説明

重合性化合物、重合性組成物、および成形体

【課題】可とう性が高く、硬化物の熱分解温度が低い、重合性化合物および該重合性化合物を含む重合性組成物、ならびに、該重合性組成物を重合させて得られる成形体を提供する。
【解決手段】本発明の重合性化合物は、1個以上のカーボネート結合と1個以上のアセタール結合と1個以上の(メタ)アクリロイル基を1分子中に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性化合物、該重合性化合物を含む重合性組成物、該重合性組成物を重合させた成形体に関する。詳細には、PDPの隔壁や配線回路等の形成に用いられる焼成ペーストに好適な材料となる重合性化合物および該重合性化合物を含む重合性組成物、ならびに、該重合性組成物を重合させて得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
PDPの隔壁、電極、誘電体層、配線回路等を形成するにあたり、焼成ペーストが広く用いられている。特に精細なパターンを形成する必要がある場合、感光性焼成ペーストを用いてフォトリソグラフィーにより無機パターンを形成することが行われている。
【0003】
感光性焼成ペーストのバインダーの性能としては、UV硬化性が良好であること、現像する際に露光部分と未露光部分の現像液への溶解性の差が顕著であること、無機粒子をバインドする能力が高いこと、硬化物の熱分解温度が低いこと、焼成途中にバインダー樹脂が軟化してしまわないことなどが求められる。
【0004】
しかし、一般的に架橋した硬化物は熱分解しにくい。
【0005】
架橋しても熱分解性の良好な化合物として、アセタール結合によって(メタ)アクリロイル基が連結された多官能(メタ)アクリレートが報告されている(特許文献1−3)。例えば、トリメチロールプロパンを骨格としてアセタール結合を介してメタクリロイル基を有する化合物の硬化物は、架橋体であっても熱分解性が良好である。
【0006】
しかし、PDPの隔壁等を形成するために用いられる焼成ペーストの材料としては、さらに低温で熱分解できる材料が求められている。
【0007】
また、PDPの隔壁等を形成するために用いられる焼成ペーストの材料としては、パターニングされた材料にクラックが入ったり、倒れたりしないような、可とう性の高い材料が求められている。このような問題を解決するための試みがなされているが(特許文献4、5)、十分なものとは言えない。
【特許文献1】特開2003−195497号公報
【特許文献2】特開2003−201267号公報
【特許文献3】特開2003−268124号公報
【特許文献4】特開2001−278906号公報
【特許文献5】特開2004−123775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、可とう性が高く、硬化物の熱分解温度が低い、重合性化合物および該重合性化合物を含む重合性組成物、ならびに、該重合性組成物を重合させて得られる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の重合性化合物は、1個以上のカーボネート結合と1個以上のアセタール結合と1個以上の(メタ)アクリロイル基を1分子中に有する。
【0010】
好ましい実施形態においては、本発明の重合性化合物は、一般式(1)で表される。
【化1】

(一般式(1)中、RはC1〜C12の単官能または多官能アルコール由来の有機残基であり、Rは1種または2種以上のC1〜C12の多官能アルコール由来の有機残基であり、RはC1〜4のアルキレン基またはC1〜4で重合度が2〜10のポリアルキレンオキサイド基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、nは1〜100の整数であり、mは1〜12の整数である。)
【0011】
本発明の別の局面によれば、重合性組成物が提供される。この重合性組成物は、本発明の重合性化合物を含む。
【0012】
好ましい実施形態においては、本発明の重合性組成物は、無機粒子を含む。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記無機粒子が、金属粉末、ガラス粉末、黒色顔料、セラミック微粒子から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0014】
好ましい実施形態においては、本発明の重合性組成物は、熱分解性重合体を含む。
【0015】
好ましい実施形態においては、上記熱分解性重合体が、(メタ)アクリル系重合体である。
【0016】
好ましい実施形態においては、本発明の重合性組成物は、重合開始剤を含む。
【0017】
本発明の別の局面によれば、成形体が提供される。この成形体は、本発明の重合性組成物を重合させて得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、可とう性が高く、硬化物の熱分解温度が低い、重合性化合物および該重合性化合物を含む重合性組成物、ならびに、該重合性組成物を重合させて得られる成形体を提供することができる。
【0019】
このような重合性化合物および該重合性化合物を含む重合性組成物は、上記の効果のみならず、例えば、感光性焼成ペーストのバインダーとして用いる場合、UV硬化性が良好であり、現像する際に露光部分と未露光部分の現像液への溶解性の差が顕著であり、無機粒子をバインドする能力が高いという効果を発現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
〔重合性化合物〕
本発明の重合性化合物は、1個以上のカーボネート結合と1個以上のアセタール結合と1個以上の(メタ)アクリロイル基を1分子中に有する。このように、1分子中にカーボネート結合、アセタール結合、(メタ)アクリロイル基をそれぞれ1個以上有する重合性化合物は、可とう性が高く、硬化物の熱分解温度が低い。
【0021】
本発明の重合性化合物は、好ましくは、一般式(1)で表される。
【化2】

(一般式(1)中、RはC1〜C12の単官能または多官能アルコール由来の有機残基であり、Rは1種または2種以上のC1〜C12の多官能アルコール由来の有機残基であり、RはC1〜4のアルキレン基またはC1〜4で重合度が2〜10のポリアルキレンオキサイド基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、nは1〜100の整数であり、mは1〜12の整数である。)
【0022】
はC1〜C12の単官能または多官能アルコール由来の有機残基である。なお、本明細書において、「Cx」(xは整数)と表す場合は、「炭素数x」を意味する。
【0023】
C1〜C12の単官能アルコールとしては、任意の適切な、炭素数1〜12の単官能アルコールを採用し得る。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、フェノール、アルキルフェノール、ベンジルアルコール、テトラヒドロベンジルアルコール、ターピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドが挙げられる。
【0024】
