説明

重合性液晶組成物及び光学素子

【課題】複数の位相差部と複数の等方部にパターニングされた光学素子を生産する上で好適な温度範囲にNI点を有し析出物等が発生しない重合性液晶組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される重合性化合物(A)及び下記一般式(2)で表される重合性化合物(B)を含有し、(A)及び(B)の含有量の合計が全重合性化合物の合計量中70〜100質量%であり、(A)/(B)質量比が95/5〜50/50である重合性液晶組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の組成からなる重合性液晶組成物に関し、より詳しくは、重合性液晶組成物を重合して光学素子を得る際に、位相差部と等方部とを容易にパターニング可能な重合性液晶組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、位相差フィルムのような光学素子は、面内で配向が均一なものであったのに対し、立体画像を再現する目的で、同一面内に異なる位相差領域を持たせる試みがなされ、これらは、例えば特許文献1〜3等で開示されている。また、カラーフィルタにおいて各色パターン(例えばRGB)で透過する波長が異なり、各色に対して適切な光学補償を行う検討が特許文献4で開示されている。以下、面内に異なる位相差領域を持たせることをパターニングと呼ぶ。
【0003】
位相差フィルムを構成する材料としては、従来高分子フィルムを一軸延伸して位相差を発現させて用いることが知られている。また、ラビング処理した基板上に液晶性化合物が配向する原理を利用し、重合性液晶化合物を配向させた後に重合し、配向状態を固定する手法も採られてきた。パターニングするためには、後者の重合性液晶化合物の手法が好適であり、特許文献1、2及び4においても重合性液晶化合物が用いられている。
【0004】
パターニングするためには、少なくとも二つの、異なる配向方向又は相状態が必要であり、特許文献1では、配向方向の異なる二つの位相差部を形成している。特許文献2〜4では、液晶相及び等方相という異なる相状態で所望の部位を重合させる手法がとられている。液晶相及び等方相という異なる相状態を得るには、相転移させる必要があり、相転移は加熱・冷却により制御可能である。相転移温度(例えば、ネマチック相から等方相の転移温度:NI点)は、光学素子の生産性の面から好適な領域に設定されるのが望ましく、そのような相転移温度を有する重合性液晶組成物が求められている。
【0005】
一方、化合物の構造中に(メタ)アクリレート基を複数有し、2環及び/又は3環の化合物は、特許文献5〜7に開示され、重合性液晶化合物及び重合性液晶組成物として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−253824号公報
【特許文献2】特開2008−170557号公報
【特許文献3】特開2009−139785号公報
【特許文献4】特開2007−101645号公報
【特許文献5】特開平11−130729号公報
【特許文献6】特開2005−309255号公報
【特許文献7】特開2007−119415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、複数の位相差部と複数の等方部にパターニングされた光学素子を生産する上で好適な温度範囲にNI点を有しており、析出物の発生等の問題がなく、重合後の光学素子の信頼性が高い重合性液晶組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、上記重合性液晶組成物を用いてなる複数の位相差部と複数の等方部を有する光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の化学構造を有する重合性化合物からなる重合性液晶組成物により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表される重合性化合物(A)及び下記一般式(2)で表される重合性化合物(B)を含有する重合性液晶組成物であって、
上記重合性化合物(A)及び上記重合性化合物(B)の含有量の合計が、全重合性化合物の合計量中70〜100質量%であり、上記重合性化合物(A)と上記重合性化合物(B)との質量比(前者/後者)が95/5〜50/50であることを特徴とする重合性液晶組成物を提供するものである。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
また、本発明は、上記重合性液晶組成物からなる層をネマチック相の状態で重合させた複数の位相差部と、上記重合性液晶組成物からなる層を等方相の状態で重合させた複数の等方部によりパターニングしたことを特徴とする光学素子を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、上記光学素子からなる位相差板、及び上記光学素子又は該位相差板を用いた画像表示装置を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、
(1)支持体上に、上記重合性液晶組成物を塗布する工程と、
(2)上記支持体を加熱する工程と、
(3)上記支持体上に所定のパターンにパターニングされたマスクを設け、該マスクを介した状態でエネルギー線を照射して、等方相及びネマチック相のいずれかである第1の相状態を示す上記重合性液晶組成物のうちマスクのパターンによって遮蔽されていない部分の重合性液晶組成物を重合する工程
