重合体および赤外線反射フィルム

【課題】近赤外の波長領域における一層辺りの反射帯域幅が広く、実質的に無色な重合体の提供。
【解決手段】420nmにおける透過率を550nmにおける透過率から減じた値が10%以下であり、実質的に無色であり、固定化されたコレステリック液晶相を有し、前記固定化されたコレステリック液晶相のピッチが、近赤外の波長領域において入射光の40%以上を反射する帯域が200nm以上となるように勾配を有する重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体および赤外線反射フィルムに関する。より詳しくは、光学異方性フィルム、遮熱フィルム等の種々の光学部材の材料をはじめとして、種々の用途において有用な重合体および該重合体を用いた赤外線反射フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー化を推進する観点から、冷暖房効率を向上させる赤外線の断熱層が注目されている。赤外線の断熱層を自動車やビルの窓ガラスに使用することを考慮する場合、可視光線領域である約400nm〜約750nmの波長領域においては、ある程度光線透過率が高いことが重要であるが、太陽エネルギー量の高い約900〜約1300nmの領域にある近赤外線においては、断熱効果の観点から、より多く反射することが望ましい。
【0003】
広帯域の赤外光を反射する方法として、中心波長を赤外域としたコレステリック液晶の選択反射を利用することができる。しかし、通常のコレステリック液晶では1層あたりに反射可能な範囲(帯域幅)が限られるため、広帯域の光を反射する場合には中心波長を少しずつずらしたコレステリック液晶を何層か積層する必要がある。
【0004】
これに対して、コレステリック液晶のピッチを連続的に変化させる、いわゆるピッチグラジエント法が知られている。例えば、特許文献1には、アジン系液晶を用いたピッチグラジエント液晶層を有する断熱部材が開示されている。また、特許文献2には、トラン系液晶を用いたピッチグラジエント液晶層を有する広帯域コレステリック液晶フィルムの製造方法が開示されている。
【0005】
一方、赤外線反射フィルムは、視認性や意匠性の観点からフィルムは無色透明であることが望ましい。特に近年では自動車用のフロントガラスや運転席などに赤外線反射フィルムを用いることも検討されてきており、そのような用途においては安全性の観点からも無色透明化の要請がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−256625号公報
【特許文献2】特開2004−318062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者が特許文献1に記載のフィルムを検討したところ、用いる液晶自体が若干の黄色味を有するなどして、無色性について満足できるものではなかった。
一方、一層辺りの帯域幅を広くする方法として、用いる液晶を高Δn化することを検討したものの、この方法のみでは満足な帯域幅を得ることが難しいことがわかった。
【0008】
本発明は上記の問題を解決することを目的とするものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、近赤外の波長領域における一層辺りの反射帯域幅が広く、実質的に無色な重合体を提供することにある。また、該重合体を用いた赤外光反射フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の2波長間における透過率の差を特定の範囲とし、ピッチグラジエント法を用いて赤外線反射フィルムを製造することにより、近赤外の波長領域における一層辺りの反射帯域幅が広く、実質的に無色の重合体および赤外光反射フィルムが製造できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
上記課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
[1] 420nmにおける透過率を550nmにおける透過率から減じた値が10%以下であり、
実質的に無色であり、
固定化されたコレステリック液晶相を有し、
前記固定化されたコレステリック液晶相のピッチが、近赤外の波長領域において入射光の40%以上を反射する帯域が200nm以上となるように勾配を有することを特徴とする重合体。
[2] [1]に記載の重合体は、白色光を照射したときに、420nm〜750nmのすべての波長において10%以上の吸光ピークが存在しないことが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載の重合体は、前記コレステリック液晶相が、少なくとも1種の液晶化合物を用いて形成されたことが好ましい。
[4] [3]に記載の重合体は、前記液晶化合物が、実質的に無色な液晶化合物を少なくとも1種含むことが好ましい。
[5] [3]または[4]に記載の重合体は、前記液晶化合物が、420nmにおけるモル吸光係数が100L/(mol・cm)以下であるときに420nm〜750nmにおける透過率がいずれも70%以上である液晶化合物を少なくとも1種含むことが好ましい。
[6] [3]〜[5]のいずれか一項に記載の重合体は、前記液晶化合物が、重合性基を有する液晶化合物を少なくとも1種含むことが好ましい。
[7] [3]〜[6]のいずれか一項に記載の重合体は、前記液晶化合物が、少なくとも1種の1分子中に2箇所以上の重合性基を有する液晶化合物を含むことが好ましい。
[8] [3]〜[7]のいずれか一項に記載の重合体は、前記液晶化合物が、少なくとも1種の下記一般式(I)で表される液晶化合物を含むことが好ましい。
【化1】

