説明

重合体微粒子およびその製造方法、導電性微粒子

【課題】 単分散で粒子径分布が狭く、かつ、柔軟で弾力性に優れた重合体微粒子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 ビニル基を有するポリシロキサンと、25℃の水に対する溶解度が10質量%以下であり、かつ、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量(Mw)300以上の2官能オリゴマーを必須成分とする重合性成分を重合させて得られるものである重合体微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン粒子内にビニル系重合体が含まれてなる重合体微粒子、この重合体微粒子の製造方法、および、この重合体微粒子を用いた導電性微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶表示装置などの表示ディスプレイやタッチパネルなどのセル間隙(またはパネル間隙)用のスペーサーや、マイクロ素子実装用の導電性接着剤、異方導電性接着剤などの導電間隙部剤などには、粒子形状が略均一な重合体粒子が広く用いられている。これらの用途においては、対向する2枚の基板間(またはパネル間)の間隙が均一であること、また、重合体微粒子がこれらの基板との接触面に対して物理的損傷を与えないことが重要であり、かかる観点から、当該技術分野に用いられる重合体微粒子は、単分散で粒子径分布が狭く、かつ、柔軟性、圧縮荷重下における耐破砕性、さらには、その圧縮が解除された際には元の形状にまで戻るような復元力を有する(柔軟で弾力性に優れる)ことが求められている。
【0003】
例えば弾力性を有する重合体微粒子として、特許文献1には、両末端に(メタ)アクリル基を有するブタジエンオリゴマーと多官能アクリル酸エステルとで得られる架橋重合体微粒子が提案されており、この重合体微粒子は1〜1000μmの粒子径を有し、10%圧縮変形時の圧縮弾性率が350kgf/mm2(3430N/mm2)以下であることが記載されている。また、特許文献2には、(ポリ)アルキルグリコール基含有ジ(メタ)アクリレートと架橋性単量体とを共重合させて得られた弾力性微粒子が、10%圧縮変形時の圧縮弾性率10〜250kgf/mm2(98〜2450N/mm2)を有することが開示されている。
【0004】
上述のような有機成分のみからなる重合体微粒子に加えて、無機成分を含む有機無機複合微粒子も検討されており、例えば、非水溶性ビニル単量体がグラフト重合されたポリシロキサン系複合体粒子(特許文献3)、有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合粒子(特許文献4、特許文献5)、シロキサン架橋により三次元的に架橋した架橋ビニル重合体微粒子からなる導電性微粒子(特許文献6)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、上述の重合体微粒子などでは、弾力性は有するものの粒子径分布が広い、粒子径分布は単分散であるものの所望の弾力性が得られ難い、また、所望の弾力性は有するが圧縮荷重下における変形度合いが大きい、といった問題があり、これら従来の技術では、上記要求特性を全て満足した重合体微粒子を得ることは困難であり、更なる検討の余地があった。
【特許文献1】特開平8‐225625号公報
【特許文献2】特開2000‐319309号公報
【特許文献3】特開平4‐15209号公報
【特許文献4】特開平8‐81561号公報
【特許文献5】特開2003‐183337号公報
【特許文献6】特開平11‐199671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、単分散で粒子径分布が狭く、かつ、柔軟で弾力性に優れた重合体微粒子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し得た本発明の重合体微粒子とは、ビニル基を有するポリシロキサンと、25℃の水に対する溶解度が10質量%以下であり、かつ、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量(Mw)300以上の2官能オリゴマーを必須成分とする重合性成分を重合させて得られるものであるところに要旨を有するものである。
【0008】
上記構成を有する本発明の重合体微粒子が、柔軟性と弾力性と共に、優れた圧縮変形回復性(弾力性)を有する理由については、次のように考えられる。すなわち、ポリシロキサンと上記重合性成分をラジカル重合させることにより、これらが重合していくと共に、この重合性成分とポリシロキサン骨格に含まれるビニル基との間でも重合反応が進行し、ポリシロキサンと重合性成分由来の重合体が堅固に結合する。これによって、本発明の重合体微粒子が適度な硬度を有することとなる。また、同時に、上記反応により生じた結合間の分子鎖は、本発明の重合体微粒子の柔軟性や圧縮変形回復性に寄与する。すなわち、本発明で使用する重合性成分には、上記25℃の水に対する溶解度が10質量%以下であり、かつ、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量(Mw)300以上のオリゴマー(以下、2官能オリゴマーという場合がある)が必須的に含まれている。このような特性を有する2官能のオリゴマーの分子鎖はある程度の長さを有するものであるため、かかる2官能オリゴマーを必須成分として用いることで、上記反応により生じた重合性成分由来の重合体の架橋点距離を長くすることができる。また、ポリシロキサン骨格と結合している2個のビニル基をつなぐ分子鎖も長くなり、適度な長さの架橋点間距離が確保できる。これらの結果、本発明の重合体微粒子に柔軟性および圧縮変形回復性が付与されるのである。
【0009】
上記重合体微粒子は、平均粒子径が1〜1000μm、Cv値が20%以下であるのが好ましい。また、前記重合体微粒子の直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)が2450N/mm2以上であり、圧縮変形回復率が15%以上であること、さらには、前記重合体微粒子の1g荷重時の変位量が該重合体微粒子の直径に対して30%以上であり、圧縮変形回復率が15%以上であることが好ましい。
【0010】
本発明の重合体微粒子の製造方法とは、
(1)ビニル基を有するポリシロキサン粒子に、25℃の水に対する溶解度が10質量%以下であり、かつ、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量(Mw)300以上の2官能オリゴマーを必須とする重合性成分を水に乳化分散させた状態で前記ポリシロキサン粒子に加えて吸収させる吸収工程、あるいは、
(2)ビニル基を有さないポリシロキサン粒子に、25℃の水に対する溶解度が10質量%以下であり、かつ、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量(Mw)300以上の2官能オリゴマーと、ビニル基および加水分解性シリル基を有する重合性モノマーとを必須とする重合性成分を水に乳化分散させた状態で前記ポリシロキサン粒子に加えて吸収させる吸収工程と、
前記吸収工程でポリシロキサン粒子内に吸収させた前記重合性成分を重合させる重合工程を含むところに要旨を有する。
【0011】
かかる製造方法を採用することで、上記重合性成分間のみならず、ポリシロキサン粒子と、該ポリシロキサン粒子内に含まれた上記重合性成分間(特に2官能オリゴマー)においても結合が形成されるため、重合体微粒子が適度な硬度と共に、柔軟性や優れた圧縮変形率を有するものとなることに加えて、単分散で粒子径分布が狭い重合体微粒子とすることができるからである。
【0012】
なお、本発明には、上記重合体微粒子の表面に導体層が形成されていることを特徴とする導電性微粒子も含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の重合体微粒子は、単分散で、粒子径分布が狭いものであり、また、柔軟性、弾力性と共に、優れた圧縮変形回復性(弾力性)を有するものであるため、例えば、タッチパネルなどの基板間のスペーサー(隙間保持材)や、異方導電性材料に用いられる導電性微粒子の基材粒子として好適に用いることができる。また、上記特性を有する重合体微粒子を基材とする導電性微粒子はエレクトロニクスの電気的接続材料などとしても有用である。また、本発明の製造方法によれば、所望の粒子径を有し、かつ粒度分布の狭い重合体微粒子を容易に調製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の重合体微粒子は、ビニル基を有するポリシロキサンと、25℃の水に対する溶解度が10質量%以下であり、かつ、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量(Mw)300以上の2官能オリゴマーを必須成分とする重合性成分を重合反応させて得られるものである。すなわち、本発明の重合体微粒子とは、無機質部分としてのポリシロキサン骨格と、有機質部分としての有機ポリマー骨格とを含んでなる重合体微粒子であり、有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子が、ポリシロキサン骨格中のケイ素原子と直接化学結合した有機ケイ素原子を分子内に有している(化学結合タイプ)。言い換えれば、本発明の重合体微粒子は、ポリシロキサン骨格と有機ポリマー骨格とが3次元的なネットワーク構造を形成した形態を有している。
