説明

重合体、フィルム、樹脂組成物およびフィルムの製造方法

【課題】光透過性、耐熱性、低着色性および光学等方性にバランス良く優れる重合体およびフィルムを提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される構造単位を有する重合体。


(式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の有機基を示し、R3〜R6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、aおよびbはそれぞれ独立に0〜3の整数を示し、cおよびdは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体、フィルム、樹脂組成物およびフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイの大型化に伴い、位相差フィルムや偏向板用フィルム等の光学フィルムの大型化も必要となってきている。
しかし、光学フィルムを大型化すると、外力の偏りが生じやすくなるため、光弾性係数および応力光学係数等の絶対値の大きい材料からなるフィルムは、複屈折の分布が生じやすく、コントラストが不均一になりやすい。そのため、光弾性係数および応力光学係数等の絶対値の小さい光学フィルムの開発が望まれている。
【0003】
また、このような光学フィルムとしては、耐熱性、機械的強度および透明性に優れることも要求されており、フィルムに求められる特性に応じた重合体が用いられる。代表的な透明樹脂として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が挙げられる。PMMAは光透過性、光学等方性、成形性に優れており、フィルムやレンズに使用されてきた。その反面、耐熱性が低く、使用される用途が限定される問題があった。
【0004】
PMMAより耐熱性に優れる樹脂として、ポリカーボネート(PC)などが挙げられる。しかし、PCからなるフィルムは、PCの主鎖骨格を形成する芳香環の影響で光学等方性が低下する問題があった。
【0005】
これらPMMAやPCは透明性に優れるものの、ガラス転移温度が低く、耐熱性が不十分であるため、高耐熱性が要求される用途への使用は困難であった。また、加水分解性のある極性基を含有するため、酸、アルカリ等による製品の二次加工時の制限もある。
【0006】
耐熱性や機械的強度に優れ、かつ、透明性に優れた重合体として、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと各種ビスフェノール類および/または2,6−ジハロゲン化ベンゾニトリルとを反応させて得られる芳香族ポリエーテル(特許文献1および2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−246629号公報
【特許文献2】特開平2−45526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの芳香族ポリエーテルを含むフィルムは、光弾性係数および応力光学係数等の絶対値が大きい場合があった。
本発明は前記した問題点に鑑みてなされたもので、光透過性、耐熱性、低着色性および光学等方性にバランス良く優れる重合体およびフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造単位を有する重合体により、前記課題を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[12]を提供するものである。
【0010】
[1] 下記式(1)で表される構造単位を有する重合体。
【0011】
【化1】

(式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の有機基を示し、R3〜R6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、aおよびbは、それぞれ独立に0〜3の整数を示し、cおよびdは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【0012】
[2] 前記式(1)中、R1およびR2の結合位置が、前記重合体の主鎖骨格を形成するエーテル結合のオルト位である、[1]に記載の重合体。
[3] 前記重合体が、さらに、下記式(1−1)で表される構造単位、下記式(2)で表される構造単位および下記式(3)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位を有する、[1]または[2]に記載の重合体。
【0013】
【化2】

(式(1−1)中、R1〜R6およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R6およびa〜dと同義であり、R7およびR8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、jおよびkは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、Yは単結合、−SO2−または>C=Oを示し、mは0または1を示す。)
【0014】
【化3】

(式(2)中、R7、R8、Y、m、jおよびkは、それぞれ独立に前記式(1−1)中のR7、R8、Y、m、jおよびkと同義であり、R9〜R12は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基(ただし、脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の有機基を除く。)を示し、e〜hは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【0015】
【化4】

(式(3)中、R13およびR14は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは単結合、−O−、−S−、−SO2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、pおよびqは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示し、R7、R8、Y、m、jおよびkは、それぞれ独立に前記式(1−1)中のR7、R8、Y、m、jおよびkと同義である。)
【0016】
[4] 前記重合体の示差走査熱量測定(DSC、昇温速度20℃/分)で測定したガラス転移温度が230〜350℃である、[1]〜[3]のいずれかに記載の重合体。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の重合体を含むフィルム。
[6] 前記フィルムの厚み30μmにおける、JIS K7105透明度試験法による全光線透過率が85%以上である、[5]に記載のフィルム。
[7] 前記フィルムの厚み30μmにおける、YI値(イエローインデックス)が3.0以下である、[5]または[6]に記載のフィルム。
【0017】
[8] 前記フィルムの厚み30μmにおける、波長589nmで測定したフィルムの厚み方向の位相差(Rth589)が60nm以下である、[5]〜[7]のいずれかに記載のフィルム。
[9] 波長589nmで測定したフィルムの光弾性係数(Cd)の絶対値が0〜50(×10-12Pa-1)である、[5]〜[8]のいずれかに記載のフィルム。
[10] 波長589nmで測定したフィルムの応力光学係数(CR)の絶対値が1〜1500(×10-12Pa-1)である、[5]〜[9]のいずれかに記載のフィルム。
【0018】
[11] [1]〜[4]のいずれかに記載の重合体と有機溶媒とを含む樹脂組成物。
【0019】
[12] [5]〜[10]のいずれかに記載のフィルムを製造する方法であって、[11]に記載の樹脂組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜から前記有機溶媒を蒸発させることにより除去してフィルムを得る工程とを含むフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光透過性、耐熱性、低着色性、低位相差および光学等方性等にバランス良く優れる重合体およびフィルムを得ることができる。
また、本発明のフィルムは、導光板、偏光板、ディスプレイ用フィルム、光ディスク用フィルム、透明導電性フィルム、タッチパネル用フィルム、導波路板などのフィルムとして好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
≪重合体≫
本発明の重合体は、下記式(1)で表される構造単位(以下「構造単位(1)」ともいう。)を有する。
本発明の重合体は、構造単位(1)を有するため、光透過性、耐熱性、低着色性、低位相差および光学等方性等にバランス良く優れる。これは、特に、構造単位(1)が、RおよびR(フルオレンの9位に結合したベンゼン環に、脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の有機基)を少なくとも1つ有することによると考えられる。
また、フルオレンの9位に結合したベンゼン環に、脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の有機基を有しない構造単位(構造単位(1)においてRおよびRを有しない構造単位)、を有する重合体を含んでなるフィルムは、光弾性係数(C)や応力光学係数(C)が大きくなる傾向がある。
【0022】
【化5】

