説明

重縮合樹脂の製造方法

【課題】芳香族モノマーまたは脂環族モノマーを用いた重縮合樹脂を製造する方法を提供する。
【解決手段】亜臨界二酸化炭素もしくは超臨界二酸化炭素雰囲気下で芳香族モノマーまたは脂環族モノマーを用いて溶融重縮合することで、分子量分布が1.8以下の均質な重縮合樹脂を得ることを特徴とする重縮合樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂など重縮合樹脂の製造方法に関し、さらに詳しくは超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素中で溶融重縮合を行うポリエステル樹脂やポリアミド樹脂などの重縮合樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETという)に代表されるポリエステル樹脂は、優れた機械的性質及び化学的特性に加え、その優れた透明性、ガスバリア性、安全衛生性等を生かして、射出成形したプリフォームを延伸ブロー成形したボトル等として、又、押出成形したシートを熱成形したトレイやカップ等として、或いは該シートを二軸延伸したフィルム等として、特に食品包装分野において広く利用されている。
【0003】
また、ポリアミド樹脂であるポリメタキシリレンアジパミド(以下、ポリアミドMXD6という)は、強度、弾性率、および酸素、炭酸ガス等のガス状物質に対するバリア性に優れている。それ故、ガスバリア性を向上させる目的で、包装材料のガスバリア材料としてとして広く利用されている。また、ポリアミドMXD6は、その他のガスバリア性樹脂と比べて溶融時の熱安定性が良好であることから、PETやナイロン6およびポリプロピレンなど種々の熱可塑性樹脂との共押出や共射出成形等が可能であり、多層構造物のガスバリア層としての利用が積極的に進められている。
【0004】
前記ポリエステル樹脂は、テレフタル酸などのジカルボン酸またはそのエステル誘導体と、エチレングリコールなどのジオールまたはそのエステル誘導体とをエステル化反応させた後、エステル化物を重縮合触媒の存在下で重縮合反応させることにより製造されている。
また、ポリアミド樹脂は、メタキシリレンジアミンなどのジアミン成分と、アジピン酸などのジカルボン酸成分をナイロン塩にして加圧下にて溶融重縮合を行う製造方法、ジアミン成分を加熱溶融させたところに、ジアミン成分を連続的に的かし、縮合水を除去しながら重縮合させることにより製造されている。
【0005】
このようなポリエステル樹脂やポリアミド樹脂は原料モノマーを溶融重縮合することにより得られる重縮合樹脂であるが、PETの原料モノマーであるテレフタル酸や、ポリアミドMXD6の原料モノマーであるメタキシリレンジアミンは芳香環を有するモノマーであり、その融点が高く溶融しにくいため、重合が難しく、十分な分子量の重縮合樹脂を得ることが困難であった。
【0006】
従来は、その融点が高いため溶融しにくいモノマーを用いた重縮合反応では、極性溶媒を用いた重縮合が実施されていたが、樹脂溶媒の除去が煩雑であったり大量の廃液の排出の問題、さら樹脂中への溶媒の残留などの問題があるため食品用途用の樹脂として用いることが難しいといった問題があった。
【0007】
近年、二酸化炭素や水などを臨界点近傍もしくはそれ以上の高温・高圧状態にすることで、気体の拡散性と液体の溶解性を持ち合わせた状態(超臨界状態)となり、食品の固有成分の抽出、樹脂の分解、染料を用いた様々なものの染色、樹脂の発泡成形、射出成形時の転写性の向上などに利用されている。
【0008】
超臨界二酸化炭素を用いた反応として、特許文献1では、ポリエステルの溶融重合工程の後に、前記溶融重合工程により得られたポリエステルを二酸化炭素の超臨界流体と接触させてアセトアルデヒドを抽出し、ポリエステル樹脂中のアセトアルデヒド含有量を減少させるポリエステルの製造方法が記載されている。また、特許文献2では、超臨界水または亜臨界水をポリエステル樹脂と接触させることにより、ポリエステル樹脂の加水分解を行い、生成したジカルボン酸とジアミンとを重縮合反応させてポリアミドを得る製造方法に関する記載がされている。
しかしながら、融点が高いため通常の溶融重合法では重縮合反応の進行が遅い特定のモノマーを用いた重縮合樹脂の製造に、超臨界二酸化炭素を利用するという方法は見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−132958号公報
【特許文献2】特開2003−292616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、芳香族モノマーや脂環族モノマーなど、原料となるモノマーの融点が高いため溶融しづらく、そのため十分な分子量のポリマーを得ることが困難である重縮合樹脂を製造するに際して、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素中で溶融重縮合を行うことにより、十分な分子量のポリマーを得ることが可能であり、かつ得られたポリマーの分子量分布が1.8以下の均質な重縮合樹脂を得ることができる重縮合樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、亜臨界二酸化炭素中または超臨界二酸化炭素中で、溶融重縮合反応を行い、ポリアミド樹脂またはポリエステル樹脂を得ることを特徴とする重縮合樹脂の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の重縮合樹脂の製造方法は、溶融しにくい芳香族モノマーや脂環族モノマーを用いた重縮合樹脂を製造することが可能である。また、本発明に係る製造方法により得られた重縮合樹脂は、分子量分布が1.8以下の均質なポリマーであるため、成形加工性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現する物質として具体的な化合物を例示する場合があるが、本発明はこれに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0014】
(亜臨界二酸化炭素または超臨界二酸化炭素下での重縮合)
本発明に係る重縮合樹脂の製造方法では、超臨界二酸化炭素中または亜臨界二酸化炭素中で原料となるモノマーの溶融重縮合反応を行う。
ここで、超臨界二酸化炭素とは、臨界温度以上で、かつ臨界圧力以上の二酸化炭素の状態であり、より具体的には二酸化炭素の臨界温度(304,1K)および臨界圧力(7.38MPa)以上の温度及び圧力範囲をいう。また亜臨界二酸化炭素とは、臨界点(臨界温度、臨界圧力)よりもやや低い温度、圧力の状態をいう。
