説明

重合性組成物

【課題】低粘度でありかつ硬化させた後に得られる硬化物が高屈折率を有する重合性組成物を提供する。
【解決手段】2,3−ナフタレンジカルボン酸ジ(メタ)アリルエステル(A)と、25℃における屈折率が1.52以上であるモノマー(B)と、を含む、重合性組成物である。前記モノマー(B)が、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、およびメラミンアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種である重合性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性組成物に関する。さらに詳細には、本発明は、低粘度であり、かつ硬化させた後に得られる硬化物が高屈性率を有する重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ等のレンズ類は、プレス法、キャスト法等の方法により製造されていた。しかしながら、前記プレス法は、加熱、加圧、冷却のサイクルで製造するため、生産性が悪いという問題があった。また、前記キャスト法は、金型にモノマーを流し込んで重合するため製造時間が長くかかるとともに、金型が多数個必要なため製造コストが増大するという問題があった。
【0003】
これらの問題を解決するため、特許文献1および2では、放射線硬化型樹脂組成物を使用することによって低コストおよび高生産性を達成しうる光学部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−167301号公報
【特許文献2】特開昭63−199302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、画像の高精細化等に伴い、レンズ類の製造に際して、より微細な形状への加工性、より薄い形状への加工性、あるいはシート状やフィルム状への連続加工性などの要求が高まっており、放射線硬化性組成物の低粘度化が求められている。しかしながら、上記特許文献1および2に記載の放射線硬化性樹脂組成物は、高い粘度を有しており、上記のような要求に応えることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、低粘度でありかつ硬化させた後に得られる硬化物が高屈折率を有する重合性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、2,3−ナフタレンジカルボン酸ジ(メタ)アリルエステルと高屈折率であるモノマーとを含有する重合性組成物が低粘度であり、かつ該重合性組成物を硬化させて得られる硬化物が高屈折率を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、2,3−ナフタレンジカルボン酸ジ(メタ)アリルエステル(A)と、25℃における屈折率が1.52以上であるであるモノマー(B)と、を含む、重合性組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低粘度でありかつ硬化させた後に得られる硬化物が高屈折率を有する重合性組成物が提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】評価用硬化物作製に用いた器具を示す概略図であり、Aは正面図であり、Bは側面図であり、Cは平面図である。
【図2】評価用硬化物作製の手順を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、2,3−ナフタレンジカルボン酸ジ(メタ)アリルエステル(A)と、25℃における屈折率が1.52〜1.63であるモノマー(B)と、を含む、重合性組成物である。
【0012】
以下、本発明の重合性組成物の各成分について詳細に説明する。なお、本明細書において「(メタ)アリル」とは、アリルおよびメタリルの総称である。また、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。
【0013】
(A)2,3−ナフタレンジカルボン酸ジ(メタ)アリルエステル
本発明で用いられる(A)2,3−ナフタレンジカルボン酸ジ(メタ)アリルエステル(以下、単に「成分(A)」とも称する)は、下記化学式(1)で表される化合物である。
【0014】
【化1】

【0015】
前記化学式(1)中、Rは水素原子またはメチル基である。
【0016】
本発明の重合性組成物中の成分(A)の配合量は、成分(A)と後述の成分(B)の合計量を100質量%として、5〜80質量%が好ましく、7〜70質量%がより好ましく、5〜50質量%がさらに好ましい。上記配合量が5質量%未満であると、重合性組成物の粘度が上昇し、作業性や塗工性が悪化する場合がある。一方、80質量%を超えると、本発明の重合性組成物から得られる硬化物が高屈折率とならず、硬化物の機械的強度が不十分となる場合がある。
【0017】
上記成分(A)は、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。成分(A)の合成方法は、特に制限されず、例えば、2,3−ナフタレンジカルボン酸(またはその無水物)を出発原料として、(メタ)アリルクロライドとのエステル化反応を経由する合成方法など、従来公知の合成方法が採用されうる。
【0018】
(B)25℃における屈折率が1.52以上であるモノマー
本発明で用いられる、25℃における屈折率が1.52以上であるモノマー(B)(以下、「成分(B)」とも称する)は、特に制限されない。成分(B)の具体的な例としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、およびメラミンアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマーが挙げられる。
【0019】