(4)上記支持体上に設けたマスクを除去する工程と、
を含むことを特徴とする光学素子の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の重合性液晶組成物は、ネマチック相の状態で重合させた複数の位相差部と、等方相の状態で重合させた複数の等方部にパターニングされた光学素子を生産する上で好適な温度範囲にNI点を有している。また、本発明の重合性液晶組成物は、製膜したときに析出、白化及びタックが起こりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】使用例1において製造した本発明の光学素子の偏光顕微鏡写真である。
【図2】使用例2において製造した本発明の光学素子の偏光顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、その好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0019】
本発明の重合性液晶組成物は、上記一般式(1)で表される重合性化合物(A)及び上記一般式(2)で表される重合性化合物(B)を含有する。重合性化合物(A)は重合膜のリタデーションを高くする効果を有し、重合性化合物(B)はNI点を降下させる効果を有する。位相差板等の光学素子においては、高いリタデーション値が求められるが、本発明に用いる重合性化合物(A)単独の膜では、リタデーション値が高いものの、NI点が高いため、光学素子の製造においてネマチック相と等方相のそれぞれで重合させるには生産性に乏しい。一方、本発明に用いる重合性化合物(B)単独では、NI点が40℃以上に存在しないためネマチック相の発現が難しく、また、重合膜のリタデーションが低い。
【0020】
本発明の重合性液晶組成物において、上記一般式(1)で表される重合性化合物(A)及び上記一般式(2)で表される重合性化合物(B)は、それぞれ少なくとも一つ含まれていればよい。
【0021】
本発明の重合性液晶組成物は、上記一般式(1)で表される重合性化合物(A)及び上記一般式(2)で表される重合性化合物(B)の含有量の合計が、全重合性化合物の合計量(重合性化合物(A)、重合性化合物(B)及び任意で使用される後述の他の重合性化合物の合計量)中70〜100質量%、好ましくは80〜100質量%であり、且つ、重合性化合物(A)と重合性化合物(B)との質量比((A)/(B))が95/5〜50/50、好ましくは80/20〜60/40である。重合性化合物(A)及び重合性化合物(B)の含有量の合計が全重合性化合物の合計量中70質量%以下である場合、硬化性や配向性の低下、ムラの発生、及びリタデーションの低下となりやすい。また、重合性化合物(A)と重合性化合物(B)との質量比において、重合性化合物(A)の比が95%より大きい場合、NI点が高すぎたり、製膜した際に析出が発生することがあり、50%より小さい場合、NI点が低すぎたり、製膜した際に硬化物がタック性を有したり、リタデーションが低下することがある。
【0022】
また、本発明の重合性液晶組成物が示すNI点(ネマチック相から等方相の相転移温度)は、40〜100℃であることが好ましく、50〜80℃であることが更に好ましく、50〜60℃であることが特に好ましい。NI点が40℃より小さい場合、室温付近で等方相を示すため、ネマチック相で重合させることが難しくなるため好ましくなく、100℃を超える場合、等方相にするために高温が必要となり、位相差部と等方部とを有する光学素子の生産性に乏しく、また、エネルギー線にて重合させるまでの間に、冷却されて等方相を維持できないことがあるため好ましくない。また、等方相からネマチック相の相転移温度についても、40〜100℃であることが好ましく、50〜80℃であることが更に好ましく、50〜60℃であることが特に好ましい。
【0023】
<上記一般式(1)で表される重合性化合物(A)>
上記一般式(1)における、R1、R2、X1、X2及びX3が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0024】
上記一般式(1)における、X1、X2及びX3が表す炭素原子数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、炭素原子数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基が挙げられ、炭素原子数2〜4のアルキルカルボニル基としては、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基が挙げられる。
【0025】
上記一般式(1)における、Z1及びZ2が表す炭素原子数1〜12の二価の炭化水素としては、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1,3−ジメチルプロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、4−メチルブチレン、2,4−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、へプチレン、オクチレン、ノニレン、デカレン等が挙げられる。これらの中でも、炭素原子数2〜6のものが好ましい。また、二価の炭化水素は酸素原子で1〜3回中断されてもよく、このような基としては、例えば以下に示す基が挙げられる。尚、以下に示す基において、nは1〜3の整数を表す。
【0026】
【化3】

