説明

重合体微粒子の製造方法、コーティング組成物及び物品

【課題】溶媒、特に、非水系溶媒に対する分散性に優れ、低温でも容易に分散可能であり、少量で粘性付与効果が高く、コーティング組成物に良好な塗布性及び垂れ防止効果を付与可能な重合体微粒子を提供し、膜厚が厚い塗膜の形成や、垂直面への塗装に好適なコーティング組成物や、物品を提供する。
【解決手段】芳香族ビニルモノマー(a)を30〜60質量%、炭素数1〜12のアルコールでエステル化されたメタクリル酸アルキルエステル(b)を20〜80質量%、炭素数1〜12のアルコールでエステル化されたアクリル酸アルキルエステル(c)を2〜25質量%、多官能架橋性モノマー(d)を0.05〜0.5質量%((a)〜(d)の合計は100質量%。)の範囲で含むモノマーを重合し、噴霧乾燥により粉体化する重合体微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体微粒子の製造方法や、これを用いて得られるコーティング組成物や、これ用いて得られる塗膜を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティング組成物は、塗装時に流動性が高く塗布性が良好であり、塗膜形成後は流動性が低下し垂れが抑制できるように、垂れ防止剤(レオロジーコントロール剤)が用いられている。垂れ防止剤は、コーティング組成物に高剪断力が負荷される塗布時には高い流動性を付与し、塗膜形成後の負荷される剪断力が低いとき、低い流動性を付与する、いわゆるチキソ性(チキソトロピー性)を付与するものであり、特に、膜厚が厚い塗膜を形成したり、垂直面に塗装したりするコーティング組成物に適用されている。この垂れ防止剤として、乳化性ポリエチレンワックス、アミドワックス、有機変性クレイ、微粉末シリカ、水素添加ヒマシ油ワックス等が用いられている。
【0003】
乳化性ポリエチレンワックスは、微細なポリエチレン粒子にして沈降防止やレオロジー改良に効果を発揮している。しかしながら、有機媒体中に分散させたクリーム状あるいはペースト状で用いられるため、コーティング組成物に含有させる際の作業性が悪く、垂れ防止剤の充分な効果を得るためには適当な温度に加熱してコーティング組成物に分散させる必要がある。また、膜厚の厚い塗膜を形成する際には一般的に垂れ防止剤の効果が充分に得られない。
【0004】
アミドワックスは、微粉末で、あるいは有機媒体中において予め膨潤させたペースト状でコーティング組成物に用いられているが、乳化性ポリエチレンワックスと同様の問題を有する。有機変性クレイは固体粒子状又は粉末状であるが、微粉末シリカと同様に粉塵問題等作業性に問題があり、コーティング組成物において垂れ防止効果を高めるために添加量を多くすると、塗膜の耐水性が低下し、充分な垂れ防止効果が得られない場合がある。また、水素添加ヒマシ油ワックスは低温で分散させたコーティング組成物においては垂れ防止効果が不充分であり、高温で分散させると溶解し垂れ防止効果の低下と共に結晶粒子が発生する場合があり、コーティング組成物への分散はその適正温度範囲が狭く困難である。
【0005】
垂れ防止剤として、上塗り用クリアー塗料組成物に添加するための架橋微粒子(特許文献1、2)が開示されているが、有機溶剤に膨潤させずに安定的にコーティング組成物に分散させることを主眼においているため、上塗り用クリアー塗料組成物においては、使用する架橋剤の量が多く、塗料にチキソ性を付与する効果が充分に得られない場合がある。また、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを架橋成分とした架橋重合体微粒子及びその製法(特許文献3)が開示されているが、粉体化の方法が凝固又は共沸蒸留を用いているため、粒子の解砕性が低い粉体構造となり、溶剤への分散が不良となる場合がある。
【特許文献1】特開昭60−250068号公報
【特許文献2】特公平7−56014号公報
【特許文献3】特開昭62−101614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、溶媒、特に、芳香族系溶媒に対する分散性に優れ、低温でも容易に分散可能であり、少量で粘性付与効果が高く、コーティング組成物に良好な塗布性及び垂れ防止効果を付与可能な重合体微粒子の製造方法を提供し、膜厚が厚い塗膜の形成や、垂直面への塗装に好適なコーティング組成物や、物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有する重合体微粒子を分散したコーティング組成物が低温においても容易に分散可能であり少量で粘性付与効果が高く、塗布性、垂れ防止効果に優れることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、芳香族ビニルモノマー(a)を30〜60質量%、炭素数1〜12のアルコールでエステル化されたメタクリル酸アルキルエステル(b)を20〜80質量%、炭素数1〜12のアルコールでエステル化されたアクリル酸アルキルエステル(c)を2〜25質量%、多官能架橋性モノマー(d)を0.05〜0.5質量%((a)〜(d)の合計は100質量%。)の範囲で含むモノマーを重合し、噴霧乾燥により粉体化する重合体微粒子の製造方法に関する。
