説明

重水素化芳香族化合物を調製する方法

重水素化芳香族化合物を調製する方法が提供される。本方法は、(a)第1の重水素化溶媒に溶解または分散されている、芳香族水素を有する芳香族化合物を含む液体組成物を提供する工程と、(b)1以下のpKaを有する第1の酸でこの液体組成物を処理する工程とを含む。芳香族水素に対する重水素原子の当量比は少なくとも2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年10月26日出願の米国仮特許出願第61/254,843号明細書からの35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張するものである。この特許出願は、その全体が本明細書において援用される。
【0002】
この開示は、一般に重水素化芳香族化合物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
重水素は約0.015%の天然存在度を有する。重水素が濃縮された重水素化化合物は公知である。重水素化芳香族化合物は、化学反応および代謝経路を研究するために用いられてきた。重水素化芳香族化合物は、医薬品、農薬、機能材料および分析トレーサーのための原材料としての用途も有する。重水素化芳香族化合物を生成させる方法は、長い時間または日数にわたりD2SO4またはD3PO4・BF3/D2Oなどの材料で非重水素化類似体を処理することを含む。三塩化アルミニウムまたは塩化エチルアルミニウムなどのルイス酸H/D交換触媒の存在下で非重水素化類似体を重水素化溶媒で処理することも知られている。もしくは、超臨界D2Oまたはマイクロ波照射などの高温、高圧条件下で非重水素化類似体をD2Oで処理することが可能であり、酸触媒または塩基触媒によってもよい。こうした方法は、高価および/または時間がかかり得る。重水素化芳香族化合物を生成させる既知の他の方法は、D2ガスまたはD2Oによる、もしくはC66などの重水素化有機溶媒による非重水素化類似体のH/D交換に影響を及ぼすために遷移金属触媒を使用することを含む。
【0004】
重水素化芳香族化合物を生成させる改善された方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
重水素化芳香族化合物を調製する方法であって、
(a)第1の重水素化溶媒に溶解または分散されている、芳香族水素を有する芳香族化合物を含む液体組成物を提供する工程と、
(b)1以下のpKaを有する第1の酸でこの液体組成物を処理して、第1の重水素化材料を生成させる工程と
を含み、芳香族水素に対する重水素原子の当量比が少なくとも2である、方法が提供される。
【0006】
(c)第1の重水素化材料を単離する工程と、
(d)第2の重水素化溶媒にこの第1の重水素化材料を溶解または分散させて、第2の液体組成物を生成させる工程と、
(e)1以下のpKaを有する第2の酸でこの第2の液体組成物を処理して、第2の重水素化材料を生成させる工程と
をさらに含む、前述した方法も提供される。
【0007】
前述した一般的記述および以下の詳細な記述は専ら例示および説明のためであり、添付した特許請求の範囲において定義されるように本発明を限定しない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
多くの態様および実施形態は、上述されており、単に例示にすぎず、限定的ではない。本明細書を読んだ後、当業者は、他の態様および実施形態が、本発明の範囲を逸脱せずに可能であることがわかる。
【0009】
任意の1つ以上の実施形態の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。詳細な説明は、最初に用語の定義および説明を、その後、重水素化の方法、最後に実施例を扱う。
【0010】
1.用語の定義および説明
以下で記載された実施形態の詳細を扱う前に、幾つかの用語を定義し、説明する。
【0011】
本明細書において用いられる「芳香族化合物」という用語は、非局在化pi電子を有する少なくとも1個の不飽和環式基を含む有機化合物を意味することを意図している。この用語は、炭化水素芳香族化合物とヘテロ芳香族化合物の両方を包含することを意図している。「炭化水素芳香族環」または「炭化水素芳香族化合物」という用語は、芳香族部分が炭素原子および水素原子のみを有する芳香族環または芳香族化合物を意味する。「ヘテロ芳香族環」または「ヘテロ芳香族化合物」という用語は、少なくとも1個の芳香族部分において環式基内の炭素原子の1個以上が窒素、酸素または硫黄などの別の原子によって置換された芳香族環または芳香族化合物を意味する。
【0012】
「芳香族水素」という用語は、芳香族環に直接的に結合された水素を意味する。
【0013】
