説明

重合性光学活性化合物及び該重合性光学活性化合物を含有する重合性組成物

【課題】高い螺旋誘起力を有し、液晶組成物に添加することで、液晶組成物の物理的性質、光学的性質を大きく損なうことなく必要なヘリカルピッチ長を達成することができる光学活性化合物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される重合性光学活性化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な重合性光学活性化合物、これを用いた重合性組成物、及び該重合性組成物を光硬化して得られる重合体に関し、詳しくは、光学活性部位としてシクロヘキサン−1,2−ジチオエステル構造を有し、且つ重合性部位として(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性光学活性化合物、これを用いた重合性組成物及び重合体に関する。本発明の重合体は、光学偏光子、位相差板、N型Cプレート等の光学補償板、視覚補償フィルム、輝度向上フィルム又は反射膜等の光学異方体として有用なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビ、ビデオカメラのモニター等の液晶表示装置は、低消費電力化、低電圧駆動化が求められている。これらの要請に対し、液晶性物質の配向性、屈折率、誘電率、磁化率等の物理的性質の異方性を利用した位相差板、偏光板、光偏光プリズム、反射板等の光学異方体を応用することで、光源の利用率を高める方法や液晶表示素子の視野角特性を向上させる方法が検討されている。
【0003】
これらの光学異方体は、重合性部位を有する液晶化合物又は重合性部位を持つ液晶化合物を含む重合性組成物を配向させた状態で、紫外線等のエネルギー線を照射して重合させる方法によって得られる。つまり、得られる光学異方体は、分子配向性を保った状態で固定化されたものであり、高次構造的に制御された光学活性部位の効果によって、光学的異方性を示す重合体である。
【0004】
特に、光学活性化合物を液晶組成物に添加すると、液晶分子において螺旋構造が誘起され、光学異方体の光学的性質を操作することが可能となる。
この螺旋構造の周期的な長さであるヘリカルピッチ長は、光学活性化合物固有の螺旋誘起力(ヘリカルツイスティングパワー)と添加量に依存する。螺旋誘起力が小さい光学活性化合物は、誘起されるヘリカルピッチ長が長くなるため、ヘリカルピッチ長を短くしたい場合には、光学活性化合物を多量に添加する必要がある。しかし、一般に、液晶組成物は、光学活性化合物の添加量が多くなると、液晶材料としての性能が低下し、粘度の上昇、応答速度の低下、駆動電圧の上昇、液晶相発現温度範囲の縮小、等方相転移温度の低下等、種々の問題が生じる。従って、螺旋誘起力の大きな光学活性化合物が要求されている。
【0005】
しかし、これまでに報告されている光学活性化合物(例えば、特許文献1〜特許文献7)は、満足できるものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平2−305888号公報
【特許文献2】特開平3−72445号公報
【特許文献3】特開平4−317025号公報
【特許文献4】特表平9−506088号公報
【特許文献5】特開2003−55661号公報
【特許文献6】特開2003−137887号公報
【特許文献7】特開2005−281223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、高い螺旋誘起力を有し、液晶組成物に添加することで、液晶組成物の物理的性質、光学的性質を大きく損なうことなく必要なヘリカルピッチ長を達成することができる光学活性化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1記載の発明)は、下記一般式(1)で表される重合性光学活性化合物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
【化1】

【0010】
また、本発明(請求項2記載の発明)は、上記一般式(1)において、−Y1−が−b1−a1−、−Y2−が−b2−a2−で表される構造であって、a1及びa2は各々独立して、単結合、炭素原子数1〜8の分岐を有してもよいアルキレン基、エーテル結合、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、置換基を有してもよい6員環、置換基を有してもよいナフタレン環、又はこれらの組み合わせを表し、b1及びb2は各々独立して、炭素原子数1〜8の分岐を有してもよいアルキルチオエーテル結合、置換基を有してもよい6員環、置換基を有してもよいナフタレン環、又はこれらの組み合わせを表す請求項1記載の重合性光学活性化合物を提供するものである。
【0011】
また、本発明(請求項3記載の発明)は、上記一般式(1)において、−Y1−X1及び−Y2−X2が、各々独立して、下記一般式(2)又は(3)で表される基である請求項1記載の重合性光学活性化合物を提供するものである。
【0012】
【化2】