【0009】
また、本発明は、上記重合体微粒子の製造方法により製造される重合体微粒子と芳香族系有機溶媒とを含有するコーティング組成物や、これを塗布して得られる塗膜を有する物品に関する
【発明の効果】
【0010】
本発明の重合体微粒子の製造方法により製造される重合体微粒子は、溶媒、特に、芳香族系溶媒に対する分散性に優れ、低温でも容易に分散可能であり、少量で粘性付与効果が高く、コーティング組成物に良好な塗布性及び垂れ防止効果を付与可能である。本発明のコーティング組成物は、膜厚が厚い塗膜の形成や、垂直面への塗装用として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の重合体微粒子は、芳香族ビニルモノマー(a)を30〜60質量%、炭素数1〜12のアルコールでエステル化されたメタクリル酸アルキルエステル(b)を20〜80質量%、炭素数1〜12のアルコールでエステル化されたアクリル酸アルキルエステル(c)を2〜25質量%、多官能架橋性モノマー(d)を0.05〜0.5質量%((a)〜(d)の合計は100質量%。)の範囲で含むモノマーを重合し、噴霧乾燥により粉体化されて得られる。
【0012】
上記芳香族ビニルモノマー(a)としては、ビニル基を有する芳香族化合物であればいずれであってもよい。具体的には、スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチルー4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうち、スチレン、メチルスチレンは工業的に入手が容易であることから、好ましい。
【0013】
芳香族ビニルモノマー(a)は重合体微粒子を構成する全モノマーに対し、30〜60質量%含有される。30質量%以上にすることで重合体微粒子のガラス転移温度を上昇させることができ、粉体としての取扱い性が向上する。また、60質量%以下にすることで重合体微粒子の有機溶媒との親和性が向上し、充分に膨潤するようになる。
【0014】
上記メタクリル酸アルキルエステル(b)は、具体的には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート等の直鎖アルキルアルコールのメタクリレート;シクロヘキシルメタクリレート等の環式アルキルアルコールのメタクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうち、メチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等は、入手が容易であり、工業的実用化の点から好ましい。
【0015】
メタクリル酸アルキルエステル(b)は重合体微粒子を構成する全モノマーに対し、20〜80質量%用いられる。
【0016】
上記アクリル酸アルキルエステル(c)は、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート等の直鎖アルキルアルコールのアクリレート;シクロヘキシルアクリレート等の環式アルキルアルコールのアクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうち、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートは、入手が容易であり、工業的実用化の点から好ましい。
【0017】
アクリル酸アルキルエステル(c)は重合体微粒子を構成する全モノマーに対し、2〜25質量%含有される。
【0018】
上記多官能架橋性モノマー(d)は、架橋を形成し得る官能基を有するものであればいずれであってもよい。具体的には、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレートを挙げることができる。これらはそれぞれ分子量106〜8500、好ましくは400〜2000のポリエチレングリコールのエステルであることが好ましい。更に、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸でジエステル化若しくはトリエステル化したエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマーのジ(メタ)アクリレート、例えばグリセリン、ペンタエリトリトール等の多価アルコール、例えばトリアリルオキシエチレン、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルフタレート等のアリル基を2個以上有するモノマー、トリアリルアミン、テトラアリルエチレンジアミン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、分子量126〜4000のポリ(エチレングリコール)のポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ジビニルエチレン尿素等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらのうち、芳香族ビニルモノマー(a)と親和性が高く、工業的に入手が容易であることから、特に、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0019】
