説明

重合体光開始剤

【課題】H−官能H−引き抜きクラスの光開始剤、特に重合体H−引き抜きクラスの光開始剤、より特定的にはゴム結合型H−引き抜きクラスの光開始剤の調製において有用である前駆物質化合物を提供する.
【解決手段】下記の構造で表わされるSiH−官能性アリールケトン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体光開始剤組成物、かかる重合体光開始剤の調製において有用な前駆物質及び、例えばUV硬化性接着剤、UV硬化性コーティング組成物及びUV硬化性封入剤におけるこれらの重合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光開始剤の主たる機能は、光開始剤が紫外線(UV)の照射を受けた場合に重合を開始させるラジカルを生成することにある。光開始剤は、有効な開始ラジカルを生成させる経路に応じて「I型」(光開裂)光開始剤及び「II型」(又はH−引き抜き)光開始剤に分類される。
【0003】
UV光により、重合を開始させるのに有効なラジカルへと分割される光開裂光開始剤とは好対照を成して、H−引き抜き光開始剤は、重合を開始させる上で有効であるラジカルを生成するために、水素供与体又はより一般的に引き抜き可能な水素の供給源を必要とする。H−引き抜きプロセスは通常、光開始剤と水素供与体が遭遇することを必要とする2分子反応である。引き抜き可能な水素のあらゆる供給源が有用であり得(例えば、H−引き抜き後に安定したラジカルを生成するあらゆる構造が「H供与体」として役立ち得る)、かかる供給源としては、アミン、チオール、不飽和ゴム例えばポリブタジエン又はポリイソプレン及びアルコールが含まれる。
【0004】
α−開裂(I型)及びH−引き抜き(II型)の両方の光開始剤の基本的光化学及び光物理学は、充分に研究され、UV硬化性系の中で工業的に利用されてきている((a)Cowan, D.O.;Drisko, R.L. 有機光化学の元素1976、Plenum Press, 第3及び4章。(b)Turro, N.J. 近代分子光化学、1991、University Science Books, 第7、10、及び13章を参照のこと)。コーティング及び接着剤塗布のためのUV硬化性系の使用に付随する1つの周知の問題は、硬化プロセスによって作り出される光副産物という最終的結果である。標準的なα−開裂型光開始剤の場合、ベンズアルデヒド(及び往々にして関連する化合物)の産生は往々にして、毒性及び製品の臭気という両方の観点から見て多大な関心事である。かかる関心事は、放射線硬化性材料の使用が、皮膚又は食品との接触が関与する利用分野について考慮されている場合に特に重要となる。UV硬化性材料の臭気及び抽出可能副産物の含有量を減少させるために、さまざまな有効なアプローチが講じられてきた。
【0005】
1つのアプローチは、小分子として照射された材料の中に残留するのではなく硬化した重合体マトリクス内に化学的に取込まれる光重合性又は重合体光開始剤の使用であった((a)Fouassier, J.P.;Rabek, J.F., Eds.科学及び技術における放射線硬化、1993、Elsevier Appl. Sci., vol. 2,283-321.(b)Fouassier.J.P. 光重合及び光硬化、その基礎と応用、1995、Hanser Publishers, 71-73を参照のこと)。残念なことに、α−開裂光開始剤を利用する場合、開裂副産物の少なくとも1つは、たとえその他のフラグメントがその系の重合体成分内に取込まれていても小分子としてなおも残存する。従って、重合体又は重合可能なI型光開始剤の使用を通して抽出可能でかつ臭気のある副産物を減少させることができるものの、これらは完全に除去されるわけではない。
【0006】
重合可能な及び重合体H−引き抜き型光開始剤の使用は、原則として光開始系に関係する抽出可能な成分がゼロである系を作り出す可能性を示す。さまざまなグループが、ポリ(ビニルベンゾフェノン)及びアクリル化ベンゾフェノン誘導体から誘導されたその共重合体又は重合体に基づく系を紹介してきた((a)David, C.;Damarteu, W.;Geuskens, G.重合体、1969, 10, 21-27. (b)Carlini, C.;Clardelli, F.; Donati, D.; Gurzoni, F.重合体、1983, 24, 599-606.を参照のこと)。アクリル化ベンゾフェノンの直接的使用も又開示されてきた(米国特許第3,429,852号)。残念なことに、これらのII型系は往々にして類似の小分子光開始系に比べて光効率に関する問題を有している。
【0007】
非常に低い抽出可能成分レベル又は臭気しか必要としない製品においては、成長する重合体ネットワークへと完全に反応しないあらゆる共重合性光開始剤が小分子として最終製品の中にとどまることになり、光開始剤フラグメントが導くものと同じ問題の多くを作り出すということに留意されたい。かくして、重合可能な光開始剤と異なり、重合体光開始剤を使用することが往々にして最も望ましい。重合体光開始剤を利用する場合の1つの主要な実用的問題は、それらを使用しようとする樹脂系との相容性である。かかる重合体光開始剤、特にホットメルト接着剤及びコーティングの中での使用が意図されたものについての付加的な1つの必要条件は、利用温度においてそれらが熱安定性をもつということである。先行技術において既知の重合体II型光開始剤は、上述の必要条件及びニーズのうちの単数又は複数のものを満たしていない。
【0008】
当該技術分野においては、放射線硬化性接着剤及びコーティング製剤の製造において有用な改良型H−引き抜き光開始剤に対するニーズが存在し続けている。特に、固有の抽出可能な光化学副産物がさらに少ない(又は全く存在しない)臭気の低い製品を生産するために、重合体結合したH−引き抜き光開始剤が必要とされる。当該発明はこのニーズを満たすものである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の1態様は、H−引き抜きクラスの光開始剤、特に重合体H−引き抜きクラスの光開始剤、より特定的にはゴム結合型H−引き抜きクラスの光開始剤の調製において有用である前駆物質化合物に向けられている。好ましい実施形態においては、前駆物質は、重合体ベンゾフェノン光開始剤の調製において使用可能であるSiH−官能性ベンゾフェノン誘導体である。
【0010】
本発明のもう1つの態様は、ゴム結合型重合体H−引き抜きクラスの光開始剤に向けられている。1つの実施形態においては、ゴム結合型重合体H−引き抜きクラスの光開始剤は、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)−結合型重合体H−引き抜きクラスの光開始剤である。特に好ましい実施形態においては、ゴム結合型重合体H−引き抜きクラスの光開始剤は、ポリ(ブタジエン)−結合型重合体H−引き抜きクラスの光開始剤である。アミド結合型、スルフィド結合型及びシラン結合型の両方の重合体H−引き抜き光開始剤組成物が本発明により包含されている。
【0011】
本発明のさらにもう1つの態様は、重合体H−引き抜き光開始剤を含むUV硬化性組成物に向けられている。好ましい実施形態においては、該UV組成物はUV硬化性ホットメルト感圧接着剤である。制限的意味なく、ゴム、チオール−エン、マレイミド及びアクリレート原樹脂に基づく接着剤及びコーティング製剤が包含されている。特に好ましい接着剤は、ポリ(ブタジエン)結合型重合体H−引き抜きクラスの光開始剤を含むSBS又はSISゴムベースのUV硬化性感圧接着剤である。
【0012】
本発明のさらにもう1つの態様は、放射線硬化型ホットメルト感圧接着剤及び放射線硬化型コーティング組成物、及び硬化した接着剤及び/又はコーティング組成物を含む製品に向けられている。
本発明のさらなる態様は、小分子II型光開始剤が往々にして用いられるのを同じ要領でのUV硬化性コーティング及び接着剤の中での新規の重合体結合型光開始剤の使用に向けられている。好ましい利用分野としては、チオール−エン、アクリレート及びマレイミドベースのUV硬化性組成物が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の重合体光開始剤を伴う及び伴わないチオール−エン光重合の光DSC分析を示す。
【図2】図2は、本発明の重合体光開始剤を伴う及び伴わないチオール−エン光重合の光DSC分析(300 nmのカットオフフィルタ)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本書で引用される全ての文書は、その全体が参考として内含されている。
本発明は、重合体H−引き抜きクラスの光開始剤、特にゴム結合型H−引き抜き光開始剤組成物、及びかかる重合体光開始剤を含む接着剤、コーティング組成物などを提供する。
【0015】
本発明の重合体H−引き抜きクラスの光開始剤は、スペーサユニットを通して官能基にリンクされた発色団を含む前駆物質から調製される。シラン官能性、メルカプタン官能性及びアミン官能性発色団が包含される。官能基と発色団の間のユニットは、任意の有機部分、好ましくは場合によってO、S、N及びSiといったヘテロ原子を含む(ただしこれらに制限されるわけではない)直鎖及び分枝鎖状鎖アルキル又はアリールであり得る。該スペーサユニットは同様に、アルコキシ、メルカプトアルキル、アミノ及びアルキルアミノといった(ただしこれらに制限されるわけではない)ヘテロ原子含有置換基を有することもできる。これらの官能性前駆物質はその後、発明力ある重合体光開始剤分子を産生するべく、不飽和小分子又は重合体に共有結合により付着させられる。
【0016】
本発明の官能化された発色団は、発色団上に存在する官能基と反応性をもつ基を含有する小分子又は重合体に付着されている。
小分子は、非重合体材料であるものとして定義づけされる。例えば、小分子光開始剤を形成するべく、SiH官能性発色団を、シクロエタンジメチロールジビニルエーテルといったような多官能性ビニルエーテル又はトリメチロールプロポアントリアリル、ビスフェノールAジアリルエーテルといったような不飽和小分子とヒドロシル化反応を介して反応させることができる。これらは、不飽和小分子の選択に応じて一官能性又は多官能性であってよい。
【0017】
本書で前述した通り、重合体光開始剤を産生するために重合体材料に対し官能性発色団のうちの単数又は複数のものをグラフトさせることが往々にして好ましい又は有利である。例えば、ポリ(ブタジエン)といったような不飽和重合体に対し、SiH−官能性発色団を、ヒドロシル化を通してグラフトすることができる。結果として得られた重合体光開始剤は、重合体鎖あたり複数の共有結合によってリンクされた発色団を往々にして含有し、発色団の一鎖あたりの平均数は、化学量論を通して制御することができる。重合体光開始剤が同じくUV架橋反応にも参与しかつ光開始剤としても作用しているケースでは、重合体光開始剤が複数の発色団基を含有していることが往々にして好ましい。
【0018】
本発明の光開始剤系で使用される光吸収性発色団は、光源の発光帯域に可能なかぎり近く整合するように選択される。有用な発色団としては、ベンゾフェノン及び関連する芳香族ケトン例えばキサントン、チオキサントン、4,4'−ビス(N,N'−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンジル、キノン、キノリン、アントロキノン、フルオレン、アセトフェノン、キサントン、フェナントレン及びフルオレノンを内含する(ただしこれらに制限されるわけではない)、H−引き抜き光化学を受ける化合物が含まれる。有用な発色団のかなり広範なリスト及びそれについての光物質データは、重合体便覧、Brandrup, J,; Immergut, E.H. ; Grulke, E.A.; Eds., John Wiley & Sons, Inc, II/169,「光重合反応」、Fouassier, J.P.;1999の中に見られる。
【0019】
本発明の実践において用いるための好ましいSiH官能性発色団は、下記の構造:
【化1】

