説明

重合性組成物

本発明は、成分Aとして、ヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの≡Si−H基を含有する、少なくとも1つの有機ケイ素化合物、および成分Bとして、成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合を含有する、少なくとも1つのベンゾオキサジン化合物を含んでなる重合性組成物に関する。本発明のさらなる主題は、本発明の重合性組成物を含有する接着剤、封止剤またはコーティング、および前記組成物の重合生成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分Aとして、ヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの≡Si−H基を含有する、少なくとも1つの有機ケイ素化合物を含み、かつ、成分Bとして、成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合を含有する、少なくとも1つのベンゾオキサジン化合物を含んでなる重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ系樹脂系は、航空産業、自動車産業または電子産業において、接着剤、封止剤またはコーティング表面として、長い間首尾良く使用され、また、組成物を製造するための種々の異なる材料との樹脂系として用いられてきた。
【0003】
ベンゾオキサジン系樹脂系は、一般的に高いガラス転移点を示し、それらはその良好な電気的性質およびその高い難燃性挙動により特徴付けられる。
【0004】
エポキシ樹脂およびベンゾオキサジン樹脂の混合物は、例えば米国特許第4607091号、5021484号および5200452号記載されている。前述の樹脂系の混合物は、エポキシ樹脂が組成物の粘度を決定的に下げるため、その有利な加工可能性により特徴付けられる。前述の樹脂系は、とりわけ、高いフィラー含量を有している場合でさえも有利な加工可能性のため電子産業において使用し得る。
【0005】
エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂およびフェノール樹脂の酸成分混合物も同様に既知である。このタイプの混合物は、例えば、米国特許6207786号に記載されている。
【0006】
さらに、ベンゾオキサジンと、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂以外の物質の混合物も既知である。したがって、米国特許6620925号は、特定のベンゾオキサジンおよび、例えばビニルエーテル、ビニルシランあるいはアリル基またはビニル基を含有する組成物から選択されるさらなる硬化性組成物を含有する硬化性組成物を開示する。
【0007】
ベンゾオキサジン部分に加えて、前述した部分とは異なる少なくとも1つのさらなる構造部分を含むポリマーも、同様に既知である。このように、日本特許出願公開2007−154018号は、メチル置換ヘキサメチレンジアミンをホルムアルデヒドおよびジフェノールで処理することにより製造し得るベンゾオキサジン系樹脂系をクレームする。芳香族脂肪族ジアミンを用いて製造されるベンゾオキサジン系樹脂系も、日本特許出願公開2007−106号から既知である。
【0008】
日本特許出願公開2007−146070号は、種々のポリシロキサンジアミンをホルムアルデヒドおよびジフェノールで処理することにより製造されたベンゾオキサジン系樹脂系に関する。得られたポリマーは、とりわけその良好な誘電特性および機械的特性により特徴付けられる。
【0009】
シルセスキオキサン含有ベンゾオキサジン化合物は、F. C. Chang等による「Syntheses, thermal properties, and phase morphologies of novel benzoxazines functionalized with polyhedral oligomeric silsesquioxane (POSS) nanocomposites〔かご型シルセスキオキサン(POSS)ナノ複合材料により官能化された新規ベンゾオキサジンの合成、末端特性、および相形態〕」Polymer、Elsevier Science publishers B.V, GB, 第45巻、第18号、第6321〜6331頁(2004年)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4607091号明細書
【特許文献2】米国特許第5021484号明細書
【特許文献3】米国特許第5200452号明細書
【特許文献4】米国特許第6207786号明細書
【特許文献5】日本特許出願公開2007−154018号公報
【特許文献6】日本特許出願公開2007−000106号公報
【特許文献7】日本特許出願公開2007−146070号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Polymer、Elsevier Science publishers B.V, GB, 第45巻、第18号、第6321〜6331頁(2004年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
先行技術に記載されたシロキサン基含有ベンゾオキサジン系樹脂系は、自己開始機構により、またはカチオン性開始剤を加えることにより熱的に重合され得る。最終強度を増加させるために、産業においてしばしば所望される遅発性の後架橋、特に得られるポリマーのラジカル後架橋は、一般的に無理である。そのような遅発性の後架橋は、例えば接着剤、コーティング剤または封止剤に望ましい。
【0013】
本発明は、重合後に有利な機械的特性を示し、かつさらなる後架橋、特にさらなるラジカル後架橋に使用し得るベンゾオキサジンに基づく重合性組成物を提供する目的を達成する。重合反応の前に前記組成物が低い粘度および容易な加工可能性を示すことが、特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の主題は、成分Aとして、ヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの≡Si−H基を含有する、少なくとも1つの有機ケイ素化合物を含み、かつ成分Bとして、成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合を含有する、少なくとも1つのベンゾオキサジン化合物を含有する重合性組成物である。
【0015】
本発明の重合性組成物は、特に接着剤、封止剤またはコーティング剤の製造に適している。したがって、本発明の重合性組成物を含んでなる接着剤、封止剤またはコーティング剤は、本発明の主題である。さらなる本発明の主題は、本発明の重合性組成物の重合生成物ならびにそれらの製造方法である。
【0016】
本発明の別の主題は、少なくとも1つの硬化性樹脂成分および本発明の重合性組成物の重合生成物を含有する硬化性組成物、ならびに硬化性組成物の硬化生成物である。硬化生成物は、硬化性組成物の熱的硬化により得られるものが好ましい。
【0017】
本発明のさらなる主題は、前記生成物を、層または、例えば炭素繊維などの繊維束に埋め込む、複合材料として適当な硬化生成物の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、様々な反応時間でのFT−IR吸収スペクトルを示す。
【図2】図2は、様々な反応時間でのH−NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において、用語「有機ケイ素化合物」は、ケイ素に加えて炭素を含有する有機ケイ素化合物を含む。
【0020】
本発明において、≡Si−H基は、4価のケイ素原子が1つの水素原子および3つの別の原子に結合した基を意味すると理解される。
【0021】
本発明の重合性組成物は、重付加反応の形態で重合反応を開始することができ、重付加反応は特にヒドロシリル化反応に関与する。ここで、成分Aの少なくとも2つのヒドロシリル化反応性≡Si−H基は成分Bと反応し、その結果、成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つ以上の不飽和炭素−炭素結合を有する、少なくとも1つのベンゾオキサジン化合物と反応する。
【0022】
前記ヒドロシリル化反応の効率を促進および増加するために、本発明の組成物は、好ましくは少なくとも1つのヒドロシリル化触媒を含有し得る。異なるヒドロシリル化触媒の混合物も同様に使用し得る。
【0023】
実際に使用する場合、ヒドロシリル化触媒は、重合性組成物の重量に基づいて、1〜100000ppmの量で供給し得る。ヒドロシリル化触媒の量は、好ましくは成分AとBの反応における関連触媒の活性に依存する。特に、触媒量は好ましくは、重合性組成物の総重量に基づいて、少なくとも2ppm、少なくとも4ppm、少なくとも8ppm、少なくとも12ppm、少なくとも20ppm、および少なくとも100ppmである。さらに、触媒量は、好ましくは、重合性組成物の総重量に基づいて、10000ppmまで、100ppmまで、500ppmまで、および200ppmまでである。
【0024】
ヒドロシリル化のための触媒は、金属塩および遷移金属の錯体を含有する。遷移金属は、好ましくはPt、Pd、Rh、RuおよびIrから選択される。周期表の第8族の元素が特に好ましい。ヒドロシリル化触媒は、例えば白金〔例えば、Strem Chemicals社(ニューベリーポート、マサチューセッツ州)から市販されているPtCl、ジベンゾニトリル白金ジクロライド、炭担持白金、ジクロロ(1,2−シクロオクタジエン)白金(II)[(COD)PtCl]〕を含み得る。反応性および経費面において適当な他の白金触媒は、ヘキサクロロ白金酸(HPtCl6HO)であり;ジビニルジシロキサン白金錯体、例えばジビニルテトラメチルジシロキサンの白金錯体(Huels America社製のPC075)および白金含有触媒PC072(ジビニル白金錯体)およびHuels America社製のPC085も適当である。典型的に好適なロジウム触媒は、(RhCl(P(C)、[Rh(COD)]BFおよび[RhCl(nbd)]であるのに対して、[Ru(ベンゼン)Cl]、[Ru(p−シメン)Cl]および[CpRu(MeCN)]PFは、適当なルテニウム触媒である。他の適当な触媒はルイス酸ならびに過酸である。
【0025】
好ましい実施態様において、ヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの≡Si−H基を含有する少なくとも1つの有機ケイ素化合物(成分A)は、環状ポリシロキサン、直鎖状ポリシロキサン、トリシロキシシランおよびテトラシロキシシランからなる群から選択される。前記トリシロキシシランおよびテトラシロキシシランは、低分子またはオリゴマー構造を含有し得る。
【0026】
さらに、2つまたは2つ以上の前記有機ケイ素化合物を互いに組み合わせて使用し得る。少なくとも1つのテトラシロキシシランと、少なくとも1つの直鎖状ポリシロキサンまたは少なくとも1つの環状ポリシロキサンの組み合わせが、少なくとも1つのトリシロキシシランと、少なくとも1つの直鎖状ポリシロキサンまたは少なくとも1つの環状ポリシロキサンの組み合わせと同様に適当である。さらに、例えば、少なくとも1つの環状ポリシロキサンまたは少なくとも1つの直鎖状ポリシロキサンと、少なくとも1つのトリシロキシシランおよび少なくとも1つのテトラシロキシシランの組み合わせのような、3つの組み合わせが好ましい。
【0027】
本発明において、少なくとも1つの直鎖状ポリシロキサンと少なくとも1つの環状ポリシロキサンの混合物も使用し得る。
【0028】
特に好ましい、ヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの≡Si−H基を含有する有機ケイ素化合物は、200〜60,000g/モル、好ましくは600〜10,000g/モル、特に800〜4000g/モルの重量平均分子量を示す。
【0029】
本発明の好ましい実施態様において、有機ケイ素化合物は、一般式(I):
【化1】