(式中、P1及びP2はそれぞれ独立に、重合性基を表し;
m1及びm2はそれぞれ独立に、1〜10の整数を表し、m1又はm2のCH2のうち、1つのCH2又は隣接しない2以上のCH2は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わっていてもよく;
1及びR2はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜5のアシルオキシ基、炭素原子数2〜4のアシル基、炭素原子数2〜5のアミド基、シアノ基、又はハロゲン原子を表し;
n1及びn2はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し;
3は、水素原子、又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し;
1は、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、又は−NHCO−を表し;
1は、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−OCO−CH=CH−、又は−NHCO−を表し、;
nは0、1又は2である。)
[9] [6]〜[8]のいずれか一項に記載の重合体は、前記コレステリック液晶相が、前記重合性基を有する前記液晶化合物を重合して形成されたことが好ましい。
[10] [3]〜[9]のいずれか一項に記載の重合体は、前記液晶化合物が、光源としてD65を用いたときの透過光が、xy色度図において、0.3050<x<0.3150、かつ、0.3050<y<0.3350を満足する液晶化合物を含むことが好ましい。
[11] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の重合体は、光源としてD65を用いたときの透過光が、xy色度図において、0.3050<x<0.3150、かつ、0.3050<y<0.3350を満足することが好ましい。
[12] [1]〜[11]のいずれか一項に記載の重合体を含む光反射層を有することを特徴とする赤外線反射フィルム。
[13] [12]に記載の赤外線反射フィルムは、前記光反射層を2層有することが好ましい。
[14] [12]または[13]に記載の赤外線反射フィルムは、すべてのコレステリック液晶相を固定してなる層の積層数が2以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、近赤外の波長領域における一層辺りの反射帯域幅が広く、実質的に無色な重合体を提供することができる。また、本発明によれば、本発明の重合体を用いた、本発明の赤外光反射フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1、2及び比較例1で用いた実施例用化合物及び比較例用化合物の波長とモル吸光係数の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[重合体]
本発明の重合体は、420nmにおける透過率を550nmにおける透過率から減じた値が10%以下であり、実質的に無色であり、固定化されたコレステリック液晶相を有し、前記固定化されたコレステリック液晶相のピッチが、近赤外の波長領域において入射光の40%以上を反射する帯域が200nm以上となるように勾配を有することを特徴とする。
このような構成により、近赤外の波長領域における一層辺りの反射帯域幅が広く、実質的に無色な重合体を提供することができる。
【0015】
<重合体の特性>
(透過率・色)
本発明の重合体は、420nmにおける透過率を550nmにおける透過率から減じた値が10%以下である。このように420nmにおける透過率が、550nmにおける透過率に対してそれほど高くないため、本発明の重合体に日照を照射したときの反射光が420nmの波長の光の補色である黄色になりにくい。
本発明の重合体は、420nmにおける透過率を550nmにおける透過率から減じた値が0〜10%であることが好ましく、0〜7%であることがより好ましい。
【0016】
本発明の重合体は、実質的に無色である。本発明において実質的に無色であるとは、ある物体に日照を照射したときの反射光が、目視にて白色に見えることを意味する。
本発明の重合体は、420nm〜750nm(すなわち、可視光領域)における透過率がいずれも70%以上であることが好ましく、72%以上であることがより好ましく、75%以上であることが特に好ましい。
【0017】
本発明の重合体は、光源としてD65を用いたときの透過光が、xy色度図において、
0.3040<x<0.3160、かつ、0.3040<y<0.3360を満足することが好ましく、
0.3045<x<0.3155、かつ、0.3045<y<0.3355を満足することがより好ましく、
0.3050<x<0.3150、かつ、0.3050<y<0.3350を満足することが特に好ましい。
【0018】
(反射帯域)
本発明の重合体は、近赤外の波長領域において入射光の40%以上を反射する帯域が200nm以上である。このように近赤外線の広い帯域において高い反射率を有することで、本発明の重合体は断熱効果を有し、赤外線反射フィルムとして用いることができる。
本発明の重合体は、近赤外の波長領域において入射光の40%以上を反射する帯域が200nm〜500nmであることが好ましく、250nm〜400nmであることがより好ましい。
【0019】
<コレステリック液晶相>
本発明の重合体は、固定化されたコレステリック液晶相を有し、前記固定化されたコレステリック液晶相のピッチが、近赤外の波長領域において入射光の40%以上を反射する帯域が200nm以上となるように勾配を有する。
前記コレステリック液晶層のピッチが勾配を有することは、例えば特開2010−256625号公報や特開2004−318062号公報などに記載されているようなピッチグラジエント法で製造されていることにより確認することができる。
また、製造方法以外にも、本発明の重合体または赤外線フィルムの断面について、厚み方向のいくつかの領域のピッチ長を断面TEM写真により測定することで確認することができる。
【0020】
(1.液晶化合物)
本発明の重合体は、コレステリック液晶相が、少なくとも1種の液晶化合物を用いて形成されたことが好ましい。本発明の重合体は、前記コレステリック液晶相が、前記重合性基を有する前記液晶化合物を重合して形成されたことが好ましい。
【0021】
(1−1) 液晶化合物の特性
本発明の重合体は、前記液晶化合物が、実質的に無色な液晶化合物を少なくとも1種含むことが好ましい。
本発明の重合体は、前記液晶化合物が、420nmにおけるモル吸光係数が100L/(mol・cm)以下であるときに420nm〜750nm(すなわち、可視光領域)における透過率がいずれも70%以上である液晶化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、72%以上である液晶化合物を少なくとも1種含むことがより好ましく、75%以上である液晶化合物を少なくとも1種含むことが特に好ましい。
【0022】
本発明の重合体は、前記液晶化合物が、420nmにおけるモル吸光係数が100L/(mol・cm)以下である液晶化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、80L/(mol・cm)以下である液晶化合物を少なくとも1種含むことがより好ましく、60L/(mol・cm)以下である液晶化合物を少なくとも1種含むことが特に好ましい。なお、上記のモル吸光係数の単位におけるLはリットルを意味し、例えば100L/(mol・cm)は0.1m2/(mol・cm)である。
【0023】
本発明の重合体は、前記液晶化合物が、光源としてD65を用いたときの透過光が、xy色度図において、
0.3040<x<0.3160、かつ、0.3040<y<0.3360を満足する液晶化合物を含むことが好ましく、
0.3045<x<0.3155、かつ、0.3045<y<0.3355を満足する液晶化合物を含むことがより好ましく、
0.3050<x<0.3150、かつ、0.3050<y<0.3350を満足する液晶化合物を含むことが特に好ましい。
【0024】
(1−2) 液晶化合物の好ましい構造
本発明の重合体は、前記液晶化合物が重合性基を有することが好ましい。本発明の重合体は、前記液晶化合物が、少なくとも1種の1分子中に2箇所以上の重合性基を有する液晶化合物を含むことがより好ましい。
本発明の重合体は、前記液晶化合物が、少なくとも1種の下記式(I)で表される液晶化合物を含むことが好ましい。下記式(I)で表される液晶化合物は、メソゲンとともに、アゾメチン基を分子内に一つ有することを特徴とする。アゾメチン基を分子内に有する液晶化合物は、高Δnを示すが、一方で、従来の、アゾメチン基を分子内に2つ有するビスアゾメチン液晶化合物は黄色の問題があり、用途が制限される。下記式(I)で表される液晶化合物は、十分に高いΔnを示すとともに、白色であるので、着色の問題はない。さらに、下記式(I)で表される液晶化合物は、末端の重合性基とメソゲンを繋ぐ側鎖の長さがある程度長いので、液晶相となる温度範囲が広く、重合工程において結晶化し、白濁化するという問題も解消できる。さらに、溶剤への溶解性、及び他の液晶材料との相溶性も良好であり、重合で硬化可能であることから、光学部材等の種々の用途に有用である。特に、Δnが高いことから、薄膜の形態で所望の光学特性を示すことが要求される位相差膜及び選択反射膜等の光学フィルムの作製に有用である。
【0025】
【化2】

【0026】
前記一般式(I)中、P1及びP2はそれぞれ独立に、重合性基を表し;
m1及びm2はそれぞれ独立に、1〜10の整数を表し、m1又はm2のCH2のうち、1つのCH2又は隣接しない2以上のCH2は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わっていてもよく;
1及びR2はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜5のアシルオキシ基、炭素原子数2〜4のアシル基、炭素原子数2〜5のアミド基、シアノ基、又はハロゲン原子を表し;
n1及びn2はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し;
3は、水素原子、又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し;
1は、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、又は−NHCO−を表し、;
1は、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−OCO−CH=CH−、又は−NHCO−を表し;
nは0、1又は2である。
【0027】
前記一般式(I)中、P1及びP2はそれぞれ独立に、重合性基を表す。前記重合性基としては、ラジカル重合又はカチオン重合可能な重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができ、好適なものとして、(メタ)アクリレート基(アクリレート基及びメタクリレート基の双方を含む意味の用語として用いる)とを挙げることができる。この場合、重合速度はアクリレート基が一般的に速いことが知られており、生産性向上の観点からアクリレート基が好ましいが、メタクリレート基も高Δn液晶の重合性基として同様に使用することができる。カチオン重合性基としては、一般に知られているカチオン重合性を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などを挙げることができる。中でも、脂環式エーテル基、ビニルオキシ基が好適であり、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基が特に好ましい。前記式中、P1及びP2は互いに異なっていてもよく、即ち、前記式(I)で表される液晶化合物は、重合性基を2種以上含んでいてもよい。その場合は、ラジカル重合性基とカチオン重合性基等、重合反応機構が異なる重合性基をそれぞれ有していてもよいし、同一の反応機構の重合性基を有していてもよい。
【0028】
1及びP2はそれぞれ、下記一般式(P−1)〜(P−5)のいずれかで表される重合性基であるのが好ましい。
【0029】
【化3】

【0030】
前記一般式(P−1)〜(P−5)中、R11〜R13はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。*がアルキレン鎖との結合位置である。
1及びP2はそれぞれ、(メタ)アクリレート基であるのが好ましく、即ち、以下のいずれかの基であるのが好ましい。
【0031】
【化4】