【0013】
また、本発明(請求項4記載の発明)は、請求項1〜3の何れかに記載の重合性光学活性化合物を含有する重合性組成物を提供するものである。
【0014】
また、本発明(請求項5記載の発明)は、さらに液晶化合物を含有する請求項4記載の重合性組成物を提供するものである。
【0015】
また、本発明(請求項6記載の発明)は、上記重合性光学活性化合物の含有量と上記液晶化合物の含有量との合計を100質量部としたとき、上記重合性光学活性化合物の含有量が1〜50質量部である請求項5記載の重合性組成物を提供するものである。
【0016】
また、本発明(請求項7記載の発明)は、上記液晶化合物が重合性官能基を有する化合物である請求項5又は6記載の重合性組成物を提供するものである。
【0017】
また、本発明(請求項8記載の発明)は、コレステリック相を示す請求項4〜7の何れかに記載の重合性組成物を提供するものである。
【0018】
また、本発明(請求項9記載の発明)は、請求項4〜8の何れかに記載の重合性組成物を光重合させることにより作製された重合体を提供するものである。
【0019】
また、本発明(請求項10記載の発明)は、光学異方性を有する請求項9記載の重合体を提供するものである。
【0020】
また、本発明(請求項11記載の発明)は、請求項9又は10記載の重合体を使用してなる光学フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の重合性光学活性化合物は新規化合物であり、僅かな量で液晶組成物、特にコレステリック相液晶組成物の反射波長を可視域にシフトさせることができる、また、本発明の重合性光学活性化合物は、そのメソゲン骨格を変更することにより、選択反射光の波長範囲を調節することが可能となる。さらに、該光学活性化合物は、キラルなドープ剤として、光学偏光子及び光学フィルムにおいて好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の重合性光学活性化合物、該重合性光学活性化合物を含有する本発明の重合性組成物、及び該重合性組成物を光重合させることにより作製された本発明の重合体について、その好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0023】
先ず、本発明の重合性光学活性化合物について説明する。
上記一般式(1)中のY1、Y2及び上記a1、a2で表される炭素原子数1〜8の分岐を有してもよいアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1,3−ジメチルプロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、4−メチルブチレン、2,4−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、へプチレン、オクチレン等が挙げられる。
【0024】
上記一般式(1)中のY1、Y2並びに上記a1、a2、b1及びb2で表される置換基を有してもよい6員環とは、ベンゼン環又はシクロヘキサン環であり、該6員環中の−CH2−が硫黄原子又は酸素原子で置換されたものであってもよく、該6員環中の−CH=が窒素原子で置換されたものであってもよい。また、上記シクロヘキサン環が不飽和結合を含むものであってもよい。
【0025】
硫黄原子で置換された6員環としては、チオピラン、チオピリリウム等が挙げられ、酸素原子で置換された6員環としては、1,4−ジオキサン−2,6−ジオン、1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、1,3,5−トリオキサン、ピラン等が挙げられ、窒素原子で置換された6員環としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられ、また、オキサチアン、オキサジン、チアジン等の異なるヘテロ原子で置換された6員環であってもよい。
【0026】
また、上記6員環又は上記ナフタレン環は、例えば、ハロゲン原子、ニトリル基、カルボキシル基、炭素原子数1〜8の分岐を有してもよいアルキル基、炭素原子数1〜8の分岐を有してもよいアルコキシ基、炭素原子数2〜8の分岐を有していてもよいアルケニル基、又はこれらの組み合わせで置換されていてもよい。
【0027】
上記の炭素原子数1〜8の分岐を有してもよいアルキル基若しくはアルコキシ基又は炭素原子数2〜8の分岐を有していてもよいアルケニル基中の−CH2−は、硫黄原子又は酸素原子で置換されていてもよく、該アルキル基、アルコキシ基又はアルケニル基中の水素原子は、ハロゲン原子又はニトリル基で置換されていてもよい。
【0028】
上記炭素原子数1〜8の分岐を有してもよいアルキル基としては、例えば、メチル、クロロメチル、トリフルオロメチル、シアノメチル、エチル、ジクロロエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。
【0029】
上記炭素原子数1〜8の分岐を有してもよいアルコキシ基としては、例えば、メチルオキシ、クロロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、シアノメチルオキシ、エチルオキシ、ジクロロエチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ等の直鎖又は分岐のアルコキシ基が挙げられる。
【0030】
上記炭素原子数2〜8の分岐を有してもよいアルケニル基としては、例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、オクテニル等の直鎖又は分岐のアルケニル基が挙げられる。
【0031】
上記b1及びb2で表される炭素原子数1〜8の分岐を有してもよいアルキルチオエーテル結合としては、例えば、上記アルキレン基の−CH2−をチオエーテル結合で置換したものが挙げられる。
【0032】
上記一般式(1)で表される本発明の重合性光学活性化合物の具体的な構造としては、下記〔化3〕及び〔化4〕に示す化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。尚、〔化3〕及び〔化4〕中のmは1〜8の整数、nは2〜7の整数、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
本発明の重合性光学活性化合物の中でも、上記一般式(1)中の−Y1−X1及び−Y2−X2で表される(メタ)アクリロイルオキシ基を末端に含む重合性官能基が、下記一般式(2)又は(3)で表される重合性官能基であるものが好ましい。
【0036】
【化5】