〔式中、R基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、1〜8個の炭素原子を有する脂環式基、6〜12個の炭素原子を有するアリール基、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基および6〜12個の炭素原子を有するアリールオキシ基から選択され(ただし、少なくとも2つのケイ素原子上のR基は水素である)、nは2〜30の整数である〕
の環状ポリシロキサンを含有する。
【0030】
好ましい環状ポリシロキサンは、例えば、メチルヒドロシクロシロキサン(MHCS)ならびにそれらの任意の混合物である。例としては、例えば、テトラオクチルシクロテトラシロキサンおよびヘキサメチルシクロテトラシロキサン;テトラ−およびペンタメチルシクロテトラシロキサン;テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−およびヘプタメチルシクロペンタシロキサン;テトラ−、ペンタ−およびヘキサメチルシクロヘキサシロキサン、テトラエチルシクロテトラシロキサンおよびテトラフェニルシクロテトラシロキサンが含まれる。1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサンおよび1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサンまたはそれらの任意の混合物が好ましい。
【0031】
本発明の別の好ましい実施態様において、有機ケイ素化合物は、一般式(II):
【化2】

〔式中、R基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、1〜8個の炭素原子を有する脂環式基、6〜12個の炭素原子を有するアリール基、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基および6〜12個の炭素原子を有するアリールオキシ基から選択され(ただし、少なくとも2つのケイ素原子上のR基は水素である)、mは0〜1000の整数である〕
の直鎖状ポリシロキサンを含有する。
【0032】
本発明において、直鎖状ポリシロキサンは、一般式(II.1):
【化3】

〔式中、R基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、1〜8個の炭素原子を有する脂環式基、6〜12個の炭素原子を有するアリール基、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基および6〜12個の炭素原子を有するアリールオキシ基から選択され、m’は0〜1000の整数である〕
による≡Si−H末端基を有する、直鎖状、短鎖ポリシロキサンを意味するものと理解される。
【0033】
Rが、メチルから選択され、mが0、1、2、3、4、5または6である一般式(II.1)による≡Si−H末端基を有する典型的な直鎖状ポリシロキサンが好ましい。
【0034】
さらに、直鎖状ポリシロキサンが、一般式(II.2):
【化4】

〔式中、R基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、1〜8個の炭素原子を有する脂環式基、6〜12個の炭素原子を有するアリール基、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基および6〜12個の炭素原子を有するアリールオキシ基から選択され(ただし、1〜50%、好ましくは2〜50%、特に5〜50%のR基は水素である)、m’’は2〜1000の整数である〕
の直鎖状ポリ(オルガノヒドロシロキサン)であることが好ましい。
【0035】
典型的な直鎖状ポリ(オルガノヒドロシロキサン)には、以下のものが含まれる:トリメチルシロキシ末端基のメチルヒドロポリシロキサン、トリメチルシロキシ末端基のジメチルシロキサン−メチルヒドロシロキサン共重合体、ジメチルシロキシ末端基のジメチルシロキサン−メチルヒドロシロキサン共重合体、ジメチルシロキシ末端基のポリジメチルシロキサン、トリメチルシロキシ末端基のメチルオクチルシロキサン−メチルヒドロシロキサン共重合体、ジメチルシロキシ末端基のフェニルメチルシロキサン−メチルヒドロシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ末端基の2−フェニルエチルメチルシロキサン−メチルヒドロシロキサン共重合体、およびトリメチルシロキシ末端基の2−(4−メチルフェニル)−エチルメチルシロキサン−メチルヒドロシロキサン共重合体。
【0036】
本発明の直鎖状ポリシロキサンは、例えば、Gelest社(モリスビル、ペンシルバニア州)から種々の分子量で市販されている。
【0037】
本発明の別の好ましい実施態様において、有機ケイ素化合物は、一般式(III):
【化5】

〔式中、R基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、1〜8個の炭素原子を有する脂環式基、6〜12個の炭素原子を有するアリール基、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基および6〜12個の炭素原子を有するアリールオキシ基から選択され(ただし、少なくとも2つのケイ素原子上のR基は水素である)、oおよびqは、それぞれ0〜1000の整数であり、pは1〜1000の整数である〕
のトリシロキシシランを含有する。
【0038】
本発明のトリシロキシシランは、例えば、Gelest社(モリスビル、ペンシルバニア州)から種々の分子量で市販されている。
【0039】
同様に、本発明の好ましい実施態様において、有機ケイ素化合物は、一般式(IV):
【化6】

