説明

重合体粒子、及びプレス成形用成形材料

【課題】BMCやSMCなどの成形材料に添加したときの混練性に優れ、また、添加量が少なくても良好な増粘効果を得ることができる重合体粒子、及びプレス成形用成形材料を提供する。
【解決手段】重合体粒子は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、架橋性モノマーとを含むモノマー混合物を重合して得られる重合体粒子であって、前記モノマー混合物が、前記架橋性モノマーを0.3〜1.0重量%含むものであり、架橋性モノマーが、炭素数が4以上であるα,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートであり、25℃でメタクリル酸メチルに対する24時間後の膨潤度が5〜8であり、且つ浸漬10分後から24時間後までの体積増加率が10%以下のものである。プレス成形用成形材料は、前記重合体粒子が配合されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体粒子、及びプレス成形用成形材料に関し、より詳細には、人工大理石などのアクリル系樹脂成形品の製造に用いるアクリル系プレス成形用成形材料に添加される添加剤として好適な重合体粒子、及び該重合体粒子が配合されたプレス成形用成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂は、耐候性、透明性、及び耐久性等の性能に優れており、アクリル系樹脂に無機充填材などを配合して加熱硬化して得られたアクリル系成形品は、いわゆるアクリル系人工大理石として台所カウンター、洗面化粧台、浴槽、あるいは建築用の内装材、外装材等に広く使用されている。
【0003】
このようなアクリル系成形品は、例えば、メタクリル酸メチルを含むアクリル系シラップと無機充填剤とを含む混合物を成形可能な粘度まで増粘させて、粘土状のバルクモールディングコンパウンド(BMC)又はシートモールディングコンパウンド(SMC)などのプレス成形用成形材料の形態にした後、プレス成形(加圧成形)する方法で製造されている。
【0004】
この製造工程において、プレス成形用成形材料を成形に必要な粘度まで増粘させるために、また、プレス成形時の体積収縮率を抑制するために、アクリル系樹脂粉末をアクリル系シラップと無機充填剤とを含む混合物に配合する方法が従来から提案されている。
【0005】
しかしながら、前記混合物をプレス成形が可能なレベルまで増粘させ、また、該増粘に要する熟成時間を短縮するためには、多量のアクリル系樹脂粉末を添加しなければならず、製造コストが高く付いてしまうという課題があった。そのため、多量に添加しなくても、所望の増粘効果が得られ、しかも増粘に要する熟成時間を短縮可能な機能を有するアクリル系樹脂粉末が要望されている。
【0006】
例えば、下記の特許文献1には、増粘時間が短く、取扱い性、成形性が良好なアクリル系プレミックスを得るために、アクリル系プレミックスに、嵩密度が0.1〜0.7g/mlの範囲であり、アマニ油に対する吸油量が60〜200ml/100gの範囲であり、メチルメタクリレートに対する膨潤度が16倍以上である非架橋重合体粒子を配合する技術が開示されている。
【0007】
また、下記の特許文献2には、加圧成形時の体積収縮率が低く、表面平滑性や光沢等の表面性に優れた成形品が得られるように、ラジカル硬化性樹脂組成物に、ビニル単量体に対する膨潤度が、常温常圧時より加熱加圧時の方が大きい架橋重合体粒子を配合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−265639号公報
【特許文献2】特開平10−316864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された非架橋重合体粉末を、アクリル系シラップと無機充填材とを含む混合物に添加すると、非架橋重合体粉末の膨潤度が大きいためか、アクリル系シラップ中のモノマーを吸収し過ぎてしまい、無機充填材などがすぐにダマになり、混練ムラが生じて、混練性が低下してしまうという課題があった。
【0010】
また、特許文献2に記載された架橋重合体粒子は、重合される単量体混合物100重量%における架橋性単量体の含有量が3〜60重量%の範囲内であることが好ましい形態となっており、粒子の架橋度が高いためか、アクリルシラップ70重量部に対して、重合体粒子を30重量部ほど添加しても、重合体粒子がアクリル系シラップ中のモノマーを吸収して混合物が増粘するまでに長い時間がかかってしまい、生産性を高めることが難しいという課題があった。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、BMCやSMCなどの成形材料に添加したときの混練性に優れ、また、添加する配合量が少なくても良好な増粘効果を得ることができる重合体粒子、及びプレス成形用成形材料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、架橋性モノマーとを含むモノマー混合物を重合して得られる重合体粒子において、架橋性モノマーとして、炭素数が4以上であるα,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートを用いて、重合体粒子のメタクリル酸メチル吸収時における膨潤度および膨潤体積の変化を適切なものとすることにより、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含む成形材料に添加したときに優れた混練性の成形材料が得られ、従来よりも添加量が少なくても良好な増粘性を発揮し、かつ、より短い熟成時間で良好な増粘性を発揮することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明に係る重合体粒子(1)は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、架橋性モノマーとを含むモノマー混合物を重合して得られる重合体粒子であって、前記モノマー混合物が、前記架橋性モノマーを0.3〜1.0重量%含むものであり、前記架橋性モノマーが、直鎖アルカンの炭素数が4以上であるα,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートであり、25℃でメタクリル酸メチルに浸漬したときの24時間浸漬後の膨潤度が5〜8であり、且つ25℃でメタクリル酸メチルに浸漬したときの10分間浸漬後から24時間浸漬後までの膨潤体積の増加率が10%以下のものであることを特徴としている。