【0037】
上記一般式(1)で表される本発明の重合性光学活性化合物のより具体的な例としては、下記化合物No.1〜No.4が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。
【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
本発明の重合性光学活性化合物は、その製造方法については特に限定されず、公知の反応を応用して製造することができ、例えば、フェノール基に対して(メタ)アクリル酸ハロゲン化物をエステル化させたり、下記〔化10〕又は〔化11〕に示す反応式に従って製造することができる。即ち、本発明の重合性光学活性化合物は、例えば以下のようにして得ることができる。先ず、ヒドロキシ安息香酸又はヒドロキシナフトエ酸のフェノール性水酸基に対してハロゲノアルキルアルコールを反応させアルキルエーテル体へと変換した後、さらにこのヒドロキシアルキルオキシ安息香酸又はヒドロキシアルキルオキシナフトエ酸の水酸基に対して(メタ)アクリル酸ハロゲン化物をエステル化させて、(メタ)アクリロイルオキシ中間体を得る。一方、下記〔化10〕に示す反応式に従って、チオエステル中間体を得る。次いで、該(メタ)アクリロイルオキシ中間体と該チオエステル中間体とを、下記〔化11〕に示す反応式に従って反応させて、本発明の重合性光学活性化合物を得ることができる。
【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
本発明の重合性光学活性化合物は、液晶材料、特にコレステリック相を示す液晶材料に配合されて、耐熱性、耐溶剤性、透明性、光学特性及び液晶配向固定化能に優れた光学異方体作製用材料として好ましく用いられる他、液晶配向膜、液晶配向制御剤、コーティング材、保護板作製材料等に用いることができる。
【0046】
次に、本発明の重合性組成物について説明する。
本発明の重合性組成物は、本発明の重合性光学活性化合物を含有するもので、さらに液晶化合物を含有するものは、光学異方体作製用材料として好ましく用いられる。尚、ここでいう液晶化合物には、従来既知の液晶化合物及び液晶類似化合物並びにそれらの混合物が含まれる。
【0047】
本発明の重合性組成物において、本発明の重合性光学活性化合物と上記液晶化合物との配合割合は、特に制限されず、本発明の重合性光学活性化合物の効果が損なわれない範囲であれば良いが、両者の合計量を100質量部としたとき、本発明の重合性光学活性化合物が、1〜50質量部、特に1〜30質量部となるようにすることが好ましい。本発明の重合性光学活性化合物の比率が1質量部より小さいと、本発明の効果が得られない場合があり、50質量部より大きいと、重合性組成物を硬化させる際、相分離が生じたり、重合性光学活性化合物の析出と液晶分子の配向の不均一に伴う白濁が現れたりする場合がある。
【0048】
上記液晶化合物としては、通常一般に使用される液晶化合物を使用することができ、該液晶化合物の具体例としては、特に制限するものではないが、例えば下記〔化12〕に示す液晶化合物が挙げられる。
尚、〔化12〕中のW1は水素原子、炭素原子数1〜8の分岐を有してもよいアルキル基、炭素原子数1〜8の分岐を有してもよいアルコキシ基、炭素原子数2〜8の分岐を有してもよいアルケニル基、炭素原子数2〜8の分岐を有してもよいアルケニルオキシ基、炭素原子数2〜8の分岐を有してもよいアルコキシアルキル基、炭素原子数2〜8の分岐を有してもよいアルカノイルオキシ基又は炭素原子数2〜8の分岐を有してもよいアルコキシカルボニル基を表し、W3はシアノ基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8の分岐を有してもよいアルキル基、炭素原子数2〜8の分岐を有してもよいアルカノイルオキシ基又は炭素原子数2〜8の分岐を有してもよいアルコキシカルボニル基を表し、W2及びW4は水素原子、ハロゲン原子又はニトリル基を表す。
【0049】
【化12】