〔式中、R基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、1〜8個の炭素原子を有する脂環式基、6〜12個の炭素原子を有するアリール基、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基および6〜12個の炭素原子を有するアリールオキシ基から選択され(ただし、少なくとも2つのケイ素原子上のR基は水素である)、rおよびtは、それぞれ0〜1000の整数であり、sは1〜1000の整数である〕
のテトラシロキシシランを含有する。
【0040】
本発明のテトラシロキサンは、例えば、Gelest社(モリスビル、ペンシルバニア州)から種々の分子量で市販されている。
【0041】
さらに、本発明の重合性組成物は、さらなる成分として、成分Bとして、成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合を含有する、少なくとも1つのベンゾオキサジン化合物を含んでなる。
【0042】
重合性組成物のベンゾオキサジン化合物は、好ましくは、少なくとも1つのベンゾオキサジン基および、成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーである。好ましいモノマーは、好ましくは4個までのベンゾオキサジン基を含んでいてよく、個々のモノマーならびに2つ以上のモノマーの混合物をベンゾオキサジン化合物として使用し得る。
【0043】
成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である不飽和炭素−炭素結合は、好ましくは炭素−炭素二重結合および/または炭素−炭素三重結合を意味するものと理解される。末端炭素−炭素二重結合が、特に好ましい。
【0044】
本発明において、成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合を有するベンゾオキサジン化合物は、好ましくはN−アルケニル−およびN−アルキニル−ベンゾオキサジン化合物からなる群から選択される。
【0045】
本発明において、上述したN−アルケニル−またはN−アルキニル−ベンゾオキサジン化合物は、好ましくは、少なくとも2つのベンゾオキサジン基を含有し、かつ、少なくとも2つのオキサジン環の少なくとも2つの窒素原子が、それぞれ、アルケニル基またはアルキニル基を有する化合物を意味するものと理解される。N−アルケニル−またはN−アルキニル−ベンゾオキサジン化合物は、特に、少なくとも2つのベンゾオキサジン基を含有し、かつ、各オキサジン環の窒素原子がアルケニル基またはアルキニル基を有する化合物を意味するものと理解される。
【0046】
成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合を含有する適当なベンゾオキサジン化合物は、好ましくは式(V)により記載される。
【0047】
【化7】

〔式中、vは2〜4の整数であり、uは1〜10の整数であり、Xは、アルキレン(v=2〜4に対して)、カルボニル(v=2に対して)、酸素(v=2に対して)、硫黄(v=2に対して)、スルホキシド(v=2に対して)、スルホン(v=2に対して)および直接結合、共有結合(v=2に対して)からなる群から選択され、Rは、水素および1〜8個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択され、またはRは、ベンゾオキサジン構造に対応するナフトオキサジン構造を構成する二価の基である。〕
【0048】
特に好ましい式(V)の構造は、式(V.1)で示される。
【化8】

〔式中、uは1〜10の整数であり、Xは、アルキレン(v=2〜4に対して)、カルボニル(v=2に対して)、酸素(v=2に対して)、硫黄(v=2に対して)、スルホキシド(v=2に対して)、スルホン(v=2に対して)および直接結合、共有結合(v=2に対して)からなる群から選択され、Rは、水素および1〜8個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択され、またはRは、ベンゾオキサジン構造に対応するナフトオキサジン構造を構成する二価の基である。〕
【0049】
とりわけ、特に好ましい式(V)および式(V.1)の構造は、式(V.2)または式(V.3)で示される。
【化9】

【化10】

〔式(V.2)および式(V.3)中、u、R、Rはそれぞれ前記と同じ意味を有する。〕
【0050】
同様に好ましい、成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つ不飽和炭素−炭素結合を含有を含有するベンゾオキサジン化合物は、一般式(V.4):
【化11】

〔式中、u、R、Rはそれぞれ前記と同じ意味を有する〕
のさらなる化合物である。
【0051】
特に好ましい一般式(V)、(V.1)、(V.2)、(V.3)および(V.4)のベンゾオキサジン化合物において、uは1、2または3から選択される整数である。
【0052】
成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合を含有する、さらに好ましいベンゾオキサジン化合物は、ただ1つのベンゾオキサジン基を有する。したがって、例えば、一般式(V.5)のベンゾオキサジン化合物を使用し得る。
【0053】
【化12】

〔式中、RおよびR2’またはuおよびu’は、同一であっても異なっていてもよく、RおよびR2’は、互いに独立して、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基から成る群から選択され、uおよびu’は、それぞれ1〜10の整数、特に1、2または3である。〕
【0054】
本発明の重合性組成物における、成分Aと成分Bのモル比は、好ましくは1:10〜10:1の範囲であり、好ましくは1:5〜5:1の範囲であり、特に1:2〜2:1の範囲である。本発明の重合性組成物において成分Aと成分Bは、最も好ましくは互いに等モル比である。
【0055】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の重合性組成物の総量における成分Aの割合は、1〜80重量%、好ましくは20〜60重量%、特に40〜60重量%である。本発明の別の好ましい実施態様において、本発明の重合性組成物の総量における成分Bの割合は、1〜80重量%、好ましくは20〜60重量%、特に40〜60重量%である。
【0056】
直鎖状構造を構成するために、少なくとも1つの有機ケイ素化合物(成分A)が、ただ2つのヒドロシリル化反応性≡Si−H基を有し、少なくとも1つのベンゾオキサジン化合物(成分B)が、同様に、成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性であるただ2つの不飽和炭素−炭素結合を含有することが好ましい。
【0057】
さらに、分枝状構造を構成するために、少なくとも1つの有機ケイ素化合物(成分A)が、2つ以上のヒドロシリル化反応性≡Si−H基を有し、少なくとも1つのベンゾオキサジン化合物(成分B)が、成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である2つ以上の不飽和炭素−炭素結合を含有することが好ましい。
【0058】
本発明のさらなる主題は、本発明の重合性組成物の重合生成物である。前記重合生成物は、好ましくは、成分AとBの重付加反応の重付加生成物である。
【0059】
本発明において、重付加反応は、好ましくは、新しいSi−炭素結合と新しい炭素−水素結合が、不飽和炭素−炭素結合への≡Si−H基の付加により形成されるヒドロシリル化反応を意味するものと理解される。
【0060】
前記重合生成物は、好ましくは、反応性末端基としての末端不飽和炭素−炭素結合および/または末端≡Si−H基の配置を特徴とする。これらの反応性末端基は、得られた重合生成物の遅発性後架橋を可能にするため、使用目的に応じて、重合生成物の最終強度、例えば耐衝撃性、疲労挙動および/または圧縮強度を改善または増強し得る。
【0061】
例えば、ラジカル後架橋は、得られた重合生成物と架橋剤との反応により達成できる。該架橋剤は、例えば、1分子につき少なくとも2つの重合性基を有する限り、重合性モノマー、オリゴマーまたはポリマーからなる群から選択し得る(例えばジビニルスチレン)。特に好適な架橋剤は、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート(DiTMPTTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DiPEPA)またはトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)あるいはそれらの任意の混合物からなる群から選択され得る、ジ−、トリ−、テトラ−および/またはペンタアクリレートである。
【0062】
本発明の重合生成物が、少なくとも1つの≡Si−H基、特に少なくとも1つの末端≡Si−H基を有する場合、ヒドロシリル化反応の形態においても後架橋させることができる。前記重合生成物は、好ましくは、ヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合を含有する少なくとも1つのモノマー、オリゴマーまたはポリマー架橋剤により処理される。
【0063】
本発明の特に好ましい実施態様において、前記重合生成物は、一般式(VI):
【化13】

