説明

重合可能な組成物のための開始剤系

本発明は、ラジカル重合可能な系(特に、アクリレート接着剤やメタクリレート接着剤)のための効果的な重合開始剤である、有機ボランとアミノ官能性有機ケイ素化合物との複合体に関する。本発明の複合体は、低表面エネルギーのプラスチック(たとえば、ポリオレフィンやポリフルオロオレフィンをベースとするプラスチック)を接合するための接着剤を製造するのに特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ラジカル重合可能な系(特に、アクリレート接着剤やメタクリレート接着剤)のための有効な重合開始剤である、有機ボランとアミノ官能性有機ケイ素化合物との複合体(complex)に関する。これらの複合体は、たとえばポリオレフィンやポリフルオロオレフィンをベースとする、表面エネルギーの低いプラスチックを接合するための接着剤を作製する上で特に有用である。
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリテトラフルオロエチレン等の、表面エネルギーの低いポリオレフィンはさまざまな用途において種々の魅力的特性を有する。しかしながら、これらのプラスチック材料は表面エネルギーが低いので、これらの材料に接合する接着剤組成物を見出すのが極めて困難である(これらの材料を接着剤で接合する上での困難さについての詳細な説明が、「“Adhesion Problems at Polymer surfaces”の“Progress in Rubber and Plastic Technology”,by D.M.Brewis,vol.1,p.1,1985」においてなされている)。これらのプラスチックに対して使用されている市販の接着剤は一般に、接着剤が支持体の表面に接着する前に、支持体表面に対して複雑でコストのかかる前処理を必要とする。このような前処理としては、コロナ放電、火炎処理、プラズマ処理、オゾンもしくは酸化剤による酸化、およびスパッタエッチングなどがある。低表面エネルギーの支持体を接着剤接合するための他の方法は、低表面エネルギーの支持体を高表面エネルギーの材料で被覆することによるものである。しかしながら、この場合も、プライマーの充分な接着を確実に起こさせるためには、低表面エネルギーの支持体を、上記の表面処理法のうちの1つであらかじめ前処理する必要がある。これらの方法の全てが、「“Treatise on Adhesion and Adhesives”by J.D.Minford,Marcel Dekker,1991,New York,vol.7,p.333-345」に記載されている。したがって、大がかりな又はコストのかかる表面処理法を必要とすることなく、低表面エネルギーの支持体に接着することができ、且つ低表面エネルギーの支持体を他の支持体に接合することができる接着剤組成物が求められている。
【0003】
低表面エネルギーの表面を接合することを含めて、有機ホウ素化合物の使用に関してこれまで相当の研究がなされている〔たとえば、G.KolesnikovとL.Fedorovaによる「Bull.Acad.Sci.USSR,Div.Chem.Sci.p.236(1957)」(トリブチルボランの存在下におけるアクリロニトリルの重合に関する報文)〕。
【0004】
米国特許第5,376,746号、米国特許第5,286,821号、および米国特許第5,143,884号は、第1の部分に安定な有機ボラン/アミン複合体を、そして第2の部分にアルデヒド不安定化剤もしくはアルデヒド活性化剤を含んだ、接着剤組成物において有用な二部分開始剤系(a two-part initiator system)に関する。この開始剤は、アクリル接着剤エラストマー組成物(elastomeric acrylic adhesive compositions)において特に有用であり、室温にて比較的硬化の遅い系であって良好な接着特性を示し、したがってより長い開放時間が必要とされるようなアプリケーションに対して有用である。
【0005】
米国特許第5,310,835号と米国特許第5,106,928号は、第1の部分に重合可能なアクリルモノマーと有機ボラン/アミン複合体を、そして第2の部分に有機酸不安定化剤と任意のアクリルポリマーを含んだ、接着剤組成物において有用な二部分開示剤系を開示している。
【0006】
米国特許第5,690,780号と米国特許出願第2002/0028894号は、硬化を開始させるのに特定の有機ボラン/アミン複合体が使用される、接着剤として特に有用である重合可能なアクリル組成物を開示している。
【0007】
米国特許第5,795,657号は、有機ボランとポリアミンを含む有機ボラン/アミン複合体に関する。ポリアミンは、ジ第一アミン末端物質(diprimary amine-terminated material)と、第一アミンに対して反応性の少なくとも2つの基を有する物質との反応生成物である。該複合体は、アクリルモノマーの重合を開始させるための系において、そしてアミンに対して反応性の物質をさらに含んだ系において有用である。接着剤用途において有用な重合可能なアクリルモノマー組成物も開示されている。
【0008】
米国特許第5,935,711号は、低表面エネルギーの支持体を接合するための接着剤組成物において有用なアクリルベースの重合可能な組成物における重合開始剤系を形成させるための、有機ボラン/アミン複合体とアジリジン官能性物質とを含んだ組成物を開示している。
【0009】
米国特許第5,952,409号は、汚れ防止物質と有機ボラン/アミン複合体とを含んだ汚れ防止用組成物を開示している。
米国特許第5,990,036号と米国特許第5,872,197号は、有機ボラン/アミン複合体と二反応性の複合体解離剤(decomplexer)(少なくとも1つのフリーラジカル重合可能な基と、少なくとも1つのアミン反応性基を、同じ分子中に含むのが好ましい)を含むアクリルモノマーの重合を開始させるための系に関する。該複合体解離剤は、アクリルモノマーおよびアミン複合体と共有結合を形成することができ、その結果、可動性成分(mobile constituents)のレベルが減少する。
【0010】
米国特許第6,027,813号と米国特許第5,883,208号は、少なくとも1つの無水物基を含む複合体解離剤と有機ボラン/アミン複合体とを含んだアクリルモノマーの重合を開始させるための系を開示している。この開始剤系から作製された接着剤組成物は、低表面エネルギーの支持体に対して良好な接着性をもたらした。
【0011】
米国特許第6,093,778号、米国特許第5,994,484号、および米国特許第6,008,308号は、有機ボラン/アミン複合体とポリオールとを含む組成物を開示している。該組成物は、ポリイソシアネートをさらに含む重合開始剤系の一部分を形成することができる。該開始剤系は、アクリルモノマーの重合を開始させるのに、また低表面エネルギーの支持体に対して良好な接着性を有するポリウレタン/ポリウレアアクリル接着剤を形成させるのに使用することができる。
【0012】
米国特許第6,252,023号とWO00/56779は、有機ボラン/アミン複合体と1,4-ジオキソ-2-ブテン官能性物質とを含んだ組成物に関する。該組成物は、複合体のアミン部位に対して反応性の化合物をさらに含む重合開始剤系の一部分を形成することができる。該開始剤系は、アクリルモノマーの重合を開始させるのに、またまた低表面エネルギーの支持体に対して良好な接着性を示すアクリル接着剤を形成させるのに使用することができる。
【0013】
米国特許第6,248,846号は、少なくとも1種のアクリルモノマー、有効量の有機ボラン/アミン複合体、およびアクリルモノマーの重合を開始させるための有効量の酸を含む重合可能なアクリル組成物を開示している。これらの重合可能なアクリル組成物は、低表面エネルギーの支持体を接合するのに有用である。
【0014】
米国特許出願2002/0028894と米国特許出願2002/0033227は、有機ボラン/アミン複合体;オレフィン性不飽和を有するモノマー、オリゴマー、もしくはポリマーの1種以上;および、必要に応じて使用される、複合体の解離を引き起こす有効量の化合物;を含んだ組成物の成分を接触させること、あるいは複合体が解離する温度にまで組成物を加熱することを含む、重合を起こさせて2つ以上の支持体を接合する方法を開示している。
【0015】
米国特許出願2002/0031607は、有機ボラン/アミン複合体;オレフィン性不飽和を有するモノマー、オリゴマー、もしくはポリマーの1種以上;および、必要に応じて使用される、複合体の解離を引き起こす有効量の化合物;を含んだ組成物と表面とを接触させること、あるいは複合体が解離する温度にまで組成物を加熱することによって低表面エネルギーポリマーの表面を変性する方法に関する。
【0016】
WO99/64475は、複合体開始剤(有機ボラン/アミン複合体)とカルボン酸複合体解離剤とを含む開始剤系を開示している。ジカルボン酸、カルボン酸エステル、およびモノカルボン酸(低臭気の組成物を得るには、少なくとも9個の炭素原子を有するアルアルキ基を含むものが好ましい)が、重合可能な組成物における複合体解離剤として有用である。
【0017】
WO99/64528は、低臭気の重合可能な組成物を開示している。これらの重合可能な組成物は、好気性開始剤をさらに含んだキットにおいて有用である。さらに、接合用組成物、重合組成物、被覆された支持体、および重合可能な組成物が特に有用であるという接合方法も開示されている。
【0018】
WO01/32716は、少なくとも1種のヒドロキシドを含む錯形成剤(たとえば有機ボランヒドロキシド複合体)と開始剤との複合体;少なくとも1種のアルコキシドを含む複合体形成剤(たとえば有機ボランアルコキシド複合体)と開始剤との複合体;あるいはこれらの混合物もしくは組み合わせ物;のうちの少なくとも1種を含む複合体開始剤と複合体解離剤とを含んだ開始剤系に関する。
【0019】
WO01/44311はアミン-有機ボラン複合体を開示している。有機ボランはトリアルキルボランであり、アミンは、アミジン構造成分を有するアミン;複素環中に少なくとも1つの窒素原子を有する脂肪族複素環、このとき複素環化合物は、1つ以上の窒素原子、酸素原子、イオウ原子、または二重結合を複素環中に有してよい;1つ以上の水素結合受け入れ基(hydrogen bond accepting group)をさらに有する第一アミン、このとき第一アミン基と水素結合受け入れ基との間に、少なくとも2つの(好ましくは3つの)炭素原子が存在し、したがって複合体の分子間相互作用もしくは複合体内の分子間相互作用により、B-N結合の強度が増大する;または共役イミン;である。好ましい水素結合受け入れ基としては、第二アミン基、第三アミン基、エーテル基、ハロゲン基、ポリエーテル基、またはポリアミン基などがある。該発明の複合体は、フリーラジカル重合条件下にて重合する部分を有する化合物を含有する重合可能な組成物、接着剤組成物、および塗料組成物において使用される。
【0020】
WO02/34815は、特定の第四ホウ素塩を重合可能な組成物における開始剤として使用すること、および低表面エネルギーの支持体を接合するのにこれらの塩を使用することを開示している。
【0021】
WO02/34852は、金属アルキルホウ水素化物を重合の開始剤として使用すること、特に、ポリオレフィン等の低表面エネルギーの支持体を含めた広範囲の支持体を接合するための接着剤組成物において使用することに関する。特にアルカリ金属トリアルキルホウ水素化物が使用され、アルカリ金属塩は、トリエチルホウ水素化リチウム、トリエチルホウ水素化ナトリウム、トリエチルホウ水素化カリウム、トリ-sec-ブチルホウ水素化リチウム、トリ-sec-ブチルホウ水素化ナトリウム、トリ-sec-ブチルホウ水素化カリウム、およびトリエチルホウ重水素化リチウム、ならびに低表面エネルギーの支持体に対する有効性が劣る他の化合物〔たとえば、9-ボラビシクロ[3.3.1]-ノナン(9BBN)水素化リチウム、ヘキシルホウ水素化リチウム(lithium thexylborohydride)、トリシアミルホウ水素化リチウム(lithium trisiamylborohydride)、およびトリシアミルホウ水素化カリウム〕から選択される。
【0022】
WO03/035703とWO98/17694は、(メタ)アクリレートベースの重合可能な組成物、およびアジリジン含有化合物をキャリヤー物質(希釈剤)中に含む、前記組成物から作製される接着剤系を開示している。該発明の組成物と接着剤系は、少なくとも1種の低エネルギー表面(たとえば、ポリオレフィン、ポリエチレン、およびポリプロピレン等)を接合することを含む接合用途に特に適している。
【0023】
WO03/038006は、第1の部分に有機ボラン/アミン複合体を、そして第2の部分に有機ボラン複合体を複合体解離することができるイソシアネートを含み、アミン窒素原子対ホウ素原子の比が4.0:1.0より大きい、フリーラジカルにさらされたときに硬化する1種以上の重合可能なモノマーの硬化を開始させるための二部分組成物を開示している。
【0024】
WO03/040151は、内部がブロックされた有機ホウ酸塩(internally blocked organoborates)を、接着剤組成物において有用なフリーラジカル重合可能な組成物として使用することに関する。
【0025】
WO03/057791は、低表面エネルギーの支持体を接合する際に有用な、二部分接合用組成物のための金属塩変性剤を開示している。金属塩変性剤は、接合用組成物の硬化反応速度論を変化させる。
【0026】
米国特許第4,538,920号は、シリンジ、出口導管、スタティックミキシングエレメント、出口導管の入口をシリンジの出口端に取り外し可能な状態で連結するための手段、およびシリンジに対してスタティックミキシングエレメントの回転整列が得られるよう、スタティックミキシングエレメントを出口導管内に配置するための手段を有する、複数バレルの樹脂分配装置を開示している。
【0027】
米国特許第5,082,147号は、並んだ状態のチャンバーから二部分ウレタンポリマー組成物(第1のアミンとの最初の反応がより速いので粘度が低く保たれ、一方、第2のアミンとの反応がより遅いので粘度が高くなり、アプリケーターの外側で自立性のペーストとなる)を供給するアプリケーターに関する。
【0028】
2004年8月17付け公開のUS6777512は、有機ボラン/アミン複合体、オレフィン性不飽和化合物、およびシロキサン主鎖を有する化合物のための重合触媒を含む、支持体を接合するための接着剤組成物用の重合可能な組成物を開示している。
【0029】
しかしながら、特に、硬化速度、接着強度、および組成物の安定性に関して多くの問題が未解決のままである。低表面エネルギーの支持体を接合することができる安定な接着剤組成物が依然として求められている。特に、安全に取り扱うことができて、安定であって、重合可能な系を要求に応じて硬化させるのに使用することができる、フリーラジカル重合のための開始剤系が求められている。
【0030】
本発明は、一般式
B(R1)3 (I)
(式中、各R1は、独立的にアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、またはシクロアルキルアルキル基であって、これらの基は、未置換であっても、あるいはハロゲン原子とアルコキシ基から選択される同一もしくは異なった置換基の1つ以上で置換されていてもよい)で示される有機ホウ素化合物と、少なくとも1つの第一アミノ基、第二アミノ基、および/または第三アミノ基を含有する有機ケイ素化合物との複合体を提供する。
【0031】
R1中に存在するアルキル基またはアルコキシ基は、1〜10個の炭素原子を有するのが好ましく、1〜6個の炭素原子を有するのがさらに好ましく、1〜4個の炭素原子を有するのが特に好ましく、またアリール部分はいずれもフェニル基であるのが好ましい。シクロアルキル部分は5〜7個の炭素原子を有するのが好ましい。好ましいハロゲン原子は、塩素原子またはフッ素原子である。
【0032】
各R1は、独立的にC1-4アルキル基であるのが好ましい。式Iの化合物は、トリ-n-ブチルボラン、トリ-t-ブチルボラン、トリイソプロピルボラン、またはトリエチルボランであるのが好ましい。トリブチルボランは、より遅い硬化速度をもたらすことがあるので、あまり好ましいとはいえない。最も好ましいのは、トリイソプロピルボランとトリエチルボランであり、特にトリエチルボランである。
【0033】
有機ケイ素化合物は、シラン、シリコーン、シリカゲル、シラザン、シラトラン、またはシルセスキオキサンをベースにしてよい。特に適切な化合物は、下記の一般式II
【0034】
【化1】

