説明

重合性液晶組成物及び光学異方体

【課題】 空気界面近傍の配向欠陥のない光学異方体を提供することにあり、該光学異方体を作製することのできる重合性液晶組成物を提供する。
【解決手段】 1)フッ素基を有する側鎖と一般式(h)で表される基を有する側鎖を有し、
【化1】


(h)
(式中、nは0又は1の整数を表わし、Y及びYはそれぞれ独立して、単結合、−CHCH−等を表わし、Yは水素原子、アルキル基等を表わす。)
2)フッ素基含有率が3〜30質量%であり、3)一般式(h)で表される基を有する側鎖の全側鎖に対する割合が9〜95モル%であり、4)質量平均分子量が10000〜300000である(メタ)アクリル共重合体(H)を、0.1〜6.0質量%含有する重合性液晶組成物、及び、該重合性液晶組成物を配向機能を有する基板上に塗布し、配向させた状態で重合させて得られる光学異方体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に重合性液晶組成物を塗布することにより作製する、傾斜配向あるいは水平配向を示す光学異方体の、空気界面近傍の配向欠陥を改善する添加剤を含有する重合性液晶組成物、及び該重合性液晶組成物を原料とした光学異方体に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、液晶表示装置(LCD)は、液晶セル及びその両側に配置された二枚の偏光板からなる。反射型液晶表示装置は、反射板、液晶セル、及び一枚の偏光板が積層されている。これらの液晶表示装置は、視野角の拡大、着色解消、あるいは表示モードに応じて位相差を調整するために、液晶セルと偏光板との間に光学異方体の一種である光学補償シート(位相差板)を配置する場合が多い。
【0003】
通常、光学補償シートには複屈折を有する高分子フィルムが使用されており、例えば、重合性の液晶材料に配向処理を施した後、紫外線硬化させて配向状態を固定化した光学異方体からなる複屈折を有する高分子フィルムが、LCD用の光学補償シートとして実用化されている。
また、最近では、従来のバッチ製造と比較して大幅な製造効率向上を目的とした、塗工プロセスを導入したロールツウロール(Roll to Roll)法等の液晶表示装置の製造方法の開発が進んでいる。ロールツロール用途の光学補償シートは、塗工法で作製でき、且つ、得られたシートに他の部材が積層されることを前提として設計される。
【0004】
重合性液晶材料を用いて光学異方体を作製する場合、通常では二枚の配向膜に重合性液晶材料を挟持させ、両側からの配向規制力により液晶分子を配向させる方法が一般的である。しかし、光学補償シートの製造にロールツロールのような塗工プロセスを用いた場合や工程の短縮化のために、配向機能を有する基板上に重合性の液晶材料を塗布し、重合性の液晶材料の配向処理は、一方に形成した配向膜の配向規制力のみを利用して行われる。即ち、前者と異なり、配向膜に接していない空気との界面付近では、液晶分子に配向規制力が作用しづらい。従って、気液界面では配向欠陥が発生し、得られる光学異方体の品質低下あるいは歩留まりの低下が起こりやすかった。
【0005】
これを解決する方法として、重合性の液晶材料に混合して空気との界面付近の液晶分子の配向を制御させる添加剤が提案されており、例えば、該添加剤として、一分子中に、フッ素置換脂肪族基やオリゴシロキサン基等の疎水性基と、少なくとも二つの環状構造を含む排除体積効果を有する基とを有する化合物からなる液晶配向促進剤が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
前記化合物の疎水性基は液晶分子と相溶しにくいので、空気との界面に偏在しようとする。一方、前記化合物の排除体積効果を有する基は液晶分子と相溶するので、液晶層に入り込もうとする。疎水性基と排除体積効果を有する基との組み合わせにより、空気界面側での液晶性分子の傾斜角を、液晶性分子の種類に限定されることなく、任意に制御できる。従ってより配向に優れた光学異方体を得ることができる。
【0006】
しかし前記化合物では、実際には気液界面での配向不良を完全に押さえることができなかった。また、前記化合物は低分子化合物のため、全てが空気界面に偏在することができず、一部が液晶層内部に残存してしまい、これにより液晶材料の相転移点が低下し、得られる光学異方体の安定性の低下やリタデーションの低下がおこるおそれがあった。
【0007】
また、重合性の液晶材料と高分子化合物との混合物を硬化させてなる光学異方体としては、垂直配向膜の設けられていない基板上でホメオトロピック配向液晶層を形成しうる、炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数1〜22のフルオロアルキル基を有する側鎖型液晶ポリマーと、光重合性液晶化合物を含有してなるホメオトロピック配向液晶性組成物、及び、これを配向させた状態で光照射した、ホメオトロピック配向液晶フィルムが知られている。(例えば、特許文献2参照)
【0008】
前記側鎖型液晶ポリマーはホメオトロピック配向を示し、これを10%以上混合することで、耐久性に優れるホメオトロピック配向液晶フィルムが得られる。しかしこの方法では、傾斜配向あるいは水平配向を示す光学異方体を得ることができない。また、該公報には、側鎖型液晶ポリマーとして、炭素数1〜22のアルキル基を有するポリマーを添加した場合しか具体的に開示されておらず、炭素数1〜22のフルオロアルキル基を有する側鎖型液晶ポリマーについてはなんら具体的に開示されていない。従って、フルオロアルキル基を有する側鎖型液晶ポリマーがどのような性質及び効果を有するものであるかについては全く示唆されていない。
【0009】
また、重合性の液晶材料に、空気との界面における該液晶材料のディレクタの固有の傾斜配向を減じる界面活性材料を添加して、液晶整列層の空気界面における該液晶材料の整列が実質的に平行又は実質的に斜めとなるような薄膜を得る方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。該界面活性材料として、具体的には、ポリアクリル酸エステル、ポリシリコン、反応性ポリシリコン、オルガノシラン、ワックス、および離型剤等が好ましいとあり、ポリシクロヘキシルメタクリル酸エステルやポリメチルメタクリル酸エステルを使用することで、厚さ方向の傾斜角度を変化させることができる。
しかし、該公報に記載された界面活性材料では、表面付近の配向欠陥を完全に改善することができなかった。
【0010】
【特許文献1】特開2000−345164号公報
【特許文献2】特開2003−227935号公報
【特許文献3】特開2000−105315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明が解決しようとする課題は、空気界面近傍の配向欠陥のない光学異方体を提供することにあり、該光学異方体を作製することのできる重合性液晶組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、空気界面に偏在する能力の高いフッ素基を含有する側鎖、及び、液晶分子と相溶する基を特定の割合で有する(メタ)アクリル共重合体が、空気界面近傍の配向欠陥を改善する性能が高いことを見出し、該共重合体を特定量添加することで、空気界面近傍の配向欠陥のない光学異方体が得られることを見いだした。
【0013】
(メタ)アクリル共重合体等の高分子量体は液晶に対する溶解性が低分子量体と比べて劣るため,液晶層から相分離しやすい性質がある。本発明においては更に相分離効果を高めるため、フッ化アルキル基等のフッ素基を含有する基を(メタ)アクリル共重合体に懸垂させた。該共重合体は、相分離する力が強く、且つ空気界面に偏在する力が強いので、ごく少量添加で効果があり、水に浮かべた油膜のように重合性液晶層の表面に広がり、空気界面近傍の配向欠陥のない光学異方体を得ることができる。少量添加のため、本来の重合性液晶が形成する光学異方体の光学的作用を損なうことがない。
【0014】
また、該共重合体に一般式(h)で表される基(以下、基(h)と言う。)を懸垂させることで、空気界面付近の基(h)の濃度を上げることができる。基(h)はポリマー化されているので、層内での動きに制約がある一方で、重合性基を有する液晶化合物と相互作用する。このことにより、空気界面近傍での液晶化合物と基(h)の連続性が増し、ディスクリネーション即ち配向欠陥が発生しにくく、基板側の配向規制力が界面付近まできちんと伝播した光学異方体を得ることができる。
【0015】
即ち本発明は、重合性基を有する液晶化合物を含有する重合性液晶組成物において、
1)フッ素基を有する側鎖と一般式(h)で表される基を有する側鎖を有し、
【0016】
【化1】

