説明

重合性コレステリック液晶組成物およびその用途

【課題】植物性の原料を用い、室温や体温付近でコレステリック相を有する液晶組成物であって、組成を変えることで室温や体温付近で赤〜緑〜青〜紫の広範囲にわたるコレステリック反射帯域の反射色を制御することでき、基材上にコレステリック液晶相を呈する塗膜を直接形成し、コレステリック相を固定化することができる液晶組成物を提供する。
【解決手段】本発明の重合性コレステリック液晶組成物は、γ−オリザノール(A)の加水分解物の残基と環構造とを有する重合性エステル化合物(1)、γ−オリザノール(A)の加水分解物の残基を有し、かつ環構造を有しない重合性エステル化合物(2)およびγ−オリザノール(A)の水添物の残基を有する重合性エステル化合物(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性コレステリック液晶組成物およびその用途に関し、より詳しくは、室温付近で特定の領域の波長の光を反射する重合性コレステリック液晶組成物、該組成物からなる重合体およびこれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステリック液晶分子は、その液晶状態で螺旋構造を有する。そのため、コレステリック液晶を重合させて螺旋構造を固定し、光を照射すると、液晶分子の螺旋の回転方向の向きとピッチの長さに対応した特定の波長領域の円偏光の光を反射する。たとえば、可視光を照射した場合、液晶のピッチの長さに対応した青、緑、黄、赤の波長の光を選択的に反射する。これらの色調は、光の吸収により色を呈する顔料や染料とは異なり、また、見る角度により色調が変わる視角依存性を有する。さらに、コレステリック液晶のピッチの長さは、温度や化合物の種類により制御することができるため、可視光だけではなく、近赤外や紫外領域の光も選択的に反射することができる。
【0003】
こうしたコレステリック液晶の特性を利用して、広い波長域内でさまざまな波長の光を選択的に反射する材料が提供されている。例えば、液晶顔料、塗料、噴霧インク、印刷インク、化粧品、偽造防止用印刷物および装飾品である。また、液晶表示素子やホログラフィー素子などの光学素子における偏光板、補償板、カラーフィルタなどの光学フィルムなどの用途も提案されている。
【0004】
従来、このようなコレステリック材料として、主に羊毛脂から抽出された動物由来の原料(コレステロール)が使用されてきたが、近年、環境や人体に対する配慮から、植物由来の原料が注目されている。植物由来の原料とは、植物の種子や植物体各部から抽出される成分のことであり、例えば米糠、米油、大豆、小麦、とうもろこし、ヤシ、綿実、菜種から得ることができる。液晶性を有する植物由来の原料としては、大豆に多く含まれる植物ステロールや米糠から得られるトリテルペンアルコールの誘導体などが知られている。
【0005】
Molecular crystals and liquid crystals,1979,Vol.53,69−76(非特許文献1)には、工業的に大豆等から抽出されるβ−シトステロールのアクリル酸エステルが開示されている。同様な骨格のコレステロールのアクリル酸エステルは118℃から126℃の間でコレステリック相を呈するがβ−シトステロールは融点が138℃で液晶相を持たないことが記載されている。
【0006】
特開平3−99094号公報(特許文献1)には、トリテルペンアルコールのエステル体がコレステリック相を有することが記載されているが、いずれのエステル体もコレステリック相領域が狭く、室温付近の広い範囲でコレステリック相を有する例は開示されていない。また、ここで使用されている各トリテルペンアルコールは、天然物の中に混合物として含まれており、抽出物を単品として使用することは工業的には困難である。
【0007】
特表2004−504291号公報(特許文献2)には、植物性不鹸化物としてステロール、スタノール、トリテルペンアルコールと長鎖脂肪酸とのエステルが記載されている。これらは化粧品や医薬品用途に用いられているが、特許文献3には液晶性に関する示唆はない。
【0008】
特開2006−176422号公報(特許文献3)には、米糠から得られるステロールエステルとして、植物ステロールやトリテルペンアルコールの長鎖脂肪酸エステルが化粧
品や医薬品用途として用いられることが記載されているが、液晶性に関する示唆はない。
【0009】
特開平5−310526号公報(特許文献4)にはステロールやトリテルペンアルコールのフェルラ酸エステルであるγ−オリザノールが記載され、特開昭57−62212号公報(特許文献6)にはトリテルペンアルコールとヒドロキシ安息香酸とのエステル体が記載されているが、いずれも液晶性に関しては何ら記載も示唆もされていない。
【0010】
また、上記特許文献には、植物由来の原料からなるコレステリック材料に重合性基を導入し、コレステリック相を固定化する技術に関しては言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平3−99094号公報
【特許文献2】特表2004−504291号公報
【特許文献3】特開2006−176422号公報
【特許文献4】特開平5−310526号公報
【特許文献5】特開昭57−62212号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Molecular crystals and liquid crystals,1979,Vol.53,69−76
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の第一の課題は、植物性の原料を用い、室温や体温付近でコレステリック相を有する液晶組成物を提供することである。第二の課題は、前記組成物の組成を変えることで、室温や体温付近で赤〜緑〜青〜紫の広範囲にわたるコレステリック反射帯域の反射色を制御することである。第三の課題は、コレステリック液晶の対象となる基材上に、コレステリック液晶相を呈する塗膜を直接形成し、コレステリック相を固定化することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定の植物ステロール誘導体、トリテルペンアルコール誘導体またはそれらの水添物に由来の残基を有するエステル化合物に重合性基を導入した重合性エステル化合物を含む液晶組成物により、上記課題を解決できることを見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成させたものであり、具体的には、以下の構成が挙げられる。
【0015】
[1]γ−オリザノール(A)の加水分解物の残基と環構造とを有する重合性エステル化合物(1)、γ−オリザノール(A)の加水分解物の残基を有し、かつ環構造を有しない重合性エステル化合物(2)およびγ−オリザノール(A)の水添物の残基を有する重合性エステル化合物(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、
前記γ−オリザノール(A)が、少なくとも1種の植物ステロールのフェルラ酸エステルと、少なくとも1種のトリテルペンアルコールのフェルラ酸エステルとを含む混合物であり、
前記γ−オリザノール(A)の加水分解物が、少なくとも1種の植物ステロールと少なくとも1種のトリテルペンアルコールとを含む混合物である
ことを特徴とする重合性コレステリック液晶組成物。
【0016】
[2]前記重合性エステル化合物(1)が下記式(B1)で表される化合物であり、前記重合性エステル化合物(2)が下記式(B2)で表される化合物であり、前記重合性エ
ステル化合物(3)が下記式(B3)で表される化合物であることを特徴とする項[1]に記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【0017】
P−X−(Z−Q)m−COO−T (B1)
式(B1)中、Tは前記γ−オリザノール(A)の加水分解物の残基であり、
Qは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンであり、Zは単結合、−COO−、−OCO−または−OCOO−であり、
mは1〜3の整数であり、mが2または3であるとき、複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、複数のZもそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、該アルキレンにおける任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、
Pは下記式(P1)〜(P3)のいずれかで表される重合性基である。
【0018】
【化1】

