説明

重合体組成物の製造方法

【課題】 環境に優しい重合体組成物の製造方法などを提供する。
【解決手段】 本発明のある側面は、澱粉及びデキストリンのうち少なくとも一方と単量体と糖とを混合し、乳化させる単量体乳化液を得る工程と、前記単量体乳化液を反応させ、重合体組成物を含有する重合体分散液を得る工程とを有することを特徴とする重合体組成物の製造方法にある。本構成によれば、澱粉、糖などを反応に使用した、環境に優しい重合体組成物が得られる。本発明の他の側面は、前記単量体乳化液において、前記澱粉及びデキストリンのうち少なくとも一方はスラリー状であることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法にある。本構成によれば、澱粉などの使用量の制限を大きく緩和することができるようになり、環境面からも優れた反応を行うことができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への負担を減らすために、塗料においても生分解性材料を使用する例が提案されている。また、植物由来の原料は、ライフサイクルの中でCOの排出と吸収がプラスマイナスゼロとなり、大気中の二酸化炭素を増加させないため、注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1では塗料形成用樹脂成分として、澱粉が使用されているが、溶媒として溶剤が使用されるときは揮発性有機化合物を多く発生させ、環境に対する負荷が懸念される。また、水を溶媒として用いる場合には、澱粉に酸基を変性することにより、塗膜中に酸基が残存するため、耐水性に問題がある。
【0004】
特許文献2ではアクリル系硬化性組成物として、特許文献3では防汚塗料組成物として澱粉を含有しているが、溶剤系であるので揮発性有機化合物を多く発生させるという点で、環境に対する負荷が懸念される。
【0005】
特許文献4では、ガスバリア性を有するコーティング剤用に澱粉が使用されているが、澱粉の数平均分子量を加水分解によって調整し使用する必要がある。そのため、使用可能な澱粉が限定されてしまう。
【0006】
特許文献5では、澱粉誘導体の溶液とエステル化天然樹脂及び/又はグラフト化天然樹脂の溶液とを混合した樹脂組成物が提案されている。しかしこの方法では、市販の澱粉誘導体では溶液の粘度が高くなり配合が困難である。また一般塗料用としては耐水性が悪く、実用的ではない。
【0007】
特許文献6では、塗料用に変性澱粉含有樹脂水分散体が提案されているが、貯蔵安定性を得るために、特殊なエステル化澱粉を使用し、さらに変性澱粉と重合性不飽和モノマーを含んでなる混合物の水性媒体中での平均粒子径を1000nm以下としている。市販の変性澱粉を使用し、再現を試みたが、高エネルギーにより発熱しゲル化すること、又は、水分散体に凝集物が発生することによって作成できなかった。これは、澱粉粒子が水を吸って膨潤し、その粒子同士が凝集してしまったと考えられる。そのため、澱粉の入手、微粒子化がコストアップ要因となる。
【0008】
特許文献7及び特許文献8では、澱粉を反応中に使用する際は澱粉を水等で溶解して使用している。しかし、この方法では、澱粉溶液を用意する際に溶媒が使用されるので、高濃度の設計をすることができない。また、分子量の大きい澱粉溶液は粘度が非常に高くなり、ゲル化してしまうこともある。そのため、澱粉の使用量が制限されてしまっていた。
【0009】
【特許文献1】特開2004-224887
【特許文献2】特開2003-165806
【特許文献3】特開2006-233160
【特許文献4】特開 2000-95994
【特許文献5】特開2003-73501
【特許文献6】特開2006-52338
【特許文献7】特開平11-21380
【特許文献8】特開平11-21529
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の背景技術に鑑みてなされたものであり、環境に優しい重合体組成物の製造方法などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明によれば、上述の目的を達成するために、特許請求の範囲に記載のとおりの構成を採用している。以下、この発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の第1の側面は、
澱粉及びデキストリンのうち少なくとも一方と単量体と糖とを混合し、乳化させる単量体乳化液を得る工程と、
前記単量体乳化液を反応させ、重合体組成物を含有する重合体分散液を得る工程と
を有することを特徴とする重合体組成物の製造方法
にある。
【0013】
本構成によれば、澱粉、糖などを反応に使用した、環境に優しい重合体組成物が得られる。
【0014】
本発明の第2の側面は、
前記単量体乳化液において、前記澱粉及びデキストリンのうち少なくとも一方はスラリー状であることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法
にある。
【0015】
本構成によれば、澱粉などの使用量の制限を大きく緩和することができるようになり、環境面からも優れた反応を行うことができるようになる。
【0016】
本発明の第3の側面は、
前記重合体分散液を得る工程は、前記単量体乳化液を得る工程よりも高温であることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法
にある。
【0017】
本構成によれば、単量体の反応とともに澱粉などの溶解が進み、澱粉と粒子がうまく絡み合うことが可能となる。
【0018】
本発明の第4の側面は、
前記重合体分散液を得る工程は、前記澱粉及びデキストリンのうち少なくとも一方の糊化開始温度以上であり、
前記単量体乳化液を得る工程は前記澱粉及びデキストリンのうち少なくとも一方の糊化開始温度未満であることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法
にある。
【0019】
本発明の第5の側面は、
前記糖は、10量体以下であることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法
にある。
【0020】
本構成によれば、澱粉などの分散性が向上し、塗膜性能も良くなる。
【0021】
本発明の第6の側面は、
前記単量体は共重合性不飽和単量体であることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法
にある。
【0022】
本発明の第7の側面は、
第1澱粉及び第1デキストリンのうち少なくとも一方と第1単量体と第1糖とを混合し、乳化させ、コア部単量体乳化液を得る工程と、
第2澱粉及び第2デキストリンのうち少なくとも一方と第2単量体と第2糖とを混合し、乳化させ、シェル部単量体乳化液を得る工程と、
前記コア部単量体乳化液を反応させ、コア部重合体組成物を含有する重合体分散液を得る工程と、
前記シェル部単量体乳化液を反応させ、前記コア部重合体組成物周辺に形成されたシェル部重合体組成物を含有する重合体分散液を得る工程と
を有することを特徴とする重合体組成物の製造方法
にある。
【0023】
本構成によれば、シェル形成によるコア構造の安定化、又は、コア部、シェル部それぞれの性質の同時利用という利点がある。
【0024】
本発明の第8の側面は、
前記重合体組成物は塗料に使用できることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法
にある。
【0025】
本構成によれば、環境に優しい塗料が得られる。
【0026】
本発明の第9の側面は、
前記重合体組成物は接着剤に使用できることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法
にある。
【0027】
本構成によれば、環境に優しい接着剤が得られる。
【0028】
本発明の第10の側面は、
ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリル酸、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル硫酸ナトリウム、ショ糖混合物、エステル化澱粉及び水を、エステル化澱粉の糊化開始温度未満にて攪拌して乳化させる単量体乳化液を得る工程と、
前記単量体乳化液を過硫酸カリウム存在下、エステル化澱粉の糊化開始温度以上で反応させ、重合体組成物を含有する重合体分散液を得る工程と
を有することを特徴とする重合体組成物の製造方法
にある。
【0029】
ここで、澱粉とは、例えば、分子式(C6H10O5nの炭水化物(多糖類)であり、多数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子をいう。高等植物の細胞において認められる澱粉の結晶(澱粉粒)、それを取り出して集めたものも澱粉に含まれる。
【0030】
