説明

重合体粒子の水分散体およびその製造方法

【課題】平均粒子径が1〜5μm程度の重合体粒子の水分散体は、シード重合法や乳化重合法、あるいは、改良された懸濁重合法により得ることができるが、多くの工程や設備的な対応が必要であったり、沈降した粒子がハードケーキ化したりするなどの問題があった。本発明は、簡便、安価に製造できる平均粒子径が1〜5μmの重合体粒子の水分散体を提供すること、ならびに、分散安定性が良好でハードケーキの形成が抑制された重合体粒子の水分散体を提供することを目的とする。
【解決手段】水に対する溶解性が3質量%未満で炭素−炭素二重結合が3個以上であるビニル系単量体を3〜60質量%含有し、かつ、水に対する溶解性が3質量%未満であるビニル系単量体を前記単量体を含めて90〜100質量%含有する単量体混合物を重合して得られる重合体粒子の水分散体であって、該重合体粒子の体積平均粒子径が1〜5μmである重合体粒子の水分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合体粒子の水分散体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平均粒子径が1〜5μm程度の重合体粒子の水分散体としては、シード重合法あるいは分散重合法によって得られる粒子を水に分散したものが挙げられる。シード重合法は、乳化重合法などで得られた1μm以下の微小粒子を単量体で膨潤させ重合することによって、1μm弱〜数十μmの粒子径と狭い粒子径分布を有する重合体粒子を得る方法である。例えば、特許文献1の実施例1には、粒子径3.51μm、CV値9.0%の粒子が開示されている。しかし、かかる方法では、シードとなる粒子の重合とかかる粒子を目的の大きさにするため重合の少なくとも2回の重合工程が必須となる。
【0003】
また、分散重合法は、媒体に溶解した重合体の存在下に、単量体の状態では媒体に可溶であるが、重合により重合体を形成すると媒体に不溶性となるような単量体と媒体の組み合わせにおいて行われる重合によって重合体粒子を得る方法である。一般に、得られる粒子は0.1〜10μmの粒子径と狭い粒子径分布を有している。例えば、特許文献2の実施例1には、粒子径1.51μm、CV値2.8%の粒子が開示されている。しかし、かかる方法では、単量体と媒体の組み合わせが限られる上、媒体として有機溶媒を用いるため、製造設備が割高となり、水分散体とするには媒体を水に置き換える必要がある。
【0004】
一方、懸濁重合法は、分散安定剤を含む水相に、油溶性重合開始剤を溶解させた疎水性単量体の液滴を分散させて重合することによって重合体粒子を得る方法である。上述の2つの方法に比べて、簡便で製造設備も単純なもので済み、媒体も水であるが、得られる粒子の粒子径は10μm前後〜数百μmと大きく、粒子がすぐに沈降するため、水分散体とはならない。
【0005】
この点について、特許文献3では、重合槽に循環ラインを設け、該ライン上に微粒化機を設け、さらに該微粒化機に単量体を供給するラインを設けた装置を用いて、微小な単量体液滴を発生させ、これを重合することで平均粒子径が1〜10μmである重合体粒子を得る方法が開示されている。該方法で得られる重合体粒子の粒子径は小さいため、水分散体中において粒子は沈降しにくくなる。
【0006】
しかし、一般的に重合体粒子の水分散体においては、沈降した粒子がハードケーキ化、すなわち沈澱した状態で一体化して再度分散することが困難となる状況がしばしば発生する。特許文献3においても、沈降してしまった粒子のハードケーキ化の問題は依然として残されており、長期間の保存において課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−272779号公報
【特許文献2】特開2000−230005号公報
【特許文献3】特開2009−114334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、平均粒子径が1〜5μm程度の重合体粒子の水分散体は、シード重合法や乳化重合法、あるいは、改良された懸濁重合法により得ることができるが、多くの工程や設備的な対応が必要であったり、沈降した粒子がハードケーキ化したりするなどの問題があった。本発明は、簡便、安価に製造できる平均粒子径が1〜5μmの重合体粒子の水分散体を提供すること、ならびに、分散安定性が良好でハードケーキの形成が抑制された重合体粒子の水分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記目的について検討を重ねた結果、特定のモノマー組成を有する単量体混合物を重合することにより、体積平均粒子径が1〜5μmであり、かつ、分散安定性が良好でハードケーキの形成が抑制された重合体粒子の水分散体が簡便に得られることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の目的は、以下の手段により達成される。
