説明

重合可能なナノダイヤモンドとその製造法

【課題】
本発明は、ポリマーとの馴染みを向上させ、ポリマーと化学結合できる表面修飾ナノダイヤモンドおよびその製造方法ならびに該ナノダイヤモンドを含有する樹脂組成物を硬化した硬化物からなるフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】
表面に水酸基、アミノ基又はカルボキシル基から選ばれる1種以上の極性基を有する、平均粒子径100nm以下のダイヤモンド粒子(a)と該極性基と反応する官能基及び重合可能な官能基を有する化合物(b)を反応させ得られた表面修飾ダイヤモンド。その表面修飾ダイヤモンドを含有する硬化性樹脂組成物を乾燥させた塗膜からなるフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合可能なナノダイヤモンド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは、その硬度が既存物質の中で最高値を有していることから、ダイヤモンド微粒子を研磨材として利用し、物体表面を平滑に研磨する工程に実用化されている。また、ダイヤモンド微粒子からなる薄膜を物体表面に形成して、物体表面の潤滑性、耐磨耗性を向上させることが実用化されている。ダイヤモンドはこのような機械的性質が優れており、さらには電気的性質、熱的性質、及び光学的性質においても優れた物質であり、より広範囲の分野での利用が期待されている材料である。
【0003】
特に、ナノ粒子が媒体内で集合・凝集することなく分散状態を保つと、媒体との接触面積が非常に大きくなるため、従来のミクロ粒子混合系と比べて混合効果が強く現れると期待される。(非特許文献1)
【0004】
上記の観点より、ナノダイヤモンドと有機ポリマーのコンポジットは種々研究されており、例えばナノダイヤモンドとポリメチルメタクリレート(PMMA)のコンポジットなどが挙げられる。(特許文献1)
【0005】
しかしながら、ナノダイヤモンドとポリマーの馴染みが不十分であり、ナノダイヤモンドが十分に分散していない為、ナノ粒子の広大な表面積を考慮すると、十分に機能を出せていないのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】大澤映二、「ナノテクノロジーに必要なサイエンスの視点」現代化学、2005,4月号、No.409,38−42頁
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−51937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は非常に大きい表面積を有するナノダイヤモンドの表面に、重合可能な官能基を修飾することにより、ポリマーとの馴染みを向上させ、ポリマーと化学結合できる表面修飾ナノダイヤモンドおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、ナノダイヤモンド表面の極性基と該極性基と反応する官能基及び重合可能な官能基を有する化合物を反応させる事により、重合可能なナノダイヤモンドの製造法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は
(1)表面に水酸基、アミノ基又はカルボキシル基から選ばれる1種以上の極性基を有する、平均粒子径100nm以下のダイヤモンド粒子(a)と該極性基と反応する官能基及び重合可能な官能基を有する化合物(b)(以下、単に「表面修飾剤」ということがある。)を反応させ得られた表面修飾ダイヤモンド、
(2)ダイヤモンド粒子(a)の表面極性基と反応する化合物(b)の官能基がイソシアネート基である上記(1)記載のダイヤモンド、
(3)化合物(b)の重合可能な官能基がビニル基、(メタ)アクリレート基、グリシジル基、イソシアネート基、アミン基、カルボキシル基又はシラノール基である上記(1)または上記(2)記載のダイヤモンド、
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載のダイヤモンドを含有する光および/又は熱硬化性樹脂組成物
(5)(4)記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物
(6)(5)記載の硬化物からなるフィルム
【発明の効果】
【0011】
本発明の表面修飾ナノダイヤモンドは、ポリマーとの馴染みが向上し、重合可能な官能基を有した化合物と化学結合しているので、従来にない優れた機械的特性、電気的特性、熱的特性、光学的特性等を有するコンポジットが形成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る2−イソシアナトエチルメタクリレートを表面修飾したナノダイヤモンドのFT−IR図である。
【図2】本発明の実施例1に係る2−イソシアナトエチルメタクリレートを表面修飾したナノダイヤモンドの熱重量測定図である。
【図3】本発明の実施例1に係る2−イソシアナトエチルメタクリレートを表面修飾したナノダイヤモンドの熱分解GC−MS図である。
【図4】本発明の実施例2に係るイソホロンジイソシアネートを表面修飾したナノダイヤモンドのFT−IR図である。
【図5】本発明の実施例2に係るIPDIを表面修飾したナノダイヤモンドの熱重量測定図である。