本発明において、融点の高い芳香族モノマーや脂環族モノマーを原料として用いて超臨界二酸化炭素中または亜臨界二酸化炭素中で重縮合反応を行うことにより、超臨界または亜臨界二酸化炭素流体中への芳香族モノマーや脂環族モノマーの溶解性が高まるため、重縮合反応が進行しやくすくなり、その結果、得られる重縮合樹脂は高い分子量まで到達することが可能になる。
さらに、芳香族モノマーや脂環族モノマーが超臨界流体中に効率よく溶解するため、重縮合反応が均一に進行しやすく、その結果得られるポリマーの分子量分布が1.8以下の均質な重縮合樹脂にすることが可能となる。
【0015】
本発明の製造方法に係る超臨界重合装置としては、特に限定されるものではないが、超臨界二酸化炭素中で重合反応を行うための耐圧容器と、液体二酸化炭素ボンベと、この液体二酸化炭素ボンベから耐圧容器内に加圧した二酸化炭素を送りこむ送液ポンプ等を備えたものが好ましい。
【0016】
本発明に係る重縮合樹脂の製造方法は、耐圧容器内にて、容器内を二酸化炭素で十分置換した後、原料となるモノマーを仕込み、その後二酸化炭素を導入して目的の圧力まで昇圧する。その後、耐圧容器を熱媒やヒーター等を用いて反応温度まで昇温する。反応容器内を亜臨界または超臨界二酸化炭素状態としてモノマーを溶融させた後、重縮合反応を進める。反応温度は、モノマーによるが150℃以上300℃以下が好ましく、より好ましくは170℃以上280℃以下である。また反応圧力は、1MPa以上30MPa以下が好ましく、より好ましくは3MPa以上15MPa以下である。
所望の分子量のポリマーを得るために、重縮合反応の進行度合いは攪拌トルク等で確認した後、降温、降圧して、生成したポリマーを回収しても良い。また、さらに重合度を高めたい場合は、そのまま減圧下にて反応を継続する方法、反応押出機や固相重合装置を用いる方法もある。
【0017】
本発明の重縮合反応は、超臨界二酸化炭素中または亜臨界流体中で行うことが好ましいが、超臨界流体または亜臨界流体は、不活性であり、安全性や入手性の高いものであれば二酸化炭素以外を使用してもよい。二酸化炭素以外のその超臨界流体としては、例えば、水、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、アセトン等があげられる。さらに、原料となるモノマーが超臨界流体または亜臨界流体に溶解しにくい場合は、エタノールやアセトンを助溶媒として少量添加しても良い。
【0018】
(重縮合樹脂)
本発明で得られる重縮合樹脂は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい
【0019】
(ポリアミド)
本発明で得られるポリアミドは、ラクタムもしくはアミノカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とするポリアミドや、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする脂肪族ポリアミド、脂環族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする部分脂環族ポリアミド、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミド、脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミド、脂環式ジアミンと芳香族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とするポリアミドなどが挙げられ、必要に応じて、主構成単位以外のモノマー単位を共重合してもよい。
【0020】
前記ラクタムもしくはアミノカルボン酸としてε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等が使用できる。
【0021】
脂肪族ジアミンとしては、炭素数2〜12の脂肪族ジアミンあるいはその機能的誘導体が使用できる。さらに、脂環族のジアミンであってもよい。脂肪族ジアミンは直鎖状の脂肪族ジアミンであっても分岐を有する鎖状の脂肪族ジアミンであってもよい。このような直鎖状の脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。また、脂環族ジアミンの具体例としては、シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0022】
また、前記脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖状の脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸が好ましく、さらに炭素数4〜12のアルキレン基を有する直鎖状脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。このような直鎖状脂肪族ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸およびこれらの機能的誘導体などを挙げることができる。脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0023】
また、前記芳香族ジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラ−ビス(2−アミノエチル) ベンゼンなどが挙げられる。
【0024】
また、前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸およびその機能的誘導体等が挙げられる。
【0025】
具体的なポリアミドとしては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド6IT、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、イソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6I)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカナミド(ポリアミドMXD12)、ポリ1,3−ビスアミノシクロヘキサンアジパミド(ポリアミド1,3−BAC6)、ポリ1,4−ビスアミノシクロヘキサンアジパミド(ポリアミド1,4−BAC6)、ポリアミド1,3−BAC6IT、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)、ポリアミドN−MP6N等がある。より好ましいポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD6Iが挙げられる。
