説明

重合性エステル化合物、高分子化合物、レジスト材料及びパターン形成方法

【解決手段】一般式(1)で示される重合性エステル化合物。


【効果】重合性エステル単量体は、波長500nm以下、特に波長300nm以下の放射線に対して優れた透明性を有し、現像特性の良好な感放射線レジスト材料のベース樹脂を製造するための単量体として非常に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性材料、医薬・農薬等の原料として有用な重合性エステル化合物に関する。この重合性エステル化合物は、波長500nm以下、特に波長300nm以下の放射線、例えばKrFレーザー光、ArFレーザー光、F2レーザー光に対して優れた透明性を有し、かつ現像特性に優れた感放射線レジスト材料のベース樹脂を製造するための重合体(ポリマー)の原料単量体として非常に有用である。
更に、本発明は、この重合性エステル化合物に由来する繰り返し単位を有する重合体(高分子化合物)、この高分子化合物を含むフォトレジスト材料、及びこのフォトレジスト材料を用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められているなか、0.3μm以下の超微細加工に不可欠な技術として遠紫外線リソグラフィーが開発され、中でもKrFエキシマレーザー光を用いた技術に関してはすでに工業的生産方法として完全に認知されている。
【0003】
更に波長193nmのArFエキシマレーザー光を光源としたフォトリソグラフィーで用いられる化学増幅型レジスト材料に対しては、該波長における高い透明性を確保することは当然として、薄膜化に対応できる高いエッチング耐性、高価な光学系材料に負担をかけない高い感度、そして何よりも、微細なパターンを正確に形成できる高い解像性能を併せ持つことが求められている。これらの要求を満たすためには、高透明性、高剛直性かつ高反応性のベース樹脂の開発が必要であり、これまで盛んにその開発が行われてきた。
【0004】
ArFエキシマレーザー光に対する高透明性樹脂としては、例えばアクリル酸又はメタクリル酸誘導体の共重合体(例えば、特許文献1:特開平4−39665号公報参照)が知られている。
【0005】
(メタ)アクリル樹脂としては、特許文献2:特開平9−90637号公報に挙げられる酸不安定基ユニットとしてメチルアダマンタンエステルを持つ(メタ)アクリルと密着性基ユニットとしてラクトン環のエステルを持つ(メタ)アクリルとの組み合わせが提案されている。また、特許文献3:特開2000−327633号公報にはエキソ体を有する酸不安定基が紹介されている。このものは、酸脱離性が高く、酸脱離における活性化エネルギーが低いために、高い解像性と低いポストエクスポージャーベーク(PEB)依存性を得ることができる。更に、エッチング耐性を強化させた密着性基として、特許文献4,5:特開2000−26446号公報、特開2000−159758号公報に挙げられるノルボルナンラクトンが提案されている。これらの検討により、ArFレジストの解像性が大幅に向上してきた。
【0006】
しかしながら、ピッチが200nmを下回るような微細なパターンを形成しようとする場合、従来の材料系ではパターン形成そのものが難しいだけでなく、パターンの矩形性が不十分であり、またパターンの表面や側壁の荒れも大きく、実用に足る水準にあるとは言い難い。従来の材料が抱える問題のうち特に深刻なものは微細なライン寸法の不均一さ(ラインエッジラフネス)であり、製造する半導体デバイスの性能に多大な影響を及ぼすため、その解決が強く求められている。単にパターンを滑らかに仕上げるだけならば、使用する樹脂の分子量を低めに設定したり、光酸発生剤から生じる酸を動き易いものにすることである程度目的は達せられるが、その際は露光量依存性、疎密依存性、マスク忠実性といった特性が極端に悪化するだけでなく、マスクの微細なゆらぎが拡大されるためにライン寸法自体もかえって不均一となり、ラインエッジラフネスの低減には結びつかない。ArFエキシマレーザーリソグラフィーの更なる微細化、及び液浸露光プロセスを駆使した高解像化に対応すべく、解像性の劣化を伴わない、根本的なラインエッジラフネスの改善策が必要とされているのである。
【0007】
【特許文献1】特開平4−39665号公報
【特許文献2】特開平9−90637号公報
【特許文献3】特開2000−327633号公報
【特許文献4】特開2000−26446号公報
【特許文献5】特開2000−159758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ArFエキシマレーザー光等の高エネルギー線を光源としたフォトリソグラフィー、特に液浸リソグラフィーにおいて、高解像性かつパターンエッジラフネスを低減したレジスト材料のベース樹脂用の単量体として有用な重合性エステル化合物、そのエステル化合物を単量体として含む高分子化合物、その高分子化合物をベース樹脂として含有するレジスト材料及びこのレジスト材料を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で示される重合性エステル化合物が高収率かつ簡便に得られること、更に、このエステル化合物を繰り返し単位として導入した高分子化合物をベース樹脂として用いたレジスト材料が、露光量依存性、疎密依存性、マスク忠実性といった諸特性に優れると同時にパターンエッジラフネスを低減したものであり、この高分子化合物がレジスト材料、特に化学増幅ポジ型レジスト材料として精密な微細加工に極めて有効であることを知見するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の重合性エステル化合物、高分子化合物、レジスト材料及びパターン形成方法を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)で示される重合性エステル化合物。
【化1】

(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2は酸不安定基を示す。Aaは、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示し、2価炭化水素基を構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。k1は0又は1である。)
請求項2:
下記一般式(2)で示される重合性エステル化合物。
【化2】

(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R3は水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R4は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、1価炭化水素基を構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。)
請求項3:
下記一般式(2a)、(2b)で示されるいずれかの繰り返し単位を含有することを特徴とする高分子化合物。
【化3】

(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2は酸不安定基を示す。R3は水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R4は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、1価炭化水素基を構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。Aaは、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示し、2価炭化水素基を構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。k1は0又は1である。)
請求項4:
更に、下記一般式(2A)〜(2D)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の高分子化合物。
【化4】

(式中、R1Aは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。XAは酸不安定基を示す。XB、XCはそれぞれ独立に単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状の2価の炭化水素基を示す。YAはラクトン又はスルトン構造を有する置換基を示す。ZAは水素原子、又は炭素数1〜15のフルオロアルキル基又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基を示す。k1Aは1〜3の整数を示す。)
請求項5:
更に、下記一般式(d1)〜(d3)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項3又は4に記載の高分子化合物。
【化5】