【0014】
上記重合体粒子(1)によれば、前記モノマー混合物が前記架橋性モノマーを0.3〜1.0重量%含むものであるために架橋度合いが適切に調整されており、かつ、25℃でメタクリル酸メチルに浸漬したときの24時間浸漬後の膨潤度が5〜8であるので、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含む成形材料(例えば、人工大理石等の成形品を製造するのに用いられる、アクリル系シラップと無機充填材とを含むプレス成形用成形材料)に添加した場合において、前記重合体粒子が(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを吸収して膨潤する度合い(膨潤度)が適切な範囲となるため、成形材料中における他の成分(無機充填材など)との混練ムラが生じることなく、前記成形材料の混練性を良好なものにすることができる。また、前記重合体粒子は、直鎖アルカンの炭素数が4以上であるα,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートを架橋性モノマーとして用いて得られたものであり、25℃でメタクリル酸メチルに浸漬したときの24時間浸漬後の膨潤度が5以上であるので、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを吸収して膨潤する度合いが高い。そのため、前記成形材料に対して従来よりも少ない添加量で良好な増粘効果を発揮し、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含む成形材料に添加されたときに、ベタツキのない、取扱性に優れた成形材料を得ることができる。従って、成形材料の製品コストを抑えることができる。また、前記重合体粒子は、25℃でメタクリル酸メチルに浸漬したときの10分間浸漬後から24時間浸漬後までの膨潤体積の増加率が10%以下であるので、10分間浸漬後までの膨潤速度が速い。そのため、前記重合体粒子は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含む成形材料に添加されたときに、短い時間で良好な増粘効果を発揮する。従って、前記重合体粒子は、成形材料の生産性を高めることが可能となる。
【0015】
また、本発明の好ましい形態に係る重合体粒子(2)は、上記重合体粒子(1)において、前記モノマー混合物が、前記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを99〜99.7重量%含むものであることを特徴としている。
【0016】
上記重合体粒子(2)によれば、前記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが99〜99.7重量%、前記モノマー混合物に含まれているので、前記膨潤度が5〜8で、かつ前記膨潤体積の増加率が10%以下となる重合体粒子を容易に実現できる。
【0017】
また、本発明の好ましい形態に係る重合体粒子(3)は、上記重合体粒子(1)又は(2)において、前記α,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートが、直鎖アルカンの炭素数が6〜10であるα,ω−直鎖アルカンジオールジメタクリレートであることを特徴としている。
【0018】
上記重合体粒子(3)によれば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含む成形材料に添加されたときにより大きく膨潤して、より優れた増粘効果を発揮するので、より取扱性に優れた成形材料を得ることができる。
【0019】
また、本発明の好ましい形態に係る重合体粒子(4)は、上記重合体粒子(1)〜(3)のいずれか1つにおいて、平均粒子径が5〜30μmの範囲にあるものであることを特徴としている。
【0020】
上記重合体粒子(4)によれば、平均粒子径が5〜30μmの範囲にあるものであるので、成形材料に添加して成形された成形品の外観、特に光沢や表面平滑性を良好なものにすることができ、また、重合体粒子の取扱性も良好なものにすることができる。なお、ここでの平均粒子径とは、コールターカウンター法により測定した値である。
【0021】
また、本発明の好ましい形態に係る重合体粒子(5)は、上記重合体粒子(1)〜(4)のいずれか1つにおいて、前記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが、メタクリル酸メチルであることを特徴としている。
【0022】
上記重合体粒子(5)によれば、ベースモノマーとの屈折率を近いものにして成型品の透明性を高めることができる。
【0023】
また、本発明に係るプレス成形用成形材料は、上記重合体粒子(1)〜(5)のいずれが配合されていることを特徴としている。
【0024】