さらに具体的には、ウレタンアクリレートとしては、例えば、有機ポリイソシアネート、ポリオールおよびヒドロキシアクリレート系化合物等を反応せしめて得られたものであっても、有機ポリイソシアネートおよびヒドロキシアクリレート系化合物を反応せしめて得られたものであっても良い。エポキシアクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂にアクリル酸および/またはメタクリル酸等を反応せしめて得られたものや、さらにこれを臭素化したもの等が挙げられる。ポリエステルアクリレートとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸とから合成されるポリエステルポリオールにアクリル酸および/またはメタクリル酸等を反応せしめて得られたもの等が挙げられる。ポリエーテルアクリレートとしては、例えば、ヒドロキシ基含有ポリエーテルとアクリル酸および/またはメタクリル酸等を反応せしめて得られたもの等が挙げられる。メラミンアクリレートとしては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアミン等をホルマリン等と縮重合せしめて得られるメラミン樹脂にβ−ヒドロキシエチルアクリレート等と脱アルコール反応せしめて得られたもの等が挙げられる。アクリル樹脂アクリレート類としては、例えば、アクリル樹脂に含まれるカルボン酸基、水酸基、グリシジル基等の官能基にアクリル酸および/またはメタクリル酸等を反応せしめて得られたもの等が挙げられる。
【0020】
上記成分(B)は、合成してもよいし市販品を使用してもよい。成分(B)の市販品としては、例えば、ビスコートV♯700(以上、大阪有機化学工業株式会社製)、ネオポール(以上、日本ユピカ株式会社製)、FA−321A、FA−324A、FA−320M、FA−321M、FA−3218M(以上、日立化成工業株式会社製)等が挙げられる。
【0021】
これら成分(B)の中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(メタ)アクリレート、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(メタ)アクリレート、ビスコートV♯700、FA−324A、FA−321Mが好ましい。
【0022】
なお、上記成分(B)は、単独で使用されてもよいし2種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0023】
成分(B)の屈折率は1.52以上であり、1.55以上であることが好ましい。屈折率が1.52未満である場合、本発明の重合性組成物から得られる硬化物が、要求される光学物性を満足しない場合がある。この際、屈折率の上限値は特に制限されないが、得られる重合性組成物の粘度の観点から1.63以下であることが好ましい。なお、本発明において、屈折率は後述の実施例に記載の方法により測定した値を採用するものとする。
【0024】
本発明の重合性組成物中の成分(B)の配合量は、上述の成分(A)と成分(B)の合計量を100質量%として、95〜20質量%が好ましく、93〜30質量%がより好ましく、90〜50質量%がさらに好ましい。上記配合量が95質量%を超えると、重合性組成物の粘度が上昇し、作業性や塗工性が悪化する場合がある。一方、20質量%未満であると、本発明の重合性組成物から得られる硬化物が高屈折率とならず、硬化物の機械的強度が不十分となる場合がある。
【0025】
(C)不飽和モノマー
本発明の重合性組成物は、必要に応じて不飽和モノマー(C)(以下、単に「成分(C)」とも称する)を含んでもよい。この成分(C)は、上記成分(A)および成分(B)と共重合可能なモノマーであれば、特に制限されない。成分(C)の具体的な例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2−メタクリロイルオキシコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルジフェニルホスフェート(メタ)アクリレート、トリメタクリロイルオキシエチルホスフェート(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルホスフェート(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、p−tert−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、o―ビフェニル(メタ)アクリレート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエチル)シラン、ビニルトリアセチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、スチレン、クロロスチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル、ビニルピリジン等が挙げられる。これら成分(C)は、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0026】
これら成分(C)の中でも、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレートが好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、がより好ましい。
【0027】
成分(C)を使用する場合の使用量は、成分(A)と成分(B)との合計量を100質量部として、0.1〜65質量部であることが好ましく、0.1〜40質量部であることがより好ましい。
【0028】
本発明の重合性組成物は、上記で述べた各成分を一括に混合するか、各成分を順次混合するか、または任意の複数の成分を混合した後に残りの成分を混合するなどして、均一な混合物となるように撹拌することにより製造することができる。より具体的には、例えば10〜60℃の温度で、例えば10秒〜2時間撹拌することにより製造することができる。
【0029】
このようにして製造される本発明の重合性組成物の25℃での粘度は、10〜100,000mPa・sであることが好ましく、100〜10,000mPa・sであることがより好ましい。粘度が10mPa・s未満であると、一定の厚さに塗布できない場合がある。一方、100,000mPa・sを超えると、作業性や塗工性が悪化する場合がある。