多官能架橋性モノマー(d)は重合体微粒子を構成する全モノマーに対し、0.05〜0.5質量%含有される。多官能架橋性モノマー(d)は重合体微粒子を構成する全モノマーに対し、0.05質量%以上含有されることが、コーティング組成物において重合体微粒子が適度な膨潤状態を得るために好ましい。また、多官能架橋性モノマー(d)は重合体微粒子を構成する全モノマーに対し、0.5質量%以下で含有されることが、重合安定性に優れ、コーティング組成物において重合体微粒子が溶媒の膨潤性を得るために好ましく、0.3質量%以下で含有されることがより好ましい。
【0020】
上記重合体微粒子は、上記(a)〜(d)のモノマーを重合して得られるものであるが、上記(a)〜(d)のモノマーの他、これらのモノマーの機能を阻害しない範囲で他のモノマーを共重合して得られるものであってもよい。かかるモノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸2−サクシノロイルオキシエチル、メタクリル酸2−マレイノイルオキシエチル、メタクリル酸2−フタロイルオキシエチル、メタクリル酸2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル等のカルボキシル基含有不飽和単量体;アリルスルホン酸等のスルホン酸基含有不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイキシエチルアシッドフォスフェート等のリン酸基含有(メタ)アクリレート;アセトアセトキエチル(メタ)アクリレート等のカルボニル基含有(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のアクリルアミドおよびその誘導体等を挙げることができる。これらのうち、粘性付与能を有する酸基含有モノマーを用いることが好ましく、更に、工業的に入手が容易なことから、(メタ)アクリル酸を使用することが特に好ましい。
【0021】
上記重合体微粒子を構成する上記(a)〜(d)のモノマーは、これらの合計が100質量%となるように各モノマーを用い、これら以外の他のモノマーは(a)〜(d)のモノマー100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0022】
上記モノマーを重合する方法としては、乳化重合法、シード重合法、ソープフリー重合法、分散重合法、微細懸濁重合法等によることができる。
【0023】
また、上記重合体は、全体に亘って均一な組成を有する単一構造であってもよいが、シード粒子上に、異なる組成のコア層とシェル層を有するコアシェル構造、更にシェル層が複数層からなる三層以上の構造を有する多層構造や、中心部から表面へと組成が連続して変化するグラディエント型構造を有するものであってもよい。
【0024】
上記多層構造の重合体粒子を製造する方法としては、臨界ミセル濃度以下で単量体を重合してシード粒子を形成するソープフリー重合が好ましい。
【0025】
上記シード粒子の形成は、上記(b)、(c)の(メタ)アクリレート類の他、必要に応じて、酸基等の官能基を有する単量体等を分散媒に、臨界ミセル濃度以下の濃度で分散し、必要に応じて重合開始剤等を添加して、重合する。臨界ミセル濃度以下の濃度で重合することにより、比較的大きな粒子径のシード粒子を得ることができる。
【0026】
使用する分散媒としては、水等を挙げることができる。使用する重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムの過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドの有機過酸化物;酸化剤と還元剤との組み合わせによるレドックス重合開始剤等を挙げることができる。
【0027】
得られたシード粒子の存在下で、コアを形成する(a)〜(d)のモノマーを添加し重合反応を行い、その後、シェルを形成する(a)〜(d)のモノマーを添加し重合反応を、順次反復して行うことにより、多層構造の粒子を形成することができる。(a)〜(d)の各モノマーは多層構造の粒子全体において、上記の含有割合で含有されていればよい。
【0028】
これらの重合により重合体微粒子の分散液を得て、これを噴霧乾燥(スプレードライ法)し分散媒を除去して重合体微粒子を得る。スプレードライ法による粒子は、重合で得られた一次粒子が多数集合した二次粒子やそれ以上の高次構造の凝集粒子であってもよいが、コーティング組成物の製造時に、溶媒との混練時にかかる剪断でこれら凝集状態が破壊され一次粒子が微細に均一分散されるように、一次粒子同士が強固に結合せず緩く凝集している状態が好ましい。重合体微粒子の分散性が良好であると、低温においてもコーティング組成物へ容易に分散させることができる。
