重合体ゲルを制御および形成する装置ならびに方法
本発明は、好ましい態様として、化学的架橋せず、または放射線の照射なしに、所望の物理的特性を有するビニル重合体ヒドロゲルを調整できるように製造する方法を提供する。このゲル化方法は、例えば得られる、ゲル化剤を有するビニル重合体混合物の温度を制御することにより、または不活性ゲル化剤複合体中に与えられた活性成分を使用することにより、調整する。好ましい実施態様では、ビニル重合体ヒドロゲルの製造方法は、第一溶剤中に溶解させた、ビニル重合体を含んでなるビニル重合体溶液を用意する工程、ビニル重合体溶液を、ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱する工程、ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合し、ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する混合物を得る工程、ビニル重合体溶液とゲル化剤の混合物のゲル化を誘発する工程、およびゲル化速度を制御し、粘弾性溶液を形成する工程を含み、その際、加工性を、予め決められた期間に維持し、それによって所望の物理的特性を有するビニル重合体ヒドロゲルを製造する。別の好ましい実施態様においては、本発明は、粘弾性溶液のゲル化を制御し、加工性が、予め決められた期間に維持されるように製造された、物理的に架橋されたヒドロゲルを提供する。別の態様では、本発明は、椎間板または関節の修復に使用する、ビニル重合体ヒドロゲルを形成する成分および供給装置を包含するキットを提供する。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、本明細書にその内容全体を参考として含める米国暫定特許出願第60/400,899号(2002年8月2日出願)の有益性を特許請求する米国特許出願第10/631,491号(2003年7月31日出願)の一部継続出願である。
【発明の背景】
【0002】
米国では六千五百万人が下部背痛を患っており、これらの症例の推計千二百万人が変形性椎間板疾患(degenerative disk disease)によるものである。背中は、その複雑な構造のために損傷や病気に特に敏感である。脊柱は、脊椎板(vertebral disk)により分離された脊椎の柱から構成される、関節骨および軟骨の複雑な構造を有する(図1)。これらの脊椎板は、脊柱に沿って伝わる負荷を緩和および分散させるための介在クッションとして作用する。
【0003】
椎間板の異方性構造は、複雑な脊椎負荷をやわらげるのに必要な適切な機械的特性を効率的に達成する。髄核と呼ばれる内側の粘弾性物質が、板の総断面積の20〜40%を占めている。核は、通常70〜90重量%の水を含む。核は親水性プロテオグリカンから構成され、この親水性プロテオグリカンは、水を核中に引き付けて脊柱に対する圧縮負荷を支持する0.1〜0.3MPaの浸透膨潤圧を発生する。核は、線維輪と呼ばれる高度に構造化された外側コラーゲン層により横方向で束縛されている(図1)。髄核は、常に圧迫されているのに対し、線維輪は常に引っ張られている。髄核は総板断面積の3分の1を占めるだけであるが、核は板にかかる総負荷の70%を支持している。椎間板は加齢と共に弾性が低下し、ほとんどの中年成人では、含水量を失って、核は硬質ゴムの弾性体のようになる。この水分損失により、椎間板のサイズも収縮してその特性が損なわれる。
【0004】
変形性椎間板疾患では、髄核が応力下で歪み、髄が線維輪を通して押し出され、周囲の神経圧迫することがある。この過程は、ヘルニア形成と呼ばれる。板の損傷は、髄の一部が失われると元に戻らない場合が多い。板損傷の大部分は腰の区域で起こり、最も一般的な疾患区域は、L4/L5およびL5/S1で起こる。
【0005】
椎弓切除術(ヘルニア形成した板の部分−典型的には髄核−を外科手術により除去)を行い、局所的神経組織に対する圧力を軽減することができる。この手法は、核の耐負荷能力は物質の損失と共に低下すると仮定すると、短期間的な解決策であることは明らかである。それにも関わらず、毎年二十万件を超える椎弓切除術が行われており、成功率は70〜80%である。
【0006】
関節固定術または関節癒合術は、変形性椎間板疾患を外科的に処置するためのより恒久的な方法である。関節癒合術は、内部固定を伴って、または伴わずに行う。内部固定は、より一般的になっているものの、この技術にはそれなりの複雑さがある。内部固定関節癒合術を受けた患者に、骨折、神経学的損傷、および骨粗鬆症が見られる。骨が癒合する能力は患者毎に異なり、平均成功率は75〜80%である。脊椎癒合術は、脊椎の強直性および運動低下を引き起こす。さらに、関節癒合術は、脊柱中の隣接する脊椎に応力を与えることもあり、これが隣接する板の疾患を促進し、さらなる背部手術につながることもある。
【0007】
効果的に設計された人造板は、脊柱の隣接レベルで受ける問題から患者を保護しながら、摩耗した板と置き換えることができる。この分野では、幾つかの補欠人造板が提案されている。これらの補欠する試みの多くは、核および線維輪を含めて、板を完全に置き換えている。椎間板は多方向の負荷がかかる複雑な関節であることを考慮すると、椎間板の関節や機械的な挙動を模擬する補欠物の設計は、途方もなく複雑である。例えば、身体が仰向けに寝ている時、第三腰板にかかる圧縮負荷は300Nであり、直立姿勢では700Nに、前に20°曲げると1200Nに上昇する。さらに、5°まで回転して屈曲および伸長する際は6N−mのモーメントに到達することが多い。十分な安全性を得るためには、椎間板全体の好ましい圧縮強度は4MN/m2である。
【0008】
椎間板の完全な置換で今日までの最も広範囲な経験は、SB Charite III補欠物で得たものある。この補欠物は、ヨーロッパで1987年以降広範囲に使用されており、3,000を超える患者に移植されている。SB IIIは、2個のコバルトクロム末端板の間に配置されたポリエチレンスペーサーで設計されている。2年間の追跡調査により、患者における良好な臨床的成果が示されている。もう一つの研究は、2枚のチタン板に取り付けられた、カーボンブラック補強したポリオレフィンコアからなる完全板補欠物に関するものである。2個の充填材でコアが破損するため予備的な結果は有望とは言えない。
【0009】
上記の例は、いずれも人造板の開発に著しい商業的努力がなされていることを示している。しかしながら、いずれの例においても、ヒト椎間板に対するこれらの成分との機械的等価性については幾分疑問があり、長期間の臨床的予後は依然として不明である。
【0010】
椎間板の完全置換に代わるものとして、髄核だけを置き換え、線維輪は無傷で残すことができる。線維は侵されにくく、線維輪はその本来の線維長および線維張力を回復し得るので、線維が無傷であれば、この手法は有利である。核を置き換える際、特性が天然の核に類似している材料を見出すことが望ましい。先行技術として、空気、食塩水、またはチキソトロピー性ゲルで充填された嚢胞を挙げられる。漏れを防止するために、嚢胞からなるメンブラン材料は、不透過性でなければならないが、不透過性であると、体液が板キャビティ中に自然に拡散するのを抑制してしまい、必要な栄養の供給を阻止してしまう。
【0011】
より自然な椎間板代替材料を見出すために、幾つかの研究グループが、髄核を置き換えることができるものとして、重合体状ヒドロゲルを試験している。ヒドロゲルは、典型的には良好な粘弾性を有し、良好な機械的挙動を示すため、髄核に対して良好な類似体である。さらに、ヒドロゲルは、大量の遊離水を含み、これによってヒドロゲルから製造された補欠物が圧迫下で変形し、天然の髄核と同様に、弾性を失うことなく、周期的な負荷を処理することができる。これらの材料の水透過性により、体液および栄養が板空間に拡散することもできる。この細孔構造の制御、従って、充填材のすべての部分への栄養到達制御は、将来の補欠充填材に不可欠であろう。
【0012】
他の研究者は、超高分子量ポリエチレン繊維から製造された外被中に収容されたポリアクリロニトリル−ポリアクリルアミドマルチブロック共重合体の使用を試験している。これらの系は、水中でその重量の80%まで吸収する。ポリビニルアルコール(PVA)およびPVAとポリビニルピロリドン(PVP)との共重合体を用いて、天然板と類似した機械的特性を有する補欠物を作製できる。これらの材料には、他の医療装置でも臨床的な成果を上げているという別の優位性がある。PVAから形成されるゲルは、通常、凍結融解製法により、または外部架橋剤により製造される。さらに、ヒドロゲル系核には、移植後に徐々に拡散放出される治療薬を含有させることができる。現在、これらの材料には臨床的データは無いが、死体関節に対する生物化学試験は、天然板に類似した機械的特性を示している。
【発明の概要】
【0013】
本発明の好ましい実施態様として、ビニル重合体のゲル化速度を制御する方法を提供する。好ましい実施態様においては、本発明による方法は、化学的架橋または放射線を使用せずに、所望の物理的特性を有するビニル重合体ヒドロゲルを調整できるように製造することを含む。このゲル化方法は、例えば、得られるゲル化剤を有するビニル重合体混合物の温度を制御することにより、または不活性ゲル化剤複合体中に与えられた活性成分を使用することにより、ゲル化速度を調整する。
【0014】
好ましい実施態様においてはヒドロゲルを包含し、そのヒドロゲルは、例えばその場で組み立てた補欠物の外科的移植(最小限の外科的操作)に使用する、髄核増強用の注入可能なものである。本発明の好ましい実施態様によるヒドロゲルは、問題とする区域、例えば関節空間中の脊椎表面に適合する。本発明のその場におけるゲル化方法により形成された、負荷を支えるヒドロゲルは、例えば線維輪に対する損傷を最小に抑える。好ましい実施態様では、ビニル重合体ヒドロゲルの製造方法は、第一溶剤中に溶解させたビニル重合体を含んでなるビニル重合体溶液を用意する工程、ビニル重合体溶液を、ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱する工程、ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合し、ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する混合物を得る工程、ビニル重合体溶液とゲル化剤の混合物のゲル化を誘発する工程、およびゲル化速度を制御し、粘弾性溶液を形成する工程を含み、その際、加工性を、予め決められた期間に維持し、それによって所望の物理的特性を有するビニル重合体ヒドロゲルを製造する。別の好ましい実施態様で、本発明は、粘弾性溶液のゲル化を制御し、加工性が、予め決められた期間に維持されるように製造された、物理的に架橋されたヒドロゲルを提供する。別の態様では、本発明は、椎間板または関節の修復に使用する、ビニル重合体ヒドロゲルを形成する成分および供給装置を包含するキットを提供する。
【0015】
特定の好ましい実施態様では、ビニル重合体溶液を用意する工程が、典型的にはビニル重合体を第一溶剤に溶解させる工程を含む。ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合する工程は、ビニル重合体溶液を、ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱する工程の前または後に行うことができる。
【0016】
所望の物理的特性としては、典型的には光透過率、重力膨潤比、剛性率、負荷モジュラス、損失モジュラス、貯蔵モジュラス、動的弾性率、圧縮モジュラス、架橋および細孔径がある。好ましい実施態様では、所望の物理的特性は物理的架橋である。
【0017】
好ましい実施態様においては、ビニル重合体は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、ビニル重合体は、分子量約50kg/モル〜約300kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである。好ましい実施態様においては、ビニル重合体は、分子量約100kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである。典型的には、ビニル重合体溶液は、溶液の重量に対してポリビニルアルコール約1重量%〜約50重量%溶液である。好ましい実施態様においては、ビニル重合体溶液は、溶液の重量に対してポリビニルアルコール約10重量%〜約20重量%溶液である。
【0018】
特定の好ましい実施態様においては、本方法は、粘弾性溶液をゲル化剤とさらに接触させる工程を含み、それにより、典型的には得られるゲルの物理的または化学的特性を変えることができる。この方法は、ゲルの物理的特性を局所的に修正する、例えば体の空隙、例えば椎間板中の空間中でゲルを所定の位置に維持するのに好適である。
【0019】
好ましい実施態様においては、第一溶剤は、脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C1〜C6アルコールの水溶液およびそれらの混合物からなる群から選択される。ゲル化剤は、ビニル重合体よりも溶解度が高いのが好ましい。特定の好ましい実施態様では、ビニル重合体をゲル化剤の水溶液中に導入する。
【0020】
典型的には、ビニル重合体溶液とゲル化剤の混合物とのフローリー相互作用パラメータは、0.25〜1.0である。好ましい実施態様では、この混合物のフローリー相互作用パラメータは、少なくとも0.5、より好ましくは約0.25〜約0.5である。
【0021】
ゲル化剤は、典型的には、塩、アルコール、ポリオール、アミノ酸、糖、タンパク質、多糖、それらの水溶液、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい実施態様では、ゲル化剤は、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施態様では、ゲル化剤は、バイグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施態様では、ゲル化剤は、アルカリ金属塩、最も好ましくは塩化ナトリウムである。
【0022】
ゲル化剤は、乾燥固体として、または溶液で加えることができる。例えば、固体のNaClをビニル重合体の水溶液に加えるか、あるいは約1.5モル〜約6.0モル、より好ましくは約2.0モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液として加えることができる。さらに別の好ましい実施態様では、ゲル化剤は、メタノール、エタノール、i−プロパノール、t−プロパノール、t−ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択されたアルコールの水溶液である。
【0023】
ゲル化剤は、ビニル重合体溶液と混合する時は、活性形態にあっても、不活性形態にあってもよい。好ましい実施態様では、粘弾性溶液のゲル化を引き起こす工程は、ゲル化剤を活性化させる工程を含む。好ましくは、制御し得るトリガー反応により不活性ゲル化剤を活性化する。
【0024】
特定の好ましい実施態様では、不活性ゲル化剤は、巨大分子であり、活性ゲル化剤は、巨大分子の開裂により放出された巨大分子の断片を含んでなる。ある種の実施態様では、巨大分子の開裂は、酵素による開裂であり、好ましい巨大分子は、選択された酵素の生理学的基質である。好ましい実施態様では、巨大分子は、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、ケラタン硫酸塩、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択され、酵素は、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼAC、コンドロイチナーゼB、睾丸ヒアルロニダーゼ、ヒアルロンリアーゼ、ヘパリナーゼI/IIIおよびそれらの混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施態様では、巨大分子は、バイグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカン、ペルレカン、フィブロモジュリン、ベリシカン、ノイロカン、ブレビカンおよびそれらの混合物からなる群から選択され、酵素は、例えばアグレカナーゼおよびそれらの混合物を包含する群から選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
別の実施態様では、巨大分子は熱的に変性することができ、好ましい巨大分子はコラーゲンである。あるいは、巨大分子を、電磁放射線または粒子放射線で照射することにより、開裂させてもよい。
【0026】
別の好ましい実施態様では、不活性ゲル化剤は、小胞、リポソーム、ミセルまたはゲル粒子中に封鎖された貧溶剤である。ある種の好ましい実施態様では、リポソームは、光トリガー反応可能なジプラスマロゲンリポソームである。別の好ましい実施態様では、リポソームが、哺乳動物の体温近くで相転移を受ける。好ましくは、リポソームは、ジパルミトイルホスファチジルコリンとジミリストイルホスファチジルコリンの混合物を包含するが、これらに限定するされるものではない。
【0027】
別の好ましい実施態様では、不活性ゲル化剤は、哺乳動物の体温近くで相転移を受ける時に活性形態になるゲル粒子と会合する。そのような実施態様では、ゲル粒子は、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−アクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒアルロン酸、プルロニックおよびそれらの混合物からなる群から選択された重合体を含んでなるのが好適である。別の好ましい実施態様では、ゲル粒子は、分解を受けた時に、その内容物を放出する。
【0028】
典型的には、ゲル化速度を制御し、注入、成形またはカレンダー加工を包含する、粘弾性溶液のさらなる処理に必要な、十分な加工性期間を与える。好ましい実施態様では、粘弾性溶液を、哺乳動物体内の実際の、または潜在的な空間中に注入する。特に好ましい実施態様では、粘弾性溶液を椎間板中または関節、例えば股もしくは膝中に注入する。ヒドロゲルは、一般的な物理的特性により、または注入箇所におけるその局所的物理的特性により、体の空間中に保持することができる。好ましい実施態様では、注入箇所の近くにゲル化剤をさらに加えることにより、所望の局所的物理的特性を調節することができる。別の好ましい実施態様では、公知の医療装置を使用して注入箇所または体空隙の他の欠損を密封、補強または閉鎖することにより、ヒドロゲルを体空間中に保持することができる。好適な、そのような装置は、ここにその全文を参考として含める、公開された国際特許出願第WO01/12107号および第WO02/054978号に開示されている。
【0029】
別の好ましい実施態様では、処理工程が、火傷または挫傷を被覆することを包含する。
【0030】
本発明の好ましい実施態様は、ゲルの製造方法およびゲルの特性を制御する方法を提供する。本発明の好ましい実施態様では、ゲルの製造方法は、ビニル重合体を第一溶剤に溶解させ、ビニル重合体溶液を形成すること、および該ビニル重合体溶液を、ある量の第二溶剤中に導入し、ゲル化を引き起こすことを含んでなり、該第二溶剤は、処理温度で第一溶剤よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する。このフローリー相互作用パラメータ(χ)は、無次元であり、例えば温度、濃度および圧力によって異なる。溶剤は、低いχ値を有するか、または溶剤が高いχ値を有するとして特徴付けられ、その際、χ=0がモノマーに類似した溶剤に対応する。高いχ値を有する溶剤は、ある温度でゲル化過程を引き起こすとして特徴付けられる。本発明により、ゲル化を引き起こすのに十分なフローリー相互作用パラメータを有する第二溶剤を使用することにより、シータゲルが形成される。
【0031】
好ましくは、好ましい実施態様で使用する第二溶剤は、フローリー相互作用パラメータが0.25〜1.0である。典型的には、第一および第二溶剤の特徴は、室温または哺乳動物の体温で好ましい実施態様の方法を使用できるように選択する。本発明の方法により製造されるゲルは、物理的な架橋を有し、化学的架橋を実質的に含まない。好ましい実施態様では、ビニル重合体がポリビニルアルコールである。
【0032】
幾つかの実施態様では、ビニルを浸漬溶剤(第二溶剤)中に接触させ、第一溶剤と接触させる複数のサイクルを行う。あるいは、この方法は、ゲルを少なくとも1回の凍結−融解サイクルにかけることを包含する。従って、ポリビニルアルコール(PVA)ヒドロゲルは、シータゲルおよびクリオゲルの両方でよい。いづれか一方の方法により部分的ゲル化を達成し、次いで、他方を使用して完了させるか、または2つの方法を交互に使用することもできる。
【0033】
本明細書では、例および考察をビニル重合体、特にPVAヒドロゲルに関して記載するが、シータゲルは、以下にフローリー相互作用パラメータに関して説明する適切な種類の状態図を有するすべての重合体を使用し、類似の方法で製造することができる。ゲル化工程の際に機械的な力をゲルに作用させ、それがゲル化方法を変化させたり、配向したゲル化を誘起することができる。
【0034】
幾つかの実施態様では、ビニル重合体は、分子量約50kg/モル〜約300kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである。別の実施態様では、ビニル重合体は、分子量約100kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである。ビニル重合体溶液は、溶液の重量に対してポリビニルアルコール約1重量%〜約50重量%溶液である。好ましくは、ビニル重合体溶液は、溶液の重量に対してポリビニルアルコール約10重量%〜約20重量%溶液である。
【0035】
第一溶剤は、ゲル化を可能にするには不十分な低いχ値を有する溶剤、すなわち以下に記載するように、重合体要素と、それに隣接する溶剤分子との間の相互作用のエネルギーが、重合体−重合体対と溶剤−溶剤対との間の相互作用のエネルギーを超える溶剤の群から選択する。幾つかの実施態様では、第一溶剤は、脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C1〜C6アルコールの水溶液およびそれらの混合物からなる群から選択するが、これらに限定するものではない。
【0036】
一般的に、浸漬溶液は、ゲル化を可能にする高い、または十分なχ値を有する溶剤を含んでなる。幾つかの好ましい実施態様では、浸漬溶液は、アルカリ金属の塩、典型的には塩化ナトリウムの水溶液である。別の実施態様では、浸漬溶液は、C1〜C6アルコールの水溶液、典型的にはメタノール、エタノール、i−プロパノール、t−プロパノール、t−ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択されたアルコールの水溶液である。特定の実施態様では、浸漬溶液は、メタノールの水溶液である。
【0037】
一般的に、本発明のビニル重合体ゲルは、凍結−融解ゲル化を行うのが困難または不可能である状況で、フィルター、微小流動装置または薬剤放出構造のような用途向けに、その場で製造することができる。
【0038】
一実施態様では、ビニル重合体溶液を、少なくとも2つの側部およびメンブランを有するチャンバーの中に入れる。メンブランは、ビニル重合体を保持しながら、小さな分子および溶剤を通す特性を有する。
【0039】
幾つかの実施態様では、ビニル重合体溶液を、メンブランにより、少なくとも2種類の異なった浸漬溶剤、典型的には第一浸漬溶剤および第二浸漬溶剤、から分離する。幾つかの実施態様では、第一浸漬溶剤は、約1.5モル〜約6.0モルの塩化ナトリウム水溶液である。幾つかの実施態様では、第二浸漬溶剤は、約2.0モル〜約6.0モルの塩化ナトリウム水溶液である。別の実施態様では、第一浸漬溶剤は、約1.5モルの塩化ナトリウム水溶液であり、第二浸漬溶剤は、約2.0モル〜約6.0モルの塩化ナトリウム水溶液である。そのような実施態様では、少なくとも2種類の異なった浸漬溶剤間のビニル重合体溶液を横切って化学ポテンシャルの勾配が形成される。一実施態様では、ビニル重合体溶液を横切って約4モルcm−1の化学ポテンシャル勾配が形成される。
【0040】
一般的に、ビニル重合体溶液を横切って形成される化学ポテンシャルの勾配に対応する特性勾配が、ビニル重合体ゲルを横切って形成される。典型的には、この特性は、光透過率、膨潤比、剛性率、負荷モジュラス、損失モジュラス、貯蔵モジュラス、動的弾性率、圧縮モジュラス、架橋および細孔径の少なくとも一つである。
【0041】
幾つかの実施態様では、一方または両方の浸漬溶剤を一時的なパターンで変化させ、物理的特性の空間的勾配を調整する。そのような一時的サイクル化は、拡散時間よりも短い時間規模で行い、不均質ゲルを形成する。このようにして、縁部または周辺部区域で類似した特性の組合せを有し、中央区域では別の特性組合せを有する、例えば周辺部区域では中央区域よりも多くの架橋を有する、ゲルを製造することができる。浸漬溶剤の一時的なサイクル化は、フィルター製造用のゲルの構造、例えば細孔径、を修正することにも使用できる。そのようなフィルターでは、ある種の形態のクロマトグラフィー(サイズ除外による)または他の、細孔径制御を必要とする濾過用途に、小さな、局所的に変化する細孔径が有用になろう。
【0042】
物理的に架橋したゲルと、イオン系または非イオン系化学種、例えばヒアルロン酸、ポリアクリル酸および治療薬、を包含する他の化合物を組み合わせることができる。
【0043】
一実施態様で、本発明は、塩化ナトリウム約2〜約3モル中に浸漬することによりゲル化した、少なくとも約10重量%のポリ(ビニルアルコール)溶液を含んでなる物理的に架橋したヒドロゲルを提供するが、このヒドロゲルは、約14%〜約21%が物理的に架橋している。そのような実施態様では、最終的なゲルは、約12〜約29%のポリ(ビニルアルコール)を含んでなる。
【0044】
本発明の好ましい実施態様は、少なくとも一つの機械的特性勾配を有するビニル重合体ゲルを含んでなる調製品を提供する。PVAシータゲルは、組織を置換、修復または強化するための、生物相容性の、負荷を支える、または負荷を支えない材料として使用できる。一般的に、PVAシータゲルは、PVAクリオゲルが使用されている用途でPVAクリオゲルを置き換えることができる。
【0045】
一実施態様では、ポリビニル重合体ヒドロゲルを含んでなるワン−ピース補欠椎間板であって、ワン−ピース補欠椎間板の機械的特性配分が、天然椎間板の髄核および線維輪の組合せにおける機械的特性の空間的配分に近い補欠椎間板を製造する。
【0046】
高圧縮PVAシータゲルは、PVAをNaClと共に逆浸透メンブランに入れ、次いでNaClの外側濃度を極めて高くし、PVA/NaClを圧縮することにより、製造することができる。水が逆浸透メンブランを離れるにつれてNaCl濃度が上昇し、PVAが高圧でゲル化する。PVAの濃度は、逆浸透メンブラン内側のNaClとPVAの比により、変えることができる。
【0047】
好ましい実施態様では、攪拌中にゲル化させることにより、または流体の小滴を架橋溶剤、例えば浸漬溶液、中に滴下することにより、ゲルマイクロ粒子を製造することができる。
【0048】
好ましい実施態様では、分解して(または吸着しないで)ゲル上にパターン(「空の空間」)を、あるいは薬剤放出中心として、「刻印する」粒子でゲルを埋め込むことができる。様々な分子量の中性に帯電した重合体の埋込を使用し、ゲルの「空間を充填」することができる。処理の後、これらの重合体を除去し、調整された細孔構造を残すことができる。凍結−融解サイクルに敏感な材料は、カプセル封入することができる。高圧縮で余分な反発を与えるために静電気的に帯電しているが、高濃度の塩で崩壊する粒子または重合体で、これらのゲルを埋め込むことができる。そのような埋め込まれた粒子は、ある種の様式(例えば触媒作用)で活性になる粒子でよい。ヒドロキシアパタイト粒子または他の骨誘発性の粒子、薬剤、および類似の部分を埋め込み、軟骨置換する場合の骨の内部成長を促進することができる。
【0049】
好ましい実施態様では、ポリ(ビニルアルコール)ゲルを使用し、生物活性化合物、例えば成長因子、フィブロネクチン、コラーゲン、ビンクリン(vinculin)、ケモキン(chemokines)、および治療剤を含む軟骨を含有および放出することができる。治療剤の配合に関する米国特許第5,260,066号および第5,288,503号の開示された全文は参考として本願明細書に包含される。含有化合物、例えば治療剤または薬物が時間と共に放出され、正常組織、例えば骨、血管および神経、または腫瘍の局所的な成長を調整することができる。
【0050】
浸漬溶剤の一時的調整により、好ましい実施態様による、薬物および他の生物活性分子を含有および放出するための適切な構造および物理的特性を有するシータゲルを製造することができる。一実施態様では、高度に架橋した外皮が形成され、薬物/活性剤を含む内側層は弱く架橋されているだけである。そのような実施態様では、外皮は速度を制限する成分であり、一定の放出速度を有する。従って、好ましい実施態様による薬物放出は、PVA架橋における空間的勾配を制御することにより調整できる放出プロファイルを包含する。
【0051】
一実施態様では、本発明は、ヒドロゲルの機械的特性および構造を、制御できるように調整する方法を提供する。好ましい実施態様では、本発明は、天然構造中に存在する機械的特性勾配に、より緊密に適合した機械的特性の一つ以上の勾配を有する調製品を提供する。一実施態様として、本発明は、天然構造の機械的挙動を模擬する補欠ヒドロゲル調製品を提供する。好ましい実施態様で、本発明は、天然椎間板に見られる機械的特性の勾配を模擬するポリビニルアルコール製補欠椎間板を提供する。別の好ましい実施態様で、本発明は、天然椎間板の髄核と線維輪における機械的特性の空間的配分を模擬するワン−ピース補欠椎間板を提供する。
【0052】
好ましい実施態様では、ゲルに粒子状物質も添加することができる。上記したように、粒子状物質は、調整された細孔構造を形成するために添加することができる。さらに、別の好ましい実施態様では、粒子状物質は、特別なナノ構造ゲルを形成するために添加することができる。これらの粒子は、帯電していても、いなくてもよく、粒子の表面でPVA結晶の核を形成することができる。添加できる粒子としては、無機または有機コロイド状化学種、例えばシリカ、クレー、ヒドロキシアパタイト、二酸化チタンまたは多面体オリゴマー状シルセスキオキサン(POSS)があるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
別の好ましい実施態様では、粒子は、帯電効果を与え、ゲルの圧縮モジュラスを変えるため、好ましくは圧縮モジュラスを増加させるために添加する。この実施態様は、粒子を添加したシータゲルを使用することができる。ゲルを塩溶液中で圧縮すると、最密充填粒子を有しながら、それらの電荷を遮蔽する構造が得られる。例えば脱イオン水(DI)で再水和させることにより、帯電界が膨脹し、張力のかかったゲルが得られる。これによって、ゲルは、例えば高帯電粒子状物質負荷で、軟骨の物理的特性に近くなる。
【0054】
別の好ましい実施態様では、粒子状物質をゲル構造に加え、機械的特性、例えば耐摩耗性、を与える。硬質ガラス(シリカ)または様々なクレーを添加することにより、ゲルに耐摩耗性を与えることができる。
【0055】
本発明の別の好ましい実施態様で、ゲルを製造し、ゲルの特性を制御する方法は、第一溶剤を使用してビニル重合体溶液を形成し、続いてある量の第二溶剤を導入してゲル化を引き起こすことにより、上記のシータゲルを形成すること、続いて脱水を促進し、ゲルを制御できるように構造化することを包含する。この方法により、ゲルを一様に構造化し、PVAシータゲルの物理的架橋を均質化することができる。この構造は、含まれるPVA溶液を、PVA溶剤対に対するシータ点よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する溶剤中に浸漬し、続いて含まれるPVAを、PVA溶剤対に対するシータ点よりも低いフローリー相互作用パラメータを有する別の溶剤に浸漬することにより、達成できる。この方法を、フローリー相互作用パラメータを順次低下させながら、ゲルに望ましい相互作用パラメータ値に達するまで、続けることができる。
【0056】
本発明の好ましい実施態様による別の方法では、塩濃度の変化がゲルの拡散過程より遅く、またはそれと等しくなるように、濃NaCl溶液を脱イオン水に徐々に加えることにより、同等の電解質濃度範囲を通して、PVA溶液を徐々に変化する溶剤品質にさらすことができる。
【0057】
本発明の別の好ましい実施態様では、PVA溶液を少なくとも一つの凍結−融解サイクルにかけてゲルを特定の形状に固定し、続いて、最終的な所望のフローリーパラメータに到達するまで、フローリー相互作用パラメータが順次高くなる一連の溶液中に浸漬することができる。あるいは、PVA溶液を、2MのNaCl溶液に浸漬した後、一つ以上の凍結−融解サイクルにかける。
【0058】
好ましい一実施態様では、PVA溶液中にナノ粒子を分散させる。溶剤は、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノールまたは他の、溶液調製の際にPVAと溶剤の対に対するシータ点より低いフローリー相互作用パラメータを示すいずれかの溶液でよい。次いで、PVA/ナノ粒子混合物を、少なくとも一回の凍結−融解サイクルにかける。凍結−融解サイクルに続いて、ゲル化したPVAを、PVA/溶剤対に対するシータ点以上のフローリー相互作用パラメータを有する溶剤中に浸漬し、PVA/ナノ粒子混合物をさらに物理的架橋させる。
【0059】
本発明の実施態様の別の態様では、重合体分子の相互作用の仕方を変えることにより、重合体ゲルのゲル化速度を制御する方法をさらに提供する。ゲル化速度を制御することにより、例えば注入、成形または他の、ゲル化するPVA溶液の流動性に依存するいずれかの処理工程により、比較的ゆっくりゲル化するPVA溶液を操作または作業することができる時間の「寛容度(window)」が得られる。好ましい実施態様では、ゲル化するPVA溶液を問題とする区域、例えば体のキャビティ、中に注入し、その場でゲル化させ、PVA製品を形成する。好ましい体のキャビティとしては、髄核および関節中の正常な、または病理学的な空隙がある。
【0060】
好ましい実施態様では、重合体、好ましくはPVAを、その結晶化温度より高く維持することにより、ゲル化速度を制御し、それによって、溶剤品質が悪くてもゲル化を阻止することができる。別の好ましい実施態様では、良から貧への変化を誘発できる第二溶剤を使用することにより、ゲル化速度を制御することができる。幾つかの好ましい実施態様では、溶剤の品質は、ミセルの破壊により変えることができる。別の好ましい実施態様では、溶剤の品質は、高分子量分子の開裂により変化させることができる。別の好ましい実施態様では、貧溶剤を、ゲル化過程を促進する処理温度との組合せで使用する。
【0061】
重合体ゲルを制御および形成するための装置および方法の、上記および他の特徴および利点は、様々な図面を通して同様の部品を同様の番号で示す添付の図面に例示する装置および方法の好ましい実施態様のより詳細な説明から明らかである。これらの図面は、必ずしも寸法通りではなく、本発明の原理を例示することに力点が置かれている。
【本発明の好ましい態様の詳細な説明】
【0062】
本発明の好ましい実施態様を、例えば椎間板補欠物として使用するのに好適な生物相容性材料を製造するための、化学的架橋または照射を行わずに、一様なPVAヒドロゲルを形成することに関して説明する。さらに、本発明の好ましい実施態様は、PVAゲルの製造方法を包含するが、これによって、潜在的に広範囲な、制御可能な機械的特性を有するように特定の用途向けに設計することができ、構造および物理的特性における勾配で操作できる、新しい種類のPVAヒドロゲルが得られる。
【0063】
ここで使用する「シータ溶剤」とは、シータ温度で、シータ状態にある重合体の溶液を与える溶剤を意味する。シータ溶剤は、単一溶剤または2種類の溶剤の混合物、溶剤と非溶剤の混合物、さらには、本明細書に開示された全体を参考として包含する、Elias, H.G.、「Theta Solvents」、Brandrup, J. and E.H. Immergut, Polymer Handbook 3 Ed., John Wiley and Sons, New York, 1989に記載されているような共溶剤性(co-solvency)の場合には、2種類の非溶剤の混合物から構成されてもよい。
【0064】
ここで使用する「ゲル化」は、PVAの結晶化による永久的な物理的架橋の形成を意味する。これは、幾つかの文献で、ゲル化は重合体が会合する点のことを指しているのであり、続いて永久的結合を形成する結晶化は必ずしも起きないと云われていることと対照的である。
【0065】
ここで使用する「会合する」は、熱力学的に、または溶剤が駆動される過程を意味し、そこでは重合体(または他の化学種)が、別の化学種に非常に近いところよりも、それ自体に類似している環境中に「優先的に」存在する。この重合体が局所的に会合することにより、常に「相分離」が起こり、これによって不均質溶液が生じることも、生じないこともある。
【0066】
特定の理論には捕らわれずに、シータ溶剤を使用し、スピノーダル分解機構を通して、溶液中のポリ(ビニルアルコール)重合体を強制的に極近接させることにより、溶解し難い物理的会合が形成されると考えられる。ここで使用するスピノーダル分解とは、密度または組成における無限小変動に対して不安定な、均質な、過飽和溶液(固体または液体)におけるクラスター反応を意味する。従って、溶液は、小さな変動に始まり、核形成障壁なく、ギプスエネルギーの減少と共に進行し、2つの相に自然に分離する。
【0067】
本発明で使用する方法論は、ゲル化を誘起し、強制的にポリ(ビニルアルコール)鎖を物理的会合させるのに十分なχ値を有する溶剤を制御しながら使用することにより、PVAヒドロゲルを形成する。ポリ(ビニルアルコール)の不規則な「衝突」を阻止するために、溶剤品質を注意深く管理し、特に大きな成分には、溶剤の「最前部」がポリ(ビニルアルコール)溶液に、制御された様式で進入することが不可欠である。例えば、NaCl/脱イオン(DI)水およびメタノール/脱イオン水溶液を、それらのポリ(ビニルアルコール)に対する「シータ」値に近い温度および濃度で使用し、物理的会合を強制し、続いてポリ(ビニルアルコール)のゲル化を誘起する。
【0068】
一般的に、溶剤品質を管理することにより、比較的ゆっくりゲル化するPVA溶液を操作または加工できる、時間の「寛容度」を持たせることができる。この操作には、注入または成形または他のいずれかの考えられる処理工程が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
本方法は、薬剤(タンパク質、ペプチド、多糖、遺伝子、DNA、DNAに対するアンチセンス、リボザイム、ホルモン、成長因子、広範囲な薬物、CAT、SPECT、X線、透視診断法、PET、MRIおよび超音波用の画像形成剤を含むことができる)の制御された送達、股、脊柱、膝、腕、肩、手首、手、くるぶし、足および顎用の負荷を支える移植物の形成、他の様々な医学的移植物および装置(活性包帯、経表皮薬物送達装置、スポンジ、抗接着性材料、人造硝子体液、コンタクトレンズ、乳房移植物、ステント、および負荷を支えない人造軟骨(すなわち耳および鼻)を含むことができる)の製造、機械的特性または構造の勾配が必要なすべての用途を包含する、医学、生物学および工業分野で使用する材料の製造に応用できる。
【0070】
ゲル形成の機構は相分離を含み、相分離は、スピノーダル分解過程に続く、溶液のPVA濃度が高い区域における水素結合により媒介される結晶化と通常は考えられる。溶剤の選択は、凍結−融解工程に影響を及ぼすことが公知である。また、ある種の溶剤は、溶液の温度を溶剤の凝固点より下げずに、PVAをゲル化させるのに使用できることも公知である。DMSO、エチレングリコール(EG)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、およびゼラチンのような溶剤は、常温でPVAをゲル化させるのに使用されている。本発明の好ましい実施態様は、PVA溶液をゲル化させる手段として塩の使用、およびゲル化工程の際に溶剤品質を操作および管理することを包含する。
【0071】
良好な溶剤中の理想的な重合体鎖は、沈殿につながる会合挙動を示さない。溶剤品質がシータ条件より下に低下すると、鎖は優先的に会合を始め、最終的に重合体相が分離する。理想的な重合体では、重合体鎖中に、熱力学的(溶剤)力によって与えられる以外の、他の相互作用力は無く、従って、正常な可逆的状態図が当てはまる。しかし、PVA中では、水素結合により起こされる強い結合力があり、鎖の局所的な結晶化が引き起こされる。この結晶化は、溶剤が「良」であっても起こることがある。良溶剤中の化学的ポテンシャルは会合を促進しないが、不規則な熱的運動が鎖を短時間接触させ、この「溶媒和力」を圧倒することがある。この時点で、PVAの場合のように、条件が正しければ、鎖は結晶化を開始する。この結晶化を開始する初期接触の率は、溶剤品質によって異なる。従って、溶剤品質が低下するにつれて、PVAが会合する可能性は、溶剤品質により説明される鎖自体の親和力により動かされるので、増加する。その結果、溶剤品質の変化率は、温度の操作により観察されているように、重要である。この工程は、溶剤品質に関連しているので、温度、濃度および圧力によって異なる。従って、PVAのゲル化は、時間に依存し、より重要なことに、会合「時間」と相分離「時間」との間の競合に依存していなければならない。この競合は、実験的に観察されており、その結果、冷却速度および溶剤に応じて異なった初期ゲル構造、およびPVAゲルのエージングが得られている。
【0072】
従って、制御された溶剤添加により、または温度、圧力もしくは他のいずれかの関連するパラメータにより、溶剤品質を調整することにより、この会合の速度を制御することができる。従って、結晶化が起こり得る前に重合体が溶液から生じる程には溶剤が貧ではないことを確保しながら、鎖同士の接近を強化することにより、会合速度を加速するのに溶剤が十分に貧になるように、系の溶剤品質を制御することが望ましい。ゲル形成に最適な条件は、χ=0.25〜0.5の範囲内であると思われるが、これらの値の外側でも、ゲルを形成することは可能である。これらの競合する効果のバランスをとることにより、依然として流体であるが、急速にゲル化する重合体/溶剤溶液を得ることができる。
【0073】
溶剤品質が温度または圧力の制御により変化する単一の溶剤に関して、スピノーダル分解相転移は、溶剤品質の低下により加速される。三元混合物に関して、相分離は、PVAが(連続的な)水/溶剤B混合物によりあまり溶媒和されず、従って、単一溶剤系と同等の機構の下で相分離するか、あるいはPVAと溶剤Bの両方が水により溶媒和されるが、相互に異なった混和性を有すると理解することができる。従って、これらの材料は、二元混合物のように挙動し、従って、相分離する。概念的には僅かに異なるが、結果はほとんど等しい。貧溶剤を生じる2種類の良溶剤の挙動は、共非溶剤性(co-nonsolvency)と呼ばれる。この手法により、各成分を外部で混合し、次いでPVA溶液を問題の区域、例えばキャビティ、中に注入し、そこで、該溶液が続いてゲル化することができる。このPVAを注入し、ゲル化をその場で誘発する能力は、第二溶剤が、必要な熱力学的に特性を有するなら、どのような溶剤でもよいので、核の置き換えまたは椎間板(IVD)の増強に特に好適である。この第二溶剤は、長鎖重合体、タンパク質あるいは他の複雑な分子、またはそれらの水溶液、例えばポリエチレンオキシド(PEO)、グリコサミノグリカン(GAG)またはゼラチン、もしくはより簡単な分子、例えば塩のような単にイオン系の化学種、例えばNaCl、またはポリ(エチレングリコール)のような短鎖分子、例えばPEG 400、グリセリンまたはアミノ酸、例えばセリンまたはグリシンでよい。高分子量化学種は、一般的には溶剤として特徴付けられないが、フローリーにより記載されている下記の理論は、溶剤/重合体対に対する最終的な相互作用は溶剤サイズによって影響されるが、溶剤分子の長さを区別していない。
【0074】
PVAは、脱イオン(DI)水中、室温で長時間にわたり会合することが知られている。これは、97℃の純水中におけるPVAのシータ転移よりはるかに低い。凍結−融解過程およびここで使用するシータゲル過程の両方で生じるクリスタライトは、融解ピークが60℃に近い。さらに、PVAが関与するほとんどの研究は、PVAが十分に「溶解している」ことを確保するために少なくとも80℃の高温を必要としている。これらの観察は、この温度より上では、PVAはもはや結晶化能を有さず、従って、溶剤品質に関して理想重合体のように挙動することを示唆する。従って、この臨界溶融温度より高い溶液中にPVAを溶解させることができれば、簡単な会合による沈殿または相分離はあっても、結晶化、従ってゲル化は起こり得ないと理解されている。使用する溶剤が貧であれば、熱力学的効果による、ある程度の会合がある(従って、不均質沈殿が起こり得る)が、PVAヒドロゲルを特徴付ける不可逆的なゲル化は起こり得ない。しかし、温度が下がると、すぐに結晶化が起こり、その系はゲル化を開始することができる。しかし、このゲル化結晶化は、依然として速度が限られており、従って、この温度より低くても、貧溶剤中で、この溶液は加工が可能である。混合は、重合体鎖の衝突を促進することにより、このゲル化速度に影響を及ぼすことができる。
【0075】
一般的に、物理的に架橋したポリ(ビニルアルコール)ゲルは、ポリ(ビニルアルコール)水溶液(溶液の1〜50重量%PVA)から製造し、この水溶液は、ゲル化に十分なχ値を有する溶剤と接触することによりゲル化するが、この溶剤は、以下、第二溶剤と呼ばれ、ポリ(ビニルアルコール)溶液に対する「シータ」濃度に近い濃度にある。
【0076】
本発明は、化学的架橋剤、照射または熱的サイクルを使用せずに、ポリ(ビニルアルコール)ヒドロゲルを製造する方法を提供する。好ましい実施態様では、好ましくは第二溶剤(NaClまたはメタノール)のポリ(ビニルアルコール)溶液中への拡散を制御することにより、溶剤品質を管理し、均質な、物理的に架橋した構造を製造する。
【0077】
本方法は、フローリー相互作用パラメータにより都合良く表される、溶剤品質が異なった溶剤中での制御された変化を利用し、PVAを強制的に会合させる。化学的架橋剤を使用しないので、ゲルは、化学的架橋剤を実質的に含まず、従って、熱的サイクルにかけたPVAクリオゲルと同じ位生物相容性であると考えられる。脱イオン水中における平衡化に続くゲル中のNaCl残留物は、その濃度が生理学的に関連する値よりも確実に低いので、問題ないと考えられる。
【0078】
図2は、フローリー相互作用パラメータχに関する第一溶剤と第二溶剤の関係を示す。図2は、特定温度におけるフローリー相互作用パラメータχと重合体濃度(Φ)の関係を示すグラフである。χ=0.25における横軸は、第一溶剤中の重合体溶液(下側)および第二溶剤中の重合体溶液(上側)を分離している。矢印および菱形は、溶剤1を溶剤2で置き換えることにより生じたχに対する影響を示す。
【0079】
理論的に、フローリー相互作用パラメータχを使用することにより、すべての溶剤は「良」または「貧」と定義することができる。χに関して、これらの溶剤性特性は、大まかに云って、良溶剤ではχ<0.5であり、貧溶剤ではχ>0.5であり、χ=0.5の条件は、「シータ」溶剤を規定する。良−貧への溶剤の推移は、段階的な変化ではなく、選択した溶剤に対する重合体の、溶解度の漸進的な変化である。従って、溶剤品質を変えることにより、重合体同士の、溶液が十分に希釈されている場合の鎖内相互作用によるか、または鎖間相互作用により、親和力が変化する。溶剤品質変化の、重合体溶解度に対する影響は、実験的データで見ることができるか、あるいは理論的に式1で表すことができる。
ν=(1−2χ)ad (1)
式中、νは単鎖の除外される体積であり、χはフローリー相互作用パラメータであり、adはモノマー体積である。従って、鎖が絡まり合っていないシータ点では、ν=0またはχ=0.5である。ν<0では、相分離が起こり、ほとんど純粋な溶剤と重合体濃度が高い相との間に平衡がある。しかし、本明細書で考察する重合体分子はサイズが大きいために、常に幾つかの重合体が溶剤相中にあり、同様に、かなりの量の溶剤が重合体濃度の高い相の中にある。溶剤は、単一化学種でも、必ずしも低分子量化合物に限らない化学種の混合物でもよい。
【0080】
