説明

重力式の塗料カップ

【課題】揺れに伴う空気取り入れ孔からの塗料洩れを防止する。
【解決手段】上開口部5を有する塗料カップ本体2と、この塗料カップ本体2の下端部に設けられ該塗料カップ本体2をスプレーガン3に連結する連結手段4と、前記上開口部5を閉じる天板部30を有する蓋体6とを具える。前記蓋体6は、前記天板部30に、前記塗料カップ本体2の内外を導通する小孔状の空気取り入れ孔32を有し、しかも前記天板部30の下面に、前記空気取り入れ孔32を囲んで周回する環状の塗料滴下壁33を下方に突出させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料カップの蓋体に、空気取り入れ孔を囲む環状の塗料滴下壁を設けることにより、塗装作業における空気取り入れ孔からの塗料の洩れを防止した重力式の塗料カップに関する。
【背景技術】
【0002】
スプレーガンへの塗料の供給方法の一つとして、重力式のものがある(例えば特許文献1参照)。このものは、スプレーガンに、重力式の塗料カップを取り付けるもので、塗料カップに収容された塗料は、重力の作用によって降下しスプレーガン内に供給される。そのために、塗料カップの蓋体には、塗料カップに外気を取り入れるための小孔状の空気取り入れ孔が穿設されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−299869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他方、スプレーガンを用いて塗装作業を行う場合、一般に、スプレーガンを上下左右に動かしながら塗装が行われている。しかしこのとき、前記塗料カップ内の塗料に揺れが生じ、塗料が塗料カップの内面を伝わって前記空気取り入れ孔から洩れやすいという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、蓋体の天板部下面に、空気取り入れ孔を囲む環状の塗料滴下壁を突設することを基本として、内壁面を伝わる塗料が空気取り入れ孔に至る前に、前記塗料滴下壁によって堰き止めて滴下させることができ、前記揺れに伴う空気取り入れ孔からの塗料洩れを防止しうる重力式の塗料カップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、塗料を収容する容器状をなしかつ上端部が開口する上開口部を有する塗料カップ本体と、
この塗料カップ本体の下端部に設けられ、該塗料カップ本体をスプレーガンに連結するとともに該塗料カップ本体内の塗料を前記スプレーガンに供給する連結手段と、
前記塗料カップ本体の上端部に着脱自在に取り付き、かつ前記上開口部を閉じる天板部を有する蓋体とを具えるとともに、
前記蓋体は、前記天板部に、前記塗料カップ本体の内外を導通する小孔状の空気取り入れ孔を有し、しかも前記天板部の下面に、前記空気取り入れ孔を囲んで周回する環状の塗料滴下壁を下方に突出させたことを特徴としている。
【0007】
又請求項2の発明では、前記塗料滴下壁は、その下端から前記空気取り入れ孔までの距離Lを3〜30mmとするとともに、前記天板部の下面からの突出高さHを2〜20mmとしたことを特徴としている。
【0008】
又請求項3の発明では、前記塗料滴下壁の半径方向の外壁面及び内壁面は、前記天板部の下面とは、半径Rが0.5mm以上の円弧面によって滑らかに連なることを特徴としている。
【0009】
又請求項4の発明では、前記天板部は、前記塗料滴下壁の内側に、前記下面から隆起する隆起部を有し、かつ該隆起部に前記空気取り入れ孔を設けるとともに、前記隆起部の前記天板部下面からの隆起高さhは、前記塗料滴下壁の前記天板部下面からの突出高さHよりも小としたことを特徴としている。
【0010】
又請求項5の発明では、前記天板部は、前記塗料滴下壁の外側に、前記塗料滴下壁を囲んで周回する環状の補助の塗料滴下壁を前記下面から突出させたことを特徴としている。
【0011】