【0030】
本発明の重合性組成物は、その効果を損なわない範囲において、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、無機充填剤、老化防止剤、濡れ性改良剤、および溶剤などの添加剤を含んでもよい。上記添加剤を使用する場合の、添加剤の使用量は、特に制限されないが、上記成分(A)〜(C)の合計量 100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましい。
【0031】
また、本発明の重合性組成物は、その効果を損なわない範囲において、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどのオリゴマーまたはポリマーを含んでもよい。このオリゴマーまたはポリマーは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0032】
オリゴマーまたはポリマーを使用する場合のオリゴマーまたはポリマーの使用量は、特に制限されないが、本発明の重合性組成物 100質量部に対して、0.1〜80質量部であることが好ましい。
【0033】
本発明の重合性組成物は、常法に従い、重合性組成物に重合開始剤を添加した後、活性エネルギー線を照射し硬化させることができる。活性エネルギー線としては、赤外線、可視光線、紫外線のほか、X線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線などが挙げられる。これらの中でも、特別な装置を必要とせず、簡便であるため、可視光線または紫外線が好ましい。活性エネルギー線発光光源としては、例えば、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極UVランプ、可視光ハロゲンランプ、キセノンランプ、太陽光等が使用できる。
【0034】
活性エネルギー線の照射量等は、使用する組成物および用途に応じて、適宜設定すれば良い。例えば、紫外線を用いて硬化する場合、紫外線の照射量は、0.01〜100J/cmであることが好ましく、0.1〜10J/cmであることがより好ましい。
【0035】
前記重合開始剤の具体的な例としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これら重合開始剤は、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。また、重合開始剤は、合成してもよいし市販品を使用してもよい。市販品の例としては、例えば、DAROCUR(登録商標)1173、DAROCUR(登録商標)TPO、IRGACURE(登録商標)651、IRGACURE(登録商標)184、IRGACURE(登録商標)2959、IRGACURE(登録商標)127、IRGACURE(登録商標)907、IRGACURE(登録商標)369、IRGACURE(登録商標)819、IRGACURE(登録商標)784、IRGACURE(登録商標)754、IRGACURE(登録商標)OXE01、IRGACURE(登録商標)OXE02(以上、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)などが挙げられる。
【0036】
重合開始剤を使用する場合の重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、本発明の重合性組成物100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。
【0037】
重合開始剤には、必要に応じて光増感剤を併用することができる。光増感剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。また、光増感剤は、合成してもよいし市販品を使用してもよい。
【0038】
光増感剤を使用する場合の光増感剤の使用量は、特に制限されないが、本発明の重合性組成物100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。
【0039】
本発明の重合性組成物は、さらに硬化を進行させる目的で、重合性組成物に熱重合開始剤を配合し、活性エネルギー線照射後に加熱させることもできる。熱重合開始剤としては、種々の化合物を使用することができるが、中でも有機過酸化物およびアゾ系開始剤が好ましい。
【0040】
有機過酸化物の具体例としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジーメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド及びt−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0041】
アゾ系化合物の具体例としては、例えば、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾジ−t−オクタン、アゾジ−t−ブタン等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、有機過酸化物は還元剤と組み合わせることによりレドックス反応とすることも可能である。これら熱重合開始剤は、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0042】
熱重合開始剤を使用する場合の熱重合開始剤の使用量は、本発明の重合性組成物100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。
【0043】
上記のようにして本発明の重合性組成物から得られる硬化物の25℃における屈折率は、好ましくは1.52以上であり、より好ましくは1.55以上である。
【0044】
本発明の重合性組成物を硬化させて得られる硬化物は、高屈折率かつ高い透明性を有するため、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムシート等のレンズシートなど、種々の光学材料に形成し使用することができる。レンズシートの例として、さらに詳細には、ビデオプロジェクター、プロジェクションテレビ、液晶ディスプレイ等の用途を挙げることができる。