通常、PVA相は、スピノーダル分解過程を経て分離すると考えられる。この等式には速度に依存する効果は無いことに注意すべきであるが、スピノーダル分解過程には特徴的な速度があり、この速度は、本発明の実施態様で利用する速度効果のバランスである。水中のPVAに関して、フローリー相互作用パラメータは、濃度に弱く依存するが、約5%を超える重合体体積画分に対してχ>0.5である。PVAゲルは、溶剤よりも高い相互作用パラメータを有するが、χは分子量またはゲルの架橋密度に依存しない。
【0081】
好ましい実施態様では、第二溶剤のχは、第一溶剤(PVAを溶解している溶剤)のχよりもプラスでなければならず、好ましくは0.25〜2.0の範囲内にある。好ましくは、第一溶剤のχは0.0〜0.5の範囲内にある。一般的に、処理中の温度は、PVA溶液の凝固点のすぐ上から、処理中に形成される物理的架橋の融点まで変化し得る。好ましい範囲は、約0℃〜約40℃である。χは温度および濃度に連結していることに注意する。好ましい実施態様では、PVA溶液(第一溶剤)のχにおける一時的で空間的な変化は、別の混和し得る溶液(第二溶剤を含んでなる)との接触により制御され、その際、第二溶剤が第一溶剤を変性させる。
【0082】
化学的架橋剤および放射線処理の必要性を無くすことにより、非常に多様な成分を埋め込むことができる。例えば、多くの生物活性材料は、化学的架橋剤および放射線に対する耐性が非常に低い。さらに、一般的に凍結−融解工程は生物活性成分に対して穏やかであるが、凍結し得ないか、または不凍剤として作用し、従って凍結を阻止する重合体、バイオ重合体または細胞も、確実に意図することができる。
【0083】
これらのシータゲルの形成に使用する方法は、競合するクリオゲルで可能なよりも、最終的なゲルの材料特性をより広範囲にし、物理的構造をより大きく制御できると考えられる。熱的サイクルにかけたPVAゲルに対するシータゲルの特定用途に関する優位性を以下に概説する。
【0084】
クリオゲルは、各熱サイクルがゲルの材料特性を劇的に変化させるので、それらの最終的な特性に関する分解能がかなり低い。製造されるシータゲルは、溶剤の濃度が、シータ値を通過した後は、膨潤比を単調に低下させることを立証している。究極的な架橋密度を、溶剤濃度で達成できる分解能に比例して調節できることが望ましい。例えば、NaCl中に浸漬した10%PVA溶液では、最終的なゲルにおけるPVAの重量百分率が約7%/モルNaClの比率で変化する。
【0085】
本発明の好ましい実施態様は、約1重量%〜約50重量%PVAの初期重量(溶液の重量に対して)を有するゲルを提供する。好ましい実施態様では、この重量%は、最終ゲルで約12%〜約29%PVAであり、使用する浸漬溶液が約2.0〜約3.0MのNaCl(aq)であった。この最終PVA重量百分率の範囲は、熱的サイクルにかけたPVAにより達成できる範囲に匹敵している。より高いNaCl溶液(6.0Mを超える)では、最終ゲルのPVA%はNaCl濃度と共に単調に増加する。空間的特性で滑らかな勾配を示すPVAシータゲルを製造できることが判明した。対照的に、クリオゲルでは、特性の勾配を簡単に形成できない。その代わりに、通常の手法では、積み重ねた薄層の配列を独立して製造し、溶解したPVA中で接合し、次いで再びサイクルにかける必要がある。そのような配列におけるモジュラスの鮮明な差により、機械的特性が好ましくなく、界面が不均質な材料が形成されよう。好ましい実施態様では、機械的特性の勾配が滑らかなPVAシータゲルを使用し、十分な圧縮強度を有する中央部の低モジュラス「髄」およびクリープおよび好ましくない歪みを最小に抑える、高モジュラス周辺「輪」を有する、補欠椎間板を製造することができる。
【0086】
モジュラス強化は、イオン系化学種を配合することにより、達成できる。NaCl中で製造されるシータゲルでは、天然(ヒアルロン酸)または合成(PAA)重合体を包含し、ひずみ可変圧縮モジュラスを有するゲルを製造することができる。強NaCl中でPVA/PAA溶液をゲル化することにより、PAA中のイオン化し得る電荷が遮蔽され、潰れたPAAの周りでPVAが架橋される。脱イオン水中で再平衡化することにより、PAAを膨脹させ、PVAマトリックスに予備応力を作用させることができる。得られた構造は、配合されたPAA上で固定された電荷の反発により、非常に異なった機械的圧縮モジュラスを有するはずである。
【0087】
この分野では、PVAは、動物の中に移植された時に、宿主の生物学的応答をほとんど、または全く引き出さないことが公知である。この理由から、PVAは、薬物送達、細胞カプセル封入、人造涙、人造硝子体液、コンタクトレンズ、およびより最近では神経カフスを含む種々の生体医学的用途に使用される。しかし、PVAは、主としてそのモジュラスが低く、摩耗特性が劣るために、負荷を支える生体材料としての使用は考えられていない。すべての脊椎移植物が耐える必要がある負荷は、相応に高く(圧縮で4MPaのオーダー)、高い圧縮モジュラスを必要とする。生体内では、椎間板に対する圧縮軸方向負荷は、髄核により線維輪中の引張周負荷に伝達される。椎間板全体の機能を置き換えることを意図する生体材料はすべて、類似の異方性特性を取り入れる必要がある。
【0088】
全体的な強度を改良するために、PVAのモジュラスおよび摩耗特性を、化学的または物理的架橋の形成により強化することができる。化学的薬剤(例えばポリアルデヒド)の添加による、照射による、または凍結−融解サイクルによるPVAの架橋は、PVAゲルの耐久性を改良することが示されている。しかし、化学的添加剤は、好ましくない残留反応性化学種を後に残し、最終製品が移植に不適当になることがあり、照射は、マトリックス中にカプセル封入されている生物活性材料に悪影響を及ぼすことがある。従って、凍結−融解サイクルによる広範囲な物理的架橋の形成が、化学的手段または照射で誘発された架橋による好ましくない副作用無しに、PVAの耐久性を実質的に改良している。最近の調査は、凍結−融解サイクルにより形成された物理的架橋が、負荷を支える構造、例えば関節軟骨または椎間板、用の生物相容性置換物として使用するのに好適なモジュラスを有する生体材料を造り出すことを示唆している。
【0089】
重合体の溶媒和および「シータ」点
溶液中の重合体は、絶えず活発に運動している複雑な分子である。理想重合体鎖の形態は、通常、「ランダムウォーク」として説明され、そこでは分子が、簡単にするために、自由に接合され、移動する時は自由に移動すると仮定される。この挙動により、ガウス分布を有する球形状をとる重合体が得られる。実際には、鎖は、それに作用し、その形状および挙動を限定する多くの力を有する。自由溶液では、鎖は、系の温度から生じるブラウン変動からグループランダムウォークの状態にある。同時に、鎖が、(鎖は長く伸びた分子であるので)それ自体と、およびその周囲とどのように相互作用するかによって生じる力がある。
【0090】
重合体が溶液により容易に溶媒和される(すなわち重合体が、ゲル化に十分なχ値を持たない第一溶剤中にある)場合、溶剤に露出される重合体鎖の量を最大限にしようとするため、重合体は膨潤する。第一溶剤中では、フローリー, P.J.により、Principles of Polymer Chemistry、424頁、Cornell University Press, 1953(本明細書に参考として包含する)に記載されているように、重合体構成分子と、重合体に隣接する溶剤分子との間の相互作用エネルギーが、重合体−重合体および溶剤−溶剤間の相互作用のエネルギーを超える。その際、鎖は乱雑状態になり、隣接する鎖との接触に対して抵抗し、機械的圧縮および変形にも等しく抵抗する。溶剤性が変化すると、溶剤の品質が低下するので、この膨潤した形態が潰れる。
【0091】
シータ点では、溶剤品質は、ブラウン運動が鎖を理想的なガウス分布に維持する。この臨界閾より下では、鎖の断片は溶剤分子よりも、それぞれに隣接する方を好み、鎖は収縮する(すなわちゲル化に十分なχ値を有する第二溶剤)。フローリー相互作用パラメータχは、無次元であり、温度、圧力等に依存する。第一溶剤は低いχを有し、第二溶剤は高いχを有し、転移は約χ=0.5である。χ=0の場合は、モノマーに非常に良く似た溶剤に対応する。格子モデルでは、これは、自由エネルギーの全部が、格子上の様々な鎖パターンに関連するエントロピーから来る場合である。そのような場合、温度は構造に全く影響せず、溶剤は「無熱」と呼ばれる。無熱溶液は、良溶剤の特に簡単な例である。ほとんどの場合、パラメータχは、ドゥジャンによれば、Scaling Concepts in Polymer Physics, First ed. p.72:Cornell University Press (1979)、に記載されているように正である。溶剤品質が十分に貧である場合、鎖は完全に溶液から析出する。この効果は、溶液の温度操作によっても得られる。
【0092】
重合体溶液の濃度が十分に高くなった後、溶剤品質の調節は、第一溶剤の少なくとも一部を、鎖間相互作用ならびに鎖内相互作用を強制する第二溶剤で置き換えることにより、達成することができる。物理的架橋が起きた後、自由重合体を本来膨潤させる良溶剤のその後の存在は、物理的架橋により相殺される。鎖間会合により、重合体鎖は、この時特定の固定点で束縛される。その結果、重合体が溶媒和され、伸長されるにつれて、重合体はより変形し、強制的に引っ張られる。これは重合体鎖の溶媒和と変形した鎖中の張力との競合であり、これがゲルに、それらの興味深い機械的挙動を与えるのである。さらに、特定の条件下では、重合体鎖はイオン化され、その結果、電荷を生じることがある。隣接する同様の電荷は、静電気的な反発のために、さらに膨潤を引き起こす。これは、天然の軟骨(コラーゲンおよびグリコサミノグリカン)に、その高いモジュラスおよび高い吸湿性を与える機構の一部である。
【0093】
PVAにおけるゲル化機構
PVA重合体溶液の凍結−融解サイクルにより、物理的架橋(すなわち重合体鎖の「会合」による弱い結合)が形成される。このようにして形成されたPVAヒドロゲルは、「クリオゲル」と呼ばれ、例えば米国特許第6,231,605号および第6,268,405号に記載されている(これらの全文は本明細書に参考として包含される)。重要なのは、PVAクリオゲルの形成に使用される技術は、化学的架橋剤の導入または放射線を必要としないことである。従って、クリオゲルは、取り込まれる生物活性分子に対する影響が低いままで、容易に製造される。しかし、取り込まれる分子は、ゲル形成に必要な凍結−融解サイクルに耐えられる分子に限られる。従って、得られる材料は、移植に続いて個別に機能する生物活性成分を含むことができる。PVAクリオゲルは、(後に記載する提案するPVA「シータゲル」と同様に)高い生物活性も有する。PVAクリオゲルは、毒性が非常に低く(少なくとも部分的に、それらの低表面エネルギーのために)、不純物をほとんど含まず、それらの含水量は80〜90重量%で組織に適切に製造できる。
【0094】
凍結−融解サイクルによりPVAのゲル化を促進する正確な機構に関しては、なお議論の余地がある。しかし、凍結−融解サイクル中に起こる物理的架橋を説明するために、3種類のモデル、すなわち1)直接水素結合、2)直接クリスタライト形成、および3)液体−液体相分離に続くゲル化機構、が提案されている。最初の2つの工程は、ゲルが核形成および成長(NG)相分離を通して形成されるのに対し、第三の選択肢は、この製法をスピノーダル分解(SD)相分離として示している。水素結合は、節点(node)を形成し、クリスタライト形成は、より大きな重合体結晶を形成する。しかし、これらの機構の両方共、比較的小さな架橋節点で緊密に接続された架橋を形成する。この観察は、PVAのゲル化機構に関する研究により支持されている。他方、スピノーダル分解は、重合体を、重合体濃度が高い区域と重合体濃度が低い区域に再分布させ、続いて、より間隔を置いて配置された架橋を生じるゲル化過程を引き起こす。スピノーダル分解による相分離は、架橋後におけるPVAの機械的特性改良を引き起こし、重合体溶液の急冷により起こると考えられる。凍結工程の際に、系はスピノーダル分解を受け、それによって重合体濃度が高い、および低い相が、均質な溶液中に自然に現れる。特定の温度における急冷したPVA(および重合体一般)の状態図は、2つの共存する濃度相を有することができるので、この過程が起こる。従って、重合体濃度が高い相は、高度に濃縮されており、これがPVAの自然の(弱い)ゲル化を強化する。
【0095】
クリオゲルでは、物理的特性は、未架橋重合体の分子量、水溶液の濃度、凍結の温度および時間、および凍結−融解サイクルの数によって異なる。従って、クリオゲルの特性は、調整できる。しかし、材料の特性が凍結−融解工程毎に劇的に変化するので、完成したゲルの特性を制御することは、ある程度限られている。開示するシータゲルにより、PVAクリオゲルにより現在与えられる機能性の範囲が広げられる。
【0096】
一般的に、PVAクリオゲルのモジュラスは、凍結−融解サイクルの数と共に増加する。一連の実験で、熱的サイクルにかけたPVAクリオゲルは、圧縮モジュラスが1〜18MPaであり、せん断モジュラスが0.1〜0.4MPaであった(Stammen, J.A., et al., Mechanical properties of a novel PVA hydrogel in shear and unconfined compression Biomaterials, 2001 22:p. 799-806)。
【0097】
クリオゲルは、化学的手段ではなく、物理的手段により架橋されているので、それらの構造的安定性に、ある程度の心配がある。水溶液中にあるPVAのモジュラスは、一定温度で蒸留水中に浸漬する時間と共に増加する。40日間にわたって行われた一つの実験では、モジュラスが50%増加した。恐らく、水性エージングの際、強度の増加と、同時に起こる可溶性PVAの損失は、重合体鎖の超分子的充填秩序が増加する結果である。このデータには、凍結−融解によりゲル化したPVAの長期間貯蔵効果に関して重大な意味がある。
【0098】
重合体が時間と共に失われる影響、およびそれが局所的な宿主の生物学的環境にどのように影響するかを理解することも重要である。注意すべきは、この例ではクリオゲルが凍結−融解サイクルを1回しか受けていないが、他の例は、複数の凍結−融解サイクルに続くPVA溶解を示していることである。一般的に、反復負荷サイクル(疲労)下におけるPVAクリオゲルモジュラスの安定性に関する情報は非常に少ない。
【0099】
予想されるように、PVAクリオゲルの膨潤は、どの時点においても、凍結−融解サイクル数の増加と共に減少し、先ず間違いなく架橋密度が高くなるために、PVAゲルが緻密化することを示唆している。長い間に、ゲル化に続いて、静止条件下では、究極的な膨潤比は減少し、モジュラスが時間と共に増加する。
【0100】
凍結−融解処理では、温度を使用してPVA溶液を強制的に相分離させ、それによって、ってPVAにおけるゲル化機構を強化する(室温でも、PVAの溶液は時間と共に弱くゲル化し始めることに注意すべきである)。
【0101】
溶剤品質は、温度および重合体に対する溶剤の化学的相互作用の両方に関連し、フローリー相互作用パラメータχにより都合よく説明される。好ましい実施態様では、温度以外の幾つかの方法により溶剤品質を操作することにより、ゲル化過程をはるかに効果的に制御し、本方法を大体室温で実施することができる。特に、PVAに水系溶剤を使用することにより、PVA中に埋め込まれる材料に対する影響を最小に抑えるように系を選択し、ゲルの最終的な構造全体を空間的および一時的に微調整することができる。特定の溶剤で、第一溶剤から第二溶剤への移行(従って、相分離の促進)を規定する不可欠なパラメータは、シータ温度と呼ばれる。例を下記の表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
物理的に架橋したPVAゲルは、脱水と組み合せた熱的サイクル(必ずしも凍結を含まない)にかけることとによっても製造することができる。そのようなゲルは、負荷を支える用途(すなわち人造関節軟骨)に使用するのに適している。この熱的サイクルにかけたPVAの材料特性試験により、この材料が、剛性の単相生体材料(超高分子量ポリエチレン(UHMWPE))よりも、応力をより均一に分散させ、模擬関節軟骨負荷で容易に潤滑被膜隙間を保存することが分かった。この材料は、薄膜で1〜1.5MPaの圧力を支え、分散させた。移行負荷試験では、このPVAは5MPaに近い負荷を支え、分散させた。
【0104】
熱的サイクルにかけ、脱水したPVAの、様々な条件下における摩耗特性をさらに試験する研究が行われている。一方向のディスク上ピン(アルミナに対する)実験で分かった摩耗速度は、UHMWPEのそれに匹敵した(この試験は、生物学的移植物に行うのに最も適しているとは云えないであろうが)。しかし、往復試験では、摩耗速度は18回まで大きかった。摩耗特性を改良するために、より高分子量のPVAを、さらにガンマ放射線(線量50kGy強)により架橋させて試験した。そのような処理は、摩耗速度を著しく(UHMWPEのの約7倍にまで)下げた。しかし、放射線および熱の両方で架橋したPVAでは、摩耗速度は、対向する表面が高い硬度を有する用途には十分ではないと考えられる。さらに、照射は、ゲル中に装填される生物活性材料に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0105】
好ましい実施態様による方法は、下記の内容を包含する。
PVA溶液
10%溶液を製造するために、PVA20グラム(100kg/モル、99.3+%加水分解、JT Baker)を脱イオン水180グラムに90℃で1〜2時間溶解させた。20%溶液を製造するために、PVA30グラムを脱イオン水180グラムに溶解させ、この溶液を、水60グラムが蒸発し、PVA20%の最終溶液が得られるまで連続的に攪拌した。
【0106】
PVAゲル化
10または20重量%のポリビニルアルコール(PVA)溶液4〜5mlを、予め濡らした、分子量カットオフ3500ダルトンのSlide-A-Lyzer Dialysisカセット(Pierce, Rockford, II)中に注入した。次いで、10%PVA溶液を、1.5M、2.0M、2.5Mまたは3MのNaCl水溶液中に浸漬した。20%PVA溶液は3.0MのNaCl中に浸漬した。ゲル化効果がNaCl/水性溶剤に依存しないことを立証するために、透析装置カセット中の10%PVA溶液を、50/50メタノール/水溶液中に浸漬した。3日後、10%PVA溶液を含むすべてのカセットをそれぞれの溶剤から取り出した。次いで、ゲルをカセットから取り出し、DI水中に少なくとも5日間入れ、初期PVA結晶を溶解させ、20%PVAを含むカセットは3日後に取り出した。PVAゲルをカセットから取り出し、一部をDI水中に保存した。残りのPVAゲルを3MNaCl溶液に戻した。6および12日目に、20%PVAゲルの一部を取り出し、DI水中に少なくとも5日間入れてから、さらに試験を行った。
【0107】
定量分析
浸漬溶液モル濃度および浸漬時間の、ゲルの構造に対する効果を定量するために、示差走査熱量測定(DSC)、重力膨潤比分析および動的機械的分析(DMA)を試料に行った。
【0108】
示差走査熱量測定
DSCサーモグラムは、計器、例えばTA Instruments Q1000(TA Instruments, New Castle, DE)、を使用して得た。選択した濡れたPVAゲル試料5〜15mgを脱イオン水貯蔵から5日後に取り出し、水気を取り、alodized-アルミニウム気密パン中にクリンプ(crimp)した。走査は、5℃/分で5℃から120℃まで行った。ゲル物理的架橋の融解に関する総エンタルピー変化を、基線(典型的には40℃近く)から出発して基線(典型的には90℃近く)に戻る直線的積分を使用して推定した。DSC分析に続いて、気密パンを穿刺し、秤量し、真空炉中に入れて脱水した。2日間の脱水後、パンを再秤量し、元の試料中のPVA百分率を求めた。
【0109】
重力膨潤比
各試料からのPVAゲル試料を脱イオン水貯蔵から5日後に取り出し、ティッシュで水気を取り、真空炉中で2日間脱水した。重力膨潤比は、ゲル中の水の質量とゲル中のPVAの質量との比として計算した。
【0110】
動的機械的分析
硬化溶剤品質の影響を試験するために、Perkin-Elmer TMA 7(Perkin-Elmer, NJ)を使用して動的機械的分析を10%PVA3MNaClおよび2MNaCl試料に対して行った。硬化溶剤におけるエージングの影響を試験するために、DMAを20%3MNaClの3日および12日試料に対しても行った。試料を長方形に切り、閉じ込めない圧縮で、静止負荷250mN(10%試料)または1000mN(20%試料)で試験した。貯蔵(および10%試料に対する損失モジュラス)は、室温で周波数掃引(sweep)1〜2Hzで測定した。
【0111】
好ましい実施態様では、溶液中のポリ(ビニルアルコール)重合体鎖を強制的に接近させることにより、溶解し難い物理的会合が形成される。この方法は、ゲル化を引き起こし、PVA鎖を強制的に物理的会合させるのに十分なχ値を有する第二溶剤を制御しながら使用することにより、PVAヒドロゲルを形成する。溶剤品質を、特に大きな成分に対して、注意深く管理すること、および溶剤の「前面」がPVA溶液に制御された様式で入り込むことが不可欠である。PVAに対する「シータ」値の近くにある濃度のNaCl/脱イオン水およびメタノール/脱イオン水溶液を使用し、PVAを強制的に物理的会合させ、続いてゲル化させた。このようにして形成されたゲルは、「シータゲル」と呼ばれる。
【0112】
ヒドロゲルの物理的外観はPVA溶液を中に浸漬する溶液のモル濃度によって異なる。図3は、「シータ」濃度の近くにあるNaCl溶液に露出する際のPVAヒドロゲルのゲル化の進行を示す。露出時間が増加するにつれて、シータ濃度および温度以上の溶液に対して、PVA溶液は堅く、不透明になる。シータ濃度よりかなり低い溶液では、ゲル化はほとんど、または全く明白ではない。PVA溶液を水/メタノールの50/50溶液中に浸漬すると、やはり一様なPVAヒドロゲルが形成された。
【0113】
図3は、硬化溶液中浸漬の1日後(上側)および3日後(下側)の、透析装置カセット中の10%PVA溶液を示す。左から右へ、1.5MのNaCl、2.0MのNaClおよび3.0MのNaClである。1.5M溶液は、PVAをゲル化させないが、2.0M溶液および3.0M溶液は、PVAをゲル化させる。2.0Mゲルが次第に不透明化し、試料が時間と共に固まるにつれて、3Mゲルがカセット縁部から収縮することに注意(矢印で示す)。
【0114】
図4は、3.0Mおよび2.0M溶液に3日間露出した10%PVAの差を示す(撮影した後、続いて脱イオン水中で平衡化した)。PVAゲルは、3.0M(各対の左側画像)および2.0M(右側画像)NaCl浸漬溶液に浸漬することにより生じた。これらのゲルが一様で、不透明であることに注意。3.0MのNaClに露出されたゲルは、膨潤が少なく、脱イオン水中での平衡化に続いてより緻密になる。形成されたヒドロゲルは一様で、不透明である。2.0MのNaClに露出されたゲルは、3.0MのNaClに露出されたゲルよりも、高度に水和している。膨潤の増加は、2.0MのNaCl溶液に露出されたゲルでは、物理的架橋の密度が低いことを示している。従って、このようにして形成されたゲルは、機械的特性に関して「調整可能」である。さらに、空間的NaCl濃度を操作する方法を使用して勾配のあるゲルを製造することができる。
【0115】
図5は、空間的に変化するNaCl濃度に露出された10%PVA溶液から形成されたヒドロゲルを示す。ゲルの半透明性および膨潤比の両方における変化に注意。ゲルの不透明部分は、3.0MNaClに露出したのに対し、透明部分はシータ濃度(室温で2.0M)未満の濃度に露出した。勾配を生じる能力は、堅い外側層(線維輪)およびより軟らかい中央(髄核)を含む、全板置換核形成(nucleoplasty)に関連する。
【0116】
示差走査熱量測定
熱的サイクルに付されたPVAゲルに関して、30℃〜90℃の吸熱は、熱処理の際に形成される物理的架橋を壊すのに必要なエネルギーを表す。好ましい実施態様によるPVAシータゲルでは、同様の吸熱性が示された。図6は、熱的サイクル付されたPVAクリオゲルおよび3.0MのNaCl中で形成したPVAヒドロゲルのサーモグラムを比較する。転移は、同様の融解吸熱性を有し、事実上同じ温度で起こる。
【0117】
この吸熱転移のエンタルピー変化は、溶液状態の結果として、ゲル中の架橋量を良く示している。例えば10%PVA溶液では、NaClの2.0M溶液に3日間浸漬した後のエンタルピー変化は、16.9J/gであった。対照的に、同じ初期PVA溶液は、3M溶液中3日後のエンタルピー変化が、19.9J/gであった。この結果は、溶液濃度および浸漬時間の両方が、ゲル中の物理的架橋量に好ましい方向で影響することを示している。
【0118】
重力膨潤比
好ましい実施態様では、溶剤中のNaClのモル濃度を増加すると、単位質量あたりのヒドロゲル中に存在するPVAの量が増加する。図7は、ゲル(脱イオン水中で十分に平衡化した)中のPVAの百分率と、ゲルを硬化させた溶液のモル濃度との関係を示す。PVAは透析カセット中で堅く保持されていないので、PVAは、ゲル化過程の際にPVAに対する局所的な力の影響下で自由に膨脹または接触する。従って、PVAゲルが潰れた場合には、最終的なPVA濃度が初期PVA溶液の濃度を超えることは可能である。図8は、様々なNaClモル濃度の溶液中で硬化させたPVAに対する重力膨潤比を示す。20%PVA溶液に関して、膨潤比およびPVA百分率の3日値は、10%PVA溶液のそれと適合していた(図には示していない)。3MのNaCl中に12日間浸漬(および脱イオン水中で5日間平衡化)した後、20%PVA溶液は、PVA29%のゲルを形成した。
【0119】
動的機械的分析
好ましい実施態様では、溶液濃度およびエージング時間が、ゲルの目に見える構造に、およびそれらの熱的特性に、著しい影響を及ぼした。両方の影響が、機械的特性に対する影響もありそうなことを示唆している。この仮定は、試料の定性試験により支持されるが、より厳格な分析を行うために、DMAを使用して試料に機械的試験を行った。図9および10は、3点の試料から得たデータを示す。図9は、試料の複素モジュラスがエージング(他の溶液条件はすべて一定に維持して)と共に増加することを示す。事実、このモジュラス増加は、最終的なPVAゲルの緻密化とも平行している。図10は、溶液モル濃度の変化に対応するモジュラスの変化を試験する(やはり、他のパラメータはすべて一定に維持して)。この図10で、貯蔵(すなわち弾性成分)モジュラスは、溶液モル濃度が増加する(室温で2MNaClはシータ溶剤に近いことを思い出すべきである)につれて急速に上昇するのに対し、損失(すなわち減衰)モジュラスは僅かに影響されるだけであることが明らかに示されている。
【0120】
クリオゲルは、各熱サイクルがゲルの材料特性に劇的な変化をもたらすので、それらの最終特性に関して極めて低い分解能を有する。製造されたシータゲルは、溶剤濃度が、「シータ」値を通過した後は、膨潤比に単調な低下をもたらすことを立証している(図7)。従って、究極的な架橋密度は、溶剤濃度で達成できる分解能に比例して微調整できる。例えば、NaCl中に浸漬した10%PVA溶液に関して、最終的なゲル中にあるPVAの重量百分率は、約7%/モルNaClの率で変化する。
【0121】
好ましい実施態様では、空間的特性で滑らかな勾配を示すPVAシータゲルを製造できる。勾配特性は、クリオゲルでは容易に製造できない。代わりに、通常の手法では、独立して積み重ねた薄層の配列を形成し、これを溶解したPVA中で接合し、次いで再びサイクルにかける必要がある。そのような配列におけるモジュラスの鮮明な差により、好ましくない機械的特性および不均質界面を有する材料が形成される。好ましい実施態様は、複合材料線維輪/髄核移植物を包含するが、これは、機械的特性の滑らかな勾配を可能にする技術の恩恵を得ており、中央の低モジュラス「髄」が十分な圧縮強度を与え、周囲の「輪」がクリープおよび好ましくない歪みを最小に抑える。
【0122】
モジュラス強化:イオン系化学種の配合
NaCl中で製造されるシータゲルに、天然(ヒアルロン酸)または合成(PAA)重合体を配合し、ひずみ可変圧縮モジュラスを有するゲルを形成することができる。強NaCl中でPVA/PAA溶液をゲル化することにより、PAA中のイオン化し得る電荷が遮蔽され、潰れたPAAの周りでPVAが架橋する。脱イオン水中で再平衡化することにより、PAAを膨脹させ、PVAマトリックスに予備応力を与えることができる。得られる構造は、配合されたPAA上に固定された電荷の反発により、非常に異なった機械的圧縮モジュラスを有する。
【0123】
勾配シータゲルの形成
別の好ましい実施態様では、勾配シータゲルを製造するために、100kg/モルPVAの10%、20%および30%溶液を上記のように製造する。透析装置のカセットを半分に分割し、各半分を、10%PVA溶液で満たしたプレキシグラス箱1x1x1cmの片側に接続する。密封した箱を温度制御した「Ussing」型チャンバー中に入れ、そこで一定の4モルNaCl濃度差にかける(図10参照)。ゲルがそれ以上大きく変化しなくなる日数の後、勾配ゲルをチャンバーから取り出し、脱イオン水中に5日間置いた後、その後の試験を行う。得られたゲルを上記のように試験する。
【0124】
別の実施態様では、濃度を一時的に変動させることにより、空間的勾配を形成することができる。チャンバー中の濃度を一時的に調整し、より高度の架橋が起きる周辺部区域よりも、軟らかい内側区域を有するゲルを形成することができる。
【0125】
チャンバー100は、ゲル160を含むカートリッジ140を包含する。チャンバーは、2種類の浸漬溶液112および122を含む小チャンバーまたは区域に分割することができる。好ましい実施態様では、これらの溶剤は同じ濃度を有する。別の好ましい実施態様では、浸漬溶液は、ゲル中に空間的勾配を引き起こす異なった濃度を有する。メンブラン150、154は、浸漬溶剤をビニル重合体溶液中に選択的に流すことができる透過性メンブランである。メンブラン130は、すべての溶剤の流れに対して不透過性のバリヤーを与える。
【0126】
脱水
本発明の好ましい実施態様は、制御できるように構造化するゲルに関する。特別な実施態様では、滑らかな脱水を促進し、PVAシータゲルの物理的架橋を均質にするために、PVAのゲルまたは溶液を、それぞれが先行する溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する、一連の溶液または溶剤品質が滑らかに変化する浴中に浸漬することができる。これによって、浸漬溶液と直接接触する表面におけるPVAの局所的な「衝突」が防止される。ここで使用する用語「衝突」は、フローリー相互作用パラメータによる沈殿と同種の現象に関連する。重合体鎖は、フローリー相互作用パラメータがシータ点よりも上にある時、溶剤よりも鎖同士で優先的に会合し、それによって沈殿または衝突する。
【0127】
好ましい一実施態様では、含まれるPVA溶液を、PVAと溶剤の対に対するシータ点よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する溶剤の中に、先ず浸漬することにより、シータゲルを形成することができる。ある時間の後、含まれるPVAを、PVAと溶剤の対に対するシータ点よりも低いフローリー相互作用パラメータを有する別の溶剤中に浸漬する。この工程を、含まれるPVAを、フローリー相互作用パラメータが順次低下する溶液中に浸漬しながら、最終的なゲルに対する所望の相互作用パラメータに達するまで続行することができる。
【0128】
本発明の好ましい実施態様によりシータゲルを形成する方法は、含まれる5〜20%PVAをDI中に浸漬し、続いて2.0MのNaCl中に1時間〜1日の範囲で浸漬し、続いて3.0MのNaCl中に1時間〜1日の期間浸漬し、続いて4.0MのNaCl中に1時間〜1日の期間浸漬し、続いて5.0MのNaCl中に1時間〜1日の期間浸漬することを含む。
【0129】
別の好ましい実施態様では、塩濃度の変化が、ゲル中への拡散過程よりも遅く、またはそれと等しくなるように、濃縮NaCl溶液をDI水に徐々に加えることにより、同等の電解質濃度範囲を通して、PVA溶液を徐々に変化する溶剤品質にさらすことができる。
【0130】
好ましい実施態様による方法は、含まれる5〜20%PVAを1リットルの1.5MのNaCl中に浸漬し、6MのNaClを毎分0.5mlの速度で加え、電解質濃度を0.0038M/分の速度で上昇させ、約12時間後に5MのNaClに達することを含む。
【0131】
別の実施態様では、PVA溶液を一または多数回の凍結−融解サイクルに付し、ゲルを特定の形状に固定する。次いで、最終的な所望のフローリー相互作用パラメータに達するまで、フローリー相互作用パラメータが順次高くなる一連の溶液中にゲルを浸漬することができる。
【0132】
好ましい実施態様による方法は、5〜20%PVAをDI中に溶解させ、その溶液を凍結−融解サイクル(約1〜8サイクル)に付し、続いて1時間〜1日の期間、得られたゲルを2.0MのNaCl中に浸漬することを含む。この方法は、PVAゲルを1時間〜1日の期間、3.0MのNaCl中に浸漬し、続いて1時間〜1日の期間、4.0MのNaCl中に浸漬し、続いて1時間〜1日の期間、5.0MのNaCl中に浸漬することを含む。
【0133】
別の好ましい実施態様では、ゲルの形成方法は、5〜20%PVAをDI中に溶解させること、NaClをPVA溶液に加え、濃度0.01〜2MのNaClのPVA溶液を形成すること次いでPVA/NaCl溶液を1〜8凍結−融解サイクルに付すことを含む。
【0134】
ナノ構造形成
ポリビニルアルコールゲルは、化学的架橋または照射を使用せずに適度に堅くすることができる、極めて生物相容性が高い材料である。しかし、PVAの材料特性は、負荷を支える用途、例えば人造関節軟骨または椎間板、に使用する材料の必要条件には適合しない。本発明の好ましい実施態様による重合体系のナノ構造強化は、負荷を支える整形外科学的装置への使用にすでにほぼ適しているPVAゲルが、そのような用途の有用な候補になり得ることを示している。
【0135】
ポリビニルアルコールシータおよびヒドロゲルのナノ構造形成−粒子。粒子を重合体状材料に添加することにより、無添加重合体の処方物と比較して、得られる材料の機械的および熱的特性を改良することができる。最近、ナノ粒子を重合体に、ミクロンサイズの粒子に必要な濃度よりもはるかに低い粒子状物質濃度で、加えることにより、材料特性を同様に強化できることが示されている。これは、材料特性が表面区域に依存する場合に、特に当てはまる。好ましい実施態様では、ポリビニルアルコールシータゲルまたはヒドロゲルを強化するために、帯電していないナノスケール粒子または一様な、または様々な表面電荷を有する帯電したナノスケール粒子を、ゲル化前に溶液中に分散させることにより、最終的なゲルの機械的および熱的特性が強化される。ナノスケール粒子は、適切に分散させると、本発明の好ましい実施態様により、それらの表面にPVA鎖を吸着することにより、物理的架橋のための規則的な核形成箇所を与える。ゴムで靱性付与したプラスチックと同様に、これらのナノ粒子は、応力集中体としても作用し、ゲルに靱性を与える。PVAゲルの特性を強化できるナノスケール粒子は、例えばクレー(例えばラポナイト、モンモリロン石があるが、これらに限定されるものではない)、ヒュームシリカ、二酸化チタンまたはヒドロキシアパタイトである。表面処理および変性、例えば重合体の末端クラフト化、も、本発明の好ましい実施態様により、粒子が重合体ゲルマトリックスと相互作用する様式を調節する。これらの粒子は、生物学的に活性である、例えば成長を促進する、または炎症を低減させるための薬物を放出することもできる。ナノスケール粒子構造化は、本発明の好ましい実施態様によるシータゲルに限定されない。しかし、本発明のシータゲルは、作業溶液と比較してデバイ長が短縮される溶液条件下で、帯電粒子の周りに物理的架橋を形成することができる。従って、電解質濃度が低い作業溶液中でゲルを置き換えると、粒子が静電気力により相互作用し、PVA凍結−融解ゲルと比較して、PVAシータゲルに圧縮強度を付与する。
【0136】
一実施態様では、ナノ粒子をPVAの溶液中に分散させる。溶剤は、水、DMSO、メタノールまたは他の、溶液調製の際にPVAと溶剤の対に対するシータ点よりも低いフローリー相互作用パラメータを示す、すべての溶剤でよい。次いで、PVA/ナノ粒子混合物を少なくとも一回の凍結−融解サイクルにかける。凍結−融解サイクルに続いて、ゲル化したPVAを、PVA/溶剤の対に対するシータ点に近いか、またはそれよりも高いフローリー相互作用パラメータを有する溶剤中に浸漬し、PVA/ナノ粒子混合物をさらに物理的架橋させる。
【0137】
本発明の好ましい実施態様による方法は、DI中5〜20%PVAをヒュームシリカ1〜10%と混合すること、その溶液を凍結−融解すること(1〜8サイクル)、続いて2〜5MのNaCl中に1時間〜5日間の期間浸漬することを含む。
【0138】
別の実施態様では、PVA/ナノ粒子混合物を、PVA/溶剤の対に対するシータ点に近いか、またはそれよりも高いフローリー相互作用パラメータを有する溶剤中に浸漬することにより、ゲル化させ、PVA/ナノ粒子混合物の物理的架橋を誘起する。この実施態様では、凍結−融解サイクルは必要としない。
【0139】
本発明の好ましい実施態様による方法は、DI中5〜20%PVAをヒュームシリカ1〜10%と混合すること、続いて2〜5MのNaCl中に1時間〜5日間の期間浸漬することを含む。
【0140】
別の実施態様では、上記の2例から得た複合材料ゲルをさらに凍結−融解サイクルに付す。
【0141】
別の実施態様では、ナノ粒子を含むPVA溶液またはゲルを、前記の脱水手順に付す。本発明の好ましい実施態様による方法は、DI中5〜20%PVAをヒュームシリカ1〜10%と混合すること、その溶液を1〜8サイクルの凍結−融解に付すること、続いて2.0MのNaCl中に1時間〜1日間の期間浸漬すること、続いて3.0MのNaCl中に1時間〜1日間の期間浸漬すること、続いて4.0MのNaCl中に1時間〜1日間の期間浸漬すること、続いて5.0MのNaCl中に1時間〜1日間の期間浸漬することを含む。
【0142】
ポリビニルアルコールシータゲルおよびクリオゲルのナノ構造形成−官能化された分子状添加剤
粒子をPVA溶液に、ゲル化の前に添加することにより、ゲルの熱的および機械的特性を強化することができる。しかし、官能化して物理的架橋を促進することができ、同時に応力集中体として作用し得る一群の分子状添加剤がある。多面体オリゴマー状シルセスキオキサン(POSS)は、重合体状材料の機械的特性を強化することができる。POSS分子は、官能化できるので、PVA鎖と会合し、鎖間架橋を強化し、応力集中体として作用するように調整することができる。それらの極めて小さなサイズおよび多数の官能化された基により、ナノ粒子による種晶形成よりも優れた結果を得ることができる。
【0143】
上に記載したシータゲルまたはクリオゲルの形成方法はすべて、分散した官能化POSS分子を含む溶液に応用することができる。好ましい一実施態様では、負に帯電した酸素基を示すように官能化されたPOSSを使用し、水素結合を促進することができる。官能化されたPOSSをPVA水溶液中に分散させ、シータまたは凍結−融解ゲル化(0.01mM〜1MのオクタTMAPOSS(テトラメチルアンモニウム塩)および溶液中5〜20%PVA)させる。
【0144】
別の好ましい実施態様では、アルコール基を示すように官能化されたPOSSをPVA中に分散させ、シータまたは凍結−融解ゲル化(0.01mM〜1MのオクタヒドロキシプロピルジメチルシリルPOSSおよび溶液中5〜20%PVA)させる。
【0145】
別の実施態様では、少なくとも一つのPVA鎖および少なくとも一つのカルボキシルまたはサルフェート基を示すように官能化されたPOSSを使用し、極めて親水性で、強靱な人造軟骨を製造することができる。好ましいPOSS構造は、POSSの対向する角部に少なくとも一つのPVA鎖を有し、残りの6個の官能基はサルフェートまたはカルボキシル基を示す。この構造は、シータゲル製法または凍結−融解によりPVAゲル網目中に「縫い付け」、特性を調整できる人造軟骨を製造することができる。
【0146】
図12は、本発明の好ましい実施態様により、PVAゲルを5MのNaCl中に3日間浸漬して形成する、PVAゲル構造の急速凍結深エッチ(QFDE)画像を例示する。バーは100nmを表す。QFDEは、ゲル構造をその水和された状態に保存する。
【0147】
図13Aおよび13Bは、本発明の好ましい実施態様により、プレキシグラス管に10%PVA溶液を満たし、1凍結−融解サイクル(−21℃で8時間、室温で4時間)を行い、次いで3MのNaCl浴に少なくとも3日間浸漬し、続いて空気中で60時間脱水し、脱イオン水(DI)に戻すことにより製造したPVA勾配ヒドロゲルの断面および断面の拡大図をそれぞれ示す。図13Aおよび13Bは、空気脱水により誘発されたPVA中の放射状勾配の存在を示す。
【0148】
図14は、本発明の好ましい実施態様により、透析カートリッジに10%PVA溶液を満たし、次いで一方の側に3MのNaClおよび他方の側に6MのNaClを有するチャンバー中に3日間浸漬することにより製造した、PVA勾配ヒドロゲルの断面図を示す。図15は、透析カートリッジに10%PVA溶液を満たし、次いで一方の側に3MのNaClおよび他方の側に6MのNaClを有するチャンバー中に3日間浸漬することにより製造した、図14のPVA勾配ヒドロゲルの6MNaCl側の断面拡大図を示す。図14および15は、静止NaCl溶液勾配により誘発されたPVA中の直線的勾配の存在を示す。
【0149】
図16〜19は、本発明の好ましい実施態様によりナノ構造化したPVAゲルを例示する。より詳しくは、図16は、本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびラポナイトクレー2重量%を混合し、1凍結−融解サイクルに付し、次いで溶液を4MのNaCl溶液に少なくとも3日間露出することにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【0150】
図17は、本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびシリカ4重量%を混合し、pH=3に滴定し、1凍結−融解サイクルに付し、次いで4MNaCl溶液に少なくとも3日間露出することにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【0151】
図18は、本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびシリカ4重量%を混合し、pH=10に滴定し、1凍結−融解サイクルに付し、次いで4MのNaCl溶液に少なくとも3日間露出することにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【0152】
図19は、本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびオクタTMAPOSSを水中で混合し、次いで1凍結−融解サイクルに付することにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【0153】
図20は、本発明の好ましい実施態様によるハイブリッドおよび比較PVAゲルに関する貯蔵モジュラスを示すグラフである。このグラフは、pH=10を有する4%シリカ/PVAナノ構造化ゲル(試料番号1)、pH=3を有する4%シリカ/PVAナノ構造化ゲル(試料番号2)、2%ラポナイト/PVAナノ構造化ゲル(試料番号3)、0.001M、10%PVA+オクタTMAPOSS(試料番号4)、および比較ゲル(試料番号5)に対するDMA試験の結果である。すべてのゲルを1凍結−融解サイクルに付し、次いで3MのNaCl中に3日間浸漬した。DMA試験の前に、試料をDI水中で少なくとも24時間平衡化した。
【0154】
本発明の実施態様は、ビニル重合体、特にポリビニルアルコール、の溶液におけるフローリー相互作用パラメータを適切に操作し、制御された様式でゲル化する加工可能な液体を形成する方法を提供する。溶剤状態を制御することにより、ゲル化速度を制御し、PVA溶液が部分的にのみゲル化する時間を与え、最終的なゲル化の前に前駆物質ゲルを操作または加工することができる。この時間の間、溶液は実質的に流体であり、注入、ポンプ輸送、成形、または他のどのような操作処理の工程にかけることもできる。結晶化度百分率、結晶サイズ、自由体積、および機械的特性を含む(ただし、これらに限定するものではない)ヒドロゲルの最終特性は、初期ビニル重合体濃度、最終混合物中のゲル化剤濃度(すなわち最終溶剤量)、処理温度、および混合手順により影響される。
【0155】
本方法の好ましい一実施態様を図21Aに示す。図21Aは、本発明の好ましい実施態様により、PVAヒドロゲルを形成する方法400のフローチャートを示し、ビニル重合体と第一溶剤の混合工程402、ビニル重合体溶液中にゲル化剤を混合する工程404、および混合物をビニル重合体の融点より高い温度に加熱することにより、ビニル重合体の物理的会合によるゲル化を防止する工程406を包含する。より詳しくは、この温度は、ビニル重合体中に形成されるすべての物理的会合の融点より高い。別の実施態様では、工程406が工程404に先行する。方法400は、ビニル重合体溶液のゲル化を誘発する工程408、一時的に加工可能な粘弾性溶液を形成する工程410、例えば、温度、圧力および濃度勾配の少なくとも一つを調整することにより、粘弾性溶液のゲル化速度を制御または操作する工程412、およびヒドロゲルを形成する工程414を包含する。
【0156】
図21Bは、本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成し、提供する方法のフローチャートを示す。これらの方法は、溶剤品質を調整することによる、ビニル重合体系ヒドロゲルの製造に関する。これらの方法は、ビニル重合体を、例えば>80℃で、所望の濃度で水に溶解させる工程424を含む。次の工程では、ゲル化剤を工程426により粉末として、または工程430により溶液として製造する。ゲル化剤は工程428のように本来液体でもよい。次の工程432は、ビニル重合体溶液に加える時、その後に続く混合物の臨界シータ濃度の近く(上または下)になるのに十分な濃度で、ゲル化剤を供給することを含む。次いで、本方法は、ゲル化剤およびビニル溶液を分離しておく工程434、2個以上のチャンバーを有する装置、例えばシリンジまたはポンプ、中に各成分を装填する工程436、および混合装置を通して問題とする区域、例えば体のキャビティ、に重合体溶液を注入する工程438を包含する。溶液は、工程410で、実質的に混合されて問題とする区域に到達する。
【0157】
あるいは、方法400は、工程432の後、ビニル溶液を攪拌しながらゲル化剤を加える工程442、溶液を均質になるまで混合する工程444、およびビニル重合体溶液がまだ流体で、加工できる状態にある工程446を含むこともできる。方法400は、シリンジまたはポンプ中に重合体溶液を装填する工程448、続いて溶液が実質的に結晶化する前に、体の問題とする区域に溶液を注入する工程450を包含する。あるいは、工程446の後、方法400は、特定の用途向けに成形した型の中に重合体溶液を入れる工程452、または重合体溶液を吹込み成形し、薄いヒドロゲルメンブランを形成する工程454、またはシリンジまたはポンプ中に重合体溶液を装填する工程456を含むことができる。体の問題とする区域に溶液を注入する工程458、およびゲル化剤が誘発されて溶剤品質を低下させる工程460が続く。工程440、450、452、454または460の後に、実質的にすべての上記処理工程の後に起こるゲル化剤の永久的な結晶化工程462が続くことができる。
【0158】
幾つかの実施態様においては、ビニル重合体は、分子量約50kg/モル〜約300kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである。ビニル重合体溶液は、溶液の重量に対して約1重量%〜約50重量%のポリビニルアルコールを含む。好ましい実施態様では、ビニル重合体溶液は、溶液の重量に対して約10重量%〜約20重量%のポリビニルアルコール溶液である。
【0159】
第一溶剤は、ゲル化を引き起こすには不十分な低いχ値を有する溶剤群から選択する。幾つかの好ましい実施態様では、第一溶剤は、脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C1〜C6アルコールおよびそれらの混合物を包含する群から選択するが、これらに限定するものではない。
【0160】
第二溶剤、ゲル化剤は、ゲル化剤およびビニル溶液から得られる混合物のχ値を、特定の温度でχ>0.5に引き上げる特性を有する溶剤の群から選択する。幾つかの実施態様では、ゲル化剤は、アルカリ塩、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、オリゴマー状長さの炭化水素、例えばポリエチレングリコール、酵素開裂し得る生体重合体、UV開裂し得る重合体、コンドロイチン硫酸塩、デンプン、デルマタン硫酸塩、ケラタン硫酸塩、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸塩、バイグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカン、ペルレカン、フィブロモジュリン、ベリシカン、ノイロカン、ブレビカン、光誘発され得るジプラスマロゲンリポソーム、アミノ酸、例えばセリンまたはグリシン、グリセロール、糖またはコラーゲンを包含する群から選択されるが、これらに限定されるものではない。ゲル化剤は、固体の形態で、または水溶液として加えることができる。