【0023】
前記式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の有機基を示し、R3〜R6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、aおよびbは、それぞれ独立に0〜3の整数を示し、cおよびdは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。a〜dはそれぞれ独立に0であることが好ましい。
【0024】
前記構造単位(1)におけるR1およびR2の結合位置は、前記重合体の主鎖骨格を形成するエーテル結合のオルト位であることが好ましい。なお、「主鎖骨格を形成するエーテル結合」とは、フルオレンの9位に結合したベンゼン環と、ベンゾニトリルとを結合する「−O−」のことを意味し、「主鎖骨格を形成するエーテル結合のオルト位」とは、例えば、下記式(1’)に示すように、フルオレンの9位に結合したベンゼン環の4位にエーテル結合が結合している場合、R1およびR2の結合位置は、該ベンゼン環の3位(5位)であることを意味する。
前記構造単位(1)におけるR1およびR2の結合位置が、前記位置にあることで、この構造単位を有する重合体を含んでなるフィルムは、より位相差が小さくなり、また、より光弾性係数および応力光学係数の絶対値が小さくなり、光学等方性に優れる。
【0025】
【化6】

【0026】
前記式(1’)中、R1〜R6およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R6およびa〜dと同義である。
【0027】
前記R1およびR2における脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の炭化水素基、脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の酸素原子を含む有機基を挙げることができる。
脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の炭化水素基は、重合体の光学等方性を向上させる観点から、置換基として芳香族基を含まないことが好ましい。
【0028】
1およびR2における脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基、および、脂肪族炭化水素基を有する炭素数4〜12の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0029】
1およびR2における前記炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0030】
1およびR2における前記炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基およびn−ヘプチル基が挙げられる。
【0031】
1およびR2における前記炭素数3〜12の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜8の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0032】
1およびR2における炭素数3〜12の脂環式炭化水素基の好適な具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基およびシクロへキシル基等のシクロアルキル基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基が挙げられる。当該脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素でもよい。
【0033】
1およびR2における脂肪族炭化水素基を有する炭素数4〜12の脂環式炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基を有する炭素数4〜9の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0034】
1およびR2における脂肪族炭化水素基を有する炭素数4〜12の脂環式炭化水素基の好適な具体例としては、前記炭素数3〜12の脂環式炭化水素基の好適な具体例として挙げた基の任意の水素原子を、前記炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基の好適な具体例として挙げた基で置換した基が挙げられる。
【0035】
1およびR2における脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の酸素原子を含む有機基としては、脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有し、エーテル結合を有する炭素数1〜12の有機基等を挙げることができる。
【0036】
1およびR2における脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有し、エーテル結合を有する炭素数1〜12の有機基としては、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12のアルケニルオキシ基、炭素数2〜12のアルキニルオキシ基、炭素数3〜12のシクロアルキルオキシ基および炭素数1〜12のアルコキシアルキル基等を挙げることができる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、プロペニルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基およびメトキシメチル基等が挙げられる。
【0037】
前記式(1)におけるR1およびR2としては、光学等方性の観点から、芳香族基を含まない基であることが好ましく、脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基がより好ましく、メチル基、エチル基またはイソプロピル基がさらに好ましい。
【0038】
前記R3〜R6における炭素数1〜12の1価の有機基としては、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、ならびに酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む炭素数1〜12の1価の有機基等を挙げることができる。
【0039】
3〜R6における炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の炭化水素基、および炭素数3〜12の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0040】
3〜R6における炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の炭化水素基としては、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖の炭化水素基がより好ましい。
【0041】
3〜R6における直鎖または分岐鎖の炭化水素基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基およびn−ヘプチル基等が挙げられる。
【0042】
3〜R6における炭素数3〜12の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜8の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3または4の脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0043】
3〜R6における炭素数3〜12の脂環式炭化水素基の好適な具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基およびシクロへキシル基等のシクロアルキル基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基などが挙げられる。当該脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素でもよい。
【0044】
光学等方性の観点から、R3〜R6はそれぞれ独立に、芳香族基を含まない基であることが好ましい。
【0045】
3〜R6における酸素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子および酸素原子からなる有機基が挙げられ、中でも、エーテル結合、カルボニル基またはエステル結合と炭化水素基とからなる総炭素数1〜12の有機基等を好ましく挙げることができる。
【0046】
3〜R6におけるエーテル結合を有する総炭素数1〜12の有機基としては、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12のアルケニルオキシ基、炭素数2〜12のアルキニルオキシ基、および炭素数1〜12のアルコキシアルキル基等を挙げることができる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、プロペニルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基およびメトキシメチル基等が挙げられる。
【0047】
また、R3〜R6におけるカルボニル基を有する総炭素数1〜12の有機基としては、炭素数2〜12のアシル基等を挙げることができる。具体的には、アセチル基、プロピオニル基およびイソプロピオニル基等が挙げられる。
【0048】
3〜R6におけるエステル結合を有する総炭素数1〜12の有機基としては、炭素数2〜12のアシルオキシ基等が挙げられる。具体的には、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基およびイソプロピオニルオキシ基等が挙げられる。
【0049】
3〜R6における窒素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子、窒素原子からなる有機基が挙げられ、具体的には、シアノ基等が挙げられる。
【0050】
3〜R6における酸素原子および窒素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子、酸素原子および窒素原子からなる有機基が挙げられる。
【0051】
また、本発明の重合体は、さらに、下記式(1−1)で表される構造単位(以下「構造単位(1−1)」ともいう。)、下記式(2)で表される構造単位(以下「構造単位(2)」ともいう。)および下記式(3)で表される構造単位(以下「構造単位(3)」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位(以下「構造単位(i)」ともいう。)を有してもよい。本発明の重合体がこのような構造単位を有すると、該重合体を含むフィルムは力学的特性が向上することがある。
なお、本発明の重合体が構造単位(i)を有すると、該重合体を含むフィルムは、光弾性係数(C)や応力光学係数(C)が大きくなる傾向がある。
【0052】
【化7】

