説明

重合体組成物の製造方法および重合体組成物

【課題】溶媒に対する溶解性が高い重合体組成物の製造方法および重合体組成物の提供。
【解決手段】ラジカル重合性モノマーを、顔料分散剤または顔料分散剤を含有する溶液中で、ラジカル重合開始剤の共存下で重合させることを含んでなる、重合体組成物の製造方法を提供する。好ましくは、顔料分散剤が、−O−、−COO−、−NR7−、−NR8CO−または−NR9COO−基〔ここで、R7、R8およびR9は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜20の1価の炭化水素基または炭素数1〜20の1価のヒドロキシアルキル基を示す〕に隣接する炭素原子に水素原子が結合しているウレタン系分散剤、ポリアミン系分散剤または側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと4級アンモニウム塩基を有さないBブロックとからなるA−Bブロック共重合体および/またはB−A−Bブロック共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、日本国特願2005−225660及び日本国特願2005−378781を基礎とするパリ優先権主張出願を伴ったものであり、これら特許出願の内容は本願明細書の内容をなす。
【技術分野】
【0002】
本発明は、重合体組成物の製造方法および重合体組成物に関するものである。さらに詳しくは、本発明の第一の態様は、溶媒に対する溶解性が高い重合体組成物の製造方法および重合体組成物に関するものである。本発明の第二の態様は、インキ用組成物の構成成分として好適な、優れた相溶性を有する重合体組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
本発明の第一の態様
重合体組成物は、従来より種々の分野において用いられており、例えばインキ組成物におけるバインダー樹脂として従来から広く用いられている。インキ用組成物は、通常、顔料、バインダー樹脂、添加剤、溶媒等から構成されている。
【0004】
インキ組成物のバインダー樹脂には、インキ組成物の調製およびその塗布作業が良好に行われるようにするために、溶媒に対する十分な溶解性や、顔料等との親和性、および乾燥硬化させて塗膜を形成した後の耐久性等が要求されている。
【0005】
インキ組成物として優れた性能を発揮させるためには、これらの構成成分の相溶性を制御することが極めて重要である。例えば、バインダー樹脂と溶媒との相溶性が良好でない場合には、高濃度のインキ組成物を調製することが困難であったり、インキ組成物の調製を効率的に行えなかったり、塗布作業ないし乾燥硬化に時間がかかったり、十分な耐久性を備えた塗膜を形成させるのが難しい、等の問題が発生する場合があった。
【0006】
インキ組成物のバインダー樹脂として従来から広く用いられているものとしては、アクリル系樹脂を挙げることができる。アクリル系樹脂は、重合させるアクリル系モノマーの種類や組成、分子量を変えることによって物性の変更等が容易であるため、インキ用のバインダー樹脂として好適に用いられている。
【0007】
そのようなアクリル系モノマーを重合してバインダー樹脂を製造する方法としては、通常、ラジカル重合反応が用いられている。特にラジカル重合開始剤の存在下に溶媒中にてモノマーの重合を行う溶液重合法は、重合反応終了後、樹脂溶液をそのまま用いることができるため、溶剤系インキ用バインダー樹脂の製造方法として工業的に実施されている。
【0008】
インキ組成物を調製する際にはバインダー樹脂を溶媒に溶解させるが、バインダー樹脂として好んで使用されているアクリル系樹脂は、インキ用組成物の溶媒として一般的なアルキルエステルやポリアルキレングリコールアルキルエーテル等には溶解しにくいという問題点があった。
【0009】
そこで、アクリル系樹脂の溶解性を向上させる技術として、アクリル系モノマーとしてアクリル酸またはメタクリル酸のグリコールモノエステルを用いる方法(例えば、特公平6−4810号公報)、特定の有機珪素化合物を共重合モノマーとして用いる方法(特開2000−313725号公報)、樹脂の低分子量化によって溶解性向上させる技術(例えば、特許第2727398号公報)等が提案されている。
【0010】
上記各方法は、アクリル系樹脂の溶解性向上技術として有用なものと認められる。しかし、本発明者が知る限りでは、上記方法で溶解性を向上させた樹脂をインキのバインダーとして利用した場合、印字物の物性、例えば乾燥性、耐久性が不十分であることが多く、従って、樹脂の溶解性の向上ならびに印字物の物性の向上が一層求められている。
【0011】
耐擦過性等に優れ、塗膜強度が高いインキ組成物は、ガラス転移点(Tg)が高いバインダー樹脂を用いることによって得ることができる。しかし、そのようなTgが高い樹脂は、一般に溶媒との相溶性が非常に悪くて、溶媒、特にインキ組成物用溶媒、に溶解させることが非常に難しかった。
【0012】
このように、溶媒への溶解性が優れた重合体組成物、特にTgが高い樹脂組成物、を得ることは難しかった。そして、このことから、そのような溶解性が優れた重合体組成物をバインダー樹脂として用いてなる耐久性に優れた塗膜を形成可能なインキ組成物も、得られていなかった。
【0013】
本発明の第二の態様
重合体組成物は、従来より種々の分野において用いられており、例えばインキ用組成物におけるバインダー樹脂として従来から広く用いられている。
【0014】
インキ用組成物は、通常、顔料、バインダー樹脂、溶剤を必須成分とし、これらと必要に応じて用いられた例えば顔料分散剤等の助剤から構成されている。インキ組成物として優れた性能を発揮させるためには、これらの構成成分の相溶性や親和性を制御することがきわめて重要である。例えば、顔料とバインダー樹脂との親和性が良好でない場合には、インキの保存安定性が悪くなり、安定した物性のインキを作製することができなくなる。
【0015】
そこで、従来、顔料をインキ用組成物中に安定的に分散させるために、顔料分散剤を、インキ用組成物を調製する際に、顔料やバインダー樹脂等のインキ用組成物の他の構成成分と混合することが行われている。そのような顔料分散剤としては、顔料に親和性を持つ顔料吸着部分と、バインダー樹脂と相互作用する部分とで構成されたものが広く用いられている。顔料分散剤のバインダー樹脂と相互作用する部分は、一般にポリエステル基や炭化水素基で構成されているが、バインダー樹脂に例えばアクリル系樹脂を用いた場合、顔料分散剤との相溶性が悪く、インキにした場合に十分な性能が得られないことがしばしばあった。
【0016】
ビニル重合体との相互作用を向上させた分散剤の例として、特開2004−344795号公報にビニル重合体グラフトポリエチレンイミンの合成方法について開示されている。しかし、ビニル重合体グラフトポリエチレンイミンは合成工程が多く、合成条件によってゲル化を起こすなどするために汎用性が乏しかった。
【0017】
そして、依然として、顔料分散剤とアクリル系樹脂との相溶性を容易に改善できる方法が求められている。
【発明の開示】
【0018】
本発明の第一の態様
本発明の第一の態様は、溶媒に対する溶解性が高い重合体組成物の製造方法および重合体組成物を提供するものである。このような本発明によれば、ラジカル重合性モノマーを特定の溶媒中において重合させることにより、同ラジカル重合性モノマーから生成された従来の重合体に比べて溶媒に対する溶解性が著しく向上している。従って、本発明は、溶解性が不良であるためにインキ用バインダーに使用できなかった樹脂を溶解可能にするための、樹脂の改良方法もしくは樹脂の変性方法として捉えることも可能である。
【0019】
本発明者は、鋭意検討した結果、以下の手段によって上記課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明による重合体組成物の製造方法は、ラジカル重合性モノマーを、下記の式(1)または(2)で示される化合物を含んでなる溶媒中において、ラジカル重合開始剤の共存下で重合させるものである。
【化1】

