説明

重合体活性剤を含む義歯接着剤及びその調製方法

【課題】高められた接着性能、及び低い滲出及び食物閉じ込め発生率を示す義歯接着剤組成物の提供。
【解決手段】義歯接着性に有効量の義歯接着性塩と、薬理学的に容認されるその担体と、義歯接着剤組成物の総重量の約3重量パーセントまでの量の重合体活性剤と、を含む義歯接着剤組成物。前記重合体活性剤が低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸コポリマーであり、前記義歯接着性塩がマレイン酸若しくは無水物とアルキルビニルエーテルとのコポリマーの混合部分塩であり、前記塩のカチオンがナトリウム、亜鉛及びマグネシウムイオンからなる群より選ばれるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は重合酸等の重合体活性剤を含む義歯接着剤、及び重合体活性剤の添加によって義歯接着剤製品を改良する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
義歯は欠損した歯の代替物であり、口腔内の全部又は若干の歯の置換物として役立つ。歯科医及び歯科技工士の熱心な努力にもかかわらず、義歯は必ずしも完全には適合しない。よく適合していた義歯でさえ、時が経つにつれて、歯肉又は粘液組織の自然の収縮及び変化のためによく適合しなくなることがある。そのため、粘着性クリーム、液又は粉末を用いて義歯を口腔内に固定することが多い。
【0003】
義歯固定組成物の所望特性は多数ある。特に所望の一特性は、それが唾液と接触した際に高度の粘着性を生じ、そのため義歯を口腔内に置くとすぐにその義歯が固定されることである。義歯を正しい場所に効果的にシールするために粘漿剤を義歯−粘膜界面に塗り広げ、上記粘漿剤が、そのシールを破る程の、従って上記義歯をずらす程の咀嚼の応力に耐え得る十分な粘着強度を有することも非常に望まれる。義歯固定剤は、コーヒーや他の熱い飲み物などを飲む等の一般的行為中に口腔内に起きる極端な環境変化のもとでも十分な耐変質性を示さなければならない。もちろん、義歯装着者が洗浄及びメンテナンスのために義歯を取り外せるように、上記接着剤は剥離可能でなければならない。義歯接着剤は一般にクリーム、ライナー又はストリップ、液又は粉末として販売されており、多くの例が当業者には知られている。
【0004】
初期の義歯接着剤は細かく粉砕した天然ゴム粒子を含んでおり、それは水で濡らすと粘稠なゲルになり、義歯床と歯肉組織との間のクッション及び接着剤として作用した。しかしこれらの義歯接着剤は重合体義歯接着剤に取って代わられる傾向にある。
【0005】
例えば米国特許第3,003,988号は、歯科用固定剤が低級アルキルビニルエーテル−無水マレイン酸型コポリマーのカルシウムカチオン及びアルカリ若しくは第四アンモニウムカチオンを含む混合部分塩である歯科用固定剤組成物を記載している。この混合塩コポリマーは水不溶性であるが水に敏感なコポリマーであると述べられている。
【0006】
米国特許第3,736,274号は、低級アルキルビニルエーテル−無水マレイン酸重合材料、重合N−ビニルラクタム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む歯科用固定組成物を教示している。カルボキシメチルセルロースは、低級アルキルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマー−N−ビニルラクタム錯化合物が水中に置かれた際に完全に沈殿するのを阻止する。
【0007】
米国特許第3,868,432号は、アクリルアミドとアニオン性合成ゴム成分(これはマレイン酸とビニル低級アルキルエーテルとのコポリマーでもよい)とのコポリマーの混合物である無水義歯接着剤組成物を教示している。
【0008】
米国特許第4,373,036号は、ヒドロキシプロピルセルロース及び部分的中和され任意に架橋されたポリアクリル酸若しくはその前駆体の組み合わせ、又はマレイン酸若しくはその無水物と任意に部分的架橋されたアルキルビニルエーテルとの部分的中和されたコポリマー類若しくはそれらの前駆体の組み合わせ、及び/又はポリエチレンオキシドを含む義歯固定組成物を開示している。
【0009】
