説明

重症筋無力症の治療方法

本発明は、不適切な補体活性化に関連する疾患の治療、特に重症筋無力症の治療における、補体タンパク質C5に結合する剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不適切な補体活性化に関連する疾患の治療、特に重症筋無力症の治療における補体タンパク質C5に結合する剤の使用に関する。
【0002】
明細書本文において言及され、本明細書の最後にリストで示す全ての文献を、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【背景技術】
【0003】
補体系は、異物の侵入に対する身体の自然防御機構の重要な一部分であり、炎症プロセスにも関係するものである。血清中及び細胞表面の30を越えるタンパク質は、補体系の機能及び調節に関係している。有益なプロセスと病的なプロセスの双方に関連する可能性を有する補体系の約35の公知成分と同様、補体系自体が、血管形成、血小板活性化、糖代謝及び精子形成と同様に多様な機能を有する少なくとも85種の生物学的経路と相互作用することが最近明らかになってきた(マステロス,D.(Mastellos, D.)ら、Clin Immunol, 2005. 115(3): p.225-35)。
【0004】
補体系は、異種抗原の存在下で活性化される。3種の活性化経路:(1)IgM及びIgGの複合体によって、或いは炭水化物の認識によって活性化される古典経路;(2)非自己の表面(特定の調節分子を欠く)によって、並びに細菌内毒素によって活性化される代替経路;及び(3)病原体の表面上のマンノース残基へのマンナン結合レクチン(MBL)の結合によって活性化されるレクチン経路、が存在する。この3種の経路には、急性炎症メディエーター(C3a及びC5a)の放出並びに細胞膜傷害複合体(MAC)の形成の原因となる、細胞表面上の類似のC3コンベルターゼ及びC5コンベルターゼの形成による補体活性化の発生の原因となるイベントの平行したカスケードがある。古典経路及び代替経路に関係する平行したカスケードについては、図1に示す。
【0005】
補体は、望ましくない局所的組織破壊につながる一定の状況の下で不適切に活性化する可能性がある。急性膵炎、アルツハイマー病、アレルギー性脳脊髄炎、同種移植、喘息、成人呼吸窮迫症候群、火傷、クローン病、糸球体腎炎、溶血性貧血、血液透析、遺伝性血管浮腫、虚血再潅流障害、多系統臓器不全、多発性硬化症、重症筋無力症、虚血性発作、心筋梗塞、乾癬、関節リウマチ、敗血症性ショック、全身性エリテマトーデス、卒中発作、血管漏出症候群、移植拒絶、並びに心肺バイパス手術における不適切な免疫応答等の、多種多様な疾患及び障害において、不適切な補体活性化が役割を果たすことは、明らかにされてきた。このように、長年の間、補体系の不適切な活性化は治療的介入の標的となってきており、異なる補体カスケードを標的とする補体阻害剤が、治療に用いるために数多く開発中である。
【0006】
虚血性発作及び心筋梗塞において、身体は、脳又は心臓の死んだ組織を異物と認識し補体を活性化するが、これは更なる局部損傷をもたらしてしまう。同様に、心肺バイパス手術において身体は機械のプラスチック表面を異物と認識し補体を活性化させ血管障害を招く可能性がある。自己免疫疾患では、身体は誤って自分自身を異物と認識し補体を活性化して局部組織の損傷をもたらす(例えば、関節リウマチにおける関節破壊や重症筋無力症における筋力低下)。
【0007】
重症筋無力症は、進行性疲労、筋緊張の喪失、並びに麻痺の拡大をもたらす慢性自己免疫疾患である。これらの症状は補体の不適切な活性化に起因し、その活性化はニコチン性アセチルコリン受容体(AchR)に対して向けられる免疫応答を招き、その結果として神経筋伝達の低下につながる。重症筋無力症は、関節リウマチ及びエリテマトーデスだけでなく、胸腺腫瘍や甲状腺中毒症等の他の疾患に関連して発現することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
重症筋無力症の治療法は、現在のところ存在しない。この疾患は、通常、臭化ネオスチグミン(Prostigmin)及び臭化ピリドスチグミン(Mestinon)等の抗コリンエステラーゼ剤を最初に用いて治療され、これらの剤は、神経筋伝達の改善並びに筋力の増加に役立つ。しかし、抗コリンエステラーゼ剤を用いる治療は、アセチルコリン蓄積から生じる有害副作用と関連しており、その有害副作用としては、胃腸管系の愁訴並びに気管支及び口内分泌増加が挙げられる。更に、抗コリンエステラーゼ剤は、しばしば症状の改善をもたらすものの、疾患の経過に影響を与えるわけではない。抗コリンエステラーゼ剤に反応しない患者には、コルチコステロイド・プレドニゾン等の免疫抑制薬、或いはシクロスポリン、アザチオプリン及びシクロホスファミド等の他の免疫抑制薬を長期に投与する場合もある。しかし、これらの免疫抑制薬は、重篤な副作用と関連している。コルチコステロイドの副作用としては、体重増加、骨粗鬆症、高血圧症及び緑内障が挙げられる。アザチオプリン及びシクロスポリンは、肝機能不全並びに悪性腫瘍のリスク増加と関連している。場合によっては、薬物に代わるものとして胸腺摘除が勧められるが、その反応は予測不可能であり、疾患の症状は手術後に数ヶ月間又は数年間続く可能性がある。
【0009】
実験的自己免疫性重症筋無力症(EAMG)は、動物モデルにおいて純化したAChR抗体又は抗AChR抗体による免疫化によって誘発させることが可能であり、このモデルは、補体阻害剤が疾患進行に及ぼす効果を評価することに有用である。補体阻害剤の可溶性補体受容体1(sCR1)によって体重減少が遅延し、EAMGの臨床徴候が減少することが明らかにされ、このことは、この分子が重症筋無力症の治療に有用である可能性を示唆している(ピドレスデン(Piddlesden)ら、J. Neuroimmunol., 1996, 71: 173-177)。しかし、これらの効果を得るにはsCR1を毎日注射する必要があり、sCR1によって体重減少が緩和したものの、完全に防止できるわけではなかった。従って、sCR1は、重症筋無力症の症状を完全に防げるものではない。