〔式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または1価の炭化水素基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基を示し、必要に応じてRは、nil.を示し、Yは、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。mは0または1の整数を示し、nは1〜10の整数を示す。また、XおよびXは、それぞれ独立して、下記のいずれかの2価の置換基を示す。下記において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。〕
【化2】

【0020】
このような本発明による重合体組成物の製造方法は、好ましい態様として、前記のRおよびRが、水素または炭素数1〜6のアルキル基であり、前記のRおよびRが、炭素数1〜6のアルキレン基であり、Yが、水素、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基であり、nが1〜6であり、RおよびRが、水素、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基であるもの、を包含する。
【0021】
このような本発明による重合体組成物の製造方法は、好ましい態様として、前記のラジカル重合開始剤が、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシカーボネート系、パーオキシケタール系、ケトンパーオキサイド系有機過酸化物から選ばれる1種または2種以上からなるもの、を包含する。
【0022】
そして、本発明による重合体組成物は、下記の重合体(A):
【化3】

〔式中、Sは溶媒由来成分を示し、(M)は、ラジカル重合性モノマー単位Mからなる重合部分を示す。pは任意の整数を示す。〕
を含むものである。
【0023】
発明の効果
本発明によれば、溶解性が高い重合体を得ることができる。従って、樹脂設計において、本来溶解しにくかった難溶性樹脂を、所望の溶媒に溶解させることができるようになるため、溶解性を懸念することなく設計が可能となる。
【0024】
さらに、本発明の製造方法を、例えばメチルメタクリレートホモポリマーなど高Tgの樹脂の製造に適応した場合、従来の、共重合や樹脂の低分子量化により溶解性を向上させる方法では得ることのできなかった塗膜強度が得られる。このことにより、本発明による樹脂組成物をインキのバインダーに使用した場合、インキ要求物性、例えば乾燥性、耐擦過性等を向上させることができる。
【0025】
産業上の利用可能性
本発明によって得られた重合体組成物は、例えば印刷インキ用およびこれらのコーティング用のバインダー樹脂、塗料およびこれらのコーティング用のバインダー樹脂、フォトレジスト、カラーレジスト、ブラックマトリクス等のバインダー樹脂、接着剤用樹脂等のの各利用分野に加えて、本発明による重合体組成物を単独で、あるいは必要に応じて他の有機材料または無機材料と共に、本発明による重合体組成物を溶媒中に溶解ないし混合することがある各種の分野、及びこの溶解物を利用する分野、並びにこれに関連した分野等の広範な分野において利用可能なものである。
【0026】
本発明の第二の態様
本発明の第二の態様は、インキ用組成物の構成成分として好適な、優れた相溶性を有する重合体組成物の製造方法を提供することを課題とし、この課題は、ラジカル重合性モノマーの重合を特定の条件下に行うことによって解決するものである。
【0027】
したがって、本発明による重合体組成物の製造方法は、ラジカル重合性モノマーを、顔料分散剤または顔料分散剤を含有する溶液中で、ラジカル重合開始剤の共存下で重合させるものである。
【0028】
このような本発明による重合体組成物の製造方法は、好ましい態様として、前記の顔料分散剤が、−O−、−COO−、−NR−、−NRCO−または−NRCOO−基〔ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜20の1価の炭化水素基または炭素数1〜20の1価のヒドロキシアルキル基を示す〕に隣接する炭素原子に水素原子が結合しているウレタン系分散剤、ポリアミン系分散剤または側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと4級アンモニウム塩基を有さないBブロックとからなるA−Bブロック共重合体および(または)B−A−Bブロック共重合体であるもの、を包含する。
【0029】
このような本発明による重合体組成物の製造方法は、好ましい態様として、前記のラジカル重合開始剤が、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシカーボネート系、パーオキシケタール系、ケトンパーオキサイド系有機過酸化物から選ばれる1種類または2種類以上からなるもの、を包含する。
【0030】
このような本発明による重合体組成物の製造方法は、好ましい態様として、溶媒として、下記の式(1)または(2)で示される化合物を用いるものである。
【化4】

〔式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または1価の炭化水素基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基を示し、必要に応じてRは、nil.を示し、Yは、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。mは0または1の整数を示し、nは1〜10の整数を示す。また、XおよびXは、それぞれ独立して、下記のいずれかの2価の置換基を示す。下記において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。〕
【化5】

【0031】
発明の効果
本発明によれば、優れた相溶性を有する重合体組成物を得ることができる。従って、本発明によれば、従来相溶性が悪いためにインキに使用できなかった顔料分散剤とアクリル系バインダー樹脂の組合せにおいて、相溶性を改善させることができるため、自由なインキ設計が可能となる。
【0032】
このように、本発明によれば各構成成分の相溶性が良好なインキ用組成物を調製可能な重合体組成物が得られるので、インキの経時安定性が向上しており、かつ良好な塗膜物性を示す塗膜を形成可能なインキ用組成物を提供できる。特に、本発明によれば、相溶性が十分でないことから従来使用が困難とされてきたガラス転移温度(Tg)が高い樹脂であってもインキ組成物の構成成分として使用可能になり、そしてそのような樹脂であっても良好な相溶性が得られるので、これらの相乗的効果により塗膜強度が著しく向上した塗膜を容易に得ることができる。そして、印刷面の光沢も顕著に向上する。
【0033】
産業上の利用可能性
本発明によって得られた重合体組成物は、例えば印刷インキ用およびこれらのコーティング用のバインダー樹脂、塗料およびこれらのコーティング用のバインダー樹脂、フォトレジスト、カラーレジスト、ブラックマトリクス等のバインダー樹脂、接着剤用樹脂等のの各利用分野に加えて、本発明による重合体組成物を単独で、あるいは必要に応じて他の有機材料または無機材料と共に本発明による重合体組成物を溶媒中に溶解ないし混合することがある各種の分野、及びこの溶解物を利用する分野、並びにこれに関連した分野等の広範な分野において利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、実施例A1により得られた重合体1を、レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置によって測定したときのデータを示す。
【図2】図2は、実施例A2により得られた重合体2を、レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置によって測定したときのデータを示す。
【図3】図3は、実施例A6により得られた重合体6を、レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置によって測定したときのデータを示す。
【発明の具体的な説明】
【0035】
<定義>
1)「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」の両者を意味するものである。同様に、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタクリレート」の両者を意味する。
2)「2価の炭化水素基」又は「2価の置換基」は2本鎖(一の鎖と他の鎖)を有する為、一の鎖と他の鎖のいずれもが他の基と結合することができる。よって、本発明において、「2価の炭化水素基」又は「2価の置換基」は、その例示された2価の基(例えば、−AB−)とそれを180度回転した基(例えば、−BA−)の両者を包含するものである。
3)「nil.」とは、該当する基が存在しないことを意味する。具体的には、本発明において、RおよびXが「nil.」を示すことがあるが、この場合、RおよびXは存在しないことを意味する。
【0036】
本発明の第一の態様
本発明の第一の態様による重合体の製造方法について以下詳細に説明する。
<ラジカル重合性モノマー>
本発明におけるラジカル重合性モノマーとしては、ラジカル重合可能なエチレン性二重結合を分子中に少なくとも一個有し、後述する溶媒中においてラジカル重合開始剤の共存下で重合可能なものであれば各種のモノマーを用いることができる。
【0037】
そのようなラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(イ)スチレン、
(ロ)スチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル誘導体、
(ハ)(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸−iso−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−iso−オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸−iso−ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニノニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸−1,1,1−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2,3−ジヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどの(メタ)アクリル酸エステル類、
(ニ)(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−iso−プロピルアミド、(メタ)アクリル酸ブチルアミド、(メタ)アクリル酸ステアリルアミド、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルアミド、(メタ)アクリル酸フェニルアミド、(メタ)アクリル酸ベンジルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド、
(ホ)(メタ)アクリル酸アニリド、(メタ)アクリロイルニトリル、アクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、酢酸ビニルなどのビニル化合物、
(ヘ)N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリンマレイミド、N−(4−ヒドキシフェニル)マレイミドなどのモノマレイミド、
(ト)N−(メタ)アクリロイルフタルイミドなどのフタルイミド、を挙げることができる。
【0038】
なお、本発明では、上記で例示したラジカル重合性モノマーの一種類を単独で用いることもできるし、上記で例示したラジカル重合性モノマーの二種類以上を組み合わせて用いることも出来る。また、上記ラジカル重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーを必要に応じて併用することができる。従って、本発明によって製造される重合体組成物には、上記ラジカル重合性モノマーの単独重合体および共重合体、ならびにこれらと他のモノマーとの共重合体からなるものが包含される。
【0039】
<溶 媒>
本発明において用いられる溶媒は、下記の式(1)または(2)で示される化合物からなるものである。
【化6】