【0053】
前記式(1−1)中、R1〜R6およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R6およびa〜dと同義であり、R7およびR8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、Yは単結合、−SO2−または>C=Oを示し、mは0または1を示す。jおよびkは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは0である。
【0054】
前記式(1−1)中、R7およびR8における炭素数1〜12の1価の有機基としては、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、ならびに酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む炭素数1〜12の1価の有機基等を挙げることができる。
【0055】
7およびR8における炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の炭化水素基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0056】
7およびR8における炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の炭化水素基としては、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖の炭化水素基がより好ましい。
【0057】
7およびR8における直鎖または分岐鎖の炭化水素基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基およびn−ヘプチル基等が挙げられる。
【0058】
7およびR8における炭素数3〜12の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜8の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3または4の脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0059】
7およびR8における炭素数3〜12の脂環式炭化水素基の好適な具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基およびシクロへキシル基等のシクロアルキル基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基などが挙げられる。当該脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素でもよい。
【0060】
7およびR8における炭素数6〜12の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基およびナフチル基等が挙げられる。当該芳香族炭化水素基の結合部位は、芳香族環上のいずれの炭素でもよい。
【0061】
7およびR8における酸素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子および酸素原子からなる有機基が挙げられ、中でも、エーテル結合、カルボニル基またはエステル結合と炭化水素基とからなる総炭素数1〜12の有機基等を好ましく挙げることができる。
【0062】
7およびR8におけるエーテル結合を有する総炭素数1〜12の有機基としては、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12のアルケニルオキシ基、炭素数2〜12のアルキニルオキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基および炭素数1〜12のアルコキシアルキル基等を挙げることができる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、プロペニルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基およびメトキシメチル基等が挙げられる。
【0063】
また、R7およびR8におけるカルボニル基を有する総炭素数1〜12の有機基としては、炭素数2〜12のアシル基等を挙げることができる。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基およびベンゾイル基等が挙げられる。
【0064】
7およびR8におけるエステル結合を有する総炭素数1〜12の有機基としては、炭素数2〜12のアシルオキシ基等が挙げられる。具体的には、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、イソプロピオニルオキシ基およびベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0065】
7およびR8における窒素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子および窒素原子からなる有機基が挙げられ、具体的には、シアノ基、イミダゾール基、トリアゾール基、ベンズイミダゾール基およびベンズトリアゾール基等が挙げられる。
【0066】
7およびR8における酸素原子および窒素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子、酸素原子および窒素原子からなる有機基が挙げられ、具体的には、オキサゾール基、オキサジアゾール基、ベンズオキサゾール基およびベンズオキサジアゾール基等が挙げられる。
【0067】
【化8】

【0068】
前記式(2)中、R7、R8、Y、m、jおよびkは、それぞれ独立に前記式(1−1)中のR7、R8、Y、m、jおよびkと同義であり、R9〜R12は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基(ただし、脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の有機基を除く。)を示し、Yは単結合、−SO2−または>C=Oを示し、mは0または1を示す。e〜hは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは0である。
【0069】
前記式(2)中、R9〜R12における炭素数1〜12の1価の有機基としては、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基等が挙げられ、具体的には、フェニル基、ビフェニル基およびナフチル基等が挙げられる。当該芳香族炭化水素基の結合部位は、芳香族環上のいずれの炭素でもよい。
【0070】
前記式(2)中、R9〜R12は、それぞれ独立に脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の有機基ではなく、該脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の有機基としては、前記R1およびR2における脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の有機基と同様の基等を挙げることができる。
【0071】
【化9】

【0072】
前記式(3)中、R13およびR14は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、nは、0または1を示す。pおよびqは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは0である。R7、R8、Y、m、jおよびkは、それぞれ独立に前記式(1−1)中のR7、R8、Y、m、jおよびkと同義である。
【0073】
前記式(3)中、R13およびR14における炭素数1〜12の1価の有機基としては、前記R7およびR8における炭素数1〜12の1価の有機基と同様の有機基等を挙げることができる。
【0074】
前記式(3)中、Zにおける炭素数1〜12の2価の有機基としては、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基、酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む炭素数1〜12の2価の有機基、ならびに、酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む炭素数1〜12の2価のハロゲン化有機基等を挙げることができる。
【0075】
炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基、炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基および炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0076】
炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基およびヘプタメチレン基等が挙げられる。
【0077】
炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基およびシクロへキシレン基等のシクロアルキレン基;シクロブテニレン基、シクロペンテニレン基およびシクロヘキセニレン基等のシクロアルケニレン基等が挙げられる。
【0078】
炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基およびビフェニレン基等が挙げられる。
【0079】
炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価のハロゲン化炭化水素基、炭素数3〜12の2価のハロゲン化脂環式炭化水素基および炭素数6〜12の2価のハロゲン化芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0080】
炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価のハロゲン化炭化水素基としては、ジフロオロメチレン基、ジクロロメチレン基、テトラフルオロエチレン基、テトラクロロエチレン基、ヘキサフルオロトリメチレン基、ヘキサクロロトリメチレン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基およびヘキサクロロイソプロピリデン基等が挙げられる。
【0081】
炭素数3〜12の2価のハロゲン化脂環式炭化水素基としては、前記炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0082】
炭素数6〜12の2価のハロゲン化芳香族炭化水素基としては、前記炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0083】
酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む炭素数1〜12の2価の有機基としては、水素原子および炭素原子と、酸素原子および/または窒素原子とからなる有機基が挙げられ、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合またはアミド結合と炭化水素基とを有する総炭素数1〜12の2価の有機基等が挙げられる。
【0084】
酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む炭素数1〜12の2価のハロゲン化有機基としては、具体的には、酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む炭素数1〜12の2価の有機基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0085】
本発明の重合体は、光学等方性に優れる重合体を得る観点から、前記構造単位(1)を全構造単位中70モル%以上含むことが好ましく、全構造単位中90モル%以上含むことがより好ましい。また、重合体中の下記(1'')で表される構造単位の含量としては、全構造単位中50重量%以上含むことが望ましく全構造単位中55重量%以上含むことがさらに望ましい。
【0086】
【化10】