【0035】
〔式中、
aとqは、独立的に0または1であり;
b、c、d、e、f、g、i、k、およびpは、独立的に0以上であり;
a、c、e、g、およびkは、全てが同時には0になることができず、これらのうちの少なくとも1つが0より大きくなければならず;
b、d、f、i、およびpのうちの少なくとも1つが1以上でなければならず;
各R2は独立的に、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基(たとえば、イソプロピル、イソブチル、イソオクチル、またはプロピルイソブチル等)、ハロゲンアルキル基、グリシジルアルキル基、アクリルアルキル基、(メタ)アクリルアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基(たとえば、シクロヘキシルやプロピルシクロヘキシル等)、アリール基、アルキルオキシアリール基、アリールオキシアルキル基、またはアルキルオキシシクロアルキル基であって、これらの基はそれぞれが、1つ以上の第一アミノ基、第二アミノ基、もしくは第三アミノ基で、および/または、ヒドロキシルやカルボニル等の他の官能基で置換されていてもよく;
各X(a、c、d、e、f、g、i、k、およびqの値に応じて一価または二価の場合がある)は独立的に、一般式(III)と(IV)
【0036】
【化2】

【0037】
で示される基であって、このとき
R3は、アルキレン基、アルケニル基、フェニレン基、またはシクロアルキレン基であり;
R4とR5はそれぞれ独立的に、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、シリルアルキル基、シリルアリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、シクロアルキルアルキル基、アルキルシクロアルキル基、複素環式基(飽和もしくは不飽和)、フェニル(Ph-)基、フェノキシ(Ph-O-)基、またはPh-(C=O)基であって、これらの基はそれぞれが、1つ以上の第一アミノ基、第二アミノ基、もしくは第三アミノ基で、および/または、ヒドロキシルやカルボニル等の他の官能基で置換されていてもよく、R4とR5はさらに、独立的にR2であってもよく;
R6は、脂環式基、芳香族基、または複素環式基(飽和もしくは不飽和)として定義される閉環炭化水素基を意味する“環式”基であってよく、これらの基はそれぞれが、R3基もしくはR4基でモノ置換、ジ置換、トリ置換、テトラ置換、またはペンタ置換されていてもよく(構造IIIc、IIIe、IVc、およびIVe、モノ置換誘導体のみ記載);
Xはさらに、有機基を含有してよく、あるいは有機連結基が、複素環式化合物の場合のようにヘテロ原子(たとえば、O原子、S原子、またはSi原子)を、ならびに官能基(たとえば、カルボニル基やヒドロキシル基)を含んでもよく;
R7は、-Si(R2)-[Si(R2)2-NH-]n-Si(R2)-(式中、nは1以上である)という構造の“サイクリック”であってよく;
Lは、一価または二価(a、b、c、e、g、k、p、およびqの値に応じて)の基であって、X基を示している基のいずれからも独立的に選択することができ、あるいはLは、R2、R3、R5、R4、R6、R7、あらゆるポリマー/オリゴマー有機モノラジカル、またはあらゆるポリマー/オリゴマー有機ジラジカルであってよく;
Zは
【0038】
【化3】

【0039】
であって、このとき全てのケイ素原子が、X、R2、R4、またはR5と結合(上図において点線で示されている)を形成していて、少なくとも1つのケイ素原子が1つのXと結合していなければならない〕で示すことができる。
【0040】
複合体のアミノ基は、第一アミノ基または第二アミノ基であるのが好ましい。第三アミノ基の場合は、たとえ複合体が形成されるとしても、その形成がより困難であることがある。
【0041】
有機ケイ素化合物においては、特に明記しない限り、アルアルキ部分は、1〜10個の炭素原子を有するのが好ましく、1〜4個の炭素原子を有するのが最も好ましく;アルキル部分は、たとえばメチル基であってよく;アリール基はフェニル基であるのが好ましく;そしてシクロアルキル基は5〜8個の炭素原子を有するのが好ましい。
【0042】
高分子量のケイ素化合物(たとえば、最大で6,000,000の分子量を有する化合物)を使用することができる。高分子量の化合物においては、m+nは、たとえば最大で70,000であってよい。
【0043】
一般には、有機ケイ素化合物は、b=1、c=1、およびq=1であり;a、d、e、f、g、i、k、p、およびqが全て独立的に0であり;そしてX基とR2基が前記にて定義した通りである;という場合の、一般式IIから誘導される式を有してよい。
【0044】
一般には、有機ケイ素化合物は、b=1、c>1、e>1、k=1、およびp=1であり;a、d、f、g、i、およびqが全て独立的に0であり;そしてX基とR2基が前記にて定義した通りである;という場合の、一般式IIから誘導される式を有してよい。
【0045】
一般には、有機ケイ素化合物は、a=1およびb=1であり;c、d、e、f、g、i、k、p、およびqが全て独立的に0であり;そしてX基が前記にて定義した通りである;という場合の、一般式IIから誘導される式を有してよい。
【0046】
一般式IIで示されるケイ素化合物の1つの好ましいグループはシランであり、第一アミノ基、第二アミノ基、第三アミノ基、またはこれらの組み合わせを含有する。適切なシランの例は、下記の式で示されるシランである:
【0047】
【化4】

【0048】
3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン
【0049】
【化5】

【0050】
3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン
【0051】
【化6】

【0052】
(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン
【0053】
【化7】

【0054】
(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン
【0055】
【化8】

【0056】
(アミノメチル)トリメトキシシラン
【0057】
【化9】

【0058】
(アミノメチル)トリエトキシシラン
【0059】
【化10】

【0060】
(N-シクロヘキシルアミノメチル)トリメトキシシラン
【0061】
【化11】

【0062】
(N-シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン
【0063】
【化12】

【0064】
(N-フェニルアミノメチル)トリメトキシシラン
【0065】
【化13】

【0066】
(N-フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン
【0067】
【化14】

【0068】
ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン
【0069】
【化15】

【0070】
N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール
【0071】
【化16】

【0072】
2-(トリメトキシシリルエチル)ピリジン
【0073】
【化17】

【0074】
ビス(p-アミノフェノキシ)ジメチルシラン
【0075】
【化18】

【0076】
アミノプロピルトリヒドロキシシラン
【0077】
【化19】

【0078】
ウレイドプロピルトリメトキシシラン
【0079】
【化20】

【0080】
ウレイドプロピルトリエトキシシラン
一般式IIで示される他の化合物としては下記の化合物がある:
【0081】
【化21】

【0082】
オクタメチルシクロテトラシラザン
【0083】
【化22】

【0084】
1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
一般式(II)の有機ケイ素化合物は、有機官能性のシリコーン油であってもよい。このような化合物は下記の式で示すことができ、図示の位置に1つ以上の有機基Xを含有してよい:
【0085】
【化23】

【0086】
(式中、xとyは整数である)
一般式(II)の有機ケイ素化合物は、有機官能性のシリカゲルであってもよい。このような化合物は下記の式で示すことができる。
【0087】
【化24】

【0088】
(式中、fとgはそれぞれ、0より大きい値である)
これとは別に、有機ケイ素化合物は、少なくとも1つの有機基Xを有する、いわゆる多面体構造のオリゴマーであるポリシルセスキオキサン(Polyhedral Oligomeric Polysilsesquioxane;POSS)であってもよい。POSS物質は、ナノ構造の化学物質として分類されており、シリカの可能な限り最も小さい粒子である。しかしながら、シリカ、シリコーン、またはフィラーと異なって、各POSS分子は、ポリマー、生体系、および表面に対するPOSS構造の溶解性と相溶性付与のための、非反応性の有機官能基を含有する。POSSナノ構造化学物質はさらに、重合、グラフト反応、表面結合、または他の変化に適した1つ以上の共有結合した反応性官能基を含有してよい。一般的な化学構造は以下の通りである:
【0089】
【化25】

【0090】
(式中、X1はXと同じであり;R6は、R2、R2、R4、R5、またはXと同じである)。
本発明において有用なこのような化合物としては
【0091】
【化26】

【0092】
(式中、Rは、アルキル基、アミノアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミン置換シクロアルキル基、またはアミノ基である)、および
【0093】
【化27】

【0094】
〔式中、Rは、アルキル基、アミノアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミン置換シクロアルキル基、またはアロ基(arogroup)である〕がある。
シラトラン化合物の一般的な例は下記の化合物
【0095】
【化28】

【0096】
(ヒドロキシエトキシシラトラン)
である。
幾つかの特定のアミノ-ケイ素化合物としては下記の化合物がある:
1. N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール
【0097】
【化29】

【0098】
2. N-アミノエチル-アザ-2,2,4-トリメチルシラシクロペンタン
CAS番号[18246-33-8]
3. アミノメチルトリメチルシラン
【0099】
【化30】

【0100】
4. 3-アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン
【0101】
【化31】

【0102】
5. アミノプロピルシラントリオール
【0103】
【化32】

【0104】
6. 3-アミノプロピルトリメチルシラン
【0105】
【化33】

【0106】
7. ビス(p-アミノフェノキシ)ジメチルシラン
【0107】
【化34】

【0108】
8. O-(t-ブチルジメチルシリル)ヒドロキシルアミン
【0109】
【化35】

【0110】
9. 1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシラザン
【0111】
【化36】

【0112】
10. オクタ(アミノフェニル)-T8-シルセスキオキサン
【0113】
【化37】

【0114】
11. オクタメチルシクロテトラシラザン
【0115】
【化38】

【0116】
12. アミノエチルアミノプロピルシルセスキオキサン
CAS番号[29159-37-3]
13. アミノエチルアミノ/ビニル/シルセスキオキサン
CAS番号[207308-27-8]
14. トリス(シクロヘキシルアミノ)メチルシラン
【0117】
【化39】