〔式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または1価の炭化水素基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基を示し、必要に応じてRは、nil.を示し、Yは、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。mは0または1の整数を示し、nは1〜10の整数を示す。また、XおよびXは、それぞれ独立して、下記のいずれかの2価の置換基を示す。下記において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。〕
【化7】

【0040】
およびRは、それぞれ独立して、水素または1価の炭化水素基を示す。本発明では、水素および炭素数1〜12、特に炭素数1〜6、のアルキル基が好ましい。炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましい。
は、2価の炭化水素基を示す。本発明では、炭素数1〜8、特に炭素数1〜6、のアルキレン基が好ましい。炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましい。また、Rは、必要に応じてnil.を示す。
は、2価の炭化水素基を示す。本発明では、炭素数1〜8、特に炭素数1〜6、のアルキレン基が好ましい。炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましい。mが0である場合、式(2)の化合物は、Rが存在しないものであってXとXとが直接結合したものとなる。
Yは、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。本発明では、水素、炭素数1〜6、特に炭素数1〜4、のアルキル基が好ましい。水素および炭素数1〜3のアルキル基が更に好ましい。
nは1〜10の整数を示す。好ましいnは1〜8、特に好ましいnは1〜6、である。
【0041】
として好ましいのは、−O−、−CO−O−、−NR− および −NR−CO− であり、特に好ましいのは、−O− および −CO−O− である。
として好ましいのは、−O−、−CO−O−、−NR− および −NR−CO− であり、特に好ましいのは、−O− および −CO−O− である。ここで、「nil.」とは、Xが存在しないこと意味する。従って、Xが「nil.」の場合、該化合物(2)は、RとRとが直接結合したもの、あるいは同時にmが0である場合にはXとRとが直接結合したものとなる。
は、水素、1価の炭化水素基または1価のヒドロキシアルキル基を示す。本発明では、水素および炭素数1〜8、特に炭素数1〜6、のアルキル基またはヒドロキシアルキル基が好ましく、水素、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が特に好ましい。
は、水素、1価の炭化水素基または1価のヒドロキシアルキル基を示す。本発明では、水素および炭素数1〜8、特に炭素数1〜6、のアルキル基またはヒドロキシアルキル基が好ましく、水素、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が特に好ましい。
【0042】
本発明では、式(1)で示される化合物のみからなる溶媒、式(2)で示される化合物のみからなる溶媒、上記の式(1)で示される化合物と式(2)で示される化合物との混合溶媒、上記の式(1)で示される化合物および式(2)で示される化合物の何れか一方あるいは両方と他の溶媒化合物(即ち、(1)および(2)の化合物以外の溶媒化合物)とからなるもの、を用いることができる。他の溶媒化合物としては、例えばトルエン、キシレンを挙げることができる。これらの他の溶媒化合物を併用する場合、上記の(1)および(2)の化合物の存在量が全溶媒量100重量%に対して少なくとも30重量%以上となるようにすることが好ましい。(1)および(2)の化合物の存在量が30重量%未満である場合には、本発明の効果が十分得られない場合がある。
【0043】
本発明における上記式(1)または式(2)で示される化合物としては、後で記述する反応機構より、脱離しやすい水素を分子内に有しているものが適切である。ここで、「脱離しやすい水素」とは、XまたはXに隣接する炭素原子に結合している水素である。X、Xは、孤立電子対やΠ電子を有する原子または原子団であるため、水素が脱離した後の炭素原子を電気的に安定化するものと考えられる。
【0044】
上記式(1)または式(2)で示される化合物のうち特に好ましいものとしては、例えば、
(イ)ポリアルキレングリコール類、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなど、
(ロ)ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルなど、
(ハ)ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテルなど、
(ニ)ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど、
(ホ)アルキルエステル類、例えばブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、ヘキシルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸エチルエステル、プロピオン酸プロピルエステル、乳酸エチルエステルなど、
(ヘ)環状エーテル類、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなど、
(ト)環状アミン類、例えばモルホリン、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、4−(3−ヒドロキシプロピル)モルホリン、4−メチルモルホリンなど、
(チ)アミド類、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、カプロラクタム、1,3−ジメチルイミダゾリドンなど、
(リ)環状エステル類、例えばカプロラクトン、γ−ブチロラクトン、バレロラクトンなど、
(ヌ)環状ケトン類、例えばシクロヘキサノンなど、
(ル)スルホラン類、例えばテトラメチレンスルホンなど、が挙げられる。
【0045】
<ラジカル重合開始剤>
本発明で使用されるラジカル重合開始剤は、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシカーボネート系、パーオキシケタール系、ケトンパーオキサイド系有機過酸化物が良く、具体的には下記化合物を挙げることができる。尚、下記において、化合物名の右肩に「*」が付されたものは本発明において特に好ましい化合物である。
【0046】
(イ)ハイドロパーオキサイド類、例えばt−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなど、
(ロ)ジアルキルパーオキサイド類、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなど、
(ハ)パーオキシエステル類、例えば1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3−メチルベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなど、