〔式中、末端位のC1−C2結合は二重結合であり、非末端位のC1−C2結合は単結合であり、uは1〜10の整数であり、wは1〜1000の整数であり、
Xは、アルキレン、カルボニル、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホンおよび直接結合、共有結合からなる群から選択され、
R’基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、1〜8個の炭素原子を有する脂環式基、6〜12個の炭素原子を有するアリール基、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基および6〜12個の炭素原子を有するアリールオキシ基から選択され、
は、水素および1〜8個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択され、
は、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択され、またはRは、ベンゾオキサジン構造に対応するナフトオキサジン構造を構成する二価の基であり、
Yは、直接結合、共有結合または、
式(VI.1):
【化14】

または、式(VI.2):
【化15】

または、式(VI.3):
【化16】

[式中、m’、p’およびs’は、それぞれ1〜1000の整数であり、o’、q’、r’およびt’はそれぞれ0〜1000の整数であり、R’は上記と同じ意味を有する]
の、少なくとも1つのシロキサン構造要素を含んでなる二価の基であり、
およびRは、互いに独立して、R’または一般式(VI.4):
【化17】

[式中、YおよびR’は上記と同じ意味を有する]〕
のポリマーを含んでなる。
【0064】
本発明の重合生成物を製造するための重合反応は、溶媒を使用して、または溶媒を使用せずに行い得る。典型的な好ましい溶媒は、トルエン、テトラヒドロフランおよびクロロホルムである。
【0065】
基本的に、反応温度は、個々の成分の反応性および、存在する場合少なくとも1つのヒドロシリル化触媒の反応性に依存する。
【0066】
好ましい反応温度は、好ましくは0〜250℃の範囲、好ましくは20〜200℃の範囲、特に22〜100℃の範囲である。
【0067】
反応は、通常、常圧で行うが、加圧下(例えば約1.5〜20barの範囲)や減圧下(例えば200〜600mbar)でも行い得る。
【0068】
特定の目的で、ヒドロシリル化触媒により触媒されたヒドロシリル化反応を減速するために、重合性組成物に、例えばアミン、例えばジエチレントリアミンのような試薬を加える必要があり得る。
【0069】
本発明の別の主題は、
a)成分Aが、ヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの≡Si−H基を含有する少なくとも1つの有機ケイ素化合物であり、成分Bが、成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合を含有する少なくとも1つのベンゾオキサジン化合物である、成分Aおよび成分Bならびに必要に応じて少なくとも1つのヒドロシリル化触媒を含んでなる重合性組成物を製造する工程;
b)上記重合生成物を製造するために、重合性組成物を重合する工程
を含んでなる本発明の重合性組成物の製造方法である。
【0070】
本発明の重合性組成物の前記重合生成物は、一般的に、熱可塑性加工可能性を示し、ベンゾオキサジン構造を開環することにより硬化させることができ、熱硬化特性を有する物質となる。その結果、該重合生成物を、本発明の物質の熱可塑性加工可能性に関する工程、例えば射出成形や押出などにおいて有利に使用することができる。
【0071】
したがって、本発明のさらなる主題は、本発明の重合性組成物の硬化した重合生成物である。
【0072】
前記重合生成物または種々の重合生成物の混合物は、自己開始機構(熱的重合)にしたがって、またはカチオン性開始剤の添加により、温度上昇下、ベンゾオキサジン構造の開環により硬化し得る。
【0073】
典型的に適当なカチオン性開始剤は、ルイス酸または他のカチオン性開始剤、例えば金属ハロゲン化物、有機金属反応剤、例えば金属ポルフィリン、メチルトシラート、メチルトリフラートまたはトリフルオロスルホン酸である。塩基性試薬を、重合性ベンゾオキサジン化合物または種々の重合性ベンゾオキサジン化合物の重合を開始するために使用してもよい。典型的に適当な塩基性試薬は、イミダゾールまたはイミダゾール誘導体から選択し得る。
【0074】
前記重合生成物は、好ましくは150〜300℃、特に160〜220℃の温度で硬化する。前記開始剤および/または試薬を使用する場合、前記硬化温度を下げることもできる。硬化した重合生成物は、特にその高い熱安定性を特徴とする。
【0075】
本発明のさらなる主題は、本発明の重合性組成物を含んでなる接着剤、封止剤またはコーティング剤である。本発明の接着剤、封止剤またはコーティング剤は、好ましくは2成分系、特に成分Aおよび成分Bならびに少なくとも1つのヒドロシリル化触媒を、適用する直前に混合する2成分系として調製される。すでに述べたように、成分AおよびBは共に反応し、反応生成物を形成する。
【0076】
得られる反応生成物を、ベンゾオキサジン構造の開環により好ましくは熱的に硬化することができ、好ましくは熱硬化性物質が得られる。
【0077】
該重合性組成物は、以下の工程:
a)物質S1とS2の間に本発明の重合性組成物を塗布すること(物質S1とS2は、同一であっても異なっていてもよい)、および、
b)対応する重合生成物とするために、前記組成物を反応させること
を含んでなる封止または接着方法において、物質を封止するためおよび接着結合するために使用し得る。
【0078】
本発明の方法の好ましい実施態様において、少なくとも1つの物質S1またはS2は、ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、れんが、クリンカー、セラミック、天然石、金属または合金、木、プラスチックおよび塗料からなる群から選択される。
【0079】
本発明のさらに別の主題は、成分AおよびBの反応生成物の製造のための、本発明の重合性組成物の使用である。前記反応生成物は、好ましくは、成分AとBの重付加反応の重付加生成物である。
【0080】
重合組成物の重合生成物は、硬化性樹脂調製物における添加剤としても使用し得る。
【0081】
したがって、本発明のさらなる主題は、
a)少なくとも1つの硬化性樹脂成分、および
b)少なくとも1つの、本発明の重合性組成物の重合生成物
を含んでなる硬化性組成物である。
【0082】
本発明において、硬化性樹脂成分は、好ましくは熱硬化性樹脂成分を意味するものと理解される。
【0083】
この場合、少なくとも1つの樹脂成分は、好ましくは、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂およびフェノール系樹脂ならびにそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0084】
本発明において、ベンゾオキサジン樹脂は、ベンゾオキサジン化合物および/またはベンゾオキサジン含有化合物に基づき形成される樹脂組成物を意味するものと理解される。
【0085】
好ましいベンゾオキサジン化合物は、少なくとも1つのベンゾオキサジン基を含んでなるモノマー、オリゴマーまたはポリマーである。好ましいモノマーは、好ましくは4個までのベンゾオキサジン基を含有し、個々のモノマーならびに、2つ以上のモノマーの混合物をベンゾオキサジン化合物として使用し得る。
【0086】
4個までのベンゾオキサジン基を含有するいくつかのベンゾオキサジン化合物を以下に記載する。
【0087】
適当なベンゾオキサジン化合物は、好ましくは式(B−I)で示される。
【化18】