【0027】
上記一般式(1)における環A、環B及び環Cで表されるベンゼン環及びシクロヘキサン環は、1位及び4位に結合手を有していることが好ましい(即ち、それぞれ1,4−フェニレン基及び1,4−シクロヘキシレン基であることが好ましい)。環A、環B及び環Cで表されるナフタレン環は、2位及び6位に結合手を有していることが好ましい(即ち、ナフタレン−2,6−ジイル基であることが好ましい)。
【0028】
本発明の重合性液晶組成物に用いる上記一般式(1)で表される重合性化合物(A)の中でも、下記一般式(1’)で表される重合性化合物(A’)を用いた場合、重合性液晶組成物を製膜した際に析出がより起こりにくく、NI点、配向性及びリタデーションも好ましい値を示すため好ましい。また、同様の観点から、上記一般式(1)においてa及びcが0であり、bが1である重合性化合物も好ましい。
【0029】
【化4】

【0030】
上記一般式(1)で表される重合性化合物(A)の具体例としては、下記化合物No.A1〜A26が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。尚、以下に示す化合物のうち、化合物No.A13及びA14以外は、上記一般式(1’)で表されるものである。
【0031】
【化5−A】

【0032】
【化5−B】

【0033】
【化5−C】

【0034】
【化5−D】

【0035】
<上記一般式(2)で表される重合性化合物(B)>
上記一般式(2)において、X4及びX5で表される炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜3のアルコキシ基、炭素原子数2〜4のアルキルカルボニル基及びハロゲン原子としては、上記一般式(1)におけるX1と同様のものが挙げられる。R3及びR4で表されるハロゲン原子としては、上記一般式(1)におけるR1と同様のものが挙げられる。Z3及びZ4で表される炭素原子数1〜12の二価の炭化水素としては、上記一般式(1)におけるZ1と同様のものが挙げられ、その好ましい範囲もZ1と同様である。環D及び環Eについても、上記一般式(1)における環Aと同様である。
【0036】
本発明の重合性液晶組成物においては、上記一般式(2)で表される重合性化合物(B)の中でも、d及びeが0である重合性化合物を用いた場合、位相差部のΔnが大きくな
るため好ましい。
【0037】
上記一般式(2)で表される重合性化合物(B)の具体例としては、下記化合物No.B1〜B29が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。
【0038】
【化6−A】

【0039】
【化6−B】

【0040】
【化6−C】

【0041】
本発明の重合性液晶組成物は、組成物のNI点、配向性、硬度、製膜性等を損なわない範囲で、上記重合性化合物(A)及び(B)と共に、他の重合性化合物を含有することが可能である。他の重合性化合物は、本発明の重合性液晶組成物に含まれる全重合性化合物の合計量中0〜30質量%となる範囲で使用することができ、0〜10質量%となる範囲で使用することが好ましい。
【0042】
他の重合性化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば特開2005−309255号公報の段落〔0020〕〜〔0094〕に記載の化合物、特開2007−119415号公報の段落〔0049〕〜〔0062〕に記載の化合物等が挙げられる。
【0043】
また、本発明の重合性液晶組成物には、更に光重合開始剤を含有させることもできる。光重合開始剤を用いる場合、本発明の重合性液晶組成物に含まれる全重合性化合物の合計量に対して10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下が更に好ましく、0.1〜5質量%の範囲が特に好ましい。
【0044】
上記光重合開始剤としては、従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール等のベンジルケタール類;1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルシクロヘキサン、2−ヒドロキシ−2−ベンゾイルプロパン、2−ヒドロキシ−2−(4’−イソプロピル)ベンゾイルプロパン等のα−ヒドロキシアセトフェノン類;4−ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4−フェノキシベンゾイルジクロロメタン等のクロロアセトフェノン類;1−ベンジル−1−ジメチルアミノ−1−(4’−モルホリノベンゾイル)プロパン、2−モルホリル−2−(4’−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、9−n−ブチル−3,6−ビス(2’−モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等のα−アミノアセトフェノン類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド類;ベンジル、ベンゾイル蟻酸メチル等のα−ジカルボニル類;p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−s−トリアジン等のトリアジン類;特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特開2005−97141号公報、特表2006−516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、国際公開第2006/018973号に記載の化合物等のα−アシルオキシムエステル類;過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、エチルアントラキノン、1,7−ビス(9'−アクリジニル)ヘプタン、チオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルスルフィド、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、チオキサントン/アミン等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシアセトフェノン類及びα−アミノアセトフェノン類が好ましい。これらの光重合開始剤は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0045】
また、上記光重合開始剤と増感剤との組合せも好ましく使用することができる。該増感剤としては、例えば、チオキサントン、フェノチアジン、クロロチオキサントン、キサントン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ルプレン等が挙げられる。
【0046】
本発明の重合性液晶組成物には、その保存安定性を向上させるために、安定剤を添加することもできる。使用できる安定剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、2−ナフチルアミン類、2−ヒドロキシナフタレン類等が挙げられる。安定剤を用いる場合、本発明の重合性液晶組成物に含まれる全重合性化合物の合計量に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
【0047】
上記重合性液晶組成物には、液晶骨格のらせん構造を内部に有する高分子を得ることを目的として、光学活性化合物を添加することもできる。該光学活性化合物としては、例えば以下に示す化合物を挙げることができる。
【0048】
【化7−A】