澱粉を水中に懸濁し加熱すると、澱粉粒は吸水して次第に膨張する。加熱を続けると最終的には澱粉粒が崩壊し、ゲル状に変化する(糊化)。この糊化が始まる温度を糊化開始温度という。このとき、澱粉懸濁液は白濁した状態から次第に透明になり、急激に粘度を増す。一方、糊化した澱粉の溶液を冷却すると、糊液は次第に白濁し、水を遊離して不溶の状態となる(老化)。これらの状態も澱粉に含まれる。澱粉には、例えば、トウモロコシ澱粉(コーンスターチ)、ワキシーコーンスターチ(もちトウモロコシ)、ハイアミロースコーンスターチ(ハイアミローストウモロコシ)、小麦澱粉、米澱粉、豆類(ソラマメ、緑豆、小豆など)から製造する澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉などがある。
【0031】
デキストリン(dextrin)とは、例えば、数個のα-グルコースがグリコシド結合によって重合した物質の総称をいう。澱粉の加水分解により得られる。食物繊維の一種とされることもある。デキストリンと単糖類との違いは、澱粉の加水分解の度合いを示す指標DE(dextrose equivalent)で示すこともできる。加水分解されていない澱粉はゼロ、完全に加水分解された単糖類(グルコースなど)は100となり、市販のデキストリンは4以上20以下である。糖の鎖が分岐している(分岐デキストリン)、環状化している(シクロデキストリン、クラスターデキストリン)などもデキストリンに含まれる。
【0032】
糖とは、例えば、多価アルコールの最初の酸化生成物であり、アルデヒド基またはケトン基をひとつ持つものをいう。アルデヒド基を持つアルドース、ケトン基を持つケトースが含まれる。
【0033】
なお、共重合性不飽和単量体100重量部に対して、例えば、澱粉5〜85部、好ましくは5〜70部、更には10〜50部含有することが好ましい。共重合性不飽和単量体100重量部に対して、例えば、糖0.5〜100部、好ましくは5〜70部、更には10〜50部含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、環境に優しい重合体組成物の製造方法などが得られる。
【0035】
本発明のさらに他の目的、特徴又は利点は、後述する本発明の実施の形態や添付する図面に基づく詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
[概要]
【0038】
澱粉を樹脂に含有させる際、澱粉の凝集を防ぐために糖類を使用し、良好な貯蔵安定性が得られた。この際の組成は、澱粉(又は変性澱粉)、共重合性不飽和モノマー、糖(オリゴ糖、変性糖など)、界面活性剤、重合開始剤の組み合わせであった。
【0039】
本実施形態では、澱粉、共重合性不飽和モノマーと糖を併用することにより、一般的に食品・化学等の工業用途として使用されている澱粉を使用することができる。そのため、澱粉の入手コストを低減できる。また、澱粉を使用するための前処理や特別な製造設備などが不要となり、コストダウンを図ることができる。
【0040】
なお、上記界面活性剤としては、アニオン活性剤を下記の実施例で主に使用しているが、限定されるものでなくカチオン、ノニオン活性剤でもよい。上記重合開始剤としては、過酸化物、もしくは、過酸化物と還元物の組み合わせを含むものでもよい。
【0041】
例えば、糖を使用せずに実験すると、分子量が大きい澱粉を使用した場合、水分散体に凝集物が発生し良質なものが作成できなかった。これは、澱粉粒子が吸水して膨潤し、その粒子同士が凝集してしまったと考えられる。
【0042】
また、分子量の小さい澱粉を使用し、糖を使用せずに実験すると、樹脂の作成はできたが、塗料性能が落ちてしまった。糖を混合させることで、澱粉複合乳化系(エマルション)の造膜性が良好になり、性能向上に寄与していると考えられる。
【0043】
まず、実験手法から詳細に説明する。
【0044】
[実施例a]
【0045】
ガラスビーカーに単量体混合物として、ブチルアクリレート50部、メチルメタクリレート50部、アクリル酸1.5部、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名 ラテムルE−118B)5部、ショ糖混合物(群栄化学工業株式会社製、商品名 スリーシュガー)25部、エステル化澱粉10部及び脱イオン水15部を取り、このエステル化澱粉の糊化開始温度(約60℃)未満である30℃にて攪拌して乳化した。
【0046】
この際に、エステル化澱粉を粉のまま入れ、乳化分散し、その分散状態を保ったまま反応し溶解させることによりエステル化澱粉の凝集を防いだ。エステル化澱粉は、すべて溶解させるのではなくスラリー状とした。このようにすることによって、高濃度の設計をすることができ、分子量の大きい澱粉溶液の粘度が非常に高くなりゲル化してしまうことを防ぐこともできる。したがって、スラリー状の澱粉を使用することで、澱粉の使用量の制限を大きく緩和することができるようになり、環境面からも優れた反応を行うことができるようになるという優れた利点が得られる。これらの点は、以下の実施例でも同様である。
【0047】
次に、攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応装置に脱イオン水50部を仕込み、窒素を流入させて、澱粉及びデキストリンの糊化開始温度以上である80℃まで内温を昇温させ、脱イオン水で5%に溶解した過硫酸カリウム0.4部を仕込む。続いて、予め乳化した単量体乳化液を2.5時間かけて滴下し、並行して脱イオン水で5%に希釈した過硫酸カリウム0.4部を滴下した。双方の滴下終了後、3時間熟成した後室温まで冷却した。25%アンモニア水2部及び水で調整し、固形分40.0%、粘度6,000mPa・s、pH8.5なる水性重合体分散液を得た。
【0048】
上述のように、澱粉、共重合性不飽和単量体及び水を澱粉及びデキストリンの糊化開始温度未満にて分散し、澱粉及びデキストリンの糊化開始温度以上にて反応する反応することが好ましい。澱粉及びデキストリンの糊化開始温度以上では、澱粉が溶解・膨潤してしまい、均一分散が難しくなる。また反応時に熱を加えることにより、単量体の反応とともに澱粉の溶解が起こり、澱粉と粒子がうまく絡み合う。さらに、糖(単糖類、二糖類及びオリゴ糖類の少なくとも1種)、特に、10量体以下、好ましくは5量体以下、より好ましくは3量体以下の糖を入れると、澱粉の分散性が向上し、塗膜性能も良くなることが判明している。また、分散液の粒子径は1000nm以上であった。
【0049】
なお、上述の方法においては、エステル化架橋澱粉を、例えば、デキストリン、尿素リン酸澱粉、酸化澱粉又はカチオン澱粉に、ショ糖を、例えば、オリゴ糖又は麦芽糖に変えてもよい。
【0050】
[実施例b]
【0051】
ガラスビーカーに単量体混合物として、ブチルアクリレート50部、メチルメタクリレート50部、アクリル酸1.5部、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名 ラテムルE−118B)5部、ショ糖混合物(群栄化学工業株式会社製、商品名 スリーシュガー)25部、架橋澱粉10部及び脱イオン水15部を取り、この架橋澱粉の糊化開始温度(約75℃)未満である室温にて攪拌して乳化した。攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応装置に脱イオン水50部を仕込み、窒素を流入させて、架橋澱粉の糊化開始温度以上である内温80℃まで昇温させ、脱イオン水で5%に溶解した過硫酸カリウム0.4部を仕込む。続いて、予め乳化した単量体乳化液を2.5時間かけて滴下し、並行して脱イオン水で5%に希釈した過硫酸カリウム0.4部を滴下した。双方の滴下終了後、3時間熟成した後室温まで冷却した。25%アンモニア水2部及び水で調整し、固形分40.0%、粘度6,000mPa・s、pH8.5なる水性重合体分散液を得た。
【0052】
[実施例c]
【0053】
ガラスビーカーに単量体混合物として、ブチルアクリレート50部、メチルメタクリレート50部、アクリル酸1.5部、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名 ラテムルE−118B)5部、ショ糖混合物(群栄化学工業株式会社製、商品名 スリーシュガー)10部、エステル化澱粉10部及び脱イオン水15部を取り、エステル化澱粉の糊化開始温度未満である室温にて攪拌して乳化した。攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応装置にショ糖混合物15部、脱イオン水50部を仕込み、窒素を流入させて、エステル化澱粉の糊化開始温度以上である内温80℃まで昇温させ、脱イオン水で5%に溶解した過硫酸カリウム0.4部を仕込む。続いて、予め乳化した単量体乳化液を2.5時間かけて滴下し、並行して脱イオン水で5%に希釈した過硫酸カリウム0.4部を滴下した。双方の滴下終了後、3時間熟成した後室温まで冷却した。25%アンモニア水2部及び水で調整し、固形分40.0%、粘度5,000mPa・s、pH8.5なる水性重合体分散液を得た。
【0054】
[実施例d]
【0055】