〔式中、oは1〜4の整数であり、Xは、アルキル(o=1に対して)、アルキレン(o=2〜4に対して)、酸素(o=2に対して)、チオール(o=1に対して)、硫黄(o=2に対して)、スルホキシド(o=2に対して)、スルホン(o=2に対して)および直接結合、共有結合(o=2に対して)からなる群から選択され、Rは、水素、アルキル、アルキレンおよびアリールからなる群から選択され、Rは水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択され、またはRは、ベンゾオキサジン構造に対応するナフトオキサジン構造を構成する二価の基である。〕
【0088】
特に好ましい式(B−I)の構造は、式(B−II)で示される。
【化19】

〔式中、Xは、CH、C(CH、C=O、O、S、S=O、O=S=Oおよび直接結合および共有結合からなる群から選択され、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素、アルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチルまたはi−ブチル、アルケニル、特にアリル、およびアリールからなる群から選択され、置換基Rは、同一であっても異なっていてもよく、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択され、または各Rは、ベンゾオキサジン構造に対応するナフトオキサジン構造を構成する二価の基である。〕
【0089】
好ましい式(B−II)のベンゾオキサジン化合物は、例えば、式(B−III)から(B−VI)のベンゾオキサジンである。
【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

〔式中、R、RおよびRは、前記と同じ意味を有する。〕
【0090】
さらに好ましいベンゾオキサジン化合物は、一般式(B−VII)の化合物である。
【化24】

〔式中、pは2であり、Yは、ビフェニル、ジフェニルメタン、ジフェニルイソプロパン、硫化ジフェニル、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ジフェニルケトンからなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択され、またはRは、ベンゾオキサジン構造に対応するナフトオキサジン構造を構成する二価の基である。〕
【0091】
同様に、好ましいベンゾオキサジン化合物は、一般式(B−VIII)〜(B−IX)の付加化合物である。
【化25】

【化26】

〔式中、R、RおよびRは、前記と同じ意味を有し、RはRまたはRと同様である。〕
【0092】
本発明において、典型的に好適なベンゾオキサジン化合物は下記の化合物である。
【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【0093】
本発明において、適当なベンゾオキサジン化合物は、単官能性および多官能性ベンゾオキサジン化合物である。単官能性ベンゾオキサジン化合物は、ただ1つのベンゾオキサジン基を含有するベンゾオキサジン化合物を意味するものと理解され、一方、多官能性ベンゾオキサジン化合物は2個以上のベンゾオキサジン基を有する、好ましくは4個までのベンゾオキサジン基を含有するベンゾオキサジン化合物を意味するものと理解される。
【0094】
例えば、単官能性ベンゾオキサジン化合物は、一般式(XIX)により記載し得る。
【化35】

〔式中、Rは、アルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、アルケニル、特にアリル、およびアリールからなる群から選択され、前記の各基は場合により置換されていて、Rは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択され、またはRは、ベンゾオキサジン構造に対応するナフトオキサジン構造を構成する二価の基である。〕
【0095】
好ましい単官能性ベンゾオキサジン化合物は、一般式(B−XX)により記載し得る。
【化36】

〔式中、Rは、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択され、前記の各基は場合により置換されていて、または1つ以上のO、N、S、C=O、COOまたはNHC=Oによりあるいは1つ以上のアリール基により中断され、mは0〜4の整数であり、RII、RIII、RIV、RおよびRVIは、互いに独立して、水素、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択され、各アルキルまたはアルケニル基は場合により置換されていて、または1つ以上のO、N、S、C=O、COOまたはNHC=Oによりあるいは1つ以上のアリール基により中断されている。〕
【0096】
本発明において、典型的に好適な単官能性ベンゾオキサジン化合物は、下記の化合物(B−XXI)および(B−XXII)である。
【化37】

〔式中、Rは前記と同じ意味を有する。〕
【0097】
本発明において、ベンゾオキサジン化合物は、上述の物質または上述の製造方法により得ることができる。
【0098】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つの硬化性ベンゾオキサジン化合物または種々の硬化性ベンゾオキサジン樹脂の混合物を、硬化性調製物の総量に基づいて、50〜99重量%、好ましくは70〜95重量%、最も好ましくは80〜90重量%の量で含有する。
【0099】
特に好ましい実施態様において、硬化性組成物はただ1つのまたは複数のベンゾオキサジン化合物を硬化性樹脂成分として含有する。
【0100】
硬化性組成物の重合性ベンゾオキサジン化合物ならびに、成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合を有する重合性組成物の重合性ベンゾオキサジン化合物は、一部に開環構造を含んでいてもよく、該開環構造は、好ましくはAおよびA’間のまたはBおよびB’間(式B−O参照)の共有結合を形式的に切断することにより得られる。
【化38】