【0015】
上記ポリシロキサン骨格は下記式(1)で表されるシロキサン単位が連続的に化学結合して、網目構造のネットワークを構成した化合物と定義される。
【0016】
【化1】

【0017】
ポリシロキサン骨格を構成するSi‐O結合の量は、重合体微粒子を空気などの酸化性雰囲気中で1000℃以上の温度で焼成することでSiO2が生成するのでこのSiO2の質量を測定することにより求められる。
【0018】
ポリシロキサン骨格を構成するSi‐O結合の量(SiO2量換算)は重合体微粒子の質量に対して0.1〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは1.0〜25質量%である。ポリシロキサン骨格中のSi‐O結合の量が、上記範囲に満たない場合には、粒子の柔軟性や弾力性が低下し、重合体微粒子に外部応力が加わった場合に重合体微粒子が破壊するなどの不具合が生じるおそれがあり、上記範囲を超える場合は、重合体微粒子が硬すぎて十分な柔軟性が得られ難くなる場合がある。ポリシロキサン骨格中のSiO2の量制御は、該ポリシロキサン骨格を形成する原料の組み合わせ、該ポリシロキサンと重合させる重合性成分との構成比率を調整することで、上記範囲とすることができる。
【0019】
まず、上記ビニル基を有するポリシロキサンについて説明する。このビニル基を有するポリシロキサンとは、ビニル基を有するシリコン化合物を必須とする化合物原料を加水分解・縮合してなるポリシロキサン骨格構造を有するものであって、例えば、加水分解性のシリコン化合物を、水を含む溶媒中で加水分解・縮合させて得られるものである。尚、ビニル基の導入のタイミングは特に限定されず、例えば、上記加水分解性シリコン化合物としてビニル基を有するものを用いる態様、ビニル基を有さない加水分解性シリコン化合物を加水分解・縮合させて種粒子(ビニル基を有さないポリシロキサン)を作成した後、この種粒子(ビニル基を有さないポリシロキサン)と、ビニル基を有する加水分解性シリコン化合物とを加水分解・縮合させて、ポリシロキサンにビニル基を導入する態様のいずれも採用できる。後者の場合は、種粒子とビニル基を有する加水分解性シリコン化合物との加水分解・縮合の際に同時に重合性成分とのラジカル重合反応を行わせて、本発明の重合体微粒子を合成することも可能である(後述の〔B〕ならびに〔C〕の製法)。
【0020】
上記加水分解性シリコン化合物は、特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)で表されるシラン化合物およびその誘導体を用いることができる。
amSiX4-m (2)
(ここで、Raは置換基を有していてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基および不飽和脂肪族基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、Xは水酸基、アルコキシ基、アシロキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を示し、mは0から3までの整数を示す。)
【0021】
上記一般式(2)で表されるシラン化合物としては、例えば以下のものが例示できる。m=0のものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどの4官能性シラン;m=1のものとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、β‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3‐(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3,3,3‐トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン;m=2のものとしては、ジメチルシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシランジオールなどの2官能性シラン;m=3のものとしては、トリメチル、トリメチルエトキシシラン、トリメチルシラノールなどの1官能性シランなどが挙げられる。
【0022】
上記加水分解性シリコン化合物は、1種のみを用いても2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。尚、上記一般式(2)において、m=3であるシラン化合物およびその誘導体のみを原料として使用する場合には、複合体粒子は得られない。
【0023】
上述のように、本発明では、ビニル基を有する加水分解性シリコン化合物を必須として用いるものである。かかるビニル基を有する加水分解性シリコン化合物としては、例えば、例えば下記一般式(3),(4)及び(5)で表される重合性反応基を有するものが挙げられる。
CH2=C(−Rb)−COORc− (3)
(ここで、Rbは水素原子またはメチル基を表し、Rcは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
CH2=C(−Rd)− (4)
(ここで、Rdは水素原子またはメチル基を表す。)
CH2=C(−Re)−Rf− (5)
(ここで、Reは水素原子またはメチル基を表し、Rfは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
【0024】
上記一般式(3)で表される重合性反応基としては、例えば、アクリロキシ基およびメタクリロキシ基などが挙げられ、該有機基を有する上記一般式(2)のシリコン化合物としては、例えば、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ‐アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、γ‐メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン(または、γ‐トリメトキシシリルプロピル‐β‐メタクリロキシエチルエーテルともいう)、11‐メタクリロキシウンデカメチレントリメトキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ‐アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどを挙げることができる。
【0025】
上記一般式(4)で表される重合性反応基としては、例えば、ビニル基、イソプロペニル基などが上げられ、該有機基を有する上記一般式(2)のシリコン化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、4‐ビニルテトラメチレントリメトキシシラン、8‐ビニルオクタメチレントリメトキシシラン、3‐トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシランなどを挙げることができる。これらは1種のみで用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記一般式(5)で表される重合性反応基としては、例えば、1‐アルケニル基、もしくはビニルフェニル基、イソアルケニル基もしくはイソプロペニルフェニル基などが挙げられ、該有機基を有する上記一般式(2)のシリコン化合物としては、例えば、1‐ヘキセニルトリメトキシシラン、1‐ヘキセニルトリエトキシシラン、1‐オクテニルトリメトキシシラン、1‐デセニルトリメトキシシラン、γ‐トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ω‐トリメトキシシリルウンデカン酸ビニルエステル、p‐トリメトキシシリルスチレン、p‐トリエトキシシリルスチレン、p‐トリメトキシシリル‐α‐メチルスチレン、p‐トリエトキシシリル‐α‐メチルスチレン、N‐β‐(N‐ビニルベンジルアミノエチル‐γ‐アミノプロピル)トリメトキシシラン・塩酸塩、1‐ヘキセニルメチルジメトキシシラン、1‐ヘキセニルメチルジエトキシシランなどを挙げることができる。これらは1種のみを単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
【0027】
本発明にかかるポリシロキサンは、上記加水分解性シリコン化合物群を、水を含む溶媒中で加水分解させ縮合させて得られるものである。加水分解および縮合については、一括、分割、連続等、任意の方法を採ることができる。また、加水分解および縮合をさせるにあたり、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の触媒を用いてもよい。また、溶媒中には、水や触媒以外に有機溶剤が存在していてもよい。
【0028】