【0161】
好ましい一実施態様では、ゲル化剤を、高温に、好ましくはビニル重合体の融点より上に保持したビニル重合体溶液と混合することにより加える。融点は、示差走査熱量測定(DSC)により、適宜測定することができる。図6に示す、PVAに対する破線の曲線に関して、高温は、少なくとも57℃を超え、好ましくは80℃を超え、より好ましくは90℃を超える。一般的に、図6のような示差走査熱量測定のグラフに関して、最も好ましい高温は、融点を超える温度における曲線の直線部分にある。
【0162】
得られた混合物は、混合し、冷却するにつれてスピノーダル分解を受ける。この混合物を体のキャビティ中に注入した後、混合物は、経時的に負荷を支えるゲルを形成する。
【0163】
好ましい一実施態様では、PVA、水および第二または第三成分の混合物全体の溶剤品質は、フローリー相互作用パラメータが0.25<χ<0.8、好ましくは0.3<χ<0.5である。
【0164】
本発明の好ましい実施態様は、髄核増強または置換、および関節、例えば膝または股、における負荷を支える表面の増強を包含する、整形外科治療に使用できる注入可能なヒドロゲルを提供する。膝または股を増強する場合、注入可能なヒドロゲルは、関節軟骨の部分的損失のために痛みは有るが、膝または股全体を置き換える程ではない患者に対する初期の介在的治療に使用できる。
【0165】
注入可能なヒドロゲルは、組織を置換、修復、または強化するための負荷がかからない用途にも使用できる。注入可能なヒドロゲルは、火傷または挫傷に対する保護被覆として、局所的にも使用できる。本発明の好ましい実施態様は、組織中に小さな到達孔が必要な、侵入度を最少に抑える用途に特に好適である。到達孔は、直径が約1〜10mmでよく、例えば線維輪、骨組織、軟骨、または他の組織中に位置することができる。
【0166】
別の好ましい実施態様では、高温に保持したビニル重合体の混合溶液にゲル化剤を加える。得られる混合物は、混合し、冷却する時に、スピノーダル分解を受ける。次いで、この混合物を使用し、通常の処理手段、例えば注入または圧縮成形、ブロー成形、カレンダー加工、または他のいずれかの好適な処理工程、を使用して製造するヒドロゲル装置を形成するのに使用できる。次いで、この装置を負荷を支える装置、または他の負荷がかからない装置、例えば神経カフまたは薬物放出機構の一部として、移植することができる。この装置は、非生物学的用途に、保護性ヒドロゲルフィルムまたは密封剤として使用することもできる。
【0167】
別の実施態様では、ビニル溶液およびゲル化剤を予備混合せず、混合を容易にする曲がりくねった経路を有する混合チャンバーを経由し、管を通して共注入する。前駆物質ヒドロゲルは、好適な供給装置を使用して標的位置に注入することができる。図28Aは、PVAヒドロゲルを形成する方法600のフローチャートを示し、第一供給装置のチャンバーにビニル重合体および第一溶剤を供給する工程602、第二供給装置のチャンバーにゲル化剤を供給する工程604、ビニル重合体溶液およびゲル化剤を混合チャンバー中で混合する工程606、および混合物をビニル重合体の融点より高い温度に加熱する工程608を包含する。次いで、本方法は、混合物を供給する工程610、混合物を問題の区域、例えばキャビティ、中に送達する工程612、および混合物のゲル化を誘発し、本発明の好ましい実施態様によるPVAヒドロゲルを形成する工程614を包含する。特定の実施態様では、ビニル重合体および第一溶剤を供給する工程が、ビニル重合体および第一溶剤を混合する工程を含む。同様に、特定の実施態様では、第二供給装置のチャンバーにゲル化剤を供給する工程が、ゲル化剤および第二溶剤を混合する工程を含む。
【0168】
図28Bは、本発明の別の実施態様によりPVAヒドロゲルを形成する方法620のフローチャートを示す。この方法620は、図28Aに関して説明した方法600と類似しているが、第一供給装置のチャンバー中にある重合体溶液を、重合体中の物理的会合の融点より高い温度に加熱する工程(工程626)が、ビニル重合体溶液およびゲル化剤を混合チャンバー中で混合する工程(工程628)に先行している。
【0169】
図28Aおよび28Bのフローチャートに関して考察するゲル化誘発工程は、温度を調整し、特にビニル重合体溶液とゲル化剤の混合物の温度を結晶化温度(物理的会合の融点)未満に下げることを含む。別の好ましい実施態様では、ゲル化を誘発する工程が、活性ゲル化剤を不活性ゲル化剤複合体から放出することを包含する。不活性ゲル化剤複合体は、例えば酵素開裂し得る重合体、熱変性し得る重合体、熱的/化学的/光誘発されるリポソームまたはヒドロゲル、熱的に誘発される不可逆的結晶性材料、例えばデンプン、および分解可能な重合体を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0170】
図28Cは、本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成する方法650のフローチャートを示す。方法650は、ビニル重合体および第一溶剤を混合する工程652を含む。方法650は、多胴シリンジの一つの胴中に溶液を注ぎ込む工程654、多胴シリンジの別の胴中にゲル化剤を注ぎ込む工程656、胴の温度をビニル重合体の物理的会合の融点より高くする工程658、胴を遠心分離する工程660、および静止混合物、例えば曲がりくねった経路を有するカニューラを通して、混合物を問題の区域に注入する工程662を包含する。
【0171】
方法650は、別の実施態様で、ビニル重合体溶液中にゲル化剤を混合する工程666、単胴中に溶液を注ぎ込む工程668、胴の温度をビニル重合体の物理的会合の融点より高くする工程670、胴を遠心分離する工程672、溶液をカニューラまたはシリンジの針を通して問題の区域に注入する工程674を含む。従って、方法650のこれらの工程は、板機構用の髄核増強のような材料を供給することができる。本発明の好ましい実施態様によるこのゲルは、関節空間または問題とするすべての区域に適合する。
【0172】
さらに、方法650は、別の実施態様で、板増強用の閉鎖装置を挿入する工程664または濃縮ゲル化剤を関節空間の開口部中に注入し、ゲル化速度および最終的な機械的特性を局所的に強化する工程676、もしくは工程662で問題の区域中にゲル化剤を注入した後、他の手順を必要としない工程678を含む。後者の工程664、676は、例えば板機構中の線維輪を増強する。
【0173】
図29A−29Fは、本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。この方法は、図29Aで、3個の無菌容器または2個の容器で供給される系を含み、容器AおよびBの内容物を組み合わせる。無菌カートリッジは、図29Bに示すように、PVA、溶剤1(水)およびゲル化剤をそれぞれ含む。2成分を密封した容器中、80℃を超える温度で混合する。次いで、これらの成分を、図29Cに示すように単一の胴を有するホルダー704に移し、図29Dに示すように温度を維持しながら遠心分離し、気泡を除去する。図29Eに示すように、ノズルまたはシリンジ針を単胴ホルダーに取り付け、機械的または電気的に起動(ラチェット)し、混合物溶液を送達できるプランジャー機構上に組み立てる。上記のように、混合された溶液は短時間流動した後、加工できなくなる。
【0174】
図30A−30Fは、本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。図30Aに示すように、ヒドロゲル系は3個の無菌容器または2個の容器で供給され、容器AおよびBの内容物を組み合わせる。無菌カートリッジは、PVA、溶剤1およびゲル化剤をそれぞれ含む。図30Bに示すように、PVA溶液は混合および加熱され、ゲル化剤も容器C中で加熱される。次いで、これらの成分を、図30Cに示すように、高温に維持しながら、双胴装置の個別チャンバー中に装填する。次いで、胴を遠心分離および/または真空脱気し、静止ミキサーノズルを通して射出する。図30Eに示すように、ノズルまたはシリンジ針を取り付け、機械的または電気的に起動(ラチェット)し、混合物溶液を送達できるプランジャー機構上に組み立てる。混合された溶液は短時間流動した後、加工できなくなる。
【0175】
図31A−31Eは、本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する別の好ましい方法を図式的に示す。この実施態様は、単一カートリッジで供給されるヒドロゲル系を含む。図31Aに示す無菌の二重胴付きカートリッジは、一方にPVAおよび溶剤1を、ゲル化剤を他方に含む。図31Bに示すように、カートリッジを加熱して溶液中のポリ(ビニルアルコール)を再融解させる。次いで、系を遠心分離および/または真空脱気し、図31Cに示す静止ミキサーノズルを通して射出する。図31Dに示すように、ノズルまたはシリンジ針を取り付け、機械的または電気的に起動(ラチェット)し、混合物溶液を送達できるプランジャー機構上に組み立てる。混合された溶液は短時間流動した後、加工できなくなる。
【0176】
図32は、本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを供給する供給装置800を図式的に示す。供給装置は、第一チャンバー810、第二チャンバー812、第一チャンバーピストン棒814、第二チャンバーピストン棒816、ハウジング818、可動レバー820、固定ハンドル822、混合チャンバー830、混合チャンバー付属品832、供給チューブ834、供給チューブ付属品836、供給チューブ開口部838、温度制御装置850、コネクタ852、混合チャンバー加熱器/冷却装置852、チャンバー加熱器/冷却装置856、および供給される混合物860を包含する。好ましい実施態様では、ビニル重合体溶液およびゲル化剤が予備混合された無菌溶液として供給され、好ましくはそれぞれ第一チャンバー810および第二チャンバー812の中に予め包装されている。加熱器/冷却装置854および856は、抵抗加熱、誘導加熱、水ジャケット股はペルチエ効果加熱/冷却素子を含むことができる。温度制御装置850は、供給装置800と一体化されているか、またはコネクタ852により接続された別の装置でよい。供給装置800全体は、無菌で、予め装填され、1回使用を意図するものでよい。
【0177】
別の好ましい実施態様では、薬物をビニル重合体溶液またはゲル化剤と混合し、得られた射出されるゲルが、経時的に放出され得るカプセル封入された薬物を含むようにすることができる。
【0178】
さらに別の好ましい実施態様では、フリーラジカル補集剤をビニル重合体溶液に濃度約百万分の1〜1000部で加える。フリーラジカル補集剤は、当業者には公知の、いずれかの一般的なフリーラジカル補集剤でよいが、ビタミンEおよびヒドロキノンを含むことができる。フリーラジカル補集剤の目的は、使用前に材料を殺菌するために使用されることがあるイオン化放射線、ガンマまたは電子線(e−ビーム)、の影響を最少に抑えることである。放射線は、溶液の濃度に応じて、PVA溶液中で架橋させるか、または開裂を引き起こすこともある。
【0179】
別の実施態様では、ビニル重合体溶液の初期濃度、および最終混合物中のゲル化剤濃度を変えることにより、ヒドロゲルの最終的な機械的特性を目的に合わせて変化させることができる。
【0180】
別の一連の実施態様では、PVAのゲル化を強制的に引き起こす条件を、前に挙げたゲル化剤の一種以上の組合せを含んでなる活性成分または封鎖された材料を内部で放出することにより、発生させる。PVAに対する溶剤のシータ点を変えるために、あるいはPVAに対する溶剤の共非溶剤性を変えるために、「活性」分子状化学種の封鎖に基づく強力な方法がある。そのような機構は、封鎖された活性分子状化学種を急速に放出し、溶剤性の局所的変化を達成するのに役立つ。系全体に十分な封鎖部分が分布すれば、溶剤性を大きく変化させることができる。そのような方法は、PVAを特に活性なゲル化剤と混合することに関連する、沈殿の問題を緩和するのに役立つ。リポソーム封鎖、重合体封鎖、結晶性封鎖、ゲルカプセル封入および分解性カプセル封入を包含する、好適な封鎖系を利用できる。
【0181】
好ましい実施態様では、リポソーム封鎖は、脂質小胞を使用し、それらの内容物を外部環境から分離する。この系は、多糖およびタンパク質ヒドロゲルの急速なゲル化を効果的に誘発するのに使用されている。脂質小胞は、熱的または光誘発方法により、それらの内容物を放出することができる。好ましい実施態様では、本発明により製造されたPVA溶液のゲル化を、好適なトリガーの使用により、促進することができる。好適なトリガーは、体温に加熱されたゲル/リポソーム組成物でよい。本発明の好ましい実施態様では、PVA水溶液を、濃NaCl溶液または固体NaClを含む、熱的に誘発され得るリポソームの懸濁液と、NaClの放出を誘発するのに必要な温度未満の温度で、混合する。問題の区域、例えば体のキャビティ、中に37℃近くで注入することにより、リポソームは含まれるNaClを放出し、溶液のフローリーパラメータを変化させ、PVAのゲル化を引き起こす。別の実施態様では、他の好適なゲル化剤を脂質小胞中に封鎖し、PVAのゲル化速度に影響を及ぼすことができる。
【0182】
別の好ましい実施態様では、封鎖系が、重合体を多数の小さな断片に開裂することにより、重合体の結合活性を増加する。ある種の複雑な重合体系では、分解により、本来の分子、例えばコラーゲン、より溶解度が高い断片を生じる。そのようなより小さな、より活性な成分の増加により、溶液全体の溶剤性が移行し、PVAのゲル化を誘発する。好適な重合体状封鎖系(およびそれらの酵素開裂補体)の幾つかの例を下記の表に挙げるが、これらに限定するものではない。この表は包括的ではないが、重合体封鎖の概念は、すべての重合体、特に生物相容性重合体または生体重合体、およびそれらの特別な重合体分解機構を包含することを意図している。別の実施態様では、上記の2つの手法を組み合わせ、誘発されたリポソームを利用、ゲル化剤を誘発開裂させる適切な酵素を封鎖することができる。
【0183】
一実施態様では、完全に形成された、精製されたタイプIコラーゲンフィブリルをPVA溶液と、コラーゲンの変性温度未満の温度で混合することができる。この溶液を加熱し、可溶性ゼラチン分子をPVA中に放出するであろうコラーゲンフィブリルの変性を誘発し、PVAの相対的な溶解度を変化させ、PVAのゲル化を誘発することができる。
【0184】
【表2】
【0185】
別の好ましい実施態様で、本封鎖方法は、不可逆的に融解し、結晶性成分の活性を大きく変化させることができる結晶の中に活性部分を閉じ込める。好ましい一実施態様では、結晶性成分はデンプンであり、アミラーゼ分子、アミロペクチン分子またはそれらの、グルコースの直鎖状または分岐鎖状のマルチマーである混合物を含んでなる。デンプン粒子は、通常、結晶性および無定形区域を含んでなる。溶液中で加熱することにより、デンプン粒子は容易に水を吸収し、ゼラチン化することにより、デンプン粒子は浸透活性が高くなる。室温に戻ると、デンプンはゼラチン化するが、再結晶はしない。従って、PVAは、結晶性デンプン顆粒と効果的に混合し、PVAが溶解し得る溶液を形成することができる。しかし、デンプンのゼラチン化点より上に加熱することにより、PVAは、より吸湿性が高いゼラチン化したデンプンと溶剤を求めて競合するので、PVAはゲル化する。
【0186】
別の実施態様では、封鎖方法はゲル系のカプセルを使用し、このカプセルが、好適なトリガー(例えばpH、イオン濃度、温度、放射線)により、それらのカプセル封入された内容物を放出する。別の実施態様では、封鎖方法は、分解可能なマトリックス中に活性分子を捕獲する。好ましい実施態様では、好適な生物分解性重合体を、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリ(ベータ−ヒドロキシブチレート)ポリ(オルトエステル)およびポリホスファゼンを包含する群から選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0187】
一般的に、好ましい実施態様による好適なゲル化剤は、水溶性であり、水に対する親和力がPVAよりも高い溶質である。好ましい実施態様では、固体ゲル化剤またはゲル化剤の水溶液をPVA水溶液に加える。典型的には、PVA約1重量%〜約50重量%のPVA溶液は、所望量のPVAを温めた脱イオン水中に混合しながら加えることにより製造する。例えば、20重量%PVA溶液は、PVA(100kg/モル、99.3+%加水分解、JT Baker)20gを、水浴中で90℃を超える温度に加熱した脱イオン水80g中に、渦巻きミキサー(VWRブランド)を使用して最低15分間連続攪拌しながら溶解させることにより、製造する。得られるPVA溶液は、完全に溶解し、融解した時、実質的に透明である。この溶液を、覆った容器中に入れ、所望により鉱油の保護層下で蒸発を避ける。
【0188】
好ましい一実施態様では、分子量400のポリエチレングリコール(PEG400、シグマアルドリッチ)1.4gを10重量%PVA溶液6.0gに、ホットプレート上、50℃で攪拌しながら徐々に加え、次いでジャーを振とうした。最初に不均質な溶液を製造した後、材料を加える内に均質になり、急速に不透明になった。最終的なゲルは、PVA(重量で)8%、PEG40019%および水73%であった。図22A−22Dは、混合終了後の4時点、すなわち鉱油保護層の下で、図22Aはゼロ分、図22Bは15分、図22Cは2時間、図22Dは1日の、ジャーから取り出した状態における生成物を示す。
【0189】
好ましい一実施態様では、10重量%PVA水溶液35.6gを水性5.1MのNaCl18.7gに混合しながら加え、得られた混合物を強く振とうすることにより、PVAヒドロゲルを製造した。この溶液は、一様で透明になる前に、短時間不均質であった。16時間の間に、溶液は徐々に、より不透明になり、ゲル化した。最終的なゲルは、PVA7重量%、NaCl8重量%および水85重量%であった。図23A−23Eは、覆った皿およびたわみ性バッグの中に注いだ後の5時点、すなわち図23Aはゼロ分、図23Bは20分、図23Cは1時間、図23Dは2時間、図23Eは17時間の生成物を示す。溶液は、塩形状を容易に形成するのに十分に長い間流体であることに注意する。また、この溶液をたわみ性バッグの中に注ぎ込み、変形し得る環境中での空間充填用途に対する能力を立証した。
【0190】
別の実施態様では、10重量%PVA水溶液を、4:1比エポキシ接着剤ガン(3M)の大きい方の胴に入れた。分子量400g/モルのポリ(エチレン)グリコールを小さい方の胴に入れた。得られるブレンドを、3インチ静止ミキサー(3M)を通し、室温に保持した型の中に送達した。得られた混合物は、PVA8重量%、PEG40020重量%および水72重量%であった。得られた混合物は、送達時は不均質にゲル化するが、時間と共に均質な不透明ゲルになることが観察された。
【0191】
別の好ましい実施態様では、NaClを10重量%PVA水溶液に約95℃(図24A)で混合しながら加え、最終濃度を2MのNaClにした。約15分後、得られたPVA溶液は滑らかで均質であった(図24B)。得られたPVA溶液を2個のジャーの中に注ぎ込み、一方を室温で平衡化し(図24C、15分間、図24E、1時間)、他方を削った氷上に置いた(図24D、15分間、図24F、1時間)。この溶液は、最初は曇っていたが、均質であった。1時間後、室温で冷却したゲルは僅かに曇っていたのに対し、氷冷却したゲルはほとんど透明であった。
【0192】
次いで、2つの試料を室温で保存した。1箇月後に最終的に得られたゲルは、重大な離液を示し、外見上は同等であったが、急速に冷却した材料ははるかに急速に不透明になった。
【0193】
図25A−25Fは、図24A−24Fの、貯蔵後のPVAヒドロゲルを例示する。図25Aは、室温で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Bは、氷上で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Cは、室温で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Dは、氷上で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Eは、図25CのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものであり、図25Fは、図25DのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものである。
【0194】
好ましい実施態様で、本発明は、関節中の負荷を支える表面間にその場で形成した重合体クッションを与えることにより、関節疾病を早期に処置するための方法を提供する。好ましい一実施態様では、大腿骨頭をずらし、関節中の露出したキャビティを、PVAおよびゲル化剤の溶液で充填し、大腿骨頭を戻し、PVA溶液をその場でゲル化させることにより、PVAクッションを股関節中にその場で形成する。図26A−26Dに例示する一例では、水浴中で95℃に温めた20重量%PVA水溶液に、連続的に攪拌しながら、乾燥NaClを中程度の速度で加え、2.1MNaCl溶液を調製した。1分後、得られた溶液は滑らかで可塑性(malleable)であり、タフィーに似ていた。得られた溶液をミキサーから取り出し、人工股関節(THR)装置の冷却したポリエチレンライナー中に入れた。THR関節の適合するコバルト−クロムボールをライナーソケット中に挿入し、室温で1時間放置した。次いで、型を脱イオン水中にさらに1時間入れた後、ボールをポリ(エチレン)ライナーから取り出した。この時点で、薄く、均質な、実質的に欠損が無いPVAの半球が得られた。図26Aは、冷却したポリエチレンライナーから形成された型および人工股関節の適合ボールを示す。図26Bは、冷却したポリエチレンライナーにPVA溶液を満たし、適合ボールを所定の位置に配置した型を示す。図26Cは、空気中、室温で1時間、続いて脱イオン水中、室温で1時間後の、ポリエチレンライナー中で成形されたPVAを示巣。図26Dは、ポリエチレンライナーから取り出した、成形されたPVA製品を示す。
【0195】
ゲル化の機構は化学的に非特異性であるので、PVAの自己会合を起こす十分な浸透活性を有するなら、事実上すべての溶質を使用することができる。別の好ましい実施態様では、PVAゲルを形成するためのゲル化剤として天然の生物相容性材料を使用することにより、共非溶剤性を利用した。コンドロイチン硫酸塩(CS、Now Foods Bloomingsdale, IN)を使用してポリビニルアルコールのゲル化を誘発した。10重量%PVA水溶液を調製し、使用するまで60℃で保存した。第一の例では、温コンドロイチン硫酸塩溶液(約80℃)を温PVA溶液に加え、PVA5重量%、CS7重量%の混合物を形成した。室温に冷却することにより、混合物は2日間かけて弱いゲルを形成したが、このゲルは安定していた(図27A)。第二の例では、CS600mgを10重量%PVA水溶液10mlに60℃で連続攪拌しながら直接加えた。前の例と比較して、この混合物は、数分ではるかに堅いゲルを形成した(図27B)。関節空間中に典型的に存在する生物相容性材料を使用してPVAのゲル化を誘発するのに成功したことは、その場における関節修復または増強の可能性を示唆している。
【0196】
別の実施態様では、ヒトの血液流中にある一般的なアミノ酸であるセリンを脱イオン水に溶解させ、30重量%水溶液を調製した。次いで、PVA溶液およびセリン溶液を等体積部で、90℃未満で組み合わせ、十分に混合し、PVA10%、セリン15%および水75%の溶液を形成した。この溶液は、高温にある間は流体のままであったが、冷却するにつれて徐々にゲル化し、約1時間後にゲルを形成した。
【0197】
好ましい実施態様では、ビニル重合体溶液は、欧州特許出願第EP1229873B1号(本明細書に参考として包含される)に記載されているように、ビニル重合体、例えばポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドン(PVP)またはPVPの共重合体の混合物を包含することができるが、これらに限定されるものではない。
【0198】
好ましい実施態様では、ビニル重合体溶液は、相対的な溶剤品質を操作することにより、物理的会合を形成する成分のどのような混合物でも包含することができる。
【0199】
好ましい実施態様では、ビニル重合体溶液は、ナノまたはマイクロ構造化剤を包含することができ、ナノおよびマイクロ粒子状物質、例えば帯電した、または帯電していない、クレーまたはシリカ、および/またはナノ構造化する官能化された分子、例えば前に記載したPOSS、を包含することができる。これらのナノまたはマイクロ粒子状物質は、ゲル化過程を促進または増強する核形成箇所を与える。本発明の好ましい実施態様は、ビニル重合体溶液中の適切な大きさを有するすべての粒子により与えられる核形成箇所が、ゲル化を増強し、所望の機械的特性を有するゲルを形成する、という認識を活用している。
【0200】
損傷した椎間板の修復
好ましい実施態様では、本発明の方法および供給装置を、損傷した椎間板の修復に使用する。図33は、2個の脊椎を通した中間縦断面900を図式的に示し、各脊椎は、椎体920および棘状突起922を有し、2個の脊椎が、線維輪912、髄核914およびヘルニア形成916を含んでなる椎間板910を包んでおり、向きは、垂直軸930、前方−後方軸932および矢印938がヘルニア形成916への到達経路を示す。図34は、損傷した椎間板910を通した横断面図940を図式的に示し、隣接する脊椎の棘状突起922および横突起924、線維輪912および髄核914を示す。
【0201】
簡潔に述べると、損傷した椎間板は、ヘルニア形成した区域を侵害せず、本発明のビニル重合体ヒドロゲルの粘弾性溶液を注入し、髄核材料の一部または実質的に全部を置きかえ、上記の方法によりビニル重合体ヒドロゲルのゲル化速度を制御し、注入箇所を閉鎖することにより、修復する。ビニル重合体ヒドロゲルの粘弾性溶液は、ヘルニア形成箇所における線維輪中の欠損を通して、および/または線維輪の別の点を通して注入することができる。注入箇所および欠損は、上記のようにゲル化剤をさらに使用し、ヒドロゲルの物理的特性をその場で調整することにより、閉鎖することができる。あるいは、注入箇所および欠損は、注入箇所または体のキャビティの他の欠損を密封、補強または閉鎖するための公知の医療装置を使用して密封および補強することができる。そのような好適な装置は、公開国際特許出願第WO01/12107号および第WO02/054978号に開示されている(本明細書に参考として包含される)。
【0202】
図35は、本発明の好ましい実施態様により、損傷した椎間板910を修復する方法における工程を示し、横断面図960で、隣接する脊椎の棘状突起922および横突起924、線維輪912、髄核914、脊髄942の輪郭、および欠損918を通して導入された、ゲル化剤とビニル重合体の粘弾性混合物952を供給する供給管934を示す。好ましい実施態様では、ゲル化剤とビニル重合体の粘弾性混合物の、所望量の供給に続いて、同じ供給管934を通してゲル化剤を追加することにより、ヒドロゲルの局所的な物理的特性を調節する。追加のゲル化剤は、ビニル重合体溶液と最初に混合されたゲル化剤と同一でも異なっていてもよい。
【0203】
別の実施態様では、ゲル化剤を加えることによる、ヒドロゲルの局所的な物理的特性の調整を補足するために、またはその代わりに、シーラーを使用することができる。図36は、本発明の好ましい実施態様による、損傷した椎間板910の修復における工程を示し、横断面図962で、隣接する脊椎の棘状突起922および横突起924、線維輪912、髄核914、脊髄942の輪郭、欠損918、ゲル化剤とビニル重合体の混合物952、シーラント970、固定剤918、固定剤送達器具950を示す。シーラント970は、流体および他の物質がシーラント970の周囲および欠損918を通過するのを阻止する材料から構築され、そのように形成されている。シーラント970は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、膨脹ポリテトラフルオロエチレン(e−PTFE)、ナイロン(商品名)、MARLEX(商品名)、高密度ポリエチレン、および/またはコラーゲンを包含する多くの様々な材料の一種以上から構築することができるが、これらに限定されるものではない。本明細書に参考として包含する第WO02/054978号を参照。シーラント970を配置した後、固定剤918、例えば縫合またはソフトティッシュアンカーを偉材送達器具950を使用して配置する。
【0204】
別の実施態様では、バリヤーを使用することができる。図37は、本発明の好ましい実施態様による、損傷した椎間板910の修復における工程を図式的に示し、横断面図964で、隣接する脊椎の棘状突起922および横突起924、線維輪912、髄核914、脊髄942の輪郭、欠損918、ゲル化剤とビニル重合体の混合物952、バリヤー974、固定剤972、および固定剤送達器具950を示す。バリヤー974は、好ましくは本来フレキシブルであり、織った材料、例えばDACRON(商品名)またはナイロン(商品名)、合成ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、および膨脹材料、例えばe−PTFEから構築することができる。あるいは、バリヤー974は、生物学的材料、例えばコラーゲン、でもよい。バリヤー974は、膨脹可能な、例えばバルーンまたは親水性材料でもよい(第WO02/054978号を参照のこと)。
【0205】
本発明の粘弾性溶液は、適宜、欠損部以外の箇所で注入する。図38は、本発明の好ましい実施態様による、損傷した椎間板910の修復における工程を図式的に示し、横断面図968で、隣接する脊椎の棘状突起922および横突起924、線維輪912、脊髄942の輪郭、欠損918、以前は髄核により占有されていた空間を実質的に充填しているゲル化剤とビニル重合体の混合物952、バリヤー976、および供給管934を示す。
【0206】
請求項は、他に指示がない限り、説明した順序または要素を制限するものではない。従って、請求項の範囲および精神に入るすべての実施態様は、本発明として特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1A】脊椎解剖学の図式的な図であり、横突起、棘状突起および椎骨の椎体、脊髄および脊椎神経、および椎間板の髄核を示す。椎間板の線維輪が、横、前および後側部で髄核を取り囲んでいる。
【図1B】脊椎解剖学の図式的な図であり、横突起、棘状突起および椎骨の椎体、脊髄および脊椎神経、および椎間板の髄核を示す。椎間板の線維輪が、横、前および後側部で髄核を取り囲んでいる。
【図2】本発明の好ましい実施態様による、特定温度におけるフローリー相互作用パラメータχと重合体濃度(Φ)の関係を示すグラフである。χ=0.25における横軸は、第一溶剤中の重合体溶液(下側)および第二溶剤中の重合体溶液(上側)を分離している。矢印および菱形は、溶剤1を溶剤2で置き換えることにより生じたχに対する影響を示す。
【図3】本発明の好ましい実施態様により、硬化溶液中浸漬の1日後(上側)および3日後(下側)の、透析装置カセット中の10%PVA溶液を示す。左から右へ、1.5MNaCl、2.0MNaClおよび3.0MNaCl。1.5M溶液は、PVAをゲル化させず、2.0M溶液および3.0M溶液は、PVAをゲル化させる。2.0Mゲルが次第に不透明化し、試料が時間と共に固まるにつれて、3Mゲルがカセット縁部から収縮していることに注意(矢印で示す)。
【図4】本発明の好ましい実施態様による一様なシータゲルを示す。3.0M(各対の左側画像)および2.0M(右側画像)NaCl硬化溶液に浸漬することにより生じたPVAゲル。これらのゲルが一様で、不透明であることに注意。3.0MNaClに露出されたゲルは、膨潤が少なく、脱イオン水中での平衡化に続いて、より緻密になる。
【図5】空間的に変化するNaCl濃度に露出された10%PVA溶液を使用する、本発明の好ましい実施態様による勾配ゲルの例を示す。ゲルの半透明性および膨潤比の両方における変化に注意。
【図6】熱的サイクルにかけたPVAクリオゲルおよび本発明の好ましい実施態様による「シータゲル」から得た結果を比較する、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。実線は3.0MNaClに3日間浸漬した10%PVAを示し、破線は10℃から−20℃に加熱速度0.02℃/分で4回熱サイクルにかけた10%PVAを示す。
【図7】本発明の好ましい実施態様により、様々なモル濃度の浸漬溶液でゲル化した後、脱イオン水中で十分に平衡化したPVAヒドロゲル中の、PVAの百分率の関係を示すグラフである。接続された点は、3日間浸漬した10%PVA測定を表し、単一の点は3MNaCl中に12日間浸漬した20%PVA溶液の初期溶液を表す。20%PVA溶液に関して、膨潤比およびPVAの百分率の3日値は、10%PVA溶液のそれと適合していた(図には示していない)。3MNaCl中に12日間浸漬(および脱イオン水中5日間平衡化)した後、20%PVA溶液は、29%PVAのゲルを形成した。
【図8】本発明の好ましい実施態様により、様々なモル濃度の浸漬溶液でゲル化した後、脱イオン水中で十分に平衡化したPVAヒドロゲルに対する、重力膨潤比を示すグラフである。接続された点は、3日間浸漬した10%PVA測定を表し、単一の点は3MNaCl中に12日間浸漬した20%PVA溶液の初期溶液を表す。20%PVA溶液に関して、膨潤比およびPVAの百分率の3日値は、10%PVA溶液のそれと適合していた(図には示していない)。
【図9】本発明の好ましい実施態様による、3MNaClにおけるPVAシータゲルの動的弾性率、20%初期PVA濃度および1N静止負荷とエージング時間(日)の関係を示す。
【図10】は、本発明の好ましい実施態様による、20%初期PVA濃度および0.25N静止負荷におけるPVAシータゲルの複合モジュラス(貯蔵(G’)および損失(G”)モジュラス)と溶液モル濃度(2Mおよび3MNaCl)の関係を示す。
【図11】本発明の好ましい実施態様による、勾配ゲル160の製造に使用する「Ussing」型チャンバーを図式的に示す図である。
【図12】本発明の好ましい実施態様により、PVAゲルを5MNaCl中に3日間浸漬して形成する、PVAゲル構造の急速凍結深エッチ(QFDE)画像を例示する。
【図13A】本発明の好ましい実施態様により、プレキシグラス管に10%PVA溶液を満たし、1凍結−融解サイクル(−21℃で8時間、室温で4時間)を行い、次いで3MNaCl浴に少なくとも3日間浸漬し、次いで空気中で60時間脱水し、脱イオン水(DI)に戻すことにより製造したPVA勾配ヒドロゲルの断面および断面の拡大図をそれぞれ示す。
【図13B】本発明の好ましい実施態様により、プレキシグラス管に10%PVA溶液を満たし、1凍結−融解サイクル(−21℃で8時間、室温で4時間)を行い、次いで3MNaCl浴に少なくとも3日間浸漬し、次いで空気中で60時間脱水し、脱イオン水(DI)に戻すことにより製造したPVA勾配ヒドロゲルの断面および断面の拡大図をそれぞれ示す。
【図14】本発明の好ましい実施態様により、透析カートリッジに10%PVA溶液を満たし、次いで一方の側に3MNaClおよび他方の側に6MNaClを有するチャンバー中に3日間浸漬することにより製造した、PVA勾配ヒドロゲルの断面図を示す。
【図15】透析カートリッジに10%PVA溶液を満たし、次いで一方の側に3MNaClおよび他方の側に6MNaClを有するチャンバー中に3日間浸漬することにより製造した、図14のPVA勾配ヒドロゲルの6MNaCl側の断面拡大図を示す。
【図16】本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびラポナイトクレー2重量%を混合し、1凍結−融解サイクルに付し、次いで4MのNaCl溶液に少なくとも3日間露出することにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【図17】本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびシリカ4重量%を混合し、pH=3に滴定し、1凍結−融解サイクルに付し、次いで4MのNaCl溶液に少なくとも3日間露出することにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【図18】本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびシリカ4重量%を混合し、pH=10に滴定し、1凍結−融解サイクルに付し、次いで4MのNaCl溶液に少なくとも3日間露出することにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【図19】本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびオクタテトラメチルアンモニウム多面体オリゴマー状シルセスキオキサン(OctaTMA POSS)を水中で混合し、次いで1凍結−融解サイクルに付すことにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【図20】本発明の好ましい実施態様によるハイブリッドおよび比較PVAゲルに関する貯蔵モジュラスを示すグラフである。
【図21A】本発明の好ましい実施態様によりPVAヒドロゲルを形成する方法のフローチャートを示す。
【図21B】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成し、提供する方法のフローチャートを示す。
【図22A】本発明の好ましい実施態様により、分子量400のポリ(エチレングリコール)(PEG400、Sigma Aldrich)1.4gを10重量%PVA水溶液6gに混合しながら加えて製造したPVAヒドロゲルの、混合終了後の4時点、すなわち鉱油保護層の下で、0分のジャーから取り出した状態における生成物を示す。
【図22B】本発明の好ましい実施態様により、分子量400のポリ(エチレングリコール)(PEG400、Sigma Aldrich)1.4gを10重量%PVA水溶液6gに混合しながら加えて製造したPVAヒドロゲルの、混合終了後の4時点、すなわち鉱油保護層の下で、15分のジャーから取り出した状態における生成物を示す。
【図22C】本発明の好ましい実施態様により、分子量400のポリ(エチレングリコール)(PEG400、Sigma Aldrich)1.4gを10重量%PVA水溶液6gに混合しながら加えて製造したPVAヒドロゲルの、混合終了後の4時点、すなわち鉱油保護層の下で、2時間のジャーから取り出した状態における生成物を示す。
【図22D】本発明の好ましい実施態様により、分子量400のポリ(エチレングリコール)(PEG400、Sigma Aldrich)1.4gを10重量%PVA水溶液6gに混合しながら加えて製造したPVAヒドロゲルの、混合終了後の4時点、すなわち鉱油保護層の下で、1日のジャーから取り出した状態における生成物を示す。
【図23A】本発明の好ましい実施態様により、10重量%PVA水溶液35.6gを水性5.1MNaCl18.7gに混合しながら加え、得られた混合物を強く振とうして製造したPVAヒドロゲルの、覆った皿およびフレキシブルバッグの中に注いだ後0分の生成物を示す。
【図23B】本発明の好ましい実施態様により、10重量%PVA水溶液35.6gを水性5.1MNaCl18.7gに混合しながら加え、得られた混合物を強く振とうして製造したPVAヒドロゲルの、覆った皿およびフレキシブルバッグの中に注いだ後20分の生成物を示す。
【図23C】本発明の好ましい実施態様により、10重量%PVA水溶液35.6gを水性5.1MNaCl18.7gに混合しながら加え、得られた混合物を強く振とうして製造したPVAヒドロゲルの、覆った皿およびフレキシブルバッグの中に注いだ後1時間の生成物を示す。
【図23D】本発明の好ましい実施態様により、10重量%PVA水溶液35.6gを水性5.1MNaCl18.7gに混合しながら加え、得られた混合物を強く振とうして製造したPVAヒドロゲルの、覆った皿およびフレキシブルバッグの中に注いだ後2時間の生成物を示す。
【図23E】本発明の好ましい実施態様により、10重量%PVA水溶液35.6gを水性5.1MNaCl18.7gに混合しながら加え、得られた混合物を強く振とうして製造したPVAヒドロゲルの、覆った皿およびフレキシブルバッグの中に注いだ後17時間の生成物を示す。
【図24A】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に約95℃(図24A)で混合しながら加え、最終濃度を2MNaCl(図24B)にして製造したPVAヒドロゲルを例示する。15分間混合後、得られた混合物のアリコートを、室温(図24C、15分間、図24E、1時間)または削った氷上(図24D、15分間、図24F、1時間)で冷却した2個の容器中に注ぎ込んだ。
【図24B】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に約95℃(図24A)で混合しながら加え、最終濃度を2MNaCl(図24B)にして製造したPVAヒドロゲルを例示する。15分間混合後、得られた混合物のアリコートを、室温(図24C、15分間、図24E、1時間)または削った氷上(図24D、15分間、図24F、1時間)で冷却した2個の容器中に注ぎ込んだ。
【図24C】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に約95℃(図24A)で混合しながら加え、最終濃度を2MNaCl(図24B)にして製造したPVAヒドロゲルを例示する。15分間混合後、得られた混合物のアリコートを、室温(図24C、15分間、図24E、1時間)または削った氷上(図24D、15分間、図24F、1時間)で冷却した2個の容器中に注ぎ込んだ。
【図24D】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に約95℃(図24A)で混合しながら加え、最終濃度を2MNaCl(図24B)にして製造したPVAヒドロゲルを例示する。15分間混合後、得られた混合物のアリコートを、室温(図24C、15分間、図24E、1時間)または削った氷上(図24D、15分間、図24F、1時間)で冷却した2個の容器中に注ぎ込んだ。
【図24E】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に約95℃(図24A)で混合しながら加え、最終濃度を2MNaCl(図24B)にして製造したPVAヒドロゲルを例示する。15分間混合後、得られた混合物のアリコートを、室温(図24C、15分間、図24E、1時間)または削った氷上(図24D、15分間、図24F、1時間)で冷却した2個の容器中に注ぎ込んだ。
【図24F】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に約95℃(図24A)で混合しながら加え、最終濃度を2MNaCl(図24B)にして製造したPVAヒドロゲルを例示する。15分間混合後、得られた混合物のアリコートを、室温(図24C、15分間、図24E、1時間)または削った氷上(図24D、15分間、図24F、1時間)で冷却した2個の容器中に注ぎ込んだ。
【図25A】図24A−24Fの、貯蔵後のPVAヒドロゲルを例示する。図25Aは、室温で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Bは、氷上で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Cは、室温で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Dは、氷上で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Eは、図25CのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものであり、図25Fは、図25DのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものである。
【図25B】図24A−24Fの、貯蔵後のPVAヒドロゲルを例示する。図25Aは、室温で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Bは、氷上で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Cは、室温で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Dは、氷上で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Eは、図25CのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものであり、図25Fは、図25DのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものである。
【図25C】図24A−24Fの、貯蔵後のPVAヒドロゲルを例示する。図25Aは、室温で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Bは、氷上で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Cは、室温で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Dは、氷上で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Eは、図25CのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものであり、図25Fは、図25DのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものである。
【図25D】図24A−24Fの、貯蔵後のPVAヒドロゲルを例示する。図25Aは、室温で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Bは、氷上で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Cは、室温で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Dは、氷上で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Eは、図25CのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものであり、図25Fは、図25DのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものである。
【図25E】図24A−24Fの、貯蔵後のPVAヒドロゲルを例示する。図25Aは、室温で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Bは、氷上で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Cは、室温で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Dは、氷上で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Eは、図25CのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものであり、図25Fは、図25DのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものである。
【図25F】図24A−24Fの、貯蔵後のPVAヒドロゲルを例示する。図25Aは、室温で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Bは、氷上で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Cは、室温で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Dは、氷上で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Eは、図25CのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものであり、図25Fは、図25DのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものである。
