説明

重合体の製造方法および塗料用樹脂組成物

【課題】各種基材(特にポリアミド基材)に対して密着性に優れ、耐水性、耐溶剤性および外観が良好な塗膜を形成できる重合体および塗料用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】イソシアネート化合物(a−1)のイソシアネート基と、水酸基含有ビニル系単量体(a−2)およびモノアルコール化合物(a−3)の水酸基とを反応させて得られた反応生成物(A)と、水酸基含有ビニル系単量体(B)と、リン原子含有ビニル系単量体(C)と、その他のビニル系単量体(D)との混合物を、重合開始剤の存在下、媒体中で反応させて得られた重合体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料に好適な重合体の製造方法および塗料用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル系樹脂組成物は、耐候性、柔軟性、強度、接着性等に優れていることから、塗料、インキ、接着剤、合成皮革等の用途に広く用いられている。特に、塗料の用途においては、自動車、家庭電化製品、建材等の分野で、各種基材(例えば、金属、木、紙、プラスチック)への塗装用として、それぞれの要求性能に合った種々の組成のビニル系樹脂組成物が提供されている。
【0003】
ビニル系樹脂組成物としては、例えば下記のものが開示されている。
(1)水酸基含有ビニル系単量体とリン原子含有ビニル単量体と他のビニル系単量体とを重合させてなるビニル系共重合体と、ポリイソシアネート化合物とからなる被覆組成物(特許文献1)。
(2)ジイソシアネートとアルカンジオールと水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む活性エネルギー線硬化型組成物(特許文献2)。
【0004】
しかし、(1)の組成物からなる塗膜は、基材に対する密着性が不充分である。
(2)の組成物は、ビニル系共重合体を含んでいない、低分子量の組成物であるため、塗膜を厚くすることができず、塗膜の外観の点から、塗料として充分に適したものでない。
【0005】
ところで、プラスチック基材としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PSt)等の基材が、コスト、成形のしやすさ等の点から、比較的多くの成形物の基材として用いられている。また、成形物の軽量化による薄肉化等によって、強度が必要となる用途においては、ポリアミドを基材として用いた成形物が提案されている
【0006】
しかし、ポリアミドは、ABS、PC、PSt等と比較して極性が大きく異なっている。そのため、ABS、PC、PSt等の基材に対しては優れた密着性を発揮する塗膜を形成できるビニル系樹脂組成物であっても、ポリアミド基材に用いた場合では、密着性、耐水性、耐溶剤性の点において必ずしも充分に満足できるものではなかった。
【特許文献1】特公昭55−12145号公報
【特許文献2】特開2007−23147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、各種基材(特にポリアミド基材)に対して密着性に優れ、耐水性、耐溶剤性および外観が良好な塗膜を形成できる重合体および塗料用樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の重合体の製造方法は、イソシアネート化合物(a−1)のイソシアネート基と、水酸基含有ビニル系単量体(a−2)およびモノアルコール化合物(a−3)の水酸基とを反応させて得られた反応生成物(A)と、水酸基含有ビニル系単量体(B)と、リン原子含有ビニル系単量体(C)と、その他のビニル系単量体(D)とを、重合開始剤の存在下、媒体中で反応させることを特徴とする。
本発明の塗料用樹脂組成物は、本発明の製造方法で得られた重合体と硬化剤とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法で得られた重合体および塗料用樹脂組成物は、各種基材(特にポリアミド基材)に対して密着性に優れ、耐水性、耐溶剤性および外観が良好な塗膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<重合体>
本発明における重合体は、イソシアネート化合物(a−1)のイソシアネート基と、水酸基含有ビニル系単量体(a−2)およびモノアルコール化合物(a−3)の水酸基とを反応させて得られた反応生成物(A)と、水酸基含有ビニル系単量体(B)と、リン原子含有ビニル系単量体(C)と、その他のビニル系単量体(D)とを、重合開始剤の存在下、媒体中で反応させて得られたものである。
本発明における重合体は、反応生成物(A)に含まれるウレタン結合含有ビニル系単量体(A’)と、水酸基含有ビニル系単量体(B)と、リン原子含有ビニル系単量体(C)と、その他のビニル系単量体(D)とを重合させて得られるビニル系共重合体を主成分とする材料であり、ウレタン結合含有ビニル系単量体(A’)を得る際に反応生成物(A)中に副生する、ビニル基を有さないウレタン化合物等を含む。
【0011】
(反応生成物(A))
反応生成物(A)は、イソシアネート化合物(a−1)のイソシアネート基と、水酸基含有ビニル系単量体(a−2)およびモノアルコール化合物(a−3)の水酸基とを反応させて得られたものである。