【0049】
【化7−B】

【0050】
本発明の重合性液晶化合物は、位相差フィルム、偏光フィルム、配向膜等の光学素子の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用することができ、その目的に応じて、本発明の重合性液晶組成物には、金属、金属錯体、染料、顔料、色素、蛍光材料、燐光材料、界面活性剤、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物、重合禁止剤、光増感剤、架橋剤、液晶配向助剤等を添加することもできる。
本発明の重合性液晶組成物において、以上に述べた重合性化合物以外の任意の添加剤を含有させる場合、それらの含有量は、本発明の効果を損なわない観点から、合計で、全重合性化合物の合計量に対して15質量%以下の範囲とすることが好ましい。
【0051】
本発明の重合性液晶組成物は、必要に応じて溶媒を加えて各成分を溶解させて溶液状の重合性液晶組成物とした後、支持体上に塗布し、乾燥し、次いで、ネマチック相又は等方相の状態でエネルギー線を照射して重合させることにより光学素子を製造することができる。上記支持体は、特に限定されないが、その好ましい例として、ガラス板、PET板、ポリカーボネート板、トリアセチルセルロース板、ポリプロピレン板、シクロオレフィンポリマー板、ポリメタクリル酸メチル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニル板、ポリテトラフルオロエチレン板、セルロース板、シリコン板、反射板、方解石板等が挙げられる。本発明の重合性液晶組成物を上記支持体に塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等を用いることができる。
【0052】
本発明の重合性液晶組成物の重合物である光学素子を製造する際に用いることができる上記溶媒としては、例えば、テトロヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、トルエン、シクロペンタノン、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0053】
本発明の重合性液晶組成物の重合物である光学素子を製造する際に、本発明の重合性液晶組成物を配向させる方法としては、例えば、上述の支持体に事前に配向処理を施す方法が挙げられる。上記支持体に配向処理を施す好ましい方法としては、各種ポリイミド系配向膜、ポリアミド系配向膜、ポリビニルアルコール系配向膜等からなる液晶配向層を支持体の上に設け、ラビング等の処理を行う方法が挙げられる。また、本発明の重合性液晶組成物を配向させる方法としては、上記支持体上の重合性液晶組成物に磁場や電場等を印加する方法等も挙げられる。尚、塗布によって上記支持体上に形成される本発明の重合性液晶組成物の塗膜の膜厚は、用途等に応じて適宜選択されるが、好ましくは、重合して最終的に得られる膜の厚みが0.01〜100μmの範囲となるように選択する。
【0054】
本発明の重合性液晶組成物は、エネルギー線を用いる公知の方法により重合させることができる。エネルギー線による重合反応としては、前記光重合開始剤を用いてエネルギー線を照射するラジカル重合が好ましい。また、磁場や電場を印加しながら重合させることも好ましい。支持体上に形成した重合物は、そのまま光学素子として使用してもよいが、必要に応じて、支持体から剥離したり、他の支持体に転写して使用してもよい。
【0055】
上記エネルギー線の光源としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、キセノンアーク灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2000オングストロームから7000オングストロームの波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線を利用することができるが、好ましくは、波長300〜450nmの光を発光する超高圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯等が挙げられる。
【0056】
また、本発明の重合性液晶組成物をエネルギー線を用いて重合する際には、露光光源にレーザー光を用いることにより、マスクを用いずに、コンピューター等のデジタル情報から直接画像を形成するレーザー直接描画法を採用することもできる。該レーザー直接描画法は、解像性や位置精度等の向上も図れることから有用であり、そのレーザー光としては、340〜430nmの波長の光が好適に使用されるが、エキシマーレーザー、窒素レーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザー及びYAGレーザー等の可視から赤外領域の光を発するものも用いられる。これらのレーザーを使用する場合には、可視から赤外の当該領域を吸収する増感色素が加えられる。
【0057】
本発明の重合性液晶組成物を用いれば、複数の位相差部と複数の等方部とを有する光学素子を生産性良く製造することができる。本発明の重合性液晶組成物を用いて光学素子を製造する方法の好ましい例を以下に説明する。
【0058】