(ニ)ジアシルパーオキサイド類、例えばジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドなど、
(ホ)パーオキシカーボネート類、例えばジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、ジ(3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−1−メチルヘプチルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなど、
(ヘ)パーオキシケタール類、例えば2,2−ジ(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレートなど、
(ト)ケトンパーオキサイド類、例えばアセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなど、が挙げられる。
【0047】
中でも、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系有機過酸化物が好ましい。
これらのラジカル重合開始剤は、1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0048】
<重合体組成物の製造方法>
本発明による重合体組成物の製造方法は、前記のラジカル重合性モノマーを、上記の式(1)または(2)で示される化合物からなる溶媒中において、ラジカル重合開始剤の共存下で重合させることからなるものである。
【0049】
本発明では、上記式(1)または(2)で示される化合物からなる溶媒中に、(イ)ラジカル重合性モノマーとラジカル重合開始剤の混合物を添加する方法、(ロ)ラジカル重合性モノマーを添加し、その後ラジカル重合開始剤を添加する方法が好ましいが、(ハ)式(1)または(2)で示される化合物からなる溶媒中にラジカル重合開始剤を添加した後、ラジカル重合性モノマーを添加することもできる。
【0050】
複数種のラジカル重合性モノマーからなるランダム、ブロックまたはグラフト共重合体として本発明による樹脂組成物を得る場合には、上記各共重合体の製造に適するように、ラジカル重合性モノマーの供給方法、重合工程を複数工程に分割したり、複数の重合工程を組み合わせることができる。
【0051】
本発明において、ラジカル重合性モノマーの使用量は、溶媒中における当該ラジカル重合性モノマーのモノマー濃度が10〜80重量%、特に20〜60重量%、となる範囲が好ましい。モノマー濃度が10重量%未満では、モノマーが十分に重合せずに未反応モノマーが多くなる傾向がある。一方、80重量%を超えると、重合時の発熱の制御が難しく、また、得られた重合体溶液の粘度が高くなりすぎて工業的に好ましくない。
【0052】
ラジカル重合開始剤は任意の量で使用することができるが、ラジカル重合性モノマー100重量%あたり、0.05〜25重量%、好ましくは0.1〜20重量%の範囲で添加するのが良い。0.05重量%より少ないと未反応モノマーが残り、モノマー臭や、皮膚刺激性などの観点から好ましくない。一方、25重量%を超えると、反応時の発熱などの観点から、工業的に好ましくない。
【0053】
重合温度は、使用する開始剤により異なってくるが、開始剤の1時間半減温度±20℃の範囲で行うのが好ましい。これより低い温度で反応を行うと、未反応の開始剤やモノマーが多く残ったり、合成に時間がかかるため好ましくない。また、これより高い温度で反応を行うと、開始剤の分解が速過ぎるために、モノマーが十分に反応せず、未反応モノマーが多く残る結果となる。
【0054】
以下に本発明により樹脂の溶解性が向上する機構について、末端溶剤付加型樹脂の生成反応をもとに説明するが、本発明はこの反応機構に何ら制限されるものではない。
【0055】
通常、ラジカル重合はラジカル重合性モノマー、ラジカル重合開始剤、及び必要に応じて連鎖移動剤を用いた方法により行われ、以下の三段階よりなる。(参考文献;「改訂
高分子合成の化学」、(株)化学同人発行、第2版(1979年1月10日発行))
<反応機構1>
開 始 I → I・ + I・ (i)
・ + M → I−M・ (ii)
生 長 I−M・ + M → I−M−M・ (iii)
停止(再結合) 2I−M…M・ → I−M…M−M…M−I (iv)
停止(不均化) 2I−M…M・ → I−M…M−H + I−M…M−M (v)
〔ここで、Iはラジカル重合開始剤を、I・およびI・は、ラジカル重合開始剤由来のラジカルを、Mはラジカル重合性モノマーを、M…Mは重合体を、表す。〕
【0056】
また、ラジカル重合の場合、ラジカルの置換反応である連鎖移動が、生長反応と競争して起こることは、よく知られている。重合系に存在するすべての物質が連鎖移動に関与するものとして挙げられるが、溶液重合の場合、以下のような、溶媒への連鎖移動反応が停止反応に関与すると考えられている。
−M…M・ + S−H → I−M…M−H + S・ (vi)
〔ここで、S−Hは溶媒を、S・は連鎖移動反応により生成するラジカルを表す。〕
ここで生成した溶媒由来ラジカル「S・」が、系中に存在するラジカル重合性モノマーMと反応すると(再開始反応)、以下のような反応により、重合体(A)が生成可能である。
【0057】
<再開始反応>
開 始 S・ + M → S−M・ (vii)
生 長 S−M・ + M → S−M−M・ (viii)
停 止 S−M…M・ + S−H → S−M…M−H + S・ (ix)
〔ここで、S・は溶媒由来ラジカルを、Mは、ラジカル重合性モノマーを、M…Mは重合体を、表す。〕
【0058】
上記<再開始反応>によれば、重合体(A)の生成割合は、開始剤の種類により変わらないはずである。しかしながら、本発明の製造方法により得られた重合体組成物を、MALDI TOF−MS(レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置)(島津製作所(株)製 AXIMA−CFR plus、マトリックス;ジチラノール、カチオン化剤;NaI)にて分析したところ、重合体(A)の生成割合は、開始剤の種類により異なっている(図2、図3)。すなわち、開始剤の種類が、重合体(A)の生成割合に関係する別の反応機構の存在が示唆される。
【0059】
<反応機構2>
開 始 I → I・ + I・ (x)
・ + S−H → I−H + S・ (xi)(溶媒分子への連鎖移動)
S・ + M → S−M・ (xii)
生 長 S−M・ + M → S−M−M・ (xiii)
停 止 S−M…M・ + S−H → S−M…M−H + S・ (xiv)
〔ここで、Iはラジカル重合開始剤を、I・およびI・は、ラジカル重合開始剤分解由来のラジカルを、S−Hは溶媒分子を、Mはラジカル重合性モノマーを、M…Mは重合体を、表す。〕
【0060】
上記の反応機構によれば、開始剤種により重合体(A)の生成割合が変化するという分析結果が説明可能である。このような機構により、溶媒由来成分Sを末端に有する下記の重合体(A)を含む本発明による重合体組成物が提供されると考えられる。
【化8】

〔ここで、Sは溶媒由来成分を示し、(M)はラジカル重合性モノマー単位Mからなる重合部分を示す。pは任意の整数を示す。〕
【0061】
なお、本発明による重合体組成物を製造する場合、上記の重合体(A)と共に、下記重合体(B)が副生することがあるが、このような重合体(B)は本発明による重合体組成物中に共存していても差し支えない。従って、本発明による重合体組成物は、必須成分として重合体(A)を含んでなり、場合により重合体(A)以外の成分(例えば、重合体(B)等)とを含んでなる組成物を意味する。
【化9】