反応生成物(A)は、ウレタン結合含有ビニル系単量体(A’)を主成分とする混合物であり、イソシアネート化合物(a−1)とモノアルコール化合物(a−3)のみが反応して得られたビニル基を有さないウレタン化合物等を副生物として含む。
【0012】
本発明において、イソシアネート化合物(a−1)は、分子中に2以上のイソシアネート基を有する必要がある。よってイソシアネート化合物(a−1)としては、ジイソシアネート化合物が好ましい。ジイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−イソシアナトフェニル)メタン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、トリス(4−イソシアナトフェニル)メタン、1,2−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、デカリンジイソシアネート等が挙げられ、得られる塗膜の耐黄変性および強度が良好である点から、脂環式ジイソシアネート化合物が好ましい。脂環式ジイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、デカリンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、これらの二量体もしくは三量体等が挙げられる。
イソシアネート化合物(a−1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
水酸基含有ビニル系単量体(a−2)は、イソシアネート化合物(a−1)のイソシアネート基に付加することで、生成物にビニル基を付与する成分である。水酸基含有ビニル系単量体(a−2)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンの付加物、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンの付加物、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられ、組成物の低粘度化の点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。本明細書において、(メタ)アクリレートとはメタクリレートとアクリレートの総称である。
水酸基含有ビニル系単量体(a−2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
モノアルコール化合物(a−3)は、イソシアネート化合物(a−1)のイソシアネート基に付加することで、ビニル基同士の架橋を抑制する成分である。モノアルコール化合物(a−3)は、構造中にビニル基を有さないものであって、1個の水酸基を有する化合物であればよい。モノアルコール化合物(a−3)としては、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロピルアルコール、4−メチル−2−ペンチルアルコール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ヘキシルアルコール、3−メチル−1−ヘキシルアルコール、5−メチル−1−ヘキシルアルコール、2−エチル−1−ヘキシルアルコール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、イソデカノール、イソトリデカノール等。)、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等。)等が挙げられ、耐水性の点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
モノアルコール化合物(a−3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
反応生成物(A)を得る方法としては、例えば、下記の方法(i)、方法(ii)が挙げられる。
(i)イソシアネート化合物(a−1)と触媒(ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫等。)との混合物中に、水酸基含有ビニル系単量体(a−2)を50〜90℃の条件下で滴下して反応させてウレタン中間体を得た後、該ウレタン中間体にモノアルコール化合物(a−3)を反応させる方法。
(ii)イソシアネート化合物(a−1)と触媒(ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫等。)との混合物中に、モノアルコール化合物(a−3)を50〜90℃の条件下で滴下して反応させてウレタン中間体を得た後、該ウレタン中間体に水酸基含有ビニル系単量体(a−2)を反応させる方法。
【0016】
仕込み比は、イソシアネート化合物(a−1)の1molに対して、水酸基含有ビニル系単量体(a−2)は0.5mol〜1.5molが好ましく、モノアルコール化合物(a−3)は0.5mol〜1.5molが好ましい。
ウレタン化反応の終点を確認する方法としては、例えば、イソシアネート量を定量する方法等が挙げられる。
イソシアネート化合物(a−1)、水酸基含有ビニル系単量体(a−2)およびモノアルコール化合物(a−3)の反応率は、97%以上が好ましく、99%以上がより好ましい。
【0017】
(水酸基含有ビニル系単量体(B))
水酸基含有ビニル系単量体(B)としては、水酸基含有ビニル系単量体(a−2)と同様のものが挙げられ、基材への密着性の点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
