説明

重合体を含むラテックスの製造方法

【課題】 粒子径が小さく、ラテックスからの分離、精製が容易な重合体を得ることができる、重合体を含むラテックスの製造方法を提供する。
【解決手段】 重合開始剤、乳化剤および水性媒体の混合物に、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体とする単量体成分を添加して該単量体成分の乳化重合を行うことにより、重合体を含むラテックスを製造する方法であって、前記単量体成分を添加し始める初期添加速度を、1分あたりの単量体成分の添加量が単量体成分の総量に対して0.01〜0.45重量%となるように設定するとともに、前記初期添加速度で添加する終点が、単量体成分の添加量が単量体成分の総量に対して1重量%以上となるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、診断薬、医薬品用担体、クロマトグラフィー用担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、化粧品添加剤、耐衝撃性改質剤、塗料、トナー等の用途において好適に用いられる重合体を含むラテックスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、診断薬、医薬品用担体、クロマトグラフィー用担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、化粧品添加剤、耐衝撃性改質剤、塗料、トナー等の用途において使用される重合体粒子を得るために、重合体を含むラテックス(以下「重合体含有ラテックス」と称することもある)が利用されている。
重合体含有ラテックスを製造する方法としては、例えば、乳化剤、重合開始剤及び水性媒体の混合物に単量体を添加する方法が知られている(特許文献1及び2参照)。この方法では、単量体の添加は、生産性を考慮して、1分あたりの単量体の添加量が単量体の総量に対して凡そ0.6重量%以上となる速度で行なわれている。
【0003】
ところで、重合体含有ラテックスを上述した各種用途に利用するに際し、用途によっては、ラテックス中の重合体がなるべく小さい粒子径を有するものであることが望ましい場合がある。例えば、診断薬としては重合体粒子の粒子径が小さいほど分析精度を上げることができ、トナーとしては重合体粒子の粒子径が小さいほど画像の解像度を上げることができる。また、耐衝撃性改質剤の如く多層構造の多層重合体粒子が用いられる用途でも、フィルム用の耐衝撃性改質剤のように多層重合体粒子の粒子径が小さい方がよい場合があり、そのような場合も、多層重合体粒子の粒子径を小さくするには、それを得る際に核(シード粒子)とする重合体粒子の粒子径が小さくなければならない。したがって、より小さな粒子径の重合体を含むラテックスが求められている。
【0004】
一方、乳化剤において、重合体含有ラテックス中の重合体の粒子径を小さくする手法としては、乳化剤として高濃度のものを使用すれば良いことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−181357号公報
【特許文献2】特開2004−137298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したいずれの方法であっても、充分に満足しうる程度にまでラテックス中の重合体の粒子径を小さくすることはできなかった。しかも、高濃度の乳化剤を用いると、ラテックスから重合体を容易に分離、精製することができず、良質の重合体を簡便に得ることができない、という問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、粒子径が小さく、ラテックスからの分離、精製が容易な重合体を得ることができる、重合体を含むラテックスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、重合開始剤、乳化剤及び水性媒体の混合物に単量体成分を添加して該単量体成分の乳化重合を行う際に、前記単量体成分を添加し始める初期添加速度を比較的遅い特定の範囲に設定することにより、乳化剤濃度を高くしなくても充分に粒子径が小さく、ラテックスからの分離、精製が容易な重合体を含むラテックスが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)重合開始剤、乳化剤および水性媒体の混合物に、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体とする単量体成分を添加して該単量体成分を乳化重合させることにより、重合体を含むラテックスを製造する方法であって、前記単量体成分を添加し始める初期添加速度を、1分あたりの単量体成分の添加量が単量体成分の総量に対して0.01〜0.45重量%となるように設定するとともに、前記初期添加速度で添加する終点が、単量体成分の添加量が単量体成分の総量に対して1重量%以上となるように設定することを特徴とする重合体を含むラテックスの製造方法。