【0032】
前記一般式(I)中、m1及びm2はそれぞれ、1〜10の整数を表す。側鎖の長さが短い(例えば、m1及びm2が1〜3である)と液晶相を示す上限温度は高いが結晶化し易く、溶解性が低くなるので、組成物に含まれる他の成分(例えば、溶媒又は他の液晶材料)への溶解性又は相溶性の観点で、該化合物の割合を小さくする必要がある場合がある。一方、側鎖が長い(例えば、m1及びm2が4〜6である)と、溶解性は良化するが、液晶相を示す上限温度が低下したり、スメクチック相が出やすくなりネマチック相範囲が狭くなり、配向の均一性が低下したりする場合がある。また、側鎖が長くなると、分子の動きの自由度を増大させることになるので、剛性の高い膜質が要求される用途には、側鎖が短めの化合物を用いるのが好ましく、また膜の脆性改良の用途には、側鎖が長めの化合物を用いるのが好ましい。また、上記一般式(I)中のm1又はm2個のCH2のうち、1つのCH2又は隣接しない2以上のCH2は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わっていてもよい。−CH2−をSやOで置換したものは、結合基周りの回転性が増大し、即ち、自由度が増大するため、膜の脆性改良目的に効果がある。前記一般式(I)で表される液晶化合物は、従来のアゾメチン化合物よりもネマチック相範囲が拡大されているのが好ましく、この観点からm1及びm2はそれぞれ、2〜8であるのが好ましく、3〜6であるのがより好ましい。
【0033】
環の種類と個数:
高いΔnのためには、配向秩序を高くすることが必要であり、このためには液晶相の上限温度を上げることが有効である。本発明の重合体の前記コレステリック液晶層を形成するために使用する前記液晶化合物は少なくとも環状の芳香族基を3環〜5環連結したものであることが好ましく、NI点(ネマチック液晶相→等方相の転移温度)が高く、具体的には160℃以上という極めて高いNI点を示し、本発明の重合体の前記コレステリック液晶層のΔnの向上に大きく寄与する。また、本発明の化合物は、3環〜5環の芳香族環を有する化合物であり、芳香族環は、不飽和環や非芳香族環と比べて分子長軸方向の分極率を増大し、本発明の重合体の前記コレステリック液晶層のΔnの向上に寄与する。
【0034】
置換基の種類と個数:
高いΔnのためには、吸収を長波化することが有効であり、それが従来のビスアゾメチン系液晶化合物の着色の原因であったが、前記一般式(I)で表される液晶化合物では、アゾメチン結合によって繋がれた2つの芳香環の置換基の種類は化合物の色味にほとんど影響を与えず、任意の置換基を有する化合物を使用することができる。溶解性の観点からみると、置換基は原子の大きさがより大きいほど溶解性の向上に寄与し、小さいほど溶解性が低下し、配向性が低下する。このことから、置換基を有することが望ましい。置換基の数としては、より多いほど溶解性の上昇が期待できるが、多過ぎると液晶性が損なわれることから、1又は2個が好ましい。即ち、n1及びn2の双方が0、いずれか一方が1で且つ他方が0、双方が1、のいずれかが好ましい。
【0035】
これらを踏まえて、前記一般式(I)で表される液晶化合物の環数としては環の数が3または4であるのが好ましく、nは0または1であるのが好ましい。
【0036】
前記一般式(I)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜5のアシルオキシ基、炭素原子数2〜4のアシル基、炭素原子数2〜5のアミド基、シアノ基、又はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)を表す。より好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアミド基、炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数1〜4のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子である。
【0037】
前記一般式(I)中、nは0、1又は2を表し、好ましくは0又は1である。
【0038】
前記一般式(I)中、R3は、水素原子、又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。R3が水素原子であっても本用途に対して十分な加水分解耐性を有している。用途によっては極めて加水分解耐性が必要な用途ではR3はアルキル基であるのが好ましい。アルキル基の長さとしては、長すぎると液晶相を不安定化することから、R3は短いことが好ましい。具体的には、R3は炭素原子数1〜4のアルキル基であるのが好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜2のアルキル基がさらに好ましい。
【0039】
連結基の種類:
前記一般式(I)中、環構造をつなぐ連結基としては、液晶相安定化(NI点の向上)のためには剛直な構造を有したものを用いることが好ましい。しかし、剛直なものを多く用いると結晶性向上による溶解性低下、スメクチック相安定化によるネマチック液晶相範囲の縮小が考えられる。ただし、剛直な構造を与える単結合は、π共役拡大により吸収が長波化し着色する恐れがあることから、アゾメチン結合を有する骨格との連結基としては好ましくない。具体的には前記一般式(I)中、Z1は、−COO−、−OCO−、−COS−、−COS−、−SCO−、−NHCO−を表し、より好ましくは−COO−、−OCO−、−COS−、−COS−、−SCO−であり、さらに好ましくは−COO−、−OCO−である。前記式中、L1は、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−OCO−CH=CH−、−NHCO−を表し、より好ましくは−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−OCO−CH=CH−であり、さらに好ましくは−COO−、−OCO−、−OCO−CH=CH−である。
前記一般式(I)中、n=0の時、L1が−OCO−または−OCO−CH=CH−であるのが好ましい。
前記一般式(I)中、n=1の時、Z1及びL2が−OCO−であるのが好ましい。
【0040】
以下に、前記一般式(I)で表される液晶化合物の具体例を挙げるが、本発明の重合体の形成に用いることができる液晶化合物は以下の具体例に何ら限定されるものではない。
【化5】

【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
【化8】

【0044】
【化9】

【0045】
【化10】

【0046】
【化11】

【0047】
【化12】

【0048】
【化13】

【0049】
【化14】

【0050】
前記一般式(I)で表される液晶化合物は種々の方法で製造することができる。例えば、下記に示す反応式(1)に従う方法により製造することができる。
【0051】
【化15】