【0026】
また、前記ポリアミドの共重合成分として、少なくとも一つの末端アミノ基、もしくは末端カルボキシル基を有する数平均分子量が2000〜20000のポリエーテル、又は前記末端アミノ基を有するポリエーテルの有機カルボン酸塩、又は前記末端カルボキシル基を有するポリエーテルのアミノ塩を用いることもできる。具体的な例としては、ビス(アミノプロピル)ポリ(エチレンオキシド)(数平均分子量が2000〜20000のポリエチレングリコール)が挙げられる。
【0027】
また、前記部分芳香族ポリアミドは、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3塩基以上の多価カルボン酸から誘導される構成単位を実質的に線状である範囲内で含有していてもよい。
【0028】
(ポリアミドの重合度)
本発明のポリアミド樹脂の重合度については、相対粘度が使われる。本発明の製造方法により得られたポリアミド樹脂の好ましい相対粘度は、好ましくは1.8〜4.2である。
なお、ここでいう相対粘度は、ポリアミド化合物1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t
【0029】
前記ポリアミドの溶融重縮合反応は、耐圧容器内の亜臨界二酸化炭素もしくは超臨界二酸化炭素中で行えば良く、その他に関しては従来公知の方法を適用することができる。水共存下での溶融重縮合法あるいは水不存在下の溶融重縮合法や、これらの溶融重縮合法で得られたポリアミドを更に固相重合する方法などによって製造することができる。また、必要に応じて、リン原子含有化合物を添加して溶融重縮合することができる。溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。これらは回分式反応装置から構成されていてもよいし、また連続式反応装置から構成されていてもよい。また溶融重縮合工程と固相重合工程は連続的に運転してもよいし、分割して運転してもよい。
【0030】
本発明のポリアミド樹脂の重縮合系内に添加されるリン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸等のホスフィン酸化合物;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸エチル等のジ亜リン酸化合物;ホスホン酸、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸リチウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸マグネシウム、ホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム等のホスホン酸化合物;亜ホスホン酸、亜ホスホン酸ナトリウム、亜ホスホン酸リチウム、亜ホスホン酸カリウム、亜ホスホン酸マグネシウム、亜ホスホン酸カルシウム、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル等の亜ホスホン酸化合物;亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等が挙げられ、これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩が、アミド化反応を促進する効果が高くかつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましい。なお、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
【0031】
本発明のポリアミド樹脂の重縮合系内に添加されるリン原子含有化合物の添加量は、ポリアミド樹脂中のリン原子濃度換算で0.1〜1000ppmであることが好ましく、より好ましくは1〜600ppmであり、さらに好ましくは5〜400ppmである。
【0032】
また、本発明のポリアミド樹脂の重縮合系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物を添加することが好ましい。重縮合中のポリアミド樹脂の着色を防止するためには十分な量のリン原子含有化合物を存在させる必要があるが、場合によってはポリアミド樹脂のゲル化を招くおそれがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物を共存させることが好ましい。アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシド等が好ましい。本発明で用いることのできるアルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、炭酸ナトリウム等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。
【0033】
本発明のポリアミドは、本発明の効果を損なわない範囲で、滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、結晶化核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の任意の添加剤を含有してもよい。
【0034】
(ポリエステル)
前記ポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種又は二種以上と、グリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種又は二種以上とから成るもの、又はヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から成るもの、又は環状エステルから成るものをいう。
【0035】
ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ) エタン−p ,p’−ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−リチウムスルホテレフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸などに例示される金属スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸又はそれらの低級アルキルエステル誘導体などが挙げられる。
【0036】
上記のジカルボン酸のなかでも、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の使用が、得られるポリエステルの物理特性等の点で好ましく、必要に応じて他のジカルボン酸を共重合しても良い。
【0037】
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4 ,3’,4 ’−ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0038】
グリコールとしてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4 ’−ジヒドロキシビスフェノ−ル、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ) ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA 、ビスフェノールC 、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加されたグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
【0039】
上記のグリコールのなかでも、特に、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分として使用することが好適である。これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロ− ル、ヘキサントリオールなどが挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0040】
環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
【0041】
多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物などが例示される。
【0042】
本発明で得られるポリエステルとしては、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。
【0043】
主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルとは、全酸成分に対してテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル% 以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル% 以上含有するポリエステルである。主たる酸成分がナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルも同様に、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル% 以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル% 以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル% 以上含有するポリエステルである。
【0044】
本発明で用いるナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、上述のジカルボン酸類に例示した1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0045】
主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルとは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル% 以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル% 以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル% 以上含有するポリエステルである。ここで言うアルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいてもよい。
【0046】
上記テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分は、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが、透明性と成形性を両立する上で好ましく、特にイソフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることがより好ましい。
【0047】
本発明で得られるポリエステルの好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、より好ましくはエチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのはエチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0048】
また本発明で得られるポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2,6−ナフタレートから構成されるポリエステルであり、より好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2,6−ナフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0049】
また本発明で得られるポリエステルの好ましいその他の例としては、プロピレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、プロピレンナフタレート単位を70モル% 以上含む線状ポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレ−ト単位を70モル% 以上含む線状ポリエステル、ブチレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、またはブチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0050】
