説明

重合体の製造方法

【課題】重合後の含水ゲル状重合体の装置内表面への付着やそれに伴う金属成分の溶出、製品の着色、並びに、重合体中に残存する単量体の量を充分に低減し、かつ品質の安定した製品を安価に効率よく製造することのできる方法を提供する。
【解決手段】重合性不飽和単量体を必須成分として含む単量体水溶液を重合し、次いで、得られる含水ゲル状重合体を処理する工程において、カニゼンメッキされた皮膜の上層に更にクロムメッキされた皮膜を有する内面構造を有する装置を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体の製造方法に関する。より詳しくは、増粘剤や凝集剤、吸水剤等として優れた機能を発揮し、各種工業製品の原料等として用いることのできる、水溶性または水不溶性水膨潤性重合体の製造方法であって、重合体中に残存する単量体の量、および、重合体中に含まれる金属量、並びに、重合体の着色度を充分に低減し、かつ品質の安定した製品を安価に効率よく製造することのできる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水溶性重合体は、増粘剤、粘着剤、凝集剤等として広く実用化され、医薬分野においても、湿布薬、パップ剤の粘着性や保水性向上を目的とした添加剤や親水性軟膏基材として使用されており、食品添加物として使用されるものもある。また、水不溶性水膨潤性重合体は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収物品の構成材として、さらには、農園芸用保水剤、工業用止水材等として、主に使い捨て用途に多用されている。これらの分野においては、特に、生体に悪影響を与える可能性が危惧される残存単量体や有害金属の量は極力低減されることが要求される。加えて、水溶性重合体においては、水不溶解分が少なく、水に対する溶解性に優れる高分子量の重合体が要求され、また、水不溶性水膨潤性重合体においては、水可溶分が少なく、無加圧下吸水倍率、加圧下吸水倍率、通液性、吸水速度等の吸収性能に優れる重合体が要求されているが、これらの物性値を同時に満足する重合体を製造することは困難であった。
【0003】
ところで、これら重合体の製法としては、塊状重合法、水溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、スラリー重合法等が挙げられるが、これらの中で、単量体として(メタ)アクリル酸(塩)(以下、「(メタ)アクリル酸および/またはその塩」ともいう)系単量体に代表される、水溶性の重合性不飽和単量体を主成分とする場合、最も汎用されているのは水溶液重合法である。即ち水溶液重合法によれば、重合性単量体の水溶液に周知のラジカル重合開始剤を添加し、必要により適度に加熱する(熱重合という)、あるいは近紫外〜紫外領域の波長の光を照射する(光重合という)ことによって、高重合度の重合体が含水ゲル状物として得られる。この含水ゲル状重合体を解砕機、押出機、カッター、混練機等を用いて細粒化し、次いで乾燥、粉砕を行なうことにより、粉末状にすることができる。そして、重合体が水溶性である場合、この粉末は水に添加すると容易に再溶解するので、増粘剤や粘着剤、凝集剤等として利用することができる。
【0004】
この様な重合体を製造する際、含水ゲル状重合体を取り扱う際に使用される各種装置機器(例えば、重合機、解砕機、押出機、カッター、混練機、乾燥機等)において、装置内部への含水ゲル状重合体の付着や滞留が起こると、物性品質が安定した製品を連続して得ることができなくなったり、装置材料から有害な金属成分が溶出して製品中に混入したり、あるいは、溶出した金属成分に由来する着色が生じたりするなどの問題がある。このような問題は、特に、解砕機、押出機、カッター、混練機等、含水ゲル状重合体に対して強い剪断力がかかるような装置においてより多く生じる。
【0005】
このような問題を解決するために、しばしば装置内の材質を全てステンレス(SUS)鋼としたり、内面を鏡面研磨処理したりする方法が採られる。例えば特許文献1には、高濃度含水ゲルシートから含水ゲル粒子を製造する方法において、ゲルの切断手段に用いる装置の刃の材料として、耐食性が要求される場合にはマルテンサイト系ステンレス(SUS440C、SUS420J2等)が好ましいことが開示されている。また特許文献2には、水溶性重合体含水ゲル小粒子の相互付着を防止しながら各種薬剤を混合撹拌する方法において、ゲルと接触する部分にステンレス鋼(SUS304)を用い、表面を300番のバフ研磨を施すことが開示されている。しかしながら、特に、解砕機、押出機、カッター、混練機等の装置においては、内部構造が非常に凹凸に富む複雑形状であるため、装置内部の全てに上記のような材料を使用したり処理を施したりすることは、装置のコストが高くなるだけでなく、加工自体が不可能な場合もある。
【0006】
一方、安価で加工しやすい材料として、一般に鉄製鋼材が用いられるが、このような材料を無垢の状態のままで用いた装置を使用して含水ゲル状重合体を取り扱うと、上述したようにゲルの付着や滞留が頻繁に生じ、金属成分がゲルに溶出したり、それによる着色が生じたりする。また材料に錆が生じたりすると、溶出や着色がより起こりやすくなってしまう。そのため、このような鋼材を使用する際には、その表面を各種メッキ処理したものがよく用いられる。
【0007】
上述の特許文献2には、ゲルと接触する部分にクロムメッキを施した金属を使用することが開示され、また特許文献3には、溶融ポリマーの押出成形用口金の流路面および/または押出面が、炭素を1.5〜4.5原子%含むクロムメッキで被覆することが開示されている。さらに特許文献4および5には、乾燥機内および混合槽内においてアクリルアミド系重合体含水ゲルの集積体が接触する部分にクロムメッキをした材質を使用することが開示されている。またさらに特許文献6には、水溶性樹脂フィルムを製造する際に水溶性樹脂溶液を塗布して乾燥するために使用する金属表面にクロムメッキを施すことが開示されている。
【0008】
ただし、クロムメッキ、特にハードクロムメッキは、一般に被メッキ物に電極板を近づけて処理する電解メッキのため、施工上、膜厚が不均一(尖った部分は薄く、隅の部分は厚く)となるため、例えば破砕刃のような寸法精度の必要なものや複雑な構造の被メッキ物への処理には適していない。
【0009】
一方、特許文献7には、含水ゲル状重合体を切断後、付着を防止するために付着性防止剤を追加して混合する際の混合装置内部の材料として、カニゼンメッキ、カニフロンメッキ、セラミックカニゼンメッキ等が例示されている。このカニゼンメッキ(無電解ニッケルメッキ)は、電気メッキではなく薬品によるメッキであり、複雑な構造でも膜厚を均一にできる。
【0010】
しかしながら、これらの各種メッキ、特に上述のクロムメッキ等は、通常ミクロの微細な孔が多数存在するため、金属を腐食しうる材料と接触した際に、構造材自体の金属成分が溶出してしまうことが起こりうるため、腐食防止を目的とするためには、膜厚をできるだけ厚くする、多層メッキを施す等の方法が必要となる。
【0011】
例えば特許文献8には、Zn−Niメッキを下層、Zn−Feメッキを上層とする二層メッキが、また特許文献9には、Znメッキを下層、真空Siメッキを上層とする二層メッキが、それぞれ耐食性向上の目的で施されることが開示されている。しかしながら、これらのメッキ処理を行なっても、含水ゲル状重合体、特に、単量体の主成分として(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を用いて重合して得られる含水ゲル状重合体を取り扱う場合、表面への付着や金属成分の溶出などの問題を解消するには不十分であった。
【0012】
一方特許文献10には、10μm以上のニッケルメッキ層の上に10μm以上のクロムメッキ層を設け、合計厚さを20〜100μmとした二層メッキが開示されている。ただしここでは、鋼ストリップの冷間圧延に使用される冷間圧延ロールを対象とし、それら金属同士の接触による耐摩耗性を向上させる目的のみが開示されているだけであり、化学薬品や樹脂、含水ゲル状重合体との接触による腐食性については何ら述べられていない。しかも、該文献中の記載を参照すれば、各層のメッキ厚はそれぞれ15μm以上あることが好ましく、実施例ではニッケルメッキ60μmとクロムメッキ40μmの組み合わせ、および、ニッケルメッキ15μmとクロムメッキ20μmの組み合わせが開示されており、メッキ処理にかかるコスト的にも問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−96448号公報
【特許文献2】特開昭60−129129号公報
【特許文献3】特開平5−24097号公報
【特許文献4】特開昭55−3432号公報
【特許文献5】特開昭56−79146号公報
【特許文献6】特開2006−225496号公報