(2)前記初期添加速度で添加する終点が、単量体成分の添加量が単量体成分の総量に対して20重量%以下となるように設定する前記(1)に記載の製造方法。
(3)前記乳化剤の使用量が、単量体成分の総量100重量部に対して0.1〜5.0重量部である前記(1)又は(2)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粒子径が小さい重合体をラテックス中に製造することができる。そのため、前記した各種用途に好適に用いられる。例えば、診断薬として利用する場合は、分析精度をさらに上げることができ、トナーとして利用する場合は、画像の解像度をさらに上げることができ、さらに、フィルム用の耐衝撃性改質剤のように粒子径の小さい多層重合体粒子を得る際の核(シード粒子)としても有用である。しかも、本発明により得られるラテックス中の重合体は、乳化剤濃度を高くしなくてよいので、ラテックスからの分離、精製が容易であり、高品質の重合体を簡便に得ることができる。
また、本発明は、重合体を含むラテックスを製造するにあたり、単量体成分の初期の添加速度を比較的遅い特定範囲に設定するものであるので、重合反応による発熱を良好に制御できるという効果も得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る重合体を含むラテックスの製造方法(以下「本発明の製造方法」と称する)は、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体とする単量体成分を、重合開始剤、乳化剤及び水性溶媒の混合物に添加して、前記単量体成分を乳化重合させるものである。
【0012】
本発明の製造方法で用いられる単量体成分は、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体とする。具体的には、単量体成分の総量における50重量%以上が、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸アリル等が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステルや、アクリル酸アリル等が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどの核置換スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。これらメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物は、それぞれ、単独でもしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0014】
前記単量体成分は、前記単量体成分の総量に対して50重量%以下の範囲で、前述したメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物以外の他の単量体を含有していてもよい。他の単量体としては、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルまたは芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物であれば特に制限されないが、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、第3級カルボン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド;アクリロニトリル等のビニルシアン化合物;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン化合物;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;ブタジエン等のジエン類;等が挙げられる。また、1分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する架橋性単量体も前記他の単量体として用いることができ、このような架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート等のグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル;ケイ皮酸アリル等の不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多塩基酸のポリアルケニルエステル;トリメチロールプロパントリアクリレート等の多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル;ジビニルベンゼン;等が挙げられる。これら他の単量体は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0015】