【図6】本発明の実施例1に係るIPDIを表面修飾したナノダイヤモンドの熱分解GC−MS図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の本発明を詳細に説明する。なお、以下において、粒径や粒子径は、動的光散乱法粒度分布測定により測定された体積平均粒子径を意味し、以下において平均粒子径という場合もある。
本発明で用いられるダイヤモンド粒子は、酸素欠如型爆薬を爆発する爆轟法により得られた回収煤を硝酸や硫酸などによって化学的に精製された一次粒子径が3〜5nmの親水性のダイヤモンド粒子を原料とする。
【0014】
爆轟法で得られたダイヤモンド粒子は、75〜90重量%の炭素原子を主体とし、残りは1〜2重量%の水素原子、1〜3重量%の窒素原子、5〜23重量%の酸素原子を含み、一次粒子が強く凝集している。すなわち、水素原子、窒素原子、及び酸素原子がダイヤモンド粒子の表層部に局在しており、これら原子は極めて多種、多数の官能基、例えばメチル基、ニトリル基、水酸基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基もしくはアルデヒド基等を構成している。本発明で使用可能なダイヤモンド粒子は、これら基のうち、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基から選ばれる1種以上の極性基を有する。
【0015】
本発明の表面修飾ナノダイヤモンド粒子は、下記する製造法で得られるが、当該製造法で得られた重合可能なナノダイヤモンド粒子に適合するかどうかは下記するFT−IR測定、熱重量測定(TGA)、熱分解GC−MS測定の結果を指標とすることができる。
【0016】
本発明の表面修飾ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法により得られたナノダイヤモンド粒子を適当な分散媒中に、予め分散させた分散体中において、表面修飾剤と反応させて得られる。
【0017】
本発明において、表面修飾剤としては、ナノダイヤモンドの表面極性基と反応するイソシアネート基を有しており、且つポリマーと重合可能な官能基を有している化合物であれば、特に限定することなく使用される。
【0018】
重合可能な官能基としてはビニル基、(メタ)アクリレート基、グリシジル基、イソシアネート基、アミン基、カルボキシル基又はシラノール基より選択される少なくとも1種類が好ましい。
使用できる表面修飾剤の具体例としては、2−イソシアナトメチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトプロポキシプロピル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトフェニル(メタ)アクリレート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸2−(0−[1'メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、モノメチルトリイソシアネートシラン、テトライソシアネートシラン、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
ナノダイヤモンド粒子に重合可能な化合物を表面修飾する為の分散媒としては、表面修飾剤を溶解させ、且つイソシアネート基と反応、分解しない分散媒であれば、特に限定されるものではなく、非水系有機溶剤等が使用される。これらの中でも、ナノダイヤモンド粒子に効率良く当該化合物を表面修飾させるために、ナノダイヤモンド粒子が良く分散する非プロトン性極性有機溶剤が好ましい。
【0020】
ここでは、代表的な例として分散媒としてN−メチル−2−ピロリドンを使用する場合について述べるが、N−メチル−2−ピロリドン以外の分散媒もこれに準じて同様に実施できる。
【0021】
まず、N−メチル−2−ピロリドンにナノダイヤモンド粒子を投入し、原料のナノダイヤモンド粒子を十分分散させる。分散方法は超音波浴中で撹拌しながら1〜48時間、好ましくは2〜24時間、より好ましくは5〜20時間程度である。なお、添加したナノダイヤモンド粒子が十分に分散できない場合は、遠心分離によって粗粒を取り除いても良い。
作製したナノダイヤモンド分散体の平均粒子径は、100nm以下、好ましくは3〜100nm、より好ましくは3〜50nm、特に好ましくは3〜40nmである。平均粒子径が100nm以上になると、表面修飾剤のイソシアネート基と反応する該表面極性基が凝集により阻害されることがある。
【0022】
ナノダイヤモンド粒子の濃度は、N−メチル−2−ピロリドン100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0023】
なお、分散体中に存在する水分が表面修飾剤と反応する恐れがある場合は、分散体にモレキュラーシーブス等の乾燥剤を添加し、2〜3日静置した後に使用すると効果的である。
【0024】
次に分散体に表面修飾剤を混合する。表面修飾剤の使用量はナノダイヤモンド粒子1重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは0.2〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部である。
【0025】
引き続いて、撹拌しながら反応を開始する。この時反応を促進させる為にジブチルすずジラウラート等の触媒を添加してもよく、ビニル基、(メタ)アクリレート基等の表面修飾剤同士で重合する恐れがある場合は、ヒドロキノン等の重合禁止剤を添加してもよい。