「重水素化」という用語は、重水素が天然存在度レベルの少なくとも100倍存在する化合物または基を意味する。
【0014】
「重水素−酸」という用語は、重水素イオンをブレンステッド塩基に供与するためにイオン化することが可能な化合物を意味する。本明細書において用いられる場合、イオン化可能な水素は重水素−酸中に存在しない。
【0015】
「過重水素化」という用語は、すべての水素が重水素で置換されている化合物または基を意味する。過重水素化という用語は、「100%重水素化」と同義語である。
【0016】
本明細書で用いられる「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的包含を含めることを意図している。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品または装置は、これら要素のみに必ずしも限定されず、明示的にリストされなかった他の要素、またはこうしたプロセス、方法、物品または装置に固有の他の要素を含んでもよい。さらに、明示的に逆であると述べられないかぎり、「または(or)」は、包含的な「または(or)」を意味し、排他的な「または(or)」を意味しない。例えば、条件AまたはBは、次のいずれか1つによって満たされる。Aは真(または存在する)であり、且つBは偽(または存在しない)である。Aは偽(または存在しない)であり、且つBは真(または存在する)である。およびAとBの両方は真(または存在する)である。
【0017】
不定冠詞「a」または「an」の使用も、本明細書において記載された要素および成分を記載するために用いられる。これは、単に、便宜のためであって、本発明の範囲の一般的な意味を与えるために用いられる。この記述は、1つ、または少なくとも1つを含むと読まれるべきであり、単数形は、別段に意味することが明らかでない限り複数形も含む。
【0018】
元素の周期律表内の欄に対応する族数は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,第81版(2000年〜2001年)において見られるような「新表記法」を用いている。
【0019】
別段に定義されない限り、本明細書において用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において記載された方法および材料に似ているか、または同等の方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料は以下に記載されている。本明細書において記載されたすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、特定の一節が引用されない限り、その全体が本明細書において援用される。係争の場合、定義を含み、本明細書が支配する。さらに、材料、方法および実施例は例示のみであり、限定することを意図していない。
【0020】
本明細書において記載されていない範囲での特定の材料および処理に関する詳細の多くは従来通りであり、教科書および他の出典において見つけ得る。
【0021】
2.重水素化の方法
本方法は、
(a)第1の重水素化溶媒に溶解または分散されている、芳香族水素を有する芳香族化合物を含む液体組成物を提供する工程と、
(b)1以下の水中のpKaを有する第1の酸でこの液体組成物を処理して、第1の重水素化材料を生成させる工程と
を含み、ここで、芳香族水素に対する重水素原子の当量比は少なくとも2である。
【0022】
幾つかの実施形態において、芳香族化合物は、少なくとも1個の炭化水素芳香族環を有する。幾つかの実施形態において、芳香族化合物は、複数の炭化水素芳香族環を有する。幾つかの実施形態において、炭化水素芳香族環は、1個以上の置換基でさらに置換されている。例示的な置換基は、アルキル基、アルコキシ基、シリル基、シロキサン基、アリール基、アリールオキシ基およびアミノ基を含むが、それらに限定されない。幾つかの実施形態において、芳香族化合物はヘテロ芳香族環をもたない。
【0023】
幾つかの実施形態において、芳香族化合物は縮合芳香族環を有する。こうした化合物の例は、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセン、フェナントレン、クリセン、ピレンおよびトリフェニレンを含むが、それらに限定されない。
【0024】
重水素化溶媒は、室温で液体であるとともに芳香族化合物を溶解または分散させて均質液体組成物を形成できる材料である。重水素化溶媒の選択は、芳香族化合物の選択に応じて異なる。
【0025】