【特許文献7】特開2007−77393号公報
【特許文献8】特開昭61−207955号公報
【特許文献9】特開平6−17232号公報
【特許文献10】特開昭60−196207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、従来、含水ゲル状重合体を解砕、混合するなどの工程を経て重合体を得る手段は種々検討されてはいたが、単量体の主成分として(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を用いて重合して得られる含水ゲル状重合体を取り扱う場合、装置内表面への付着やそれに伴う金属成分の溶出などの問題を解消するには、必ずしも満足できる方法ではない。
【0015】
例えば、上述のカニゼンメッキを施した装置では、上記のような問題が発生しにくく、所望の製品を得ることが可能である場合もあった。しかしながら、本発明者らが種々検討したところ、原料の単量体や中和剤の種類や量に起因する、原料水溶液およびそれを重合して得られる含水ゲル状重合体の酸塩基性度(pH)や、その他の原料中に含まれる金属腐食性成分(例えばハロゲン原子)の存在などにより、カニゼンメッキ単独処理の装置でも、装置内表面への付着やそれに伴う金属成分の溶出、製品の着色などの問題が起こることが判明した。
【0016】
すなわち、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水溶性または水不溶性水膨潤性重合体、特に、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を用いて重合して得られる該重合体を製造する際において、使用する原料の種類如何によらず、重合後の含水ゲル状重合体の装置内表面への付着やそれに伴う金属成分の溶出、製品の着色、並びに、重合体中に残存する単量体の量を充分に低減し、かつ品質の安定した製品を安価に効率よく製造することのできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は上記課題を解決するために、種々の反応条件、例えば、反応温度、反応時間、原料濃度、原料液のpH、種々の添加剤、重合開始剤、連鎖移動剤、加熱による静置水溶液重合法、光重合法、ゲルの乾燥条件等について、これらのあらゆる組み合わせによる条件について鋭意検討を加えた。その結果、単量体を重合して得られた含水ゲル状重合体を取り扱う装置の表面に、カニゼンメッキされた皮膜の上層に更にクロムメッキされた皮膜を有する内面構造を有する装置を使用することによって、装置内表面への付着やそれに伴う金属成分の溶出、並びに、製品の着色が低減できることを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
すなわち、上記課題を解決するための、本発明の重合体の製造方法は、重合性不飽和単量体を必須成分として含む単量体水溶液を重合し、次いで、得られる含水ゲル状重合体を処理する工程を含む、重合体の製造方法において、該含水ゲル状重合体を処理する工程で、カニゼンメッキされた皮膜の上層に更にクロムメッキされた皮膜を有する内面構造を有する装置を使用し、該含水ゲル状重合体を処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、使用する原料の種類如何によらず、重合後の含水ゲル状重合体の装置内表面への付着やそれに伴う金属成分の溶出、製品の着色、並びに、重合体中に残存する単量体の量を充分に低減し、かつ品質の安定した重合体を安価に効率よく製造することのできる。
【0020】
本発明の製造方法により得られる重合体は、このように高品質のものであることから、医薬用、塗料用、土木・建築用、使い捨て吸収物品用、農園芸用、その他一般工業用において、増粘剤、粘着剤、凝集剤、吸水剤、保水材、吸湿剤、乾燥剤、止水剤、表面改質剤等として種々の分野で多岐にわたって好適に使用することができる。更に、粘度や残存する単量体の量等においてより高品質のものが求められる増粘剤やほぐれ促進剤等として食品用や飼料用の食品添加物、飼料添加物等として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明の製造方法は、重合反応で得られる含水ゲル状重合体を特定の内部表面構造を有する装置を使用して処理する点に特徴を有する。詳しくは、重合性不飽和単量体を必須成分として含む単量体水溶液を重合し、次いで、得られる含水ゲル状重合体を処理する工程を含む、重合体の製造方法において、該含水ゲル状重合体を処理する工程で、カニゼンメッキされた皮膜の上層に更にクロムメッキされた皮膜を有する内面構造を有する装置を使用し、該含水ゲル状重合体を処理することを特徴とする、重合体の製造方法である。
【0023】
(1)単量体
本発明の方法で得られる有利な重合体は、重合性不飽和単量体を必須成分として含む単量体水溶液を重合して得られる、好ましくは、水溶性の重合性不飽和単量体を必須成分として含む単量体水溶液を重合して得られる、水溶性重合体または水膨潤性水不溶性重合体である。
【0024】
本発明では、単量体として、重合性不飽和単量体を必須に用いる。これらの単量体のうち、酸基を含有する重合性不飽和単量体を必須成分とすると、酸基の解離によって大きな浸透圧が発現するため、得られる重合体の水溶性能や吸水特性の点で非常に優れるため好ましい。本発明で規定する酸基としては、特に限定されないが、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基等が挙げられる。
【0025】
これら酸基含有不飽和単量体としては、好ましくは不飽和二重結合を有する単量体(エチレン性不飽和単量体)のうち、酸基を含有する単量体である。具体的には、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸および/またはそれらの塩が挙げられ、これらの単量体のうち1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。中でも、水溶性能や吸水特性の点で、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/またはそれらの塩が好ましく、(メタ)アクリル酸および/またはその塩がさらに好ましく、アクリル酸および/またはその塩が特に好ましい。すなわち、本発明で得られる重合体としては、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を必須成分とした単量体を重合して得られる、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系重合体が好ましく、アクリル酸(塩)系単量体を必須成分とした単量体を重合して得られる、ポリアクリル酸(塩)系重合体が特に好ましい。
【0026】
また、その繰りかえし単位中(ただし後述の架橋剤を除く)に、単量体としての(メタ)アクリル酸および/またはその塩を、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、さらにより好ましくは60〜100モル%、特に好ましくは70〜100モル%、最も好ましくは70〜100モル%含む。
【0027】
本発明の重合体を得るにあたっては、全単量体成分中に(メタ)アクリル酸(塩)を必須に含有することが好ましく、この場合、(メタ)アクリル酸(塩)以外の他の不飽和単量体を0〜70モル%、好ましくは0〜40モル%使用できる。必要により含有させることのできる共重合性単量体としては、具体的には、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有重合性単量体;ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸、3−(メタ)アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有重合性単量体;N−ビニル−2−ピロリドン;N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、第3級ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の親水性不飽和単量体類、並びにそれらの塩;アクリロニトリル等のニトリル系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン等の疎水性単量体等が例示され、これらは必要により2種以上含むものであってもよい。なお、水溶性重合体を製造する場合においては、これらの共重合性単量体のうち、疎水性の単量体は重合体の水溶性を阻害する傾向があるので、好ましくは親水性の共重合性単量体を使用するのがよく、これらの中で特に好ましいのは、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有重合性単量体である。