上記プレス成形用成形材料によれば、前記重合体粒子が配合されているので、前記成形材料中における他の成分(無機充填材など)との混練ムラが生じることなく、混練性が良好なものにすることができる。また、前記成形材料に対して従来よりも少ない上記重合体粒子の添加量で良好な増粘効果を発揮し、ベタツキのない、取扱性に優れた成形材料を実現することができる。従って、成形材料の製品コストを抑えることができる。また、短い時間で良好な増粘効果を発揮するので、成形材料の生産性を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、BMCやSMCなどの成形材料に添加したときの混練性に優れ、また、添加する配合量が少なくても良好な増粘効果を得ることができる重合体粒子、及びプレス成形用成形材料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る重合体粒子、及びプレス成形用成形材料の実施の形態を説明する。実施の形態に係る重合体粒子は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、架橋性モノマーとを含むモノマー混合物を重合して得られるものであり、前記モノマー混合物が、前記架橋性モノマーを0.3〜1.0重量%含むものであり、架橋性モノマーとして、直鎖アルカンの炭素数が4以上であるα,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートが用いられ、25℃でメタクリル酸メチルに浸漬したときの24時間浸漬後の膨潤度が5〜8であり、且つ25℃でメタクリル酸メチルに浸漬したときの10分間浸漬後から24時間浸漬後までの膨潤体積の増加率が10%以下のものである。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0027】
本発明に係る重合体粒子は、25℃でメタクリル酸メチルに浸漬したときの24時間浸漬後の膨潤度は6〜8であることがより好ましい。これにより、さらに少ない添加量で良好な増粘効果を発揮し、取扱性に優れた成形材料を得ることができる。
【0028】
本発明に係る重合体粒子は、25℃でメタクリル酸メチルに浸漬したときの10分間浸漬後から24時間浸漬後までの膨潤体積の増加率が5%以下であることがより好ましい。これにより、前記重合体粒子は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含む成形材料に添加されたときに、より短い時間で良好な増粘効果を発揮するので、成形材料の生産性をさらに高めることが可能となる。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸プロポキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸メトキシジエチレングリコール、アクリル酸エトキシジエチレングリコール、アクリル酸メトキシエチレングリコール、アクリル酸ブトキシトリエチレングリコール、アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、アクリル酸フェノキシテトラエチレングリコール、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ジシクロペンテニル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、アクリル酸N−ビニル−2−ピロリドン、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル、アクリル酸グリシジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸プロポキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸エトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシエチレングリコール、メタクリル酸ブトキシトリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシジプロピレングリコール、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸フェノキシジエチレングリコール、メタクリル酸フェノキシテトラエチレングリコール、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ジシクロペンテニル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリル酸N−ビニル−2−ピロリドン、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピルなどのメタクリル酸エステルが挙げられる。これらは1種又は複数種組み合わせて使用することができる。(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0030】
また、架橋性モノマーとしては、直鎖アルカンの炭素数が4以上であるα,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートが採用される。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、又はメタクリレートを意味する。
【0031】
直鎖アルカンの炭素数が4以上であるα,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,11−ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,13−トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,15−ペンタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16−ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種又は複数種組み合わせて使用することができる。
【0032】
なお、直鎖アルカンの炭素数が4以上であるα,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートとしては、(1) α,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)クリレートのうちで一般に市販されているのが直鎖アルカンの炭素数が10以下のものだけであり、製造コストの点から、