C1〜C12の多官能アルコールとしては、任意の適切な、炭素数1〜12の多官能アルコールを採用し得る。例えば、炭素数1〜12のジオール類、炭素数1〜12のトリオール類、炭素数1〜12のテトラオール類、これらのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。炭素数1〜12のジオール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸エステル、2−メチルペンタンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、3,3,5−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、およびそれらへのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。炭素数1〜12のトリオール類としては、例えば、トリメチロールプロパンやトリメチロールエタンなどの第1脂肪族トリオール、およびそれらへのアルキレンオキサイド付加物、グリセリン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。炭素数1〜12のテトラオール類としては、例えば、ペンタエリスリトールなどの第1脂肪族テトラオール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、およびそれらへのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。炭素数1〜12の5官能以上の多価アルコールとしては、例えば、ポリグリセリン、ポリトリメチロールプロパン、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、ラクトース、およびそれらへのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0025】
は1種または2種以上のC1〜C12の多官能アルコール由来の有機残基である。C1〜C12の多官能アルコールとしては、任意の適切な、炭素数1〜12の多官能アルコールを採用し得る。例えば、上記で例示したものが挙げられる。
【0026】
はC1〜4のアルキレン基(−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−など)またはC1〜4で重合度が2〜10のポリアルキレンオキサイド基である。好ましくは、C1〜4で重合度が2〜10のポリアルキレンオキサイド基であり、より好ましくは、C2〜3で重合度が2〜3のポリアルキレンオキサイド基である。
【0027】
は水素原子またはメチル基である。
【0028】
nは1〜100の整数である。nの下限値は、好ましくは3であり、より好ましくは5であり、さらに好ましくは7である。nの上限値は、好ましくは50であり、より好ましくは40であり、さらに好ましくは30である。
【0029】
mは1〜12の整数である。mの下限値は、好ましくは2である。mの上限値は、好ましくは10であり、より好ましくは8であり、さらに好ましくは4である。
【0030】
本発明の重合性化合物の分子量は、下限値として、好ましくは200であり、より好ましくは300であり、さらに好ましくは500であり、上限値として、好ましくは50000であり、より好ましくは30000であり、さらに好ましくは10000である。本発明の重合性化合物の分子量が200より小さいと、(メタ)アクリロイル基の割合が増え、硬化物のTgが下がるおそれがある。本発明の重合性化合物の分子量が50000より大きいと、高粘度となって作業性やアルカリ現像性が低下するおそれがある。
【0031】
本発明の重合性化合物は、任意の適切な方法によって製造し得る。例えば、カーボネートポリオールと、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物との付加反応や、カーボネートポリオールの部分(メタ)アクリル酸エステル化物と、多官能ビニルエーテルとの付加反応が挙げられる。
【0032】
カーボネートポリオールとしては、例えば、DN−980、DN−981(以上、日本ポリウレタン(株)製)、PNOC−2000、PNOC−1000(以上、(株)クラレ製)、プラクセルCD220、CD210、CD208、CD205(以上、ダイセル化学工業(株)製)、PC−THF−CD(BASF製)が挙げられる。
【0033】
ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。

CH=CR−COOR−O−CH=CHR (2)

(一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基であり、RはC1〜4のアルキレン基またはC1〜4で重合度が2〜10のポリアルキレンオキサイド基であり、Rは水素原子である。)
【0034】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
【0035】
カーボネートポリオールと、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物との付加反応の反応条件については、任意の適切な条件を採用し得る。例えば、カーボネートポリオール中の官能基1モルに対して、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を、ビニルエーテル基のモル数が、下限値として、好ましくは0.02モル、より好ましくは0.04モル、さらに好ましくは0.1モルとなるように付加反応させ、上限値として、好ましくは50モル、より好ましくは10モル、さらに好ましくは2モルとなるように付加反応させる。
【0036】
カーボネートポリオールと、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物との付加反応の際の添加方法としては、反応初期に反応系中に一括して仕込んでもよく、一方または両方を連続的または断続的に反応系中に添加してもよい。
【0037】
カーボネートポリオールと、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物との付加反応は、触媒の存在下に行われることが好ましい。
【0038】
上記触媒としては、酸性触媒が好ましい。酸性触媒としては、任意の適切な酸が採用され得る。例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ピルビン酸、グリコール酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、マロン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;安息香酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、p−トルエンスルホン酸キノリニウム塩等の芳香族スルホン酸又はその塩;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ニッケル、硫酸銅、硫酸ジルコニウム等の硫酸塩;硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム等の硫酸水素塩;硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、ポリリン酸等の鉱酸;リンバナジドモリブデン酸、リンタングストモリブデン酸、ケイタングストモリブデン酸等のヘテロポリ酸;酸性ゼオライト;ベースレジンがフェノール系樹脂又はスチレン系樹脂であり、ゲル型、ポーラス型又はマクロポーラス型のいずれかの形態を示し、かつ、スルホン酸基及びアルキルスルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種のイオン交換基を有する酸性イオン交換樹脂;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シュウ酸、マレイン酸、硫酸水素カリウム、塩酸が好ましい。例えば、塩酸を用いる場合、カチオン重合開始剤としては作用せず、付加反応にのみ選択的に効くため、温度コントロール幅が広いという利点がある。