(h)
(式中、6員環A、B及びCはそれぞれ独立して、
【0017】
【化2】

【0018】
を表わし、(但し6員環A、B及びCは、フッ素原子又はメチル基で置換されていてもよい。)nは0又は1の整数を表わし、Y及びYはそれぞれ独立して、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CHCHCH−又は−CHCHCH=CH−を表わし、Yは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基を表わす。)
2)フッ素基含有率が3〜30質量%であり
3)一般式(h)で表される基を有する側鎖の全側鎖に対する割合が9〜95モル%であり、
4)質量平均分子量が10000〜300000である
(メタ)アクリル共重合体(H)を
0.1〜6.0質量%含有する重合性液晶組成物を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記記載の重合性液晶組成物を、配向機能を有する基板上に塗布し、配向させた状態で重合させて得られる光学異方体を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記記載の重合性液晶組成物を、パターン状に配向方向の異なる領域が分布している略水平配向機能を有する基板に塗布し、配向させた状態で重合させて得られる位相差膜を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の液晶組成物を使用することで、空気界面近傍の配向欠陥が改善された光学異方体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
((メタ)アクリル共重合体(H) フッ素基を有する側鎖)
本発明で使用する(メタ)アクリル共重合体(H)(以下、アクリル共重合体Hと略す)において、フッ素基を有する側鎖とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1〜18のフッ化アルキル基(但し、該基中に存在するメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、−SONZ−又は−CONZ−で置き換えられていても良い。Zはアルキル基を表す。またフッ化アルキル基は、ヒドロキシ基、等の置換基を有していても良い)を有する側鎖を表す。フッ化アルキル基が有するフッ素原子の数は、5〜35が好ましく、13〜25が特に好ましい。具体的には、−(CH−(C2q-s+1)、−(CH−NG−SO−(CF−CF、−(CH−NG−CO−(CF−CF(式中、p、qはそれぞれ独立して1〜17(但し、p+qは2以上17以下を満たす。)の整数を表す。sは0〜9の整数を表す。Gは炭素原子数1〜8のアルキル基又は水素を表す。また各々のメチレン基に結合する水素は、水酸基で置換されていてもよい)等のフッ化アルキル基が好ましい。中でも、pは1〜4でqは2〜16であることが好ましく、pは2〜3でqは5〜16であることがさらに好ましい。qが6〜11であると最も好ましい。
該フッ素を有する側鎖は、エステル結合等を介してアクリル共重合体主鎖に連結している。
【0023】
((メタ)アクリル共重合体(H) 基(h))
本発明で使用するアクリル共重合体Hにおいて、一般式(h)で表される基を有する側鎖は、エステル結合等を介してアクリル共重合体主鎖に連結している。
該基(h)は、単独で配向性を有し、あるいは他の基との相乗効果で配向性を有する性質をもつ。
【0024】
前記基(h)において、6員環A、B及びCは、フッ素原子又はメチル基で置換されていてもよい。中でも、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基が好ましい。
【0025】
前記基(h)において、Y及びYは中でも、それぞれ独立して、単結合、−CHCH−、−COO−、−OCO−、又は−C≡C−が好ましい。
は中でも、水素原子、フッ素、シアノ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基が好ましい。基板面に対して垂直な方向から見たときの光学異方性の大きい光学異方体を得たい場合にはYとして水素原子を選択するのが好ましく、光学異方性の小さい光学異方体を得たい場合は、Yとしてアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基を選択するのが好ましい。
【0026】
基(h)の具体例としては、下記構造が挙げられる。
【0027】
【化3】

【0028】
【化4】

【0029】
基(h)は、スペーサーと呼ばれる連結基で、アクリル基またはメタクリル基等の重合性基と連結されている。スペーサーがある場合、基(h)と重合性基とは比較的独立した運動性を有する。基(h)の運動性はポリマー主鎖の運動性にとらわれないので、基(h)は、周りの重合性液晶が受けた配向規制力を受けやすく、より同じ配向方向へ配向することができる。
【0030】
スペーサーはアルキル基やアルケニル基のようなほぼ直鎖状の化学構造を有していれば良く、途中に分岐鎖を有していても良く、エステル結合、アミド結合、エーテル結合のような結合基を介していても良い。
【0031】
本発明で使用するアクリル共重合体Hは、具体的には、主に、フッ素基を有するモノ(メタ)アクリレートと、前記基(h)を有するモノ(メタ)アクリレートと原料として得られる。
【0032】
(フッ化アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレート)
前記フッ素基を有するモノ(メタ)アクリレートは、中でも、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1〜18のフッ化アルキル基(但し、該基中に存在するメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、−SONZ−又は−CONZ−で置き換えられていても良い。Zはアルキル基を表す。またフッ化アルキル基は、ヒドロキシ基、等の置換基を有していても良い)を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。フッ化アルキル基が有するフッ素原子の数は、5〜35が好ましく、13〜25が特に好ましい。具体的には、−(CH−(C2q-s+1)、−(CH−NG−SO−(CF−CF、−(CH−NG−CO−(CF−CF(式中、p、qはそれぞれ独立して1〜17(但し、p+qは2以上17以下を満たす。)の整数を表す。sは0〜9の整数を表す。Gは炭素原子数1〜8のアルキル基又は水素を表す。また各々のメチレン基に結合する水素は、水酸基で置換されていてもよい)等のフッ化アルキル基が好ましい。中でも、pは1〜4でqは2〜16であることが好ましく、pは2〜3でqは5〜16であることがさらに好ましい。qが6〜11であると最も好ましい。
フッ化アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートは、具体的には、一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0033】
【化5】

(4)
【0034】
式(4)において、Xは水素原子又はメチル基を表す。中でも水素原子が好ましい。Zは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1〜18のフッ化アルキル基(但し、該基中に存在するメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、−SONZ−又は−CONZ−で置き換えられていても良い。Zはアルキル基を表す。またフッ化アルキル基は、ヒドロキシ基、等の置換基を有していても良い)を表す。
以下に、本発明で使用するフッ化アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートの具体例を挙げる。
【0035】
CF3(CF2)nCH2CH2OCOCH=CH2
(n=5-11, nの平均=9)
CF3(CF2)7CH2CH2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)7CH2CH2OCOCH=CH2
CF3(CF2)5CH2CH2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)6(CH2)3OCOCH=CH2
(CF3)2CF(CF2)10(CH2)3OCOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(C3H7)CH2CH2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)CH2CH2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)CH2CH2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7(CH2)4OCOCH=CH2
CF3(CF2)6COOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(C4H9)(CH2)4OCOCH=CH2
CF3(CF2)7CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2
CF3(CF2)5CON(C3H7)CH2CH2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)7CON(C2H5)CH2CH2OCOCH=CH2
【0036】
(基(h)を有するモノ(メタ)アクリレート)
前記基(h)を有するモノ(メタ)アクリレートは、一般式(1)で表される化合物であることが望ましい。
【0037】
【化6】

(1)
【0038】
式(1)において、Xは水素原子又はメチル基を表す。中でも、水素原子が好ましい。Rは、スペーサを表し、炭素原子数1〜18のアルキレン基(但し、該基中に存在し、−COO−と直接結合しない1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−で置き換えられていても良い)を表す。具体的には、−(CHt−O−、−(CHt’−、−(CHCHO)t”−(但し、t、t’、t”はそれぞれ1〜18の整数を表す)等の基があげられる。中でも、炭素原子数5〜15のアルキレン基が好ましく、5〜10のアルキレン基がなお好ましく、5〜8のアルキレン基が最も好ましい。6員環A、6員環B、6員環C、Y、Y、及びYは、前記一般式(h)におけると同じ基を表す。nは前記一般式(h)と同じ整数を表す。
【0039】
重合性液晶組成物中のアクリル共重合体Hは、空気界面近傍での配向欠陥を生じさせない効果を有するが、配向効果はアクリル共重合体Hが有する基(h)の構造によって若干異なっている。
【0040】
一般的に基(h)の液晶化合物に対する配向力は、一般式(h)におけるYで表される構造と、スペーサ部分(具体的には、前記一般式(1)における、R−6員環A−Y−6員環B−(Y−6員環C)−Yで表される構造において、Rで表されるスペーサの構造と、Yで表される部分)により決まることが知られている。
が炭素原子数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基であると、基(h)の配向力は強まり、液晶化合物に対し配向規制力も有するようになる。一方、Yが水素原子であると、基(h)の配向力は弱くなり、液晶化合物に対する配向規制力を有さない傾向にある。
一方、Rで表されるスペーサの長さが短すぎると、基(h)の運動性が低下して(メタ)アクリル共重合体H自体の結晶性が高くなり、自己配向能力が強くなる傾向にある。また長すぎるとスペーサ自体の結晶性が増大し、やはり自己配向能力が強くなる傾向にある。
【0041】
配向力の弱い基(h)としては、Yが水素原子の、例えばビフェニル基やフェニルシクロヘキシル基等が挙げられる。これらの基は、配向力がごく弱いため、他の基に対する配向規制力は殆ど有さないと考えられている。
【0042】
【化7】

