説明

重水素化カルボスチリル化合物

【課題】重水素化されたアリピプラゾール及びその製造用中間体を提供する。
【解決手段】下記の式(I)で表される化合物又はその塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬として及び医薬化合物の製造用中間体として有用な重水素化されたカルボスチリル化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素化合物の多くは水素原子(H)を重水素原子(D)で置換しても基本的な物理化学的性質は大きく変わらないが、生物活性には多様な変化が生じることが知られている。基本となる活性のほか、C-D結合が短いことから分子の大きさにも生体にとっては意味のある変化となり、医薬としての特性にも効果がみられる。生物活性のうち、特にC-H結合の開裂が関与する生体内での代謝速度については、C-H結合とC-D結合の解離エネルギーが異なるために大きな差が生じることが多い。例えば、アミノ酸フェニルアラニンは生体内で代謝を受けてチロシンに変換されるが、その反応の中間体からの水素(H)の脱離は重水素(D)や三重水素(T)に比べて顕著に速いことが知られている(この現象は同位体効果と呼ばれる)。
【0003】
一方、アリピプラゾール(aripiprazole:7-[4-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-1-ピペラジニル]ブトキシ]-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノン)は第三世代抗精神病薬に分類される非定型抗精神病薬であり(特開平2-191256号公報)脳内の中脳辺縁系および中脳皮質系に作用してドーパミン刺激を調節することから、統合失調症などの治療に広く用いられている。アリピプラゾールは肝臓で代謝されるが、主としてシトクロムP450 3A4(CYP3A4)とシトクロムP450 2D6(CYP2D6)によって脱水素化と水酸化を受け、CYP3A4によってN-脱アルキル化を受けることが知られている。血漿中における主代謝物は脱水素体(デヒドロアリピプラゾール:7-[4-4-(2,3-ジクロロフェニル)-1-ピペラジニル]ブトキシ)-2(1H)-キノリノン)であり、定常状態(投与14日目)では未変化体に対するデヒドロアリピプラゾールのAUCの割合は約27%である。さらに、特にサルのin vivo試験では芳香環が酸化された代謝物が検出されている。
【0004】
上記の同位体効果を利用してアリピプラゾールの代謝速度を制御する試みがなされている。例えば、米国特許公開2008/0299216A1にはアリピプラゾールをランダムに重水素化した誘導体が混合物として開示されている。また、国際公開WO2008/24481には、アリピプラゾールのキノリノン骨格の3位及び4位並びにブトキシ基の4位を重水素化した誘導体が開示されている。しかしながら、これらの刊行物には、キノリン骨格のベンゼン環部分を重水素化した化合物は開示されておらず、そのような化合物の代謝速度などについても何ら示唆ないし教示がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-191256号公報
【特許文献2】米国特許公開2008/0299216A1
【特許文献3】国際公開WO2008/24481
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は重水素化されたアリピプラゾール及びその製造用中間体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は従来報告されていない重水素化されたアリピプラゾールとしてキノリン骨格の水素原子の全てを重水素で置換した化合物及びその製造用中間体を提供すべく鋭意検討を行った。その結果、得られたヘプタ重水素置換体がアリピプラゾール及び既報の重水素化アリピプラゾール(国際公開WO2008/24481)とは異なる生体内挙動を示し、酸化による代謝が顕著に遅延することから、活性の持続のほか、AUCの変化、腎胆などからの排泄の好ましい変化が生じるとともに、代謝物による毒性の軽減、代謝物を含む胆結石症様所見の減少や脳をはじめとする体内分布の変化を生じるなどの好ましい性質を有していることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明により、下記の式(I):
【化1】