【0039】
上記触媒の使用量としては、任意の適切な量を採用し得る。収率、触媒の安定性、生産性、および経済性を考慮すれば、例えば、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物100重量部に対して、触媒としての有効成分で、下限値として、0.0005重量部が好ましく、0.001重量部がより好ましく、上限値として、1重量部が好ましく、0.5重量部がより好ましい。
【0040】
カーボネートポリオールと、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物との付加反応は、重合禁止剤の存在下で行うことが好ましい。
【0041】
上記重合禁止剤としては、任意の適切な重合禁止剤を採用し得る。例えば、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等のキノン系重合禁止剤;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤;アルキル化ジフェニルアミン、N,N´−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン等のアミン系重合禁止剤;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル類;ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、キノン系重合禁止剤、N−オキシル類が好ましく、ベンゾキノン、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルがより好ましい。
【0042】
上記重合禁止剤の添加量としては、任意の適切な量を採用し得る。重合抑制効果、収率、生産性、および経済性を考慮すれば、例えば、カーボネートポリオール100重量部に対して、下限値として、0.0001重量部が好ましく、0.0005重量部がより好ましく、0.001重量部がさらに好ましく、上限値として、5重量部が好ましく、1重量部がより好ましく、0.1重量部がさらに好ましい。
【0043】
カーボネートポリオールと、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物との付加反応においては、溶剤を用いても良い。
【0044】
上記溶剤としては、任意の適切な溶剤を採用し得る。好ましくは、有機溶剤であり、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒類:クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、2−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート等のアセテート類;グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル等のジエステル類;等が挙げられる。
【0045】
上記溶剤の使用量としては、任意の適切な量を採用し得る。収率、生産性、および経済性を考慮すれば、例えば、カーボネートポリオールと、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物との合計重量100重量部に対して、下限値として、0重量%が好ましく、上限値として、200重量部が好ましく、100重量部がより好ましく、70重量部がさらに好ましい。
【0046】
カーボネートポリオールと、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物との付加反応においては、反応温度は、収率、生産性、および経済性を考慮すると、下限値として、−40℃が好ましく、−30℃がより好ましく、−20℃がさらに好ましく、上限値として、150℃が好ましく、100℃がより好ましく、70℃がさらに好ましい。
【0047】
カーボネートポリオールと、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物との付加反応においては、反応時間は、任意の適切な時間が設定され得る。
【0048】
カーボネートポリオールと、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物との付加反応においては、反応圧力は、常圧(大気圧)、減圧、加圧の何れであってもよい。
【0049】
〔重合性組成物〕
本発明の重合性組成物は、上記重合性化合物を含む。以下、重合性組成物中に含まれる上記重合性化合物を、説明の便宜上のため、重合性化合物(A)と称することがある。
【0050】
本発明の重合性組成物中の重合性化合物(A)の含有割合は、重合性組成物100重量部に対して、下限値として、1重量%が好ましく、2重量%がより好ましく、3重量%がさらに好ましく、4重量%が特に好ましく、上限値として、90重量%が好ましく、70重量%がより好ましく、50重量%がさらに好ましく、40重量%が特に好ましい。上記含有割合が1重量%より少ない場合、十分な硬化性が得られないおそれがある。上記含有割合が90重量%より多い場合、例えば、重合性組成物中の無機成分が少なすぎるので、焼成時の収縮が大きくなってしまうおそれがある。
【0051】
本発明の重合性組成物は、好ましくは、無機粒子を含む。以下、重合性組成物中に含まれ得る上記無機粒子を、説明の便宜上のため、無機粒子(B)と称することがある。
【0052】
本発明の重合性組成物中の無機粒子(B)の含有割合は、重合性組成物100重量部に対して、下限値として、10重量%が好ましく、20重量%がより好ましく、30重量%がさらに好ましく、40重量%が特に好ましく、上限値として、95重量%が好ましく、90重量%がより好ましく、80重量%がさらに好ましく、70重量%が特に好ましい。上記含有割合が10重量%より少ない場合、重合性組成物中の無機成分が少なすぎるので、焼成時の収縮が大きくなってしまうおそれや、無機成分の成形体が形成され難くなるおそれがある。上記含有割合が95重量%より多い場合、重合性組成物中の無機成分が多すぎるので、塗布性、印刷性などの作業性が低下するおそれがある。
【0053】
本発明の重合性組成物中の無機粒子(B)としては、任意の適切な無機粒子を採用し得る。好ましくは、金属粉末(B−1)、ガラス粉末(B−2)、黒色顔料(B−3)、セラミック微粒子(B−4)から選ばれる少なくとも1種を含む。どのような無機粒子を用いる場合でも、焼成性を良くするために、ガラス粉末を用いることが好ましい。
【0054】
金属粉末(B−1)としては、任意の適切な金属粉末を採用し得る。例えば、金、銀、銅、ルテニウム、パラジウム、白金、アルミニウム、ニッケル等やこれらの合金が挙げられる。上記金属粉末は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。金属粉末(B−1)の平均粒径としては、解像度の点から、上限値として、10μmが好ましく、5μmがより好ましい。金属粉末(B−1)の形状としては、例えば、球状、ブロック状、フレーク状、デンドライト状が挙げられる。これらの形状は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0055】
