説明

重合体および選択された層状化合物を含んでなる複合体並びにそれらの製造および使用方法

高い剥離度の層状化合物を有する重合体および層状化合物組成物を製造する方法が開示される。層状化合物は重合体または重合体の単量体との親和力を有する化学物質で処理される。単量体および層状化合物は重合前に組み合わせることができる。重合体および層状化合物は溶媒中での溶液混合により組み合わせることができる。重合体生成物を層状化合物と混和することによっても層状化合物は混合物中に合体させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロス−リファレンス
適用可能でない。
【0002】
分野
この開示は重合体および選択された層状化合物を含んでなる複合体並びにそれらの製造および使用方法に関する。より具体的には、この開示は重合体複合体を製造するための層状化合物の剥離方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
重合体物質は、食品貯蔵、医学装置、および自動車を包含する多くの製品において普遍的に見られる。ナノ複合体は重合体物質および無機層状化合物、例えば粘土、を含んでなる。これらの無機積層成分が重合体マトリックス中に適切に合体されている時には、物理的および機械的性質における有意な改良が示されうる。重合体マトリックス中に合体されている層状化合物の均一度がナノ複合体の特性に影響する。
【0004】
重合体マトリックス中への無機層状化合物の適切な合体を得るためには、高い程度の挿入(粘土層の間への分子または分子群の挿入)および剥離(無秩序層またはシートへの積層物質の離層)が望ましい。高い程度の挿入および剥離を得るためには、粘土をある種の有機化学物質により処理してそれらの表面疎水性および層間距離を高めることができる。これらの粘土は有機粘土と称する。
【0005】
しかしながら、ある場合には、より高い疎水性およびより大きい層間空間は必ずしも常により高い程度の挿入/剥離をもたらさない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故、より高い疎水性およびより大きい層間空間により与えられるものより高い程度の挿入および剥離を得るための要望が当該技術に依然として残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
本発明は改良された挿入/剥離モルホロジーを有する重合体複合体の製造方法およびそのような重合体複合体から製造される製品を包含する。この方法は、単量体を層状化合物と組み合わせて混合物を製造しそして混合物を重合条件にかけて重合体複合体を製造することを包含する。層状化合物は有機化合物で処理されて単量体と組み合わせる前に単量体との親和力を有する処理された層状化合物を製造した。重合体複合体は挿入モルホロジーを有することができもしくは剥離モルホロジーを有することができまたは両方を有することもできる。重合体複合体は、単量体との親和力を有する化学物質で処理された層状化合物の不存在下で製造されたがその他の点では同様な複合体と比べる時に、より大きい剥離度を有しうる。
【0008】
処理された層状化合物は単量体の溶解度パラメーターより3.0(MPa1/2)より小さい差異を有する溶解度パラメーターを有する有機基を有しうる。処理された層状化合物は、少なくとも1個の炭化水素環基、少なくとも1個のメタクリレート基、またはそれ
らの組み合わせを含んでなる有機基を有しうる。
【0009】
層状化合物の処理およびその後の重合は層状化合物の層間距離を少なくとも5オングストローム増加させうる。
【0010】
層状化合物は有機カチオンとのイオン交換により処理して有機粘土を製造することができ、1個もしくはそれ以上のベンジル基を有することができ、そして
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、HTは水素化された脂肪(〜65%C18、〜30%C16、〜5%C14)である]
の構造を有することができる。
【0013】
層状化合物は天然粘土、合成粘土、ゾル類、コロイド類、ゲル類、フューム類、またはそれらの組み合わせよりなる群から選択されうる。層状化合物はベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、フルオロヘクトライト、サポナイト、ステベンサイト、ノントロナイト、サウコナイト、グラウコナイト、ベルミクライト、クロライト、マイカ、ヒドロマイカ、ムスコバイト、バイオタイト、フロゴパイト、イライト、タルク、ピロフィライト、セピオライト、アタパルガイト、パリゴルスカイト、ベルチエリン、セルペンチン、カオリナイト、ジクカイト、ナクライト、ハロイサイト、アロファン、イモゴライト、ヒドロタルサイト、ピロオーライト、カルサイト、ウォラストナイト、またはそれらの組み合わせでありうる。
【0014】
単量体は芳香族部分および不飽和アルキル部分を含有することができ、そしてスチレン、アルファメチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリル酸およびメタクリル酸またはアクリル酸もしくはメタクリル酸の置換されたエステル類、ビニルトルエン或いはそれらの組み合わせよりなる群から選択されうる。単量体は混合物の50重量%〜99.9重量%の量で存在することができそして層状化合物は0.1重量%〜50重量%の量で存在することができる。
【0015】
添加剤を混合物に加えることができ、添加剤はジメタクリル酸亜鉛、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ヒドロキシエチルまたはそれらの組み合わせよりなる群から選択される。添加剤は混合物中に0.01重量%〜10.0重量%の範囲内で存在しうる。
【0016】
共単量体および/またはエラストマーを混合物に、各々合計重量の0.1重量%〜50重量%の量で、加えることができる。エラストマーは共役ジエン単量体、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、脂肪族共役ジエン単量体、C−Cジエン、ブタジエン、またはそれらの組み合わせを含んでなりうる。
【0017】