【0029】
重合体微粒子の一次粒子径は300nm以上であることが好ましい。一次粒子径が300nm以上であれば、得られるコーティング組成物において低せん断速度における粘度が低下する傾向があるため、好ましい。
【0030】
ここで平均粒子径は、透過率が75〜95%の範囲内になるように調製した重合体微粒子の水分散体中の、体積平均一次粒子径及び個数一次粒子径を、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−920)を用いて測定した値を採用することができる。
【0031】
本発明のコーティング組成物は、上記重合体微粒子と有機溶媒とを含有するものである。
【0032】
使用する有機溶媒としては、芳香族系有機溶媒または芳香族系/脂肪族混合系有機溶媒が好ましい。具体的には、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族及び環状脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、「ソルベッソ100」〔エクソンモービル(有)製〕等の各種の芳香族系炭化水素溶媒;「LAWS」、「HAWS」〔いずれも、シェルケミカルズジャパン(株)製〕、「エクソンナフサNo.6」〔エクソンモービル(有)製〕等の各種の芳香族・脂肪族混合系炭化水素溶媒、塩素化炭化水素系、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系、メチルセロソルブ等のアルコール―エーテル系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン系、ジエチレングリコール、メタノール、エタノール等のアルコール―グリコール系、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒等を挙げることができる。上記重合体微粒子を容易に膨潤させることができる点で芳香族系有機溶媒または芳香族・脂肪族混合系炭化水素溶媒が好ましい。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上の溶媒を組み合わせて用いる場合、用いる有機溶媒のうち、5質量%以上が芳香族有機溶媒であることが好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。また、水に溶解するアルコール等は水との混合溶媒として用いることもできる。
【0033】
コーティング組成物中の上記重合体微粒子の濃度としては、使用方法、目的とする塗膜によって適宜選択することができるが、例えば、0.1質量%〜20質量%を挙げることができる。
【0034】
コーティング組成物には、上記重合体微粒子の機能を阻害しない範囲で他の添加剤や、樹脂等を含有させることもできる。具体的には、充填材、紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤、酸化防止剤、顔料分散剤、レベリング剤、硬化促進剤等の添加剤や、他の機能を負荷するため、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の他の樹脂又は高分子化合物のうち相溶性のあるものを挙げることができる。
【0035】
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、バライタ、クレー、コロイダルシリカ、マイカ粉、珪砂、珪藻土、カオリン、タルク、ベントナイト、ガラス粉末、酸化アルミニウム等の無機フィラー類が挙げられる。顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。充填材及び顔料は、重合体微粒子、有機溶媒、その他の添加成分からなるコーティング組成物中5〜50質量%配合することが好ましく、有機溶媒は重合体微粒子100質量部に対して100〜5000質量部配合することが好ましい。
【0036】
本発明の物品は、上記コーティング組成物を塗布して得られる塗膜を有する物品である。
【0037】
コーティング組成物を塗布して塗膜を形成する物品の材質としては、プラスチック、木材、紙、繊維製品、金属、コンクリート、鉱物等いずれであってもよく、防錆処理等が施されていてもよい。塗膜を形成する塗布方法としては、スプレー塗布、ローラー塗布、刷毛塗布、ブレード塗布、浸漬塗布等、物品の材質等により適宜選択することができる。塗布後、必要に応じて、例えば、常温〜200℃、1分〜100時間の加熱を行うこともできる。
【0038】
形成する塗膜の厚さとしては、例えば、一回塗りで20μm〜200μmを挙げることができる。塗膜の厚さが20μm以上であれば、塗膜の機能を発揮することができる。塗膜の厚さが200μm以下であれば、垂直面であっても垂れが抑制された塗膜を形成することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について実施例を用いて詳述するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