【0050】
また、本発明の重合性組成物においては、上記液晶化合物として、重合性官能基を有する液晶化合物が好ましく用いられる。該重合性官能基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、フルオロアクリル基、クロロアクリル基、トリフルオロメチルアクリル基、オキシラン環(エポキシ)、オキセタン環、スチレン化合物(スチリル基)、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルケトン基、マレイミド基、フェニルマレイミド基等が好ましい。該重合性官能基を有する液晶化合物としては、通常一般に使用されるものを用いることができ、その具体例としては、特に制限するものではないが、特開2005−15473号公報の段落[0172]〜[0314]に挙げられる化合物、及び下記〔化13〕〜〔化24〕に示す化合物が挙げられる。
【0051】
【化13】

【0052】
【化14】

【0053】
【化15】

【0054】
【化16】

【0055】
【化17】

【0056】
【化18】

【0057】
【化19】

【0058】
【化20】

【0059】
【化21】

【0060】
【化22】

【0061】
【化23】

【0062】
【化24】

【0063】
本発明の重合性組成物は、必要に応じて用いられる他の単量体(エチレン性不飽和結合を有する化合物)及びラジカル重合開始剤と共に、溶剤に溶解して溶液にすることができる。
【0064】
上記他の単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、第二ブチル(メタ)アクリレート、第三ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アリルオキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−フェニルエチル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、ジフェニルメチル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ペンタクロルフェニル(メタ)アクリレート、2−クロルエチル(メタ)アクリレート、メチル−α−クロル(メタ)アクリレート、フェニル−α−ブロモ(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0065】
本発明の重合性組成物を用いて作製される重合体の耐熱性及び光学特性を確保するために、他の単量体の含有量は、本発明の重合性光学活性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、特に30質量部以下が好ましい。
【0066】
上記ラジカル重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフェニルスルホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン/アミン、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0067】
また、上記ラジカル重合開始剤と増感剤との組合せも好ましく使用することができる。かかる増感剤としては、チオキサントン、フェノチアジン、クロロチオキサントン、キサントン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ルプレン等が挙げられる。上記ラジカル重合開始剤及び/又は上記増感剤を添加する場合、それらの添加量は、それぞれ、本発明の重合性光学活性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下がさらに好ましく、0.1〜3質量部の範囲内がより好ましい。
【0068】
上記溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチレン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。溶剤は単一化合物であってもよいし、又は混合物であってもよい。これらの溶剤の中でも、沸点が60〜250℃のものが好ましく、60〜180℃のものが特に好ましい。60℃より低いと塗布工程で溶媒が揮発して膜の厚さにムラが生じやすく、250℃より高いと脱溶媒工程で減圧しても溶媒が残留したり、高温での処理による熱重合を誘起したりして配向性が低下する場合がある。
【0069】
また、本発明の重合性組成物には、選択反射波長及び液晶との相溶性等を調節することを目的として、他の光学活性化合物を添加することができる。かかる他の光学活性化合物を添加する場合、その添加量は、本発明の重合性光学活性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対し、0.1〜100質量部の範囲内が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。かかる光学活性化合物としては、例えば下記〔化23〕〜〔化41〕の化合物を挙げることができる。
【0070】
【化25】