本発明の製造方法で用いられる重合開始剤は、特に制限されるものではなく、公知の重合開始剤を用いることができる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;過塩素酸化合物;過ホウ酸化合物;ベンゾイルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ターシャリーハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物;4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物類;過硫酸カリウム−チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素−アスコルビン酸等の過酸化物と還元性化合物との組み合わせからなるレドックス系開始剤;などが挙げられる。これらの中でも特に、水溶性重合開始剤が好ましく、さらには、80℃での半減期時間が0.5時間〜5時間(過硫酸アンモニウムは1.26時間、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウムは3.59時間)の範囲である水溶性重合開始剤(具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム)がより好ましい。重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
重合開始剤の使用量は、前記単量体成分の総量100重量部に対して0.05〜2重量部であることが好ましく、より好ましくは0.06〜1重量部であるのがよい。重合開始剤の使用量が前記単量体成分の総量100重量部に対して2重量部を超えると、重合速度が速くなりすぎ、発生する反応熱が大きくなることで系の温度が上昇しやすく、反応温度の制御が困難となるおそれがある。一方、重合開始剤の使用量が前記単量体成分の総量100重量部に対して0.05重量部未満であると、重合速度が遅く、重合が完結するまでに長時間を要する傾向がある。
【0017】
本発明の製造方法において用いられる乳化剤は、特に制限されるものではなく、通常の乳化重合で用いられている乳化剤を使用することができる。代表的な乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩類(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、アルキル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩類、ジアルキルスルホサクシネートの塩類等のアニオン乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン乳化剤;等が挙げられる。乳化剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
乳化剤の使用量は、前記単量体成分の総量100重量部に対して0.1〜5.0重量部であるのが好ましく、より好ましくは、0.5〜3.0重量部であるのがよい。乳化剤の使用量が前記単量体成分の総量100重量部に対して5.0重量部を超えると、重合体を含むラテックスから重合体を容易に分離、精製することが困難になる傾向がある。一方、乳化剤の使用量が前記単量体成分の総量100重量部に対して0.1重量部未満であると、乳化重合が円滑に進行しなくなるおそれがある。
【0019】
本発明の製造方法において用いられる水性溶媒としては、例えば、水、水と水混和性溶剤との混合溶媒等の水系媒体が挙げられる。
水性溶媒の使用量は、特に制限されないが、通常、前記単量体成分の総量100重量部に対して50〜1500重量部程度の割合となるように用いるのが好ましい。
【0020】
前記重合開始剤、前記乳化剤及び前記水性溶媒の混合物を調製する際の混合順序や混合方法は、特に制限されない。例えば、前記水性媒体に前記乳化剤を溶解させた溶液の中に、前記水性媒体に前記重合開始剤を溶解させた溶液を加えるようにすればよい。なお、この混合物の調製時に、水性媒体に乳化剤を溶解させた溶液もしくは水性媒体に重合開始剤を溶解させた溶液の少なくとも一方を後述する重合温度に予め昇温しておいてもよい。
【0021】
本発明の製造方法においては、前記単量体成分を前記混合物に添加し始める初期添加速度を、1分あたりの単量体成分の添加量が単量体成分の総量に対して0.01〜0.45重量%となるように設定するとともに、前記初期添加速度で添加する終点が、単量体成分の添加量が単量体成分の総量に対して1重量%以上となるように設定することが重要である。換言すれば、単量成分の添加開始から所定期間、前述した初期添加速度で添加すること(本発明においては、この期間を「初期添加期間」と称する)、および初期添加期間の終点が単量体成分の添加量が単量体成分の総量に対し1重量%以上になるように設定することが重要である。なお、ここで前記初期添加速度で添加する単量体成分の量とは、添加開始からの累積量を意味するものである。このように、初期添加期間における初期添加速度を前記範囲に設定することにより、得られる重合体含有ラテックス中の重合体の粒子径を小さくすることができる。
【0022】
