説明

重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法

【課題】従来に比べて緩和された条件で、重質油を軽質化させて良質な軽質油を得ることができる重質油軽質化装置を提供する。
【解決手段】重質油軽質化装置100は、液体状態の重質油を貯留する重質油貯留器10と、前記重質油を軽質化させる触媒22を内部に有し、前記重質油貯留器10から送液された液体状態の前記重質油と触媒22とを150℃〜300℃の条件下で接触させることにより重質油を軽質化させて軽質油を生成するとともに未反応の重質油HOを排出する反応器20と、反応器20を加熱するための加熱器30と、反応器20から排出された未反応の重質油を反応器20に戻す重質油配管70、40と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、重質油を軽質化する方法(重質油軽質化方法)としては、触媒を用いる接触分解法や、水素を添加しながら重質油を分解させる水素化分解法、熱のみで分解する熱分解法が用いられている(例えば、特許文献1及び2参照)。
従来の重質油軽質化方法では、水素化分解法では例えば500℃以上及び30〜100気圧の高温高圧条件が、接触分解法では例えば500℃程度の高温条件が、熱分解法では例えば400〜500℃及び2〜30気圧の高温高圧条件が、それぞれ必要であり、反応場を形成するのに多量のエネルギーが必要である。
【0003】
従来よりも緩和された条件での重質油軽質化方法としては、重質油と水とを380℃〜450℃、25〜35MPaに維持された反応器で反応させて前記重質油を軽質化して軽質油を生成する工程と、前記軽質油とガスと水を含む混合物から軽質油とガスと水とにそれぞれ分離する工程と、を含み、前記反応器に一酸化炭素を25〜35MPaの圧力で供給する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。また、酸化還元電位が−850mV以下であってpHが12以下であるアルカリイオン水を重質油(原料油)中に乳化することによって乳濁液を精製する工程と、加熱された熱媒体の表面へ前記乳濁液の液滴を滴下する工程と、を備えた重質油軽質化方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−011259号公報
【特許文献2】特開平9−183983号公報
【特許文献3】特開2001−139960号公報
【特許文献4】国際公開第2007/125576号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献3に記載の方法でも、依然として380℃〜450℃、25〜35MPaといった高温高圧条件が必要であるため、更なる条件の緩和が求められている。
また、特許文献3及び4に記載の方法では、重質油に添加物質(水)を加えているため、例えば生成される軽質油に酸素が含まれる等、生成される軽質油の品質に劣る傾向がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、従来に比べて緩和された条件で、重質油を軽質化させて良質な軽質油を得ることができる重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、液体状態の重質油を貯留する重質油貯留器と、前記重質油を軽質化させる触媒を内部に有し、前記重質油貯留器から送液された液体状態の前記重質油と前記触媒とを150℃〜300℃(以下、「反応温度」ともいう)の条件下で接触させることにより前記重質油を軽質化させて軽質油を生成するとともに未反応の重質油を排出する反応器と、前記反応器を加熱するための加熱器と、前記反応器から排出された前記未反応の重質油を前記反応器に戻す重質油配管と、を備える。
【0008】
請求項1に記載の重質油軽質化装置では、軽質化の対象となる液体状態の重質油が、重質油貯留器から反応器に送液される。そして、反応器において、液体状態の重質油と触媒とが接触し、該液体状態の重質油が軽質化されて軽質油が生成する。このため、気体状態の重質油を軽質化させる重質油軽質化装置と比較して、重質油ガス化装置が不要であり、かつ、反応器内の温度を従来に比べて低くすることができる。
【0009】
更に、請求項1に記載の重質油軽質化装置では、反応器から未反応の重質油(以下、「未反応油」ともいう)が排出され、排出された未反応の重質油が重質油配管を通って再度反応器に戻される。
これにより、未反応の重質油を循環させながら繰り返し触媒と接触させることができる。更に、重質油を流しながら触媒と接触させることができるので、重質油と触媒との接触頻度を高めることができる。
従って、請求項1に記載の重質油軽質化装置では、従来に比べて低温の150℃〜300℃の条件とすることによって反応速度が低下し、得られる軽質油の収量は低下するものの、重質油の軽質化効率(反応した重質油から得られる軽質油の収率。以下同じ。)は低下しない。
このため、反応の条件を高圧とする必要もなく、大気圧程度(例えば、0.08〜0.12MPa程度)の圧力で軽質化を行うことができる。また、重質油に対し水などの添加物質を混入させる必要がないので、良質な軽質油を得ることができる。また、重質油に対し水などの添加物質を混入させる必要がないので、脱酸素のための工程(水素化処理工程など)を付加する必要もない。
【0010】
以上により、請求項1に記載の重質油軽質化装置によれば、従来に比べて緩和された条件で(即ち、従来に比べて低温かつ低圧の条件で)重質油を軽質化させて良質な軽質油を得ることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項1に記載の重質油軽質化装置において、更に、前記重質油貯留器から前記反応器への送液量を調整する送液量調整機能を有する送液手段を備える。
