説明

重合体粒子の製造方法

【課題】 重合体粒子の水性ラテックスから連続的に凝集体スラリーを回収する方法に関し、水性ラテックス等の原料を供給開始した直後から粒子径の安定した凝集体スラリーを得て、安定した品質の凝集体を、簡便かつ効率良く製造する方法を提供する。
【解決手段】 重合体粒子の水性ラテックス若しくは当該水性ラテックスを含む混合物、並びに凝集剤若しくはラテックスを凝集させる効果を有する物質を連続的に接触させて重合体粒子の凝集体スラリーを製造する方法において、予め装置内に凝集体スラリーを充填しておくことを特徴とする、重合体粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体粒子を連続的に凝集する製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、水性ラテックスあるいは凝集剤等の原料の供給を開始した直後から、粒子径の安定した凝集体を簡便に効率良く得ることができる製造方法に関する。連続化による装置の小型化により設備費の抑制が可能となり、更に非定常時の製品ロス率が低減できるため、経済的に有利なプロセスを提供しうる。
【背景技術】
【0002】
乳化重合法等により製造される重合体粒子の水性ラテックスを凝集させて重合体粒子の凝集体を回収する方法については、これまで種々の方法が提案されている。例えば、ラテックス中に凝固剤等の凝集剤を投入して撹拌する方法、凝固性雰囲気中にラテックスを噴霧する方法、噴霧乾燥する方法等が挙げられる。
【0003】
上記のうち、ラテックスと凝集剤を強制的に撹拌混合し凝集体を作成する方法では、凝集体が不定形となる上、微粉が発生しやすい課題がある。一般に、製造した凝集体スラリーは、続いて固液分離を行う場合が多いが、凝集体スラリーが微粉を含む不定形である場合には、ろ液への微粉の流出、脱液性の悪化が発生しやすい傾向がある。
【0004】
例えば、特許文献1に示すように、凝固性雰囲気中にラテックスを噴霧する方法では、連続的に球状の凝集体を得ることができるが、凝集体の合一を防ぐためには装置が大型化する傾向があり、設備費が高くなる場合が多い。また500μm以上の凝集体粒子、或いは高耐熱性の凝集体粒子の製造には比較的不向きである。
【0005】
また、特許文献2に示すように、ラテックスを噴霧乾燥し凝集体を得る方法では、設備が大型化するのに加え、ラテックスの固形分濃度が低い場合は、多大な熱エネルギーが必要となる課題がある。
【0006】
本発明者らは、簡便かつ効率的に重合体粒子の凝集体を得る方法について検討した結果、水性ラテックス若しくは水性ラテックスを含む混合物並びに凝集剤若しくはラテックスを凝集させる効果を有する物質とを撹拌装置に供給し、得られた凝集体スラリーを撹拌装置の上部よりオーバーフローさせて連続的に回収する方法を発明した。しかしながら、この発明においても、上記の水性ラテックス等並びに凝集剤等の供給を開始した直後は凝集体の粒子径が小さく、粒子径が一定範囲内で安定するまでに、装置内の平均滞留時間の3倍程度の時間を要する。上記供給開始直後の粒子径の小さい凝集体は、続く固液分離工程にてろ液に流出したり、脱液性が低下し含液率の上昇を引き起こす場合があった。また原料供給を開始した直後は、回収凝集体スラリーの固形分濃度が希薄であり、連続処理を行った場合に得られる固形分量が経時的に変動する問題があった。
【特許文献1】特開昭52−3637号公報
【特許文献2】特開平8−217817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、重合体粒子の水性ラテックスを連続的に凝集させて重合体粒子の凝集体を回収する方法に関し、水性ラテックス等の原料を供給開始した直後から、連続して安定した粒子径を有する凝集体を得ることを目的とする。連続化による設備費の削減、生産効率の向上に加え、品質の安定化、固液分離時の微粉流出による製品ロスを抑制できる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、以下の本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、重合体粒子の水性ラテックス若しくは当該水性ラテックスを含む混合物、並びに凝集剤若しくはラテックスを凝集させる効果を有する物質を連続的に接触させて重合体粒子の凝集体スラリーを製造する方法において、操作開始前に予め装置内に凝集体スラリーを充填しておくことを特徴とする、重合体粒子の製造方法に関する。
【0009】
好ましい実施態様は、装置内に予め充填する凝集体スラリーの充填量が、装置容積に対し1/5以上であることを特徴とする前記の製造方法に関する。
【0010】
好ましい実施態様は、水性ラテックス若しくは当該水性ラテックスを含む混合物、並びに凝集剤若しくはラテックスを凝集させる効果のある物質を連続的に装置底部より供給し、得られた凝集体スラリーを装置上部より回収することを特徴する、前記いずれかに記載の製造方法に関する。