重合体複合体を配向させて配向した複合体を製造することができ、ここで複合体の配向は機械方向、もしくは横方向、または両者での延伸、回転、吹き付け、流し込み、またはそれらの組み合わせを含んでなる。
【0018】
別の態様では、重合体複合体は重合体を層状化合物と混和して重合体複合体を製造する方法により製造され、ここで層状化合物は重合体との親和力を有する化学物質で処理されていた。重合体複合体は、単量体との親和力を有する化学物質で処理された層状化合物の不存在下で製造されたが他の点では同様な複合体と比べる時に、より大きい剥離度を有しうる。
【0019】
重合体は芳香族部分および不飽和アルキル部分を有する単量体から製造することができる。重合体は、場合により1種もしくはそれ以上の共重合体を含んでなっていてもよいスチレン系重合体でありうる。層状化合物と重合体の混和は層状化合物の層間距離を少なくとも5オングストローム増加させうる。
【0020】
処理された層状化合物は重合体の溶解度パラメーターより3.0(MPa1/2)小さい差異を有する溶解度パラメーターを有する有機基を有しうる。処理された層状化合物は、少なくとも1個の炭化水素環基、少なくとも1個のメタクリレート基、またはそれらの組み合わせを含んでなる有機基を有しうる。
【0021】
さらに他の態様では、本発明は重合体ナノ複合体組成物およびそれから製造される製品を包含する。重合体ナノ複合体組成物は重合体および層状化合物を包含し、層状化合物は重合体との親和力を有する化学物質で処理されている。
【0022】
ナノ複合体中で使用される無機粘土が挿入剤で処理されて有機粘土を製造する時には、単量体/重合体との親和力を有する挿入剤を使用することにより、より高い挿入/剥離度が得られうる。
【0023】
本発明のある態様はスチレン単量体と有機粘土とのインシトウ(in situ)その場での重合を含んでなる剥離を達成する方法に関し、ここで有機粘土はスチレンとの親和力を有する化学物質で処理される。本発明のある態様はポリスチレンを有機粘土と混和することにより剥離を達成する方法に関し、ここで有機粘土はスチレン/ポリスチレンとの親和力を有する化学物質で処理される。本発明のある態様はスチレン単量体を有機粘土と溶液混合することにより剥離を達成する方法に関し、ここで有機粘土はスチレンとの親和力を有する化学物質で処理される。
【0024】
本発明はまた、スチレン/ポリスチレンとの親和力を有する化学物質により挿入されたある百分率の有機粘土を含有する組成物およびそのような組成物から製造される製品にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図面の簡単な記述
【図1】図1はサザン・クレー・プロダクツ・インコーポレーテッド(Southern Clay Products,Inc.)から市販されているある種の有機粘土の組成および種々の性質を表わす。
【図2】図2は押し出し混和を包括する層状化合物/重合体複合体の製造方法を表わす。
【図3−4】図3および4は重合時間に対する粘土の存在の影響を表わす。
【図5】図5はその場での重合において使用される粘土がCLOISITE 10AであるX線回折パターンを表わす。
【図6】図6はその場での重合において使用される粘土がCLOISITE 20AであるX線回折パターンを表わす。
【図7】図7は混和方式から製造されるCLOISITE 10Aおよびポリスチレンナノ複合体のX線回折パターンを表わす。
【図8】図8は混和方式から製造されるCLOISITE 15Aおよびポリスチレンナノ複合体のX線回折パターンを表わす。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な記述
1種もしくはそれ以上の層状化合物および1種もしくはそれ以上の重合体物質を含んでなる層状化合物/重合体複合体(LCPC類)並びにそれらの製造および使用方法がここに開示されている。LCPCはナノ複合体であり、そしてここでは「ナノ複合体」は充填剤物質とも称する100ナノメートル(nm)より小さい少なくとも1つの寸法を有するナノ粒子(例えば、層状化合物)を一般的にはマトリックスと称する巨視的物質(例えば、重合体物質)に導入することにより作成される物質をさす。本発明の態様によると、LCPCは積層充填剤物質(ナノフラーとも称する)および重合体マトリックスを有するナノ複合体を含んでなる。
【0027】
LCPCは層状化合物を含んでなる。層状化合物は天然および合成粘土、ゾル類、コロイド類、ゲル類、フューム類などを包含しうる。そのような化合物はナノ粒状体を含んでなることができ、それらは100ナノメートル(nm)より小さい少なくとも1つの寸法を有する小粒子である。ある態様では、LCPCは粘土を含んでなる。この開示によると、粘土は天然産出または合成的に製造されるいずれかの含水シリケート粒子の塊をさし、そして可変量の例えばアルカリ土類金属および水の如き他の成分を含む珪素およびアルミニウム酸化物並びに水酸化物に富んだ種々の鉱物よりなりうる。天然産出粘土は一般的にはシリケート−担持岩石の化学的風化により製造されるが、あるものは水熱作用により製造される。これらのタイプの粘土は工業化学方法で複製されうる。多くのタイプの粘土はシート状(層状)構造を有しそしてこれらの層は典型的には小板(platelets)と称する。これらの小板は1nmの桁の厚さおよび50〜1500のアスペクト比においてある程度の柔軟性を有する。
【0028】
本発明の態様で使用される粘土は親有機性でありそしてそのような粘土は典型的には有機粘土と称する。有機粘土は天然または合成粘土から誘導される有機的に改質されたシリケート化合物である。有機粘土は典型的には親水性である粘土から有機カチオンとのイオン交換により製造できる。有機粘土中での成分として適する積層物質の数例は天然もしくは合成ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、フルオロヘクトライト、サポナイト、ステベンサイト、ノントロナイト、サウコナイト、グラウコナイト、ベルミクライト、クロライト、マイカ、ヒドロマイカ、ムスコバイト、バイオタイト、フロゴパイト、イライト、タルク、ピロフィライト、セピオライト、アタパルガイト、パリゴルスカイト、ベルチエリン、セルペンチン、カオリナイト、ジクカイト、ナクライト、ハロイサイト、アロファン、イモゴライト、ヒドロタルサイト、ピロオーライト、カルサイト、ウォラストナイト、またはそれらの組み合わせを包含するが、それらに限定されない。この開示における使用に適する有機粘土の例はCLOISITE 10A、CLOISITE 15A、およびCLOISITE 20Aを包含するがそれらに限定されず、それらはサザン・クレー・プロダクツ・インコーポレーテッドから市販されておりそして図1にさらに詳細に記述されている。これらの有機粘土の相対的表面疎水性はCLOISITE 10A<CLOISITE 20A<CLOISITE 15Aである。