で表される化合物又はその塩が提供される。
【0009】
別の観点からは、本発明により、下記の式(II)又は式(III):
【化2】

(式中、Xは脱離基を示す)で表される化合物又はその塩が提供される。これらの化合物又はそれらの塩は、上記式(I)で表される化合物の製造用中間体として有用である。
【0010】
さらに別の観点からは、本発明により、上記式(I)で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含む医薬、好ましくは抗精神薬が提供される。
また、上記医薬の製造のための上記式(I)で表される化合物又はその塩の使用、及び統合失調症、躁病、うつ病、又は躁うつ病などの精神疾患の治療及び/又は予防方法であって、上記式(I)で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩の治療及び/又は予防有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が本発明により提供される。
【0011】
さらに本発明により、式(I)で表される化合物の製造方法であって、下記の工程:
(1)7-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロ-1H-キノリン-2-オンを金属触媒及び重水素化溶媒、並びに水素分子の存在下で重水素化して7-ヒドロキシ-3,3,4,4,5,6,8-ヘプタジューテリオ-2(1H)-キノリノンを製造する工程;
(2)上記工程(1)で得られた7-ヒドロキシ-3,3,4,4,5,6,8-ヘプタジューテリオ-2(1H)-キノリノンを式(II)の化合物に変換する工程;及び
(3)式(II)の化合物に1-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジンを反応させて式(I)で表される化合物に変換する工程
を含む方法が提供される。
金属触媒としては例えばパラジウム炭素触媒を用いることができ、重水素化溶媒としては例えば重水を用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により提供されるアリピプラゾールのヘプタ重水素置換化合物は、アリピプラゾールと実質的に同一の薬理作用及び安全性を有しており、かつ脱水素化による代謝の作用点の重水素置換に加えて隣接するベンゼン環上にも重水素を有することから、既報の重水素化アリピプラゾール(国際公開WO2008/24481)とは異なる生体内挙動を示し、例えば、脱水素化による代謝速度がさらに遅延して、その結果、医薬としての作用時間が延長されるという特徴を有している。例えば、酸化による代謝が顕著に遅延することから、活性の持続のほか、AUCの変化、腎胆などからの排泄の好ましい変化が生じるとともに、代謝物による毒性の軽減、代謝物を含む胆結石症様所見の減少や脳をはじめとする体内分布の変化を生じる。特に、アリピプラゾールでは代謝過程でキノロン環を構成するベンゼン環も酸化されることが知られており、本発明のヘプタ重水素置換化合物この経路での代謝速度が遅延することにより、作用時間の延長が期待できる。
【0013】
また、本発明の式(II)で表される化合物は安価かつ容易に入手可能な非重水素化キノリノン誘導体から1工程で収率よく製造することができる。従って、この式(II)の化合物を製造用中間体として用いることにより、式(I)の化合物は、例えば国際公開WO2008/24481に記載された重水素化アリピプラゾールよりもはるかに安価かつ簡便に製造することができるという特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記の式(I)ないし(III)において、Dで表される重水素以外の水素原子(H)は省略している。
式(I)ないし(III)で表される化合物において、塩としては酸付加塩を用いることができ、例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩などの鉱酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩などの有機酸塩などを用いることができるが、これらに限定されることはない。好ましくは塩酸塩などを用いることができる。
【0015】
上記の式(I)で表される化合物(7-[4-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-1-ピペラジニル]ブトキシ]-3,4-ジヒドロ-3,3,4,4,5,6,8-ヘプタジュテリオ-2(1H)-キノリノン)は、上記の式(II)で表される化合物(7-ヒドロキシ-3,3,4,4,5,6,8-ヘプタジューテリオ-2(1H)-キノリノン)を製造した後に上記の式(III)で表される化合物に誘導し、さらに脱離基Xを4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジンで置換することにより容易に製造することができる。式(III)においてXとしては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、p-トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基などの脱離基を用いることができるが、Xとしては臭素原子が好ましい。
【0016】
式(II)で表される化合物は、例えば、7-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロ-1H-キノリン-2-オンを原料化合物として用い、作治木らの方法(Sajiki et al., Tetrahedron Letters, 46, pp.6995-6998, 2005; 有機合成化学協会誌, 65, pp.1179-1189, 2007年)に従って、金属触媒及び重水素化溶媒の存在下で少量の水素分子(H2)を作用させることにより、キノリン環の3位、4位、5位、6位、及び8位の水素原子を重水素に置換することができる。反応は例えば80〜150℃程度の温度で数時間から数日間行えばよい。重水素化された化合物の構造及び重水素による置換位置は1H-NMRおよび13C-NMRにより容易に確認することができる。重水素化率は特に制限されないが、例えば90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上であり、必要に応じて上記の反応を適宜繰り返せすことにより、さらに重水素化率を高めた化合物を製造することができる。
【0017】
触媒としては、例えば、パラジウム触媒、白金触媒、ニッケル触媒、コバルト触媒、又はイリジウム触媒など、通常の接触水素化に用いられる金属触媒を用いることができ、これらの金属触媒を活性炭や不活性無機化合物などの不活性担体に担持させた触媒を好ましく用いることができる。好ましくはパラジウム炭素触媒などを用いることができる。
【0018】
重水素化された溶媒としては、例えば、重水(D2O)、重メタノール、重エタノール、重プロパノール、重イソプロパノール、重ブタノール、重tert-ブタノール、重ペンタノール、重ヘキサノール、重ヘプタノールなどの重アルコール類のほか、重ギ酸、重酢酸、重プロピオン酸、重酪酸、重イソ酪酸、重吉草酸、重イソ吉草酸、重ピバル酸等の重カルボン酸類等の有機溶媒等が挙げられる。これらの重水素化溶媒の重水素化率は特に限定されないが、例えば90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の重水素化溶媒を用いることが好ましい。これらのうち、重水を用いることが環境面や作業性などの観点から好ましい。また、重水素化溶媒に加えて、非プロトン性の溶媒や疎水性の溶媒を加えることもできる。反応条件によってはCH3ODやC2H5ODなどの部分重水素化溶媒を用いることも可能である。
【0019】
重水素化された式(II)の化合物を用いて1,4-ジブロモブタンや1-ブロモ-4-クロロブタンなどを反応させることにより式(III)で表される化合物に誘導し、さらに脱離基Xを4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジンで置換することにより式(I)で表される化合物を容易に製造することができるが、その反応の一例を上記の重水素化反応工程とともに本明細書の実施例に具体的に示した。従って、当業者は上記の一般的合成方法の説明及び実施例の具体的製造方法を参照しつつ、原料化合物、反応試薬、反応条件を適宜選択し、必要に応じて適宜の修飾ないし改変を加えることにより、式(I)の化合物を容易に製造することができる。
【0020】
本発明の式(I)で表される化合物は、アリピプラゾールと実質的に同一の薬理作用及び安全性を有していることから、アリピプラゾールが有効性を示す各種の精神疾患、例えば統合失調症、躁病、うつ病、及び躁うつ病などに対して有効性を示す。本発明の医薬は、アリピプラゾールの適応症、用法、及び容量に準じて使用することができ、適宜の医薬組成物の形態、例えば経口投与用医薬組成物又は非経口投与用医薬組成物の形態でヒトを含む哺乳類動物に投与することが可能である。アリピプラゾールについては特開平2-191256号公報に適応症、用法、及び容量などが記載されているので、上記公報を参照により本発明の開示として含める。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。実施例中、元素分析値は熱伝導度で測定した。熱伝導度による元素分析ではH2OとD2Oが区別されずにD=1としての組成値を与えることから、計算値はD=1として計算した。
例1
以下の工程でペンタ重水素化アリピプラゾール((7-[4-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-1-ピペラジニル]ブトキシ]-3,4-ジヒドロ-3,3,4,4,5,6,8-ヘプタジュテリオ-2(1H)-キノリノン)を製造した。
【化3】