【実施例】
【0045】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0046】
なお、粘度、屈折率、および全光線透過率の測定は、以下の方法で行った。
【0047】
<粘度>
JIS K7117に従い、B型回転粘度計を用いて25℃における粘度を測定した。
【0048】
<屈折率>
アッベ屈折計を用いて、ナトリウムD線(波長589nm)を光源とした25℃における屈折率を測定した。
【0049】
<全光線透過率>
ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、製品名:NDH2000)を用いて測定した。
【0050】
(製造例)
滴下ロート、ジムロート冷却管、温度計、および攪拌羽根を備えた容器に、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物 401.34g(2.00mol)、濃度が48質量%である水酸化カリウム水溶液 470.74g(水酸化カリウムのモル数は4.03mol)、および水800gを入れ、40℃で30分間攪拌しながら内容物を溶解させた。炭酸水素ナトリウム 203.61g(2.42mol)、および塩化第一銅 7.93g(0.08mol)を反応系内に加え、その後、アリルクロライド 523.4g(6.84mol)を2.9g/min.の速度で滴下した。滴下は40℃で3時間かけて行い、滴下終了後、さらに40℃で3時間反応させた。反応終了後、常温(25℃)で1晩放置した。
【0051】
反応混合物をトルエン(400ml)、水酸化カリウム水溶液、塩酸、および水で順次洗浄した後、減圧濃縮(50℃、圧力:5.33kPa)により溶媒を除去した。
【0052】
溶媒を除去した反応混合物を減圧分留し(圧力:1.33kPa)、252〜257℃の留分が350g得られた。得られた生成物をGC−MS、NMR、およびIRにより構造確認し、2,3−ナフタレンジカルボン酸ジアリル(以下、単に「ジアリルNDA」とも称する)であることが確認できた。
【0053】
(実施例1〜3、比較例1〜6)
(1)重合性組成物の物性
下記表1に示すような組成比で、成分(A)と成分(B)とを混合し重合性組成物の調製を行い、得られた重合性組成物の粘度および屈折率を測定した。なお、重合性組成物の調製は、25℃で1時間攪拌することにより行った。また、製造例で合成した2,3−ナフタレンジカルボン酸ジアリル以外の各原料の詳細は、下記表1の通りである。
【0054】
【表1】

【0055】
(2)硬化物の物性
上記(1)で調製した重合性組成物に対して、重合開始剤としてDAROCUR(登録商標)1173(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を4質量部加え混合した。得られた混合物を、表面にPETフィルムが貼り付けられたガラス基板(5cm×5cm)上に約1g流し込んだ後、上部に前記と同様のガラス基板を1枚重ね、クリップで固定し積層物を得た。この積層物に紫外線(光源:高圧水銀ランプ)を10J/cm照射し硬化させ、基板・PETフィルムを剥がし評価用硬化物を得た。評価用硬化物作製に用いた器具の詳細は図1に、評価用硬化物作製のさらに詳細な手順を図2にそれぞれ示す。図1のAは器具の正面図であり、図1のBは器具の側面図であり、図1のCは、器具の平面図である。また、図1のAにおいて、Sは隙間を表す。なお、スペーサ3は、厚さ200μm、幅は約5mmのものを使用した。
【0056】
得られた硬化物を用いて、屈折率および全光線透過率を測定した。
【0057】
上記(1)の重合性組成物の物性とともに、測定結果を下記表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
上記表2からわかるように、実施例の本発明の重合性組成物は低粘度であり、さらに本発明の重合性組成物から得られる硬化物は、高屈折率を有し透明性に優れることが分かる。
【符号の説明】
【0060】
1 ガラス基板、
2 PETフィルム、
3 スペーサ、
4 クリップ、
5 硬化膜、
S 隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3−ナフタレンジカルボン酸ジ(メタ)アリルエステル(A)と、
25℃における屈折率が1.52以上であるモノマー(B)と、
を含む、重合性組成物。
【請求項2】
前記モノマー(B)が、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、およびメラミンアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
前記2,3−ナフタレンジカルボン酸ジ(メタ)アリルエステル(A)の配合量は5〜80質量%であり、前記モノマー(B)の配合量は95〜20質量%である(ただし、(A)および(B)の合計量は100質量%)、請求項1または2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
不飽和モノマー(C)をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合性組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合性組成物、または請求項5に記載の硬化物から形成される光学部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−235754(P2010−235754A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84906(P2009−84906)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000231420)日本蒸溜工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】