重水素化溶媒は、水素と交換され得る少なくとも1個の重水素を有する。重水素化溶媒は水素を有してもよいが、しかし、水素は、重水素よりも著しく交換する可能性が低くなければならない。幾つかの実施形態において、重水素化溶媒は過重水素化されている。幾つかの実施形態において、重水素化溶媒は過重水素化有機液体である。幾つかの例示的な重水素化溶媒は、D2O、過重水素化ベンゼン(「ベンゼン−D6」)、過重水素化トルエン(「トルエン−D8」)、過重水素化キシレン(「キシレン−D10」)、CDCl3およびCD3ODを含むが、それらに限定されない。
【0026】
酸は、1以下である水中のpKaを有する。1個より多いイオン化可能なプロトンを有する酸に関して、pKaは、第1のプロトンのイオン化を意味する。幾つかの実施形態において、pKaは−1以下であり、幾つかの実施形態において、pKaは−2以下である。
【0027】
幾つかの実施形態において、酸は重水素−酸である。重水素−酸のpKaは、類似のプロトニック酸に関するpKaと同じであると本明細書においてはみなされる。重水素−酸は共有結合された水素を有してもよいが、イオン化可能な重水素のみを有してもよい。重水素−酸の幾つかの例は、重水素−硫酸(D2SO4)、重水素−トリフルオロ酢酸(CF3CO2D)、d1−メタンスルホン酸(CH3SO3D)、d1−ベンゼンスルホン酸(C66SO3D)、重水素−トリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO3D)および重水素−フルオロ硫酸(FSO3D)を含むが、それらに限定されない。
【0028】
本方法において、芳香族化合物は溶媒に分散されて、第1の液体組成物を生成させる。液体組成物は、その後、酸で処理される。これは、攪拌しつつ液体組成物に酸を添加することにより実行することが可能である。酸は、液体、液体溶液または溶媒に分散可能な固体の形態を取ることが可能である。幾つかの実施形態において、酸は高分子支持体上にある。幾つかの実施形態において、酸は、シリカ粒子の分散液などのシリカ支持体上にある。酸がいずれかのタイプの支持体上にある時、酸は本明細書において「支持された酸」と呼ばれる。幾つかの実施形態において、フルオロスルホン酸はシリカ支持体上にある。幾つかの実施形態において、酸自体は、Nafion(登録商標)などの高分子材料である。高分子材料は、粒子、ビーズ、メンブレンなどの形態を取ってもよい。支持された酸または固体高分子酸材料を液体組成物に浸漬させて、処理を遂行することが可能である。もしくは、液体組成物は、連続プロセスにおいて、支持された酸または固体高分子酸材料を通り過ぎさせるか、通り抜けさせることが可能である。
【0029】
一般に、芳香族化合物に対する重水素原子の当量比は、2〜150の範囲内であり、幾つかの実施形態において、5〜100の範囲内である。芳香族化合物に対する酸の当量比は0.1〜10の範囲内であり、幾つかの実施形態において、1〜5の範囲内である。幾つかの実施形態において、芳香族化合物に対する酸の当量比は0.1〜10.0の範囲内である。
【0030】
芳香族水素に対する重水素原子の当量比は少なくとも約2である。「重水素原子」という用語は、溶媒中の共有結合されたDおよび/または酸中のイオン化可能なDを意味することは明らかである。重水素−酸に関して、重水素原子の当量数は、モル数×イオン化可能な重水素の数、に等しい。重水素化溶媒に関して、重水素原子の当量数は、溶媒のモル数×化合物中の重水素原子の数、に等しい。芳香族化合物に関して、芳香族水素の当量数は、芳香族化合物のモル数×化合物中の芳香族水素の数、に等しい。幾つかの実施形態において、芳香族水素に対する重水素原子の当量比は、約2〜50の範囲内であり、幾つかの実施形態において、約10〜30の範囲内である。
【0031】
幾つかの実施形態において、酸はプロトニック酸である。幾つかの実施形態において、芳香族化合物に対するプロトニック酸の当量比は、0.1〜10.0の範囲内である。
【0032】
幾つかの実施形態において、重水素−酸は重水素化溶媒と共に用いられる。これらの実施形態において、芳香族水素に対する全Dの当量比は少なくとも約2である。
【0033】
幾つかの実施形態において、酸による処理は大気圧で行われる。「大気圧」は、圧力がいかなる仕方でも調節されていないことを意味する。幾つかの実施形態において、大気圧は、730〜770トルの範囲内である。
【0034】
幾つかの実施形態において、酸による処理は室温で行われる。「室温」は、組成物が加熱も冷却もされていないことを意味する。幾つかの実施形態において、室温は20〜25℃の範囲内である。幾つかの実施形態において、酸による処理は高温で行われる。殆どの場合、温度は溶媒の沸点を超えない。幾つかの実施形態において、温度は、25〜75℃の範囲内であり、幾つかの実施形態において、40〜60℃の範囲内である。
【0035】
幾つかの実施形態において、酸による処理は室温および大気圧で行われる。
【0036】
幾つかの実施形態において、酸による処理は24時間以下にわたり行われ、幾つかの実施形態において、2時間以下にわたり行われ、幾つかの実施形態において、1時間以下にわたり行われる。