【0028】
単量体の酸基は、未中和(すなわち、中和率(中和度ともいう)0モル%)であってもよく、一価および/または二価以上のカチオンで中和されていてもよいが、好ましくは一価塩として中和されることが好ましい。中和率は、好ましくは0〜105モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらにより好ましくは50〜99モル%、最も好ましくは60〜90モル%の範囲である。なお、水溶性重合体を製造する場合、中和率は好ましくは80〜103モル%、より好ましくは90〜101モル%である。ここで、中和率とは、重合体が有する酸基と中和された形態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された形態の基の含有割合である。
【0029】
上記中和された形態の基とは、酸基における解離し得る水素イオンが他のカチオンで置換された基である。したがって、例えば、アクリル酸(塩)系重合体を形成する単量体成分がアクリル酸をxモル、アクリル酸の塩としてアクリル酸ナトリウムをyモル、ノニオン性単量体をnモル含むとし、これらがすべて重合したとする場合、ノニオン性単量体がイオン性ではなく、中和された形態ではないために、中和度は下記式により求められることになる。
【0030】
【数1】

【0031】
上記式において、分母はアクリル酸(塩)系重合体の製造に使用した酸基量と中和された形態の基量とのモル数としての和である。分子は中和された形態の基量と中和点を越えて存在する余剰のカチオンとのモル数としての和である。上記式により中和度(中和された形態の基の含有割合)をモル%として得ることができる。
【0032】
一価塩としては、好ましくはアルカリ金属塩、アンモニウム塩およびアミン塩を挙げる事ができる。より好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩およびアンモニウム塩である。特に好ましくはナトリウム塩である。
【0033】
中和に用いられる塩基性物質としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物や、炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)カリウム等の炭酸(水素)塩、アンモニア等の一価の塩基性物質が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0034】
上記中和は、重合後の重合体(含水ゲル状重合体)に塩基性物質を添加することで行ってもよく、重合前の単量体水溶液を調製する際に単量体として塩の形態の単量体を使用して重合を行ってもよく、単量体水溶液の重合の途中に行ってもよいが、生産性や物性の向上等の観点から、中和された単量体を使用する、すなわち、酸基含有不飽和単量体の(部分)中和塩を単量体として使用して重合することが好ましく、アクリル酸(部分)中和塩を単量体として使用して重合することが特に好ましい。
【0035】
上記中和に従い、本発明における単量体水溶液、および、それを重合して得られる含水ゲル状重合体のpHは、9以上であることが好ましく、具体的には、pH9〜13の範囲であることが好ましく、pH10〜12の範囲であることがより好ましい。なお、pHが13を超えると、重合時間が延びて生産性が低下する可能性がある。
【0036】
(2)架橋剤およびその他添加剤
これらの単量体を主成分とする単量体水溶液を重合することにより得られる重合体は、架橋剤を使用せず、かつ、重合体同士の自己架橋が起こらない条件下で重合反応した場合には、水溶性の重合体となり、一方、架橋剤を使用するか、あるいは、自己架橋を起こさせるような条件下で重合反応した場合には、水膨潤性水不溶性の重合体となる。
【0037】
水膨潤性水不溶性重合体を得るにあたって使用できる架橋剤としては、例えばN,N’−メチレンビスアクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリオキシエチレン)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(β−アクリロイルオキシプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(β−アクリロイルオキシプロピオネート)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン等の分子内に重合性二重結合を少なくとも2個有する化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のポリオール類;等のカルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る化合物の1種または2種以上を例示できる。
【0038】
架橋剤を使用する場合には、得られる重合体の吸収特性等を考慮して分子内に重合性二重結合を少なくとも2個有する化合物を必須に用いることが好ましい。架橋剤は物性面から、前記単量体に対して好ましくは0〜5モル%、より好ましくは0.001〜2モル%で使用される。
【0039】
また本発明では、必要に応じて、消臭剤、抗菌剤、香料、二酸化珪素及び酸化チタン等の無機粉末、澱粉及びセルロース等の多糖類及びその誘導体、ポリビニルアルコール等の親水性高分子、ポリエチレン及びポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、可塑剤、次亜リン酸(塩)等の連鎖移動剤等を単量体に対して5質量%以下、好ましくは1質量%以下含むことができる。また、重合開始時の単量体、重合途中ないし重合後の含水ゲルに対して、吸水性樹脂や水溶性樹脂、例えば、澱粉及びセルロース等の多糖類及びその誘導体、ポリビニルアルコール等を0〜50質量%、さらには0.1〜30質量%(対単量体)で存在させてもよく、グラフト重合体やそれら高分子との組成物としてもよい。
【0040】
また本発明においては、好ましくは、重合性単量体中の60モル%以上が(メタ)アクリル酸(塩)である重合反応原料液中に、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、単糖、糖アルコール、オリゴ糖および鹸化度70%以上のポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の水溶性化合物(以下、これらの化合物を水溶性化合物(A)ということもある。)を、該重合性単量体に対して0.3〜1.5質量%共存させて重合してもよい。
【0041】
本発明を実施する際に、特に水溶性重合体を製造する際において、重合反応原料液中に共存させる水溶性化合物(A)は、重合速度を低下させることなく、しかも重合反応末期に枝分かれや架橋反応を起こさせることなく水溶性の非常に優れた高重合度物であり、水不溶成分や残存単量体の量が充分低減された重合体を生成させるうえで最も重要な添加剤である。水溶性化合物(A)の具体例としてとしては、以下に示す如く、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物が例示される。
【0042】
即ち、水溶性化合物(A)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、単糖(たとえばアラビノース、キシロース等のペントース;ガラクトース、グルコース、マンノース、フルクトース等のヘキソース;6−デオキシグルコース、6−デオキシタロース等のデオキシヘキソース;グルクロン酸、ガラクツロン酸等のウロン酸等)、糖アルコール(たとえばエリトール、アラビニトール、キシリトール、ソルビトール、ガラクチトール、マンニトール、ボレミトール、オクチトール等)、オリゴ糖(たとえばスクロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、アガロビオース等の二糖;マルトトリオース等の三糖;マルトテトラオース等の四糖等)および鹸化度が70%以上(好ましくは95%以上)のポリビニルアルコールが挙げられ、これらは単独で使用してもよく或は2種以上を併用することもできる。これらの中でも特に好ましいのは、主たる重合性単量体となる(メタ)アクリル酸((塩))に対して優れた相溶性を示すエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンおよび糖アルコール類である。特に好ましいのは、食品添加物として認められ、人体に対する安全性の高いグリセリンである。
【0043】