上記有機溶剤としては、特に限定はされないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、sec‐ブタノール、t‐ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロヘキサン等の(シクロ)パラフィン類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類などが好ましく挙げられる。これらは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
加水分解および縮合反応は、上記シリコン化合物群および有機溶剤等を、水を含む溶媒に添加し、0〜100℃、好ましくは0〜70℃の温度範囲で、30分〜100時間攪拌することによって行えばよい。また、この際の水濃度は10〜99.99質量%、触媒濃度は0.01〜10質量%、有機溶剤濃度は0〜90質量%、上記シリコン化合物群の濃度は0.1〜30質量%とするのが好ましい。さらに、上記シリコン化合物群の添加時間は0.001〜500時間、反応温度は0〜100℃とするのが好ましい。なお、予め加水分解・縮合反応させて得られた粒子を種粒子として用いる場合には(後述の〔B〕、〔C〕の製法の場合)、種粒子の濃度は0.1〜30質量%に設定することが好ましい。
【0030】
また、加水分解および縮合反応により得られた粒子を、種粒子として予め合成系に仕込んでおき、そこに上述のシリコン化合物群を添加して上記種粒子を成長させることにより、ポリシロキサン粒子を得ることもできる。このようにして、上記シリコン化合物群を、水を含む溶媒中で、適切な条件下で、加水分解および縮合させることにより、粒子が析出しスラリーが生成する。析出した粒子は、上述のビニル基を有するシリコン化合物を必須成分として用いて得られたものであるため、ビニル基を有するポリシロキサン粒子となる。ここで、適切な条件とは、特に限定はされないが、例えば、予め加水分解および縮合反応により得られた種粒子(好ましくは、濃度0.1〜20質量%)を含むスラリーは、上述の加水分解性シリコン化合物の濃度が20質量%以下、水濃度が50質量%以上、触媒濃度が10質量%以下となるような条件が好ましい。
【0031】
上記ポリシロキサン粒子の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、粉砕状、俵状、まゆ状、金平糖状等の任意の粒子形状でよく、特に限定されない。
【0032】
上記ポリシロキサン粒子の平均粒子径は特に限定されないが、0.1〜700μmであるのが好ましく、より好ましくは0.5〜70μm、最も好ましくは1〜35μmである。上記ポリシロキサン粒子の平均粒子径が上記範囲内である場合は、後述する重合性成分の吸収が効率よく進行するといった有利な効果を発揮することができる。一方、上記ポリシロキサン粒子の平均粒子径が小さすぎると、後述する重合性成分の吸収が十分に行えない場合があり、大きすぎる場合には、粒子の質量が大きくなって反応器中で重合体微粒子の沈降が起こり、粒子同士が凝集しやすくなる。
【0033】
上記ポリシロキサン粒子の粒度分布のシャープさは特に限定されないが、変動係数(Cv値)が20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。上記変動係数(Cv値)が上記範囲内である場合は、後述する重合性成分の吸収後、重合を行うことにより得られる粒子が単分散となるといった有利な効果を発揮することができる。変動係数が上記範囲を超える場合は、得られる重合体微粒子の粒子径のバラツキが大きくなり、各種基板間の隙間を均一にする隙間保持材としての用途に用いた場合、隙間距離の均一性が不十分となる。なお、上記変動係数(Cv値)とは、後述の実施例で記載した測定法により求められる。
【0034】
上述のようにして得られるポリシロキサン粒子は、該粒子を構成するポリシロキサン骨格中に、後述する重合性成分を容易に吸収し、かつ、保持しておくことのできる粒子である。これは、上記ポリシロキサン粒子が後述の重合性成分を吸収するのに好適な縮合度となっているからであるともいえる。
【0035】
次に、上記ポリシロキサン粒子と重合させる重合性成分について説明する。上記重合性成分とは、25℃の水に対する溶解度が10質量%以下であり、かつ、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量300以上の2官能オリゴマーを必須的に含むものである。
【0036】
上述のように、上記重合性成分は、本発明の重合体微粒子に柔軟性および圧縮変形回復性を付与するものである。尚、上記2官能オリゴマーの25℃の水に対する溶解度が低すぎる場合には、上記ポリシロキサン粒子内に吸収させる際に上記2官能オリゴマーが吸収され難くなる傾向がある。一方、25℃の水に対する溶解度が高すぎる場合には、吸収された2官能オリゴマーが媒体中に再溶解して媒体中で重合し、目的とする重合体微粒子以外に副生微粒子が生成したり、反応系がコロイド的に不安定となり凝集物が生成するなどの問題を生じるおそれがある。従って、上記2官能オリゴマーの25℃の水に対する溶解度は0.001質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは0.003質量%以上であり、10質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。なお、重合性成分全体としても、25℃の水に対する溶解度が0.001質量%以上、5質量%以下であることが好ましい。
【0037】
同様に、上記2官能オリゴマーの重量平均分子量が大きすぎる場合は、ポリシロキサン粒子内に吸収され難くなるため、その重量平均分子量の上限は5000以下であるのが好ましく、より好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下である。一方、重量平均分子量が小さすぎる場合には、得られる重合体微粒子の機械的特性が劣る場合がある
。従って、本発明では、上記2官能オリゴマーの重量平均分子量の下限を300とする。
【0038】
上記2官能オリゴマーは、25℃で測定される粘度が0〜3000mPa・sであるのが好ましい。より好ましくは1〜2000mPa・sであり、さらに好ましくは1〜1500mPa・sである。粘度が大きすぎると、モノマーを吸収させる際に乳化困難となるため、モノマーエマルションの粒子径が大きくなり、種粒子にモノマーを十分に吸収させることができなくなる。尚、2官能オリゴマーの粘度は、JIS K−6901に準じて測定すればよい。
【0039】
上記2官能オリゴマーは、上記特性を満足するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;1,3‐ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート;2,2‐ビス[4‐(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレートなどの2,2‐ビス[4‐(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート;2,2‐水添ビス[4‐(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレートなどのビスフェノールAのEO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの中でも、下記構造式で表される化合物が好ましい。
【0040】
【化2】

【0041】
【化3】

【0042】
【化4】

【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
上記構造を有する2官能オリゴマーとしては、例えば、新中村化学(株)製のNKエステルシリーズ「9PG」,「APG‐200」,「APG‐400」,「APG‐700」,「BPE‐100」,「BPE‐200」,「BPE‐500」など、日本化薬(株)製の「KAYARAD HX‐220」,「KAYARAD HX‐620」など、共栄社化学(株)製の「ライトアクリレート PTMGA‐250」などが挙げられる。これらに加えて、日本化薬(株)製の「KAYARAD MANDA」,「KAYARAD R‐167」なども好ましく用いられる。
【0046】
上記重合性成分として2官能オリゴマーと併用し得る成分は特に限定されないが、上記ポリシロキサン粒子との相溶性を考慮すれば、ラジカル重合性ビニルモノマーを使用するのが好ましい。ラジカル重合性ビニルモノマーとしては、分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を含有する化合物であるのが好ましく、本発明の重合体微粒子が所望の物性を発揮できるよう適宜選択すればよい。具体的には、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体類;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、等のポリエチレングリコール成分を有する単量体類;(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等のアルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタンフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロアミル(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有(メタ)アクリレート類;スチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、α‐クロロスチレン、o‐クロロスチレン、m‐クロロスチレン、p‐クロロスチレン、p‐エチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0047】