【0011】
好ましい実施態様は、かき上げ翼を多段に設置した撹拌装置を用いて凝集体スラリーを製造することを特徴とする、前記いずれかに記載の製造方法に関する。
【0012】
好ましい実施態様は、重合体粒子の水性ラテックスを含む混合物が、当該水性ラテックスと有機溶媒を含有する混合物であることを特徴とする、前記いずれかに記載の製造方法に関する。
【0013】
好ましい実施態様は、前記有機溶媒が、20℃における水に対する溶解度が5重量%以上、40重量%以下であることを特徴とする、前記の製造方法に関する。
【0014】
好ましい実施態様は、重合体粒子の水性ラテックスと有機溶媒を含有する混合物が、重合体粒子の水性ラテックス100重量部に対し有機溶媒を50〜400重量部用いることを特徴とする、前記いずれかに記載の製造方法に関する。
【0015】
好ましい実施態様は、ラテックスを凝集させる効果のある物質が水であることを特徴とする、前記いずれかに記載の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によれば、水性ラテックス若しくは当該水性ラテックスを含む混合物、並びに凝集剤若しくはラテックスを凝集させる効果を有する物質等の原料を、撹拌装置へ供給開始した直後から、安定した粒子径の凝集体スラリーを連続的に得ることができる。この結果、連続化による設備費の抑制および生産効率の向上に加え、品質が安定し、微粉発生による製品ロスの少ない製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の製造方法において用いることのできる重合体粒子の水性ラテックスについては特に限定されず、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などの公知の重合法を用いて製造することができる。中でも、重合体粒子の構造制御若しくは粒子径制御が容易である点またはラテックスの安定性等の点から、乳化重合により得られた重合体粒子の水性ラテックスであることがより好ましい。
【0018】
重合体粒子を構成する単量体としては、例えば、スチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化物、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、モノエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、グリシジルメタクリレート等の架橋モノマーが挙げられ、それらのホモ重合体、共重合体、または重合体のラテックスの混合物も適用することができる。中でも、凝集体スラリーの製造し易さの点から、少なくとも一部にゴム状部を有する重合体粒子若しくは重合体の混合物であることが好ましい。
【0019】
重合体粒子の水性ラテックスにおける固形分濃度については特に制限はないが、凝集剤等と混合した際に凝集体を得やすいという点から、固形分濃度は15重量%〜50重量%の範囲であることが好ましい。15重量%未満では凝集体が生成しにくく、50重量%を越えると水性ラテックスの安定性が低下する傾向がある。
【0020】
水媒体中での乳化若しくは分散剤としては、水性ラテックスのpHを中性とした場合でも乳化若しくは分散安定性が損なわれないものを用いることが好ましい。具体的には、ジオクチルスルホコハク酸やドデシルベンゼンスルホン酸等に代表される様なアルキルまたはアリールスルホン酸、アルキルまたはアリールエーテルスルホン酸、ドデシル硫酸に代表されるようなアルキルまたはアリール硫酸、アルキルまたはアリールエーテル硫酸、アルキルまたはアリール置換燐酸、アルキルまたはアリールエーテル置換燐酸、ドデシルザルコシン酸に代表されるようなN−アルキルまたはアリールザルコシン酸、オレイン酸やステアリン酸等に代表されるようなアルキルまたはアリールカルボン酸、アルキルまたはアリールエーテルカルボン酸等の、各種の酸類のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、アルキルまたはアリール置換ポリエチレングリコール等の非イオン性乳化剤或いは分散剤、ポリビニルアルコール、アルキル置換セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸誘導体等の分散剤が例示される。これらは1種類または2種以上を適宜組み合わせて使用できる。上記の乳化若しくは分散剤は、重合体粒子の水性ラテックス作成過程において乳化・分散安定性に支障を来さない範囲でできる限り少量を使用することが好ましい。
【0021】
本発明の製造方法において用いることのできる重合体粒子の粒子径には特に制限は無く、重合体粒子を水性ラテックスの状態で安定的に得ることができるものであれば問題なく使用できる。工業生産性の面からは、体積平均粒子径が0.03〜2μmの範囲のものが、製造が容易であるという点でより好ましい。
【0022】