ガラスビーカーに単量体混合物として、ブチルアクリレート50部、メチルメタクリレート50部、アクリル酸1.5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名 ネオペレックスG−25)5部、ショ糖混合物(群栄化学工業株式会社製、商品名 スリーシュガー)10部、エステル化澱粉10部及び脱イオン水15部を取り、エステル化澱粉の糊化開始温度未満である室温にて攪拌して乳化した。攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応装置にショ糖混合物15部、脱イオン水50部を仕込み、窒素を流入させて、エステル化澱粉の糊化開始温度以上である内温80℃まで昇温させ、脱イオン水で5%に溶解した過硫酸カリウム0.4部を仕込む。続いて、予め乳化した単量体乳化液を2.5時間かけて滴下し、並行して脱イオン水で5%に希釈した過硫酸カリウム0.4部を滴下した。双方の滴下終了後、3時間熟成した後室温まで冷却した。25%アンモニア水2部及び水で調整し、固形分40.0%、粘度5,000mPa・s、pH8.5なる水性重合体分散液を得た。
【0056】
[実施例e]
【0057】
ガラスビーカーに単量体混合物として、ブチルアクリレート50部、メチルメタクリレート50部、アクリル酸1.5部、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名 ラテムルE−118B)5部、エステル化澱粉10部及び脱イオン水15部を取り、エステル化澱粉の糊化開始温度未満である室温にて攪拌して乳化した。攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応装置に脱イオン水50部、ショ糖混合物(群栄化学工業株式会社製、商品名 スリーシュガー)25部を仕込み、窒素を流入させて、エステル化澱粉の糊化開始温度以上である内温80℃まで昇温させ、脱イオン水で5%に溶解した過硫酸カリウム0.4部を仕込む。続いて、予め乳化した単量体乳化液を2.5時間かけて滴下し、並行して脱イオン水で5%に希釈した過硫酸カリウム0.4部を滴下した。双方の滴下終了後、3時間熟成した後室温まで冷却した。25%アンモニア水2部及び水で調整し、固形分40.0%、粘度6,000mPa・s、pH8.5なる水性重合体分散液を得た。
【0058】
[実施例f]
【0059】
ガラスビーカーに単量体混合物として、ブチルアクリレート50部、メチルメタクリレート50部、アクリル酸1.5部、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名 ラテムルE−118B)5部、ショ糖混合物(群栄化学工業株式会社製、商品名 スリーシュガー)25部及び脱イオン水15部を取り、エステル化澱粉の糊化開始温度未満である室温にて攪拌して乳化したものに、攪拌しながらエステル化澱粉10部を入れ分散させる。攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応装置に脱イオン水50部を仕込み、窒素を流入させて、エステル化澱粉の糊化開始温度以上である内温80℃まで昇温させ、脱イオン水で5%に溶解した過硫酸カリウム0.4部を仕込む。続いて、予め乳化した単量体乳化液を2.5時間かけて滴下し、並行して脱イオン水で5%に希釈した過硫酸カリウム0.4部を滴下した。双方の滴下終了後、3時間熟成した後室温まで冷却した。25%アンモニア水2部及び水で調整し、固形分40.0%、粘度6,000mPa・s、pH8.5なる水性重合体分散液を得た。
【0060】
[実施例g]
【0061】
ガラスビーカーに単量体混合物として、ブチルアクリレート50部、メチルメタクリレート50部、アクリル酸1.5部、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル(花王株式会社製、商品名 エマルゲン1135S−70)4部、ショ糖混合物(群栄化学工業株式会社製、商品名 スリーシュガー)10部、エステル化澱粉10部及び脱イオン水15部を取り、エステル化澱粉の糊化開始温度未満である室温にて攪拌して乳化した。攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応装置にショ糖混合物15部、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル(花王株式会社製、商品名 エマルゲン1135S−70)3部、脱イオン水50部を仕込み、窒素を流入させて、エステル化澱粉の糊化開始温度以上である内温80℃まで昇温させ、脱イオン水で5%に溶解した過硫酸カリウム0.4部を仕込む。続いて、予め乳化した単量体乳化液を2.5時間かけて滴下し、並行して脱イオン水で5%に希釈した過硫酸カリウム0.4部を滴下した。双方の滴下終了後、3時間熟成した後室温まで冷却した。25%アンモニア水2部及び水で調整し、固形分40.0%、粘度6,000mPa・s、pH8.5なる水性重合体分散液を得た。
【0062】
[実施例h]
【0063】
ガラスビーカーに単量体混合物として、ブチルアクリレート50部、メチルメタクリレート50部、アクリル酸1.5部、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名 ラテムルE−118B)5部、ショ糖混合物(群栄化学工業株式会社製、商品名 スリーシュガー)25部、エステル化澱粉10部及び脱イオン水15部を取り、エステル化澱粉の糊化開始温度未満である室温にて攪拌して乳化した。攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応装置に脱イオン水50部を仕込み、窒素を流入させて、エステル化澱粉の糊化開始温度以上である内温80℃まで昇温させ、脱イオン水で5%に溶解した過硫酸カリウム0.8部と脱イオン水で10%に溶解したビタミンC1部を仕込む。続いて、予め乳化した単量体乳化液を2.5時間かけて滴下し、並行して脱イオン水で5%に希釈した過硫酸カリウム0.4部を滴下した。双方の滴下終了後、3時間熟成した後室温まで冷却した。25%アンモニア水2部及び水で調整し、固形分40.0%、粘度4,500mPa・s、pH8.5なる水性重合体分散液を得た。
【0064】
[実施例i]
【0065】
ガラスビーカーに単量体混合物として、ブチルアクリレート50部、メチルメタクリレート50部、アクリル酸1.5部、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名 ラテムルE−118B)5部、ショ糖混合物(群栄化学工業株式会社製、商品名 スリーシュガー)25部、エステル化澱粉10部、シランカップリング剤0.3部及び脱イオン水15部を取り、エステル化澱粉の糊化開始温度未満である室温にて攪拌して乳化した。攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応装置に脱イオン水50部を仕込み、窒素を流入させて、エステル化澱粉の糊化開始温度以上である内温80℃まで昇温させ、脱イオン水で5%に溶解した過硫酸カリウム0.4部を仕込む。続いて、予め乳化した単量体乳化液を2.5時間かけて滴下し、並行して脱イオン水で5%に希釈した過硫酸カリウム0.4部を滴下した。双方の滴下終了後、3時間熟成した後室温まで冷却した。25%アンモニア水2部及び水で調整し、固形分40.0%、粘度6,000mPa・s、pH8.5なる水性重合体分散液を得た。
【0066】
[実施例j(コアシェル)]
【0067】
ガラスビーカーにコア部として使用する単量体混合物として、ブチルアクリレート50部、メチルメタクリレート10部、アクリル酸0.9部、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名 ラテムルE−118B)4.2部、ショ糖混合物(群栄化学工業株式会社製、商品名 スリーシュガー)、エステル化澱粉及び脱イオン水10部を取り、エステル化澱粉の糊化開始温度未満である室温にて攪拌して乳化した。更に別に、シェル部で使用する単量体混合物として、ガラスビーカーにブチルアクリレート15部、メチルメタクリレート25部、アクリル酸0.6部、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名 ラテムルE−118B)2.8部、ショ糖混合物(群栄化学工業株式会社製、商品名 スリーシュガー)、エステル化澱粉10部及び脱イオン水10部を取りエステル化澱粉の糊化開始温度未満である室温にて攪拌して乳化した。攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応装置に脱イオン水50部を仕込み、窒素を流入させて、エステル化澱粉の糊化開始温度以上である内温80℃まで昇温させ、脱イオン水で5%に溶解した過硫酸カリウム0.48部を仕込む。続いて、予め乳化したコア部単量体乳化液を1.5時間かけて滴下し、並行して脱イオン水で5%に希釈した過硫酸カリウム0.4部を滴下した。続いて、予め乳化したシェル部単量体乳化液を1時間掛けて滴下し、並行して脱イオン水で10%に溶解した過硫酸カリウム0.32部を滴下した。滴下終了後、3時間熟成した後室温まで冷却した。25%アンモニア水2部及び水で調整し、固形分40.0%、粘度4,500mPa・s、pH8.5なる水性重合体分散液を得た。