【0071】
【化26】

【0072】
【化27】

【0073】
【化28】

【0074】
【化29】

【0075】
【化30】

【0076】
【化31】

【0077】
【化32】

【0078】
【化33】

【0079】
【化34】

【0080】
【化35】

【0081】
【化36】

【0082】
【化37】

【0083】
【化38】

【0084】
【化39】

【0085】
【化40】

【0086】
【化41】

【0087】
【化42】

【0088】
【化43】

【0089】
また、本発明の重合性組成物には、空気界面側に分布する排除体積効果を有する界面活性剤をさらに含有させることができる。該界面活性剤としては、重合性組成物を支持基板等に塗布することを容易にしたり、液晶相の配向を制御したりする等の効果を与えるものが好ましい。かかる界面活性剤としては、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコール及びそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ペルフルオロアルキルスルホン酸塩、ペルフルオロアルキルカルボン酸塩、ペルフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、ペルフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。界面活性剤の好ましい使用量は、界面活性剤の種類、組成物の成分比等に依存するが、本発明の重合性光学活性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.05〜1質量部の範囲内がより好ましい。
【0090】
また、本発明の重合性組成物には、必要に応じて添加物をさらに含有させてもよい。重合性組成物の特性を調製するための添加物としては、例えば、保存安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、無機物及び有機物等の微粒子化物、並びにポリマー等の機能性化合物が挙げられる。
【0091】
上記保存安定剤は、重合性組成物の保存安定性を向上させる効果を付与することができる。使用できる保存安定剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、2−ナフチルアミン類、2−ヒドロキシナフタレン類等が挙げられる。これらを添加する場合は、本発明の重合性光学活性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下が特に好ましい。
【0092】
上記酸化防止剤としては、特に制限なく公知の化合物を使用することができ、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、トリフェニルホスファイト、トリアルキルホスファイト等を用いることができる。
【0093】
上記紫外線吸収剤としては、特に制限なく公知の化合物を使用することができ、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物又はニッケル錯塩系化合物によって紫外線吸収能をもたせたものを用いることができる。
【0094】
上記微粒子化物は、光学(屈折率)異方性(Δn)を調整したり、重合体の強度を上げたりするために用いることができる。上記微粒子化物の材質としては、無機物、有機物、金属等が挙げられる。凝集防止のため、上記微粒子化物としては、0.001〜0.1μmの粒子径のものが好ましく、0.001〜0.05μmの粒子径のものがさらに好ましい。また、粒子径の分布がシャープであるものが好ましい。上記微粒子化物は、本発明の重合性光学活性化合物と上記液晶化合物との合計量100質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0095】
上記無機物としては、セラミックス、フッ素金雲母、フッ素四ケイ素雲母、テニオライト、フッ素バーミキュライト、フッ素ヘクトライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、モンモリロナイト、バイデライト、カオリナイト、フライポンタイト、ZnO、TiO2、CeO2、Al23、Fe23、ZrO2、MgF2、SiO2、SrCO3、Ba(OH)2、Ca(OH)2、Ga(OH)3、Al(OH)3、Mg(OH)2、Zr(OH)4等が挙げられる。また、炭酸カルシウムの針状結晶等の微粒子は光学異方性を有し、このような微粒子によって重合体の光学異方性を調節できる。
上記有機物としては、カーボンナノチューブ、フラーレン、デンドリマー、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリイミド等が挙げられる。
【0096】
上記ポリマーは、重合体の電気特性や配向性を制御することができる。上記ポリマーとしては、上記溶剤に可溶性の高分子化合物を好ましく使用することができる。かかる高分子化合物としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエポキサイド、ポリエステル、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0097】
次に、本発明の重合体について説明する。
本発明の重合体は、例えば、上記重合性組成物を溶剤に溶解して溶液とした後、支持基板に塗布して、重合性組成物中の液晶分子を配向させた状態で脱溶媒し、次いでエネルギー線を照射して重合することにより得ることができる。
【0098】
上記支持基板としては、特に限定されないが、好ましい例としては、ガラス板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板、ポリイミド板、ポリアミド板、ポリメタクリル酸メチル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニル板、ポリテトラフルオロエチレン板、セルロース板、シリコン板、反射板、シクロオレフィンポリマー及び方解石板が挙げられる。このような支持基板上に、後述のようにポリイミド系配向膜又はポリビニルアルコール系配向膜を施したものが、特に好ましく使用することができる。
【0099】
上記支持基板に本発明の重合性組成物の溶液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、該方法としては、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、流延成膜法等が挙げられる。尚、本発明の重合体の膜厚は、用途等に応じて適宜選択されるが、好ましくは0.001〜30μm、より好ましくは0.001〜10μm、特に好ましくは0.005〜8μmの範囲から選択される。
【0100】
本発明の重合性組成物中の液晶分子を配向させる方法としては、例えば、支持基板上に事前に配向処理を施す方法が挙げられる。配向処理を施す好ましい方法としては、各種ポリイミド系配向膜又はポリビニルアルコール系配向膜からなる液晶配向層を支持基板上に設け、ラビング等の処理を行う方法が挙げられる。また、支持基板上の重合性組成物に磁場や電場等を印加する方法等も挙げられる。
【0101】
本発明の重合性組成物を重合させる方法は、光、電磁波又は熱を用いる公知の方法を適用できる。光又は電磁波による重合反応としては、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、リビング重合等が挙げられる。これらの重合反応によれば、重合性組成物が液晶相を示す条件下で、重合を行なわせることが容易である。また、磁場や電場を印加しながら架橋させることも好ましい。支持基板上に形成した液晶(共)重合体は、そのまま使用しても良いが、必要に応じて、支持基板から剥離したり、他の支持基板に転写したりして使用してもよい。
【0102】
上記光の好ましい種類は、紫外線、可視光線、赤外線等である。電子線、X線等の電磁波を用いてもよい。通常は、紫外線又は可視光線が好ましい。好ましい波長の範囲は150〜500nmである。さらに好ましい範囲は250〜450nmであり、最も好ましい範囲は300〜400nmである。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)等が挙げられるが、超高圧水銀ランプを使用することが好ましい。光源からの光はそのまま重合性組成物に照射してもよく、フィルターによって選択した特定の波長(又は特定の波長領域)を重合性組成物に照射してもよい。好ましい照射エネルギー密度は、2〜5000mJ/cm2であり、さらに好ましい範囲は10〜3000mJ/cm2であり、特に好ましい範囲は100〜2000mJ/cm2である。好ましい照度は0.1〜5000mW/cm2であり、さらに好ましい照度は1〜2000mW/cm2である。光を照射するときの温度は、重合性組成物が液晶相を有するように設定できるが、好ましい照射温度は100℃以下である。100℃以上の温度では熱による重合が起こり得るので、良好な配向が得られないときがある。
【0103】
本発明の重合体は、光学異方性を有する成形体として利用することができる。この成形体は、例えば、位相差板(1/2波長板、1/4波長板等)、偏光素子、二色性偏光板、液晶配向膜、配向制御材、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜等の光学フィルム等に用いて光学補償に使用することができる。その他にも、液晶レンズ、マイクロレンズ等の光学レンズ、高分子分散型液晶(PDLC)電子ペーパー、デジタルペーパー等の情報記録材料にも利用することができる。
【実施例】
【0104】
以下、合成例、実施例及び評価例をもって本発明を更に説明する。しかしながら、本発明は以下の合成例等によって制限を受けるものではない。尚、下記合成例1〜2は、本発明の重合性光学活性化合物の実施例を示すものであり、下記実施例1〜2は、本発明の重合性組成物及び該重合性組成物を用いた本発明の重合体の実施例を示すものである。また、下記評価例においては、実施例1〜2の重合体及び比較例1〜2の重合体の物性を評価した。
【0105】
〔合成例1〕化合物No.3の製造
化合物No.3を〔化44〕に示す反応式に従い、以下のステップ1及び2の手順で合成した。
【0106】
【化44】

