説明

重合体の製造方法

【課題】 本発明は、優れた耐熱性、透明性を有する光学材料に好適なN−アルキルマレイミド系重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】 一般式(1)で表されるN−アルキルマレイミド50〜100重量%およびその他共重合可能な単量体0〜50重量%からなる単量体混合物に油性媒体を添加し、懸濁安定剤の存在下に、油溶性ラジカル重合開始剤を用いて水性媒体中で懸濁重合することを特徴とするN−アルキルマレイミド系重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はN−アルキルマレイミド系重合体の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体を効率良く経済的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N−アルキルマレイミドから得られる単独重合体または共重合体(N−アルキルマレイミド系重合体)は、一般的な熱可塑性ビニル重合体と比べて高い耐熱性を示し、さらに透明性に優れた樹脂となることが知られており、光学分野における様々な用途に使用可能な透明樹脂として有望な材料である。(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
N−アルキルマレイミド系重合体は、ラジカル重合によって製造することができる。また、その製造方法は、塊状重合、乳化重合、溶液重合、懸濁重合等の従来公知の方法により製造することができる。しかしながら、塊状重合は除熱が困難であるために特殊な製造設備が必要であるという問題がある。また、乳化重合は乳化剤の除去が困難であり、重合体の透明性が損なわれるという問題がある。溶液重合では得られる重合体の分子量が比較的低く、高分子量の重合体を得るためには溶液中の単量体濃度を増大させることが有効であるが、生成した重合体が十分に溶解せずに系がゲル化する問題がある。懸濁重合は重合系の温度制御が容易であること、高分子量の重合体が得られること及び重合後の単量体の除去が比較的容易であることから、工業的に好ましい製造方法であるが、重合収率が溶液重合よりも劣るという問題がある。
【0004】
また、塩化ビニルの懸濁重合において、分子量調整剤としてトルエン等を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、N−アルキルマレイミド系重合体に関する記載がなく、また分子量調整剤を用いることにより高収率で重合体が得られることに関する記載もない。
【0005】
【非特許文献1】大津隆行著、未来材料、Vol.3、No.1(第74〜79頁)
【特許文献1】特開平8−208712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体を効率良く経済的に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、特定の油性媒体を添加した懸濁重合によるN−アルキルマレイミド系重合体の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるN−アルキルマレイミド50〜100重量%およびその他共重合可能な単量体0〜50重量%からなる単量体混合物に油性媒体を添加し、懸濁安定剤の存在下に、油溶性ラジカル重合開始剤を用いて水性媒体中で懸濁重合することを特徴とするN−アルキルマレイミド系重合体の製造方法に関するものである。
【0009】
【化1】

【0010】
(ここで、Rは炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐状アルキル基、あるいは炭素数3〜6の環状アルキル基を示す。)
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明における一般式(1)で表されるN−アルキルマレイミド中のRは炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐状アルキル基、あるいは炭素数3〜6の環状アルキル基を示し、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等が挙げられ、炭素数1〜12の分岐状アルキル基としては、例えばイソプロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、炭素数3〜6の環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、得られるN−アルキルマレイミド系重合体が耐熱性に優れるものとなること及び取扱い性が良好であることから、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基が好ましく、特にエチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基が好ましい。
【0012】
そして、具体的な一般式(1)で表されるN−アルキルマレイミドとしては、例えばN−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ペンチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−iso−ブチルマレイミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらの中でも、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドが好ましく、特にN−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミドが好ましい。
【0013】
本発明におけるその他共重合可能な単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル類;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバル酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−tert−ブチル、フマル酸ジシクロヘキシル等のフマル酸ジエステル類;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;無水マレイン酸;イタコン酸ジブチル等のイタコン酸ジアルキル類等が挙げられ、その中でもメタクリル酸メチル、スチレンが好ましい。
【0014】
本発明における一般式(1)で表されるN−アルキルマレイミドおよびその他共重合可能な単量体からなる単量体混合物の混合割合は、N−アルキルマレイミド50〜100重量%およびその他共重合可能な単量体0〜50重量%であり、その中でも特に耐熱性、透明性に優れたN−アルキルマレイミド系重合体が得られることから、好ましくはN−アルキルマレイミド60〜100重量%およびその他共重合可能な単量体0〜40重量%、特に好ましくはN−アルキルマレイミド90〜100重量%およびその他共重合可能な単量体0〜10重量%である。
【0015】
本発明の製造方法では、油性媒体を添加することにより効率よくN−アルキルマレイミド系重合体を製造できるものであり、該油性媒体としては、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、ケトンおよびハロゲン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好ましく、任意の割合で混合することができる。