【0010】
[1] 水に対する溶解性が3質量%未満で炭素−炭素二重結合が3個以上であるビニル系単量体を3〜60質量%含有し、かつ、水に対する溶解性が3質量%未満であるビニル系単量体を前記単量体を含めて90〜100質量%含有する単量体混合物を重合して得られる重合体粒子の水分散体であって、該重合体粒子の体積平均粒子径が1〜5μmである重合体粒子の水分散体。
[2] 重合体粒子の粒子径の変動係数CVが30〜50%であることを特徴とする[1]に記載の重合体粒子の水分散体。
[3] 相対遠心加速度1520Gで10分間遠心分離を施したときに沈降する重合体粒子の質量が、全重合体粒子質量の65%未満であることを特徴とする[1]または[2]に記載の重合体粒子の水分散体。
[4] 相対遠心加速度1520Gで10分間遠心分離を施して重合体粒子を沈降させ、次いで周波数45kHzで10分間超音波振動を加えた時に再度分散する重合体粒子の質量が沈降した重合体粒子の質量の50%以上である請求項[1]から[3]のいずれかに記載の重合体粒子の水分散体。
[5] 水に対する溶解性が3質量%未満で炭素−炭素二重結合が3個以上であるビニル系単量体を3〜60質量%含有し、かつ、水に対する溶解性が3質量%未満であるビニル系単量体を前記単量体を含めて90〜100質量%含有する単量体混合物を油溶性重合開始剤を用いて水中で懸濁重合することを特徴とする体積平均粒子径が1〜5μmである重合体粒子の水分散体の製造方法。
[6] 水に対する溶解性が3質量%未満で炭素−炭素二重結合が3個以上であるビニル系単量体を3〜60質量%含有し、かつ、水に対する溶解性が3質量%未満であるビニル系単量体を前記単量体を含めて90〜100質量%含有する単量体混合物を、全単量体質量に対して0.001〜0.1質量%の水溶性アゾ系開始剤の存在下、油溶性重合開始剤を用いて水中で懸濁重合することを特徴とする体積平均粒子径が1〜5μmである重合体粒子の水分散体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定のモノマー組成を採用して懸濁重合することにより、多数の製造工程、複雑な製造条件、特別な製造設備などを用いることなく、平均粒子径が1〜5μmの重合体粒子の水分散体を製造することができる。このため、本発明の重合体粒子の水分散体は簡便、安価に提供することが可能なものである。また、本発明の重合体粒子の水分散体は分散安定性が良好でハードケーキを形成しにくいので、塗料や樹脂などに光拡散性、艶消し性、意匠性、耐ブロッキング性等の特性を付与する添加剤として、扱いやすく、好適に利用できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における重合体粒子の水分散体は、体積平均粒子径1〜5μmの重合体粒子が安定に分散したものであり、水に対する溶解性が3質量%未満で炭素−炭素二重結合が3個以上であるビニル系単量体(以下、A成分ともいう)を3〜60質量%含有し、かつ、水に対する溶解性が3質量%未満であるビニル系単量体を前記単量体を含めて90〜100質量%含有する単量体混合物を水中で懸濁重合することにより得られる。
【0013】
A成分の炭素−炭素二重結合の数としては3個以上であるが、より好ましくは4個以上である。A成分を用いることにより、従来の懸濁重合では形成困難であった体積平均粒子径が1〜5μmという微小な粒子を得ることができる。これは、炭素−炭素二重結合を多数有するA成分を用いることで水に分散される単量体液滴の粘度および重合速度が増大し、液滴同士の合一が抑制されるためであると推定している。また、A成分を用いることはハードケーキ化の抑制にも効果があるものと考えられる。
【0014】
A成分は重合に用いられる全単量体質量に対して3〜60質量%、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは3〜15質量%、最も好ましくは5〜10質量%を用いる。A成分の量が3質量%未満の場合、単量体液滴同士の合一によって液滴が大きくなり微小な粒子を得られなくなる。また、A成分は高粘度であるため、60質量%を超える場合には、A成分と他の単量体の均一な混合物を得にくくなる、あるいは、単量体混合物の粘度が高くなりすぎて単量体液滴を微小な大きさに分散できないなどの問題が発生する場合がある。加えて、A成分の割合をあまり多くしていっても分散安定性向上への寄与はほとんど変わらなくなってくる場合が多い。