【0118】
15. N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルジメチルメトキシシラン
CAS番号[31024-49-4]
16. アミノプロピルシラノール
(H2NC3H6SiO1.5)n ゼネラルエレクトリック社からA-1106/VS-142として市販
17. アミノ-POSS化合物
アミノエチルアミノプロピルイソブチル-POSS
C33H76N2O12Si8
【0119】
【化40】

【0120】
一般式(I)の物質との複合体を形成させるのに使用できる化合物はさらに、上記の代表的な有機ケイ素化合物の少なくとも2種の混合物であってもよい。
本発明の複合体は、たとえば、一般式(I)の有機ボラン化合物の溶液と一般式IIの有機ケイ素化合物とを、適切には不活性雰囲気下において、必要に応じて冷却しながら接触させることによって製造することができる。
【0121】
本発明による複合体においては、ホウ素原子(有機ボラン)と窒素原子(複合体形成剤)との比は0.01:1(B:N比)であってよく、0.3:1より大きいのが好ましく、1:1であるのが最も好ましい。一般式IIで示される複合体形成剤のうちの特定のものにおいては、複合体形成剤の分子量に応じて、この比は1:1より大きくてもよい(たとえば、3:1、7:1、10:1、または21:1など)。分子量が大きくなるほど、この比は、1:1から、1個の窒素原子に対するホウ素原子の数が大きくなる。
【0122】
本発明の複合体は、空気中で安定であり、ラジカル重合可能なモノマーもしくはオリゴマーに対する重合開始剤として使用することができる。したがって本発明は、本発明による複合体と、少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーおよび/またはオリゴマーとを含む重合可能な組成物を提供する。このような組成物は、たとえば、ペイント、塗料、シーラント、インク、プライマー、汚れ防止用組成物、成形品、および特に接着剤として使用することができる。このような物質は、特に接着剤用途向けに使用される場合は、一般には二部分物品として配合され、これら2つの部分が、硬化開始の要求に応じて混合される。したがって本発明はさらに、第1の部分が本発明の複合体を含み、第2の部分が少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーおよび/またはオリゴマーを含む、という重合可能な二部分組成物を提供する。本発明はさらに、2つの支持体を接着剤で接合する方法を提供し、前記方法は、本発明の重合可能な組成物を第1の支持体に施すこと(重合可能な二部分組成物の2つの部分を混合することを含んでよい)、第2の支持体(重合可能な組成物が塗被されていてもいなくてもよい)を、前記組成物を介して第1の支持体と接触させた状態で配置すること、および重合可能な組成物を硬化させるか又は硬化反応を起こさせることを含む。表面エネルギーが40〜45mJ/m2より大きい支持体を接合することができるけれども(たとえば、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム、銅、錫、鉛、ガラス、ポリプロピレンオキシド、およびポリエーテルスルホン等)、本発明は、低表面エネルギーの支持体同士を接着剤接合するのに、あるいは低表面エネルギーの支持体と別の支持体(たとえば金属)をクロス接着するのに特に有用である。したがって、少なくとも1つの支持体が低表面エネルギーの支持体であるのが好ましい。低表面エネルギーの支持体は、一般には、50mJ/m2未満、40mJ/m2未満、あるいはさらには35mJ/m2未満の表面エネルギーを有する。低表面エネルギーの支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、α-オレフィンのコポリマー、およびポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化ポリマーなどで造られた支持体が含まれる。接合することができる他のポリマーとしては、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、およびより高い表面エネルギーを有する他のポリマーとプラスチックがある。しかしながら本発明は、低表面エネルギー材料の接合に限定されない。本発明の組成物は、あらゆる熱可塑性樹脂、あらゆる熱硬化性樹脂、木材、複合材料、セラミック、ガラス、コンクリート、および金属を接合するのに使用することができる。
【0123】
本発明はさらに、本発明の複合体をラジカル重合可能なモノマーもしくはオリゴマーの重合開始剤として使用することを提供する。
本発明の重合可能な二部分組成物の第2の部分はさらに、2つの部分を混合すると、複合体解離剤(decomplexing agent)が有機ケイ素ベースの有機ボラン化合物と反応して、その結果、有機ボラン化合物が遊離するよう、複合体から有機ボラン化合物を放出させることができる複合体解離剤を含むのが好ましい。次いで、有機ボラン化合物が重合を開始させる。複合体からホウ素化合物を放出させることができるいかなる化合物も複合体解離剤として使用することができる。このような化合物の例が、WO99/64475とWO00/56779に記載されている。好ましい例としては、酸〔ルイス酸(すなわち、SnCl4やTiCl4等)、ブレンステッド酸(たとえば、飽和もしくは不飽和のモルカルボン酸またはポリカルボン酸)、HCl、H2SO4、H3PO4、ホスホン酸、ホスフィン酸、およびケイ酸等〕、飽和もしくは不飽和のモノカルボン酸エステルまたはポリカルボン酸エステル、無水物、イソシアネート、シクロカーボネート、アルデヒド、酸塩化物、塩化スルホニル、およびエポキシ化合物などがある。特に好ましいのは、2つ以上のアルテヒド基を含有する多官能アルデヒドをベースとした複合体解離剤である。
【0124】
本発明の複合体解離剤は有効量(すなわち、複合体から有機ボランを遊離させることによって重合を促進するのに有効であるが、最終的に得られる重合組成物の特性に悪影響を及ぼさない量)にて使用され、少なくとも2種の複合体解離剤の混合物であってもよい。より多くの量の複合体解離剤が使用された場合は、接着剤の場合における程度より重合反応が加速されることがあり、この結果得られる材料は、低表面エネルギーの表面に対する接着力が不十分となることがある。しかしながら、重合反応が速い場合には、複合体解離剤の量を減らせば重合反応の速度を低下させることができる。これらのパラメーターのうち、複合体解離剤の当量と有機ボランの当量との比は0.01〜5:1(複合体解離剤:有機ボランの比)であるのが好ましく、0.05〜4:1であるのがさらに好ましく、0.1:1〜2:1であるのが最も好ましい。
【0125】
アルケニル化合物やスチレン系化合物等のビニル化合物は、塗布された混合組成物の開放時間を長くするように作用することがある。このような開放時間延長剤(open time extenders)を使用すると、本発明のケイ素アミン-有機ボラン複合体と組み合わさって、最終的な強度の低下をきたすことなく10分以上の取扱時間が得られる、ということを我々は見出した。好ましいこのような化合物は4-メチルスチレン[4-MS]である。
【0126】
別の実施態様においては、適切な形のエネルギー(複合体からホウ素化合物を放出させるのに充分なエネルギー)を、重合可能な組成物を含む系〔開始剤(有機ボラン/有機ケイ素複合体)は、重合可能なモノマーに対して別個の部分になっていても、なっていなくてもよい〕に供給することによって重合反応を開始させることもできる。エネルギーは、加熱によって、化学線を照射することによって、電磁放射線によって、磁気放射線によって、電流によって、超音波によって、紫外線によって、これらの組み合わせによって、あるいは上記の放射線種や熱をもたらす他の手段によって供給するのが適切である。このことにより、接着剤配合物の場合、上記エネルギー源のいずれかによって硬化を起こさせることができる一成分型接着剤の開発が可能となる。
【0127】
本実施態様に記載の組成物の有効性に対する重要なパラメーターである重合速度は、アプリケーターのタイプにしたがって調整することができる。すなわち、高速自動化工業用接着剤アプリケーターを使用することによって、より速い重合速度に対応することができるが、接着剤をハンドアプリケーターによって施す必要があるか、または手操作で混合する必要がある場合の塗布に対しては、重合速度がより遅いことが望ましい。本発明の組成物は、組成物の総重量を基準として、0.001〜10重量%のホウ素をもたらすに足る量の複合体を含有するのが好ましく、0.002〜7.0重量%のホウ素をもたらすに足る量の複合体を含有するのがさらに好ましく、そして0.003〜5.0重量%のホウ素をもたらすに足る量の複合体を含有するのが最も好ましい。
【0128】
本発明の他の態様においては、有機ボラン/有機ケイ素化合物複合体はプライマーとして使用することができる。この場合は、本発明の新規複合体を含んだ組成物を、支持体(一般には低表面エネルギーの支持体)の表面に塗布する。次の工程において、このように下塗りされた表面にラジカル重合可能なモノマーもしくはオリゴマーを含んだ組成物を塗布し、次いで同様に処理されているか又は処理されていない第2の支持体に塗布する。
【0129】
さらに他の態様においては、本発明の複合体とラジカル重合可能なモノマーもしくはオリゴマーを含んだ組成物を支持体(一般には、低表面エネルギーの支持体)の表面に塗布し、硬化させる(これにより、支持体は従来の接着剤と接合可能になる)。
【0130】
他の態様においては、米国特許第5,952,409号に実質的に記載の汚れ防止物質〔たとえば、スルホン化芳香族ポリマー、少なくとも1種以上の(α置換および/またはβ置換の)アクリル酸モノマーから誘導されるポリマー、少なくとも1種以上のエチレン性不飽和モノマーと無水マレイン酸との加水分解コポリマー、これらのポリマーの少なくとも2種以上のブレンド、これらのポリマーを誘導することができる少なくとも2種以上のモノマーと少なくとも1種以上のポリマーとの反応生成物、および少なくとも1種以上のモノマーを1種以上のポリマーの存在下にて重合させることによって得られる物質〕を含んだ汚れ防止組成物中に、本発明の新規調製複合体を使用することができる。
【0131】
本発明の組成物はさらに、必要に応じて、2種以上の有機ケイ素/有機ボラン複合体の混合物を、溶媒および/または反応性もしくは非反応性の希釈剤と組み合わせて含んでよい。
【0132】
本発明の重合可能な組成物は、ポリマーや射出成形品樹脂の表面を変性するために、シーラント、塗料、インク、およびプライマーを含めた種々の方法で使用することができる。本発明の組成物はさらに、樹脂トランスファー成形操作の場合のように、ガラス繊維マットや金属繊維マットと併せてマトリックス樹脂として使用することもできる。本発明の組成物はさらに、電装品やプリント基板の製造の場合のように、封入剤や注封材料として使用することもできる。本発明の組成物は、ポリマー、木材、セラミック、コンクリート、ガラス、および金属を含めた多くのさまざまな支持体を接合することができる重合可能な接着剤組成物をもたらすのが極めて望ましい。他の関連した望ましい用途は、低表面エネルギーの支持体(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、およびこれらのコポリマー)に対するペイントの接着性を促進する上での使用である。本実施態様においては、組成物を支持体の表面上に塗被して、支持体の表面に対する最終的な被膜の接着性を高めるべく表面を変性することもできるし、あるいは組成物を塗料自体に加えることもできる。
【0133】
本発明の組成物は塗料用途にて使用することができる。このような用途においては、組成物はさらに希釈剤を含んでよい。塗料はさらに、塗料として使用する上で当業者によく知られている添加剤(たとえば、塗料に色彩を付与するための顔料、抑制剤、紫外線安定剤など)を含有してよい。本発明の組成物はさらに、粉末塗料として使用することもでき、粉末塗料として使用する上で当業者によく知られている添加剤を含有してよい。
【0134】
本発明の組成物はさらに、ポリマー成形品、押出フィルム、または輪郭づけした物体の表面を変性するのに使用することもできる。本発明の組成物はさらに、未変性のプラスチック表面上にポリマー鎖を表面グラフトすることによって、ポリマー粒子/ポリマー物品の官能性を変化させるのに使用することもできる。
【0135】
重合可能なモノマー/オリゴマー
本発明は種々の重合可能な組成物に適合し、前記組成物は、オレフィン性不飽和を含有するモノマー、オリゴマー、ポリマー、またはこれらの混合物(>C=C<基が存在することを特徴とする)を含む。これらの組成物は、有機シリコーンベースの有機ボラン複合体から遊離される有機ボランによって引き起こされるフリーラジカル重合によって重合させることができる。このような化合物は当業界によく知られている。たとえば、米国特許第3,275,611号、米国特許第5,690,780号、米国特許第5,795,657号、米国特許第5,872,197号、米国特許第5,286,821号、米国特許第5,681,910号、WO03/040151、WO00/56779、WO99/64475、およびWO03/057791、ならびに前記特許文献に引用されている文献(特許、論文、および刊行物等)に、このような化合物が記載されている。オレフィン性不飽和を含有している好ましい種類の化合物は、たとえば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、1-オクテン、1-ドデセン、1-ヘプタデセン、1-エイコセン;スチレン、ビニルピリジン、5-メチル-2-ビニルピリジン、ビニルナフチレン、およびα-メチルスチレン等のビニル化合物;ハロゲン化ビニルとハロゲン化ビニリデン;アクリロニトリルとメタクリロニトリル;酢酸ビニルとプロピオン酸ビニル;ビニルオキシエタノール;トリメチル酢酸ビニル;ヘキサン酸ビニル;ラウリン酸ビニル;クロロ酢酸ビニル;ステアリン酸ビニル;メチルビニルケトン;ビニルイソブチルエーテル;ビニルエチルエーテル;共役二重結合を有する化合物等の、複数のエチレン結合を有する化合物(たとえば、ブタジエン、2-クロロブタジエン、およびイソプレン);そして、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、エチルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アクリルアミド、n-メチルアクリルアミド、ならびに、単官能および/または多官能であってよく、ヒドロキシル基、アミド基、およびシアノ基に加えてクロロ置換基とシラン置換基を含有してよいモノマーを含む、他の類似のアクリレートまたはメタクリレート、等のアクリレートとメタクリレート;である。幾つかのメーカーから市販されているアクリレート末端のポリウレタンプレポリマーも有用である。これらのプレポリマーは、イソシアネート反応性のアクリレートモノマー、アクリレートオリゴマー、またはアクリレートポリマー(たとえばヒドロキシルアクリレート)とイソシアネート官能性のプレポリマーとを反応させることによって製造される。
【0136】
アクリルモノマーとメタクリルモノマーとの特定の組み合わせ物が、臭気の少ない重合可能な組成物を得るのに特に有利であることが見出された。このようなモノマー組み合わせ物は、モノマーブレンドの総重量を基準として約10〜90重量%のテトラヒドロフルフリルメタクリレート;モノマーブレンドの総重量を基準として5〜80重量%の、2-エチルヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、およびイソオクチルメタクリレートからなる群から選択される1種以上のモノマー;ならびに、モノマーブレンドの総重量を基準として0〜70重量%の、イソブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、およびイソデシルアクリレートからなる群から選択される、1種以上のモノマー;を含むのが好ましい。
【0137】
本発明の組成物において有用な他の種類の重合可能なモノマーは、下記の一般式
【0138】
【化41】