上記ラジカル重合性ビニルモノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。ポリシロキサン粒子に上記重合性成分を吸収させる際に、あらかじめ上記重合性成分を乳化分散させエマルションを生成させておくにあたり、安定なエマルションとするためには、疎水性のラジカル重合性ビニルモノマーを用いることが好ましい。
【0048】
また、架橋性モノマーを用いてもよく、得られる重合体微粒子の機械的特性の調整が容易となる。上記架橋性モノマーとしては、特に限定はされないが、例えば、ジビニルベンゼン、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジアリルフタレートおよびその異性体、トリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体、などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記重合性成分中には、前記した加水分解性シリコン化合物が含まれていてもよい。加水分解性シリコン化合物としては、ビニル基を有しているもの、有さないもののいずれも使用可能であるが、ビニル基を有していないポリシロキサン粒子を種粒子とする場合(後述の(2)の製法)には、重合性成分にはビニル基を有する加水分解性シリコン化合物を加える必要がある。
【0050】
上記2官能オリゴマーは、前記重合性成分100質量%中(すなわち、上記2官能オリゴマーと上述のラジカル重合性ビニルモノマーとの合計量)、20質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。2官能オリゴマー量が少なすぎる場合には、得られる重合体微粒子の圧縮変形回復率が劣る場合がある。尚、重合性成分が全て上記2官能オリゴマーであってもよい。
【0051】
また、得られる重合体微粒子中における2官能オリゴマー由来の成分は、10質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、99質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは95質量%以下であり、更に好ましくは90質量%以下である。
【0052】
上記ポリシロキサン粒子の製法としては、〔A〕上記ビニル基を有する加水分解性シリコン化合物を加水分解・縮合して、種粒子(ビニル基を有するポリシロキサン)を製造する方法、〔B〕ビニル基を有しない加水分解性シリコン化合物を加水分解・縮合して種粒子(1)(ビニル基を有さないポリシロキサン)を作成し、ついで、この種粒子(1)とビニル基を有する加水分解性シリコン化合物とを加水分解・縮合させて種粒子(2)(ビニル基を有するポリシロキサン)を製造する方法、また、〔C〕ビニル基を有しない加水分解性シリコン化合物を加水分解・縮合して種粒子(1)(ビニル基を有さないポリシロキサン)を作成し、この種粒子(1)にビニル基を有する加水分解性シリコン化合物と後述の重合性成分とを吸収させ(詳しくは後述する)、このとき上記種粒子(1)中のポリシロキサンとビニル基を有する加水分解性シリコン化合物とを加水分解・縮合させて、種粒子(2)(ビニル基を有するポリシロキサン)を製造する方法のいずれも採用することができる。
【0053】
尚、上記〔C〕の製法を採用する場合には、種粒子(2)の生成と同時に、ビニル基を有する加水分解性シリコン化合物と重合性成分との重合も進行するため、結果として得られるのは本発明の重合体微粒子となる。
【0054】
本発明の重合体微粒子は、その機械的特性(圧縮弾性率、圧縮変形回復率、1g荷重時の変位量など)のバランスに優れたものである。上記機械的特性の詳細については、後述する実施例に記載した定義および測定・評価方法を採用する。本発明の重合体微粒子の機械的特性にかかる効果は、ポリシロキサン粒子由来の無機成分と重合性成分由来の重合体との構成比率や、重合性成分由来の重合体を構成する2官能オリゴマーとその他の上記ラジカル重合性ビニルモノマーとの比率などを調節することにより制御することができる。本発明でいう重合体微粒子においては、ポリシロキサン粒子の有するビニル基は、少なくとも1つが他の反応基および/または重合体と結合しているのが好ましい。結合している形態としては、例えば、重合性成分由来の重合体と結合している形態、ポリシロキサン粒子中の少なくとも1つの他の反応基と反応して結合または重合している形態、該形態で重合性成分由来の重合体と結合している形態、などが挙げられるが特にこれらに限定されない。なかでもポリシロキサン粒子の有するビニル基が重合性成分由来の重合体と結合している形態の場合は、重合性成分由来の重合体がポリシロキサン粒子の構造中にさらにしっかりと固定されるので、長期間安定した機械的特性を有することが可能である。同様に、上記結合により、重合体微粒子の形状がより真球状に近くなり得る。
【0055】
上記構成を有する本発明の重合体微粒子は、上記重合体微粒子の直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)が2450N/mm2以上であり、圧縮変形回復率が15%以上であるのが好ましい。ここで、上記圧縮弾性率(10%K値)とは、重合体粒子の柔軟性を、圧縮変形回復率とは、重合体微粒子の弾力性をそれぞれ指標するものである。上限は特に限定されないが、20000N/mm2以下であるのが好ましく、より好ましくは15000N/mm2以下、さらに好ましくは10000N/mm2以下である。圧縮弾性率が小さすぎる場合には、重合体微粒子が柔軟すぎて、各種基板間の隙間保持材としての用途に用いた場合、隙間距離を均一に保持し難くなるおそれがあり、一方、大きすぎる場合は、重合体微粒子が硬すぎて、上記隙間保持材として用いた場合に、基板表面に損傷を与えるおそれがある。
【0056】
上記圧縮変形回復率とは、重合体微粒子の弾力性を指標するものであり、重合体微粒子に一定の荷重を負荷し、これを取り除いた場合の、荷重負荷前後における重合体微粒子の粒子径の変位量により求められる。本発明の重合体微粒子の圧縮変形回復率は、15%以上であるのが好ましく、より好ましくは20%以上であり、更に好ましくは25%以上である。圧縮変形回復率の上限は特に限定されず、勿論100%、すなわち、荷重負荷前後における重合体微粒子の粒子径が変化しないことが好ましいのは言うまでもない。
【0057】
また、本発明の重合体微粒子は、1g荷重時の変位量が該重合体微粒子の直径に対して30%以上であるのが好ましい。上記1g荷重時の変位量とは、本発明の重合体微粒子の変形のし易さ、特に低荷重負荷時における変形し易さを指標するものである。上記1g荷重時の変位量は30%以上であるのが好ましく、より好ましくは35%以上であり、更に好ましくは40%以上であり、85%以下であるのが好ましく、より好ましくは80%以下であり、さらに好ましくは75%以下である。圧縮変形回復率と同様に、1g荷重時の変位量が上記範囲に含まれない場合は、各種基板間の隙間保持材としての用途に用いた場合、隙間距離を均一に保持し難くなる傾向がある。
【0058】
本発明の重合体微粒子の平均粒子径とは、上述のようにポリシロキサン粒子の内部に上記重合性成分由来の重合体が含まれ複合化された状態における平均粒子径を意味するものである。上記平均粒子径は特に限定されないが、1〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは1〜50μmである。平均粒子径が上記範囲内である場合は、ポリシロキサン粒子由来の無機質成分と重合性成分由来の有機成分の比率を幅広く変化させることが可能であり、例えば、同一の平均粒子径であっても、粒子の硬度、破壊強度などの機械的特性を様々に変化させ得るといった有利な効果を発揮し得る。上記平均粒子径が小さすぎる場合には、重合性成分由来の重合体の含有量が少なくなり、大きすぎる場合には、ポリシロキサン粒子に吸収させる上記重合性成分の量が非常に多くなる結果、重合安定性が悪くなり、重合体微粒子間で凝集する場合がある。
【0059】
また、本発明の重合体微粒子は、上記ポリシロキサン粒子の構造中に含む上記重合性成分由来の重合体の含有量を調節することにより、所望の粒子径とすることができる。本発明の重合体微粒子の粒度分布のシャープさは特に限定されないが、例えば粒子径の変動係数(Cv値)が20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらにより好ましくは5%以下である。変動係数(Cv値)が上記範囲内である場合は、各種基板間の隙間を均一にする隙間保持材としての用途に用いた場合、隙間距離を均一に保つといった有利な効果を発揮することができる。一方、変動係数(Cv値)が上記範囲を超えるときには、隙間保持材としての用途に用いた場合、隙間距離の均一性を十分に保つことができない場合がある。