【0107】
<ステップ1>チオエステル中間体の合成(エステル化)
p−メルカプトフェノール6.4g(50.72mmol)、テトラヒドロフラン(THF)110ml、1,2−シクロヘキシルジカルボン酸4.0g(23.23mmol)及び4−(ジメチルアミノ)−ピリジニウム−パラトルエンスルホネート(DPTS)6.8g(23.2mmol)を仕込み0〜5℃の温度の範囲内で冷却し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)14.4g(69.6mmol)を添加した。添加後、室温(25〜30℃)まで昇温して24時間反応させた。反応完結を薄層クロマトグラフィーにて確認後、ろ過処理を行ってジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)をろ別し、有機層を抽出して減圧濃縮を行い、黄色油状物質を得た。さらにシリカゲルカラムグラフィーによる精製を2回実施して(1回目の精製処理の展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル、2回目の精製処理の展開溶媒:ヘキサン/テトラヒドロフラン(THF))、淡黄色油状物質として、目的物であるチオエステル中間体5.0g(収率55%)を得た。
【0108】
<ステップ2>化合物No.3の製造
窒素雰囲気下、メチルスルホニルクロリド(MsCl)0.74g(6.43mmol)及びテトラヒドロフラン(THF)9.2mlを仕込んで、−30℃以下に冷却し、4−アクリロイルオキシルヘキシルオキシ−安息香酸1.69g(4.94mmol)及びジイソプロピルエチルアミン〔(i-Pr)2NEt〕1.8g(13.92mmol)をテトラヒドロフラン(THF)5.1mlに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃まで昇温し、1時間攪拌した。攪拌後、ステップ1で得られたチオエステル中間体1.0g(2.57mol)及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)3.1mg(0.03mmol)をテトラヒドロフラン(THF)3.7mlに溶解した溶液を滴下し、−15℃を維持して90分間反応させた。反応完結を薄層クロマトグラフィーにて確認した後に、イオン交換水及び酢酸エチルを加えて油水分離して有機層を抽出し、さらにイオン交換水にて水洗した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水させた後、減圧下で溶媒留去して淡黄色油状物質を得た。さらにシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/テトラヒドロフラン(THF))により精製を2回繰り返し、白色結晶1.0gを得た(収率38%、純度93.6%)。得られた白色結晶について分析を行ったところ、目的物である化合物No.3と同定された。分析結果について下記に示す。
【0109】
(1)1H−NMR[400MHz,CDCl3](ppm)
1.37−1.39(2H;m)、1.48−1.54(10H;m)、1.73(4H;quin)、1.84(6H;m)、2.22(2H;d)、3.05(2H;d)、4.05(4H;t)、4.18(4H;t)、5.82(2H;dd)、6.12(2H;dd)、6.40(2H;dd)、6.96(4H;dd)、7.25(4H;dd)、7.45(4H;dd)、8.12(4H;dd)
【0110】
(2)13C−NMR[400MHz,CDCl3](ppm)
25.06、25.68、25.70、28.52、28.96、30.06、53.41、64.45、68.07、114.28、121.29、122.66、124.50、128.53、130.60、132.34、135.69、151.94、163.51、164.48、166.31、199.22
【0111】
(3)IR[KBr錠剤法](cm-1
691、762、812、846、880、927、985、1062、1165、1198、1255、1410、1489、1510、1605、1736、2858、2940
【0112】
〔合成例2〕化合物No.4の製造
化合物No.4を下記〔化45〕に示す反応式に従い、以下の手順で製造した。
【0113】
【化45】