米国特許第4,521,551号は、義歯固定賦形剤、及び義歯固定剤として水溶性で部分的中和されたアルキルビニルエーテル−マレイン酸若しくはその無水物コポリマー(任意に部分的架橋されている)、及び少なくとも1種類の親水性ポリマー、好適にはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレンオキシド若しくはヒドロキシプロピル糖を含む義歯固定組成物を開示している。
【0010】
米国特許第4,758,630号は低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸コポリマー類の亜鉛及びストロンチウム部分塩を含む義歯接着剤を開示している。ここで、亜鉛及びストロンチウムカチオンは上記コポリマー塩の他のいかなるカチオン類又はエステル官能基とも混合せず、残ったの最初のカルボキシル基は反応しない。
【0011】
米国特許第5,006,571号は、メチルビニルエーテル−マレイン酸の混合Na/Ca塩、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、及び三価カチオンを含む実質的に無水の混合物を含む義歯接着剤を開示している。ジヒドロキシアルミニウムナトリウムカーボネートが上記三価カチオンの源となり得る。ジヒドロキシアルミニウムナトリウムカーボネートは上記三価カチオンの源であるが、この場合上記組成物からアルミニウムの放出を促進するために食品級の酸を加えなければならない。これらの酸の例はクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、及びフマル酸を含む。上記酸は上記義歯接着剤組成物重量の約4重量%まで含まれ得る。その他に保存剤として安息香酸又はソルビン酸を上記義歯接着剤中に含むことができる。
【0012】
米国特許第5,525,652号及び米国特許出願第08/635,782号は義歯接着剤組成物の処方に混合コポリマー酸塩類の使用を開示している。好適には、上記塩類はCa/Na又はCa/Kの混合塩であり、最も好適にはそれらは部分的Zn/Mg塩及びNa/Zn/Mg塩である。これらの各開示は参考として本明細書に組み込まれる。
【0013】
米国特許第5,093,387号も、義歯接着剤組成物中に保存剤として安息香酸及びソルビン酸を総義歯接着剤組成物の約0.03から約0.6重量%の量にて使用できると開示している。
【0014】
上に論じた義歯接着剤組成物の各々は他の義歯接着剤と比較して若干の利点及び欠点を有する。より良い義歯接着性材料の探索が続けられているが、より良い保持性、より長い保持性、及びより良い感覚受容性特性を有する義歯接着剤が常に望まれている。
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
高められた接着性能及び低い滲出(oozing)及び低い食物閉じ込め(occlusion)発生率を示す新しい改良義歯固定剤を提供することが本発明の目的である。
【0016】
本発明のこの目的及びその他の目的は下記の詳細な説明から当業者には明らかとなる。
【0017】
本発明は義歯接着剤組成物の総重量の約3重量%までの量にて重合体活性剤を含む義歯接着剤組成物を提供する。
【0018】
本発明は更に、義歯接着剤組成物の総重量の約3重量%までの重合体活性剤を含む混合物を調製し、前記混合物を含む義歯接着剤組成物を生成し、前記義歯接着剤組成物を回収することを含む義歯接着剤組成物の調製方法をも提供する。
【0019】
本発明は更に、義歯接着剤組成物の接着性をより大きくし、滲出をより少なくする方法であって、前記義歯接着剤組成物に前記義歯接着剤組成物の総重量の約3重量%までの量にて重合体活性剤を加えることを含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の詳細な説明
非常に優れた性能を有する新規の義歯接着性基礎組成物が発見された。より詳細には、本発明の義歯接着剤は滲出を減少し、接着性能を高め、食物閉じ込めの発生を減少し、製品機能に対する消費者の信頼をより高める。
【0021】
本発明の義歯固定組成物は粉末、液体及びクリームの形で処方でき、唾液と接触すると高い粘着強度を有する粘着物及び均質粘稠粘漿剤となり、義歯−粘膜界面上に塗り広げると優れた義歯安定化特性をもたらす。上記組成物は義歯固定剤を賦形剤と共に含む。典型的賦形剤はワックス及びオイルを含む。義歯接着剤にしばしば含まれるその他の材料は芳香剤、甘味料、粘度調節剤、着色料、保存剤及び濃化剤である。その他の水溶性ポリマー類、キサンタンゴム、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルグアー等も最終的義歯接着剤組成物の一部を形成することができる。石油、鉱油、植物油等のビヒクルはクリーム型処方の一部を形成することができ、シリカ、タルク、無水リン酸二カルシウム等の無毒性凝結防止剤も存在し得る。上記組成物は所望によりその他の公知の義歯固定剤も含むことができる。