【0026】
反応温度は、20〜150℃、好ましくは30〜100℃、より好ましくは40〜80℃、反応時間は0.5〜24時間、好ましくは1〜15時間、より好ましくは2〜10時間程度である。
【0027】
反応が終了後、トルエン等の低極性溶剤を分散媒に対して重量基準で2〜5倍量加え、表面修飾ナノダイヤモンド粒子を凝集又は沈殿させた後、ろ過等の手段で固液分離し、さらにN−メチル−2−ピロリドン、メチルエチルケトン等の表面修飾剤が溶解する有機溶剤で洗浄後、減圧乾燥し、目的とする表面修飾ナノダイヤモンド粒子を得る。なお、固液分離の手段として遠心分離機を使用することも可能である。
【0028】
本発明で用いる硬化性樹脂組成物は、光照射及び/又は加熱により硬化可能な樹脂組成物であれば特に限定されず、例えば、不飽和二重結合を有する硬化性樹脂組成物、エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテルを有する硬化性樹脂組成物が挙げられる。
【0029】
上記不飽和二重結合を有する硬化性樹脂組成物としては特に限定されず、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、マレイミド基、(メタ)アクリル基等を有する樹脂が挙げられ、なかでも反応性や汎用性の面より(メタ)アクリル基を有する樹脂が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル基とは、アクリル基又はメタクリル基のことをいう。
【0030】
(メタ)アクリル基を有する樹脂としては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレートと多カルボン酸化合物の酸無水物の反応物であるハーフエステル,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、モノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0031】
モノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートに用いられるグリシジル化合物としては、特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’ −ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’ −ビフェノール、ジメチル−4,4’ −ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’ −メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’ −ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のポリフェノール類のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
【0032】
これらモノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートは、そのエポキシ基に当量の(メタ)アクリル酸をエステル化反応させる事によって得ることができる。この合成反応は一般的に知られている方法により行うことが出来る。例えば、レゾルシンジグリシジルエーテルにその当量の(メタ)アクリル酸を、触媒(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等)及び重合防止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等)と共に添加して、例えば80〜110℃でエステル化反応を行う。こうして得られた(メタ)アクリル化レゾルシンジグリシジルエーテルは、ラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂である。
【0033】
上記環状エーテルを有する硬化性樹脂組成物としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。なかでも、反応速度や汎用性の観点からエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、オキセタン樹脂が好適である。上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニルノボラック型、トリスフェノールノボラック型、ジシクロペンタジエンノボラック型等のノボラック型;ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、2,2’−ジアリルビスフェノールA型、水添ビスフェノール型、ポリオキシプロピレンビスフェノールA型等のビスフェノール型等が挙げられる。また、その他にグリシジルアミン等も挙げられる。
【0034】