【0015】
単量体混合物に含有されるA成分以外の単量体、すなわち共重合成分の種類としては特に制限はない。ただし、水に対する溶解性の大きい単量体を多く使用すると懸濁重合の機構とは異なる重合、すなわち、単量体液滴外での重合が起こりやすくなり、目的とする重合体粒子の水分散体が得られなくなる恐れがある。このため、共重合成分としては、単量体混合物全体に対して、20℃における水に対する溶解性が3質量%未満であるビニル系単量体がA成分も含めて90〜100質量%となるようにすることが必要であり、好ましくは95〜100質量%、より好ましくは100質量%である。また、20℃における水に対する溶解性が2質量%未満であるビニル系単量体が90〜100質量%となるようにすることも好ましい態様である。
【0016】
上述したA成分の代表的な例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。なお、本発明において(メタ)アクリレートとの表記はメタアクリレートとアクリレートの両者を表す。
【0017】
共重合成分の代表的な例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル系単量体、スチレン、p−メチルスチレン等のスチレン系単量体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0018】
また、本発明における重合体粒子の粒子径分布は、粒子径の変動係数CVとして30〜50%の範囲である。CV値は分級や異なる粒子径のものを混合することなどにより調整することができるが、懸濁重合においては、これらの処理をしなくても、重合前のモノマー滴径を均一にするなどの特別な処理を行わない限り、かかるCV値の範囲の重合体粒子を得ることができる場合が多い。なお、粒子径の変動係数CVは、粒子径の標準偏差を体積平均粒子径によって除し、100を乗じることによって求めることができる。CV値が大きい、すなわち、粒子径分布が広いことは、粒子沈降時の最密充填化を抑制し、ハードケーキ化の抑制に効果があると考えられる。
【0019】
本発明の重合体粒子の水分散体の分散安定性については、後述する方法により遠心分離した際に沈降した粒子の質量が全粒子質量の65%未満であることが好ましく、より好ましくは60%未満、さらに好ましくは50%未満である。沈降した粒子の質量が65%未満であれば、静置状態において均一な分散状態を維持できる時間が長く、分散状態の維持のために使用中に撹拌するなどの処置しなくてもよい。
【0020】
また、本発明の重合体粒子の再分散性については、後述する方法により遠心分離した後、超音波振動により再度分散する粒子の質量が沈降した粒子質量の50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上である。50%以上であれば、静置保管の状況においてハードケーキを形成しにくく、特別な手段を用いることなく、再分散可能である。
【0021】
また、本発明の重合体粒子の水分散体には、特性を損ねない限り、艶消し剤、紫外線吸収剤、顔料などの添加剤を添加しても構わない。
【0022】
以上に説明してきた本発明の重合体粒子の水分散体は、上述した単量体混合物を油溶性重合開始剤を用いて水中で懸濁重合することにより製造することができる。ここで油溶性重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などの油溶性アゾ系開始剤やジラウロイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシ−2−ヘキサノエートなどの油溶性有機過酸化物などを用いることができる。特に、単量体の揮発を抑制し、収率を向上させる観点から半減期温度が60℃以下の開始剤を用いることが望ましい。また、かかる油溶性重合開始剤の一般的な使用量としては、全単量体質量に対して0.5〜5質量%程度である。
【0023】