【0020】
(式中、
Arは、アリールケトン部分であり;
Rは、独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、又はHであり;
1は、独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、又はカルボニル基であり;
XはO、NR、S、PR又はSiR2であり;
nは0〜2であり;
mは0又は1である)
により表わされるSiH−官能性ジアリールケトンである。
【0021】
Arが
【化2】

【0022】
から成る群の中から選択され;
2が独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、カルボニル基、H、OR、NR2、SR、F、Cl、Br又はIである、
SiH−官能性アリールケトンが特に好ましい。
1つの好ましい実施形態においては、重合体ベンゾフェノン光開始剤を調製するために使用可能な前駆物質は、下記の構造IA:
【0023】
【化3】

【0024】
で示された構造を有するSiH官能性ベンゾフェノン誘導体である。
本発明のもう1つの実施形態においては、重合体チオキサンタン光開始剤を調製するために使用可能な前駆物質は、下記の構造IB:
【0025】
【化4】

で示された構造を有するメルカプト官能性チオキサンタン誘導体である。
【0026】
本発明の前駆物質化合物IA及びIBは、それぞれ例2及び6に記述されている通りに調製することができる。
【0027】
本発明の前駆物質化合物は、重合体バックボーンにグラフトされて重合体結合型II型光開始剤を形成する。残留不飽和を伴う又はマレイン化された(無水マレイン酸と反応させられた)あらゆる重合体を本発明の実践において使用することができる。本発明の実践において使用可能な不飽和重合体には、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、ポリ(ブタジエン)(pBD)、ランダムスチレン−ブタジエン−スチレンゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン(EPDM)及びペンダント又はバックボーン不飽和を含むアクリレート重合体が内含されるが、これらに制限されるわけではない。マレエート化された原重合体としては、アクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、SIS、SBS、スチレン−b−エチレン/ブチレン−b−スチレン、スチレン−b−エチレン/プロピレン−b−スチレン又はポリイソブチレンが含まれる。
【0028】
1つの好ましい光開始剤は、SiH−官能性ジアリールケトンと不飽和重合体(Q)を反応させることによって形成されたシロキサンリンク型光開始剤であって、下記の構造:
【化5】

【0029】
(式中、
Arは以上で定義された通りであり;
Qは小分子又は重合体であり;
Rは、独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、又はHであり;
1は、独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、又はカルボニル基であり;
XはO、NR、S、PR又はSiR2であり;
nは0〜2であり;
mは0又は1であり;そして
yは1〜100である)
により表わされる。
【0030】
一部の系では、II型光開始剤は架橋に参与することができ、その場合、yは好ましくは、多官能性材料となるように2以上である。
【0031】
好ましいスルフィドリンク型光開始剤は、以下の構造:
【化6】

【0032】
(式中、
A及びArは、上述で定義された通りであり;
Rは、独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、又はカルボニル基であり;
XはO、NR、S、PR又はSiR2であり;
mは0又は1であり;そして
yは1〜100である)
により表わされる。
【0033】
好ましいアミドリンク型光開始剤は、下記の構造:
【化7】

【0034】
(式中、
Q及びArは、以上で定義されたとおりであり;
Rは、独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、又はカルボニル基であり;
1は、独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、カルボニル基、又はHであり;
XはO、NR、S、PR又はSiR2であり;
mは0又は1であり;
nは0又は1であり;そして
yは1〜100である)
で表わされる。
【0035】
本発明の重合体光開始剤内に発色団が存在することにより、これらの光開始剤は紫外線及び/又は可視照射に対し感応し、かくしてかかる光源に対し露呈された時点で架橋を開始させかつ/又はそれに参与する能力をもつことになる。
前駆物質化合物IA及びIBをポリ(ブタジエン)に結合させることにより調製される本発明の重合体光開始剤は、それぞれ構造式IIA及びIIBに示されている。
【0036】
【化8】