【0043】
前記配向性の弱い基(h)を有するアクリル共重合体Hを使用すると、基板側の配向規制力が空気界面付近まできちんと伝播した、配向欠陥のない光学異方体を得ることができる。これは基(h)の、重合性液晶組成物中の液晶化合物に対する配向規制力が弱いため、重合性液晶組成物中の液晶化合物が受けた基板側の配向規制力を妨げることなく、空気界面付近の液晶化合物を配向させることができるからと考えられる。
前記配向性の弱い基(h)を有するアクリル共重合体Hは、アクリル共重合体Hを除いた重合性液晶組成物と混合あるいは接触することにより、該重合性液晶組成物の液体−液晶転移温度を低下させる。
(以下、本発明の重合性液晶組成物からアクリル共重合体Hを除いた組成物を、「重合性液晶組成物b」とする。)
【0044】
図1に、前記配向性の弱い基(h)を有するアクリル共重合体Hを重合性液晶組成物bに添加していったときの、添加量と液体−液晶転移温度との関係を示す。ここでいう「液体―液晶転移温度」とは、液体の状態から液晶組成物の温度を低下させながら示差走査熱分析(DSC)を行ったときに、液体からの相転移に対応して発現するDSCピークのピークトップの温度を指す。これにより、アクリル共重合体Hの添加量が増えるに従って、液体−液晶転移温度は低下することが判る。
アクリル共重合体Hは、重合性液晶組成物中では空気界面付近に偏在するように設計されている(後述)。従って、本発明のアクリル共重合体Hを含有する重合性液晶組成物は、空気界面付近の液体−液晶転移温度が低下し、空気界面からの配向規制力より基板面からの配向規制力が有効に働くことにより、基板側の配向規制力がさらに効果的に界面付近まできちんと伝播した光学異性体を得ることができるようになり、配向欠陥に対してよい効果を生みだしていると考えられる。
【0045】
前記配向性の弱い基(h)を有するアクリル共重合体Hと組み合わせる重合性液晶組成物bは、重合性液晶組成物bに該アクリル共重合体(H)を過度に添加して(20質量%)得られる液晶の液体−液晶相転移温度(T)、及び、重合性液晶組成物bの液体−液晶相転移温度(T)との差(以下、混和液晶低下温度ΔTと定義する)ΔT=T−Tが、−10℃〜−0.1℃である液晶混和特性を有するような、重合性液晶組成物bが好ましい。以下、その関係を下記式に示す。
【0046】
【数1】

【0047】
(但し、T=(前記重合性液晶組成物が、前記アクリル共重合体(H)を20質量%含有した際の液体−液晶相転移温度)であり、T=(前記重合性液晶組成物から前記アクリル共重合体(H)を除いたとき(重合性液晶組成物b)の液体−液晶相転移温度)である)
【0048】
但し、混和液晶低下温度ΔTが下がりすぎると重合性液晶組成物自体の安定性が下がることがあるので、10℃を越えて低下しないような組み合わせが好ましい。
このような組み合わせは、基板側の配向規制力が空気界面付近まできちんと伝播した、配向欠陥のない光学異方体を得るうえでなお好ましい。この組み合わせは、特に基板側の配向規制力が略水平配向の場合に特に好ましく用いられ、基板面に対して垂直な方向から見たときの光学的異方性の大きい光学異方体を得ることができる。
【0049】
配向欠陥に対する効果は基(h)としてビフェニル基又はフェニルシクロヘキシル基を用いたアクリル共重合体Hが最も大きい。更に具体的には、一般式(2−1)で表される構造単位を9〜95モル%、及び一般式(3−1)で表される構造単位を3〜45モル%含むアクリル共重合体Hが最も好ましい。一般式(2−1)で表される構造単位は、モル%にして多い方が効果を得やすく、60〜95モル%が好ましく、70〜90モル%が特に好ましい。また、一般式(3−1)で表される構造単位は3〜36モル%が好ましく、5〜25モル%がさらに好ましく、10〜25モル%が特に好ましい。
【0050】
【化8】

(2−1)
【0051】
【化9】

(3−1)
【0052】
式中、Xは水素またはメチル基を表し、rは1〜18の整数を表し、pは1〜8の整数を表し、qは1〜13の整数を表し(但し、p+qは2以上17以下を満たす)、sは0〜7の整数を表す。
【0053】
rは中でも、5〜15が好ましく、5〜10がなお好ましく、5〜8が最も好ましい。また、化合物の入手のしやすさを考えると、pは2が好ましく、qについては5〜11の奇数のものが好ましい。
【0054】
一方、比較的強い配向力を有する基(h)としては、例えば、4−アルキルビフェニル基、4−アルキルシクロヘキシルフェニル基等が挙げられる。これらの基でも、本発明においては、配向力が重合性液晶組成物中の液晶分子が有する配向力よりも小さい基を選択することが好ましい。配向性の比較的強い基(h)を有するアクリル共重合体Hを使用すると、基板側の配向規制力と、空気界面付近での配向規制力によりコントロールされた光学異方体を得ることができる。本発明で使用するアクリル共重合体Hは、アクリル鎖にランダムに基(h)がペンダントしているので、個々の基(h)が配向規制力を有している場合でも、その配向規制力を平均的に重合性液晶組成物中の液晶分子に伝播させることができる。
【0055】
本発明で使用する基(h)を有するモノ(メタ)アクリレートの具体例を挙げる。
【0056】
【化10】

【0057】
【化11】

【0058】
【化12】

【0059】
一般式(h)で表される基を有するモノ(メタ)アクリレートと、フッ化アルキル基等のフッ素基を有するモノ(メタ)アクリレートとを必須原料として共重合させることで、アクリル共重合体Hを得ることができる。共重合方法は特に限定はなく、公知の重合開始剤を用いて公知の合成方法に従って得ることができる。塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、放射線重合、光重合など各種の重合方式のいずれをも採用できる。中でも、溶液ラジカル重合法によるものが好ましい。
重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。重合に際しては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素、酢酸エチル、エチレングリコ−ルモノエチルエ−テルアセテ−ト等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノ−ル、n−ブタノ−ル、イソブタノ−ル、ジグリム、エチレングリコ−ルモノエチルエ−テル等のアルコ−ル系あるいはエ−テル系溶剤を用いることができる。一般式(h)で表される基を有するモノ(メタ)アクリレートと、フッ化アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートを溶剤に溶解し,脱気あるいは窒素置換などの処置を行い,重合反応が進行しやすくすることが好ましい。
【0060】
アクリル共重合体Hの重量平均分子量(以下、Mwと略す)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で10000〜300000の範囲であり、12000〜200000がなお好ましく、20000〜100000がさらに好ましい。
Mwが10000未満では、本発明の課題である配向欠陥を改善させる力が弱く、特に配向性が悪い傾向がある。また、低分子量のため溶出しやすく他の部材を汚染するおそれもある。Mwが300000を越えると、粘度が高すぎてしまい取り扱いに不便を有することや、液晶層と完全に相分離してしまい本発明の効果を発揮できないおそれがある。
アクリル共重合体HのMwは、公知の方法、例えば、モノマーの対溶液濃度や重合開始剤の種類や濃度、溶媒の種類、反応条件等を適宜変化させることで制御可能であるので、目的に応じて条件を選択すればよい。例えば、溶媒として非プロトン溶媒を使用すると、比較的高分子量のアクリル共重合体Hが得られるし、プロトン溶媒を使用すると比較的低分子量のアクリル共重合体Hが得られる。
【0061】
アクリル共重合体Hは、フッ素基含有率が3〜30質量%であり、且つ、基(h)を有する側鎖の全側鎖に対する割合が9〜95モル%である。両者をこのバランスとすることで、少量の使用量で効果的に空気界面付近の配向欠陥を改善させることができる。中でも、フッ素基含有率が5〜30質量%で且つ基(h)を有する側鎖の全側鎖に対する割合が9〜95モル%であることが好ましく、フッ素基含有率が5〜25質量%で且つ基(h)を有する側鎖の全側鎖に対する割合が60〜95モル%であることがなお好ましく、フッ素基含有率が7〜25質量%であり且つ基(h)を有する側鎖の全側鎖に対する割合が70〜90モル%であることが特に好ましい。
なお、ここでいうフッ素基含有率は、アクリル共重合体Hが有するフッ素原子の総量の質量%を表し、基(h)を有する側鎖の全側鎖に対する割合とは、全モノマー単位に対する基(h)を有する側鎖のモル%を表す。
【0062】
前記アクリル共重合体Hのフッ素基含有率が30質量%より大きかったり、基(h)含有率が9モル%よりも小さかったりする場合、液晶層と空気界面に偏在する力が大きすぎ、または、重合性液晶との親和力が弱まってしまい、基(h)も液晶層からはじき出され,液晶分子に対する配向欠陥の改善効果が得られにくい傾向にある。
一方、前記アクリル共重合体Hのフッ素基含有率が3質量%よりも小さかったり、基(h)の含有率が95モル%よりも大きかったりする場合、基(h)が液晶層に相溶する力が強すぎてしまい、界面付近に偏在しようとする力が弱まり、液晶層中に混ざり込んでしまう傾向にある。これにより、液晶層の配向性を乱したり、転移点の変化などの影響を及ぼしたりするおそれがある。
【0063】
前記比率は、基(h)を有するモノ(メタ)アクリレートと、フッ素基を有するモノ(メタ)アクリレートとの配合量や、フッ素基を有するモノ(メタ)アクリレートのフッ素基含有率より、所望の範囲に設計することが可能である。
フッ素基含有率は、原料であるフッ素基を有するモノ(メタ)アクリレートのフッ素基含有率及び共重合する際の配合量から計算する方法や、NMR等により測定することができる。
【0064】
前記一般式(1)で表される基(h)を有するモノ(メタ)アクリレートと、前記一般式(4)で表されるフッ化アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートを必須原料として共重合させることで、本発明の特に好ましい形態である、一般式(2)で表される構造単位と、一般式(3)で表される構造単位を含むアクリル共重合体Hを得ることができる。
【0065】
【化13】