金属粉末(B−1)は、酸化防止、重合性組成物内での分散性向上、現像性の安定化のため、特にAg、Ni、Alについては、脂肪酸による処理を行なうことが好ましい。脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸が挙げられる。
【0056】
ガラス粉末(B−2)としては、任意の適切なガラス粉末を採用し得る。ガラス粉末(B−2)としては、例えば、焼成を600℃以下の温度で行なえるように、軟化点が300〜600℃の低融点ガラスフリットが好ましい。酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化リチウム、アルカリホウケイ酸塩を主成分とするガラス粉末が特に好ましい。また、低融点ガラスフリットとしては、ガラス転移温度が好ましくは300〜550℃、熱膨張係数α300が好ましくは70×10−7/℃〜90×10−7/℃のものを用い得る。ガラス粉末(B−2)の平均粒径は、解像度の点から、上限値として、10μmが好ましく、2.5μmがより好ましい。
【0057】
黒色顔料(B−3)としては、任意の適切な黒色顔料を採用し得る。例えば、Fe、Co、Cu、Cr、Mn、Al等の1種または2種類以上の金属酸化物からなる黒色顔料が挙げられる。より具体的には、例えば、Co−Cr−Fe、Co−Mn−Fe、Co−Fe−Mn−Al、Co−Ni−Cr−Fe、Co−Ni−Al−Cr−Fe、Co−Mn−Al−Cr−Fe−Siが挙げられる。黒色顔料(B−3)としては、黒色度の点から、平均粒径が、上限値として、好ましくは1.0μm、より好ましくは0.6μmである。
【0058】
なお、焼成物パターンに白色が求められる場合には、酸化チタン、酸化アルミニウム、シリカ、炭酸カルシウム等の白色顔料を用いても良い。
【0059】
セラミック微粒子(B−4)としては、任意の適切なセラミック微粒子を採用し得る。例えば、アルミナ、コージェライト、ジルコンが挙げられる。セラミック微粒子(B−4)は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。セラミック微粒子(B−4)は、解像度の点から、平均粒径が、上限値として、好ましくは10μm、より好ましくは2.5μmである。
【0060】
セラミック微粒子(B−4)は、ガラス粉末(B−2)に配合することで、隔壁等の焼成物パターン内部の緻密性向上や焼成物の機械的強度を増大させ得る。すなわち、ガラス粉末(B−2)100重量部に対して、セラミック微粒子(B−4)を、好ましくは0.1〜50重量部配合することによって、緻密で収縮率の小さい隔壁等の焼成物パターンを得ることができる。
【0061】
本発明の重合性組成物中の無機粒子(B)として、黒色導電性微粒子(B−5)を用いても良い。例えば、PDP用電極作成工程においては500〜600℃という高温焼成を伴うため、黒色導電性微粒子(B−5)としては、高温での色調や導電性の安定性を有するものが好ましい。例えば、ルテニウム酸化物、ルテニウム化合物、銅−クロム系黒色複合酸化物、銅−鉄系黒色複合酸化物が挙げられる。特に、ルテニウム酸化物、ルテニウム化合物が好ましい。高温での色調や導電性の安定性に極めて優れているからである。
【0062】
本発明の重合性組成物中の無機粒子(B)としては、好ましくは粒径が10ミクロン以下のものが使用される。このため、2次凝集防止や分散性の向上を目的として、無機粒子(B)の性質を損なわない範囲で、有機酸、無機酸、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等の処理剤で予め表面処理した無機粒子を用いることができる。また、本発明の重合性組成物中に上記処理剤が含まれていても良い。また、本発明の重合性組成物の保存安定性向上のため、金属あるいは酸化物粉末との錯体化あるいは塩形成などの効果のある化合物を、安定化剤として添加することができる。安定化剤としては、無機酸、有機酸、リン酸化合物(無機リン酸、有機リン酸)などの酸が挙げられる。このような安定剤の添加量は、無機粒子(B)100重量部に対して、好ましくは5重量部以下である。
【0063】
本発明の重合性組成物は、好ましくは、熱分解性重合体を含む。以下、重合性組成物中に含まれ得る上記熱分解性重合体を、説明の便宜上のため、熱分解性重合体(C)と称することがある。
【0064】
本発明の重合性組成物中の熱分解性重合体(C)の含有割合は、重合性組成物100重量部に対して、下限値として、10重量%が好ましく、20重量%がより好ましく、30重量%がさらに好ましく、40重量%が特に好ましく、上限値として、95重量%が好ましく、90重量%がより好ましく、80重量%がさらに好ましく、70重量%が特に好ましい。上記含有割合が10重量%より少ない場合、重合性組成物中の無機成分が少なすぎるので、焼成時の収縮が大きくなってしまうおそれや、無機成分の成形体が形成され難くなるおそれがある。上記含有割合が95重量%より多い場合、重合性組成物中の無機成分が多すぎるので、塗布性、印刷性などの作業性が低下するおそれがある。
【0065】
熱分解性重合体(C)としては、任意の適切な熱分解性重合体を採用し得る。例えば、(メタ)アクリル系重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、スチレン−アリルアルコール、フェノール樹脂、ポリプロピレンカーボネート樹脂、オレフィン系水酸基含有ポリマー、これらの水酸基含有ポリマーの水酸基やアミノ樹脂のアミノ基にラクトンを付加したラクトン変性ポリマー、1分子中に水酸基又はアミノ基と不飽和基を併せ持つモノマーの単独重合体、ラクトン変性モノマーと他の不飽和基を有するモノマーとの共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル系重合体、エチルセルロース、プロピレンカーボネート樹脂が好ましく、(メタ)アクリル系重合体が特に好ましい。
【0066】
上記(メタ)アクリル系重合体としては、任意の適切な(メタ)アクリル系重合体を採用し得る。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。また、本明細書において、「(メタ)アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリル酸および/またはその誘導体を50重量%以上含むモノマー成分を重合して得られる単独重合体または共重合体を意味する。
【0067】
上記(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類の1種又は2種以上から得られる単独重合体または共重合体;上記(メタ)アクリレート類の1種又は2種以上と他のモノマー成分との共重合体;が挙げられる。
【0068】
熱分解性重合体(C)は、焼成により除去される成分であるが、無機粒子(B)のバインダーとして、また転写性の向上等を目的として含有させるものであり、熱可塑性を示すものが好ましい。熱可塑性を示す熱分解性重合体(C)を用いた場合、ペースト自体の粘度が高くても、加熱によって軟化もしくは溶融し、塗布又は溝部への充填が可能となる。また、熱分解性重合体(C)が水酸基やカルボキシル基をペーストの安定性を有する範囲で含有する場合、無機粒子(B)の分散性が向上し、またペーストに揺変性を付与して無機粒子(B)の沈降を防止できるという効果も得られる。