上記エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、エピクロンN−740、N−770、N−775(以上、いずれも大日本インキ化学社製)、エピコート152、エピコート154(以上、いずれもジャパンエポキシレジン社製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型としては、例えば、エピクロンN−660、N−665、N−670、N−673、N−680、N−695、N−665−EXP、N−672−EXP(以上、いずれも大日本インキ化学社製);ビフェニルノボラック型としては、例えば、NC−3000P(日本化薬社製);トリスフェノールノボラック型としては、例えば、EP1032S50、EP1032H60(以上、いずれもジャパンエポキシレジン社製);ジシクロペンタジエンノボラック型としては、例えば、XD−1000−L(日本化薬社製)、HP−7200(大日本インキ化学社製);ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004(以上、いずれもジャパンエポキシレジン社製)、エピクロン850、エピクロン860、エピクロン4055(以上、いずれも大日本インキ化学工業社製);ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピコート807(ジャパンエポキシレジン社製)、エピクロン830(大日本インキ化学工業社製);2,2’−ジアリルビスフェノールA型としては、例えば、RE−810NM(日本化薬社製);水添ビスフェノール型としては、例えば、ST−5080(東都化成社製);ポリオキシプロピレンビスフェノールA型としては、例えば、EP−4000、EP−4005(以上、いずれも旭電化工業社製)等が挙げられる。
【0035】
上記オキセタン樹脂の市販品として、例えば、エタナコールEHO、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP、エタナコールOXMA(以上、いずれも宇部興産社製)等が挙げられる。また、上記脂環式エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、セロキサイド2021、セロキサイド2080、セロキサイド3000(以上、いずれもダイセル・ユーシービー社製)等が挙げられる。これらの環状エーテル基を有する硬化性樹脂組成物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
本発明に含有される光反応開始剤としては、カチオン重合型とラジカル重合型が挙げられるが、特に制限が無い。ラジカル重合型光反応開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、4,4'−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等を挙げることができる。好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシンクロヘキシルフェニルケトンを挙げることができる。
【0037】
また、カチオン重合型光反応開始剤としては、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロボレート、トリスフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロボレート、4,4’−ビス[ビス(2−ヒドロキシエトキシフェニル)スルフォニオ]フェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができる。
なお、本発明においては、光反応開始剤は単独で用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。上記光反応開始剤の配合量としては、上記硬化性化合物100重量部に対して0.01〜10重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部である。0.01重量部未満であると、光重合を開始する能力が不足して効果が得られないことがあり、10重量部を超えると、急激な光重合反応により、硬化時の内部応力によって、接着強度の低下等を引き起こすことがある。
【0038】
上記熱硬化剤は、加熱により硬化性化合物中の不飽和二重結合やエポキシ基等を反応させ、架橋させるためのものであれば特に制限は無く、例えば酸無水物、アミン類、フェノール類、イミダゾール類、ジヒドラジン類、ルイス酸、ブレンステッド酸塩類、ポリメルカプトン類、イソシアネート類、ブロックイソシアネート類等が挙げられる。
【0039】
使用できる酸無水物の具体例としては、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコール無水トリメリット酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の芳香族カルボン酸無水物、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸の無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジック酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物等の脂環式カルボン酸無水物等が挙げられる。
【0040】