【0068】
この方法によれば、シェル形成によるコア構造の安定化、又は、コア部、シェル部それぞれの性質の同時利用が図れるという利点がある。
【0069】
[他の実施例]
【0070】
他にも多くの組み合わせで実験を行なった。その結果を表に示す。表は、スペースの都合で分割して示したが、本来はひとつの表をなすものである。
【0071】
【表1A】

【0072】
【表1B】

【0073】
【表1C】

【0074】
ここで、使用料の数値は「重量部」を示す。モノマーの略称としては下記のものを使用している。
BA:ブチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
2EHA:2エチルヘキシルアクリレート
CHMA:シクロヘキシルアクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
St:スチレン
【0075】
また、本実施例のオリゴ糖の組成は以下のとおりである。
グルコース 24%
マルトース 8%
イソマルトース 15%
マルトトリオース 1%
パノース 15%
イソマルトトリオース 5%
その他のイソマルトオリゴ糖 32%
(イソマルトオリゴ糖合計 67%)
【0076】
酸化剤として使用したKPSは過硫酸カリウムを示す。
【0077】
本組成は実施例の一例であり、これに限定されるものではない。
【0078】
以下、表中の、樹脂評価の方法、塗料化・性能評価の方法などについて説明する。
【0079】
[樹脂評価方法]
【0080】
貯蔵安定性:樹脂を容量が250mLのサンプル瓶に250mL入れ、常温にて1ヶ月貯蔵した。その後、容器の中の状態を目視にて観察し、以下の基準にて評価した。
○:変化なし(分離・着色がない)。
△:クリーミングが認められるが、攪拌により均一となる。
×:分離やゲル化が認められる。
【0081】
粒子径:F-PAR1000(商品名、大塚電子株式会社製、濃厚系粒径アナライザー)を用い、試料をイオン交換水にて希釈し、25℃にて測定したときの値である。
【0082】
凝集物評価方法:JISK6828-3に基づいて、試料100gをイオン交換水にて2倍に希釈し、ステンレス製金網(180μm)にてろ過し、ろ過残さを洗浄。105±2℃にした乾燥器中で約30分間乾燥してひょう量し、評価した。
粗粒子量(ろ過残さ)[%]=(ろ過残さの質量[g])/(試料の質量[g])×100とした時に、
○:粗粒子量 ≦3%
×:粗粒子量 >3%
【0083】
[塗料化・性能評価方法]
【0084】
配合、塗料化などの方法にについて説明する。
【0085】
(A)艶有塗料
まず、艶有塗料などの場合を想定する。
【0086】
<顔料ペーストの調整>
【0087】
【表2】

【0088】
ステンレス容器に、上記原料を混合させた後に、ガラスビーズを用いてディスパーにて20〜40分間攪拌・分散させて顔料ペーストを製造した。
【0089】
<塗料の製造>
【0090】
【表3】

【0091】
上記配合で、ディスパーにて30分間混合・攪拌を行い、塗料を製造した。
【0092】
<評価試験方法>
【0093】
・塗料状態(容器の中での状態)
JIS K 5600−1−1の4.1.2a に基づいて、次のように行った。
容器の口を開き、表面に皮が張っている場合は、これを取り除いた後、へら又は棒などで中身をかき混ぜて調べる。容器の底に成分の一部が沈んでいても、特に堅い塊がなく、底の部分を少しずつこすって沈殿を溶きほぐしてからかき混ぜ、中身が全体に容易に一様になるときは、かき混ぜたとき、堅い塊がなく一様になるとする。
○ 異常がみとめられない
× 堅い塊、ブツなどがある
【0094】
・塗膜状態(塗膜外観)
フレキシブル板(JIS A 5430準拠)にニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント社製カルボキシル基を有するスチレン−アクリル樹脂系シーラー)を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装、16時間放置(温度23℃湿度50%)後、評価塗料を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装間隔時間を3時間で、2回塗り重ね塗布した。その後、24時間放置した後、塗膜表面の状態を観察し、評価(目視)した。
○ 塗膜に異常が認められない
× 割れ、ちぢみ、ピンホールなどの異常が認められる
【0095】
・耐水性
フレキシブル板(JIS A 5430準拠)にニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント社製カルボキシル基を有するスチレン−アクリル樹脂系シーラー)を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装、16時間放置(温度23℃湿度50%)後、評価塗料を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装間隔時間を3時間で、2回塗り重ね塗布した。その後、7日間乾燥養生して耐水性試験板を作成、20℃の水に7日間没水した。取り出して水洗した後に、30分以内に塗膜表面の状態を観察、評価した。
◎:水に浸漬した塗膜に膨れ、割れ、剥がれ等がない
○:水に浸漬した塗膜面積3%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある。
△:水に浸漬した塗膜面積 3%以上、10%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある
×:水に浸漬した塗膜面積 10%以上、30%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある
××:水に浸漬した塗膜面積 30%以上に膨れ、割れ、剥がれ等がある
【0096】
・耐アルカリ性
フレキシブル板(JIS A 5430準拠)にニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント社製カルボキシル基を有するスチレン−アクリル樹脂系シーラー)を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装、16時間放置(温度23℃湿度50%)後、評価塗料を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装間隔時間を3時間で、2回塗り重ね塗布した。その後、7日間乾燥養生して耐アルカリ性試験板を作成、20℃の水酸化ナトリウム3%水溶液に7日間没水した。取り出して水洗した後に、30分以内に塗膜表面の状態を観察、評価した。
◎:水に浸漬した塗膜に膨れ、割れ、剥がれ等がない
○:水に浸漬した塗膜面積3%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある。
△:水に浸漬した塗膜面積 3%以上、10%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある
×:水に浸漬した塗膜面積 10%以上、30%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある
××:水に浸漬した塗膜面積 30%以上に膨れ、割れ、剥がれ等がある
【0097】
・耐洗浄性
JIS K 5660に規定されるつや合成樹脂エマルションペイント規格に従って、実施した。装置としては、JIS K 5600−5−11の6.3の湿潤磨耗試験装置の機能をもち、試験槽、石けん液槽、ブラシなどから構成され、試験片の塗膜上をブラシが往復するものを用いた。試験片は、硬質塩化ビニルシート(JIS K 6734に規定)に、評価塗料を、6milアプリケーターを用いて塗布し、7日間乾燥養生して耐洗浄性試験板を作成した。
【0098】
耐洗浄性試験は、JIS K 5660の6.13の規定に沿って、次のようにして、行った。即ち、試験片を、洗浄性試験装置の試験槽の試験台に、塗面を上向きにして水平に固定する。0.5%石けん水溶液を十分に浸み込ませたブラシを試験片の塗面に載せ、こする面に0.5%石けん水溶液を滴下し、常に濡れた状態に保ちながら、塗面をブラシで1000回往復させ、こする。その後、試験片を取り出し水で洗い、乾燥させた後、塗膜表面の状態を観察し、評価(目視)した。
○ ブラシの往復回数1000回で、こすった箇所に塗膜の破れ、磨耗による素地の露出が認められない。
× ブラシの往復回数1000回で、こすった箇所に塗膜の破れ、磨耗による素地の露出が認められる。
【0099】
・耐湿潤冷熱繰り返し性