また、該水溶性化合物(A)の添加量は、原料の重合性単量体に対し0.3〜1.5質量%の範囲に設定することが好ましい。添加量が1.5質量%を超える場合は、重合体中に残存する単量体の量が0.5質量%を超えるようになるが、本発明の熱処理によって残存単量体の低減は可能である。しかし、出来る限り含水ゲル中の残存単量体濃度が低いほど、本願発明の効果が高くなることは自明である。一方、水不溶解分については0.1質量%程度以下となり、充分低減された重合体を得ることができる。該水溶性化合物の添加量が、0.3質量%未満の場合は、重合体中に残存する単量体の量については、0.1質量%程度以下の充分残存単量体の低減された重合体を得ることができる。しかし、水不溶解分については1.0質量%程度以上となる。以上より、本発明の目的の一つである、重合体中に残存する単量体の量が充分に低減され、しかも水不溶解分も充分に低減された水に対する溶解性に優れる高粘度の(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体を得るためには、該水溶性化合物(A)の添加量は、原料の重合性単量体に対し、0.3〜1.5質量%の範囲に設定することが好ましく、0.3〜1.0質量%の範囲に設定することがより好ましい。このようにすることにより、残留単量体が0.5質量%以下、かつ水不溶解物の量が0.3質量%以下の水溶性重合体が得られることになる。
【0044】
上記のとおり、本発明で得られるアクリル酸(塩)系水溶性重合体は、不溶解物が、0.3質量%以下のものでもある。このような範囲とすることで、水不溶解分を可溶化すると共に高粘度化を図ることができるため、得られるアクリル酸(塩)系水溶性重合体は、分子量が高く、高粘度且つ低不溶解分のものとなり、各種用途に好適に用いることができる、優れた品質を有するものとなる。例えば、パップ剤として使用した場合には、少ない使用量でアクリル酸(塩)系水溶性重合体の作用効果を充分に発揮することが可能となり、より均質な膏体が得られることとなる。
【0045】
本発明でいう残存単量体濃度(残存モノマー濃度)とは、食品添加物公定書第7版436、437頁、又は、飼料添加物の成分規格等収載書第10版239、240頁に記載のポリアクリル酸ナトリウム、純度試験の項に記載の以下の方法で測定されるものである。
【0046】
(残存モノマーの測定方法)
含水ゲルの場合は固形分換算で約1gのゲルを、また、最終的な製品形態である粉状の場合は粉末として約1gを精密に量り、300mlのヨウ素瓶に入れ、水100mlを加え、時々振り混ぜながら約24時間放置して溶かす。この液に臭素酸カリウム・臭化カリウム試液10mlを正確に量って加え、よく振り混ぜ、(塩)酸10mlを手早く加え、直ちに密栓して再びよく振り混ぜた後、ヨウ素瓶の上部にヨウ化カリウム試液約20mlを入れ、暗所で20分間放置する。次に栓を緩めてヨウ化カリウム試液を流し込み、直ちに密栓をしてよく振り混ぜた後、0.1mol/lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する(指示薬 デンプン試液2mL)。別に同様の方法で空試験を行い、次式により含量を求める。
【0047】
【数2】

【0048】
ただし、a:空試験における0.1mol/lチオ硫酸ナトリウム溶液の消費量(ml)
b:本試験における0.1mol/1チオ硫酸ナトリウム溶液の消費量(ml)
また、本発明でいう水不溶解分とは以下の方法により算出される。
【0049】
(水不溶解分の算出方法)
容量500mlのビーカーに、イオン交換水500gを入れ、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、このイオン交換水に、含水ゲル状重合体の乾物1gをママコができないように添加する。次にこの混合物を、ジャーテスターを用いて30℃で2時間撹拌(100rpm)した後、32メッシュのフィルタを用いて濾過することにより、含水状態の不溶物を取り出す。そして、この不溶物を乾燥しないように直ちに(1分以内に)秤量し、下記計算式(1)に基づいて不溶解分を算出する。なお、上記濾過及び秤量は、25℃、相対湿度60%の状態で行う。
不溶解分(質量%)={不溶物の質量(g)/500(g)}×100 (1)
製品として、乾燥粉体形態の重合体を得るには、処理工程としては、図1に示すように、重合、押出(またはゲル解砕)、乾燥、粉砕、分級の順に、これらの工程を含むことが好ましい。すなわち、重合工程と乾燥工程との間に、押出、解砕、および/または各種添加剤との混合を目的とした混練の工程を設けて、重合により得られた含水ゲル状重合体を細粒化することが好適である。ここで、重合工程とは、重合開始剤の存在下、単量体成分を水溶液重合することにより、例えば、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体成分を重合する工程であり、押出、解砕、混練工程は、該重合工程で得られた含水ゲル状重合体(以下、単に「ゲル」、「ベースゲル」、「含水ゲル」とも言う)を比動力をかけながら、その後の乾燥工程においてゲルが乾燥されやすいように解砕する工程である。乾燥工程は、解砕された含水ゲルを乾燥させる工程であり、粉砕工程は、その乾燥物を一定の大きさ(粒度)に砕く工程であり、このようにして得られた粉粒体を次の分級工程で分級することにより、種々の分野に好適に使用できる重合体が得られることとなる。
【0050】
本発明の製造方法における重合工程、押出・解砕・混練工程、乾燥工程、粉砕工程及び分級工程について、以下に更に説明する。
【0051】
(3)重合工程
重合工程では、上述したように、重合性不飽和単量体、特に(メタ)アクリル酸及び/又はその塩により構成される(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を必須とする単量体成分を重合することとなる。上記含水ゲル状重合体は、このようにして得られる重合体により形成される、水を含んでなるゲル状物である。
【0052】
重合方法としては、一般に、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、スラリー重合法、水溶液重合法があるが、本発明では水溶液重合法が好ましく採用される。
【0053】
その際の重合の形態としては、特に限定されないが、静置重合による方法が好ましく、回分式でも連続式でもよく、注型重合法やベルト重合法が採用できる。なお、水不溶性水膨潤性重合体の製造に関しては、連続ベルト重合(米国特許第4893999号、同第6241928号、米国特許出願公開第2005/215734号等)、連続ニーダー重合、バッチニーダー重合(米国特許第6987151号、同第6710141号等)が好ましく適応される。
【0054】
いずれも重合時の単量体濃度としては、20〜60質量%とすることが好ましい。より好ましくは、25〜55質量%であり、更に好ましくは、30〜50質量%である。なお、上記の反応液中の単量体成分の濃度は、重合に使用する全単量体成分を含む反応液(溶媒の水を含む)の質量に対する質量比として求めたものである。
【0055】
静置重合法の1つの形態であるベルト重合法は、エンドレスベルト上に、熱分解型もしくは光分解型重合開始剤を添加した単量体水溶液を導入して、加熱や光照射(好ましくは紫外線照射)により重合を開始させ、連続的に製品を製造できる好ましい方法であり、その一例として、図3で示すベルト重合機を用いた重合反応は、本発明の好ましい形態の一つである。
【0056】
なお、ベルト重合機を用いた光重合による重合方法については、本発明者らが先に出願した、特開2010−155901号公報、および、特願2010−164241号明細書に詳細に記載しており、本発明においてもこの方法がそのまま好適に採用できる。
【0057】
本発明で使用される重合開始剤は、重合の形態によって適宜選択される。このような重合開始剤として、例えば、光分解型重合開始剤及び熱分解型重合開始剤、レドックス系重合開始剤等を例示できる。
【0058】
光分解型重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等を例示できる。具体的には、上記した先の出願(特願2010−164241号明細書)に記載した各種化合物が挙げられ、これら光分解型重合開始剤の中でも、アゾ系水溶性化合物、特に、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)及びその塩酸、硫酸、酢酸塩、並びに、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が好ましい。また熱分解型重合開始剤としては例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物、等を例示できる。レドックス系重合開始剤としては、例えば、前記過硫酸塩及び過酸化物に、L−アスコルビン酸や亜硫酸水素ナトリウムのような還元性化合物を併用し両者を組み合わせた系を例示できる。また、上記光分解型開始剤や熱分解型重合開始剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用して使用してもよい。またさらに、光分解型開始剤と熱分解型重合開始剤を併用することも好ましい。