〔ここで、Iはラジカル重合開始剤由来成分を示し、(M)は、ラジカル重合性モノマー単位Mからなる重合部分を示す。qは任意の整数を示す。〕
【0062】
このような本発明による重合体組成物は、溶媒に対する溶解性が高いものである。
また、本発明では、ラジカル重合性モノマー、溶媒、ラジカル重合開始剤の選択ならびに重合条件の選定等によって、重合体組成物の内容、特性などを容易に制御することが可能である。従って、具体的用途に特に適した重合体組成物を任意に製造することができる。このことから、本発明による重合体組成物は、広範な用途に利用可能なものである。
【0063】
本発明は、インキに含まれる他の成分、例えば顔料、分散剤、ポリマー、添加剤などの共存下に実施しても、何ら問題はない。
【0064】
本発明による重合体組成物を、例えばインキ組成物、特にインキ組成物用バインダー樹脂として用いた場合には、インキ組成物の耐久性、耐擦過性、速乾性、発色性等を従来より改良することができる。
【0065】
本発明の第二の態様
<顔料分散剤>
本発明における顔料分散剤としては、任意の顔料分散剤を用いることができる。
【0066】
本発明において、好ましい顔料分散剤としては、(イ)ウレタン系分散剤、(ロ)ポリアミン系分散剤、(ハ)側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと4級アンモニウム塩基を有さないBブロックとからなるA−Bブロック共重合体および/またはB−A−Bブロック共重合体等を挙げることができ、特に好ましい顔料分散剤としては、−O−,−COO−、−NR−、−NRCO−または−NRCOO−基〔ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜10)の1価の炭化水素基または炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜10)の1価のヒドロキシアルキル基を示す〕に隣接する炭素原子に水素原子が結合している、ウレタン系分散剤、ポリアミン系分散剤または側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと4級アンモニウム塩基を有さないBブロックとからなる、A−Bブロック共重合体および/またはB−A−Bブロック共重合体を挙げることができる。
【0067】
本発明において顔料分散剤として使用できる化合物のいくつかは公知であって、上記の(イ)ウレタン系分散剤は、例えば特許第1879529号公報、特開昭60−166318号公報、特開2002−37845号公報、特許第3101824号公報に、(ロ)ポリアミン系分散剤は、例えば特許第1940521号公報、特許第1570685号公報、特許第3504268号公報、特表2003−509205号公報に、(ハ)側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと4級アンモニウム塩基を有さないBブロックとからなるA−Bブロック共重合体および/またはB−A−Bブロック共重合体は、例えば特許第2680594号公報、特開2004−66235号公報、特許第3590382号公報に、記載されている。
【0068】
また、本発明における顔料分散剤として利用可能な化合物は、商品として入手することも可能である。例えば、ビックケミー(株)製の「Disperbyk-161」、「Disperbyk-164」、「Disperbyk-165」、「Disperbyk-182」、「Disperbyk-184」、エフカケミカルス(株)製の「EFKA46」、「EFKA47」(いずれも商品名)は(イ)ウレタン系分散剤に相当するものとして、The Lubrizol Corporation製の「Solsperse 33500」、「Solsperse 32000」、「Solsperse 24000」、味の素ファインテクノ(株)製の「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(いずれも商品名)は(ロ)ポリアミン系分散剤に相当するものとして、ビックケミー(株)製の「Disperbyk-2000」、「Disperbyk-2001」(いずれも商品名)は(ハ)側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと4級アンモニウム塩基を有さないBブロックとからなるA−Bブロック共重合体および/またはB−A−Bブロック共重合体等として、本発明の好ましい分散剤にあたるものである。
【0069】
本発明の顔料分散剤は、ラジカル重合性モノマーの重合が、当該顔料分散剤を含有する溶液中において、ラジカル重合性開始剤の共存下で可能となるように、常温あるいはラジカル重合性モノマーの重合が行われる形態または温度条件において液状または粘稠液状の形態にあるものが好ましい。
【0070】
<溶 媒>
本発明の重合方法において溶媒を使用する場合、好ましく用いられる溶媒は下記式(1)または(2)で示される化合物からなるものである。
【化10】

〔式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または1価の炭化水素基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、2価の炭化水素基を示し、必要に応じてRは、nil.を示し、Yは、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。mは0または1の整数を示し、nは1〜10の整数を示す。また、XおよびXは、それぞれ独立して、下記のいずれかの2価の置換基を示す。下記において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。〕
【化11】