【0016】
ここで芳香族炭化水素としては、例えばトルエン、キシレン等が挙げられ、エーテルとしては、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等が挙げられ、エステルとしては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられ、ケトンとしては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、ハロゲンとしては、例えばクロロホルム、1,2−ジクロロエタン等が挙げられる。これらの中でも油性媒体としては、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、ケトンが好ましく、特にトルエン、キシレン、ジイソプロピルエーテル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトンが好ましい。
【0017】
また、油性媒体の使用量は、本発明の製造方法が実施できる限りにおいて如何なる量の使用であってもよく、その中でも特に経済的に効率よく製造を行うことが可能となることから、単量体混合物100重量部に対して0.01〜70重量部が好ましく、さらに好ましくは0.02〜25重量部、特に好ましくは5〜25重量部である。
【0018】
本発明における懸濁安定剤としては、水溶性セルロース類、ポリビニル類、無機化合物類が好ましい。
【0019】
ここで、水溶性セルロース類としては、例えばメチルセルロース等のアルキルセルロース類;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース類;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース類等が挙げられ、その中でもヒドロキシアルキルセルロース類、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース類が好ましく、特にヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
【0020】
ポリビニル類としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等が挙げられ、その中でもポリビニルアルコールが好ましく、無機化合物類としては、例えば第三リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0021】
これらの中でも懸濁安定剤としては、水溶性セルロース類、ポリビニル類が好ましく、特にヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0022】
本発明における懸濁安定剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.02〜15重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは0.4〜1重量部である。
【0023】
本発明における油溶性ラジカル重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤が挙げられる。
【0024】
また、油溶性ラジカル重合開始剤の使用量は適宜設定することができ、単量体混合物100重量部に対して0.0001〜5重量部が好ましく、さらに好ましくは0.001〜2重量部であり、特に好ましくは0.1〜1重量部である。
【0025】
本発明における水性媒体としては、通常水性媒体として扱われているものでよく、例えば水、工業用水、イオン交換水、蒸留水等を挙げることができる。また、水性媒体の使用量は、単量体混合物100重量部に対して100〜400重量部が好ましく、特に好ましくは100〜250重量部である。
【0026】
本発明は、一般式(1)で表されるN−アルキルマレイミド50〜100重量%およびその他共重合可能な単量体0〜50重量%からなる単量体混合物に油性媒体を添加し、懸濁安定剤の存在下に、油溶性ラジカル重合開始剤を用いて水性媒体中で懸濁重合することを特徴とするN−アルキルマレイミド系重合体の製造方法である。
【0027】
ここで懸濁重合する際の重合温度は、油溶性ラジカル重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができ、一般的には40〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0028】
本発明のN−アルキルマレイミド系重合体の製造方法では、より透明性に優れたN−アルキルマレイミド系重合体が得られることから、懸濁重合により得られたN−アルキルマレイミド系重合体粒子を濾過後、重合体粒子を溶解させることなく懸濁安定剤を溶解させる溶剤で重合体粒子を洗浄すること及び/又は懸濁重合により得られたN−アルキルマレイミド系重合体を濾過後、重合体粒子を溶解させることなく未反応単量体(未反応のN−アルキルマレイミドおよび/又はその他共重合可能な単量体)を溶解させる溶剤で重合体粒子を洗浄することがより好ましい。ここで懸濁安定剤と未反応単量体を同一の溶剤で同時に除去することもでき、異なる溶剤で個別に除去することもできる。
【0029】
使用する溶剤は重合体が不溶でかつ懸濁安定剤及び/または未反応単量体が可溶な溶剤であれば特に限定されるものではなく、例えばメタノール、エタノール、メタノール/水、エタノール/水等が挙げられる。
【0030】
また、本発明においては必要に応じて、アルキルメルカプタンのような連鎖移動剤、さらにヒンダードフェノール系、リン系の酸化防止剤を重合初期、重合中あるいは重合後に使用しても良い。
【0031】
本発明で得られるN−アルキルマレイミド系重合体の数平均分子量に特に制限はなく、好ましくは1,000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜500,000、特に好ましくは30,000〜300,000である。
【0032】
このようにして得られたN−アルキルマレイミド系重合体は、透明性に優れ、各種光学材料、シート、フィルムなどに用いることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の製造方法により透明性に優れたN−アルキルマレイミド系重合体を効率良く経済的に製造することができる。
【実施例】
【0034】
本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下に実施例により得られたN−アルキルマレイミド系重合体の評価・測定方法を示す。なお、断りのない限り用いた試薬は市販品を用いた。
【0035】
〜数平均分子量〜
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー製、カラムGMHHR−H)を用い、THFを溶媒として、40℃で測定し、標準ポリスチレン換算から算出して求めた。
【0036】
〜透明性の評価方法〜
N−アルキルマレイミド系重合体の透明性を評価するために、溶液キャスト法で厚さ200μmのフィルムを作製し、ヘーズメーター(日本電色工業製、商品名NDH2000)を用い、ヘーズを測定した。
【0037】
実施例1