水酸基含有ビニル系単量体(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
(リン原子含有ビニル系単量体(C))
リン原子含有ビニル系単量体(C)は、公知の化合物の中から、要求特性等に応じて適宜選択すればよい。リン原子含有ビニル系単量体(C)としては、2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、3−メタクロイロキシプロピルアシッドホスフェート、メタクリロイロキシポリオキシエチレングリコールアシッドホスフェート、メタクリロイロキシポリオキシプロピレングリコールアシッドホスフェート等が挙げられ、密着性や耐水性の点から、2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェートが好ましい。
リン原子含有ビニル系単量体(C)の市販品としては、ライトエステルP−1M、ライトエステルP−2M(以上、共栄社化学社製)、ホスマーM(以上、ユニケミカル社製)が挙げられる。
リン原子含有ビニル系単量体(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
(その他のビニル系単量体(D))
その他のビニル系単量体(D)としては、アルキル(メタ)アクリレート(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等。)、芳香族ビニル系単量体(スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン等。)、アルキルビニルベンゼン(ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン等。)、多環芳香族ビニル系単量体(ビニルナフタレン等。)、カルボキシル基含有ビニル系単量体((メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、5−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等。)、シアノ基含有ビニル系単量体(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。)、マレイミド誘導体(N−シクロヘキシルマレイミド、N−ブチルマレイミド等。)、アルデヒド基またはカルボニル基を有するビニル単量体(アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロ−ル、ビニルアルキルケトン、(メタ)アクリルアミドピバリンアルデヒド、ジアセトン(メタ)アクリレ−ト、アセトニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレ−トアセチルアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタンジオ−ル−1,4−アクリレート−アセチルアセテート、アクリルアミドメチルアニスアルデヒド等。)、アミド基含有ビニル系単量体((メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、N−メチロールアクリルアミド等。)、エポキシ基含有ビニル系単量体(アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等。)、オレフィン系単量体(ブタジエン等。)、分子中にビニル基を2個以上有する単量体(ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルシアヌレート等。)等が挙げられ、密着性や耐水性の点から、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
その他のビニル系単量体(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
(重合体の製造方法)
本発明の重合体の製造方法は、反応生成物(A)と、水酸基含有ビニル系単量体(B)と、リン原子含有ビニル系単量体(C)と、その他のビニル系単量体(D)とを、重合開始剤の存在下、媒体中で反応させる方法、すなわち反応生成物(A)に含まれるウレタン結合含有ビニル系単量体(A’)と、水酸基含有ビニル系単量体(B)と、リン原子含有ビニル系単量体(C)と、その他のビニル系単量体(D)とを重合させる方法である。
反応容器への反応生成物(A)、水酸基含有ビニル系単量体(B)、リン原子含有ビニル系単量体(C)、その他のビニル系単量体(D)、媒体および重合開始剤の供給方法は特に限定されず、それぞれ別々で供給してもよいし、任意の成分を混合して供給してもよいが、媒体を先に仕込み、ついで反応生成物(A)と、水酸基含有ビニル系単量体(B)と、リン原子含有ビニル系単量体(C)と、その他のビニル系単量体(D)との混合物(以下、該混合物を混合物(M)と記す。)に重合開始剤を溶解させた混合物を滴下することが好ましい。
【0021】
反応生成物(A)の仕込み量は、混合物(M)の100質量%中、0.1質量%が好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。また、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。反応生成物(A)の仕込み量が0.1質量%以上であれば、基材への密着性、耐水性、耐溶剤性が良好となる。反応生成物(A)の仕込み量が50質量%以下であれば、基材への密着性、耐水性、耐溶剤性が良好となる。