【0052】
但し、前記反応式(1)中、R1、R2、Z1、L1、R3、P1、及びP2等の符号は、一般式(I)におけるそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0053】
前記反応式(1)において、化合物(A)は芳香族アルデヒドであり、市販品又は公知の方法により合成したものを用いることができる。前記反応式(1)において、化合物(B)はアミノフェノール誘導体であり、市販品又は公知の方法により合成したものを用いることができる。なお、化合物(B)の例としてアミノフェノール誘導体を示しているが、市販品又は公知の方法により合成したアミノチオフェノール、ジアミノベンゼン誘導体も化合物(B)として用いることができる。また、化合物(D)は特開2002−97170号公報の10頁、[0085]〜[0087]段落に記載の方法を参照して合成できる。
すなわち、前記一般式(I)で表される液晶化合物は、前記反応式(1)における、化合物(A)と化合物(B)との脱水縮合反応で化合物(C)を合成し、続いて化合物(C)と化合物(D)との反応により合成することができる。
また、反応中の熱重合を抑えるためにハイドロキノン誘導体などの重合禁止剤を用いてもよい。
【0054】
本発明の重合体に用いられる前記一般式(I)で表される液晶化合物は、高いΔnを示すので、その配向を固定した膜は、より低いΔnの液晶化合物を利用した膜と比較して、より薄膜で所望の光学特性を達成することが期待できる。
また、前記一般式(I)で表される液晶化合物は、化学的に安定であり、溶剤に溶解しやすく、重合しやすく、無色透明であるなど、複数の特性をも満足する。本発明の化合物を用いて作製される硬化膜は、十分な硬度を示し、無色透明であり、耐候性・耐熱性が良好である等、複数の特性を満足し得るであろう。従って、本発明の化合物を利用して形成された硬化膜は、例えば、光学素子の構成要素である位相差板、偏光素子、選択反射膜、カラーフィルタ、反射防止膜、視野角補償膜、ホログラフィー、配向膜等、種々の用途に利用することができる。
【0055】
また、前記一般式(I)で表される液晶化合物は、化学的に安定であり、溶剤に溶解しやすく、重合しやすく、無色透明であるなど、複数の特性をも満足する。前記一般式(I)で表される液晶化合物を用いて作製される硬化膜は、十分な硬度を示し、無色透明であり、耐候性・耐熱性が良好である等、複数の特性を満足し得るであろう。従って、前記一般式(I)で表される液晶化合物を利用して形成された硬化膜は、例えば、光学素子の構成要素である位相差板、偏光素子、選択反射膜、カラーフィルタ、反射防止膜、視野角補償膜、ホログラフィー、配向膜等、種々の用途に利用することができる。
【0056】
(2.コレステリック液晶相を形成するためのその他の成分)
本発明の重合体は、前記コレステリック液晶相が少なくとも1種の液晶化合物を含む組成物を用いて形成してなることが好ましい。さらに、本発明の重合体は、前記一般式(I)で表される液晶化合物を含む重合性組成物を用いて形成してなることがより好ましく、前記一般式(I)で表される液晶化合物を含む重合性組成物を用いて重合して形成してなることが特に好ましい。
前記組成物の好ましい一態様は、前記一般式(I)で表される液晶化合物の少なくとも1種と、少なくとも1種のキラル化合物とを含有する重合性組成物である。前記組成物のより好ましい一態様は、前記一般式(I)で表される液晶化合物の少なくとも1種と、少なくとも1種のキラル化合物と、重合開始剤を含有する重合性組成物である。前記重合性組成物をコレステリック液晶相とした後、それを固定して形成された膜は、その螺旋ピッチに応じて、所定の波長の光に対して、選択反射特性を示し、反射膜(例えば、赤外線反射膜)として有用である。
【0057】
前記組成物中、前記一般式(I)で表される液晶化合物は、主成分であっても、添加剤として使用されていてもよい。前記一般式(I)で表される液晶化合物を組成物の全質量に対して、1質量%以上含有していれば前記一般式(I)で表される液晶化合物による効果を十分に得ることができ、好ましくは2〜90質量%、より好ましくは10〜85質量%、さらに好ましくは20〜80質量%である。但し、この範囲に限定されるものではない。
以下において、前記組成物に用いることができる材料と、前記組成物を用いて本発明の重合体を製造する方法およびそれに用いる材料と、製造した本発明の重合体の用途について説明する。
【0058】
(2−1)キラル化合物
前記組成物を、コレステリック液晶相を示す組成物として調製するためには、キラル化合物を添加するのが好ましい。キラル化合物は液晶性であっても、非液晶性であってもよい。前記キラル化合物は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)から選択することができる。キラル化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物も用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。キラル化合物(キラル剤)は、重合性官能基を有していてもよい。キラル化合物が重合性官能基を有するとともに、併用する棒状液晶化合物も重合性官能基を有する場合は、重合性キラル化合物と重合性棒状液晶合物との重合反応により、棒状液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル化合物が有する重合性官能基は、重合性棒状液晶化合物が有する重合性官能基と、同種の基であることが好ましい。従って、キラル化合物の重合性官能基も、不飽和重合性官能基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性官能基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性官能基であることが特に好ましい。
【0059】
前記組成物中のキラル化合物は、併用される一般式(I)で表される液晶化合物に対して、1〜30モル%であることが好ましい。キラル化合物の使用量を、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。従って、キラル化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。この様な、強い捩れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2003−287623公報に記載のキラル剤が挙げられ、本発明に好ましく用いることができる。
【0060】
(2−2)他の液晶性化合物
前記組成物は、前記一般式(I)で表される液晶化合物とともに、他の1種以上の液晶性化合物を含有していてもよい。前記一般式(I)で表される液晶化合物は、他の液晶性化合物との相溶性も高いので、他の液晶性化合物を混合しても、不透明化等が生じず、透明性の高い膜を形成可能である。他の液晶性化合物を併用可能であることから、種々の用途に適する種々の組成の組成物を提供できる。併用可能な他の液晶性化合物の例には、棒状ネマチック液晶化合物である。前記棒状ネマチック液晶化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0061】
本発明に利用可能な他の液晶性化合物は、重合性であっても非重合性であってもよい。重合性官能基を有しない棒状液晶化合物については、様々な文献(例えば、Y. Goto et.al., Mol. Cryst. Liq. Cryst. 1995, Vol. 260, pp.23-28)に記載がある。
重合性棒状液晶化合物は、重合性官能基を棒状液晶化合物に導入することで得られる。重合性官能基の例には、不飽和重合性官能基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性官能基が好ましく、エチレン性不飽和重合性官能基が特に好ましい。重合性官能基は種々の方法で、棒状液晶化合物の分子中に導入できる。重合性棒状液晶化合物が有する重合性官能基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0062】
前記他の液晶性化合物の添加量については特に制限はない。前記一般式(I)で表される液晶化合物の含有割合が高くても、他の液晶性化合物の含有割合が高くても、互いに等しい含有割合であってもよく、用途に応じて好ましい範囲に調整することができる。
【0063】
(2−3)重合開始剤
前記組成物は、重合開始剤を含有していることが好ましい。例えば、紫外線照射により硬化反応を進行させて硬化膜を形成する態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
【0064】
前記光重合開始剤の使用量は、組成物(塗布液の場合は固形分)の0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0065】
(2−4)配向制御剤
前記組成物中に、安定的に又は迅速に液晶相(例えば、コレステリック液晶相)となるのに寄与する配向制御剤を添加してもよい。配向制御剤の例には、含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、及び下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物が含まれる。これらから選択される2種以上を含有していてもよい。これらの化合物は、層の空気界面において、液晶化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書で「水平配向」とは、液晶分子長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が20度未満の配向を意味するものとする。液晶化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなる。一方、液晶化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、例えば、コレステリック液晶相とする場合は、その螺旋軸が膜面法線からずれるために反射率が低下したり、フィンガープリントパターンが発生してヘイズの増大や回折性を示したりするため、好ましくない。
前記配向制御剤として利用可能な前記含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマーの例は、特開2007−272185号公報の[0018]〜[0043]等に記載がある。
【0066】
以下、配向制御剤として利用可能な、下記一般式(X1)〜(X3)について、順に説明する。
【0067】
【化16】

【0068】
式中、R101、R102及びR103は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2及びX3は単結合又は二価の連結基を表す。R101〜R103で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基又はフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2及びX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、−NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−及び−SO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0069】
【化17】

【0070】
式中、Rは置換基を表し、m11は0〜5の整数を表す。m11が2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R101、R102、及びR103で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同様である。m11は、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0071】
【化18】