以下の一般式
【0033】
【化1】

【0034】
(上記式中、nは4〜10の整数を示す)
で表される化合物(直鎖アルカンの炭素数が4〜10であるα,ω−直鎖アルカンジオールジメタクリレート)、すなわち、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,7−ヘプタンジオールジメタクリレート、1,7−オクタンジオールジメタクリレート、1,8−オクタンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレートが好ましく、更に、重合体粒子を(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含む成形材料に添加したときに重合体粒子がより大きく膨潤してより優れた増粘効果を発揮する点から、直鎖アルカンの炭素数が6〜10であるα,ω−直鎖アルカンジオールジメタクリレートがより好ましい。
【0035】
なお、α,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートの製造方法としては、特に限定されないが、好ましくは、α,ω−直鎖アルカンジオールと(メタ)アクリル酸エステルとの脱アルコール反応により製造する方法(エステル交換法)、及びα,ω−直鎖アルカンジオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合反応により製造する方法(脱水縮合法)が挙げられる。
【0036】
また、前記モノマー混合物中における(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、α,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートとの混合割合としては、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが99〜99.7重量%、α,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートが0.3〜1.0重量%の割合(合計100重量%)で混合することが好ましい。これにより、メタクリル酸メチルに対する膨潤度を5〜8の間にすると共に、25℃でメタクリル酸メチルに浸漬したときの10分間浸漬後から24時間浸漬後までの膨潤体積の増加率を10%以下にすることが容易となる。
【0037】
好ましいモノマー混合物は、メタクリル酸メチルを主成分とするモノマー組成物と、直鎖アルカンの炭素数が4〜10であるα,ω−直鎖アルカンジオールジメタクリレートとからなる架橋性モノマーとのモノマー混合物である。
【0038】
架橋性モノマーであるα,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートの配合量は、モノマー混合物全体の0.3〜0.5重量%であることがより好ましい。これにより、25℃でメタクリル酸メチルに浸漬したときの10分間浸漬後から24時間浸漬後までの膨潤体積の増加率を容易に5%以下にすることが可能となる。
【0039】
また、実施の形態に係る重合体粒子の平均粒子径は5〜30μmの範囲にあることが好ましく、10〜20μmの範囲内であることがより好ましい。平均粒子径は5〜30μmの範囲にあれば、プレス成形用材料に添加して成形された成形品の外観、特に光沢や表面平滑性を良好なものにすることが可能となり、また、粒子粉末としての取扱性も良好なものにすることが可能となる。なお、ここでの平均粒子径とは、後述するようにコールターカウンター法により測定した値である。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、架橋性モノマーとを含むモノマー混合物が、更に他のモノマーを含んでいてもよい。そのような他のモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー;アクリル酸;メタクリル酸;アクリロニトリル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のようなアクリル酸エステル以外のアクリル酸誘導体;メタクリロニトリル、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のような、メタクリル酸エステル以外のメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
【0041】
他のモノマーの配合量は、ベースモノマーとの屈折率の点から、モノマー混合物全体の1.0重量%以下の範囲で使用することがより好ましい。
【0042】
実施の形態に係る重合体粒子の製造方法は、公知の重合方法であれば特に限定されるものではない。公知の重合法としては、例えば懸濁重合、塊状重合、乳化重合、ソープフリー乳化重合、シード重合等の方法が挙げられる。懸濁重合とは、モノマーと溶媒の水とを機械的に攪拌して、懸濁させて行う重合方法である。粒子径が小さくかつ整った粒子を得られることが特徴である。塊状重合の場合は、粉砕後、分級することで所望の粒径の重合体粒子を得ることができる。乳化重合とは、水等の媒体と、媒体に溶解し難いモノマーと乳化剤(界面活性剤)を混合し、そこに媒体に溶解可能な重合開始剤を加えて行う重合法である。得られる粒子径のバラツキが少ないという特徴がある。ソープフリー乳化重合とは、乳化剤を用いない乳化重合である。均一径の粒子が得られるという特徴がある。シード重合とは、前記モノマー混合物の重合開始の際に、別途でモノマー混合物の乳化重合によって作られた種(シード)粒子を入れて行われる乳化重合である。種粒子として粒子径と粒子径分布、量(個数)を任意に定めて重合することになり、所望の粒子径と粒子径分布を狙って重合できるという特徴がある。
【0043】
以下に懸濁重合による製造方法を述べるが、本発明に係る樹脂粒子の製造方法は、この方法に限定されるものではない。