【0037】
本発明の重合体光開始剤化合物IIA及びIIBは、それぞれ例3及び7に記述されている通りに調製可能である。
本発明の重合体光開始剤は、感圧ホットメルト接着剤及びコーティング組成物を含む多様な放射線硬化性材料を調製するために使用可能である。コーティング組成物という語は、ここでは、装飾用及び耐摩耗性コーティング、ラッカー、繊維補強された複合材、マイクロエレクトロニクスカプセル化、ダイ付着、光ファイバーコーティング、成形用コンパウンド、UV硬化構造樹脂などを意味するために広く用いられている。
【0038】
使用が考慮されている光硬化性組成物としては、SiH官能性ジアリールケトンと不飽和化合物の反応から誘導されるシロキサンリンク型光開始剤、SH官能性ジアリールケトンと不飽和化合物の反応から誘導されたスルフィド−リンク型光開始剤及び/又はアミノ官能性ジアリールケトンと無水物又はカルボキシ酸官能基のいずれかを含有する化合物との反応から誘導されたアミドリンク型光開始剤を含む組成物が内含される。ここに内含されるのは、多官能性チオール、多官能性オレフィン及び光開始剤を含むチオール−エン光硬化性組成物である。
【0039】
放射線硬化性組成物においては、架橋は、化学線及び/又は電離線に対する露呈により発生する。「照射線」という語はここでは、紫外線といったような化学線及び中性子、アルファ粒子などといったきわめて加速された核子又は電子の発出により作り出される電離線を含むものとして使用されている。
標準的な市販の光開始剤に比べて、本発明の光開始剤は、UV硬化の前後に、熱安定性及び加水分解安定性を示し、UV硬化性組成物の中で硬化後の臭気の減少を示し、UV硬化性組成物の中で抽出可能物質の低減を示し、厚いフィルタを効率良くUV硬化させる。
【0040】
例えば米国特許第4,820,746号、4,948,825号、5,093,406号、5,104,921号、5,115,103号、5,135,978号、5,166,226号、5,302,649号、5,614,577号及び5,804,663号に記述されているタイプの感圧ホットメルト接着剤組成物を、本発明の重合体光開始剤を用いて調製することができる。
【0041】
本発明の実施においては、当業者にとって周知のとおりの接着剤及びコーティング組成物を処方する上で用いるために適したあらゆる原樹脂を本発明の実施において使用することができる。有用な重合体としては、非晶質オレフィン、エチレン含有重合体及びゴム状ブロック共重合体ならびにそれらのブレンドが含まれる。アクリレート、エポキシド、シロキサン、スチリルオキシ、ビニルエーテル及びその他の単量体、オリゴマー又はプレポリマー例えばポリイミド及びシアネートエステル樹脂及び/又は重合体及びそのハイブリッドに基づく系を使用することができる。組成物は、液体又は固体オレフィン不飽和系、例えばアクリレート、メタクリレート、マレイミド、スチレン系重合体、マレエートエステル、フマレートエステル、不飽和ポリエステル樹脂、アルキル樹脂、ポリイソプレン、ポリブタジエン及びチオール−エン組成物の中から選択可能である。
【0042】
ジオレフィンの部分的水素化を伴って又は伴わずに、ポリイソプレン又はポリブタジエンといったような重合体,又はスチレンとそれらとのランダム又はブロック共重合体を使用することができる。反応性を増大させるためには、ジオレフィンの水素化が全く無いものから最大限水素化されたものに至るまでのかかる重合体を無水マレイン酸のグラフトとそれに続くヒドロキシアクリレートとの開環反応を介してアクリル化することができる。かかる材料は、SartomerからRicacrylという商品名で、又、Kuraray ChemicalからUC 樹脂として入手可能である。シリコーン、ポリエステル及びウレタンといったバックボーン構造に基づく官能性オリゴマー又は重合体樹脂例えばアクリレート、メタクリレート、マレイミド又はビニル終端樹脂も利用することができる。
【0043】
特に有用なゴムベースの感圧ホットメルト接着剤は好ましくは、ビニル芳香族単量体から誘導された少なくとも1つのブロック及び、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及びスチレン−ブタジエンブロック共重合体の粘着付与された混合物又はスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の粘着付与された混合物といったようなブタジエン又はイソプレンから誘導された少なくとも1つのブロックを含有することになる。(例えばエチレン−ブチレンゴムマクロマーでグラフトされたアクリル重合体といったような)アクリル−ゴムハイブリッドがそうであるように、ゴム−ゴムブレンドならびにアクリル/ゴムブレンドが包含されるものと理解すべきである。
【0044】
本発明の実施において用いられる放射線硬化性ホットメルト接着剤は、感圧、半感圧又は非感圧性であるものとして処方することができる。本書で用いられる「感圧接着剤」という語は、わずかな圧力を加えるだけで大部分の基板に瞬間的に接着し永久的に粘着性であり続ける粘弾性材料を意味する。重合体は、それ自体感圧接着剤の物性を有するか又は粘着付与剤、可塑化剤又はその他の添加剤と混和することにより感圧接着剤として機能する場合に、本書で使用される通りのこの用語の意味合いで感圧接着剤である。半感圧接着剤は、基板に対し永久的に結合するのに充分な粘着力を一時的に有するものである。
【0045】
この時間が経過した後、該接着剤はなお永久的に粘着性を示すものの、強い結合を作り出すには充分なものではない。半感圧接着剤は標準的に、通常のホットメルトとして使用される。すなわち、接着剤がなおも融解している間に結合が行なわれる。結合可能な接着力が凝固段階を通して拡がるという事実は、広いプロセス範囲にわたり結合する機会を作り出す。これらのタイプの接着剤は、真正感圧接着剤の場合のようにコーティングして後日これで結合を作り出すということはできない。
【0046】
本発明の実施において有用なポリオレフィン重合体の制限的意味のない例には、エチレン共重合体ならびにそのブレンドが含まれる。本書で用いられている通りのエチレン共重合体という語は、エチレンの単独重合体、共重合体及び三元共重合体を意味する。エチレン共重合体の一例としては、酢酸ビニル又はモノカルボン酸又はアクリル又はメタクリル酸のその他のビニルエステル又はメタノール、エタノール又はその他のアルコールとのそれらのエステルといったような、エチレンと共重合することのできる単数又は複数の極性単量体との共重合体が内含される。これに含まれるのは、エチレン酢酸ビニル、エチレンアクリル酸メチル、エチレンアクリル酸n−ブチル、エチレンアクリル酸、エチレンメタクリレート及びそれらの混合物及びブレンドである。
【0047】
その他の例としては、制限的な意味なく、再循環されたポリエチレンテレフタレート及びポリエチレン、エチレン/α−オレフィンインターポリマー、ポリ−(ブテン−1−コ−エチレン)、アタクチックポリプロピレン、低密度ポリエチレン、均質直鎖状エチレン/α−オレフィン共重合体、低メルトインデックス n−ブチルアクリレート共重合体、エチレンビニルエステル共重合体が含まれる。本発明の実施においては、ランダム及びブロック共重合体ならびにそれらのブレンドを使用することができる。重合体成分は通常約10%〜約60%、より好ましくは約20%〜約45%、より好ましくは約25%〜約35%の量で存在することになる。
【0048】
ゴムベースの接着剤組成物及びコーティング組成物は、ランダム及び/又はブロック共重合体を用いて調製可能である。本発明に従って増強された組成物は、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン及びスチレン−イソプレンブロック共重合体又はその混合物であり得る。好ましい放射線硬化性ゴムベース接着剤は少なくとも1つの高ビニルブロック共重合体を含む。高ビニルブロックスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体及び/又はスチレン−イソプレン−スチレン共重合体が好まれる。使用にはラジカル及び直鎖状ブロック共重合体が好まれるものの、当業者であれば認識するように、その他のブロック共重合体形態も使用可能である。ブロック共重合体という語は、ジブロック、トリブロック及びマルチブロック共重合体を内含する。
【0049】
ゴムベースの感圧接着剤を処方する場合、任意にはかつ望ましくは、架橋剤特にポリチオール又はポリ(マレイミド)架橋剤を使用することができる。ゴムベースのUV硬化性接着剤組成物を処方する場合には、ポリチオールは、感圧接着剤ゴム及び全官能性ポリチオールの合計重量に基づいて最高約10重量%、好ましくは約0.3〜約6重量%、より好ましくは約0.3〜約1重量%の濃度で通常存在する。ペンタエリスリトールテトラチオールグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリメチルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)及びそれらの混合物を含めたさまざまなポリチオールを使用することができる。
【0050】
放射線硬化性チオール−エン組成物には、ポリチオール、オレフィン又は「エン」化合物及び本発明の重合体光開始剤が含まれる。チオレン系のポリエン成分は、最も望ましくは電子富有原子又は基に付着した。反応性不飽和基を含有するあらゆる成分であり得る。かくして、好ましいポリエンは、多官能性ビニルエーテルであり、その他の適切な基としては、アリルエーテル、ビニルスルフィド、スチレン、アクリルアミド及びアセチレンが含まれるがそれらに制限されるわけではない。
【0051】
もう1つの適切なクラスの化合物は、ノルボルネンカルボキシレート(シクロペンタジエンとアクリレートの反応生成物)といったようなポリオール及び2環式エンのエステル化から誘導される材料であるが、そのエステル官能基は加水分解安定性を危うくする可能性がある。チオール(メルカプタン)成分に関しては、1,10−デカンジチオールといった6〜40個の炭素原子を含む第1チオール又は1〜10個のチオール基を含む任意の直鎖状、環式又は分枝鎖状炭化水素チオールを使用することができる。その反応性が最も高いものであるかぎりにおいて第1チオールが好ましいが、その後に第2チオールそして最後に反応性の最も低い第3チオールが来る。
【0052】
有用なポリチオールの例としては、全て市販されている、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(β−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β−メルカプトプロピオネート)が含まれるが、これらに制限されるわけではない。一般に、当業者であれば、特定の塗布部域に合わせて作られたポリチオールを合成するためのさまざまな方法を応用することができる。特に有用なクラスのポリチオールは、3−メルカプトプロピオン酸といったようなメルカプト酸を用いたさまざまなポリオールのエステル化から誘導される。
【0053】
本発明の重合体光開始剤は、標準的には、処方された組成物の重量に基づいて重合体の発色団部分の約0.05重量%〜約10重量%の量、好ましくは約0.2重量%〜約3重量%、より好ましくは約0.5〜約1.5重量%の量で使用されることになる。濃度は、未硬化の放射線硬化性組成物の塗布厚みに基づいて選択される。2つ以上の光開始剤の組合せを用いて、処方された組成物の可能な限り最良の硬化を達成することもできる。好ましくは、考慮されている最終用途のために望まれる強度及びプロセスのライン速度で硬化を開始できるために必要な最も少ない量で使用される。この量は、重合体組成物、ならびに放射線源、受ける放射線の量、生産ライン速度及び基板上のコーティングの厚みにより左右されることになる。硬化プロセスは一般に酸素の不在下で、例えば窒素の存在下でさらに効率が良く、従って、酸素の存在下では一般により大量の光開始剤が必要とされる。
【0054】
本発明の重合体光開始剤を含む接着剤及びコーティングは、当業者が使用する既知の従来の接着剤で処方されることになる。該重合体組成物は同様に、その重合体の考慮されている最終用途に基づいて選択されたその他のさまざまな添加剤を含むこともできる。例えば、最終用途が感圧接着剤である場合、ホットメルト及び感圧接着剤の調製において従来使用されている可塑化剤、粘着付与剤及び充てん剤といったような添加剤を添加することができる。これらの添加剤の選択及び量は、当業者の専門知識の範囲内に入る。
【0055】
固体の水素化された粘着付与樹脂は、本発明の放射線硬化性組成物において、約30重量%〜約80重量%の範囲内の量、好ましくは約45重量%〜約70重量%、より好ましくは約50重量%〜約65重量%の量で有用である。代表的な粘着付与樹脂としては、C5/C9炭化水素樹脂、合成ポリテルペン、ロジン、ロジンエステル、天然テルペンなどが含まれる。
【0056】
本発明で使用するのに適したろうとしては、パラフィンろう、微晶質ろう、高密度低分子量ポリエチレンろう、副産物ポリエチレンろう、フィッシャートロプッシュろう、酸化されたフィッシャートロプッシュろう及びヒドロキシステアロマイドろう及び脂肪族アミドろうといったような官能化されたろうが含まれる。高密度低分子量ポリエチレンろう、副産物ポリエチレンろう及びフィッシャートロプッシュろうを含めるべく合成高融点ろうという用語を使用することが、当該技術分野において一般的である。酢酸ビニルで改質されたろう及び無水マレイン酸で改質されたろうといったような改質ろうを使用することも可能である。ろう成分は、接着剤の約10重量パーセント以上、標準的には約20〜40重量パーセントのレベルで利用される。
【0057】
本発明の処方された組成物は、同様に油希釈剤を約0重量%〜約40重量%含むこともできる。適切な可塑化又は増量用油には、オレフィンオリゴマー及び低分子量重合体ならびに植物及び動物油及びそれらの誘導体が含まれる。利用可能な石油由来の油は、芳香族炭化水素をわずかな割合(好ましくは油の重量の30%未満、より特定的には15%未満)でしか含まない比較的高い沸点の材料である。代替的には、油は完全に非芳香族油であってもよい。適切なオリゴマーには、約350〜約10,000の間の平均分子量をもつ、ポリプロピレン、ポリブテン、水素化ポリイソプレン、水素化ポリブタジエンなどが含まれる。例としては、Witco Corporationから入手可能なPetrocanada、及びKAYDOL OILから入手可能な鉱油が含まれる。
【0058】
組成物の調製及び使用中に成分が分解しないように保護するため(ただし重合体の照射硬化と干渉することなく)、市販の化合物に対し酸化防止剤が標準的に添加される。酸化防止剤の組合せは、さまざまな重合体が受ける異なる分解メカニズムに起因して、さらに有効であることが多い。市販の酸化防止剤の例としては、IRGANOX 1010(ペンタエチスルチル−テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート);IONOL(2,6-ジ−第3−ブチル−4−メチルフェノール);IONOX330(3,4,6-トリ(3,5−ジ−第3−ブチル−p−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリメチルベンゼン);及びPOLYGARD HR(トリス−(2,4−ジ−第3−ブチル−フェニル)ホスファイト)が含まれる。長期間にわたる熱安定性を保証するため、一般的には、接着剤組成物内には、約0.1重量%〜約3重量%、好ましくは約0.4重量%〜約1.5重量%の単数又は複数の酸化防止剤が内含される。
【0059】
上述の付加的材料の他に、本発明のさまざまな添加剤は、顔料、充てん剤、螢光添加剤、流動性及び均展性添加剤、湿潤剤、表面活性剤、消泡剤、レオロジー改質剤、安定剤、光増感剤及び酸化防止剤を含み得るが、これらに制限されるわけではない。好ましい添加剤は、問題の波長内で感知できるほどの吸収を示さないものである。
顔料及び充てん材料の例としては、二酸化チタン、疎水性非晶質ヒュームドシリカ、非晶質沈降シリカ、カーボンブラック及び重合体粉末が含まれるがこれらに制限されるわけではない。流動性及び均展性添加剤、湿潤剤及び消泡剤の例としては、シリコーン、炭化水素、フッ素含有化合物及び非シリコーン重合体及びコポリアクリレートといった共重合体が含まれる。
【0060】
本発明の組成物は、従来の方法によって調製される。一例としては、ブロック共重合体、粘着付与樹脂及びその他の望ましい成分を、押出し機、Z−ブレードミキサー又はその他の従来の混合装置を用いて、高温で(例えば約300°Fの温度)ブレンドすることができる。
本書で開示されている重合体組成物は、裏当て材料又は基板に接着剤又はコーティング組成物が塗布される大部分の利用分野で使用可能である。基板はフィルム、テープ、シート、パネルなどの形をしていてよく、紙、織物、プラスチック、不織繊維(例えば使い捨て吸収衣料)、金属、ホイル、天然ゴム、合成ゴム、木材及び木材複合材料で作られていてよい。
【0061】
基板に対する本発明の組成物の塗布は、ローラー、スロットオリフィス、スプレー又は押出しコーティングといったような任意の従来の手段を用いて達成可能である。コーティングされた基板をロールの形で使用しなければならない場合、組成物が基板の裏面に付着するのを防ぐため、剥離用裏のり付けコーティングが裏面にほどこされていてよい。基板の両面にコーティングを施しロールがけする場合、剥離紙又はその他の保護用手段を組成物の1層上に置き、かくしてその層が基板のもう1方の面上の組成物に対し付着するのを防ぐことができる。一部の用途では、組成物に対し直接第2の基板を適用することができる。
【0062】
重合体組成物が基板に塗布された後、この組成物は、空気又は窒素雰囲気内で紫外線(UV)又は電子ビーム(EB)放射により架橋される。架橋は、重合体の塗布の、最中又はその後に直ちに行なうことができる。光開始剤を含有する組成物は、所望の量の架橋を達成するのに充分な時間、180〜400 nm、好ましくは200〜390 nmの範囲内の波長を有する紫外線放射に露呈される。正確な露光長は、放射線の性質及び強度、使用される特定の紫外線光開始剤及び量、重合体系、フィルムの厚み、環境因子及び放射線源と接着剤フィルムの間の距離によって左右されることになる。
【0063】
これらのパラメータの決定は、当業者の専門知識の範囲内に入る。化学線により活性化可能な本発明の組成物が一般に紫外線範囲内の波長に対してその最大感度を示すことから、使用される実際の放射線は、紫外線放射を有効量提供することを条件として、任意の供給源からの化学線であり得る。照射は、任意の温度で実施され得、最も適切には、経済的理由から室温で実施される。コーティングされた基板上の放射線源と接着剤の間の距離は、約0.32cm〜25.4cm(1/8〜10インチ)の範囲内であり得、好ましくは0.32cm〜17.8cm(1/8〜7インチ)である。
【実施例】
【0064】
以下の例は、例示のみを目的として提供されている。
例14−アリルオキシベンゾフェノン(1)の合成
機械式撹拌器、還流冷却器、添加用漏斗及び内部温度プローブが備わった2L入りの4口フラスコ内の2−ブタノン(700mL,Fisher Scientific)の中に、4−ヒドロキシベンゾフェノン(186.7g、940mmol、Fluka Chemical)を溶解させた。反応装置にK2CO3(195g、1.41モル、Aldrich chemical)を添加し、中味を低速N2パージ下に置いた。臭化アリル(123mL、1.41mol、Aldrich Chemical)を添加用漏斗に投入した。ポットの温度を65℃まで上昇させ、この時点で臭化アリルを30分間にわたり添加した。添加が完了した時点で65℃で6.5時間反応を撹拌した。この時点で、GC分析によって見極められるように、いかなる出発材料も存在しなかった。
【0065】
スラリーをろ過し、ろ液を1%のHClaq(500mL)で抽出した。有機層を単離し、無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空下で除去して黄白色の固体を得た(1;207g、92%)。生成物は、受容可能な1H&13C NMR、FT-IR、GC及びUV-Vis特性を示した。
【0066】
【化9】