本発明の光学素子の製造方法においては、下記工程(1)〜(4)を順次行う。これによって、先ず等方部及び位相差部のいずれか一方が形成された光学素子が得られる。
(1)支持体上に、本発明の重合性液晶組成物を塗布する工程。
(2)上記支持体を加熱する工程。
(3)上記支持体上に所定のパターンにパターニングされたマスクを設け、該マスクを介した状態でエネルギー線を照射して、等方相及びネマチック相のいずれかである第1の相状態を示す上記重合性液晶組成物のうちマスクのパターンによって遮蔽されていない部分の重合性液晶組成物を重合する工程。
(4)上記支持体上に設けたマスクを除去する工程。
【0059】
工程(1)においては、前述の支持体、塗布方法及び塗膜厚みを採用することができる。
工程(2)においては、工程(1)において塗布された本発明の重合性液晶組成物のNI点以上の温度に加熱することが好ましく、本発明の重合性液晶組成物のNI点より0〜50℃高い温度に加熱することがさらに好ましく、NI点より10〜50℃高い温度に加熱することが特に好ましい。
【0060】
工程(3)における第1の相状態を等方相とする場合には、工程(2)においてNI点以上の温度まで加熱し、加熱によって示した等方相状態が工程(3)におけるエネルギー照射時まで維持されるようにする。
工程(3)における第1の相状態をネマチック相とする場合には、工程(2)においてNI点以上の温度まで加熱し、その後、工程(3)におけるエネルギー照射時に本発明の重合性液晶組成物がネマチック相を示すように、さらに支持体の温度を調整することが好ましい。第1の相状態をネマチック相にする場合であっても、工程(2)において等方相を示す温度まで一旦加熱した後にネマチック相を発現させることによって、より均一なネマチック相を得ることができる。しかしながら、必ずしも工程(2)においてNI点以上まで加熱する必要は無い。
また、本発明の重合性液晶組成物が溶媒を含有している場合、工程(2)における加熱は、溶媒を蒸発させる役割も果たす。
【0061】
工程(3)において使用するマスク及びそのパターンは、従来のものと同様でよく、目的とする光学素子の用途等に応じて適宜選択すればよい。工程(3)で用いるエネルギー線としては前述のものを用いることができる。工程(3)において、エネルギー線が照射されると、工程(1)において形成された本発明の重合性液晶組成物の塗膜層のうち、マスクのパターンによって遮蔽されていない部分の重合性液晶組成物は重合されるが、マスクのパターンによって遮蔽されている部分の重合性液晶組成物は重合されない。第1の相状態を等方相とした場合には、工程(3)における重合により等方部が形成され、第1の相状態をネマチック相とした場合には、工程(3)における重合により位相差部が形成される。
【0062】
以上の工程(1)〜(4)によって、等方部及び位相差部のいずれか一方が形成された光学素子が得られる。続いて更に、(5)工程1で塗布された本発明の重合性液晶組成物のうち、工程(3)において重合されず、等方相及びネマチック相のいずれかの相であり第1の相状態とは異なる第2の相状態を示す部分の重合性液晶組成物を、エネルギー線にて重合する工程を行うことにより、本発明の光学素子が得られる。本発明の光学素子は、本発明の重合性液晶組成物からなる層をネマチック相の状態で重合させた複数の位相差部と、本発明の重合性液晶組成物からなる層を等方相の状態で重合させた複数の等方部によりパターニングされていることに特徴を有するものである。上記位相差部は、透過光に作用し前記透過光の光学補償をする部分であり、上記等方部は、透過光に作用しない部分である。
【0063】
工程(5)に先立って、先ず、工程(1)で形成された本発明の重合性液晶組成物の塗膜層のうち工程(3)において重合されなかった部分の本発明の重合性液晶組成物が、等方相及びネマチック相のいずれかの相であり第1の相状態とは異なる第2の相状態を示すようにする。この相状態の調整は、支持体の温度を調整することによって可能である。次いで、工程(5)において、支持体上の本発明の重合性液晶組成物にエネルギー線を照射することにより、工程(3)において重合されなかった本発明の重合性液晶組成物部分が重合される。これによって、第2の相状態を等方相とした場合には等方部が形成され、第2の相状態をネマチック相とした場合には位相差部が形成される。
【0064】
第1の相状態をネマチック相とする場合は、さらに詳しくは、本発明の光学素子の製造方法は、上記工程(1)〜(4)として、以下の工程(1’)〜(4’)を含むことが好ましい。第1の相状態をネマチック相とし第2の相状態を等方相とする場合は、さらに、上記工程(5)として以下の工程(5’)を含むことが好ましい。尚、工程(1’)〜(5’)について以下に特に説明しない点については、上記工程(1)〜(5)の説明を適宜適用することができる。
【0065】
(1’)予めラビング処理した上記例示の支持体上に、本発明の重合性液晶組成物を塗布する工程。
(2’−1)上記支持体を加熱する工程。
(2’−2)上記支持体を冷却し、支持体上に塗布した本発明の重合性液晶組成物を第1の相状態であるネマチック相とする工程。
(3’)上記工程(2’−2)で得られた本発明の重合性液晶組成物(第1の相状態)を有する支持体上に、位相差部を形成したい部分のみが開口したマスクを設けた後、エネルギー線によりマスク開口部の本発明の重合性液晶組成物を重合し、位相差部を形成する工程。