【0139】
〔式中、
Rは、水素、メチル、エチル、-CH2OH、および
【0140】
【化42】

【0141】
からなる群から選択され;R’は、塩素、メチル、およびエチルからなる群から選択され;R”は、水素、ヒドロキシル、および
【0142】
【化43】

【0143】
からなる群から選択され;mは1以上の整数(たとえば、1〜8またはそれ以上、好ましくは4を含んで1〜4)であり;nは1以上の整数(たとえば、1〜20またはそれ以上)であり;そしてpは0または1である〕で示されるモノマーである。上記の一般式に含まれるモノマーとしては、たとえば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジグリセロールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、および他のポリエーテルジアクリレートとポリエーテルジメタクリレートなどがある。この種類の物質は、米国特許第5,106,928号と米国特許第3,043,820号に実質的に記載されている。
【0144】
本発明の組成物において有用な他の種類の重合可能なモノマーは、下記の一般式
【0145】
【化44】

【0146】
〔式中、
Rは、水素、塩素、メチル、またはエチルであり;R’は、2〜6個の炭素原子を有するアルキレンであり;R”は、(CH2)m(式中、mは0〜8の整数である)または
【0147】
【化45】

【0148】
であり;nは1〜4の整数であり;そしてR’”はメチルである〕で示されるモノマーである。この種類の代表的なモノマーとしては、たとえば、ビス(エチレングリコール)アジペートのジメタクリレート、ビス(エチレングリコール)マレエートのジメタクリレート、ビス(エチレングリコール)フタレートのジメタクリレート、ビス(テトラエチレングリコール)フタレートのジメタクリレート、ビス(テトラエチレングリコール)セバケートのジメタクリレート、ビス(テトラエチレングリコール)マレエートのジメタクリレート、および前記のジメタクリレートに対応するジアクリレートとクロロアクリレートなどがある。この種類の重合可能なモノマーは、米国特許第5,106,928号と米国特許第3,457,212号に実質的に記載されている。
【0149】
本発明の組成物における重合可能なモノマーの他の有用な種類としては、イソシアネート-ヒドロキシアクリレート反応生成物またはイソシアネート-アミノアクリレート反応生成物であるモノマー(アクリレート末端のポリウレタンおよびポリウレイドもしくはポリウレアとして特徴付けることができる)がある。これらのモノマーは、下記の一般式
【0150】
【化46】

【0151】
〔式中、Aは、-O-と>N-R7からなる群から選択され、R7は、水素および1〜7個の炭素原子を有する低級アルキルからなる群から選択され;Nは、活性水素含有アクリルエステルの有機残基(活性水素が除去されていて、エステルのアルキル部分がヒドロキシ置換もしくはアミノ置換されている)、ならびにそのメチル類縁体、エチル類縁体、および塩素類縁体であり;nは、1と6を含んで1〜6の整数であり;Lは、アルキル基、アルキレン基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルキレン基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ポリ(オキシアルキレン)基、ポリ(カルボアルコキシアルキレン)基、および複素環基(未置換であっても置換されていてもよい)からなる群から選択される一価もしくは多価の有機基である〕で示されるモノマーである。この種類の代表的モノマーとしては、モノイソシアネートもしくはポリイソシアネート(たとえばトルエンジイソシアネート)と、非アクリレート部分にヒドロキシル基またはアミノ基を含有するアクリレートエステル(たとえばヒドロキシエチルメタクリレート)との反応生成物がある。上記の種類のモノマーは、米国特許第5,106,928号と米国特許第3,426,988号に実質的に記載されている。
【0152】
本発明において有用な他の種類のモノマーは、ビスフェノールタイプの化合物のモノアクリレートエステル、モノメタクリレートエステル、ポリアクリレートエステル、およびポリメタクリレートエステルであり、これらの多くは広く入手可能である。これらの化合物は下記の式によって示すことができる:
【0153】
【化47】