【0087】
前記式(1'')中、R1〜R6およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R6およびa〜dと同義である。
【0088】
本発明の重合体は、例えば、下記式(A1)で表される化合物(以下「化合物(A1)」ともいう。)を含む成分(以下「(A)成分」ともいう。)と、下記式(B1)で表される化合物(以下「化合物(B1)」ともいう。)を含む成分(以下「(B)成分」ともいう。)とを、反応させることにより得ることができる。
【0089】
【化11】

【0090】
前記式(A1)中、Xは独立してハロゲン原子を示し、フッ素原子が好ましい。
【0091】
上記化合物(A1)としては、具体的には、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,5−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,5−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリルおよびこれらの反応性誘導体を挙げることができる。特に、反応性および経済性等の観点から、2,6−ジフルオロベンゾニトリルおよび2,6−ジクロロベンゾニトリルが好適に用いられる。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0092】
化合物(A1)は、(A)成分100モル%中に、70モル%〜100モル%含まれていることが好ましく、80モル%〜100モル%含まれていることがより好ましく、90モル%〜100モル%含まれていることがさらに好ましい。
【0093】
【化12】

【0094】
前記式(B1)中、Rbは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、アセチル基、メタンスルホニル基またはトリフルオロメチルスルホニル基を示し、これらの中でも水素原子が好ましい。
なお、式(B1)中、R1〜R6およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R6およびa〜dと同義である。
【0095】
また、前記化合物(B1)は、下記式(B1')で表される化合物(以下「化合物(B1')」ともいう。)であることが好ましい。
【0096】
【化13】

【0097】
前記式(B1')中、R1〜R6およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R6およびa〜dと同義である。
【0098】
前記化合物(B1')としては、具体的には、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−イソプロピル−4−フェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、およびこれらの反応性誘導体等が挙げられる。上述の化合物の中でも、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、が好適に用いられる。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0099】
前記化合物(B1)および(B1')におけるR1およびR2の結合位置は、前記重合体の主鎖骨格を形成するエーテル結合のオルト位であることが好ましい。
【0100】
化合物(B1)は、(B)成分100モル%中に、80モル%〜100モル%含まれていることが好ましく、90モル%〜100モル%含まれていることがより好ましい。
【0101】
前記(A)成分は、必要に応じて下記式(A2)で表される化合物(以下「化合物(A2)」ともいう。)を含んでもよい。
【0102】
【化14】

【0103】
前記式(A2)中、R7、R8、Y、m、jおよびkは、それぞれ独立に前記式(1−1)中のR7、R8、Y、m、jおよびkと同義であり、Xはそれぞれ独立に前記式(A1)中のXと同義である。
【0104】
上記化合物(A2)としては、具体的には、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、2,4'−ジフルオロベンゾフェノン、2,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、2,2'−ジフルオロベンゾフェノン、2,2'−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3'−ジニトロ−4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、3,3'−ジニトロ−4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロジフェニルスルホン、2,4'−ジクロロベンゾフェノン、2,4'−ジクロロジフェニルスルホン、2,2'−ジクロロベンゾフェノン、2,2'−ジクロロジフェニルスルホン、3,3'−ジニトロ−4,4'−ジクロロベンゾフェノン、および3,3'−ジニトロ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン等を挙げることができる。これらの中でも4,4'−ジフルオロベンゾフェノンが好ましい。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0105】
前記(B)成分は、必要に応じて下記式(B2)で表される化合物(以下「化合物(B2)」ともいう。)および下記式(B3)で表される化合物(以下「化合物(B3)」ともいう。)を含んでもよい。
【0106】
【化15】

【0107】
前記式(B2)中、R9〜R12およびe〜hは、それぞれ独立に前記式(2)中のR9〜R12およびe〜hと同義であり、Rbは、それぞれ独立に前記式(B1)中のRbと同義である。
【0108】
また、前記化合物(B2)は、下記式(B2')で表される化合物(以下「化合物(B2')」ともいう。)であることが好ましい。
【0109】
【化16】

【0110】
前記式(B2')中、R9〜R12およびe〜hは、それぞれ独立に前記式(2)中のR9〜R12およびe〜hと同義である。
【0111】
前記化合物(B2')としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、およびこれらの反応性誘導体等が挙げられる。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0112】
【化17】