【0060】
本発明の重合体微粒子が、ビニル基を有するポリシロキサン粒子からなるポリシロキサン粒子の内部に上記重合性成分由来の重合体が含まれてなる粒子であることを確認する方法としては、例えば、得られた重合体微粒子をトルエン等の有機溶剤で加熱抽出し、加熱抽出前後で重合体微粒子の粒子径および重量が変化しないことで重合性成分由来の重合体がポリシロキサン粒子内部(構造中)に取り込まれて存在していることを確認する方法、または、得られた重合体微粒子を切断し、その断面を観察することでポリシロキサン粒子内部(構造中)に重合性成分由来の重合体が含まれてなることを確認する方法などが挙げられる。
【0061】
本発明の重合体微粒子の形状は、特に限定されず、例えば、球状、針状、板状、鱗片状、紛砕状、偏状、まゆ状、金平糖状などの形状を挙げることができる。
【0062】
本発明の重合体微粒子は染料および顔料などで着色されていてもよい。その色としては、光が透過しにくいか、または、透過しない色であるのが好ましく、たとえば、黒、濃青、紺、紫、青、濃緑、緑、茶、赤等であるのが好ましい。これらの色に着色された重合体微粒子を、例えば、液晶表示装置用スペーサーとして用いれば、粒子自身の光り抜けを防止でき、画質のコントラストを向上できるからである。特に好ましくは、黒、濃青、紺色である。
【0063】
なお、染料および/または顔料は、単に重合体微粒子に含まれるものでもよく、また、染料および/または顔料と重合体微粒子を構成するマトリックスとが化学結合によって結び付けられた構造を有するものでもよいが、特にこれらに限定されない。
【0064】
前記染料は、着色しようとする色に応じて適宜選択して使用され、たとえば、染色方法によって分類された、分散染料、酸性染料、塩基性染料、反応染料、硫化染料等が挙げられる。これらの染料の具体例は、「化学便覧応用化学編 日本化学会編」(1986年丸善株式会社発行)の1399頁〜1427頁、「日本化薬染料便覧」(1973年日本化薬株式会社発行)に記載されている。重合体微粒子を染色する方法としては、従来公知の方法が採用可能である。たとえば、上記の「化学便覧応用化学編 日本化学会編」や「日本化薬染料便覧」に記載されている方法等で行うことができる。
【0065】
前記顔料としては、特に限定されないが、たとえば、カーボンブラック、鉄黒、クロムバーミリオン、モリブデン赤、べんがら、黄鉛、クロム緑、コバルト緑、群青、紺青などの無機顔料;フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系などの有機顔料が挙げられる。なお、前記顔料の平均粒子径が0.1μmを超える場合には、重合体微粒子中に導入され難い場合があるので、このような場合は上記顔料に変えて染料を使用するのが好ましい。前記重合体微粒子が着色されている場合、液晶表示装置用スペーサーとして用いると、バックライトの光抜けを防止でき、液晶表示装置の画質向上を達成することができる。
【0066】
本発明の重合体微粒子の用途は特に限定されないが、例えば、液晶表示素子用面内スペーサー、液晶表示素子用シール部スペーサー、EL表示素子用スペーサー、タッチパネル用スペーサー、セラミックやプラスチック等の各種基板間の隙間を均一に保持し得る隙間保持材等の隙間距離保持用スペーサーなどを挙げることができる。
【0067】
本発明の重合体微粒子を、上記隙間保持材として用いる場合には、本発明の重合体微粒子をそのまま用いてもよく、あるいは、該重合体微粒子全体、その表面に部分的に何らかの処理を施し、特定の物性を付与したものであってもよい。上記処理としては、本発明の重合体微粒子を粒子本体としてその表面に樹脂等を付着させたり、グラフト化したりして、重合体微粒子を被覆することにより接着層を形成させたものや、本発明の重合体微粒子の合成時の反応系に染料などを含ませておくことによって樹脂粒子そのものを着色したもの、または、これら接着性と着色の機能を組み合わせたものなどが挙げられる。
【0068】
本発明にかかる重合体微粒子の製造方法(以下、本発明の製造方法と称すことがある。)とは、(1)ビニル基を有するポリシロキサン粒子に、25℃の水に対する溶解度が10質量%以下であり、かつ、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量(Mw)300以上の2官能オリゴマーを必須とする重合性成分を水に乳化分散させた状態で前記ポリシロキサン粒子に加えて吸収させる吸収工程と、あるいは、(2)ビニル基を有さないポリシロキサン粒子に、25℃の水に対する溶解度が10質量%以下であり、かつ、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量(Mw)300以上の2官能オリゴマーと、ビニル基および加水分解性シリル基を有する重合性モノマーとを必須とする重合性成分を水に乳化分散させた状態で前記ポリシロキサン粒子に加えて吸収させる吸収工程と、
前記吸収工程でポリシロキサン粒子内に吸収させた前記重合性成分をラジカル重合させる重合工程、を含むところに特徴を有する方法である。
【0069】
上記吸収工程は、上記ポリシロキサン粒子の存在下に上記重合性成分を存在させた状態で進行するものであれば特に限定されない。なお、吸収工程においては、上記ポリシロキサン粒子の構造中に上記重合性成分を吸収させるが、この吸収工程が速やかに進行するように、上記ポリシロキサン粒子および重合性成分のそれぞれの濃度や、上記ポリシロキサン粒子と重合性成分との混合比、混合の処理方法・手段、混合時の温度や時間、混合後の処理方法・手段などを設定し、その条件の下で行うのが好ましい。
【0070】
上記吸収工程における、上記重合性成分の添加量は、ポリシロキサン粒子の原料として使用したシリコン化合物の質量に対して、質量で0.01倍〜100倍とするのが好ましい。より好ましくは0.5〜30倍であり、さらに好ましくは1〜15倍である。添加量が上記範囲に満たない場合は、ポリシロキサン粒子の重合性成分の吸収量が少なくなり、上述の機械的特性を有する重合体微粒子が得られ難くなる場合があり、上記範囲を超える場合は、添加した重合性成分をポリシロキサン粒子内に完全に吸収させることが困難となる傾向があり、未吸収の重合性成分が残存するため後の重合段階において粒子間の凝集が発生しやすくなる場合がある。
【0071】
重合性成分とポリシロキサン粒子の混合は、ポリシロキサン粒子を分散させた溶媒中に上記重合性成分を加えてもよいし、上記重合性成分を含む溶媒中にポリシロキサン粒子を加えてもよい。なかでも、前者のように、予めポリシロキサン粒子を分散させた溶媒中に、重合性成分を加えることが好ましく、さらにはポリシロキサン粒子を合成して得られたポリシロキサン粒子分散液からポリシロキサン粒子を取り出すことなく該分散液に重合性成分を加えれば、工程が複雑とならず、生産性に優れるため好ましい。
【0072】
上記吸収工程において、重合性成分の添加のタイミングは特に限定されず、該重合性成分を一括で加えておいてもよいし、数回に分けて加えてもよいし、任意の速度でフィードしてもよい。また、重合性成分を加えるにあたっては、重合性成分のみで添加しても、重合性成分の溶液を添加してもよいが、重合性成分を予め乳化剤で乳化分散させた状態でポリシロキサン粒子に加えておくことが、ポリシロキサン粒子への吸収がより効率よく行われるため好ましい。
【0073】
上記乳化剤は特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、分子中に1個以上の重合可能な炭素‐炭素不飽和結合を有する重合性界面活性剤等がある。なかでも、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤は、ポリシロキサン粒子や、重合性成分を吸収したポリシロキサン粒子、重合体微粒子の分散状態を安定化させることもできるので好ましい。これら乳化剤は、1種のみを使用しても2種以上を併用してもよい。
【0074】
上記アニオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、具体的には、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート類;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、ナトリウムスルホシノエート、スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩類;スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート類;ナトリウムラウリレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩類、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート類;高級アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等を挙げることができる。
【0075】