【0072】
式中、R104、R105、R106、R107、R108及びR109は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R104、R105、R106、R107、R108及びR109でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(X1)におけるR101、R102及びR103で表される置換基の好ましいものとして挙げたものと同様である。
【0073】
本発明において配向制御剤として使用可能な、前記式(X1)〜(X3)で表される化合物の例には、特開2005−99248号公報に記載の化合物が含まれる。
なお、本発明では、配向制御剤として、前記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0074】
前記組成物中における、一般式(X1)〜(X3)のいずれかで表される化合物の添加量は、前記一般式(I)の化合物の質量の0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。
【0075】
(2−5)その他の添加剤
前記組成物は、1種又は2種類以上の、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、安定剤、可塑剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、難燃剤、界面活性物質、分散剤、染料、顔料等の色材、等の他の添加剤を含有していてもよい。
【0076】
(3.重合体の製造方法)
本発明の重合体は、前記コレステリック液晶相が前記組成物を重合することにより製造されることが好ましく、液晶性であっても、非液晶性であってもよい。本発明の重合体は、液晶性を示すものであることが好ましく、液晶性フィルムは位相膜、反射膜等の種々の光学フィルムとして有用である。本発明の重合体は、位相差フィルム、反射フィルム等の種々の光学フィルムの材料として有用である。
【0077】
本発明の重合体の製造方法は、前記液晶化合物、または前記組成物を重合させる工程を含むことが好ましい。本発明の重合体の製造方法は、紫外線を照射することにより前記重合を行うことが好ましい。
【0078】
本発明の重合体の製造方法の好ましい一例は、
(i)基板等の表面に、重合性基を有する液晶化合物を含む重合性組成物を塗布して、液晶相(コレステリック液晶相等)の状態にすること、
(ii)前記重合性組成物の硬化反応を進行させ、液晶相を固定して硬化膜を形成すること、
を少なくとも含む製造方法である。
(i)及び(ii)の工程を、複数回繰り返して、複数の上記硬化膜が積層されたフィルムを作製することもできる。
【0079】
前記(i)工程では、まず、基板又はその上に形成された配向膜の表面に、前記重合性組成物を塗布する。前記組成物は、溶媒に材料を溶解及び/又は分散した、塗布液として調製されるのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。該有機溶媒としては、アミド(例えばN,N−ジメチルホルムアミド);スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド);ヘテロ環化合物(例えばピリジン);炭化水素(例えばベンゼン、ヘキサン);アルキルハライド(例えばクロロホルム、ジクロロメタン);エステル(例えば酢酸メチル、酢酸ブチル);ケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン);エーテル(例えばテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン);1,4−ブタンジオールジアセテートなどが含まれる。これらの中でも、アルキルハライド及びケトンが特に好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0080】
前記塗布液の塗布は、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法等の種々の方法によって行うことができる。また、インクジェット装置を用いて、組成物をノズルから吐出して、塗膜を形成することもできる。
【0081】
本発明の重合体を得る場合、コレステリック液晶相のピッチに勾配を設けて、選択反射波長を広帯域化する観点から、ピッチグラジエント法を用いて重合することが好ましい。この場合、前記(i)工程が、WO2008/007782号に開示されている方法と同様にコレステリック規則性を調整することが好ましい。
すなわち、前記(i)工程が、重合性液晶化合物、光重合開始剤およびカイラル剤、さらに必要に応じて界面活性剤、配向調整剤等を溶剤に溶解させた重合性液晶組成物を基材上に膜状に塗布し、乾燥させることで光重合性塗膜を形成する工程(塗膜形成工程(I))、得られた塗膜に、20〜40℃の温度下で、0.1mW/cm2以上10mW/cm2未満の照度の選択紫外線を、0.1〜6秒間、照射し、重合性液晶組成物を重合する工程(選択紫外線照射工程(II))、前記塗膜のコレステリック規則性の周期を変化させる工程(コレステリック規則性調整工程(III))を、含むことが好ましい。
また、前記選択紫外線照射工程(II)及び前記コレステリック規則性調整工程(III)を複数回繰り返すことが好ましい。
【0082】
選択紫外線照射工程(II)として、前記光重合性塗膜に、20〜40℃の温度下で、0.1mW/cm2以上10mW/cm2未満の照度の選択紫外線を、0.1〜6秒間照射する。照度は、基材面において、選択紫外線の波長にピーク感度を持つ(具体的には、例えば360nmにピーク感度を持つ)照度計を使用して測定する。
【0083】
ここで、選択紫外線(広帯域化用紫外線ともいう)とは、先に説明した光重合性塗膜の中の液晶の架橋度を膜の厚さ方向に異ならせることが可能な波長範囲もしくは照度を選択的に制御した紫外線を意味する。なお、この選択紫外線の照射によって、光重合性塗膜が完全に硬化(100%重合)することはない。
選択紫外線の照射により、塗膜の中の液晶の架橋度を膜の厚さ方向に異ならせることが可能となり、入射光の40%以上を反射する帯域が200nm以上有するように、コレステリック規則性を調整することが容易となる。
【0084】
前記選択紫外線照射工程に用いる選択紫外線としては、波長範囲の幅を100nm以内とした紫外線を用いることが好ましい。具体的には、300nm以上400nm未満の波長のみを有する紫外線を用いることが好ましい。
光源としては、水銀ランプ光源、メタルハライドランプ光源等を用いることができる。
【0085】
このように、紫外線を、照度0.1mW/cm2以上10mW/cm2未満、照射時間0.1〜6秒間の照射条件にて、バンドパスフィルターを用いる等により波長範囲の幅を100nm以内とし、選択紫外線照射工程(II)において用いることが好ましい。また、条件によっては波長範囲の幅を制御せずに用いることも可能である。なお、前記波長範囲の幅は、半値幅(透過率のピーク値の半分の値の幅)とする。
なお、前記波長範囲の制御は、具体的には、例えば中心波長365nmのバンドパスフィルターを用いる方法、塗膜に含まれる重合開始剤が最大の吸収を示す波長を中心とした、波長範囲の幅を100nm以内とする方法等が挙げられる。
【0086】
また、選択紫外線は、塗膜側から照射しても、基材側から照射しても、あるいは塗膜側、基材側の両側から照射して良いが、酸素による重合阻害を小さくする点で、基材側から照射することが好ましい。
塗膜側から照射する湯合は、照度・照射時間安定度をよりシビアに制御する必要がある(具体的には±3%以下)ので、生産性の面からも、基材側から照射するのが好ましい。
【0087】
更に基材側から照射する場合、前記選択紫外線照射工程の前に、基材上の光重合性塗膜を冷却して塗膜の温度を20℃〜40℃とする工程を有することが好ましい。20℃〜40℃に維持された光重合性塗膜に上述の選択紫外線を照射することにより、塗膜の厚さ方向に光の強度分布が生じ、その結果、膜の厚さ方向に架橋度が異なるコレステリック液晶層を形成することができる。塗膜を冷却する方法としては、冷風給気による冷却、冷却ロールによる冷却等を挙げることができる。
【0088】
次に、前記塗膜のコレステリック規則性のピッチを変化させる(コレステリック規則性調整工程(III))。
「塗膜のコレステリック規則性の周期を変化させる」とは、コレステリック規則性を有するコレステリック液晶層のピッチを厚さ方向に変化させるということである。
【0089】
コレステリック規則性の周期を変化させる方法としては、(i)塗膜を液晶相を示す温度以上で加熱処理を行う方法、(ii)前記塗膜にさらに液晶化合物を塗布する方法、(iii)前記塗膜に、さらに非液晶化合物を塗布する方法などが挙げられる。これらの方法は1種類であってもよいし、それぞれを繰り返してもよいし、あるいは2種以上の方法を組み合わせてもよい。
【0090】
これらの中で、操作が簡単で、かつ効果の点から、前記(i)の方法が好ましい。
加熱処理条件としては、広帯域化の効果と共に生産性を考慮すると、通常50〜115℃の温度で0.001〜20分間程度、好ましくは65〜115℃の温度で0.001〜10分間、より好ましくは65〜115℃の温度で0.01〜5分間である。ただし、光重合性塗膜を形成する液晶性化合物の種類により、液晶相を発現する温度領域が変わるので、それに伴い処理温度・処理時間も異なる。
【0091】
また、上記選択紫外線照射工程(II)及びコレステリック規則性調整工程(III)を複数回繰り返すのが好ましい。これらの工程を複数回繰り返すことにより、コレステリック規則性を有する樹脂層のピッチをより大きく変化させることが可能である。選択紫外線照射、コレステリック規則性調整の条件は、反射帯域を調整するために、回数毎にそれぞれ適宜調整される。繰り返しの回数に制限はないが、生産性、設備上の観点から2回以上であることが好ましい。なお、2回以上に分けて行うと、照射時間を短くすることができるので、重合度が大きくなり難く、従って分子が動き易くなるため、コレステリック規則性を有するコレステリック液晶層のピッチを制御し易くなる。
【0092】
ここで、工程(II)及び(III)を「繰り返す」とは、工程(II)の実施とそれに続く工程(III)の実施を含むシーケンスを繰り返すことをいう。即ち、工程(II)及び(III)を2回繰り返すと、工程(II)−(III)−(II)−(III)の順で行われることになる。これらの工程の間には、前記冷却等の他の工程を行ってもよい。
【0093】
次に、(ii)の工程では、液晶相の状態となった塗膜を硬化させる(塗膜硬化工程(IV))。硬化は、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法等、いずれの重合法に従って進行させてもよい。用いる前記液晶化合物に応じて、適する重合法が選択されるであろう。この重合により、本発明の重合体が得られる。
一例では、紫外線を照射して、硬化反応を進行させる。紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。この工程では、紫外線を照射することによって、前記組成物の硬化反応が進行し、コレステリック液晶相が固定されて、硬化膜が形成される。
【0094】