【図26A】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に95℃で混合しながら加え、最終濃度を2.1MのNaClにして製造したPVAヒドロゲルを例示し、冷却したポリエチレンライナーから形成された型および人工股関節からの適合ボールを示す。
【図26B】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に95℃で混合しながら加え、最終濃度を2.1MのNaClにして製造したPVAヒドロゲルを例示し、冷却したポリエチレンライナーにPVA溶液を満たし、適合ボールを所定の位置に配置した型を示す。
【図26C】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に95℃で混合しながら加え、最終濃度を2.1MのNaClにして製造したPVAヒドロゲルを例示し、空気中、室温で1時間、続いて脱イオン水中、室温で1時間後の、ポリエチレンライナー中で成形されたPVAを示す。
【図26D】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に95℃で混合しながら加え、最終濃度を2.1MのNaClにして製造したPVAヒドロゲルを例示し、ポリエチレンライナーから取り出した、成形されたPVA製品を示す。
【図27A】本発明の好ましい実施態様により製造した、コンドロイチン硫酸塩(CS)を配合したPVAヒドロゲルを例示し、約80℃の温CS溶液を約60℃の10重量%PVA水溶液に加え、PVA5重量%、CS7重量%の混合物を形成することにより製造したPVAヒドロゲルを示す。
【図27B】本発明の好ましい実施態様により製造した、コンドロイチン硫酸塩(CS)を配合したPVAヒドロゲルを例示し、CS600mgを10重量%PVA水溶液10mlに加えて形成したPVAヒドロゲルを示す。
【図28A】本発明の好ましい実施態様により、PVAヒドロゲルを形成する方法のフローチャートを示す。
【図28B】本発明の好ましい実施態様により、PVAヒドロゲルを形成する方法のフローチャートを示す。
【図28C】本発明の好ましい実施態様により、PVAヒドロゲルを形成する方法のフローチャートを示す。
【図29A】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図29B】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図29C】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図29D】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図29E】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図29F】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図30A】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図30B】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図30C】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図30D】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図30E】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図30F】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図31A】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図31B】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図31C】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図31D】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図31E】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図32】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを供給する供給装置を図式的に示す。
【図33】機能的脊椎単位の、2個の脊椎および椎間板が見える部分の中間縦断面を示す。
【図34】損傷した椎間板を通した、隣接する脊椎の棘状突起および横突起、線維輪および髄核を示す横断面図を示す。
【図35】本発明の好ましい実施態様により、損傷した椎間板を修復する方法で、ゲル化剤とビニル重合体の混合物を供給する工程を示す。
【図36】本発明の好ましい実施態様により、損傷した椎間板を修復する方法における、特にゲル化剤とビニル重合体の混合物、シーラント、固定剤、および固定剤供給器具を示す工程を示す。
【図37】本発明の好ましい実施態様により、損傷した椎間板を修復する方法における、特にゲル化剤とビニル重合体の混合物、バリヤー、固定剤、および固定剤供給器具を示す工程を示す。
【図38】本発明の好ましい実施態様により、損傷した椎間板を修復する方法における、特に、以前は髄核により占有されていた空間を実質的に充填するゲル化剤とビニル重合体の混合物、バリヤー、および供給管を示す工程を示す。
【関連出願】
【0001】
本願は、本明細書にその内容全体を参考として含める米国暫定特許出願第60/400,899号(2002年8月2日出願)の有益性を特許請求する米国特許出願第10/631,491号(2003年7月31日出願)の一部継続出願である。
【発明の背景】
【0002】
米国では六千五百万人が下部背痛を患っており、これらの症例の推計千二百万人が変形性椎間板疾患(degenerative disk disease)によるものである。背中は、その複雑な構造のために損傷や病気に特に敏感である。脊柱は、脊椎板(vertebral disk)により分離された脊椎の柱から構成される、関節骨および軟骨の複雑な構造を有する(図1)。これらの脊椎板は、脊柱に沿って伝わる負荷を緩和および分散させるための介在クッションとして作用する。
【0003】
椎間板の異方性構造は、複雑な脊椎負荷をやわらげるのに必要な適切な機械的特性を効率的に達成する。髄核と呼ばれる内側の粘弾性物質が、板の総断面積の20〜40%を占めている。核は、通常70〜90重量%の水を含む。核は親水性プロテオグリカンから構成され、この親水性プロテオグリカンは、水を核中に引き付けて脊柱に対する圧縮負荷を支持する0.1〜0.3MPaの浸透膨潤圧を発生する。核は、線維輪と呼ばれる高度に構造化された外側コラーゲン層により横方向で束縛されている(図1)。髄核は、常に圧迫されているのに対し、線維輪は常に引っ張られている。髄核は総板断面積の3分の1を占めるだけであるが、核は板にかかる総負荷の70%を支持している。椎間板は加齢と共に弾性が低下し、ほとんどの中年成人では、含水量を失って、核は硬質ゴムの弾性体のようになる。この水分損失により、椎間板のサイズも収縮してその特性が損なわれる。
【0004】
変形性椎間板疾患では、髄核が応力下で歪み、髄が線維輪を通して押し出され、周囲の神経圧迫することがある。この過程は、ヘルニア形成と呼ばれる。板の損傷は、髄の一部が失われると元に戻らない場合が多い。板損傷の大部分は腰の区域で起こり、最も一般的な疾患区域は、L4/L5およびL5/S1で起こる。
【0005】
椎弓切除術(ヘルニア形成した板の部分−典型的には髄核−を外科手術により除去)を行い、局所的神経組織に対する圧力を軽減することができる。この手法は、核の耐負荷能力は物質の損失と共に低下すると仮定すると、短期間的な解決策であることは明らかである。それにも関わらず、毎年二十万件を超える椎弓切除術が行われており、成功率は70〜80%である。
【0006】
関節固定術または関節癒合術は、変形性椎間板疾患を外科的に処置するためのより恒久的な方法である。関節癒合術は、内部固定を伴って、または伴わずに行う。内部固定は、より一般的になっているものの、この技術にはそれなりの複雑さがある。内部固定関節癒合術を受けた患者に、骨折、神経学的損傷、および骨粗鬆症が見られる。骨が癒合する能力は患者毎に異なり、平均成功率は75〜80%である。脊椎癒合術は、脊椎の強直性および運動低下を引き起こす。さらに、関節癒合術は、脊柱中の隣接する脊椎に応力を与えることもあり、これが隣接する板の疾患を促進し、さらなる背部手術につながることもある。
【0007】
効果的に設計された人造板は、脊柱の隣接レベルで受ける問題から患者を保護しながら、摩耗した板と置き換えることができる。この分野では、幾つかの補欠人造板が提案されている。これらの補欠する試みの多くは、核および線維輪を含めて、板を完全に置き換えている。椎間板は多方向の負荷がかかる複雑な関節であることを考慮すると、椎間板の関節や機械的な挙動を模擬する補欠物の設計は、途方もなく複雑である。例えば、身体が仰向けに寝ている時、第三腰板にかかる圧縮負荷は300Nであり、直立姿勢では700Nに、前に20°曲げると1200Nに上昇する。さらに、5°まで回転して屈曲および伸長する際は6N−mのモーメントに到達することが多い。十分な安全性を得るためには、椎間板全体の好ましい圧縮強度は4MN/m2である。
【0008】
椎間板の完全な置換で今日までの最も広範囲な経験は、SB Charite III補欠物で得たものある。この補欠物は、ヨーロッパで1987年以降広範囲に使用されており、3,000を超える患者に移植されている。SB IIIは、2個のコバルトクロム末端板の間に配置されたポリエチレンスペーサーで設計されている。2年間の追跡調査により、患者における良好な臨床的成果が示されている。もう一つの研究は、2枚のチタン板に取り付けられた、カーボンブラック補強したポリオレフィンコアからなる完全板補欠物に関するものである。2個の充填材でコアが破損するため予備的な結果は有望とは言えない。
【0009】
上記の例は、いずれも人造板の開発に著しい商業的努力がなされていることを示している。しかしながら、いずれの例においても、ヒト椎間板に対するこれらの成分との機械的等価性については幾分疑問があり、長期間の臨床的予後は依然として不明である。
【0010】
椎間板の完全置換に代わるものとして、髄核だけを置き換え、線維輪は無傷で残すことができる。線維は侵されにくく、線維輪はその本来の線維長および線維張力を回復し得るので、線維が無傷であれば、この手法は有利である。核を置き換える際、特性が天然の核に類似している材料を見出すことが望ましい。先行技術として、空気、食塩水、またはチキソトロピー性ゲルで充填された嚢胞を挙げられる。漏れを防止するために、嚢胞からなるメンブラン材料は、不透過性でなければならないが、不透過性であると、体液が板キャビティ中に自然に拡散するのを抑制してしまい、必要な栄養の供給を阻止してしまう。
【0011】
より自然な椎間板代替材料を見出すために、幾つかの研究グループが、髄核を置き換えることができるものとして、重合体状ヒドロゲルを試験している。ヒドロゲルは、典型的には良好な粘弾性を有し、良好な機械的挙動を示すため、髄核に対して良好な類似体である。さらに、ヒドロゲルは、大量の遊離水を含み、これによってヒドロゲルから製造された補欠物が圧迫下で変形し、天然の髄核と同様に、弾性を失うことなく、周期的な負荷を処理することができる。これらの材料の水透過性により、体液および栄養が板空間に拡散することもできる。この細孔構造の制御、従って、充填材のすべての部分への栄養到達制御は、将来の補欠充填材に不可欠であろう。
【0012】
他の研究者は、超高分子量ポリエチレン繊維から製造された外被中に収容されたポリアクリロニトリル−ポリアクリルアミドマルチブロック共重合体の使用を試験している。これらの系は、水中でその重量の80%まで吸収する。ポリビニルアルコール(PVA)およびPVAとポリビニルピロリドン(PVP)との共重合体を用いて、天然板と類似した機械的特性を有する補欠物を作製できる。これらの材料には、他の医療装置でも臨床的な成果を上げているという別の優位性がある。PVAから形成されるゲルは、通常、凍結融解製法により、または外部架橋剤により製造される。さらに、ヒドロゲル系核には、移植後に徐々に拡散放出される治療薬を含有させることができる。現在、これらの材料には臨床的データは無いが、死体関節に対する生物化学試験は、天然板に類似した機械的特性を示している。
【発明の概要】
【0013】
本発明の好ましい実施態様として、ビニル重合体のゲル化速度を制御する方法を提供する。好ましい実施態様においては、本発明による方法は、化学的架橋または放射線を使用せずに、所望の物理的特性を有するビニル重合体ヒドロゲルを調整できるように製造することを含む。このゲル化方法は、例えば、得られるゲル化剤を有するビニル重合体混合物の温度を制御することにより、または不活性ゲル化剤複合体中に与えられた活性成分を使用することにより、ゲル化速度を調整する。
【0014】
好ましい実施態様においてはヒドロゲルを包含し、そのヒドロゲルは、例えばその場で組み立てた補欠物の外科的移植(最小限の外科的操作)に使用する、髄核増強用の注入可能なものである。本発明の好ましい実施態様によるヒドロゲルは、問題とする区域、例えば関節空間中の脊椎表面に適合する。本発明のその場におけるゲル化方法により形成された、負荷を支えるヒドロゲルは、例えば線維輪に対する損傷を最小に抑える。好ましい実施態様では、ビニル重合体ヒドロゲルの製造方法は、第一溶剤中に溶解させたビニル重合体を含んでなるビニル重合体溶液を用意する工程、ビニル重合体溶液を、ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱する工程、ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合し、ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する混合物を得る工程、ビニル重合体溶液とゲル化剤の混合物のゲル化を誘発する工程、およびゲル化速度を制御し、粘弾性溶液を形成する工程を含み、その際、加工性を、予め決められた期間に維持し、それによって所望の物理的特性を有するビニル重合体ヒドロゲルを製造する。別の好ましい実施態様で、本発明は、粘弾性溶液のゲル化を制御し、加工性が、予め決められた期間に維持されるように製造された、物理的に架橋されたヒドロゲルを提供する。別の態様では、本発明は、椎間板または関節の修復に使用する、ビニル重合体ヒドロゲルを形成する成分および供給装置を包含するキットを提供する。
【0015】
特定の好ましい実施態様では、ビニル重合体溶液を用意する工程が、典型的にはビニル重合体を第一溶剤に溶解させる工程を含む。ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合する工程は、ビニル重合体溶液を、ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱する工程の前または後に行うことができる。
【0016】
所望の物理的特性としては、典型的には光透過率、重力膨潤比、剛性率、負荷モジュラス、損失モジュラス、貯蔵モジュラス、動的弾性率、圧縮モジュラス、架橋および細孔径がある。好ましい実施態様では、所望の物理的特性は物理的架橋である。
【0017】
好ましい実施態様においては、ビニル重合体は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、ビニル重合体は、分子量約50kg/モル〜約300kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである。好ましい実施態様においては、ビニル重合体は、分子量約100kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである。典型的には、ビニル重合体溶液は、溶液の重量に対してポリビニルアルコール約1重量%〜約50重量%溶液である。好ましい実施態様においては、ビニル重合体溶液は、溶液の重量に対してポリビニルアルコール約10重量%〜約20重量%溶液である。
【0018】
特定の好ましい実施態様においては、本方法は、粘弾性溶液をゲル化剤とさらに接触させる工程を含み、それにより、典型的には得られるゲルの物理的または化学的特性を変えることができる。この方法は、ゲルの物理的特性を局所的に修正する、例えば体の空隙、例えば椎間板中の空間中でゲルを所定の位置に維持するのに好適である。
【0019】
好ましい実施態様においては、第一溶剤は、脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C1〜C6アルコールの水溶液およびそれらの混合物からなる群から選択される。ゲル化剤は、ビニル重合体よりも溶解度が高いのが好ましい。特定の好ましい実施態様では、ビニル重合体をゲル化剤の水溶液中に導入する。
【0020】
典型的には、ビニル重合体溶液とゲル化剤の混合物とのフローリー相互作用パラメータは、0.25〜1.0である。好ましい実施態様では、この混合物のフローリー相互作用パラメータは、少なくとも0.5、より好ましくは約0.25〜約0.5である。
【0021】
ゲル化剤は、典型的には、塩、アルコール、ポリオール、アミノ酸、糖、タンパク質、多糖、それらの水溶液、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい実施態様では、ゲル化剤は、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施態様では、ゲル化剤は、バイグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施態様では、ゲル化剤は、アルカリ金属塩、最も好ましくは塩化ナトリウムである。
【0022】
ゲル化剤は、乾燥固体として、または溶液で加えることができる。例えば、固体のNaClをビニル重合体の水溶液に加えるか、あるいは約1.5モル〜約6.0モル、より好ましくは約2.0モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液として加えることができる。さらに別の好ましい実施態様では、ゲル化剤は、メタノール、エタノール、i−プロパノール、t−プロパノール、t−ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択されたアルコールの水溶液である。
【0023】
ゲル化剤は、ビニル重合体溶液と混合する時は、活性形態にあっても、不活性形態にあってもよい。好ましい実施態様では、粘弾性溶液のゲル化を引き起こす工程は、ゲル化剤を活性化させる工程を含む。好ましくは、制御し得るトリガー反応により不活性ゲル化剤を活性化する。
【0024】
特定の好ましい実施態様では、不活性ゲル化剤は、巨大分子であり、活性ゲル化剤は、巨大分子の開裂により放出された巨大分子の断片を含んでなる。ある種の実施態様では、巨大分子の開裂は、酵素による開裂であり、好ましい巨大分子は、選択された酵素の生理学的基質である。好ましい実施態様では、巨大分子は、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、ケラタン硫酸塩、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択され、酵素は、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼAC、コンドロイチナーゼB、睾丸ヒアルロニダーゼ、ヒアルロンリアーゼ、ヘパリナーゼI/IIIおよびそれらの混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施態様では、巨大分子は、バイグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカン、ペルレカン、フィブロモジュリン、ベリシカン、ノイロカン、ブレビカンおよびそれらの混合物からなる群から選択され、酵素は、例えばアグレカナーゼおよびそれらの混合物を包含する群から選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
別の実施態様では、巨大分子は熱的に変性することができ、好ましい巨大分子はコラーゲンである。あるいは、巨大分子を、電磁放射線または粒子放射線で照射することにより、開裂させてもよい。
【0026】
別の好ましい実施態様では、不活性ゲル化剤は、小胞、リポソーム、ミセルまたはゲル粒子中に封鎖された貧溶剤である。ある種の好ましい実施態様では、リポソームは、光トリガー反応可能なジプラスマロゲンリポソームである。別の好ましい実施態様では、リポソームが、哺乳動物の体温近くで相転移を受ける。好ましくは、リポソームは、ジパルミトイルホスファチジルコリンとジミリストイルホスファチジルコリンの混合物を包含するが、これらに限定するされるものではない。
【0027】
別の好ましい実施態様では、不活性ゲル化剤は、哺乳動物の体温近くで相転移を受ける時に活性形態になるゲル粒子と会合する。そのような実施態様では、ゲル粒子は、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−アクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒアルロン酸、プルロニックおよびそれらの混合物からなる群から選択された重合体を含んでなるのが好適である。別の好ましい実施態様では、ゲル粒子は、分解を受けた時に、その内容物を放出する。
【0028】
典型的には、ゲル化速度を制御し、注入、成形またはカレンダー加工を包含する、粘弾性溶液のさらなる処理に必要な、十分な加工性期間を与える。好ましい実施態様では、粘弾性溶液を、哺乳動物体内の実際の、または潜在的な空間中に注入する。特に好ましい実施態様では、粘弾性溶液を椎間板中または関節、例えば股もしくは膝中に注入する。ヒドロゲルは、一般的な物理的特性により、または注入箇所におけるその局所的物理的特性により、体の空間中に保持することができる。好ましい実施態様では、注入箇所の近くにゲル化剤をさらに加えることにより、所望の局所的物理的特性を調節することができる。別の好ましい実施態様では、公知の医療装置を使用して注入箇所または体空隙の他の欠損を密封、補強または閉鎖することにより、ヒドロゲルを体空間中に保持することができる。好適な、そのような装置は、ここにその全文を参考として含める、公開された国際特許出願第WO01/12107号および第WO02/054978号に開示されている。
【0029】
別の好ましい実施態様では、処理工程が、火傷または挫傷を被覆することを包含する。
【0030】
本発明の好ましい実施態様は、ゲルの製造方法およびゲルの特性を制御する方法を提供する。本発明の好ましい実施態様では、ゲルの製造方法は、ビニル重合体を第一溶剤に溶解させ、ビニル重合体溶液を形成すること、および該ビニル重合体溶液を、ある量の第二溶剤中に導入し、ゲル化を引き起こすことを含んでなり、該第二溶剤は、処理温度で第一溶剤よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する。このフローリー相互作用パラメータ(χ)は、無次元であり、例えば温度、濃度および圧力によって異なる。溶剤は、低いχ値を有するか、または溶剤が高いχ値を有するとして特徴付けられ、その際、χ=0がモノマーに類似した溶剤に対応する。高いχ値を有する溶剤は、ある温度でゲル化過程を引き起こすとして特徴付けられる。本発明により、ゲル化を引き起こすのに十分なフローリー相互作用パラメータを有する第二溶剤を使用することにより、シータゲルが形成される。
【0031】
好ましくは、好ましい実施態様で使用する第二溶剤は、フローリー相互作用パラメータが0.25〜1.0である。典型的には、第一および第二溶剤の特徴は、室温または哺乳動物の体温で好ましい実施態様の方法を使用できるように選択する。本発明の方法により製造されるゲルは、物理的な架橋を有し、化学的架橋を実質的に含まない。好ましい実施態様では、ビニル重合体がポリビニルアルコールである。
【0032】
幾つかの実施態様では、ビニルを浸漬溶剤(第二溶剤)中に接触させ、第一溶剤と接触させる複数のサイクルを行う。あるいは、この方法は、ゲルを少なくとも1回の凍結−融解サイクルにかけることを包含する。従って、ポリビニルアルコール(PVA)ヒドロゲルは、シータゲルおよびクリオゲルの両方でよい。いづれか一方の方法により部分的ゲル化を達成し、次いで、他方を使用して完了させるか、または2つの方法を交互に使用することもできる。
【0033】
本明細書では、例および考察をビニル重合体、特にPVAヒドロゲルに関して記載するが、シータゲルは、以下にフローリー相互作用パラメータに関して説明する適切な種類の状態図を有するすべての重合体を使用し、類似の方法で製造することができる。ゲル化工程の際に機械的な力をゲルに作用させ、それがゲル化方法を変化させたり、配向したゲル化を誘起することができる。
【0034】
幾つかの実施態様では、ビニル重合体は、分子量約50kg/モル〜約300kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである。別の実施態様では、ビニル重合体は、分子量約100kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである。ビニル重合体溶液は、溶液の重量に対してポリビニルアルコール約1重量%〜約50重量%溶液である。好ましくは、ビニル重合体溶液は、溶液の重量に対してポリビニルアルコール約10重量%〜約20重量%溶液である。
【0035】
第一溶剤は、ゲル化を可能にするには不十分な低いχ値を有する溶剤、すなわち以下に記載するように、重合体要素と、それに隣接する溶剤分子との間の相互作用のエネルギーが、重合体−重合体対と溶剤−溶剤対との間の相互作用のエネルギーを超える溶剤の群から選択する。幾つかの実施態様では、第一溶剤は、脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C1〜C6アルコールの水溶液およびそれらの混合物からなる群から選択するが、これらに限定するものではない。
【0036】
一般的に、浸漬溶液は、ゲル化を可能にする高い、または十分なχ値を有する溶剤を含んでなる。幾つかの好ましい実施態様では、浸漬溶液は、アルカリ金属の塩、典型的には塩化ナトリウムの水溶液である。別の実施態様では、浸漬溶液は、C1〜C6アルコールの水溶液、典型的にはメタノール、エタノール、i−プロパノール、t−プロパノール、t−ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択されたアルコールの水溶液である。特定の実施態様では、浸漬溶液は、メタノールの水溶液である。
【0037】
一般的に、本発明のビニル重合体ゲルは、凍結−融解ゲル化を行うのが困難または不可能である状況で、フィルター、微小流動装置または薬剤放出構造のような用途向けに、その場で製造することができる。
【0038】
一実施態様では、ビニル重合体溶液を、少なくとも2つの側部およびメンブランを有するチャンバーの中に入れる。メンブランは、ビニル重合体を保持しながら、小さな分子および溶剤を通す特性を有する。
【0039】
幾つかの実施態様では、ビニル重合体溶液を、メンブランにより、少なくとも2種類の異なった浸漬溶剤、典型的には第一浸漬溶剤および第二浸漬溶剤、から分離する。幾つかの実施態様では、第一浸漬溶剤は、約1.5モル〜約6.0モルの塩化ナトリウム水溶液である。幾つかの実施態様では、第二浸漬溶剤は、約2.0モル〜約6.0モルの塩化ナトリウム水溶液である。別の実施態様では、第一浸漬溶剤は、約1.5モルの塩化ナトリウム水溶液であり、第二浸漬溶剤は、約2.0モル〜約6.0モルの塩化ナトリウム水溶液である。そのような実施態様では、少なくとも2種類の異なった浸漬溶剤間のビニル重合体溶液を横切って化学ポテンシャルの勾配が形成される。一実施態様では、ビニル重合体溶液を横切って約4モルcm−1の化学ポテンシャル勾配が形成される。
【0040】
一般的に、ビニル重合体溶液を横切って形成される化学ポテンシャルの勾配に対応する特性勾配が、ビニル重合体ゲルを横切って形成される。典型的には、この特性は、光透過率、膨潤比、剛性率、負荷モジュラス、損失モジュラス、貯蔵モジュラス、動的弾性率、圧縮モジュラス、架橋および細孔径の少なくとも一つである。
【0041】
幾つかの実施態様では、一方または両方の浸漬溶剤を一時的なパターンで変化させ、物理的特性の空間的勾配を調整する。そのような一時的サイクル化は、拡散時間よりも短い時間規模で行い、不均質ゲルを形成する。このようにして、縁部または周辺部区域で類似した特性の組合せを有し、中央区域では別の特性組合せを有する、例えば周辺部区域では中央区域よりも多くの架橋を有する、ゲルを製造することができる。浸漬溶剤の一時的なサイクル化は、フィルター製造用のゲルの構造、例えば細孔径、を修正することにも使用できる。そのようなフィルターでは、ある種の形態のクロマトグラフィー(サイズ除外による)または他の、細孔径制御を必要とする濾過用途に、小さな、局所的に変化する細孔径が有用になろう。
【0042】
物理的に架橋したゲルと、イオン系または非イオン系化学種、例えばヒアルロン酸、ポリアクリル酸および治療薬、を包含する他の化合物を組み合わせることができる。
【0043】
一実施態様で、本発明は、塩化ナトリウム約2〜約3モル中に浸漬することによりゲル化した、少なくとも約10重量%のポリ(ビニルアルコール)溶液を含んでなる物理的に架橋したヒドロゲルを提供するが、このヒドロゲルは、約14%〜約21%が物理的に架橋している。そのような実施態様では、最終的なゲルは、約12〜約29%のポリ(ビニルアルコール)を含んでなる。
【0044】
本発明の好ましい実施態様は、少なくとも一つの機械的特性勾配を有するビニル重合体ゲルを含んでなる調製品を提供する。PVAシータゲルは、組織を置換、修復または強化するための、生物相容性の、負荷を支える、または負荷を支えない材料として使用できる。一般的に、PVAシータゲルは、PVAクリオゲルが使用されている用途でPVAクリオゲルを置き換えることができる。
【0045】
一実施態様では、ポリビニル重合体ヒドロゲルを含んでなるワン−ピース補欠椎間板であって、ワン−ピース補欠椎間板の機械的特性配分が、天然椎間板の髄核および線維輪の組合せにおける機械的特性の空間的配分に近い補欠椎間板を製造する。
【0046】
高圧縮PVAシータゲルは、PVAをNaClと共に逆浸透メンブランに入れ、次いでNaClの外側濃度を極めて高くし、PVA/NaClを圧縮することにより、製造することができる。水が逆浸透メンブランを離れるにつれてNaCl濃度が上昇し、PVAが高圧でゲル化する。PVAの濃度は、逆浸透メンブラン内側のNaClとPVAの比により、変えることができる。
【0047】
好ましい実施態様では、攪拌中にゲル化させることにより、または流体の小滴を架橋溶剤、例えば浸漬溶液、中に滴下することにより、ゲルマイクロ粒子を製造することができる。
【0048】
好ましい実施態様では、分解して(または吸着しないで)ゲル上にパターン(「空の空間」)を、あるいは薬剤放出中心として、「刻印する」粒子でゲルを埋め込むことができる。様々な分子量の中性に帯電した重合体の埋込を使用し、ゲルの「空間を充填」することができる。処理の後、これらの重合体を除去し、調整された細孔構造を残すことができる。凍結−融解サイクルに敏感な材料は、カプセル封入することができる。高圧縮で余分な反発を与えるために静電気的に帯電しているが、高濃度の塩で崩壊する粒子または重合体で、これらのゲルを埋め込むことができる。そのような埋め込まれた粒子は、ある種の様式(例えば触媒作用)で活性になる粒子でよい。ヒドロキシアパタイト粒子または他の骨誘発性の粒子、薬剤、および類似の部分を埋め込み、軟骨置換する場合の骨の内部成長を促進することができる。
【0049】
好ましい実施態様では、ポリ(ビニルアルコール)ゲルを使用し、生物活性化合物、例えば成長因子、フィブロネクチン、コラーゲン、ビンクリン(vinculin)、ケモキン(chemokines)、および治療剤を含む軟骨を含有および放出することができる。治療剤の配合に関する米国特許第5,260,066号および第5,288,503号の開示された全文は参考として本願明細書に包含される。含有化合物、例えば治療剤または薬物が時間と共に放出され、正常組織、例えば骨、血管および神経、または腫瘍の局所的な成長を調整することができる。
【0050】
浸漬溶剤の一時的調整により、好ましい実施態様による、薬物および他の生物活性分子を含有および放出するための適切な構造および物理的特性を有するシータゲルを製造することができる。一実施態様では、高度に架橋した外皮が形成され、薬物/活性剤を含む内側層は弱く架橋されているだけである。そのような実施態様では、外皮は速度を制限する成分であり、一定の放出速度を有する。従って、好ましい実施態様による薬物放出は、PVA架橋における空間的勾配を制御することにより調整できる放出プロファイルを包含する。
【0051】
一実施態様では、本発明は、ヒドロゲルの機械的特性および構造を、制御できるように調整する方法を提供する。好ましい実施態様では、本発明は、天然構造中に存在する機械的特性勾配に、より緊密に適合した機械的特性の一つ以上の勾配を有する調製品を提供する。一実施態様として、本発明は、天然構造の機械的挙動を模擬する補欠ヒドロゲル調製品を提供する。好ましい実施態様で、本発明は、天然椎間板に見られる機械的特性の勾配を模擬するポリビニルアルコール製補欠椎間板を提供する。別の好ましい実施態様で、本発明は、天然椎間板の髄核と線維輪における機械的特性の空間的配分を模擬するワン−ピース補欠椎間板を提供する。
【0052】
好ましい実施態様では、ゲルに粒子状物質も添加することができる。上記したように、粒子状物質は、調整された細孔構造を形成するために添加することができる。さらに、別の好ましい実施態様では、粒子状物質は、特別なナノ構造ゲルを形成するために添加することができる。これらの粒子は、帯電していても、いなくてもよく、粒子の表面でPVA結晶の核を形成することができる。添加できる粒子としては、無機または有機コロイド状化学種、例えばシリカ、クレー、ヒドロキシアパタイト、二酸化チタンまたは多面体オリゴマー状シルセスキオキサン(POSS)があるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
別の好ましい実施態様では、粒子は、帯電効果を与え、ゲルの圧縮モジュラスを変えるため、好ましくは圧縮モジュラスを増加させるために添加する。この実施態様は、粒子を添加したシータゲルを使用することができる。ゲルを塩溶液中で圧縮すると、最密充填粒子を有しながら、それらの電荷を遮蔽する構造が得られる。例えば脱イオン水(DI)で再水和させることにより、帯電界が膨脹し、張力のかかったゲルが得られる。これによって、ゲルは、例えば高帯電粒子状物質負荷で、軟骨の物理的特性に近くなる。
【0054】
別の好ましい実施態様では、粒子状物質をゲル構造に加え、機械的特性、例えば耐摩耗性、を与える。硬質ガラス(シリカ)または様々なクレーを添加することにより、ゲルに耐摩耗性を与えることができる。
【0055】
本発明の別の好ましい実施態様で、ゲルを製造し、ゲルの特性を制御する方法は、第一溶剤を使用してビニル重合体溶液を形成し、続いてある量の第二溶剤を導入してゲル化を引き起こすことにより、上記のシータゲルを形成すること、続いて脱水を促進し、ゲルを制御できるように構造化することを包含する。この方法により、ゲルを一様に構造化し、PVAシータゲルの物理的架橋を均質化することができる。この構造は、含まれるPVA溶液を、PVA溶剤対に対するシータ点よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する溶剤中に浸漬し、続いて含まれるPVAを、PVA溶剤対に対するシータ点よりも低いフローリー相互作用パラメータを有する別の溶剤に浸漬することにより、達成できる。この方法を、フローリー相互作用パラメータを順次低下させながら、ゲルに望ましい相互作用パラメータ値に達するまで、続けることができる。
【0056】
本発明の好ましい実施態様による別の方法では、塩濃度の変化がゲルの拡散過程より遅く、またはそれと等しくなるように、濃NaCl溶液を脱イオン水に徐々に加えることにより、同等の電解質濃度範囲を通して、PVA溶液を徐々に変化する溶剤品質にさらすことができる。
【0057】
本発明の別の好ましい実施態様では、PVA溶液を少なくとも一つの凍結−融解サイクルにかけてゲルを特定の形状に固定し、続いて、最終的な所望のフローリーパラメータに到達するまで、フローリー相互作用パラメータが順次高くなる一連の溶液中に浸漬することができる。あるいは、PVA溶液を、2MのNaCl溶液に浸漬した後、一つ以上の凍結−融解サイクルにかける。
【0058】
好ましい一実施態様では、PVA溶液中にナノ粒子を分散させる。溶剤は、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノールまたは他の、溶液調製の際にPVAと溶剤の対に対するシータ点より低いフローリー相互作用パラメータを示すいずれかの溶液でよい。次いで、PVA/ナノ粒子混合物を、少なくとも一回の凍結−融解サイクルにかける。凍結−融解サイクルに続いて、ゲル化したPVAを、PVA/溶剤対に対するシータ点以上のフローリー相互作用パラメータを有する溶剤中に浸漬し、PVA/ナノ粒子混合物をさらに物理的架橋させる。
【0059】
本発明の実施態様の別の態様では、重合体分子の相互作用の仕方を変えることにより、重合体ゲルのゲル化速度を制御する方法をさらに提供する。ゲル化速度を制御することにより、例えば注入、成形または他の、ゲル化するPVA溶液の流動性に依存するいずれかの処理工程により、比較的ゆっくりゲル化するPVA溶液を操作または作業することができる時間の「寛容度(window)」が得られる。好ましい実施態様では、ゲル化するPVA溶液を問題とする区域、例えば体のキャビティ、中に注入し、その場でゲル化させ、PVA製品を形成する。好ましい体のキャビティとしては、髄核および関節中の正常な、または病理学的な空隙がある。
【0060】
好ましい実施態様では、重合体、好ましくはPVAを、その結晶化温度より高く維持することにより、ゲル化速度を制御し、それによって、溶剤品質が悪くてもゲル化を阻止することができる。別の好ましい実施態様では、良から貧への変化を誘発できる第二溶剤を使用することにより、ゲル化速度を制御することができる。幾つかの好ましい実施態様では、溶剤の品質は、ミセルの破壊により変えることができる。別の好ましい実施態様では、溶剤の品質は、高分子量分子の開裂により変化させることができる。別の好ましい実施態様では、貧溶剤を、ゲル化過程を促進する処理温度との組合せで使用する。
【0061】
重合体ゲルを制御および形成するための装置および方法の、上記および他の特徴および利点は、様々な図面を通して同様の部品を同様の番号で示す添付の図面に例示する装置および方法の好ましい実施態様のより詳細な説明から明らかである。これらの図面は、必ずしも寸法通りではなく、本発明の原理を例示することに力点が置かれている。
【本発明の好ましい態様の詳細な説明】
【0062】
本発明の好ましい実施態様を、例えば椎間板補欠物として使用するのに好適な生物相容性材料を製造するための、化学的架橋または照射を行わずに、一様なPVAヒドロゲルを形成することに関して説明する。さらに、本発明の好ましい実施態様は、PVAゲルの製造方法を包含するが、これによって、潜在的に広範囲な、制御可能な機械的特性を有するように特定の用途向けに設計することができ、構造および物理的特性における勾配で操作できる、新しい種類のPVAヒドロゲルが得られる。
【0063】
ここで使用する「シータ溶剤」とは、シータ温度で、シータ状態にある重合体の溶液を与える溶剤を意味する。シータ溶剤は、単一溶剤または2種類の溶剤の混合物、溶剤と非溶剤の混合物、さらには、本明細書に開示された全体を参考として包含する、Elias, H.G.、「Theta Solvents」、Brandrup, J. and E.H. Immergut, Polymer Handbook 3 Ed., John Wiley and Sons, New York, 1989に記載されているような共溶剤性(co-solvency)の場合には、2種類の非溶剤の混合物から構成されてもよい。
【0064】
ここで使用する「ゲル化」は、PVAの結晶化による永久的な物理的架橋の形成を意味する。これは、幾つかの文献で、ゲル化は重合体が会合する点のことを指しているのであり、続いて永久的結合を形成する結晶化は必ずしも起きないと云われていることと対照的である。
【0065】
ここで使用する「会合する」は、熱力学的に、または溶剤が駆動される過程を意味し、そこでは重合体(または他の化学種)が、別の化学種に非常に近いところよりも、それ自体に類似している環境中に「優先的に」存在する。この重合体が局所的に会合することにより、常に「相分離」が起こり、これによって不均質溶液が生じることも、生じないこともある。
【0066】
特定の理論には捕らわれずに、シータ溶剤を使用し、スピノーダル分解機構を通して、溶液中のポリ(ビニルアルコール)重合体を強制的に極近接させることにより、溶解し難い物理的会合が形成されると考えられる。ここで使用するスピノーダル分解とは、密度または組成における無限小変動に対して不安定な、均質な、過飽和溶液(固体または液体)におけるクラスター反応を意味する。従って、溶液は、小さな変動に始まり、核形成障壁なく、ギプスエネルギーの減少と共に進行し、2つの相に自然に分離する。
【0067】
本発明で使用する方法論は、ゲル化を誘起し、強制的にポリ(ビニルアルコール)鎖を物理的会合させるのに十分なχ値を有する溶剤を制御しながら使用することにより、PVAヒドロゲルを形成する。ポリ(ビニルアルコール)の不規則な「衝突」を阻止するために、溶剤品質を注意深く管理し、特に大きな成分には、溶剤の「最前部」がポリ(ビニルアルコール)溶液に、制御された様式で進入することが不可欠である。例えば、NaCl/脱イオン(DI)水およびメタノール/脱イオン水溶液を、それらのポリ(ビニルアルコール)に対する「シータ」値に近い温度および濃度で使用し、物理的会合を強制し、続いてポリ(ビニルアルコール)のゲル化を誘起する。
【0068】
一般的に、溶剤品質を管理することにより、比較的ゆっくりゲル化するPVA溶液を操作または加工できる、時間の「寛容度」を持たせることができる。この操作には、注入または成形または他のいずれかの考えられる処理工程が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
本方法は、薬剤(タンパク質、ペプチド、多糖、遺伝子、DNA、DNAに対するアンチセンス、リボザイム、ホルモン、成長因子、広範囲な薬物、CAT、SPECT、X線、透視診断法、PET、MRIおよび超音波用の画像形成剤を含むことができる)の制御された送達、股、脊柱、膝、腕、肩、手首、手、くるぶし、足および顎用の負荷を支える移植物の形成、他の様々な医学的移植物および装置(活性包帯、経表皮薬物送達装置、スポンジ、抗接着性材料、人造硝子体液、コンタクトレンズ、乳房移植物、ステント、および負荷を支えない人造軟骨(すなわち耳および鼻)を含むことができる)の製造、機械的特性または構造の勾配が必要なすべての用途を包含する、医学、生物学および工業分野で使用する材料の製造に応用できる。
【0070】
ゲル形成の機構は相分離を含み、相分離は、スピノーダル分解過程に続く、溶液のPVA濃度が高い区域における水素結合により媒介される結晶化と通常は考えられる。溶剤の選択は、凍結−融解工程に影響を及ぼすことが公知である。また、ある種の溶剤は、溶液の温度を溶剤の凝固点より下げずに、PVAをゲル化させるのに使用できることも公知である。DMSO、エチレングリコール(EG)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、およびゼラチンのような溶剤は、常温でPVAをゲル化させるのに使用されている。本発明の好ましい実施態様は、PVA溶液をゲル化させる手段として塩の使用、およびゲル化工程の際に溶剤品質を操作および管理することを包含する。
【0071】
良好な溶剤中の理想的な重合体鎖は、沈殿につながる会合挙動を示さない。溶剤品質がシータ条件より下に低下すると、鎖は優先的に会合を始め、最終的に重合体相が分離する。理想的な重合体では、重合体鎖中に、熱力学的(溶剤)力によって与えられる以外の、他の相互作用力は無く、従って、正常な可逆的状態図が当てはまる。しかし、PVA中では、水素結合により起こされる強い結合力があり、鎖の局所的な結晶化が引き起こされる。この結晶化は、溶剤が「良」であっても起こることがある。良溶剤中の化学的ポテンシャルは会合を促進しないが、不規則な熱的運動が鎖を短時間接触させ、この「溶媒和力」を圧倒することがある。この時点で、PVAの場合のように、条件が正しければ、鎖は結晶化を開始する。この結晶化を開始する初期接触の率は、溶剤品質によって異なる。従って、溶剤品質が低下するにつれて、PVAが会合する可能性は、溶剤品質により説明される鎖自体の親和力により動かされるので、増加する。その結果、溶剤品質の変化率は、温度の操作により観察されているように、重要である。この工程は、溶剤品質に関連しているので、温度、濃度および圧力によって異なる。従って、PVAのゲル化は、時間に依存し、より重要なことに、会合「時間」と相分離「時間」との間の競合に依存していなければならない。この競合は、実験的に観察されており、その結果、冷却速度および溶剤に応じて異なった初期ゲル構造、およびPVAゲルのエージングが得られている。
【0072】
従って、制御された溶剤添加により、または温度、圧力もしくは他のいずれかの関連するパラメータにより、溶剤品質を調整することにより、この会合の速度を制御することができる。従って、結晶化が起こり得る前に重合体が溶液から生じる程には溶剤が貧ではないことを確保しながら、鎖同士の接近を強化することにより、会合速度を加速するのに溶剤が十分に貧になるように、系の溶剤品質を制御することが望ましい。ゲル形成に最適な条件は、χ=0.25〜0.5の範囲内であると思われるが、これらの値の外側でも、ゲルを形成することは可能である。これらの競合する効果のバランスをとることにより、依然として流体であるが、急速にゲル化する重合体/溶剤溶液を得ることができる。
【0073】
溶剤品質が温度または圧力の制御により変化する単一の溶剤に関して、スピノーダル分解相転移は、溶剤品質の低下により加速される。三元混合物に関して、相分離は、PVAが(連続的な)水/溶剤B混合物によりあまり溶媒和されず、従って、単一溶剤系と同等の機構の下で相分離するか、あるいはPVAと溶剤Bの両方が水により溶媒和されるが、相互に異なった混和性を有すると理解することができる。従って、これらの材料は、二元混合物のように挙動し、従って、相分離する。概念的には僅かに異なるが、結果はほとんど等しい。貧溶剤を生じる2種類の良溶剤の挙動は、共非溶剤性(co-nonsolvency)と呼ばれる。この手法により、各成分を外部で混合し、次いでPVA溶液を問題の区域、例えばキャビティ、中に注入し、そこで、該溶液が続いてゲル化することができる。このPVAを注入し、ゲル化をその場で誘発する能力は、第二溶剤が、必要な熱力学的に特性を有するなら、どのような溶剤でもよいので、核の置き換えまたは椎間板(IVD)の増強に特に好適である。この第二溶剤は、長鎖重合体、タンパク質あるいは他の複雑な分子、またはそれらの水溶液、例えばポリエチレンオキシド(PEO)、グリコサミノグリカン(GAG)またはゼラチン、もしくはより簡単な分子、例えば塩のような単にイオン系の化学種、例えばNaCl、またはポリ(エチレングリコール)のような短鎖分子、例えばPEG 400、グリセリンまたはアミノ酸、例えばセリンまたはグリシンでよい。高分子量化学種は、一般的には溶剤として特徴付けられないが、フローリーにより記載されている下記の理論は、溶剤/重合体対に対する最終的な相互作用は溶剤サイズによって影響されるが、溶剤分子の長さを区別していない。
【0074】