【0154】
(式中、R1は、メチル、エチル、シクロアルキル、または水素であり;R2は、水素、メチル、メチル、またはエチルであり;R3は、水素、メチル、または水素であり;R4は、水素、塩素、メチル、またはエチルであり;そしてnは0〜8の整数である)。上記の種類の代表的なモノマーとしては、4,4’-ビス-ヒドロキシエトキシ-ビスフェノールAのジメタクリレートエステルとジアクリレートエステル、およびビスフェノールAのジメタクリレートエステルとジアクリレートエステルなどがある。これらのモノマーは、日本特許70-15640とWO5,106,928に実質的に記載されている。
【0155】
本発明において使用される(メタ)アクリレートは公知の化合物であり、そのうちの幾つかは、たとえばSARTOMER社から、SR(登録商標)203、SR295、SR350、SR351、SR367、SR399、SR444、SR454、またはSR9041等の製品名で市販されている。
【0156】
ジ(メタ)アクリレートの適切な例は、脂環式ジオールまたは芳香族ジオール〔たとえば、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-シクロヘキシル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシ-ビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、エトキシル化ビスフェノールA、プロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化ビスフェノールF、プロポキシル化ビスフェノールF、エトキシル化ビスフェノールS、またはプロポキシル化ビスフェノールS〕のジ(メタ)アクリレートである。この種のジ(メタ)アクリレートは公知であり、幾つかは市販されている。
【0157】
使用できる他のジ(メタ)アクリレートは、式(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)の化合物であって、このとき
R9は、水素原子またはメチルであり;
Yは、直接結合、C1-C6アルキレン、-S-、-O-、-SO-、-SO2-、または-CO-であり;
R10は、C1-C8アルキル基、未置換であるか又は1つ以上のC1-C4アルキル基、ヒドロキシル基、もしくはハロゲン原子で置換されたフェニル基、あるいは式-CH2-OR11(式中、R11はC1-C8アルキル基またはフェニル基である)の基であり;そして
Aは、アルキレン基または式の基である。
【0158】
使用できるジ(メタ)アクリレートのさらなる例は、式(X)、(XI)、(XII)、および(XIII)の化合物である。
式(VI)〜(XIII)の化合物は公知の化合物であり、幾つかは市販されている。これらの化合物の製造もEP-A-0646580に記載されている。
【0159】
こうした多官能モノマーの市販品の例としては、カヤラド(KAYARAD)R-526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R-551、R-712、R-604、R-684、PET-30、GPO-303、TMPTA、THE-330、DPHA-2H、DPHA-2C、DPHA-21、D-310、D-330、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120、DN-0075、DN-2475、T-1420、T-2020、T-2040、TPA-320、TPA-330、RP-1040、R-011、R-300、およびR-205(日本化薬);アロニックスM-210、M-220、M-233、M-240、M-215、M-305、M-309、M-310、M-315、M-325、M-400、M-6200、およびM-6400(東亜合成化学工業);ライトアクリレートBP-4EA、BP-4PA、BP-2EA、BP-2PA、およびDCP-A(共栄社化学工業);ニューフロンティアBPE-4、TEICA、BR-42M、およびGX-8345(第一工業製薬);ASF-400(新日鉄化学);リポキシSP-1506、SP-1507、SP-1509、VR-77、SP-4010、およびSP-4060(昭和高分子);NKエステルA-BPE-4(新中村化学工業);SA-1002(三菱化学);ならびにビスコート-195、ビスコート-230、ビスコート-260、ビスコート-310、ビスコート-214HP、ビスコート-295、ビスコート-300、ビスコート-360、ビスコート-GPT、ビスコート-400、ビスコート-700、ビスコート-540、ビスコート-3000、およびビスコート-3700(大阪有機化学工業);などがある。
【0160】
他の(メタ)アクリレート組成物は、フリーラジカルより硬化可能な成分がトリ(メタ)アクリレートまたはペンタ(メタ)アクリレートを含有するような組成物である。適切な芳香族トリ(メタ)アクリレートの例としては、三価フェノールのトリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、および3つのヒドロキシル基を含有するフェノールノボラックもしくはクレゾールノボラックと(メタ)アクリル酸との反応生成物がある。
【0161】
本発明においてラジカル重合可能な化合物として使用することができるビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロビルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、tert-ブチルジビニルエーテル、tert-アミルジビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレン-グリコールブチルビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロピントリビニルエーテル、アミノプロピルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ポリアルキレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、および3,4-ジヒドロピラン-2-メチル3,4-ジヒドロピラン-2-カルボキシレートなどがある。市販のビニルエーテルとしては、プルリオール(Pluriol)-E200ジビニルエーテル(PEG200-DVE)、ポリ-THF290ジビニルエーテル(PTHF290-DVE)、およびポリエチレングリコール-520メチルビニルエーテル(MPEG500-VE)(全てBASF社から市販)などがある。
【0162】
ヒドロキシ官能化モノ(ポリ)ビニルエーテルとしては、ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル、ポリアルキレンアルコール末端ポリビニルエーテル、ブタンジオールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ヘキサンジオールモノビニルエーテル、およびジエチレングリコールモノビニルエーテルなどがある。
【0163】
含めるのが適切である他の種類のビニルエーテルは、米国特許第5,506,087号(該特許を参照により本明細書に含める)に記載の全てのビニルエーテルである。より好ましいのは芳香族ビニルエーテルと脂環式ビニルエーテルである。市販のビニルエーテルとしては、たとえば、ベクトマー(Vectomer)4010、ベクトマー5015、ベクトマー4020、ベクトマー21010、およびベクトマー2020(ニュージャージー州モリスタウンのアライドシグナル社から市販)などがある。最も好ましいのは、ベクトマー4010とベクトマー5015である。
【0164】
他の種類の重合可能なモノマーとしては、ビニル官能化シリコーン(ビニルシロキサン)、ビニル官能化シラトラン、ビニル官能化α-シラン、ビニル官能化γ-シラン、およびビニル官能化POSS化合物などがある。ビニルシロキサンの代表的な例としては、ビス(m-アリルフェニルジメチルシリルオクチル)テトラメチルジシロキサン(SIB1021.0)等(ABCR GmbH & Co.KGから市販);ならびに、X-22-164B、X-22-164C、X-22-5002、およびX-22-174D(変性シリコーン油)等(信越化学工業から市販);などがある。ビニル官能化シラトランの代表的な例はメタクリルオキシプロピルシラトラン(SIM6487.1)等(ABCR GmbH & Co.KGから市販)である。ビニル官能化α-シランとビニル官能化γ-シランの代表的な例としては、スチリルエチルトリメトキシシラン(SIS6990.0)、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン(IM6483.0)、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(SIM6487.4)、メタクリルオキシプロピルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン(SIM6487.8)、テトラアリルシラン(SIT7020.0)、ノルボルネニルトリエトキシシラン(SIB0992.0)、ビニルトリエトキシシラン〔ゲニオシル(Geniosil)GF56〕、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン(ゲニオシルGF58)、ビニルトリアセトキシシラン(ゲニオシルGF62)、(3-メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン(ゲニオシルGF31)、(メタクリルオキシメチル)メチルジメトキシシラン(ゲニオシルXL32)、(メタクリルオキシメチル)トリメトキシシラン(ゲニオシルXL33)、(メタクリルオキシメチル)メチルジエトキシシラン(ゲニオシルXL34)、および(メタクリルオキシメチル)トリエトキシシラン(ゲニオシルXL36)等(ABCR GmbH & Co.KGとWacker-Chemie GmbHから市販)がある。ビニル官能化POSS化合物の代表的な例としては、スチレニルイソブチル-POSS(ST1506)、スチリルシクロヘキシル-POSS(ST1509)、スチリルシクロペンチル-POSS(ST1510)、スチリルイソブチル-POSS(ST1515)、アリルシクロヘキシル-POSS(OL1099)、アリルシクロペンチル-POSS(OL1100)、アリルイソブチル-POSS(OL1118)、アリルジメチルシリルシクロペンチル-POSS(OL1105)、シクロヘキセニルエチルシクロペンチル-POSS(OL1110)、アリルシクロヘキシル-POSS(OL1099)、アリルシクロペンチル(OL1100)、アリルイソブチル-POSS(OL1118)、アリルジメチルシリルシクロペンチル-POSS(OL1105)、シクロヘキセニルエチルシクロペンチル-POSS(OL1110)、アリルイソブチル-POSS(OL1118)、アリルジメチルシリルシクロペンチル-POSS(OL1105)、シクロヘキセニルエチルシクロペンチル-POSS(OL1110)、ジメチルビニルシクロペンチル-POSS(OL1114)、ジフェニルビニルシクロペンチル-POSS(OL1117)、モノビニルシクロヘキシル-POSS(OL1122)、モノビニルシクロペンチル-POSS(OL1120)、モノビニルイソブチル-POSS(OL1123)、フェニルメチルビニルシクロペンチル-POSS(OL1125)、トリス(ジメチルビニル)シクロペンチル-POSS(OL1154)、トリス(ジメチルビニル)シクロペンチル-POSS(OL1155)、トリス(ジメチルビニル)イソブチル-POSS(OL1119)、トリビニルシリルシクロペンチル-POSS(OL1157)、メタクリルフルオロ(3)シクロペンチル-POSS(MA0720)、メタクリルフルオロ(13)クロペンチル-POSS(MA0730)、メタクリルトリメチルシロキシシクロペンチル-POSS(MA0740)、メタクリルトリメチルシロキシイソブチル-POSS(MA0742)、メタクリルイソブチル-POSS(MA0702)、メタクリルイソオクチル-POSS(MA0719)、メタクリルフェニル-POSS(MA0734)、メタクリルジシラノールシクロヘキシル-POSS(MA0715)、メタクリルジシラノールシクロペンチル-POSS(MA0711)、メタクリルジシラノールイソブチル-POSS(MA0713)、メタクリル-POSSケージ混合物(cage mixture)(MA0735)、オクタメタクリルジメチルシリル-POSS(MA0745)、トリス(メタクリル)シクロヘキシル-POSS(MA0747)、トリスメタクリルイソブチル-POSS(MA0750)、アクリロシクロヘキシル-POSS(MA0699)、アクリロシクロペンチル-POSS(MA0700)、アクリロイソブチル-POSS(MA0701)、メタクリルシクロヘキシル-POSS(MA0704)、メタクリルシクロペンチル-POSS(MA0705)、メタクリルエチル-POSS(MA0717)、オクタシクロヘキセニルジメチルシリル-POSS(OL1159)、オクタビニルジメチルシリル-POSS(OL1163)、オクタビニル-POSS(OL1160)、ビニル-POSSケージ混合物(OL1170)、およびテトラビニル-T2(OL1150)等〔米国、ハイブリッド・プラスチックス社(Hybrid Plastics)から市販〕がある。
【0165】
幾つかの公知の方法を使用して、特殊な接着剤組成物〔すなわち、ケイ素ベースのポリマー、オリゴマー、またはハイブリッド(ケイ素/アクリル樹脂)〕によって接着を行うことができる。場合によっては、アクリレートオリゴマーにシロキサンオリゴマーを加え、アミン化合物によって両者を架橋させる。このようなハイブリッド組成物の挙動は予測するのが困難である。本発明は、こうした種類の組成物を利用しないのが好ましい。
【0166】
有機ホウ素複合体のアミン官能基とアクリレート官能基とが反応して、アミン-アクリル系誘導体のマイケル付加物を形成するのが好ましい。本発明の接着剤組成物のアクリル部分は、シロキサン化合物または他のケイ素化合物(特に、アクリルオリゴマー、アクリルモノマー、またはアクリルポリマーと共に重合することができる化合物)を含まないのが好ましい。
【0167】
他の成分
幾つかの公知の方法を使用して、特殊な接着剤組成物〔すなわち、ケイ素ベースのポリマー、オリゴマー、またはハイブリッド(ケイ素/アクリル樹脂)〕によって接着を行うことができる。場合によっては、アクリレートオリゴマーにシロキサンオリゴマーを加え、アミン化合物によって両者を架橋させる。このようなハイブリッド組成物の挙動は予測するのが困難である。ハイブリッド系は複雑であり、完全な硬化を確実に達成するのは容易ではない。さらに、接着剤組成物の場合、適切な接着を確実に得るためには、ケイ素含量を制限しなければならない。本発明は、この種の組成物を利用しないのが好ましい。
【0168】
有機ホウ素複合体のアミン官能基とアクリレート官能基とが反応して、アミン-アクリル系誘導体のマイケル付加物を形成するのが好ましい。接着剤成分は、シラノール化合物等の別個のケイ素化合物を含有しないのが好ましい。アクリル化合物は、アクリル分子中にケイ素官能基を有してよい。本発明の接着剤組成物の接着剤部分は、シロキサン化合物または他のケイ素化合物(特に、アクリルオリゴマー、アクリルモノマー、またはアクリルポリマーと共に重合することができる化合物)を含まないのが好ましい。
【0169】
エポキシ末端のアミン-エポキシ付加物、すなわち、少なくとも2つのエポキシ環を有する1つ以上の分子と、少なくとも1つのアミン基を有する1つ以上の化合物との間の付加物(化学量論的に過剰のエポキシ環が存在する)。カルボン酸無水物、カルボン酸、フェノールノボラック樹脂、チオール(メルカプタン)、水、および金属塩などを、アミン-エポキシ付加物の製造における追加の反応物として使用して、いったんアミンとエポキシ化合物とが反応して得られた付加物に対しさらなる変性を施すことができる。
【0170】
適切な市販エポキシ樹脂の特定の例としては、MYシリーズ(たとえば、MY-0500、MY-0510、MY-0501、MY-720、MY-740、MY-750、MY-757、MY-790、およびMY-791など)やGYシリーズ(たとえば、GY-240、GY-250、GY-260、GY-261、およびGY-282など)等の、アラルダイト(ARALDITE)の商標で市販されているもの〔ハンツマン社(以前はバンチコA.G.,スイス)〕;DER-324、DER-332、DEN-431、DER-732(ダウケミカル社,米国);エポン(EPON)813、エポン8021、エポン8091、エポン825、エポン828、エポネックス(Eponex)1510、エポネックス1511(シェルケミカル社,米国);PEP6180、PEP6769、PEP6760(パシフィックエポキシポリマー社,米国);NPEF-165(Nan Ya プラスチック社,中国);リコポキシ(Ricopoxy)-30、リコタフ(Ricotuff)-1000-A、リコタフ-1100-A、リコタフ-1110-A(リコンレジン社,米国);ならびにセタラックス(Setalux)AA-8502、セタラックス8503(アクゾノーベル社,オランダ);などがある。
【0171】
他の有用なアジュバントは架橋剤である。架橋剤を使用して、接着接合もしくはポリマー組成物の耐溶剤性を高めることができる。架橋剤は、硬化ポリマーもしくは硬化接着剤の使用温度と耐溶剤性を改良することができる。架橋剤は一般に、組成物の総重量を基準として0.1〜20重量%の量にて使用され、有用な架橋剤としては、種々のジアクリレート(使用可能な変性用アクリルモノマーとして上記したもの)、アクリレート官能基とイソシアネート官能基を有する化合物、および他の化合物がある。適切な架橋剤の具体的な例としては、エチレングリコール、ジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールビスメタクリルオキシカーボネート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジグリセロールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメタクリレートトリス(2-メチル-1-アジリジンプロピオネート)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アクリレートチップのポリウレタン含有プレポリマー、ポリエーテルジアクリレート、およびポリエーテルジメタクリレートなどがある。
【0172】
本発明の組成物は、1つ以上のオレフィン基と少なくとも1つのP-OH基を有するリン含有化合物を必要に応じて含んでもよい。この種類の化合物が、WO03/040151のp.23-24に実質的に記載されている。
【0173】
本発明の組成物はさらに、WO03/057791に詳細に記載されている金属塩を含有してよい。これらの金属塩は、重合可能な組成物の硬化反応速度を高めることができ、当業界では“金属塩変性剤”として知られている。
【0174】
本発明の組成物は、非有機ボランをベースとするフリーラジカル開始剤(好気性開始剤)(当業界によく知られている)を必要に応じて含有してよい。非有機ボランのフリーラジカル開始剤は、重合可能な二部分組成物の重合可能なモノマー部分に容易に組み込むことができる。非有機ボランの好ましいフリーラジカル開始剤は、保存条件下にてモノマーとは容易に反応しないか、あるいは、必要に応じて最大で数ヶ月という所望の保存安定性が得られるよう作用を適切に抑制することができるような開始剤である。非有機ボランをベースとする適切なフリーラジカル開始剤の例としては、有機過酸化物と有機ヒドロペルオキシ開始剤があり、特に式R’OOH(式中、R’は、最大で約20個の炭素原子を有する炭化水素基であり、好ましくは最大で14個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基である)を有する有機ヒドロペルオキシドがある。このようなヒドロペルオキシドの特定の例は、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ならびに種々の炭化水素(たとえば、メチルブテン、セタン、およびシクロヘキサン等)、種々のケトン、および種々のエーテルの酸素化によって形成されるペルオキシドである。有用な開始剤の他の例としては、p-メンタンヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサンヒドロペルオキシド、および2,5-ジヒドロキシペルオキシド等のヒドロペルオキシド、ならびにシリルタイプのペルオキシドなどがある。好気性の開始剤として有用である幾つかのタイプ(全てではない)の化合物が、米国特許第4,043,982号に実質的に記載されている。さらに、非有機ボランをベースとする2種以上のフリーラジカル開始剤(たとえば、ヒドロペルオキシドとペルエステル(perester)との混合物)を使用することができる。過安息香酸t-ブチルやペルオキシマレイン酸t-ブチルなどをペルエステルとして有利に使用することができる。
【0175】
本発明の組成物は、2つの成分の工業的に受け入れ可能な容量比が得られるよう、組成物の2つの部分の容量をバランスさせるために、反応性もしくは非反応性の希釈剤を含有してよい。希釈剤は反応性希釈剤が好ましい。好ましい反応性希釈剤は、WO03/038006に実質的に記載されているイソシアネート反応性化合物、WO00/56779に実質的に記載されている1,4-ジオキソ-2-ブテン官能性物質、WO98/17694、WO99/64528、およびWO99/64475に実質的に記載されているアジリジン官能性物質、WO03/035703に実質的に記載されている種々のタイプのワックス〔たとえば、石油系(パラフィン(クリスタリン)ワックス、マイクロクリスタリンワックス、および石油ワックス等)、植物系(代表的な例:カルナバ蝋、日本蝋、アウリキュリーワックス(ouricury wax)、米ぬかワックス、ホホバワックス、キャスターワックス、シロヤマモモ蝋、および大豆ワックス等)、昆虫・動物系(代表的な例:蜜蝋、鯨蝋、中国蝋、羊毛脂、およびシェラックワックス等)、鉱物系(代表的な例:モンタンワックス、ピートワックス、オゾケライトワックス、およびセレシンワックス等)、合成ワックス(代表的な例:ポリエチレンワックス、オレフィンワックス、カーボワックス、およびハロワックス等)〕、不飽和炭化水素(たとえば、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン等)、ならびに一般式IIで示されている化合物の全ての複合体(最も望ましい)である。他の種類の望ましい希釈剤としては、特定のエーテル、特定のエポキシ化合物、特定の炭化水素、ポリ(テトラヒドロフラン)、2-ハロアルキルフェニルエーテル(たとえば、2-ブロモエチルフェニルエーテルや2-クロロエチルフェニルエーテル)、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン(たとえば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ならびに特定のグリシジルエーテル(たとえば、グリシジルヘプチルエーテル、グリシジルウンデシルエーテル、グリシジルエーテル、グリシジルヘプチルエーテル、プロパンジオールジグリシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、および1-ベンジル-2,3-イソプロピリデン-S/N-グリセロール等)などがある。トリグライムとテトラグライムが特に望ましい。
【0176】
本発明の組成物はさらに、種々の任意の添加剤を含んでよい。種々の任意の添加剤は、重合プロセスや、こうした添加剤を使用して作製される組成物の所望の特性にあまり悪影響を及ぼさないような量にて使用される。チキソトロープ剤の量は、室温で流動する傾向を全く示さないようなドー(dough)が得られるように調整するのが望ましい。特に有用な添加剤の1つは増粘剤〔たとえば、中分子量〜高分子量(10,000〜1,000,000a.u.)のポリ(メチルメタクリレート)〕であり、組成物の総重量を基準として0.1〜60重量%の量にて、好ましくは0.2〜20重量%の量にて、そして最も好ましくは0.4〜10重量%の量にて組み込むことができる。増粘剤は、組成物の粘度を増大させて、組成物を塗布しやすくするために使用することができる。この種の好ましい物質は、ポリ(メチルメタクリレート)ホモポリマーとポリ(メチルメタクリレート)コポリマー〔ルサイト・インタナショナル社(Lucite International)からエルバサイト(ELVACITE)の商標で市販〕、スチレン/メチルメタクリレートコポリマー、およびポリビスフェノール-Aマレエートポリエステルとプロポキシル化ビスフェノール-Aフマレートポリエステル(商標ATLAC)である。不活性の充填剤〔たとえば、微粉末シリカ、ヒュームドシリカ(処理品または未処理品)(たとえば、商品名AEROSIL)、モンモリロナイトクレイ、およびベントナイトクレイ等〕を加えることもできる。微粉末シリカを使用すると、ペースト状のチキソトロープ組成物が得られる。二成分系の組成物においては、ポリマー増粘剤または他の増粘剤(たとえばシリカ)が、硬化剤部分中の希釈剤に対する増粘剤として適切に存在してよい。
【0177】
他の特に有用な添加剤はエラスマー材料である。これらの材料を使用すると、組成物の破壊靭性が改良されることがある。このことは、たとえば、剛性で降伏強さの高い材料(たとえば、他の材料と同程度に簡単には機械的にエネルギーを吸収しない金属支持体)を接合する際に有用である。このような添加剤は、組成物の総重量を基準として5〜50重量%の量にて組み込むことができる。これらのゴムポリマーエラストマーは、ポリイソプレン、ポリブタジエンホモポリマー、ポリブタジエンコポリマー、ポリオレフィン、ポリウレタン、またはポリエステル等をベースとしたエラストマーであるのが好ましい。エラストマー材料の代表的な例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびポリイソブチレン等のホモポリマー;ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、ブタジエン/メチルメタクリレートコポリマー、およびブタジエンアルキルアクリレートコポリマー等のジエンタイプコポリマー;エチレン/酢酸ビニルコポリマー;エチレン/アルキルアクリレートコポリマー(アルキル基中1〜8個の炭素原子)、ゴム状ポリアルキルアクリレート、およびこれらのコポリマー;ポリウレタン;塩素化ポリエチレン;ならびにEPDM(エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー);などがある。これらの構造のエラストマーは、一端もしくは両端に、またはコポリマーの特定のセグメント内もしくは特定の反復構造単位内に官能基を含んでよい。適切な官能基としては、ビニル基、エポキシ基、カルボキシアルキル基、およびメルカプト基などがある。適切な実験にて有用であることがわかっている他の官能基も使用することができる。有用なエラストマー変性剤としては、塩素化ポリエチレンやクロロスルホン化ポリエチレン〔たとえばハイパロン(HYPALON)30〕、およびスチレンと共役ジエンとのブロックコポリマー〔商標:ベクター(VECTOR)、クラトン(KRATON)、ステレオン(STEREON)〕などがある。さらに、有用であってより一層好ましいのは、特定のグラフトコポリマー樹脂(たとえば、比較的硬質のシェルで取り囲まれた、ゴムもしくはゴム様のコアまたはネットワークを含む粒子;これらの材料は、しばしば“コア-シェル”ポリマーと呼ばれる)である。最も好ましいのは、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレングラフトコポリマーおよびメチルメタクリレート/ブタジエン/スチレングラフトコポリマーである。さらに、組成物の破壊靭性を改良する上で、コア-シェルポリマーは、未硬化の組成物に広がり特性と流動特性の向上をもたらすことができる。これらの特性向上は、シリンジタイプのアプリケーターから分配したときに、組成物が望ましくない“糸”残す傾向が少なくなることで、あるいは垂直の表面に塗布した後に、垂れや落ち込みが少なくなることで明白に示される。改良された垂れ-落ち込み抵抗(sag-slump resistance)を達成するためには、10重量%以上のコア-シェルポリマー添加剤を使用することが望ましい。一般には、靭性付与ポリマーの使用量は、作製されるポリマーまたは接着剤に所望の靭性をもたらす量である。
【0178】
本発明の組成物は熱管理材料を含有してよい。重合時の熱を放散させるよう機能するいかなる材料も使用することができる。有用な熱管理材料の例としては、反応時に蒸発して、これにより発生熱を吸収する揮発性液体、および反応条件下において吸熱反応によって反応する物質がある。ヒートシンクとして有用な材料は、熱容量の高い材料である。熱容量の高い材料の例としては、セラミック粒子、ガラスビーズ、フルオロポリマー粉末(たとえばテフロン(登録商標)粉末)、および中空球体がある。接着剤の場合、ガラスビーズと中空球体の役割は接合スペーサーコントローラー(bond spacer controllers)としての役割であってよい。有用な液体物質としては、塩素化アルカン、ジアルキルエーテル、アルカン、塩化メチレン、および低沸点石油エーテルなどがある。より好ましい溶媒としては、塩化メチレン、ジエチルエーテル、ペンタン、およびヘキサンがある。熱管理材料の使用量は、標的反応温度と熱管理材料の熱容量に依存する。反応熱はさらに、ミキシングの速度を下げることによって(これによってより遅い発熱を可能にすることによって)影響を受けることがある。
【0179】
作業時間に対する接着剤の平均温度(加熱によって、化学線を照射することによって、電磁放射線によって、磁気放射線によって、電流によって、超音波によって、紫外線によって、これらの組み合わせによって、あるいは上記の放射線種や熱をもたらす他の手段によって、接着剤の硬化が引き起こされない場合)は、70℃の標的温度に、好ましくは60℃以下の標的温度に、そして最も好ましくは50℃以下の標的温度になるように制御する。熱管理材料は、配合物の樹脂側(重合可能な混合物)に配置することもできるし、あるいは硬化剤側に配置することもできる。熱管理材料の種類とその量の選択は、重合時に放散させる必要がある熱の量によって決められる。反応時に発生する熱があまりに高く、且つあまりに長時間にわたる場合は、支持体に対する重合組成物の接着力に悪影響を及ぼすことがある。
【0180】
本発明の組成物はさらに、イソシアネート反応性化合物とイソシアネート含有化合物との反応のための、あるいはエポキシ反応性化合物とエポキシ含有化合物との反応のための公知の触媒を含有してよい。
【0181】
本発明の組成物はさらに、下記の物質の1種以上を含んでよい:チキソトロープ剤に関するパラグラフにおいて既に記載したものとは別の、組成物のレオロジー制御に寄与するフィラー(たとえば、アルミナ、ガラス粉末、セラミック粉末、および金属粉末);強化用繊維(たとえば、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、およびこれらの混合物);シリコーンゴムやシリコーンコア-シェル粒子;補強剤および/または補強顔料(たとえば、金属酸化物、金属水和物、金属水酸化物、金属アルミン酸塩、金属炭酸塩、金属硫酸塩、スターチ、タルク、カオリン、モレキュラーシーブ、および有機顔料等);溶媒(有機ケイ素-有機ボラン複合体の熱解離温度より低い沸点を有するように選択しなければならない);他の流れ調整剤;他の炭酸カルシウム(被覆炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムを含む;これらは、特に微細粒子の形態のときに、チキソトロープ調整剤もしくはレオロジー調整剤として作用することがある)、アルミナ、クレイ、ナノクレイ(たとえば、天然モンモリロナイト等)、ナノオルガノクレイ(たとえば、インターカレーテッド・モンモリロナイト等)、変性砂(modified sand)、変性金属(たとえばアルミナ粉末)、微小球体(ガラス微小球体、熱可塑性樹脂、セラミック微小球体、および炭素微小球体;充実していても、中空であっても、発泡していても、あるいは発泡可能であってもよい)、および当業界に公知の他の有機フィラーと無機フィラー;接着剤、シーラント、ペイントと塗料、注型用樹脂、ケーブル、造形可能な成形材料、完成成形品、または複合材料中に一般的に使用される添加剤;可塑剤;接着促進剤(湿潤剤もしくはカップリング剤としても知られている;たとえば、シラン、チタネート、ジルコネート)、着色剤(colorants)(たとえば、染料やカーボンブラック等の顔料)、および安定剤(たとえば、酸化防止剤や紫外線安定剤)等;着色剤(coloring agents)(顔料や染料);消泡剤;レベリング剤;ならびに難燃剤;等。
【0182】
好ましい組成物は二部分組成物であり、下記の部分を含む。
部分1: 必要に応じて連鎖延長剤(たとえばアジリジン化合物)を含んだケイ素-アミノ有機ボラン複合体;ならびに
部分2: ラジカル重合可能な化合物(好ましくは、互いに相溶性があって、最終的に硬化する特性を有するよう選択されるメタクリル化合物)のブレンド;
必要に応じて使用される靭性付与材料(たとえばABS);
複合体解離剤(好ましくは多官能アルデヒド);および
開放時間延長剤(たとえば、4-メチルスチレンや他のアルケニル化合物等の、別のラジカル受け入れ化学種であるのが好ましい);
で構成されるアクリル組成物。
【0183】
本発明は、一般式(I)の有機ボラン化合物の溶液と、一般式IIを有する有機ケイ素化合物とを接触させることを含む、複合体の製造法に関する。本発明は、一般式(I)の有機ボラン化合物の溶液と、一般式Vを有する有機ケイ素化合物とを接触させることを含む、複合体の製造法に関する。本発明はさらに、一般式(I)の有機ボラン化合物の溶液と、特許請求の範囲に記載の有機ケイ素化合物とを接触させることを含む、複合体の製造法に関する。本発明の製造法は、一般式(I)の有機ボラン化合物の溶液と、少なくとも1つの第一アミノ基、第二アミノ基、もしくは第三アミノ基を有する有機ケイ素化合物とを接触させることを含んでよい。
【0184】
本発明の重合可能な組成物の重合は、加熱によって、化学線を照射することによって、電磁放射線によって、磁気放射線によって、電流によって、超音波によって、紫外線によって、これらの組み合わせによって、あるいは上記の放射線種や熱をもたらす他の手段によって開始させることができる。組成物は、ラジカル重合可能なモノマーおよび/またはオリゴマー(アクリレート化合物やメタクリレート化合物等のオレフィン不飽和系であるのが好ましい)を含有するのが好ましい。ラジカル重合可能なモノマーおよび/またはオリゴマーは、2-エチルヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、およびイソデシルアクリレートの群から選択される化合物を含むのが好ましい。組成物はさらに、i)顔料、ii)着色剤、iii)紫外線安定剤、iv)抑制剤、v)水分捕捉剤、vi)有機ボラン以外のフリーラジカル開始剤(たとえば、有機化酸化物やヒドロペルオキシド等)、vii)スルホン化芳香族ポリマー、viii)エポキシ化合物、ix)エポキシ末端のアミン-エポキシ付加物、x)追加の架橋剤、xi)少なくとも1つのP-OH基を有するリン含有化合物、xii)硬化反応の速度を変えるための物質(“変性剤”)(たとえば金属塩等)、xiii)レオロジー制御物質(増粘剤またはシンナー)(流れ調整剤)、xiv)いろいろいな種類のシリカ(たとえば、微粉砕シリカ、ヒュームドシリカ、およびミクロイオン化シリカ等)、xv)揮発性液体、xvi)エラストマー材料、xvii)セラミック粒子、xviii)ガラスビーズ、xix)フルオロポリマー粉末、xx)微小球体(たとえば、ガラス、熱可塑性樹脂、セラミック、またはカーボン;充実していても、中空であっても、発泡していても、あるいは発泡可能であってもよい)、xxi)エポキシ型またはイソシアネート型の反応のための触媒、xxii)溶媒、xxiii)反応性または非反応性の希釈剤(たとえば、1,4-ジオキソ-2-ブテン官能性物質、アジリジン官能性物質、および種々のワックス等)、xxiv)フィラー(たとえば、アルミナ、ガラス粉末、セラミック粉末、および金属粉末等)、xxv)補強用繊維/補強剤、xxvi)シリコーンゴム、xxvii)シリコーンコア-シェル粒子、xxviii)可塑剤、xxix)接着促進剤、xxx)消泡剤、xxxi)レベリング剤、xxxii)変性砂、xxxiii)酸化防止剤、ならびにxxxiv)難燃剤、の少なくとも1種を含有してよい。組成物はさらに、接着剤、シーラント、ペイント、塗料、汚れ防止組成物、注型用樹脂、造形可能な成形材料、完成成形品、または複合材料中に一般的に使用される、当業界に公知の他の添加剤を含有してよい。
【0185】
本発明は、少なくとも2つの支持体を接着剤で接合する方法を提供し、前記方法は、特許請求されている重合可能な組成物を第1の支持体に塗布すること、第2の支持体を、前記重合可能な組成物を介して第1の支持体と接触させた状態で配置すること、および前記組成物を硬化させるか、又は前記組成物の硬化を起こさせること、を含む。重合可能な組成物を第1の支持体に塗布し、第2の支持体を、前記重合可能な組成物を介して第1の支持体と接触させた状態で配置し、そして前記組成物を硬化させるか、又は前記組成物の硬化を起こさせるのが好ましい。少なくとも2つの支持体を接着剤で接合する方法も提供され、前記方法は、支持体の表面に複合体を塗布すること;このように下塗り処理した表面に、ラジカル重合可能なモノマーもしくはオリゴマーを含んだ組成物を引き続き塗布すること;そして引き続き第2の支持体を施すこと;を含む。第2の支持体は同様に処理するのが好ましい。これら2つの支持体は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、木材、複合材料、セラミック、ガラス、コンクリート、および金属の群から独立的に選択することができる。少なくとも一方の支持体が低表面エネルギーの支持体であるのが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、α-オレフィンのコポリマー、またはフッ素化ポリマー(たとえば、ポリテトラフルオロエチレン等)を含んだ支持体であるのがさらに好ましい。前記支持体は、メチルメタクリレートのホモポリマーもしくはコポリマー、ポリカーボネート、ポリ(塩化ビニル)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、および相溶性があるか又はより高い表面エネルギーの他のプラスチックを含んでよい。
【0186】
本発明の二成分系ポリマー組成物はいずれも、適切なディスペンサーによってプレミックスするのが好ましい。他の実施態様においては、二成分系ポリマー組成物はいずれも、プレミックスすることなく支持体上に塗布される。
【0187】
本発明の組成物は、接着剤、シーラント、ペイント、塗料、汚れ防止組成物、または注型用樹脂の製造において、そして造形可能な成形材料、完成成形品、または複合材料中において使用することができる。
【0188】
本発明のポリマー接着剤組成物は、a)少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマー/オリゴマーと少なくとも1種の複合体解離剤とを含んだ第1の部分;およびb)請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合体の少なくとも1種を含んだ第2の部分;を含む、二部分からなる効果可能な接着剤組成物であってよい。第1の部分と第2の部分は、1:1〜35:1の整数比で混合するのが好ましく、2:1〜25:1の整数比で混合するのがさらに好ましく、そして4:1〜10:1の整数比で混合するのが最も好ましい。
【0189】
塗布方法と接合物品
本発明の新規の重合可能な二部分組成物は、公知の仕方で〔たとえば、個々の成分をプレミックスし、次いでこれらのプレミックスを混合することによって、あるいは全ての成分を、通常の装置(たとえば攪拌容器)を使用して、しばしば幾らか高めの温度で混合することによって〕作製することができる。組成物およびその構成部分の物理的形態は意図する用途によって異なり、たとえば、粉末、ペースト、または液体であってよい。工業的なアプリケーションに対しては、配合物もしくは製品は、液体としての形態が好ましい場合が多い。
【0190】
本発明の組成物が二部分物品(a two-part product)として配合作製される場合、二つの部分は、硬化するよういかなる適切な比でも混合することができる。たとえば、本発明の組成物は、二部分ディスペンサーで簡単に使用できるように、1:50以下という好都合な整数混合比(たとえば、1:10、1:4、1:3、1:2、または1:1)を有するパックにて提供することができる。二部分接着剤(たとえば、商業的・工業的環境において極めて簡単に使用できることが要求される組成物)の場合、二つの部分を混合するときの比は、好都合な整数比でなければならない。これにより、従来の市販のディスペンサー〔“MixPac(登録商標)”の商品名で市販〕を使用した場合の接着剤の塗布が容易になる。このようなディスペンサーは、時として、二重シリンジ型のアプリケーターとして説明されている。このようなディスペンサーとそれらのアプリケーションモードの詳細な説明が、WO00/56779、米国特許第4,538,920号、および米国特許第5,082,147号においてなされている。最良の商業的・工業的な有用性に関して、また現在入手可能な分配装置による使用しやすさに関して、接着剤の二つの部分は、普通の整数混合比(たとえば1:50以下、さらに好ましくは1:10、1:4、1:3、1:2、または1:1)で混合できるものでなければならない。
【0191】
本発明の重合可能な組成物は、周囲温度で簡単に塗布し、硬化させることができる。一般には、一方もしくは両方の支持体に塗布し、次いで圧力を加えて支持体を合わせて、接合ラインから過剰の組成物を追い出す。一般には、接合は、組成物を塗布したすぐ後に(好ましくは約3時間以内に、さらに好ましくは2時間未満にて)行わなければならない。接合ラインの一般的な厚さは約30〜1000ミクロンであり、好ましくは50〜500ミクロンであり、最も好ましくは80〜350ミクロンである。接合は、室温で簡単に行うことができる。接着剤は、3時間以内に、そして最も好ましくは2時間未満にて、適度な取扱強さ(0.4MPa)にまで硬化するのが好ましい。約24〜48時間で全強度(full strength)に達するのが好ましく、約10〜18時間で全強度に達するのがさらに好ましく、そして10時間未満にて全強度に達するのが最も好ましい。必要であれば、加熱して(一般には約35〜180℃にて、好ましくは約40〜120℃にて、最も好ましくは50〜90℃にて)ポストキュアーを施すことができる。架橋剤、すなわち、環状で無水物官能性の反応性化合物もしくはビニル不飽和で無水物官能性の反応性化合物を重合可能な混合物中に組み込むことによって、より一層速やかな強度達成が容易になる。
【0192】
以下にデータと実施例を挙げて本発明を説明する。
原材料
原材料と調達先の詳細を表1に示す。
【0193】
【表1】