(2)
【0066】
【化14】

(3)
【0067】
一般式(2)中、R、6員環A、6員環B、6員環C、Y、Y、及びYは、前記一般式(1)と同じ基を表す。nは前記一般式(1)と同じ整数を表す。X及びXは各々独立して水素原子又はメチル基を表し、また、一般式(3)中、Zは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1〜18のアルキルフッ素基を表す。
【0068】
一般式(2)で表される構造単位と一般式(3)で表される構造単位は、一般式(2)で表される構造単位を9〜95モル%、一般式(3)で表される構造単位を3〜45モル%含むことが望ましい。中でも、一般式(2)で表される構造単位を60〜95モル%、一般式(3)で表される構造単位を5〜25モル%含むことが特に望ましい。(2)で表される構造単位及び(3)で表される構造単位は、(2)で表される構造単位又は(3)で表される構造単位が隣同士に連結していてもよいし、(2)で表される構造単位と(3)で表される構造単位が交互に連結していてもよく、連結の順序にとくに決まりはない。
【0069】
アクリル共重合体Hの好ましい例としては、例えば、4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)フェニルベンゼンと1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートとの共重合体や、4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)フェニルトランスシクロヘキサンと1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートとの共重合体や、(1−シアノ−4−(4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)フェニル)ベンゼンと1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートとの共重合体や、1−プロピル−4−(4−(8−アクリロイルオキシオクチルオキシ)フェニル)トランスシクロヘキサンと1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートとの共重合体や、1−フルオロ−4−(4−(4−アクリロイルオキシブチルオキシ)フェニル)ベンゼンと1H,1H,2H,2H−ノナデカフルオロドデシルアクリレートとの共重合体や、1−ペンチル−4−(4−(11−アクリロイルオキシウンデシルオキシ)フェニル)トランスシクロヘキサンと1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートとの共重合体があげられる。
【0070】
さらに,本発明の効果を損なわない範囲で、基(h)を有するモノ(メタ)アクリレートとアルキルフッ素基を有するモノ(メタ)アクリレート以外に,共重合可能な公知のエチレン性単量体を加えた共重合体としてもよい。公知のエチレン性単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、3−クロロ−2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド,n−セチル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ベヘニル(メタ)アクリレート、iso−ステアリル(メタ)クリレート,アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルクロトナート、アセトアセトキシプロピルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシプロピルクロトナート、2−シアノアセトアセトキシエチルメタクリレート、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)メタクリルアミド、アセト酢酸アリル、アセト酢酸ビニルなどが挙げられる。これらは、2種以上を併用してもよい。また、前記エチレン性単量体のうち、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ウレタン基等の官能基を有するものは、それらの官能基が重合中ゲル化したり、貯蔵中に反応が進行したりライフが短くなるなど好ましくないが、極少量ならば共重合することも可能である。
【0071】
前記公知のエチレン性単量体の使用量は、アクリル共重合体Hとしての機能を損なわない範囲内とするのが好ましく、例えば60質量%以下が好ましく、30質量%以下が最も好ましい。
【0072】
(重合性基を有する液晶化合物)
本発明の重合性液晶組成物は、アクリル共重合体H0.1〜6.0質量%と、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、エポキシ基等の重合性基を有する液晶化合物を含有する。
本発明においては、本発明の重合性液晶組成物が液晶相を示すことが必要であって、使用する各々の重合性液晶化合物の全てが液晶相を示す必要はない。本発明において使用することのできる重合性液晶化合物は、単独で液晶相を示す化合物は勿論のこと、単独では液晶相を示さないが、融点を低下させて液晶相が発現するものや、他の液晶相を示す化合物と混合したときに液晶相を示すもの、液晶を示す化合物と類似した構造を持っていて他の液晶相を示す化合物が形成する液晶相の安定性を著しく低下させないもの等を含む。
【0073】
本発明で使用する重合性液晶化合物としては特に限定はなく、例えば、特開平8−3111号公報に記載の液晶化合物、特開2000−178233号公報に記載の液晶化合物、特開2000−119222号公報に記載の液晶化合物、特開2000−327632号公報に記載の液晶化合物、特開2002−220421号公報に記載の液晶化合物、特開2003−55661号公報に記載の液晶化合物、特開2003−12762号公報に記載の液晶化合物等を使用することができる。重合性基を基(h)の両末端に有する棒状の二官能重合性液晶化合物あるいは三官能重合性液晶化合物を使用すると、配向を良好に固定化することができ好ましい。特に二官能重合性液晶化合物を使用することが好ましい。また、粘度や、液晶相を示す温度を調整する目的で、重合性基を基(h)の片末端に有する棒状の単官能重合性液晶化合物を併用することも好ましい。
【0074】
アクリル共重合体Hは、本発明の重合性液晶組成物全量に対して、0.1〜6.0質量%の範囲で使用する。中でも、0.2〜3.0質量%の範囲が好ましく、0.2〜2.0質量%の範囲がさらに好ましく、0.3〜1.5質量%の範囲が最も好ましい。0.1質量%に満たない量では、層表面に均一に膜状にならず、配向欠陥を完全になくすことが困難である。一方、6.0質量%を越える量では、添加量全てが層表面に偏在できずに一部が層内部に残り、重合性液晶と相分離を起こしたり、層内部に残るアクリル共重合体Hの基Hが回りの重合性液晶の配向性を乱しマルチドメインを発生させたりするおそれがある。あるいは、耐熱性が下がったり、ヘイズ等の光学的特性が下がる可能性もある。
前記アクリル共重合体Hは、数種類を併用して使用することもできる。
【0075】
本発明の重合性液晶組成物中のアクリル共重合体Hの添加量と、得られる光学異方体の表面のぬれ性(水に対する接触角で表した。水との接触角が大きいほど、撥水性が大きいことを示し、即ちアクリル共重合体Hのフッ素基が表面に偏在していることを示す)との関係を図2に示す。この図から,水との接触角は、アクリル共重合体Hの添加量が0.1質量%でも大幅に上昇し、6質量%付近でほぼ頭うちとなることが判る。即ち、0.1質量%で光学異方体の表面欠陥をなくすのに十分な添加量となっていることが示唆される。従って、表面の配向欠陥については0.1質量%以上であれば十分な効き目を示す。
しかし、添加量を増やしても表面に偏在するアクリル共重合体Hの量は増えないことから、過剰分は液晶層内部に入り込んでいき、6.0質量%を越える量では相分離や層内部の液晶配向性を乱してしまうものと考えられる。
【0076】
本発明の重合性液晶組成物は、重合性基を有していない液晶化合物を必要に応じて添加してもよい。しかし、添加量が多すぎると、得られた光学異方体から液晶化合物が溶出して積層部材を汚染する恐れがあり、加えて光学異方体の耐熱性が下がるおそれがあるので、添加する場合は、重合性液晶化合物全量に対して30質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0077】
本発明の重合性液晶組成物は、必要に応じて、熱重合開始剤、光重合開始剤等の重合開始剤を添加することもできる。熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。また、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン類等が挙げられる。また、光カチオン開始剤としては、光酸発生剤を用いることができる。光酸発生剤としてはジアゾジスルホン系化合物、トリフェニルスルホニウム系化合物、フェニルスルホン系化合物、スルフォニルピリジン系化合物、トリアジン系化合物及びジフェニルヨードニウム化合物が好適に用いられる。添加する場合は、重合性液晶組成物に対して10質量%以下であることが好ましく、6質量%以下が特に好ましく、1〜4質量%の範囲が更に好ましい。
【0078】
本発明の重合性液晶組成物は、重合性基を有するが重合性液晶化合物ではない化合物を添加することもできる。このような化合物としては、通常、この技術分野で重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーとして認識されるものであれば特に制限なく使用することができる。添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
【0079】
本発明の重合性液晶組成物は、光学活性を有する化合物、すなわちキラル化合物を添加してもよい。該キラル化合物は、それ自体が液晶相を示す必要は無く、また、重合性基を有していても、有していなくても良い。また、キラル化合物の螺旋の向きは、重合体の使用用途によって適宜選択することができる。
具体的には、例えば、キラル基としてコレステリル基を有するペラルゴン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、キラル基として2−メチルブチル基を有するビーディーエイチ社製の「CB−15」、「C−15」、メルク社製の「S−1082」、チッソ社製の「CM−19」、「CM−20」、「CM」、キラル基として1−メチルヘプチル基を有するメルク社製の「S−811」、チッソ社製の「CM−21」、「CM−22」などを挙げることができる。
キラル化合物を添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物の重合体の用途によるが、得られる重合体の厚み(d)を重合体中での螺旋ピッチ(P)で除した値(d/P)が0.1〜100の範囲となる量を添加することが好ましく、0.1〜20の範囲となる量がさらに好ましい。
【0080】
本発明の重合性液晶組成物には、保存安定性を向上させるために安定剤を添加することもできる。安定剤として例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β−ナフチルアミン類、β−ナフトール類等が挙げられる。添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
【0081】
本発明の重合性液晶組成物を偏光フィルムや配向膜の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、その目的に応じて、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、界面活性剤、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物、などを添加してもよい。
【0082】
本発明の重合性液晶組成物を、配向機能を有する基板上に塗布し、本発明の重合性液晶組成物中の液晶分子を、ネマチック相を保持した状態で均一に配向させ、重合させることによって、本発明の光学異方体が得られる。
【0083】
(配向機能を有する基板)