PVAは、脱イオン(DI)水中、室温で長時間にわたり会合することが知られている。これは、97℃の純水中におけるPVAのシータ転移よりはるかに低い。凍結−融解過程およびここで使用するシータゲル過程の両方で生じるクリスタライトは、融解ピークが60℃に近い。さらに、PVAが関与するほとんどの研究は、PVAが十分に「溶解している」ことを確保するために少なくとも80℃の高温を必要としている。これらの観察は、この温度より上では、PVAはもはや結晶化能を有さず、従って、溶剤品質に関して理想重合体のように挙動することを示唆する。従って、この臨界溶融温度より高い溶液中にPVAを溶解させることができれば、簡単な会合による沈殿または相分離はあっても、結晶化、従ってゲル化は起こり得ないと理解されている。使用する溶剤が貧であれば、熱力学的効果による、ある程度の会合がある(従って、不均質沈殿が起こり得る)が、PVAヒドロゲルを特徴付ける不可逆的なゲル化は起こり得ない。しかし、温度が下がると、すぐに結晶化が起こり、その系はゲル化を開始することができる。しかし、このゲル化結晶化は、依然として速度が限られており、従って、この温度より低くても、貧溶剤中で、この溶液は加工が可能である。混合は、重合体鎖の衝突を促進することにより、このゲル化速度に影響を及ぼすことができる。
【0075】
一般的に、物理的に架橋したポリ(ビニルアルコール)ゲルは、ポリ(ビニルアルコール)水溶液(溶液の1〜50重量%PVA)から製造し、この水溶液は、ゲル化に十分なχ値を有する溶剤と接触することによりゲル化するが、この溶剤は、以下、第二溶剤と呼ばれ、ポリ(ビニルアルコール)溶液に対する「シータ」濃度に近い濃度にある。
【0076】
本発明は、化学的架橋剤、照射または熱的サイクルを使用せずに、ポリ(ビニルアルコール)ヒドロゲルを製造する方法を提供する。好ましい実施態様では、好ましくは第二溶剤(NaClまたはメタノール)のポリ(ビニルアルコール)溶液中への拡散を制御することにより、溶剤品質を管理し、均質な、物理的に架橋した構造を製造する。
【0077】
本方法は、フローリー相互作用パラメータにより都合良く表される、溶剤品質が異なった溶剤中での制御された変化を利用し、PVAを強制的に会合させる。化学的架橋剤を使用しないので、ゲルは、化学的架橋剤を実質的に含まず、従って、熱的サイクルにかけたPVAクリオゲルと同じ位生物相容性であると考えられる。脱イオン水中における平衡化に続くゲル中のNaCl残留物は、その濃度が生理学的に関連する値よりも確実に低いので、問題ないと考えられる。
【0078】
図2は、フローリー相互作用パラメータχに関する第一溶剤と第二溶剤の関係を示す。図2は、特定温度におけるフローリー相互作用パラメータχと重合体濃度(Φ)の関係を示すグラフである。χ=0.25における横軸は、第一溶剤中の重合体溶液(下側)および第二溶剤中の重合体溶液(上側)を分離している。矢印および菱形は、溶剤1を溶剤2で置き換えることにより生じたχに対する影響を示す。
【0079】
理論的に、フローリー相互作用パラメータχを使用することにより、すべての溶剤は「良」または「貧」と定義することができる。χに関して、これらの溶剤性特性は、大まかに云って、良溶剤ではχ<0.5であり、貧溶剤ではχ>0.5であり、χ=0.5の条件は、「シータ」溶剤を規定する。良−貧への溶剤の推移は、段階的な変化ではなく、選択した溶剤に対する重合体の、溶解度の漸進的な変化である。従って、溶剤品質を変えることにより、重合体同士の、溶液が十分に希釈されている場合の鎖内相互作用によるか、または鎖間相互作用により、親和力が変化する。溶剤品質変化の、重合体溶解度に対する影響は、実験的データで見ることができるか、あるいは理論的に式1で表すことができる。
ν=(1−2χ)ad (1)
式中、νは単鎖の除外される体積であり、χはフローリー相互作用パラメータであり、adはモノマー体積である。従って、鎖が絡まり合っていないシータ点では、ν=0またはχ=0.5である。ν<0では、相分離が起こり、ほとんど純粋な溶剤と重合体濃度が高い相との間に平衡がある。しかし、本明細書で考察する重合体分子はサイズが大きいために、常に幾つかの重合体が溶剤相中にあり、同様に、かなりの量の溶剤が重合体濃度の高い相の中にある。溶剤は、単一化学種でも、必ずしも低分子量化合物に限らない化学種の混合物でもよい。
【0080】
通常、PVA相は、スピノーダル分解過程を経て分離すると考えられる。この等式には速度に依存する効果は無いことに注意すべきであるが、スピノーダル分解過程には特徴的な速度があり、この速度は、本発明の実施態様で利用する速度効果のバランスである。水中のPVAに関して、フローリー相互作用パラメータは、濃度に弱く依存するが、約5%を超える重合体体積画分に対してχ>0.5である。PVAゲルは、溶剤よりも高い相互作用パラメータを有するが、χは分子量またはゲルの架橋密度に依存しない。
【0081】
好ましい実施態様では、第二溶剤のχは、第一溶剤(PVAを溶解している溶剤)のχよりもプラスでなければならず、好ましくは0.25〜2.0の範囲内にある。好ましくは、第一溶剤のχは0.0〜0.5の範囲内にある。一般的に、処理中の温度は、PVA溶液の凝固点のすぐ上から、処理中に形成される物理的架橋の融点まで変化し得る。好ましい範囲は、約0℃〜約40℃である。χは温度および濃度に連結していることに注意する。好ましい実施態様では、PVA溶液(第一溶剤)のχにおける一時的で空間的な変化は、別の混和し得る溶液(第二溶剤を含んでなる)との接触により制御され、その際、第二溶剤が第一溶剤を変性させる。
【0082】
化学的架橋剤および放射線処理の必要性を無くすことにより、非常に多様な成分を埋め込むことができる。例えば、多くの生物活性材料は、化学的架橋剤および放射線に対する耐性が非常に低い。さらに、一般的に凍結−融解工程は生物活性成分に対して穏やかであるが、凍結し得ないか、または不凍剤として作用し、従って凍結を阻止する重合体、バイオ重合体または細胞も、確実に意図することができる。
【0083】
これらのシータゲルの形成に使用する方法は、競合するクリオゲルで可能なよりも、最終的なゲルの材料特性をより広範囲にし、物理的構造をより大きく制御できると考えられる。熱的サイクルにかけたPVAゲルに対するシータゲルの特定用途に関する優位性を以下に概説する。
【0084】
クリオゲルは、各熱サイクルがゲルの材料特性を劇的に変化させるので、それらの最終的な特性に関する分解能がかなり低い。製造されるシータゲルは、溶剤の濃度が、シータ値を通過した後は、膨潤比を単調に低下させることを立証している。究極的な架橋密度を、溶剤濃度で達成できる分解能に比例して調節できることが望ましい。例えば、NaCl中に浸漬した10%PVA溶液では、最終的なゲルにおけるPVAの重量百分率が約7%/モルNaClの比率で変化する。
【0085】
本発明の好ましい実施態様は、約1重量%〜約50重量%PVAの初期重量(溶液の重量に対して)を有するゲルを提供する。好ましい実施態様では、この重量%は、最終ゲルで約12%〜約29%PVAであり、使用する浸漬溶液が約2.0〜約3.0MのNaCl(aq)であった。この最終PVA重量百分率の範囲は、熱的サイクルにかけたPVAにより達成できる範囲に匹敵している。より高いNaCl溶液(6.0Mを超える)では、最終ゲルのPVA%はNaCl濃度と共に単調に増加する。空間的特性で滑らかな勾配を示すPVAシータゲルを製造できることが判明した。対照的に、クリオゲルでは、特性の勾配を簡単に形成できない。その代わりに、通常の手法では、積み重ねた薄層の配列を独立して製造し、溶解したPVA中で接合し、次いで再びサイクルにかける必要がある。そのような配列におけるモジュラスの鮮明な差により、機械的特性が好ましくなく、界面が不均質な材料が形成されよう。好ましい実施態様では、機械的特性の勾配が滑らかなPVAシータゲルを使用し、十分な圧縮強度を有する中央部の低モジュラス「髄」およびクリープおよび好ましくない歪みを最小に抑える、高モジュラス周辺「輪」を有する、補欠椎間板を製造することができる。
【0086】
モジュラス強化は、イオン系化学種を配合することにより、達成できる。NaCl中で製造されるシータゲルでは、天然(ヒアルロン酸)または合成(PAA)重合体を包含し、ひずみ可変圧縮モジュラスを有するゲルを製造することができる。強NaCl中でPVA/PAA溶液をゲル化することにより、PAA中のイオン化し得る電荷が遮蔽され、潰れたPAAの周りでPVAが架橋される。脱イオン水中で再平衡化することにより、PAAを膨脹させ、PVAマトリックスに予備応力を作用させることができる。得られた構造は、配合されたPAA上で固定された電荷の反発により、非常に異なった機械的圧縮モジュラスを有するはずである。
【0087】
この分野では、PVAは、動物の中に移植された時に、宿主の生物学的応答をほとんど、または全く引き出さないことが公知である。この理由から、PVAは、薬物送達、細胞カプセル封入、人造涙、人造硝子体液、コンタクトレンズ、およびより最近では神経カフスを含む種々の生体医学的用途に使用される。しかし、PVAは、主としてそのモジュラスが低く、摩耗特性が劣るために、負荷を支える生体材料としての使用は考えられていない。すべての脊椎移植物が耐える必要がある負荷は、相応に高く(圧縮で4MPaのオーダー)、高い圧縮モジュラスを必要とする。生体内では、椎間板に対する圧縮軸方向負荷は、髄核により線維輪中の引張周負荷に伝達される。椎間板全体の機能を置き換えることを意図する生体材料はすべて、類似の異方性特性を取り入れる必要がある。
【0088】
全体的な強度を改良するために、PVAのモジュラスおよび摩耗特性を、化学的または物理的架橋の形成により強化することができる。化学的薬剤(例えばポリアルデヒド)の添加による、照射による、または凍結−融解サイクルによるPVAの架橋は、PVAゲルの耐久性を改良することが示されている。しかし、化学的添加剤は、好ましくない残留反応性化学種を後に残し、最終製品が移植に不適当になることがあり、照射は、マトリックス中にカプセル封入されている生物活性材料に悪影響を及ぼすことがある。従って、凍結−融解サイクルによる広範囲な物理的架橋の形成が、化学的手段または照射で誘発された架橋による好ましくない副作用無しに、PVAの耐久性を実質的に改良している。最近の調査は、凍結−融解サイクルにより形成された物理的架橋が、負荷を支える構造、例えば関節軟骨または椎間板、用の生物相容性置換物として使用するのに好適なモジュラスを有する生体材料を造り出すことを示唆している。
【0089】
重合体の溶媒和および「シータ」点
溶液中の重合体は、絶えず活発に運動している複雑な分子である。理想重合体鎖の形態は、通常、「ランダムウォーク」として説明され、そこでは分子が、簡単にするために、自由に接合され、移動する時は自由に移動すると仮定される。この挙動により、ガウス分布を有する球形状をとる重合体が得られる。実際には、鎖は、それに作用し、その形状および挙動を限定する多くの力を有する。自由溶液では、鎖は、系の温度から生じるブラウン変動からグループランダムウォークの状態にある。同時に、鎖が、(鎖は長く伸びた分子であるので)それ自体と、およびその周囲とどのように相互作用するかによって生じる力がある。
【0090】
重合体が溶液により容易に溶媒和される(すなわち重合体が、ゲル化に十分なχ値を持たない第一溶剤中にある)場合、溶剤に露出される重合体鎖の量を最大限にしようとするため、重合体は膨潤する。第一溶剤中では、フローリー, P.J.により、Principles of Polymer Chemistry、424頁、Cornell University Press, 1953(本明細書に参考として包含する)に記載されているように、重合体構成分子と、重合体に隣接する溶剤分子との間の相互作用エネルギーが、重合体−重合体および溶剤−溶剤間の相互作用のエネルギーを超える。その際、鎖は乱雑状態になり、隣接する鎖との接触に対して抵抗し、機械的圧縮および変形にも等しく抵抗する。溶剤性が変化すると、溶剤の品質が低下するので、この膨潤した形態が潰れる。
【0091】
シータ点では、溶剤品質は、ブラウン運動が鎖を理想的なガウス分布に維持する。この臨界閾より下では、鎖の断片は溶剤分子よりも、それぞれに隣接する方を好み、鎖は収縮する(すなわちゲル化に十分なχ値を有する第二溶剤)。フローリー相互作用パラメータχは、無次元であり、温度、圧力等に依存する。第一溶剤は低いχを有し、第二溶剤は高いχを有し、転移は約χ=0.5である。χ=0の場合は、モノマーに非常に良く似た溶剤に対応する。格子モデルでは、これは、自由エネルギーの全部が、格子上の様々な鎖パターンに関連するエントロピーから来る場合である。そのような場合、温度は構造に全く影響せず、溶剤は「無熱」と呼ばれる。無熱溶液は、良溶剤の特に簡単な例である。ほとんどの場合、パラメータχは、ドゥジャンによれば、Scaling Concepts in Polymer Physics, First ed. p.72:Cornell University Press (1979)、に記載されているように正である。溶剤品質が十分に貧である場合、鎖は完全に溶液から析出する。この効果は、溶液の温度操作によっても得られる。
【0092】
重合体溶液の濃度が十分に高くなった後、溶剤品質の調節は、第一溶剤の少なくとも一部を、鎖間相互作用ならびに鎖内相互作用を強制する第二溶剤で置き換えることにより、達成することができる。物理的架橋が起きた後、自由重合体を本来膨潤させる良溶剤のその後の存在は、物理的架橋により相殺される。鎖間会合により、重合体鎖は、この時特定の固定点で束縛される。その結果、重合体が溶媒和され、伸長されるにつれて、重合体はより変形し、強制的に引っ張られる。これは重合体鎖の溶媒和と変形した鎖中の張力との競合であり、これがゲルに、それらの興味深い機械的挙動を与えるのである。さらに、特定の条件下では、重合体鎖はイオン化され、その結果、電荷を生じることがある。隣接する同様の電荷は、静電気的な反発のために、さらに膨潤を引き起こす。これは、天然の軟骨(コラーゲンおよびグリコサミノグリカン)に、その高いモジュラスおよび高い吸湿性を与える機構の一部である。
【0093】
PVAにおけるゲル化機構
PVA重合体溶液の凍結−融解サイクルにより、物理的架橋(すなわち重合体鎖の「会合」による弱い結合)が形成される。このようにして形成されたPVAヒドロゲルは、「クリオゲル」と呼ばれ、例えば米国特許第6,231,605号および第6,268,405号に記載されている(これらの全文は本明細書に参考として包含される)。重要なのは、PVAクリオゲルの形成に使用される技術は、化学的架橋剤の導入または放射線を必要としないことである。従って、クリオゲルは、取り込まれる生物活性分子に対する影響が低いままで、容易に製造される。しかし、取り込まれる分子は、ゲル形成に必要な凍結−融解サイクルに耐えられる分子に限られる。従って、得られる材料は、移植に続いて個別に機能する生物活性成分を含むことができる。PVAクリオゲルは、(後に記載する提案するPVA「シータゲル」と同様に)高い生物活性も有する。PVAクリオゲルは、毒性が非常に低く(少なくとも部分的に、それらの低表面エネルギーのために)、不純物をほとんど含まず、それらの含水量は80〜90重量%で組織に適切に製造できる。
【0094】
凍結−融解サイクルによりPVAのゲル化を促進する正確な機構に関しては、なお議論の余地がある。しかし、凍結−融解サイクル中に起こる物理的架橋を説明するために、3種類のモデル、すなわち1)直接水素結合、2)直接クリスタライト形成、および3)液体−液体相分離に続くゲル化機構、が提案されている。最初の2つの工程は、ゲルが核形成および成長(NG)相分離を通して形成されるのに対し、第三の選択肢は、この製法をスピノーダル分解(SD)相分離として示している。水素結合は、節点(node)を形成し、クリスタライト形成は、より大きな重合体結晶を形成する。しかし、これらの機構の両方共、比較的小さな架橋節点で緊密に接続された架橋を形成する。この観察は、PVAのゲル化機構に関する研究により支持されている。他方、スピノーダル分解は、重合体を、重合体濃度が高い区域と重合体濃度が低い区域に再分布させ、続いて、より間隔を置いて配置された架橋を生じるゲル化過程を引き起こす。スピノーダル分解による相分離は、架橋後におけるPVAの機械的特性改良を引き起こし、重合体溶液の急冷により起こると考えられる。凍結工程の際に、系はスピノーダル分解を受け、それによって重合体濃度が高い、および低い相が、均質な溶液中に自然に現れる。特定の温度における急冷したPVA(および重合体一般)の状態図は、2つの共存する濃度相を有することができるので、この過程が起こる。従って、重合体濃度が高い相は、高度に濃縮されており、これがPVAの自然の(弱い)ゲル化を強化する。
【0095】
クリオゲルでは、物理的特性は、未架橋重合体の分子量、水溶液の濃度、凍結の温度および時間、および凍結−融解サイクルの数によって異なる。従って、クリオゲルの特性は、調整できる。しかし、材料の特性が凍結−融解工程毎に劇的に変化するので、完成したゲルの特性を制御することは、ある程度限られている。開示するシータゲルにより、PVAクリオゲルにより現在与えられる機能性の範囲が広げられる。
【0096】
一般的に、PVAクリオゲルのモジュラスは、凍結−融解サイクルの数と共に増加する。一連の実験で、熱的サイクルにかけたPVAクリオゲルは、圧縮モジュラスが1〜18MPaであり、せん断モジュラスが0.1〜0.4MPaであった(Stammen, J.A., et al., Mechanical properties of a novel PVA hydrogel in shear and unconfined compression Biomaterials, 2001 22:p. 799-806)。
【0097】
クリオゲルは、化学的手段ではなく、物理的手段により架橋されているので、それらの構造的安定性に、ある程度の心配がある。水溶液中にあるPVAのモジュラスは、一定温度で蒸留水中に浸漬する時間と共に増加する。40日間にわたって行われた一つの実験では、モジュラスが50%増加した。恐らく、水性エージングの際、強度の増加と、同時に起こる可溶性PVAの損失は、重合体鎖の超分子的充填秩序が増加する結果である。このデータには、凍結−融解によりゲル化したPVAの長期間貯蔵効果に関して重大な意味がある。
【0098】
重合体が時間と共に失われる影響、およびそれが局所的な宿主の生物学的環境にどのように影響するかを理解することも重要である。注意すべきは、この例ではクリオゲルが凍結−融解サイクルを1回しか受けていないが、他の例は、複数の凍結−融解サイクルに続くPVA溶解を示していることである。一般的に、反復負荷サイクル(疲労)下におけるPVAクリオゲルモジュラスの安定性に関する情報は非常に少ない。
【0099】
予想されるように、PVAクリオゲルの膨潤は、どの時点においても、凍結−融解サイクル数の増加と共に減少し、先ず間違いなく架橋密度が高くなるために、PVAゲルが緻密化することを示唆している。長い間に、ゲル化に続いて、静止条件下では、究極的な膨潤比は減少し、モジュラスが時間と共に増加する。
【0100】
凍結−融解処理では、温度を使用してPVA溶液を強制的に相分離させ、それによって、ってPVAにおけるゲル化機構を強化する(室温でも、PVAの溶液は時間と共に弱くゲル化し始めることに注意すべきである)。
【0101】
溶剤品質は、温度および重合体に対する溶剤の化学的相互作用の両方に関連し、フローリー相互作用パラメータχにより都合よく説明される。好ましい実施態様では、温度以外の幾つかの方法により溶剤品質を操作することにより、ゲル化過程をはるかに効果的に制御し、本方法を大体室温で実施することができる。特に、PVAに水系溶剤を使用することにより、PVA中に埋め込まれる材料に対する影響を最小に抑えるように系を選択し、ゲルの最終的な構造全体を空間的および一時的に微調整することができる。特定の溶剤で、第一溶剤から第二溶剤への移行(従って、相分離の促進)を規定する不可欠なパラメータは、シータ温度と呼ばれる。例を下記の表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
物理的に架橋したPVAゲルは、脱水と組み合せた熱的サイクル(必ずしも凍結を含まない)にかけることとによっても製造することができる。そのようなゲルは、負荷を支える用途(すなわち人造関節軟骨)に使用するのに適している。この熱的サイクルにかけたPVAの材料特性試験により、この材料が、剛性の単相生体材料(超高分子量ポリエチレン(UHMWPE))よりも、応力をより均一に分散させ、模擬関節軟骨負荷で容易に潤滑被膜隙間を保存することが分かった。この材料は、薄膜で1〜1.5MPaの圧力を支え、分散させた。移行負荷試験では、このPVAは5MPaに近い負荷を支え、分散させた。
【0104】
熱的サイクルにかけ、脱水したPVAの、様々な条件下における摩耗特性をさらに試験する研究が行われている。一方向のディスク上ピン(アルミナに対する)実験で分かった摩耗速度は、UHMWPEのそれに匹敵した(この試験は、生物学的移植物に行うのに最も適しているとは云えないであろうが)。しかし、往復試験では、摩耗速度は18回まで大きかった。摩耗特性を改良するために、より高分子量のPVAを、さらにガンマ放射線(線量50kGy強)により架橋させて試験した。そのような処理は、摩耗速度を著しく(UHMWPEのの約7倍にまで)下げた。しかし、放射線および熱の両方で架橋したPVAでは、摩耗速度は、対向する表面が高い硬度を有する用途には十分ではないと考えられる。さらに、照射は、ゲル中に装填される生物活性材料に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0105】
好ましい実施態様による方法は、下記の内容を包含する。
PVA溶液
10%溶液を製造するために、PVA20グラム(100kg/モル、99.3+%加水分解、JT Baker)を脱イオン水180グラムに90℃で1〜2時間溶解させた。20%溶液を製造するために、PVA30グラムを脱イオン水180グラムに溶解させ、この溶液を、水60グラムが蒸発し、PVA20%の最終溶液が得られるまで連続的に攪拌した。
【0106】
PVAゲル化
10または20重量%のポリビニルアルコール(PVA)溶液4〜5mlを、予め濡らした、分子量カットオフ3500ダルトンのSlide-A-Lyzer Dialysisカセット(Pierce, Rockford, II)中に注入した。次いで、10%PVA溶液を、1.5M、2.0M、2.5Mまたは3MのNaCl水溶液中に浸漬した。20%PVA溶液は3.0MのNaCl中に浸漬した。ゲル化効果がNaCl/水性溶剤に依存しないことを立証するために、透析装置カセット中の10%PVA溶液を、50/50メタノール/水溶液中に浸漬した。3日後、10%PVA溶液を含むすべてのカセットをそれぞれの溶剤から取り出した。次いで、ゲルをカセットから取り出し、DI水中に少なくとも5日間入れ、初期PVA結晶を溶解させ、20%PVAを含むカセットは3日後に取り出した。PVAゲルをカセットから取り出し、一部をDI水中に保存した。残りのPVAゲルを3MNaCl溶液に戻した。6および12日目に、20%PVAゲルの一部を取り出し、DI水中に少なくとも5日間入れてから、さらに試験を行った。
【0107】
定量分析
浸漬溶液モル濃度および浸漬時間の、ゲルの構造に対する効果を定量するために、示差走査熱量測定(DSC)、重力膨潤比分析および動的機械的分析(DMA)を試料に行った。
【0108】
示差走査熱量測定
DSCサーモグラムは、計器、例えばTA Instruments Q1000(TA Instruments, New Castle, DE)、を使用して得た。選択した濡れたPVAゲル試料5〜15mgを脱イオン水貯蔵から5日後に取り出し、水気を取り、alodized-アルミニウム気密パン中にクリンプ(crimp)した。走査は、5℃/分で5℃から120℃まで行った。ゲル物理的架橋の融解に関する総エンタルピー変化を、基線(典型的には40℃近く)から出発して基線(典型的には90℃近く)に戻る直線的積分を使用して推定した。DSC分析に続いて、気密パンを穿刺し、秤量し、真空炉中に入れて脱水した。2日間の脱水後、パンを再秤量し、元の試料中のPVA百分率を求めた。
【0109】
重力膨潤比
各試料からのPVAゲル試料を脱イオン水貯蔵から5日後に取り出し、ティッシュで水気を取り、真空炉中で2日間脱水した。重力膨潤比は、ゲル中の水の質量とゲル中のPVAの質量との比として計算した。
【0110】
動的機械的分析
硬化溶剤品質の影響を試験するために、Perkin-Elmer TMA 7(Perkin-Elmer, NJ)を使用して動的機械的分析を10%PVA3MNaClおよび2MNaCl試料に対して行った。硬化溶剤におけるエージングの影響を試験するために、DMAを20%3MNaClの3日および12日試料に対しても行った。試料を長方形に切り、閉じ込めない圧縮で、静止負荷250mN(10%試料)または1000mN(20%試料)で試験した。貯蔵(および10%試料に対する損失モジュラス)は、室温で周波数掃引(sweep)1〜2Hzで測定した。
【0111】
好ましい実施態様では、溶液中のポリ(ビニルアルコール)重合体鎖を強制的に接近させることにより、溶解し難い物理的会合が形成される。この方法は、ゲル化を引き起こし、PVA鎖を強制的に物理的会合させるのに十分なχ値を有する第二溶剤を制御しながら使用することにより、PVAヒドロゲルを形成する。溶剤品質を、特に大きな成分に対して、注意深く管理すること、および溶剤の「前面」がPVA溶液に制御された様式で入り込むことが不可欠である。PVAに対する「シータ」値の近くにある濃度のNaCl/脱イオン水およびメタノール/脱イオン水溶液を使用し、PVAを強制的に物理的会合させ、続いてゲル化させた。このようにして形成されたゲルは、「シータゲル」と呼ばれる。
【0112】
ヒドロゲルの物理的外観はPVA溶液を中に浸漬する溶液のモル濃度によって異なる。図3は、「シータ」濃度の近くにあるNaCl溶液に露出する際のPVAヒドロゲルのゲル化の進行を示す。露出時間が増加するにつれて、シータ濃度および温度以上の溶液に対して、PVA溶液は堅く、不透明になる。シータ濃度よりかなり低い溶液では、ゲル化はほとんど、または全く明白ではない。PVA溶液を水/メタノールの50/50溶液中に浸漬すると、やはり一様なPVAヒドロゲルが形成された。
【0113】
図3は、硬化溶液中浸漬の1日後(上側)および3日後(下側)の、透析装置カセット中の10%PVA溶液を示す。左から右へ、1.5MのNaCl、2.0MのNaClおよび3.0MのNaClである。1.5M溶液は、PVAをゲル化させないが、2.0M溶液および3.0M溶液は、PVAをゲル化させる。2.0Mゲルが次第に不透明化し、試料が時間と共に固まるにつれて、3Mゲルがカセット縁部から収縮することに注意(矢印で示す)。
【0114】
図4は、3.0Mおよび2.0M溶液に3日間露出した10%PVAの差を示す(撮影した後、続いて脱イオン水中で平衡化した)。PVAゲルは、3.0M(各対の左側画像)および2.0M(右側画像)NaCl浸漬溶液に浸漬することにより生じた。これらのゲルが一様で、不透明であることに注意。3.0MのNaClに露出されたゲルは、膨潤が少なく、脱イオン水中での平衡化に続いてより緻密になる。形成されたヒドロゲルは一様で、不透明である。2.0MのNaClに露出されたゲルは、3.0MのNaClに露出されたゲルよりも、高度に水和している。膨潤の増加は、2.0MのNaCl溶液に露出されたゲルでは、物理的架橋の密度が低いことを示している。従って、このようにして形成されたゲルは、機械的特性に関して「調整可能」である。さらに、空間的NaCl濃度を操作する方法を使用して勾配のあるゲルを製造することができる。
【0115】
図5は、空間的に変化するNaCl濃度に露出された10%PVA溶液から形成されたヒドロゲルを示す。ゲルの半透明性および膨潤比の両方における変化に注意。ゲルの不透明部分は、3.0MNaClに露出したのに対し、透明部分はシータ濃度(室温で2.0M)未満の濃度に露出した。勾配を生じる能力は、堅い外側層(線維輪)およびより軟らかい中央(髄核)を含む、全板置換核形成(nucleoplasty)に関連する。
【0116】
示差走査熱量測定
熱的サイクルに付されたPVAゲルに関して、30℃〜90℃の吸熱は、熱処理の際に形成される物理的架橋を壊すのに必要なエネルギーを表す。好ましい実施態様によるPVAシータゲルでは、同様の吸熱性が示された。図6は、熱的サイクル付されたPVAクリオゲルおよび3.0MのNaCl中で形成したPVAヒドロゲルのサーモグラムを比較する。転移は、同様の融解吸熱性を有し、事実上同じ温度で起こる。
【0117】
この吸熱転移のエンタルピー変化は、溶液状態の結果として、ゲル中の架橋量を良く示している。例えば10%PVA溶液では、NaClの2.0M溶液に3日間浸漬した後のエンタルピー変化は、16.9J/gであった。対照的に、同じ初期PVA溶液は、3M溶液中3日後のエンタルピー変化が、19.9J/gであった。この結果は、溶液濃度および浸漬時間の両方が、ゲル中の物理的架橋量に好ましい方向で影響することを示している。
【0118】
重力膨潤比
好ましい実施態様では、溶剤中のNaClのモル濃度を増加すると、単位質量あたりのヒドロゲル中に存在するPVAの量が増加する。図7は、ゲル(脱イオン水中で十分に平衡化した)中のPVAの百分率と、ゲルを硬化させた溶液のモル濃度との関係を示す。PVAは透析カセット中で堅く保持されていないので、PVAは、ゲル化過程の際にPVAに対する局所的な力の影響下で自由に膨脹または接触する。従って、PVAゲルが潰れた場合には、最終的なPVA濃度が初期PVA溶液の濃度を超えることは可能である。図8は、様々なNaClモル濃度の溶液中で硬化させたPVAに対する重力膨潤比を示す。20%PVA溶液に関して、膨潤比およびPVA百分率の3日値は、10%PVA溶液のそれと適合していた(図には示していない)。3MのNaCl中に12日間浸漬(および脱イオン水中で5日間平衡化)した後、20%PVA溶液は、PVA29%のゲルを形成した。
【0119】
動的機械的分析
好ましい実施態様では、溶液濃度およびエージング時間が、ゲルの目に見える構造に、およびそれらの熱的特性に、著しい影響を及ぼした。両方の影響が、機械的特性に対する影響もありそうなことを示唆している。この仮定は、試料の定性試験により支持されるが、より厳格な分析を行うために、DMAを使用して試料に機械的試験を行った。図9および10は、3点の試料から得たデータを示す。図9は、試料の複素モジュラスがエージング(他の溶液条件はすべて一定に維持して)と共に増加することを示す。事実、このモジュラス増加は、最終的なPVAゲルの緻密化とも平行している。図10は、溶液モル濃度の変化に対応するモジュラスの変化を試験する(やはり、他のパラメータはすべて一定に維持して)。この図10で、貯蔵(すなわち弾性成分)モジュラスは、溶液モル濃度が増加する(室温で2MNaClはシータ溶剤に近いことを思い出すべきである)につれて急速に上昇するのに対し、損失(すなわち減衰)モジュラスは僅かに影響されるだけであることが明らかに示されている。
【0120】
クリオゲルは、各熱サイクルがゲルの材料特性に劇的な変化をもたらすので、それらの最終特性に関して極めて低い分解能を有する。製造されたシータゲルは、溶剤濃度が、「シータ」値を通過した後は、膨潤比に単調な低下をもたらすことを立証している(図7)。従って、究極的な架橋密度は、溶剤濃度で達成できる分解能に比例して微調整できる。例えば、NaCl中に浸漬した10%PVA溶液に関して、最終的なゲル中にあるPVAの重量百分率は、約7%/モルNaClの率で変化する。
【0121】
好ましい実施態様では、空間的特性で滑らかな勾配を示すPVAシータゲルを製造できる。勾配特性は、クリオゲルでは容易に製造できない。代わりに、通常の手法では、独立して積み重ねた薄層の配列を形成し、これを溶解したPVA中で接合し、次いで再びサイクルにかける必要がある。そのような配列におけるモジュラスの鮮明な差により、好ましくない機械的特性および不均質界面を有する材料が形成される。好ましい実施態様は、複合材料線維輪/髄核移植物を包含するが、これは、機械的特性の滑らかな勾配を可能にする技術の恩恵を得ており、中央の低モジュラス「髄」が十分な圧縮強度を与え、周囲の「輪」がクリープおよび好ましくない歪みを最小に抑える。
【0122】
モジュラス強化:イオン系化学種の配合
NaCl中で製造されるシータゲルに、天然(ヒアルロン酸)または合成(PAA)重合体を配合し、ひずみ可変圧縮モジュラスを有するゲルを形成することができる。強NaCl中でPVA/PAA溶液をゲル化することにより、PAA中のイオン化し得る電荷が遮蔽され、潰れたPAAの周りでPVAが架橋する。脱イオン水中で再平衡化することにより、PAAを膨脹させ、PVAマトリックスに予備応力を与えることができる。得られる構造は、配合されたPAA上に固定された電荷の反発により、非常に異なった機械的圧縮モジュラスを有する。
【0123】
勾配シータゲルの形成
別の好ましい実施態様では、勾配シータゲルを製造するために、100kg/モルPVAの10%、20%および30%溶液を上記のように製造する。透析装置のカセットを半分に分割し、各半分を、10%PVA溶液で満たしたプレキシグラス箱1x1x1cmの片側に接続する。密封した箱を温度制御した「Ussing」型チャンバー中に入れ、そこで一定の4モルNaCl濃度差にかける(図10参照)。ゲルがそれ以上大きく変化しなくなる日数の後、勾配ゲルをチャンバーから取り出し、脱イオン水中に5日間置いた後、その後の試験を行う。得られたゲルを上記のように試験する。
【0124】
別の実施態様では、濃度を一時的に変動させることにより、空間的勾配を形成することができる。チャンバー中の濃度を一時的に調整し、より高度の架橋が起きる周辺部区域よりも、軟らかい内側区域を有するゲルを形成することができる。
【0125】
チャンバー100は、ゲル160を含むカートリッジ140を包含する。チャンバーは、2種類の浸漬溶液112および122を含む小チャンバーまたは区域に分割することができる。好ましい実施態様では、これらの溶剤は同じ濃度を有する。別の好ましい実施態様では、浸漬溶液は、ゲル中に空間的勾配を引き起こす異なった濃度を有する。メンブラン150、154は、浸漬溶剤をビニル重合体溶液中に選択的に流すことができる透過性メンブランである。メンブラン130は、すべての溶剤の流れに対して不透過性のバリヤーを与える。
【0126】
脱水
本発明の好ましい実施態様は、制御できるように構造化するゲルに関する。特別な実施態様では、滑らかな脱水を促進し、PVAシータゲルの物理的架橋を均質にするために、PVAのゲルまたは溶液を、それぞれが先行する溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する、一連の溶液または溶剤品質が滑らかに変化する浴中に浸漬することができる。これによって、浸漬溶液と直接接触する表面におけるPVAの局所的な「衝突」が防止される。ここで使用する用語「衝突」は、フローリー相互作用パラメータによる沈殿と同種の現象に関連する。重合体鎖は、フローリー相互作用パラメータがシータ点よりも上にある時、溶剤よりも鎖同士で優先的に会合し、それによって沈殿または衝突する。
【0127】
好ましい一実施態様では、含まれるPVA溶液を、PVAと溶剤の対に対するシータ点よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する溶剤の中に、先ず浸漬することにより、シータゲルを形成することができる。ある時間の後、含まれるPVAを、PVAと溶剤の対に対するシータ点よりも低いフローリー相互作用パラメータを有する別の溶剤中に浸漬する。この工程を、含まれるPVAを、フローリー相互作用パラメータが順次低下する溶液中に浸漬しながら、最終的なゲルに対する所望の相互作用パラメータに達するまで続行することができる。
【0128】
本発明の好ましい実施態様によりシータゲルを形成する方法は、含まれる5〜20%PVAをDI中に浸漬し、続いて2.0MのNaCl中に1時間〜1日の範囲で浸漬し、続いて3.0MのNaCl中に1時間〜1日の期間浸漬し、続いて4.0MのNaCl中に1時間〜1日の期間浸漬し、続いて5.0MのNaCl中に1時間〜1日の期間浸漬することを含む。
【0129】
別の好ましい実施態様では、塩濃度の変化が、ゲル中への拡散過程よりも遅く、またはそれと等しくなるように、濃縮NaCl溶液をDI水に徐々に加えることにより、同等の電解質濃度範囲を通して、PVA溶液を徐々に変化する溶剤品質にさらすことができる。
【0130】
好ましい実施態様による方法は、含まれる5〜20%PVAを1リットルの1.5MのNaCl中に浸漬し、6MのNaClを毎分0.5mlの速度で加え、電解質濃度を0.0038M/分の速度で上昇させ、約12時間後に5MのNaClに達することを含む。
【0131】
別の実施態様では、PVA溶液を一または多数回の凍結−融解サイクルに付し、ゲルを特定の形状に固定する。次いで、最終的な所望のフローリー相互作用パラメータに達するまで、フローリー相互作用パラメータが順次高くなる一連の溶液中にゲルを浸漬することができる。
【0132】
好ましい実施態様による方法は、5〜20%PVAをDI中に溶解させ、その溶液を凍結−融解サイクル(約1〜8サイクル)に付し、続いて1時間〜1日の期間、得られたゲルを2.0MのNaCl中に浸漬することを含む。この方法は、PVAゲルを1時間〜1日の期間、3.0MのNaCl中に浸漬し、続いて1時間〜1日の期間、4.0MのNaCl中に浸漬し、続いて1時間〜1日の期間、5.0MのNaCl中に浸漬することを含む。
【0133】
別の好ましい実施態様では、ゲルの形成方法は、5〜20%PVAをDI中に溶解させること、NaClをPVA溶液に加え、濃度0.01〜2MのNaClのPVA溶液を形成すること次いでPVA/NaCl溶液を1〜8凍結−融解サイクルに付すことを含む。
【0134】
ナノ構造形成
ポリビニルアルコールゲルは、化学的架橋または照射を使用せずに適度に堅くすることができる、極めて生物相容性が高い材料である。しかし、PVAの材料特性は、負荷を支える用途、例えば人造関節軟骨または椎間板、に使用する材料の必要条件には適合しない。本発明の好ましい実施態様による重合体系のナノ構造強化は、負荷を支える整形外科学的装置への使用にすでにほぼ適しているPVAゲルが、そのような用途の有用な候補になり得ることを示している。
【0135】
ポリビニルアルコールシータおよびヒドロゲルのナノ構造形成−粒子。粒子を重合体状材料に添加することにより、無添加重合体の処方物と比較して、得られる材料の機械的および熱的特性を改良することができる。最近、ナノ粒子を重合体に、ミクロンサイズの粒子に必要な濃度よりもはるかに低い粒子状物質濃度で、加えることにより、材料特性を同様に強化できることが示されている。これは、材料特性が表面区域に依存する場合に、特に当てはまる。好ましい実施態様では、ポリビニルアルコールシータゲルまたはヒドロゲルを強化するために、帯電していないナノスケール粒子または一様な、または様々な表面電荷を有する帯電したナノスケール粒子を、ゲル化前に溶液中に分散させることにより、最終的なゲルの機械的および熱的特性が強化される。ナノスケール粒子は、適切に分散させると、本発明の好ましい実施態様により、それらの表面にPVA鎖を吸着することにより、物理的架橋のための規則的な核形成箇所を与える。ゴムで靱性付与したプラスチックと同様に、これらのナノ粒子は、応力集中体としても作用し、ゲルに靱性を与える。PVAゲルの特性を強化できるナノスケール粒子は、例えばクレー(例えばラポナイト、モンモリロン石があるが、これらに限定されるものではない)、ヒュームシリカ、二酸化チタンまたはヒドロキシアパタイトである。表面処理および変性、例えば重合体の末端クラフト化、も、本発明の好ましい実施態様により、粒子が重合体ゲルマトリックスと相互作用する様式を調節する。これらの粒子は、生物学的に活性である、例えば成長を促進する、または炎症を低減させるための薬物を放出することもできる。ナノスケール粒子構造化は、本発明の好ましい実施態様によるシータゲルに限定されない。しかし、本発明のシータゲルは、作業溶液と比較してデバイ長が短縮される溶液条件下で、帯電粒子の周りに物理的架橋を形成することができる。従って、電解質濃度が低い作業溶液中でゲルを置き換えると、粒子が静電気力により相互作用し、PVA凍結−融解ゲルと比較して、PVAシータゲルに圧縮強度を付与する。
【0136】
一実施態様では、ナノ粒子をPVAの溶液中に分散させる。溶剤は、水、DMSO、メタノールまたは他の、溶液調製の際にPVAと溶剤の対に対するシータ点よりも低いフローリー相互作用パラメータを示す、すべての溶剤でよい。次いで、PVA/ナノ粒子混合物を少なくとも一回の凍結−融解サイクルにかける。凍結−融解サイクルに続いて、ゲル化したPVAを、PVA/溶剤の対に対するシータ点に近いか、またはそれよりも高いフローリー相互作用パラメータを有する溶剤中に浸漬し、PVA/ナノ粒子混合物をさらに物理的架橋させる。
【0137】
本発明の好ましい実施態様による方法は、DI中5〜20%PVAをヒュームシリカ1〜10%と混合すること、その溶液を凍結−融解すること(1〜8サイクル)、続いて2〜5MのNaCl中に1時間〜5日間の期間浸漬することを含む。
【0138】
別の実施態様では、PVA/ナノ粒子混合物を、PVA/溶剤の対に対するシータ点に近いか、またはそれよりも高いフローリー相互作用パラメータを有する溶剤中に浸漬することにより、ゲル化させ、PVA/ナノ粒子混合物の物理的架橋を誘起する。この実施態様では、凍結−融解サイクルは必要としない。
【0139】
本発明の好ましい実施態様による方法は、DI中5〜20%PVAをヒュームシリカ1〜10%と混合すること、続いて2〜5MのNaCl中に1時間〜5日間の期間浸漬することを含む。
【0140】
別の実施態様では、上記の2例から得た複合材料ゲルをさらに凍結−融解サイクルに付す。
【0141】
別の実施態様では、ナノ粒子を含むPVA溶液またはゲルを、前記の脱水手順に付す。本発明の好ましい実施態様による方法は、DI中5〜20%PVAをヒュームシリカ1〜10%と混合すること、その溶液を1〜8サイクルの凍結−融解に付すること、続いて2.0MのNaCl中に1時間〜1日間の期間浸漬すること、続いて3.0MのNaCl中に1時間〜1日間の期間浸漬すること、続いて4.0MのNaCl中に1時間〜1日間の期間浸漬すること、続いて5.0MのNaCl中に1時間〜1日間の期間浸漬することを含む。
【0142】
ポリビニルアルコールシータゲルおよびクリオゲルのナノ構造形成−官能化された分子状添加剤
粒子をPVA溶液に、ゲル化の前に添加することにより、ゲルの熱的および機械的特性を強化することができる。しかし、官能化して物理的架橋を促進することができ、同時に応力集中体として作用し得る一群の分子状添加剤がある。多面体オリゴマー状シルセスキオキサン(POSS)は、重合体状材料の機械的特性を強化することができる。POSS分子は、官能化できるので、PVA鎖と会合し、鎖間架橋を強化し、応力集中体として作用するように調整することができる。それらの極めて小さなサイズおよび多数の官能化された基により、ナノ粒子による種晶形成よりも優れた結果を得ることができる。
【0143】
上に記載したシータゲルまたはクリオゲルの形成方法はすべて、分散した官能化POSS分子を含む溶液に応用することができる。好ましい一実施態様では、負に帯電した酸素基を示すように官能化されたPOSSを使用し、水素結合を促進することができる。官能化されたPOSSをPVA水溶液中に分散させ、シータまたは凍結−融解ゲル化(0.01mM〜1MのオクタTMAPOSS(テトラメチルアンモニウム塩)および溶液中5〜20%PVA)させる。
【0144】
別の好ましい実施態様では、アルコール基を示すように官能化されたPOSSをPVA中に分散させ、シータまたは凍結−融解ゲル化(0.01mM〜1MのオクタヒドロキシプロピルジメチルシリルPOSSおよび溶液中5〜20%PVA)させる。
【0145】
別の実施態様では、少なくとも一つのPVA鎖および少なくとも一つのカルボキシルまたはサルフェート基を示すように官能化されたPOSSを使用し、極めて親水性で、強靱な人造軟骨を製造することができる。好ましいPOSS構造は、POSSの対向する角部に少なくとも一つのPVA鎖を有し、残りの6個の官能基はサルフェートまたはカルボキシル基を示す。この構造は、シータゲル製法または凍結−融解によりPVAゲル網目中に「縫い付け」、特性を調整できる人造軟骨を製造することができる。
【0146】
図12は、本発明の好ましい実施態様により、PVAゲルを5MのNaCl中に3日間浸漬して形成する、PVAゲル構造の急速凍結深エッチ(QFDE)画像を例示する。バーは100nmを表す。QFDEは、ゲル構造をその水和された状態に保存する。
【0147】
図13Aおよび13Bは、本発明の好ましい実施態様により、プレキシグラス管に10%PVA溶液を満たし、1凍結−融解サイクル(−21℃で8時間、室温で4時間)を行い、次いで3MのNaCl浴に少なくとも3日間浸漬し、続いて空気中で60時間脱水し、脱イオン水(DI)に戻すことにより製造したPVA勾配ヒドロゲルの断面および断面の拡大図をそれぞれ示す。図13Aおよび13Bは、空気脱水により誘発されたPVA中の放射状勾配の存在を示す。
【0148】
図14は、本発明の好ましい実施態様により、透析カートリッジに10%PVA溶液を満たし、次いで一方の側に3MのNaClおよび他方の側に6MのNaClを有するチャンバー中に3日間浸漬することにより製造した、PVA勾配ヒドロゲルの断面図を示す。図15は、透析カートリッジに10%PVA溶液を満たし、次いで一方の側に3MのNaClおよび他方の側に6MのNaClを有するチャンバー中に3日間浸漬することにより製造した、図14のPVA勾配ヒドロゲルの6MNaCl側の断面拡大図を示す。図14および15は、静止NaCl溶液勾配により誘発されたPVA中の直線的勾配の存在を示す。
【0149】
図16〜19は、本発明の好ましい実施態様によりナノ構造化したPVAゲルを例示する。より詳しくは、図16は、本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびラポナイトクレー2重量%を混合し、1凍結−融解サイクルに付し、次いで溶液を4MのNaCl溶液に少なくとも3日間露出することにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【0150】
図17は、本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびシリカ4重量%を混合し、pH=3に滴定し、1凍結−融解サイクルに付し、次いで4MNaCl溶液に少なくとも3日間露出することにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【0151】
図18は、本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびシリカ4重量%を混合し、pH=10に滴定し、1凍結−融解サイクルに付し、次いで4MのNaCl溶液に少なくとも3日間露出することにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【0152】
図19は、本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびオクタTMAPOSSを水中で混合し、次いで1凍結−融解サイクルに付することにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【0153】
図20は、本発明の好ましい実施態様によるハイブリッドおよび比較PVAゲルに関する貯蔵モジュラスを示すグラフである。このグラフは、pH=10を有する4%シリカ/PVAナノ構造化ゲル(試料番号1)、pH=3を有する4%シリカ/PVAナノ構造化ゲル(試料番号2)、2%ラポナイト/PVAナノ構造化ゲル(試料番号3)、0.001M、10%PVA+オクタTMAPOSS(試料番号4)、および比較ゲル(試料番号5)に対するDMA試験の結果である。すべてのゲルを1凍結−融解サイクルに付し、次いで3MのNaCl中に3日間浸漬した。DMA試験の前に、試料をDI水中で少なくとも24時間平衡化した。
【0154】
本発明の実施態様は、ビニル重合体、特にポリビニルアルコール、の溶液におけるフローリー相互作用パラメータを適切に操作し、制御された様式でゲル化する加工可能な液体を形成する方法を提供する。溶剤状態を制御することにより、ゲル化速度を制御し、PVA溶液が部分的にのみゲル化する時間を与え、最終的なゲル化の前に前駆物質ゲルを操作または加工することができる。この時間の間、溶液は実質的に流体であり、注入、ポンプ輸送、成形、または他のどのような操作処理の工程にかけることもできる。結晶化度百分率、結晶サイズ、自由体積、および機械的特性を含む(ただし、これらに限定するものではない)ヒドロゲルの最終特性は、初期ビニル重合体濃度、最終混合物中のゲル化剤濃度(すなわち最終溶剤量)、処理温度、および混合手順により影響される。
【0155】