かかる油溶性重合開始剤を上述した単量体混合物を、分散安定剤を含有する水中に液滴状に分散させ、加熱することによって重合を行う。ここで、単量体混合物の水中への分散方法としては、体積平均粒子径が1〜5μmの粒子が得られるような単量体液滴に分散できる方法であれば特に限定されず、T字型など形状の細い流路を有するマイクロチャンネルにおいて単量体混合物を水相に突出させる方法、あるいは、ホモジナイザーなどの高速回転剪断型の分散機を用いる方法などを挙げることができる。また、分散安定剤としてはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、メチルセルロース、ポリアクリル酸などの従来公知のものを使用することができる。かかる分散安定剤の一般的な使用量としては、全単量体質量に対して0.5〜10質量%程度である。また、必要に応じて、単量体混合物中に顔料や紫外線吸収剤などの添加剤を添加することもできる。
【0024】
さらに、重合に際して、全単量体質量に対して0.001〜0.1質量%、好ましくは0.005〜0.05質量%の水溶性アゾ開始剤を添加することにより、より優れた分散安定性および再分散性を有する水分散体が得られやすい。ただし、添加量が0.05質量%を超えると粒子が凝集して粒径が増大し、分散安定性が低下してしまう場合がある。一方、0.001質量%未満の場合には、分散安定性向上の効果は期待できない。かかる水溶性アゾ開始剤の代表的な例としては、2,2’−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドなどが挙げられる。
【0025】
また、重合に際しては、重合系全質量に対して単量体混合物量が20〜50質量%となるようにすることが好ましく、より好ましくは25〜40質量%である。単量体混合物量が少なすぎる場合、得られる水分散体の固形分濃度が低くなり、水分散体の粘度が低下するため、粒子が沈降しやすくなる場合がある。また、塗料などに添加した際には固形分を大きく低下させ、塗膜特性を低下させる場合がある。一方、単量体混合物量が多すぎる場合には、得られる水分散体の固形分濃度が高くなりすぎ、分散安定性が低下する場合がある。
【0026】
以上のようにして重合を行うことにより、水中に重合体粒子が安定に分散した状態で生成し、本発明の重合体粒子の水分散体が得られる。かかる本発明の水分散体は粒子が沈降しにくく、沈降した場合でも容易に再分散でき、長期間の保管後でもハードケーキ化しないという特徴を有しており、塗料や樹脂などに意匠性等の特性を付与する添加剤として扱いやすく、好適に利用できるものである。
【実施例】
【0027】
以下、実施例および比較例により本発明の効果を説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例における特性値の評価は以下の方法に従った。
【0028】
(1)体積平均粒子径および粒子径の変動係数CV
フロー式粒子像分析装置(FPIA−3000S:シスメックス(株)製)を用い、以下の条件によって測定したデータを体積基準、粒子径限定無し、粒子径上限定無しで整理したときの円相当径の平均値を体積平均粒子径とする。また、粒子径分布から粒子径の変動係数CVを求める。
分散媒:水と界面活性剤(パーティクルシース:シスメックス(株)製)の混合溶液
測定モード:HPF
有効解析数:30000
【0029】
(2)固形分
撹拌して均一分散させた分散液試料約1gを精秤し(W1[g])、次いで120℃、60分間加熱して蒸発乾固させ、質量を測定する(W2[g])。次式により固形分[%]を算出する。
固形分[%]=(W2/W1)×100
【0030】
(3)分散安定性(沈降性)
撹拌して均一分散させた分散液試料30gを試験管に入れ、卓上遠心分離機(KS−8000:久保田商事(株)製)を用いて、相対遠心加速度1520Gで10分間遠心分離する。上澄み液を約1g採取し、質量を測定する(W3[g])。次いで、かかる上澄み液を120℃、60分間加熱して蒸発乾固させた後、質量を測定する(W4[g])。以上の測定結果および上記の固形分測定の結果から、次式により沈降性[%]を算出する。この数値が低いほど分散安定性が良好である。
沈降性[%]=(W2/W1−W4/W3)/(W2/W1)×100
【0031】
(4)再分散性
撹拌して均一分散させた分散液試料30gを試験管に入れ、卓上遠心分離機(KS−8000:久保田商事(株)製)を用いて、相対遠心加速度1520Gで10分間遠心分離する。遠心分離後の試験管を超音波洗浄器(Bransonic B-220:BRANSON社製、周波数45kHz)に入れ、10分間振動を加えた後に、試験管を逆さにして10分間静置する。試験管より流れ出た再分散液約1gを採取し、質量を測定する(W5[g])。次いで、かかる再分散液を120℃、60分間加熱して蒸発乾固させた後、質量を測定する(W6[g])。以上の測定結果と上記の固形分測定および沈降性測定の結果から、次式により再分散性[%]を算出する。この数値が高いほどハードケーキが形成されにくく再分散性が良好である。