【0113】
前記式(B3)中、R13、R14、Z、n、pおよびqは、それぞれ独立に前記式(3)中のR13、R14、Z、n、pおよびqと同義である。
【0114】
前記化合物(B3)としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、2−フェニルヒドロキノン、4,4'−ビフェノール、3,3'−ビフェノール、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3'−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1'−ビ−2−ナフトール、1,1'−ビ−4−ナフトール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、およびこれらの反応性誘導体等が挙げられる。これらの中でも、4,4'−ビフェノールおよびレゾルシノールが好ましく、反応性および力学的特性の観点から、4,4'−ビフェノールが好適に用いられる。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0115】
本発明において、力学的特性とは、重合体の引張強度、破断伸びおよび引張弾性率等の性質のことをいう。
【0116】
本発明の重合体は、より具体的には、以下に示す方法で合成することができる。
(B)成分を有機溶媒中でアルカリ金属化合物と反応させて、(B)成分(化合物(B1)、化合物(B2)および/または化合物(B3)等)のアルカリ金属塩を得た後に、得られたアルカリ金属塩と、(A)成分とを反応させる。なお、(B)成分とアルカリ金属化合物との反応を(A)成分の存在下で行うことで、(B)成分のアルカリ金属塩と(A)成分とを反応させることもできる。
【0117】
反応に使用するアルカリ金属化合物としては、リチウム、カリウムおよびナトリウムなどのアルカリ金属;水素化リチウム、水素化カリウムおよび水素化ナトリウムなどの水素化アルカリ金属;水酸化リチウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリ金属;炭酸リチウム、炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩等を挙げることができる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0118】
アルカリ金属化合物は、前記(B)成分中の全ての−O−Rbに対し、アルカリ金属化合物中の金属原子の量が通常1〜3倍当量、好ましくは1.1〜2倍当量、さらに好ましくは1.2〜1.5倍当量となる量で使用される。
【0119】
また、反応に使用する有機溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチルラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、ジアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数1〜4)およびトリアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数1〜4)などを使用することができる。これらの溶媒の中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホンおよびジメチルスルホキシド等の誘電率の高い極性有機溶媒が特に好適に用いられる。これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0120】
さらに、前記反応の際には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールなどの水と共沸する溶媒をさらに用いることもできる。
【0121】
(A)成分と(B)成分の使用割合は、(A)成分と(B)成分との合計を100モル%とした場合に、(A)成分が好ましくは45モル%以上55モル%以下、より好ましくは50モル%以上52モル%以下、さらに好ましくは50モル%を超えて52モル%以下であり、(B)成分が好ましくは45モル%以上55モル%以下、より好ましくは48モル%以上50モル%以下であり、さらに好ましくは48モル%以上50モル%未満である。
【0122】
また、反応温度は、好ましくは60℃〜250℃で、より好ましくは80℃〜200℃の範囲である。反応時間は、好ましくは15分〜100時間、より好ましくは1時間〜24時間の範囲である。
【0123】
本発明の重合体は、TOSOH製HLC−8220型GPC装置で測定した、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは5,000〜500,000、さらに好ましくは15,000〜250,000である。
【0124】
本発明の重合体は、セイコーインスツルメンツ社製、示差走査熱量計(昇温速度20℃/分)を用いて測定したガラス転移温度(Tg)が、好ましくは230〜350℃であり、より好ましくは240〜330℃であり、さらに好ましくは250〜300℃である。本発明の重合体のガラス転移温度が前記範囲にあると、十分な耐熱性を示すため、該重合体を含むフィルムは、導光板、偏光板、ディスプレイ用フィルム、光ディスク用フィルム、透明導電性フィルム、タッチパネル用フィルム、導波路板などのフィルムとして好適に使用できる。
【0125】
≪樹脂組成物≫
本発明の樹脂組成物は、前記本発明の重合体および有機溶媒を含む。
【0126】
前記の方法で得られた重合体と有機溶媒との混合物(重合体合成後の混合物)は、本発明の樹脂組成物としてそのまま使用することができる。このような樹脂組成物を用いることで、容易に、安価にフィルムを製造することができる。
【0127】
また、前記の方法で得られた重合体と有機溶媒との混合物から、重合体を固体分として単離(精製)した後、有機溶媒に再溶解させて本発明の樹脂組成物を調製することもできる。このような樹脂組成物を用いることで、より着色が少なく、光透過性に優れるフィルムを製造することができる。
【0128】
前記本発明の重合体を固体分として単離(精製)する方法は、例えば、メタノール等の重合体の貧溶媒に重合体を再沈殿させ、その後ろ過し、次いでろ物を減圧乾燥すること等により行うことができる。
【0129】
また、前記重合体を溶解する有機溶媒としては、例えば、塩化メチレン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよびγ−ブチロラクトンが好適に用いられ、塗工性、経済性の観点から、塩化メチレン、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN−メチルピロリドンがより好適に使用される。これらの溶媒は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0130】
また、本発明の樹脂組成物にはさらに老化防止剤を含有させることができ、老化防止剤を含有することで得られるフィルムの耐久性をより向上させることができる。
【0131】
老化防止剤としては、好ましくはヒンダードフェノール系化合物を挙げることができる。
【0132】
本発明で使用することのできるヒンダードフェノール系化合物としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス[2−メチル−4−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−5−tert−ブチルフェニル]ブタン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、および、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどを挙げることができる。これらの老化防止剤は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0133】
本発明において、老化防止剤は、前記本発明の重合体100重量部に対して、0.01〜10重量部の量で使用することが好ましい。
【0134】
前記本発明の樹脂組成物中の重合体濃度は、重合体の分子量にもよるが、通常、5〜40質量%、好ましくは7〜25質量%である。組成物中の重合体の濃度が前記範囲にあると、厚膜化可能で、ピンホールが生じにくく、表面平滑性に優れるフィルムを形成することができる。
【0135】
なお、本発明の樹脂組成物の粘度は、重合体の分子量や濃度にもよるが、通常、2,000〜100,000mPa・s、好ましくは3,000〜50,000mPa・sである。組成物の粘度が前記範囲にあると、成膜中の組成物の滞留性に優れ、厚みの調整が容易であるため、フィルムの成形が容易である。
【0136】
≪フィルム≫
本発明のフィルムは、前記本発明の重合体を含んでなる。本発明のフィルムは、所望の用途に応じて、前記本発明の重合体の他に添加剤を含んでもよいが、本質的に、上記本発明の重合体のみからなることが好ましい。
【0137】
本発明のフィルムは、前記本発明の重合体を含むため、光透過性、耐熱性、低着色性および光学等方性にバランス良く優れるフィルムとなり、導光板、偏光板、ディスプレイ用フィルム、光ディスク用フィルム、透明導電性フィルム、タッチパネル用フィルム、導波路板などのフィルムとして好適に使用できる。
特に、本発明のフィルムは、光学的等方性に優れるため、該フィルムをタッチパネル等に用いる場合、表示面に着色や干渉縞等が表れて、表示品位が低下することを好適に防ぐことができる。