【0010】
更にまたsCR1は、補体カスケードの初期産物C3b、C4bとの結合によって作用する。補体系は、病原体に対する防御に重要且つ有益な役割を果たし、カスケードの初期副産物の多くは、病原菌の認識及びオプソニン作用に重要である。このために、古典経路及び代替経路の比較的早期の段階における治療的介入には、微生物感染に対する感受性が増加するリスクが伴うと考えられる(ルース,A.(Roos, A.)ら、Immunobiology, 2002, 205(4-5): p.595-609)。
【0011】
このように、現在行われている重症筋無力症の治療を改善する剤が強く要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って本発明は、重症筋無力症を治療又は予防する方法であって、補体C5に結合する剤の治療又は予防に有効な量を、それを必要とする被験体に投与することを含む方法を提供するものである。
【0013】
本発明はまた、重症筋無力症を治療又は予防するための医薬の製造における、補体C5に結合する剤の治療又は予防に有効な量の使用を提供するものである。
【0014】
前記剤は、C5コンベルターゼによる補体C5の補体C5aと補体C5b−9への分解を防ぐ作用をすることが好ましい。
【0015】
補体C5タンパク質は、本明細書においてはC5とも称し、C5コンベルターゼ酵素(それ自身C3aから生成される)、即ち代替経路の比較的早期の産物によって分解される(図1)。この分解産物としては、アナフィラトキシンC5a、並びに細胞膜傷害複合体(MAC)としても知られる溶解性複合体C5b−9が挙げられる。C5aは、好中球遊走能及び好酸球遊走能、好中球活性化、毛細血管透過性増加並びに好中球アポトーシスの阻害を含む多くの病理的炎症過程に関係する高反応性ペプチドである(グオ,R.F.(Guo, R.F.)及びワード,P.A.(P.A. Ward)、Annu Rev Immunol, 2005, 23: p.821-52)。
【0016】
MACは、関節リウマチ(ノイマン,E.(Neumann, E.)ら、Arthritis Rheum, 2002. 46(4): p.934-45; ウィリアムス,A.S.,(Williams, A.S.)ら、Arthritis Rheum, 2004, 50(9): p.3035-44)、増殖性糸球体腎炎(クイク゛,R.J.(Quigg, R.J.)、Curr Dir Autoimmun, 2004. 7: p.165-80)、特発性膜性腎症(パパジアーニ,A.A.(Papagianni, A.A.)ら、Nephrol Dial Transplant, 2002, 17(1): p.57-63)、タンパク尿(ヒー,C.(He, C.)ら、J Immunol, 2005. 174(9): p.5750-7)、急性軸索損傷後の脱髄(ミード,R.J.(Mead, R.J.)ら、J Immunol, 2002. 168(1): p.458-65)等の他の重要な病理過程と関連しており、異種移植後の急性移植片拒絶の原因ともなる(中島,S.(Nakashima, S.)ら、J Immunol, 2002. 169(8): p.4620-7)。
【0017】
C5aは、補体関連の障害の分野において特段の関心の的になってきた(水野,M.(Mizuno, M.)及びD.S.コール(D.S. Cole)、Expert Opin Investig Drugs, 2005. 14(7): p.807-21)。C5aは多くの疾病と関連していることが周知であるが、ヒトにおけるその欠乏の効果はあまりないように思われる。C5a受容体又はC5a受容体を結合及び阻害するモノクローナル抗体及び低分子は、各種の自己免疫疾患を治療するために開発されてきた。しかし、これらの分子によってMACの放出は阻止されない。
【0018】
対照的に、本発明の第1のアスペクトに係るC5に結合する剤の投与によって、C5aペプチド及びMACは阻害される。驚くべきことに、C5a及びMACの阻害は、重症筋無力症と関連した臨床症状を完全に抑制することが判明した。更に、C5が補体の古典経路及び代替経路の後期の産物であるため、C5の阻害が、カスケードにおける比較的早期の産物を標的とする際の随伴感染のリスクと関連している可能性は低い(アレグレッチ,M.(Allegretti, M.)ら、Curr Med Chem, 2005. 12(2): p.217-36)。
【0019】
C5に結合する剤の能力は、本技術分野で知られている標準的インビトロアッセイ、例えば標識C5を含むゲル上でタンパク質を培養した後にウエスタンブロット法を行うことによって測定することができる。好ましくは、C5に結合する本発明の剤のIC50は0.2mg/mL未満であり、好ましくは0.1mg/mL未満、好ましくは0.05mg/mL未満、好ましくは0.04mg/mL未満、好ましくは0.03mg/mL未満、好ましくは0.02mg/mL、好ましくは1μg/mL未満、好ましくは100ng/mL未満、好ましくは10ng/mL未満、更により好ましくは1ng/mL未満である。
【0020】
好ましくは、C5に結合する剤は、吸血性節足動物に由来する。「吸血性節足動物」という用語には、昆虫、マダニ、シラミ、ノミ及びコダニ等、それぞれに適合した宿主から血粉を取る全ての節足動物が包含される。好ましくは、前記剤はマダニに由来し、好ましくはマダニのカズキダニ(Ornithodoros moubata)に由来する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一実施態様においては、C5に結合する剤は、図2のアミノ酸配列の19〜168番アミノ酸を含むタンパク質であるか又はこのタンパク質の機能的等価物である。C5に結合する剤は、図2のアミノ酸配列の19〜168番アミノ酸から構成されるタンパク質であるか又はこのタンパク質の機能的等価物であることができる。