【0019】
式(P1)〜(P3)中、Rは水素または炭素数1〜3のアルキルである。
【0020】
P−X−Y−COO−T (B2)
式(B2)中、T、XおよびPは、前記式(B1)中のT、XおよびPと同義であり、Yは単結合または−O−である。
【0021】
【化2】

【0022】
式(B3)中、Q、Z、XおよびPは前記式(B1)中のQ、Z、XおよびPと同義であり、T’は前記γ−オリザノール(A)の水添物の残基である。
【0023】
[3]前記重合性エステル化合物(1)、前記重合性エステル化合物(2)および前記重合性エステル化合物(3)からなる群より選ばれる2種以上の化合物を含有することを特徴とする項[1]または[2]に記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【0024】
[4]前記重合性エステル化合物(1)および前記重合性エステル化合物(2)を含有することを特徴とする項[1]〜[3]のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【0025】
[5]前記重合性エステル化合物(1)および前記重合性エステル化合物(2)を含有し、前記式(B1)中のQが1,4−フェニレンであることを特徴とする項[2]に記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【0026】
[6]前記式(B2)中のXが炭素数2〜9のアルキレンであることを特徴とする項[5]に記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【0027】
[7]前記γ−オリザノール(A)が、下記式(a1)で表される少なくとも1種の化合物と下記式(a2)で表される少なくとも1種の化合物とを含む混合物であることを特徴とする項[1]〜[6]のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【0028】
【化3】

【0029】
式(a1)および(a2)中、R1は分岐状の炭素数9〜10のアルキルもしくはアル
ケニルであり、R2は分岐状の炭素数8〜9のアルキルもしくはアルケニルである。
【0030】
[8]前記γ−オリザノール(A)の加水分解物が、下記式(a1−1)〜(a1−4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の植物ステロールと、下記式(a2−1)〜(a2−4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のトリテルペンアルコールとを含む混合物であることを特徴とする項[1]〜[7]のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
[9]前記重合性エステル化合物(1)〜(3)以外の液晶性の重合性化合物をさらに含有することを特徴とする項[1]〜[8]のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【0034】
[10]非液晶性の重合性化合物をさらに含有することを特徴とする項[1]〜[9]のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【0035】
[11]前記非液晶性の重合性化合物が、単官能(メタ)アクリルモノマー、多官能(
メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルオリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする項[10]に記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【0036】
[12]項[1]〜[11]のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物を重合させることによって得られることを特徴とする重合体。
【0037】
[13]コレステリック液晶相を呈することを特徴とする項[12]に記載の重合体。
【0038】
[14]項[12]または[13]に記載の重合体を含有することを特徴とする膜。
【0039】
[15]項[12]または[13]に記載の重合体を含有する複数の膜が積層されてなることを特徴とする多層膜。
【0040】
[16]重合性コレステリック液晶組成物からなる重合体を含有し、かつ、カラー・フリップフロップ性を有することを特徴とする多層膜。
【0041】
[17]重合性コレステリック液晶組成物からなる重合体を含有し、かつ、観察角度を多層膜の面に対して垂直方向から斜めに変えることによって、短波長側から長波長側の色相にカラーシフトすることを特徴とする多層膜。
【0042】
[18]重合性コレステリック液晶組成物からなる重合体を含有し、かつ、観察角度を多層膜の面に対して垂直方向から斜めに変えることによって、長波長側から短波長側の色相にカラーシフトすることを特徴とする多層膜。
【0043】
[19]前記重合性コレステリック液晶組成物が項[1]〜[11]のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物であることを特徴とする項[16]〜[18]のいずれかに記載の多層膜。
【0044】
[20]項[12]または[13]に記載の重合体を含有することを特徴とする色材。
【0045】
[21]液晶顔料、塗料、噴霧インク、印刷インク、化粧品、偽造防止用印刷物、装飾品および光学フィルムから選ばれる用途への、項[1]〜[11]のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物の使用。
【0046】
[22]液晶顔料、塗料、噴霧インク、印刷インク、化粧品、偽造防止用印刷物、装飾品および光学フィルムから選ばれる用途への、項[12]または[13]に記載の重合体の使用。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、植物性の原料からなり、室温や体温付近でコレステリック相を有し、組成を変えることにより、室温や体温付近で赤〜緑〜青〜紫の広範囲にわたるコレステリック反射帯域の反射色を制御することができるとともに、直接目的物に塗布して塗膜を形成し、コレステリック相を固定化することが可能である重合性液晶組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明に係る重合性コレステリック液晶組成物およびその用途について詳細に説明する。
【0049】
なお、本明細書における「液晶性」の意味は、液晶相を有することだけに限定されず、
それ自体は液晶相を有さなくても、他の液晶性化合物と混合したときに、液晶組成物の成分として使用できる特性も「液晶性」の意味に含まれる。
【0050】
また、式(a1)で表される化合物を「化合物(a1)」と称することがあり、他の式で表される化合物や基についても同様に簡略化して称することがある。化学式において、1つの化合物が複数のQを有するとき、任意の2つのQは同一でも異なってもよい。この規則は、Z等の他の記号にも適用される。
【0051】
ここで、「アルキレン中の任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよい」の句の
意味を一例で示す。−C48−において任意の−CH2−が−O−で置き換えられた基は
、たとえば、−C36O−、−CH2−O−(CH22−、−CH2−O−CH2−O−等
である。このように「任意の」という語は、「区別なく選択された少なくとも1つの」を意味する。なお、化合物の安定性を考慮すれば、酸素と酸素とが隣接した−CH2−O−
O−CH2−よりも、酸素と酸素とが隣接しない−CH2−O−CH2−O−の方が好まし
い。
【0052】
[重合性コレステリック液晶組成物]
本発明の重合性コレステリック液晶組成物(以下、単に「本発明の液晶組成物」ともいう。)は、γ−オリザノール(A)の加水分解物の残基と環構造(オキシラン環およびオキセタン環を除く。以下同じ。)とを有する重合性エステル化合物(1)、γ−オリザノール(A)の加水分解物の残基を有し、かつ環構造を有しない重合性エステル化合物(2)およびγ−オリザノール(A)の水添物の残基を有する重合性エステル化合物(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する。前記重合性エステル化合物(1)〜(3)は液晶性化合物である。
【0053】
本発明の液晶組成物は、室温付近(10〜40℃程度)で広いコレステリック液晶相領域を有し、各構成成分の組成比や組成物を重合する際の温度を変えることで、コレステリック相が反射する光の波長領域を制御することができ、所望の色や目的に応じた波長の光を反射する重合体の形成が可能である。
【0054】
<γ−オリザノール(A)>
上記γ−オリザノール(A)は、米糠から得られる植物性の原料であり、市販されているその成分は単一ではなく、主成分として、少なくとも1種の植物ステロールのフェルラ酸エステルと、少なくとも1種のトリテルペンアルコールのフェルラ酸エステルとを含む混合物であり、より具体的には、下記式(a1)で表される少なくとも1種の化合物と下記式(a2)で表される少なくとも1種の化合物とを含む混合物である。
【0055】
【化6】