(4’)上記工程(3’)で設けたマスクを除去する工程。
(5’)NI点以上の温度(好ましくは、工程(5’)が終了するまで第2の相状態である等方相を保持できる温度)に加熱し、上記工程(3’)における未重合部(マスクにより遮蔽された部分)を、第2の相状態である等方相とし、エネルギー線により重合し等方部を形成する工程。
【0066】
また、第1の相状態を等方相とする場合は、さらに詳しくは、本発明の光学素子の製造方法は、上記工程(1)〜(4)として、以下の工程(1’’)〜(4’’)を含むことが好ましい。第1の相状態を等方相とし第2の相状態をネマチック相とする場合は、さらに、上記工程(5)として以下の工程(5’’)を含むことが好ましい。尚、工程(1’’)〜(5’’)について以下に特に説明しない点については、上記工程(1)〜(5)の説明を適宜適用することができる。
【0067】
(1’’)予めラビング処理した上記例示の支持体上に、本発明の重合性液晶組成物を塗布する工程。
(2’’)該支持体をNI点以上の温度(好ましくは工程(3’’)が終了するまで第1の相状態である等方相を保持できる温度)に加熱する工程。
(3’’)上記工程(2’’)で得られた本発明の重合性液晶組成物(第1の相状態)を有する支持体上に、等方部を形成したい部分のみが開口したマスクを設けた後、エネルギー線によりマスク開口部の本発明の重合性液晶組成物を重合し、等方部を形成する工程。
(4’’)上記工程(3’’)で設けたマスクを取り除き、冷却する(マスクを取り除くのは冷却中及び/又は前後の何れでもよい)工程。
(5’’)冷却により第2の相状態であるネマチック相を示すようにした未重合部(上記工程(3’’)においてマスクにより遮蔽されていた部分)を、エネルギー線により重合し位相差部を形成する工程。
【0068】
本発明の光学素子は、位相差板、光学補償フィルム等に用いることができる。また、本発明の光学素子からなる位相差板は、所望の部分に光学補償機能を有する位相差板として用いることができ、具体的には、半反射半透過型液晶表示装置、ELディスプレイ等の画像表示装置;右目用画像及び左目用画像を投影する立体画像を観察可能とする偏光眼鏡;2次元又は3次元表示を可能にする画像表示装置に用いることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例、比較例及び使用例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例、比較例及び使用例によって制限を受けるものではない。
尚、下記実施例1〜12は本発明の重合性液晶組成物の実施例であり、下記比較例1〜19は、本発明の重合性液晶組成物に対する比較例である。下記使用例1及び2においては、実施例7の重合性液晶組成物を用いて、本発明の製造方法により本発明の光学素子を製造した。
【0070】
〔実施例1〜12及び比較例1〜19〕
〔表1〕に示す実施例の組成比で重合性液晶組成物を製造し、該重合性液晶組成物を用いて製膜を行った。該重合性液晶組成物のNI点、並びに得られた膜の状態、配向性、リタデーション、膜厚及びΔnを観察・測定した。〔表2〕に示す比較例についても同様に
観測・測定した。重合性液晶組成物の製造及び製膜の方法、並びに観察・測定の方法は以下の通りである。
【0071】
<重合性液晶組成物の製造>
重合性化合物の合計量0.3g及びフッ素系界面活性剤サーフロンS−242(AGCセイミケミカル社製)0.5mgを、メチルエチルケトン0.6gに溶解し、そこへ、光重合開始剤(Irgacure907)9mg加え溶解した後、0.45μmメンブランフィルターにてろ過して重合性液晶組成物の溶解液を得た。
(NI点の測定)
上記で得られた重合性液晶組成物の溶解液をカバーガラスに塗布しホットプレートを用いて100℃にて3分の条件で加熱し溶媒を除去した。重合性液晶組成物をカバーガラスで挟み偏光顕微鏡にて相転移温度を測定した。
【0072】
<重合性液晶組成物の製膜>
上記で得られた重合性液晶組成物の溶解液を、予めラビング処理を施したポリイミド付きガラス基板にスピンコーターで塗工し、該ガラス基板をホットプレートを用いて100℃にて3分の条件で加熱し、溶媒を除去した。その後、室温にて1分放冷し、高圧水銀ランプを照射(積算光量:約400mJ/cm2)した。
(膜の状態の観察)
上記で製膜した膜を目視で観察し、析出物があるものを「析出」、白化しているものを「白化」とした。また、膜表面を指で触り、タックのあるものを「タック」とした。何れにも該当せず膜が良好であるものを「○」とした。
(配向性の観察)
上記で製膜した膜を、偏光顕微鏡を用いて、クロスニコル下でステージを回転させて観察し、配向良好であるものを○、配向不良であるものを×とした。
(リタデーションの測定)
上記で製膜した膜について、偏光顕微鏡を用いて、セナルモン法により波長546nmにおけるリタデーションを測定した。
(膜厚の測定)
上記で製膜した膜の厚みを、触針式表面形状測定器(Dektak6M;アルバック社製)を用いて測定した。
(Δnの算出)
上記リタデーション及び膜厚のデータよりΔnを算出した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
尚、上記表1及び2に記載の比較化合物D〜Iは、下記化合物である。
【0076】
【化8】