【0037】
幾つかの実施形態において、第1の重水素化化合物は、重水素で置換された芳香族水素30〜100%を有し、幾つかの実施形態において、重水素で置換された芳香族水素40〜90%を有し、幾つかの実施形態において、重水素で置換された芳香族水素50〜80%を有する。幾つかの実施形態において、非芳香族水素の少なくとも幾つかも重水素で置換されている。
【0038】
幾つかの実施形態において、第1の重水素化化合物を処理して、第1の重水素化化合物をさらに重水素化することが望ましい。この場合、以下の追加の工程が行われる。
(c)第1の重水素化材料を単離する工程、
(d)第2の重水素化溶媒に第1の重水素化材料を溶解または分散させて、第2の液体組成物を生成させる工程、および
(e)1以下のpKaを有する第2の酸でこの第2の液体組成物を処理して、第2の重水素化材料を生成させる工程
【0039】
第1の重水素化材料は、いかなる既知の技術を用いても単離することが可能である。こうした技術は、沈殿、蒸発、蒸溜およびクロマトグラフィを含むがそれらに限定されない。
【0040】
その後、第1の重水素化材料は工程(a)でのように第2の重水素化溶媒に溶解または分散させて、第2の液体組成物を生成させる。第2の重水素化溶媒は、第1の重水素化溶媒と同じか、または異なる可能性がある。幾つかの実施形態において、第2の重水素化溶媒は、第1の重水素化溶媒と同じである。
【0041】
その後、第2の液体組成物は、工程(b)でのように第2の酸で処理される。第2の酸は、第1の酸と同じか、または異なる可能性がある。幾つかの実施形態において、第2の酸は第1の酸と同じである。
【0042】
これらの材料は、第1の重水素化材料中に残る芳香族水素に対する重水素原子の当量比が少なくとも2、幾つかの実施形態において、2〜50、幾つかの実施形態において、10〜30であるように添加される。幾つかの実施形態において、工程(b)と同じ芳香族材料:溶媒:酸のモル比が用いられる。従って、芳香族化合物中に当初存在する芳香族水素の当量に対する重水素原子の当量の比は、少なくとも2、幾つかの実施形態において、2〜50、幾つかの実施形態において、10〜30である。
【0043】
幾つかの実施形態において、工程(e)は、室温および大気圧で行われる。幾つかの実施形態において、工程(e)は、24時間以下、幾つかの実施形態において、2時間以下、幾つかの実施形態において、1時間以下にわたり行われる。
【0044】
幾つかの実施形態において、第2の重水素化材料は単離され、工程(c)〜(e)に類似の重水素化溶媒および酸でさらに処理される。
【0045】
本明細書において記載された方法は、重水素化生産物にいかなる無機不純物も導入しない点で有利である。多くの用途において、金属および/またはハロゲンなどの無機不純物は、望ましくない作用を有し得る。本方法は、より弱い酸を用いる方法より多い交換をもたらす。驚くべきことに且つ意外なことに、芳香族水素に対する重水素原子の比較的低い当量比が、有効な交換を遂行するのに十分である。
【実施例】
【0046】
特許請求の範囲において記載された本発明の範囲を限定しない以下の実施例において、本明細書において記載された概念をさらに説明する。
【0047】
実施例1〜6
これらの実施例は、異なる芳香族化合物による本発明の方法を例示す。
【0048】
出発の化合物および条件を以下の表1に示している。出発非重水素化化合物を乾燥ガラスバイアル中でベンゼン−D6に溶解させた。これに重水素化トリフルオロメタンスルホン酸を添加した。トリフルオロメタンスルホン酸のpKaは、−13〜−15の範囲内であることが報告されている。得られた液体を定期的なサンプリングにより示された温度で攪拌して、UPLC−MSおよび/またはGC−MSによって重水素化の程度を決定した。重水素交換の所望量が起きた時、反応をD2O中でNa2CO3により急冷した。有機相を分離し、濃縮し、シリカカラム上でカラムクロマトグラフィによって精製した。最終的な質量をUPLC−MSおよび/またはGC−MSによって決定した。
【0049】
結果を表2に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
CBPは、
【0052】
【化1】

【0053】
である。
NBPは、
【0054】
【化2】

【0055】
である。
【0056】
【表2】

【0057】
実施例7と比較例AおよびB
この実施例および比較例は酸pKaの影響を例示している。
【0058】
実施例7に関しては、実施例1の手順を繰り返した。
【0059】
比較例Aに関しては、重水素化トリフルオロメタンスルホン酸の代わりにリン酸を用いて実施例1の手順を繰り返した。
【0060】