【0067】
例2SiH官能性ベンゾフェノン誘導体(2)の合成
THF(150mL、EM Science)内で暖めながら、アリルオキシベンゾフェノン1(200g、840mmol)を溶解させ、乾燥空気パージの下で機械式撹拌器、還流冷却器及び内部温度プローブの備わった2L入り4口フラスコ上に設置された添加用漏斗にこれを投入した。反応容器に対して、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(740mL、4.18mol、 Hanse Chemie)及びTHF(100mL)を添加した。内部ポット温度を50℃まで上昇させ、この時点で4−アリルオキシベンゾフェノン/THF溶液の一部分(5mL)と共にポットにクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(「Wilkinsonの触媒」、22mg、アリルオキシベンゾフェノン1の質量に基づいて11ppm、Aldrich Chemical)を添加した。内部反応温度を60℃まで上昇させ、その時点で45分間にわたり反応装置ポットに4−アリルオキシベンゾフェノン溶液を添加した。
【0068】
反応の内部温度を、発熱性である添加の間60〜65℃の間に保持した。添加が完了した時点で反応をさらに15分間60℃で撹拌し、この時点でGC分析によりいかなる出発材料も存在しなかった。反応を35℃まで冷却させ、活性炭(ラボスプーン3杯、Aldrich Chemical)を添加した。結果として得られたスラリーを30分間撹拌し、次にろ過して黄白色の溶液を得た。真空下で生成物から溶剤を除去して黄色油を得た(329g、商業グレードの1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン出発材料中最高10モル%の1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンの存在に起因して104%;すなわち反応は基本的に定量的である)。生成物は、受容可能な1H、13C&29Si NMR、UV-Vis及びFT-IRスペクトル特性を示した。
【0069】
【化10】