本発明の製造方法においては重合体粒子の水性ラテックスを用いても良いが、少なくとも当該水性ラテックスを含む混合物を用いることもできる。上記の水性ラテックスを含む混合物中に混合できる物質の例としては、例えば、有機溶媒をあげることができる。
【0023】
前記の有機溶媒としては、水性ラテックスと円滑に混合できるという点から、水と部分溶解性を示す有機溶媒が好ましく例示されうる。具体的には、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エタノール、(イソ)プロパノール、ブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等から選ばれる1種以上の有機溶媒が挙げられる。中でも、円滑な混合操作あるいは水性ラテックスとの混合性の点から、20℃における水に対する溶解度が5重量%以上、40重量%以下である有機溶媒であることが好ましい。なお、前記水性ラテックスと有機溶媒との混合方法について特に制限はなく、一般的に知られているものが利用できる。
【0024】
前記混合液中に含まれる有機溶媒の量は、重合体粒子の種類、あるいは重合体粒子の水性ラテックス中での固形分濃度によっても変化しうるため、特に制限されるものではないが、重合体粒子の水性ラテックス100重量部に対し有機溶媒を50〜400重量部混合することが好ましく、より好ましくは70〜300重量部である。有機溶媒の量が50重量部未満では、重合体粒子を安定して分散できなくなる場合があり、粘度が上昇して取り扱いが困難になる場合がある。逆に400重量部を超えると、有機溶媒の量が多くなり不経済である。
【0025】
本発明において用いることができる凝集剤としては、一般的に使用できるものであれば特に制限なく使用できる。例えば、塩酸、硫酸などの無機酸、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩等が使用できる。上記に例示した凝集剤の添加方法については特に制限されるものではないが、通常は濃度が10重量%以上、40重量%以下の水溶液で用いられる。添加量については、供する水性ラテックスの粒子径、使用した乳化剤の種類および組成に応じて適切な量の添加が必要であるが、ラテックス100重量部に対し1重量部以上、100重量部以下の通常使用される範囲で添加できる。
【0026】
また、例えば、ラテックスを凝集させる効果のある物質として、一般的に使用される高分子凝集剤の溶液、さらに特開平8−73520号公報に記載されているように、エタノール、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類等の水溶性有機溶媒等が例示される。ここで凝集させる効果のある物質として例示される有機溶媒は、水とは混合するが重合体粒子を溶解しないものが好ましい。
【0027】
前記水性ラテックスと混合する物質が、水に対し部分溶解性を示す有機溶媒である場合、上記凝集剤のかわりに水を使用することにより、重合体粒子の凝集体を得ることが可能である。当該混合物と水を接触させることにより、混合物に含まれる有機溶媒の一部が水に溶解し水相となり得る。同時に、混合物に含まれる水性ラテックス由来の水分も水相へ排除され得る。このため、混合物は水を含んだ有機溶媒中にゴム状重合体粒子を濃縮した形となり、結果として凝集体を生成できる。
【0028】
前記水性ラテックスを凝集させる効果を有する物質として、水性ラテックスを含む混合物と混合接触させる水の量は、重合体粒子の種類、重合体粒子の水性ラテックス中での固形分濃度、有機溶媒の種類や量によっても変化するため特に制限されないが、水性ラテックスを含む混合物に混合した有機溶媒100重量部に対し、40重量部以上、350重量部以下の範囲であることが好ましい。更には60重量部以上、250重量部以下の範囲であることがより好ましい。前記水の量が40重量部未満では、重合体粒子の凝集体が生成しにくくなる傾向があり、逆に350重量部を超えると凝集体スラリーの濃度が低くなる。
【0029】
本発明における撹拌装置は、水性ラテックス若しくは当該水性ラテックスを含む混合物と、凝集剤若しくはラテックスを凝集させる効果のある物質を、装置内に連続的に供給でき、生成した凝集体スラリーを連続的に回収できるものであれば特に限定されないが、中でも、竪型の装置を使用し、装置底部より水性ラテックスあるいは水性ラテックスを含む混合物、および凝集剤あるいはラテックスを凝集させる効果のある物質をそれぞれ供給し、装置上部より凝集体スラリーをオーバーフローにより回収できることが好ましい。上記の装置底部とは、装置の底面から液面までの1/3以下の部分を示し、装置上部とは、同様に底面から液面までの高さに対し、底面から2/3以上の部分を示す。
【0030】