【0044】
懸濁重合の具体的手順としては、上記した(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと架橋性モノマーとを含むモノマー混合物と、このモノマー混合物に可溶な重合開始剤と、適宜界面活性剤と、懸濁安定剤とを水性媒体中に加え、攪拌して重量平均粒子径が5〜30μmとなるように1次懸濁液を調製する。次にこの1次懸濁液を、50〜70℃程度まで上昇させた後、攪拌しながら1〜5時間懸濁重合を行い、その後100〜120℃で1〜3時間加熱する。その後冷却して、懸濁安定剤を溶解除去する処理等を行った後、さらに洗浄、脱水、乾燥処理を行って重合体粒子を得ることができる。
【0045】
上記重合開始剤としては、懸濁重合に用いられる油溶性の過酸化物系重合開始剤、又はアゾ系重合開始剤を使用することが好ましい。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0046】
アゾ系重合開始剤としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メチキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。これら重合開始剤は1種又は複数種組み合わせて使用することができる。この中でも、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)は半減期温度が低く重合時の発熱を抑制し易いという点、過酸化ベンゾイル等は樹脂中に残存する単量体を低減させるという点で好ましい。
【0047】
重合開始剤の使用量は、その種類、モノマーの重合性や重合温度等の条件により適宜設定できるが、一般的にはモノマー混合物100重量部に対して、0.1〜1.5重量部の範囲で用いることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.0重量部である。
【0048】
モノマー混合物を懸濁重合させるための水性媒体としては、水、又は水とアルコール(例えば、メタノール、エタノール)のような水溶性溶媒との混合媒体が挙げられる。水性媒体の使用量は、重合体粒子の安定化を図るために、通常、モノマー混合物の合計100重量部に対して、100〜500重量部であり、150〜300重量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0049】
また、懸濁重合の際には、懸濁粒子の安定化を図るために、懸濁安定剤を添加することが好ましい。懸濁安定剤としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ等の難水溶性無機化合物等が挙げられる。これらの懸濁安定剤は1種又は複数種組み合わせて使用することができる。これらの中でも、目的とする重合体粒子を安定して得ることができるという点において、第三リン酸カルシウム、複分解生成法によるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムなどが特に好ましい。また、懸濁安定剤は、水性媒体100重量部に対して1.0〜3.0重量部の範囲で添加することが好ましい。
【0050】
また、水性媒体には界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等を適宜選択して使用することができる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、コハクスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0051】
また、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
【0052】
また、カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。また、両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドや、リン酸エステル系又は亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。上記界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。界面活性剤は、水性媒体100重量部に対して、0.01〜0.05重量部の範囲で添加することが好ましい。
【0053】
上記した重合体粒子は、プレス成形用成形材料の添加剤として好適に用いることができる。
【0054】
本発明のプレス成形用成形材料は、上記した本発明の重合体粒子が配合されているものである。本発明の好ましい形態に係るプレス成形用成形材料は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの単独重合体または共重合体(アクリル系ポリマー)とを含むアクリル系シラップに対し、上記した重合体粒子が増粘剤(低収縮剤を兼ねる)として添加されて構成される。
【0055】
また、上記プレス成形用成形材料には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー、アクリル酸又はメタクリル酸の低級アルキルエステル、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート等が含まれていてもよい。
【0056】
更に、プレス成形用成形材料には、必要に応じて、ガラス繊維、炭酸カルシウム、アルミナ等の充填剤;水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の増粘剤;各種有機過酸化物等の硬化触媒;ステアリン酸のような離型剤;各種染料及び顔料等の着色剤等が添加されていてもよい。プレス成形用成形材料は、BMCやSMCなどのコンパウンドの形態とすることができる。
【0057】