【0070】
例3ポリ(ブタジエン)−グラフトされたベンゾフェノン重合体光開始剤(3)の合成
乾燥空気のパージの下で、機械式撹拌、還流冷却器、内部温度プローブ及び添加用漏斗の備わった5L入り4口フラスコ内のトルエン(1100mL、EM Science)中にRicon 130ポリ(ブタジエン)(734g、Scartomer)を溶媒和させた。添加用漏斗に対してSiH−官能性ベンゾフェノン誘導体2(328.8g、0.88モル)を投入した。pBD溶液に対し、化合物2の一部分(最高5mL)を添加した。pBDの溶液を50℃まで暖め、その時点で1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(Gelestの1.8g 3.0-3.5wt% Pt cat、 soln. SIT7900.0)を反応装置ポットに添加した。このとき反応の内部温度を80℃まで上昇させ、化合物2を1.5時間にわたり滴下によって添加した。制御可能な形で発熱性である添加全体を通して80〜83℃の間の内部温度を維持した。
【0071】
添加後、反応の最終段階に続いて、2120cm-1でSiH帯域の完全な消滅を監視することによりFT-IR分析を行なった。SiH部分は、80℃で30分後に完全に消費された。この時間は、Pt0触媒溶液の活性に応じてわずかに変動しうるということに留意されたい。
【0072】
溶液を、35℃まで冷却させ、その時点でそれを小型ラボスプーン7杯の活性炭で処理した。このスラリーを60分間撹拌して、次にろ過した。真空下で結果としての黄白色の溶液から溶剤を除去して粘性の黄白色の油を得た(1060g、基本的に定量的な化学収量)。生成物pBD−結合型ベンゾフェノン誘導体3は、予想された1H、13C、29Si及びFT-IRスペクトル特性を示した。RI及びUVの両方の検出器(λ=320nm)を用いたGPC分析は、ベンゾフェノン発色団の大部分がpBDバックボーンに付着したこと、そして、グラフトプロセス中にpBD MW変化がほとんど発生しなかったことを示した(今や共有結合された発色団のため、わずかなMWの増加が見られる可能性があるということに留意されたい)。
【0073】
【化11】

【0074】
例42−ヒドロキシ−3,4−ジメチルチオキサンタン(4)の合成
2下で機械式撹拌及び内部温度プローブを備えた250mL入り3口フラスコの中で、濃H2SO4(100mL、EM Science)中の2,2taniジチオビス安息香酸(10.0g、32.6mmol、 Fluka)の溶液を調製した。この混合物を氷浴上で5℃まで冷却した。この冷却溶液に対し、30分間にわたり、2,3−ジメチルフェノール(7.98g、65.3mmol、 Aldrich chemical)を、分量の形で添加した。有意な発熱は、全く見られなかった。1時間氷上で反応を撹拌し、次に室温まで暖めた。反応をその後65℃の内部温度まで1時間加熱し、その後室温まで冷却した。
【0075】
【化12】

【0076】
例52−ヒドロキシエチル−3,4−ジメチルチオキサンタン(5)の合成
2下で機械式撹拌及び還流冷却器を備えた100mL入り3口フラスコ内でDMF(11mL、EM Science)中にヒドロキシ−官能性チオキサントン5(0.23g、0.8mmol)を溶媒和した。この溶液に対し、撹拌しながら、2−ブロモエタノール(0.06mL、0.8mmol、 Aldrich)及びK2CO3(0.16g、1.2mmol)を添加した。結果として得たスラリーを10時間オイルバッチ上で90℃まで加熱した。
反応を室温で冷却させ、精製H2O(150mL)上に注いだ。スラリーをろ過し、単離した固体を精製水(3×100mL)で徹底的にそしてイソプロパノール(20mL、EM Science)で一回洗浄した。生成物を真空オーブン内で乾燥させ、1H NMR及びFT-IRで分析した。
【0077】
【化13】

【0078】
例6メルカプト官能性チオキサントン誘導体(6)の合成
3−メルカプトプロピオン酸でヒドロキシ官能性チオキサントン5は、標準的フィッシャーエステル化プロトコルを用いて、エステル化することができる。かくして、N2下で磁気的撹拌及びディーンスターク冷却器を備えた50mL入りの3口フラスコ内でトルエン(20mL)中に化合物5(1g、2.9mmol)を溶媒和させることができる。この溶液に対し、3−メルカプトプロピオン酸(0.3g、2.9mmol、Aldrich Chemical)と触媒量のp−トルエンスルホン酸−水和物(0.006g、0.029mmol、Aldrich Chemical)を添加する。結果として得た溶液を還流まで加熱して水を共沸的に除去しエステル化に作用することができる。水の推移が止まった時点で、溶液を室温まで冷却させて、精製H20(20mL)で抽出した。有機層を単離し、無水MgSO4(Bアリールケトンer)上で乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空下で除去してメルカプト−官能性チオキサントン6を生成した。
【0079】
【化14】