【0194】
有機ケイ素-有機ボラン複合体の自然発火性
有機ケイ素-有機ボラン複合体の自然発火性を、米国特許第5,690,780号に記載の方法にしたがって試験した。
【0195】
有機ケイ素-有機ボラン複合体の熱解離
有機ケイ素-有機ボラン複合体の熱解離を、示差走査熱量測定法(DSC)によって評価した。メトラー820を使用して、空気雰囲気中にて20℃/分の加熱速度で、−40℃から280℃までDSC測定を行った。有機ケイ素-有機ボラン複合体の解離による発熱の開始温度(解離温度)を記録した。
【0196】
有機ケイ素-有機ボラン複合体の融点測定
特定の新規有機ケイ素-有機ボラン複合体の融点を、示差走査熱量測定法(DSC)によって評価した。メトラー820を使用して、空気雰囲気中において、開放したアルミニウム製パン中にて10℃/分の加熱速度で、−50℃から150℃までDSC測定を行った。
【0197】
接着剤の試験法
ポリプロピレン支持体、ポリプロピレンコポリマー支持体、ポリ塩化ビニル支持体、ポリテトラフルオロエチレン支持体、ポリメチルメタクリレート支持体、およびアルミニウムに対し、アセトン中に浸漬したティッシュペーパーを使用して拭き取ることによって脱脂処理を行った。ポリカーボネート支持体、低密度ポリエチレン支持体、高密度ポリエチレン支持体、およびABS支持体に対しては、イソプロパノールを使用して脱脂処理を行った。プラスチック支持体の場合には、表面摩耗、下塗り、または他の表面前処理を施さなかった。プラスチック支持体は全て、エンジニアリング・アンド・デザインプラスチック社(英国,ケンブリッジ,www.edplastics.co.uk)から購入した。スチール支持体はサンドブラスト処理した。接着剤組成物は、それぞれの支持体対の一方の面に分配した。2つの支持体を合わせ(接着面積に関しては表2を参照)、2つのブルドッグクランプによって互いに保持した。重なり合ったエリアから絞り出された少量の接着剤はそのままにしておいた。試験クーポンの寸法と接着面積を表2に示す。接合部を、特に明記しない限り25℃で48時間キュアーした。次いでクランプを取り除き、ISO4587にしたがって引張試験機(インストロン4467)により2.54mm/分のクロスヘッド速度にて、接合部の引張剪断強さ(TSS)を試験した。TTSの値はメガパスカル(MPa)にて記録した。破損モードは以下のとおりである:
AF(接着剤破損): 接着剤と支持体との間の離層
CF(凝集性破損): 接着剤層内の破損
SF(支持体破損): 接合支持体の破壊
SN(支持体のネッキング): 接合支持体の降伏
【0198】
【表2】