使用できるアミン類の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、m−キシリレンジアミン等の芳香族アミン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ポリエーテルジアミン等の脂肪族アミン、ジシアンジアミド、1−(o−トリル)ビグアニド等のグアニジン類、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジ、1,3−ビス[ヒドラジノカルボノエチル−5−イソプロピルヒダントイン]等のヒドラジド化合物類等が挙げられる。
【0041】
使用できるフェノール類の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’ −ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フラン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂、ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のハロゲン化フェノール類等、下記式1に示される
【0042】
【化1】

【0043】
(式中、x、y、z、l、m及びnは、それぞれ平均重合度であって、x=3〜7、y=1〜4、z=5〜15、l+m=2〜200の整数をそれぞれ示し、m/(l+m)≧0.04であり、nは特に限定されない。) 式1
で示されるフェノール性水酸基含有ポリアミドーポリブタジエン―アクリロニトリル共重合体や下記式2に示される
【0044】
【化2】

【0045】
(式中、l、m及びnは、それぞれ平均重合度であって、l+m=2〜200の整数をそれぞれ示し、m/(l+m)≧0.04であり、nは特に限定されない。) 式2
で示されるフェノール性水酸基含有ポリアミド等が挙げられる。
【0046】
上記記載のフェノール性水酸基含有ポリアミド類は、例えば次の方法で合成できる。即ち、フェノール性水酸基を有するジカルボン酸を含有するジカルボン酸成分に対して過剰量のジアミンを加え、これらを例えば、亜リン酸エステルとピリジン誘導体の存在下で縮合剤を使用して、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒中で窒素等の不活性雰囲気下にて加熱攪拌、縮合反応を行って、フェノール性水酸基を含有するポリアミドが得られる。また、ポリブタジエンやポリブタジエン−アクリロニトリル等とのブロック共重合体類は、例えば次の方法で合成できる。即ち、上記記載の方法で得られた、フェノール性水酸基を含有するポリアミドオリゴマーを生成させる。この結果、得られた両末端がアミノ基となったフェノール性水酸基含有ポリアミドオリゴマー溶液に、両末端にカルボキシル基をもつポリブタジエンーアクリロニトリル共重合体や、両末端にカルボキシル基をもつポリブタジエンを添加し、重縮合することにより得ることができる。また、ジカルボン酸をジアミンに対して過剰にして、両末端がカルボン酸基となったポリアミドを合成し、これに対して両末端がアミノ基のポリブタジエンーアクリロニトリル共重合体や両末端がアミノ基のポリブタジエンを反応させることもできる。尚、上記ジカルボン酸成分とジアミンは少なくともそのどちらか一方の全部又は一部がフェノール性水酸基を含有していれば良く、この条件を満たす限り、フェノール性水酸基を含有しないジカルボン酸又はジアミンを併用することができる。
【0047】
フェノール性水酸基含有ポリアミド誘導体に使用できるフェノール性水酸基を有するジカルボン酸の具体例としては、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2ーヒドロキシフタル酸、3−ヒドロキシフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸等が、又、フェノール性水酸基を有しないジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジカルボキシルナフタレン、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、3,3′−メチレン二安息香酸等が挙げられる。
【0048】
使用できるフェノール性水酸基を含有するジアミンの具体例としては、3,3′−ジアミン−4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフロロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジフロロメタン、3,4−ジアミノ−1,5−ベンゼンジオ−ル、3,3′−ジヒドロキシ−4,4′−ジアミノビスフェニル、3,3′−ジアミノ−4,4′−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)メタン等が、又、フェノール性水酸基を含有しないジアミンの具体例としては、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノナフタレン、ピペラジン、ヘキサネチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、m−キシレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、2,2′−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニル等が挙げられ、3,4′−ジアミノジフェニルエーテルが好ましいが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0049】