また本発明に得られるポリエステルの好ましいその他の例としては、グリコール酸やグリコール酸メチルの重縮合もしくは、グリコリドの開環重縮合にて得られるポリグリコール酸が挙げられる。このポリグリコール酸には、ラクチド等などの他成分を共重合しても構わない。
【0051】
特にポリエステル全体の組成として、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコールの組み合わせ、テレフタル酸//エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノールの組み合わせ、テレフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコールの組み合わせは透明性と成形性を両立する上で好ましい。なお、当然ではあるが、エステル化(エステル交換)反応、重縮合反応中に、エチレングリコールの二量化により生じるジエチレングリコールを少量(5モル%以下)含んでも良いことは言うまでも無い。
【0052】
(ポリエステルの製造方法)
本発明のポリエステルを製造する方法は、亜臨界二酸化炭素もしくは超臨界二酸化炭素雰囲気下の耐圧容器内で行なわれれば良く、その他に関しては従来公知の方法を適用することができる。例えば、多価カルボン酸成分のメチルエステルと多価アルコール成分及び必要に応じて上述の共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させて生成するメタノールを留去しエステル交換させた後、重合触媒を添加して重縮合を進めるエステル交換法、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分及び必要に応じて上述の共重合成分を直接反応させて生成する水を留去しエステル化した後、重合触媒を添加して重縮合を進める直接エステル化法等の溶融重合法や、溶液重合法等が挙げられるが、本発明のポリエステル樹脂を効率良く生産するためには構成成分の反応性の観点から直接エステル化法を採用することが好ましい。
【0053】
ポリエステルの製造の際における、エステル交換触媒、エステル化触媒、エーテル化防止剤、また重合に用いる重合触媒、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合調整剤等も従来既知のものを用いることができる。
【0054】
エステル交換触媒としては、マンガン、コバルト、亜鉛、チタン、カルシウム等の化合物が例示される。エーテル化防止剤としてアミン化合物等が例示される。
【0055】
重合触媒としては、ゲルマニウム、アンチモン、チタン、アルミニウム等を含む化合物が例示される。例えば、ゲルマニウムを含む化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等が挙げられ、その使用量はポリエステル中におけるゲルマニウム原子濃度として5〜150ppmとなるように設定することが好ましく、より好ましくは10〜100ppmであり、さらに好ましくは15〜70ppmである。
【0056】
アンチモンを含む化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレート、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられ、その使用量はポリエステル中におけるアンチモン原子濃度として10〜400ppmとなるように設定することが好ましく、より好ましくは20〜350ppmであり、さらに好ましくは30〜300ppmである。
【0057】
チタンを含む化合物としては、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のテトラアルキルチタネート及びそれらの部分加水分解物、シュウ酸チタニル、シュウ酸チタニルアンモニウム、シュウ酸チタニルナトリウム、シュウ酸チタニルカリウム、シュウ酸チタニルカルシウム、シュウ酸チタニルストロンチウム等のシュウ酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン等が挙げられ、その使用量はポリエステル中におけるチタン原子濃度として0.5〜300ppmとなるように設定することが好ましく、より好ましくは1〜200ppmであり、さらに好ましくは3〜100ppmである。
【0058】
アルミニウムを含む化合物としては、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム等のカルボン酸塩、酸化物、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム等の無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド等のアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート等とのアルミニウムキシレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物及びこれらの部分加水分解物等が挙げられ、その使用量はポリエステル中におけるアルミニウム原子濃度として1〜400ppmとなるように設定することが好ましく、より好ましくは3〜300ppmであり、さらに好ましくは5〜200ppmである。
【0059】
また、本発明のポリエステルの製造においては、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を使用してもよい。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のカルボン酸塩やアルコキサイド等が挙げられ、その使用量は、ポリエステル中におけるアルカリ金属またはアルカリ土類金属原子濃度として0.1〜200ppmとなるように設定することが好ましく、より好ましくは0.5〜150ppmであり、さらに好ましくは1〜100ppmである。
【0060】
