉛を含む溶液を調製する工程、
(iii)工程(ii)で調製したストロンチウムを含む溶液及び鉛を含む溶液を質量分析装置により分析して、ストロンチウム同位体比及び鉛同位体比を決定する工程、及び
(iv)工程(iii)で決定された試料のストロンチウム同位体比及び鉛同位体比と、判別したい産地由来の穀物のストロンチウム同位体比及び鉛同位体比とを比較する工程
を含む前記(1)に記載の方法。
(3)工程(i)の酸分解において分解容器として清浄な樹脂製使い捨てチューブを用いる前記(2)に記載の方法。
(4)工程(ii)においてストロンチウムと鉛との分離、濃縮を、クラウンエーテル抽出剤を用いた抽出クロマトグラフィー用樹脂を用いて行う前記(2)又は(3)に記載の方法。
(5)クラウンエーテル抽出剤がビス4,4′(5′)[t−ブチルシクロヘキサノ]18−クラウン−6である前記(4)に記載の方法。
(6)工程(iii)において質量分析装置として単一検出器型誘導結合プラズマ質量分析装置を用いる前記(2)〜(5)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
ストロンチウム同位体比のような重元素同位体比は、同じ産地土壌で栽培された穀物であれば、部位、年、品目による変動はほとんどなく、穀物中の重元素同位体比は、土壌中の可給態の重元素同位体比と一致する。即ち、産地土壌から穀物の同位体比の推定及びその逆の推定が可能となる。加えて、同一産地内での変動は、産地間の変動よりも小さいため、元素組成や軽元素同位体比を用いた従来の方法よりも少ないデータ数で信頼性の高い判別が可能である。よって、本発明の方法によれば、米、小麦、大麦等の穀物の産地を高い精度で判別することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は米のSr同位体比を示す図である。
【図2】図2は米のPb同位体比の2次元プロットを示す図である。
【図3】図3は米のSr同位体比とPb同位体比の3次元プロットを示す図である。
【図4】図4は大麦のSr同位体比を示す図である。
【図5】図5は大麦のPb同位体比の2次元プロットを示す図である。
【図6】図6は大麦のSr同位体比とPb同位体比の3次元プロットを示す図である。
【図7】図7は小麦のSr同位体比を示す図である。
【図8】図8は小麦のPb同位体比の2次元プロットを示す図である。
【図9】図9は小麦のSr同位体比とPb同位体比の3次元プロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明において対象となる穀物は、好ましくは米、大麦及び小麦であり、それぞれ外皮を含む全粒及び外皮を除去した穀粒、加工時に汚染されていないものであれば、炊飯、押し麦、粉などの粉砕物も含まれる。
【0017】
本発明の産地判別方法としては、穀物のストロンチウム同位体比及び鉛同位体比を分析し、それらの情報を用いて穀物の産地を判別しうるものであれば、特に制限はなく、例えば、下記の〔酸分解〕工程、〔ストロンチウムと鉛の抽出〕工程、〔ストロンチウムと鉛の同位体比測定〕工程、及び〔ストロンチウムと鉛の同位体比組成を利用した産地の判別〕工程を含むことが好ましい。
【0018】
〔酸分解〕
本工程は、穀物を酸分解して無機成分を主に含む溶液を調製する工程である。穀物に含まれる鉛の量はごく僅かであることから、使用する器具などからサンプルへのコンタミネーションを抑制するため、清浄な樹脂製使い捨てチューブ、例えばデジチューブ(ジーエルサイエンス)を分解容器として試料を採取し、更に硝酸を主とした酸を添加して、例えばデジプレップ酸分解用ヒートブロックシステム(ジーエルサイエンス)により加温して酸分解し、有機物を揮散させて無機成分を主に含む溶液を調製する。この際、重元素は同位体分別されにくいため、試料に含まれるケイ酸成分などを全分解する必要はない。
【0019】
〔ストロンチウムと鉛の抽出〕