前記基板は、有機、無機を問わず、公知慣用の材質の基板を使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板、ポリイミド板、ポリアミド板、ポリメタクリル酸メチル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニル板、ポリテトラフルオロエチレン板、セルロース板、三酢酸セルロース板,ポリエーテルスルホン板、ポリシクロオレフィン板、シリコン板、ガラス板、方解石板等が挙げられる。基板の形状としては、平板の他、曲面を有するものであっても良い。これらの基板は、必要に応じて、電極層、反射防止機能、反射機能を有していてもよい。
【0084】
前記基板に配向機能を付与する方法としては特に限定はなく、公知慣用の方法が挙げられる。具体的には、布等で基板表面をラビング処理する方法、ポリイミド薄膜又はポリビニルアルコール薄膜等の有機薄膜を基板表面に形成し、これを布等でラビング処理する方法、基板にSiOを斜方蒸着して配向膜を形成する方法、分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜や光で異性化する官能基を有する有機薄膜に、偏光または非偏光を照射する方法等が挙げられる。一様な配向状態を形成するためには、通常のツイステッド・ネマチック素子又はスーパー・ツイステッド・ネマチック素子で使用されているプレチルト角を与えるポリイミド薄膜を使用すると、液晶分子の配向状態の制御を容易にすることができる。
【0085】
一般に、配向機能を有する基板に液晶組成物を接触させた場合、液晶分子は基板付近で基板を配向処理した方向に沿って配向する。液晶分子が基板と水平に配向するか、傾斜あるいは垂直して配向するかは、基板への配向処理方法による影響が大きい。
例えば、インプレーンスイッチング(IPS)方式の液晶表示素子に使用するようなプレチルト角のごく小さな配向膜を基板上に設ければ、ほとんど水平に配向した重合性液晶層が得られる。
また、TN型液晶表示素子に使用するような配向膜を基板上に設けた場合は、少しだけ配向が傾斜した重合性液晶層が得られ、STN方式の液晶表示素子に使用するような配向膜を使うと、大きく配向が傾斜した重合性液晶層が得られる。
【0086】
液晶組成物をプレチルト角のごく小さな水平配向(略水平配向)機能を有する基板に接触させたとき、組成物中の液晶分子は、基板付近ではきちんと水平配向するが空気界面付近では配向規制力がうまく伝播されず、一部配向が乱れる(これが配向欠陥である)。しかしアクリル共重合体Hを含有する本発明の重合性液晶組成物は、該共重合体Hが空気界面近傍に偏在し、重合性液晶組成物中の液晶分子が受けた基板側の配向規制力を妨げることなく、空気界面付近の液晶分子を配向させるため、ほとんど水平に配向した、あるいは、連続的に傾き角が変化し傾斜配向した重合性液晶層を得ることができ、配向欠陥がなく、基板面に対して垂直な方向から見たときの光学的異方性の大きい光学異方体を得ることができると考えられる。
【0087】
このときは、基(h)が、配向力の小さいビフェニル基やフェニルシクロヘキシル基であるアクリル共重合体Hを使用することが好ましく、更に、基(h)がビフェニル基であるアクリル共重合体Hと、該アクリル共重合体Hを添加することにより液体−液晶転移温度が低下するような重合性液晶組成物bの組み合わせで使用することがなお好ましい。該組み合わせでは、空気界面付近の液体−液晶転移温度が低下するので、基板側からうける液晶分子の配向規制力がさらに効果的に界面付近まできちんと伝播すると考えられる。
【0088】
また、本発明の重合性液晶組成物を、プレチルト角を有する水平配向機能を有する基板に接触させたときは、基板付近から空気界面付近まで一様又は連続的に角度が変化して傾斜配向した光学異方体を得ることができる。この機構も上記と同様と考えられる。
【0089】
また、分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜や光で異性化する官能基を有する有機薄膜(以下光配向膜と略す)に、偏光または非偏光を照射する方法等(光配向法)を用いれば、パターン状に配向方向が異なる領域が分布した基板を作製することができる。
【0090】
初めに、光配向膜を設置した基板上に光配向膜の吸収帯にある波長の光を照射し、一様な配向が得られる基板を準備する。その後、当該基板にマスクを被せ、マスクの上から光配向膜の吸収波長にある第1の照射と異なる状態の光、例えば偏光状態が異なる光あるいは照射角度及び方向が異なる光を照射して、照射部分だけに第1の照射で得られた部分と異なる配向機能を持たせる。
【0091】
以上のように得られたパターン状に配向機能の異なる領域が分布した基板に重合性液晶組成物を接触させれば、基板の配向機能に応じてパターン状に配向方向の異なる領域が分布する。この状態で光照射による重合を行えば、配向パターンを有する光学異方体を得ることができる。
【0092】
特に、前記基板として、パターン状に配向方向の異なる領域が分布している略水平配向機能を有する基板を使用すれば、位相差膜として特に有用な光学異方体を得ることができる。
【0093】
この時に使われる光配向膜は、複数回の光照射に反応してそれぞれ配向方向を変えられなければならないので、低分子量の化合物から成るものが望ましい。
【0094】
光配向膜を使わずに配向パターンを得る方法としては、AFMの触針で配向膜をラビングする方法、光学異方体をエッヂングする方法などが挙げられるが、光配向膜を利用する方法が簡便であり好ましい。
【0095】
(塗布方法)
本発明の重合性液晶組成物を基板上に塗布する場合は、バーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、キャップコーティング、ディッピング法等の公知慣用のコーティング法を利用すればよい。このとき、塗工性を高めるために、本発明の重合性液晶組成物に公知慣用の有機溶媒を添加しても良い。この場合は、本発明の重合性液晶組成物を基板上に塗布後、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等で有機溶媒を除去する。
【0096】
塗布後、本発明の重合性液晶組成物中の液晶分子をネマチック相を保持した状態で均一に配向させることが好ましい。具体的には、液晶の配向を促すような熱処理を行うと、アクリル共重合体Hをより表面に偏在させ、配向をより促進することができ好ましい。熱処理法としては、例えば、本発明の重合性液晶組成物を基板上に塗布後、該液晶組成物のN(ネマチック相)−I(等方性液体相)転移温度(以下、N−I転移温度と略す)以上に加熱して、該液晶組成物を等方相液体状態にする。そこから、必要に応じ徐冷してネマチック相を発現させる。このとき、一旦液晶相を呈する温度に保ち、液晶相ドメインを充分に成長させてモノドメインとすることが望ましい。
あるいは、本発明の重合性液晶組成物を基板上に塗布後、本発明の重合性液晶組成物のネマチック相が発現する温度範囲内で温度を一定時間保つような加熱処理を施しても良い。
【0097】
加熱温度が高過ぎると重合性液晶化合物が好ましくない重合反応を起こして劣化するおそれがある。また、冷却しすぎると、重合性液晶組成物が相分離を起こし、結晶の析出、スメクチック相のような高次液晶相を発現し、配向処理が不可能になることがある。
このような熱処理をすることで、単に塗布するだけの塗工方法と比べて、配向欠陥の少ない均質な光学異方体を作製することができる。
また、このようにして均質な配向処理を行った後、液晶相が相分離を起こさない最低の温度、即ち過冷却状態となるまで冷却し、該温度において液晶相を配向させた状態で重合すると、より配向秩序が高く、透明性に優れる光学異方体を得ることができる。
【0098】
(重合方法)
本発明の重合性液晶組成物を重合させる方法としては、活性エネルギー線を照射する方法や熱重合法等が挙げられるが、加熱を必要とせず、室温で反応が進行することから活性エネルギー線を照射する方法が好ましく、中でも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。照射時の温度は、本発明の重合性液晶組成物が液晶相を保持できる温度とし、重合性液晶組成物の熱重合の誘起を避けるため、可能な限り30℃以下とすることが好ましい。尚、液晶組成物は、通常、昇温過程において、C(固相)−N(ネマチック)転移温度(以下、C−N転移温度と略す。)から、N−I転移温度範囲内で液晶相を示す。一方、降温過程においては、熱力学的に非平衡状態を取るため、C−N転移温度以下でも凝固せず液晶状態を保つ場合がある。この状態を過冷却状態という。本発明においては、過冷却状態にある液晶組成物も液晶相を保持している状態に含めるものとする。紫外線照射強度は、1W/m〜10kW/mの範囲が好ましい。特に、5W/m〜2kW/mの範囲が好ましい。紫外線強度が1W/m未満の場合、重合を完了させるのに多大な時間がかかる。一方、2kW/mを超える強度では、重合性液晶組成物中の液晶分子が光分解する傾向にあることや、重合熱が多く発生して重合中の温度が上昇し、重合性液晶のオーダーパラメーターが変化して、重合後のフィルムのリタデーションに狂いが生じる可能性がある。
【0099】
マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させた後、該未重合部分の配向状態を、電場、磁場又は温度等をかけて変化させ、その後該未重合部分を重合させると、異なる配向方向をもった複数の領域を有する光学異方体を得ることもできる。
【0100】
また、マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させる際に、予め未重合状態の重合性液晶組成物に電場、磁場又は温度等をかけて配向を規制し、その状態を保ったままマスク上から光を照射して重合させることによっても、異なる配向方向をもった複数の領域を有する光学異方体を得ることができる。
【0101】
本発明の重合性液晶組成物を重合させて得られる光学異方体は、基板から剥離して単体で光学異方体として使用することも、基板から剥離せずにそのまま光学異方体として使用することもできる。特に、他の部材を汚染し難いので、被積層基板として使用したり、他の基板に貼り合わせて使用したりするときに有用である。
【実施例】
【0102】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。また、アクリル共重合体(H−1)〜(H−22)のMwは、ポリスチレン換算のGPCにて測定した。また、基(h)及びフッ化アルキル基の含有率(モル分率)はNMRにより決定した。
【0103】
(アクリル共重合体Hの合成)
(合成例1 基(h)を有するモノアクリレートA−1の合成)
17gの4−フェニルフェノール(0.1モル)をN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す)120mLに溶解し、攪拌しながら、15.2gの炭酸カリウム粉末(0.11モル)を加え、90℃に加熱しながら1時間攪拌した。該混合物に、6−クロロ−1−ヘキサノール(14.3g,0.11モル)を滴下し、12時間攪拌しながら反応させた。ガスクロマトグラフィーで原料由来のピークが消失したのを確認した後、反応液を水で希釈し、析出した固体を濾取した。得られた固体をエタノールから再結晶し、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)フェニルベンゼン23gを得た。(収率85%)
【0104】
合成した4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)フェニルベンゼン21g(78ミリモル)をジクロロメタン300mLに溶解させた。これを窒素雰囲気下で氷水浴中に浸して冷却し、7.7gのアクリル酸クロリド(86ミリモル)を加えて10分攪拌した。さらに8.7gのトリエチルアミン(86ミリモル)を加え、反応終了後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて洗浄し、続いて有機層を希塩酸及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後、エタノールから再結晶を行い、基(h)を有するモノアクリレート「4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)フェニルベンゼン」19.4gを得た。以下、(A−1)と略す。(収率70%)
【0105】
【化15】