(式中、R20、R24、R28は水素原子又はメチル基、R21は単結合、フェニレン基、−O−R33−、又は−C(=O)−Y−R33−である。Yは酸素原子又はNH、R33は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R22、R23、R25、R26、R27、R29、R30、R31は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Z0は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R32−、又は−C(=O)−Z1−R32−である。Z1は酸素原子又はNH、R32は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M-は非求核性対向イオンを表す。)
請求項6:
請求項3、4又は5に記載の高分子化合物を含むベース樹脂、酸発生剤及び有機溶剤を含有することを特徴とするレジスト材料。
請求項7:
請求項5に記載の高分子化合物を含むベース樹脂、及び有機溶剤を含有することを特徴とするレジスト材料。
請求項8:
請求項6又は7に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して高エネルギー線もしくは電子線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項9:
請求項6又は7に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して高エネルギー線もしくは電子線で露光する工程と、加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法であって、屈折率1.0以上の高屈折率液体をレジスト塗布膜と投影レンズとの間に介在させて液浸露光を行うことを特徴とするパターン形成方法。
請求項10:
請求項6又は7に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して高エネルギー線もしくは電子線で露光する工程と、加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法であって、レジスト塗布膜の上に更に保護膜を塗布し、屈折率1.0以上の高屈折率液体を該保護膜と投影レンズとの間に介在させて液浸露光を行うことを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の重合性エステル単量体は、機能性材料、医薬・農薬等の原料として有用であり、中でも波長500nm以下、特に波長300nm以下の放射線に対して優れた透明性を有し、現像特性の良好な感放射線レジスト材料のベース樹脂を製造するための単量体として非常に有用である。また、本発明の高分子化合物を感放射線レジスト材料のベース樹脂として用いた場合、露光量依存性、疎密依存性、マスク忠実性といった諸特性に優れると同時にパターンエッジラフネスを低減し、この高分子化合物はレジスト材料、特に化学増幅ポジ型レジスト材料のベース樹脂として精密な微細加工に極めて有効である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下の化学式において、化学構造上、エナンチオ異性体(Enantiomer)あるいはジアステレオ異性体(Diastereomer)が存在し得るものが多数あるが、特に記載がない限り、いずれの場合も各化学式はこれらの立体異性体のすべてを代表して表すものとする。また、これらの立体異性体は、単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0013】
本発明の第一の重合性エステル化合物は、下記一般式(1)で示されるものである。
【化6】

(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2は酸不安定基を示す。Aaは、炭素数1〜10、好ましくは1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基等の2価炭化水素基を示し、2価炭化水素基を構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。k1は0又は1である。)
【0014】
2の酸不安定基としては、アルコール性水酸基の保護基を種々用いることができるが、具体的には下記一般式(R1−1)、(R1−2)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜5のトリアルキルシリル基、炭素数4〜15のオキソアルキル基、炭素数1〜10のアシル基等を挙げることができる。
【0015】
【化7】

【0016】
ここで、破線は結合手を示す(以下、同様)。式中、RL01、RL02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等が例示できる。RL03は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には下記の置換アルキル基等が例示できる。
【0017】
【化8】

【0018】
L01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するRL01、RL02、RL03はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0019】
L04は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(R1−1)で示される基を示す。
【0020】
上記R2あるいはRL04の三級アルキル基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示でき、トリアルキルシリル基としては、具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基としては、具体的には3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示でき、アシル基としては、具体的にはフォルミル、アセチル、エチルカルボニル、ピバロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル等を例示できる。yは0〜6の整数である。
【0021】
上記式(R1−1)で示される保護基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化9】

【0022】
【化10】

【0023】
上記式(R1−1)で示される保護基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0024】
上記式(R1−2)の保護基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0025】
Aaの炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基として、具体的には下記の基が例示できる。
【化11】

【0026】
本発明の第二の重合性エステル化合物は、下記一般式(2)で示されるものである。
【化12】

(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R3は水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R4は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、1価炭化水素基を構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。)
【0027】
3、R4の炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基として、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、オキサノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基等のアルキル基を例示できる。
【0028】
上記一般式(1)及び(2)で示される化合物として、具体的には下記のものを例示できる。
【化13】

(式中、R1は上記と同様である。)
【0029】
【化14】

(式中、R1は上記と同様である。)
【0030】
【化15】

(式中、R1は上記と同様である。)
【0031】
【化16】

(式中、R1は上記と同様である。)
【0032】
【化17】

(式中、R1は上記と同様である。)
【0033】
【化18】

(式中、R1は上記と同様である。)
【0034】
【化19】

(式中、R1は上記と同様である。)
【0035】
【化20】

(式中、R1は上記と同様である。)
【0036】
【化21】

(式中、R1は上記と同様である。)
【0037】
本発明の上記一般式(1)で示される重合性エステル化合物は、例えば、下記反応式に示したスキームi)〜iv)により得ることができるが、これに限定されるものではない。
【化22】

(式中、R1、R2、Aa及びk1は上記と同様である。R5はハロゲン原子、水酸基又は−OR6を示す。R6はメチル基、エチル基又は下記式(8)
【化23】

を示す。T3はハロゲン原子を示す。)
【0038】
ステップi)は、ジオール化合物(3)と保護化剤(4)との反応によりアルコール化合物(5)へ導く工程である。
用いられるジオール化合物(3)として、具体的にはイソソルビド、イソマンニド又はイソイディッドなどを用いることができるが、このうち、供給安定性及びコスト面でイソソルビドが特に好ましい。
3のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を例示できる。このうち取り扱いの容易さから、塩素原子が最も好ましい。
【0039】
反応は公知の方法により容易に進行するが、上記式(5)中のR2が、下記式(9)の場合、即ち保護化剤(4)が下記式(10)である場合は、
【化24】

(式中は、R3、R4及びT3は上記の同様である。)
例えば、無溶媒あるいは溶媒中、ジオール化合物(3)、保護化剤(10)、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。
保護化剤(10)の使用量は、ジオール化合物(3)1モルに対し0.5〜10モル、特に1.0〜3.0モルとすることが好ましい。0.5モル未満の使用では原料が大量に残存するため収率が大幅に低下する場合があり、10モルを超える使用では使用原料費の増加、釜収率の低下などによりコスト面で不利となる場合がある。
【0040】
用いられる溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、2−ブタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトニトリルなどのニトリル類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒;水から選択して単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。反応には、触媒として、硫酸水素テトラブチルアンモニウムなどの相関移動触媒を添加してもよい。その場合の相関移動触媒の添加量は原料であるジオール化合物(3)1モルに対し0.0001〜1.0モル、特に0.001〜0.5モルとすることが好ましい。0.0001モル未満の使用では添加効果が得られない場合があり、1.0モルを超える使用では原料費の増加によりコスト面で不利となる場合がある。
【0041】
上記反応の反応時間は収率向上のため薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどにより反応の進行を追跡して決定することが好ましいが、通常30分〜40時間程度である。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)によりアルコール化合物(5)を得ることができ、必要があれば蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0042】
ステップii)は、エステル化剤(6)とアルコール化合物(5)との反応により本発明の重合性エステル化合物(1)へ導く工程である。
反応は公知の方法により容易に進行するが、エステル化剤(6)としては、酸クロリド{式(6)において、R5が塩素原子の場合}又はカルボン酸無水物{式(6)において、R5が−OR6で、R6が下記式(8)の場合}
【化25】