本工程は、〔酸分解〕工程で調製した溶液からストロンチウムと鉛を分離し濃縮する工程である。穀物のストロンチウム同位体比(質量数86と87のストロンチウム同位体の存在比)を高い精確さで測定するには、穀物に含まれるRb87を分離することが不可欠である。また、酸分解により調製した溶液にはカリウムやカルシウムなど様々なミネラルが高濃度に含まれると同時に、鉛はごく僅かしか含まれないため、このままでは精確に鉛同位体比を測定することはできない。そこで、ストロンチウムと鉛を選択的に捕捉する樹脂を用いて精製・濃縮し、ストロンチウム又は鉛を高濃度に含む溶液を調製する。前記の樹脂としては、例えば、クラウンエーテル抽出剤を用いた抽出クロマトグラフィー用樹脂が挙げられる。前記クラウンエーテル抽出剤としては、例えば特許第2620447号公報に記載のビス4,4′(5′)[t−ブチルシクロヘキサノ]18−クラウン−6(略称:ジ−t−ブチルシクロヘキサノ−18−クラウン−6)等が挙げられる。これらは、通常、1−オクタノール、1−ヘプタノール、1−デカノール、イソデカノール等の長鎖アルコールで希釈して不活性樹脂基材上に分散させる。こうして得られる物が抽出クロマトグラフィー用樹脂として用いられる。このような抽出クロマトグラフィー用樹脂としては、例えばSrレジン、PbレジンがEichrom Technologies社から市販されており、これらの市販品を用いることができる。例えば、Srレジンカラムで抽出されたストロンチウムは希硝酸又は水で容易に溶出される。
【0020】
前記の樹脂を利用することにより、簡便・迅速(半日以内)にストロンチウムと鉛を分離、濃縮することができる。
【0021】
〔ストロンチウムと鉛の同位体比測定〕
本工程は、質量分析装置、好ましくは単一検出器型誘導結合プラズマ質量分析装置によりストロンチウムと鉛の同位体比を決定する工程である。産地間の同位体比の違いはごく僅かであるため、高い精確さで同位体比を決定する必要があるが、同位体比分析用の質量分析装置を利用したのでは研究レベルに留まり、実際の検査等に利用するには限界がある。そこで、単一検出器型誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて最適条件で測定することによりストロンチウム同位体比(質量数86と87のストロンチウム同位体の存在比)と鉛同位体比(質量数204、206、207及び208の鉛同位体の存在比)を相対標準偏差0.1%程度かそれよりも高い測定精度で決定することができる。
【0022】
〔ストロンチウムと鉛の同位体比組成を利用した産地の判別〕
前記の工程に従って、判別したい産地内の様々な地域由来の穀物のストロンチウムと鉛の同位体比を決定してデータベースとし、試料の同位体比組成と比較することで産地を判別することができる。信頼性の高い産地判別法にするには、対象となる産地から偏りなくできるだけ産地を代表するように試料を多数収集し、データを得る必要がある。なお、ストロンチウム同位体比は質量数87と86の同位体比のカウント数の比を利用する。鉛の安定同位体は4種類(質量数:204、206、207、208)存在し、これらのカウント数から得られる6種類の同位体比(質量数:208/207、208/206、208/204、206/207、207/204、206/204)を利用する。各産地由来の穀物についてこれらのデータベースを構築する。
【0023】
構築しておいたストロンチウム同位体比と6種類の鉛同位体比のデータベースと比較してどの産地の同位体組成に近いか確認することで産地を判別する。
【0024】
本発明の方法は、目的に応じて、水素、炭素、窒素、硫黄などの軽元素の同位体比、1種又は2種以上の元素(例えば、Ba、Ca、Cu、Fe、K、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Rb、Sr及びZnから選ばれる1種又は2種以上の元素)の濃度など他のファクターと併せて判断してもよく、産地土壌や穀物の種類によってはS. Rummel, et al, Food Chemistry, 2010, Vol.118, p890-900に記載されているように複数のファクターを併せることにより判別精度を向上させることができる。なお、これら軽元素の同位体比はこの文献記載の方法、元素の濃度は非特許文献1記載の方法に従って行うことができる。このように別のファクターを加える際には、目的とする産地間の判別に有効である点、精確な分析値が得られる点、分析の容易さ、求める判別の精度などを勘案して、その種類や数を決める。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を記載するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
〔試料〕
試料は粒状態未加工のものであり、詳細は以下に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
〔酸分解〕