【0029】
本発明の態様では、有機粘土は0.1重量パーセント(重量%)〜50重量%、または0.5重量%〜25重量%、または1重量%〜10重量%の量で存在しうる。
【0030】
本発明によると、LCPCは重合体を含んでなる。重合体はLCPC中にLCPCの合計重量を基準として50重量%〜99.9重量%、または90重量%〜99.5重量%、または95重量%〜99重量%の量で存在しうる。
【0031】
ある態様では、重合体はフェニルベンジル基を有する単量体から製造できる。より具体的には、重合体は芳香族部分および不飽和アルキル部分を有する単量体から製造できる。そのような単量体はモノビニル芳香族化合物、例えばスチレン並びにアルキル化されたスチレン類、を包含することができ、ここでアルキル化されたスチレン類は核または側鎖内でアルキル化される。アルファメチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリル酸およびメタクリル酸またはアクリル酸もしくはメタクリル酸の置換されたエステル類、並びにビニルトルエンが本発明の重合体の製造において有用でありうる適当な単量体である。これらの単量体は引用することにより本発明の内容となるReimers他の米国特許第7,179,873号明細書に開示されている。
【0032】
LCPC中の重合体成分はスチレン系重合体(例えば、ポリスチレン)であることができ、ここでスチレン系重合体はホモ重合体であってもよくまたは場合により1種もしくはそれ以上の共単量体を含んでなってもよい。ビニルベンゼン、エテニルベンゼン、フェネチレンおよびフェニルエタンとしても知られるスチレンは化学式Cにより表示される芳香族有機化合物である。スチレンは広く市販されておりそしてここで使用される際にはスチレンの用語は種々の置換されたスチレン類(例えば、アルファ−メチルスチレン)、環置換されたスチレン類、例えばp−メチルスチレン、分配されたスチレン類(distributed styrenes)、例えばp−t−ブチルスチレン、並びに未置換スチレン類を包含する。
【0033】
ある態様では、スチレン系重合体は1.0g/10分間〜30.0g/10分間、または1.5g/10分間〜20.0g/10分間、または2.0g/10分間〜15.0g/10分間のASTM D1238に従い測定されるメルトフロー、1.04g/cc〜1.15g/cc、または1.05g/cc〜1.10g/cc、または1.05g/cc〜1.07g/ccのASTM D1505に従い測定される密度、227°F〜180°F、または224°F〜200°F、または220°F〜200°FのASTM D1525に従い測定されるビカット軟化点、および5800psi〜7800psiのASTM D638に従い測定される引張り強度を有する。この開示における使用に適するスチレン系重合体の例はトータル・ペトロケミカルズ・USA・インコーポレーテッド(Total Petrochemicals USA,Inc).から市販されているポリスチレン類であるCX5229およびPS535を包含するが、それらに限定されない。ある態様では、スチレン系重合体(例えば、CX5229)は表1に示される性質を一般的に有する。
【0034】
【表1】

【0035】
幾つかの態様では、スチレン系重合体はスチレンと重合される時にスチレン系共重合体を製造する共単量体をさらに含んでなる。そのような共重合体の例は例えばα−メチルスチレン;ハロゲン化されたスチレン類;アルキル化されたスチレン類;アクリロニトリル;メタクリル酸と炭素数1〜8のアルコール類とのエステル類;N−ビニル化合物、例えばビニルカルバゾールおよび無水マレイン酸;例えばジビニルベンゼンもしくはジアクリル酸ブタンジオールを包含するがそれらに限定されない2個の重合可能二重結合を含有する化合物;またはそれらの組み合わせを包含しうるが、それらに限定されない。共単量体は1種もしくはそれ以上の使用者に望ましい性質を組成物に与えるのに有効な量で存在しうる。そのような有効量は当業者によりこの開示を用いて決めることができる。例えば、共単量体はスチレン系重合体中にLCPCの合計重量の0.1重量%〜99.9重量%、または1重量%〜90重量%、そしてさらに1重量%〜50重量%の範囲にわたる量で存在しうる。
【0036】
ある態様では、重合体は熱可塑性物質も含んでなる。ここで熱可塑性物質は加熱される時に液体に溶融しそして充分に冷却される時に凍結して脆化したガラス状態を生ずるプラスチックをさす。熱可塑性物質の例はアクリロニトリルブタジエンスチレン、セルロイド、酢酸セルロース、エチレン酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、フルオロプラスチック類、イオノマー類、ポリアセタール、ポリアクリレート類、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミド−イミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンクロリネート、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタルアミド、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、およびそれらの組み合わせを包含するが、それらに限定されない。例えば、熱可塑性物質はスチレン系重合体中にLCPCの合計重量の0.1重量%〜50重量%の範囲にわたる量で存在しうる。
【0037】