再分散性[%]=[1−{(W2/W1−W6/W5)/(W2/W1−W4/W3)}]×100
【0032】
[実施例1]
水700部にポリビニルアルコール13.5部を溶解させる。次いで、メタクリル酸メチル270部、エチレングリコールジメタクリレート15部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート15部からなる単量体混合物に2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3部を溶解させたものを添加し、回転刃式ホモジナイザーを用いて単量体液滴を分散させる。次いで、2,2’−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド0.03部を添加し、撹拌しながら50℃で2時間反応させることで、実施例1の重合体粒子の水分散体を得た。得られた水分散体の評価結果を表1に示す。
【0033】
[実施例2]
単量体混合物として、メタクリル酸メチル270部、エチレングリコールジメタクリレート21部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート9部からなる単量体混合物を用いること以外は実施例1と同様にして、重合体粒子の水分散体を得た。得られた水分散体の評価結果を表1に示す。
【0034】
[実施例3]
単量体混合物として、メタクリル酸メチル240部、エチレングリコールジメタクリレート30部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート30部からなる単量体混合物を用いること以外は実施例1と同様にして、重合体粒子の水分散体を得た。得られた水分散体の評価結果を表1に示す。
【0035】
[実施例4]
単量体混合物として、メタクリル酸メチル210部、エチレングリコールジメタクリレート45部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート45部からなる単量体混合物を用いること以外は実施例1と同様にして、重合体粒子の水分散体を得た。得られた水分散体の評価結果を表1に示す。
【0036】
[実施例5]
単量体混合物として、メタクリル酸メチル210部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート90部からなる単量体混合物を用いること以外は実施例1と同様にして、重合体粒子の水分散体を得た。得られた水分散体の評価結果を表1に示す。
【0037】
[実施例6]
単量体混合物として、メタクリル酸メチル270部、エチレングリコールジメタクリレート15部、トリメチロールプロパントリメタクリレート15部からなる単量体混合物を用いること以外は実施例1と同様にして、重合体粒子の水分散体を得た。得られた水分散体の評価結果を表1に示す。
【0038】
[実施例7]
2,2’−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライドを用いないこと以外は実施例1と同様にして、重合体粒子の水分散体を得た。得られた水分散体の評価結果を表1に示す。
【0039】
[実施例8]
2,2’−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライドの添加量を0.015部とすること以外は実施例1と同様にして、重合体粒子の水分散体を得た。得られた水分散体の評価結果を表1に示す。
【0040】
[実施例9]
2,2’−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライドの添加量を0.09部とすること以外は実施例1と同様にして、重合体粒子の水分散体を得た。得られた水分散体の評価結果を表1に示す。
【0041】
[実施例10]
水650部にポリビニルアルコール15.75部を溶解させる。次いで、メタクリル酸メチル315部、エチレングリコールジメタクリレート17.5部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート17.5部からなる単量体混合物に2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.5部を溶解させたものを添加し、回転刃式ホモジナイザーを用いて単量体液滴を分散させる。次いで、2,2’−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド0.035部を添加し、撹拌しながら50℃で2時間反応させることで、重合体粒子の水分散体を得た。得られた水分散体の評価結果を表1に示す。