【0022】
別の一実施態様においては、本発明の本実施態様で用いられるタンパク質は、図2のアミノ酸配列の1〜168番アミノ酸を含む若しくはそれから構成されるか、又はその機能的等価物とすることができる。図2に示すタンパク質の配列の最初の18アミノ酸は、C5に対する結合活性には必要ないシグナル配列を形成することから、例えば組換えタンパク質産生の効率性のために、任意的にこれを省くことができる。
【0023】
図2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質は、本明細書においてEV576タンパク質とも称されるが、マダニのOrnithodoros moubataの唾液腺から単離された。EV576は、リポカリンファミリーの中でも遠縁のメンバーであり、補体活性化を阻害することが明らかにされた最初のリポカリンファミリーのメンバーである。EV576タンパク質はC5に結合することによりC5コンベルターゼによるC5の補体C5aと補体C5b−9への分解を防止し、C5aペプチド及びMACの双方の作用を阻害することにより、補体代替経路、補体古典経路及び補体レクチン経路を阻害する。本明細書で用いられる「EV576タンパク質」という用語は、シグナル配列の有無に拘わらず図2に示される配列を意味する。
【0024】
EV576タンパク質、及び補体の活性化を阻害するこのタンパク質の能力については、WO2004/106369に開示されており、そこではEV576タンパク質は、「OmCIタンパク質」と呼ばれた。EV576タンパク質が重症筋無力症の治療及び予防に驚くほど効果的であることが、このたび明らかになった。本明細書において示すデータは、EV576の単回注射によってマウスのEAMGにおける体重減少及び筋力低下が少なくとも7日間全体的に抑制されることを示している。このように、EV576は、上述のように毎日投与して重症筋無力症の臨床症状を単に低下させるだけのsCR1よりも、EAMGの治療及び予防に効果的である(ピドレスデン(Piddlesden)ら、J.Neuroimmunol.,1996,71:173−177)。重症筋無力症の治療におけるEV576の驚くべき有効性は、C5の結合、それによるC5a及びMACの活性の阻害によってEV576が作用するという事実に起因すると考えられる。更に、本明細書において示すデータは、rEV576が、早期の軽度の重症筋無力症及び重度の後期段階の筋無力症クリーゼのモデルに効果的であることを示している。
【0025】
本発明の更なる実施態様によれば、前記剤は、EV576タンパク質をコードする核酸分子又はその機能的等価物であってよい。例えば、遺伝子治療を用いて、インビボとエクスビボのいずれにおいても被験体内の関連細胞によるEV576タンパク質の体内産生を生じさせることができる。他の一法は、治療遺伝子が血流内又は筋組織内に直接注射された「裸の(naked)DNA」を投与することである。
【0026】
そのような核酸分子は、図2のヌクレオチド配列の53〜507番塩基を含むか又はそれから構成されることが好ましい。このヌクレオチド配列は、図2のEV576タンパク質をシグナル配列なしにコードする。図2のヌクレオチド配列の最初の54塩基は、補体阻害活性に必要ないシグ」ナル配列をコードする。核酸分子はまた、シグナル配列を有するタンパク質をコードする、図2の核酸配列の1〜507番塩基を含むか又はそれから構成されることができる。
【0027】
EV576タンパク質はラット、マウス及びヒトの血清中においてC5と結合してC5コンベルターゼによる分解を防止し、そのIC50は約0.02mg/mLであることが示されている。C5に対する結合能を有するEV576タンパク質の機能的等価物としてはIC50が0.2mg/mL未満であるものが好ましく、好ましくは0.1mg/mL未満、好ましくは0.05mg/mL未満、好ましくは0.02mg/mL未満、好ましくは1μg/mL未満、好ましくは100ng/mL未満、好ましくは10ng/mL未満、更により好ましくは1ng/mL未満である。
【0028】
ラットにおいて125Iで標識したEV576の血清中β半減期は、30〜38時間であることが明らかにされている。好ましくは、EV576タンパク質及びその機能的等価物の半減期は20時間超であり、好ましくは25時間超、好ましくは30時間超、好ましくは40時間超、好ましくは50時間超、好ましくは100時間超である。
【0029】
一観点において、本明細書で用いられる「機能的等価物」という用語は、C5に結合し、C5コンベルターゼによる補体C5の補体C5aと補体C5b−9への分解を防止する能力を有するEV576タンパク質のホモログ及び断片を示す。「機能的等価物」という用語はまた、EV576タンパク質と構造的に同等である分子又はEV576タンパク質と同等若しくは同一の3次構造、特にC5と結合するEV576タンパク質の1箇所以上の活性部位の環境において同等若しくは同一の構造、を含む合成分子等の分子を意味する。
【0030】