【0022】
いかなる公知の義歯接着剤も使用できるが、上記組成物に用いられる好適義歯接着剤はマレイン酸若しくは無水マレイン酸とアルキルビニルエーテルとのコポリマーの部分塩である。好適には、上記アルキル基は約1から約5個の炭素原子を有するが、より好適なコポリマーはメチルビニルエーテルを含む。当業者には公知のように、このようなコポリマー類の分子量は上記コポリマーの特性に影響を与え、ひいては上記コポリマーを含む義歯接着剤の特性にも影響を与える。ポリマー類は一般には正確な分子量をもたない。むしろ、ポリマー類はそれぞれ異なる分子量を有するポリマー分子群として作成される。ポリマーの「平均」分子量を測定する一方法は、特定の条件下でその比粘度を測定することである。本発明の好適コポリマーは概して少なくとも約1.5の比粘度(25℃で、メチルエチルケトンの1重量/容量(w/v)%溶液として測定)を有する。より好適には、比粘度は少なくとも約2.5である。
【0023】
本発明の好適コポリマーは概してその部分塩として用いられる。無水マレイン酸基は加水分解されて対応するジカルボン酸を形成し、それはそれで金属化合物と反応し、その金属化合物は上記コポリマー上のカルボン酸基を部分的に中和する。
【0024】
コポリマー鎖上のカルボン酸基の100%未満が中和されるのが好ましい。より好適には、上記金属化合物は上記コポリマーのカルボン酸基の約50%から約90%を中和し、最も好適には上記カルボン酸基の約65%から約75%を中和する。好適アルカリ性カチオンはナトリウム、亜鉛、カリウム、カルシウム及びマグネシウムを含む。好適には、上記塩類はカルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛及びジルコニウムの単独又は混合塩である。好適な2種類のカチオンの混合塩(“二重塩(double salts)”)はカルシウム/ナトリウム、カルシウム/マグネシウム、カルシウム/亜鉛、ナトリウム/亜鉛、カリウム/亜鉛、ナトリウム/マグネシウム、カリウム/マグネシウム又はカルシウム/カリウム塩を含み、最も好ましくは部分亜鉛/マグネシウム塩である。好適な3種類のカチオンの「三重塩(triple salts)」はカルシウム/ナトリウム/亜鉛及びナトリウム/亜鉛/マグネシウム塩類である。好適接着剤のより詳細な説明が前記の米国特許第5,525,652号及び出願第08/635,782号に見いだされる。一般に接着性活性材料は組成物の約15から60%、好適には約25から55%である。
【0025】
本発明に有用な油は、非制限的に、鉱油、コーン油、大豆油、綿実油、ヒマシ油、ヤシ油及びココナツ油等の植物油、及び魚油等の動物油を含む。概して総義歯接着剤組成物の約1から30重量%の量の油が使用でき、約10から約25%の量が好ましい。
【0026】
鉱油ビヒクルを用いる際にはポリエチレンをゲル化剤として任意に用い、「合成ペトロラタム」ビヒクルを得ることができる。こうしてポリエチレンは最終的組成物の押出特性を調節するために用いられる。ポリイソブチレンもポリエチレンと組み合わせて用いられ、上記ビヒクルの粘性を更に高める。或いは、最終製品に所望される特定の取扱適性に応じて、保存ペトロラタムを鉱油と共に、又は鉱油なしで用いてもよい。特に好ましい組み合わせは、義歯接着剤組成物の約10から約40重量%のペトロラタム及び約5から約30重量%の軽鉱油又は重鉱油の使用を含み、クリーム状の粘度(コンシステンス)を有する容易に押出し可能な組成物を得る。より好ましい組み合わせは義歯接着剤組成物の約20から約30重量%のペトロラタム、及び約10から約20重量%の軽鉱油又は重鉱油の使用を含む。
【0027】
ワックス類は義歯接着剤の調製中にペトロラタムに加えてもよいし、ペトロラタムプレミックスを形成してもよい。このようなワックス類はこれに限定するものではないが、微晶質ワックスを含む天然又は合成ワックス類とし得る。使用する際には概ね総義歯接着剤組成物の約1から約25重量%の量を使用でき、約10%から約25%が好ましい。
【0028】