硬化方法としては、前記塗膜が硬化してコレステリック規則性を有するような方法であれば特に制限されないが、本硬化紫外線を積算光量が10mJ/cm2以上となるように照射する方法であることが好ましい。ここで、本硬化紫外線とは、塗膜を完全に硬化させることのできる波長範囲もしくは照度に設定した紫外線を意味する。なお、本硬化紫外線では、塗膜の中の液晶の架橋度を膜の厚さ方向に異ならせることは難しい。
【0095】
本紫外線の積算光量は、好ましくは10〜1000mJ/cm2、より好ましくは50〜800mJ/cm2の範囲で選定される。積算光量は基材面において、紫外線光量計を使用して測定、または照度計を使用して照度を測定し、積算光量=照度×時間で算出することにより選定する。
本硬化紫外線の照射方向は、塗膜側と基材側のどちらからでも良いが、紫外線の照射効率が良い点から、塗膜側から照射することが好ましい。
【0096】
また、上記本硬化紫外線照射を窒素ガス雰囲気下などの酸素ガスの存在量の少ない雰囲気下で行うことが好ましい。このような雰囲気下で行うことにより、酸素による重合阻害の影響を低減することが可能である。本硬化紫外線照射時の酸素ガス濃度は、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、特に好ましくは500ppm以下である。
【0097】
さらに、前記塗膜硬化工程(IV)の前に、基材上の光重合性塗膜を20℃〜40℃に冷却する工程を有することが好ましい。20℃〜40℃に維持された光重合性塗膜に上述の本紫外線を照射することにより、コレステリック規則性調整工程後のコレステリック規則性を有するコレステリック液晶層のピッチの状態を維持することができる。
【0098】
この塗膜硬化工程(IV)により、コレステリック規則性を有するコレステリック液晶層の機械的特性を、その広帯域化を維持しつつ、向上させることができる。
コレステリック規則性を有するコレステリック液晶層の厚みは、配向の乱れや透過率低下の防止、選択反射の波長範囲(反射波長域)の広さなどの観点から、通常、1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜20μmである。また、基材を含めた合計厚み、すなわち円偏光分離シートの厚みは、通常20〜300μm、好ましくは20〜200μm、より好ましくは30〜100μmである。
【0099】
750nm〜2000nmの波長領域において、入射光の40%以上を反射する帯域が200nm以上有するようにコレステリック規則性が調整されたコレステリック液晶層(以下、「調整コレステリック液晶層」ということがある。)の形成に好適な塗膜形成装置としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、前記透明基材を連続的に送り出す繰り出し装置と、この繰り出し装置から送り出された基材上に光重合性組成物を塗布し塗膜を形成する塗工ヘッドとを備えるとともに、前記塗膜が形成された基材を冷却する手段、波長範囲および/または照度が選択された選択紫外線を前記塗膜に照射する選択紫外線照射装置、および前記基材を加熱する手段を、2系統以上備えている塗膜形成装置が挙げられる。
前記塗膜形成装置において、前記繰り出し装置や塗工ヘッドとしては、特に制限されず、公知のもの等を用いることができる。
【0100】
また、前記塗膜形成装置に用いられる塗膜が形成された基材を冷却する手段としては、冷却ゾーン装置、冷却ロール等により構成することができ、冷却ゾーン装置から構成することが好ましい。当該冷却手段は、基材の搬送経路の一部分を囲み、その中の温度を、光重合性組成物の硬化に適した一定の温度に保つ装置とすることができる。
また、本発明においては、前記冷却手段すべてを、後述する選択紫外線照射装置および本硬化紫外線照射装置それぞれよりも前に備えることが好ましく、選択紫外線照射装置および本硬化紫外線照射装置それぞれの直前に備えるのがより好ましい。
【0101】
前記一般式(I)で表される液晶化合物は紫外線に対して劣化しにくいため、本発明の重合体の前記コレステリック液晶相が前記一般式(I)で表される液晶化合物を用いて形成してなる場合、紫外線照射後もより優れた液晶性や耐久性を維持することができる。
【0102】
上記工程では、液晶相が固定されて、硬化膜が形成されることが好ましい。ここで、液晶相を「固定化した」状態は、液晶相となっている化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様である。それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該層に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。本発明では、紫外線照射によって進行する硬化反応により、液晶相の配向状態を固定することが好ましい。
なお、本発明においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に硬化膜中がもはや液晶性を示す必要はない。例えば、前記コレステリック液晶相を形成した液晶化合物が、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0103】
上記硬化膜の厚みについては特に制限はない。用途に応じて、又は所望とされる光学特性に応じて、好ましい膜厚が決定されるであろう。一般的には、厚さは0.05〜50μmが好ましく、1〜35μmがより好ましい。
【0104】
[赤外光反射フィルム]
本発明の赤外光反射フィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、本発明の重合体を含む光反射層を有することを特徴とする。
【0105】
(光反射層)
コレステリック液晶を用いた光反射層は、右円偏光と左円偏光のいずれか一方を反射する光反射層として形成することができる。そのため、本発明の赤外線反射フィルムは、本発明の重合体を含む前記光反射層を、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆である右円偏光の光反射層と左円偏光の光反射層として、2層有することが好ましい。
【0106】
本発明のλ/2膜が入る構成では、前記光反射層を、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに同一とし、同じ方向の円偏光を反射できる2層以上の光反射層とすることも好ましい。この構成では、光反射層 / λ/2膜 / 光反射層を固定してなる液晶膜となり、全体としては、コレステリック液晶が2層以上積層された積層体となる。
【0107】
コレステリック液晶を用いた光反射層の態様は、上記態様に限定されるものではない。基板の一方の表面上に、5層以上光反射層を積層した構成であってもよいし、また、基板の双方の表面上に、1組以上ずつ(合計で5層以上)光反射層を積層した構成であってもよい。また、同一の反射中心波長を示す2組以上の光反射層を有する態様であってもよい。
【0108】
各光反射層の厚さは、それぞれ、1〜10μmであることが好ましく、2〜7μmであることがより好ましい。前記光反射層全体の厚さは、10〜50μmであることが好ましく、20〜40μmであることがより好ましい。
【0109】
一方、本発明の赤外線反射フィルムは、1層あたりの帯域幅を満足できるレベルまで広げることができるため、コレステリック液晶の積層工程を簡略化できる点で好ましい。すなわち、本発明の赤外線反射フィルムは、コレステリック液晶相を固定してなる層の積層数が2以下であることが、好ましく、2であることが特に好ましい。
【0110】
(基板)
本発明のフィルムは、基板を有していてもよい。当該基板は自己支持性があり、上記硬化膜を支持するものであれば、材料及び光学的特性についてなんら限定はない。ガラス板、石英板、及びポリマーフィルム等から選択することができる。用途によっては、紫外光に対する高い透明性が要求されるであろう。可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムとしては、液晶表示装置等の表示装置の部材として用いられる種々の光学フィルム用のポリマーフィルムが挙げられる。前記基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、などが挙げられる。ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースが好ましい。
【0111】
(配向層)
本発明のフィルムは、基板と前記硬化膜との間に、配向層を有していてもよい。配向層は、液晶化合物の配向方向をより精密に規定する機能を有する。配向層は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成等の手段で設けることができる。さらには、電場の付与、磁場の付与、或いは光照射により配向機能が生じる配向層も知られている。配向層は、ポリマーの膜の表面に、ラビング処理により形成するのが好ましい。
【0112】
配向層に用いられる材料としては、有機化合物のポリマーが好ましく、それ自体が架橋可能なポリマーか、或いは架橋剤により架橋されるポリマーがよく用いられる。当然、双方の機能を有するポリマーも用いられる。ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレ−ト、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコ−ル及び変性ポリビニルアルコ−ル、ポリ(N−メチロ−ルアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロ−ス、ゼラチン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロ−ルアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロ−ス、ゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、さらにゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0113】
(赤外線反射フィルムの用途)
本発明のフィルムの一態様は、前記コレステリック液晶相の配向(例えば、水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向等)を固定したフィルムであって、光学異方性を示すフィルムである。当該フィルムは、液晶表示装置等の光学補償フィルム等として利用される。
本発明のフィルムの一態様は、コレステリック液晶相を固定したフィルムであって、所定の波長域の光に対して選択反射特性を示すフィルムである。本発明のフィルムは、赤外線波長域に選択反射特性を示すことが好ましく、赤外線波長域(波長800〜1300nm)に選択反射特性を示す当該フィルムは、例えば建物又は車両の窓ガラスに貼付され、もしくは合わせガラスに組み込まれて、遮熱部材として利用される。なお、本発明のフィルムの好ましい選択反射特性は、本発明の重合体の好ましい選択反射特性の範囲と同様である。
また、本発明のフィルムは、光学素子の構成要素である、偏光素子、選択反射膜、カラーフィルタ、反射防止膜、視野角補償膜、ホログラフィー、配向膜等、種々の用途に利用することができる。
【実施例】
【0114】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0115】
1.化合物の合成例と物性
[合成例1]
例示化合物(I−1)の合成:
【化19】