【0101】
開環ベンゾオキサジン化合物のさらなる例を以下に示す。
【化39】

【0102】
本発明において、開環構造は、特に開環ベンゾオキサジン化合物として有効なベンゾオキサジン化合物である。
【0103】
本発明において、ベンゾオキサジン樹脂が、硬化性組成物の硬化性樹脂成分として特に好ましい。
【0104】
本発明において、「エポキシ樹脂」は、エポキシド化合物またはエポキシド含有化合物に基づき形成された樹脂組成物を意味すると理解される。本発明の好ましい実施態様において、硬化性調製物のエポキシ樹脂系のエポキシド化合物またはエポキシド含有化合物は、オリゴマーおよびモノマーエポキシド化合物ならびにポリマータイプのエポキシドのいずれをも含むことができ、かつ脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式化合物であり得る。本発明において、典型的に好適なエポキシ樹脂系は、好ましくは、ビスフェノール−A型のエポキシ樹脂、ビスフェノール−S型のエポキシ樹脂、ビスフェノール−F型のエポキシ樹脂、フェノール−ノボラック型のエポキシ樹脂、クレゾール−ノボラック型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンを数々のフェノールにより処理することにより得られる数々のジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシド生成物、2,2’,6,6’−テトラメチルビフェノール、芳香族エポキシ樹脂、例えばナフタレン基本骨格を有するエポキシ樹脂およびフルオレン基本骨格を有するエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、例えばネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルおよび1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、脂環式エポキシ樹脂、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびアジピン酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)、および複素環を有するエポキシ樹脂、例えばトリグリシジルイソシアヌレートから選択される。
【0105】
特に、エポキシ樹脂には、例えばビスフェノールAとエピクロロヒドリン由来の反応生成物、フェノールとホルムアルデヒド(ノボラック樹脂)とエピクロロヒドリン、グリシジルエステルの反応生成物およびエピクロロヒドリンとp−アミノフェノール由来の反応生成物が含まれる。
【0106】
市販品から入手することができるさらなる好ましいエポキシ樹脂には、特に、以下のものが含まれる:オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、メタクリル酸グリシジル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、商品名「Epon 828」、「Epon 825」、「Epon 1004」および「Epon 1010」(Hexion Specialty Chemicals Inc.)、「DER-331」、「DER-332」、「DER-334」、「DER-732」および「DER-736」(Dow Chemical Co.)のもと入手可能)、ビニルシクロヘキセンジオキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、アジピン酸ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ポリプロピレングリコールにより変性した脂肪族エポキシド、ジペンテンジオキシド、エポキシド化ポリブタジエン(例えば、SartomerのKrasol製品)、エポキシド官能性を含むシリコーン樹脂、難燃性エポキシ樹脂(例えば、「DER-580」、Dow Chemical Co.から入手可能な臭素化したビスフェノール型のエポキシ樹脂)、フェノール/ホルムアルデヒドノボラックの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、Dow Chemical Co.の「DEN-431」および「DEN-438」)、ならびに、レゾルシノールジグリシジルエーテル(例えば、Koppers Company Inc.の「Kopoxite」)、アジピン酸ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、1,2-エポキシヘキサデセン、アルキルグリシジルエーテル、例えば、C8−C10アルキルグリシジルエーテ(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 7」)、C12−C14アルキルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 8」)、ブチルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 61」)、クレジルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 62」)、p−tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 65」)、多官能グリシジルエーテル、例えば、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 67」)、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 68」)、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 107」)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 44」)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 48」)、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 84」)、ポリグリコールジエポキシド(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 32」)、ビスフェノールFエポキシド(例えば、Huntsman Int. LLCの「EPN-1138」または「GY-281」)、9,9−ビス−4−(2,3−エポキシプロポキ)フェニルフルオレノン(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「Epon 1079」)。
【0107】
さらなる好ましい市販品から入手することができる化合物は、例えば、以下のものから選択される:AralditeTM 6010、AralditeTM GY-281、AralditeTM ECN-1273、AralditeTM ECN-1280、AralditeTM MY-720、RD-2(Huntsman Int. LLC);DENTM 432、DENTM 438、DENTM 485(Dow Chemical Co.)、EponTM 812、826、830、834、836、871、872、1001、1031など(Hexion Specialty Chemicals Inc.)、およびHPTTM 1071、HPTTM 1079(Hexion Specialty Chemicals Inc.)、ノボラック樹脂としてさらに、例えば、Epi-RezTM 5132(Hexion Specialty Chemicals Inc.)、ESCN-001(Sumitomo Chemical)、Quatrex 5010(Dow Chemical Co.)、RE 305S(Nippon Kayaku)、EpiclonTM N673(DaiNipon Ink Chemistry)、またはEpicoteTM 152(Hexion Specialty Chemicals Inc.)。
【0108】
本発明の1つの実施態様において、本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つの硬化性エポキシ樹脂または種々の硬化性エポキシ樹脂の混合物を、硬化性調製物の総量に基づいて、50〜99重量%、好ましくは70〜95重量%、最も好ましくは80〜90重量%の量で含有する。
【0109】
特定の適用にとって、硬化性組成物が種々の硬化性樹脂成分の混合物を含むことは有利であり得る。そのような場合、典型的に特に好ましい混合物は、ベンゾオキサジンおよびエポキシ樹脂の混合物および/またはベンゾオキサジン、エポキシおよびフェノール樹脂の混合物である。
【0110】
種々の樹脂成分の混合物、例えば少なくとも1つのベンゾオキサジン樹脂と少なくとも1つのエポキシ樹脂の混合物にとって、硬化性組成物の総量における全樹脂成分の割合が、50〜99重量%、好ましくは70〜95重量%、最も好ましくは80〜90重量%であることが特に好ましい。
【0111】
本発明の別の好ましい実施態様において、硬化性組成物は、少なくとも1つの本発明の重合性組成物の重合生成物を、硬化性組成物の総量に基づいて0.001〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、最も好ましくは5〜10重量%の量で含有する。
【0112】
本発明の硬化性組成物は、添加剤、例えば好ましくは着色剤および/またはフィラー、例えば粉砕または沈殿チョーク、カーボンブラック、カルシウムマグネシウムカーボネート、バライトおよび、特にアルミニウム−マグネシウム−カルシウムケイ酸型のケイ酸フィラー、例えば珪灰石、緑泥石を含有し得る。
【0113】
さらに、本発明の硬化性組成物はさらなる添加剤、例えば、可塑剤、反応性希釈剤、衝撃改質剤、レオロジー助剤、湿潤剤、酸化防止剤、安定化剤および/または顔料などを含有し得る。しかしながら、本発明の硬化性組成物は、好ましくは可塑剤を含まない。
【0114】
好ましい本発明の硬化性組成物は、硬化性組成物の総量に基づいて以下を含む:
i)少なくとも1つの本発明の重合性組成物の重合生成物1〜20重量%
ii)例えばベンゾオキサジン樹脂およびエポキシ樹脂および/またはそれらの任意の混合物から選択される少なくとも1つの硬化性樹脂成分50〜99重量%、および
iii)少なくとも1つの添加剤0〜30重量%。
【0115】
硬化性組成物は、例えば、自己開始機構(熱的重合)にしたがって、またはカチオン性開始剤の添加により温度上昇において硬化し得る。
【0116】
典型的に好適なカチオン性開始剤は、ルイス酸または他のカチオン性開始剤、例えば金属ハロゲン化物、有機金属反応剤、例えば金属ポルフィリン、メチルトシラート、メチルトリフラートまたはトリフルオロスルホン酸である。塩基性試薬を、重合性ベンゾオキサジン化合物または種々の重合性ベンゾオキサジン化合物の重合を開始するために使用してもよい。典型的に適当な塩基性試薬は、イミダゾールまたはイミダゾール誘導体から選択し得る。
【0117】
本発明の硬化性組成物、特に硬化性樹脂成分としてベンゾオキサジン樹脂を含有する本発明の硬化性組成物は、好ましくは150〜300℃の温度、特に160〜220℃の温度で硬化する。重合温度は、上述した開始剤および/または他の試薬を使用した場合に低くすることができる。
【0118】
硬化性樹脂成分としてベンゾオキサジン樹脂を含有する硬化性組成物に対して、本発明の硬化性組成物は、好ましくは開環(特に熱的に誘導されるベンゾオキサジン系の開環)により硬化し、硬化生成物を形成する。
【0119】
本発明のさらなる主題は、本発明の硬化性組成物の硬化生成物である。
【0120】
硬化性組成物における本発明の重合生成物の使用は、硬化生成物の効果的な耐衝撃性改質を可能にし、さらに該生成物は、その低い吸水傾向を特徴とする。
【0121】
臨界応力拡大係数K1cおよび臨界エネルギー開放率G1cにおいて、未変性硬化生成物と比較して顕著な増加が得られることは注目に値する。
【0122】
曲げ強度および曲げ弾性率は、ASTM D790にしたがって測定することができる(90mm×12.7mm×3.2mmの試験物質、スパン50.8mm、速度1.27mm/分を使用)。
【0123】
臨界応力拡大係数K1cおよび臨界エネルギー開放率G1cは、「シングルエッジノッチベンディング(SENB)」を使用するASTM D5045−96にしたがって測定した(56mm×12.7mm×3.2mmの試験物質を使用)。
【0124】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の硬化性組成物の硬化生成物は、繊維が本発明の硬化性組成物で処理されている層または繊維束に埋め込まれる。
【0125】
したがって、本発明のさらなる主題は、硬化組成物が層または繊維束に埋め込まれた本発明の硬化性組成物の硬化生成物の製造方法である。
【0126】
該方法は以下の工程:
a)少なくとも1つの層または少なくとも1つの繊維束を製造すること;
b)本発明の硬化性組成物を供すること;
c)少なくとも1つの層または少なくとも1つの繊維束を硬化性組成物で処理することにより複合系を製造すること;
d)場合により、該複合系から過剰量の硬化性組成物を除去すること
を含み、硬化生成物は、該複合系を温度上昇および圧力上昇にさらすことにより得られる。
【0127】
前記繊維は、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、酸化アルミニウム繊維、炭化ケイ素繊維から選択される。2つ以上のこれらの繊維の混合物も使用し得る。より低い密度で高い耐久性を有する製品の製造のためには、炭素繊維の使用が特に好ましい。
【0128】
本発明において、層または繊維束は特定の外形や形状を有しておらず、このため、例えば、平行方向に配置された長繊維、トウプレグ、織物(布)、マット、編地、ひもを使用し得る。
【0129】
それらの低い密度および高い構造強度により、繊維強化複合材料の形態、特にプレプレグまたはトウプレグの形態で前記工程により製造される複合系は、例えば航空機構造または自動車産業において使用し得る。
【0130】
以下の実施例により、本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0131】
使用した試薬:

【0132】
1) 少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合を有するベンゾオキサジン化合物(B−aIa)の合成
【化40】

【0133】
氷冷した250mlフラスコ中のアリルアミン(0.54ml、30.8g)/1,4−ジオキサン(200ml)溶液へ、パラホルムアルデヒド(1.08モル、32.5g)をゆっくりと加えた。10分間攪拌した後、同様に、4,4’−イソプロピリデンジフェノール(0.27モル、61.6g)を氷冷しながら加え、反応混合物を還流下、24時間加熱した。その後、1,4−ジオキサン溶剤を除去し、水酸化ナトリウム水溶液(0.1N)と蒸留水により数回洗浄して得られた粗生成物にジエチルエーテル(200ml)を加えた。硫酸ナトリウムにより乾燥させ、溶媒を除去した後、得られた黄色油をメタノール中にとり、水を加えた。溶媒がくもり始めた後、冷めたら溶媒を移し、固体残渣を水で洗浄した。真空下、60℃で乾燥した後、ベンゾオキサジン化合物(B−aIa)を62%の収率で得た。
【0134】
2)重合性組成物の重合生成物の合成
還流カラムとガス注入口を備えた100ml三口フラスコ中のベンゾオキサジン化合物(B−aIa)(0.50g、1.28モル)/トルエン(25ml)溶液へ、6滴の錯体Pt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン/キシレン溶液(〜2%Pt)を加え、室温で15分間攪拌した。その後、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(0.17g、1.28モル)を加え、反応混合物を90℃まで特定の時間加熱した。反応の終わりに、ロータリーエバポレーターにおいて全ての揮発性物質を除去し、得られた組成生物を真空下、3時間、50℃で乾燥させた。粗生成物をトルエン中にとり、得られた溶液を大過剰のメタノールに加えた。氷冷下、分離してきた析出固体を真空下、3時間、50℃で乾燥させた。
【0135】
表1は、反応時間に応じた、個々の重合生成物の収率を示す。
【0136】
【表1】

【0137】
3)分析データおよび特性
ベンゾオキサジン化合物(B−aIa)の化学構造および重合反応の反応経路は、FT−IRおよびH−NMR分光技術を用いて測定した。
H−NMR分光測定は、内部標準としてTMSを用い、CDCl中AC250(250.133MHz)により行った。
FT−IR分光測定は、Perkin−Elmer FT−IR Spectrum One分光計を用いて行った。
【0138】
図1は、様々な反応時間でのFT−IR吸収スペクトルを示す。図1(a)は、純粋なベンゾオキサジン化合物(B−aIa)の初期スペクトルを示し、一方、図1(b)および図1(c)は、進行する反応経路を示し、図1(d)は、最終重合生成物のFT−IRスペクトルを示す。
【0139】
図2は、様々な反応時間でのH−NMRスペクトルを示す。図2(1)は、純粋なベンゾオキサジン化合物(B−aIa)の初期スペクトルを示し、一方、図2(2)および図2(3)は、進行する反応経路を示し、図2(4)は、最終重合生成物のH−NMRスペクトルを示す。
【0140】
図1(a)は、1226cm−1、1321cm−1および921cm−1ならびに1496cm−1で特徴的な吸収ピークを示す。アリル基の吸収ピークは、3076cm−1および1642cm−1に見られる。
【0141】
図2(1)は、5.2−5.3ppmおよび5.6−5.9ppmでアリル基に対する特徴的な多重線を示す。アリル基の−CHシグナルは、3.4ppmで二重線として現れる。
【0142】
図1から、3076cm−1および1642cm−1でのアリル基に対する特徴的なシグナルの強度が、重合反応の過程で著しく弱まることがわかる。同時に、1019−1035cm−1(Si−O−Si−伸縮振動)における吸収ピークの出現は、重合生成物中へのシロキサン構造の導入を裏付ける。
【0143】
これらの見解は、図2で示されるH−NMRスペクトルにより確認される。特に、図2(4)は、0〜2.7ppmでの特徴的なSi−アルキルプロトンシグナルの同時検出により、アリル二重結合の本質的な消失を明らかにする。
【0144】
したがって、図1ならびに図2は、ベンゾオキサジンアリル基に関するヒドロシリル化反応において重合生成物が形成されることを明らかに示している。重合生成物におけるアリル基に帰する特徴的なシグナル(図1(d)と図2(4)参照)は、さらに、得られる重合生成物が末端アリル基を有することを明らかにする。
【0145】
4)熱硬化
さらに、上記反応の重合生成物(ポリマー1,ポリマー2、ポリマー3)を、ベンゾオキサジン構造の開環により熱的に硬化させ得る。得られた生成物(サーム−ポリマー1、サーム−ポリマー2およびサーム−ポリマー3)は、高い熱安定性を有する。
【0146】
前記重合生成物を、好ましくは、150〜300℃の温度で、循環空気中1〜6時間、密閉されたモールド内で硬化させる。その後、該重合生成物をモールドから取り出し、室温まで冷却する。
【0147】
表2は、DSC(示差走査熱量測定)により測定した硬化温度を示す。
【0148】
【表2】

