説明

重心位置解析法

【課題】足裏画像データにより高精度で迅速かつ容易に重心位置を求める解析法を提供する。
【解決手段】足裏を内部に光を投射させた透明体に載せ、その裏面側から撮像し得た左右の足裏画像データの色成分をRGB値からHSV値に変換し、閾値で足裏接地部画像を抽出する。またその抽出した足裏接地部画像データの色成分をHSV値からRGB値に変換して、各画素の輝度値と座標軸の積の全画素の合計と、その足裏接地部画像データのRGB値の全輝度値の合計で除して算出し、被検出者の重心位置を解析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定者の立位姿勢や健康状態を検査するために、両足で起立した際の重心位置の解析法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に人の頭の傾き、脊柱のねじれなどの姿勢により左右の足にかかる荷重分布が異なり、健康状態に密接に関連することが言われている。
【0003】
よって、左右の足にかかる荷重や重心位置を測定することにより、身体の姿勢の異常や健康状態を知ることができる。
【0004】
従来、左右の足にかかる荷重、重心位置を測定するための装置として、バランス測定装置が特開平10−192259号で開示されている。この装置は、一定の大きさの小区画に分割され、その区画毎に独立して荷重の測定が可能な圧力センサシートを備え、検出された信号を処理しデータ出力部に画像や数値として出力するデータ処理部からなるものである。
【0005】
これによって、この発明の圧力センサシートは小区画毎に荷重を検出することができ、これにより足裏にかかる荷重分布、足の大きさ、および土踏まずの形成度、片足毎の重心位置を詳細に測定することができる。
【0006】
また、重心位置測定方法として、特公昭50−16919号が記載されている。これは、被測定体を透光体からなる測定体上に接触支持し、この透明体に光を投射して被測定体の接地面において乱反射させて測定体に被測定体の接地面を接地像として映し出し、かつ、測定体に加わる被測定体の重心位置を荷重センサによって検出し、前記接地像と上記重心位置と重ねてみるものである。
【0007】
これによって、この発明は足裏とともに重心の位置およびその移動を明確に視察することができる。
【0008】
その他、足底部圧力分布を測定する方式としては、圧・光変換方式がある。これは、強化ガラスによる測定台に上に被験者が立ち、強化ガラスは対面する2辺に設置された光源により照らされ、強化ガラスの上面は薄いフィルムあるいはゴムやプラスチックのマットで覆われ、測定台の下から足裏を撮影し、その撮影画像はパーソナルコンピュータに取り込まれディスプレイに表示されるものである。
【特許文献1】特開平10−192259号公報
【特許文献2】特公昭50−16919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の特開平10−192259号のバランス測定装置は、圧力センサシートが小区画毎であるので画像はモザイク図形となり鮮明でない。このため、荷重分布や足の大きさなど正確に測定することは困難であった。そして、圧力センサシートは測定台の荷重のかかり方の差もあり、初期の出力に違いが生じているため、その出力に対する増幅率も異なり測定精度に欠けていた。さらに、本装置は機械的メカニズムであることから機構が複雑で高価であり、故障の原因ともなっていた。また特公昭50−16919号の重心位置測定法は測定盤を支持する荷重検出器が設けてあり、前者と同様に荷重センサなどの機械的メカニズムであることから重心位置検出機構が複雑で高価であり故障の原因ともなっていた。そして、足底分布の圧・光変換方式は撮影画像により圧力分布を観測することができても重心位置を迅速かつ簡易に測定するまでは至っていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は足圧に相関するガラス板上の足裏の接地部分面積、入射光量、形の変動に着目し、足裏接地部画像における接地領域の迅速な測定と重心位置の算出負担の軽減を目的とし、請求項1の発明では、被測定者の足裏画像から重心位置を解析する方法において、内部に光を投射させた透明板に足を載せ、撮像手段によりその透明板の裏面側から撮像し得た左右の足形画像から足裏接地部画像データを抽出し、その抽出した足裏接地部画像データの各画素の輝度値と座標軸の積の全画素の合計と、その足裏接地部画像データの全輝度値の合計で除して被測定者の重心位置を算出する。