【0056】
式(a1)および(a2)中、R1は分岐状の炭素数9〜10のアルキルもしくはアル
ケニルであり、R2は分岐状の炭素数8〜9のアルキルもしくはアルケニルである。前記
1のアルキルもしくはアルケニルとしては、たとえば、下記式(R1−1)〜(R1−
4)で表されるアルキルもしくはアルケニルなどが挙げられる。また、前記R2のアルキ
ルもしくはアルケニルとしては、たとえば、下記式(R2−1)〜(R2−4)で表されるアルキルもしくはアルケニルなどが挙げられる。
【0057】
【化7】

【0058】
【化8】

【0059】
上記化合物(a1)としては、たとえば以下に示す化合物などが挙げられる。
【0060】
【化9】

【0061】
上記化合物(a2)としては、たとえば以下に示す化合物などが挙げられる。
【0062】
【化10】

【0063】
上記γ−オリザノール(A)は、一般的には、上記化合物(a1)の例示中の2〜3成分と上記化合物(a2)の例示中の2〜3成分とを主成分として含むが、用いる原料の入手先によって構成成分や組成比が異なることがある。なお、少量成分として主成分以外の上記例示化合物を含んでいる場合があり、また、上記例示化合物以外の異性体等を含んでいる場合もある。
【0064】
上記γ−オリザノール(A)は、上記トリテルペンアルコールのフェルラ酸エステルを、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上の量で、また、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下、特に好ましくは90重量%以下の量で含むことが望ましい。
【0065】
上記γ−オリザノール(A)としては、市販の試薬を用いることができ、例えば、和光純薬工業社製、築野食品工業社製、築野ライスファインケミカルズ社製、理研ビタミン社
製、オリザ油化社製および岡安商店社製のγ−オリザノールが挙げられる。
【0066】
上記γ−オリザノール(A)の加水分解物は、上記γ−オリザノール(A)を加水分解して得られ、かつ、少なくとも1種、好ましくは2種以上の植物ステロールと、少なくとも1種、好ましくは2種以上のトリテルペンアルコールとを含む混合物である。
【0067】
上記γ−オリザノール(A)の加水分解は、公知の方法および条件で行なうことができる。具体的には、上記γ−オリザノール(A)に、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムなどの水溶液を加えて反応させるか、あるいは前記水溶液とアセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフランなどの親水性の溶媒とを同時に加えて反応させるか、あるいはメタノール、エタノール、プロパノールなどに水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムなどを溶解させた溶液を加えて反応させることで、フェルラ酸塩、植物ステロールおよびトリテルペンアルコールの混合物が生成する。次いで、有機溶媒による抽出を行い、得られた抽出物を中和および水で洗浄した後に無水硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに有機溶媒を留去することにより、目的とする植物ステロールとトリテルペンアルコールの混合物(加水分解物)を得ることができる。
【0068】
上記γ−オリザノール(A)の加水分解物である植物ステロールとしては、たとえば、以下の化合物(a1−1)〜(a1−4)などが挙げられる。
【0069】
【化11】

【0070】
上記加水分解物には、上記植物ステロールとして、上記化合物(a1−1)〜(a1−4)以外の異性体が含まれていてもよい。
【0071】
また、上記γ−オリザノール(A)の加水分解物であるトリテルペンアルコールとしては、たとえば、以下の化合物(a2−1)〜(a2−4)などが挙げられる。
【0072】
【化12】

【0073】
上記加水分解物には、上記トリテルペンアルコールとして、上記化合物(a2−1)〜(a2−4)以外の異性体が含まれていてもよい。
【0074】
上記γ−オリザノール(A)の水添物は、公知の方法および条件で水素添加することにより得ることができる。水素添加方法の具体的な方法および条件としては、γ−オリザノール(A)を、酢酸エチル、トルエン、ソルミックス等の有機溶媒に溶かし、パラジウム付活性炭を添加し、常圧のもと室温で接触水素化反応を行う。反応後は有機溶媒による抽出を行い、水で洗浄した後に無水硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに有機溶媒を留去することにより、目的とするγ−オリザノール(A)の水添物を得ることができる。
【0075】
<重合性エステル化合物(1)>
上記重合性エステル化合物(1)は、上記γ−オリザノール(A)の加水分解物の残基と環構造とを有する重合性エステル化合物であれば特に限定されないが、好ましくは下記式(B1)で表される化合物である。
【0076】
P−X−(Z−Q)m−COO−T (B1)
式(B1)中、Tは前記γ−オリザノール(A)の加水分解物の残基であり;Qは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンであり;Zは単結合、−COO−、−OCO−または−OCOO−であり;mは1〜3の整数であり、mが2または3であるとき、複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、複数のZもそれぞれ同一でも異なっていてもよく;Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、該アルキレンにおける任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Pは下記
式(P1)〜(P3)のいずれかで表される重合性基である。前記Xのアルキレンは、好ましくは直鎖のアルキレンであり、より好ましくは炭素数2〜10の直鎖のアルキレンである。
【0077】
【化13】