上記カチオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート類;高級アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等を挙げることができる。
【0076】
上記非イオン界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド類;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体、エチレンオキサイドと脂肪酸アミン、アミドまたは酸との縮合生成物等を挙げることができる。
【0077】
上記両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤およびベタイン型両性界面活性剤などが挙げられ、例えば、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2‐アルキル‐N‐カルボキシエチル‐N‐ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N‐テトラデシル‐N,N‐ベタイン型の両性界面活性剤(例えば、第一工業製薬(株)製の「アモーゲンK」など)が挙げられる。
【0078】
上記高分子界面活性剤としては、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドンおよびこれらの重合体の構成単位である重合性単量体の2種以上の共重合体または他の単量体との共重合体、クラウンエーテル類の相関移動触媒等が挙げられる。
【0079】
上記重合性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、プロペニル‐2‐エチルヘキシルベンゼンスルホコハク酸エステルナトリウム、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルエーテル硫酸アンモニウム塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンエステルのリン酸エステル等のアニオン性重合性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルベンゼンエーテル(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(メタ)アクリル酸エステル等のノニオン性の重合性界面活性剤等が挙げられる。
【0080】
上記乳化剤の使用量は特に限定されるものではなく、具体的には、上記重合性成分の総重量に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜8質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。上記乳化剤の使用量が、0.01質量%未満の場合は、安定な重合性成分の乳化分散物が得られないことがあり、10質量%を超える場合は、乳化重合等が副反応として併発してしまうおそれがある。上記乳化分散については通常、上記重合性成分を乳化剤とともにホモミキサーや超音波ホモジナイザー等を用いて水中で乳濁状態とすることが好ましい。
【0081】
また、重合性成分を乳化剤で乳化分散させる際には、重合性成分の質量に対して0.3〜10倍の水や水溶性有機溶剤を使用するのが好ましい。上記水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、sec‐ブタノール、t‐ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類などが挙げられる。
【0082】
上記吸収工程は、0〜60℃の温度範囲で、5分〜720分間、攪拌しながら行うのが好ましい。
【0083】
これらの条件は、用いるポリシロキサン粒子や重合性成分の種類などによって、適宜設定すればよく、これら条件は1種のみ、あるいは2種以上を合わせて採用してもよい。
【0084】
上記吸収工程において、重合性成分が吸収されたかどうかの判断については、重合性成分を加える前および吸収段階終了後に、顕微鏡により粒子を観察し、重合性成分の吸収により粒子径が大きくなっていること等で容易に判断することができる。
【0085】
吸収工程終了後には、重合性成分を吸収したポリシロキサン粒子の分散液中の粒子濃度が40質量%以下となるように、水を添加して希釈するのが好ましい。より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。上記分散液の粒子濃度が高すぎる場合には、続く重合工程において、重合反応に伴う発熱により温度のコントロールが困難となるおそれがあるからである。また、この際、粒子の分散安定性を向上させるために、上述の界面活性剤を追添加してもよい。
【0086】
重合工程において、ラジカル重合する方法は特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤を用いた方法、紫外線や放射線を照射する方法、熱を加える方法などが挙げられる。上記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、t‐ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤類;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)、2'‐アゾビスイソブチロニトリル、2,2'‐アゾビス(2‐アミジノプロパン)・二塩酸塩、4,4'‐アゾビス(4‐シアノペンタン酸)、2,2'‐アゾビス‐(2‐メチルブチロニトリル)、2,2'‐アゾビスイソブチロニトリル、2,2'‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物類;などを好ましく挙げることができる。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0087】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、上記重合性成分の総重量に対して、0.001質量%〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%〜10質量%、さらにより好ましくは0.1質量%〜5質量%である。上記ラジカル重合開始剤の使用量が、0.001質量%未満の場合は、重合性成分の重合度が上がらない場合がある。上記ラジカル重合開始剤の上記溶媒に対する仕込み方については、特に限定はなく、最初(反応開始前)に全量仕込む方法(ラジカル重合開始剤を重合性成分と共に乳化分散させておく態様、重合性成分が吸収された後にラジカル重合開始剤を仕込む態様);最初に一部を仕込んでおき、残りを連続フィード添加する方法、または、断続的にパルス添加する方法、あるいは、これらを組み合わせた手法など、従来公知の手法はいずれも採用することができる。
【0088】
上記ラジカル重合する際の反応温度は40〜100℃であることが好ましく、50〜80℃がより好ましい。反応温度が低すぎる場合には、重合度が十分に上がらず重合体微粒子の機械的特性が得られ難くなる傾向があり、一方、反応温度が高すぎる場合には、重合中に粒子間の凝集が起こりやすくなる傾向がある。尚、上記ラジカル重合する際の反応時間は用いる重合開始剤の種類に応じて適宜変更すればよいが、通常、5〜600分であることが好ましく、10〜300分がより好ましい。反応時間が短すぎる場合には、重合度が十分に上がらない場合があり、反応時間が長すぎる場合には、粒子間で凝集が起こり易くなる傾向がある。
【0089】
次に、本発明にかかる導電性粒子について説明する。
【0090】
本発明にかかる導電性粒子(以下、本発明の導電性粒子と称することがある。)とは、上記本発明に記載の重合体微粒子の表面に導体層が形成されているものである。上記導体層は、重合体微粒子表面の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0091】
本発明の導電性粒子は、上記本発明の重合体微粒子を有するので、電気的に接続される一対の電極基板間の隙間距離を一定に保持する為に必要な硬度と圧縮変形回復率とを有するとともに、電極に対して物理的ダメージを与えにくい。このため、一対の電極基板間の隙間距離を一定に保持しやすく、加圧による導体層の剥がれ落ち、電気的に接続されるべきではない電極間のショート、電気的に接続されるべき電極間の接触不良、などを防ぐことができる。導体層に使用することのできる金属は特に限定されないが、例えば、ニッケル、金、銀、銅、インジウムやこれらの合金等が挙げられる。これらの中でも、ニッケル、金、インジウムは導電性が高いので好ましい。上記導体層の厚みは、十分な導通があれば特に限定はされないが、0.01〜5.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜2.0μmである。導体層の厚みが0.01μm未満であると、導電性が不十分となるおそれがあり、5.0μmを超える場合は、導体層の熱膨張率の差により導体層が剥がれ落ちやすくなるおそれがある。導体層は、1層でも2層以上でもよく、2層以上の場合は異なる種類の金属が積層されていてもよい。
【0092】