が好ましい。酸クロリドを用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、アルコール化合物(5)、メタクリル酸クロリド、メタクリロイルオキシ酢酸クロリド等の対応する酸クロリド、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。また、カルボン酸無水物を用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、アルコール化合物(5)とメタクリル酸無水物、メタクリロイルオキシ酢酸無水物等の対応するカルボン酸無水物、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。
【0043】
ステップiii)は、エステル化剤(6)とアルコール化合物(3)との反応によりエステル化合物(7)へ導く工程である。
反応は公知の方法により容易に進行するが、エステル化剤(6)としては、酸クロリド{式(6)において、R5が塩素原子の場合}又はカルボン酸{式(6)において、R5が水酸基の場合}が好ましい。酸クロリドを用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の溶媒中、アルコール化合物(3)と、メタクリル酸クロリド、メタクリロイルオキシ酢酸クロリド等の対応する酸クロリド、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。また、カルボン酸を用いる場合は、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、アルコール化合物(3)とメタクリル酸、メタクリロイルオキシ酢酸等の対応するカルボン酸を酸触媒の存在下加熱し、必要に応じて生じる水を系外に除くなどして行うのがよい。用いる酸触媒としては例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸等が挙げられる。
【0044】
ステップiv)は、エステル化合物(7)と保護化剤(4)との反応により本発明の重合性エステル化合物(1)へ導く工程である。
3のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を例示できる。このうち取り扱いの容易さから、塩素原子が最も好ましい。
反応は公知の方法により容易に進行するが、上記式(1)中のR2が、下記式(9)の場合、即ち保護化剤(4)が下記式(10)である場合は、
【化26】

(式中は、R3、R4及びT3は上記の同様である。)
例えば、無溶媒あるいは溶媒中、エステル化合物(7)、保護化剤(10)、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。
保護化剤(10)の使用量は、エステル化合物(7)1モルに対し0.5〜10モル、特に1.0〜3.0モルとすることが好ましい。0.5モル未満の使用では原料が大量に残存するため収率が大幅に低下する場合があり、10モルを超える使用では使用原料費の増加、釜収率の低下などによりコスト面で不利となる場合がある。
【0045】
用いられる溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、2−ブタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトニトリルなどのニトリル類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒;水から選択して単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。反応には、触媒として、硫酸水素テトラブチルアンモニウムなどの相関移動触媒を添加してもよい。その場合の相関移動触媒の添加量は原料であるエステル化合物(7)1モルに対し0.0001〜1.0モル、特に0.001〜0.5モルとすることが好ましい。0.0001モル未満の使用では添加効果が得られない場合があり、1.0モルを超える使用では原料費の増加によりコスト面で不利となる場合がある。
【0046】
上記反応の反応時間は収率向上のため薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどにより反応の進行を追跡して決定することが好ましいが、通常30分〜40時間程度である。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)によりアルコール化合物(5)を得ることができ、必要があれば蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0047】
本発明の高分子化合物は、一般式(1)又は(2)で示される重合性エステル化合物から得られる繰り返し単位を含有することを特徴とする高分子化合物である。
【0048】
一般式(1)及び(2)で示される重合性エステル化合物から得られる繰り返し単位として、具体的には下記一般式(2a)及び(2b)を挙げることができる。
【化27】

(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2は酸不安定基を示す。R3は水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R4は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、1価炭化水素基を構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。Aaは、炭素数1〜10、好ましくは1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示し、2価炭化水素基を構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。k1は0又は1である。)
【0049】
また、本発明の高分子化合物は、上記一般式(2a)、(2b)で示される化合物の繰り返し単位に加え、更に下記一般式(2A)〜(2D)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することが好ましい。
【化28】

(式中、R1Aは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。XAは酸不安定基を示す。XB、XCはそれぞれ独立に単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状の2価の炭化水素基を示す。YAはラクトン又はスルトン構造を有する置換基を示す。ZAは水素原子、又は炭素数1〜15のフルオロアルキル基又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基を示す。k1Aは1〜3の整数を示す。)
【0050】
上記一般式(2A)で示される繰り返し単位を含有する重合体は、酸の作用で分解してカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる重合体を与える。酸不安定基XAとしては種々用いることができるが、具体的には、下記一般式(L1)〜(L4)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【化29】

(式中、RL01及びRL02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。RL03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができる。RL04は炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(L1)で示される基を示す。RL05は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。RL06は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基である。RL07〜RL16はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の1価の非置換又は置換炭化水素基を示す。yは0〜6の整数である。mは0又は1、nは0〜3の整数であり、2m+n=2又は3である。なお、破線は結合手を示す。)
【0051】
式(L1)において、RL01及びRL02の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、アダマンチル基等が例示できる。
【0052】
L03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては上記RL01、RL02と同様のものが例示でき、置換アルキル基としては下記の基等が例示できる。
【0053】
【化30】

【0054】
L01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するRL01、RL02、RL03はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0055】
式(L2)において、RL04の三級アルキル基の具体例としては、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示できる。また、トリアルキルシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基の具体例としては、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。
【0056】
式(L3)において、RL05の炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの、又はこれらのメチレン基の一部が酸素原子又は硫黄原子に置換されたもの等が例示できる。また、炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。
【0057】
式(L4)において、RL06の炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基の具体例としては、RL05と同様のもの等が例示できる。
【0058】
L07〜RL16において、炭素数1〜15の1価炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。
【0059】
L07〜RL16は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく(例えば、RL07とRL08、RL07とRL09、RL08とRL10、RL09とRL10、RL11とRL12、RL13とRL14等)、その場合には環の形成に関与する基は炭素数1〜15のアルキレン基等の2価の炭化水素基を示し、具体的には上記1価炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL07〜RL16は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、RL07とRL09、RL09とRL15、RL13とRL15等)。
【0060】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化31】

【0061】
【化32】

【0062】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0063】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0064】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル、1−エチルシクロペンチル、1−n−プロピルシクロペンチル、1−イソプロピルシクロペンチル、1−n−ブチルシクロペンチル、1−sec−ブチルシクロペンチル、1−シクロヘキシルシクロペンチル、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル、1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−(7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−エチルシクロヘキシル、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル等が例示できる。
【0065】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化33】

(式中、RL41はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基を示す。破線は結合位置及び結合方向を示す。)
【0066】
上記式(L4−1)〜(L4−4)中、RL41の1価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
【0067】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在しえるが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0068】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)と(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化34】

(式中、RL41は前述と同様である。)
【0069】
また、上記一般式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化35】

(式中、RL41は前述と同様である。)
【0070】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
【0071】
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する三級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50%以上であることが好ましく、exo比率が80%以上であることが更に好ましい。
【0072】
【化36】

(式中、RL41は前述と同様である。)
【0073】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化37】

【0074】
また、炭素数4〜20の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基としては、具体的にはRL04で挙げたものと同様のもの等が例示できる。
【0075】
上記一般式(2A)で表される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【0076】
【化38】

【0077】
【化39】

【0078】
【化40】

【0079】
【化41】

【0080】
【化42】

【0081】
【化43】

【0082】
【化44】

【0083】
【化45】

【0084】
前記一般式(2B)で表される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化46】

【0085】
【化47】

【0086】
前記一般式(2C)で表される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化48】

【0087】
【化49】

【0088】
【化50】

【0089】
【化51】

【0090】
【化52】

(式中、Meはメチル基を示す。)
【0091】
前記一般式(2D)で表される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化53】