【0078】
式(P1)〜(P3)中、Rは水素または炭素数1〜3のアルキルである。前記Rのアルキルは、好ましくは直鎖のアルキル、具体的には、メチル、エチルまたはプロピルである。
【0079】
本発明の液晶組成物が上記重合性エステル化合物(1)を含有すると、所望する温度範囲でのコレステリック相の出現領域を広げることに寄与する。
【0080】
上記重合性エステル化合物(1)は、フーベン・ヴァイル(Houben Wyle, Methoden der Organischen Chemie, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、オーガニック・シンセセーズ(Organic Syntheses, John Wily & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シン
セシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善
)などに記載された、有機化学における合成方法を適切に組み合わせることにより合成できる。
【0081】
具体的には、上記重合性エステル化合物(1)は、上記γ−オリザノール(A)の加水分解物と環構造を有する重合性カルボン酸化合物とを、公知の方法および条件でエステル化させることにより、あるいは上記γ−オリザノール(A)の加水分解物と環構造を有する非重合性のカルボン酸化合物とを、公知の方法および条件でエステル化した後、重合性基等を導入することにより得ることができる。
【0082】
上記エステル化の方法としては、一般的には、硫酸またはp−トルエンスルホン酸などの酸触媒やジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などの縮合剤の存在下でカルボン酸とアルコールとを縮合反応させる方法や、酸ハロゲン化物とアルコールとを反応させる方法などが挙げられる。具体的には、環構造を有するカルボン酸化合物の塩素化物に、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどの第三級アミンの存在下で、上記γ−オリザノール(A)の加水分解物である植物ステロールおよびトリテルペンアルコールの混合物を室温で反応させる。次いで、有機溶媒による抽出を行い、得られた抽出物を水洗した後、カラムクロマトグラフィで精製することにより、目的とするエステル化合物を得ることができる。
【0083】
重合性基(P1)は、水酸基を有する液晶性エステル残基にアクリル酸クロリド類や4-アクリロイルオキシアルキルクロロホルメートなどを作用させることにより導入するこ
とができる。重合性基(P2)は、不飽和結合を有する液晶性エステル残基を酸化することにより導入できる。重合性基(P3)は、オキセタン環を含む公知の中間体を使用して導入できる。
【0084】
上記重合性エステル化合物(1)としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0085】
【化14】

【0086】
【化15】

【0087】
<重合性エステル化合物(2)>
上記重合性エステル化合物(2)は、上記γ−オリザノール(A)の加水分解物の残基を有し、かつ環構造を有しない重合性エステル化合物であれば特に限定されないが、好ましくは下記式(B2)で表される化合物である。
【0088】
P−X−Y−COO−T (B2)
式(B2)中、T、XおよびPは、上記式(B1)中のT、XおよびPと同義であり、Yは単結合または−O−である。
【0089】
本発明の液晶組成物が上記重合性エステル化合物(2)を含有すると、組成物のピッチ
の調整あるいは結晶化を防ぐことができる。
【0090】
上記重合性エステル化合物(2)は、上記重合性エステル化合物(1)と同様に、公知の合成方法を適切に組み合わせることにより合成できる。具体的には、上記γ−オリザノール(A)の加水分解物と環構造を有しない重合性カルボン酸化合物とを、公知の方法および条件でエステル化させることにより、あるいは上記γ−オリザノール(A)の加水分解物と環構造を有しない非重合性のカルボン酸化合物とを、公知の方法および条件でエステル化した後、重合性基等を導入することにより得ることができる。
【0091】
上記重合性エステル化合物(2)としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0092】
【化16】

【0093】
<重合性エステル化合物(3)>
上記重合性エステル化合物(3)は、上記γ−オリザノール(A)の水添物の残基を有する重合性エステル化合物であれば特に限定されないが、好ましくは下記式(B3)で表される化合物である。
【0094】
【化17】

【0095】
式(B3)中、Q、Z、XおよびPは上記式(B1)中のQ、Z、XおよびPと同義であり、T’は前記γ−オリザノール(A)の水添物の残基である。
【0096】
本発明の液晶組成物が上記重合性エステル化合物(3)を含有すると、組成物のピッチの調整あるいは結晶化を防ぐことができる。
【0097】
上記重合性エステル化合物(3)は、上記重合性エステル化合物(1)と同様に、公知の合成方法を適切に組み合わせることにより合成できる。具体的には、上記γ−オリザノール(A)の水添物と重合性カルボン酸化合物とを、公知の方法および条件でエステル化させることにより、あるいは上記γ−オリザノール(A)の水添物と非重合性のカルボン酸化合物とを、公知の方法および条件でエステル化した後、重合性基等を導入することにより得ることができる。
【0098】
上記重合性エステル化合物(3)としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0099】
【化18】

【0100】
<組成>
本発明の液晶組成物は、上記重合性エステル化合物(1)、(2)および(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、好ましくは2種以上の化合物を含有することにより、室温付近(10〜40℃程度)で広いコレステリック液晶相域を有し、目的に応じた螺旋ピッチを発現させることができる。
【0101】
本発明の液晶組成物は、上記重合性エステル化合物(1)および(2)を含有すること
が好ましい。このとき、上記重合性エステル化合物(1)は、上記式(B1)中のQが1,4−フェニレンである化合物(B1)であることがより好ましく、また、上記重合性エステル化合物(2)は、上記式(B2)中のXが炭素数2〜9のアルキレンである化合物(B2)であることがより好ましい。
【0102】
<他の重合性化合物>
本発明の液晶組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、目的に応じて上記重合性エステル化合物(1)〜(3)以外の他の重合性化合物を含有してもよい。他の重合性化合物は、液晶性であっても非液晶性であってもよい。
【0103】
液晶性を有する他の重合性化合物としては、公知の液晶性を有する重合性化合物や下記式(M1a)、(M1b)、(M1c)、(M2a)、(M2b)および(M2c)で表される化合物などが挙げられる。
【0104】
【化19】