本方法の好ましい一実施態様を図21Aに示す。図21Aは、本発明の好ましい実施態様により、PVAヒドロゲルを形成する方法400のフローチャートを示し、ビニル重合体と第一溶剤の混合工程402、ビニル重合体溶液中にゲル化剤を混合する工程404、および混合物をビニル重合体の融点より高い温度に加熱することにより、ビニル重合体の物理的会合によるゲル化を防止する工程406を包含する。より詳しくは、この温度は、ビニル重合体中に形成されるすべての物理的会合の融点より高い。別の実施態様では、工程406が工程404に先行する。方法400は、ビニル重合体溶液のゲル化を誘発する工程408、一時的に加工可能な粘弾性溶液を形成する工程410、例えば、温度、圧力および濃度勾配の少なくとも一つを調整することにより、粘弾性溶液のゲル化速度を制御または操作する工程412、およびヒドロゲルを形成する工程414を包含する。
【0156】
図21Bは、本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成し、提供する方法のフローチャートを示す。これらの方法は、溶剤品質を調整することによる、ビニル重合体系ヒドロゲルの製造に関する。これらの方法は、ビニル重合体を、例えば>80℃で、所望の濃度で水に溶解させる工程424を含む。次の工程では、ゲル化剤を工程426により粉末として、または工程430により溶液として製造する。ゲル化剤は工程428のように本来液体でもよい。次の工程432は、ビニル重合体溶液に加える時、その後に続く混合物の臨界シータ濃度の近く(上または下)になるのに十分な濃度で、ゲル化剤を供給することを含む。次いで、本方法は、ゲル化剤およびビニル溶液を分離しておく工程434、2個以上のチャンバーを有する装置、例えばシリンジまたはポンプ、中に各成分を装填する工程436、および混合装置を通して問題とする区域、例えば体のキャビティ、に重合体溶液を注入する工程438を包含する。溶液は、工程410で、実質的に混合されて問題とする区域に到達する。
【0157】
あるいは、方法400は、工程432の後、ビニル溶液を攪拌しながらゲル化剤を加える工程442、溶液を均質になるまで混合する工程444、およびビニル重合体溶液がまだ流体で、加工できる状態にある工程446を含むこともできる。方法400は、シリンジまたはポンプ中に重合体溶液を装填する工程448、続いて溶液が実質的に結晶化する前に、体の問題とする区域に溶液を注入する工程450を包含する。あるいは、工程446の後、方法400は、特定の用途向けに成形した型の中に重合体溶液を入れる工程452、または重合体溶液を吹込み成形し、薄いヒドロゲルメンブランを形成する工程454、またはシリンジまたはポンプ中に重合体溶液を装填する工程456を含むことができる。体の問題とする区域に溶液を注入する工程458、およびゲル化剤が誘発されて溶剤品質を低下させる工程460が続く。工程440、450、452、454または460の後に、実質的にすべての上記処理工程の後に起こるゲル化剤の永久的な結晶化工程462が続くことができる。
【0158】
幾つかの実施態様においては、ビニル重合体は、分子量約50kg/モル〜約300kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである。ビニル重合体溶液は、溶液の重量に対して約1重量%〜約50重量%のポリビニルアルコールを含む。好ましい実施態様では、ビニル重合体溶液は、溶液の重量に対して約10重量%〜約20重量%のポリビニルアルコール溶液である。
【0159】
第一溶剤は、ゲル化を引き起こすには不十分な低いχ値を有する溶剤群から選択する。幾つかの好ましい実施態様では、第一溶剤は、脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C1〜C6アルコールおよびそれらの混合物を包含する群から選択するが、これらに限定するものではない。
【0160】
第二溶剤、ゲル化剤は、ゲル化剤およびビニル溶液から得られる混合物のχ値を、特定の温度でχ>0.5に引き上げる特性を有する溶剤の群から選択する。幾つかの実施態様では、ゲル化剤は、アルカリ塩、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、オリゴマー状長さの炭化水素、例えばポリエチレングリコール、酵素開裂し得る生体重合体、UV開裂し得る重合体、コンドロイチン硫酸塩、デンプン、デルマタン硫酸塩、ケラタン硫酸塩、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸塩、バイグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカン、ペルレカン、フィブロモジュリン、ベリシカン、ノイロカン、ブレビカン、光誘発され得るジプラスマロゲンリポソーム、アミノ酸、例えばセリンまたはグリシン、グリセロール、糖またはコラーゲンを包含する群から選択されるが、これらに限定されるものではない。ゲル化剤は、固体の形態で、または水溶液として加えることができる。
【0161】
好ましい一実施態様では、ゲル化剤を、高温に、好ましくはビニル重合体の融点より上に保持したビニル重合体溶液と混合することにより加える。融点は、示差走査熱量測定(DSC)により、適宜測定することができる。図6に示す、PVAに対する破線の曲線に関して、高温は、少なくとも57℃を超え、好ましくは80℃を超え、より好ましくは90℃を超える。一般的に、図6のような示差走査熱量測定のグラフに関して、最も好ましい高温は、融点を超える温度における曲線の直線部分にある。
【0162】
得られた混合物は、混合し、冷却するにつれてスピノーダル分解を受ける。この混合物を体のキャビティ中に注入した後、混合物は、経時的に負荷を支えるゲルを形成する。
【0163】
好ましい一実施態様では、PVA、水および第二または第三成分の混合物全体の溶剤品質は、フローリー相互作用パラメータが0.25<χ<0.8、好ましくは0.3<χ<0.5である。
【0164】
本発明の好ましい実施態様は、髄核増強または置換、および関節、例えば膝または股、における負荷を支える表面の増強を包含する、整形外科治療に使用できる注入可能なヒドロゲルを提供する。膝または股を増強する場合、注入可能なヒドロゲルは、関節軟骨の部分的損失のために痛みは有るが、膝または股全体を置き換える程ではない患者に対する初期の介在的治療に使用できる。
【0165】
注入可能なヒドロゲルは、組織を置換、修復、または強化するための負荷がかからない用途にも使用できる。注入可能なヒドロゲルは、火傷または挫傷に対する保護被覆として、局所的にも使用できる。本発明の好ましい実施態様は、組織中に小さな到達孔が必要な、侵入度を最少に抑える用途に特に好適である。到達孔は、直径が約1〜10mmでよく、例えば線維輪、骨組織、軟骨、または他の組織中に位置することができる。
【0166】
別の好ましい実施態様では、高温に保持したビニル重合体の混合溶液にゲル化剤を加える。得られる混合物は、混合し、冷却する時に、スピノーダル分解を受ける。次いで、この混合物を使用し、通常の処理手段、例えば注入または圧縮成形、ブロー成形、カレンダー加工、または他のいずれかの好適な処理工程、を使用して製造するヒドロゲル装置を形成するのに使用できる。次いで、この装置を負荷を支える装置、または他の負荷がかからない装置、例えば神経カフまたは薬物放出機構の一部として、移植することができる。この装置は、非生物学的用途に、保護性ヒドロゲルフィルムまたは密封剤として使用することもできる。
【0167】
別の実施態様では、ビニル溶液およびゲル化剤を予備混合せず、混合を容易にする曲がりくねった経路を有する混合チャンバーを経由し、管を通して共注入する。前駆物質ヒドロゲルは、好適な供給装置を使用して標的位置に注入することができる。図28Aは、PVAヒドロゲルを形成する方法600のフローチャートを示し、第一供給装置のチャンバーにビニル重合体および第一溶剤を供給する工程602、第二供給装置のチャンバーにゲル化剤を供給する工程604、ビニル重合体溶液およびゲル化剤を混合チャンバー中で混合する工程606、および混合物をビニル重合体の融点より高い温度に加熱する工程608を包含する。次いで、本方法は、混合物を供給する工程610、混合物を問題の区域、例えばキャビティ、中に送達する工程612、および混合物のゲル化を誘発し、本発明の好ましい実施態様によるPVAヒドロゲルを形成する工程614を包含する。特定の実施態様では、ビニル重合体および第一溶剤を供給する工程が、ビニル重合体および第一溶剤を混合する工程を含む。同様に、特定の実施態様では、第二供給装置のチャンバーにゲル化剤を供給する工程が、ゲル化剤および第二溶剤を混合する工程を含む。
【0168】
図28Bは、本発明の別の実施態様によりPVAヒドロゲルを形成する方法620のフローチャートを示す。この方法620は、図28Aに関して説明した方法600と類似しているが、第一供給装置のチャンバー中にある重合体溶液を、重合体中の物理的会合の融点より高い温度に加熱する工程(工程626)が、ビニル重合体溶液およびゲル化剤を混合チャンバー中で混合する工程(工程628)に先行している。
【0169】
図28Aおよび28Bのフローチャートに関して考察するゲル化誘発工程は、温度を調整し、特にビニル重合体溶液とゲル化剤の混合物の温度を結晶化温度(物理的会合の融点)未満に下げることを含む。別の好ましい実施態様では、ゲル化を誘発する工程が、活性ゲル化剤を不活性ゲル化剤複合体から放出することを包含する。不活性ゲル化剤複合体は、例えば酵素開裂し得る重合体、熱変性し得る重合体、熱的/化学的/光誘発されるリポソームまたはヒドロゲル、熱的に誘発される不可逆的結晶性材料、例えばデンプン、および分解可能な重合体を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0170】
図28Cは、本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成する方法650のフローチャートを示す。方法650は、ビニル重合体および第一溶剤を混合する工程652を含む。方法650は、多胴シリンジの一つの胴中に溶液を注ぎ込む工程654、多胴シリンジの別の胴中にゲル化剤を注ぎ込む工程656、胴の温度をビニル重合体の物理的会合の融点より高くする工程658、胴を遠心分離する工程660、および静止混合物、例えば曲がりくねった経路を有するカニューラを通して、混合物を問題の区域に注入する工程662を包含する。
【0171】
方法650は、別の実施態様で、ビニル重合体溶液中にゲル化剤を混合する工程666、単胴中に溶液を注ぎ込む工程668、胴の温度をビニル重合体の物理的会合の融点より高くする工程670、胴を遠心分離する工程672、溶液をカニューラまたはシリンジの針を通して問題の区域に注入する工程674を含む。従って、方法650のこれらの工程は、板機構用の髄核増強のような材料を供給することができる。本発明の好ましい実施態様によるこのゲルは、関節空間または問題とするすべての区域に適合する。
【0172】
さらに、方法650は、別の実施態様で、板増強用の閉鎖装置を挿入する工程664または濃縮ゲル化剤を関節空間の開口部中に注入し、ゲル化速度および最終的な機械的特性を局所的に強化する工程676、もしくは工程662で問題の区域中にゲル化剤を注入した後、他の手順を必要としない工程678を含む。後者の工程664、676は、例えば板機構中の線維輪を増強する。
【0173】
図29A−29Fは、本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。この方法は、図29Aで、3個の無菌容器または2個の容器で供給される系を含み、容器AおよびBの内容物を組み合わせる。無菌カートリッジは、図29Bに示すように、PVA、溶剤1(水)およびゲル化剤をそれぞれ含む。2成分を密封した容器中、80℃を超える温度で混合する。次いで、これらの成分を、図29Cに示すように単一の胴を有するホルダー704に移し、図29Dに示すように温度を維持しながら遠心分離し、気泡を除去する。図29Eに示すように、ノズルまたはシリンジ針を単胴ホルダーに取り付け、機械的または電気的に起動(ラチェット)し、混合物溶液を送達できるプランジャー機構上に組み立てる。上記のように、混合された溶液は短時間流動した後、加工できなくなる。
【0174】
図30A−30Fは、本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。図30Aに示すように、ヒドロゲル系は3個の無菌容器または2個の容器で供給され、容器AおよびBの内容物を組み合わせる。無菌カートリッジは、PVA、溶剤1およびゲル化剤をそれぞれ含む。図30Bに示すように、PVA溶液は混合および加熱され、ゲル化剤も容器C中で加熱される。次いで、これらの成分を、図30Cに示すように、高温に維持しながら、双胴装置の個別チャンバー中に装填する。次いで、胴を遠心分離および/または真空脱気し、静止ミキサーノズルを通して射出する。図30Eに示すように、ノズルまたはシリンジ針を取り付け、機械的または電気的に起動(ラチェット)し、混合物溶液を送達できるプランジャー機構上に組み立てる。混合された溶液は短時間流動した後、加工できなくなる。
【0175】
図31A−31Eは、本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する別の好ましい方法を図式的に示す。この実施態様は、単一カートリッジで供給されるヒドロゲル系を含む。図31Aに示す無菌の二重胴付きカートリッジは、一方にPVAおよび溶剤1を、ゲル化剤を他方に含む。図31Bに示すように、カートリッジを加熱して溶液中のポリ(ビニルアルコール)を再融解させる。次いで、系を遠心分離および/または真空脱気し、図31Cに示す静止ミキサーノズルを通して射出する。図31Dに示すように、ノズルまたはシリンジ針を取り付け、機械的または電気的に起動(ラチェット)し、混合物溶液を送達できるプランジャー機構上に組み立てる。混合された溶液は短時間流動した後、加工できなくなる。
【0176】
図32は、本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを供給する供給装置800を図式的に示す。供給装置は、第一チャンバー810、第二チャンバー812、第一チャンバーピストン棒814、第二チャンバーピストン棒816、ハウジング818、可動レバー820、固定ハンドル822、混合チャンバー830、混合チャンバー付属品832、供給チューブ834、供給チューブ付属品836、供給チューブ開口部838、温度制御装置850、コネクタ852、混合チャンバー加熱器/冷却装置852、チャンバー加熱器/冷却装置856、および供給される混合物860を包含する。好ましい実施態様では、ビニル重合体溶液およびゲル化剤が予備混合された無菌溶液として供給され、好ましくはそれぞれ第一チャンバー810および第二チャンバー812の中に予め包装されている。加熱器/冷却装置854および856は、抵抗加熱、誘導加熱、水ジャケット股はペルチエ効果加熱/冷却素子を含むことができる。温度制御装置850は、供給装置800と一体化されているか、またはコネクタ852により接続された別の装置でよい。供給装置800全体は、無菌で、予め装填され、1回使用を意図するものでよい。
【0177】
別の好ましい実施態様では、薬物をビニル重合体溶液またはゲル化剤と混合し、得られた射出されるゲルが、経時的に放出され得るカプセル封入された薬物を含むようにすることができる。
【0178】
さらに別の好ましい実施態様では、フリーラジカル補集剤をビニル重合体溶液に濃度約百万分の1〜1000部で加える。フリーラジカル補集剤は、当業者には公知の、いずれかの一般的なフリーラジカル補集剤でよいが、ビタミンEおよびヒドロキノンを含むことができる。フリーラジカル補集剤の目的は、使用前に材料を殺菌するために使用されることがあるイオン化放射線、ガンマまたは電子線(e−ビーム)、の影響を最少に抑えることである。放射線は、溶液の濃度に応じて、PVA溶液中で架橋させるか、または開裂を引き起こすこともある。
【0179】
別の実施態様では、ビニル重合体溶液の初期濃度、および最終混合物中のゲル化剤濃度を変えることにより、ヒドロゲルの最終的な機械的特性を目的に合わせて変化させることができる。
【0180】
別の一連の実施態様では、PVAのゲル化を強制的に引き起こす条件を、前に挙げたゲル化剤の一種以上の組合せを含んでなる活性成分または封鎖された材料を内部で放出することにより、発生させる。PVAに対する溶剤のシータ点を変えるために、あるいはPVAに対する溶剤の共非溶剤性を変えるために、「活性」分子状化学種の封鎖に基づく強力な方法がある。そのような機構は、封鎖された活性分子状化学種を急速に放出し、溶剤性の局所的変化を達成するのに役立つ。系全体に十分な封鎖部分が分布すれば、溶剤性を大きく変化させることができる。そのような方法は、PVAを特に活性なゲル化剤と混合することに関連する、沈殿の問題を緩和するのに役立つ。リポソーム封鎖、重合体封鎖、結晶性封鎖、ゲルカプセル封入および分解性カプセル封入を包含する、好適な封鎖系を利用できる。
【0181】
好ましい実施態様では、リポソーム封鎖は、脂質小胞を使用し、それらの内容物を外部環境から分離する。この系は、多糖およびタンパク質ヒドロゲルの急速なゲル化を効果的に誘発するのに使用されている。脂質小胞は、熱的または光誘発方法により、それらの内容物を放出することができる。好ましい実施態様では、本発明により製造されたPVA溶液のゲル化を、好適なトリガーの使用により、促進することができる。好適なトリガーは、体温に加熱されたゲル/リポソーム組成物でよい。本発明の好ましい実施態様では、PVA水溶液を、濃NaCl溶液または固体NaClを含む、熱的に誘発され得るリポソームの懸濁液と、NaClの放出を誘発するのに必要な温度未満の温度で、混合する。問題の区域、例えば体のキャビティ、中に37℃近くで注入することにより、リポソームは含まれるNaClを放出し、溶液のフローリーパラメータを変化させ、PVAのゲル化を引き起こす。別の実施態様では、他の好適なゲル化剤を脂質小胞中に封鎖し、PVAのゲル化速度に影響を及ぼすことができる。
【0182】
別の好ましい実施態様では、封鎖系が、重合体を多数の小さな断片に開裂することにより、重合体の結合活性を増加する。ある種の複雑な重合体系では、分解により、本来の分子、例えばコラーゲン、より溶解度が高い断片を生じる。そのようなより小さな、より活性な成分の増加により、溶液全体の溶剤性が移行し、PVAのゲル化を誘発する。好適な重合体状封鎖系(およびそれらの酵素開裂補体)の幾つかの例を下記の表に挙げるが、これらに限定するものではない。この表は包括的ではないが、重合体封鎖の概念は、すべての重合体、特に生物相容性重合体または生体重合体、およびそれらの特別な重合体分解機構を包含することを意図している。別の実施態様では、上記の2つの手法を組み合わせ、誘発されたリポソームを利用、ゲル化剤を誘発開裂させる適切な酵素を封鎖することができる。
【0183】
一実施態様では、完全に形成された、精製されたタイプIコラーゲンフィブリルをPVA溶液と、コラーゲンの変性温度未満の温度で混合することができる。この溶液を加熱し、可溶性ゼラチン分子をPVA中に放出するであろうコラーゲンフィブリルの変性を誘発し、PVAの相対的な溶解度を変化させ、PVAのゲル化を誘発することができる。
【0184】
【表2】
【0185】
別の好ましい実施態様で、本封鎖方法は、不可逆的に融解し、結晶性成分の活性を大きく変化させることができる結晶の中に活性部分を閉じ込める。好ましい一実施態様では、結晶性成分はデンプンであり、アミラーゼ分子、アミロペクチン分子またはそれらの、グルコースの直鎖状または分岐鎖状のマルチマーである混合物を含んでなる。デンプン粒子は、通常、結晶性および無定形区域を含んでなる。溶液中で加熱することにより、デンプン粒子は容易に水を吸収し、ゼラチン化することにより、デンプン粒子は浸透活性が高くなる。室温に戻ると、デンプンはゼラチン化するが、再結晶はしない。従って、PVAは、結晶性デンプン顆粒と効果的に混合し、PVAが溶解し得る溶液を形成することができる。しかし、デンプンのゼラチン化点より上に加熱することにより、PVAは、より吸湿性が高いゼラチン化したデンプンと溶剤を求めて競合するので、PVAはゲル化する。
【0186】
別の実施態様では、封鎖方法はゲル系のカプセルを使用し、このカプセルが、好適なトリガー(例えばpH、イオン濃度、温度、放射線)により、それらのカプセル封入された内容物を放出する。別の実施態様では、封鎖方法は、分解可能なマトリックス中に活性分子を捕獲する。好ましい実施態様では、好適な生物分解性重合体を、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリ(ベータ−ヒドロキシブチレート)ポリ(オルトエステル)およびポリホスファゼンを包含する群から選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0187】
一般的に、好ましい実施態様による好適なゲル化剤は、水溶性であり、水に対する親和力がPVAよりも高い溶質である。好ましい実施態様では、固体ゲル化剤またはゲル化剤の水溶液をPVA水溶液に加える。典型的には、PVA約1重量%〜約50重量%のPVA溶液は、所望量のPVAを温めた脱イオン水中に混合しながら加えることにより製造する。例えば、20重量%PVA溶液は、PVA(100kg/モル、99.3+%加水分解、JT Baker)20gを、水浴中で90℃を超える温度に加熱した脱イオン水80g中に、渦巻きミキサー(VWRブランド)を使用して最低15分間連続攪拌しながら溶解させることにより、製造する。得られるPVA溶液は、完全に溶解し、融解した時、実質的に透明である。この溶液を、覆った容器中に入れ、所望により鉱油の保護層下で蒸発を避ける。
【0188】
好ましい一実施態様では、分子量400のポリエチレングリコール(PEG400、シグマアルドリッチ)1.4gを10重量%PVA溶液6.0gに、ホットプレート上、50℃で攪拌しながら徐々に加え、次いでジャーを振とうした。最初に不均質な溶液を製造した後、材料を加える内に均質になり、急速に不透明になった。最終的なゲルは、PVA(重量で)8%、PEG40019%および水73%であった。図22A−22Dは、混合終了後の4時点、すなわち鉱油保護層の下で、図22Aはゼロ分、図22Bは15分、図22Cは2時間、図22Dは1日の、ジャーから取り出した状態における生成物を示す。
【0189】
好ましい一実施態様では、10重量%PVA水溶液35.6gを水性5.1MのNaCl18.7gに混合しながら加え、得られた混合物を強く振とうすることにより、PVAヒドロゲルを製造した。この溶液は、一様で透明になる前に、短時間不均質であった。16時間の間に、溶液は徐々に、より不透明になり、ゲル化した。最終的なゲルは、PVA7重量%、NaCl8重量%および水85重量%であった。図23A−23Eは、覆った皿およびたわみ性バッグの中に注いだ後の5時点、すなわち図23Aはゼロ分、図23Bは20分、図23Cは1時間、図23Dは2時間、図23Eは17時間の生成物を示す。溶液は、塩形状を容易に形成するのに十分に長い間流体であることに注意する。また、この溶液をたわみ性バッグの中に注ぎ込み、変形し得る環境中での空間充填用途に対する能力を立証した。
【0190】
別の実施態様では、10重量%PVA水溶液を、4:1比エポキシ接着剤ガン(3M)の大きい方の胴に入れた。分子量400g/モルのポリ(エチレン)グリコールを小さい方の胴に入れた。得られるブレンドを、3インチ静止ミキサー(3M)を通し、室温に保持した型の中に送達した。得られた混合物は、PVA8重量%、PEG40020重量%および水72重量%であった。得られた混合物は、送達時は不均質にゲル化するが、時間と共に均質な不透明ゲルになることが観察された。
【0191】
別の好ましい実施態様では、NaClを10重量%PVA水溶液に約95℃(図24A)で混合しながら加え、最終濃度を2MのNaClにした。約15分後、得られたPVA溶液は滑らかで均質であった(図24B)。得られたPVA溶液を2個のジャーの中に注ぎ込み、一方を室温で平衡化し(図24C、15分間、図24E、1時間)、他方を削った氷上に置いた(図24D、15分間、図24F、1時間)。この溶液は、最初は曇っていたが、均質であった。1時間後、室温で冷却したゲルは僅かに曇っていたのに対し、氷冷却したゲルはほとんど透明であった。
【0192】
次いで、2つの試料を室温で保存した。1箇月後に最終的に得られたゲルは、重大な離液を示し、外見上は同等であったが、急速に冷却した材料ははるかに急速に不透明になった。
【0193】
図25A−25Fは、図24A−24Fの、貯蔵後のPVAヒドロゲルを例示する。図25Aは、室温で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Bは、氷上で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Cは、室温で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Dは、氷上で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Eは、図25CのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものであり、図25Fは、図25DのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものである。
【0194】
好ましい実施態様で、本発明は、関節中の負荷を支える表面間にその場で形成した重合体クッションを与えることにより、関節疾病を早期に処置するための方法を提供する。好ましい一実施態様では、大腿骨頭をずらし、関節中の露出したキャビティを、PVAおよびゲル化剤の溶液で充填し、大腿骨頭を戻し、PVA溶液をその場でゲル化させることにより、PVAクッションを股関節中にその場で形成する。図26A−26Dに例示する一例では、水浴中で95℃に温めた20重量%PVA水溶液に、連続的に攪拌しながら、乾燥NaClを中程度の速度で加え、2.1MNaCl溶液を調製した。1分後、得られた溶液は滑らかで可塑性(malleable)であり、タフィーに似ていた。得られた溶液をミキサーから取り出し、人工股関節(THR)装置の冷却したポリエチレンライナー中に入れた。THR関節の適合するコバルト−クロムボールをライナーソケット中に挿入し、室温で1時間放置した。次いで、型を脱イオン水中にさらに1時間入れた後、ボールをポリ(エチレン)ライナーから取り出した。この時点で、薄く、均質な、実質的に欠損が無いPVAの半球が得られた。図26Aは、冷却したポリエチレンライナーから形成された型および人工股関節の適合ボールを示す。図26Bは、冷却したポリエチレンライナーにPVA溶液を満たし、適合ボールを所定の位置に配置した型を示す。図26Cは、空気中、室温で1時間、続いて脱イオン水中、室温で1時間後の、ポリエチレンライナー中で成形されたPVAを示巣。図26Dは、ポリエチレンライナーから取り出した、成形されたPVA製品を示す。
【0195】
ゲル化の機構は化学的に非特異性であるので、PVAの自己会合を起こす十分な浸透活性を有するなら、事実上すべての溶質を使用することができる。別の好ましい実施態様では、PVAゲルを形成するためのゲル化剤として天然の生物相容性材料を使用することにより、共非溶剤性を利用した。コンドロイチン硫酸塩(CS、Now Foods Bloomingsdale, IN)を使用してポリビニルアルコールのゲル化を誘発した。10重量%PVA水溶液を調製し、使用するまで60℃で保存した。第一の例では、温コンドロイチン硫酸塩溶液(約80℃)を温PVA溶液に加え、PVA5重量%、CS7重量%の混合物を形成した。室温に冷却することにより、混合物は2日間かけて弱いゲルを形成したが、このゲルは安定していた(図27A)。第二の例では、CS600mgを10重量%PVA水溶液10mlに60℃で連続攪拌しながら直接加えた。前の例と比較して、この混合物は、数分ではるかに堅いゲルを形成した(図27B)。関節空間中に典型的に存在する生物相容性材料を使用してPVAのゲル化を誘発するのに成功したことは、その場における関節修復または増強の可能性を示唆している。
【0196】
別の実施態様では、ヒトの血液流中にある一般的なアミノ酸であるセリンを脱イオン水に溶解させ、30重量%水溶液を調製した。次いで、PVA溶液およびセリン溶液を等体積部で、90℃未満で組み合わせ、十分に混合し、PVA10%、セリン15%および水75%の溶液を形成した。この溶液は、高温にある間は流体のままであったが、冷却するにつれて徐々にゲル化し、約1時間後にゲルを形成した。
【0197】
好ましい実施態様では、ビニル重合体溶液は、欧州特許出願第EP1229873B1号(本明細書に参考として包含される)に記載されているように、ビニル重合体、例えばポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドン(PVP)またはPVPの共重合体の混合物を包含することができるが、これらに限定されるものではない。
【0198】
好ましい実施態様では、ビニル重合体溶液は、相対的な溶剤品質を操作することにより、物理的会合を形成する成分のどのような混合物でも包含することができる。
【0199】
好ましい実施態様では、ビニル重合体溶液は、ナノまたはマイクロ構造化剤を包含することができ、ナノおよびマイクロ粒子状物質、例えば帯電した、または帯電していない、クレーまたはシリカ、および/またはナノ構造化する官能化された分子、例えば前に記載したPOSS、を包含することができる。これらのナノまたはマイクロ粒子状物質は、ゲル化過程を促進または増強する核形成箇所を与える。本発明の好ましい実施態様は、ビニル重合体溶液中の適切な大きさを有するすべての粒子により与えられる核形成箇所が、ゲル化を増強し、所望の機械的特性を有するゲルを形成する、という認識を活用している。
【0200】
損傷した椎間板の修復
好ましい実施態様では、本発明の方法および供給装置を、損傷した椎間板の修復に使用する。図33は、2個の脊椎を通した中間縦断面900を図式的に示し、各脊椎は、椎体920および棘状突起922を有し、2個の脊椎が、線維輪912、髄核914およびヘルニア形成916を含んでなる椎間板910を包んでおり、向きは、垂直軸930、前方−後方軸932および矢印938がヘルニア形成916への到達経路を示す。図34は、損傷した椎間板910を通した横断面図940を図式的に示し、隣接する脊椎の棘状突起922および横突起924、線維輪912および髄核914を示す。
【0201】
簡潔に述べると、損傷した椎間板は、ヘルニア形成した区域を侵害せず、本発明のビニル重合体ヒドロゲルの粘弾性溶液を注入し、髄核材料の一部または実質的に全部を置きかえ、上記の方法によりビニル重合体ヒドロゲルのゲル化速度を制御し、注入箇所を閉鎖することにより、修復する。ビニル重合体ヒドロゲルの粘弾性溶液は、ヘルニア形成箇所における線維輪中の欠損を通して、および/または線維輪の別の点を通して注入することができる。注入箇所および欠損は、上記のようにゲル化剤をさらに使用し、ヒドロゲルの物理的特性をその場で調整することにより、閉鎖することができる。あるいは、注入箇所および欠損は、注入箇所または体のキャビティの他の欠損を密封、補強または閉鎖するための公知の医療装置を使用して密封および補強することができる。そのような好適な装置は、公開国際特許出願第WO01/12107号および第WO02/054978号に開示されている(本明細書に参考として包含される)。
【0202】
図35は、本発明の好ましい実施態様により、損傷した椎間板910を修復する方法における工程を示し、横断面図960で、隣接する脊椎の棘状突起922および横突起924、線維輪912、髄核914、脊髄942の輪郭、および欠損918を通して導入された、ゲル化剤とビニル重合体の粘弾性混合物952を供給する供給管934を示す。好ましい実施態様では、ゲル化剤とビニル重合体の粘弾性混合物の、所望量の供給に続いて、同じ供給管934を通してゲル化剤を追加することにより、ヒドロゲルの局所的な物理的特性を調節する。追加のゲル化剤は、ビニル重合体溶液と最初に混合されたゲル化剤と同一でも異なっていてもよい。
【0203】
別の実施態様では、ゲル化剤を加えることによる、ヒドロゲルの局所的な物理的特性の調整を補足するために、またはその代わりに、シーラーを使用することができる。図36は、本発明の好ましい実施態様による、損傷した椎間板910の修復における工程を示し、横断面図962で、隣接する脊椎の棘状突起922および横突起924、線維輪912、髄核914、脊髄942の輪郭、欠損918、ゲル化剤とビニル重合体の混合物952、シーラント970、固定剤918、固定剤送達器具950を示す。シーラント970は、流体および他の物質がシーラント970の周囲および欠損918を通過するのを阻止する材料から構築され、そのように形成されている。シーラント970は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、膨脹ポリテトラフルオロエチレン(e−PTFE)、ナイロン(商品名)、MARLEX(商品名)、高密度ポリエチレン、および/またはコラーゲンを包含する多くの様々な材料の一種以上から構築することができるが、これらに限定されるものではない。本明細書に参考として包含する第WO02/054978号を参照。シーラント970を配置した後、固定剤918、例えば縫合またはソフトティッシュアンカーを偉材送達器具950を使用して配置する。
【0204】
別の実施態様では、バリヤーを使用することができる。図37は、本発明の好ましい実施態様による、損傷した椎間板910の修復における工程を図式的に示し、横断面図964で、隣接する脊椎の棘状突起922および横突起924、線維輪912、髄核914、脊髄942の輪郭、欠損918、ゲル化剤とビニル重合体の混合物952、バリヤー974、固定剤972、および固定剤送達器具950を示す。バリヤー974は、好ましくは本来フレキシブルであり、織った材料、例えばDACRON(商品名)またはナイロン(商品名)、合成ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、および膨脹材料、例えばe−PTFEから構築することができる。あるいは、バリヤー974は、生物学的材料、例えばコラーゲン、でもよい。バリヤー974は、膨脹可能な、例えばバルーンまたは親水性材料でもよい(第WO02/054978号を参照のこと)。
【0205】
本発明の粘弾性溶液は、適宜、欠損部以外の箇所で注入する。図38は、本発明の好ましい実施態様による、損傷した椎間板910の修復における工程を図式的に示し、横断面図968で、隣接する脊椎の棘状突起922および横突起924、線維輪912、脊髄942の輪郭、欠損918、以前は髄核により占有されていた空間を実質的に充填しているゲル化剤とビニル重合体の混合物952、バリヤー976、および供給管934を示す。
【0206】
請求項は、他に指示がない限り、説明した順序または要素を制限するものではない。従って、請求項の範囲および精神に入るすべての実施態様は、本発明として特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1A】脊椎解剖学の図式的な図であり、横突起、棘状突起および椎骨の椎体、脊髄および脊椎神経、および椎間板の髄核を示す。椎間板の線維輪が、横、前および後側部で髄核を取り囲んでいる。
【図1B】脊椎解剖学の図式的な図であり、横突起、棘状突起および椎骨の椎体、脊髄および脊椎神経、および椎間板の髄核を示す。椎間板の線維輪が、横、前および後側部で髄核を取り囲んでいる。
【図2】本発明の好ましい実施態様による、特定温度におけるフローリー相互作用パラメータχと重合体濃度(Φ)の関係を示すグラフである。χ=0.25における横軸は、第一溶剤中の重合体溶液(下側)および第二溶剤中の重合体溶液(上側)を分離している。矢印および菱形は、溶剤1を溶剤2で置き換えることにより生じたχに対する影響を示す。
【図3】本発明の好ましい実施態様により、硬化溶液中浸漬の1日後(上側)および3日後(下側)の、透析装置カセット中の10%PVA溶液を示す。左から右へ、1.5MNaCl、2.0MNaClおよび3.0MNaCl。1.5M溶液は、PVAをゲル化させず、2.0M溶液および3.0M溶液は、PVAをゲル化させる。2.0Mゲルが次第に不透明化し、試料が時間と共に固まるにつれて、3Mゲルがカセット縁部から収縮していることに注意(矢印で示す)。
【図4】本発明の好ましい実施態様による一様なシータゲルを示す。3.0M(各対の左側画像)および2.0M(右側画像)NaCl硬化溶液に浸漬することにより生じたPVAゲル。これらのゲルが一様で、不透明であることに注意。3.0MNaClに露出されたゲルは、膨潤が少なく、脱イオン水中での平衡化に続いて、より緻密になる。
【図5】空間的に変化するNaCl濃度に露出された10%PVA溶液を使用する、本発明の好ましい実施態様による勾配ゲルの例を示す。ゲルの半透明性および膨潤比の両方における変化に注意。
【図6】熱的サイクルにかけたPVAクリオゲルおよび本発明の好ましい実施態様による「シータゲル」から得た結果を比較する、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。実線は3.0MNaClに3日間浸漬した10%PVAを示し、破線は10℃から−20℃に加熱速度0.02℃/分で4回熱サイクルにかけた10%PVAを示す。
【図7】本発明の好ましい実施態様により、様々なモル濃度の浸漬溶液でゲル化した後、脱イオン水中で十分に平衡化したPVAヒドロゲル中の、PVAの百分率の関係を示すグラフである。接続された点は、3日間浸漬した10%PVA測定を表し、単一の点は3MNaCl中に12日間浸漬した20%PVA溶液の初期溶液を表す。20%PVA溶液に関して、膨潤比およびPVAの百分率の3日値は、10%PVA溶液のそれと適合していた(図には示していない)。3MNaCl中に12日間浸漬(および脱イオン水中5日間平衡化)した後、20%PVA溶液は、29%PVAのゲルを形成した。
【図8】本発明の好ましい実施態様により、様々なモル濃度の浸漬溶液でゲル化した後、脱イオン水中で十分に平衡化したPVAヒドロゲルに対する、重力膨潤比を示すグラフである。接続された点は、3日間浸漬した10%PVA測定を表し、単一の点は3MNaCl中に12日間浸漬した20%PVA溶液の初期溶液を表す。20%PVA溶液に関して、膨潤比およびPVAの百分率の3日値は、10%PVA溶液のそれと適合していた(図には示していない)。
【図9】本発明の好ましい実施態様による、3MNaClにおけるPVAシータゲルの動的弾性率、20%初期PVA濃度および1N静止負荷とエージング時間(日)の関係を示す。
【図10】は、本発明の好ましい実施態様による、20%初期PVA濃度および0.25N静止負荷におけるPVAシータゲルの複合モジュラス(貯蔵(G’)および損失(G”)モジュラス)と溶液モル濃度(2Mおよび3MNaCl)の関係を示す。
【図11】本発明の好ましい実施態様による、勾配ゲル160の製造に使用する「Ussing」型チャンバーを図式的に示す図である。
【図12】本発明の好ましい実施態様により、PVAゲルを5MNaCl中に3日間浸漬して形成する、PVAゲル構造の急速凍結深エッチ(QFDE)画像を例示する。
【図13A】本発明の好ましい実施態様により、プレキシグラス管に10%PVA溶液を満たし、1凍結−融解サイクル(−21℃で8時間、室温で4時間)を行い、次いで3MNaCl浴に少なくとも3日間浸漬し、次いで空気中で60時間脱水し、脱イオン水(DI)に戻すことにより製造したPVA勾配ヒドロゲルの断面および断面の拡大図をそれぞれ示す。
【図13B】本発明の好ましい実施態様により、プレキシグラス管に10%PVA溶液を満たし、1凍結−融解サイクル(−21℃で8時間、室温で4時間)を行い、次いで3MNaCl浴に少なくとも3日間浸漬し、次いで空気中で60時間脱水し、脱イオン水(DI)に戻すことにより製造したPVA勾配ヒドロゲルの断面および断面の拡大図をそれぞれ示す。
【図14】本発明の好ましい実施態様により、透析カートリッジに10%PVA溶液を満たし、次いで一方の側に3MNaClおよび他方の側に6MNaClを有するチャンバー中に3日間浸漬することにより製造した、PVA勾配ヒドロゲルの断面図を示す。
【図15】透析カートリッジに10%PVA溶液を満たし、次いで一方の側に3MNaClおよび他方の側に6MNaClを有するチャンバー中に3日間浸漬することにより製造した、図14のPVA勾配ヒドロゲルの6MNaCl側の断面拡大図を示す。
【図16】本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびラポナイトクレー2重量%を混合し、1凍結−融解サイクルに付し、次いで4MのNaCl溶液に少なくとも3日間露出することにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【図17】本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびシリカ4重量%を混合し、pH=3に滴定し、1凍結−融解サイクルに付し、次いで4MのNaCl溶液に少なくとも3日間露出することにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【図18】本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびシリカ4重量%を混合し、pH=10に滴定し、1凍結−融解サイクルに付し、次いで4MのNaCl溶液に少なくとも3日間露出することにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【図19】本発明の好ましい実施態様により、10%PVA溶液およびオクタテトラメチルアンモニウム多面体オリゴマー状シルセスキオキサン(OctaTMA POSS)を水中で混合し、次いで1凍結−融解サイクルに付すことにより製造した、ナノ構造化したPVAヒドロゲルを例示する。
【図20】本発明の好ましい実施態様によるハイブリッドおよび比較PVAゲルに関する貯蔵モジュラスを示すグラフである。
【図21A】本発明の好ましい実施態様によりPVAヒドロゲルを形成する方法のフローチャートを示す。
【図21B】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成し、提供する方法のフローチャートを示す。
【図22A】本発明の好ましい実施態様により、分子量400のポリ(エチレングリコール)(PEG400、Sigma Aldrich)1.4gを10重量%PVA水溶液6gに混合しながら加えて製造したPVAヒドロゲルの、混合終了後の4時点、すなわち鉱油保護層の下で、0分のジャーから取り出した状態における生成物を示す。
【図22B】本発明の好ましい実施態様により、分子量400のポリ(エチレングリコール)(PEG400、Sigma Aldrich)1.4gを10重量%PVA水溶液6gに混合しながら加えて製造したPVAヒドロゲルの、混合終了後の4時点、すなわち鉱油保護層の下で、15分のジャーから取り出した状態における生成物を示す。
【図22C】本発明の好ましい実施態様により、分子量400のポリ(エチレングリコール)(PEG400、Sigma Aldrich)1.4gを10重量%PVA水溶液6gに混合しながら加えて製造したPVAヒドロゲルの、混合終了後の4時点、すなわち鉱油保護層の下で、2時間のジャーから取り出した状態における生成物を示す。
【図22D】本発明の好ましい実施態様により、分子量400のポリ(エチレングリコール)(PEG400、Sigma Aldrich)1.4gを10重量%PVA水溶液6gに混合しながら加えて製造したPVAヒドロゲルの、混合終了後の4時点、すなわち鉱油保護層の下で、1日のジャーから取り出した状態における生成物を示す。
【図23A】本発明の好ましい実施態様により、10重量%PVA水溶液35.6gを水性5.1MNaCl18.7gに混合しながら加え、得られた混合物を強く振とうして製造したPVAヒドロゲルの、覆った皿およびフレキシブルバッグの中に注いだ後0分の生成物を示す。
【図23B】本発明の好ましい実施態様により、10重量%PVA水溶液35.6gを水性5.1MNaCl18.7gに混合しながら加え、得られた混合物を強く振とうして製造したPVAヒドロゲルの、覆った皿およびフレキシブルバッグの中に注いだ後20分の生成物を示す。
【図23C】本発明の好ましい実施態様により、10重量%PVA水溶液35.6gを水性5.1MNaCl18.7gに混合しながら加え、得られた混合物を強く振とうして製造したPVAヒドロゲルの、覆った皿およびフレキシブルバッグの中に注いだ後1時間の生成物を示す。
【図23D】本発明の好ましい実施態様により、10重量%PVA水溶液35.6gを水性5.1MNaCl18.7gに混合しながら加え、得られた混合物を強く振とうして製造したPVAヒドロゲルの、覆った皿およびフレキシブルバッグの中に注いだ後2時間の生成物を示す。
【図23E】本発明の好ましい実施態様により、10重量%PVA水溶液35.6gを水性5.1MNaCl18.7gに混合しながら加え、得られた混合物を強く振とうして製造したPVAヒドロゲルの、覆った皿およびフレキシブルバッグの中に注いだ後17時間の生成物を示す。
【図24A】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に約95℃(図24A)で混合しながら加え、最終濃度を2MNaCl(図24B)にして製造したPVAヒドロゲルを例示する。15分間混合後、得られた混合物のアリコートを、室温(図24C、15分間、図24E、1時間)または削った氷上(図24D、15分間、図24F、1時間)で冷却した2個の容器中に注ぎ込んだ。
【図24B】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に約95℃(図24A)で混合しながら加え、最終濃度を2MNaCl(図24B)にして製造したPVAヒドロゲルを例示する。15分間混合後、得られた混合物のアリコートを、室温(図24C、15分間、図24E、1時間)または削った氷上(図24D、15分間、図24F、1時間)で冷却した2個の容器中に注ぎ込んだ。
【図24C】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に約95℃(図24A)で混合しながら加え、最終濃度を2MNaCl(図24B)にして製造したPVAヒドロゲルを例示する。15分間混合後、得られた混合物のアリコートを、室温(図24C、15分間、図24E、1時間)または削った氷上(図24D、15分間、図24F、1時間)で冷却した2個の容器中に注ぎ込んだ。
【図24D】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に約95℃(図24A)で混合しながら加え、最終濃度を2MNaCl(図24B)にして製造したPVAヒドロゲルを例示する。15分間混合後、得られた混合物のアリコートを、室温(図24C、15分間、図24E、1時間)または削った氷上(図24D、15分間、図24F、1時間)で冷却した2個の容器中に注ぎ込んだ。
【図24E】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に約95℃(図24A)で混合しながら加え、最終濃度を2MNaCl(図24B)にして製造したPVAヒドロゲルを例示する。15分間混合後、得られた混合物のアリコートを、室温(図24C、15分間、図24E、1時間)または削った氷上(図24D、15分間、図24F、1時間)で冷却した2個の容器中に注ぎ込んだ。
【図24F】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に約95℃(図24A)で混合しながら加え、最終濃度を2MNaCl(図24B)にして製造したPVAヒドロゲルを例示する。15分間混合後、得られた混合物のアリコートを、室温(図24C、15分間、図24E、1時間)または削った氷上(図24D、15分間、図24F、1時間)で冷却した2個の容器中に注ぎ込んだ。
【図25A】図24A−24Fの、貯蔵後のPVAヒドロゲルを例示する。図25Aは、室温で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Bは、氷上で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Cは、室温で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Dは、氷上で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Eは、図25CのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものであり、図25Fは、図25DのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものである。