【0092】
【化54】

【0093】
更に、本発明の高分子化合物には、下記一般式で示されるスルホニウム塩(d1)〜(d3)のいずれかを共重合することもできる。
【化55】

(式中、R20、R24、R28は水素原子又はメチル基、R21は単結合、フェニレン基、−O−R33−、又は−C(=O)−Y−R33−である。Yは酸素原子又はNH、R33は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R22、R23、R25、R26、R27、R29、R30、R31は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Z0は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R32−、又は−C(=O)−Z1−R32−である。Z1は酸素原子又はNH、R32は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M-は非求核性対向イオンを表す。)
【0094】
更に本発明の高分子化合物は、上記以外に、炭素−炭素二重結合を含有する単量体から得られる繰り返し単位、例えば、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.177,10]ドデセン誘導体などの環状オレフィン類、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0095】
なお、本発明の高分子化合物の重量平均分子量はポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した場合(溶媒;テトラヒドロフラン)、1,000〜500,000、好ましくは3,000〜100,000である。この範囲を外れると、エッチング耐性が極端に低下したり、露光前後の溶解速度差が確保できなくなって解像性が低下したりすることがある。
【0096】
本発明の高分子化合物において、各単量体から得られる各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば以下に示す範囲(モル%)とすることができるが、これに限定されるものではない。
(I)上記式(1)及び(2)の単量体に基づく式(2a)及び(2b)で示される構成単位の1種又は2種以上を0モル%を超え100モル%、好ましくは5〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%含有し、
(II)上記式(2A)〜(2D)で示される構成単位の1種又は2種以上を0モル%以上、100モル%未満、好ましくは30〜95モル%、より好ましくは50〜90モル%含有し、必要に応じ、
(III)上記式(d1)〜(d3)で示される構成単位の1種又は2種以上を0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜10モル%含有し、更に必要に応じ、
(IV)その他の単量体に基づく構成単位の1種又は2種以上を0〜80モル%、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは0〜50モル%含有することができる。
【0097】
本発明の高分子化合物の製造は、上記一般式(1)及び/又は(2)で示される化合物を第1の単量体に、重合性二重結合を含有する化合物を第2以降の単量体に用いた共重合反応により行う。
【0098】
本発明の高分子化合物を製造する共重合反応は種々例示することができるが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合又は配位重合である。
【0099】
ラジカル重合反応の反応条件は、(ア)溶剤としてベンゼン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エタノール等のアルコール類、又はメチルイソブチルケトン等のケトン類を用い、(イ)重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、又は過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物を用い、(ウ)反応温度を0〜100℃程度に保ち、(エ)反応時間を0.5〜48時間程度とするのが好ましいが、この範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0100】
アニオン重合反応の反応条件は、(ア)溶剤としてベンゼン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、又は液体アンモニアを用い、(イ)重合開始剤としてナトリウム、カリウム等の金属、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム等のアルキル金属、ケチル、又はグリニャール反応剤を用い、(ウ)反応温度を−78℃〜0℃程度に保ち、(エ)反応時間を0.5〜48時間程度とし、(オ)停止剤としてメタノール等のプロトン供与性化合物、ヨウ化メチル等のハロゲン化物、その他求電子性物質を用いるのが好ましいが、この範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0101】
配位重合の反応条件は、(ア)溶剤としてn−ヘプタン、トルエン等の炭化水素類を用い、(イ)触媒としてチタン等の遷移金属とアルキルアルミニウムからなるチーグラー−ナッタ触媒、クロム及びニッケル化合物を金属酸化物に担持したフィリップス触媒、タングステン及びレニウム混合触媒に代表されるオレフィン−メタセシス混合触媒等を用い、(ウ)反応温度を0〜100℃程度に保ち、(エ)反応時間を0.5〜48時間程度とするのが好ましいが、この範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0102】
[レジスト材料]
本発明の高分子化合物は、レジスト材料、特に化学増幅ポジ型レジスト材料のベースポリマーとして好適に用いられ、本発明は上記高分子化合物を含有するレジスト材料、とりわけ化学増幅ポジ型レジスト材料を提供する。この場合、レジスト材料としては、
(A)ベース樹脂として上記高分子化合物、
(B)酸発生剤、
(C)有機溶剤
必要により、
(D)含窒素有機化合物、
(E)界面活性剤
を含有するものが好ましい。
なお、上記高分子化合物が上記繰り返し単位(d1)〜(d3)のいずれかを有する場合、(B)酸発生剤の配合を省略し得る。
【0103】
上記(A)成分のベース樹脂として、本発明の高分子化合物以外に、必要に応じて他の、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増加する樹脂を加えてもよい。例としては、i)ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ii)ノルボルネン誘導体−無水マレイン酸の共重合体、iii)開環メタセシス重合体の水素添加物、iv)ビニルエーテル−無水マレイン酸−(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体などを挙げることができるがこれに限定されない。
【0104】
このうち、開環メタセシス重合体の水素添加物の合成法は特開2003−66612号公報の実施例に具体的な記載がある。また、具体例としては以下の繰り返し単位を有するものを挙げることができるがこれに限定されない。
【0105】
【化56】

【0106】
【化57】

【0107】
本発明の高分子化合物と別の高分子化合物との配合比率は、100:0〜10:90、特に100:0〜20:80の質量比の範囲内にあることが好ましい。本発明の高分子化合物の配合比がこれより少ないと、レジスト材料として好ましい性能が得られないことがある。上記の配合比率を適宜変えることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0108】
なお、上記高分子化合物は1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種の高分子化合物を用いることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0109】
本発明で使用される(B)成分の酸発生剤として光酸発生剤を添加する場合は、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでもかまわない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等が挙げられ、その具体例としては、特開2009−269953号公報の段落[0151]〜[0156]に記載されている。
【0110】
中でも、より好ましく用いられるものは、下記一般式(B)−1で示される酸発生剤である。
【化58】

(式中、R405、R406、R407はそれぞれ独立に水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基、特にアルキル基又はアルコキシ基を示す。R408はヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【0111】
405、R406、R407のヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、エチルシクロペンチル基、ブチルシクロペンチル基、エチルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、エチルアダマンチル基、ブチルアダマンチル基、及びこれらの基の任意の炭素−炭素結合間に−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−等のヘテロ原子団が挿入された基、任意の水素原子が−OH、−NH2、−CHO、−CO2H等の官能基に置換された基を例示することができる。R408はヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
【化59】