【0022】
水酸基含有ビニル系単量体(B)の仕込み量は、混合物(M)の100質量%中、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。また、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。水酸基含有ビニル系単量体(B)の仕込み量が0.5質量%以上であれば、基材への密着性、耐水性、耐溶剤性が良好となる。水酸基含有ビニル系単量体(B)の仕込み量が30質量%以下であれば、基材への密着性、耐水性、耐溶剤性が良好となる。
【0023】
リン原子含有ビニル系単量体(C)の仕込み量は、混合物(M)の100質量%中、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。また、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。リン原子含有ビニル系単量体(C)の仕込み量が0.01質量%以上であれば、基材への密着性、耐水性、耐溶剤性が良好となる。リン原子含有ビニル系単量体(C)の仕込み量が10質量%以下であれば、基材への密着性、耐水性、耐溶剤性が良好となる。
【0024】
その他のビニル系単量体(D)の仕込み量は、混合物(M)の100質量%中、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましい。また、99.39質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
各成分の混合方法としては、例えば、下記の方法(I)〜(VI)が挙げられ、相溶性の点から、方法(V)が好ましい。
(I)反応生成物(A)と媒体の混合物に、水酸基含有ビニル系単量体(B)とリン原子含有ビニル系単量体(C)とその他のビニル系単量体(D)との混合物を連続滴下する方法。
(II)水酸基含有ビニル系単量体(B)と媒体の混合物に、反応生成物(A)とリン原子含有ビニル系単量体(C)とその他のビニル系単量体(D)との混合物を連続滴下する方法。
(III)リン原子含有ビニル系単量体(C)と媒体の混合物に、反応生成物(A)と水酸基含有ビニル系単量体(B)とその他のビニル系単量体(D)との混合物を連続滴下する方法。
(IV)その他のビニル系単量体(D)と媒体の混合物に、反応生成物(A)と水酸基含有ビニル系単量体(B)とリン原子含有ビニル系単量体(C)との混合物を連続滴下する方法。
(V)媒体に、反応生成物(A)と水酸基含有ビニル系単量体(B)とリン原子含有ビニル系単量体(C)とその他のビニル系単量体(D)との混合物を連続滴下する方法。
(VI)媒体と反応生成物(A)と水酸基含有ビニル系単量体(B)とリン原子含有ビニル系単量体(C)とその他のビニル系単量体(D)との一括で混合する方法。
【0026】
重合方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、非水ディスパージョン重合法等が挙げられ、重合の容易さ、分子量調整、塗料化時の容易さ等の点から、溶液重合法が好ましい。
また、加圧して重合を行う高温加圧重合法を採用できる。該方法によれば、重合開始剤の低減、反応時間の短縮等ができ、経済的である。
【0027】
溶液重合法を採用する場合の媒体としては、芳香族系溶剤(トルエン、キシレン、その他の高沸点の芳香族化合物等。)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等。)、ケトン系溶剤(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等。)、アルコール系溶剤(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等。)等が挙げられる。
媒体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
媒体の量は、混合物(M)の100質量部に対して、40〜1000質量部が好ましく、取り扱い性、輸送コスト等の点から、50〜100質量部がより好ましい。
【0028】
重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤が挙げられ、具体的には、有機過酸化物、アゾ系化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド等が挙げられる。
アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
重合の際には連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、2−メルカプトエタノール、n−ドデシルメルカプタン,t−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
重合温度は、室温〜200℃が好ましく、40〜170℃がより好ましい。重合温度が、該範囲内であれば、重合終了時の残存単量体の量を低減でき、反応を良好に進行できる。本発明における「室温」とは、15〜25℃を意味する。
【0031】
(重合体の特性)