【0080】
例7重合体結合型チオキサントン光開始剤(7)の合成
メルカプト官能性チオキサントン6は、文献中で記述されている通り(Schapman、 F.;Couvercelle、 J.P.:Bunel、 C. Polymer、 1998、39(20)、4955-4952)の過激な条件下でポリ(ブタジエン)上にグラフトさせることができる。かくして、N2下で機械式撹拌及び内部温度プローブの備わった100mL入りの3口フラスコに対し、Ricon 130pBD(10g)を添加することができる。化合物6(3g)を添加し、続いて2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)(「AIBN」、0.013g、Aldrich Chemical)を添加する。結果として得た混合物を75℃まで加熱して、不飽和ゴムに対するチオール基の付着に作用し、重合体結合型チオキサントン誘導体7を生成する。
【0081】
【化15】

【0082】
例8アミドリンク型 重合体結合型光開始剤(8)の合成
2下で還流冷却器、内部温度プローブ及び機械式撹拌を備えた250mL入りの4口フラスコ内で、Ricon(3)MA17(28g、Sartomer)4−アミノベンゾフェノン(7.8g、39mmol)及びトルエン(45mL)の溶液を組合わせた。撹拌混合物を7時間82℃まで加熱し、次に溶剤を真空下で除去して定量的収量でアミドリンク型重合体光開始剤 8を得た。生成物は、受容可能な1H、UV-Vis及びFT-IRスペクトル特性を示した。
【0083】
【化16】

【0084】
例9UV硬化性ゴムベースのPSA組成物、その硬化と評価
例3中に記述された重合体光開始剤を利用してゴムベースのUV硬化性感圧接着剤組成物を処方した。SBSブロック共重合体、SBジブロック共重合体、粘着付与剤樹脂、油可塑化剤、及び標準的安定剤パッケージを300°Fで可変量の重合体光開始剤と溶融ブレンドした。さまざまな厚みのフィルムをこの溶融体から剥離紙上に加工し、冷却させ、UVプロセス コンベヤライン硬化ユニットを用いて硬化させた。このユニットには、300wの中圧水銀アーク電球が備わっており、コンベヤのベルト速度を変動させることによって線量を変化させた。EIT Power Puck 放射計で線量を測定した。
【0085】
その後、硬化したフィルム(及び未硬化の基準標本)をMylar裏当て基板(最高2ミルの基板厚)に積層させた。180°の剥離及び高温せん断試験のため標本フィルムを標準機何形状に切断した(高温せん断試験のためには1″×1″のラップボンド、剥離試験のためには1″×6″の試験片;剥離試験速度=12″/分:高温せん断条件は、標本に対し500gの質量が付着された状態で200°Fであった;全ての標本調製は、制御された温度(70°F)及び湿度(RH50%)条件下で行なわれた)。
【0086】
これらの試験の代表的結果は表1に示されている。このデータから、複数の結論が明白である。重合体光開始剤を含有する標本は全て、UV硬化時点での高温せん断強度の増加により証明されているように標準的UV線量で容易にUV硬化される。これは、さまざまな度合までその凝集強さを増大させた複数の系のUVにより誘発された架橋の結果である。高温せん断強度は、PSAの耐熱性の標準的尺度である。これらの接着剤の耐熱性の増大により、類似の未硬化PSAよりもはるかに高い温度でのそれらの使用が可能となる。接着剤はUV架橋されていることから、その剥離強度は、未硬化基準標本に比べて低下する。このデータに関する重要な点は、数多くのPSA利用分野にとって受容可能な剥離接着を、優れた耐熱性を達成しながらUV硬化済み材料内で維持できるということにある。同様に、かなり厚い接着剤フィルム(5ミリ以上)を有効にUV硬化できるということにも同様に留意すべきである。
【0087】
【表1】

【0088】
例10チオール−エンUV架橋性系内での重合体 H−引き抜きクラスの光開始剤の使用
原樹脂から誘導された原樹脂成分テトラアリルビスフェノールA(Bimax)及びテトラチオール10を利用して、原型チオール−エンUV硬化性組成物を処方した。これら2つの成分を、1:1のチオール;エンモル比で混合した。この素材樹脂系を次に、下表2に示されているような異なる3つの製剤を生成するために使用した。
【0089】
処方(F1)は、光開始剤が添加されていない樹脂系であり、処方2(F2)は、2重量%のベンゾフェノン(標準的小分子光開始剤)とブレンドされた樹脂系であり、処方3(F3)は、約8重量%の例3の重合体光開始剤とブレンドされた樹脂系である(注:80重量%の重合体光開始剤は、約2重量%のペンダントベンゾフェノン発色団と等価である)。これらの製剤のUV硬化挙動は、光示差熱量計(100wの中圧水銀ランプが備わり、標本における合計光量が22w/cm2であるPerkin Elmer DSC-7)により評価された。反応度は、重合エンタルピー(ΔHp)、関連する化成及び最大重合発熱までの時間(Δto-p)の両方により判断された。結果は、表2及び図1に要約されている。
【0090】
【表2】

【0091】
製剤1及び2を比較すると(表2及び図1を介して)わかるように、重合体光開始剤3は、標準的チオール−エン光開始剤ベンゾフェノン以上とはいわないまでも同等の性能を示した。特定的に言うと、重合/化成エンタルピーの熱力学的数量は、基本的に同じであった。又、光重合反応速度の定性的尺度であるピーク発熱までの時間は、両方の系について類似であった。製剤1からわかるように、このチオール−エン系は、離散的光開始剤が全く無い状態でも微量のUV感度を有する。
【0092】
チオール−エン系のこの頻繁な「無開始剤」活性は、これまで基底又は励起状態の電荷移動錯体の形成又は単にさまざまな経路を介した低レベルのラジカル開始剤の光誘起生成のせいであるとされてきた。本発明の目的において注目される主たる問題は、1)添加された光開始剤を取込んだ系が、それを取込まない系に比べて数ケタ分反応度が高いこと、そして 2)重合体光開始剤3が小分子光開始剤ベンゾフェノンと基本的に等しい反応度を示すこと、という事実にある。
【0093】
例11チオール−エン UV架橋性系における重合体 H−引き抜きクラスの光開始剤のさらなる使用(ろ過された分析)
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピアネート)(Hampshire Chemical)及びトリアリルイソシアヌレート(Aldrich、最高200ppmのBHT安定剤)の原重合体成分を利用して、原型チオール−エンUV硬化性組成物を処方した。これら2つの成分を、1:1のチオール;エンモル比で混合した。
【0094】
この素材樹脂系を次に、下表3に示されているような2つの製剤を生成するために使用した。処方(F1)は、光開始剤が添加されていない樹脂系であり、処方2(F2)は、8重量%の例3の重合体光開始剤とブレンドされた樹脂系である(注:80重量%の重合体光開始剤は、約2重量%のペンダントベンゾフェノン発色団と等価である)。これらの製剤のUV硬化挙動は、光示差熱量計(100wの中圧水銀ランプが備わり、標本における合計光量が22w/cm2であるPerkin Elmer DSC-7)により評価された。反応度は、重合エンタルピー(ΔHp)、関連する化成及び最大重合発熱までの時間(Δto-p)の両方により判断された。
【0095】
或る種のチオール−エン製剤が光開始剤の添加無しで有意な光反応性を示すということは当業者にとって既知である。光開始剤の添加無しのこの製剤(F1)は、中圧水銀アーク灯のスペクトル分布をもつろ過されていないUV光の照射を受けた場合に、まさにこのような「無開始剤」活性を示す。この実験においては、水銀アーク灯からの光は、最高300nmのカットオフ波長をもつ干渉フィルターでろ過された(すなわち300nm未満の波長の光が完全にろ過された。300nmのカットオフフィルタでの光DSC実験の結果は、表3及び図2に示されている。
【0096】
F1の反応及び転化のエンタルピーからわかるように、ろ過光での照射を受けた場合に、最小の反応が見られる。これは、有意な乾燥を示す、未ろ過光での照射を受けた同じ無開始剤製剤(F1)と好対照を成す。この未ろ過反応度データは、「未ろ過基準F1」という表題で、表3の中に内含されている。製剤F2についてのデータから明らかにわかるように、例3の重合体光開始剤は、カットオフフィルタの存在下でさえこの系にとって効率の良い開始剤である。この例は同様に、この反応度の大部分がこの特定のチオール−エン製剤の固有の光活性とは異なり、重合体光開始剤の光開始能力に起因しているということをも明らかに示している。
【0097】
F1及びF2についての理論上の反応エンタルピー(100%の転化率について)が、有意な質量レベル(8重量%)での重合体光開始剤の取込みの結果である2つの製剤内のチオールとエンの異なる濃度に起因して異なっているという点に留意されたい。換言すると、計算上の転化にはこれが考慮されている。この特定のチオール−エン系がもつ有意な無開始剤活性は著しいものであるが、UV硬化のためにより長い波長が使用されない場合(例えばホウケイ酸ガラスを通した硬化)有用ではない。このような場合、この例で利用した重合体といったような開始剤が必要となる。
【0098】
【表3】