【0069】
熱分解性重合体(C)の重量平均分子量は、下限値として、3000が好ましく、10000がより好ましく、100000がさらに好ましく、上限値として、300000が好ましい。熱分解性重合体(C)の重量平均分子量が3000未満の場合、ペースト化が困難となるおそれがある。熱分解性重合体(C)の重量平均分子量が300000より大きい場合、ペーストの粘性が高くなりすぎて、充填性が悪くなるおそれがある。
【0070】
熱分解性重合体(C)の熱分解温度は、好ましくは、ガラス粉末(B−2)のガラス転移点よりも低い。熱分解性重合体(C)の熱分解温度がガラス粉末(B−2)のガラス転移点よりも高いと、焼成初期において充分に除去されず、ガラス中に焼成残渣(バインダーポリマーが熱分解して生成する気泡)として残るため好ましくない。また、熱分解性重合体(C)の熱分解温度がガラス粉末(B−2)のガラス転移点よりも高いと、ペースト化も困難になる。
【0071】
熱分解性重合体(C)は、アルカリ現像性を付与するために、カルボキシル基を有することが好ましい。すなわち、熱分解性重合体(C)は、好ましくは、カルボキシル基含有重合体である。熱分解性重合体(C)がカルボキシル基を有する場合、熱分解性重合体(C)の酸価は、下限値として、好ましくは10であり、より好ましくは30であり、さらに好ましくは40であり、特に好ましくは50であり、上限値として、好ましくは150であり、より好ましくは130であり、さらに好ましくは120であり、特に好ましくは110である。
【0072】
本発明の重合性組成物は、好ましくは、重合開始剤を含む。以下、重合性組成物中に含まれ得る上記重合開始剤を、説明の便宜上のため、重合開始剤(D)と称することがある。
【0073】
重合開始剤(D)としては、任意の適切な重合開始剤を採用し得る。例えば、熱重合開始剤(D−1)、光重合開始剤(D−2)が挙げられる。重合開始剤(D)は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0074】
熱重合開始剤(D−1)としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエー卜、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;が挙げられる。また、熱重合時には硬化促進剤を混合して使用してもよい。硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、3級アミンが挙げられる。
【0075】
熱重合開始剤(D−1)の使用量は、本発明の重合性組成物100重量部に対し、好ましくは0.05〜5重量部である。
【0076】
光重合開始剤(D−2)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシルカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;アシルフォスフィンオキサイド類;キサントン類;が挙げられる。
【0077】
光重合開始剤(D−2)の使用量は、本発明の重合性組成物100重量部に対し、好ましくは0.1〜25重量部である。
【0078】
本発明において、重合開始剤(D)としては、光重合開始剤(D−2)が好ましく、アセトフェノン類(アセトフェノン系光重合開始剤)がより好ましく、より具体的には、イルガキュア184(チバジャパン株式会社製)、ダロキュア1173(チバジャパン株式会社製)が特に好ましい。
【0079】
本発明の重合性組成物は、硬化性化合物を含んでいても良い。以下、重合性組成物中に含まれ得る上記硬化性化合物を、説明の便宜上のため、硬化性化合物(E)と称することがある。
【0080】
硬化性化合物(E)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート類や、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変成トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−、又はそれ以上のポリエステル、多塩基酸とOH基をもつ多官能(メタ)アクリレートモノマーとのモノ−、ジ−、トリ−、又はそれ以上のポリエステル、などが挙げられる。硬化性化合物(E)は、1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。硬化性化合物(E)の使用量は、任意の適切な量を採用し得る。
【0081】
本発明の重合性組成物は、有機溶媒を含んでいても良い。以下、重合性組成物中に含まれ得る上記有機溶媒を、説明の便宜上のため、有機溶媒(F)と称することがある。
【0082】
有機溶媒(F)としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、2−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート等のアセテート類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルシソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、エチル−3−プロポキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート、イソプロピル−3−メトキシプロピオネート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸アミル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、炭酸メチル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ベンジルメチルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル等のエステル類;γ−ブチロラクトン;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;などが挙げられる。有機溶媒(F)は、1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。有機溶媒(F)の使用量は、任意の適切な量を採用し得る。
【0083】
本発明の重合性組成物は、分散剤を含んでいても良い。以下、重合性組成物中に含まれ得る上記分散剤を、説明の便宜上のため、分散剤(G)と称することがある。
【0084】
分散剤(G)としては、カルボキシル基、水酸基、酸エステルなどの、無機粒子(B)と親和性のある極性基を有する化合物や高分子化合物、例えば、リン酸エステル類などの酸含有化合物や、酸基を含む共重合物、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドと酸エステルの塩などを用いることができる。市販されている分散剤としては、例えば、Disperbyk(登録商標)−101、−103、−110、−111、−160及び−300(いずれもビック・ケミー社製)が挙げられる。分散剤(G)は、1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。分散剤(G)の使用量は、任意の適切な量を採用し得る。
【0085】