「ホモログ」という用語には、図2において明示的に特定されるEV576配列のパラログ及びオーソログという意味が包含されるものとするが、例えばその配列としては、リピケファルス-アッペンジクラトス(Rhipicephalus appendiculatus)、クリイロコイタマダニ(R.sanguineus)、R.bursa、アメリカアムブリオマ(A.americanum)、A.cajennense、ヘブライキララマダニ(A.hebraeum)、オウシマダニ(Boophilus microplus)、ウシマダニ(B.annulatus)、B.decoloratus、アミメカクマダニ(Dermacentor reticulatus)、アンダーソン・カクマダニ(D.andersoni)、D.marginatus、アメリカイヌカクマダニ(D.variabilis)、Haemaphysalis inermisHa.leachii、点状ダニ(Ha.punctata)Hyalomma anatolicum anatolicumHy.dromedariiHy.marginatum marginatumIxodes ricinus、シュルツェマダニ(I.persulcatus)、I.scapularisI.hexagonus、ペルシャダニ(Argas persicus)、ハトヒラタダニ(A.reflexus)、Ornithodoros erraticusO.moubata moubataO.m.porcinus及びO.savignyi等の他のマダニ種からのEV576タンパク質配列が挙げられる。また、「ホモログ」という用語には、イエカ属(Culex)、ハマダラカ属(Anopheles)及びヤブカ属(Aedes)等の蚊種、特にCulex quinquefasciatus、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)及びAnopheles gambiaeCtenocephalides felis(ネコノミ)等のノミ種;ウマバエ;チョウバエ;ブユ;ツェツェバエ;シラミ;コダニ;ヒル;及び扁虫からの同等のEV576タンパク質配列も包含されるものとする。ネイティブEV576タンパク質は、18kDa付近の別の3形態のO.moubataの中に存在すると考えられ、「ホモログ」という用語には、EV576のこれらの他の形態が包含されるものとする。
【0031】
図2に示すEV576配列のホモログの同定方法は当業者に明らかである。例えば、ホモログは、公的及び民間のどちらの配列データベースによっても、そのホモロジー検索によって同定することができる。公的に利用可能なデータベースを使用するのが便利である。但し、特に民間の或いは商業的に利用可能なデータベースが公的なデータベースにないデータを含む場合、民間の或いは商業的に利用可能なデータベースも同様に有用である。一次データベースは、一次ヌクレオチド又はアミノ酸の配列データが蓄積される場所であり、公的に又は商業的に利用可能となっている。公的に利用可能な一次データベースの例としては、GenBankデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)、EMBLデータベース(http://www.ebi.ac.uk/)、DDBJデータベース(http://www.ddbj.nig.ac.jp/)、SWISS−PROTタンパク質データベース(http://expasy.hcuge.ch/)、PIR(http://pir.georgetown.edu/)、TrEMBL(http://www.ebi.ac.uk/)、TIGRデータベース(http://www.tigr.org/tdb/index.htmlを参照すること)、NRL−3Dデータベース(http://www.nbrfa.georgetown.edu)、Protein Data Base(http://www.rcsb.org/pdb)、NRDBデータベース(ftp://ncbi.nlm.nih.gov/pub/nrdb/README)、OWLデータベース(http://www.biochem.ucl.ac.uk/bsm/dbbrowser/OWL/)等が挙げられ、並びに二次データベースとしては、PROSITE(http://expasy.hcuge.ch/sprot/prosite.html)、PRINTS(http://iupab.leeds.ac.uk/bmb5dp/prints.html)、Profiles(http://ulrec3.unil.ch/software/PFSCAN_form.html)、Pfam(http://www.sanger.ac.uk/software/pfam)、Identify(http://dna.stanford.edu/identify/)及びBlocks(http://www.blocks.fhcrc.org)データベース等が挙げられる。商業的に利用可能なデータベース又は民間のデータベースの例としては、PathoGenome(ゲノム・セラピューティックス社)及びPathoSeq(インサイト・ファーマシューティカルズ社)等が挙げられる。
【0032】
一般に、2種のポリペプチド間(好ましくは、活性部位等の特定領域上)の同一性が30%を超える場合、これは機能的等価性を示唆していると判断され、従って2種のタンパク質が相同的であることが示唆される。好ましくは、ホモログであるタンパク質は、図2に示すEV576タンパク質配列との配列同一性の程度が60%を超えるものである。より好ましいホモログは、図2に示すEV576タンパク質配列との同一性の程度が、それぞれ70%、80%、90%、95%、98%又は99%を超えるものである。本明細書においては、パーセントによる同一性とは、NCBI(国立バイオテクノロジー情報センター;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)が指定しているデフォルトパラメータを用いるBLASTバージョン2.1.3を用いて測定されるものである[Blosum62マトリックス;ギャップ・オープン・ペナルティ=11及びギャップ・エクステンション・ペナルティ=1]。
【0033】
図2に示すEV576タンパク質配列のホモログとしては、例えば1、2、3、4、5、7、10以上の多くのアミノ酸の野生型配列からアミノ酸が置換、挿入又は欠失した変異体が挙げられるが、これは、これら変異体がC5に結合する能力を有する場合に限る。従って、変異体としては、有害な方法でタンパク質の機能又は活性に影響を与えることのない保存的アミノ酸置換を含むタンパク質が挙げられる。この用語はまた、天然の生物学的変異体(例えばEV576タンパク質が由来する種の範囲内の対立遺伝子変異体又は地理的変異体)を含むものとする。C5に結合する能力が改善した変異体は、タンパク質配列内の特異的残基の計画的な又は誘導された変異によって設計することもできる。