フレキシブル板(JIS A 5430準拠)にニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント社製カルボキシル基を有するスチレン−アクリル樹脂系シーラー)を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装、16時間放置(温度23℃湿度50%)後、評価塗料を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装間隔時間を3時間で、2回塗り重ね塗布した。その後、7日間乾燥養生して耐湿潤冷熱繰り返し性試験体を作成、JIS K 5600−7−4により試験を実施した。試験片を23±2℃の水中に18時間浸した後、直ちに−20℃±2℃に保った恒温槽で3時間冷却し、次に50±2℃に保った別の恒温槽で3時間加温する。この操作を7回繰り返してから、塗膜表面の状態を観察し、評価(目視)した。
○ 塗膜に膨れ、割れ、はがれ等がない
△ 塗膜に局所的に膨れ、割れ、はがれ等がある
× 塗膜に全体的に膨れ、割れ、はがれ等がある
【0100】
・促進耐候性
フレキシブル板(JIS A 5430準拠)にニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント社製カルボキシル基を有するスチレン−アクリル樹脂系シーラー)を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装、16時間放置(温度23℃湿度50%)後、評価塗料を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装間隔時間を3時間で、2回塗り重ね塗布した。その後、7日間乾燥養生して促進耐候性試験板を作成、JIS K 5600−7−7(キセノンランプ法)により、照射480時間を経過後に試験体を取り出し室内に1時間放置した後、塗膜表面の状態を観察し、評価(目視)を行った。白亜化等級は、JIS K 5600−8−6の規定による。
○ 白亜化等級が1以下で膨れ、はがれ、割れ等なく、色の変化が見本板と比較して大きく変化がない
× 白亜化等級が2以上、もしくは はがれ、割れが発生、もしくは色の変化が大きい
【0101】
・粘度
ストーマー粘度計を用いて、評価塗料25℃の状態で測定した。
【0102】
・光沢
評価塗料を、温度23℃、湿度50%の条件下でガラス板にアプリケーター6milを用いて塗装した後、同条件で24時間放置して光沢値(60度光沢値)を測定。ここでは光沢値測定器(ビックケミー社製micro−TRI−gloss)を使用した。
【0103】
(B)艶消塗料
次に、艶消塗料などの場合を想定する。
【0104】
<顔料ペーストの調整>
【0105】
【表4】

【0106】
ステンレス容器に、上記原料を混合、ディスパーにて30分間攪拌・分散させて顔料ペーストを製造した。
【0107】
<塗料の製造>
【0108】
【表5】

【0109】
上記配合で、ディスパーにて30分間混合・攪拌を行い、塗料を製造した。
【0110】
<評価試験方法 艶消塗料の場合>
【0111】
・塗料状態(容器の中での状態)
JIS K 5600−1−1の4.1.2a に基づいて、次のように行った。
容器の口を開き、表面に皮が張っている場合は、これを取り除いた後、へら又は棒などで中身をかき混ぜて調べる。容器の底に成分の一部が沈んでいても、特に堅い塊がなく、底の部分を少しずつこすって沈殿を溶きほぐしてからかき混ぜ、中身が全体に容易に一様になるときは、かき混ぜたとき、堅い塊がなく一様になるとする。
○ 異常がみとめられない
× 堅い塊、ブツなどがある
【0112】
・塗膜状態(塗膜外観)
フレキシブル板(JIS A 5430準拠)にニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント社製カルボキシル基を有するスチレン−アクリル樹脂系シーラー)を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装、16時間放置(温度23℃湿度50%)後、評価塗料を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装間隔時間を3時間で、2回塗り重ね塗布した。その後、24時間放置した後、塗膜表面の状態を観察し、評価(目視)した。
○ 塗膜に異常が認められない
× 割れ、ちぢみ、ピンホールなどの異常が認められる
【0113】
・耐水性
フレキシブル板(JIS A 5430準拠)にニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント社製カルボキシル基を有するスチレン−アクリル樹脂系シーラー)を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装、16時間放置(温度23℃湿度50%)後、評価塗料を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装間隔時間を3時間で、2回塗り重ね塗布した。その後、7日間乾燥養生して耐水性試験板を作成、20℃の水に7日間没水した。取り出して水洗した後に、30分以内に塗膜表面の状態を観察、評価した。
◎:水に浸漬した塗膜に膨れ、割れ、剥がれ等がない
○:水に浸漬した塗膜面積3%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある。
△:水に浸漬した塗膜面積 3%以上、10%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある
×:水に浸漬した塗膜面積 10%以上、30%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある
××:水に浸漬した塗膜面積 30%以上に膨れ、割れ、剥がれ等がある
【0114】
・耐アルカリ性
フレキシブル板(JIS A 5430準拠)にニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント社製カルボキシル基を有するスチレン−アクリル樹脂系シーラー)を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装、16時間放置(温度23℃湿度50%)後、評価塗料を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装間隔時間を3時間で、2回塗り重ね塗布した。その後、7日間乾燥養生して耐アルカリ性試験板を作成、20℃の水酸化ナトリウム3%水溶液に7日間没水した。取り出して水洗した後に、30分以内に塗膜表面の状態を観察、評価した。
◎:水に浸漬した塗膜に膨れ、割れ、剥がれ等がない
○:水に浸漬した塗膜面積3%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある。
△:水に浸漬した塗膜面積 3%以上、10%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある
×:水に浸漬した塗膜面積 10%以上、30%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある
××:水に浸漬した塗膜面積 30%以上に膨れ、割れ、剥がれ等がある
【0115】
・耐洗浄性
JIS K 5663に規定される合成樹脂エマルションペイント規格に従って、実施した。装置としては、JIS K 5600−5−11の6.3の湿潤磨耗試験装置の機能をもち、試験槽、石けん液槽、ブラシなどから構成され、試験片の塗膜上をブラシが往復するものを用いた。試験片は、硬質塩化ビニルシート(JIS K 6734に規定)に、評価塗料を6milアプリケーターを用いて塗布し、7日間乾燥養生して耐洗浄性試験板を作成した。
【0116】
耐洗浄性試験は、JIS K 5663の7.12の規定に沿って、次のようにして、行った。即ち、試験片を、洗浄性試験装置の試験槽の試験台に、塗面を上向きにして水平に固定する。0.5%石けん水溶液を十分に浸み込ませたブラシを試験片の塗面に載せ、こする面に0.5%石けん水溶液を滴下し、常に濡れた状態に保ちながら、塗面をブラシで500回往復させ、こする。その後、試験片を取り出し水で洗い、乾燥させた後、塗膜表面の状態を観察し、評価(目視)した。
○ ブラシの往復回数500回で、こすった箇所に塗膜の破れ、磨耗による素地の露出が認められない
× ブラシの往復回数500回で、こすった箇所に塗膜の破れ、磨耗による素地の露出が認められる
【0117】
・促進耐候性