【0113】
(B)−1で示される酸発生剤の具体例としては、以下のものが例示できるが、これに限定はされない。
【化60】

【0114】
【化61】

【0115】
なお、光酸発生剤を2種以上混合して用い、一方の光酸発生剤がいわゆる弱酸を発生するオニウム塩である場合、酸拡散制御の機能を持たせることもできる。即ち、強酸(例えばフッ素置換されたスルホン酸)を発生する光酸発生剤と弱酸(例えばフッ素置換されていないスルホン酸もしくはカルボン酸)を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、高エネルギー線照射により光酸発生剤から生じた強酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0116】
ここで強酸を発生する光酸発生剤がオニウム塩である場合には上記のように高エネルギー線照射により生じた強酸が弱酸に交換することはできるが、高エネルギー線照射により生じた弱酸は未反応の強酸を発生するオニウム塩と衝突して塩交換を行うことはできない。これらはオニウムカチオンがより強酸のアニオンとイオン対を形成し易いとの現象に起因する。
【0117】
光酸発生剤の添加量は、レジスト材料中のベース樹脂(A)100質量部に対して0.1〜40質量部、好ましくは0.1〜20質量部である。光酸発生剤が40質量部以下であれば、レジスト膜の透過率が十分大きく、解像性能の劣化が起こるおそれが少ない。上記光酸発生剤は、単独でも2種以上混合して用いることもできる。更に露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0118】
また、本発明のレジスト材料に、酸により分解し酸を発生する化合物(酸増殖化合物)を添加してもよい。これらの化合物についてはJ. Photopolym. Sci. and Tech., 8. 43−44, 45−46 (1995)、J. Photopolym. Sci. and Tech., 9. 29−30 (1996)において記載されている。
【0119】
酸増殖化合物の例としては、tert−ブチル2−メチル2−トシロキシメチルアセトアセテート、2−フェニル2−(2−トシロキシエチル)1,3−ジオキソラン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。公知の光酸発生剤の中で安定性、特に熱安定性に劣る化合物は酸増殖化合物的な性質を示す場合が多い。
【0120】
本発明のレジスト材料における酸増殖化合物の添加量としては、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対して2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。添加量が多すぎる場合は拡散の制御が難しく解像性の劣化、パターン形状の劣化が起こる。
【0121】
本発明で使用される(C)成分の有機溶剤としては、ベース樹脂、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明では、これらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0122】
有機溶剤の使用量は、ベース樹脂100質量部に対して200〜1,000質量部、特に400〜800質量部が好適である。
【0123】
更に、本発明のレジスト材料には、(D)成分として含窒素有機化合物を1種又は2種以上配合することができる。
含窒素有機化合物は、光酸発生剤より発生する酸などがレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適しており、このようなクエンチャーの配合により、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上させることができる。
含窒素有機化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が挙げられ、その具体例としては、特開2009−269953号公報の段落[0122]〜[0141]に記載されている。
【0124】
なお、配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0.001〜8質量部、特に0.01〜4質量部が好ましい。配合量が0.001質量部より少ないと配合効果がなく、8質量部を超えると感度が低下しすぎる場合がある。含窒素有機化合物としては、酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適している。含窒素有機化合物の配合により、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上することができる。
【0125】
ここで、界面活性剤としては非イオン性のものが好ましく、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルEO付加物、含フッ素オルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。例えばフロラード「FC−430」、「FC−431」(いずれも住友スリーエム(株)製)、サーフロン「S−141」、「S−145」、「KH−10」、「KH−20」、「KH−30」、「KH−40」(いずれも旭硝子(株)製)、ユニダイン「DS−401」、「DS−403」、「DS−451」(いずれもダイキン工業(株)製)、メガファック「F−8151」(大日本インキ工業(株)製)、「X−70−092」、「X−70−093」(いずれも信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。好ましくは、フロラード「FC−430」(住友スリーエム(株)製)、「KH−20」、「KH−30」(いずれも旭硝子(株)製)、「X−70−093」(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0126】
本発明のレジスト材料には、上記成分以外に任意成分として、塗布膜上部に偏在し、表面の親水性・疎水性バランスを調整したり、撥水性を高めたり、あるいは塗布膜が水やその他の液体と触れた際に低分子成分の流出や流入を妨げる機能を有する高分子化合物を添加してもよい。なお、該高分子化合物の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができるが、好ましくはベース樹脂100質量部に対して15質量部以下、特に10質量部以下である。
【0127】
ここで、塗布膜上部に偏在する高分子化合物としては、1種又は2種以上のフッ素含有単位からなる重合体、共重合体、及びフッ素含有単位とその他の単位からなる共重合体が好ましい。フッ素含有単位及びその他の単位としては具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
【化62】

【0129】
【化63】

【0130】
上記塗布膜上部に偏在する高分子化合物の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜50,000、より好ましくは2,000〜20,000である。この範囲から外れる場合は、表面改質効果が十分でなかったり、現像欠陥を生じたりすることがある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値を示す。
【0131】
本発明のレジスト材料の基本的構成成分は、上記の重合体、酸発生剤、有機溶剤及び含窒素有機化合物であるが、上記成分以外に任意成分として必要に応じて更に、溶解阻止剤、酸性化合物、安定剤、色素などの他の成分を添加してもよい。なお、任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0132】
本発明のレジスト材料を使用したパターン形成は公知のリソグラフィー技術を利用して行うことができ、塗布、加熱処理(プリベーク)、露光、加熱処理(ポストエクスポージャーベーク、PEB)、現像の各工程を経て達成される。必要に応じて、更にいくつかの工程を追加してもよい。
【0133】
パターン形成を行う際には、まず本発明のレジスト材料を集積回路製造用の基板(Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜、Cr、CrO、CrON、MoSi等)上にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により塗布膜厚が0.01〜2.0μmとなるように塗布し、ホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークする。
【0134】
レジスト膜の薄膜化と共に被加工基板のエッチング選択比の関係から加工が厳しくなっており、レジスト膜の下層に珪素含有中間膜、その下に炭素密度が高くエッチング耐性が高い下層膜、その下に被加工基板を積層する3層プロセスが検討されている。酸素ガスや水素ガス、アンモニアガスなどを用いる珪素含有中間膜と下層膜とのエッチング選択比は高く、珪素含有中間膜は薄膜化が可能である。単層レジストと珪素含有中間層のエッチング選択比も比較的高く、単層レジストの薄膜化が可能となるのである。この場合、下層膜の形成方法としては塗布とベークによる方法とCVDによる方法とが挙げられる。塗布型の場合は、ノボラック樹脂や縮合環などを有するオレフィンを重合した樹脂が用いられ、CVD膜作製にはブタン、エタン、プロパン、エチレン、アセチレン等のガスが用いられる。珪素含有中間層の場合も塗布型とCVD型が挙げられ、塗布型としてはシルセスキオキサン、かご状オリゴシルセスキオキサン(POSS)等が挙げられ、CVD用としては各種シランガスが原料として挙げられる。珪素含有中間層は光吸収を持った反射防止機能を有していてもよく、フェニル基などの吸光基や、SiON膜であってもよい。珪素含有中間膜とフォトレジストの間に有機膜を形成してもよく、この場合の有機膜は有機反射防止膜であってもよい。フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤などの抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、保護膜を塗布してもよい。
【0135】
次いで、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線等から選ばれる光源を用い、目的のパターンを形成するための所定のマスクを通して露光を行う。露光量は1〜200mJ/cm2程度が好ましく、特に10〜100mJ/cm2程度がより好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜120℃、1〜3分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法を用いて現像することにより、基板上に目的のパターンが形成される。なお、本発明のレジスト材料は、好ましくは波長254〜193nmの遠紫外線、波長157nmの真空紫外線、電子線、軟X線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線、より好ましくは波長180〜200nmの範囲の高エネルギー線による微細パターンニングに最適である。
【0136】
また、本発明のレジスト材料は、液浸リソグラフィーに適用することも可能である。ArF液浸リソグラフィーにおいては液浸溶媒として純水、又はアルカンなどの屈折率が1以上で露光波長に高透明の液体が用いられる。液浸リソグラフィーでは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に、純水やその他の液体を挿入する。これによってNAが1.0以上のレンズ設計が可能となり、より微細なパターン形成が可能になる。液浸リソグラフィーはArFリソグラフィーを45nmノードまで延命させるための重要な技術であり、開発が加速されている。液浸露光の場合は、レジスト膜上に残った水滴残りを除去するための露光後の純水リンス(ポストソーク)を行ってもよいし、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜を形成させてもよい。
【0137】
液浸リソグラフィーに用いられるレジスト保護膜としては、例えば、水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶媒に溶解させた材料が好ましい。
【0138】
更に、ArFリソグラフィーの32nmまでの延命技術として、ダブルパターニング法が挙げられる。ダブルパターニング法としては、1回目の露光とエッチングで1:3トレンチパターンの下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3トレンチパターンを形成して1:1のパターンを形成するトレンチ法、1回目の露光とエッチングで1:3孤立残しパターンの第1の下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3孤立残しパターンを第1の下地の下に形成された第2の下地を加工してピッチが半分の1:1のパターンを形成するライン法が挙げられる。
【実施例】
【0139】
以下、合成例及び実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記式中、Meはメチル基を示す。
【0140】
[合成例1]
本発明の重合性エステル化合物を以下に示す処方で合成した。
[合成例1−1]モノマー1の合成
【化64】