又請求項5の発明では、前記塗料カップ本体は、透明なプラスチック材料からなることにより内部の塗料を透視可能としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は叙上の如く、蓋体の天板部下面に、空気取り入れ孔を囲む環状の塗料滴下壁を突設している。この塗料滴下壁は、塗装作業中に、塗料が揺れて内壁面を伝わって動くとき、この塗料を堰き止め、前記空気取り入れ孔に至る前に滴下させることができる。従って、揺れに伴う空気取り入れ孔からの塗料洩れを防止でき、塗装作業を清浄化しうる。又塗料洩れを気にせずに塗装作業を行いうるため、作業効率の向上にも役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1、2は、本発明の重力式の塗料カップが、スプレーガンに取付けられた状態を示す正面図、及び側面図である。
【0014】
図1、2に示すように、本発明の塗料カップ1は、塗料を収容する塗料カップ本体2と、この塗料カップ本体2をスプレーガン3に連結固定する連結手段4と、前記塗料カップ本体2の上開口部5を閉じる蓋体6とを具える。
【0015】
なお前記スプレーガン3は、周知構造をなす従来的な手動のエアースプレーガンであって、その胴部3Aには、塗料カップ取付け用の塗料ニップル10、及び高圧空気供給ホース取付け用の空気ニップル11を突設している。又前記胴部3Aの前端には、空気キャップ3Bが取り付き、この空気キャップ3B前端に設けるノズル部12から、塗料を高圧空気によって霧状に吐出する。
【0016】
次に、前記塗料カップ本体2は、図3に示すように、略円筒状の胴部2Aの下端に底部2Bを設けた容器状をなし、前記底部2Bの底面2BSは、中心に向かって下傾斜するコーン面として形成されている。又前記塗料カップ本体2の上端部には、前記胴部2Aの上端を開口させた広口の上開口部15が形成され、塗料カップ本体2内への塗料の投入、補充が行われる。又前記底部2Bには、塗料カップ本体2内に導通し、内部に収容する塗料を取り出す例えば金属製の導管16が、例えばインサート成形等によって一体固定されている。
【0017】
次に、前記塗料カップ本体2の下端部には、該塗料カップ本体2をスプレーガン3に連結固定する連結手段4が設けられる。
【0018】
前記連結手段4は、前記底部2Bから横向きに突出する前記導管16の突出端部に取り付く継ぎ手17、及びこの継ぎ手17と前記スプレーガン3の塗料ニップル10とを接続する蝶ネジ18とを具える。前記継ぎ手17は、図4、5に示すように、前記導管16の突出端部の外周にネジ固定される第1の継ぎ管20、及びこの第1の継ぎ管20に、該第1の継ぎ管20とはその軸芯回りで相対的に摺動回転可能に取り付く第2の継ぎ管21を含んで構成される。
【0019】
前記第1の継ぎ管20は、その外周面に第1の摺り面20Aを有すとともに、前記第2の継ぎ管21は、その内周面に、前記第1の摺り面20Aに摺動可能に填り合う第2の摺り面21Aと、この第2の摺り面21Aの軸芯方向外端部に配される段差部21Bとを有する。又第1、第2の継ぎ管20、21同士は、ナット金具23によって接続される。該ナット金具23は、前記第2の継ぎ管21の外周面にネジ着されかつ前記第1の継ぎ管20を軸芯方向内方に超えてのびるナット部23Aと、このナット部23Aの内端で半径方向内側に突出する鍔状の内フランジ23Bとを具える。そして、この内フランジ23Bと前記第1の継ぎ管20の内端との間、及び前記第1の継ぎ管20の外端と前記段差部21Bとの間には、それぞれ摩擦板24が配される。
【0020】
又前記第2の継ぎ管21の外端には、前記塗料ニップル10に接続する先端先細状の接続管25がネジ固定される。この接続管25は、前記第2の継ぎ管21と一体に形成することもできる。又前記蝶ネジ18は、前記塗料ニップル10の外周面にネジ着されるナット部18Aと、このナット部18Aの軸芯方向内端で半径方向内側に突出する鍔状の内フランジ18Bとを具える。この内フランジ18Bは、前記接続管25の外周面から突出する鍔状の外フランジ25Aと係合し、前記接続管25を塗料ニップル10に押し付けて固定しうる。
【0021】