本発明の重合性組成物は、その他の成分を含んでいても良い。以下、重合性組成物中に含まれ得る上記その他の成分を、説明の便宜上のため、その他の成分(Z)と称することがある。
【0086】
その他の成分(Z)としては、例えば、増感剤、熱重合禁止剤、可塑剤、界面活性剤、湿潤剤、消泡剤、レベリング剤、その他の添加剤が挙げられる。その他の成分(Z)は、1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。その他の成分(Z)の使用量は、任意の適切な量を採用し得る。
【0087】
〔成形体〕
本発明の成形体は、上記重合性組成物を重合させて得られる。
【0088】
本発明の成形体は、例えば、上記重合性組成物を、基材の全面又は一部に塗布したり、印刷、フォトリソグラフィー法等によってパターンを形成したり、所定の形状に成形したりした後、例えば、光硬化性であれば、紫外線等の光を照射することで硬化させることにより形成することができる。本発明の成形体を焼成することにより、有機成分は分解されて揮散し、無機成分同士は融着するので、無機成分による強固な塗膜、パターン等の成形体を得ることができる。
【0089】
本発明の成形体は、適度な焼成条件において熱分解性に優れ、有機成分の残存が極めて少ない無機成形体や無機パターン等を得ることができるものであることから、熱分解用成形体として用いることが好適である。また、光硬化性を有する場合、フォトリソグラフィー法を用いて高解像度のパターンを得ることができることから、印刷、フォトリソグラフィー法等により、プラズマディスプレイパネル(PDP)の隔壁、電極、抵抗体、蛍光体、カラーフィルター、ブラックマトリックス等の製造やLCD、有機EL素子、プリント回路基板、多層回路基板、マルチチップモジュール及びLSI等を構成する電極パターンの製造、セラミック基板上の導体パターンの製造等に好適に適用することができる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
【0091】
〔実施例1〕:化合物(M−1)の合成
攪拌装置、温度計、コンデンサー、滴下装置、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、オキシマーN−112(パーストープ社製、ポリ(オキシカルボニルオキシ〔2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル〕)1000g、酢酸エチル2000g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(以下4H−TEMPOと略す)0.144gを仕込み、60℃に加熱して均一な溶液とした。次に、温度を30℃まで冷却して塩酸(35%塩化水素)0.52gを投入した後、ビニロキシ(2−エトキシエチル)メタクリレート(以下VEEMと略す)440gを発熱に注意しながら2時間かけて滴下した。次に、塩酸(35%塩化水素)0.52gを30分毎に3回投入した後、70℃に昇温して3時間反応を行った。ゲル浸透クロマトグラフィー(以下GPCと略す。)によってVEEMのピークがほぼ消失していることを確認した後、グリシジルメタクリレート(以下GMAと略す)5.68gを添加して塩酸を失活させた。
続いて得られた反応液を、80℃に加熱し、減圧によって脱溶剤したところ、得られた反応物は80℃では液体であるが、冷却すると室温で固体であった。更にこれをアセトンに溶解し、大量のメタノール中に滴下して再沈した後、減圧乾燥機にて乾燥させた。得られた化合物(M−1)をH−NMRにて分析したところ、5.5〜6.1ppmと2ppm付近にメタクリロイル基に起因するピーク、1.2〜1.3ppm付近にアセタール結合のメチル基に起因するピーク、4.7〜4.8ppm付近にアセタール結合のメチンに起因するピークが観測された(図1)。
また、FT−IRによる分析を行ったところ、カーボネート結合に起因すると考えられるカルボニルの吸収が観測された。
【0092】
〔実施例2〕:化合物(A−1)の合成
攪拌装置、温度計、コンデンサー、滴下装置、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、オキシマーN−112を1000g、酢酸エチルを2000g、4H−TEMPOを0.141g仕込み、60℃に加熱して均一な溶液とした。次に、温度を30℃まで冷却して塩酸(35%塩化水素)0.52gを投入した後、ビニロキシ(2−エトキシエチル)アクリレート(以下VEEAと略す)410gを発熱に注意しながら2時間かけて滴下した。次に、塩酸(35%塩化水素)0.52gを30分毎に3回投入した後、70℃に昇温して3時間反応を行った。GPCによってVEEAのピークがほぼ消失していることを確認した後、GMA5.68gを添加して塩酸を失活させた。
続いて得られた反応液を、80℃に加熱し、減圧によって脱溶剤したところ、得られた反応物は80℃では液体であるが、冷却すると室温で固体であった。更にこれをアセトンに溶解し、大量のメタノール中に滴下して再沈した後、減圧乾燥機にて乾燥させた。得られた化合物(A−1)をH−NMRにて分析したところ、5.5〜6.1ppm付近にアクリロイル基に起因するピーク、1.2〜1.3ppm付近にアセタール結合のメチル基に起因するピーク、4.7〜4.8ppm付近にアセタール結合のメチンに起因するピークが観測された(図2)。
また、FT−IRによる分析を行ったところ、カーボネート結合に起因すると考えられるカルボニルの吸収が観測された。
【0093】
〔実施例3〕:化合物(M−2)の合成
攪拌装置、温度計、コンデンサー、滴下装置、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、オキシマーB−112(パーストープ社製、ポリ(オキシカルボニルオキシ〔2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジイル〕)1000g、酢酸エチルを2000g、4H−TEMPOを0.144g仕込み、60℃に加熱して均一な溶液とした。次に、温度を30℃まで冷却して塩酸(35%塩化水素)0.52gを投入した後、VEEM440gを発熱に注意しながら2時間かけて滴下した。次に、塩酸(35%塩化水素)0.52gを30分毎に3回投入した後、70℃に昇温して3時間反応を行った。GPCによってVEEMのピークがほぼ消失していることを確認した後、GMA5.68gを添加して塩酸を失活させた。
続いて得られた反応液を、80℃に加熱し、減圧によって脱溶剤したところ、得られた反応物は室温で液体であった。更にこれをアセトンに溶解し、大量のメタノール中に滴下して再沈した後、減圧乾燥機にて乾燥させた。得られた化合物(M−2)をH−NMRにて分析したところ、5.5〜6.1ppmと2ppm付近にメタクリロイル基に起因するピーク、1.2〜1.3ppm付近にアセタール結合のメチル基に起因するピーク、4.7〜4.8ppm付近にアセタール結合のメチンに起因するピークが観測された(図3)。
また、FT−IRによる分析を行ったところ、カーボネート結合に起因すると考えられるカルボニルの吸収が観測された。
【0094】
〔実施例4〕:化合物(A−2)の合成
攪拌装置、温度計、コンデンサー、滴下装置、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、オキシマーB−112を1000g、酢酸エチルを2000g、4H−TEMPOを0.141g仕込み、60℃に加熱して均一な溶液とした。次に、温度を30℃まで冷却して塩酸(35%塩化水素)0.52gを投入した後、VEEA410gを発熱に注意しながら2時間かけて滴下した。次に、塩酸(35%塩化水素)0.52gを30分毎に3回投入した後、70℃に昇温して3時間反応を行った。GPCによってVEEAのピークがほぼ消失していることを確認した後、GMA5.68gを添加して塩酸を失活させた。