上記プレス成形用成形材料をプレス成形することでアクリル系人工大理石等の成形品が得られる。アクリル系人工大理石等の成形品は、例えば、所定の金型内に、上記成形材料を充填し、金型を加熱及び加圧する方法で成形できる。成形品の形状は、特に限定されず、使用用途に応じて適宜決定できる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0059】
(平均粒子径)
重合体粒子の平均粒子径はベックマンコールター社製のコールターカウンターで測定した体積平均粒子径である。測定方法はCoulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、測定する重合体粒子の粒子径に適合したアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定する。
【0060】
具体的には、ガラス製の試験管に重合体粒子0.1gと0.1%ノニオン系界面活性剤溶液10mlとを投入し、タッチミキサーや超音波を用いて予備分散させた後、これを本体備え付けの、ISOTON II(ベックマンコールター社製:測定用電解液)を満たしたビーカー中に、緩く攪拌しながらスポイドで滴下して、装置本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせる。
【0061】
次に装置本体にアパチャーサイズ、Current、Gain、Polarityを上記Reference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って入力し、manualで測定を行う。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した点で測定を終了する。
【0062】
(重合体粒子の膨潤度、及び膨潤体積の増加率[%])
重合体粒子を20mlの有栓メスシリンダーに添加し、軽く叩きながら1ml詰めた後、メタクリル酸メチルを全量が20mlとなるように添加し、十分攪拌して、重合体粒子をメタクリル酸メチルに浸漬する。その後、有栓メスシリンダーを25℃室温中で保持し、10分経過後(メタクリル酸メチルに10分間浸漬した後)と24時間経過後(メタクリル酸メチルに24時間浸漬した後)の重合体粒子層の体積を求め、膨潤前の体積[1ml]との比によって、メタクリル酸メチルに対する10分経過後の膨潤度V1と24時間経過後の膨潤度V2とを求めた。また、10分経過後の膨潤度V1と24時間経過後の膨潤度V2とを用いて、10分経過後の時点から24時間経過後の時点までの膨潤体積の増加率Vr[%]を、次の式1を用いて算出した。
【0063】
Vr[%]=[(V2−V1)/V1]×100・・式1
[重合体粒子の実施例1(ポリマー1)]
5L反応器に、ピロリン酸ナトリウム62g、ラウリル硫酸ナトリウム0.48gを水2400gに溶解した水性媒体を入れ、塩化マグネシウム114gを加えて10分間高速攪拌を行い、ピロリン酸マグネシウムを作製した。反応器内の温度を40℃まで冷却させた後、別に調液したメタクリル酸メチル1293.5g、1,9−ノナンジオールジメタクリレート6.5gに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)7.8g、過酸化ベンゾイル(純分74.2%)5.3gを加えて溶解させた単量体溶液を上記5L反応器に入れた。TKホモミキサー(特殊機化製)にて、重量平均粒子径20μmとなるように1次懸濁液を調製した。この調製に要した時間は5800rpmで10分であった。
【0064】
反応器内の温度を55℃まで昇温させた後、高速攪拌しながら2時間懸濁重合を行い、その後105℃で3時間加熱した。その後冷却し、20%塩酸を加えてピロリン酸マグネシウムを溶解して除去した後、粒子を洗浄した。次に脱水、乾燥を行って微架橋の重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は10.7μm、メタクリル酸メチルに対する10分経過後の膨潤度V1は6.7、メタクリル酸メチルに対する24時間経過後の膨潤度V2は6.9、10分経過時点から24時間経過時点までの膨潤体積の増加率Vrは3.0%であった。
【0065】
[重合体粒子の実施例2(ポリマー2)]
架橋性モノマーとして、実施例1の1,9−ノナンジオールジメタクリレート6.5gの代わりに、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート6.5gを使用したこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は10.8μm、メタクリル酸メチルに対する10分経過後の膨潤度V1は6.1、メタクリル酸メチルに対する24時間経過後の膨潤度V2は6.4、10分経過時点から24時間経過時点までの膨潤体積の増加率Vrは4.9%であった。
【0066】
[重合体粒子の実施例3(ポリマー3)]
架橋性モノマーとして、実施例1の1,9−ノナンジオールジメタクリレート6.5gの代わりに、1,4−ブタンジオールジメタクリレート6.5gを使用したこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は9.5μm、メタクリル酸メチルに対する10分経過後の膨潤度V1は5.6、メタクリル酸メチルに対する24時間経過後の膨潤度V2は5.8、10分経過時点から24時間経過時点までの膨潤体積の増加率Vrは3.6%であった。
【0067】
[重合体粒子の実施例4(ポリマー4)]
架橋性モノマーとして、実施例1の1,9−ノナンジオールジメタクリレート6.5gの代わりに、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート13.0gを使用し、メタクリル酸メチル1287gとしたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は10.1μm、メタクリル酸メチルに対する10分経過後の膨潤度V1は5.5、メタクリル酸メチルに対する24時間経過後の膨潤度V2は6.0、10分経過時点から24時間経過時点までの膨潤体積の増加率Vrは9.1%であった。