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)0.49g、蒸留水157g、N−ブチルマレイミド113g(0.74モル)、トルエン12.5gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.25g(0.0015モル)を入れ(単量体混合物100重量部に対して、油性媒体11.1重量部、懸濁安定剤0.43重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.2重量部、水性媒体139重量部)、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−ブチルマレイミド重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−ブチルマレイミド重合体を得た(収率:81%)。得られたN−ブチルマレイミド重合体の数平均分子量は220,000であり、ヘーズは0.6であった。
【0038】
これらの結果、油性媒体を用いたことから優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体が効率良く得られた。
【0039】
実施例2
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた300mLの4口フラスコに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)0.36g、蒸留水116g、N−エチルマレイミド50g(0.4モル)、トルエン12.5gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.14g(0.0008モル)を入れ(単量体混合物100重量部に対して、油性媒体25.0重量部、懸濁安定剤0.72重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.3重量部、水性媒体232重量部)、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−エチルマレイミド重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−エチルマレイミド重合体を得た(収率:80%)。得られたN−エチルマレイミド重合体の数平均分子量は205,000であり、ヘーズは0.7であった。
【0040】
これらの結果、油性媒体を用いたことから優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体が効率良く得られた。
【0041】
実施例3
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)0.49g、蒸留水157g、N−ブチルマレイミド113g(0.74モル)、メチルイソブチルケトン12.5gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.25g(0.0015モル)を入れ(単量体混合物100重量部に対して、油性媒体11.1重量部、懸濁安定剤0.43重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.2重量部、水性媒体139重量部)、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−ブチルマレイミド重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−ブチルマレイミド重合体を得た(収率:80%)。得られたN−ブチルマレイミド重合体の数平均分子量は180,000であり、ヘーズは0.7であった。
【0042】
これらの結果、油性媒体を用いたことから優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体が効率良く得られた。
【0043】
実施例4
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)0.49g、蒸留水157g、N−ブチルマレイミド113g(0.74モル)、酢酸ブチル12.5gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.25g(0.0015モル)を入れ(単量体混合物100重量部に対して、油性媒体11.1重量部、懸濁安定剤0.43重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.2重量部、水性媒体139重量部)、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−ブチルマレイミド重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−ブチルマレイミド重合体を得た(収率:79%)。得られたN−ブチルマレイミド重合体の数平均分子量は190,000であり、ヘーズは0.6であった。
【0044】
これらの結果、油性媒体を用いたことから優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体が効率良く得られた。
【0045】
実施例5
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、ポリビニルアルコール(日本合成化学製、商品名ゴーセノールKH−20)0.49g、蒸留水157g、N−ブチルマレイミド113g(0.74モル)、トルエン12.5gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.25g(0.0015モル)を入れ(単量体混合物100重量部に対して、油性媒体11.1重量部、懸濁安定剤0.43重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.2重量部、水性媒体139重量部)、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−ブチルマレイミド重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−ブチルマレイミド重合体を得た(収率:80%)。得られたN−ブチルマレイミド重合体の数平均分子量は210,000であり、ヘーズは1.5であった。
【0046】
これらの結果、油性媒体を用いたことから優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体が効率良く得られた。
【0047】
実施例6
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた300mLの4口フラスコに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)0.39g、蒸留水129g、N−プロピルマレイミド55.6g(0.4モル)、トルエン13.9gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.14g(0.0008モル)を入れ(単量体混合物100重量部に対して、油性媒体25.0重量部、懸濁安定剤0.70重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.3重量部、水性媒体232重量部)、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−プロピルマレイミド重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−プロピルマレイミド重合体を得た(収率:80%)。得られたN−プロピルマレイミド重合体の数平均分子量は187,000であり、ヘーズは0.6であった。