【0114】
窒素雰囲気下、メチルスルホニルクロリド(MsCl)0.74g(6.43mmol)及びテトラヒドロフラン(THF)9.2mlを仕込んだ溶液を−30℃以下になるまで冷却し、2−アクリロイルオキシルヘキシルオキシ−6−ナフトエ酸1.69g(5.79mmol)及びジイソプロピルエチルアミン1.8g(13.92mmol)をテトラヒドロフラン(THF)5.1mlに溶解した溶液を滴下した。滴下後、−15℃になるまで昇温し、1時間攪拌して反応させた。反応後、〔合成例1〕のステップ1で得たチオエステル中間体1.0g(2.57mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン3.1mg(0.03mmol)をテトラヒドロフラン(THF)3.7mlに溶解した溶液を滴下し、−15℃を維持して90分間反応させた。反応完結を薄層クロマトグラフィーにて確認後、イオン交換水及び酢酸エチルを加えて油水分離して有機層を抽出し、さらにイオン交換水にて水洗した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水した後、減圧下で溶媒留去して淡黄色油状物質を得た。さらにシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/テトラヒドロフラン(THF))による精製を行って、白色結晶1.0gを得た(収率54%、純度97.9%)。得られた白色結晶について分析を行ったところ、目的化合物である化合物No.4と同定された。分析結果について下記に示す。
【0115】
(1)1H−NMR[400MHz,CDCl3](ppm)
1.38(2H;t)、1.49−1.62(10H;m)、1.74(4H;quin)、1.86−1.93(6H;quin)、2.24(2H;d)、3.07(2H;d)、4.12(4H;t)、4.19(4H;t)、5.81(2H;dd)、6.13(2H;dd)、6.40(2H;dd)、7.17(2H;d)、7.22(2H;dd)、7.23(4H;d)、7.49(4H;d)、7.79(2H;d)、7.8(2H;d)、8.13(2H;d)、8.68(2H;s)
【0116】
(2)13C−NMR[400MHz,CDCl3](ppm)
25.08、25.75、25.80、28.56、29.03、30.08、53.46、64.50、67.96、106.39、120.12、122.70、124.03、124.67、126.11、127.04、127.78、128.55、130.61、131.05、131.84、135.76、137.64、152.00、159.38、165.07、166.34、199.23
【0117】
(2)IR[KBr錠剤法](cm-1
744、781、810、872、928、987、1055、1194、1273、1339、1391、1481、1627、1726、2858、2939、3063、3432
【0118】
〔実施例1〕重合性組成物及び重合体の作製
下記の手順([1]重合性組成物溶液の調製、[2]支持基板の製作、[3]支持基板への塗布)に従って重合体を作製した。
【0119】
[1]重合性組成物溶液の調製
表1に記載の配合に従って実施例1−1及び1−2の重合性組成物をそれぞれ調製した。各重合性組成物1.0gを溶媒(2−ブタノン)4.0gに添加して溶解した後、ラジカル重合開始剤(N−1919;(株)ADEKA製)0.03gを加えて完全に溶解し、次いで0.45μmフィルターでろ過処理を実施して、実施例1−1及び1−2の重合性組成物溶液をそれぞれ得た。
【0120】
[2]支持基板の製作
中性洗剤で洗浄後、純水で洗い流し乾燥したガラス板に、ポリビニルアルコール5質量%水溶液をスピンコーターで均一に塗工し、100℃で3分間乾燥させた。乾燥後、ガラス基板に支持されたポリビニルアルコールの表面をレーヨン布で一定方向に擦り、支持基板を製作した。
【0121】
[3]支持基板への塗布
上記[1]で調製した重合性組成物溶液を、上記[2]で製作した支持基板上にスピンコーターで塗工した。塗工は、膜厚が約1.0μmになるようにスピンコーターの回転数及び時間を調整して実施した。塗工後、ホットプレートを用いて100℃で3分間乾燥させ、室温下で10分間冷却し、次いで、高圧水銀灯(120W/cm2)を20秒間照射して塗工膜を硬化させて、実施例1−1及び1−2の重合体をそれぞれ得た。
【0122】
〔実施例2〕重合性組成物及び重合体の作製
重合性組成物の配合を表2に記載の配合に変更した以外は〔実施例1〕と同様にして、実施例2−1及び2−2の重合性組成物をそれぞれ調製し、各重合性組成物を用いて実施例2−1及び2−2の重合体を作製した。
【0123】
〔比較例1及び2〕重合性組成物及び重合体の作製
重合性組成物の配合を変更した以外は〔実施例1〕と同様にして、比較例1−1、1−2、2−1及び2−2の重合性組成物をそれぞれ調製し、各重合性組成物を用いて重合体をそれぞれ作製した。尚、重合性組成物の配合は、それぞれ表1及び表2に記載した通りとした。
【0124】
〔評価例〕
上記実施例1、2及び比較例1、2で得られた重合体について、物性評価(選択反射試験及び最大吸収波長測定)を実施した。これらの結果を下記表1及び表2に示す。
【0125】
(1)選択反射試験
得られた重合体の膜表面を目視で観察した。膜表面の全面にわたって均一に配向制御され、且つ選択反射が確認出来る場合は○、配向制御が不均一な場合は△、結晶が析出したり、タックが生じたりした場合は×とした。
【0126】
(2)最大吸収波長測定
分光光度計(U−2000A形;(株)日立製作所製)で、得られた重合体の最大吸収波長を測定した。
【0127】
【表1】