(A−1)
【0106】
(合成例2 基(h)を有するモノアクリレートA−2の合成)
合成例1において、4−フェニルフェノールの代わりに4−シアノ−4−ヒドロキシビフェニルを使用した他は合成例1と同様にして、基(h)を有するモノアクリレート (1−シアノ−4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)フェニル)ベンゼン 19.4gを得た。以下、(A−2)と略す。
【0107】
【化16】

(A−2)
【0108】
(合成例3 基(h)を有するモノアクリレートA−3の合成)
合成例1において、4−フェニルフェノールの代わりに4−(4−ペンチルシクロヘキシル)フェノールを使用した他は合成例1と同様にして、基(h)を有するモノアクリレート (1−ペンチル−4−(4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)フェニル)トランスシクロヘキシル19.4gを得た。以下、(A−3)と略す。
【0109】
【化17】

(A−3)
【0110】
(合成例4 基(h)を有するモノアクリレートA−4の合成)
合成例1において、6−クロロー1−ヘキサノールの代わりに12−ブロモ−1−ドデカノールを使用し、4−フェニルフェノールの代わりに4−(4−ペンチルシクロヘキシル)フェノールを使用した他は合成例1と同様にして、基(h)を有するモノアクリレート(1−ペンチル−4−(12−アクリロイルオキシドデシルオキシ)フェニル)トランスシクロヘキシル25gを得た。以下、(A−4)と略す。
【0111】
【化18】

(A−4)
【0112】
(合成例5 基(h)を有するモノアクリレートA−5の合成)
合成例1において、4−フェニルフェノールの代わりに4−シクロヘキシルフェノールを使用した他は合成例1と同様にして、基(h)を有するモノアクリレート 4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)フェニルトランスシクロヘキシル15gを得た。以下、(A−5)と略す。
【0113】
【化19】

(A−5)
【0114】
(合成例6 基(h)を有するモノアクリレートA−6の合成)
合成例1において、4−フェニルフェノールの代わりに4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェノールを使用した他は合成例1と同様にして、基(h)を有するモノアクリレート (1−プロピル−4−(4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)フェニル)トランスシクロヘキシル15gを得た。以下、(A−6)と略す。
【0115】
【化20】

(A−6)
【0116】
(合成例7 基(h)を有するモノアクリレートA−7の合成)
合成例1において、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)フェニルベンゼンの代わりに4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェノールを使用した他は合成例1と同様にして、基(h)を有するモノアクリレート 4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニルアクリレート15gを得た。以下、(A−7)と略す。
【0117】
【化21】

(A−7)
【0118】
(合成例8 基(h)を有するモノアクリレートA−8の合成)
合成例1において、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)フェニルベンゼンの代わりに4−[(4−ペンチルフェニル)エチニル]フェノールを使用したほかは合成例1と同様にして、基(h)を有するモノアクリレート 4−[(4−ペンチルフェニル)エチニル]フェニルアクリレート15gを得た。以下、(A−8)と略す。
【0119】
【化22】

(A−8)
【0120】
(合成例H1 アクリル共重合体(H−1)の合成)
ガラス製重合管に,化合物(A−1)18gと、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート9.3g、及び2,2’アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.55gを秤取し,トルエン200mLを加えて溶解させた。この溶液に窒素気流を通じて酸素を取り除いた後,60℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を濃縮し,濃縮液を1Lのメタノール中に滴下した。沈殿した固体をメタノールで良く洗浄し、Mw47000の、4−ヘキシルオキシビフェニル基及び1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル基を有するアクリル共重合体(H−1)15gを得た。(基(h)である(4−ヘキシルオキシビフェニル基)のモル分率:77モル%,フッ素基含有率:20重量%)
【0121】
(合成例H2〜22 アクリル共重合体(H−2)〜(H−22)の合成)
以下、合成例H1と同様にして、アクリル共重合体(H−2)〜(H−22)を合成した。使用したモノマーの種類、仕込み量、得られた共重合体の分子量を表1−1、1−2に示す。
【0122】
【表1】


【0123】
【表2】

【0124】
比較合成例 アクリル共重合体(H−23)〜(H−26)の合成
合成例H−1と同様にして、比較例用のアクリル共重合体(H−23)〜(H−26)を作成した。使用したモノマーの種類、仕込み量、得られた共重合体の分子量を表2に示す。また、アクリル共重合体(H−7)をGPCにより分取し、分子量が7,000の比較用アクリル共重合体(H−26)を得た。
【0125】
【表3】

【0126】
(比較例用の添加剤)
比較例用の添加剤として、式Mで表される構造のフッ素系化合物を使用した。(添加剤(M)中のフッ素含有量は50質量%,基(h)の含有量は35質量%、分子量は644である)
【0127】
【化23】

(M)
【0128】
(重合性液晶組成物LC−1、LC−2の調製)
式(a)〜(e)で表される化合物を使用し、重合性液晶組成物LC−1及びLC−2を調製した。
LC−1:(a):(b):(c):(d):(e)の配合比率は、質量比にして33:22:22:18:5である。
LC−2:(c):(d)の配合比率は、質量比にして50:50である。
【0129】
【化24】

【0130】
(光学異方体用基板の作成)
下記式(S)で表されるアゾ化合物0.5gを、N−メチルピロリドン25gに加熱溶解し、この溶液にブチルセロソルブ(2−ブトキシエタノール)25gを加えた。これをポリフッ化ビニリデン製の孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過した。超音波洗浄を行った厚さ1mm、サイズが100mm×100mmの光学ガラス製ガラス板に前記アゾ化合物(S)溶液をスピンコートし(500回転/分で5秒後、2500回転/分で25秒)、100℃のホットプレート上で1分乾燥させた。
下記方法1〜3のいずれかの方法により、配向膜付きの光学異方体用基板を作成した。
【0131】
【化25】