ある態様では、重合体は重合体マトリックス中に埋められているエラストマー相を含んでなる。例えば、重合体は共役ジエン単量体を有するスチレン系重合体をエラストマーとして含んでなりうる。適当な共役ジエン単量体の例は1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、および2−クロロ−1,3−ブタジエンを包含するが、それらに限定されない。或いは、熱プラスチックは脂肪族共役ジエン単量体を有するスチレン系重合体をエラストマーとして含んでなりうる。限定しないが、適当な脂肪族共役ジエン単量体の例はC〜Cジエン類、例えばブタジエン単量体、を包含する。ジエン単量体の配合物または共重合体を使用することもできる。熱可塑性重合体の例はアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、高衝撃ポリスチレン(HIPS)、メタクリル酸メチルブタジエン(MBS)などを包含するが、それらに限定されない。エラストマーは1種もしくはそれ以上の使用者に望ましい性質を組成物に与えるのに有効な量で存在しうる。そのような有効量は当業者によりこの開示を用いて決めることができる。例えば、エラストマーはスチレン系重合体中にLCPCの合計重量の0.1重量%〜50重量%、または1重量%〜25重量%、または1重量%〜10重量%の範囲にわたる量で存在しうる。
【0038】
本発明によると、所望する物理的性質を与えるために必要とみなされる際には、LCPCは場合により添加剤も含んでなる。本発明において使用される添加剤は異なる極性を有する添加剤でありうる。本発明における使用に適する添加剤は以下では「ZnDMA」と称するジメタクリル酸亜鉛、以下では「StMMA」と称するメタクリル酸ステアリル、および以下では「HEMA」と称するメタクリル酸ヒドロキシエチルを包含するが、それらに限定されない。
【0039】
これらの添加剤は所望する物理的性質を与えるのに有効な量で含有されうる。ある態様では、1種もしくは複数の添加剤は0.01重量%〜10重量%の量で含有される。別の態様では、ZnDMAが添加剤である時には、それは0.01重量%〜5重量%の量で存在する。別の態様では、添加剤がStMMAまたはHEMAである時には、添加剤は1重量%〜10重量%の量で存在する。
【0040】
本発明によると、化学的に処理された粘土であるCLOISITE 10Aはスチレン単量体との親和力を有することが見出された。CLOISITE 10AおよびCLOISITE 20Aの剥離の量を比較する実験が行われた。実験の結果は、CLOISITE 10Aでは高い剥離度が得られうるがCLOISITE 20Aではそうでないことを結論づけた。実験の結果はこの開示の「実施例」部分およびここに提示されている図3−8にさらに詳細に示される。
【0041】
図1に言及すると、CLOISITE 20Aは全てのアルキル基を含有し、それらの2個は以下では「HT」(HTは約65%のC18、約30%のC16、および約5%のC14を含んでなる)と称する水素化された脂肪(tallow)である。再び図1に言及すると、CLOISITE 10Aはベンジル基を含有する。この開示は、ベンジル基を有するCLOISITE 10Aはスチレンのベンジル構造との良好な作用を示すことを見出した。CLOISITE 10Aはスチレン重合体を含んでなるLCPCの試料内により高い剥離度を有するより多くの構造を有することが見出された。
【0042】
ここで使用される際には2種の物質はそれらの溶解度パラメーターの間に3.0(MPa1/2)より大きくない差異がある場合には互いに親和力を有する。CLOISITE
10Aはベンジル基を含有し、ベンゼンは18.8(MPa1/2)の溶解度パラメーターを有するがスチレンは19.0(MPa1/2)の溶解度パラメーターを有する。粘土に対する有機化合物、この場合にはベンジル基、の添加は、ベンジル基の溶解度パラメーターがスチレンのものに近いため、粘土および重合体の間の親和力を与える。他の炭化水素環構造、例えば16.8(MPa1/2)の溶解度パラメーターを有するシクロヘキサン、17.8(MPa1/2)の溶解度パラメーターを有するシクロペンタン、および21.3(MPa1/2)の溶解度パラメーターを有するシクロペンタノン、はスチレンに対する親和力を与えるであろう溶解度パラメーターを有する。
【0043】
メタクリレート基の溶解度パラメーターはスチレンのものと近いため、メタクリレート基は粘土および重合体の間の親和力を与えることも見出された。非限定例として、16.8(MPa1/2)の溶解度パラメーターを有するメタクリル酸ブチル、17.0(MPa1/2)の溶解度パラメーターを有するメタクリル酸エチル、16.8(MPa1/2)の溶解度パラメーターを有するメタクリル酸ブチル、および18.0(MPa1/2)の溶解度パラメーターを有するメタクリル酸メチル。
【0044】
非限定例として、表2は層状化合物と層状化合物がその中に分散されている単量体または重合体との間の親和力を与えるために層状化合物を改質するために使用できる種々の環構造基およびメタクリレート基のリストを示す。表2におけるデータはPolymer Handbook,4’th edition by J.Brandrup,E.H.Immergut,and E.A.Grulke,John Wiley & Sons,Inc.,1999から採用される。
【0045】
【表2】

【0046】
ある態様では、スチレン系重合体の製造方法はスチレン単量体および他の成分を適切な重合反応条件下で接触させることを含んでなる。重合工程はバッチまたは連続的工程条件下で操作されうる。ある態様では、重合反応は連続的製造工程を用いて単一反応器または複数反応器を含んでなる重合装置の中で実施できる。本発明のある態様では、重合体組成物は上向き流反応器用に製造できる。重合体組成物の製造用の反応器および条件は引用することにより本発明の内容となるSosa他の米国特許第4,777,210号明細書に開示されている。
【0047】
重合工程において使用される装置の操作特性に適合させるために、温度範囲を包含する操作条件を選択しうる。ある態様では、重合温度は90℃〜240℃の範囲にわたる。別の態様では、重合温度は100℃〜180℃の範囲にわたる。さらに別の態様では、重合反応は複数反応器の中で行うことができ、ここで各反応器は最適温度範囲で操作される。例えば、重合反応はいずれかの2つの連続的に撹拌されているタンク反応器(CSTR)