本発明のポリエステルには、熱安定剤としてリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、およびそれらの誘導体を1種類以上使用することができる。例えば、リン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジフェニルエステル等が挙げられ、その使用量はポリエステルアミド中におけるリン原子濃度として1〜200ppmとなるように設定することが好ましく、より好ましくは2〜150ppmであり、さらに好ましくは3〜100ppmである。また、重量平均分子量の調節ために、ラウリルアルコールのような高級アルコールを添加することができる。また、物性改良の目的で、グリセリンのような多価アルコールを添加してもよい。その他、光安定剤、耐電防止剤、滑剤、酸化防止剤、離型剤等を加えてもよい。
【0061】
得られたポリエステルはそのまま使用することもできるが、更に重合度を高めるための工程を経てもよい。更に重合度を高める工程としては、押出機内での反応押出や固相重合等が挙げられる。固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特にポリエステルの固相重合を行う場合は、上述の装置の中で回転ドラム式の加熱装置が、系内を密閉化でき、着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
【0062】
本発明のポリエステルの重合度については、極限粘度を指標とすることが便宜上好ましく行われる。本発明のポリエステルを主成分とする構造体を形成する場合、好ましい極限粘度は、成形加工性や成形体の機械物性や強度、臭気等の観点から、好ましく0.3〜1.5dl/gであり、より好ましくは0.5〜1.3、さらに好ましくは0.6〜1.0である。但し、本発明のポリエステルを他の熱可塑性樹脂の添加剤や改質剤等に使用する場合、この範囲に限定されず、さらに分子量が低いものや、高分子量のものを利用することができる。
【0063】
(ポリエステル樹脂組成物)
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、本発明のポリエステルに要求される性能に応じて、滑剤、結晶化核剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、酸化防止剤等の添加剤を添加してもよい。これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加することができる。更に、耐衝撃性改善等の様々な物性を付与するために、エラストマー等の熱可塑性樹脂を混合してもよい。
【0064】
(重縮合樹脂の分子量分布)
本発明の製造方法により得られた重縮合樹脂の分子量分布はできる限り狭い方が好ましく、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.0以上1.8以下、より好ましくは1.0以上1.7以下である。上記分子量分布の重縮合樹脂であれば、未反応モノマーやオリゴマーの割合が少ない。
【0065】
本発明の製造方法により得られた重縮合樹脂の形態は、特に限定されず、フィルム状、シート状、ペレット状、粉体状又は、各種包装容器形態等各種の形態で使用することができる。ペレット及び粉体の形状にも制限はない。本発明の重縮合樹脂を使用したフィルムの厚みは、通常、1μm 以上、250μm未満であり、シートの厚みは、通常250μ m 以上、3mm未満である。粉体の数平均粒子径は、通常、0.1 〜 1,000μm 、好ましくは1〜500μmである。
【0066】
本発明の製造方法により得られた重縮合樹脂を所望の形状にする方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用できる。
シート又はフィルムの場合、例えば、溶液キャスト法により成形したり、単軸又は多軸の溶融押出機を用い、T−ダイ、サーキュラーダイ等所定形状のダイを通して押出成形したりすることにより成形できる。勿論、圧縮成形法、射出成形法等を採用することも可能である。
【0067】
本発明の製造方法により得られた重縮合樹脂は、他の包装と組み合わせて様々な物品を収納、保存することができる。例えば、飲料、調味料、穀類、無菌での充填もしくは加熱殺菌の必要な液体及び固体加工食品、化学薬品、液体生活用品、医薬品、半導体集積回路並びに電子デバイス等、種々の物品を収納することができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
以下に実施例、および比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお本発明における評価のための測定は以下の方法によった。
(1)相対粘度
ポリアミド樹脂1gを精秤し、96%硫酸100mlに20〜30℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下速度(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下速度(t)も同様に測定した。tおよびt0 から次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t
【0070】
(2)ガラス転移温度及び融点
示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC−60)を用い、昇温速度10℃/分で窒素気流下にて10℃〜260℃にて、DSC測定(示差走査熱量測定)を行い、ガラス転移温度及び融点を求めた。
【0071】
(3)GPCによる分子量分布の測定
ポリアミド樹脂をHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)に溶解して所定の濃度に調整し、下記条件のもとでゲルパーミエーションクロマトグラフィー(昭和電工(株)製 Shodex GPC−2001)を用いて分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)を求めた。
<測定条件>
分離カラム:Shodex HFIP−806M(昭和電工(株)製)
カラム温度:40℃
移動相溶媒:トリフルオロ酢酸ナトリウム(TFA)2mmol%含有HFIP
移動相流速:1.0mL/min、試料濃度:0.05wt%、注入量:100μL
【0072】
実施例1