【0138】
本発明のフィルムの製造方法は、特に制限されないが、前記樹脂組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜から前記有機溶媒を蒸発させることにより除去することでフィルムを得る工程とを含むことが好ましい。
【0139】
前記樹脂組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する方法としては、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法およびドクターブレードを用いる方法等が挙げられる。
前記支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムおよびSUS板などが挙げられる。
【0140】
塗膜の厚さは、特に限定されないが、例えば1〜250μmであり、好ましくは2〜150μmであり、より好ましくは5〜125μmである。
【0141】
また、塗膜から前記有機溶媒を蒸発させることにより有機溶媒を除去する工程は、具体的には塗膜を加熱することにより行うことができる。塗膜を加熱することにより、該塗膜中の有機溶媒を蒸発させて除去することができる。前記加熱の条件は、有機溶媒が蒸発すればよく、支持体や重合体に応じて適宜決めればよいが、例えば加熱温度が30℃〜300℃であることが好ましく、40℃〜250℃であることがより好ましく、50℃〜230℃であることがさらに好ましい。
【0142】
また、加熱時間としては、10分〜5時間であることが好ましい。なお、加熱は二段階以上で行ってもよい。具体的には、30〜80℃の温度で10分〜2時間乾燥後、100℃〜250℃でさらに10分〜2時間加熱するなどである。また、必要に応じて、窒素雰囲気下、もしくは減圧下にて乾燥を行ってもよい。
【0143】
この有機溶媒を除去する工程後の得られたフィルム中の残存溶媒量(熱重量分析法:TGA、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分)は、フィルム100重量%に対し、好ましくは0〜1.2重量%、より好ましくは0〜1重量%である。残存溶媒量がこの範囲にあることで、耐熱性に優れ、特に高温下でも変形や力学的強度の低下が起こりにくいフィルムを得ることができる。よって、該フィルムは、導光板、偏光板、ディスプレイ用フィルム、光ディスク用フィルム、透明導電性フィルム、タッチパネル用フィルム、導波路板などのフィルムとして好適に用いられる。
【0144】
得られたフィルムは、基板から剥離して用いることが好ましく、用いる基板の種類にもよるが、剥離せずにそのまま用いることもできる。
【0145】
本発明のフィルムは、セイコーインスツルメンツ社製、示差走査熱量計(昇温速度20℃/分)を用いて測定したガラス転移温度(Tg)が、230〜350℃であることが好ましく、240〜330℃であることがより好ましく、250〜300℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度がこのような範囲にあると、導光板、偏光板、ディスプレイ用フィルム、光ディスク用フィルム、透明導電性フィルム、タッチパネル用フィルム、導波路板などのフィルムとしてより好適に用いることができる。
【0146】
本発明におけるフィルムの厚みは好ましくは1〜250μm、より好ましくは2〜150μmであり、さらに好ましくは10〜125μmである。
【0147】
本発明のフィルムは、厚みが30μmである場合に、JIS K7105透明度試験法における全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。全光線透過率は、スガ試験機社製SC−3H型ヘイズメーターを用いて測定することができる。
【0148】
本発明のフィルムは、厚みが30μmである場合に、波長400nmにおける光線透過率が、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。波長400nmにおける光線透過率は、JASCO社製V−570型UV/VIS/NIR分光器を用いて測定することができる。
【0149】
本発明のフィルムは、引張強度が、80〜150MPaであることが好ましく、85〜130MPaであることがより好ましく、85〜120MPaであることがさらに好ましい。引張強度は、引張試験機5543(INSTRON社製)を用いて測定することができる。
【0150】
本発明のフィルムは、破断伸びが、5〜100%であることが好ましく、10〜100%であることがより好ましく、15〜100%であることがさらに好ましい。破断伸びは、引張試験機5543(INSTRON社製)を用いて測定することができる。
【0151】
本発明のフィルムは、引張弾性率が、2.5〜4.0GPaであることが好ましく、2.7〜3.7GPaであることがより好ましい。引張弾性率は、引張試験機5543(INSTRON社製)を用いて測定することができる。
【0152】
本発明のフィルムは、厚さが30μmである場合に、波長589nmの光を用いて測定したフィルムの厚み方向の位相差(Rth589)が、60nm以下であることが好ましく、0.1〜10nmであることがより好ましく、0.2〜5nmであることがさらに好ましい。位相差は、RETS分光器(大塚電子社製)を用いて測定することができる。本発明のフィルムの厚み方向の位相差が前記範囲にあると、該フィルムは、導光板、偏光板、ディスプレイ用フィルム、光ディスク用フィルム、透明導電性フィルム、タッチパネル用フィルム、導波路板などのフィルムとして好適に使用できる。
【0153】
本発明のフィルムは、波長589nmの光を用いて測定した光弾性係数(Cd)の絶対値が、好ましくは0〜50(×10-12Pa-1)であり、より好ましくは0〜40(×10-12Pa-1)である。Cdの絶対値が前記範囲にあると、光学等方性に優れるため、複屈折の分布が生じにくく、コントラストが均一なフィルムを得ることができるため、導光板、偏光板、ディスプレイ用フィルム、光ディスク用フィルム、透明導電性フィルム、タッチパネル用フィルム、導波路板などのフィルムとして好適に使用できる。尚、1×10-12Pa-1は、1×10-13cm2/dynである。
【0154】
本発明のフィルムは、波長589nmの光を用いて測定した応力光学係数(CR)の絶対値は、好ましくは1〜1500Br(Br=×10-12Pa-1)であり、より好ましくは1〜1200Br、さらに好ましくは1〜400Br特に好ましくは1〜200Brである。CRの絶対値が前記範囲にあると、光学等方性に優れるため、複屈折の分布が生じにくく、コントラストが均一なフィルムを得ることができるため、導光板、偏光板、ディスプレイ用フィルム、光ディスク用フィルム、透明導電性フィルム、タッチパネル用フィルム、導波路板などのフィルムとして好適に使用できる。
【0155】
ここで、光弾性係数(Cd)および応力光学係数(CR)について説明する。これらの係数は、種々の文献(Polymer Journal:Vol.27, No. 9, pp 943-950 (1995)、「日本レオロジー学会誌」:Vol. 19, No. 2, pp 93-97 (1991)、「光弾性実験法」:日刊工業新聞社,昭和50年第7版)に記載されているが、その意味するところは、前者がポリマーのガラス状態における応力による透過光への位相差付与の程度を表すのに対し、後者は流動状態における応力による透過光への位相差付与の程度を表すものである。
【0156】
すなわち、光弾性係数(Cd)が大きい場合は、ポリマーをガラス状態下で使用した際に外部応力または冷却時に蓄積した歪み等に起因する内部応力により、透過光の位相差が敏感に変化することを意味し、例えば、光学用フィルムを偏光板やガラス板に貼り合わせて使用した際の、貼り合わせ時の残留歪みや、温度変化や湿度変化等にともなう材料の収縮により発生する微小な応力によって、透過光の位相差が変化しやすいことを意味する。
【0157】
本発明のフィルムは、厚みが30μmである場合に、YI値(イエローインデックス)が、3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。YI値は、スガ試験機社製SM−T型色彩測定器を用いて測定することができる。YI値がこのような範囲にあることで、着色のしにくいフィルムを得ることができため、導光板、偏光板、ディスプレイ用フィルム、光ディスク用フィルム、透明導電性フィルム、タッチパネル用フィルム、導波路板などのフィルムとして好適に用いることができる。
【0158】
また、本発明のフィルムは、厚みが30μmである場合に、熱風乾燥機にて大気中230℃で1時間の加熱を行った後のYI値が3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。YI値がこのような範囲にあることで、高温でも着色のしにくい基材を得ることができ、光学特性に優れるフィルムを得ることができる。
【実施例】
【0159】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0160】
(1)構造分析
下記実施例および比較例で得られた重合体の構造分析は、IR(ATR法、FT−IR,6700、NICOLET社製)およびNMR(ADVANCE500型,BRUKAR社製)により行った。
【0161】
(2)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)