または2つのプラグ−フロー反応器である第一および第二重合反応器を使用する反応器システムの中で実施できる。ある態様では、ここに開示されているタイプのスチレン系共重合体の製造用の重合反応器は複数反応器を含んでなり、ここで予備重合反応器としても知られる第一反応器(例えば、CSTR)は90℃〜135℃の温度範囲内で操作されるが第二反応器(例えばCSTRまたはプラグフロー)は100℃〜165℃の温度範囲内で操作されうる。
【0048】
重合された生成物流出物はここではプレポリマーと称することができる。プレポリマーが所望する転化率に達した時に、それを加熱装置を通して第二反応器に送ってさらなる重合を達成しうる。第二反応器からの重合された生成物流出物は所望するならまたは必要ならさらに処理されうる。重合反応の完了時に、スチレン系重合体が回収されそして引き続き処理され、例えば脱揮されたり、ペレット化されたりする。
【0049】
本発明によると、層状化合物は重合体/単量体に例えば重合工程の前、最中または後を包含するがそれらに限定されない重合工程のいずれかの段階において合体することができる。ある態様では、層状化合物は単量体と層状化合物の溶液混合により合体される。例えば、インシトウでの重合前のスチレン単量体と有機粘土との混合による。別の態様では、層状化合物は重合された生成物と層状化合物との混和により合体される。例えば、ポリスチレンと有機粘土の混和。さらに別の態様では、層状化合物は適当な溶媒、例えばトルエンまたはテトラヒドロフラン、の中での重合体、例えばポリスチレン、との溶液混合により合体される。例えば、トルエン中でのポリスチレンと有機粘土の溶液混合。
【0050】
ある態様では、層状化合物は重合体と混和される。そのような態様では、図2を参照すると、方法100は重合体110および層状化合物120の接触により開始されて押し出し混和130により混合物を形成しうる。押し出し混和130は重合体と1種もしくはそれ以上の追加成分の混合方法に言及しており、そこでは混合は連続的ミキサー、例えば短小非相互噛み合い逆回転ツインスクリュー押し出し機(short non−intermeshing counter rotating twin screw extruder)またはポンプ用のギアポンプよりなるミキサー、を用いて実施されうる。
【0051】
別の態様では、単量体と層状化合物のインシトウでの重合から生ずる重合された生成物が押し出し混和130にかけられて層状化合物のさらなる剥離および分散が行われる。さらに別の態様では、溶液混合後に乾燥されるポリスチレンおよび層状化合物を含んでなるポリスチレンおよび層状化合物を含んでなる混合溶液から生ずるナノ複合体生成物を押し出し混和130にかけて層状化合物のさらなる剥離および分散が行うこともできる。
【0052】
押し出し混和130は、構造140aに描写されているように重合体の一部が層状化合物中に挿入されている組成物を製造しうる。構造140aでは、重合体110は層状化合物120の小板の間に、層状化合物120の層間空間は膨張されるが依然として互いに関して良く規定された空間関係を有するように、挿入される。押し出し混和130は140bに示されているようにある程度の剥離ももたらすことがあり、そこでは層状化合物120の小板は分離されておりそして個々の層は重合体110全体にわたり分散されている。押し出し混和された後の層状化合物および重合体の混合物は以下では押し出し混合物と称する。
【0053】
LCPCの製造用の方法100は次にブロック150に進行することができ、そこでは押し出し混合物が配向されてLCPCを製造する。LCPCは複合体の寸法を変更するいずれかの適当な物理的および/または機械的技術を用いて配向されうる。一般的に、重合体組成物の配向はそれにより方向性(互いに関する分子の配向)が組成物に与えられるこの工程をさす。幾つかの態様では、組成物は、いずれかの適当な物理的技術、例えば延伸
、回転、吹き付け、流し込み、またはそれらの組み合わせ、を用いて配向されて、フィルム、繊維、テープなどを製造することができる。ある態様では、押し出し混合物は一軸または二軸配向される。ここで使用される際には、用語「二軸配向」は重合体組成物がそのガラス転移温度またはそれ以上であるがその結晶融点以下に加熱されている工程をさす。例えば、押し出し混合物を重合体組成物(すなわちLCPC)を固化してフィルムにする第一ローラー(例えば冷却ローラー)の上に送ることができる。次に、縦方向および横方向におけるフィルムの延伸がフィルムを配向させる。縦延伸は一般的に2つの連続的に配置されたローラーの使用により行われ、第二(または急速ローラー)は所望する配向比に応じるより遅いローラーに関連する速度で操作される。或いは、縦配向を速度が増加する一連のローラーにより、時には温度調節および他の機能を助けうる追加の中間ローラーを用いて、行うこともできる。
【0054】
縦配向後にフィルムを冷却し、予備加熱しそして横配向区域に送ることができる。横配向区域は、例えば、テンターフレーム機構を包含することができ、そこでフィルムに横方向応力が加えられる。アニーリングおよび/または他の処理をそのような配向後に行うことができる。別の態様では、フィルムを同時に両方向に延伸することができる。
【0055】
理論により拘束することは望まないが、冷却時に延伸により課される分子配列は結晶化と有利に比肩しており、そして延伸された重合体分子は延伸力方向に配列された結晶領域を有する結晶網目構造の中に濃縮している。二軸フィルム製造に関するさらなる開示は各々が引用することにより本発明の内容となるBeatty他の米国特許第4,029,876号明細書およびKline他の米国特許第2,178,104号明細書に見られる。
【0056】