このように、本例の継ぎ手17においては、前記第1の継ぎ管20が前記導管16に固定されるとともに、第2の継ぎ管21が蝶ネジ18及び接続管25を介して塗料ニップル10に固定されている。又第2の継ぎ管21は、前記摺り面20A、21Aにより、前記第1の継ぎ管20とは摺動回転可能であり、又第2の継ぎ管21は、第1の継ぎ管20を、前記段差部21Bと内フランジ23Bとの間で、摩擦板24を介して軸芯方向に狭圧保持している。従って、第1の継ぎ管20に、前記摩擦板24による摩擦力を超えた捻り力を加えることで、第2の継ぎ管21に対する第1の継ぎ管20の相対角度を調整でき、しかも調整後の角度を前記摩擦力によって維持することができる。即ち、本例の連結手段4は、塗料カップ1をスプレーガン3に連結した後、この塗料カップ1のスプレーガン3に対する取付角度を、前記連結状態を保ちながら自在に調整することができる。又前記連結手段4には、前記導管16の内孔16aから塗料ニップル10の内孔10aまでのびる導通孔4aを具え、これにより塗料カップ本体2内の塗料をスプレーガン3に供給しうる。
【0022】
次に、前記塗料カップ本体2の上端部に蓋体6が着脱自在に取り付く。この蓋体6は、前記上開口部5を閉じる天板部30と、その外周に形成される鍔部31とを具え、該鍔部31の内周面には、前記塗料カップ本体2の上端部に設ける外ネジ部2aに着脱自在に螺着する内ネジ部31aが形成される。
【0023】
又前記蓋体6には、図6、7(A)に示すように、前記天板部30に、前記塗料カップ本体2の内外を導通する小孔状の空気取り入れ孔32が配されるとともに、この天板部30の下面30Sには、前記空気取り入れ孔32を囲んで周回する環状の塗料滴下壁33が下方に向かって突設される。なお前記空気取り入れ孔32は、直径d1が0.5〜4.0程度の小孔であり、本例では、前記天板部30の中央に形成される。
【0024】
又前記塗料滴下壁33は、本例では、前記空気取り入れ孔32と略同心に形成される円周壁であって、その下端から前記空気取り入れ孔32までの距離Lを3〜30mmとするとともに、前記天板部30の下面からの突出高さHを2〜20mmとしている。
【0025】
このような塗料滴下壁33は、塗装作業中に塗料カップ1が揺れ、内部の塗料が、塗料カップ本体2の内面を伝わって動くとき、この塗料が前記空気取り入れ孔32に至る前に堰き止めて滴下させることができる。従って、前記揺れに伴う空気取り入れ孔32からの塗料洩れを防止しうる。なお前記距離Lが3mm未満の場合、塗料滴下壁33が空気取り入れ孔32に近すぎとなり、堰き止められた塗料が、空気取り入れ孔32に付着しやすくなる。逆に距離Lが30mmを超える場合にも、前記塗料滴下壁33と空気取り入れ孔32との間かつ前記天板部30の下面30Sに、揺れた塗料が飛び跳ねて付着しやすくなり、何れも塗料洩れ効果の低下を招く。又前記突出高さHが2mm未満の場合、塗料が伝わるのを堰き止めることができなくなり、逆に20mmを超えると、塗装作業後における洗浄作業性能を損ねるため好ましくなくなる。
【0026】
ここで、塗料を堰き止めて下方に誘導させるためには、塗料滴下壁33の半径方向の外壁面33o及び内壁面33iと、前記天板部30の下面30Sとを、半径Rが0.5mm以上の円弧面34によって滑らかに連結することが好ましい。又、滴下性能を高めるために、前記塗料滴下壁33の下端(先端)を、曲率半径rが2.0mm以下、さらには1.5mm以下、さらには1.0mm以下の小円弧、或いは鋭利なエッジにて形成するのが好ましい。
【0027】
又本例の蓋体6においては、前記塗料滴下壁33の内側に、前記天板部30の下面30Sから隆起する段差状の隆起部36をするとともに、この隆起部36に、前記空気取り入れ孔32を形成している。前記隆起部36の前記天板部30の下面30Sからの隆起高さhは、塗料滴下壁33の前記突出高さHよりも小である。このような隆起部36は、前記塗料滴下壁33を乗り越えた塗料が、下面30Sを伝わって空気取り入れ孔32に至るのを阻止できる。なお隆起部36の直径d2は、前記直径d1の1〜10倍の範囲が好ましく、これから外れると前記阻止効果が不充分となる。
【0028】
又本例の蓋体6においては、前記塗料滴下壁33の外側に、前記塗料滴下壁33を囲んで周回する環状の補助の塗料滴下壁37を、前記下面30Sに突設している。このような補助の塗料滴下壁37は、塗料カップ本体2の内壁面2Sを伝わって勢いよく跳ね上がる塗料が、前記下面30Sに移行する前に、U字に折り返して下方に誘導することができ、塗料洩れをさらに効果的に防止することができる。そのためには、前記補助の塗料滴下壁37は、その下端の前記塗料カップ本体2の内壁面2Sからの距離L1を、10mm以下、さらには5mm以下とするのが好ましい。