上記本発明の重合体微粒子表面に、導体層を形成する方法としては、特に限定されるわけではなく、従来公知の方法を用いればよい。例えば、化学めっき(無電解めっき)法、コーティング法、PVD(真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなど)法などが挙げられ、なかでも、化学めっき法は容易に導体層を形成することができるため好ましい。
【0093】
このようにして得られる本発明の導電性粒子は、上記本発明の重合体微粒子と同様の機械的特性(硬度、破壊強度)を備えている。このため、液晶表示板、LSI、プリント配線基板等のエレクトロニクスの電気的接続材料として特に有用である。
【実施例】
【0094】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。測定法は以下の通りである。
【0095】
〔平均粒子径と、粒子径の変動係数(Cv値)〕
ポリシロキサン粒子および重合体微粒子の平均粒子径は、コールターマルチサイザー(ベックマンコールター社製)により、30000個の粒子の粒子径を測定し、平均粒子径を求めた。
【0096】
粒子径の変動係数(Cv値)は、下記式に従って求めた。
【数1】

【0097】
〔10%圧縮弾性率(10%K値:硬度)〕
島津微小圧縮試験機(島津製作所製,MCTW‐500)により、室温(25℃)において、試料台(材質:SKS平板)上に散布した試料粒子1個について、直径50μmの円形平板圧子(材質:ダイヤモンド)を用いて、粒子の中心方向へ一定の負荷速度(2.275mN/秒)で荷重をかけて、圧縮変位が粒子径の10%となるまで粒子を変形させたときの荷重と変位量(mm)を測定する。測定した圧縮荷重、粒子の圧縮変位、粒子の半径を、下記式:
【数2】

【0098】
(ここで、E:圧縮弾性率(N/mm2)、F:圧縮荷重(N)、S:圧縮変位(mm)、R:粒子の半径(mm)である。)に代入し、値を算出する。この操作を、異なる3個の粒子について行い、その平均値を重合体微粒子の10%圧縮弾性率とする。
【0099】
〔圧縮変形回復率(回復率)〕
微小圧縮試験機(島津製作所製「MCTW‐500」)を用いて、試料粒子を反転荷重9.8mNまで圧縮した後、荷重を減らしていくときの荷重値と圧縮変位との関係を測定して得られる値であり、荷重を除く際の終点を原点荷重値0.098mNとし、負荷および除負荷における圧縮速度を1.486mN/秒として測定したときに、反転の点までの変位(L1)と、反転の点から原点荷重値をとる点までの変位(L2)との比(L1/L2)を%として表した値である。
【0100】
〔1g荷重時の変位量(圧縮率)〕
微小圧縮試験機(島津製作所製「MCTW‐500」)により、室温(25℃)において、試料台(材質:SKS平板)上に散布した試料粒子1個について、直径50μmの円形平板圧子(材質:ダイヤモンド)を用いて、粒子の中心方向へ一定の負荷速度で荷重をかけ、0.098mN(1g荷重)負荷時点における粒子の変位量(L3)を、粒子径(D)との比(L3/D)を%として表した値である。
【0101】
実験例1
(ポリシロキサン粒子分散液‐1の調整)
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、水250部と25%アンモニア水20部とを混合した溶液を入れ攪拌しながら、ここにγ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン30部とメタノール125部の混合溶液を滴下口から添加して、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合を行ってポリシロキサン粒子を調製した。反応開始から1時間後、滴下口より水250部を添加し、ポリシロキサン粒子スラリー液を希釈した。さらに反応開始から2時間後まで攪拌を継続し、ポリシロキサン粒子分散液‐1を得た。このポリシロキサン粒子分散液‐1サンプリングして、コールターマルチサイザー(ベックマンコールター社製)により粒子径を測定したところ、平均粒子径:1.58μm、変動係数:3.37%であった。
【0102】
(重合性成分エマルション‐1の調製)
アニオン性乳化剤(第一工業製薬製、LA‐10)0.7部、水70部、重合性成分として2官能オリゴマー(新中村化学(株)製,NKエステルAPG‐400,重量平均分子量:508,水(25℃)に対する溶解度:0.02質量%)100部、1,6‐へキサンジオールジメタクリレート20部、およびラジカル重合開始剤として2,2’‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、V‐65)0.5部を混合し、ホモジナイザーを用いて5分間乳化分散させて重合性成分エマルション‐1を調製した。
【0103】
(重合体微粒子‐1の調製)
前記ポリシロキサン粒子分散液‐1をさらに30分攪拌した後、フラスコに備えられた滴下口から重合性成分エマルション‐1を15秒で添加した。重合性成分の添加後30分間攪拌をおこなった後、ポリシロキサン粒子を顕微鏡で観察した結果、重合性成分添加前と比べて粒子径が増大しており、これによりポリシロキサン粒子が重合性成分を吸収している事を確認した。
【0104】
重合性成分エマルションの添加から1時間後、重合性成分を吸収したポリシロキサン粒子分散液に水を1000部加え、窒素雰囲気下75℃に昇温して、30分間保持し、ラジカル重合を行った。
【0105】
ラジカル重合後、得られた乳濁液を自然沈降(デカンテーション)により固液分離して、得られたケーキをメタノールで洗浄した後、120℃で2時間真空乾燥して重合体微粒子‐1を得た。得られた重合体微粒子‐1の平均粒子径、変動係数およびその他の特性などを表1に併せて示す。
【0106】
(導電性微粒子の製造)
重合体微粒子‐1に無電解Niメッキを施した後、さらに無電解金メッキを施し、導電性微粒子‐1を得た。得られた導電性微粒子‐1をSEM(走査型電子顕微鏡)ならびにXMA(X線マイクロアナライザー)で観察したところ、導電性微粒子の表面はNiで被覆され、その上に金でめっき被覆されていた。
【0107】
実験例2
(ポリシロキサン粒子分散液‐2の調製)
25%アンモニア水の使用量を15部としたこと以外は実験例1と同様にしてポリシロキサン粒子分散液‐2を調製した(平均粒子径:2.53μm、変動係数:2.84%)。
【0108】
(重合性成分エマルション‐2の調製)
重合性成分として、2官能オリゴマー(新中村化学(株)製,NKエステルAPG‐700,重量平均分子量:808,水(25℃)に対する溶解度:0.008質量%)75部と、1,6‐へキサンジオールジメタクリレート45部を用いたこと以外は、実験例1と同様にして重合性成分エマルション‐2を調製した。
【0109】
(重合体微粒子‐2の調製)
ポリシロキサン粒子分散液‐2を30分攪拌した後、四つ口フラスコに備えられた滴下口から重合性成分エマルション‐2を15秒で添加した。重合性成分エマルションの添加からさらに30分間撹拌をおこなった後、ポリシロキサン粒子を顕微鏡で観察し、粒子径の増大によりポリシロキサン粒子が重合性成分を吸収している事を確認した。重合性成分エマルションの添加から1時間後、重合性成分を吸収したポリシロキサン粒子分散液に水を1000部加え、さらに反応液を窒素雰囲気下75℃に昇温して、75℃で30分間保持し、ラジカル重合を行った。
【0110】
その後、実験例1と同様にして重合体微粒子‐2を分離・洗浄した。得られた重合体微粒子‐2の平均粒子径、変動係数およびその他の特性などを表1に併せて示す。
【0111】
実験例3
(重合性成分エマルション‐3の調製)
重合性成分エマルションの重合性成分として、2官能オリゴマー(新中村化学(株)製,NKエステル 9PG,重量平均分子量:536,水(25℃)に対する溶解度:0.012質量%)100部と、n‐ブチルメタクリレート20部を用いた以外は実験例2と同様にして重合性成分エマルション‐3を調製した。
【0112】
(重合体微粒子‐3)
重合性成分エマルション‐3を用いたこと以外は、実験例2と同様にして重合体微粒子‐3を得た。得られた重合体微粒子‐3の平均粒子径、変動係数およびその他の特性などを表1に併せて示す。
【0113】
実験例4
(重合性成分エマルション‐4の調製)
重合性成分エマルションの重合性成分として、2官能オリゴマー(共栄社化学(株)製,ライトアクリレート PTMGA250,重量平均分子量:342,水(25℃)に対する溶解度:0.028質量%)60部と、スチレン60部を用いた以外は実験例1と同様にして重合性成分エマルション‐4を調製した。
【0114】
(重合体微粒子‐4の調製)
重合性成分エマルション‐4を用いたこと以外は実験例2と同様にして重合体微粒子‐4を得た。得られた重合体微粒子‐4の平均粒子径、変動係数およびその他の特性などを表1に併せて示す。
【0115】
実験例5
(ポリシロキサン粒子分散液‐3の調製)
ポリシロキサン粒子分散液の調製に、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの代わりにフェニルトリメトキシシラン30部を用いたこと以外は実験例2と同様にしてポリシロキサン粒子分散液‐3を得た(平均粒子径:2.33μm、変動係数:3.34%)。
【0116】
(重合性成分エマルション‐5の調製)