本発明の製造方法で得られた重合体の水酸基価は、8〜50mgKOH/gが好ましく、15〜40mgKOHがより好ましい。水酸基が8mgKOH/g以上であれば、基材への密着性、耐水性、耐溶剤性が良好となる。水酸基が50mgKOH/g以下であれば、基材への密着性が良好となる。
本発明における「水酸基価」とは、重合に用いた各成分の仕込み比からビニル系共重合体1gに含まれる遊離の水酸基量を求め、これをアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要するKOH量(単位mg)を計算により算出した、理論水酸基価のことである。水酸基価は、重合に用いる各成分の仕込み比を調整することで、所望の値に制御できる。
【0032】
本発明の製造方法で得られた重合体の質量平均分子量は、5000〜100000が好ましい。質量平均分子量が5000以上であれば、塗膜の耐水性、耐溶剤性が良好となる。質量平均分子量が100000以下であれば、塗膜の外観が良好となり、また、塗装時の塗料固形分が適度なものとなる。
【0033】
以上説明した本発明の重合体の製造方法にあっては、反応生成物(A)と、水酸基含有ビニル系単量体(B)と、リン原子含有ビニル系単量体(C)と、その他のビニル系単量体(D)との混合物を、重合開始剤の存在下、媒体中で反応させる方法であるため、得られた重合体には特定のビニル系共重合体が含まれる。そのため、プラスチック基材、特にポリアミド基材に対して密着性に優れ、耐水性、耐溶剤性および外観が良好な塗膜を形成できる。
【0034】
<塗料用樹脂組成物>
本発明の塗料用樹脂組成物は、本発明の製造方法で得られた重合体と硬化剤とを含む。
【0035】
(硬化剤)
硬化剤としては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであればよく、芳香族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。また、これらのウレタンアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等であってもよい。
【0036】
硬化剤の具体例としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
また、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体であるビュレット体もしくはイソシアヌレート体、またはトリメチロールプロパンへのヘキサメチレンジイソシアネートの付加物を主成分とするイソシアネート化合物等であってもよい。また、加熱等によりイソシアネートが再生するそれらのブロック体であってもよい。
硬化剤の市販品としては、コロネートHX、コロネートHK、コロネートHL(以上、日本ポリウレタン社製)、スミジュールN−75、スミジュールN−3200(以上、住友バイエルウレタン社製)等が挙げられる。
硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
硬化剤の割合は、該硬化剤のイソシアネート基(NCO)と重合体の水酸基(OH)との比が、当量比でOH/NCO=0.1/1〜10/1となるような割合が好ましく、0.3/1〜5/1となるような割合がより好ましく、OH/NCO=0.5/3〜3/1となるような割合がさらに好ましい。OH/NCOの比が0.1/1以上であれば、耐溶剤性や耐水性により優れた塗膜を形成できる。OH/NCOの比が10/1以下であれば、乾燥性および塗膜硬度が良好な塗膜を形成できる。
【0038】
(希釈剤)
本発明の塗料用樹脂組成物には、希釈剤として有機溶剤等を適宜添加して、所望の粘度に調整してもよい。
希釈剤としては、溶液重合法を採用する場合の媒体として例示した溶剤の中から、1種以上を選択して用いることができる。また、外観および乾燥性等を考慮し、2種以上の溶剤を混合して、蒸発速度や溶解度等のパラメーターを調整することで、良好な性能を有する塗膜を形成できる。
【0039】
(触媒)
本発明の塗料用樹脂組成物には、必要に応じて重合体の水酸基と硬化剤のイソシアネート基とのウレタン化反応を促進させるための公知の触媒を添加してもよい。
触媒としては、有機錫化合物(ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫、ジメチル錫ビス(メチルマレエート)、ジメチル錫(エチルマレエート)、ジメチル錫(ブチルマレエート)、ジブチル錫(ブチルマレエート)、ジブチル錫(ドデシルベンゼンスルホネート)等。)等の架橋反応促進剤等が挙げられる。
触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(添加剤)
本発明の塗料用樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。
添加剤としては、アルミペースト、充填剤、可塑剤、顔料分散安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、レオロジーコントロール剤としての架橋樹脂粒子、無機顔料、有機顔料等が挙げられる。
無機顔料としては、チタン白、カーボンブラック等が挙げられる。有機顔料としては、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料等が挙げられる。無機顔料や有機顔料を添加する方法としては、通常の顔料分散方法が挙げられる。
【0041】
(他の重合体)
本発明の塗料用樹脂組成物には、必要に応じて、他の重合体を配合してもよい。