【0132】
(方法1)
室温で、該光学ガラス板に斜め45°から366nmの紫外線照射(紫外線強度は50mW/cm、照射時間は100秒)を行った。
【0133】
(方法2)
該光学ガラス板の真上から366nmの偏光紫外線照射(紫外線強度は20mW/cm、照射時間は100秒)を行った。
【0134】
(方法3)
該光学ガラス製ガラス板にポリイミドの配向膜(JSR社製 AL−1254)が形成されラビング処理が施された基板を用意した。
【0135】
(光学異方体の作製)
前記方法で作成した配向膜付きの光学異方体用基板上に、後述する実施例及び比較例で調整した重合性液晶組成物にアクリル共重合体Hを添加した組成物を下記方法4又は5の方法により作成した。
【0136】
(方法4)
キャップコーター3(ヒラノテクシード社製塗工装置)を用いて、前記配向膜付きの光学異方体用基板上に塗布した。塗布方向は配向膜の配向規制方向と同じ方向にした。このときの塗布温度は25℃とした。塗布後、50℃で10分間空気下に静置して溶媒を蒸発させ、続いて25℃で5分間保つことによって配向した液晶層を得た。
【0137】
(方法5)
スピンコーターを用いて前記配向膜付きの光学異方体用基板上に塗布後、50℃で1分間又は80℃で10分間空気下に静置して溶媒を蒸発させ、続いて25℃で5分間保つことによって配向した液晶層を得た。
【0138】
配向の確認は、互いに直交した偏光板の間に挟み、偏光顕微鏡で行った。更に、窒素雰囲気下で5分保った後、窒素雰囲気下で紫外線照射(紫外線強度:10W/m、照射時間:250秒)することで、光学異方体を得た。光学異方体の膜厚は約2.0μmであった。
【0139】
(配向性評価)
配向性は、配向欠陥の有無、及び、リタデーションの値によって評価した。
(配向欠陥)
配向欠陥は、目視による白濁の有無、及び、互いに直交した偏光板の間に挟み、偏光顕微鏡でディスクリネーションライン、及び、配向の乱れを観察することによって行った。目視にてほぼ透明であり、且つディスクリネーションラインが観察されなかったものは優、目視にてほぼ透明であり、且つ、多少のディスクリネーションラインが観察されるものは良、目視にて白濁が観察され、且つ数多くのディスクリネーションラインが観察され配向性が良いとは言えないものは不良を記した。
配向欠陥が観察されない状態とは,配向欠陥が光学異方体全面に占める割合がおおむね5%以下になった状態とする。
【0140】
(リタデーション値)
リタデーションは中央精機(株)製「液晶特性評価装置(OMS−DI4RD)」を用いて測定した。リタデーション値が大きいほど、(面に対して垂直に見たときの)光学的異方性が大きい光学異方体であるといえる。
【0141】
(重合性液晶組成物にアクリル共重合体Hを20%添加したときの、液体―液晶転移温度測定方法)
重合性液晶組成物LC−1、LC−2に、前記方法により合成したアクリル共重合体Hを20質量%添加し、液体―液晶転移温度を測定した。測定は、メトラー社製DSC822eを用いて、サンプルを一度液体状態まで加温し、10℃/minで降温しながら行った。
【0142】
(実施例1)
アクリル共重合体(H−1)を0.5部(この時、重合性液晶組成物LC−1 100gに対するアクリル共重合体(H−1)由来のフッ素基含有量は0.135質量部,基(h)含有量は0.167質量%である)、重合性液晶組成物LC−1を96部、チバスペシャリティケミカルズ(株)製の光重合開始剤「イルガキュア907」4部、キシレン100部を混合し、塗工用の組成物とした。これを使用し、方法1で作成した基板を用い、方法4に従い光学異方体を作成し配向性を評価した。アクリル共重合体(H−1)中のフッ素基含有率(質量%)、アクリル共重合体(H−1)中の基(h)を有する側鎖の全側鎖に対する含有割合(モル%)、使用した重合性液晶の種類、光学異方体用基板・光学異方体の作製方法、及び評価結果を表3に示す。
この結果、配向性は優で、配向欠陥など見られなかった。またリタデーション値は175nmと大きい値を示し、光学的異方性の大きい光学異方体であることが確認できた。
また、LC−1にアクリル共重合体(H−1)を20%添加したときの液体―液晶転移温度は0.5℃低下した。これによっても、アクリル共重合体(H−1)を使用することで光学的異方性が大きい光学異方体が得られることが確認できる。
【0143】
(実施例2〜25)
アクリル共重合体(H−1)を、アクリル共重合体(H−2)〜(H−22)に変更し、重合性液晶組成物LC−1あるいはLC−2を表記載の重合性液晶組成物とし、表記載の作成方法で光学異方体を作成し配向性を評価した。アクリル共重合体(H−2)〜(H−22)の添加量、アクリル共重合体H中のフッ素基含有率(質量%)、アクリル共重合体(H−1)中の基(h)を有する側鎖の全側鎖に対する含有割合(モル%)、使用した重合性液晶の種類、光学異方体用基板・光学異方体の作製方法、及び評価結果を表3に示す。
【0144】
【表4】