ある態様では、重合体/単量体との増加した親和力を有する層状化合物を含有するLCPCから構成される製品は、層状化合物を欠く重合体と比べて、曲げ弾性率およびヤング率の両者において改良を示した。ヤング率は物質の剛性の測定値でありそして応力の変化速度と歪みの比であると定義される。ヤング率は、ASTM D882に従い測定されるように、物質の試料に対して行われる引張り試験中に作成される応力−歪み曲線の傾斜から実験的に測定できる。ある態様では、LSPSから製造される製品は、層状化合物を欠く重合体から構成された同様な製品と比べる時に、5%〜300%、または10%〜100%、または20%〜50%、の降伏時のヤング率における増加を示しうる。曲げ弾性率は物質の剛性の別の測定値でありそして下に曲げられた距離の量に対する適用された力の量として定義される。曲げ弾性率はASTM D790に従い測定される。ある態様では、LCPCから製造される製品は、層状化合物を含有しない重合体から構成される同様な製品と比べる時に、5%〜300%、または10%〜100%、または20%〜50%、の降伏時の引張り強度における増加を示しうる。
【0057】
層状化合物を含有するLCPCの光学的性質は層状化合物の分散度に依存する。層状化合物が良く剥離されそして均一に分散される時には、層状化合物の負の光学的影響は最少である。逆に、LCPC中の層状化合物の劣悪な分散はLCPCの透明度における有意な低下をもたらす。
【0058】
ある態様では、ここに開示されているタイプのLCPCから製造される二軸配向フィルムは10〜90、または20〜80、または30〜70の20°光沢、および20〜110、または30〜100、または40〜90の60°光沢を有する。物質の光沢は光と物質の表面の物理的特性との相互作用、より具体的にはASTM D2457に従い測定されるようなそのような表面が反射方向において光を反射する能力、に基づく。例えば20°および60°の入射角度における光沢度(それぞれ、「20°光沢」および「60°光沢」とも称する)を測定することにより、光沢を測定することができる。
【実施例】
【0059】
以下の実施例は本発明の態様を説明するために示される。選択された有機粘土の表面疎水性は非常に重要でありそして最終的なモルホロジーに関する主要な決定因子の1つであることは広く認められているが、以下の実施例は有機粘土の単量体または重合体に対する親和力も非常に重要であることを示す。比較的低い疎水性を有する有機粘土はそれらが重合体マトリックスまたは重合体マトリックスを製造するために使用される単量体との比較的高い親和力を有する限り比較的良好に剥離されうるであろう。これらの実施例は本発明の範囲を限定することを意図せずそして限定用と解釈すべきでない。
【実施例1】
【0060】
研究室バッチ反応器の中で8回の実験を行った。全てのバッチは500ml反応ケトルの中で窒素雰囲気下で110℃における2時間、130℃における1時間、および150℃における1時間の温度特徴を用いて行われた。スチレン(200g)を150ppmのLuperox(R)531および75ppmのLuperox(R)233で開始させた。200RPMで操作されるフラット−ブレード撹拌機を使用して有機粘土を分散させそして重合中に混合物を撹拌させた。この実施例では、例えば超音波および高剪断ミキサーの如き分散技術は使用されなかった。重合反応を65−70%固体分となるまで行った。試料を研究室真空炉の中で30分間にわたり225℃および〜1トルにおいて液化した。プラークを圧縮成型した。各実験回数で使用した粘土および添加剤は表3に示される。図3および4は反応時間に対する%固体分のプロットを示す。図5および6は液化した試料のX線回折パターンを示す。
【0061】
図3および4は、重合速度が許容可能であることおよび粘土の存在が反応に対していずれかの有意な問題を生じなかったことを示す。CLOISITE 20Aの存在下におけるHEMAを含む試料は、純粋なMMAが重合される時に得られる自己加速があるらしいことを示した。ZnDMAおよびStMMAの存在下における重合はCLOISITE 10AまたはCLOISITE 20Aのいずれにおいてもほとんど同一であった。図4では、試料8を表示する線における曲がりは試験データにおけるぶれによるようである。
【0062】
図5および6は、それぞれ、CLOISITE 10AおよびCLOISITE 20Aを使用する実験に関するX線回折パターンを示す。得られたデータによると、3種の添加剤の各々を有するCLOISITE 10Aではほぼ完全な剥離が得られた。しかしながら、使用された粘土がCLOISITE 20Aであった時には、完全な剥離は得られなかった。粘土小板を完全に剥離または分離するためには高い剪断速度が典型的には必要であるため、これらの結果は新規であり且つ予期されていない。さらに、Cloisite 20Aより低い表面疎水性を有するCloisite 10AはCloisite 20Aより良好に剥離され、このことはそれを処理するための化学物質がポリスチレンまたはスチレン単量体とのより高い親和力を有するためである。Cloisite 10Aおよびポリスチレンの間の親和力は高い剪断速度を与えずに高い剥離度が得られたことの主要な理由であると考えられる。
【実施例2】
【0063】
スチレン化合物を2種の有機粘土の存在下で製造してPS工程における製造反応器等級の実行可能性を測定した。表3は製造された物質のまとめであり、それは使用された添加剤、最終的転化率、MFIおよび添加剤ありおよびなしの調合物に関するx線信号の相対的強度を包含する。完全な剥離は5.8度における0付近の強度により表示されるはずである。それ故、相対的強度は剥離の程度の推定値を与える。この指数を用いると、HEMAは両方の粘土で最良の結果を与える。トータル・ペトロケミカルズ・インコーポレーテッドからの市販のポリスチレン化合物PS585およびPS535も包含される。
【0064】
【表3】

【実施例3】
【0065】
有機粘土であるCLOISITE 10Aを2種のトータル・ケミカルズのポリスチレン樹脂であるGPPS 535およびHIPS 945Eと5.0重量%の充填量でツイン−スクリュー同時回転押し出し機(Leistritz ZSE 50 GL、長さ対直径(L/D)比36:1)の上で混和した。CLOISITE 10Aをポリスチレンと混和した後に、CLOISITE 10Aの層間距離は、図7に示されているように、17オングストロームから約28オングストロームに増加した。このデータは、ポリスチレン連鎖がCLOISITE 10Aのギャラリー(galleries)に成功裡に挿入されたことを示す。対照的に、CLOISITE 15Aがポリスチレンと同じ処理条件下で混和された時には、その層間距離は図8に示されているようにわずかだけ増加した。この結果は、ベンジル基を含有する第四級アンモニウム塩により処理されたCLOISITE 10AはCLOISITE 15Aよりポリスチレンと相容性が大きいことを確認している。試験した2種のポリスチレン等級の間では、HIPS 945Eは、わずかに大きい層間距離および広いピークにより証明されているように(図7参照)、GPPS