他の重合体としては、重合体と相溶性のある重合体が好ましく、アクリル系重合体(スチレン−アルキルアクリレート共重合体等。)、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアミド、アルキッド樹脂等が挙げられる。
他の重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他の重合体の配合量は、本発明の塗料用樹脂組成物の特徴を損なわない範囲であればよく、質量比で、重合体/他の重合体=10/90〜100/0が好ましい。
【0042】
(塗膜の形成方法)
本発明の塗料用樹脂組成物から架橋塗膜を形成する方法としては、塗料用樹脂組成物を目的の基材へ塗布し、架橋する方法が挙げられる。
塗布方法としては、スプレー塗装、刷毛塗り塗装、浸漬塗装、ロール塗装、流し塗装等が挙げられる。
塗膜を架橋させる架橋温度および架橋時間等は、重合体や硬化剤の種類や割合、触媒の有無、種類、割合等によって異なり、一概には決められないが、架橋温度は室温〜200℃が好ましく、架橋時間は3秒〜1週間が好ましい。
【0043】
本発明の塗料用樹脂組成物をプラスチック等の基材に塗布する場合、1コート、2コートのいずれの方法でもよい。
また、本発明の塗料用樹脂組成物がアルミペースト等を含む場合、メタリック外観および光沢を兼ね備えた1コートメタリック塗料として用いることができる。この場合、アルミペーストの添加量は、塗料用樹脂組成物に含まれる樹脂分100質量部に対して0.001〜50質量部が好ましい。
【0044】
以上説明した本発明の塗料用樹脂組成物は、本発明の製造方法で得られた重合体を含むため、外観を損なうことなく、各種基材、特にポリアミド基材に対して密着性に優れ、耐水性、耐溶剤性が良好な塗膜を形成できる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す「部」および「%」は、それぞれ、「質量部」および「質量%」を示す。
【0046】
(理論水酸基価)
重合体(P)の理論水酸基価は、重合に用いた各成分の仕込み比からビニル系共重合体1gに含まれる遊離の水酸基量を求め、これをアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要するKOH量(単位mg)として計算により求めた。
【0047】
(質量平均分子量)
重合体(P)の質量平均分子量は、測定サンプル0.05gを10mLのクロロホルムに溶解させ、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(島津製作所社製、LC−10Aシステム)において、カラム(昭和電工社製、K−806L)を用いて測定した。
【0048】
(密着性)
評価用塗板の塗膜に、カッターナイフにて1mm間隔で100マス(10×10)の碁盤目状に切れ目を入れ、碁盤目状の部分にセロテープ(登録商標)を貼着した。その後、セロテープ(登録商標)を急激に剥がし、塗膜の状態を観察して、下記の基準で評価した。
○:剥離無し。
△:1〜50マスの箇所にて塗膜が剥がれた。
×:51〜100マスの箇所にて塗膜が剥がれた。
【0049】
(耐水性(1):外観)
評価用塗板を水に浸漬させ、60℃で4時間保持し、耐水性試験を行った。その後、評価用塗板を取り出し、下記の基準にて塗膜の外観を目視評価した。
◎:塗膜に全く異常がみられない。
○:塗膜が極僅かに白化したが、状態は良好である。
△:塗膜が白化し、状態がやや不良であり、使用に耐えない。
×:塗膜が白化し、使用に耐えない。
【0050】
(耐水性(2):密着性)
評価用塗板を水に浸漬させ、60℃で4時間保持し、耐水性試験を行った。その後、塗膜に、カッターナイフにて1mm間隔で100マス(10×10)の碁盤目状に切れ目を入れ、碁盤目状の部分にセロテープ(登録商標)を貼着した。その後、セロテープ(登録商標)を急激に剥がし、塗膜の状態を観察して、下記の基準で評価した。
○:剥離無し。
△:1〜50マスの箇所にて塗膜が剥がれた。
×:51〜100マスの箇所にて塗膜が剥がれた。
【0051】
(耐溶剤性:外観)
評価用塗板表面にて、キシレン1gを浸漬させたガーゼを、1000gの荷重をかけた状態で5cmの長さで100往復させ、耐溶剤性試験を行った。その後、評価用塗板について、下記の基準にて塗膜の外観を目視評価した。結果を表2に示す。
○:塗膜に全く異常がみられない。
△:塗膜がやや軟化し、傷が残り、使用に耐えない。
×:塗膜が軟化し、下地が露出しており、使用に耐えない。
【0052】
〔製造例1〕
反応生成物(A−1):
5Lの4つ口フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレートの27.1部(モル比1)、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫の0.02部、ハイドロキノンモノメチルエーテルの0.05質量部を入れ、60℃で撹拌しつつ、イソホロンジイソシアネート(住友バイエル社製、デスモジュールI)の51.9部(モル比1)を4時間にわたって滴下した。滴下終了後、1時間保持した後、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルの21部(モル比1)を4時間にわたって滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応を続行し、ウレタン結合含有ビニル系単量体(A’)を含む反応生成物(A−1)を得た。