【0105】
上記式中、P1は上記式(P1)〜(P3)で表される重合性の基のいずれかであり;
1は水素、フッ素、塩素、−CNまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキ
ルにおいて、任意の−CH2−は−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で
置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;環A2
独立して1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;W1は独立して水
素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のハロゲン化アルキルであり;X1は独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の
任意の−CH2−は−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられ
てもよく;pおよびqは独立して0または1であり、nは独立して0〜5の整数である。
【0106】
前記液晶性を有する他の重合性化合物は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の組成物における上記液晶性を有する他の重合性化合物の含有量は、上記重合性エステル化合物(1)〜(3)の合計100重量%に対して、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは2〜15重量%である。液晶性を有する他の重合性化合物の含有量が前記範囲内であることにより、コレステリック相の出現温度を室温以上にも調整することができる。
【0107】
非液晶性の他の重合性化合物としては、バインダとして塗料に用いられる系を使用することができる。このようなバインダとしては、モノマー剤、ポリマーバインダおよびそれらの混合物などがある。
【0108】
上記モノマー剤は、重合可能な基(以下「架橋可能な基」ともいう。)を有する化合物である。架橋可能な基としては、例えば、アクリル、メタクリル、αハロゲン化アクリル、ビニル、ビニルエーテル、オキシラン、オキセタン、シアネートおよびイソシアネート基などが挙げられる。これらの中では、アクリル、メタクリル、ビニルエーテル基が好ましい。また、上記モノマー剤は、1個の架橋可能な基を有する化合物であっても、複数の架橋可能な基を有する化合物であってもよい。
【0109】
1個の架橋可能な基を有するモノマー剤としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、スチレン、アクリルニトリル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、β―ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、アジニディニルメタクリレートなどが挙げれる。
【0110】
2個の架橋可能な基を有するモノマー剤としては、たとえば、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラプロピレングリコールのアクリレート、ジビニルエーテルもしくはジメタクリレートなどが挙げられる。
【0111】
3個の架橋可能な基を有するモノマー剤としては、たとえば、トリメチロールプロパン、1〜20のエチレンオキシド構成単位を有するエトキシル化トリメチロールプロパン、1〜20のプロピレンオキシド構成単位を有するプロポキシル化トリメチロールプロパンおよびエチレンオキシド構成単位とプロピレンオキシド構成単位との合計が1〜20であるエトキシ化・プロポキシ化トリメチロールプロパンのトリアクリレート、トリビニルエーテルもしくはトリメタクリレート;グリセリンエポキシトリアクリレートなど、1〜20のエチレンオキシド構成単位を有するエトキシル化グリセリン、1〜20のプロピレンオキシド構成単位を有するプロポキシル化グリセリンのトリアクリレート、トリビニルエーテルもしくはトリアクリレートなどが挙げられる。
【0112】
4個の架橋可能な基を有するモノマー剤としては、たとえば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1〜20のエチレンオキシド構成単位を有するエトキシル化ビス−テトラメチロールプロパン、1〜20のプロピレンオキシド構成単位を有するプロポキシル化ビス−トリメチロールプロパンおよびエチレンオキシド構成単位とプロピレンオキシド構成単位との合計が1〜20であるエトキシ化・プロポキシ化ビストリメチロールプロパンのトリアクリレート、トリビニルエーテルもしくはトリメタクリレートなどが挙げられる。
【0113】
5個の架橋可能な基を有するモノマー剤としては、たとえば、ジペンタエリスリトール
ペンタアクリレート、1〜20のエチレンオキシド構成単位を有するエトキシル化ジぺンタエリスリトールペンタア クリレート、1〜20のプロピレンオキシド構成単位を有す
るプロポキシル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびエチレンオキシド構成単位とプロピレンオキシド構成単位との合計が1〜20であるエトキシ化・プロポキシ化ジペンタエリスリトールのペンタアクリレート、ペンタビニルエーテルもしくはペンタトリメタクリレートなどが挙げられる。
【0114】
上記ポリマーバインダとしては、(メタ)アクリルオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシオリゴマーなどが挙げられる。
【0115】
上記非液晶性の他の重合性化合物としては、単官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリルオリゴマーがより好ましい。
【0116】
上記非液晶性の他の重合性化合物は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の液晶組成物において、非液晶性の他の重合性化合物の含有量は、液晶性を有する重合性化合物の構造やそれらの組成比などによって変わるが、必須成分の合計100重量%に対して、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。非液晶性のその他の重合性化合物の含有量が前記範囲であることにより、組成物の液晶相が相分離せずに保たれる。
【0117】
<非重合性成分>
本発明の液晶組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、目的に応じて非重合性成分を含有してもよい。非重合性成分は、液晶性であっても非液晶性であってもよく、たとえば、非重合性の液晶性化合物、体質顔料、着色剤、分散剤、重合開始剤、増感剤、重合防止剤、酸素阻害剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、接着助剤、密着促進剤、保存安定剤、消泡剤、凝集防止剤などが挙げられる。
【0118】
非重合性の液晶性化合物としては、たとえば、液晶性化合物のデータベースであるリクリスト(LiqCryst, LCI Publisher GmbH, Hamburg, Germany)等に記載されている。非重合性の液晶性化合物は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
塗料などに一般的に添加される体質顔料としては、たとえば、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、酸化チタン、マイカ、セリサイト、タルクなどが挙げられる。これらの体質顔料は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
着色剤としては、一般的に樹脂に添加される有機顔料が挙げられ、より具体的には、溶性アゾ、不溶性アゾ、ポリアゾ、フタロシアニン、アンスラキノン、チオインジゴ、ペリレン、ペリノン、ジオキサジン、キナクリドン、イソインドリノン、キノフタロン、ジケトピロロピロール、アンスラキノン、ペリノン、キノフタロン、アゾ、カーボンブラックなどが挙げられる。これらの中では、溶性アゾ、不溶性アゾ、ポリアゾ、フタロシアニン、キナクリドン、ジオキサジン、キナクリドン、カーボンブラックが好ましい。
【0121】
分散剤としては、慣用されている低分子または高分子の分散剤を用いることができる。例えば、低分子の分散剤としてはステアリン酸など挙げられ、高分子の分散剤としては、スルホネート基、ホスフェート基、ホスホネート基またはカルボキシル基を含有するポリウレタン、カルボキシ基含有ビニルクロリドポリマー、ポリイミンポリエステルおよびポリエーテルアクリレートなどが挙げられる。
【0122】
本発明の液晶組成物を光ラジカル重合する際に、慣用の光重合開始剤を含有してもよい
。これらの開始剤の最大吸収波長は、紫外、近紫外または可視光域であり、室温での組成物への照射によって、あるいは照射と同時に加熱を行うことによって重合体を製造してもよい。
【0123】
光重合開始剤としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製品の2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(イルガキュア651)、1-ヒドロキシ-シク
ロヘキシル-フェニル-ケトン(イルガキュア184)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(ダロキュア1173)、イルガキュア500、イルガキュア1000、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オ
ン(イルガキュア295)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン(イルガキュア907)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(イルガキュア369)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェ
ニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(イルガキュア379)、イルガキュア1800、イルガキュア1850、ダロキュア4265、ダロキュア1116、イルガキュア784、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキ
サイド(イルガキュア819)、イルガキュア784、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェ
ニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)] (イルガキュアOXE01)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム) (イ
ルガキュアOXE02)、2-ヒロドキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン(イルガキュア127)、イルガキュ
ア754などが挙げられる。
【0124】
光重合開始剤としては、その他にも、アセトフェノン、ベンゾフェノン、4,4'−ビ
スジメチルアミノベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アゾイソブチルニトリル、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサンソン、メチルフェニルグリオキシレート、3,3',4,4−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、p−ジメ
チルアミノ安息香酸エチル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物、2,2−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、アセトフエノンジメチルケタール、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシンクロヘキシルフェニルケトン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、4,4'−ビスメチルアミノベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0125】
上記重合開始剤は、ラジカル重合可能なエチレン不飽和結合を有する化合物の合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲の量で用いられることが好ましい。
【0126】
本発明の液晶組成物は、上記重合開始剤とともに増感剤を含有してもよい。増感剤としては、例えば、3−位および/または7−位に置換基を有するクマリン類、フラボン類、ジベンザルアセトン類、ジベンザルシクロヘキサン類、カルコン類、キサンテン類、チオキサンテン類、ポルヒリン類、アクリジン類などが挙げられる。
【0127】
本発明の液晶組成物は、対象基材への塗布性を向上させるために、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などの界面活性剤を含有してもよい。具体的には、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤;
エフトップEF301、エフトップEF303、エフトップEF352(新秋田化成(株)製)、メガファックF171、メガファックF172、メガファックF173(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、フロラードFC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、サーフロンSC−101、サーフロンSC−102、サーフロンSC−103、サーフロンSC−104、サーフロンSC−105、サーフロンSC−106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤;
オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、アクリル酸系もしくはメタクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.57、ポリフローNo.95(共栄社化学(株)製)などが挙げられる。これらの界面活性剤は、重合体に対して5重量部以下となる量で用いられる。
【0128】
本発明の液晶組成物は、塗布対象となる基材への密着性を向上させるために、密着促進剤を含有してもよい。密着促進剤としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0129】
酸化防止剤としては、例えば、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)等が挙げられる。
【0130】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(3−t−ブチルー5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン類などが挙げられる。
【0131】
凝集防止剤としては、たとえば、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0132】
<有機溶媒>
本発明の液晶組成物は、組成物を希釈するため、あるいは塗布性を向上させるために、有機溶媒を含有してもよい。有機溶媒としては、直鎖もしくは分岐鎖のエステル、特に酢酸エステル、環状エーテル、環状エステル、アルコール、ラクトン、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ケトン、アミド、N−アルキルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。上記有機溶媒は、1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0133】
<用途>
本発明の液晶組成物の用途としては、色材一般、たとえば、液晶顔料、塗料、噴霧インク、印刷インクなどが挙げられる。また、化粧品、偽造防止用印刷物、装飾品または光学フィルム(例えば、液晶表示素子やホログラフィー素子などの光学素子における偏光板、補償板、カラーフィルター等)に使用することもできる。
【0134】
[重合体]
本発明の重合体は、上述した本発明の液晶組成物を重合させることによって得られ、重合により組成物のコレステリック液晶相(螺旋構造)が固定化され、所望の色や目的に応じた波長の光を反射する。組成物の重合反応は、加熱による熱重合でもよく、光照射による光重合でもよく、両者を組み合わせた方法で行ってもよい。
【0135】
光重合に用いられる好ましい光の種類は、紫外線、可視光線、赤外線などであり、電子線、X線などの電磁波を用いてもよい。通常は、紫外線または可視光線が用いられる。波長の範囲は好ましくは150〜500nm、より好ましくは250〜450nm、特に好ましくは300〜400nmである。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが挙げられ、超高圧水銀ランプが好ましい。
【0136】
光源からの光はそのまま組成物に照射してもよく、フィルターによって選択した特定の波長(または特定の波長領域)を組成物に照射してもよい。照射エネルギー密度は好ましくは2〜5000mJ/cm2、より好ましくは10〜3000mJ/cm2、特に好ましくは100〜2000mJ/cm2の範囲である。照度は好ましくは0.1〜5000m
W/cm2、より好ましくは1〜2000mW/cm2の範囲である。
【0137】
本発明の重合体は、本発明の液晶組成物を対象となる基材の表面に直接塗布した後、重合することにより得ることができる。重合体の形状は、特に限定されず、膜状(フィルム状)であっても、板状などであってもよく、また、重合体は成形されてもよい。
【0138】
また、本発明の液晶組成物は、構成成分の組み合わせや組成比または組成物の硬化温度を変更することにより、コレステリック相が反射する光の波長領域を赤〜緑〜青〜紫の広範囲に制御することができる。したがって、硬化時の温度条件を厳密に制御することなく、所望の色や目的に応じた波長の光を反射する重合体を得ることができる。
【0139】
<用途>
本発明の重合体の用途としては、色材一般、たとえば、液晶顔料、塗料、噴霧インク、印刷インクなどが挙げられる。また、膜(蒸着膜のように単体で支持体から剥がすことができないようなもの、および光学フィルムのように単体として扱えるようなものの双方の態様を包含する。)、多層膜、化粧品、偽造防止用印刷物、装飾品または光学フィルム(例えば、液晶表示素子やホログラフィー素子などの光学素子における偏光板、補償板、カラーフィルター等)に使用することもできる。
【0140】
本発明の多層膜は、重合性コレステリック液晶組成物、好ましくは本発明の重合性コレステリック液晶組成物からなる重合体を含有する複数の膜が積層されたものであり、カラー・フリップフロップ性を有することが望ましい。カラー・フリップフロップ性とは、色彩の角度依存性を意味しており、塗膜面の明暗および色相が見る角度に依存して変化する性質をいう。コレステリック液晶膜はカラー・フリップフロップ性を有している。しかし、単一層では色相のコントロールが難しく、特に、観察角度を多層膜の面に対して垂直な
方向から斜めに変えることによって短波長側から長波長側に色相にカラーシフトする単一層は存在しない。
【0141】
上記多層膜は、例えば、基材上に上記重合性コレステリック液晶組成物を塗布し、乾燥させ、次いで該液晶組成物を重合(硬化)させることにより一層目の膜を形成した後、該一層目の膜上に前記液晶組成物とは異なる組成の重合性コレステリック液晶組成物を塗布し、乾燥させ、次いで該液晶組成物を重合(硬化)させることにより二層目の膜を形成し、この操作を必要に応じて繰り返すことにより得ることができる。
【0142】
なお、異なるピッチを有する組成物を硬化させ多層膜にすることにより、観察角度を多層膜の面に対して垂直な方向から斜めに変えることによって、短波長側から長波長側の色相にカラーシフトする、あるいは長波長側から短波長側の所望する色相にカラーシフトする多層膜を形成することができる。
【0143】
上記多層膜の形成における液晶組成物の塗布、乾燥および重合等の操作は、公知の方法および条件で行うことができる。
【実施例】
【0144】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0145】
<合成例1> 重合性エステル化合物(1−1)の合成
【0146】
【化20】