【図25B】図24A−24Fの、貯蔵後のPVAヒドロゲルを例示する。図25Aは、室温で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Bは、氷上で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Cは、室温で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Dは、氷上で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Eは、図25CのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものであり、図25Fは、図25DのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものである。
【図25C】図24A−24Fの、貯蔵後のPVAヒドロゲルを例示する。図25Aは、室温で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Bは、氷上で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Cは、室温で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Dは、氷上で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Eは、図25CのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものであり、図25Fは、図25DのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものである。
【図25D】図24A−24Fの、貯蔵後のPVAヒドロゲルを例示する。図25Aは、室温で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Bは、氷上で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Cは、室温で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Dは、氷上で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Eは、図25CのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものであり、図25Fは、図25DのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものである。
【図25E】図24A−24Fの、貯蔵後のPVAヒドロゲルを例示する。図25Aは、室温で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Bは、氷上で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Cは、室温で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Dは、氷上で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Eは、図25CのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものであり、図25Fは、図25DのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものである。
【図25F】図24A−24Fの、貯蔵後のPVAヒドロゲルを例示する。図25Aは、室温で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Bは、氷上で1時間冷却し、室温で12時間貯蔵したものであり、図25Cは、室温で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Dは、氷上で1時間冷却し、室温で1箇月貯蔵したものであり、図25Eは、図25CのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものであり、図25Fは、図25DのPVAゲルを、離液により放出された水を示すように傾けたものである。
【図26A】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に95℃で混合しながら加え、最終濃度を2.1MのNaClにして製造したPVAヒドロゲルを例示し、冷却したポリエチレンライナーから形成された型および人工股関節からの適合ボールを示す。
【図26B】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に95℃で混合しながら加え、最終濃度を2.1MのNaClにして製造したPVAヒドロゲルを例示し、冷却したポリエチレンライナーにPVA溶液を満たし、適合ボールを所定の位置に配置した型を示す。
【図26C】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に95℃で混合しながら加え、最終濃度を2.1MのNaClにして製造したPVAヒドロゲルを例示し、空気中、室温で1時間、続いて脱イオン水中、室温で1時間後の、ポリエチレンライナー中で成形されたPVAを示す。
【図26D】本発明の好ましい実施態様により、NaClを10重量%PVA水溶液に95℃で混合しながら加え、最終濃度を2.1MのNaClにして製造したPVAヒドロゲルを例示し、ポリエチレンライナーから取り出した、成形されたPVA製品を示す。
【図27A】本発明の好ましい実施態様により製造した、コンドロイチン硫酸塩(CS)を配合したPVAヒドロゲルを例示し、約80℃の温CS溶液を約60℃の10重量%PVA水溶液に加え、PVA5重量%、CS7重量%の混合物を形成することにより製造したPVAヒドロゲルを示す。
【図27B】本発明の好ましい実施態様により製造した、コンドロイチン硫酸塩(CS)を配合したPVAヒドロゲルを例示し、CS600mgを10重量%PVA水溶液10mlに加えて形成したPVAヒドロゲルを示す。
【図28A】本発明の好ましい実施態様により、PVAヒドロゲルを形成する方法のフローチャートを示す。
【図28B】本発明の好ましい実施態様により、PVAヒドロゲルを形成する方法のフローチャートを示す。
【図28C】本発明の好ましい実施態様により、PVAヒドロゲルを形成する方法のフローチャートを示す。
【図29A】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図29B】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図29C】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図29D】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図29E】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図29F】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図30A】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図30B】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図30C】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図30D】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図30E】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図30F】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図31A】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図31B】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図31C】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図31D】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図31E】本発明の別の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを形成および供給する方法を図式的に示す。
【図32】本発明の好ましい実施態様により、ビニル重合体ヒドロゲルを供給する供給装置を図式的に示す。
【図33】機能的脊椎単位の、2個の脊椎および椎間板が見える部分の中間縦断面を示す。
【図34】損傷した椎間板を通した、隣接する脊椎の棘状突起および横突起、線維輪および髄核を示す横断面図を示す。
【図35】本発明の好ましい実施態様により、損傷した椎間板を修復する方法で、ゲル化剤とビニル重合体の混合物を供給する工程を示す。
【図36】本発明の好ましい実施態様により、損傷した椎間板を修復する方法における、特にゲル化剤とビニル重合体の混合物、シーラント、固定剤、および固定剤供給器具を示す工程を示す。
【図37】本発明の好ましい実施態様により、損傷した椎間板を修復する方法における、特にゲル化剤とビニル重合体の混合物、バリヤー、固定剤、および固定剤供給器具を示す工程を示す。
【図38】本発明の好ましい実施態様により、損傷した椎間板を修復する方法における、特に、以前は髄核により占有されていた空間を実質的に充填するゲル化剤とビニル重合体の混合物、バリヤー、および供給管を示す工程を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の物理的特性を有するビニル重合体ヒドロゲルを製造する方法であって、
第一溶剤中に溶解させたビニル重合体を含んでなるビニル重合体溶液を用意する工程、
前記ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合して、前記ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する混合物を得る工程、
前記ビニル重合体溶液とゲル化剤との混合物のゲル化を誘起する工程、および
ゲル化速度を制御して、粘弾性溶液を形成する工程、を含んでなり、
その際、所定期間、加工性を維持して、所望の物理的特性を有するビニル重合体ヒドロゲルを製造する、方法。
【請求項2】
前記ビニル重合体溶液を用意する工程が、前記ビニル重合体を前記第一溶剤中に溶解させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビニル重合体溶液を、前記ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱する工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合する工程を、前記ビニル重合体溶液を、前記ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱する工程よりも先に行う、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記所望の物理的特性が、光透過率、重力膨潤比、剛性率、負荷モジュラス、損失モジュラス、貯蔵モジュラス、動的弾性率、圧縮モジュラス、架橋および細孔径の少なくとも一つである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記所望の物理的特性が、物理的架橋である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ビニル重合体が、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ビニル重合体が、分子量約50kg/モル〜約300kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ビニル重合体が、分子量約100kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約1重量%〜約50重量%のポリビニルアルコール溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約10重量%〜約20重量%のポリビニルアルコール溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記粘弾性溶液をゲル化剤と接触させる工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ゲル化剤が、前記ビニル重合体溶液と混合した時に活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ゲル化剤が、前記ビニル重合体溶液と混合した時に不活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記粘弾性溶液のゲル化を誘起する工程が、前記ゲル化剤を活性化させる工程を包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ビニル重合体溶液とゲル化剤の混合物の前記フローリー相互作用パラメータが、0.25〜1.0である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物の前記フローリー相互作用パラメータが、約0.25〜約0.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物の前記フローリー相互作用パラメータが、少なくとも0.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記第一溶剤が、脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C1〜C6アルコールの水溶液およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ゲル化剤が、塩、アルコール、ポリオール、アミノ酸、糖、タンパク質、多糖、それらの水溶液、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ゲル化剤が、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ゲル化剤が、バイグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ゲル化剤がアルカリ金属塩である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記アルカリ金属塩が塩化ナトリウムである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ゲル化剤が、約1.5モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記ゲル化剤が、約2.0モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記ゲル化剤が、メタノール、エタノール、i−プロパノール、t−プロパノール、t−ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択されたアルコールの水溶液である、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記ビニル重合体が、ゲル化剤の水溶液中に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記不活性ゲル化剤が、トリガーにより活性化される、請求項14に記載の方法。
【請求項30】
前記不活性ゲル化剤が巨大分子である、請求項14に記載の方法。
【請求項31】
前記活性ゲル化剤が、前記巨大分子の開裂により放出された巨大分子の断片を含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記巨大分子の開裂が、酵素による開裂である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記巨大分子が、熱的に変性され得る、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記巨大分子がコラーゲンである、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記巨大分子が、酵素の生理学的基質である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記巨大分子が、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、ケラタン硫酸塩、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記酵素が、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼAC、コンドロイチナーゼB、睾丸ヒアルロニダーゼ、ヒアルロンリアーゼ、ヘパリナーゼI/IIIおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記巨大分子が、バイグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカン、ペルレカン、フィブロモジュリン、ベリシカン、ノイロカン、ブレビカンおよびそれらの混合物からなる群から選択され、前記酵素が、アグレカナーゼおよびそれらの混合物からなる群から選択されるが、これらに限定するものではない、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記巨大分子が、電磁放射線または粒子放射線で照射することにより、開裂する、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記不活性ゲル化剤が、小胞、リポソーム、ミセルまたはゲル粒子中に封鎖された貧溶剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項40】
前記リポソームが、光トリガー反応可能なジプラスマロゲンリポソームである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記リポソームが、哺乳動物の体温近くで相転移するものである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記リポソームが、ジパルミトイルホスファチジルコリンとジミリストイルホスファチジルコリンの混合物を含んでなる、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記ゲル粒子が、哺乳動物の体温近くで相転移する際、前記ゲル粒子の内容物を放出する、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記ゲル粒子が、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−アクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒアルロン酸、プルロニックおよびそれらの混合物からなる群から選択された重合体を含んでなる、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記ゲル粒子が、分解される際に前記ゲル粒子の内容物を放出する、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記ゲル化剤が、前記ビニル重合体よりも溶解し易い、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記加工性期間中に前記粘弾性溶液を処理する工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記処理する工程が、注入、成形またはカレンダー加工を包含する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記粘弾性溶液が、哺乳動物体内の実際の、または潜在的な空間中に注入される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記粘弾性溶液が、椎間板または関節中に注入される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記処理する工程が、火傷または挫傷を被覆することを包含する、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記粘弾性溶液が、一種以上の非ゲル化成分をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記粘弾性溶液が、ヒアルロン酸をさらに含んでなる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記粘弾性溶液が、ポリアクリル酸をさらに含んでなる、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記粘弾性溶液が、治療薬をさらに含んでなる、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記ビニル重合体溶液が、少なくとも一種の、ゲル化を増強するためのナノまたはマイクロ粒子状物質をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
第一溶剤中に溶解させたビニル重合体を含んでなるビニル重合体溶液を用意し、
前記ビニル重合体溶液を、前記ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱し、
前記ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合して、前記ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する混合物を形成し、
前記ビニル重合体溶液とゲル化剤との混合物のゲル化を誘起し、
ゲル化速度を制御して、粘弾性溶液を形成することを含んでなり、
その際、所定期間、加工性を維持して、物理的に架橋したゲルを製造する方法により製造された、物理的に架橋されたゲル。
【請求項58】
前記ビニル重合体溶液を用意する工程が、前記ビニル重合体を前記第一溶剤中に溶解させる工程を包含する、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項59】
前記ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合する工程が、前記ビニル重合体溶液を、前記ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱する工程よりも先に行われる、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項60】
前記ビニル重合体が、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項61】
前記ビニル重合体が、分子量約50kg/モル〜約300kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである、請求項60に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項62】
前記ビニル重合体が、分子量約100kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである、請求項60に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項63】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約1重量%〜約50重量%のポリビニルアルコール溶液である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項64】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約10重量%〜約20重量%のポリビニルアルコール溶液である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項65】
前記粘弾性溶液をゲル化剤と接触させる工程をさらに含んでなる、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項66】
前記ゲル化剤が、前記ビニル重合体溶液と混合した時に活性である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項67】
前記ゲル化剤が、前記ビニル重合体溶液と混合した時に不活性である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項68】
前記粘弾性溶液のゲル化を誘発する工程が、前記ゲル化剤を活性化させる工程を包含する、請求項67に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項69】
前記ビニル重合体溶液とゲル化剤の混合物の前記フローリー相互作用パラメータが、0.25〜1.0である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項70】
前記混合物の前記フローリー相互作用パラメータが、約0.25〜約0.5である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項71】
前記混合物の前記フローリー相互作用パラメータが、少なくとも0.5である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項72】
前記第一溶剤が、脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C1〜C6アルコールの水溶液およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項73】
前記ゲル化剤が、塩、アルコール、ポリオール、アミノ酸、糖、タンパク質、多糖、それらの水溶液、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項74】
前記ゲル化剤が、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項73に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項75】
前記ゲル化剤が、バイグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項73に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項76】
前記ゲル化剤がアルカリ金属塩である、請求項73に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項77】
前記アルカリ金属塩が塩化ナトリウムである、請求項76に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項78】
前記ゲル化剤が、約1.5モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項73に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項79】
前記ゲル化剤が、約2.0モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項73に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項80】
前記ゲル化剤が、メタノール、エタノール、i−プロパノール、t−プロパノール、t−ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択されたアルコールの水溶液である、請求項73に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項81】
前記ビニル重合体が、ゲル化剤の水溶液中に導入される、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項82】
前記不活性ゲル化剤が、トリガーにより活性化される、請求項67に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項83】
前記不活性ゲル化剤が巨大分子である、請求項67に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項84】
前記活性ゲル化剤が、前記巨大分子の開裂により放出された巨大分子の断片を含んでなる、請求項83に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項85】
前記巨大分子の開裂が、酵素による開裂である、請求項84に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項86】
前記巨大分子が、熱的に変性され得る、請求項83に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項87】
前記巨大分子がコラーゲンである、請求項83に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項88】
前記巨大分子が、酵素の生理学的基質である、請求項85に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項89】
前記巨大分子が、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、ケラタン硫酸塩、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記酵素が、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼAC、コンドロイチナーゼB、睾丸ヒアルロニダーゼ、ヒアルロンリアーゼ、ヘパリナーゼI/IIIおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項85に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項90】
前記巨大分子が、バイグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカン、ペルレカン、フィブロモジュリン、ベリシカン、ノイロカン、ブレビカンおよびそれらの混合物からなる群から選択され、前記酵素が、アグレカナーゼおよびそれらの混合物からなる群から選択されるが、これらに限定されるものではない、請求項85に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項91】
前記巨大分子が、電磁放射線または粒子放射線で照射することにより、開裂する、請求項85に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項92】
前記不活性ゲル化剤が、小胞、リポソーム、ミセルまたはゲル粒子中に封鎖された貧溶剤である、請求項82に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項93】
前記リポソームが、光トリガー反応可能なジプラスマロゲンリポソームである、請求項92に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項94】
前記リポソームが、哺乳動物の体温近くで相転移する、請求項92に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項95】
前記リポソームが、ジパルミトイルホスファチジルコリンとジミリストイルホスファチジルコリンの混合物を含んでなる、請求項92に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項96】
前記ゲル粒子が、哺乳動物の体温近くで相転移する際に、前記ゲル粒子の内容物を放出する、請求項92に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項97】
前記ゲル粒子が、ポリ(NiPAAm−co−Aac)、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒアルロン酸、プルロニックおよびそれらの混合物からなる群から選択された重合体を含んでなる、請求項92に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項98】
前記ゲル粒子が、分解する際に、前記ゲル粒子の内容物を放出する、請求項92に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項99】
前記ゲル化剤が、前記ビニル重合体よりも溶解し易い、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項100】
前記加工性期間中に前記粘弾性溶液を処理する工程をさらに含んでなる、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項101】
前記処理する工程が、注入、成形またはカレンダー加工を包含する、請求項100に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項102】
前記粘弾性溶液が、哺乳動物体内の実際の、または潜在的な空間中に注入される、請求項100に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項103】
前記粘弾性溶液が、椎間板または関節中に注入される、請求項102に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項104】
前記処理する工程が、火傷または挫傷を被覆することを包含する、請求項100に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項105】
前記粘弾性溶液が、一種以上の非ゲル化成分をさらに含んでなる、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項106】
前記粘弾性溶液が、ヒアルロン酸をさらに含んでなる、請求項105に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項107】
前記粘弾性溶液が、ポリアクリル酸をさらに含んでなる、請求項105に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項108】
前記粘弾性溶液が、治療薬をさらに含んでなる、請求項105に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項109】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約10重量%〜約30重量%のポリビニルアルコール溶液である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項110】
前記ゲル化剤が、約1.5モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項111】
前記ゲル化剤が、約1.5モル〜約3.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項112】
前記ゲル化剤が、約1.75モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項113】
化学的架橋剤を実質的に含まない、物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項114】
少なくとも約10重量%のポリビニルアルコール溶液を含んでなり、約2〜約3モルの塩化ナトリウム中に浸漬することによりゲル化された、約14%〜約21%物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項115】
前記ゲルが、ポリビニルアルコール約12〜約29%を含んでなる、請求項114に記載の物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項116】
前記ビニル重合体溶液が、一種以上の非ゲル化成分を含む、請求項114に記載の物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項117】
ヒアルロン酸をさらに含んでなる、請求項116に記載の物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項118】
ポリアクリル酸をさらに含んでなる、請求項116に記載の物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項119】
治療薬をさらに含んでなる、請求項116に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項120】
ゲル化剤の局所的濃度を下げることにより、ゲル化が停止される、請求項1に記載の方法。
【請求項121】
前記ゲル化剤の前記局所的濃度が、拡散により低下する、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
ビニル重合体の容器、
第一溶剤の容器、
ゲル化剤の容器、および
送達装置
を含んでなる、ビニル重合体ヒドロゲルを問題とする区域に供給するためのキット。
【請求項123】
使用説明書をさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項124】
前記送達装置が供給装置である、請求項122に記載のキット。
【請求項125】
前記供給装置が、第一チャンバーをさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項126】
前記供給装置が、第二チャンバーをさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項127】
前記供給装置が、混合チャンバーをさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項128】
前記供給装置が、供給管をさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項129】
前記供給装置が、供給チャンバーと連絡しているヒーターおよび冷却装置の少なくとも一方をさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項130】
前記供給装置が、前記混合チャンバーと連絡しているヒーターおよび冷却装置の少なくとも一方をさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項131】
温度制御装置をさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項132】
問題とする区域の軟質組織の欠損を密封する方法であって、
第一溶剤中に溶解させたビニル重合体を含んでなるビニル重合体溶液を用意し、
前記ビニル重合体溶液を、前記ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱し、
前記ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合し、前記ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する混合物を形成し、
前記ビニル重合体溶液とゲル化剤との混合物のゲル化を誘起し、
ゲル化速度を制御して、粘弾性溶液を形成し、
その際、所定期間、加工性を維持して、所望の物理的特性を有するビニル重合体ヒドロゲルを製造する方法により製造されたビニル重合体ヒドロゲルの第一部分を供給する工程、および
高濃度レベルの前記ヒドロゲルを有する前記ビニル重合体ヒドロゲルの第二部分を供給する工程を含んでなる、方法。
【請求項133】
髄核増強用の注入可能なヒドロゲルであって、
第一溶剤中に溶解させたビニル重合体を含んでなるビニル重合体溶液を用意し、
前記ビニル重合体溶液を、前記ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱し、
前記ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合し、前記ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する混合物を形成し、
前記ビニル重合体溶液とゲル化剤との混合物のゲル化を誘起し、
ゲル化速度を制御して、粘弾性溶液を形成し、
その際、所定期間、加工性を維持して、所望の物理的特性を有するビニル重合体ヒドロゲルを製造する方法により製造されたビニル重合体ヒドロゲルの第一部分を供給する工程、および
高濃度レベルの前記ヒドロゲルを有する前記ビニル重合体ヒドロゲルの第二部分を供給する工程を含んでなる方法により製造された、注入可能なヒドロゲル。
【請求項134】
ゲルの特性を制御する方法であって、
ビニル重合体を第一溶剤に溶解させ、ビニル重合体溶液を形成すること、および
前記ビニル重合体溶液を、ある量の第二溶剤中に導入してゲル化を誘起すること
を含んでなり、
前記第二溶剤が、処理温度で、前記ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する、方法。
【請求項135】
前記フローリー相互作用パラメータが0.25〜1.0である、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記得られたゲルを、適量の前記第二溶剤と接触させることをさらに含んでなる、請求項134に記載の方法。
【請求項137】
前記得られたゲルが、物理的架橋を有する、請求項134に記載の方法。
【請求項138】
前記ビニル重合体溶液を導入する工程が、複数の透析サイクルを包含する、請求項134に記載の方法。
【請求項139】
前記ゲルを少なくとも一回の凍結−融解サイクルに付すことをさらに含んでなる、請求項134に記載の方法。
【請求項140】
前記ビニル重合体が、分子量約50kg/モル〜約300kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである、請求項134に記載の方法。
【請求項141】
前記ビニル重合体が、分子量約100kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである、請求項134に記載の方法。
【請求項142】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約1重量%〜約50重量%のポリビニルアルコール溶液である、請求項134に記載の方法。
【請求項143】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約10重量%〜約20重量%のポリビニルアルコール溶液である、請求項134に記載の方法。
【請求項144】
前記第一溶剤が、脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C1〜C6アルコールの水溶液およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項134に記載の方法。
【請求項145】
前記ビニル重合体溶液が、アルカリ金属塩の水溶液中に導入される、請求項134に記載の方法。
【請求項146】
前記水溶液が塩化ナトリウムの一種である、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
前記ビニル重合体溶液が、C1〜C6アルコールの水溶液中に導入される、請求項134に記載の方法。
【請求項148】
前記ビニル重合体溶液が、メタノール、エタノール、i−プロパノール、t−プロパノール、t−ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択されたアルコールの水溶液中に導入される、請求項134に記載の方法。
【請求項149】
前記ビニル重合体溶液が、メンブランを有する少なくとも2つの側部を有する透析チャンバー中に配置される、請求項134に記載の方法。
【請求項150】
前記ビニル重合体溶液が、前記メンブランにより、少なくとも2種類の異なった溶剤から分離される、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
前記ビニル重合体溶液が、前記メンブランにより、第二溶剤および第三溶剤から分離される、請求項150に記載の方法。
【請求項152】
前記第二溶剤が、約1.5モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項150に記載の方法。
【請求項153】
前記第三溶剤が、約2.0モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項151に記載の方法。
【請求項154】
前記第二溶剤が、約0.0モルの塩化ナトリウムの水溶液であり、前記第三溶剤が、約2.0モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項151に記載の方法。
【請求項155】
化学的ポテンシャルの勾配が、前記ビニル重合体溶液を横切って、少なくとも2種類の異なった溶剤間で形成される、請求項149に記載の方法。
【請求項156】
前記ビニル重合体溶液を横切って、化学的ポテンシャルの、約4モルcm−1の化学的勾配が形成される、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
前記ビニル重合体溶液を横切って形成される勾配に対応する物理的特性の勾配が、前記ゲルを横切って形成される、請求項155に記載の方法。
【請求項158】
前記特性が、光透過率、重力膨潤比、剛性率、負荷モジュラス、損失モジュラス、貯蔵モジュラス、動的弾性率、圧縮モジュラス、架橋および細孔径の少なくとも一つである、請求項134に記載の方法。
【請求項159】
前記ゲルの形態における勾配が、前記化学的ポテンシャルにおける勾配に対応する、請求項155に記載の方法。
【請求項160】
前記異なった溶剤が一時的なパターンで制御され、前記ゲルの特性の空間的勾配を調整する、請求項150に記載の方法。
【請求項161】
前記ビニル重合体溶液が、一種以上の非ゲル化成分をさらに含んでなる、請求項134に記載の方法。
【請求項162】
前記ゲルが、ヒアルロン酸をさらに包含する、請求項161に記載の方法。
【請求項163】
前記ゲルが、ポリアクリル酸をさらに包含する、請求項161に記載の方法。
【請求項164】
ビニル重合体を第一溶剤に溶解させ、ビニル重合体溶液を形成すること、
前記ビニル重合体溶液を、ある量の第二溶剤中に導入してゲル化を誘起すること
を含んでなり、
前記第二溶剤が、処理温度で、前記ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する方法により製造された、物理的に架橋されたゲル。
【請求項165】
前記ビニル重合体が、分子量約50kg/モル〜約300kg/モルのポリビニルアルコールである、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項166】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約10重量%〜約30重量%のポリビニルアルコール水溶液である、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項167】