【0034】
EV576タンパク質の断片、並びにEV576タンパク質のホモログの断片は、もしその断片がC5に結合する能力を有しているならば、「機能的等価物」の用語に包含される。断片としては、150未満のアミノ酸、125未満のアミノ酸、100未満のアミノ酸、75未満のアミノ酸、50未満のアミノ酸、或いは更に25以下のアミノ酸であるEV576タンパク質配列に由来するポリペプチドを挙げることができるが、それは、これらの断片が補体C5と結合する能力を有している場合に限る。このような断片としては、上述のように、図2において本明細書で明示的に同定されているO.moubataのEV576タンパク質の断片だけでなく、このタンパク質のホモログの断片も挙げられる。ホモログのこのような断片は、一般に図2のEV576タンパク質配列の断片との同一性が60%を超えるものである。但し、より好ましくは、ホモログの断片は、図2のEV576タンパク質配列の断片との同一性の程度がそれぞれ70%、80%、90%、95%、98%又は99%超を示すものである。勿論、改善された断片は、野生型配列の計画的な変異又は断片化の後、適切な活性アッセイによって合理的に設計することができる。断片はEV576と比べて、C5に対する親和性が同等以上である場合やC5に対するIC50が同等以上である場合がある。
【0035】
本発明に従って用いられる機能的等価物は融合タンパク質であってよく、それは、例えば異種タンパク質配列のためのコード配列にEV576タンパク質をフレーム単位でコードするポリヌクレオチドのクローン化によって得られる。「異種」という用語は、本明細書において用いられる場合、EV576タンパク質又はその機能的等価物以外の全てのポリペプチドを示すものとする。N末端かC末端のいずれかの可溶性融合タンパク質に含まれ得る異種配列の例としては:膜結合型タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリン定常部領域(Fc領域)、多量体化ドメイン、細胞外タンパク質のドメイン、シグナル配列、エクスポート配列、或いは親和性クロマトグラフィーによる精製を可能にする配列等が挙げられる。これらの配列は、それらに融合するタンパク質の特異的生物活性を大きく低下させることなく追加特性を付与するために融合タンパク質に共通に含まれることから、発現プラスミド内のこれらの異種の配列の多くは、商業的に入手可能である(テルペK(Terpe K)、Appl Microbiol Biotechnol, 60: 523-33, 2003)。このような追加特性の例としては、体液内でより長く続く半減期、細胞外局所化、或いはヒスチジン又はHAタグ等のタグによって可能となるより簡単な精製方法等が挙げられる。
【0036】
EV576タンパク質及びその機能的等価物は、宿主細胞における発現によってリコンビナント形態で調製することができる。このような発現方法は、当業者によく知られており、サンブルック(Sambrook)らの文献(2000)やフェルナンデスとホーエフラー(Hoeffler)の文献(1998)に詳述されている。EV576タンパク質及びその機能的等価物のリコンビナント形態物は、好ましくは非グリコシル化される。
【0037】
本発明のタンパク質及び断片は、タンパク質化学の従来方法を用いて調製することもできる。例えばタンパク質断片は、化学合成によって調製することができる。融合タンパク質の生成方法は、本技術分野において標準的なものであり当業者によく知られている。例えば、一般的な分子生物学的、微生物学的組換えDNA技術及び免疫学的技法の多くは、サンブルック(Sambrook)らの文献(2000)やオースベル(Ausubel)らの文献(1991)に見ることができる。
【0038】
本発明の方法又は使用においてC5に結合する剤が投与される被験体は、好ましくは哺乳類、好ましくはヒトである。また、C5に結合する剤が投与される被験体は、胸腺腫瘍、甲状腺中毒症、関節リウマチ及びエリテマトーデス等の、重症筋無力症に関連する更なる疾患も患っていてよい。
【0039】
前記剤は治療的又は予防的に有効な量で投与される。「治療的に有効な量」という用語は、対象となる疾患を治療又は改善するために必要な剤の量をいう。本明細書において用いられる「予防的に有効な量」という用語は、対象となる疾患を予防するために必要な剤の量をいう。
【0040】
好ましくは、前記剤の投与量は、被験体内においてできる限り多くの利用可能なC5、より好ましくは全ての利用可能なC5に結合するのに十分な量である。好ましくは、提供される前記剤の投与量は、被験体内の全ての利用可能なC5に結合するために必要なモル投与量の少なくとも2倍である。提供される前記剤の投与量は、被験体内の全ての利用可能なC5に結合するために必要なモル投与量の2.5倍、3倍、又は4倍とすることができる。一実施態様においては、前記投与量は、1mg/kg〜15mg/kgである。好ましくは、前記投与量は、1mg/kg(薬物の質量対患者の質量)〜10mg/kg、好ましくは2mg/kg〜8mg/kgである。
【0041】
必要な投与頻度は、関係する剤の半減期によって決まる。前記剤がEV576タンパク質又はその機能的等価物である場合、その投与は、1日1回、1日2回、或いは2、3、4日に1回、更には5、6、7、10、15又は20日以上毎に1回行うことができる。
【0042】
正確な用量及び投与頻度は、投与時の患者の状態によって決めてもよい。用量を決定する際に考慮し得る要素としては、患者の疾病状態の重症度、患者の健康状態、年齢、体重、性別、食事、投与期間及び投与頻度、薬物の併用、反応感度、及び治療に対する患者の忍容性又は反応が挙げられる。正確な量は、ルーチン試験で決定することができるが、最終的には臨床医に判断する責任がある。
【0043】