【0147】
(1)岡安商店社製γ−オリザノール50.0g、水酸化カリウム(85%)30g(0.45mol)およびエタノール500mlの混合物を加熱還流下で10時間攪拌した。エタノールを留去し、酢酸エチルによる抽出を行い、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、水で洗浄した。次いで、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去することにより茶褐色の固体(γ−オリザノールの加水分解物)33gを得た。
【0148】
(2)4−アセトキシ安息香酸(1.8g)、塩化チオニル(20mL)およびトルエン15mlを混合し、ピリジン0.05mlを滴下した後、還流させながら2時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物にトルエン溶媒を加え、塩化チオニルおよびトルエン溶媒を減圧除去した。前記溶媒除去後の残留物を、(1)で得られたγ−オリザノールの加水分解物4.4g、ピリジン8.8mlおよびトルエン50mlの混合物に滴下した後、室温下で12時間撹拌した。反応終了後、不要物をろ過し、トルエン層を塩酸水、飽和炭酸水素ナトリウムおよび水を順次用いて洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この有機層から減圧下で溶剤を除去し、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出液:トルエン/酢酸エチル=100/1(V/V))により精製し、4−アセトキシ安息香酸とγ−オリザノールの加水分解物とのエステル2.4gを得た。
【0149】
(3)(2)で得られたエステル2.4gおよびメタノール30mlの混合物に5mlのアンモニア水を滴下した後、室温で1時間攪拌した。次いで、この混合物に塩酸水を滴下しながら攪拌して酸性にした後、トルエンを加えた。このトルエン層を飽和炭酸水素ナ
トリウムおよび水を順次用いて十分に洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この有機層から減圧下で溶剤を除去し、(2)で得られたエステルの脱アセチル化体である4−ヒドロキシ安息香酸とγ−オリザノールの加水分解物とのエステル(下記化学式で表される化合物)2.1gを得た。
【0150】
【化21】