【0059】
上記重合開始剤の使用量としては、重合に使用される単量体成分1モルに対して、0.0001〜1g、さらには0.001〜0.5gであることが好ましい。これにより、重合体の重量平均分子量や重合率を充分に高いものとすることができる。重合時の反応液の最高温度は150℃以下、好ましくは120℃、より好ましくは110℃以下となるように重合を制御することが好ましい。
【0060】
なお、本発明で特に水溶性重合体を製造する際や、また、特許文献7に開示されているような比較的大粒子で形状が整った吸水性樹脂を製造する際においては、重合時に急激な発熱が起こったり重合ピーク温度が高くなりすぎたりすると、重合ゲルの発泡、重合体の枝分かれ、自己架橋、もしくは分子量分布の増大等の好ましくない副反応が生じてしまい、安定した品質の製品を高収率で効率よく製造することができなくなる恐れがあるため、反応温度をできるだけマイルドな条件にして行なうことが好ましい。このため、熱分解型重合開始剤を使用した加熱による重合反応を採用してもよいが、この場合、重合時間が長くなって生産性が低下する等の問題が起こりうるため、光分解型重合開始剤を使用した光重合を採用することがより好ましい。
【0061】
従って、本発明における好ましい含水ゲル状重合体には、光分解型重合開始剤由来のハロゲン原子が含有されることが好ましく、中でも、塩酸塩型の光分解型重合開始剤由来の塩素原子が含まれることが好ましい。
【0062】
光重合する際の重合開始温度としては0〜30℃が好ましく、重合液のピーク温度は70℃以下に抑制することが好ましい。重合液のピーク温度が70℃を超えると、重合反応が過度に進行することとなり、得られる重合体の粘度が充分に高いものとならないおそれがある。より好ましくは、65℃以下であり、更に好ましくは、60℃以下である。重合液のピーク温度の下限としては、粘度が充分なものとなる温度であればよく、25℃以上であることが好ましい。より好ましくは、30℃以上であり、更に好ましくは、35℃以上である。なお,上記ピーク温度は、通常、上記初期の近紫外線の照射において達成されるものであるが、ピーク温度に達する時期的制限はない。
【0063】
上記重合液のpHとしては、重合反応が好適に進行する限り特に限定されない。例えば、pHが11以上であってもよく、この場合、重合液のpHの調整が容易であるため好ましい。しかし、残存単量体量を極力低下するためには、重合液のpHを9.0以上とすることが好ましく、具体的に好ましくはpH9.0〜13.0、より好ましくはpH9.5〜11.0である。
【0064】
上記重合方法においてはまた、上記重合開始剤とともに連鎖移動剤を併用することもできる。適当量の連鎖移動剤を使用することにより、質量平均分子量がより大きな重合体を製造することができ、その結果、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。
【0065】
上記連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸、チオ酢酸、メルカプトエタノール等の含硫黄化合物;亜燐酸、亜燐酸ナトリウム等の亜燐酸系化合物;次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム等の次亜燐酸系化合物;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類が好適である。これらの中でも、次亜燐酸系化合物が好ましい。より好ましくは、次亜燐酸ナトリウムである。上記連鎖移動剤の使用量としては、重合濃度や重合開始剤との組み合わせ等により適宜設定すればよいが、重合に使用される単量体成分1モルに対して、0.0001g以上が好ましく、また、0.2g以下が好ましい。また、更に好ましくは、0.001g以上であり、また、0.15g以下であり、特に好ましくは、0.005g以上であり、また、0.10g以下である。
【0066】
上記重合溶媒としては、水が好適に用いられる。また、水以外にも親水性有機溶媒等を適宜併用してもよい。親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン等のケトン類、低級エーテル類等が好適である。
【0067】
光照射による水溶液重合においては、例えば、窒素ガスをバブリングする等の方法により、水溶液中に溶解している溶存酸素を予め除去した状態で重合を行うことが好ましい。
【0068】
(4)押出・解砕・混練工程
重合で得られた含水ゲル状重合体はそのまま乾燥を行っても良いが、水溶液重合の場合、必要によりゲル解砕機や押出機等を用いて細断、細粒化された後乾燥される。また、含水ゲル状重合体の乾燥前に各種添加剤を混合してもよく、その際に用いられる混練機内で混合と同時にゲルを細断、細粒化することもできる。このように、水溶液重合により得られる含水ゲル状重合体は、所定の方法によって質量平均粒子径(湿式篩分級で規定)で約0.1mm〜約50mm、さらには0.2〜10mm、より好ましくは0.5〜5mm程度の破片に砕断して、後の乾燥工程に供して乾燥させることができる。
【0069】
従って、細粒化は種々の方法で行なうことができるが、例えば、任意形状の多孔構造を有するスクリュー型押出機から押し出して解砕する方法を例示できる。
【0070】
押出機においては、上述したように、重合工程で得られた重合体のゲル状物を比動力をかけながら押し出しすることとなる。上記工程において解砕された含水ゲルの形態としては特に限定されないが、例えば、顆粒状、ペレット状、紐状等が好適であり、その大きさもまた特に限定されない。これらの解砕された含水ゲルは、押出機の中で空気を含んで多孔質化するので、乾燥性が向上することになる。解砕された含水ゲルは、乾燥すると軽量化されるので、輸送や保存等に有利となる。
【0071】
ここで、含水ゲル状重合体を取り扱う際、特に、含水ゲル状重合体を解砕、混合する際に使用される各種装置は、該して、その内部構造上、螺旋形状や多数の凹凸形状を有する、または、切断、混合用の回転刃を複数有する回転軸が、一つ以上設置されてなる複雑な内面形状となっている。これらの装置を用いて含水ゲル状重合体を取り扱うと、含水ゲルの粘着性ゆえに、装置内部、具体的には例えば、回転軸表面の凹部、刃と刃の間、軸と軸の間、軸と装置内壁の間等に、含水ゲルの小塊が付着、滞留する場合がある。これを防ぐ目的で、該装置内の含水ゲルと接触する表面を各種メッキ処理する方法が用いられ、ニッケルメッキやクロムメッキが好ましく採用される。特に、カニゼンメッキとして知られる無電解ニッケルメッキは、メッキ皮膜のピンホールも少なく、複雑形状の材質に対しても均一な膜厚のメッキ皮膜を形成できる点で好ましい。
【0072】
しかしながら、上記したように、上述のカニゼンメッキを施した装置を用いても、含水ゲル状重合体の装置内表面への付着に伴う金属成分(Ni)の溶出、および、製品の着色、並びに、重合体中に残存する単量体の量の増加、といった問題が発生してしまうことがあった。
【0073】
このため、本発明者等は、種々の反応条件、例えば、反応温度、反応時間、原料濃度、原料液のpH、種々の添加剤、重合開始剤、連鎖移動剤、加熱による静置水溶液重合法、光重合法、ゲルの乾燥条件等について、これらのあらゆる組み合わせによる条件を変更することによって、上記問題の発生原因について検討を加えた。
【0074】
上記問題の発生原因については、具体的には例えば、以下の点が挙げられる。一つは、重合を円滑に進行させるために、原料の単量体や中和剤の種類や量を変更する場合、それらに起因して、原料水溶液およびそれを重合して得られる含水ゲル状重合体の酸塩基性度が変化する。特にこのときのpHが9以上である場合において、装置内に含水ゲル状重合体が長期間滞留してしまうと、金属成分の溶出とそれに伴う製品の着色が発生することが判明した。また他には、その他の原料中に含まれる金属腐食性成分(例えばハロゲン原子)が存在すると、それによっても同様の問題が起こることが判明した。すなわち、上述したような本発明における好ましい重合形態、具体的には例えば、単量体水溶液およびそれを重合して得られる含水ゲル状重合体のpHが9以上である場合、および/または、好ましい重合反応である光重合を進行させるために必要な光分解型重合開始剤の添加に由来するハロゲン原子を含有する場合、等において、このような問題が生じやすくなることが判明した。
【0075】
そこで、この問題の解決方法についてさらに鋭意検討を加えた結果、含水ゲル状重合体を取り扱う装置の表面に、カニゼンメッキされた皮膜の上層に更にクロムメッキされた皮膜を有する内面構造を有する装置を使用することによって、装置内表面への付着やそれに伴う金属成分の溶出、並びに、製品の着色が低減できることを見出した。