米は約2.5gずつデジチューブに4本、大麦及び小麦は2.5gずつデジチューブに2本量り取った。各チューブに69%硝酸を10mL添加し、デジプレップ酸分解用ヒートブロックシステムにより加熱して酸分解した。この途中で30%過酸化水素2mLを添加して分解を促進させ、蓋をずらすことで隙間から酸を揮散させた。黒く焦げた場合には69%硝酸と30%過酸化水素を少量添加し、焦げがなくなるまで分解を続け、酸を揮散させた。米の残渣には69%硝酸1.5mLを、大麦と小麦の残渣には69%硝酸3mLを加え加温して溶解し、米の分解液は4本分、大麦及び小麦の分解液は2本分を15mL容遠沈チューブに超純水で洗い込み、約12mLの目盛りまでメスアップし約8M硝酸水溶液になるように調製した。
【0031】
〔SrとPbの抽出〕
分解液の入った遠沈チューブを3,000rpmで10分間遠心分離した。未分解の浮遊物や沈殿物は採取しないようにし、溶液部分のみをSrレジンを0.3mL詰めたカラムに負荷した。8M硝酸1mL×2回で洗浄し、0.05M硝酸1mL×2回でSrを溶出させた。その後6M塩酸0.5mL×3回でPbを溶出させた。
【0032】
この操作により3時間程度と短時間で簡便にSrとPbを選択的に抽出・濃縮できた。
【0033】
〔同位体比測定のためのSrとPbの定量〕
同位体比測定で精確な値を得るには、標準液と試料溶液の濃度を合わせる必要がある。そのため、SrとPb抽出液の濃度を誘導結合プラズマ質量分析装置により定量し、濃度を一致させたSrとPbの標準液、SrとPb試料溶液をそれぞれ調製した。
【0034】
〔SrとPbの同位体比測定〕
単一検出器高分解能型誘導結合プラズマ質量分析装置によりSrとPbの同位体比を決定した。測定条件を以下に示す。
【0035】
<Sr同位体比測定の条件>
Isotope:Kr83、Rb85、Sr86、Sr87、Sr88
Resolution:Low
Mass Window:5
Settling Time:0.001
Sample Time:0.0010
Sample Per Peak:200
Search Window:0
Integration Window:5
Scan Type:EScan
Detection Mode:Both
Integration Type:Analog
Run:3
Pass:500
Measurement Time:1 min 23 s
Correction Equation:Sr86 −1.5043*Kr83
Sr87 −0.3857*Rb85
【0036】
<Pb同位体比測定の条件>
Isotope:Hg202、Pb204、Pb206、Pb207、Pb208
Resolution:Low
Mass Window:5
Settling Time:0.001
Sample Time:0.0010
Sample Per Peak:180
Search Window:0
Integration Window:5
Scan Type:EScan
Detection Mode:Both
Integration Type:Counting
Run:3
Pass:1000
Measurement Time:2 min 31 s
Correction Equation:Pb204 −0.2299*Hg202
【0037】
測定は、標準液(定量値が認証された液)を2回以上測定して安定したカウント数と同位体比が得られた後、試料を測定し、最後に標準液を測定することにより行った。なお、試料10点に対し1回以上の割合で標準液を測定した。試料の同位体比は前後の標準液の同位体比を用いて補正して求める。補正式は、(試料の同位体比測定値)×(標準液の同位体比の認証値)/(標準液の同位体比測定値)とした。Sr88のカウント数はSr87/Sr86の決定には直接関係ないが、一定した値を持つSr88/Sr86を計測することで同位体比測定に問題が生じていないか確認するために計測した。
【0038】
〔SrとPbの同位体比データ〕
ストロンチウム同位体比はSr87/Sr86のみだが、鉛の安定同位体は4種類存在し、それらの同位体比は質量数:208/207、208/206、208/204、206/207、207/204、206/204の6種類の組み合わせがある。よって、鉛同位体比の2次元プロットは15種類存在する。米、大麦、小麦、各試料のSrとPbのこれら同位体比データの一部を図1〜9に示す。
【0039】
〔ストロンチウムと鉛の同位体比情報を利用した産地の判別〕
判別したい試料のストロンチウムと鉛の同位体比を測定し、図1〜9のようなデータベースと比較することで産地を判別する。
【0040】