【0151】
(4)(3)で得られたエステル0.65g、トルエン30mlおよびピリジン0.1mlの混合物に下記化合物(i)0.26gを滴下し、室温で5時間攪拌した。反応終了
後、不溶物を濾過し、トルエン層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶剤を除去し、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出液:トルエン/酢酸エチル=50/1(V/V))により精製し、目的の重合性エステル化合物(1−1)0.45gを得た。
【0152】
【化22】

【0153】
<合成例2> 重合性エステル化合物(1−2)の合成
【0154】
【化23】

【0155】
合成例1の(3)で得られたエステル0.65g、トルエン30mlおよびピリジン0.1mlの混合物に下記化合物(ii)0.7gを滴下し、室温で5時間攪拌した。反応終了後、不溶物を濾過し、トルエン層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶剤を除去し、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出液:トルエン/酢酸エチル=100/1(V/V))により精製し、目的の重合性エステル化合物(1−2)0.5gを得た。
【0156】
【化24】

【0157】
<合成例3> 重合性エステル化合物(1−6)の合成
【0158】
【化25】

【0159】
合成例1の(3)で得られたエステル1.03g、下記化合物(vi)0.37g、4−ジメチルアミノピリジン0.02gおよびジクロロメタン50mlの混合物にN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド0.3gのジクロロメタン溶液10mlを氷冷下で滴下し、室温で5時間攪拌した。反応終了後、不溶物を濾過し、トルエン層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶剤を除去し、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出液:トルエン/酢酸エチル=100/1(V/V))により精製し、目的の重合性エステル化合物(1−6)0.49gを得た。
【0160】
【化26】

【0161】
<合成例4> 重合性エステル化合物(2−1)の合成
【0162】
【化27】

【0163】
合成例1の(1)で得られたγ−オリザノールの加水分解物1.1g(2.5mmol)、ピリジン0.22mlおよびトルエン50mlの混合物に、上記化合物(i)0.4
9gを室温で滴下し、室温で4時間攪拌した。反応後、析出した不溶物を濾別除去し、濾液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル、溶出液:トルエン/酢酸エチル(容量比:50/1)]で精製することにより、目的の重合性エステル化合物(2−1)0.81gを得た。
【0164】
<合成例5> 重合性エステル化合物(2−2)の合成
【0165】
【化28】

【0166】
合成例1の(1)で得られたγ−オリザノールの加水分解物2.2g(5mmol)、ピリジン0.44mlおよびトルエン50mlの混合物に、上記化合物(ii)1.1g(5.5mmol)を室温で滴下し、室温で3時間攪拌した。反応後、析出した不溶物を濾別除去し、濾液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。残留物をカ
ラムクロマトグラフィー[シリカゲル、溶出液:トルエン/酢酸エチル(容量比:50/1)]で精製することにより、目的の重合性エステル化合物(2−4)1.8gを得た。
【0167】
<合成例6> 重合性エステル化合物(2−4)の合成
【0168】
【化29】

【0169】
合成例1の(1)で得られたγ−オリザノールの加水分解物0.8g、ピリジン0.16mlおよびトルエン50mlの混合物に、下記化合物(iv)0.44gを室温で滴下し、室温で4時間攪拌した。反応後、析出した不溶物を濾別除去し、濾液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル、溶出液:トルエン/酢酸エチル(容量比:50/1)]で精製することにより、目的の重合性エステル化合物(2−4)0.6gを得た。
【0170】
【化30】

【0171】
[実施例1]
合成例2で得られた重合性エステル化合物(1−2)33重量部および合成例5で得られた重合性エステル化合物(2−2)67重量部を混合して重合性液晶組成物を調製した。得られた組成物は、室温(23℃)および30℃で青色の反射色を示し、35℃で緑色の反射色を示した。なお、反射色は目視観察による判断である。結果を表1−1に示す。
【0172】
[実施例2〜21]
表1−1および表1−2に示す組成を有する重合性液晶組成物を調製し、実施例1と同様にして反射色を調べた。結果を表1−1および表1−2に示す。
【0173】
【表1−1】