[重合体微粒子A1の合成]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗及び冷却管を装備した5リットルの4つ口フラスコに、純水1332gを入れ、60分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、メチルメタクリレート(MMA)60.7g及びイソブチルメタクリレート(IBMA)42.8gを入れ、180rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、90gの純水に溶解した過硫酸カリウム3.60gを一度に添加し、ソープフリー重合を開始した。そのまま80℃にて攪拌を60分継続し、シード粒子分散液を得た。
【0041】
引き続きこのシード粒子分散液に対して、モノマー乳化液(スチレン(St)867.6g、2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)324.0g、イソブチルメタクリレート608.4g、メタクリル酸(MAA)25.2g、ジビニルベンゼン(DVB、新日鐵化学社製、純度57%)3.6g、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王(株)製、商品名:ペレックスO−TP)9.0g及び純水1440gを混合攪拌して乳化したもの)を6時間かけて滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続し、重合体分散液を得た。
【0042】
得られた重合体分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大川原化工機(株)製、L−8型)を用いて、入口温度130℃、出口温度55℃、アトマイザ回転数20000rpmにて噴霧乾燥し、重合体微粒子A1を得た。
【0043】
[分散液の調製]
有機溶媒としてキシレン1233質量部と重合体微粒子A1 100質量部をガラス製容器に投入し、ホモディスパーにて1000rpmで混合攪拌し分散液を得た。得られた分散液を一日放置した。
【0044】
[粘度]
分散液調製後一日後に以下の方法により粘度を測定し、評価した。Brookfield型粘度計(東機産業(株)製、BH型粘度計、6号ローター)を用いて、測定温度25℃、
回転数2rpm及び20rpmにて粘度を測定した。回転数20rpmのときの粘度の測定値を分散液の粘度として以下の基準で評価した。また、回転数2rpmのときの粘度の測定値を回転数20rpmのときの粘度の測定値で除して得られた値をチキソ性の指標として、以下の基準により評価した。結果を表2に示す。
[20rpmにおける粘度]
◎:8000mPa・s未満
○:8000mPa・s以上12000mPa・s未満
×:12000mPa・s以上
[2rpm/20rpm]
◎:6.0以上
○:4.0以上6.0未満
×:4.0未満。
【0045】
[実施例2、3、比較例1〜5]
使用した単量体を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして重合体微粒子A2〜A7を得、分散液を調製し、粘度を測定し、評価した。結果を表2に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
結果より、本発明の重合体微粒子においては、高剪断時は低粘度であり、低剪断時は高粘度であることから、コーティング組成物の粘性付与剤として優れたものであることは明らかであり、工業的意義は著大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニルモノマー(a)を30〜60質量%、炭素数1〜12のアルコールでエステル化されたメタクリル酸アルキルエステル(b)を20〜80質量%、炭素数1〜12のアルコールでエステル化されたアクリル酸アルキルエステル(c)を2〜25質量%、多官能架橋性モノマー(d)を0.05〜0.5質量%((a)〜(d)の合計は100質量%。)の範囲で含むモノマーを重合し、噴霧乾燥により粉体化する重合体微粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の重合体微粒子の製造方法により製造される重合体微粒子と芳香族系有機溶媒とを含有するコーティング組成物。
【請求項3】
請求項2記載のコーティング組成物を塗布して得られる塗膜を有する物品。

【公開番号】特開2010−59390(P2010−59390A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327722(P2008−327722)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】