【0128】
【化46】

【0129】
【表2】

【0130】
【化47】

【0131】
上記表1及び表2より、本発明以外の重合性光学活性化合物を用いて作製した重合体(比較例1−2及び比較例2−2)は、重合性光学活性化合物の析出と液晶分子の配向の不均一に伴う白濁が確認され、選択反射が認められなかった。これに対して、本発明の重合性光学活性化合物を利用した重合体(実施例1−1、1−2、2−1及び2−2)は、膜の全面にわたって配向が均一であり、選択反射が確認できた。
【0132】
以上より、本発明の重合性光学活性化合物は、らせん誘起力が大きいため、従来の重合性光学活性化合物より少量の添加で、目的とするらせんピッチを持つ液晶組成物を得られることが分かる。また、本発明の重合性光学活性化合物は、共重合可能な光学活性化合物であり、該重合性光学活性化合物を含有する本発明の重合性組成物を光硬化して得られる重合体は、耐熱性、耐溶媒性に優れる光学偏光子、位相差板、視覚補償フィルム、輝度向上フィルム及び反射膜等の光学フィルムとして有用であることも確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される重合性光学活性化合物。
【化1】

【請求項2】
上記一般式(1)において、−Y1−が−b1−a1−、−Y2−が−b2−a2−で表される構造であって、a1及びa2は各々独立して、単結合、炭素原子数1〜8の分岐を有してもよいアルキレン基、エーテル結合、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、置換基を有してもよい6員環、置換基を有してもよいナフタレン環、又はこれらの組み合わせを表し、b1及びb2は各々独立して、炭素原子数1〜8の分岐を有してもよいアルキルチオエーテル結合、置換基を有してもよい6員環、置換基を有してもよいナフタレン環、又はこれらの組み合わせを表す請求項1記載の重合性光学活性化合物。
【請求項3】
上記一般式(1)において、−Y1−X1及び−Y2−X2が、各々独立して、下記一般式(2)又は(3)で表される基である請求項1記載の重合性光学活性化合物。
【化2】

【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の重合性光学活性化合物を含有する重合性組成物。
【請求項5】
さらに液晶化合物を含有する請求項4記載の重合性組成物。
【請求項6】
上記重合性光学活性化合物の含有量と上記液晶化合物の含有量との合計を100質量部としたとき、上記重合性光学活性化合物の含有量が1〜50質量部である請求項5記載の重合性組成物。
【請求項7】
上記液晶化合物が重合性官能基を有する化合物である請求項5又は6記載の重合性組成物。
【請求項8】
コレステリック相を示す請求項4〜7の何れかに記載の重合性組成物。
【請求項9】
請求項4〜8の何れかに記載の重合性組成物を光重合させることにより作製された重合体。
【請求項10】
光学異方性を有する請求項9記載の重合体
【請求項11】
請求項9又は10記載の重合体を使用してなる光学フィルム。

【公開番号】特開2008−189604(P2008−189604A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26397(P2007−26397)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】