【0011】
これにより、本発明はガラスに映し出された足の底圧に相関する輝度に基づいた足裏接地部画像データで簡易に算出できるので、被測定者の重心位置を高精度に迅速かつ簡易に解析できる。
【0012】
また、請求項2の発明は被測定者の足裏画像から重心位置を解析する方法において、内部に光を投射させた透明板に足を載せて、撮像手段によりその透明板の裏面側から撮像し得た左右の足形画像の色成分をRGB値からHSV値に変換し閾値で足裏接地部画像データを抽出し、その抽出した足裏接地部画像データの色成分を用いて各画素の輝度値と座標軸の積の全画素の合計と、その足裏接地部画像データのRGB値の全輝度値の合計で除して被測定者の重心位置を算出する。そして、本発明の各画素の輝度値はRGB値をデジタル値で表現し、その値の和とする。
【0013】
本発明は、足裏接地部画像の色成分をRGB値よりHSV値に変換した理由は色相を360度の円環で表すことができるため、背景と人の色の判別がし易くなり、閾値により正確に接地足裏部を抽出し易い利点がある。また、重心位置を算出するにはRGB値の加重平均より簡易に求めることができるからである。この組み合わせにより、本発明は足裏接地部画像データを正確に抽出でき、高精度で重心位置を解析できる。
【0014】
さらには、請求項3の発明は被測定者の足裏画像から重心位置を解析する方法において、内部に光を投射させた透明板に足を載せて撮像手段によりその透明板の裏面側から撮像し得た左右の足形画像の色成分をRGB値からHSV値に変換し、閾値で足裏接地部画像データを抽出し、その抽出した足裏接地部画像データの色成分を用いて各画素の輝度値と座標軸の積の全画素の合計と、その足裏接地部画像データのRGB値の全輝度の合計で除して被測定者の重心位置を算出し、前記被測定者の左右の足形画像に夫々左右足及び左右足全体の重心位置を表示する。
【0015】
これにより、被測定者の重心位置を視覚的に確認し身体の姿勢の異常や健康状態を観察することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の重心位置解析法は、足の底圧が足裏画像の接地面画像の輝度と相関しており、足裏画像データの接地部の各画素での輝度と座標軸との積の全画素の合計を、その接地部分の全輝度値の合計に基づき高精度で重心位置を簡易に算定することができる。また、本発明は従来の圧力(荷重)センサが不要であるので故障がなく簡易に求めることができる利点がある。しかも、本発明の重心位置解析は算出の演算量が少ないので高速演算が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は被測定者の足を内部に光を投射させた透明板に載せ、その透明板の裏面から撮像した足裏接地画像データでの座標軸及び輝度値を利用して高精度で迅速且つ容易な重心位置の解析法を実現した。
【実施例1】
【0018】
本発明の1実施例を図面に基づいて説明する。図1は被測定者の足裏をカメラでの撮影を示す説明図である。図2は図1において撮像した足形画像の重心位置を示す説明図であり、図3は重心位置解析工程を示すフローチャートである。
【0019】
被測定者は図1に示すように仕切り幕を形成し外部の光を遮断した測定器の部屋に足Fを挿入し内部に光源2の光を投射させたガラス板(透明板)に載せ、デジタルカメラ3(撮像手段)でそのガラス板の下から反射鏡4を通して左右の足を撮影して図2に示すように足形画像5がコンピュータ(図示せず)に取り込まれる。撮影された足形画像は、背景が青色とされ、左右の足裏を写しこんでいる。この際、ガラス板の内部に投射された光はガラス内では全反射して外部には出ないが、皮膚は空気よりも光密度が大きいので、ガラス板の上に皮膚が接すると、その部分での臨界角は大きくなり、皮膚接触部分では光は屈折しガラス外部に出て行く。皮膚のガラスへの接触面積は圧力に比例して増大する。従って、その光が皮膚部分で乱反射し接触面の光の量は圧力に比例して輝度値 (光量)が増加する。該足形撮像画像がカメラの設置角度やレンズの関係で画像歪が生じている場合は、コンピュータにより画像の歪を修正し較正画像を得たほうが好ましい。