前記剤は、医薬的に許容しうる担体の一部として一般的に投与されるものである。本明細書において用いられる用語「医薬的に許容しうる担体」は、担体自体が毒性影響を誘起することがなく且つ医薬組成物が投与を受ける個体に有害な抗体の産生の原因となることがない限り、遺伝子、ポリペプチド、抗体、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、不活性ウイルス粒子、その他の剤を包含する。医薬的に許容しうる担体には更に、水や生理的食塩水、グリセロール、エタノール等の液体、湿潤剤や乳化剤、pH緩衝物質等の補助物質等を含有させることができる。よって、投与経路に応じて用いられる医薬担体は様々である。医薬組成物は担体によって、患者による摂取を助ける錠剤、丸剤、糖剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤に調製することができる。医薬的に許容しうる担体については、レミントン(Remington)の文献Pharmaceutical Sciences (Mack Pub.社、N.J.1991)に詳細な考察を見ることができる。
【0044】
前記剤は、公知のいずれの投与経路によっても送達することができる。前記剤は、非経口経路(例えば皮下、腹腔内、静脈内又は筋肉内における注射、又は組織の間質腔への送達)によって送達することができる。また、前記組成物は病変部に投与することもできる。その他の投与形態としては、経口及び肺内投与、坐薬、経皮性又は経皮的塗布、針、ハイポスプレー等を挙げることができる。
【0045】
C5に結合する前記剤は単独で投与するか、又は重症筋無力症患者の治療に現在使用されている他の薬物の投与も伴う治療計画の一部として投与することもできる。例えば前記剤は、ネオスチグミン及びピリドスチグミン等の抗コリンエステラーゼ剤、又はプレドニゾン、サイクロスポリン及びアザチオプリン等の免疫抑制薬と共に投与することができる。各薬物治療を組合わせることにより、疾患の治療に対する相加効果又は相乗効果がある場合がある。
【0046】
従って本発明は、治療における使用のための(i)C5に結合する剤、好ましくはEV576タンパク質又はその機能的等価物、及び(ii)抗コリンエステラーゼ剤及び/又は免疫抑制薬を提供するものである。
【0047】
本発明はまた、重症筋無力症を治療するための医薬の製造における(i)C5に結合する剤、好ましくはEV576タンパク質又はその機能的等価物、及び(ii)抗コリンエステラーゼ剤及び/又は免疫抑制薬の使用を提供するものである。
【0048】
C5に結合する前記剤は、他の(一種以上の)薬物と同時に、順次的に、又は別々に投与することができる。例えば、C5に結合する前記剤は他の(一種以上の)薬物の投与前又は投与後に投与することができる。
【0049】
従って本発明は、被験体における重症筋無力症を治療するための医薬の製造におけるC5に結合する剤、好ましくはEV576タンパク質又はその機能的等価物の使用を提供するものであって、ここで前記被験体は、抗コリンエステラーゼ剤及び/又は免疫抑制薬による治療を予め受けているものである。本発明はまた、被験体における重症筋無力症を治療するための医薬の製造における抗コリンエステラーゼ剤及び/又は免疫抑制薬の使用を提供するものであって、ここで前記被験体は、C5に結合する剤、好ましくはEV576タンパク質又はその機能的等価物による治療を予め受けているものである。
【0050】
C5に結合する前記剤は、重症筋無力症が関連する他の疾患(例えば胸腺腫瘍、甲状腺中毒症、関節リウマチ、エリテマトーデス)の治療に現在使用されている他の薬物の投与も伴う治療計画の一部として投与することもできる。C5に結合する前記剤は、他の(一種以上の)薬物と同時に、順次的に又は別々に投与することができる。例えばC5に結合する前記剤は、他の(一種以上の)薬物の投与前又は投与後に投与することができる。
【0051】
次に、実施例を挙げて本発明の各アスペクト及び実施態様をより詳細に説明する。本発明の範囲から逸脱することなく細部を変更することができることを理解されたい。
【実施例】
【0052】
1.作用機序及び阻害濃度
WO2004/106369に開示されているように、EV576は、ヒメダニ類のOrthinodoros moubataの唾液腺抽出物を用いて、古典的溶血アッセイ(図3)により補体阻害活性があることが判明した唾液腺抽出物フラクションをSDS−PAGE及びRP−HPLCに付すことにより精製した。
【0053】
EV576は、ヒトとモルモットの両方の古典的経路及び代替経路を阻害する。EV576は、C3aの産生速度には影響を及ぼさないが(図4A)C5からC5aへの分解を防止する(図4B)。
【0054】
補体の古典経路と代替経路を阻害するEV576の能力は、補体C5(C5aとC5b−9の前駆体)に分子が結合することによりもたらされる。EV576は、IC50約0.02mg/mLでC5に直接結合する(図4C)。各種血清因子が演じる正確な結合機構と副次的役割(あるとすれば)は研究中である。
【0055】
グリコシル化部位が除去された組換えEV576(rEV576)(除去されていない場合は酵母発現系においてグリコシル化される)は、非グリコシル化ネイティブタンパク質と同程度の活性を有する(図5A)。
【0056】
EV576はその構造からリポカリンファミリーの中でも遠縁のメンバーであることが確認され、モウバチン(O.moubata由来の血小板凝集阻害剤)との同一性は46%である(図5B)。リポカリンはヒメダニ類のタンパク質の巨大な群であり、その機能については稀な例外を除いて不明である。
【0057】
2.半減期
ラットにおける125I標識rEV576の血清中β半減期は約30〜38時間であった。
【0058】
3.実験的自己免疫性重症筋無力症に対するEV576の効果
実験1
実験的自己免疫性重症筋無力症(EAMG)は、ピドレスデン(Piddlesden)らの文献(前述)の方法に従い雌性ルイスラットにおいて誘起した。
【0059】