【0174】
【表1−2】

【0175】
[実施例22]
ラビング処理したTACフィルム(FUJI TAC T40UZ製 厚み39μm)
上に、実施例1で調製した重合性液晶組成物25wt%と重合開始剤(イルガキュア907)5wt%とを含むトルエン溶液をベーカーアプリケーターにより塗布した。室温で2分間乾燥させた後、オーブン内にて80℃で3分間加熱して溶媒を除去した。次に、窒素雰囲気下でUV照射(積算光量490mJ/cm3)して組成物を重合させることにより
、一層目のコレステリック液晶層を形成した。このコレステリック液晶層上に、実施例5で調製した重合性液晶組成物25wt%と重合開始剤(イルガキュア907)5wt%とを含むトルエン溶液を用いて、一層目と同様な操作で二層目のコレステリック液晶層を形成し、多層膜を得た。一層あたりの膜厚は、乾燥前が25μmであり、硬化後は4μmであった。
【0176】
得られた多層膜の面に対して垂直方向から観察したときの色相は緑であったが、多層膜を傾けて観察角度を斜めにすると色相は赤に変化した。
【0177】
[実施例23]
実施例22において、2層目の液晶層を形成するために用いた実施例5の重合性液晶組成物の代わりに実施例2の重合性液晶組成物を用いたこと以外は、実施例22と同様にして多層膜を形成した。得られた多層膜の面に対して垂直方向から観察したときの色相はオレンジであったが、多層膜を傾けて観察角度を斜めにすると色相は青に変化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−オリザノール(A)の加水分解物の残基と環構造とを有する重合性エステル化合物(1)、γ−オリザノール(A)の加水分解物の残基を有し、かつ環構造を有しない重合性エステル化合物(2)およびγ−オリザノール(A)の水添物の残基を有する重合性エステル化合物(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、
前記γ−オリザノール(A)が、少なくとも1種の植物ステロールのフェルラ酸エステルと、少なくとも1種のトリテルペンアルコールのフェルラ酸エステルとを含む混合物であり、
前記γ−オリザノール(A)の加水分解物が、少なくとも1種の植物ステロールと少なくとも1種のトリテルペンアルコールとを含む混合物である
ことを特徴とする重合性コレステリック液晶組成物。
【請求項2】
前記重合性エステル化合物(1)が下記式(B1)で表される化合物であり、前記重合性エステル化合物(2)が下記式(B2)で表される化合物であり、前記重合性エステル化合物(3)が下記式(B3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の重合性コレステリック液晶組成物。
P−X−(Z−Q)m−COO−T (B1)
[式(B1)中、Tは前記γ−オリザノール(A)の加水分解物の残基であり、
Qは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンであり、Zは単結合、−COO−、−OCO−または−OCOO−であり、
mは1〜3の整数であり、mが2または3であるとき、複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、複数のZもそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、該アルキレンにおける任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、
Pは下記式(P1)〜(P3)のいずれかで表される重合性基である。]
【化1】

[式(P1)〜(P3)中、Rは水素または炭素数1〜3のアルキルである。]
P−X−Y−COO−T (B2)
[式(B2)中、T、XおよびPは、前記式(B1)中のT、XおよびPと同義であり、Yは単結合または−O−である。]
【化2】

[式(B3)中、Q、Z、XおよびPは前記式(B1)中のQ、Z、XおよびPと同義であり、T’は前記γ−オリザノール(A)の水添物の残基である。]
【請求項3】
前記重合性エステル化合物(1)、前記重合性エステル化合物(2)および前記重合性エステル化合物(3)からなる群より選ばれる2種以上の化合物を含有することを特徴と
する請求項1または2に記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【請求項4】
前記重合性エステル化合物(1)および前記重合性エステル化合物(2)を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【請求項5】
前記重合性エステル化合物(1)および前記重合性エステル化合物(2)を含有し、前記式(B1)中のQが1,4−フェニレンであることを特徴とする請求項2に記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【請求項6】
前記式(B2)中のXが炭素数2〜9のアルキレンであることを特徴とする請求項5に記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【請求項7】
前記γ−オリザノール(A)が、下記式(a1)で表される少なくとも1種の化合物と下記式(a2)で表される少なくとも1種の化合物とを含む混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【化3】

[式(a1)および(a2)中、R1は分岐状の炭素数9〜10のアルキルもしくはアル
ケニルであり、R2は分岐状の炭素数8〜9のアルキルもしくはアルケニルである。]
【請求項8】
前記γ−オリザノール(A)の加水分解物が、下記式(a1−1)〜(a1−4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の植物ステロールと、下記式(a2−1)〜(a2−4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のトリテルペンアルコールとを含む混合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【化4】

【化5】

【請求項9】
前記重合性エステル化合物(1)〜(3)以外の液晶性の重合性化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【請求項10】
非液晶性の重合性化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物。
【請求項11】
前記非液晶性の重合性化合物が、単官能(メタ)アクリルモノマー、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルオリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項10に記載の重合性コレステリック液晶組成物

【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物を重合させることによって得られることを特徴とする重合体。
【請求項13】
コレステリック液晶相を呈することを特徴とする請求項12に記載の重合体。
【請求項14】
請求項12または13に記載の重合体を含有することを特徴とする膜。
【請求項15】
請求項12または13に記載の重合体を含有する複数の膜が積層されてなることを特徴とする多層膜。
【請求項16】
重合性コレステリック液晶組成物からなる重合体を含有し、かつ、カラー・フリップフロップ性を有することを特徴とする多層膜。
【請求項17】
重合性コレステリック液晶組成物からなる重合体を含有し、かつ、観察角度を多層膜の面に対して垂直方向から斜めに変えることによって、短波長側から長波長側の色相にカラーシフトすることを特徴とする多層膜。
【請求項18】
重合性コレステリック液晶組成物からなる重合体を含有し、かつ、観察角度を多層膜の面に対して垂直方向から斜めに変えることによって、長波長側から短波長側の色相にカラーシフトすることを特徴とする多層膜。
【請求項19】
前記重合性コレステリック液晶組成物が請求項1〜11のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物であることを特徴とする請求項16〜18のいずれかに記載の多層膜。
【請求項20】
請求項12または13に記載の重合体を含有することを特徴とする色材。
【請求項21】
液晶顔料、塗料、噴霧インク、印刷インク、化粧品、偽造防止用印刷物、装飾品および光学フィルムから選ばれる用途への、請求項1〜11のいずれかに記載の重合性コレステリック液晶組成物の使用。
【請求項22】
液晶顔料、塗料、噴霧インク、印刷インク、化粧品、偽造防止用印刷物、装飾品および光学フィルムから選ばれる用途への、請求項12または13に記載の重合体の使用。

【公開番号】特開2010−254901(P2010−254901A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109320(P2009−109320)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】