また、両末端に種々の官能基を持つポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体は、Goodrich社からHycar
CTBNとして市販されており、これらを前記のフェノール性水酸基含有ポリアミドとブロック化するために使用することができる。
【0050】
使用できるイミダゾール類の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等の各種イミダゾール類、及びそれらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類等が挙げられる。
【0051】
これら熱硬化剤の配合量としては、上記硬化性化合物100重量部に対して0.5〜50重量部であり、好ましくは1〜40重量部である。0.5重量部未満であると、硬化不足により、接着性や耐薬品性等の硬化物特性が低下する。また、50重量部を超えると、熱硬化剤成分が過剰にあまり、耐熱性等の低下を招く。なお、上記熱硬化剤は2種以上を混合して用いることもできる。
【0052】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤を含有させることもできる。この硬化促進剤としては、例えばトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、例えば、トリエチルアミン、テトラエタノールアミン、1,8−ジアザービシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N−ジメチルベンジルアミン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン又は2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−メチルピペラジン等の第3級アミン系化合物、例えば1,8−ジアザービシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート等のホウ素系化合物が挙げられる。
【0053】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、他の添加物を加えることができる。例えば天然ワックス類、合成ワックス類および長鎖脂肪族酸の金属塩類等の可塑剤、酸アミド類、エステル類、パラフィン類等の離型剤、ニトリルゴム、ブタジエンゴム等の応力緩和剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化錫、水酸化錫、酸化モリブデン、硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、赤燐、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム等の無機難燃剤、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモベンゼン、ブロム化フェノールノボラック等の臭素系難燃剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤、溶融シリカ、結晶性シリカ、低α線シリカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、タルク、アルミナ、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マグネシア、窒化ケイ素、窒化ホウ素、フェライト又は希土コバルト、や金、銀、ニッケル、銅、鉛、鉄粉、酸化鉄、砂鉄等の金属粉並びに黒鉛、カーボン、弁柄、黄鉛等の無機質充填剤または導電性粒子、染料や顔料等の着色剤、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイト繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維などの無機系繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、炭素繊維などの有機系繊維、酸化安定剤、光安定剤、耐湿性向上剤、チキソトロピー付与剤、希釈剤、消泡剤、他の各種の樹脂、粘着付与剤、帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤等を配合することができる。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物は、反応性官能基を有する硬化性化合物、光反応開始剤及び/又は熱硬化剤、表面修飾ナノダイヤモンド、並びに必要に応じ硬化促進剤及びその他の添加剤を溶媒中で均一に混合することにより、導電性能を有する樹脂ワニスを得ることができる。溶媒としては、例えばトルエン、エタノール、n−プロパノール、セロソルブ、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、N―メチル―2―ピロリドン、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒が挙げられるが、特に限定されない。溶媒の使用量は、樹脂組成物の使用目的により、適当な粘度となるように調整することが好ましいが、通常固形分100重量部に対して、50〜2000重量部である。