【0068】
[重合体粒子の実施例5(ポリマー5)]
架橋性モノマーとして、実施例1と同じ1,9−ノナンジオールジメタクリレートを使用し、配合量を3.9gとし、メタクリル酸メチル1296.1gとしたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は10.1μm、メタクリル酸メチルに対する10分経過後の膨潤度V1は7.3、メタクリル酸メチルに対する24時間経過後の膨潤度V2は7.4、10分経過時点から24時間経過時点までの膨潤体積の増加率Vrは1.4%であった。
【0069】
[重合体粒子の比較例1(ポリマー6)]
架橋性モノマーとして、実施例1の1,9−ノナンジオールジメタクリレート6.5gの代わりに、エチレングリコールジメタクリレート6.5gを使用したこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は9.3μm、メタクリル酸メチルに対する10分経過後の膨潤度V1は3.0、メタクリル酸メチルに対する24時間経過後の膨潤度V2は3.5、10分経過時点から24時間経過時点までの膨潤体積の増加率Vrは16.7%であった。
【0070】
[重合体粒子の比較例2(ポリマー7)]
架橋性モノマーとして、実施例1の1,9−ノナンジオールジメタクリレート6.5gの代わりに、ネオペンチルグリコールジメタクリレート6.5gを使用したこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は9.6μm、メタクリル酸メチルに対する10分経過後の膨潤度V1は3.6、メタクリル酸メチルに対する24時間経過後の膨潤度V2は4.1、10分経過時点から24時間経過時点までの膨潤体積の増加率Vrは13.9%であった。
【0071】
[重合体粒子の比較例3(ポリマー8)]
架橋性モノマーとして、実施例1の1,9−ノナンジオールジメタクリレート6.5gの代わりに、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート65.0gを使用し、メタクリル酸メチル1235gとしたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は11.1μm、メタクリル酸メチルに対する10分経過後の膨潤度V1は1.2、メタクリル酸メチルに対する24時間経過後の膨潤度V2は1.4、10分経過時点から24時間経過時点までの膨潤体積の増加率Vrは16.7%であった。
【0072】
[重合体粒子の比較例4(ポリマー9)]
架橋性モノマーとして、実施例1の1,9−ノナンジオールジメタクリレート6.5gの代わりに、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート1.3gを使用し、メタクリル酸メチル1298.7gとしたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は10.8μmであったが、メタクリル酸メチルに対する膨潤度V1及びV2並びに膨潤体積の増加率Vrは、メタクリル酸メチルに溶解したため測定出来なかった。
【0073】
表1に、重合体粒子の実施例1〜5(ポリマー1〜5)及び比較例1〜4(ポリマー6〜9)の製造に使用した各種原料の配合量、重合温度、及び各種物性値を示す。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例1〜5の重合体粒子(ポリマー1〜5)の物性は、24時間経過後の膨潤度V2が、5.8〜7.4の範囲にあり、膨潤体積の増加率Vrが、10%以下となっていた。
【0076】
一方、直鎖アルカンの炭素数が4未満であるα,ω−直鎖アルカンジオールジメタクリレートを用いた比較例1の重合体粒子(ポリマー6)および分枝アルカンジオールジメタクリレートを用いた比較例2の重合体粒子(ポリマー7)は、24時間経過後の膨潤度V2が、3.5、4.1となっており、直鎖アルカンの炭素数が4以上であるα,ω−直鎖アルカンジオールジメタクリレートを用いたポリマー1〜5と比較して膨潤度が小さく、膨潤体積の増加率は、10%より大きくなっている。また、比較例3の重合体粒子(ポリマー8)は、架橋性モノマーの配合量が多く、高架橋となっているため、24時間経過後の膨潤度V2は、1.4と小さくなっている。比較例4の重合体粒子(ポリマー9)は、架橋性モノマーの配合量が少なく、低架橋のために、メタクリル酸メチル中で粒子形状を維持することができず、溶解した。
【0077】
[アクリルシラップの製造例]
5L反応器に、ピロリン酸ナトリウム17.1g、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム25%水溶液0.48gを水2400gに溶解した水性媒体を入れた。
【0078】
反応器内の温度を65℃まで昇温させた後、塩化マグネシウム31.6gを加えて10分間高速撹拌を行い、ピロリン酸マグネシウムを作製した。
【0079】
反応器内の温度を40℃まで冷却させた後、別に調液したメタクリル酸メチル1574.4g、メタクリル酸25.6gに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)14.4g、過酸化ベンゾイル(純分74.2%)6.47gを加えて溶解させた単量体溶液を上記5L反応器に入れた。
【0080】
反応器内の温度を55℃まで昇温させた後、高速撹拌しながら3時間懸濁重合を行い、その後105℃で3時間加熱した。
【0081】
その後冷却し、20%塩酸を加えてピロリン酸マグネシウムを分解し、洗浄した。次に脱水、乾燥を行ってカルボキシル基を含有した重合体粒子を得た。重合体粒子のGPCにて測定した重量平均分子量(Mw)は546,000、酸価は10.6(mgKOH/g)であった。
【0082】