(1)4−ヒドロキシベンズアルデヒド 7.32g(60mmol)を、トルエン 30mlを加えた3つ口フラスコに添加した。窒素雰囲気下、内温を40℃まで上昇させたのち、4−アミノ−m−クレゾール 7.4g(60mmol)を添加した。その後、2時間リフラックスを行い、ディーンシュタルク装置で水・トルエンを完全に留去させ、黄色固体を得た。この固体をTHF50mlに完溶させた(溶液Aとする)。
(2)別途、3つ口フラスコにMsCl 10.2ml(132mmol)とTHF 20mlを添加し、氷・メタノールバスに浸し、内温を−5℃にした。この溶液に、内温を5℃以下に保ちながら、4−アクリロイルオキシ安息香酸 31.7g(120mmol)/ジイソプロピルエチルアミン(以下、DIPEAとする)26.1ml(150mmol)/2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール 0.30g/THF 70mlの混合溶液を滴下した。この溶液を5℃以下に保って、2時間攪拌した後、DIPEA 26.1ml(150mmol)、DMAP 0.15g、(1)で調製した溶液Aをこの順で添加した(内温を5℃以下に維持)。反応温度を25℃に上昇し、2時間攪拌後、メタノールを10ml加えてクエンチした。酢酸エチル/純水を加えて分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濃縮し、粗結晶を得た。この粗結晶を酢酸エチル/メタノールにより再結晶し、白色固体である例示化合物(I−1)を28.9g(収率67%)で得た。合成した化合物は白色の固体であった。
1H-NMR(CDCl3) : δ= 1.8-2.0(brs,8H), 2.4(s,3H), 4.0-4.1(m,4H), 4.2-4.3(m,4H), 5.8(d,2H), 6.2(dd,2H), 6.4(d,2H), 6.9-7.1(d,7H), 7.3-7.4(d,2H), 8.0(d,2H), 8.1(m,4H), 8.4(s,1H)
【0116】
[合成例2]
例示化合物(I−7)の合成:
【化20】