【0042】
[実施例11]
水800部にポリビニルアルコール9部を溶解させる。次いで、メタクリル酸メチル180部、エチレングリコールジメタクリレート10部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート10部からなる単量体混合物に2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2部を溶解させたものを添加し、回転刃式ホモジナイザーを用いて単量体液滴を分散させる。次いで、2,2’−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート0.02部を添加し、撹拌しながら50℃で2時間反応させることで、重合体粒子の水分散体を得た。得られた水分散体の評価結果を表1に示す。
【0043】
[比較例1]
単量体混合物として、メタクリル酸メチル270部、エチレングリコールジメタクリレート27部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート3部からなる単量体混合物を用いること以外は実施例1と同様にして、重合体粒子の水分散体を得た。得られた水分散体の評価結果を表1に示す。
【0044】
[比較例2]
2,2’−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライドの添加量を0.6部とすること以外は実施例1と同様にして重合を行ったが、重合中に粒子が凝集、沈降して、水分散体を得ることはできなかった。
【0045】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に対する溶解性が3質量%未満で炭素−炭素二重結合が3個以上であるビニル系単量体を3〜60質量%含有し、かつ、水に対する溶解性が3質量%未満であるビニル系単量体を前記単量体を含めて90〜100質量%含有する単量体混合物を重合して得られる重合体粒子の水分散体であって、該重合体粒子の体積平均粒子径が1〜5μmである重合体粒子の水分散体。
【請求項2】
重合体粒子の粒子径の変動係数CVが30〜50%であることを特徴とする請求項1に記載の重合体粒子の水分散体。
【請求項3】
相対遠心加速度1520Gで10分間遠心分離を施したときに沈降する重合体粒子の質量が、全重合体粒子質量の65%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の重合体粒子の水分散体。
【請求項4】
相対遠心加速度1520Gで10分間遠心分離を施して重合体粒子を沈降させ、次いで周波数45kHzで10分間超音波振動を加えた時に再度分散する重合体粒子の質量が沈降した重合体粒子の質量の50%以上である請求項1から3のいずれかに記載の重合体粒子の水分散体。
【請求項5】
水に対する溶解性が3質量%未満で炭素−炭素二重結合が3個以上であるビニル系単量体を3〜60質量%含有し、かつ、水に対する溶解性が3質量%未満であるビニル系単量体を前記単量体を含めて90〜100質量%含有する単量体混合物を油溶性重合開始剤を用いて水中で懸濁重合することを特徴とする体積平均粒子径が1〜5μmである重合体粒子の水分散体の製造方法。
【請求項6】
水に対する溶解性が3質量%未満で炭素−炭素二重結合が3個以上であるビニル系単量体を3〜60質量%含有し、かつ、水に対する溶解性が3質量%未満であるビニル系単量体を前記単量体を含めて90〜100質量%含有する単量体混合物を、全単量体質量に対して0.001〜0.1質量%の水溶性アゾ系開始剤の存在下、油溶性重合開始剤を用いて水中で懸濁重合することを特徴とする体積平均粒子径が1〜5μmである重合体粒子の水分散体の製造方法。

【公開番号】特開2011−174049(P2011−174049A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9335(P2011−9335)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000004053)日本エクスラン工業株式会社 (58)
【Fターム(参考)】