【0199】
競合他社の製品(COPR)の、ポリプロピレン-ポリプロピレンジョイントに対する強度増大についても評価し、本発明において作製した接着剤配合物の強度と比較した。二重シリンジ型アプリケーターを使用して両方の支持体にCOPRを塗布することによって(10:1,v/v)、一連のジョイントを作製した。前述のように作製したジョイントを、23℃にて1時間、2時間、4時間、6時間、および24時間キュアーした。
【実施例】
【0200】
(実施例1)
有機ボラン複合体の合成
トリエチルボラン(TEB)と錯形成剤との間の複合体形成反応をN2雰囲気中で行った。50mlの三角フラスコに複合体形成剤〔あるいは、錯形成剤を揮発性溶媒(好ましくはTHF)中に混合して得られる溶液〕を仕込み、分析スケール上にて氷浴中に配置した。必要量のTEB〔14.5重量%,テトラヒドロフラン(THF)溶液〕を、シリンジによって三角フラスコ中に入れた。TEBの添加が完了したら、反応混合物を(氷浴と共に)分析スケールから取り除き、4〜6時間攪拌した。次いでフラスコを不活性雰囲気から取り出し、空気中にて周囲温度で3〜5日放置してTHFを蒸発させた。時間の経過による重量減少を測定することで、蒸発の進行を追跡した。さらなる重量減少が記録されなくなったときに(加水分解生成物による重量減少を考慮に入れている)、蒸発の進行が完了したものと考えた。表3は、新たに合成した複合体を示しており、これらの複合体は周囲温度にて貯蔵安定性があり、いずれも自然発火性ではない。
【0201】
【表3】

【0202】
上記の複合体は全て異なった解離温度を示し、いずれも25℃より高かった。たとえば、C1とC3の解離温度はそれぞれ65℃および45℃であった。ニートのTEBとKBM-903を等モル比で反応させると、対応する複合体(表3のC11とC12)が結晶質の固体として得られた。
【0203】
C11:
融点範囲: 38〜59℃(43℃にてピーク)、DHメルティング=−154.05J/g
C12:
融点範囲: 13〜33℃(25℃にてピーク)、DHメルティング=−62.79J/g
(実施例2)
幾つかのケースにおいては、上記の複合体とアジリジンとを混合し、あるいは上記の複合体を互いに混合した。表4はこれらの組成を示す。
【0204】
【表4】

【0205】
(実施例3)
接着剤のパートAに対する一般的な製造法
メタクリレート、複合体解離剤(あるいは、複合体解離剤が固体の場合は、複合体解離剤のTHFMA溶液)、BLENDEX-360、およびELVACITE-2010の混合物を、高剪断ミキサー中にて約3000rpmで1時間剪断処理した。次いでFILLITE-160Wをスラリーに加え、ミキシングを500rpmでさらに10分続けた。
【0206】
幾つかのケース(A-1〜A10、表5)では、メタクリレート、複合体解離剤、BLENDEX-360、およびELVACITE-2010の混合物をミキシングしてから1時間後に、混合物にAEROSIL200を加え、ミキシングを3000rpmにてさらに10分続けた。最後にFILLITE-160Wをスラリーに加え、ミキシングをさらに10分続けた。
【0207】
1つのケース(A11、表5)では、メタクリレート、複合体解離剤、BLENDEX-360、およびELVACITE-2010の混合物にエポキシ樹脂MY-0510を加えた。ミキシングの1時間後にAEROSIL200を加え、ミキシングを3000rpmにてさらに10分続けた。最後にFILLITE-160Wをスラリーに加え、ミキシングをさらに10分続けた。
【0208】
1つのケース(A39、表5)では、メタクリレート、BLENDEX-360、およびELVACITE-2010の混合物に複合体解離剤を加えなかった。ミキシングの1時間後に、FILLITE-160Wをスラリーに加え、ミキシングをさらに10分続けた。
【0209】
接着剤のパートAの、一連の異なった組成を表5に示す。
【0210】
【表5−1】