本発明において有用な着色剤は二酸化チタン等の顔料を含み、食品、薬品及び化粧品における使用に適した染料のレーキ類も含むことができる。これらの着色剤はD&C染料として知られている。2種類の好適着色剤はD&CレッドNo.7及びD&CレッドNo.30のレーキ類である。
【0029】
ヒュームドシリカも接着剤のための濃化剤として用いることができる。細かい白色粉末であるヒュームドシリカは、四塩化ケイ素を水素−酸素炉中で燃焼することによって作られるシリカ(二酸化ケイ素、SiO2)のコロイド型である。本発明の組成物に用いるヒュームドシリカの量は約0.7%から約2%までの範囲でよい。その量は重要である。なぜならば2%以上では、クリーム状接着剤はチューブからかなり押出し難しくなり、高温におけるクリームの安定性が問題になるほど粘度が増加することがわかったからである。
【0030】
本発明の歯科用接着剤組成物は、当業者にはメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等として知られている水溶性セルロースポリマーを更に含むことができる。上記セルロースポリマー、好適にはカルボキシメチルセルロースナトリウムは、湿潤すると水和し、粘着物又はゴム状物になり、そのため歯科用接着剤組成物に付加的接着機能を提供する。カルボキシメチルセルロースゴムは水溶性、アニオン性長鎖ポリマーであり、その特性は各セルロース分子中のアンヒドログルコース単位あたり置換されているカルボキシメチル基の数に依存して若干変化する。これらのセルロースポリマー類は上記歯科用接着剤組成物の約15%から約35%、より好適には約17%から約28%を構成する。
【0031】
本発明の活性剤は重合体活性剤である。用語「重合体」は、普通は数百、又は数千の反復モノマー単位を有する物質を意味するが、ここに用いる用語「重合体」は約7個より多い炭素原子を含む物質であって約5個より多い炭素原子の炭素「主鎖」を有する物質を包含するものとする。従って、例えば6個の炭素原子と、5個の炭素原子の「主鎖」(末端カルボン酸基を含む)を有するクエン酸は本発明の範囲内ではない。好適には、活性剤はより伝統的なポリマー類、例えば比較的短い鎖の樹脂及びより長いポリマー類、コポリマー類、グラフト−若しくはブロックコポリマー類、及び線状若しくは網目構造ポリマー類などを含む。そのような材料は自然に存在するか若しくは誘導するか、又は完全に人工のものであってもよい。好適材料はキレート化重合酸及び塩類を含む。好適なキレート化酸類及び塩類は、ジカルボキシル材料のコポリマー類、例えばメチル−ビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー類及びアクリル酸/マレイン酸コポリマー類などである。
【0032】
好適重合体活性剤は、低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸コポリマー等の、重合酸又は塩である。この重合酸は実質的には次の反復構造単位からなる:
【0033】
−CH2−CHOR−CHCOOH−CHCOOH−
【0034】
上記式中、Rは炭素原子1から4のアルキル基を示し、好適にはメチルである。
【0035】
低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸ポリマー類は、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ジビニルエーテル、プロピルビニルエーテル及びイソブチルビニルエーテル等の低級アルキルビニルエーテルモノマーを無水マレイン酸と重合することによって容易に得られ、対応する低級アルキルビニルエーテル−無水マレイン酸ポリマーを与える。これは容易に加水分解されて酸ポリマーになる。無水物及び酸型の両方共、工業製造者から入手できる。例えばISPコーポレーションは重合遊離酸型及び対応する無水物型の両方を「GANTREZ」なる商標にて、それぞれ「GANTREZ S シリーズ」及び「GANTREZ AN シリーズ」として提供する。ダイセル(Daicel)も無水物型を商標「VEMA」として提供する。GANTREZ S−97酸は特に適している。無水物ポリマーが水に溶解すると、無水物結合が切断され、極性の高い重合遊離酸が形成される。よって、酸型より相対的に安価な無水物型を便利でより安価な酸前駆体として使用することができる。無水物から酸への加水分解速度を高めるために、高めた温度を用いるのが好都合であろう。
【0036】