フレキシブル板(JIS A 5430準拠)にニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント社製カルボキシル基を有するスチレン−アクリル樹脂系シーラー)を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装、16時間放置(温度23℃湿度50%)後、評価塗料を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装間隔時間を3時間で、2回塗り重ね塗布した。その後、7日間乾燥養生して促進耐候性試験板を作成、JIS K 5600−7−7(キセノンランプ法)により、照射240時間を経過後に試験体を取り出し室内に1時間放置した後、塗膜表面の状態を観察し、評価(目視)を行った。白亜化等級は、JIS K 5600−8−6の規定による。
○ 白亜化等級が1以下で膨れ、はがれ、割れ等なく、色の変化が見本板と比較して大きく変化がない
× 白亜化等級が2以上、もしくは はがれ、割れが発生、もしくは色の変化が大きい
【0118】
・粘度
ストーマー粘度計を用いて、評価塗料25℃の状態で測定した。
【0119】
・光沢
評価塗料を、温度23℃、湿度50%の条件下でガラス板にアプリケーター6milを用いて塗装した後、同条件で24時間放置して光沢値(60度光沢値)を測定。ここでは光沢値測定器(ビックケミー社製micro−TRI−gloss)を使用した。
【0120】
次に、各種のその他の例について説明する。
【0121】
[その他の例]
【0122】
<澱粉について>
【0123】
どの様なものでも適用可能である。例としては、とうもろこし澱粉、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉等、また、その加工澱粉、食物繊維などを挙げることができる。
【0124】
ここで、加工澱粉には、原料澱粉の無水グルコース残基に官能基を導入した誘導体や、酸処理などにより低粘度化した澱粉がある。例を以下に示す。
【0125】
エーテル化澱粉:親水基を導入して水溶液中での安定性を図ったもの、疎水基を導入して澱粉皮膜を耐水化させたもの、あるいは親油基となるもの、そしてイオンを導入してイオン性を高めたものなどがある。官能基の種類により、カルボキシメチル澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、カチオン澱粉などに分けられる。
【0126】
エステル化澱粉:澱粉に有機酸、無機酸またはその塩類などを反応させ、官能基を結合させた誘導体。使用した酸の種類により、酢酸澱粉、リン酸澱粉などに分けられる。
【0127】
架橋澱粉:2ヶ所以上の澱粉の水酸基間に多官能基を結合させた誘導体。エピクロルヒドリン架橋澱粉・リン酸架橋澱粉などがある。
【0128】
グラフト共重合化澱粉:澱粉に他の有機高分子物質、例えばポリアクリルアマイド、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルニトリルなどを化学的に結合したもの。
【0129】
また、酸化澱粉・酸処理澱粉・デキストリンのような、酸化・加水分解・焙焼・物理加工を施した低粘度化澱粉も加工澱粉に含まれる。
【0130】
<澱粉の分子量について>
【0131】
澱粉分子量としては重量平均分子量を採用した。分子量は下記条件によりGPC法で測定した。
カラム:shodex OHpack SB-860M HQ ×2
ガードカラム:shodex OHpack SB-G
溶離液:50mM 硝酸ナトリウム水溶液
流速:1.0mL/分
インジェクト量:50μL
サンプル:50mM硝酸ナトリウム水溶液でサンプルを溶解し0.5w/w%としたもの
スタンダード:プルラン
【0132】
<糖について>
【0133】
D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどの単糖類、麦芽糖、砂糖(ショ糖)、パノース、マルトトリオース、イソマルトトリオースなどの少糖(2〜6量体からなるオリゴ糖)類、またその変性物を例として挙げることができる。また、糖の例としては、特に制限はなく、砂糖、ブドウ糖、異性化糖、マルトース、トレハロース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール等の糖及び糖アルコール、各種オリゴ糖、及びそれらの混合物を用いることができる。上記オリゴ糖との例としては、マルトオリゴ糖(好ましくは重合度3〜7)、ニゲロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、パノースオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖及びそれらのシラップ等を挙げることもできる。
【0134】
<共重合可能な官能基を有する単量体について>
【0135】
カルボキシル基含有単量体(モノマー)としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸などを例として挙げることができる。
【0136】
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどを例として挙げることができる。
【0137】
ヒドロキシル基含有単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、グリセロ−ル(メタ)アクリレートなどを例として挙げることができる。
【0138】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、n−ブチル(メタ)アクリレ−ト、イソブチル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチル(メタ)アクリレ−ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、ラウリル(メタ)アクリレ−ト、ステアリル(メタ)アクリレ−ト、イソボルニル(メタ)アクリレ−ト、ベンジル(メタ)アクリレ−トなどを例として挙げることができる。
【0139】
スルホン酸基含有単量体としては、2−(メタ)アクリロキシエチル−1−スルホン酸、3−(メタ)アクリロキシプロピル−1−スルホン酸、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル−1−スルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸、アリ−ルスルホン酸、メタリ−ルスルホン酸などを例として挙げることができる。
【0140】
酸アミド基又はN−アルキル基置換アミド基含有単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどを例として挙げることができる。
【0141】
アミノ基含有単量体としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、N,N−メチルアミノプロピル(メタ)アクリレ−ト、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレ−ト、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどを例として挙げることができる。
【0142】
カルボニル基含有単量体としては、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレ−ト、ビニルメチルケトンなどを例として挙げることができる。
【0143】
その他の官能基を有する単量体としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェ−ト、アシッドホスフォキシポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレ−ト、グリシジル(メタ)アクリレ−ト、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、2〜3個の重合性二重結合を有するジビニルベンゼン、ジアリルフタレ−ト、エチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルトリ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルヘキサ(メタ)アクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタンテトラ(メタ)アクリレ−トなどを例として挙げることができる。
【0144】
ビニル系単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バ−サテック酸ビニルなどを例として挙げることができる。
【0145】
エポキシ基含有単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アリルエ-テル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどを例として挙げることができる。
【0146】
<ガラス転移温度>
【0147】
形成塗膜の造膜性と耐水性、耐久性等の塗膜物性の点から、上記単量体について、ガラス転移温度(Tg)が−50〜50℃に選択するのが望ましい。
【0148】