【0020】
次に重心位置解析の工程を説明する。まずステップ1で上記取り込まれたカラーの足形画像5を読み込み、ステップ2でRGB値(赤、緑、青)からHSV値(色相、彩度、明度)に変換する。例えば、RGB値R:34 G:116 B:255をHSV値H:218 S:87 V:100へと変換する。次に、ステップ3で足形画像5から足裏接地部画像6の輪郭をHSV値の閾値により抽出する。
【0021】
そして、被測定者の重心位置は上記左右足の足裏接地部画像の画素の輝度値(光量)を利用して次のようにして求める。まず、ステップ4で左右各足の足裏接地画像データをHSV値からRGB値に変換し、そのRGB値の合計を算出する。次に、ステップ5、ステップ6で足裏接地部領域について水平方向座標をX、垂直方向座標をY、座標(Xm、Yn)における画素の輝度値をp(Xm 、Yn)とし、各画素の接地座標のX座標及びY座標における輝度値と座標軸との積の全画素の合計を輝度モーメントとして計算し、その輝度モーメントを接地面におけるRGB値の全輝度値合計で除することで左右足の重心座標(XG, YG)を求める。求める式は次の通りである。
【数1】

【0022】
上記で求めた被測定者の重心座標は上記の通りガラスに映し出された足の底圧に相関する輝度値に基づいているので重心と見なすことができ、より高精度で解析できた。そして、ステップ7で該重心9の位置を足形画像5に表示すれば、被測定者の重心位置を視覚的に確認し身体の姿勢の異常や健康状態を観察することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は撮影画像をCCDカメラで撮影し動画像とすることによって、被測定者の重心動揺の経時的状況を知ることができ、平衡能力に関するデータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の1実施例において被測定者の足裏をカメラで撮影を示す説明図である。
【図2】図1において撮像し得た足裏画像の重心位置を示す説明図である。
【図3】本発明の1実施例において、重心位置解析工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
1 ガラス
2 光源
3 カメラ
4 反射鏡
5 足形画像
6 足裏接地部画像
7 左足の重心位置
8 右足の重心位置
9 重心
F 足

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の足裏画像から重心位置を解析する方法において、内部に光を投射させた透明板に足を載せ、撮像手段によりその透明板の裏面側から撮像し得た左右の足形画像から足裏接地部画像データを抽出し、その抽出した足裏接地部画像データの各画素の輝度値と座標軸の積の全画素の合計と、その足裏接地部画像データの全輝度値の合計で除して被測定者の重心位置を算出したことを特徴とする重心位置解析法。
【請求項2】
被測定者の足裏画像から重心位置を解析する方法において、内部に光を投射させた透明板に足を載せ、撮像手段によりその透明板の裏面側から撮像し得た左右の足形画像の色成分をRGB値からHSV値に変換し、閾値で足裏接地部画像データを抽出し、その抽出した足裏接地部画像データの色成分を用いて各画素の輝度値と座標軸の積の全画素の合計と、その足裏接地部画像データのRGB値の全輝度値の合計で除して被測定者の重心位置を算出したことを特徴とする重心位置解析法。
【請求項3】
被測定者の足裏画像から重心位置を解析する方法において、内部に光を投射させた透明板に足を載せ、撮像手段によりその透明板の裏面側から撮像し得た左右の足型画像の色成分をRGB値からHSV値に変換し、閾値で足裏接地部画像データを抽出し、その抽出した足裏接地部画像データの色成分を用いて各画素の輝度値と座標軸の積の全画素の合計と、その足裏接地部画像データのRGB値の全輝度の合計で除して被測定者の重心位置を算出し、前記被測定者の左右の足形画像に夫々左右足及び左右足全体の重心位置を表示したことを特徴とする重心位置解析法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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