【0099】
例12重合体H−引き抜きクラスの光開始剤との共開始剤としての水素供給源の使用
基本的成分SBSゴム、水素化粘着付与剤、飽和オイル及び酸化防止剤パッケージを用いて、素材ゴムベースのUV硬化性ホットメルト感圧接着剤(UVHMPSA)を調製した。標本♯1を形成するために、この素材PSA100gを9gのアミノドリンク型重合体光開始剤8(約2重量%の活性アミドベンゾフェノン発色団とブレンドした。標本#2を形成するためには、素材PSAの第2の100g部分を、4.5gの光開始剤8及び1gの高MW(分子量)の低臭気ポリチオール架橋剤(約1重量%の活性アミドベンゾフェノン発色団及び約1重量%のポリチオール架橋剤に添加した。両方の標本は共に、溶液及び溶融体の両方の加工によってうまく調製された。
【0100】
両標本のフィルム(公称2ミルの乾燥フィルム厚)をトルエン溶液から引き抜いた。UVプロセスコンベヤライン上で500mJ/cm2の合計UV線量で両方の標本を硬化させた(線量は、UVプロセスコンパクト放射計によって測定された通りのスペクトルのUV引き抜きC及びV領域内の合計線量を表わす)。
【0101】
両方の標本の動的機械分析は、ポリチオールH−供与体/架橋剤を含有する標本#2のみが効率良く硬化したということを示した。これは、UV硬化された標本#2のゴム質平坦域が、ベースゴムのスチレンエンドブロックのTgよりもはるかに高い150℃以上に拡がっているという事実によって証明された。効率良く硬化しなかった標本#1は、−110℃のスチレンエンドブロックTgより高い温度での弾性係数(E′)及び流量の大幅な減少を示した。その他のゴムベースのUVHMPSA系内では、開始剤8が付加的な水素供与体/架橋剤無しで有効な架橋レベルを正に生み出すという点に留意すべきである。
かくして、充分に設計された製剤においては、ポリチオール及びアミンといったようなH−供与体/架橋剤の使用により、本発明の重合体光開始剤を取込んだ系内でのUV硬化の速度及び程度を促進することが可能である。
【0102】
例13A〜CSISベースの系における重合体結合型PIの使用
SISベースの感圧接着剤を光開始剤と架橋できるということは既知であるが、必要とされるUV線量は、2、3及び4官能性アクリレートといったような多官能性カップリング剤が利用されるのでないかぎり過剰である(D.J. St.Clair、 接着剤の時代、1980、p30)。しかしながら、St. clairが指摘しているように、これらの処方は、熱安定性ではなく、従って、接着剤自体の製造が通常それを数時間の高温にさらすことになる従来のホットメルトプロセスでの使用には適していない。一般に、ホットメルトは、その利用温度で24時間にわたりわずかな物性変化しか示すべきではない。例えば、25%未満の粘度変化が望ましい。
【0103】
例13Aは、従来の光開始剤(Irgacure 819)で架橋されたSISブロック共重合体の比較例である。例13B及び13Cは、本発明の光開始剤で架橋されたSISブロック共重合体を例示している。
【0104】
これらの例においては、以下の手順を用いてタンジェントデルタが測定された:
弾性(G″)及び損失(G″)係数対温度の関係を得るために、レオメトリクス動的機械分析装置(RDA700型)を使用した。計器を、Rhiosソフトウェアバージョン4,3,2、で制御した。直径8mmで、約2mmの空隙で分離された平行板を使用した。標本を搭載し、次に約−100℃まで冷却し、試験を開始した。プログラム試験は、5℃の間隔で温度を上昇させその後、各温度で10秒間のソーク時間を設けた。標本の入った対流オーブンを連続的に窒素でフラッシングした。周波数は10ラド/秒に維持した。試験の開始時の初期ひずみは0.05%であった(プレートの外縁において)。ソフトウェア内の自動ひずみオプションを用いて、試験全体を通して正確に測定可能なトルクを維持した。
【0105】
該オプションは、ソフトウェアにより許容された最大付加ひずみが50%であるように構成された。自動ひずみプログラムは、契約で保証されている場合、各温度増分で以下の手順を用いてひずみを調整した。トルクが200g-cmより低い場合、ひずみは現行値の25%だけ増分された。トルクが1200g-cmであった場合、それは現行値の25%だけ減少された。200〜1200g-cmの間のトルクでは、その温度増分でひずみは全く変化しなかった。せん断貯蔵弾性率又は弾性係数(G′)及びせん断損失係数(G″)は、トルク及びひずみデータからソフトウェアによって計算される。タン・デルタとしても知られる。その比率G″/G′を計算した。
【0106】
例13A比較例
4部分のQuintac 35030(Nippon-Zeonから入手可)、4部分のKraton 1119(Kraton Polymersから入手可)及び12部分のVector 4411(Dexco Polymersから入手可)を含有する20部分のSISブロック共重合体、53部分の粘着付与樹脂(Exxon-Mobil Chemical Co.から入手可能なEscoreg 5320)、23部分のBritol35T(Cromptonから入手可能な白色鉱油)、0.6部分の酸化防止剤(Ciba-Geigyから入手可能なIrganox0.3部分とSumitomoから入手可能なSumilizerTPD 0.3部分)、5部分の多官能性カップリング剤(SR454、トリエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)及び1部分のIrgacure819(Ciba-Geigyから入手可能な酸化ホスフィン光開始剤)に基づいて、感圧接着剤を処方した。
【0107】
標本を剥離紙上で5ミルにコーティングし、1000mJ/cm2のUVB線量で融合UVH電球の下で硬化させた。
硬化されたフィルムを秤量し、それを一晩シクロヘキサンコンテナ内に浸漬し、午前中に膨張したフィルムを除去し、乾燥させることによって、シクロヘキサン中のゲル留分を決定した。ゲル留分は、理論値の21.8%又は87%であった(20%の重合体プラス5%の多官能性カップリング剤)。未硬化フィルムは、シクロヘキサン中で完全に溶解する。
【0108】
RDAを行なった。硬化したフィルムは、高温すなわちスチレンブロックTgを越える温度で、1.0よりはるかに低い、好ましくは0.5より低い、そして最も好ましくは0.2より低いタンジェントデルタ値を示す。接着剤が架橋向けではないにせよきわめて流動的になる160〜200℃での値が記憶される。流体材料は、より粘性の挙動ひいてはより高いタンジェントデルタ値を示す。タンジェントデルタ=1で、流体は、粘性的(流体様)にも弾性的(固体様)にも同等の挙動を示す。値が低くなればなるほど、挙動はさらに固体様となる。この接着剤のタンジェントデルタ値は170℃で0.06であった。
この接着剤の粘度は275°Fで2、645CPであった。粘度は24時間にわたり50%だけ時間と共に線形的に増大した。
【0109】
例13BSISベースの感圧接着剤の発明に基づく例
20部分のSISブロック共重合体(Kraton Polymersから入手可能なKraton1320)、53部分の粘着付与樹脂(Exxon-Mobil Chemical Co.から入手可能なEscorez 5400)、22部分のBritol、 0.6部分の酸化防止剤(0.3部分のIrganox3052及び0.3部分のSumilizer TPD)及び4部分の例3に記述された光開始剤に基づいて、感圧接着剤を処方した。
以上の例13Aで記述した通りに接着剤をコーティングし、UV硬化させた。170℃でのタンデルタは0.1であり、これは、それが充分に硬化されたことを示している。
【0110】
例13C
SISベースの感圧接着剤の発明に基づく例25部分のSISブロック共重合体(Kraton Polymersから入手可能なKraton1320)、53部分の粘着付与樹脂(Escorez 5400)、18部分のBritol 35T、 0.6部分の酸化防止剤(0.3部分のCiba-Geigyから入手可能なIrganox3052及び0.3部分のSumitomoから入手可能なSumilizer TPD)及び4部分の例3に記述された光開始剤に基づいて、感圧接着剤を処方した。
以上の例13Aで記述した通りに接着剤をコーティングし、UV硬化させた。170℃でのタンデルタは0.03であり、これは、それが充分に硬化されたことを示している。
【0111】
325°Fでのこの接着剤の粘度は、8575cPである。この温度で保持された場合、この粘度はゆっくりと、24時間以内でわずか10%だけ降下した。高温でのエージング時点での粘度の下降は、緩慢な酸化的鎖切断に起因して、SISベースのPSAに典型的なものである。粘度のわずかな減少が予想され、これは、本発明の光開始剤には加熱された場合に早尚な接着性ゲル化を導く傾向が全くないことを表わしている。
【0112】
例14本発明の光開始剤と従来の光開始剤の比較
さまざまなスチレンブロック共重合体を架橋するために従来の光開始剤(Irgacure651及びベンゾフェノン)及び例3の光開始剤を使用した。表3に示されたブロック共重合体光開始剤及び油を用いてフィルムを調製した。全てのブロック共重合体はKraton Polymersから入手した。表4中、ビニルは、ペンダント2重結合すなわち1,2(SBS)又は3,4(SIS)重合を示している。
【0113】
【表4】