下記実施例および比較例で得られた重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、TOSOH製HLC−8220型GPC装置(カラム:TSKgelα―M、展開溶剤:テトラヒドロフラン(THF)を用いて測定した。
【0162】
(3)ガラス転移温度(Tg)
下記実施例および比較例で得られた重合体のガラス転移温度は、セイコーインスツルメンツ社製、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気、昇温速度:20℃/分の条件で測定した。
【0163】
(4)光学特性
下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムについて、全光線透過率、YI(イエローインデックス)をJIS K7105透明度試験法に準じて測定した。具体的には、全光線透過率を、スガ試験機社製SC−3H型ヘイズメーターを用いて測定し、YI値を、スガ試験機社製SM−T型色彩測定器を用いて測定した(加熱前YI)。さらに、下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムを熱風乾燥機にて大気中230℃で1時間の加熱を行った後YI値をスガ試験機社製SM−T型色彩測定器を用いて測定した(加熱後YI)。
【0164】
また、下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムの位相差(Rth)は、大塚電子社製RETS分光器を用いて測定した。なお、測定の際の基準波長は589nmであり、位相差の評価膜厚は30μmに規格化した値で示した。
【0165】
光弾性係数(Cd)及び応力光学係数(CR)を、公知の方法(Polymer Journal、Vol.27、No.9、P.943〜950(1995))により求めた。具体的には、光弾性係数(Cd)は下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムを、短冊状に切り取り、得られた短冊状のフィルムに室温(25℃)で数種類の一定荷重を加え、発生する位相差を測定し、そのときフィルムが受けた応力と位相差とから計算した。測定波長は589nm、測定には、大塚電子社製RETS分光器を用いた。
【0166】
応力光学係数(CR)は、下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムを、該フィルムのTg以上に加熱し、Tg以上にて数種類の一定荷重をかけて数パーセント伸びた状態でゆっくりと冷やして室温まで戻した後に発生した位相差を測定し、加えた応力と位相差とから計算した。測定波長は589nm、測定には、王子計測機器社製KOBRAを用いた。
【0167】
(5)力学的特性
下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムの室温における引張強度、破断伸びおよび引張弾性率を、引張試験機5543(INSTRON社製)を用いて、JIS K7127に準じて測定した。
【0168】
[実施例1]
3Lの4つ口フラスコに2,6−ジフルオロベンゾニトリル70.59g(0.5075mol)、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン189.23g(0.5000mol)、炭酸カリウム82.93g(0.6mol)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」ともいう。)983gおよびトルエン496gを添加した。続いて、4つ口フラスコに温度計、撹拌機、窒素導入管付き三方コック、Dean−Stark管および冷却管を取り付けた。
【0169】
次いで、フラスコ内を窒素置換した後、得られた溶液を140℃で3時間反応させ、生成する水をDean−Stark管から随時取り除いた。水の生成が認められなくなったところで、徐々に温度を160℃まで上昇し、そのままの温度で5時間反応させた。
室温(25℃)まで冷却後、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末(重合体)を得た(収量251g、収率97%)。
【0170】
得られた重合体の物性を表1に示す。得られた重合体の構造分析および重量平均分子量、数平均分子量の測定を行った。結果は、赤外吸収スペクトルの特性吸収が、3035(芳香族C−H伸縮)、2935(脂肪族C−H伸縮)、2229cm-1(CN)、1574cm-1、1499cm-1(芳香環骨格吸収)、1240cm-1(−O−)であり、重量平均分子量が105,000、数平均分子量28,000であった。得られた重合体は前記構造単位(1)を有していた。
【0171】
次いで、得られた重合体をDMAcに再溶解させ、重合体濃度20質量%の樹脂組成物を得た。該樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタラート(PET)からなる基板上にドクターブレードを用いて塗布し、80℃で30分乾燥させ、ついで150℃で60分乾燥してフィルムとした後、PET基板より剥離した。その後、フィルムを金枠に固定し、さらに200℃、2時間乾燥して、膜厚30μmの評価用フィルムを得た。
得られた評価用フィルムの物性を表1に示す。得られた評価用フィルムの位相差(Rth)は1[nm]、応力光学係数は30[×10-12Pa-1]、光弾性係数は20[×10-12Pa-1]であった。
【0172】
[実施例2]
9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの代わりに、9,9−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを217.29g(0.5000mol)を使用した以外は実施例1と同様に行った。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。また、得られた評価用フィルムの光学特性について測定した結果、比較例1と比較して光学等方性が向上していることを確認した。
【0173】
[実施例3]
9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの代わりに、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを203.26g(0.5000mol)を使用した以外は実施例1と同様に行った。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。また、得られた評価用フィルムの光学特性について測定した結果、比較例1と比較して光学等方性が向上していることを確認した。
【0174】
[実施例4]
9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン189.23gの代わりに、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン151.38g(0.4000mol)および1,3−ジヒドロキシベンゼン11.01g(0.1000mol)を使用した以外は実施例1と同様に行った。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。また、得られた評価用フィルムの光学特性について測定した結果、比較例1と比較して光学等方性が向上していることを確認した。
【0175】
[実施例5]
2,6−ジフルオロベンゾニトリル70.59gの代わりに、2,6−ジフルオロベンゾニトリル52.94g(0.3806mol)および4,4’−ジフルオロベンゾフェノン27.69g(0.1269mol)使用した以外は実施例1と同様に行った。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。また、得られた評価用フィルムの光学特性について測定した結果、比較例1と比較して光学等方性が向上していることを確認した。
【0176】
[比較例1]
9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの代わりに、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを251.30g(0.5000mol)を使用した以外は実施例1と同様に行った。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。得られた評価用フィルムの光学特性について測定した結果、位相差(Rth)は80[nm]、応力光学係数215[×10-12Pa-1]、光弾性係数は55[×10-12Pa-1]であった。
【0177】
[比較例2]
2,6−ジフルオロベンゾニトリルの代わりに、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンを129.03g(0.5075mol)を使用した以外は実施例1と同様に行った。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。得られた評価用フィルムの光学特性について測定した結果、位相差(Rth)は65[nm]、応力光学係数は1600[×10-12Pa-1]、光弾性係数は50[×10-12Pa-1]であった。
【0178】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位を有する重合体。
【化1】