前記ビニル重合体溶液が、約1.5モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液中に導入される、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項168】
前記ビニル重合体溶液が、約1.5モル〜約3.0モルの塩化ナトリウムの水溶液中に導入される、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項169】
前記ビニル重合体溶液が、約1.75モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液中に導入される、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項170】
ヒアルロン酸をさらに含んでなる、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項171】
ポリアクリル酸をさらに含んでなる、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項172】
化学的架橋剤を実質的に含まない、物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項173】
少なくとも約10重量%のポリビニルアルコール溶液を含んでなり、約2〜約3モルの塩化ナトリウム中に浸漬することによりゲル化された、約14%〜約21%物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項174】
前記ゲルが、ポリビニルアルコール約12〜約29%を含んでなる、請求項172に記載の物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項175】
前記ビニル重合体溶液が、一種以上の非ゲル化成分を含む、請求項173に記載の方法。
【請求項176】
ヒアルロン酸をさらに含んでなる、請求項172に記載の物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項177】
ポリアクリル酸をさらに含んでなる、請求項172に記載の物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項178】
少なくとも一つの、機械的特性の勾配を有するビニル重合体ゲルを含んでなる、調製品。
【請求項179】
ポリビニル重合体ヒドロゲルを含んでなるワン−ピース補欠椎間板であって、前記ワン−ピース補欠椎間板の機械的特性配分が、天然椎間板の髄核および線維輪の組合せの機械的特性の空間的配分に近い、補欠椎間板。
【請求項180】
治療薬をさらに含んでなる、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項1】
所望の物理的特性を有するビニル重合体ヒドロゲルを製造する方法であって、
第一溶剤中に溶解させたビニル重合体を含んでなるビニル重合体溶液を用意する工程、
前記ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合して、前記ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する混合物を得る工程、
前記ビニル重合体溶液とゲル化剤との混合物のゲル化を誘起する工程、および
ゲル化速度を制御して、粘弾性溶液を形成する工程、を含んでなり、
その際、所定期間、加工性を維持して、所望の物理的特性を有するビニル重合体ヒドロゲルを製造する、方法。
【請求項2】
前記ビニル重合体溶液を用意する工程が、前記ビニル重合体を前記第一溶剤中に溶解させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビニル重合体溶液を、前記ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱する工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合する工程を、前記ビニル重合体溶液を、前記ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱する工程よりも先に行う、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記所望の物理的特性が、光透過率、重力膨潤比、剛性率、負荷モジュラス、損失モジュラス、貯蔵モジュラス、動的弾性率、圧縮モジュラス、架橋および細孔径の少なくとも一つである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記所望の物理的特性が、物理的架橋である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ビニル重合体が、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ビニル重合体が、分子量約50kg/モル〜約300kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ビニル重合体が、分子量約100kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約1重量%〜約50重量%のポリビニルアルコール溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約10重量%〜約20重量%のポリビニルアルコール溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記粘弾性溶液をゲル化剤と接触させる工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ゲル化剤が、前記ビニル重合体溶液と混合した時に活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ゲル化剤が、前記ビニル重合体溶液と混合した時に不活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記粘弾性溶液のゲル化を誘起する工程が、前記ゲル化剤を活性化させる工程を包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ビニル重合体溶液とゲル化剤の混合物の前記フローリー相互作用パラメータが、0.25〜1.0である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物の前記フローリー相互作用パラメータが、約0.25〜約0.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物の前記フローリー相互作用パラメータが、少なくとも0.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記第一溶剤が、脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C1〜C6アルコールの水溶液およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ゲル化剤が、塩、アルコール、ポリオール、アミノ酸、糖、タンパク質、多糖、それらの水溶液、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ゲル化剤が、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ゲル化剤が、バイグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ゲル化剤がアルカリ金属塩である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記アルカリ金属塩が塩化ナトリウムである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ゲル化剤が、約1.5モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記ゲル化剤が、約2.0モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記ゲル化剤が、メタノール、エタノール、i−プロパノール、t−プロパノール、t−ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択されたアルコールの水溶液である、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記ビニル重合体が、ゲル化剤の水溶液中に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記不活性ゲル化剤が、トリガーにより活性化される、請求項14に記載の方法。
【請求項30】
前記不活性ゲル化剤が巨大分子である、請求項14に記載の方法。
【請求項31】
前記活性ゲル化剤が、前記巨大分子の開裂により放出された巨大分子の断片を含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記巨大分子の開裂が、酵素による開裂である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記巨大分子が、熱的に変性され得る、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記巨大分子がコラーゲンである、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記巨大分子が、酵素の生理学的基質である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記巨大分子が、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、ケラタン硫酸塩、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記酵素が、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼAC、コンドロイチナーゼB、睾丸ヒアルロニダーゼ、ヒアルロンリアーゼ、ヘパリナーゼI/IIIおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記巨大分子が、バイグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカン、ペルレカン、フィブロモジュリン、ベリシカン、ノイロカン、ブレビカンおよびそれらの混合物からなる群から選択され、前記酵素が、アグレカナーゼおよびそれらの混合物からなる群から選択されるが、これらに限定するものではない、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記巨大分子が、電磁放射線または粒子放射線で照射することにより、開裂する、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記不活性ゲル化剤が、小胞、リポソーム、ミセルまたはゲル粒子中に封鎖された貧溶剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項40】
前記リポソームが、光トリガー反応可能なジプラスマロゲンリポソームである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記リポソームが、哺乳動物の体温近くで相転移するものである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記リポソームが、ジパルミトイルホスファチジルコリンとジミリストイルホスファチジルコリンの混合物を含んでなる、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記ゲル粒子が、哺乳動物の体温近くで相転移する際、前記ゲル粒子の内容物を放出する、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記ゲル粒子が、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−アクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒアルロン酸、プルロニックおよびそれらの混合物からなる群から選択された重合体を含んでなる、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記ゲル粒子が、分解される際に前記ゲル粒子の内容物を放出する、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記ゲル化剤が、前記ビニル重合体よりも溶解し易い、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記加工性期間中に前記粘弾性溶液を処理する工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記処理する工程が、注入、成形またはカレンダー加工を包含する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記粘弾性溶液が、哺乳動物体内の実際の、または潜在的な空間中に注入される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記粘弾性溶液が、椎間板または関節中に注入される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記処理する工程が、火傷または挫傷を被覆することを包含する、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記粘弾性溶液が、一種以上の非ゲル化成分をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記粘弾性溶液が、ヒアルロン酸をさらに含んでなる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記粘弾性溶液が、ポリアクリル酸をさらに含んでなる、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記粘弾性溶液が、治療薬をさらに含んでなる、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記ビニル重合体溶液が、少なくとも一種の、ゲル化を増強するためのナノまたはマイクロ粒子状物質をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
第一溶剤中に溶解させたビニル重合体を含んでなるビニル重合体溶液を用意し、
前記ビニル重合体溶液を、前記ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱し、
前記ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合して、前記ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する混合物を形成し、
前記ビニル重合体溶液とゲル化剤との混合物のゲル化を誘起し、
ゲル化速度を制御して、粘弾性溶液を形成することを含んでなり、
その際、所定期間、加工性を維持して、物理的に架橋したゲルを製造する方法により製造された、物理的に架橋されたゲル。
【請求項58】
前記ビニル重合体溶液を用意する工程が、前記ビニル重合体を前記第一溶剤中に溶解させる工程を包含する、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項59】
前記ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合する工程が、前記ビニル重合体溶液を、前記ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱する工程よりも先に行われる、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項60】
前記ビニル重合体が、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項61】
前記ビニル重合体が、分子量約50kg/モル〜約300kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである、請求項60に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項62】
前記ビニル重合体が、分子量約100kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである、請求項60に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項63】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約1重量%〜約50重量%のポリビニルアルコール溶液である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項64】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約10重量%〜約20重量%のポリビニルアルコール溶液である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項65】
前記粘弾性溶液をゲル化剤と接触させる工程をさらに含んでなる、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項66】
前記ゲル化剤が、前記ビニル重合体溶液と混合した時に活性である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項67】
前記ゲル化剤が、前記ビニル重合体溶液と混合した時に不活性である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項68】
前記粘弾性溶液のゲル化を誘発する工程が、前記ゲル化剤を活性化させる工程を包含する、請求項67に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項69】
前記ビニル重合体溶液とゲル化剤の混合物の前記フローリー相互作用パラメータが、0.25〜1.0である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項70】
前記混合物の前記フローリー相互作用パラメータが、約0.25〜約0.5である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項71】
前記混合物の前記フローリー相互作用パラメータが、少なくとも0.5である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項72】
前記第一溶剤が、脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C1〜C6アルコールの水溶液およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項73】
前記ゲル化剤が、塩、アルコール、ポリオール、アミノ酸、糖、タンパク質、多糖、それらの水溶液、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項74】
前記ゲル化剤が、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項73に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項75】
前記ゲル化剤が、バイグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項73に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項76】
前記ゲル化剤がアルカリ金属塩である、請求項73に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項77】
前記アルカリ金属塩が塩化ナトリウムである、請求項76に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項78】
前記ゲル化剤が、約1.5モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項73に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項79】
前記ゲル化剤が、約2.0モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項73に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項80】
前記ゲル化剤が、メタノール、エタノール、i−プロパノール、t−プロパノール、t−ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択されたアルコールの水溶液である、請求項73に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項81】
前記ビニル重合体が、ゲル化剤の水溶液中に導入される、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項82】
前記不活性ゲル化剤が、トリガーにより活性化される、請求項67に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項83】
前記不活性ゲル化剤が巨大分子である、請求項67に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項84】
前記活性ゲル化剤が、前記巨大分子の開裂により放出された巨大分子の断片を含んでなる、請求項83に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項85】
前記巨大分子の開裂が、酵素による開裂である、請求項84に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項86】
前記巨大分子が、熱的に変性され得る、請求項83に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項87】
前記巨大分子がコラーゲンである、請求項83に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項88】
前記巨大分子が、酵素の生理学的基質である、請求項85に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項89】
前記巨大分子が、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、ケラタン硫酸塩、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記酵素が、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼAC、コンドロイチナーゼB、睾丸ヒアルロニダーゼ、ヒアルロンリアーゼ、ヘパリナーゼI/IIIおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項85に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項90】
前記巨大分子が、バイグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカン、ペルレカン、フィブロモジュリン、ベリシカン、ノイロカン、ブレビカンおよびそれらの混合物からなる群から選択され、前記酵素が、アグレカナーゼおよびそれらの混合物からなる群から選択されるが、これらに限定されるものではない、請求項85に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項91】
前記巨大分子が、電磁放射線または粒子放射線で照射することにより、開裂する、請求項85に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項92】
前記不活性ゲル化剤が、小胞、リポソーム、ミセルまたはゲル粒子中に封鎖された貧溶剤である、請求項82に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項93】
前記リポソームが、光トリガー反応可能なジプラスマロゲンリポソームである、請求項92に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項94】
前記リポソームが、哺乳動物の体温近くで相転移する、請求項92に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項95】
前記リポソームが、ジパルミトイルホスファチジルコリンとジミリストイルホスファチジルコリンの混合物を含んでなる、請求項92に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項96】
前記ゲル粒子が、哺乳動物の体温近くで相転移する際に、前記ゲル粒子の内容物を放出する、請求項92に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項97】
前記ゲル粒子が、ポリ(NiPAAm−co−Aac)、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒアルロン酸、プルロニックおよびそれらの混合物からなる群から選択された重合体を含んでなる、請求項92に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項98】
前記ゲル粒子が、分解する際に、前記ゲル粒子の内容物を放出する、請求項92に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項99】
前記ゲル化剤が、前記ビニル重合体よりも溶解し易い、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項100】
前記加工性期間中に前記粘弾性溶液を処理する工程をさらに含んでなる、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項101】
前記処理する工程が、注入、成形またはカレンダー加工を包含する、請求項100に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項102】
前記粘弾性溶液が、哺乳動物体内の実際の、または潜在的な空間中に注入される、請求項100に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項103】
前記粘弾性溶液が、椎間板または関節中に注入される、請求項102に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項104】
前記処理する工程が、火傷または挫傷を被覆することを包含する、請求項100に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項105】
前記粘弾性溶液が、一種以上の非ゲル化成分をさらに含んでなる、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項106】
前記粘弾性溶液が、ヒアルロン酸をさらに含んでなる、請求項105に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項107】
前記粘弾性溶液が、ポリアクリル酸をさらに含んでなる、請求項105に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項108】
前記粘弾性溶液が、治療薬をさらに含んでなる、請求項105に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項109】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約10重量%〜約30重量%のポリビニルアルコール溶液である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項110】
前記ゲル化剤が、約1.5モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項111】
前記ゲル化剤が、約1.5モル〜約3.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項112】
前記ゲル化剤が、約1.75モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項57に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項113】
化学的架橋剤を実質的に含まない、物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項114】
少なくとも約10重量%のポリビニルアルコール溶液を含んでなり、約2〜約3モルの塩化ナトリウム中に浸漬することによりゲル化された、約14%〜約21%物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項115】
前記ゲルが、ポリビニルアルコール約12〜約29%を含んでなる、請求項114に記載の物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項116】
前記ビニル重合体溶液が、一種以上の非ゲル化成分を含む、請求項114に記載の物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項117】
ヒアルロン酸をさらに含んでなる、請求項116に記載の物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項118】
ポリアクリル酸をさらに含んでなる、請求項116に記載の物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項119】
治療薬をさらに含んでなる、請求項116に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項120】
ゲル化剤の局所的濃度を下げることにより、ゲル化が停止される、請求項1に記載の方法。
【請求項121】
前記ゲル化剤の前記局所的濃度が、拡散により低下する、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
ビニル重合体の容器、
第一溶剤の容器、
ゲル化剤の容器、および
送達装置
を含んでなる、ビニル重合体ヒドロゲルを問題とする区域に供給するためのキット。
【請求項123】
使用説明書をさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項124】
前記送達装置が供給装置である、請求項122に記載のキット。
【請求項125】
前記供給装置が、第一チャンバーをさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項126】
前記供給装置が、第二チャンバーをさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項127】
前記供給装置が、混合チャンバーをさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項128】
前記供給装置が、供給管をさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項129】
前記供給装置が、供給チャンバーと連絡しているヒーターおよび冷却装置の少なくとも一方をさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項130】
前記供給装置が、前記混合チャンバーと連絡しているヒーターおよび冷却装置の少なくとも一方をさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項131】
温度制御装置をさらに含んでなる、請求項122に記載のキット。
【請求項132】
問題とする区域の軟質組織の欠損を密封する方法であって、
第一溶剤中に溶解させたビニル重合体を含んでなるビニル重合体溶液を用意し、
前記ビニル重合体溶液を、前記ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱し、
前記ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合し、前記ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する混合物を形成し、
前記ビニル重合体溶液とゲル化剤との混合物のゲル化を誘起し、
ゲル化速度を制御して、粘弾性溶液を形成し、
その際、所定期間、加工性を維持して、所望の物理的特性を有するビニル重合体ヒドロゲルを製造する方法により製造されたビニル重合体ヒドロゲルの第一部分を供給する工程、および
高濃度レベルの前記ヒドロゲルを有する前記ビニル重合体ヒドロゲルの第二部分を供給する工程を含んでなる、方法。
【請求項133】
髄核増強用の注入可能なヒドロゲルであって、
第一溶剤中に溶解させたビニル重合体を含んでなるビニル重合体溶液を用意し、
前記ビニル重合体溶液を、前記ビニル重合体の物理的会合の融点より高い温度に加熱し、
前記ビニル重合体溶液をゲル化剤と混合し、前記ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する混合物を形成し、
前記ビニル重合体溶液とゲル化剤との混合物のゲル化を誘起し、
ゲル化速度を制御して、粘弾性溶液を形成し、
その際、所定期間、加工性を維持して、所望の物理的特性を有するビニル重合体ヒドロゲルを製造する方法により製造されたビニル重合体ヒドロゲルの第一部分を供給する工程、および
高濃度レベルの前記ヒドロゲルを有する前記ビニル重合体ヒドロゲルの第二部分を供給する工程を含んでなる方法により製造された、注入可能なヒドロゲル。
【請求項134】
ゲルの特性を制御する方法であって、
ビニル重合体を第一溶剤に溶解させ、ビニル重合体溶液を形成すること、および
前記ビニル重合体溶液を、ある量の第二溶剤中に導入してゲル化を誘起すること
を含んでなり、
前記第二溶剤が、処理温度で、前記ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する、方法。
【請求項135】
前記フローリー相互作用パラメータが0.25〜1.0である、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記得られたゲルを、適量の前記第二溶剤と接触させることをさらに含んでなる、請求項134に記載の方法。
【請求項137】
前記得られたゲルが、物理的架橋を有する、請求項134に記載の方法。
【請求項138】
前記ビニル重合体溶液を導入する工程が、複数の透析サイクルを包含する、請求項134に記載の方法。
【請求項139】
前記ゲルを少なくとも一回の凍結−融解サイクルに付すことをさらに含んでなる、請求項134に記載の方法。
【請求項140】
前記ビニル重合体が、分子量約50kg/モル〜約300kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである、請求項134に記載の方法。
【請求項141】
前記ビニル重合体が、分子量約100kg/モルの高度に加水分解されたポリビニルアルコールである、請求項134に記載の方法。
【請求項142】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約1重量%〜約50重量%のポリビニルアルコール溶液である、請求項134に記載の方法。
【請求項143】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約10重量%〜約20重量%のポリビニルアルコール溶液である、請求項134に記載の方法。
【請求項144】
前記第一溶剤が、脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C1〜C6アルコールの水溶液およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項134に記載の方法。
【請求項145】
前記ビニル重合体溶液が、アルカリ金属塩の水溶液中に導入される、請求項134に記載の方法。
【請求項146】
前記水溶液が塩化ナトリウムの一種である、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
前記ビニル重合体溶液が、C1〜C6アルコールの水溶液中に導入される、請求項134に記載の方法。
【請求項148】
前記ビニル重合体溶液が、メタノール、エタノール、i−プロパノール、t−プロパノール、t−ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択されたアルコールの水溶液中に導入される、請求項134に記載の方法。
【請求項149】
前記ビニル重合体溶液が、メンブランを有する少なくとも2つの側部を有する透析チャンバー中に配置される、請求項134に記載の方法。
【請求項150】
前記ビニル重合体溶液が、前記メンブランにより、少なくとも2種類の異なった溶剤から分離される、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
前記ビニル重合体溶液が、前記メンブランにより、第二溶剤および第三溶剤から分離される、請求項150に記載の方法。
【請求項152】
前記第二溶剤が、約1.5モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項150に記載の方法。
【請求項153】
前記第三溶剤が、約2.0モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項151に記載の方法。
【請求項154】
前記第二溶剤が、約0.0モルの塩化ナトリウムの水溶液であり、前記第三溶剤が、約2.0モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液である、請求項151に記載の方法。
【請求項155】
化学的ポテンシャルの勾配が、前記ビニル重合体溶液を横切って、少なくとも2種類の異なった溶剤間で形成される、請求項149に記載の方法。
【請求項156】
前記ビニル重合体溶液を横切って、化学的ポテンシャルの、約4モルcm−1の化学的勾配が形成される、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
前記ビニル重合体溶液を横切って形成される勾配に対応する物理的特性の勾配が、前記ゲルを横切って形成される、請求項155に記載の方法。
【請求項158】
前記特性が、光透過率、重力膨潤比、剛性率、負荷モジュラス、損失モジュラス、貯蔵モジュラス、動的弾性率、圧縮モジュラス、架橋および細孔径の少なくとも一つである、請求項134に記載の方法。
【請求項159】
前記ゲルの形態における勾配が、前記化学的ポテンシャルにおける勾配に対応する、請求項155に記載の方法。
【請求項160】
前記異なった溶剤が一時的なパターンで制御され、前記ゲルの特性の空間的勾配を調整する、請求項150に記載の方法。
【請求項161】
前記ビニル重合体溶液が、一種以上の非ゲル化成分をさらに含んでなる、請求項134に記載の方法。
【請求項162】
前記ゲルが、ヒアルロン酸をさらに包含する、請求項161に記載の方法。
【請求項163】
前記ゲルが、ポリアクリル酸をさらに包含する、請求項161に記載の方法。
【請求項164】
ビニル重合体を第一溶剤に溶解させ、ビニル重合体溶液を形成すること、
前記ビニル重合体溶液を、ある量の第二溶剤中に導入してゲル化を誘起すること
を含んでなり、
前記第二溶剤が、処理温度で、前記ビニル重合体溶液よりも高いフローリー相互作用パラメータを有する方法により製造された、物理的に架橋されたゲル。
【請求項165】
前記ビニル重合体が、分子量約50kg/モル〜約300kg/モルのポリビニルアルコールである、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項166】
前記ビニル重合体溶液が、前記溶液の重量に対して約10重量%〜約30重量%のポリビニルアルコール水溶液である、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項167】
前記ビニル重合体溶液が、約1.5モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液中に導入される、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項168】
前記ビニル重合体溶液が、約1.5モル〜約3.0モルの塩化ナトリウムの水溶液中に導入される、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項169】
前記ビニル重合体溶液が、約1.75モル〜約6.0モルの塩化ナトリウムの水溶液中に導入される、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項170】
ヒアルロン酸をさらに含んでなる、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項171】
ポリアクリル酸をさらに含んでなる、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【請求項172】
化学的架橋剤を実質的に含まない、物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項173】
少なくとも約10重量%のポリビニルアルコール溶液を含んでなり、約2〜約3モルの塩化ナトリウム中に浸漬することによりゲル化された、約14%〜約21%物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項174】
前記ゲルが、ポリビニルアルコール約12〜約29%を含んでなる、請求項172に記載の物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項175】
前記ビニル重合体溶液が、一種以上の非ゲル化成分を含む、請求項173に記載の方法。
【請求項176】
ヒアルロン酸をさらに含んでなる、請求項172に記載の物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項177】
ポリアクリル酸をさらに含んでなる、請求項172に記載の物理的に架橋されたヒドロゲル。
【請求項178】
少なくとも一つの、機械的特性の勾配を有するビニル重合体ゲルを含んでなる、調製品。
【請求項179】
ポリビニル重合体ヒドロゲルを含んでなるワン−ピース補欠椎間板であって、前記ワン−ピース補欠椎間板の機械的特性配分が、天然椎間板の髄核および線維輪の組合せの機械的特性の空間的配分に近い、補欠椎間板。
【請求項180】
治療薬をさらに含んでなる、請求項164に記載の物理的に架橋されたゲル。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図22D】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図23D】
【図23E】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図24D】
【図24E】
【図24F】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図25D】
【図25E】
【図25F】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
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【図27A】
【図27B】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
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【図29E】
【図29F】
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【図30C】
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【図31A】
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【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22A】
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【図22C】
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【図23A】
【図23B】
【図23C】
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【図23E】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
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【図24E】
【図24F】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
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【図25F】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図26D】
【図27A】
【図27B】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図29D】
【図29E】
【図29F】
【図30A】
【図30B】
【図30C】
【図30D】
【図30E】
【図30F】
【図31A】
【図31B】
【図31C】
【図31D】
【図31E】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公表番号】特表2007−500764(P2007−500764A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521806(P2006−521806)
【出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/003135
【国際公開番号】WO2005/017000
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(505271116)ケンブリッジ、ポリマー、グループ、インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE POLYMER GROUP, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/003135
【国際公開番号】WO2005/017000
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(505271116)ケンブリッジ、ポリマー、グループ、インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE POLYMER GROUP, INC.
【Fターム(参考)】
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