米の産地国判別:
ストロンチウムと鉛の同位体比を組み合わせることにより産地国を判別する。判別の精度を高めるためには、更にNa、Rb、Sr、Ba、Al、Fe、Co、Ni及びCuの9元素の濃度(表4)を組み合わせる。
【0041】
大麦の産地国判別:
ストロンチウムと鉛の同位体比を組み合わせることにより産地国を判別する。判別の精度を高めるためには、更に元素の濃度等他の情報を組み合わせる。
【0042】
小麦の産地国判別:
ストロンチウムと鉛の同位体比を組み合わせることにより産地国を判別する。判別の精度を高めるためには、更にRb、Sr、Mo、Ba及びCuの5元素の濃度(表5)を組み合わせることで産地国を判別する。
【0043】
〔米中の9元素の定量〕
酸分解溶液に内標としてイットリウムを添加し、20倍希釈してNa、Rb、Sr、Ba、Al、Fe、Co、Ni及びCuの9元素を定量する。
【0044】
〔米中の9元素の濃度データ〕
米中の9元素の濃度データを表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
〔小麦中の5元素の定量〕
酸分解溶液に内標としてイットリウムを添加し、40倍希釈してRb、Sr、Mo、Ba及びCuの5元素を定量する。
【0047】
〔小麦中の5元素の濃度データ〕
小麦中の5元素の濃度データを表5に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
〔国内産地の判別〕
重元素同位体比組成の分析結果のみで産地別都道府県を決定することは困難であるが、例えばある試料が秋田県産であるか否か調べる場合、分析値が秋田県のデータベース領域に入らなければ秋田県産でないと判断できる。また、例えば北海道産か岐阜県産かなど同位体比組成が明確に異なる産地間であれば、或いは元素組成など他の指標を組み合わせれば、国内産地間の判別も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、理化学分析という客観的な手段により、穀物の産地を高い信頼性で判別することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物に含まれるストロンチウム及び鉛のそれぞれの同位体比を分析し、それらの分析情報を用いて穀物の産地を判別する穀物の産地判別方法。
【請求項2】
次の工程:
(i)穀物を酸分解して無機成分を主に含む溶液を調製する工程、
(ii)工程(i)で調製した溶液からストロンチウムと鉛とを分離、濃縮して、ストロンチウムを含む溶液及び鉛を含む溶液を調製する工程、
(iii)工程(ii)で調製したストロンチウムを含む溶液及び鉛を含む溶液を質量分析装置により分析して、ストロンチウム同位体比及び鉛同位体比を決定する工程、及び
(iv)工程(iii)で決定された試料のストロンチウム同位体比及び鉛同位体比と、判別したい産地由来の穀物のストロンチウム同位体比及び鉛同位体比とを比較する工程
を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(i)の酸分解において分解容器として清浄な樹脂製使い捨てチューブを用いる請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程(ii)においてストロンチウムと鉛との分離、濃縮を、クラウンエーテル抽出剤を用いた抽出クロマトグラフィー用樹脂を用いて行う請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
クラウンエーテル抽出剤がビス4,4′(5′)[t−ブチルシクロヘキサノ]18−クラウン−6である請求項4記載の方法。
【請求項6】
工程(iii)において質量分析装置として単一検出器型誘導結合プラズマ質量分析装置を用いる請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−196706(P2011−196706A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60984(P2010−60984)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(503027296)財団法人日本穀物検定協会 (7)
【出願人】(501245414)独立行政法人農業環境技術研究所 (60)
【出願人】(301049777)日清製粉株式会社 (128)
【Fターム(参考)】