535よりわずかに良好に作用するようである。
【0066】
機械試験結果は、CLOISITE 10A合体後に、曲げ弾性率およびヤング率の両者が増加することを示す。そのような増加は、ポリスチレン/CLOISITE 10Aナノ複合体で得られた挿入および剥離組み合わせモルホロジーを考えると、予期される。
【0067】
表4にまとめられているように、945E/CLOISITE 10Aナノ複合体は、未希釈の945E樹脂と比べた時に、曲げ弾性率およびヤング率の両者において約15%
の改良を示した。535/CLOISITE 10Aナノ複合体はそれより少ない改良を示した。これは図7に示されているXRD結果により示されているようなそれらのモルホロジーと一致する。ナノ複合体の衝撃強度は主としてモルホロジーおよび重合体マトリックス中のナノ小板の分散状態に依存する。減じられた衝撃強度は一般的に、特にナノ小板および重合体マトリックスの界面上の、欠陥の生成による。
【0068】
【表4】

【0069】
ポリスチレンナノ複合体の光学的性質も評価された(表5参照)。ポリスチレン生成物中への5.0重量%のCLOISITE 10Aの合体はPS 535の透明度および光沢の両者を低下させた。しかしながら、HIPS 945Eでは、CLOISITE 10Aは表面光沢をわずかに増加させた。一般的に、製造された重合体ナノ複合体の透明度は主として層状化合物の分散状態により決められる。層状化合物が良好に剥離されそして均一に分散される時には、それは製造されたナノ複合体の透明度に最少の負の影響を有する。
【0070】
【表5】

【0071】
この実験の結果は、CLOISITE 10AはCLOISITE 15Aより、より低い疎水性を有するにもかかわらず、ポリスチレンとのより高い相容性を有することを確認している。ナノフィルターおよびポリスチレンの間の高い相容性は製造されたナノ複合
体における挿入されたモルホロジーの形成およびその結果としての改良された剛性をもたらす。
【0072】
例えば含んでなる、包含する、有するなどの如きより広い用語の使用は、よりなる、本質的によりなる、実質的に含んでなるなどの如きより狭い用語に対する支援を与えると理解すべきである。
【0073】
ここで使用される際には用語「親和力」は第一物質が異なる組成の第二物質、例えば溶媒および溶質、と混合するかまたは組み合わさる傾向をさす。ここで使用される際には2種の物質はそれらの溶解度パラメーターの間に3.0(MPa1/2)より大きくない差異がある場合には互いに親和力を有する。
【0074】
用語「複合物質」は有意に異なる物理的および/または化学的性質を有する2種もしくはそれ以上の成分物質から製造されそして完成した構造内で巨視的水準で別個に且つ顕著に残存する物質をさす。
【0075】
用語「剥離」は無秩序層またはシートの形成を生ずる積層物質の離層をさす。
【0076】
用語「ナノ複合体」は典型的にはマトリックスと称する巨視的物質(例えば、重合体物質)中への充填剤物質とも称するナノ複合体(例えば、重合体物質)の導入により作成される物質をさす。
【0077】
特許請求の範囲のいずれかの要素に関する用語「場合により」の使用は当該要素が必要であるか或いは必要でないことを意味することが意図される。両方の場合とも特許請求の範囲内にあることが意図される。例えば含んでなる、包含する、有するなどの如きより広い用語の使用は、よりなる、本質的によりなる、実質的に含んでなるなどの如きより狭い用語に対する支援を与えると理解すべきである。
【0078】
用語「処理する」は撹拌する、混合する、粉砕する、配合するおよびそれらの組み合わせを包含するがそれらに限定されず、それらの全てはここでは互換的に使用される。断らない限り、処理するは1個もしくはそれ以上の容器の中で起きることができ、そのような容器は当業者に既知である。
【0079】
前後関係により、「発明」に関するここでの全ての言及はある場合にはある種の特定態様だけをさす。他の場合には、それは特許請求の範囲の必ずしも全てではないが1項もしくはそれ以上に詳述される主題をさすことがありうる。この特許における情報を入手可能な情報および技術と組み合わせる時に当業者が発明を作成し且つ使用しうることを包含する本発明の態様、変法および実施例に対して前記事項は向けられているが、発明はこれらの特定の態様、変法および実施例のみに限定されるものではない。発明の基本的範囲から逸脱しないようなそれらの他のそしてさらなる態様、変法および実施例を創案することができそしてそれらの範囲は以下の特許請求の範囲により決められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体を、処理された層状化合物と組み合わせて、混合物を製造し、そして混合物を重合条件にかけて重合体複合体を製造することを含んでなる改良された挿入/剥離モルホロジーを有する重合体複合体の製造方法であって、単量体と組み合わせる前に、層状化合物を有機化合物で処理して、単量体との親和力を有する処理された層状化合物を製造することにより処理された層状化合物が製造されている、方法。
【請求項2】
単量体がある溶解度パラメーターを有し、そして、処理された層状化合物がある溶解度パラメーターを有する有機基を有し、単量体溶解度パラメーターおよび有機基溶解度パラメーターの間の差異が3.0(MPa1/2)より大きくない、請求項1の方法。
【請求項3】
処理された層状化合物が少なくとも1個の炭化水素環基を含んでなる、請求項1の方法。
【請求項4】
処理された層状化合物が少なくとも1個のメタクリレート基を含んでなる、請求項1の方法。
【請求項5】
層状化合物が式:
【化1】

[式中、HTは水素化された脂肪(〜65%C18、〜30%C16、〜5%C14)である]
により表示される、請求項1の方法。
【請求項6】
重合体が、場合により1種もしくはそれ以上の共重合体を含んでなっていてもよいスチレン系重合体である、請求項1の方法。
【請求項7】