【0055】
本発明の硬化性樹脂組成物は可視光透過性フィルムとして好ましく使用できる。基材に塗布された本発明の硬化性樹脂組成物の塗膜は、硬化あるいは乾燥させて、コーティング被膜とされ、この硬化あるいは乾燥の条件又は方法は、用いる樹脂成分の種類等に応じて適宜選択できる。通常、塗膜から溶剤を、室温又は加熱下で蒸発させることにより塗膜が得られる。また、この硬化方法等は、従来から知られた方法により行うことができる。硬化性樹脂組成物の塗布量は、用途に応じて、広い範囲から適宜選択することができるが、一般には、硬化後の膜厚が、0.005〜2mm程度、特に0.01〜1mm程度となる量とするのが好ましい。
【0056】
基材に用いるベース樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などが挙げられ、具体的には、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。また、ポリイミドフィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ポリエステルフィルム、ポリパラバン酸フィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルファイドフィルム、アラミドフィルム、
種々の合成繊維、天然繊維、ガラス繊維、金属繊維等の織布、不織布の中から適宜選択して用いることができる。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、特に制限はなく、例えば、スピンコーター、ディップコーター、スプレーコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマコーター等の公知の塗布方法を挙げることができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし、これらは単なる実施の態様の一例であり、本発明の技術的範囲がこれらによりなんら限定的に解釈されるものではない。なお、実施例において部は重量部を、%は重量%をそれぞれ意味する。
また、本実施例における実施項目およびその試験方法は以下のとおりである。
【0059】
(a)(熱重量測定(TGA))
示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA6200、エスエスアイ・ナノテクノロジー社製)を用い、窒素気流下(流速200ml/min)において温度範囲40〜700℃、昇温速度10℃/minの条件下で測定を行った。
【0060】
(b)(赤外分光測定(FT−IR測定)
赤外分光光度計(FT/IR−6300V型、日本分光社製)を用い、133Pa下、150℃で測定を行った。
【0061】
(c)(熱分解GC−MS)
熱分解GC−MS測定はキュリーポイントパイロライザー(日本分析工業製)、GC−MS(TRACE GC−TRACE DSQ、THERMO
FISHER SIENTIFIC製)を用い、590℃下にて測定を行った。
【0062】
(実施例1)
撹拌装置、加熱装置、還流装置および滴下装置を備えた4つ口の300mlガラス製反応器に、予めN−メチル−2−ピロリドンに分散させておいた0.5%ナノダイヤモンド分散液120mlをはかり取った。なお、0.5%ナノダイヤモンド/N−メチル−2−ピロリドンを動的光散乱法粒度分布測定装置(ナノトラック粒度分析計UPA−EX、日機装(株)製)を用いて粒度分布を測定した結果、平均粒子径は8.5nmであった。
【0063】
この中に、撹拌を行いながら表面修飾剤である2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工製)を2.74g加え、触媒であるジブチルすずジラウラートを加え、重合禁止剤であるヒドロキノンを2−イソシアナトエチルメタクリレートに対して1000ppm加えた。次に、乾燥空気を反応液に30ml/minの流速で送り込みながら、60℃においてナノダイヤモンド粒子表面に修飾反応を行った。反応時間は5時間であった。
【0064】
当該反応物を500mlのビーカーに取り出し、トルエン350mlを加え、2−イソシアナトエチルメタクリレートで表面修飾したナノダイヤモンド粒子を凝集させた。(a)凝集させたナノダイヤモンド粒子を吸引ろ過にて固液分離し、当該粒子を100mlのビーカーに取り出し、N−メチル−2−ピロリドン/トルエン混合溶液80mlを加えた。(b)その後、超音波浴中で10min洗浄し、再び吸引ろ過にて固液分離を行った。(a)、(b)の操作を3回行った後、洗浄溶剤をメチルエチルケトンに替え、(a)、(b)と同様の操作を4回行った後、12時間減圧乾燥し、目的物(本発明の表面修飾ダイヤモンド)を得た。
【0065】
図1に、上記の実施例1で得られた、2−イソシアナトエチルメタクリレート修飾によるナノダイヤモンド粒子のFT−IR測定結果を示した。また、図1のコントロールは表面修飾する前のFT−IR測定結果である。図1からコントロールと表面修飾後の結果を比較すると、アミノ基N−Hに由来する3400cm−1付近のピーク、アルキル基、メタクリレート基C−Hに由来する3000cm−1付近のピークが明らかに増加しており、ナノダイヤモンド粒子表面に化学修飾されていることがわかる。
【0066】