なお、ガラス転移温度(絶対温度)は下式から算出される値である。
1/Tg=W/T+W/T+・・・W/T
ここで、式中のW、W・・・Wは各モノマーの重量%(=(各モノマーの配合量/モノマー全重量)×100)であり、T、T・・・Tは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)である。
【0149】
<界面活性剤について>
【0150】
(アニオン性)
アニオン性界面活性剤としては、例えばオレイン酸塩、ラウリル酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルエ-テル硫酸塩、ポリオキシエチレンジアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエ-テルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエ-テルリン酸エステルなどを例として挙げることができる。
【0151】
(カチオン性)
カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、トリエタノ−ルアミンジ脂肪酸エステル4級塩、N−ヒドロキシエチル−N−メチルプロパンジアミン脂肪酸モノエステルアミド塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩などを例として挙げることができる。
【0152】
(ノニオン性)
ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエ-テル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエ-テル、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)ブロックコ−ポリマー、ポリエチレングリコ−ル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどを例として挙げることができる。
【0153】
(反応性)
反応性界面活性剤としては、種々の分子量(EO付加モル数の異なる)のポリエチレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、ポリオキシエチレン・アルキルフェノ−ルエ-テル(メタ)アクリル酸エステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレングリコ−ルのモノマレイン酸エステル及びその誘導体、ポリオキシアルキレン・アルキルエ-テル・燐酸エステルなどを例として挙げることができる。
【0154】
(高分子系)
高分子系界面活性剤としては、例えばポリビニルアルコ−ル及びその誘導体、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸アルカリ中和物、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、カゼインなどを例として挙げることができる。
【0155】
(両性)
両性界面活性剤としては、アミドプロピルベタイン、カルボキシベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸、イミダゾリン誘導体、リン脂質、3級窒素を含むリン酸エステルなどを例として挙げることができる。
【0156】
<重合開始剤について>
【0157】
乳化重合反応は、ラジカル重合開始剤を用いて反応することができる。ラジカル重合開始剤は、熱又は還元性物質などによってラジカルを生成してビニル系単量体の付加重合を起こさせるもので、水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などがある。例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2.2−アゾビスイソブチロニトリル、2.2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2.2−アゾビス(2.4−ジメチルバレロニトリル)などがあり、好ましくは水溶性の重合開始剤である。なお、重合速度の促進や低温反応を望む場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、ビタミンC、ホルムアルデヒドスルホオキシレート塩などの還元剤をラジカル重合開始剤と組み合わせて用いることができる。
【0158】
<中和剤について>
【0159】
本発明の樹脂組成物は、未中和のままでも使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は、中和しても使用することができる。貯蔵安定性は双方ともに良好であった。使用できる中和剤の例としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物の無機塩、有機アミンなどの有機塩基。具体例としてはアンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、モルホリンなどを挙げることができる。
【0160】
<添加剤について>
【0161】
本発明の樹脂組成物に、必要に応じて公知の添加剤である成膜助剤、可塑剤、充填剤、顔料、粘性調整剤、消泡剤、防腐剤、分散剤、酸化防止剤、凍結防止剤、防炎剤、難燃剤、防錆剤などを本発明の効果を損なわない範囲で配合して使用することができる。
【0162】
<シランカップリング剤>
【0163】
アクリル系共重合体を構成するモノマー成分と共重合するシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどを例として挙げることができる。
【0164】
エポキシ基含有シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、エポキシ基含有アルコキシシランオリゴマーなどを例として挙げることができる。
【0165】
メルカプト基含有シランカップリング剤としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメチルジエトキシシラン、メルカプト基含有アルコキシシランオリゴマーなどを例として挙げることができる。
【0166】
アミノ基含有シランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどを例として挙げることができる。
【0167】
イソシアネート基含有シランカップリング剤としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを例として挙げることができる。
【0168】
<連鎖移動剤>
【0169】
連鎖移動剤としては、メチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸およびそのエステル、2−エチルヘキシルチオグリコール、チオグリコール酸オクチルなどのメルカプタン類;メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;クロルエタン、フルオロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒドなどのカルボニル類;メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、α−メチルスチレンなどを例として挙げることができる。
【0170】
<架橋剤>
【0171】
ポリグリシジル化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエ-テル、ポリエチレングリコールジグリシジルエ-テル、プロピレングリコールジグリシジルエ-テル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエ-テル、グリセリンジグリシジルエ-テル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエ-テル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエ-テル、N,N,N´,N´−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエ-テル、ジグリセロールポリグリシジルエ-テルなどを例として挙げることができる。
【0172】
ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらから変性されたプレポリマーなどを例として挙げることができる。
【0173】
ポリアジリジン化合物としては、1,1´−(メチレン−ジ−p−フェニレン)ビス−3,3−アジリジル尿素、1,1´−(ヘキサメチレン)ビス−3,3−アジリジル尿素、エチレンビス−(2−アジリジニルプロピオネート)、トリス(1−アジリジニル)ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリアジリジニル−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパン−トリス−(2−アジリジニルプロピオネート)などを例として挙げることができる。