【0071】
およびRは、それぞれ独立して、水素または1価の炭化水素基を示す。本発明では、水素および炭素数1〜20、特に炭素数1〜16、のアルキル基が好ましい。炭素数1〜12のアルキル基が更に好ましい。
は、2価の炭化水素基を示す。本発明では、炭素数1〜12、特に炭素数1〜10、のアルキレン基が好ましい。炭素数1〜8のアルキル基が更に好ましい。Rは、必要に応じてnil.を示す。
は、2価の炭化水素基を示す。本発明では、炭素数1〜12、特に炭素数1〜10、のアルキレン基が好ましい。炭素数1〜8のアルキル基が更に好ましい。mが0である場合、式(2)の化合物は、Rが存在しないものであってXとXとが直接結合したものとなる。
Yは、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。本発明では、水素、炭素数1〜12、特に炭素数1〜10、のアルキル基が好ましい。水素および炭素数1〜8のアルキル基が更に好ましい。
nは1〜10の整数を示す。好ましいnは1〜8、特に好ましいnは1〜6、である。
として好ましいのは、−O−、−CO−O−、−NR− および −NR−CO− である。
として好ましいのは、−O−、−CO−O−、−NR− および −NR−CO− である。ここで、「nil.」とは、Xが存在しないこと意味する。従って、Xが「nil.」の場合、該化合物(2)は、RとRとが直接結合したもの、あるいは同時にmが0である場合にはXとRとが直接結合したものとなる。
は、水素、1価の炭化水素基または1価のヒドロキシアルキル基を示す。本発明では、水素および炭素数1〜12、特に炭素数1〜8、のアルキル基またはヒドロキシアルキル基が好ましく、水素、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基が特に好ましい。
は、水素、1価の炭化水素基または1価のヒドロキシアルキル基を示す。本発明では、水素および炭素数1〜12、特に炭素数1〜8、のアルキル基またはヒドロキシアルキル基が好ましく、水素、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基が特に好ましい。
【0072】
本発明では、式(1)で示される化合物のみからなる溶媒、式(2)で示される化合物のみからなる溶媒、上記の式(1)で示される化合物と式(2)で示される化合物との混合溶媒、上記の式(1)で示される化合物および式(2)で示される化合物の何れか一方あるいは両方と他の溶媒化合物(即ち、(1)および(2)の化合物以外の溶媒化合物)とからなるもの、を用いることができる。他の溶媒化合物としては、例えばトルエン、キシレンを挙げることができる。これらの他の溶媒化合物を併用する場合、上記の(1)および(2)の化合物の存在量が全溶媒量100重量%に対して少なくとも30重量%以上となるようにすることが好ましい。(1)および(2)の化合物の存在量が30重量%未満である場合には、本発明の効果が十分得られない場合がある。
【0073】
上記式(1)または式(2)で示される化合物のうち特に好ましいものとしては、例えば、本発明の第一の態様で例示したものが挙げられる。また、本発明の第一の態様で説明した内容は本発明の第二の態様の内容をなす。
【0074】
<ラジカル重合性モノマー>/<ラジカル重合開始剤>
ラジカル重合性モノマー及びラジカル重合開始剤は、本発明の第一の態様で説明したのと同様であってよい。
【0075】
<重合体組成物の製造方法>
本発明による重合体組成物の製造方法は、ラジカル重合性モノマーを、顔料分散剤または顔料分散剤を含有する溶液中で、ラジカル重合開始剤の共存下で重合させることからなるものである。
【0076】
本発明では、(イ)顔料分散剤または顔料分散剤を含有する溶液中に、ラジカル重合性モノマーを添加し、その後にラジカル重合開始剤を添加する方法および(ロ)顔料分散剤または顔料分散剤を含有する溶液中に、ラジカル重合性モノマーとラジカル重合開始剤の混合物を添加する方法が好ましいが、(ハ)顔料分散剤または顔料分散剤を含有する溶液中に、ラジカル重合開始剤を添加した後、ラジカル重合性モノマーを添加することもできる。
【0077】
複数種のラジカル重合性モノマーからなるランダム、ブロックまたはグラフト共重合体として本発明による樹脂組成物を得る場合には、上記各共重合体の製造に適するように、ラジカル重合性モノマーの供給方法や重合工程等を適宜定めることができる。
【0078】
本発明による重合体組成物を製造する際のラジカル重合性モノマー、ラジカル重合開始剤および顔料分散剤の使用量は特に限定されない。
【0079】
好ましい本発明の重合体組成物を効率的に製造するためには、ラジカル重合性モノマーの使用量は、顔料分散剤または顔料分散剤を含有する溶液中における当該ラジカル重合性モノマーのモノマー濃度が10〜80重量%、特に15〜70重量%、となる範囲が好ましい。モノマー濃度が10重量%未満では、モノマーが十分に重合せずに未反応モノマーが多くなる傾向がある。一方、80重量%を超えると、重合時の発熱の制御が難しく、また、得られた重合体溶液の粘度が高くなりすぎて工業的に好ましくない。
【0080】
顔料分散剤の使用量は任意の量で使用することができるが、分散剤/溶媒重量比が1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5の範囲で添加するのが良い。この範囲外では本発明の効果が十分に得られず、好ましくない。
【0081】
ラジカル重合開始剤は任意の量で使用することができるが、ラジカル重合性モノマー100重量%あたり、0.05〜30重量%、好ましくは0.1〜25重量%の範囲で添加するのが良い。0.05重量%より少ないと未反応モノマーが残り、モノマー臭や、皮膚刺激性などの観点から好ましくない。一方、30重量%を超えると、反応時の発熱などの観点から、工業的に好ましくない。
【0082】
重合温度は、使用する開始剤により異なってくるが、開始剤の1時間半減温度±20℃の範囲で行うのが好ましい。これより低い温度で反応を行うと、未反応の開始剤やモノマーが多く残ったり、合成に時間がかかるため好ましくない。また、これより高い温度で反応を行うと、開始剤の分解が速過ぎるために、モノマーが十分に反応せず、未反応モノマーが多く残る結果となる。
【0083】
本発明により製造された重合体組成物は、GPC測定によって測定された重量平均分子量が好ましくは3,000〜200,000(ポリスチレン換算)のものであって、各種成分、例えば顔料、および必要に応じて溶剤ならびに各種補助剤等を配合することによって、インキ用組成物を調製可能なものである。
【0084】
本発明では、ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合開始剤の選択ならびに重合条件等の選定によって、重合体組成物の内容、特性などを容易に制御することが可能である。従って、具体的用途に特に適した重合体組成物を任意に製造することができる。このことから、本発明による重合体組成物は、広範な用途に利用可能なものである。
【0085】
なお、本発明による重合体組成物を製造する際には、インキに含まれる他の成分、例えば顔料、ポリマー、添加剤などの共存下に実施しても何ら問題はない。
【0086】
本発明による重合体組成物を、例えばインキ組成物用バインダー樹脂として用いた場合には、インキ組成物の耐久性、耐擦過性、速乾性、発色性、印刷面の光沢等を従来より大幅に改良することができる。
【実施例】
【0087】
本発明を実施例および比較例によって更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
【0088】
本発明の第一の態様
<実施例A1> 重合体A1の合成
攪拌機、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、γ−ブチロラクトン(以下、「GBL」と云う)300重量部を入れ、マントルヒーターで100℃に加熱した。そこに、メチルメタクリレー卜(「MMA」;三菱レイヨン(株)製、「アクリエステルM」)200重量部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂(株)製、以下「パーブチルO」と云う)3.60重量部の混合液を、滴下漏斗より1.5時間かけて滴下した。滴下中はフラスコ内の温度が100±1℃となるようにした。滴下終了後、「パーブチルO」を0.6重量部添加し、100℃に保ったまま1時間加熱撹拌した。その後、「パーブチルO」を0.6重量部添加し、さらに100℃で2時間反応させることにより、無色透明のMMA重合体溶液を得た。
【0089】
反応終了後、冷却し、GPC測定装置(東ソー(株)製、「HLC−8220GPC」)にて、ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、得られた重合体A1の重量平均分子量は29000(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンで2時間加熱することにより、固形分を測定したところ、42.0%であった。
【0090】
<実施例A2> 重合体A2の合成
溶媒をジエチレングリコールジエチルエーテル(以下、「DEDG」と云う)とし、滴下時の「パーブチルO」の量を2.40重量部とした以外は重合体A1の合成法と同様に行って、無色透明のMMA重合体溶液を得た。実施例A1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体A2の重量平均分子量は29900(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンで2時間加熱することにより、固形分を測定したところ、40.8%であった。
【0091】
<実施例A3> 重合体A3の合成