凝集体スラリーの生成操作は、部分的な未凝集体の発生防止の観点から、攪拌下あるいは攪拌と同等の流動性を付与させることができる流動条件下で実施することが望ましい。例えば、攪拌機を備えた撹拌装置で連続操作により実施することができる。本発明では、この凝集体生成操作をより効率的且つ安定して行うため、水性ラテックス若しくは当該水性ラテックスを含む混合物と、凝集剤若しくはラテックスを凝集させる効果のある物質を、かき上げ型傾斜パドル翼を多段に設置した装置に連続的に供給し、凝集体スラリーを連続的に得ることができる。なお、上記かき上げ型傾斜パドル翼については、特に制限されず公知のものが使用できるが、パドル翼の傾斜角度は、30〜60°程度が好ましい。かき上げ型傾斜パドル翼の傾斜角度が60°を越える場合、逆に30°未満であれば、凝集体が上昇できず滞留する場合がある。また、かき上げ型傾斜パドル翼の段数は装置形状により、特に制限されるものではないが、2段〜6段程度が好ましい。
【0031】
凝集体スラリーの固液分離は、加圧濾過、減圧濾過、遠心分離等、工業的に一般に知られている濾過装置を用いて行うことができる。固液分離操作においては、凝集体の粒子径が安定することによって、濾過ケーキの含液率が安定し、引き続き行われる乾燥等の工程での負荷が安定化する。これにより、結果として製品の品質安定化に繋がる。
【0032】
撹拌装置に予め充填する凝集体スラリーの作成方法は特に限定されるものではない。例えば、別の容器で作成した凝集体スラリーを充填する方法、原料供給に先立って回分方式で装置内に凝集体スラリーを作成する方法等が挙げられる。
【0033】
凝集体スラリーの連続製造の前に予め装置内に充填する凝集体スラリーの量は特に制限されるものではないが、好ましくは装置の満液量に対し1/5以上、更には1/3以上が好ましい。1/5未満である場合、凝集体スラリーが装置容積に対して少量のため、撹拌翼で充分混合できない場合が起こりうる。
【0034】
充填する凝集体スラリーの濃度は、続いて処理する凝集体スラリーと同様の性状のものが好ましい。凝集体スラリーの濃度が薄い場合、水性ラテックス等の原料の供給を開始した直後に回収される凝集体スラリーの濃度が薄くなる。反対に凝集体スラリーの濃度が高い場合は、凝集体粒子の肥大、あるいは撹拌装置内の凝集体の流動状態が低下し撹拌装置の閉塞が起こる場合がある。
【0035】
上記のとおり、本発明により水性ラテックス等の原料供給開始直後より粒子径の安定した凝集体スラリーを連続して簡便かつ効率的に得ることが可能となり、連続化による設備費の抑制、生産効率の向上に加えて、品質の安定化、製品ロス率が低減できる製造プロセスを提供できる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
槽径70mm、高さ350mmの竪型1L撹拌装置に、翼径50mmの傾斜パドル翼を4段設置し、スチレンとブタジエンを共重合させたゴムにアクリロニトリル、メチルメタクリレート、スチレンをグラフト重合させた重合体粒子の水性ラテックス(固形分濃度30重量%)200gとメチルエチルケトン(20℃における水に対する溶解度11重量%)200gの混合物を充填した。装置底部より水を288g供給した後、450rpmで5分間撹拌を行い、凝集体スラリーを作成した。
【0038】
その後、撹拌下で、ゴム状重合体の水性ラテックスとメチルエチルケトンの等量混合物を、撹拌装置の底部50mmの位置より128ml/分で供給した。同時に、撹拌装置底部の同じ高さに設置した別の供給口より、水を92ml/分の速度で供給した。撹拌装置上部よりオーバーフローにより、凝集体スラリーを回収した。凝集体スラリーの体積平均粒子径を湿式ふるい法により測定した結果、開始5分後に1700μm、10分後に1700μm、20分後に1700μm、と開始直後より粒子径に変化が認められなかった。
【0039】
この20分後の凝集体スラリーを目開き100μmのろ盤で固液分離した結果、排水に流出した固形分は全体の2.3重量%であった。スラリー濃度も、5分、10分、20分後とも約8重量%であり変化が認められなかった。
【0040】
(実施例2)
実施例1で装置上部より回収した凝集体スラリーを装置内に再度充填し450rpmで撹拌を行った。撹拌下に、実施例1で使用した重合体粒子の水性ラテックスとメチルエチルケトンの等量混合物を、撹拌装置底部より50mmの位置に設置した供給口より、128ml/分の供給速度で撹拌装置内に供給した。同時に撹拌装置底部の同じ位置に設置した別の供給口より水を92ml/分の供給速度で供給した。
【0041】
撹拌装置上部よりオーバーフローにより凝集体スラリーを回収した。凝集体スラリーの体積平均粒子径は、供給開始5分後に2000μm、10分後に2000μm、20分後に2000μmと開始直後よりほぼ安定した粒子径が得られた。
【0042】
この凝集体スラリーを目開き100μmのろ盤で固液分離した結果、排水に流出した固形分は、全体の3重量%であった。回収した凝集体スラリーの固形分濃度も5分、10分、20分後とも8重量%であった。
【0043】
(実施例3)
実施例1と同様の装置に、32重量%の塩化ナトリウム水溶液400gを充填し330rpmで撹拌を開始した。次いで撹拌装置底部の供給口より、実施例1で使用した重合体粒子の水性ラテックス100gを供給し凝集体スラリーを作成した。