【0076】
すなわち、上記課題を解決するための、本発明の重合体の製造方法は、重合性不飽和単量体を必須成分として含む単量体水溶液を重合し、次いで、得られる含水ゲル状重合体を処理する工程を含む、重合体の製造方法において、該含水ゲル状重合体を処理する工程で、カニゼンメッキされた皮膜の上層に更にクロムメッキされた皮膜を有する内面構造を有する装置を使用し、該含水ゲル状重合体を処理することを特徴とする。
【0077】
本発明において行なわれるカニゼンメッキは、メッキ液に含まれる還元剤の酸化によって放出される電子により、液に含浸することで被メッキ物に金属ニッケル皮膜(Ni−P合金皮膜)を析出させる無電解メッキの一種であり、該メッキ処理方法については特に限定されず、通常行われる方法が採用できる。
【0078】
本発明において行なわれるクロムメッキ(一般に、ハードクロムメッキ)についても、通常一般に行なわれる方法が採用できる。クロムメッキは耐食性に優れたメッキであるが、電解メッキであるがゆえに、特に複雑形状の素材に対して均一に皮膜することが困難であるとともに、皮膜にミクロン単位の孔径のピンホールが多数存在するため、それ単独では被メッキ素材の腐食による金属成分の溶出がしばしば生じる。しかしながら、本発明では、カニゼンメッキの上層にさらにクロムメッキが施されるため、金属腐食成分との接触においても素材の腐食による金属成分の溶出が起こらないだけでなく、カニゼンメッキからのニッケル分の溶出も大幅に低減することができる。その結果として、重合体の着色が極端に低減できる。すなわち、本発明における方法により、単量体水溶液およびそれを重合して得られる含水ゲル状重合体のpHが9以上である場合、および/または、含水ゲル状重合体がハロゲン原子を含有する場合、好ましくは含水ゲル状重合体が塩素原子を含有する場合、等においても、金属成分の溶出、それに伴う重合体の着色を大きく低減することができるのである。
【0079】
本発明において行なわれるカニゼンメッキ、および、クロムメッキの膜厚には特に制限はないが、膜厚が薄すぎると、本発明の効果が得られなくなる恐れがあり、厚すぎるとコスト面で不利になるだけでなく、寸法安定性が低下したり、メッキ皮膜同士の接触による磨耗に伴い、重合体へ皮膜成分が混入したりする恐れがあるので好ましくない。このため、各メッキ層の膜厚としては、通常、0.01〜100μmの範囲が好ましく、0.1〜80μmの範囲がより好ましく、1〜50μmの範囲がさらに好ましく、3〜30μmの範囲がさらにより好ましく、5〜25μmの範囲が特に好ましい。
【0080】
本発明におけるカニゼンメッキは、装置内に部分的に施されていてもよいが、装置内部において含水ゲルと接触する部分の全体にわたって施されることが好ましい。また、本発明におけるクロムメッキは、装置内に部分的に施されていても、装置内部において含水ゲルと接触する部分の全体にわたって施されていてもよいが、特に上述したような、含水ゲルが付着、滞留する恐れのある部分に施されることが望ましい。
【0081】
なお、本工程において、装置内に含水ゲルが付着、滞留し、滞留した含水ゲルにさらに剪断力が加わると、重合体の分子量が減少して好ましくない水可溶成分が多く生成したり、重合体の分解により残存単量体が増加したりする恐れがある。本発明の内部構造を有する装置を用いて含水ゲル状重合体を取り扱うことにより、装置内部への含水ゲルの付着自体が低減されるため、滞留するゲル量が極端に減少し、その結果、本願発明の効果、すなわち重合体中の残存単量体量を低減する効果をよりよく発現できることになるのである。
【0082】
また、本工程において、60℃を超える温度で含水ゲル状重合体を処理すると重合体の分子量が減少し、また、30℃未満の温度では残存単量体の低減が不充分となる恐れがあるので、本願発明の効果を得るためには、処理温度(ゲルの保持温度)は30〜60℃とすることが好ましい。
【0083】
(5)乾燥工程
本発明の製造方法において、乾燥工程では、上記押出・解砕・混練工程において解砕された含水ゲルは、乾燥工程にて乾燥され、重合体乾燥物とされる。乾燥方法としては、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等、種々の方法を採用することができるが、好ましくは露点が40〜100℃、より好ましくは露点が50〜90℃の気体による熱風乾燥である。さらには、上述のように、ベルト上で乾燥を行うことが好適である。
【0084】
乾燥温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは100〜250℃の範囲内、より好ましくは120〜230℃、さらに好ましくは140℃〜200℃、さらにより好ましくは150℃〜180℃の範囲内とすればよい。特に、熱風乾燥の場合には、熱風温度が好ましくは100〜250℃の範囲内、より好ましくは120〜230℃、さらに好ましくは140℃〜200℃、さらにより好ましくは150℃〜180℃の範囲内とすればよい。
【0085】
乾燥時間は適宜決定され、特に限定されるものではないが、好ましくは10秒〜2時間、さらには1分〜1.5時間、特には、10分〜1時間が好適である。
【0086】
乾燥機に入る直前の含水ゲルの表面温度は40〜110℃が好ましく、より好ましくは60〜100℃である。40℃に満たない場合、乾燥時に風船状乾燥物ができ、粉砕時に微粉が多く発生し、物性低下や後工程および実使用時の作業性低下を招く恐れがあるからである。
【0087】
ゲル解砕されてから含水ゲルが乾燥機に入るまでの時間は、重合体の着色の観点から、短い方が良い。好ましくは2時間以内、より好ましくは1時間以内、さらに好ましくは30分以内、特に好ましくは10分以内、最も好ましくは2分以内である。
【0088】
乾燥工程においては、水溶液重合では物性面からさらには粉砕の容易さからも、乾燥後の固形分は80質量%以上、さらには85質量%以上、90質量%以上、特に92〜98質量%まで乾燥されることが好ましい。
【0089】
(6)粉砕工程
粉砕工程では、上記乾燥工程により乾燥された含水ゲルを一定の大きさ(粒度)に砕くこととなるが、粉砕工程で用いられる装置としては特に限定されず、通常行われる方法が採用され、例えば、振動ミル、ロールグラニュレーター、ナックルタイプ粉砕機、ロールミル、高速回転式粉砕機(ピンミル、ハンマミル、スクリューミル、ロールミル)、円筒状ミキサー等が採用できる。
【0090】
(7)分級工程
分級工程では、上記粉砕工程により砕かれた粉粒体の粒度を調製することとなり、分級方法としてもまた特に限定されず、例えば、ふるいを用いたふるい分け等、通常行われる方法が採用される。具体的に例えば、粉砕生成物の大きさの範囲を150〜850μmとする場合には、先に850μmのふるい目の開きを有するふるいで粉砕生成物をふるい分けた後、該ふるいをパスした粉砕生成物を150μmのふるい目の開きを有するふるいでふるい分ける。この150μmのふるい上に残存する粉砕生成物が所望の範囲内の重合体となる。
【0091】
(8)その他
上記工程を経て得られた重合体は、そのまま製品の形態としてもよく、また、分散性や流動性、その他求められる各種性能を向上させる目的で、他の添加剤を混合したり、さらに添加剤と混合された重合体粒子表面を改質したりして製品としてもよい。
【0092】
例えば、水溶性重合体の親水性や水分散性を向上させる目的で、上述したような水溶性化合物(A)等をさらに添加混合してもよく、また、水不溶性水膨潤性重合体の吸収特性を改善する目的で、各種表面架橋剤による表面処理を行ってもよい。
【0093】
表面架橋処理の具体的な態様としては、欧州特許第0349240号、同第0605150号、同第0450923号、同第0812873号、同第0450924号、同第0668080号、日本国特開平7−242709号、同平7−224304号、米国特許第5409771号、同第5597873号、同第5385983号、同第5610220号、同第5633316号、同第5674633号、同第5462972号、国際公開第99/42494号、同第99/43720号、同第99/42496号等に開示する製造方法が好ましい。
【0094】
好適な表面架橋剤としては、オキサゾリン化合物(米国特許第6297319号明細書)、ビニルエーテル化合物(米国特許第6372852号明細書)、エポキシ化合物(米国特許第625488号明細書)、オキセタン化合物(米国特許第6809158号明細書)、多価アルコール化合物(米国特許第4734478号明細書)、ポリアミドポリアミン−エピハロ付加物(米国特許第4755562号明細書及び同第4824901号明細書)、ヒドロキシアクリルアミド化合物(米国特許第6239230号明細書)、オキサゾリジノン化合物(米国特許第6559239号明細書)、ビスまたはポリ−オキサゾリジノン化合物(米国特許第6472478号明細書)、2−オキソテトラヒドロ−1,3−オキサゾリジン化合物(米国特許第6657015号明細書)、アルキレンカーボネート化合物(米国特許第5672633号明細書)、アルミニウム等の多価金属イオン(米国特許第6605673号明細書及び同第6620899号明細書)等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。また、有機酸や無機酸(米国特許第5610208号明細書)等を併用してもよい。