【0141】
[合成例1−1−1]原料アルコール1の合成
イソソルビド103g、N,N−ジイソプロピルエチルアミン91g、アセトニトリル36g、THF40gを混合して40℃に加熱し、メトキシメチルクロリド14.2gを滴下した。40℃にて10時間撹拌後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応を停止した。通常の水系後処理の後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、原料アルコール1を51g得た(収率89%)。
なお、精製後の異性体混合比は、メジャー異性体(上記式):マイナー異性体=58モル%:42モル%であった。
【0142】
[合成例1−1−2]モノマー1の合成
得られた原料アルコール1の13.8g、ピリジン9.2g、4−(ジメチルアミノ)ピリジン0.88gをトルエン350mLに溶解し、50℃〜60℃にてメタクリル酸無水物12.8gを滴下した。60℃で一昼夜撹拌後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応を停止した。通常の水系後処理(aqueous work−up)、溶媒留去の後、蒸留精製を行い、モノマー1を17.9g(収率96%)得た。
なお、精製後の異性体混合比は、メジャー異性体(上記式):マイナー異性体=57モル%:43モル%であった。
沸点:100−102℃/14Pa。
IR(D−ATR):ν=2953、2888、1721、1637、1454、1403、1379、1316、1297、1163、1103、1040、917cm-1
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6、メジャー異性体のみ記載):δ=6.03(1H、s)、5.70(1H、m)、5.06(1H、d)、4.59−4.66(3H、m)、4.46(1H、d)、4.12−4.18(1H、m)、3.65−3.93(3H)、3.48(1H、t)、3.25(2H、s)、1.87(3H、m)ppm。
【0143】
[合成例1−2]モノマー2の合成
メタクリル酸無水物の代わりにアクリル酸無水物を使用した以外は合成例1−1−1、1−1−2と同様な方法でモノマー2を得た(二工程収率62%)。
【0144】
[合成例1−3]モノマー3の合成
メタクリル酸無水物の代わりにα−トリフルオロメチルアクリル酸無水物を使用した以外は合成例1−1−1、1−1−2と同様な方法でモノマー3を得た(二工程収率51%)。
【0145】
[合成例1−4]モノマー4の合成
【化65】

【0146】
[合成例1−4−1]原料アルコール2の合成
メトキシメチルクロリドの代わりに保護化剤1を使用した以外は合成例1−1−1と同様な方法で原料アルコール2を得た(収率82%)。
【0147】
[合成例1−4−2]モノマー4の合成
原料アルコール1の代わりに原料アルコール2を使用した以外は合成例1−1−2と同様な方法でモノマー4を得た(収率97%)。
なお、精製後の異性体混合比は、メジャー異性体(上記式):マイナー異性体=54モル%:46モル%であった。
沸点:122−124℃/15Pa。
IR(D−ATR):ν=2955、2870、1722、1637、1480、1466、1398、1363、1316、1298、1166、1108、1067、1045、939cm-1
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6、メジャー異性体のみ記載):δ=6.00(1H、s)、5.68(1H、m)、5.03(1H、d)、4.64−4.71(2H、m)、4.59(1H、t)、4.44(1H、d)、4.12−4.17(1H、m)、3.76−3.93(2H)、3.45(1H、t)、3.08−3.17(2H、m)、1.83(3H、s)、0.85(9H、s)ppm。
【0148】
[合成例1−5]モノマー5の合成
【化66】

【0149】
[合成例1−5−1]原料アルコール3の合成
メトキシメチルクロリドの代わりに保護化剤2を使用した以外は合成例1−1−1と同様な方法で原料アルコール3を得た(収率78%)。
なお、精製後の異性体混合比は、メジャー異性体(上記式):マイナー異性体=56モル%:44モル%であった。
IR(D−ATR):ν=3448、2955、2872、1467、1385、1180、1112、1067、885、833、776、614cm-1
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6、メジャー異性体のみ記載):δ=5.12(1H、d)、4.62−4.67(2H、m)、4.50(1H、t)、4.25(1H、d)、4.06−4.12(3H、m)、4.01−4.04(1H、m)、3.46−3.53(3H、m)、3.36(1H、t)、1.60−1.68(1H、m)、1.36−1.41(2H、m)、0.86(3H、d)、0.85(3H、d)ppm。
【0150】
[合成例1−5−2]モノマー5の合成
原料アルコール1の代わりに原料アルコール3を使用した以外は合成例1−1−2と同様な方法でモノマー5を得た(収率97%)。
なお、精製後の異性体混合比は、メジャー異性体(上記式):マイナー異性体=60モル%:40モル%であった。
沸点:132−134℃/15Pa。
IR(D−ATR):ν=2956、2872、1722、1638、1465、1384、1316、1299、1164、1108、1071、1037、941、850、814、776、654cm-1
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6、メジャー異性体のみ記載):δ=6.03(1H、s)、5.72−5.68(1H、m)、5.06(1H、d)、4.64−4.69(2H、m)、4.60(1H、t)、4.47(1H、d)、4.16(1H、dd like)、3.93(1H、dd)、3.80−3.89(3H、m)、3.45−3.55(2H、m)、1.84−1.88(3H、m)、1.61−1.68(1H、m)、1.39(2H、dd)、0.87(3H、d)、0.85(3H、d)ppm。
【0151】
[合成例1−6]モノマー6の合成
【化67】