重合性成分として、2官能オリゴマー(新中村化学(株)製,NKエステル 9PG)120部と、γ‐メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(MPDS)30部を用いた以外は実施例2と同様にして重合性成分エマルション‐5を得た。
【0117】
(重合体微粒子‐5の調製)
上述のようにして得られたポリシロキサン粒子分散液‐3および重合性成分エマルション‐5を用いて、実験例1と同様の方法で重合体微粒子‐5を調製した。得られた重合体微粒子‐5の平均粒子径、変動係数およびその他の特性などを表1に併せて示す。
【0118】
実験例6
(ポリシロキサン粒子分散液‐4の調製)
25%アンモニア水の使用量を4部としたこと以外は実験例1と同様にしてポリシロキサン分散液‐4を調製した(平均粒子径:5.08μm、変動係数:2.48%)。
【0119】
(重合性成分エマルション‐6の調製)
アニオン性乳化剤(第一工業製薬製、LA‐10)1.5部、水150部、重合性成分として2官能オリゴマー(日本化薬(株)製,KAYARAD HX‐220,重量平均分子量:540,水(25℃)に対する溶解度:0.01質量%)100部、1,9‐ノナンジオールジメタクリレート20部、およびラジカル重合開始剤として2,2’‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)1部を混合し、ホモジナイザーを用いて5分間乳化分散させて重合性成分エマルション‐6を調製した。
【0120】
(重合体微粒子‐6の調製)
上述のようにして得られたポリシロキサン粒子分散液‐4および重合性成分エマルション‐6を用いて、実験例1と同様の方法で重合体微粒子‐6を調製した。得られた重合体微粒子‐6の平均粒子径、変動係数およびその他の特性などを表1に併せて示す。
【0121】
実験例7
(ポリシロキサン粒子分散液‐5の調製)
γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの使用量を40部に変更したこと以外は、上記実験例1と同様にしてポリシロキサン粒子分散液‐5を調製した(平均粒子径:2.12μm,変動係数:3.27%)。
【0122】
(重合性成分エマルション‐7の調製)
重合性成分としてスチレン70部、ラジカル重合開始剤として2,2’‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)0.55部を用いたこと以外上記実験例1と同様にして重合性成分エマルション‐7を調製した。
【0123】
(重合体微粒子‐7の調製)
上述のようにして得られたポリシロキサン粒子分散液‐5および重合性成分エマルション‐7を用いて、実験例1と同様にして重合体微粒子‐7を調製した。得られた重合体微粒子‐7の平均粒子径、変動係数およびその他の特性などを表1に併せて示す。
【0124】
実験例8
(重合性成分エマルション‐8の調製)
重合性成分を、2官能オリゴマー(新中村化学(株)製,NKエステルA‐400,重量平均分子量:508,水(25℃)への溶解度:11.2質量%)90部と、n‐ブチルメタクリレート30部に変更した以外は上記実験例2と同様にして重合性成分エマルション‐8を調製した。
【0125】
(重合体微粒子‐8の調製)
ポリシロキサン分散液‐2と、重合性成分エマルション‐8を用いて、実験例1と同様の方法で重合性成分の吸収、ラジカル重合を行った。しかしながら、重合反応時に凝集が生じて、沈殿物が生成してしまい、粒子として単離することができなかった。
【0126】
実験例9
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコ内で、窒素気流下、イソプロパノール150部にポリビニルピロリドン(PVP,重量平均分子量Mw:3万)2部およびアゾビスメチルバレロニトリル1部を溶解させた溶液を撹件し、ここにスチレン15部を添加した。その後、混合液を600℃に昇温して24時間重合を行い、ポリスチレン粒子を得た(平均粒子径:5.1μm,変動係数:7.3%)。
【0127】
実験例10
(重合性成分エマルション‐10の調製)
重合性成分としてジビニルベンゼン(96%純度,新日鐵化学(株)製)を用いたこと以外は上記実験例2と同様にして重合性成分エマルション‐10を調製した。
【0128】
(重合体微粒子の調製)
重合性成分エマルション‐10を用いたこと以外は、実験例2と同様にして重合体微粒子を調製した。得られた重合体微粒子の平均粒子径、変動係数およびその他の特性などを表1に併せて示す。
【0129】
【表1】

【0130】
表1中、16HXは、1,6‐ヘキサンジオールジメタクリレート(分子量:254)、Stはスチレン(分子量:104)、BMAはn‐ブチルメタクリレート(分子量:142)、19NDは1,9‐ノナンジオールジメタクリレート(分子量:196)、DVBは、ジビニルベンゼン(分子量:130)をそれぞれ意味する。
【0131】
実験例1〜6の重合体微粒子は、重合性成分として25℃の水に対する溶解度が10質量%以下であり、且つ、重量平均分子量が300以上の2官能オリゴマーを使用した例であり、表1から、いずれの重合体微粒子も柔軟で、高い弾性を有するものであることがわかる。
【0132】
これに対して、実験例7〜10は、重合性成分として特定の2官能オリゴマーを用いなかった例である。実験例7は、スチレンのみを重合性成分として用いた例であり、1g荷重時の変異量(圧縮率)は大きいものの、硬く、圧縮変形回復率が低いものであった。実験例8は、重合性成分として使用した2官能オリゴマーの水への溶解度が高いため、重合性成分がポリシロキサン粒子内に十分に吸収されずに反応液中に残留し、その結果、ラジカル重合反応により生じた重合体とポリシロキサン粒子とが凝集してしまい、重合体微粒子として単離することができなかったものと考えられる。実験例9は、ポリシロキサン骨格を有さない有機質成分のみからなる重合体微粒子の例であり、低圧でも十分に変形し得る柔軟性は有するものの、圧縮変形回復率が低いものであった。実験例10は、重合性成分としてジビニルベンゼンのみを用いた例であり、このとき得られた重合体微粒子は、圧縮変形回復率は優れているものの、1g荷重時の変異量(圧縮率)が小さいものであった。
【0133】
これらの実験例より、本発明の製造方法によれば、重合体微粒子の粒子径の調整が容易にでき、また、粒子径が小さい場合であっても、粒度分布の狭い重合体微粒子を製造できることがわかる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル基を有するポリシロキサンと、25℃の水に対する溶解度が10質量%以下であり、かつ、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量(Mw)300以上の2官能オリゴマーを必須成分とする重合性成分を重合させて得られるものであることを特徴とする重合体微粒子。
【請求項2】
平均粒子径が1〜1000μm、Cv値が20%以下である請求項1に記載の重合体微粒子。
【請求項3】
前記重合体微粒子の直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)が2450N/mm2以上であり、圧縮変形回復率が15%以上である請求項1または2に記載の重合体微粒子。
【請求項4】
前記重合体微粒子の1g荷重時の変位量が該重合体微粒子の直径に対して30%以上であり、圧縮変形回復率が15%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の重合体微粒子。
【請求項5】
ビニル基を有するポリシロキサン粒子に、25℃の水に対する溶解度が10質量%以下であり、かつ、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量(Mw)300以上の2官能オリゴマーを必須成分とする重合性成分を水に乳化分散させた状態で前記ポリシロキサン粒子に加えて吸収させる吸収工程と、
前記吸収工程でポリシロキサン粒子内に吸収させた前記重合性成分を重合させる重合工程、
を含むことを特徴とする重合体微粒子の製造方法。
【請求項6】
ビニル基を有さないポリシロキサン粒子に、25℃の水に対する溶解度が10質量%以下であり、かつ、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量(Mw)300以上の2官能オリゴマーと、ビニル基および加水分解性シリル基を有する重合性モノマーとを必須成分とする重合性成分を水に乳化分散させた状態で前記ポリシロキサン粒子に加えて吸収させる吸収工程と、
前記吸収工程でポリシロキサン粒子内に吸収させた前記重合性成分を重合させる重合工程、
を含むことを特徴とする重合体微粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の重合体微粒子の表面に導体層が形成されていることを特徴とする導電性微粒子。


【公開番号】特開2006−117850(P2006−117850A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308808(P2004−308808)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】