【0095】
具体的な表面架橋方法については、上述の各先行文献明細書に記載される方法が好ましく採用できる。
【0096】
その他添加剤としては、親水性のアモルファスシリカのような水不溶性微粒子や、還元剤、抗菌剤、消臭剤、キレート剤、多価金属化合物、などを添加してもよく、これらの添加量としては、重合体100質量部に対して、好ましくは0.001〜20質量部、より好ましくは0.01〜10質量部、特に好ましくは0.1〜5質量部である。
【0097】
重合体と各種添加剤を混合する際に用いられる混合装置は、両者を均一かつ確実に混合するために、大きな混合力を備えていることが望ましい。上記混合装置としては、例えば、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型炉ロータリーディスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー等が好適である。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0099】
(合成例1)
図2に重合容器を示した。該重合容器はSUSのプレートにより上下分離されていて下部は冷却水が通水する構造となっている。重合はSUSプレート上部に重合液を導入した後、近紫外線を照射することにより行われる。
近紫外線の照射は、該重合器の上部より、ブラックライト水銀ランプ(東芝ライテック社製、一次重合には型名H100BL−B、二次重合にはH250BL−Bのランプを使用した)を照射して行った。
【0100】
容量1Lのガラス製ビーカーに、アクリル酸ナトリウム37質量%水溶液525.4g及びグリセリン4.86gを添加した後、pHを10.0に調整した。次いで少量のイオン交換水を添加して全量を533.1gに調整した。該重合液を窒素バブリングすることにより、溶存酸素濃度を5.0ppmとした。次いで、光重合開始剤として、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製、商品名V−50)1.5%水溶液6.9gを添加した後、該重合液を、直ちに第1図に示した重合器に入れた。重合液の厚みは15mmであった。尚、重合器には、その下部に温度2℃の冷却水が予め通水してある。
重合液中のアクリル酸ナトリウムの濃度は36%であった。グリセリンの添加量はアクリル酸ナトリウムに対して2.5%であった。2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩の添加量はアクリル酸ナトリウム1モルに対して0.05gであった。
重合液を入れた後、直ちに強化ガラスで蓋をすると共に、重合液とガラスの間には酸素濃度8%(残りは窒素)のガスを通気(300ml/min)した。次いで、ガラスの上部より、前記型名H100BL−Bの水銀ランプをその照射強度は5.5W/mとなるように照射した。冷却水を流しながら重合反応を15.8分間継続した。重合温度のピークは照射開始して12分後であった。照射開始して15.8分後に、前記型名H250BL−Bの水銀ランプをその照射強度が13W/mとなるように照射した。照射は11.9分間行い、重合を完結した。このようにして、ポリアクリル酸ナトリウムを含む含水ゲル(1)を得た。該含水ゲル(1)を細かく裁断し、200℃で40分乾燥した後、卓上粉砕機で粉砕した後、目開き850μmの篩で分級することにより、粒子径850μm未満の粉末重合体(1)を得た。
【0101】
(合成例2)
重合液のpHを9.0とした他は合成例1と同様に重合を行い、ポリアクリル酸ナトリウムを含む含水ゲル(2)を得た。該含水ゲル(2)を合成例1と同様に処理することにより、粉末重合体(2)を得た。
【0102】
(合成例3)
重合液のpHを13.0とした他は合成例1と同様に重合を行い、ポリアクリル酸ナトリウムを含む含水ゲル(3)を得た。該含水ゲル(3)を合成例1と同様に処理することにより、粉末重合体(3)を得た。
【0103】
(合成例4)
容量5Lのビーカーに、アクリル酸塩系単量体としてのアクリル酸ナトリウムの37質量%水溶液4865部、グリセリン36部、トリエタノールアミン0.766部及び熱重合開始剤としての過硫酸アンモニウム0.0383部を入れて攪拌・混合した。これに、少量の水酸化ナトリウムを添加することにより、pHを11.5に調節した後、イオン交換水を加えることにより、総量を5000部とした。次いで、窒素ガスをバブリングすることにより、溶存酸素が0.3ppmである重合液を作成した。該重合液中のアクリル酸ナトリウムの濃度は36%であった。また、アクリル酸ナトリウムに対するグリセリンの添加量は2.0%であった、また、アクリル酸ナトリウム1モルに対する過硫酸アンモニウム及びトリエタノールアミンの添加量はそれぞれ、8.8×10−6モル、2.7×10−4モルであった。図4および図5に示した熱重合装置に上記重合液を入れ、予め40℃に調整した恒温水槽に浸漬した。浸漬してから7時間で重合ピーク温度に達した。次いで、恒温水槽の温度を80℃にして3時間熟成することにより、重合を完結した。このようにして、ポリアクリル酸ナトリウムを含む含水ゲル(4)を得た。該含水ゲル(4)を合成例1と同様に処理することにより、粉末重合体(4)を得た。
【0104】
図4は、熱重合用の重合用容器の概略平面図であり、図5は図4の熱重合用容器の断面図である。上下の2枚1組で、ゴムパッキンを介して構成され、約15mmの厚みのゲルが製造できる重合用容器である。なおゴムパッキンの厚みは2mmである。
【0105】
(合成例5)
光重合開始剤としてV−50の代わりに4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(和光純薬工業株式会社製、商品名V−501)を用いた他は合成例1と同様に重合を行い、ポリアクリル酸ナトリウムを含む含水ゲル(5)を得た。該含水ゲル(5)を合成例1と同様に処理することにより、粉末重合体(5)を得た。
【0106】
(合成例6)
重合液のpHを8.5とした他は合成例1と同様に重合を行い、ポリアクリル酸ナトリウムを含む含水ゲル(6)を得た。該含水ゲル(6)を合成例1と同様に処理することにより、粉末重合体(6)を得た。
【0107】
〔実施例1〕
材質がSCM440であり、サイズが縦40mm、横50mm、高さ7mmである板に、下地としてカニゼンメッキ(膜厚25μm)を施し、更にその上部に、上地としてハードクロムメッキ(以下、H−Crと称す。膜厚5μm)施したテストピースを作成した。次に、合成例1で得られた含水ゲル(1)をその厚みが5mmとなるようにスライスし、該スライスゲルを上記テストピースの両側に貼り合せた。更に、その上からポリ袋を二重に被せ、ゲルが乾燥するのを防止する養生を行った。該養生物を、予め50℃の調整された乾燥機内に30日間、静置した。次いで、このようにして処理されたゲルを、200℃で40分間乾燥した後、粉砕することにより重合体粉末を得た。該重合体粉末中のNi分をICP質量分析法で測定した結果、0.08ppmであった。また、該重合体粉末の外観上、着色は見られなかった。その結果を表1に示した。
【0108】
〔実施例2〜6〕
合成例2〜6で得られた含水ゲル(2)〜(6)を用いた他は、実施例1と同様に処理した。このように処理されたゲルを実施例1と同様に処理した後、Ni分の分析および目視による着色観察を行った。その結果を表1に示した。
【0109】
〔実施例7〕
カニゼンメッキの膜厚が10μmであり、その上部のH−Crメッキの膜厚が10μmであるテストピースを用いた他は、実施例1と同様に処理した。このように処理されたゲルを実施例1と同様に処理した後、Ni分の分析を行った。その結果を表1に示した。
【0110】
〔比較例1〕
カニゼンメッキの膜厚が25μmであり、その上部にH−Crメッキを施していないテストピースを用いた他は、実施例1と同様に処理した。このように処理されたゲルを実施例1と同様に処理した後、Ni分の分析および目視による着色観察を行った。その結果を表1に示した。
【0111】
【表1】

【0112】
〔実施例8〕