溶媒をエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(以下、「BGAc」と云う)とし、滴下時の「パーブチルO」の量を2.80重量部とした以外は重合体A1の合成法と同様に行って、無色透明のMMA重合体溶液を得た。実施例A1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体A3の重量平均分子量は28900(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンで2時間加熱することにより、固形分を測定したところ、40.2%であった。
【0092】
<実施例A4> 重合体A4の合成
ラジカル重合性モノマーを、MMA180重量部、ブチルメタクリレート(BMA)(三菱レイヨン(株)製、「アクリエステルB」)20重量部の混合物とした以外は重合体A2の合成法と同様に行って、無色透明のMMA/BMA共重合体溶液を得た。
実施例A1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体A4の重量平均分子量は30500(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンで2時間加熱することにより、固形分を測定したところ、40.0%であった。
【0093】
<実施例A5> 重合体A5の合成
ラジカル重合性モノマーを、MMA180重量部、エトキシエチルメタクリレート(ETMA)(三菱レイヨン(株)製、「アクリエステルET」)20重量部の混合物とした以外は重合体A2の合成法と同様に行って、無色透明のMMA/ETMA共重合体溶液を得た。実施例A1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体A5の重量平均分子量は30200(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンで2時間加熱することにより、固形分を測定したところ、40.1%であった。
【0094】
<実施例A6> 重合体A6の合成
溶媒をDEDGとし、ラジカル重合開始剤をジベンゾイルパーオキサイド(日本油脂(株)製、「ナイパーBW」)とした以外は重合体A1の合成法と同様に行って、無色透明のMMA重合体溶液を得た。実施例A1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体A6の重量平均分子量は29500(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンで2時間加熱することにより、固形分を測定したところ、40.5%であった。
【0095】
<実施例A7> 重合体A7の合成
溶媒をN,N−ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」と云う)とし、滴下時の「パーブチルO」の量を3.20重量部とした以外は重合体A1の合成法と同様に行って、無色透明のMMAの重合体溶液を得た。実施例A1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体A7の重量平均分子量は29000(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンで2時間加熱することにより、固形分を測定したところ、39.3%であった。
【0096】
<実施例A8> 重合体A8の合成
溶媒を乳酸エチルとし、滴下時の「パーブチルO」の量を2.65重量部とした以外は重合体1の合成法と同様に行って、無色透明のMMAの重合体溶液を得た。実施例A1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体A8の重量平均分子量は30000(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンで2時間加熱することにより、固形分を測定したところ、39.8%であった。
【0097】
<実施例A9> 重合体A9の合成
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と云う)とし、滴下時の「パーブチルO」の量を3.00重量部とした以外は重合体A1の合成法と同様に行って、無色透明のMMAの重合体溶液を得た。実施例A1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体A9の重量平均分子量は30300(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンで2時間加熱することにより、固形分を測定したところ、39.5%であった。
【0098】
<実施例A10> 重合体A10の合成
溶媒をN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と云う)とし、滴下時の「パーブチルO」の量を4.00重量部とした以外は重合体A1の合成法と同様に行って、無色透明のMMAの重合体溶液を得た。実施例A1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体A10の重量平均分子量は30300(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンで2時間加熱することにより、固形分を測定したところ、39.9%であった。
【0099】
<実施例A11> 重合体A11の合成
溶媒をε−カプロラクトン(以下、「ε−cap」と云う)とし、滴下時の「パーブチルO」の量を4.50重量部とした以外は重合体A1の合成法と同様に行って、無色透明のMMAの重合体溶液を得た。実施例A1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体A11の重量平均分子量は29300(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンで2時間加熱することにより、固形分を測定したところ、42.4%であった。
【0100】
<比較例A1> 重合体A12の合成
溶媒をトルエンとし、滴下時の「パーブチルO」の量を1.00重量部とした以外は重合体A1の合成法と同様に行って、無色透明のMMAの重合体溶液を得た。
実施例A1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体A12の重量平均分子量は28400(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンで2時間加熱することにより、固形分を測定したところ、39.7%であった。
【0101】
<比較例A2> 重合体A13の合成
溶媒をトルエンとし、滴下時の「パーブチルO」の量を1.00重量部とした以外は重合体A4の合成法と同様に行って、無色透明のMMA/BMA共重合体溶液を得た。
実施例A1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体A13の重量平均分子量は29400(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンで2時間加熱することにより、固形分を測定したところ、39.5%であった。
【0102】
評価試験A
<質量分析結果>
・熱分解−ガスクロマトグラフ質量分析計
重合体A1について、熱分解−ガスクロマトグラフ質量分析計(熱分解部:フロンティア・ラボ(株)製、「PY−2020D」、GC部:アジレント・テクノロジー(株)製「6890」、MS部:アジレント・テクノロジー(株)製「5973N」)にて分析したところ、質量数 m/z:186の成分が検出された。ここで、分析には樹脂溶液から樹脂のみをヘキサンにて精製したサンプルを用いた。
【0103】
この数値は、溶媒であるγ−ブチロラクトンとMMAが1分子結合した分子の質量数と一致する。
【0104】
レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置
重合体A1、重合体A2および重合体A6について、MALDI TOF−MS(レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置)(島津製作所(株)製 AXIMA−CFR plus、マトリックス;ジチラノール、カチオン化剤;NaI)にて質量数を測定したところ、以下のような結果を得た(図1、図2、図3)。
検出ピークの一部を示す。
重合体A1 質量数 1109、1123、1209、1223、1309、1323
重合体A2 質量数 1085、1123、1185、1223、1285、1323
重合体A6 質量数 1085、1101、1185、1201、1285、1301
(これらの数値は、Naでイオン化したポリマーの質量を表す)
【0105】
これらの検出ピークのうち、重合体A1については「1109、1209、1309」が、重合体A2、重合体A6については「1085、1185、1285」が、溶媒由来構造を末端に有する重合体のNaイオンの質量数と一致する。また、重合体A1、重合体A2に共通して検出されている、「1123、1223、1323」は、ラジカル重合開始剤t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート由来のヘプチル基を末端に有する重合体のNaイオンの質量数と一致し、重合体A6において検出されている、「1101、1201、1301」は、ラジカル重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド由来のフェニル基を末端に有する重合体のNaイオンの質量数と一致する。
【0106】
<溶解性評価>
上記で得られた重合体A1〜A13をそれぞれヘキサン中で精製することにより重合溶剤を取り除き、さらに真空下で12時間乾燥させることで、樹脂粉末を得た。これらの樹脂粉末を用いて、GBL、DEDG、BGAc、DMAc、乳酸エチルエステル、PGMEA、NMP、ε−capへの溶解性を調べた。
【0107】
評価方法
樹脂粉末100mgと溶解させたい溶媒5.0gを混合、撹拌し、樹脂粉末が完全に溶解するまでの時間を測定した。溶解性の評価は下記基準に従って評価し、その結果は下記表1に記載した通りであった。
評価A:5分以内
評価B:10分以内
評価C:10分以上
【表1】