【0149】
DSC測定は、窒素流下、Elmer Diamond DSCにより行った(加熱速度20℃/分)。
【0150】
onsetは、関連ピークの変曲点の温度軸との接線の交差から得られる熱硬化の活性化温度を意味するものと理解される。Tmaxは、当該物質に対するDSCダイアグラムにおいて観察されるピーク最大値での温度を意味すると理解される。
【0151】
熱硬化生成物サーム−ポリマー1、サーム−ポリマー2およびサーム−ポリマー3の熱安定性を、TGA(熱重量分析)により測定した。前記硬化生成物は、ベンゾオキサジン化合物の熱硬化生成物サーム−(B−aIa)より高い熱安定性を有する。
【0152】
熱特性を表3に示す。
【表3】

【0153】
5%は、当該試料の総重量が、当該試料の初期重量に比べて5%消失した温度を意味するものと理解される。
10%は、当該試料の総重量が、当該試料の初期重量に比べて10%消失した温度を意味するものと理解される。
は、炭素収率、すなわち、試料のもともとの総重量に対する、試料の炭化した残渣(800℃における炭化)の割合を意味するものと理解される。
【0154】
熱重量分析(TGA)は、窒素流下、Perkin−Elmer Diamond TA/TGAにより行った(加熱速度10℃/分)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)成分Aとして、ヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの≡Si−H基を含有する、少なくとも1つの有機ケイ素化合物、および
b)成分Bとして、成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合を含有する、少なくとも1つのベンゾオキサジン化合物
を含んでなる重合性組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのヒドロシリル化触媒を含有する、請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
有機ケイ素化合物が、環状ポリシロキサン、直鎖状ポリシロキサン、トリシロキシシランおよびテトラシロキシシランからなる群から選択される、請求項1または2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
有機ケイ素化合物が、一般式(I):
【化1】

〔式中、R基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、1〜8個の炭素原子を有する脂環式基、6〜12個の炭素原子を有するアリール基、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基および6〜12個の炭素原子を有するアリールオキシ基から選択され(ただし、少なくとも2つのケイ素原子上のR基は水素である)、nは2〜30の整数である〕
の環状ポリシロキサンを含有する、請求項3に記載の重合性組成物。
【請求項5】
有機ケイ素化合物が、一般式(II):
【化2】

〔式中、R基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、1〜8個の炭素原子を有する脂環式基、6〜12個の炭素原子を有するアリール基、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基および6〜12個の炭素原子を有するアリールオキシ基から選択され(ただし、少なくとも2つのケイ素原子上のR基は水素である)、mは0〜1000の整数である〕
の直鎖状ポリシロキサンを含有する、請求項3に記載の重合性組成物。
【請求項6】
有機ケイ素化合物が、一般式(III):
【化3】

〔式中、R基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、1〜8個の炭素原子を有する脂環式基、6〜12個の炭素原子を有するアリール基、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基および6〜12個の炭素原子を有するアリールオキシ基から選択され(ただし、少なくとも2つのケイ素原子上のR基は水素である)、oおよびqは、それぞれ0〜1000の整数であり、pは1〜1000の整数である〕
のトリシロキシシランを含有する、請求項3に記載の重合性組成物。
【請求項7】
有機ケイ素化合物が、一般式(IV):
【化4】

〔式中、R基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、1〜8個の炭素原子を有する脂環式基、6〜12個の炭素原子を有するアリール基、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基および6〜12個の炭素原子を有するアリールオキシ基から選択され(ただし、少なくとも2つのケイ素原子上のR基は水素である)、rおよびtは、それぞれ0〜1000の整数であり、sは1〜1000の整数である〕
のテトラシロキシシランを含有する、請求項3に記載の重合性組成物。
【請求項8】
ベンゾオキサジン化合物が、一般式(V):
【化5】

〔式中、vは2〜4の整数であり、uは1〜10の整数であり、Xは、アルキレン(v=2〜4に対して)、カルボニル(v=2に対して)、酸素(v=2に対して)、硫黄(v=2に対して)、スルホキシド(v=2に対して)、スルホン(v=2に対して)および直接結合、共有結合(v=2に対して)からなる群から選択され、Rは、水素および1〜8個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択され、またはRは、ベンゾオキサジン構造に対応するナフトオキサジン構造を構成する二価の基である〕
の化合物である、請求項1〜7のいずれかに記載の重合性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の重合性組成物の重合生成物。
【請求項10】
一般式(VI):
【化6】

〔式中、末端位のC1−C2結合は二重結合であり、非末端位のC1−C2結合は単結合であり、uは1〜10の整数であり、wは1〜1000の整数であり、
Xは、アルキレン、カルボニル、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホンおよび直接結合、共有結合からなる群から選択され、
基R’は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、1〜8個の炭素原子を有する脂環式基、6〜12個の炭素原子を有するアリール基、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基および6〜12個の炭素原子を有するアリールオキシ基から選択され、
は、水素および1〜8個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択され、
は、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択され、またはRは、ベンゾオキサジン構造に対応するナフトオキサジン構造を構成する二価の基であり、
Yは、直接結合、共有結合または、
式(VI.1):
【化7】

または、式(VI.2):
【化8】

または、式(VI.3):
【化9】

[式中、m’、p’およびs’は、それぞれ1〜1000の整数であり、o’、q’、r’およびt’はそれぞれ0〜1000の整数であり、R’は上記と同じ意味を有する]
の、少なくとも1つのシロキサン構造要素を含んでなる二価の基であり、
およびRは、互いに独立して、R’または一般式(VI.4):
【化10】

[式中、YおよびR’は上記と同じ意味を有する]〕
のポリマーを含んでなる、請求項9に記載の重合生成物。
【請求項11】
請求項9または10に記載の重合生成物の製造方法であって、
a)成分Aが、ヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの≡Si−H基を含有する少なくとも1つの有機ケイ素化合物であり、成分Bが、成分Aとのヒドロシリル化反応において反応性である少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合を含有する少なくとも1つのベンゾオキサジン化合物である、成分Aおよび成分Bならびに必要に応じて少なくとも1つのヒドロシリル化触媒を含んでなる重合性組成物を製造する工程;
b)上記重合生成物を製造するために、重合性組成物を重合する工程
を含んでなる方法。
【請求項12】
a)少なくとも1つの硬化性樹脂成分、および
b)請求項9または10に記載の少なくとも1つの重合生成物
を含んでなる硬化性組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の硬化性組成物の硬化生成物。
【請求項14】
硬化前に、繊維が請求項12に記載の硬化性組成物により処理された、少なくとも1つの層または少なくとも1つの繊維束が埋め込まれている、請求項13に記載の硬化生成物。
【請求項15】
a)少なくとも1つの層または少なくとも1つの繊維束を製造する工程;
b)請求項12に記載の硬化性組成物を製造する工程;
c)少なくとも1つの層または少なくとも1つの繊維束を硬化性組成物により処理することにより複合系を製造する工程;
d)場合により、複合系から過剰量の硬化性組成物を除去する工程
を含んでなる請求項14に記載の硬化生成物の製造方法であって、該硬化生成物が温度上昇および圧力上昇にさらされて得られる、請求項14に記載の硬化生成物の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれかに記載の重合性組成物を含有する接着剤、封止剤またはコーティング。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−527356(P2011−527356A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517069(P2011−517069)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057618
【国際公開番号】WO2010/003800
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】