図3に示すベルト重合装置を用いて重合を行なった。該重合機は、重合に先立って以下の条件に調整されている。気相部酸素濃度が8vol%となるように、重合室内は重合室のガス入り口より連続的に窒素が導入されている。重合室内における一次重合ゾーンにおけるベルト基材中央上部の近紫外線強度は3.0W/mとなるように調光されている。また、二次重合ゾーンにおけるベルト基材中央上部の近紫外線強度は、13.0W/mとなるように調光されている。ベルトスピードは39.5cm/minとなるように調整されている。該条件下、アクリル酸ナトリウム36%、グリセリン2.5%(対アクリル酸ナトリウム)、光重合開始剤としての2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.03g/モル(対アクリル酸ナトリウム)を含む、pH10.0で溶存酸素が5ppmの重合液を、重合用溶液の供給口より、550kg/Hrの割合で供給した。約25分経過後、ベルト基材の終端部より厚みが約15mmのシート状の含水ゲルが連続的に製造された。
得られた含水ゲルを、ゲル解砕機としての二軸式破砕機(株式会社ホーライ製;KP−40110型;回転刃:歯車形状400mmφ、44枚(1軸あたり22枚);スクレーパ:スリット形状(櫛歯形))に連続的に投入し、解砕を行なった。この際、回転刃およびスクレーパを含む破砕機内の表面を、下地としてカニゼンメッキ(膜厚25μm)を施し、更にその上層に上地としてH−Crメッキ(膜厚5μm)を施した。3ヶ月間の連続運転後でも、得られる解砕ゲルには着色が全く認められなかった。その後装置内部を観察したところ、装置への含水ゲルの付着はほとんどなかった。また、微量に付着しているゲルは無色透明の外観を有しており、このゲルの金属量を測定した結果、Ni分は0.08ppm(重合体固形分に対する含有量)であった。
【0113】
なお、図3は、製品幅(ベルト基材の両端に設けられた高さ30mmのエッジロープ間の距離)1330mm、重合長9880mmの紫外線照射装置を備えた、ベルト基材幅が1550mmのベルト重合機である。蛍光灯型紫外線発生器は、ブラックライト蛍光ランプであり、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向(長軸方向の長さ1230mm)がベルト基材の進行方向に沿って設置されている。蛍光灯型紫外線発生器は、合計88本用いた。
一次重合ゾーン(低密度部)は、7本×6列=42本であり、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔は、221mmである。
二次重合ゾーン(高密度部)は、23本×2列であり、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔は、60mmである。
【0114】
紫外線発生器(UV蛍光ランプ)の仕様は、メロウライン(品名、管長1.2m、定格ランプ電力45Wのブラックライト、型名「H250BL−L」、東芝ライテック社製)である。また、図3に示されるベルト重合機では、ベルトの進行方法に沿って蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向が配置されているため、製品幅(1330mm)の端部においても隙間が生じないように配置することができるため、ベルト基材の端部に対しても均一に紫外線を照射することができる。
強化ガラスの仕様は、タフライト(厚み4mmの強化ガラス、日本板硝子社製)である。紫外線照射装置の天井板、側板の仕様は、SUS304板であり、図3で示される紫外線照射装置を備えたベルト重合機は、ガラスが側面部から脱着できるような構造になっており、ガラス面の洗浄作業も容易に行える構造になっている。
【0115】
紫外線発生器の光照射強度(近紫外線強度)は、ベルト基材面において測定される光照射強度であり、光照射強度は、下記の光量計で測定した。
装置:UVメーター
メーカー:株式会社カスタム
型式:本体 UVA−365
センサー:UVセンサー(スペクトラ応答性 300nm〜400nm〔355nm中心ポイント〕)
このときの、一次重合ゾーンにおける光強度分布の標準偏差は、0.27W/mであり、光強度分布の各光強度の平均値は、3.0W/mであった。従って、一次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は9.0%であった。また、二次重合ゾーンにおける光強度分布の標準偏差は、0.27W/mであり、光強度分布の各光強度の平均値は、13.0W/mであった。従って、二次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は2.1%であった。
なお、一次重合ゾーン及び二次重合ゾーンにおける光量分布を表す分布比率に関して、二次重合ゾーンにおいては照射される光量をより高くするために紫外線発生器が密に設置されているので、その結果、分布比率が少なくなる。よって、一次重合ゾーンよりも二次重合ゾーンの方の光量分布を示す分布比率が下がることになる。
【0116】
〔比較例2〕
内表面にカニゼンメッキのみ(上層のクロムメッキは行わない)の処理を施した破砕機を使用した他は、実施例8と同様にして、連続的に含水ゲルの解砕処理を行なった。連続運転1ヵ月後、得られる解砕ゲルに薄青緑色の着色が認められた。装置内部を観察したところ、特に回転刃の凹部やスクレーパーの谷部に含水ゲルが多く付着しており、また、この付着しているゲルは緑色に着色していた。このゲルの金属量を測定した結果、Ni分は0.35ppm(重合体固形分に対する含有量)であった。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の方法によれば、増粘剤、粘着剤、凝集剤、および医薬分野における保水性向上剤等として有用な水溶性重合体、並びに、吸収物品の構成材、農園芸用保水剤、工業用止水材等として有用な水不溶性水膨潤性重合体、特に、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を用いて重合して得られる該重合体を製造する際において、重合後の含水ゲル状重合体の装置内表面への付着やそれに伴う金属成分の溶出、製品の着色、並びに、重合体中に残存する単量体の量を充分に低減し、かつ品質の安定した製品を安価に効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の製造方法の好適な形態の一例を示す工程図である。
【図2】本発明方法で用いる重合装置の一態様を示すものであり、平面図及び正面図である。
【図3】本発明の重合体を製造する重合装置の一形態を示す側面概念図である。
【図4】約15mmの厚みのゲルが製造できる、熱重合用の重合用容器の概略平面図である。上下2枚1組で、ゴムパッキンを介して構成される重合容器を上から見た図である。
【図5】図4の熱重合用容器の断面図である。ゴムパッキンの厚みは2mmである。
【符号の説明】
【0119】
1:ブラックライト水銀ランプ(H250BL−L)、東芝ライテック株式会社製
2:減光板(開口率10.7%、パンチングメタル)
3:減光板(開口率51%、パンチングメタル)
4:スクレーパー
5:スプレーノズル
6:堰(エッジロープ)
7:含水ゲル状重合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性不飽和単量体を必須成分として含む単量体水溶液を重合し、次いで、得られる含水ゲル状重合体を処理する工程を含む、重合体の製造方法において、該含水ゲル状重合体を処理する工程で、カニゼンメッキされた皮膜の上層に更にクロムメッキされた皮膜を有する内面構造を有する装置を使用し、該含水ゲル状重合体を処理することを特徴とする、重合体の製造方法。
【請求項2】
該装置が、解砕機、押出機および混練機から選ばれる少なくとも1種の装置である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
重合性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸(塩)系単量体である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
含水ゲル状重合体がハロゲン原子を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
ハロゲン原子が塩素原子である、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
単量体水溶液のpHが9.0以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
重合体が水溶性重合体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−116984(P2012−116984A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269477(P2010−269477)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】