【0044】
330rpmで撹拌を維持し、撹拌装置底部より50mmの位置に設置した供給口よりラテックスを60ml/分の供給速度で撹拌装置内に供給した。同時に撹拌装置底部の同じ位置に設置した別の供給口より塩化ナトリウム32重量%水溶液を200ml/分の供給速度で供給した。
【0045】
撹拌装置上部よりオーバーフロ−にて凝集体スラリーを回収した。凝集体スラリーの体積平均粒子径は、供給開始5分後に150μm、10分後に200μm、20分後に200μm、と開始直後よりほぼ安定した粒子径が得られた。回収した凝集体スラリーの固形分濃度も5分、10分、20分後とも6重量%であった。
【0046】
(比較例1)
実施例1と同一の装置に、水400gとメチルエチルケトン200gを充填し混合した。実施例1と同様に、450rpmで撹拌を開始した後、撹拌槽底部の供給口より、実施例1で使用した重合体粒子の水性ラテックスとメチルエチルケトンの等量混合物を128ml/分、水を92ml/分の供給速度で装置内に供給し凝集体スラリーを作成した。
【0047】
撹拌装置上部より回収した凝集体スラリーの体積平均粒子径を経時的に測定した結果、5分後に1200μm、10分後に1400μm、20分後に1700μmと、開始直後の粒子径が小さく、経時的に粒子径が大きくなる結果となった。原料供給開始から5分後の凝集体スラリーを目開き100μmのろ盤で固液分離した結果、排水に流出した固形分は、全体の10重量%と非常に多い結果であった。原料供給開始から5分後の凝集体スラリーの固形分濃度は3重量%、20分後には8重量%となった。
【0048】
(比較例2)
実施例1と同様の装置内に500gの32重量%塩化ナトリウム水溶液を充填し、330rpmで撹拌した。撹拌装置底部より50mmの位置に設置した供給口より実施例1で使用した重合体粒子の水性ラテックスを60ml/分の速度で供給した。同時に、撹拌装置底部に設置した別の供給口より32重量%の塩化ナトリウム水溶液を200ml/分で供給した。
【0049】
撹拌装置上部より回収した凝集体スラリーの体積平均粒子径を経時的に測定した結果、5分後に100μm、10分後に200μm、20分後に200μmと、開始直後の粒子径が小さく不定形の微粉が多く観察され、経時的に粒子径が大きくなる結果となった。回収した凝集体スラリーの固形分濃度は、原料供給開始より5分後の凝集体スラリーの固形分濃度は3重量%と薄く、20分後には7重量%までアップした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体粒子の水性ラテックス若しくは当該水性ラテックスを含む混合物、並びに凝集剤若しくはラテックスを凝集させる効果を有する物質を連続的に接触させて重合体粒子の凝集体スラリーを製造する方法において、予め装置内に凝集体スラリーを充填しておくことを特徴とする、重合体粒子の製造方法。
【請求項2】
装置内に予め充填する凝集体スラリーの量が、装置の満液量に対し1/5以上であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
水性ラテックス若しくは当該水性ラテックスを含む混合物、並びに凝集剤若しくはラテックスを凝集させる効果のある物質を連続的に装置底部より供給し、得られた凝集体スラリーを装置上部より回収することを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
かき上げ翼を多段に設置した撹拌装置を用いて凝集体スラリーを製造することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
重合体粒子の水性ラテックスを含む混合物が、当該水性ラテックスと有機溶媒を含有する混合物であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、20℃における水に対する溶解度が5重量%以上、40重量%以下であることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
重合体粒子の水性ラテックスと有機溶媒を含有する混合物が、重合体粒子の水性ラテックス100重量部に対し有機溶媒を50〜400重量部用いることを特徴とする、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
ラテックスを凝集させる効果を有する物質が水であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−104320(P2006−104320A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292372(P2004−292372)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】