前記初期添加速度が、前記範囲よりも速すぎると、ラテックス中の重合体の粒子径を小さく制御することが困難になり、一方、前記範囲よりも遅すぎると、生産性が低下することとなる。前記初期添加速度は、好ましくは、1分あたりの単量体成分の添加量が単量体成分の総量に対して0.03〜0.40重量%となるように設定するのがよい。
前記初期添加期間の終点(終了時点)が、単量体成分の総量に対して1重量%未満の量の単量成分を添加し終えた時点となる場合、ラテックス中の重合体の粒子径を小さく制御することが困難になる。前記初期添加期間の終点(終了時点)は、単量体成分の総量に対して1重量%以上の単量体成分を添加し終えた任意の時点であればよいが、好ましくは、単量体成分の総量に対して5重量%以上、より好ましくは、単量体成分の総量に対して8重量%以上の単量体成分を添加し終えた任意の時点であるのがよい。ただし、前記初期添加期間の終点は、生産性の観点からは、単量体成分の総量に対して20重量%以下の単量体成分を添加し終えた時点であることが好ましい。勿論、前記初期添加期間に前記単量体成分の全てを添加する(すなわち、初期の添加速度で添加する単量体成分の量を、単量体成分の全量とする)こともできる。
【0023】
前記初期添加期間における単量体成分の添加は、実質的に一定の速度で、かつ、実質的に連続して行うことが好ましいが、添加速度が前記範囲内である限り、可変する速度で行ってもよいし、間欠添加であってもよい。
なお、初期添加期間における単量体成分の添加速度(前記初期添加速度)が前記範囲内に入るか否かは、例えば、初期添加期間の単量体成分の添加が実質的に一定の速度で、かつ実質的に連続して行われる場合であれば、初期添加期間に添加した単量体成分の合計量(初期添加速度で添加する単量体成分の量)と、初期添加期間(すなわち、添加開始から初期添加期間終了までに要した時間)とから求められる平均速度を以って判断することができる。
【0024】
本発明の製造方法において、前記初期添加期間に前記単量体成分の全てを添加するのでない場合、初期添加期間の終点(終了時点)以降の添加速度については、特に制限されるものではないが、1分あたりの単量体成分の添加量が単量体成分の総量に対して0.01〜10.0重量%の範囲とするのが好ましい。なお、初期添加期間の終点(終了時点)以降の単量体成分の添加についても、実質的に一定の速度で、かつ、実質的に連続して行うことが好ましいが、本発明の効果が損なわれない限り、可変する速度で行ってもよいし、間欠添加であってもよい。
本発明の製造方法において、前記初期添加期間に添加する単量体成分の組成(各単量体の比率)と、初期添加期間の終点(終了時点)以降に添加する単量体成分の組成(各単量体の比率)とは、異なっていてもよいが、好ましくは同じ組成であるのがよい。
【0025】
前記単量体成分を乳化重合させる際の重合条件等は、前記単量体成分の添加速度を前述の範囲とすること以外は、特に制限されるものではなく、公知の乳化重合法に従い行なうことができる。例えば、重合温度は、使用する重合開始剤の種類によって適宜設定すればよく、通常は30〜100℃であり、好ましくは50〜100℃である。
本発明の製造方法においては、前記単量体成分を乳化重合させる際に、必要に応じて、例えば、連鎖移動剤、pH調整剤(例えば、炭酸ナトリウム等)、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で用いることもできる。
【0026】
本発明の製造方法により得られる重合体含有ラテックス中の重合体の重量平均粒子径は、好ましくは45nm以下、より好ましくは40nm以下である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
なお、実施例及び比較例における粒子径の測定は以下の方法で行なった。
(粒子径測定)
動的光散乱法式粒径分布測定装置(「FPAR−1000」大塚電子(株)製)を用いて、動的光散乱法により、重合体含有ラテックス中の重合体の重量平均粒子径を測定した。
【0028】
(実施例1)
まず、アクリル酸ブチル60.0重量%、メタクリル酸メチル25.0重量%、スチレン12.5重量%、及びメタクリル酸アリル2.50重量%からなる組成の単量体成分を調製した。そして、得られた単量体成分614.18g(総量)を、単量体成分総量の8.3重量%を初期添加分Aとし、単量体成分総量の91.7重量%を後添加分Bとした。
【0029】
反応容器に、室温で約20℃のイオン交換水2600gを入れ、さらに炭酸ナトリウム1.50gと、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム7.40g(単量体成分の総量100重量部に対して1.2重量部)とを加えて溶解させた。次いで、窒素ガスによりバブリングを行いながら反応容器の内温を80℃に昇温した後、重合開始剤として過硫酸カリウム0.61g(単量体成分の総量100重量部に対して0.099重量部)を溶解させた2.05重量%水溶液30.60gを加えて、重合開始剤、乳化剤及び水性溶媒の混合物を得た。
【0030】