図2に熱重量分析の結果を示した。図2からコントロールと比較すると明らかに重量減少率に違いが出ており、2−イソシアナトエチルメタクリレートで表面修飾したナノダイヤモンド粒子の無機成分重量%は71.5%であった。
【0067】
図3に熱分解GC−MSの結果を示した。図3からコントロールと比較すると、表面修飾剤である2−イソシアナトエチルメタクリレートに由来する分解物が確認された。以上、FT−IR測定、熱重量測定、熱分解GC−MS測定結果より、表面に重合可能な化合物が結合されたナノダイヤモンド粒子を確認できた。
【0068】
(実施例2)
撹拌装置、加熱装置、還流装置および滴下装置を備えた4つ口の300mlガラス製反応器に、予めN−メチル−2−ピロリドンに分散させておいた0.5%ナノダイヤモンド分散液120mlをはかり取った。この中に、撹拌を行いながら表面修飾剤であるイソホロンジイソシアネート(以下、IPDI)を4.77g加え、窒素ガスを反応液に30ml/minの流速で送り込みながら、150℃においてナノダイヤモンド粒子表面に修飾反応を行った。反応時間は5時間であった。
【0069】
当該反応物を500mlのビーカーに取り出し、トルエン350mlを加え、IPDIで表面修飾したナノダイヤモンド粒子を凝集させた。(a)凝集させたナノダイヤモンド粒子を吸引ろ過にて固液分離し、当該粒子を100mlのビーカーに取り出し、N−メチル−2−ピロリドン/トルエン混合溶液80mlを加えた。(b)その後、超音波浴中で10min洗浄し、再び吸引ろ過にて固液分離を行った。(a)、(b)の操作を3回行った後、洗浄溶剤をMEKに替え、(a)、(b)と同様の操作を4回行った後、12時間減圧乾燥し、目的物を得た。
【0070】
図4に、上記の実施例2で得られた、IPDI修飾によるナノダイヤモンド粒子のFT−IR測定結果を示した。図4からコントロールと表面修飾後の結果を比較すると、アミノ基N−Hに由来する3400cm−1付近のピーク、アルキル基、メタクリレート基C−Hに由来する3000cm−1付近のピークが増加しており、イソシアネート基NCOに由来する2300cm−1付近のピークが出現しており、ナノダイヤモンド粒子表面に化学修飾されていることがわかる。
【0071】
図5に熱重量分析の結果を示した。図5からコントロールと比較すると明らかに重量減少率に違いが出ており、IPDIで表面修飾したナノダイヤモンド粒子の無機成分重量%は91.3%であった。
【0072】
図6に熱分解GC−MSの結果を示した。図6からコントロールと比較すると、表面修飾剤であるIPDIに由来する分解物が確認された。以上、FT−IR測定、熱重量測定、熱分解GC−MS測定結果より、表面に重合可能な化合物が結合されたナノダイヤモンド粒子を確認できた。
【0073】
(実施例3)
実施例1で作製した表面修飾ダイヤモンドを1.6重量部、モノマーとしてKAYARAD OPP−1(日本化薬(株))を74重量部、KAYARAD R−551(日本化薬(株)製)を24重量部をn−プロパノール中で混合し、エバポレータでn−プロパノールを除去後、開始剤としてイルガキア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を0.5重量部混合し、コンポジット硬化物を得た。得られた硬化物の光透過性を測定した所、73.8%であり、ポリマーとの馴染みが向上し、透明性を維持していた。
【0074】
(比較例)
実施例3で表面修飾ダイヤモンドを修飾前ダイヤモンドに変更した以外は同様の操作を行った。光透過性を測定した所、12.7%であり、ポリマーとの馴染みが十分で無いため、透明性を維持できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の表面修飾ダイヤモンドは、従来の方法で混合したポリマーコンポジットとは異なり、ナノダイヤモンドとポリマーの馴染みが向上し、強固に結合することができるため、従来にない優れた機械特性、電気特性、熱特性、光学特性等を持つポリマーコンポジットが作製可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に水酸基、アミノ基又はカルボキシル基から選ばれる1種以上の極性基を有する、平均粒子径100nm以下のダイヤモンド粒子(a)と該極性基と反応する官能基及び重合可能な官能基を有する化合物(b)を反応させ得られた表面修飾ダイヤモンド。
【請求項2】
ダイヤモンド粒子(a)の表面極性基と反応する化合物(b)の官能基がイソシアネート基である請求項1記載のダイヤモンド。
【請求項3】
化合物(b)の重合可能な官能基がビニル基、(メタ)アクリレート基、グリシジル基、イソシアネート基、アミン基、カルボキシル基又はシラノール基である請求項1または2記載のダイヤモンド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のダイヤモンドを含有する光および/又は熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項6】
請求項5記載の硬化物からなるフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−132117(P2011−132117A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258778(P2010−258778)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】