続いて得られた反応液を、80℃に加熱し、減圧によって脱溶剤したところ、得られた反応物は室温で液体であった。更にこれをアセトンに溶解し、大量のメタノール中に滴下して再沈した後、減圧乾燥機にて乾燥させた。得られた化合物(A−2)をH−NMRにて分析したところ、5.5〜6.1ppm付近にアクリロイル基に起因するピーク、1.2〜1.3ppm付近にアセタール結合のメチル基に起因するピーク、4.7〜4.8ppm付近にアセタール結合のメチンに起因するピークが観測された(図4)。
また、FT−IRによる分析を行ったところ、カーボネート結合に起因すると考えられるカルボニルの吸収が観測された。
【0095】
〔比較例1〕:化合物(M−3)の合成
攪拌装置、温度計、コンデンサー、滴下装置、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、分子量1000のポリエチレングリコール1000g、4H−TEMPO 0.144gを仕込み、温度を30℃に調温して塩酸(35%塩化水素)0.52gを投入した後、VEEM440gを発熱に注意しながら2時間かけて滴下した。次に、塩酸(35%塩化水素)0.52gを30分毎に3回投入した後、70℃に昇温して3時間反応を行った。GPCによってVEEMのピークがほぼ消失していることを確認した後、GMA5.68gを添加して塩酸を失活させた。
得られた化合物(M−3)をH−NMRにて分析したところ、5.5〜6.1ppmと2ppm付近にメタクリロイル基に起因するピーク、1.2〜1.3ppm付近にアセタール結合のメチル基に起因するピーク、4.7〜4.8ppm付近にアセタール結合のメチンに起因するピークが観測された。
【0096】
〔比較例2〕:化合物(A−3)の合成
攪拌装置、温度計、コンデンサー、滴下装置、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、分子量1000のポリエチレングリコール1000g、4H−TEMPO 0.141gを仕込み、温度を30℃に調温して塩酸(35%塩化水素)0.52gを投入した後、VEEA410gを発熱に注意しながら2時間かけて滴下した。次に、塩酸(35%塩化水素)0.52gを30分毎に3回投入した後、70℃に昇温して3時間反応を行った。GPCによってVEEAのピークがほぼ消失していることを確認した後、GMA5.68gを添加して塩酸を失活させた。
得られた化合物(A−3)をH−NMRにて分析したところ、5.5〜6.1ppm付近にアクリロイル基に起因するピーク、1.2〜1.3ppm付近にアセタール結合のメチル基に起因するピーク、4.7〜4.8ppm付近にアセタール結合のメチンに起因するピークが観測された。
【0097】
〔比較例3〕:化合物(M−4)の合成
攪拌装置、温度計、コンデンサー、油水分離装置、滴下装置、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、分子量1000のポリエチレングリコール1000g、トルエン500g、メタクリル酸189.2g、4H−TEMPO 0.238g、p−トルエンスルホン酸2.38gを仕込み、温度を110℃にして6時間かけて脱水縮合反応を行った。続いて1000gのトルエン、200gのイオン交換水と水酸化ナトリウム0.50gを添加し、十分攪拌した後、分液ロートにて水層を除去した。更に200gのイオン交換水を添加してよく攪拌し、水層を除去する操作を、水層のpHが7になるまで繰り返した。最後に加熱減圧によってトルエンを除去し、ポリエチレングリコールジメタクリレート(M−4)を得た。
【0098】
〔比較例4〕:化合物(A−4)の合成
攪拌装置、温度計、コンデンサー、油水分離装置、滴下装置、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、分子量1000のポリエチレングリコール1000g、トルエン500g、アクリル酸158.4g、4H−TEMPO 0.232g、p−トルエンスルホン酸2.32gを仕込み、温度を110℃にして6時間かけて脱水縮合反応を行った。続いて1000gのトルエン、200gのイオン交換水と水酸化ナトリウム0.49gを添加し、十分攪拌した後、分液ロートにて水層を除去した。更に200gのイオン交換水を添加してよく攪拌し、水層を除去する操作を、水層のpHが7になるまで繰り返した。最後に加熱減圧によってトルエンを除去し、ポリエチレングリコールジアクリレート(A−4)を得た。
【0099】
〔合成例1〕:カルボキシル基含有ポリマー(P−1)の合成
攪拌装置、温度計、コンデンサー、油水分離装置、滴下装置、窒素ガス導入管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下PGMEAと略す)1263gを仕込み、窒素置換して70℃に昇温した。続いてメタクリル酸メチル997.7gとメタクリル酸179.7gの混合液と、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル(V−65、和光純薬製)58.9gとPGMEA500gの混合液とを同時に1時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま70℃で2時間保持し、更に90℃で3時間熟成して冷却した。得られたカルボキシル基含有ポリマー(P−1)の分子量をGPCで測定(ポリスチレン換算、THF=0.6ml/min、装置:東ソー製HLC−8220GPC、カラム構成:いずれも東ソー製TSK Gel−SuperHM−N 2本+TSK Gel−SuperH2000 1本)したところ、数平均分子量が5100、重量平均分子量が11800であった。
【0100】
〔実施例5〜8〕
実施例1〜4で得られた化合物(1分子中にカーボネート結合とアセタール結合と(メタ)アクリロイル基を有する化合物)100g、酢酸エチル100g、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173、チバジャパン株式会社製)5gを均一に混合し、ガラス板上に100μmの厚さで塗布した。それを80℃に加熱した熱風乾燥機中で30分放置し、溶媒を除去した。続いて窒素ガス雰囲気下で250W超高圧水銀ランプを用い、33mW/cmの照射を60秒間行って塗膜を硬化させた。
得られた硬化物の熱分解性を熱重量分析(TG;Thermogravimetry、Mac Science社製TG−DTA2000)にて測定した。結果を表1に示す。なお、熱分解温度は、昇温速度10℃/分、空気流量100mL/分の昇温試験で25℃から600℃まで加熱した時、重量変化および熱量変化の両方がなくなる温度と定義した。
【0101】
〔比較例5〜8〕
比較例1〜4で得られた化合物((メタ)アクリロイル基を有する化合物)100gに対して実施例1〜4と同様の方法にて硬化物を作成し、熱分解温度を測定した。結果を表1に示す。
【0102】
〔実施例9〕
実施例3で得られた化合物(M−2)、ガラスフリット、光重合開始剤(D1173:ダロキュア1173、チバジャパン株式会社製、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1オン)を表2に示す配合で混合したペーストをスクリーン印刷法によってカラス板上にパターンを印刷した後、2J/cmの照射エネルギーでUV硬化した。それを600℃の電気炉に入れ1時間焼成した後、パターンの状態を光学顕微鏡にて観察した。結果を表2に示す。