得られた重合体粒子20重量部、メタクリル酸メチル単量体65重量部、ジメタクリル酸エチレングリコール15重量部を重合体粒子が溶解するまで70℃でニーダーにて混練し、アクリルシラップ(A)を得た。
【0083】
次に上記アクリルシラップ(A)と、実施例1〜5の重合体粒子(ポリマー1〜5)及び比較例1〜4の重合体粒子(ポリマー6〜9)とを用いて、プレス成形用成形材料(以下コンパウンドと記す)を調製し、コンパウンドの混練性及び増粘性を評価した。なお、コンパウンドの混練性及び増粘性は、以下のようにして評価した。
【0084】
(コンパウンドの混練性)
混練開始1分後のコンパウンドの状態を目視で観察し、3段階で評価した。
【0085】
○:無機充填材の混練ムラが全く見られない。
【0086】
△:無機充填材の混練ムラが若干見られる。
【0087】
×:著しい無機充填材の混練ムラが見られる。
(コンパウンドの増粘性)
熟成後コンパウンドの表面べたつきの有無を手触りで調べ、3段階で評価した。
【0088】
○:コンパウンドの表面べたつきが全く見られない。
【0089】
△:部分的な表面ベタツキが見られる。
【0090】
×:著しい表面ベタツキが見られる。
【0091】
[コンパウンドの実施例6]
上記アクリルシラップ(A):100重量部、上記ポリマー1:25重量部、硬化剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサエート(日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O):1.2重量部、増粘剤として酸化マグネシウム:1.0重量部、離型剤としてステアリン酸亜鉛:0.5重量部、無機充填材として水酸化アルミニウム:150重量部を加えて3分間混練した後、コンパウンドをセロファンフィルムで包み、25℃で24時間熟成し増粘し、コンパウンドを得た。得られたコンパウンドはいずれも常温でべたつきがなく、取扱性が良好であった。
【0092】
[コンパウンドの実施例7〜10]
上記実施例6におけるポリマー1の25重量部の代わりに、ポリマー2〜5の25重量部を用いたこと以外は実施例6と同様にしてコンパウンドを得た。
【0093】
[コンパウンドの比較例5〜9]
上記実施例6におけるポリマー1の25重量部の代わりに、ポリマー6〜9の25重量部を用いたこと以外は実施例6と同様にしてコンパウンドを得た。
【0094】
表2に、プレス成形用成形材料(コンパウンド)の実施例7〜10、及び比較例5〜8の製造に使用した原料の配合割合、及び評価結果を示す。
【0095】
表2の結果から、実施例1〜5の重合体粒子(ポリマー1〜5)を用いたコンパウンド(実施例6〜10)は、いずれも、混練開始1分後のコンパウンドの混練状態は良好であり、また、熟成後コンパウンドの表面べたつきが全く見られておらず、増粘性も良好であった。
【0096】
また、実施例1〜5の重合体粒子(ポリマー1〜5)を用いたコンパウンド(実施例6〜10)と、比較例1〜4の重合体粒子(ポリマー6)を用いたコンパウンド(比較例5〜9)との対比結果から、比較例5〜9では重合体粒子の配合量がアクリルシラップ(A)100重量部に対して35重量部と多い場合(比較例9)を除いて良好な増粘効果が得られていないのに対し、実施例6〜10では、ポリマー1〜5の配合量がアクリルシラップ(A)100重量部に対して25重量部という少ない量であっても、良好な増粘効果が得られている。従って、プレス成形品(人工大理石)の製品コストを抑えることができるとともに、プレス成形品の生産性を高めることができる。
【0097】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、架橋性モノマーとを含むモノマー混合物を重合して得られる重合体粒子であって、
前記モノマー混合物が、前記架橋性モノマーを0.3〜1.0重量%含むものであり、
前記架橋性モノマーが、直鎖アルカンの炭素数が4以上であるα,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートであり、
25℃でメタクリル酸メチルに浸漬したときの24時間浸漬後の膨潤度が5〜8であり、且つ25℃でメタクリル酸メチルに浸漬したときの10分間浸漬後から24時間浸漬後までの膨潤体積の増加率が10%以下のものであることを特徴とする重合体粒子。
【請求項2】
請求項1記載の重合体粒子であって、
前記モノマー混合物が、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを99〜99.7重量%含むものであることを特徴とする重合体粒子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の重合体粒子であって、
前記α,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートが、直鎖アルカンの炭素数が6〜10であるα,ω−直鎖アルカンジオールジメタクリレートであることを特徴とする重合体粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合体粒子であって、
平均粒子径が5〜30μmの範囲にあるものであることを特徴とする重合体粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合体粒子であって、
前記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが、メタクリル酸メチルであることを特徴とする重合体粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合体粒子が配合されているプレス成形用成形材料。

【公開番号】特開2012−201871(P2012−201871A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70453(P2011−70453)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】