攪拌翼を備えた200mlの耐圧・耐熱性のオートクレーブ(耐圧硝子工業製)の中に、ガラス試験管をいれ、このガラス試験管の中に、メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製、:以下、MXDAと呼ぶ)23.15g(0.17モル)、アジピン酸(旭化成ケミカルズ(株)製:以下AdAと呼ぶ)24.84g(0.17モル)、純水20gを投入後、二酸化炭素にて置換した。再度二酸化炭素を導入し5MPaになるまで二酸化炭素を導入して加圧した。その後、攪拌しながら、オートクレーブ内を15MPa、250℃まで昇圧・昇温し、この状態で120分保持した。その後、降温、減圧し、反応器中に生成したポリマーを取り出し、粉砕機で粉砕し、ポリマー中のMXDA単位/AdA単位=10/10のモル比率のポリアミド樹脂(N−MXD6:ポリアミド1)を得た。ポリアミド1の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0073】
実施例2
攪拌翼を備えた200ccの耐圧・耐熱性のオートクレーブ(耐圧硝子工業製)の中に、ガラス試験管をいれ、このガラス試験管の中に、cis体比率が70〜75モル%の1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC))を24.18g(0.17モル)、アジピン酸(AdA)24.84g(0.17モル)、純水20gを投入後、二酸化炭素にて置換し、5MPaになるまで加圧した。その後、攪拌しながら、オートクレーブ内を15MPa、250℃まで昇圧・昇温し、この状態で120分保持した。その後、本ポリマーを取り出し、粉砕機で粉砕し、1,3−BAC/AdA=10/10のモル比率のポリアミド樹脂(1,3−BAC6:ポリアミド2)を得た。ポリアミド2の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0074】
実施例3
攪拌翼を備えた200ccの耐圧・耐熱性のオートクレーブ(耐圧硝子工業製)の中に、ガラス試験管をいれ、このガラス試験管の中に、cis体比率が45モル%の1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4−BAC))を24.18g(0.17モル)、アジピン酸(AdA)24.84g(0.17モル)、純水20gを投入後、二酸化炭素にて置換し、5MPaになるまで加圧した。その後、攪拌しながら、オートクレーブ内を15MPa、250℃まで昇圧・昇温し、この状態で120分保持した。その後、本ポリマーを取り出し、粉砕機で粉砕し、1,4−BAC/AdA=10/10のモル比率のポリアミド樹脂(1,4−BAC6:ポリアミド3)を得た。ポリアミド3の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0075】
実施例4
攪拌翼を備えた200ccの耐圧・耐熱性のオートクレーブ(耐圧硝子工業製)の中に、ガラス試験管をいれ、このガラス試験管の中に、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)19.75g(0.17モル)、高純度イソフタル酸(PIA)19.92g(0.12モル)、高純度テレフタル酸(PTA)8.3g(0.05モル)、純水20gを投入後、二酸化炭素にて置換し、5MPaになるまで加圧した。その後、攪拌しながら、オートクレーブ内を15MPa、250℃まで昇圧・昇温し、この状態で120分保持した。その後、本ポリマーを取り出し、粉砕機で粉砕し、HMDA/PIA/PTA=10/7/3のモル比率のポリアミド樹脂(N−6IT:ポリアミド4)を得た。ポリアミド4の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0076】
実施例5
攪拌翼を備えた200ccの耐圧・耐熱性のオートクレーブ(耐圧硝子工業製)の中に、ガラス試験管をいれ、このガラス試験管の中に、cis体比率が70〜75モル%の1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC))を24.18g(0.17モル)、高純度イソフタル酸(PIA)を19.92g(0.12モル、高純度テレフタル酸(PTA)8.3g(0.05モル)、純水20gを投入後、二酸化炭素にて置換し、5MPaになるまで加圧した。その後、攪拌しながら、オートクレーブ内を15MPa、250℃まで昇圧・昇温し、この状態で120分保持した。その後、本ポリマーを取り出し、粉砕機で粉砕し、1,3−BAC/PIA/PTA=10/7/3のモル比率のポリアミド(1,3−BAC6IT:ポリアミド5)を得た。ポリアミド5の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0077】
実施例6
攪拌翼を備えた200ccの耐圧・耐熱性のオートクレーブ(耐圧硝子工業製)の中に、ガラス試験管をいれ、このガラス試験管の中に、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)19.75g(0.17モル)、高純度テレフタル酸(PTA)28.22g(0.17モル)、純水20gを投入後、二酸化炭素にて置換し、5MPaになるまで加圧した。その後、攪拌しながら、オートクレーブ内を15MPa、250℃まで昇圧・昇温し、この状態で120分保持した。その後、本ポリマーを取り出し、粉砕機で粉砕し、HMDA/PTA=10/10のモル比率のポリアミド(N−6T:ポリアミド6)を得た。ポリアミド6の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0078】
実施例7
攪拌翼を備えた200ccの耐圧・耐熱性のオートクレーブ(耐圧硝子工業製)の中に、ガラス試験管をいれ、このガラス試験管の中に、パラキシリレンジアミン23.15g(PXDA)を0.17モル、セバシン酸(SA)34.38g(0.17モル)、純水20gを投入後、二酸化炭素にて置換し、5MPaになるまで加圧した。その後、攪拌しながら、オートクレーブ内を15MPa、250℃まで昇圧・昇温し、この状態で120分保持した。その後、本ポリマーを取り出し、粉砕機で粉砕し、PXDA/SA=10/10のモル比率のポリアミド樹脂(N−PXD10:ポリアミド7)を得た。ポリアミド7の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表1に示す
【0079】
実施例8