【0022】
(a)化合物3の合成
7-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロ-1H-キノリン-2-オン(2) 252.3 mg (1.509 mmol)及び10% Pd/C (27.8 mg)を封管に入れ、D2O (6 cm3)を加えて懸濁液とし、H2ガスを吹き込んだ後に素早く封じて110-120℃にて72時間加熱撹拌した。室温に冷却し、セライトろ過により触媒を除去後、ろ液を減圧下留去して粗化合物3(255.8 mg, 100%)を得た。1H NMR測定の結果、粗化合物3は精製なしで次の合成反応に用いることができる程度の純度を維持していた。エタノール/水から再結晶して、化合物3が無色針状晶として得た。
【0023】
1H NMR (DMSO-d6) δ ppm 2.35 (0.04H, s), 2.69 (0.04H, s), 6.30 (0.02H, s), 6.32 (0.02H, s), 6.91 (0.02H, s), 9.33 (1H, br s), 9.91 (1H, s)
13C NMR (DMSO-d6) δ ppm 22.6-24.2 (m), 29.6-31.2 (m), 101.5-102.6 (m), 108.0-109.0 (m), 113.5, 127.4-128.4 (m), 138.9, 156.3, 172.3
LRMS (EI) m/z 170 (M+; 100%), 142 (50), 128 (13), 114 (25), 97 (7), 85 (7), 69 (12), 54 (15)
C9H2D7NO2
Calculated: C, 63.51; H, 5.33; N, 8.23
Found: C, 63.56; H, 5.59; N, 8.17
【0024】
(b)化合物4の合成
化合物3 (252.3 mg, 1.482 mmol)をアセトン (5 ml)に溶解し、炭酸カリウム (255.6 mg, 1.849 mmol)及び1,4-ジブロモブタン(1.6238 g, 7.521 mmol)を加えて17時間加熱還流した。室温に冷却し、セライトろ過及びろ液の減圧濃縮を行って得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(BW-200, 15 g, 溶出溶媒; 20%→40%→60% 酢酸エチル/n-ヘキサン)にて精製し、化合物4を347.3 mg (1.138 mmol, 75%)得た。エタノールから再結晶して化合物4が無色針状晶として得た。
【0025】
融点 110.5-111℃ (エタノール)
1H NMR (CDCl3) δ ppm 1.87-1.98 (2H, m), 2.00-2.11 (2H, m), 2.59 (0.04H, s), 2.87 (0.04H, s), 3.48 (2H, t, J = 6.6 Hz), 3.97 (2H, t, J = 6.1 Hz), 6.36 (0.02H, s), 6.51 (0.02H, s), 7.04 (0.02H, s), 8.58 (1H, br s)
13C NMR (CDCl3) δ ppm 23.6-24.2 (m), 27.9, 29.5, 30.0-30.6 (m), 33.5, 67.0, 101.5-102.3 (m), 107.9-108.6 (m), 115.6, 127.8-128.5 (m), 138.0, 158.2, 171.8
LRMS (EI) m/z 304 (M+; 13%), 170 (34), 135 (51), 97(18), 55(100)
C13H9D7BrNO2
Calculated: C, 51.16; H, 5.28; N, 4.59
Found: C, 51.24; H, 5.36; N, 4.55
【0026】
(c)化合物1の合成
1-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン(5) (182.9 mg, 0.791 mmol)及び化合物4 (193.8 mg, 0.635 mmol)をアセトニトリル(3 cm3)に溶解し、炭酸カリウム(286.2 mg, 2.071 mmol)及びヨウ化カリウム(25.4 mg, 0.152 mmol)を加えて3時間加熱還流した。室温に冷却してH2O (20 cm3)を加え、クロロホルムで4回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して溶媒を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(BW-200, 12 g, 溶出溶媒; 0%→1%→2%→5% メタノール/酢酸エチル)で精製し、化合物1を264.4 mg (0.580 mmol, 91%)得た。アセトニトリルから再結晶して化合物1を無色針状晶として得た。
【0027】
1H NMR (CDCl3) δ ppm 1.65-1.88 (4H, m), 2.45-2.53 (2H, m), 2.57-2.71 (4.04H, m), 2.86 (0.04H, m), 3.02-3.14 (4H, m), 3.97 (2H, br t, J = 6 Hz), 6.36 (0.02H, s), 6.52 (0.02H, s), 6.92-6.99 (1H, m), 7.04 (0.02H, s), 7.11-7.18 (2H, m), 8.52 (1H, br s, NHC=O)
13C NMR (CDCl3) δ ppm 23.4, 23.7-24.3 (m), 27.2, 30.1-30.7 (m), 51.2 (2C), 53.2 (2C), 58.1, 67.7, 101.5-102.3 (m), 107.9-108.6 (m), 115.2, 118.4, 124.3, 127.2, 127.8-128.5 (m), 128.3, 133.7, 138.0, 151.0, 158.3, 172.3
LRMS (EI) m/z 454 (M+; 8%), 285 (19), 243 (100), 200 (8), 173 (11),
141 (6), 112 (7), 84 (44).
C23H20D7Cl2N3O2
Calculated: C, 60.66; H, 5.98; N, 9.23
Found: C, 60.54; H, 6.09; N, 9.17