驚くべきことに、我々は幾つかの他の重合酸が本発明に有用であることを証明することができなかった。例えば、アルギン酸(又はその塩)(ポリマンヌロン酸としても知られている)は本発明に有益であるようにはみえない。アルギン酸は市販されており、α−(1−4)−D−マンノシルウロン酸及びα−(1−4)−L−グロシルウロン酸残基の線状ポリマーであり、その相対比は植物源及びその植物の成熟度によって変化する。
【0037】
その上、義歯接着剤のその他の酸又は酸塩付加物、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(「CMC」)等は、本発明の範囲内の活性剤として作用するようにはみえない。よって、カーボポル(Carbopol)のような非キレート化ポリアクリル酸も有効に作用することは期待できない。
【0038】
上記活性剤のための好適塩カチオンは、無毒性カチオン類、好適にはナトリウム又はカリウムカチオンを含む。
【0039】
一実施態様において、本発明は義歯接着剤組成物の総重量の約5重量%までの量にて重合体活性剤を含む義歯接着剤組成物を提供する。本発明の組成物に重合体活性剤が含まれていない場合、請求の発明の組成物から得られるような大きい効果を示さない組成物が作られる。これは驚くべき結果である。なぜならば上述したように、義歯接着剤はすでに重合酸塩を部分塩の一部として含んでいるかも知れないからである。しかし、本発明の義歯接着剤は遊離重合体活性剤の添加で改良された効果を示す。
【0040】
好適には、重合体活性剤は上記義歯接着剤組成物の総重量の約5重量%までの量にて存在する。より好適には、上記重合酸は上記義歯接着剤組成物の総重量の約0.1から約1.5重量%、最も好適には約1重量%の量にて存在する。
【0041】
本発明の好適実施態様において、義歯接着剤組成物は低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸のMg/Zn/Na又はCa/Na又はCa/Zn部分塩及び低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸コポリマーを含む。ここで低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸は上記義歯接着剤組成物の総重量の約3重量%までの量にて存在する。より好適には、低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸は義歯接着剤組成物の総重量の約0.1%から約1.5%、最も好適には約1重量%の量にて存在し、そして低級アルキル基はメチルである。その他の好適コポリマー類は、アクリル/マレイン酸若しくは無水物コポリマーを含む。
【0042】
本発明は、義歯接着剤組成物の総重量の約3重量%までの量の重合体活性剤を含む混合物を調製し、上記混合物を含む義歯接着剤組成物を形成し、上記義歯接着剤組成物を回収することを含む義歯接着剤組成物の調製方法も提供する。
【0043】
好適には、重合体活性剤は調製すべき義歯接着剤組成物の総重量の約0.1から約1.5重量%の量にて存在する。より好適には、重合体活性剤は調製すべき義歯接着組成物の総重量の約1重量%にて存在する。
【0044】
本発明は更に、低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸のMg/Zn/Na又はCa/Na又はCa/Zn部分塩のいずれか、及び低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸を含む混合物を調製し、ここで上記低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸は上記義歯接着剤組成物の総重量の約3重量%までの量にて存在し、上記混合物を含む義歯接着剤組成物を形成し、前記義歯接着組成物を回収することを含む義歯接着剤組成物の調製方法も提供する。
【0045】
好適には、低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸は上記義歯接着剤組成物の総重量の約0.1から約1.5重量%にて存在する。より好適には、低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸は上記義歯接着剤組成物の総重量の約1重量%の量にて存在する。
【0046】