Day0でルイスラットにi)rEV576を3.25mg((全ての利用可能なC5に結合するために必要なモル投与量)を2.5倍することにより計算)又はii)PBSのいずれかと共に、抗AchR mAb35を1mg/kg腹腔内注射した。このラットについて、体重及び臨床スコアの変化を7日間に亘って評価した(図6)。
【0060】
mAb35により誘起される体重減少及び筋力低下は、rEV576を3.25mg注射することによって対照と比べ全体的に抑制された。
【0061】
対照動物は全て、誘起後72時間で瀕死状態となり安楽死させる必要があったが、rEV576投与ラットは全て生存し体重が増加して実験期間中(183時間)に筋力低下は認められなかった(図6)。
【0062】
従って、rEV576の単回注射によりEAMGの症状が少なくとも7日間完全に抑制された。
【0063】
実験2
rEV576はEAMGの慢性モデルを用いて更に分析した。このモデルにおいて、動物はアセチルコリン受容体タンパク質−フロイント完全アジュバント(CFA)の投与を受けており、約30日に亘って自己抗体を生成する。このモデルは、症状の発現と進行が比較的遅いヒトの状態を模倣する。
【0064】
ルイスラット18匹に精製済みアセチルコリン受容体タンパク質(2×20μgタンパク質−PBS(100μL)(同体積フロイント完全アジュバント+無成育性のヒト型結核菌(0.5mg)中に乳化))を皮下注射することより免疫した。対照ラットにはPBSのみを注射した。
【0065】
疾患の発症後(EAMG臨床スコア:1又は2、体重減少<15%)、rEV576を3.25mgラット9匹に腹腔内注射し、その後1mgの投与を12時間毎に10日間継続した。これらのラット9匹の内の3匹のラットには重度の筋無力症(S−EAMG)が認められ、6匹のラットには軽度の筋無力症(M−EAMG)が認められた。
【0066】
残りのラット9匹は処理しなかった。これらのラット9匹の内の4匹のラットには重度の筋無力症(S−EAMG)が認められ、5匹のラットには軽度の筋無力症(M−EAMG)が認められた。
【0067】
2組のラット群をそれぞれ10日間に亘って、体重、握力及び臨床スコアの変化について評価した。
【0068】
重度EAMG群の各ラットは体重が12%減少し、rEV576の投与開始後24時間以内に死亡した。未処理ラットは24時間以内に全て死亡した。rEV576処理ラットは体重減少が有意に抑制された。Day33におけるrEV576の投与開始時の平均臨床スコアは2.0であった。10日間rEV576を注射することにより、臨床症状の重症度が低下すると共に更なる体重減少が防止された(図7A)。これらのラットは握力も有意に改善した(図7B)。
【0069】
軽度で初期段階のEAMGを示すラットでは、Day33に臨床徴候が見られ始め体重低下が始まった。rEV576処理ラットにでは体重減少が防止され、平均して体重の約3.43%の増加が認められた。同じ臨床スコアの未処理動物では体重の約4.59%が減少した(図7C)。軽度で初期段階のEAMGを示す未処理ラットと比較して処理ラットの握力は改善しなかった(結果は示さず)。
【0070】
ラットから血液を採取しAchR抗体の検出と補体溶血活性の評価を行った。ダイレクトELISAによって検出されるAchR抗体は実験群間に差はなかった(図8A)。rEV576で処理した重度及び軽度のEAMGを示す各ラットから採取したラット血清により補体活性は完全に阻害された(図8B)。
【0071】
更に、重度及び軽度のEAMGを示すラットから採取したラット血清を用い、細胞障害をToxiLightバイオアッセイキットにより横紋筋肉腫細胞株(ATCC、CCL−136)で測定した。図9A及び9Bで分かるように、重度EAMGを示す未処理ラットで検出された細胞障害が最も高かった。rEV576で処理された動物は細胞毒性活性が有意に低下した。
【0072】
このデータは、rEV576は早期で軽度の重症筋無力症及び重度で後期段階の疾患(例えば筋無力症クリーゼ)の両方の治療に有効である可能性を示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】補体活性化の古典経路及び代替経路の概略図。酵素成分はダークグレーで示し、アナフィラトキシンは星形で囲んで示す。
【図2】EV576の一次配列。シグナル配列に下線を施す。システイン残基を太字で示す。ヌクレオチド番号とアミノ酸番号を右側に示す。
【図3A】EV576のマダニ唾液腺抽出物(SGE)からの精製。A)陰イオン交換クロマトグラフィー。
【図3B】EV576のマダニ唾液腺抽出物(SGE)からの精製。B)フラクションの古典的溶血アッセイ。
【図3C】EV576のマダニ唾液腺抽出物(SGE)からの精製。C)還元型SDS−PAGE。
【図3D】EV576のマダニ唾液腺抽出物(SGE)からの精製。D)RP−HPLC。
【図4A】EV576の作用機序。A)C3a産生に影響なし。
【図4B】EV576の作用機序。B)C5a産生の防止。
【図4C】EV576の作用機序。C)C5と直接結合。
【図5A】組換えEV576。A)組換えEV576(rEV576)によって、補体はネイティブEV576と同程度に効果的に阻害される。
【図5B】組換えEV576。B)EV576の構造。
【図6A】実験的重症筋無力症モデルにおけるrEV576の効果。A)rEV576は、対照動物と比較して体重減少を防止する。
【図6B】実験的重症筋無力症モデルにおけるrEV576の効果。B)対照動物と比較したrEV576処理動物の臨床スコア。
【図6C】実験的重症筋無力症モデルにおけるrEV576の効果。C)臨床スコアのための原データ。
【図7A】慢性的実験的重症筋無力症モデルにおけるrEV576の効果。A)重度のEAMGの動物において、rEV576は対照動物と比較して体重減少と死亡を防止する。
【図7B】慢性的実験的重症筋無力症モデルにおけるrEV576の効果。B)重度のEAMGの動物において、rEV576処理は対照動物と比較して臨床スコアと握力に大きな改善をもたらす。