比較例Bに関しては、重水素化トリフルオロメタンスルホン酸の代わりに酢酸を用いて実施例1の手順を繰り返した。
【0061】
結果を以下の表3に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
実施例7において、処理の1時間後に完全な交換があった。比較例において、酸は1より大きいpKaを有する。20時間後でさえ、Dと交換されたHはない。
【0064】
一般的説明または実施例において上述した活動のすべてが必要であるとは限らず、特定の活動の一部を必要としない場合があり、1つ以上のその更なる活動を上述した活動に加えて行ってもよいことに注意されたい。なおさらに、活動を記載する順序は、活動を行う順序である必要は必ずしもない。
【0065】
前述した明細書において、概念を特定の実施形態に関連して記載してきた。しかし、当業者は、種々の修正および変更を以下の特許請求の範囲に規定された本発明の範囲を逸脱せずに実施できることがわかる。従って、本明細書および図面を制限的な意味でなく例示的に捉えるべきであり、かかるすべての修正は本発明の範囲内に含まれるべきことが意図されている。
【0066】
利益、他の利点および問題に対する解決策を特定の実施形態に関して上述してきた。しかし、任意の利益、利点、問題に対する解決策をもたらし得るか、またはより明白にし得る、利益、利点または問題に対する解決策、および任意の特徴は、任意のまたはすべての特許請求の範囲の重要な、必要なまたは必須の特徴として解釈されるべきではない。
【0067】
分かりやすくするために、別々の実施形態の文脈において本明細書において記載されている特定の特徴を、単一の実施形態における組み合わせで提供してもよいことが認識されるべきである。逆に、単一の実施形態の文脈において簡潔のために記載されている種々の特徴を別々に、またはあらゆる下位組み合わせにおいて提供してもよい。更に、範囲として指定された値についての記載は当該範囲内のありとあらゆる値を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重水素化芳香族化合物を調製する方法であって、
(a)第1の重水素化溶媒に溶解または分散されている、芳香族水素を有する芳香族化合物を含む液体組成物を提供する工程と、
(b)1以下の水中のpKaを有する第1の酸で前記液体組成物を処理して、第1の重水素化材料を生成させる工程と
を含み、芳香族水素に対する重水素原子の当量比が少なくとも2である、方法。
【請求項2】
前記当量比が2〜50の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記当量比が10〜30の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記芳香族化合物が、芳香族水素を有する少なくとも1個の炭化水素芳香族環を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸が重水素−酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
芳香族水素に対する重水素−酸の当量比が0.1〜10の範囲内ある、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記pKaが−2以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)が室温および大気圧で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)が24時間以下にわたり行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)が2時間以下にわたり行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(c)前記第1の重水素化材料を単離する工程と、
(d)第2の重水素化溶媒に前記第1の重水素化材料を溶解または分散させて、第2の液体組成物を生成させる工程と、
(e)1以下のpKaを有する第2の酸で前記第2の液体組成物を処理して、第2の重水素化材料を生成させる工程と、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2013−508360(P2013−508360A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535184(P2012−535184)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/068924
【国際公開番号】WO2011/053334
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】