【0077】
位相差部と等方部とを有する光学素子の生産においては、生産性の観点から、使用する重合性液晶組成物のNI点が40〜100℃であることが好ましい。
重合性化合物(A)である化合物No.A1、A5又はA9のみである比較例1、7及び8では、NI点が100℃を超えるのに対し、化合物No.A1、A5又はA9に重合性化合物(B)を組み合わせた実施例1〜6、9及び10では、好ましいNI点である。
比較例2及び3では、化合物No.A1と化合物No.B2又はB3とを用いているが、重合性化合物(A)/重合性化合物(B)の比率において重合性化合物(A)の比率が本発明で規定する範囲より小さい。比較例2はNI点が低く、位相差部と等方部とを有する光学素子の生産には適さず、また、比較例3ではタック性を有する。これに対し、化合物No.A1と化合物No.B2又はB3とを用いた実施例2〜5では、好ましいNI点を示し、更に膜の状態も良好である。
【0078】
また、重合性化合物(A)である化合物No.A1と、重合性化合物(B)の代わりに化合物F、G、Hを用いている比較例4〜6に対し、化合物No.A1と重合性化合物(B)とを用いた実施例1〜6では、NI点が好ましい範囲で且つ膜の状態が良好である。
重合性化合物(B)としての化合物No.B2と共に、化合物No.A2に類似の構造を有する化合物E又は化合物No.A3に類似の構造を有する化合物Dを用いた場合、析出や白化が起こる(比較例10及び12)。これに対し、重合性化合物(A)を化合物No.B2と共に用いることで、NI点が好ましい範囲で且つ膜の状態も良好である(実施例2、9及び10)。
【0079】
〔使用例1〕光学素子の製造
実施例7の重合性液晶組成物を用いて、上記(1’)〜(5’)の工程に基づきパターニングし、複数の等方部及び複数の位相差部を有する光学素子を製造した。製造工程の詳細は以下の通りである。
予めラビング処理したポリイミド付ガラス基板に上記実施例7の重合性液晶組成物(メチルエチルケトン溶液)をスピンコーターで塗工(工程(1’))し、ホットプレートを用いて100℃にて3分加熱した(工程(2’−1))。基板を室温にて1分放冷却(工程(2’−2))し、クロム蒸着によりパターニングされたフォトマスクを基板上に設け、フォトマスクを介した状態で基板にUV照射(高圧水銀ランプ:400mJ/cm2)し、位相差部を形成した(工程(3’))。フォトマスクを取り除き(工程(4’))、基板を100℃にて1分加熱し、直ちにUV照射(高圧水銀ランプ:400mJ/cm2)し、等方部を形成した(工程(5’))。
得られた光学素子について、工程(3’)及び(5’)にて形成した部分がそれぞれ位相差部及び等方部であることを、偏光軸に対してラビング方向が平行及び45℃となるようにそれぞれ設置し、偏光顕微鏡にて確認した。偏光顕微鏡写真を図1に示す。
【0080】
〔使用例2〕光学素子の製造
実施例7の重合性液晶組成物を用いて、上記(1’’)〜(5’’)の工程に基づきパターニングし、複数の等方部及び複数の位相差部を有する光学素子を製造した。製造工程の詳細は以下の通りである。
予めラビング処理したポリイミド付ガラス基板に上記実施例7の重合性液晶組成物(メチルエチルケトン溶液)をスピンコーターで塗工(工程(1’’))し、ホットプレートを用いて100℃にて3分加熱した(工程(2’’))。クロム蒸着によりパターニングされたフォトマスクを直ちに基板上に設け、フォトマスクを介した状態で基板にUV照射(高圧水銀ランプ:400mJ/cm2)し、等方部を形成した(工程(3’’))。フォトマスクを取り除き、基板を室温にて1分冷却し(工程(4’’))、UV照射(高圧水銀ランプ:400mJ/cm2)し、位相差部を形成した(工程(5’’))。
得られた光学素子について、工程(3’’)及び(5’’)にて形成した部分がそれぞれ等方部及び位相差部であることを、偏光軸に対してラビング方向が平行及び45℃となるようにそれぞれ設置し、偏光顕微鏡にて確認した。偏光顕微鏡写真を図2に示す。
【0081】
図1及び2より、等方部では、偏光軸に対してラビング方向を傾けても光が透過しないのに対し、位相差部では、偏光軸に対してラビング方向を傾けると光が透過するため、それぞれ等方部及び位相差部として形成されていることが分かる。
【0082】
以上より、本発明の重合性液晶組成物は、位相差部と等方部の両方を兼ね備える光学素子の製造に好適なNI点を有しており、更に、膜の状態、配向性、Δnが優れていること
は明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される重合性化合物(A)及び下記一般式(2)で表される重合性化合物(B)を含有する重合性液晶組成物であって、
上記重合性化合物(A)及び上記重合性化合物(B)の含有量の合計が、全重合性化合物の合計量中70〜100質量%であり、上記重合性化合物(A)と上記重合性化合物(B)との質量比(前者/後者)が95/5〜50/50であることを特徴とする重合性液晶組成物。
【化1】