【0048】
これらの結果、油性媒体を用いたことから優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体が効率良く得られた。
【0049】
実施例7
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた300mLの4口フラスコに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)0.56g、蒸留水186g、N−イソプロピルマレイミド80g(0.575モル)、トルエン20gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.2g(0.00115モル)を入れ(単量体混合物100重量部に対して、油性媒体25.0重量部、懸濁安定剤0.70重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.3重量部、水性媒体233重量部)、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−イソプロピルマレイミド重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−イソプロピルマレイミド重合体を得た(収率:78%)。得られたN−イソプロピルマレイミド重合体の数平均分子量は52,000であり、ヘーズは0.7であった。
【0050】
これらの結果、油性媒体を用いたことから優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体が効率良く得られた。
【0051】
実施例8
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)0.5g、蒸留水167g、N−ヘキシルマレイミド72g(0.4モル)、トルエン18gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.14g(0.0008モル)を入れ(単量体混合物100重量部に対して、油性媒体25.0重量部、懸濁安定剤0.69重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.2重量部、水性媒体232重量部)、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−ヘキシルマレイミド重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−ヘキシルマレイミド重合体を得た(収率:81%)。得られたN−ヘキシルマレイミド重合体の数平均分子量は194,000であり、ヘーズは0.7であった。
【0052】
これらの結果、油性媒体を用いたことから優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体が効率良く得られた。
【0053】
実施例9
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)0.36g、蒸留水195g、N−オクチルマレイミド84g(0.4モル)、トルエン21gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.14g(0.0008モル)を入れ(単量体混合物100重量部に対して、油性媒体25.0重量部、懸濁安定剤0.43重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.2重量部、水性媒体232重量部)、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−オクチルマレイミド重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−オクチルマレイミド重合体を得た(収率:82%)。得られたN−オクチルマレイミド重合体の数平均分子量は187,000であり、ヘーズは0.6であった。
【0054】
これらの結果、油性媒体を用いたことから優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体が効率良く得られた。
【0055】
実施例10
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた300mLの4口フラスコに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)0.21g、蒸留水69.5g、N−ブチルマレイミド50g(0.33モル)、メチルメタクリレート1.01g(0.01モル)、トルエン5.6gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.117g(0.00067モル)を入れ(単量体混合物(N−アルキルマレイミド98重量%/その他の共重合可能な単量体2重量%)100重量部に対して、油性媒体11.0重量部、懸濁安定剤0.41重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.2重量部、水性媒体136重量部)、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−ブチルマレイミド−メチルメタクリレート共重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−ブチルマレイミド−メチルメタクリレート共重合体を得た(収率:76%)。得られたN−ブチルマレイミド−メチルメタクリレート共重合体の数平均分子量は209,000であり、ヘーズは0.7であった。
【0056】
これらの結果、油性媒体を用いたことから優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体が効率良く得られた。
【0057】
実施例11
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた300mLの4口フラスコに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)0.21g、蒸留水69.5g、N−ブチルマレイミド50g(0.33モル)、スチレン1.04g(0.01モル)、トルエン5.6gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.117g(0.00067モル)を入れ(単量体混合物(N−アルキルマレイミド98重量%/その他の共重合可能な単量体2重量%)100重量部に対して、油性媒体11.0重量部、懸濁安定剤0.41重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.2重量部、水性媒体136重量部)、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−ブチルマレイミド−スチレン共重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−ブチルマレイミド−スチレン共重合体を得た(収率:82%)。得られたN−ブチルマレイミド−スチレン共重合体の数平均分子量は269,000であり、ヘーズは0.7であった。
【0058】
これらの結果、油性媒体を用いたことから優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体が効率良く得られた。
【0059】
実施例12