(式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の有機基を示し、R3〜R6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、aおよびbは、それぞれ独立に0〜3の整数を示し、cおよびdは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【請求項2】
前記式(1)中、R1およびR2の結合位置が、前記重合体の主鎖骨格を形成するエーテル結合のオルト位である、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
前記重合体が、さらに、下記式(1−1)で表される構造単位、下記式(2)で表される構造単位および下記式(3)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位を有する、請求項1または2に記載の重合体。
【化2】

(式(1−1)中、R1〜R6およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1〜R6およびa〜dと同義であり、R7およびR8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、jおよびkは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、Yは単結合、−SO2−または>C=Oを示し、mは0または1を示す。)
【化3】

(式(2)中、R7、R8、Y、m、jおよびkは、それぞれ独立に前記式(1−1)中のR7、R8、Y、m、jおよびkと同義であり、R9〜R12は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基(ただし、脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を有する炭素数1〜12の1価の有機基を除く。)を示し、e〜hは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【化4】

(式(3)中、R13およびR14は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは単結合、−O−、−S−、−SO2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、pおよびqは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示し、R7、R8、Y、m、jおよびkは、それぞれ独立に前記式(1−1)中のR7、R8、Y、m、jおよびkと同義である。)
【請求項4】
前記重合体の示差走査熱量測定(DSC、昇温速度20℃/分)で測定したガラス転移温度が230〜350℃である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合体を含むフィルム。
【請求項6】
前記フィルムの厚み30μmにおける、JIS K7105透明度試験法による全光線透過率が85%以上である、請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
前記フィルムの厚み30μmにおける、YI値(イエローインデックス)が3.0以下である、請求項5または6に記載のフィルム。
【請求項8】
前記フィルムの厚み30μmにおける、波長589nmで測定したフィルムの厚み方向の位相差(Rth589)が60nm以下である、請求項5〜7のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項9】
波長589nmで測定したフィルムの光弾性係数(Cd)の絶対値が0〜50(×10-12Pa-1)である、請求項5〜8のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項10】
波長589nmで測定したフィルムの応力光学係数(CR)の絶対値が1〜1500(×10-12Pa-1)である、請求項5〜9のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合体と有機溶媒とを含む樹脂組成物。
【請求項12】
請求項5〜10のいずれか1項に記載のフィルムを製造する方法であって、請求項11に記載の樹脂組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜から前記有機溶媒を蒸発させることにより除去してフィルムを得る工程とを含むフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2012−224763(P2012−224763A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94202(P2011−94202)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】