【0029】
又塗料カップ1においては、前記塗料カップ本体2を透明なプラスチック材料にて形成し、内部の塗料を透視可能とするのが好ましい。これにより、塗装作業中の塗料の揺れが確認でき、塗料の揺れが激しくなった時、スプレーガンの動きを一時的に抑えて塗料の揺れを減じることができる。
【0030】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の重力式の塗料カップが、スプレーガンに取付けられた状態を示す正面図である。
【図2】その側面図である。
【図3】塗料カップの断面図である。
【図4】その連結手段を拡大して示す断面図である。
【図5】連結手段の分解斜視図である。
【図6】蓋体の斜視図である。
【図7】(A)は、塗料滴下壁を拡大して示す断面図、(B)は補助の塗料滴下壁をを拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 塗料カップ
2 塗料カップ本体
3 スプレーガン
4 連結手段
5 上開口部
6 蓋体
30 天板部
32 空気取り入れ孔
33 塗料滴下壁
34 円弧面
36 隆起部
37 補助の塗料滴下壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を収容する容器状をなしかつ上端部が開口する上開口部を有する塗料カップ本体と、
この塗料カップ本体の下端部に設けられ、該塗料カップ本体をスプレーガンに連結するとともに該塗料カップ本体内の塗料を前記スプレーガンに供給する連結手段と、
前記塗料カップ本体の上端部に着脱自在に取り付き、かつ前記上開口部を閉じる天板部を有する蓋体とを具えるとともに、
前記蓋体は、前記天板部に、前記塗料カップ本体の内外を導通する小孔状の空気取り入れ孔を有し、しかも前記天板部の下面に、前記空気取り入れ孔を囲んで周回する環状の塗料滴下壁を下方に突出させたことを特徴とする重力式の塗料カップ。
【請求項2】
前記塗料滴下壁は、その下端から前記空気取り入れ孔までの距離Lを3〜30mmとするとともに、前記天板部の下面からの突出高さHを2〜20mmとしたことを特徴とする請求項1記載の重力式の塗料カップ。
【請求項3】
前記塗料滴下壁の半径方向の外壁面及び内壁面は、前記天板部の下面とは、半径Rが0.5mm以上の円弧面によって滑らかに連なることを特徴とする請求項1又は2記載の重力式の塗料カップ。
【請求項4】
前記天板部は、前記塗料滴下壁の内側に、前記下面から隆起する隆起部を有し、かつ該隆起部に前記空気取り入れ孔を設けるとともに、前記隆起部の前記天板部下面からの隆起高さhは、前記塗料滴下壁の前記天板部下面からの突出高さHよりも小としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の重力式の塗料カップ。
【請求項5】
前記天板部は、前記塗料滴下壁の外側に、前記塗料滴下壁を囲んで周回する環状の補助の塗料滴下壁を前記下面から突出させたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の重力式の塗料カップ。
【請求項6】
前記塗料カップ本体は、透明なプラスチック材料からなることにより内部の塗料を透視可能としたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の重力式の塗料カップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−273965(P2009−273965A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125014(P2008−125014)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000155230)株式会社明治機械製作所 (23)
【Fターム(参考)】