次に、反応容器の内温を80℃に維持しつつ、上記混合物に、上記初期添加分A(単量体成分総量の8.3重量%)を、1分あたりの単量体成分の添加量が単量体成分総量(614.18g)に対して0.069重量%となる添加速度(0.43g/分)で、120分間かけて、実質的に一定速度で連続添加した。次いで、初期添加分Aの添加終了後、引き続き、反応容器の内温を80℃に維持しつつ、後添加分B(単量体成分総量の91.7重量%)を、1分あたりの単量体成分の添加量が単量体成分総量(614.18g)に対して1.7重量%となる添加速度(10g/分)で、55分間かけて、実質的に一定速度で連続添加した。後添加分の添加終了後、さらに攪拌しながら、反応容器の内温を80℃に保持することにより45分間熟成させて、重合体含有ラテックスを得た。得られた重合体含有ラテックス中の重合体の重量平均粒子径は25nmであった。
【0031】
(実施例2)
まず、実施例1と同じ組成の単量体成分を調製し、得られた単量体成分614.26g(総量)を、単量体成分総量の17重量%を初期添加分Aとし、単量体成分総量の83重量%を後添加分Bとした。
【0032】
次に、反応容器の内温を80℃に維持しつつ、実施例1と同様にして得た混合物(重合開始剤、乳化剤及び水性溶媒の混合物)に、上記初期添加分A(単量体成分総量の17重量%)を、1分あたりの単量体成分の添加量が単量体成分総量(614.26g)に対して0.28重量%となる添加速度(1.7g/分)で、60分間かけて、実質的に一定速度で連続添加した。次いで、初期添加分の添加終了後、引き続き、反応容器の内温を80℃に維持しつつ、後添加分B(単量体成分総量の83重量%)を、1分あたりの単量体成分の添加量が単量体成分総量(614.26g)に対して1.67重量%となる添加速度(10g/分)で、50分間かけて、実質的に一定速度で連続添加した。後添加分の添加終了後、さらに攪拌しながら、反応容器の内温を80℃に保持することにより45分間熟成させて、重合体含有ラテックスを得た。得られた重合体含有ラテックス中の重合体粒子の重量平均粒子径は25nmであった。
【0033】
(比較例1)
実施例2において、初期添加分A(単量体成分総量の17重量%)を、1分あたりの単量体成分の添加量が単量体成分総量(614.26g)に対して3.3重量%となる添加速度(20g/分)で、5分間かけて、実質的に一定速度で連続添加するよう変更したこと以外、実施例2と同様の操作を行って、重合体含有ラテックスを得た。得られた重合体含有ラテックス中の重合体粒子の重量平均粒子径は50nmであった。
【0034】
(比較例2)
実施例2において、重合開始剤、乳化剤及び水性溶媒の混合物を得るにあたり、乳化剤として用いたドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの使用量を49.20g(単量体成分総量100重量部に対して8.00重量部)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、重合開始剤、乳化剤及び水性溶媒の混合物を得た。
次に、反応容器の内温を80℃に維持しつつ、上記で得た混合物(重合開始剤、乳化剤及び水性溶媒の混合物)に、実施例2と同じく、実施例1と同じ組成の単量体成分614.26g(総量)を、分けることなく一括して添加した後、さらに攪拌しながら、反応容器の内温を80℃に保持することにより45分間熟成させて、重合体含有ラテックスを得た。得られた重合体含有ラテックス中の重合体粒子の重量平均粒子径は60nmであった。
【0035】
上記実施例、比較例で用いた乳化剤の使用量、初期添加分の単量体成分の添加速度、及び得られた重合体含有ラテックス中の重合体の重量平均粒子径を、それぞれ表1に示す。
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合開始剤、乳化剤および水性媒体の混合物に、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体とする単量体成分を添加して該単量体成分を乳化重合させることにより、重合体を含むラテックスを製造する方法であって、
前記単量体成分を添加し始める初期添加速度を、1分あたりの単量体成分の添加量が単量体成分の総量に対して0.01〜0.45重量%となるように設定するとともに、前記初期添加速度で添加する終点が、単量体成分の添加量が単量体成分の総量に対して1重量%以上となるように設定することを特徴とする重合体を含むラテックスの製造方法。
【請求項2】
前記初期添加速度で添加する終点が、単量体成分の添加量が単量体成分の総量に対して20重量%以下となるよう設定する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記乳化剤の使用量が、単量体成分の総量100重量部に対して0.1〜5.0重量部である請求項1又は2に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−63733(P2011−63733A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216342(P2009−216342)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】