【図7C】慢性的実験的重症筋無力症モデルにおけるrEV576の効果。C)軽度のEAMGの動物において、rEV576は対照動物と比較して体重減少を防止する。
【図8A】慢性的実験的重症筋無力症モデルのrEV576の効果。A)AchR抗体は、処理群、未処理群、軽度EAMG群又は重度EAMG群の間で差がなかった。
【図8B】慢性的実験的重症筋無力症モデルのrEV576の効果。B)重度及び軽度のEAMGを示すラットから採取したラット血清の全補体溶血活性。
【図9A】慢性的実験的重症筋無力症モデルのrEV576の効果。A)重度EAMGを示すラットから採取したラット血清の細胞障害。
【図9B】慢性的実験的重症筋無力症モデルのrEV576の効果。B)軽度EAMGを示すラットから採取したラット血清の細胞障害。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重症筋無力症を治療又は予防する方法であって、補体C5に結合する剤の治療又は予防に有効な量を、それを必要とする被験体に投与することを含む方法。
【請求項2】
重症筋無力症を治療又は予防するための医薬の製造における、補体C5に結合する剤の治療又は予防に有効な量の使用。
【請求項3】
前記剤は、補体C5がC5コンベルターゼによって補体C5aと補体C5b−9とに分解されるのを防ぐ作用をする、請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記剤はIC500.2mg/mL未満でC5に結合する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項5】
前記剤は吸血性節足動物に由来する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項6】
C5に結合する前記剤は、図2のアミノ酸配列の19〜168番アミノ酸を含む若しくはそれから構成されるタンパク質であるか、又はこのタンパク質の機能的等価物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項7】
C5に結合する前記剤は、図2のアミノ酸配列の1〜168番アミノ酸を含む若しくはそれから構成されるタンパク質であるか、又はこのタンパク質の機能的等価物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項8】
前記剤は、請求項6又は7に記載のタンパク質をコードする核酸分子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項9】
前記核酸分子は、図2のヌクレオチド配列の53〜507番塩基を含むか又はそれから構成される、請求項8に記載の方法又は使用。
【請求項10】
前記核酸分子は、図2のヌクレオチド配列の1〜507番塩基を含むか又はそれから構成される、請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項11】
前記被験体は哺乳類であり、好ましくはヒトである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項12】
前記剤は、被験体内においてできる限り多くの利用可能なC5、より好ましくは全ての利用可能なC5に結合するのに十分な用量で投与される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項13】
前記剤は、体重減少及び/又は筋力低下を抑制するのに十分な用量で投与される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項14】
前記剤は1mg/kg〜15mg/kgの用量で投与される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項15】
前記剤は13mg/kgの単回用量で腹腔内投与される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項16】
前記剤は、13mg/kgの用量で腹腔内投与された後、12時間毎に4mg/kgの用量で投与される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項17】
C5に結合する前記剤は、重症筋無力症の治療のための他の薬物の投与も伴う治療計画の一部として投与される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項18】
前記他の薬物は、ネオスチグミン及びピリドスチグミン等の抗コリンエステラーゼ剤、又はプレドニゾン、サイクロスポリン及びアザチオプリン等の免疫抑制薬である、請求項17に記載の方法又は使用。
【請求項19】
C5に結合する前記剤は、他の薬物と同時に、順次的に又は別々に投与される、請求項17又は請求項18に記載の方法又は使用。
【請求項20】
前記重症筋無力症は軽度の重症筋無力症又は重度の重症筋無力症である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法又は使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【公表番号】特表2009−508819(P2009−508819A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529680(P2008−529680)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003265
【国際公開番号】WO2007/028968
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(505445016)エヴォルーテック・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】