【0103】
〔比較例9〕
化合物(M−2)の代わりに比較例1で得られた化合物(M−3)を用いた以外は実施例9と同様に行い、パターンの状態を光学顕微鏡にて観察した。結果を表2に示す。
【0104】
〔比較例10〕
化合物(M−2)の代わりに比較例3で得られた化合物(M−4)を用いた以外は実施例9と同様に行い、パターンの状態を光学顕微鏡にて観察した。結果を表2に示す。
【0105】
〔実施例10〕
実施例1で得られた化合物(M−1)、ガラスフリット、合成例1で得られたカルボキシル基含有ポリマー(P−1)、溶媒(PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、光重合開始剤(D1173:ダロキュア1173、チバジャパン株式会社製、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1オン)を表2に示す配合で混合したペーストをガラス板上に100μmの厚みで塗布した。これを80℃で30分乾燥させた後、ライン&スペースが40μm×40μmのフォトマスクを通して2J/cmのエネルギーのUVを照射した。続いて2.5%のトリエタノールアミン水溶液で現像し、水洗したものを600℃の電気炉に入れて1時間焼成した後、パターンの状態を光学顕微鏡にて観察した。結果を表3に示す。
【0106】
〔比較例11〕
化合物(M−1)の代わりに比較例1で得られた化合物(M−3)を用いた以外は実施例10と同様に行い、パターンの状態を光学顕微鏡にて観察した。結果を表2に示す。
【0107】
〔比較例12〕
化合物(M−1)の代わりに比較例3で得られた化合物(M−4)を用いた以外は実施例10と同様に行い、パターンの状態を光学顕微鏡にて観察した。結果を表2に示す。
【0108】
〔比較例13〕
化合物(M−1)の代わりにトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)を用いた以外は実施例10と同様に行い、パターンの状態を光学顕微鏡にて観察した。結果を表2に示す。
【0109】
〔実施例11〕
実施例4で得られた化合物(A−2)、無機粒子(Ag)、光重合開始剤(D1173:ダロキュア1173、チバジャパン株式会社製、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1オン)を表3に示す配合で混合したペーストをスクリーン印刷法によってガラス板上にパターンを印刷した後、2J/cmの照射エネルギーでUV硬化した。それを600℃の電気炉に入れ1時間焼成した後、パターンの状態を光学顕微鏡にて観察した。結果を表3に示す。
【0110】
〔実施例12〕
無機粒子をルテニウム酸化物に代えた以外は実施例11と同様に行い、パターンの状態を光学顕微鏡にて観察した。結果を表3に示す。
【0111】
〔実施例13〕
無機粒子をアルミナに代えた以外は実施例11と同様に行い、パターンの状態を光学顕微鏡にて観察した。結果を表3に示す。
【0112】
〔実施例14〕
実施例2で得られた化合物(A−1)、無機粒子(Ag)、合成例1で得られたカルボキシル基含有ポリマー(P−1)、溶媒(PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、光重合開始剤(D1173:ダロキュア1173、チバジャパン株式会社製、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1オン)を表3に示す配合で混合したペーストをガラス板上に20μmの厚みで塗布した。これを80℃で30分乾燥させた後、ライン&スペースが40μm×40μmのフォトマスクを通して2J/cmのエネルギーのUVを照射した。続いて2.5%のトリエタノールアミン水溶液で現像し、水洗したものを600℃の電気炉に入れて1時間焼成した後、パターンの状態を光学顕微鏡にて観察した。結果を表3に示す。
【0113】
〔実施例15〕
無機粒子をルテニウム酸化物に代えた以外は実施例14と同様に行い、パターンの状態を光学顕微鏡にて観察した。結果を表3に示す。
【0114】
〔実施例16〕
無機粒子をアルミナに代えた以外は実施例14と同様に行い、パターンの状態を光学顕微鏡にて観察した。結果を表3に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
表1によれば、本発明の重合性化合物は、硬化物の熱分解温度が低いことが判る。表2、表3によれば、本発明の重合性化合物を含む重合性組成物は、パターニング方法としてスクリーン印刷を採用してもフォトリソグラフィーを採用しても、硬化・焼成後のパターン状態が良好であり、着色もないことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の重合性化合物は、PDPの隔壁や配線回路等の形成に用いられる焼成ペーストに好適な材料となる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】化合物(M−1)のH−NMRスペクトル図である。
【図2】化合物(A−1)のH−NMRスペクトル図である。
【図3】化合物(M−2)のH−NMRスペクトル図である。
【図4】化合物(A−2)のH−NMRスペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個以上のカーボネート結合と1個以上のアセタール結合と1個以上の(メタ)アクリロイル基を1分子中に有する重合性化合物。
【請求項2】
一般式(1)で表される、請求項1に記載の重合性化合物。
【化1】

(一般式(1)中、RはC1〜C12の単官能または多官能アルコール由来の有機残基であり、Rは1種または2種以上のC1〜C12の多官能アルコール由来の有機残基であり、RはC1〜4のアルキレン基またはC1〜4で重合度が2〜10のポリアルキレンオキサイド基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、nは1〜100の整数であり、mは1〜12の整数である。)
【請求項3】
請求項1または2に記載の重合性化合物を含む、重合性組成物。
【請求項4】
無機粒子を含む、請求項3に記載の重合性組成物。
【請求項5】
前記無機粒子が、金属粉末、ガラス粉末、黒色顔料、セラミック微粒子から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項4に記載の重合性組成物。
【請求項6】
熱分解性重合体を含む、請求項3から5までのいずれかに記載の重合性組成物。
【請求項7】
前記熱分解性重合体が、(メタ)アクリル系重合体である、請求項6に記載の重合性組成物。
【請求項8】
重合開始剤を含む、請求項3から7までのいずれかに記載の重合性組成物。
【請求項9】
請求項3から8までのいずれかに記載の重合性組成物を重合させて得られる、成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−120639(P2009−120639A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293199(P2007−293199)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】