【0174】
<コアシェル>
【0175】
この発明の澱粉含有樹脂組成物について、一般的にコア/シェル型エマルションと称される方法により、コア部とシェル部を設けることもできる。各層の樹脂組成に相違を持たせたることによって、又は、コア部・シェル部で設定Tgに差をつけることによって、低温造膜性を保ちながら、べたつきの少ない膜を形成すること等ができ、高性能の皮膜の作成が可能となる。
【0176】
このときのコア部とシェル部のTgはそれぞれ−50℃以上80℃以下で、合計が−50℃以上50℃以下となるのが望ましい。
【0177】
<塗料組成物に関して>
【0178】
本実施形態でのエマルション樹脂を用いた塗料組成物は、エマルション樹脂の他に、必要に応じて硬化剤、着色顔料、体質顔料、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、凍結防止剤、造膜助剤、防カビ剤、防腐剤等も含むことができる。
【0179】
上記硬化剤は限定されず、イソシアネート化合物、アジピン酸ジヒドラジド、カルボジイミド基含有化合物、エポキシ基含有化合物等、エマルション樹脂の反応性官能基と架橋反応可能な、当業者によってよく知られているものを適宜選択することができる。これらは2種以上であってもよい。
【0180】
上記着色顔料は特に限定されず、例えば、黄鉛、黄色酸化鉄、酸化鉄、カーボンブラック、二酸化チタン等の無機顔料;アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等の有機顔料を挙げることができる。また、上記体質顔料は炭酸カルシウム、沈降性バリウム、クレー、タルク、珪藻土等を挙げることができる。
【0181】
<塗膜の形成方法>
【0182】
基材は特に限定されず、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム等およびその表面処理物の金属素材、セメント類、石灰類、石膏類等のセメント基材、ポリ塩化ビニル類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、アクリル類、生分解性を有するポリ乳酸類等のプラスチック基材等、又は、これらからなる建築物、建材、構造物などを挙げることができる。
【0183】
塗布する方法は特に限定されず、例えば、刷毛塗り、ローラー塗り、ロールコータ、カーテンフローコート、スプレー塗装、ナイフエッジコート、浸漬塗装、電着塗装等により種々の基材に対して行うことができる。塗装後、塗膜は、常温乾燥または加熱を行うことによって塗膜を得ることができる。なお、塗布量、塗装膜厚および乾燥時間は、塗料の種類、適用する基材などに応じて任意に設定することができる。
【0184】
[用途]
【0185】
塗料、フィルム、プラスチック、ガラス、紙、繊維、皮革等のコーティング剤、粘着剤、接着剤等の各種用途に使用可能な環境負荷の少ない澱粉含有樹脂組成物を提供する。
【0186】
塗料用途としては、限定されず、例えば、下塗り、中塗り、上塗りに使用することができる。建築・建材分野のみならず、自動車・工業用、内装又は外装においても使用可能である。塗料の形態例としては、クリヤー塗料、エナメル塗料、フィラーなどを挙げることができる。上述のように様々な塗装方法にも応用できる。例としては、刷毛塗り、ローラー塗り、多孔質ローラー塗り、タンポ塗り、ヘラ塗り、こて塗り、エアースプレー塗り、エアレススプレー塗り、カーテンフロー塗り、流し塗り、ロールコータ塗装、しごき塗り、転がし塗り、遠心力塗り、静電塗装、電着塗装などを挙げることができる。シーラー、プライマー、フィラー、上塗りといった塗装の役割を持たせるために本実施形態を使用することもできる。さらに、防食、防腐、防黴、防蟻、防汚、防水、殺菌、耐薬品、耐火、美観、平滑化、光沢付与、彩色、模様、意匠、景観創出、機能性付与、遮熱、撥水、蛍光、迷彩、有害化学物質吸着などの目的で本実施形態を使用することもできる。
【0187】
[権利解釈など]
【0188】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について説明してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が実施形態の修正又は代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、冒頭に記載した特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0189】
また、この発明の説明用の実施形態が上述の目的を達成することは明らかであるが、多くの変更や他の実施例を当業者が行うことができることも理解されるところである。特許請求の範囲、明細書、図面及び説明用の各実施形態のエレメント又はコンポーネントを他の1つまたは組み合わせとともに採用してもよい。特許請求の範囲は、かかる変更や他の実施形態をも範囲に含むことを意図されており、これらは、この発明の技術思想および技術的範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉及びデキストリンのうち少なくとも一方と単量体と糖とを混合し、乳化させる単量体乳化液を得る工程と、
前記単量体乳化液を反応させ、重合体組成物を含有する重合体分散液を得る工程と
を有することを特徴とする重合体組成物の製造方法。
【請求項2】
前記単量体乳化液において、前記澱粉及びデキストリンのうち少なくとも一方はスラリー状であることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法。
【請求項3】
前記重合体分散液を得る工程は、前記単量体乳化液を得る工程よりも高温であることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法。
【請求項4】
前記重合体分散液を得る工程は、前記澱粉及びデキストリンのうち少なくとも一方の糊化開始温度以上であり、
前記単量体乳化液を得る工程は前記澱粉及びデキストリンのうち少なくとも一方の糊化開始温度未満であることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法。
【請求項5】
前記糖は、10量体以下であることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法。
【請求項6】
前記単量体は共重合性不飽和単量体であることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法。
【請求項7】
第1澱粉及び第1デキストリンのうち少なくとも一方と第1単量体と第1糖とを混合し、乳化させ、コア部単量体乳化液を得る工程と、
第2澱粉及び第2デキストリンのうち少なくとも一方と第2単量体と第2糖とを混合し、乳化させ、シェル部単量体乳化液を得る工程と、
前記コア部単量体乳化液を反応させ、コア部重合体組成物を含有する重合体分散液を得る工程と、
前記シェル部単量体乳化液を反応させ、前記コア部重合体組成物周辺に形成されたシェル部重合体組成物を含有する重合体分散液を得る工程と
を有することを特徴とする重合体組成物の製造方法。
【請求項8】
前記重合体組成物は塗料に使用できることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法。
【請求項9】
前記重合体組成物は接着剤に使用できることを特徴とする請求項1記載の重合体組成物の製造方法。
【請求項10】
ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリル酸、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル硫酸ナトリウム、ショ糖混合物、エステル化澱粉及び水を、エステル化澱粉の糊化開始温度未満にて攪拌して乳化させる単量体乳化液を得る工程と、
前記単量体乳化液を過硫酸カリウム存在下、エステル化澱粉の糊化開始温度以上で反応させ、重合体組成物を含有する重合体分散液を得る工程と
を有することを特徴とする重合体組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−47713(P2010−47713A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214568(P2008−214568)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000105877)サイデン化学株式会社 (39)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】