【0108】
表1から明らかなように、トルエン中で合成した樹脂はGBL、DEDG、BGAc、DMAc、乳酸エステル、PGMEA、NMP、ε−capへの溶解性は低いが、溶解させたい溶剤中で合成した樹脂はその溶剤への溶解性が向上している。
【0109】
本発明の第二の態様
本発明の第二の態様を実施例および比較例によって更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。下記の実施例Bまたは比較例Bにおいて、溶媒を含む顔料分散剤については、真空下で40℃にて12時間乾燥させたものを用いた。以下、顔料分散剤配合量については、乾燥物の固形分換算にて表す。
【0110】
<実施例B1> 重合体B1の合成
攪拌機、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、「Disperbyk-161」(ビックケミー(株)製)300重量部を入れ、マントルヒーターで100℃に加熱した。そこに、MMA180重量部、BMA20重量部、「パーブチルO」5.00重量部の混合液を、滴下漏斗より1.5時問かけて滴下した。滴下終了後、「パーブチルO」を0.6重量部添加し、100℃に保ったまま3時間反応させることにより、褐色のMMA/BMA共重合体を得た。反応終了後冷却し、GPC測定装置(東ソー(株)製、「HLC−8220GPC」)にてゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、得られた重合体B1の重量平均分子量は21000(ポリスチレン換算)であった。
【0111】
<実施例B2> 重合体B2の合成
滴下時のラジカル重合性モノマーをMMA180重量部、ベンジルメタクリレート(BzMA;三菱レイヨン(株)製「アクリエステルBz」)20重量部の混合物とした以外は重合体B1の合成法と同様に行い、褐色のMMA/BzMA共重合体を得た。
実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B2の重量平均分子量は20500(ポリスチレン換算)であった。
【0112】
<実施例B3> 重合体B3の合成
分散剤を「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ(株)製)とした以外は重合体B1の合成法と同様に行い、淡褐色のMMA/BMA共重合体を得た。実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B3の重量平均分子量は21500(ポリスチレン換算)であった。
【0113】
<実施例B4> 重合体B4の合成
分散剤を「Disperbyk-2001」(ビックケミー(株)製)とした以外は重合体B1の合成法と同様に行い、淡褐色のMMA/BMA共重合体を得た。実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B4の重量平均分子量は19500(ポリスチレン換算)であった。
【0114】
<実施例B5> 重合体B5の合成
分散剤を「Solsperse 33500」(The Lubrizol Corporation製)とした以外は重合体B1の合成法と同様に行い、褐色のMMA/BMA共重合体を得た。実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B5の重量平均分子量は20000(ポリスチレン換算)であった。
【0115】
<実施例B6> 重合体B6の合成
重合時のラジカル重合開始剤をジベンゾイルパーオキサイド(日本油脂(株)製「ナイパーBW」)5.00重量部とした以外は、重合体B5の合成法と同様に行い、褐色のMMA/BMA共重合体を得た。実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B6の重量平均分子量は19000(ポリスチレン換算)であった。
【0116】
<実施例B7> 重合体B7の合成
攪拌機、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、GBL270重量部、「Solsperse 33500」30重量部を入れ、マントルヒーターで100℃に加熱した。そこに、MMA200重量部と、「パーブチルO」3.60重量部の混合液を、滴下漏斗より1.5時問かけて滴下した。滴下終了後、「パーブチルO」0.6重量部添加し、100℃に保ったまま3時間反応させることにより、褐色のMMA重合体溶液を得た。実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B7の重量平均分子量は29500(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンにて2時間加熱することにより固形分を測定したところ45.6%であった。
【0117】
<実施例B8> 重合体B8の合成
溶媒をDEDGとし、滴下時のラジカル重合性モノマーをMMA190重量部、BMA10重量部の混合物とし、滴下時の「パーブチルO」の量を2.40重量部とした以外は重合体B8の合成法と同様に行い、褐色のMMA/BMA共重合体溶液を得た。
実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B8の重量平均分子量は29000(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンにて2時間加熱することにより固形分を測定したところ45.8%であった。
【0118】
<実施例B9> 重合体B9の合成
分散剤を「Disperbyk-2001」とし、ラジカル重合性モノマーをMMA180重量部、BMA20重量部の混合物とした以外は重合体B8の合成法と同様に行い、褐色のMMA/BMA共重合体溶液を得た。実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B9の重量平均分子量は30000(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンにて2時間加熱することにより固形分を測定したところ46.0%であった。
【0119】
<実施例B10> 重合体B10の合成
分散剤を「Disperbyk 161」とした以外は重合体B9の合成法と同様に行い、褐色のMMA/BMA共重合体溶液を得た。実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B10の重量平均分子量は29100(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンにて2時間加熱することにより固形分を測定したところ46.1%であった。
【0120】
<実施例B11> 重合体B11の合成
分散剤を「アジスパーPB822」とした以外は重合体B9の合成法と同様に行い、淡褐色のMMA/BMA共重合体溶液を得た。実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B11の重量平均分子量は30100(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンにて2時間加熱することにより固形分を測定したところ45.9%であった。
【0121】
<比較例B1> 重合体B12の合成
攪拌機、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、トルエン300重量部を入れ、マントルヒーターで100℃に加熱した。そこに、MMA180重量部と、BMA20重量部と、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN;和光純薬(株)製)2.50重量部との混合液を、滴下漏斗より1.5時問かけて滴下した。滴下終了後、AIBNを0.6重量部添加し、100℃に保ったまま3時間反応させることにより、無色透明のMMA/BMA共重合体を得た。反応終了後冷却し、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体12の重量平均分子量は20300(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンにて2時間加熱することにより固形分を測定したところ39.1%であった。
【0122】
<比較例B2> 重合体B13の合成
重合時のラジカル重合開始剤を「パーブチルO」2.50重量部とした以外は重合体B12の合成法と同様に行い、無色透明のMMA/BMA共重合体を得た。実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B13の重量平均分子量は19800(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンにて2時間加熱することにより固形分を測定したところ38.9%であった。
【0123】
<比較例B3> 重合体B14の合成
滴下時のラジカル重合性モノマーをMMA180重量部、BzMA20重量部の混合物とした以外は、重合体B13の合成法と同様に行い、無色透明のMMA/BzMA共重合体を得た。実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B14の重量平均分子量は20100(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンにて2時間加熱することにより固形分を測定したところ39.1%であった。
【0124】
<比較例B4> 重合体B15の合成
重合時のラジカル重合開始剤「パーブチルO」の量を5.20重量部とした以外は重合体B13の合成法と同様に行い、無色透明のMMA/BMA共重合体を得た。実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B15の重量平均分子量は10800(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンにて2時間加熱することにより固形分を測定したところ38.8%であった。
【0125】
<比較例B5> 重合体B16の合成
攪拌機、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、DEDG300重量部を入れ、マントルヒーターで100℃に加熱した。そこに、MMA180重量部と、BMA20重量部と、「パーブチルO」3.60重量部との混合液を、滴下漏斗より1.5時問かけて滴下した。滴下終了後、「パーブチルO」を0.6重量部添加し、100℃に保ったまま3時間反応させることにより、無色透明のMMA/BMA共重合体溶液を得た。反応終了後冷却し、実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B16の重量平均分子量は29800(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンにて2時間加熱することにより固形分を測定したところ39.5%であった。
【0126】
<比較例B6> 重合体B17の合成
重合時のラジカル重合開始剤を「パーブチルO」の量を10.00重量部とした以外は重合体B16の合成法と同様に行い、無色透明のMMA/BMA共重合体溶液を得た。
実施例B1と同様に、GPC測定により分子量を確認したところ、得られた重合体B17の重量平均分子量は15000(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンにて2時間加熱することにより固形分を測定したところ39.4%であった。
【0127】
評価試験B
<相溶性評価>
上記の実施例B1〜6により得られた重合体B1〜6については、希釈溶媒(詳細は表1に記載)にて3倍(重量比)に希釈して評価サンプルを調製し、実施例B7〜11により得られた重合体B7〜11の樹脂溶液は重合溶媒にて固形分30%となる様に希釈し、評価サンプルとした。一方、上記の比較例B1〜4により得られた重合体B12〜15については、樹脂固形分に対し1.5倍(重量比)の顔料分散剤(「添加分散剤」の詳細は表3に記載)と3.5倍(重量比)のトルエンを添加して評価サンプルを調製した。また、上記の比較例B5、6により得られた重合体B16、17については、樹脂固形分に対し、15%の添加剤分散剤、2.7倍(重量比)のDEDGを混合して評価サンプルを調製した。
【0128】
各評価サンプルを、12時間以内に充填し、密閉後、25℃にて放置して、分散剤とアクリル樹脂が分離するまでの日数を調べることによって、相溶性の評価を行った。得られた結果は、表2〜5に示される通りであった。表中の「相溶性評価」において、「A」は30日以上経過しても分離が観察されないことを、「B」は15日以内に分離が観察されたことを、「C」は7日以内に分離が観察されたことを、意味する。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性モノマーを、顔料分散剤または顔料分散剤を含有する溶液中で、ラジカル重合開始剤の共存下で重合させることを含んでなる、重合体組成物の製造方法。
【請求項2】
前記の顔料分散剤が、−O−、−COO−、−NR−、−NRCO−または−NRCOO−基〔ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜20の1価の炭化水素基または炭素数1〜20の1価のヒドロキシアルキル基を示す〕に隣接する炭素原子に水素原子が結合しているウレタン系分散剤、ポリアミン系分散剤または側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと4級アンモニウム塩基を有さないBブロックとからなるA−Bブロック共重合体および/またはB−A−Bブロック共重合体である、請求項1に記載の重合体組成物の製造方法。
【請求項3】
前記のラジカル重合開始剤が、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシカーボネート系、パーオキシケタール系、ケトンパーオキサイド系有機過酸化物から選ばれる1種類または2種類以上からなる、請求項1または2に記載の重合体組成物の製造方法。
【請求項4】
前記溶液の溶媒として、下記の式(1)または(2)で示される化合物を用いる、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の重合体組成物の製造方法。
【化1】

中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜20のアルキル基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキレン基を示し、又はRは存在せず、Yは、水素、1価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基を示す。mは0または1の整数を示し、nは1〜10の整数を示す。また、XおよびXは、それぞれ独立して、下記のいずれかの2価の置換基を示す。下記において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜12のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す。〕
【化2】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−49864(P2013−49864A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−248700(P2012−248700)
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【分割の表示】特願2007−529243(P2007−529243)の分割
【原出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】