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I):
【化1】

で表される化合物又はその塩。
【請求項2】
上記式(I)で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含む医薬。
【請求項3】
下記の式(II)又は式(III):
【化2】

(式中、Xは脱離基を示す)で表される化合物又はその塩。
【請求項4】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物の製造用中間体として用いるための請求項3に記載の式(II)又は式(III)で表される化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物の製造方法であって、下記の工程:
(1)7-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロ-1H-キノリン-2-オンを金属触媒及び重水素化溶媒、並びに水素分子の存在下で重水素化して7-ヒドロキシ-3,3,4,4,5,6,8-ヘプタジューテリオ-2(1H)-キノリノンを製造する工程;
(2)上記工程(1)で得られた7-ヒドロキシ-3,3,4,4,5,6,8-ヘプタジューテリオ-2(1H)-キノリノンを式(II)の化合物に変換する工程;及び
(3)式(II)の化合物に1-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジンを反応させて式(I)で表される化合物に変換する工程
を含む方法。
【請求項6】
金属触媒としてパラジウム炭素触媒及び重水素化溶媒として重水を用いる請求項5に記載の方法。

【公開番号】特開2011−1308(P2011−1308A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146318(P2009−146318)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(591063648)財団法人乙卯研究所 (4)
【Fターム(参考)】