混合物に、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、またはそれらお組み合わせよりなる群から選択される添加剤を加えることをさらに含んでなる、請求項1の方法。
【請求項8】
添加剤が混合物中に0.01重量%〜10.0重量%の範囲内で存在する、請求項7の方法。
【請求項9】
単量体が混合物の50重量%〜99.9重量%の量で存在し、そして、処理された層状化合物が0.1重量%〜50重量%の量で存在する、請求項1の方法。
【請求項10】
重合体複合体が挿入モルホロジー、剥離モルホロジー、または両者を有する、請求項1の方法。
【請求項11】
層状化合物がある層間距離を有し、そして、処理された層状化合物がある層間距離を有し、そして、重合体複合体中の処理された層状化合物が、層状化合物の層間距離より少なくとも5オングストローム大きい層間距離を有する、請求項1の方法。
【請求項12】
エラストマーを混合物に合計重量の0.1重量%〜50重量%の量で加えることをさらに含んでなる、請求項1の方法。
【請求項13】
エラストマーが共役ジエン単量体、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、脂肪族共役ジエン単量体、C−Cジエン類、ブタジエン、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項12の方法。
【請求項14】
層状化合物が天然粘土、合成粘土、ゾル、コロイド、ゲル、フューム、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項1の方法。
【請求項15】
重合体複合体を配向して配向された複合体を製造することをさらに含んでなり、複合体の配向が機械方向、もしくは横方向、または両者での延伸、回転、吹き付け、流し込み、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項1の方法。
【請求項16】
請求項1の重合体複合体から製造される製品。
【請求項17】
重合体を処理された層状化合物と混合して重合体複合体を製造することを含んでなる方法であって、層状化合物を有機化合物で処理して重合体との親和力を有する処理された層状化合物を製造することにより、処理された層状化合物が製造されている、方法。
【請求項18】
層状化合物が天然粘土、合成粘土、ゾル、コロイド、ゲル、フューム、またはそれらの組み合わせよりなる群から選択される選択される、請求項17の方法。
【請求項19】
処理された層状化合物が少なくとも1個の炭化水素環基を含んでなる、請求項17の方法。
【請求項20】
処理された層状化合物が少なくとも1個のメタクリレート基を含んでなる、請求項17の方法。
【請求項21】
重合体がある溶解度パラメーターを有し、そして、処理された層状化合物がある溶解度パラメーターを有する有機基を有し、重合体溶解度パラメーターおよび有機基溶解度パラメーターの間の差異が3.0(MPa1/2)より大きくない、請求項17の方法。
【請求項22】
層状化合物が式:
【化2】

[式中、HTは水素化された脂肪(〜65%C18、〜30%C16、〜5%C14)である]
により表示される、請求項17の方法。
【請求項23】
重合体が場合により1種もしくはそれ以上の共重合体を含んでなっていてもよいスチレン系重合体である、請求項17の方法。
【請求項24】
層状化合物がある層間距離を有し、そして、処理された層状化合物がある層間距離を有し、そして、重合体複合体中の処理された層状化合物が層状化合物の層間距離より少なく
とも5オングストローム大きい層間距離を有する、請求項17の方法。
【請求項25】
請求項17の重合体複合体から製造される製品。
【請求項26】
混合が重合体および処理された層状化合物の混和を含んでなる、請求項17の方法。
【請求項27】
混合が溶媒中での重合体および処理された層状化合物の溶液混合を含んでなる、請求項17の方法。
【請求項28】
重合体および処理された層状化合物を含んでなる重合体ナノ複合体組成物であって、層状化合物を有機化合物で処理して重合体との親和力を有する処理された層状化合物を製造することにより処理された層状化合物が製造されている、組成物。
【請求項29】
重合体がある溶解度パラメーターを有し、そして、処理された層状化合物がある溶解度パラメーターを有する有機基を有し、重合体溶解度パラメーターおよび有機基溶解度パラメーターの間の差異が3.0(MPa1/2)より大きくない、請求項28の組成物。
【請求項30】
層状化合物が天然粘土、合成粘土、ゾル、コロイド、ゲル、およびフュームよりなる群から選択される、請求項28の組成物。
【請求項31】
処理された層状化合物が少なくとも1個の炭化水素環基を含んでなる、請求項28の組成物。
【請求項32】
処理された層状化合物が少なくとも1個のメタクリレート基を含んでなる、請求項28の組成物。
【請求項33】
層状化合物が式:
【化3】

[式中、HTは水素化された脂肪(〜65%C18、〜30%C16、〜5%C14)である]
により表示される、請求項28の組成物。
【請求項34】
重合体が場合により1種もしくはそれ以上の共重合体を含んでなっていてもよいスチレン系重合体である、請求項28の組成物。
【請求項35】
層状化合物がある層間距離を有し、そして、処理された層状化合物がある層間距離を有し、そして、重合体ナノ複合体組成物中の処理された層状化合物が層状化合物の層間距離より少なくとも5オングストローム大きい層間距離を有する、請求項28の組成物。
【請求項36】
請求項28の重合体組成物から製造される製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−516903(P2012−516903A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548027(P2011−548027)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/020975
【国際公開番号】WO2010/090802
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】