【0152】
[合成例1−6−1]原料アルコール4の合成
メトキシメチルクロリドの代わりに保護化剤3を使用した以外は合成例1−1−1と同様な方法で原料アルコール4を得た(収率89%)。
なお、精製後の異性体混合比は、メジャー異性体(上記式):マイナー異性体=61モル%:39モル%であった。
IR(D−ATR):ν=3429、2950、2871、1461、1373、1170、1113、1039、921、885、844、775、606cm-1
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6、メジャー異性体のみ記載):δ=5.11(1H、d)、4.69(1H、m)、4.61(1H、m)、4.56(1H、m)、4.22−4.25(2H)、4.02(1H、m)、3.65−3.79(3H)、3.41(1H、m)、3.19(1H、d)、1.54−1.67(3H)、1.46(1H、m)、1.35(1H、m)、0.88−1.10(2H)、1.02(3H、s)、0.99(3H、s)、0.82(3H、s)ppm。
【0153】
[合成例1−6−2]モノマー6の合成
原料アルコール1の代わりに原料アルコール4を使用した以外は合成例1−1−2と同様な方法でモノマー6を得た(収率98%)。
なお、精製後の異性体混合比は、メジャー異性体(上記式):マイナー異性体=63モル%:37モル%であった。
IR(D−ATR):ν=2953、2872、1723、1460、1374、1317、1298、1162、1102、1080、1039、1006、939、886、813、650cm-1
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6、メジャー異性体のみ記載):δ=6.03(1H、s)、5.70(1H、m)、5.06(1H、d)、4.60−4.76(3H)、4.46(1H、m)、4.29(1H、m)、3.73−3.93(3H)、3.54(1H、m)、3.21(1H、m)、1.87(3H、m)、1.55−1.63(3H)、1.47(1H、m)、1.35(1H、m)、0.88−1.10(2H)、1.03(3H、s)、0.99(3H、s)、0.82(3H、s)ppm。
【0154】
[合成例1−7]モノマー7の合成
【化68】

【0155】
[合成例1−7−1]原料アルコール5の合成
メトキシメチルクロリドの代わりに保護化剤4を使用した以外は合成例1−1−1と同様な方法で原料アルコール5を得た(収率74%)。
なお、精製後の異性体混合比は、メジャー異性体(上記式):マイナー異性体=60モル%:40モル%であった。
IR(D−ATR):ν=3419、2902、2851、1449、1383、1170、1083、1029、980、928、872、845、779cm-1
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6、メジャー異性体のみ記載):δ=5.12(1H、d)、4.72−4.75(2H、m)、4.51(1H、t)、4.25(1H、d)、4.13−4.19(1H、m)、4.00−4.03(1H、m)、3.74−3.79(1H、m)、3.62−3.73(3H、m)、3.35(1H、t)、1.87−1.98(4H、m)、1.70−1.80(4H、m)、1.58−1.68(4H、m)、1.40−1.47(2H、m)ppm。
【0156】
[合成例1−7−2]モノマー7の合成
原料アルコール1の代わりに原料アルコール5を使用した以外は合成例1−1−2と同様な方法でモノマー7を得た(収率96%)。
なお、精製後の異性体混合比は、メジャー異性体(上記式):マイナー異性体=62モル%:38モル%であった。
IR(D−ATR):ν=2903、2852、1722、1637、1450、1383、1316、1298、1081、1046、1034、980、928、894、814、653、604cm-1
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6、メジャー異性体のみ記載):δ=6.03(1H、s)、5.67−5.72(1H、m)、5.05(1H、d)、4.74−4.78(2H、m)、4.62(1H、t)、4.47(1H、d)、4.23(1H、dd like)、3.92(1H、dd)、3.78−3.89(2H、m)、3.67−3.71(1H、m)、3.48(1H、t)、1.84−1.99(4H、m)、1.70−1.80(4H、m)、1.58−1.68(4H、m)、1.40−1.48(2H、m)ppm。
【0157】
[合成例1−8]モノマー8の合成
【化69】

【0158】
メトキシメチルクロリドの代わりに保護化剤5を使用した以外は合成例1−1−1、1−1−2と同様な方法でモノマー8を得た(二工程収率66%)。
【0159】
[合成例1−9]モノマー9の合成
【化70】

【0160】
[合成例1−9]モノマー9の合成
メトキシメチルクロリドの代わりに保護化剤6を使用した以外は合成例1−1−1、1−1−2と同様な方法でモノマー9を得た(二工程収率65%)。
【0161】
[合成例1−10]モノマー10の合成
【化71】

【0162】
メトキシメチルクロリドの代わりに保護化剤7を使用した以外は合成例1−1−1、1−1−2と同様な方法でモノマー10を得た(二工程収率61%)。
【0163】
[合成例1−11]モノマー11の合成
【化72】

【0164】
メトキシメチルクロリドの代わりに保護化剤8を使用した以外は合成例1−1−1、1−1−2と同様な方法でモノマー11を得た(二工程収率80%)。
【0165】
[合成例1−12]モノマー12の合成
【化73】

【0166】
メトキシメチルクロリドの代わりに保護化剤9を使用した以外は合成例1−1−1、1−1−2と同様な方法でモノマー12を得た(二工程収率62%)。
【0167】
[合成例1−13]モノマー13の合成
【化74】

【0168】
メトキシメチルクロリドの代わりに保護化剤1を、メタクリル酸無水物の代わりにエステル化剤1を使用した以外は合成例1−1−1、1−1−2と同様な方法でモノマー13を得た(二工程収率59%)。
【0169】
[合成例1−14]モノマー14の合成
【化75】

【0170】
メトキシメチルクロリドの代わりに保護化剤1を、メタクリル酸無水物の代わりにエステル化剤2を使用した以外は合成例1−1−1、1−1−2と同様な方法でモノマー14を得た(二工程収率60%)。
【0171】
[合成例1−15]モノマー15の合成
【化76】

【0172】
メトキシメチルクロリドの代わりに保護化剤1を、メタクリル酸無水物の代わりにエステル化剤3を使用した以外は合成例1−1−1、1−1−2と同様な方法でモノマー15を得た(二工程収率63%)。
【0173】
[合成例1−16]モノマー7の合成
【化77】

【0174】
[合成例1−16−1]原料アルコール5の合成
イソソルビドの代わりにイソマンニドを、メトキシメチルクロリドの代わりに保護化剤4を使用した以外は合成例1−1−1と同様な方法で、[合成例1−7−1]とは異なる異性体(上記式)である原料アルコール5を得た(収率78%)。
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6):δ=4.71−4.78(3H、m)、4.43(1H、t)、4.28(1H、t)、4.14−4.20(1H、m)、4.07−4.13(1H、m)、3.89(1H、t)、3.77(1H、t)、3.70(1H、m)、3.46(1H、t)、3.34(1H、t)、1.85−2.00(4H、m)、1.70−1.80(4H、m)、1.59−1.68(4H、m)、1.40−1.47(2H、m)ppm。
【0175】
[合成例1−16−2]モノマー7の合成
原料アルコール1の代わりに原料アルコール5を使用した以外は合成例1−1−2と同様な方法で、[合成例1−7−2]とは異なる異性体(上記式)であるモノマー7を得た(収率93%)。
IR(D−ATR):ν=2903、2852、1722、1637、1450、1383、1315、1296、1167、1114、1096、1079、1050、1038、1025、978、928cm-1
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6、メジャー異性体のみ記載):δ=6.03(1H、m)、5.67−5.71(1H、m)、5.09(1H、q)、4.75(2H、s)、4.66(1H、t)、4.41(1H、t)、4.12−4.17(1H、m)、3.83−3.89(2H、m)、3.76−3.81(1H、m)、3.70(1H、s)、3.40(1H、t)、1.85−1.98(7H、m)、1.71−1.80(4H、m)、1.61−1.68(4H、m)、1.43(2H、d)ppm。
【0176】
【化78】