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、ヒドロキシプロピルセルロース(和光純薬製)0.49g、蒸留水157g、N−ブチルマレイミド113g(0.74モル)、トルエン12.5gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.25g(0.0015モル)を入れ(単量体混合物100重量部に対して、油性媒体11.1重量部、懸濁安定剤0.43重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.2重量部、水性媒体139重量部)、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−ブチルマレイミド重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−ブチルマレイミド重合体を得た(収率:80%)。得られたN−ブチルマレイミド重合体の数平均分子量は214,000であり、ヘーズは0.6であった。
【0060】
これらの結果、油性媒体を用いたことから優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体が効率良く得られた。
【0061】
実施例13
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)0.49g、蒸留水157g、N−ブチルマレイミド113g(0.74モル)、キシレン12.5gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.25g(0.0015モル)を入れ(単量体混合物100重量部に対して、油性媒体11.1重量部、懸濁安定剤0.43重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.2重量部、水性媒体139重量部)、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−ブチルマレイミド重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−ブチルマレイミド重合体を得た(収率:82%)。得られたN−ブチルマレイミド重合体の数平均分子量は192,000であり、ヘーズは0.6であった。
【0062】
これらの結果、油性媒体を用いたことから優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体が効率良く得られた。
【0063】
実施例14
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)0.49g、蒸留水157g、N−ブチルマレイミド113g(0.74モル)、ジイソプロピルエーテル12.5gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.25g(0.0015モル)を入れ(単量体混合物100重量部に対して、油性媒体11.1重量部、懸濁安定剤0.43重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.2重量部、水性媒体139重量部)、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−ブチルマレイミド重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−ブチルマレイミド重合体を得た(収率:82%)。得られたN−ブチルマレイミド重合体の数平均分子量は176,000であり、ヘーズは0.7であった。
【0064】
これらの結果、油性媒体を用いたことから優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体が効率良く得られた。
【0065】
参考例1
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、油性媒体を用いずヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)0.46g、蒸留水149g、N−ブチルマレイミド80g(0.52モル)および油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.18g(0.0010モル)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら60℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合反応の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られたN−ブチルマレイミド重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄を行うことによりN−ブチルマレイミド重合体を得た(収率:59%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるN−アルキルマレイミド50〜100重量%およびその他共重合可能な単量体0〜50重量%からなる単量体混合物に油性媒体を添加し、懸濁安定剤の存在下に、油溶性ラジカル重合開始剤を用いて水性媒体中で懸濁重合することを特徴とするN−アルキルマレイミド系重合体の製造方法。
【化1】

(ここで、Rは炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐状アルキル基、あるいは炭素数3〜6の環状アルキル基を示す。)
【請求項2】
N−アルキルマレイミドが、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミドであることを特徴とする請求項1に記載のN−アルキルマレイミド系重合体の製造方法。
【請求項3】
油性媒体が、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、ケトンおよびハロゲン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のN−アルキルマレイミド系重合体の製造方法。
【請求項4】
懸濁安定剤が、水溶性セルロース類、ポリビニル類および無機化合物類からなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のN−アルキルマレイミド系重合体の製造方法。
【請求項5】
懸濁重合により得られたN−アルキルマレイミド系重合体粒子を濾過後、重合体粒子を溶解させることなく懸濁安定剤を溶解させる溶剤で重合体粒子を洗浄することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のN−アルキルマレイミド系重合体の製造方法。
【請求項6】
懸濁重合により得られたN−アルキルマレイミド系重合体粒子を濾過後、重合体粒子を溶解させることなく未反応単量体を溶解させる溶剤で重合体粒子を洗浄することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のN−アルキルマレイミド系重合体の製造方法。

【公開番号】特開2009−215346(P2009−215346A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57487(P2008−57487)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】