上記義歯接着剤組成物の調製方法は、上記成分類を均質混合物が得られるまで混合し、生成産物を回収するというやり方で好都合に行われる。好適には、基礎組成物を予め混合した組成物として調製し、これを残りの使用成分と混合して最終組成物を調製することができる。混合は混合すべき諸成分を適切に溶融できる温度で行うのが好都合である。例えば、ポリエチレン及び鉱油を用いるならば、このような材料を約90℃から95℃までの温度に加熱することができ、好適には、重合酸や着色剤等の他の諸成分と混合する前に冷却する。
【0047】
本発明は、義歯接着剤組成物の接着性をより大きくし、滲出をより少なくする方法であって、上記義歯接着剤組成物に上記義歯接着性基剤の総重量の約3重量%までの量にて重合体活性剤を加えることを含む方法も提供する。上記重合体活性剤は任意に微分割粉型である。
【0048】
好適には、重合体活性剤は上記義歯接着剤組成物の総重量の約0.1から約1.5重量%の量にて加えられる。より好適には上記義歯接着剤組成物の総重量の約1重量%の量にて重合酸が加えられる。
【0049】
任意に、上記重合体活性剤が加えられる上記接着性基礎組成物はキレート化重合酸の混合部分塩を含む。混合塩はCa/Na塩のような二重塩でもMg/Zn/Na低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸部分塩のような三重塩でもよい。
【0050】
粉末、液体又はクリーム状のいずれとして処方されるにせよ、本発明の義歯接着剤組成物は湿った義歯に適用したり水にさらした際には水和して接着剤組成物を形成する。
【0051】
本発明を更に詳しく説明するために、種々の例証的例を以下に示す。これらの例、並びに明細書及び請求の範囲を通して、全ての部分及びパーセンテージは特に指示がなければ重量によるものであり、全ての温度は℃(セ氏)である。
【0052】
例1
本例は本発明による義歯接着剤組成物の調製を示す。
【0053】
クリーム型義歯接着剤は下記をホバート(Hobart)型ミキサー中で一緒にして混合することによって調製した:
【0054】
【表1】

【0055】
ヒュームドシリカを70℃の鉱油中ペテロラタム分散系に少しづつ加える。ヒュームドシリカが均質に分散した後、GANTREZ塩を上記ミックスにゆっくりと加え、その後カルボキシメチルセルロースナトリウムを加える。GANTREZ塩及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを徹底的に混合した後、上記ミックスの温度を65℃に下げ、染料を加え、その後GANTREZ酸S−97(低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸ポリマー)を加える。接着剤を更に30分間混合し、それから室温まで冷やして取り出す。
【0056】
混合部分塩は次のようにして調製する。室温の精製水900.40gを、高速撹拌機を備えた主反応ケトルに装填した。無水MVE/MAコポリマー76.26gを連続的に撹拌しながら主混合ケトルに加える。室温の精製水250.11gを第二のケトルに装填し、NaOH3.91g、ZnO15.89g及びMgO3.94gをゆっくりと加えた。本明細書の例の成分として使用する全ての無機材料は、特に指示がない限り、NF又はUSPグレードの無水原材料である。第二のケトルをよく混合して均質スラリーを生成する。このスラリーを主反応ケトルに混合しながら加え、それから反応温度を85−90℃に高め、2時間その温度に保持する。生成した分散系を室温に冷やし、浅いステンレス鋼製乾燥トレーに注ぐ。そのトレーを70℃の熱風対流乾燥器中に18−20時間置くと乾燥塩が得られる。この例ではトレーを用いたが、ドラムドライヤーも使用できる。
【0057】
そして、乾燥Mg/Zn/Na GANTREZ塩は適切なミルによって粉砕し、#100メッシュ篩を通してふるう。生成粉末の1%溶液は約5から約7のpHを有する。この塩はMVE/MAコポリマーの10%Na/40%Zn/20%Mg塩である。
【0058】
例2(比較)
クリーム接着剤を、GANTREZ酸S−97の添加を省くことを除けば正確に例1と同様に調製する。
【0059】
試験すると、例1によって調製された義歯接着剤組成物は、例2の義歯接着剤組成物に優る高い接着性能、低い滲出及び低い食物閉じ込め発生率を与えた。
【0060】
例3
クリーム接着剤を、GANTREZ酸S−97の代わりにソカランC5(Sokalan C5)を用いることを除いて、正確に例1に示すように調製する。