【0177】
[合成例2]
本発明の高分子化合物を以下に示す処方で合成した。
[合成例2−1]ポリマー1の合成
窒素雰囲気下、80℃で撹拌したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート29.2gに、モノマー1の36.4gとメタクリル酸4,8−ジオキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−5−オン−2−イル13.6gと2,2’−アゾビスイソブチロニトリル331mgと2−メルカプトエタノール394mgをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート87.5gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。更に80℃で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、1,000mLのn−ヘキサンに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、下記式ポリマー1で示される白色粉末固体状の高分子化合物が得られた。収量は46.7g、収率は93%であった。なお、Mwはポリスチレン換算でのGPCを用いて測定した重量平均分子量を表す。
【0178】
【化79】

【0179】
[合成例2−2〜10、比較合成例1−1〜3]ポリマー2〜10、比較ポリマー1〜3の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、合成例2−1と同様の手順により、ポリマー2〜10、及び比較合成例用の比較ポリマー1〜3を製造した。なお、導入比はモル比である。
【0180】
【化80】

【0181】
【化81】

【0182】
【化82】

【0183】
【化83】

【0184】
[実施例、比較例]
レジスト材料の調製
[実施例1−1〜14、比較例1−1〜3]
上記で製造した本発明の樹脂(ポリマー1〜10)及び比較例用の樹脂(比較ポリマー1〜3)をベース樹脂として用い、酸発生剤、塩基性化合物、及び溶剤を表1に示す組成で添加し、混合溶解後にそれらをテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、本発明のレジスト材料(R−01〜14)及び比較例用のレジスト材料(R−15〜17)とした。なお、溶剤はすべて界面活性剤としてKH−20(旭硝子(株)製)を0.01質量%含むものを用いた。
【0185】
【表1】

【0186】
表1中、略号で示した酸発生剤、塩基及び溶剤は、それぞれ下記の通りである。
PAG−1:トリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート
PAG−2:4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート
Base−1:トリ(2−メトキシメトキシエチル)アミン
PGMEA:酢酸1−メトキシイソプロピル
CyHO:シクロヘキサノン
GBL:γ−ブチロラクトン
【0187】
レジスト材料(パターン倒れ、LWR)の評価
[実施例2−1〜14、比較例2−1〜3]
上記表1に示す本発明のレジスト材料(R−01〜14)及び比較例用のレジスト材料(R−15〜17)を、反射防止膜(日産化学工業(株)製、ARC29A、90nm)を塗布したシリコンウエハー上へ回転塗布し、100℃で60秒間の熱処理を施して、厚さ100nmのレジスト膜を形成した。このレジスト膜上にレジスト保護膜材料(信越化学工業(株)製、SIOC−3、50nm)を回転塗布、熱処理(90℃、60秒間)し、これをArF液浸エキシマレーザーステッパー((株)ニコン製、NA=1.30)を用いて6%ハーフトーン位相差マスクに描画された一定のパターンを転写露光し、60秒間の熱処理(PEB)を施した後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて30秒間パドル現像を行い、ラインアンドスペースパターンを形成した。PEBにおいては、各レジスト材料に最適化した温度を適用した。40nm1:1ラインアンドスペースパターンを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、パターン線幅の露光量依存性を調べた。一般的に露光量が大きくなるほど線幅は小さくなり、パターンは倒れ易くなる。高露光量方向でパターンが倒壊しない最小線幅を求め、倒れ限界寸法(nm、寸法が小さいほど良好)とした。更に、40nmの1:1ラインアンドスペースのライン部の線幅変動をSEMにより測定し、ライン幅ラフネス(LWR)とした。LWR値が小さいほど、ラインパターンの揺らぎがなく、良好である。評価結果を表2に示す。
【0188】
【表2】

【0189】
表2の結果より、ArFエキシマレーザー液浸露光において、本発明のレジスト材料のパターン倒れ耐性が高く、LWRがよく抑制されていることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される重合性エステル化合物。
【化1】

(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2は酸不安定基を示す。Aaは、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示し、2価炭化水素基を構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。k1は0又は1である。)
【請求項2】
下記一般式(2)で示される重合性エステル化合物。
【化2】

(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R3は水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R4は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、1価炭化水素基を構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。)
【請求項3】
下記一般式(2a)、(2b)で示されるいずれかの繰り返し単位を含有することを特徴とする高分子化合物。
【化3】

(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2は酸不安定基を示す。R3は水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R4は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示し、1価炭化水素基を構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。Aaは、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示し、2価炭化水素基を構成する−CH2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。k1は0又は1である。)
【請求項4】
更に、下記一般式(2A)〜(2D)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の高分子化合物。
【化4】

(式中、R1Aは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。XAは酸不安定基を示す。XB、XCはそれぞれ独立に単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状の2価の炭化水素基を示す。YAはラクトン又はスルトン構造を有する置換基を示す。ZAは水素原子、又は炭素数1〜15のフルオロアルキル基又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基を示す。k1Aは1〜3の整数を示す。)
【請求項5】
更に、下記一般式(d1)〜(d3)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項3又は4に記載の高分子化合物。
【化5】

(式中、R20、R24、R28は水素原子又はメチル基、R21は単結合、フェニレン基、−O−R33−、又は−C(=O)−Y−R33−である。Yは酸素原子又はNH、R33は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R22、R23、R25、R26、R27、R29、R30、R31は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Z0は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R32−、又は−C(=O)−Z1−R32−である。Z1は酸素原子又はNH、R32は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M-は非求核性対向イオンを表す。)
【請求項6】
請求項3、4又は5に記載の高分子化合物を含むベース樹脂、酸発生剤及び有機溶剤を含有することを特徴とするレジスト材料。
【請求項7】
請求項5に記載の高分子化合物を含むベース樹脂、及び有機溶剤を含有することを特徴とするレジスト材料。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して高エネルギー線もしくは電子線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
請求項6又は7に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して高エネルギー線もしくは電子線で露光する工程と、加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法であって、屈折率1.0以上の高屈折率液体をレジスト塗布膜と投影レンズとの間に介在させて液浸露光を行うことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
請求項6又は7に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して高エネルギー線もしくは電子線で露光する工程と、加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法であって、レジスト塗布膜の上に更に保護膜を塗布し、屈折率1.0以上の高屈折率液体を該保護膜と投影レンズとの間に介在させて液浸露光を行うことを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2013−18762(P2013−18762A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155417(P2011−155417)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】