【0114】
ブロック共重合体は、50重量%で使用された。
Irgacure651(Ciba-Geigyから入手可能)は、固体100gあたり0.0039モルの割合で(1重量%)使用された。これは、高ビニルSBSを架橋させるものとして知られている標準開裂型の光開始剤である(米国特許第6,486,229 B1号参照)。
ベンゾフェノン(Ciba-Geigyより入手可能)は、固体100gにつき0.0039モルの割合(0.71重量%)で使用された。ベンゾフェノンは、標準開裂の光開始剤である。
例3の光開始剤は、重合体光開始剤上の活性ベンゾフェノン部位100gあたり0.0031当量の割合(3.69重量%)で使用された。
【0115】
残余部分の油(Britol 35T)は、固体組成物重量で46.31〜49%の割合で使用された。
これらの固体成分は、トルエン中で50%固体で溶解され、フィルムを剥離ライナー上に鋳造するために均質な溶液が使用された。これらを3分間250°Fで乾燥させて、2ミルの乾燥フィルムを生成した。これらを上述の通りに硬化し、次にRDA(以上で記述した通り)によりかつゲル画分についてテストした。
表5は、硬化後の重合体のゲル画分について報告している。表6は、硬化後のタンデルタについて報告している。
【0116】
【表5】

【0117】
【表6】

【0118】
表5及び6から、例3の光開始剤がこれらのスチレンブロック共重合体の全てを硬化する上で従来の光開始剤より有効であり、SISを硬化できる唯一のものであることは明白である。
当業者にとっては明らかとなるように、本発明の数多くの修正及び変更をその精神及び範囲から逸脱することなく行なうことができる。本書に記述された特定的な実施形態は、一例としてのみ提供されており、本発明は、添付のクレームの文言及びかかるクレームが権利を有する等価物の全範囲によってのみ制限されるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造:
【化1】

(式中、
Arは、
【化2】

から成るグループの中から選択され;
Rは、独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、又はHであり;
1は、独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、又はカルボニル基であり;
2は、独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、カルボニル基、H、OR、NR2、SR、F、Cl、Br又はIであり;
XはO、NR、S、PR又はSiR2であり;
nは0〜2であり;
mは0又は1である)
で表わされるSiH−官能性アリールケトン。
【請求項2】
下記の構造:
【化3】

を有する請求項1に記載のSiH官能性ジアリールケトン。
【請求項3】
請求項1のSiH−官能性アリールケトンと不飽和化合物の反応から誘導されるシロキサンリンク型光開始剤。
【請求項4】
下記の構造:
【化4】

(式中、
Qは小分子又は重合体であり;
Arは、
【化5】

から成る群から選択され;
Rは、独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、又はHであり;
1は、独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、又はカルボニル基であり;
2は、独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、カルボニル基、H、OR、NR2、SR、F、Cl、Br又はIであり;
XはO、NR、S、PR又はSiR2であり;
nは0〜2であり;
mは0又は1であり;
yは1〜100である)
で表わされるシロキサンリンク型光開始剤。
【請求項5】
Qが、ポリ(ブタジエン)、スチレン−b−イソプレン−b−スチレン(SIS)、スチレン−b−ブタジエン−b−スチレン(SBS)、EPDMゴム、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、及びペンダント又はバックボーン不飽和を含むアクリレート重合体から成るグループの中から選択されている、請求項4に記載の光開始剤。
【請求項6】
下記の構造:
【化6】

を有する請求項4に記載の光開始剤。
【請求項7】
請求項3又は4に記載の光開始剤を含む光硬化性組成物。
【請求項8】
感圧接着剤である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
SH官能性アリールケトンと不飽和化合物との反応から誘導されるスルフィドリンク型光開始剤。
【請求項10】
下記の構造:
【化7】

(式中、
Qは小分子又は重合体であり;
Arは、
【化8】

から成るグループの中から選択され;
Rは、独立して直鎖状又は分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、又はカルボニル基であり;
2は、独立して直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、カルボニル基、H、OR、NR2、SR、F、Cl、Br又はIであり;
XはO、NR、S、PR又はSiR2であり;
mは0又は1であり;そして
yは1〜100である)
で表わされるスルフィドリンク型光開始剤。
【請求項11】
下記の構造:
【化9】

を持つ化合物と不飽和化合物を反応させることによって形成される、請求項9に記載の光開始剤。
【請求項12】
Qが、ポリ(ブタジエン)、スチレン−b−イソプレン−b−スチレン(SIS)、スチレン−b−ブタジエン−b−スチレン(SBS)、EPDMゴム、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、及びペンダント又はバックボーン不飽和を含むアクリレート重合体から成る群から選択されている、請求項10に記載の光開始剤。
【請求項13】
下記の構造:
【化10】

を有する請求項12に記載の光開始剤。
【請求項14】
請求項9又は10に記載の光開始剤を含む光重合可能組成物。
【請求項15】
感圧接着剤である請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
アミノ官能性アリールケトンと、無水物及び/又はカルボン酸官能基を含有する化合物との反応から誘導されるアミドリンク型光開始剤。
【請求項17】
下記の構造:
【化11】

(式中、
Qは小分子又は重合体であり;
Arは、
【化12】

から成る群から選択され;
Rは、独立して直鎖状又は分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、又はカルボニル基であり;
1は、独立して直鎖状又は分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、カルボニル基、又はHであり;
2は、独立して直鎖状又は分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル、アルキレンオキシ、アルケニルもしくはアリール基、ヘテロ原子を含有するアルキル基、カルボニル基、H、OR、NR2、SR、F、Cl、Br又はIであり;
XはO、NR、S、PR又はSiR2であり;
mは0又は1であり;
nは0又は1であり;そして
yは1〜100である)
で表わされるアミドリンク型光開始剤。
【請求項18】
Qがマレイン化ポリ(ブタジエン)、マレイン化ポリ(イソプレン)、マレイン化ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−スチレン)、又はマレイン化ポリ(スチレン−b−イソプレン−スチレン)、マレイン化ポリ(スチレン−b−エチレン/ブチレン−b−スチレン)、マレイン化ポリ(スチレン−b−エチレン/プロピレン−b−スチレン)又は無水物官能性アクリル重合体から誘導されている、請求項17に記載の光開始剤。
【請求項19】
請求項16又は17に記載の光開始剤を含む光硬化性組成物。
【請求項20】
感圧接着剤である請求項19に記載の光硬化性組成物。
【請求項21】
多官能性チオール、多官能性オレフィン、及び請求項3、9又は16のいずれか1項に記載の光開始剤を含むチオール−エン光硬化性組成物。
【請求項22】
多官能性チオール、多官能性オレフィン、及び請求項4、10又は17のいずれか1項に記載の光開始剤を含むチオール−エン光硬化性組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−280661(P2010−280661A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−137725(P2010−137725)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【分割の表示】特願2004−515919(P2004−515919)の分割
【原出願日】平成15年6月19日(2003.6.19)
【出願人】(590000824)ナショナル スターチ アンド ケミカル インベストメント ホールディング コーポレイション (112)
【Fターム(参考)】