【0061】
例4
クリーム接着剤を、それが0.5%GANTREZ酸S−97を含むことを除いて正確に例1に示すように調製する。
【0062】
材料、組成物及びプロセスの特定の例を記載し説明したが、本発明の最も広い態様の範囲内で種々の変化及び変更が行われ得ることは当業者には明らかである。ここに示す例及び特定の比率及び操作法は説明のみのためのものであることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
義歯接着性に有効量の義歯接着性塩と、薬理学的に容認されるその担体と、義歯接着剤組成物の総重量の約3重量パーセントまでの量の重合体活性剤と、を含む義歯接着剤組成物。
【請求項2】
前記重合体活性剤が前記義歯接着剤組成物の総重量の約0.1から約1.5重量%の量にて存在する請求項1記載の義歯接着剤組成物。
【請求項3】
前記重合体活性剤が低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸コポリマー又はその部分塩であり、前記重合体活性剤はキレート化重合酸及び無水物からなる群より選択される請求項1記載の義歯接着剤組成物。
【請求項4】
前記義歯接着性塩がマレイン酸とメチルビニルエーテルと少なくとも1つのカチオンとのコポリマー混合部分塩であり、前記カチオンの全てがナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛及びジルコニウムカチオンからなる群より選択され、前記カチオンの1つがナトリウムカチオンで、アルキル部分がメチルである請求項1記載の義歯接着剤組成物。
【請求項5】
前記重合体活性剤が低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸であり、前記義歯接着剤組成物の総重量の約0.1から約1.5重量%の量にて存在する請求項1記載の義歯接着剤組成物。
【請求項6】
義歯接着剤組成物の調製方法であって、
(a)前記義歯接着剤組成物の総重量の約3重量%までの量の重合体活性剤を含む混合物を調製し、
(b)前記混合物を含む義歯接着剤組成物を形成し、及び
(c)前記義歯接着剤組成物を回収する、
ことを含む方法。
【請求項7】
前記重合体活性剤が前記義歯接着剤組成物の総重量の約0.1から約1.5重量%の量にて存在する請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記重合体活性剤が低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸であり、前記義歯接着性塩がマレイン酸若しくは無水物とアルキルビニルエーテルとのコポリマーの混合部分塩であり、前記塩のカチオンが亜鉛及びマグネシウムイオンを含む請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記カチオンが更にナトリウムイオンを含み、前記アルキル部分がメチルである請求項6記載の方法。
【請求項10】
義歯接着剤組成物の接着性をより大きくし、滲出をより少なくする方法であって、前記義歯接着剤組成物に前記義歯接着剤組成物の総重量の約3重量%までの量の重合体活性剤を加えることを含む方法。
【請求項11】
前記重合体活性剤が前記義歯接着剤組成物の総重量の約0.1から約1.5重量%の量にて加えられ、前記重合体活性剤が低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸である請求項10記載の方法。
【請求項12】
義歯接着性塩がマレイン酸若しくは無水物とアルキルビニルエーテルとのコポリマーの混合部分塩であり、前記塩のカチオンが亜鉛及びマグネシウムイオンを含む請求項10記載の方法。

【公開番号】特開2008−174558(P2008−174558A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−15576(P2008−15576)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【分割の表示】特願平11−504524の分割
【原出願日】平成10年6月5日(1998.6.5)
【出願人】(300017382)ブロック ドラッグ カンパニー インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】