【0211】
【表5−2】

【0212】
【表5−3】

【0213】
【表5−4】

【0214】
(実施例4)
パートAとして組成物A1〜A48(実施例3、表5)を使用し、そして開始剤(パートB)として有機ボラン複合体C1〜C22(実施例1と2、表3と4)を使用して、一連の二成分系アクリル接着剤を作製した。成分は、支持体を接合する直前に混合した。重なり剪断試験片(overlap shear specimens)を作製し、前述の接着試験法にしたがって試験した。表6は、接着剤組成の詳細、パートAとパートBとの比、および種々の支持体の接合ジョイントの引張剪断強さの結果と破損モードを示している。
【0215】
1つのケース(表6、番号43)においては、接合ジョイントを23℃で24時間放置して硬化させた。1つのケース(表6、番号63)においては、接合ジョイントを80℃で1時間放置して硬化させた。ジョイントが周囲温度に冷えた後、作製した他の全てのジョイントと同様に引張剪断強さ(TSS)を試験した。
【0216】
【表6−1】

【0217】
【表6−2】

【0218】
(実施例5)
表7は、実施例4において作製した接着剤配合物AF43(表6)と競合他社の製品(CROP)の、典型的な強度増大に関するデータ(PP-ジョイントに対する23℃での引張剪断強さとキュアー時間との関係)を示している。これら2種の接着剤に対するキュアー時間は、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、および24時間であった。AF43は、約1時間にて取扱強さ(0.4MPa)を示し、約7〜10時間にて最大強度(支持体破損)を示した。この特定の配合物は、より速やかに強度を発現することから(わずか1時間後に取扱強さが達成されるが、CROPの場合の対応する時間は2時間であった)、競合他社の製品(CROP)より性能が優れていることは明らかである。
【0219】
【表7】

【0220】
(実施例6)
接着剤配合物AF43(パートAとしてA35、およびパートBとしてC12)[実施例4の表6を参照]を使用してPP-PPジョイントを作製し、60℃、90℃、および120℃という高温にて試験したときに、いずれの場合も、それぞれ2.32MPa、0.67MPa、および0.71MPaの引張剪断強さ(TSS)にて凝集性破損を示した。
【0221】
(実施例7)
プラスチック接着剤の“開放”時間に関する検討-アルデヒドを含有する配合物中へのスチレン系化合物の導入
A13を、スチレン系化合物を使用して開放時間の広がりを調べるための対照標準の接着剤配合物として使用した。下記の一連の実験においては、開放時間が18分(ハンドミキシング)より長い接着剤混合物を得るべく、4-メチルスチレンを、3.8重量%と1.9重量%にて開放時間延長剤として使用した。重なりPP-ジョイントは全て、ミキシングして、ジョイント支持体の両側を塗被することによって作製した(時間をおかずに直ちに接合処理を行った)。
【0222】
【表8】

【0223】
本実施例は、アルデヒド化合物やスチレン系化合物を組み込むことで特性のバランスを達成できることを明確に示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
B(R1)3 (I)
(式中、各R1は、独立的にアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、またはシクロアルキルアルキル基であって、これらの基は、未置換であっても、あるいはハロゲン原子とアルコキシ基から選択される同一もしくは異なった置換基の1つ以上で置換されていてもよい)で示される化合物と、少なくとも1つの第一アミノ基、第二アミノ基、および/または第三アミノ基を含有する有機ケイ素化合物との複合体。
【請求項2】
各R1が、独立的にC1-10アルキル基であって、好ましくは、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、またはn-ブチル基である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
有機ケイ素化合物が一般式
【化1】

〔式中、
aとqは、独立的に0または1であり;
b、c、d、e、f、g、i、k、およびpは、独立的に0以上であり;
a、c、e、g、およびkは、全てが同時には0になることができず、これらのうちの少なくとも1つが0より大きくなければならず;
b、d、f、i、およびpのうちの少なくとも1つが1以上でなければならず;
各R2は独立的に、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基(たとえば、イソプロピル、イソブチル、イソオクチル、またはプロピルイソブチル等)、フルオロアルキル基、グリシジルアルキル基、アクリルアルキル基、(メタ)アクリルアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基(たとえば、シクロヘキシルやプロピルシクロヘキシル等)、アリール基、アルキルオキシアリール基、アリールオキシアルキル基、またはアルキルオキシシクロアルキル基であって、これらの基はそれぞれが、1つ以上の第一アミノ基、第二アミノ基、もしくは第三アミノ基で、および/または、ヒドロキシルやカルボニル等の他の官能基で置換されていてもよく;
各X(a、c、d、e、f、g、i、k、およびqの値に応じて一価または二価の場合がある)は独立的に、一般式(III)と(IV)
【化2】

で示される基であって、このとき
R3は、アルキレン基、アルケニル基、フェニレン基、またはシクロアルキレン基であり;
R4とR5はそれぞれ独立的に、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、シリルアルキル基、シリルアリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、シクロアルキルアルキル基、アルキルシクロアルキル基、複素環式基(飽和もしくは不飽和)、フェニル(Ph-)基、フェノキシ(Ph-O-)基、またはPh-(C=O)基であって、これらの基はそれぞれが、1つ以上の第一アミノ基、第二アミノ基、もしくは第三アミノ基で、および/または、ヒドロキシルやカルボニル等の他の官能基で置換されていてもよく、R4とR5はさらに、独立的にR2であってもよく;
R6は、脂環式基、芳香族基、または複素環式基(飽和もしくは不飽和)として分類される閉環炭化水素基を意味する“環式”基であることができ、これらの基はそれぞれが、R3基もしくはR4基でモノ置換、ジ置換、トリ置換、テトラ置換、またはペンタ置換されていてもよく(構造IIIc、IIIe、IVc、およびIveはモノ置換誘導体のみ記載);
Xはさらに、有機基を含有してよく、あるいは有機連結基が、複素環式化合物の場合のようにヘテロ原子(たとえば、O原子、S原子、またはSi原子)を、ならびに官能基(たとえば、カルボニル基やヒドロキシル基)を含んでもよく;
R7は、-Si(R2)-[Si(R2)2-NH-]n-Si(R2)-(式中、nは1以上である)という構造の“環式”であることができ;
Lは、一価または二価(a、b、c、e、g、k、p、およびqの値に依存して)の基であって、X基を示している基のいずれからも独立的に選択することができ、あるいはLは、R2、R3、R5、R4、R6、R7、またはあらゆるポリマー/オリゴマー有機モノラジカルもしくはあらゆるポリマー/オリゴマー有機ジラジカルであることができ;
Zは
【化3】

であって、このとき全てのケイ素原子が、X、R2、R4、またはR5と結合(上図において点線で示されている)を形成していて、少なくとも1つのケイ素原子が1つのXと結合していなければならない〕を有する、請求項1または請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
各R1がエチル基である、請求項1または請求項2に記載の複合体。
【請求項5】
有機ケイ素化合物が、b=1、c=1、およびq=1であり、a、d、e、f、g、i、k、p、およびqが全て独立的に0であり、X基とR2基が請求項3において定義したとおりである、という場合の一般式IIから誘導される式を有する、請求項3に記載の複合体。
【請求項6】
有機ケイ素化合物が、b=1、c>1、e>1、k=1、およびp=1であり、a、d、f、g、i、およびqが全て独立的に0であり、X基とR2基が請求項3において定義したとおりである、という場合の一般式IIから誘導される式を有する、請求項3に記載の複合体。
【請求項7】
有機ケイ素化合物が、a=1およびb=1であり、c、d、e、f、g、i、k、p、およびqが全て独立的に0であり、X基が請求項3において定義したとおりである、という場合の一般式IIから誘導される式を有する、請求項3に記載の複合体。
【請求項8】
有機ケイ素化合物が、請求項5〜7に記載の有機ケイ素化合物の少なくとも2種の有機ケイ素化合物の混合物であることができる、請求項3に記載の複合体。
【請求項9】
有機ケイ素化合物が、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン;3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン;(アミノプロピル)トリメトキシシラン; (アミノプロピル)トリエトキシシラン;(アミノメチル)トリメトキシシラン;(アミノメチル)トリエトキシシラン;(N-シクロヘキシルアミノメチル)トリメトキシシラン;(N-シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン;(N-フェニルアミノメチル)トリメトキシシラン;(N-フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン;(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン;ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン;N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール;2-(トリメトキシシリルエチル)ピリジン;ビス(p-アミノフェノキシ)ジメチルシラン;ビス(p-アミノフェノキシ)ジメチルシラン;ビス(ジメチルアミノ)ジエチルシラン;ウレイドプロピルトリメトキシシラン;ビス(N-メチルベンズアミド)エトキシメチルシラン;オクタメチルシクロテトラシラザン;1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン;アミノ官能化シリコーン油;アミノ官能化シリカゲル;アミノ官能化POSS;アミノ/イミノ官能化POSS;またはこれらの物質の少なくとも2種の混合物;である、請求項3に記載の複合体。
【請求項10】
有機ケイ素化合物がヒドロキシエトキシシラトランである、請求項4に記載の複合体。
【請求項11】
ラジカル重合可能なモノマーまたはオリゴマーの重合のための開始剤としての請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項12】
表面を活性化させるためのプライマーとしての請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合体の使用であって、ここで、表面が低い表面エネルギーを有していて、ポリエチレン、ポリプロピレン、α-オレフィンのコポリマー、フッ素化ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)、および同等以上の表面エネルギーを有する他のポリマーで構成され、当該他のポリマーにおいて、その表面をメチルメタクリレートのホモポリマー、メチルメタクリレートのコポリマー、ポリカーボネート、ポリ(塩化ビニル)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、および同等以上の表面エネルギーを有する他のプラスチックを含む群から選択することができる、前記表面を活性化させるためのプライマーとしての使用。
【請求項13】
前記表面を、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、木材、複合材料、セラミック、ガラス、コンクリート、および金属からなる群から選択することができる、請求項12に記載の複合体の使用。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の少なくとも1種の複合体と、少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーおよび/またはオリゴマーとを含む、重合可能な組成物。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合体、反応性もしくは非反応性の希釈剤、少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーおよび/またはオリゴマー、接触すると複合体から有機ボラン化合物を放出させることができる少なくとも1種の複合体解離剤、ならびに少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーおよび/またはオリゴマーを含む重合可能な組成物、特に重合可能な接着剤組成物。
【請求項16】
一成分組成物の形態をとっている、請求項14〜15のいずれか一項に記載の重合可能な組成物。
【請求項17】
二成分組成物の形態をとっていて、第1の部分が、請求項1〜10のいずれか一項に記載の少なくとも1種の複合体を含み、第2の部分が、接触すると複合体から有機ボラン化合物を放出させることができる少なくとも1種の複合体解離剤、ならびに、少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーおよび/またはオリゴマー、および/または開放時間延長剤を含む、請求項14または15に記載の重合可能な組成物。
【請求項18】
部分1: 請求項1〜10のいずれかに記載のケイ素-アミノ有機ボラン複合体、場合により、連鎖延長剤を、たとえばアジリジン化合物を含む;および
部分2: 場合により、強化物質、たとえばABSを含有してもよいラジカル重合可能な化合物と、少なくとも1種の複合体解離剤、好ましくは多官能アルデヒドと、場合により、少なくとも1種の開放時間延長剤、たとえば好ましくは、4-メチルスチレンや他のアルケニル化合物等の第2のラジカル受容化学種とのブレンド;
を含む前記二部分組成物。
【請求項19】
1種以上の添加物、好ましくは天然のナノクレイもしくはナノオルガノクレイ、好ましくは天然のモンモリロナイトもしくはインターカレーテッド・モンモリロナイトをさらに含有する、請求項13〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
トリメチロールプロパントリス(2-メチル-1-アジリジンプロピオネート)をさらに含有する、請求項13〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
支持体への接着が保持されるよう重合反応熱を統御する少なくとも1種の物質をさらに含む、請求項13〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
複合体の濃度が、組成物の総重量を基準として、0.001〜10.0重量%の、好ましくは0.002〜7.0重量%の、そして最も好ましくは0.003〜5.0重量%のホウ素をもたらすのに充分である、請求項13〜21のいずれか一項に記載のポリマー組成物。

【公表番号】特表2007−510788(P2007−510788A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538855(P2006−538855)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052898
【国際公開番号】WO2005/044867
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(504177804)ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】