攪拌翼を備えた200ccの耐圧・耐熱性のオートクレーブ(耐圧硝子工業製)の中に、ガラス試験管をいれ、このガラス試験管の中に、メタキシリレンジアミン(MXDA)16.34g(0.12モル)、パラキシリレンジアミン(PXDA)6.8g(0.05モル)、アジピン酸(AdA)17.54g(0.12モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(2,6−NDCA)を10.81g(0.05モ)ル、純水20gを投入後、二酸化炭素にて置換し、5MPaになるまで加圧した。その後、攪拌しながら、オートクレーブ内を15MPa、250℃まで昇圧・昇温し、この状態で120分保持した。その後、本ポリマーを取り出し、粉砕機で粉砕し、MXDA/PXDA/AdA/2,6−NDCA=7/3/7/3のモル比率のポリアミド樹脂(N−MP6N:ポリアミド8)を得た。ポリアミド8の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0080】
比較例1
二酸化炭素を導入せず、窒素置換し、窒素を0.1MPaに加圧したこと以外は、実施例1と同様の方法で重合し、MXDA/AdA=10/10のモル比率のポリアミド樹脂(N−MXD6:ポリアミド9)を得た。ポリアミド1の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表2に示す。
【0081】
比較例2
二酸化炭素を投入しなかったこと以外は、実施例2と同様の方法で重合し、1,3−BAC/AdA=10/10のモル比率のポリアミド樹脂(1,3−BAC6:ポリアミド10)を得た。ポリアミド10の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表2に示す。
【0082】
比較例3
二酸化炭素を投入しなかったこと以外は、実施例3と同様の方法で重合し、1,4−BAC/AdA=10/10のモル比率のポリアミド樹脂(1,4−BAC6:ポリアミド11)を得た。ポリアミド11の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表2に示す。
【0083】
比較例4
二酸化炭素を投入しなかったこと以外は、実施例3と同様の方法で重合し、HMDA/PIA/PTA=10/7/3のモル比率のポリアミド樹脂(N−6IT:ポリアミド12)を得た。ポリアミド12の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表2に示す。
【0084】
比較例5
二酸化炭素を投入しなかったこと以外は、実施例4と同様の方法で重合し、1,3−BAC/PIA/PTA=10/7/3のモル比率のポリアミド樹脂(1,3−BAC6IT:ポリアミド13)を得た。ポリアミド13の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表2に示す。
【0085】
比較例6
二酸化炭素を投入しなかったこと以外は、実施例5と同様の方法で重合し、HMDA/PTA=10/10のモル比率のポリアミド樹脂(N−6T:ポリアミド14)を得た。ポリアミド14の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表2に示す。
【0086】
比較例7
二酸化炭素を投入しなかったこと以外は、実施例6と同様の方法で重合し、PXDA/SA=10/10のモル比率のポリアミド(N−PXD10;ポリアミド15)を得た。ポリアミド15の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表2に示す。
【0087】
比較例8
二酸化炭素を投入しなかったこと以外は、実施例8と同様の方法で重合し、MXDA/PXDA/AdA/2,6−NDCA=7/3/7/3のモル比率のポリアミド(N−MP6N;ポリアミド16)を得た。ポリアミド16の相対粘度、DSC測定、GPC測定を実施した。これらの結果を表2に示す。
【0088】
二酸化炭素を導入せずに、窒素雰囲気下の低圧下で加圧重合した比較例1〜比較例8は、重合はできるものの、得られた樹脂の相対粘度が低いものであった。また、比較例1〜比較例8の製造方法により得られた樹脂の分子量分布は、1.9以上あり、均質なポリマーが得られていない。これに対して、超臨界二酸化炭素雰囲気下の加圧重合で実施した実施例1〜8は、比較例と比較しても相対粘度が高くなっており、一段階の反応工程で固相重合を行ったのと同程度の高分子量のポリマーが得られた。また、分子量分布も1.8以下と狭いことから、比較例と比較して、均質なポリマーが得られていることが分かる。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の重縮合樹脂の製造方法を用いることで、従来重合することが困難であったモノマーを用いた重縮合樹脂の製造が可能であることに加え、分子量分布が1.8以下に制御された均質な重縮合樹脂を得ることが可能である。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜臨界二酸化炭素中または超臨界二酸化炭素中で、溶融重縮合反応を行い、ポリアミド樹脂またはポリエステル樹脂を得ることを特徴とする重縮合樹脂の製造方法。
【請求項2】
亜臨界二酸化炭素中または超臨界二酸化炭素中で、ジアミン成分とジカルボン酸成分を溶融重縮合してポリアミド樹脂を得ることを特徴とする、請求項1記載の重縮合樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記ジアミン成分が、芳香族ジアミンまたは、脂環式ジアミンであることを特徴とする請求項2に記載の重縮合樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記ジカルボン酸成分が、脂肪族ジカルボン酸または、芳香族ジカルボン酸であることを特徴とする請求項2に記載の重縮合樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られた重縮合樹脂のGPCから求まる分子量分布が1.8以下であることを特徴とする、重縮合樹脂の製造方法。




















【公開番号】特開2012−236923(P2012−236923A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107198(P2011−107198)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】