【0145】
この結果、本発明のアクリル共重合体Hを添加した実施例1〜25は、全て配向性が優であり、配向欠陥の見られない光学異方体が得られた。ビフェニル基を有するモノマーA−1を原料としたアクリル共重合体(H−1)〜(H−9)、及び、フェニルシクロヘキシル基を有するモノマーA−5を原料としたアクリル共重合体(H−19)を使用した実施例1、5、8、22について、レタデーション値及び液体−液晶転移温度の変化を測定した。その結果、実施例1、5、8、22は液晶組成物の種類には関係なく、転移温度が下がることが確認できた。また、実施例1、5、8、22のレタデーション値は2桁以上を示し、光学的異方性の大きい光学異方体であることが確認できた。特に、ビフェニル基のモル質量%が多い実施例1、実施例8は、レタデーション値が3桁と大きいことから、より光学的異方性の大きい光学異方体を得るには、ビフェニル基のモル質量%を多くすると効果的なことが判った。
一方、一般式(h)のYとしてアルキル基を有するモノマーA−6、A−8を原料としたアクリル共重合体(H−20)、(H−22)を使用した実施例23、25についても同様にレタデーション値及び液体−液晶転移温度の変化を測定した。その結果、両方とも転移温度が上がった。また、レタデーション値は1桁であり、光学的異方性の小さい光学異方体であることが確認できた。
【0146】
(比較例1)
アクリル共重合体(H−1)をアクリル共重合体(H−23)とした以外は、実施例1と同様にして塗工用の組成物とし光学異方体を作成した。偏光顕微鏡観察より配向性を評価したところ、ディスクリネーションラインが観察された(配向欠陥:不良)。
【0147】
(比較例2)
アクリル共重合体(H−1)をアクリル共重合体(H−24)とした以外は、実施例1と同様にして塗工用の組成物とし光学異方体を作成した。偏光顕微鏡観察より配向性を評価したところ、ディスクリネーションラインが観察された(配向欠陥:不良)。
【0148】
(比較例3)
アクリル共重合体(H−1)をアクリル共重合体(H−25)(フッ素含有率38質量%、一般式(h)で表される基を有する側鎖は50モル%)とした以外は、実施例1と同様にして塗工用の組成物とし光学異方体を作成した。偏光顕微鏡観察より配向性を評価したところ、ディスクリネーションラインが観察された(配向欠陥:不良)。
【0149】
(比較例4)
アクリル共重合体(H−1)をアクリル共重合体(H−26)とした以外は、実施例12と同様にして塗工用の組成物とし光学異方体を作成した。偏光顕微鏡観察より配向性を評価したところ、全体的に配向乱れが観察された(配向欠陥:不良)。
【0150】
(比較例5)
添加剤Mを、重合性液晶組成物LC−1 100gに対するアクリル共重合体(H−1)由来のフッ素基量が、実施例1と同じ0.135質量%となるように、0.21部加えた以外は、実施例1と同様にして光学異方体を作製した(このときの基(h)含有量は0.050質量%であった)。偏光顕微鏡観察より配向性を評価したところ,ディスクリネーションラインが観察された(配向欠陥:不良)。
【0151】
(比較例6)
添加剤Mを、重合性液晶組成物LC−1 100gに対する(H−1)由来の基(h)の含有量が、実施例1と同じ0.167質量%となるように0.70部加えた以外は、実施例1と同様にして光学異方体を作製した(このときのフッ素基含有量は0.457質量%であった)。偏光顕微鏡観察による配向性評価より、ディスクリネーションラインが少なかったが(配向欠陥:良−不良)、液晶に添加剤Mが溶解したことによる光学異方体のリタデーションの減少が著しく、光学異方体としては使用に適さなかった。
【0152】
(比較例7)
アクリル共重合体(H−1)を添加しない以外は実施例1と同様にして、塗工用の組成物とし光学異方体を作成した。偏光顕微鏡観察より配向性を評価したところ、ディスクリネーションラインが観察された(配向欠陥:不良)。
【0153】
(比較例8)
アクリル共重合体(H−1)の添加量を30質量%とした以外は実施例1と同様にして、塗工用の組成物とし光学異方体を作成した。偏光顕微鏡観察より配向性を評価したところ、配向性が不良であった。
【0154】
(実施例26)
実施例1と同様に、重合性液晶組成物LC−1を96部、チバスペシャリティケミカルズ(株)製の光重合開始剤「イルガキュア907」4部、キシレン100部を混合し、アクリル共重合体(H−1)を0〜30部添加したものを塗工用の組成物とした。これを用いて方法4に従い光学異方体を作製し、配向欠陥量を測定した。配向欠陥量は,配向欠陥から生じる光漏れの画素数の割合から評価した。
光学異方体をクロスニコル下に置き,偏光顕微鏡を用いてデジタルカメラ撮影を行った。画像解析ソフトを用いて撮影した画像のヒストグラム解析を行い,光漏れを起こしている画素数をカウントした。光漏れ画素が全画素に占める割合をもって配向欠陥量とした。割合が多いほど配向欠陥が多いことを示す。
結果を図3に示す。この結果、0.1〜4%の添加範囲内においては欠陥量が5%以下であった。
【0155】
(パターン状に配向方向の異なる領域が分布している光学異方体)
(実施例27)
光学異方体用基板の作成において、前記方法1で作成したアゾ化合物層(配向膜)を用いて、紫外線照射を行う前の基板を、水平回転機構を有するステージに固定し、ステージの回転目盛りを+10°に固定した状態で斜め45°から366nmの紫外線照射(紫外線強度は50mW/cm、照射時間は100秒)を行い、一様な配向膜機能を有する基板を作製した。
続いて、上記配向機能付き基板の乗った水平回転機構付きステージを回転させ、目盛りが−10°になる状態で固定した。これに前記と同様の条件にてフォトマスクを用いて紫外線照射を行うことにより、パターン状に配向方向の異なる領域が分布している配向膜機能を有する基板を作製した。
【0156】
(光学異方体の作製)
実施例1で調製したアクリル共重合体(H−1)を含有する液晶組成物を、キャップコーター3(ヒラノテクシード社製塗工装置)を用いてパターン状に配向方向の異なる領域が分布している配向機能付き基板上に塗布した。塗布方向は配向膜の2つの配向規制方向の線対称線と同じ方向にした。このときの塗布温度は25℃とした。
塗布後、50℃で10分間、空気下で静置して溶媒を蒸発させ、続いて25℃で5分間保つことによって液晶分子を配向させた。配向の確認は、互いに直交した偏光板の間に挟み偏光顕微鏡で行った。更に、窒素雰囲気下で5分保った後、窒素雰囲気下で紫外線照射(紫外線強度:10W/m、照射時間:250秒)することで、光学異方体を得た。光学異方体の膜厚は約2.0μmであった。
【0157】
(配向パターンの確認)
2枚の直交した偏光板間に該光学異方体を置き、光学異方体を回転させて面内の明暗模様を観察した。さらに、偏光顕微鏡下で光学異方体を観察し、配向方向が異なる領域が分布し、パターン状に配向方向が異なり、配向欠陥が観察されないことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明の重合性液晶組成物を使用した光学異方体は、光学補償板、光学的ローパスフィルタ、又は偏光プリズム材料としては勿論のこと、各種位相差板、波長板、偏光板、光導波路、圧電素子、非線形光学素子、各種光フィルター、レーザー用部品、コレステリック液晶相等の選択反射を利用した顔料、光ファイバー等の被覆剤等への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】重合性液晶組成物に対する(メタ)アクリル共重合体(H)の添加量と、液体−液晶転移温度との関係を示した図である。(図中、「H濃度(%)」は、アクリル共重合体(H)の添加量を%で表したものである)
【図2】重合性液晶組成物に対する(メタ)アクリル共重合体(H)の添加量と、水との接触角との関係を示した図である。(図中、「H濃度(%)」は、アクリル共重合体(H)の添加量を%で表したものである)
【図3】実施例1の、(メタ)アクリル共重合体(H−1)の、添加量と配向欠陥量との関係を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性基を有する液晶化合物を含有する重合性液晶組成物において、
1)フッ素基を有する側鎖と、一般式(h)で表される基を有する側鎖を有し、
【化1】

(h)
(式中、6員環A、B及びCはそれぞれ独立して、
【化2】


を表わし、(但し6員環A、B及びCは、フッ素原子又はメチル基で置換されていてもよい。)nは0又は1の整数を表わし、Y及びYはそれぞれ独立して、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CHCHCH−又は−CHCHCH=CH−を表わし、Yは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基を表わす。)
2)フッ素基含有率が3〜30質量%であり
3)一般式(h)で表される基を有する側鎖の全側鎖に対する割合が9〜95モル%であり、
4)質量平均分子量が10000〜300000である
(メタ)アクリル共重合体(H)を
0.1〜6.0質量%含有することを特徴とする重合性液晶組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル共重合体(H)が、一般式(h)で表される基を有するモノ(メタ)アクリレートと、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1〜18のフッ化アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートとを必須原料とする(メタ)アクリル共重合体である、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項3】
前記一般式(h)で表される基を有するモノ(メタ)アクリレートが、一般式(1)で表される化合物である、請求項2に記載の重合性液晶組成物。
【化3】

(1)
(式中、Xは水素原子又はメチル基を表わし、Rは、炭素原子数1〜18のアルキレン基(但し、該基中に存在し、−COO−と直接結合しない1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−で置き換えられていても良い)を表す。6員環A、6員環B、6員環C、Y、Y、及びYは、前記一般式(h)と同じ基を表す。nは前記一般式(h)と同じ整数を表す。)
【請求項4】
前記一般式(h)においてYが水素原子である、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項5】
前記一般式(h)において、6員環A、B及びCが1,4−フェニレン基、又は1,4−シクロヘキシレン基である、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項6】
前記一般式(h)が、ビフェニル基またはフェニルシクロヘキシル基である、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル共重合体(H)が、一般式(2)で表される構造単位を9〜95モル%、及び一般式(3)で表される構造単位を3〜45モル%含む、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【化4】

(2)
【化5】

(3)
(式中、R、6員環A、6員環B、6員環C、Y、Y、及びYは、前記一般式(1)と同じ基を表す。nは前記一般式(1)と同じ整数を表す。X及びXは各々独立して水素原子又はメチル基を表し、Zは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1〜18のフッ化アルキル基(但し、該基中に存在するメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、−SONZ−又は−CONZ−で置き換えられていても良い。Zはアルキル基を表す。またフッ化アルキル基は置換基を有していても良い)を表す。)
【請求項8】
前記(メタ)アクリル共重合体(H)が、一般式(2−1)で表される構造単位を9〜95モル%、及び一般式(3−1)で表される構造単位を3〜45モル%含む、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【化6】

(2−1)
【化7】

(3−1)
(式中、Xは水素またはメチル基を表し、rは1〜18の整数を表し、pは1〜8の整数を表し、qは1〜13の整数を表し(但し、p+qは2以上17以下を満たす)、sは0〜7の整数を表す。)
【請求項9】
ネマチック液晶相を示す、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項10】
前記重合性液晶組成物が、下記式で定義される混和液晶低下温度ΔTが−10℃〜−0.1℃である請求項1記載の重合性液晶組成物。
【数1】


(但し、T=(前記重合性液晶組成物が、前記アクリル共重合体(H)を20質量%含有した際の液体−液晶相転移温度)であり、T=(前記重合性液晶組成物から前記アクリル共重合体(H)を除いたときの液体−液晶相転移温度)である)
【請求項11】
請求項1に記載の重合性液晶組成物を、配向機能を有する基板上に塗布し、配向させた状態で重合させて得られることを特徴とする光学異方体。
【請求項12】
前記配向機能を有する基板が、略水平配向機能を有する基板である、請求項11に記載の光学異方体。
【請求項13】
前記配向機能を有する基板が、パターン状に配向方向の異なる領域が分布している配向機能を有する基板である、請求項11に記載の光学異方体。
【請求項14】
前記配向機能を有する基板が光配向膜を有する基板である請求項11に記載の光学異方体。
【請求項15】
請求項1に記載の重合性液晶組成物を、パターン状に配向方向の異なる領域が分布している略水平配向機能を有する基板に塗布し、配向させた状態で重合させて得られることを特徴とする位相差膜。





























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−16599(P2006−16599A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150827(P2005−150827)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】