【0053】
〔実施例1〕
重合体(P−1):
冷却器、温度計、滴下ロートおよび撹拌機を備えた四つ口のフラスコ内に、溶剤としてトルエンの70部を仕込み、100℃に加熱した。ついで、表1に示す仕込み量の混合物(M)と、重合開始剤(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)の5部を均一に溶解した混合物を、フラスコ内の温度を100℃に保持しながら、フラスコ内に4時間かけて滴下した。その後、重合開始剤(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)の0.1部を30分間隔で4回、同温度のフラスコ内に投入し、1時間保持させた。
その後、固形分が50%となるようにトルエンを添加し、冷却させて、重合体(P−1)の溶液を得た。得られた重合体(P−1)の理論水酸基価および質量平均分子量を表1に示す。
【0054】
〔実施例2〜5〕
重合体(P−2)〜(P−5):
表1に示す仕込み量で、重合体(P−1)と同様にして、重合体(P−2)〜(P−5)の溶液を得た。得られた重合体(P−2)〜(P−5)の理論水酸基価および質量平均分子量を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表中の略号は下記の通りである。
2HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート、
P−1M:ライトエステル(共栄社化学社製、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート)、
MMA:メチルメタクリレート、
BMA:n−ブチルメタクリレート、
BA:n−ブチルアクリレート、
MAA:メタクリル酸。
【0057】
〔実施例6〕
塗料用樹脂組成物の調製:
重合体(P−1)の溶液の100部(固形分:50部)と、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成工業社製、デュラネートTPA−100、イソシアネート含有率:23.1%)の5部を混合した。これを、トルエン/キシレン/スーパーゾール#1500(新日本石油社製)/メチルエチルケトン=30/30/30/10(質量比)からなる混合溶媒にて、フォードカップ#4で12秒となるように調製し、塗料用樹脂組成物を得た。
なお、重合体(P−1)中の水酸基の量(OH)と、硬化剤中のイソシアネート基の量(NCO)との比は、当量比でOH/NCO=1/1であった。
【0058】
評価用塗板の作製:
ポリアミド6基材(三菱ガス化学社製、板厚:3mm、大きさ:9×5cm)を、イソプロピルアルコールを含浸させたガーゼで拭き、脱脂した。ついで、この脱脂したポリアミド6基材の表面に、塗装スプレーガンを用いて乾燥塗膜が20μmとなるように、塗料用樹脂組成物をスプレー塗布し、80℃で30分間乾燥させて塗膜を形成させ、評価用塗板を得た。
得られた評価用塗板について、密着性、耐水性および耐溶剤性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0059】
〔実施例7、比較例1〜3〕
重合体(P)として表2に示すものを用い、硬化剤の配合量を表2に示す量とした以外は、実施例6と同様にして塗料用樹脂組成物を調製し、ついで評価用塗板を作製した。
得られた評価用塗板について、密着性、耐水性および耐溶剤性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
表2から明らかなように、実施例6、7で得られた塗料用樹脂組成物から形成された塗膜は、ポリアミド基材に対する密着性が良好で、耐水性に優れていた。また、塗膜の外観も良好であった。これに対し、比較例1〜3で得られた塗料用樹脂組成物から形成された塗膜は、ポリアミド基材に対する密着性が実施例に比べて劣っていた。また、耐水性、耐溶剤性も満足できるものではなかった。さらに、塗膜の外観も実施例に比べて劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の製造方法で得られた重合体および塗料用樹脂組成物は、金属、木、紙、プラスチック等の基材へのコーティングに好適であり、家庭用電化製品のハウジング、大型構造物用、自動車用、自動車補修用、プラスチック形成品用、家具塗装等木工用等の塗料として、広い用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート化合物(a−1)のイソシアネート基と、水酸基含有ビニル系単量体(a−2)およびモノアルコール化合物(a−3)の水酸基とを反応させて得られた反応生成物(A)と、
水酸基含有ビニル系単量体(B)と、
リン原子含有ビニル系単量体(C)と、
その他のビニル系単量体(D)とを、重合開始剤の存在下、媒体中で反応させる重合体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法で得られた重合体と、硬化剤とを含む、塗料用樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−106190(P2010−106190A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281507(P2008−281507)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】