【化2】

【請求項2】
上記重合性化合物(A)が、下記一般式(1’)で表される重合性化合物(A’)ある請求項1記載の重合性液晶組成物。
【化3】

【請求項3】
ネマチック相から等方相の相転移温度が40〜100℃である請求項1又は2に記載の重合性液晶組成物。
【請求項4】
等方相からネマチック相の相転移温度が40〜100℃である請求項1〜3のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物からなる層をネマチック相の状態で重合させた複数の位相差部と、請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物からなる層を等方相の状態で重合させた複数の等方部によりパターニングしたことを特徴とする光学素子。
【請求項6】
請求項5に記載の光学素子からなる位相差板。
【請求項7】
請求項5に記載の光学素子又は請求項6に記載の位相差板を用いた画像表示装置。
【請求項8】
(1)支持体上に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物を塗布する工程と、
(2)上記支持体を加熱する工程と、
(3)上記支持体上に所定のパターンにパターニングされたマスクを設け、該マスクを介した状態でエネルギー線を照射して、等方相及びネマチック相のいずれかである第1の相状態を示す上記重合性液晶組成物のうちマスクのパターンによって遮蔽されていない部分の重合性液晶組成物を重合する工程と、
(4)上記支持体上に設けたマスクを除去する工程と、
を含むことを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項9】
更に、(5)上記工程(1)で塗布された上記重合性液晶組成物のうち、上記工程(3)において重合されず、等方相及びネマチック相のいずれかの相であり第1の相状態とは異なる第2の相状態を示す部分の重合性液晶組成物を、エネルギー線にて重合する工程を含む請求項8に記載の光学素子の製造方法。
【請求項10】
上記第1の相状態がネマチック相であり、上記第2の相状態が等方相である請求項9に記載の光学素子の製造方法。
【請求項11】
上記第1の相状態が等方相であり、上記第2の相状態がネマチック相である請求項9に記載の光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−136652(P2012−136652A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290736(P2010−290736)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】