【0117】
4−アミノ−o−ブロモフェノールの代わりに4−アミノ−2−メトキシカルボニルフェノール、を用いた以外は実施例1と同様の方法により例示化合物(I−7)を合成した。収量は27.5g(収率60%)であった。合成した化合物は白色の固体であった。
1H-NMR(CDCl3) : δ= 1.8-2.0(brs,8H), 3.7(s,3H), 4.1(brs,4H), 4.3(brs,4H), 5.8(d,2H), 6.1(dd,2H), 6.4(d,2H), 7.0(d,4H), 7.3(d,2H), 7.5(d,1H), 7.9(s,1H), 8.0(d,2H), 8.2(d,4H), 8.5(s,1H)
【0118】
[合成例3]
比較化合物R−1の合成は、特開2008−291218号公報に記載された方法を参考にして合成した。合成した化合物は黄色の固体であった。
【化21】

【0119】
(クロロホルム溶液中の透過スペクトルの評価)
実施例1、2および比較例1で得られたこれらの化合物のクロロホルム溶液中の透過スペクトルを島津社製の分光光度計UV−3100PCを用いて測定した。図1に420nm付近の各化合物の波長とモル吸光係数の関係を表すグラフを示す。本発明の化合物(I−1)および(I−7)は420nmにおけるモル吸光係数が100L/(mol・cm)以下であるのに対し、比較例の化合物(R−1)は420nmにおけるモル吸光係数が100L/(mol・cm)以上であった。
また、本発明の化合物(I−1)および(I−7)は、420nmにおけるモル吸光係数が100L/(mol・cm)以下であるときに420nm〜750nmにおける透過率がいずれも70%以上であることをあわせて確認した。
【0120】
2、コレステリック液晶重合体およびフィルムの作成
[実施例1]
下記表1に示す割合で各化合物を配合し、メチルエチルケトンとシクロペンタノンを体積比80対20で混合した溶媒を用いて、固形分36重量%のコレステリック液晶組成物溶液(A−1)を調製した。このコレステリック液晶組成物溶液(A−1)を、ワイヤーバーを用いて、富士フイルム製PETフィルム上に、室温にて塗布し、室温にて30秒間乾燥させた後、100℃の雰囲気で2分間加熱熟成し、コレステリック液晶層を形成した。なお、熟成後の膜の厚みは10μmとした。
形成したコレステリック液晶層のPETフィルム側から15mJ/cm2の紫外線を照射し、100℃の雰囲気で1分間加熱し、次いで30℃まで冷却した。次に、再度PETフィルム側から15mJ/cm2の紫外線を照射し、100℃の雰囲気で1分間加熱したのち、今度は液晶層側から2000mJ/cm2の紫外線を照射し、コレステリック液晶層のピッチに勾配を形成させた状態で固定化を行い、透明な赤外線反射フィルム(B−1)を得た。
【0121】
【表1】

【0122】
なお、単官能重合性液晶化合物(M1)は下記式で表される化合物を示す。M1の420nmにおけるモル吸光係数は100L/(mol・cm)以下であった。
【0123】
【化22】

【0124】
また、カイラル剤および重合開始剤は、それぞれBASF社製のLC−756およびチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のIRGACURE−OXE02を用いた。
また、界面配向剤(M2)は下記式で表される化合物を示す。
【0125】
【化23】

【0126】
[実施例2]
上記表1の液晶化合物(I−1)の代わりに(I−7)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、コレステリック液晶組成物溶液(A−2)および赤外線反射フィルム(B−2)を得た。
【0127】
[比較例1]
上記表1の液晶化合物(I−1)の代わりに(R−1)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、コレステリック液晶組成物溶液(A−3)および赤外線反射フィルム(B−3)を得た。
【0128】
[評価]
(赤外線フィルムの分光性能)
株式会社島津製作所社製の分光光度計UV−3100PCを用いて、実施例1、2および比較例1で作成した赤外線反射フィルム(B−1)〜(B−3)の透過スペクトルを測定し、420nmにおける透過率と550nmにおける透過率の差(420nmにおける透過率を、550nmにおける透過率から減じた値)、選択反射の中心波長、および40%以上反射する反射帯域の幅を求めた。
得られた結果を下記表2に記載した。
【0129】
(赤外線フィルムの色)
また、白色紙の上に実施例1、2および比較例1で作成した赤外線反射フィルムを設置し、フィルムの色味を目視観察した。
また、光源としてD65を用いたときの実施例1、2および比較例1で作成した赤外線反射フィルムの透過光について、xy色度図で色度を確認した。
得られた結果を下記表2に記載した。
【0130】
【表2】

【0131】
上記表2から明らかなように、本発明の赤外線反射フィルム(B−1)および(B−2)は、420nmにおける透過率と550nmにおける透過率の差も10%以下であり、見た目に着色がなく、選択反射の反射帯域の幅も200nm以上であった。それに対し、比較例1の赤外線反射フィルム(B−3)は、420nmにおける透過率と550nmにおける透過率の差が10%以上であり、見た目にも黄色がかって見えることがわかった。
【0132】
(可視光透過率・吸光ピーク)
なお、赤外線フィルムの分光性能を確認するときに、実施例1および2の赤外線反射フィルムは、可視光領域(420nm〜750nm)における透過率がいずれも70%以上であることを確認した。
さらに、白色光を照射したときに、420nm〜750nmのすべての波長において10%以上の吸光ピークが存在しないことを確認した。
【0133】
(ピッチ変化)
また、コレステリック液晶層のピッチの勾配を以下の方法で確認した。
実施例1および2の赤外線反射フィルムの紫外線照射面近傍(紫外線照射面から1μm下層)と、空気界面近傍(空気界面から1μm下層)およびその中間のピッチ長を断面TEM写真により測定した。
その結果、実施例1および2の赤外線反射フィルムは、コレステリック液晶層のピッチが勾配を有することがわかった。
【0134】
[実施例11]
実施例1の赤外線反射フィルムの製造において、コレステリック液晶組成物溶液(A−1)のカイラル剤をLC−756(BASF社製)から、下記キラル剤(A)1.72質量部に変更しただけで他は同様にして、第2の光反射層用の塗布液を調製した。実施例1および2の赤外線反射フィルムの液晶層の上に、第2の光反射層用の塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして、第2の光反射層を形成した。
得られた2層の光反射層を有する実施例11の赤外光反射フィルムは、実施例1と同様に良好な光学特性を示した。
【化24】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
420nmにおける透過率を550nmにおける透過率から減じた値が10%以下であり、
実質的に無色であり、
固定化されたコレステリック液晶相を有し、
前記固定化されたコレステリック液晶相のピッチが、近赤外の波長領域において入射光の40%以上を反射する帯域が200nm以上となるように勾配を有することを特徴とする重合体。
【請求項2】
白色光を照射したときに、420nm〜750nmのすべての波長において10%以上の吸光ピークが存在しないことを特徴とする請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
前記コレステリック液晶相が、少なくとも1種の液晶化合物を用いて形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の重合体。
【請求項4】
前記液晶化合物が、実質的に無色な液晶化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする請求項3に記載の重合体。
【請求項5】
前記液晶化合物が、420nmにおけるモル吸光係数が100L/(mol・cm)以下であるときに420nm〜750nmにおける透過率がいずれも70%以上である液晶化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする請求項3または4に記載の重合体。
【請求項6】
前記液晶化合物が、重合性基を有する液晶化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項7】
前記液晶化合物が、少なくとも1種の1分子中に2箇所以上の重合性基を有する液晶化合物を含むことを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項8】
前記液晶化合物が、少なくとも1種の下記一般式(I)で表される液晶化合物を含むことを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載の重合体。
【化1】

(式中、P1及びP2はそれぞれ独立に、重合性基を表し;
m1及びm2はそれぞれ独立に、1〜10の整数を表し、m1又はm2のCH2のうち、1つのCH2又は隣接しない2以上のCH2は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わっていてもよく;
1及びR2はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜5のアシルオキシ基、炭素原子数2〜4のアシル基、炭素原子数2〜5のアミド基、シアノ基、又はハロゲン原子を表し;
n1及びn2はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し;
3は、水素原子、又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し;
1は、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、又は−NHCO−を表し;
1は、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−OCO−CH=CH−、又は−NHCO−を表し、;
nは0、1又は2である。)
【請求項9】
前記コレステリック液晶相が、前記重合性基を有する前記液晶化合物を重合して形成されたことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項10】
前記液晶化合物が、光源としてR65を用いたときの透過光が、xy色度図において、0.3050<x<0.3150、かつ、0.3050<y<0.3350を満足する液晶化合物を含むことを特徴とする請求項3〜9のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項11】
光源としてR65を用いたときの透過光が、xy色度図において、0.3050<x<0.3150、かつ、0.3050<y<0.3350を満足することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の重合体を含む光反射層を有することを特徴とする赤外線反射フィルム。
【請求項13】
前記光反射層を2層有することを特徴とする請求項12に記載の赤外線反射フィルム。
【請求項14】
すべてのコレステリック液晶相を固定してなる層の積層数が2以下であることを特徴とする請求項12または13に記載の赤外線反射フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−64890(P2013−64890A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203789(P2011−203789)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】