これにより、反応器における、重質油の触媒への拡散促進による反応性向上効果、並びに、重質油と触媒との接触時間調整による、過分解抑制効果及び生成物同士の重合の抑制効果により、重質油からより多くの軽質油を得ることができる。
ここで、送液量を増大させたときには、触媒との接触時間が減少するため、液の触媒通過一回あたりの反応量は減少する。しかし、時間あたりの送液量は増加するため、得られる軽質油量は、一回あたりの反応量と時間あたりの送液量との積となる。一般的に、反応速度は反応開始時付近が速く、反応が進行するにつれ低下する。つまり、条件次第では、一回あたりの反応量の低下よりも送液量増加の効果が大きく、結果的に、得られる軽質油量は増加する。一回あたりの反応量の低下により未反応油の量が増加するが、未反応油は、循環により再利用されるので無駄にはならない。
【0012】
請求項3に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項1又は請求項2に記載の重質油軽質化装置において、前記反応器は、前記重質油及び前記触媒を含む液相部と、生成された軽質油の少なくとも一部が気体状態となって前記液相部から分離される気相部と、該気相部から気体状態の軽質油を排出する排出口と、を有する。
これにより、液体状態の重質油と触媒との反応場(液相部)から、生成された軽質油の少なくとも一部(反応温度以下の沸点を有する成分)が気体状態で分離される。即ち、触媒周りの反応場は常に重質油で満たされるため、軽質化の反応における反応平衡を軽質化が進む方向にずらすことができる。このため、反応中に前記分離を行わない場合と比較して、軽質化の反応速度を向上でき、従来に比べて低温の条件としたことにより生じる軽質化収量の低下を緩和できる。更に、軽質油は反応場に留まらないため、過度の分解が抑制され、常温において液体で回収できる量が減らない。
以上により、請求項3に記載の重質油軽質化装置によれば、重質油からより多くの軽質油を得ることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置において、更に、前記重質油貯留器から前記反応器への送液量を、前記反応器内における触媒量(g)に対する前記反応器内における重質油の流量(g/h)の比[反応器内における重質油の流量(g/h)/反応器内における触媒量(g)](1/h)が0.5〜50(1/h)となるように調整する送液量調整機能を有する送液手段を備える。
これにより、反応器における重質油と触媒との接触時間が好適な範囲に調整されるので、重質油から得られる軽質油の量をより増大させることができる。
即ち、前記比が0.5以上であると、重質油と触媒との接触頻度向上の効果がより効果的に奏される。一方、前記比が50以下であると、軽質油が、反応場から分離される前に未反応油とともに排出されてしまう現象をより抑制できる。
【0014】
請求項5に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置において、前記重質油貯留器は、前記重質油配管の途中に設けられている。
これにより、軽質化の対象となる液体状態の重質油が、重質油貯留器、反応器、重質油貯留器、反応器、の順に循環されるので、請求項1に記載の発明に係る重質油軽質化装置と同様に、従来に比べて緩和された条件で(即ち、従来に比べて低温かつ低圧の条件で)重質油を軽質化させて良質な軽質油を得ることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置において、前記反応器は、キャリアガスを前記気相部に供給するキャリアガス供給口を有し、前記キャリアガス供給口から供給されたキャリアガスを前記気体状態の軽質油とともに前記排出口から排出する。
これにより、キャリアガスをスイープガスとして用いることで重質油からの軽質油の分離効率をより向上させることができるので、軽質化反応における反応平衡を軽質化が進む方向に更にずらすことができ、軽質化の反応速度をより向上させることができる。
【0016】
請求項7に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置において、前記加熱器が、外部から供給された高温ガスの熱を蓄熱し、蓄熱された熱で前記反応器を加熱する熱交換器である。
これにより、工場廃熱など、外部の未利用エネルギーを有効利用して反応器の加熱を行うことができるので、省エネルギー性に優れる。
【0017】
請求項8に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置において、前記加熱器が、前記重質油貯留器に連通され、前記重質油貯留器から供給された前記重質油を燃焼させ、燃焼により生じた熱で前記反応器を加熱する。
これにより、もともと系内(重質油軽質化装置内)に存在していた重質油を反応器の加熱に利用できるので、反応温度の微調整や反応変動などに対応できる。
【0018】
請求項9に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項3〜請求項6、及び請求項8のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置において、更に、前記反応器の気相部から排出された前記気体状態の軽質油から高沸点成分を分離する分離器を備え、前記加熱器が、前記分離器に連通され、前記分離器から供給された高沸点成分を燃焼させ、燃焼により生じた熱で前記反応器を加熱する。
これにより、もともと系内(重質油軽質化装置内)に存在していた重質油を反応器の加熱に利用できるので、反応温度の微調整や反応変動などに対応できる。
【0019】
請求項10に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項6〜請求項9のいずれか1項のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置において、更に、前記反応器の気相部から排出された前記キャリアガス及び前記気体状態の軽質油が供給され、前記キャリアガスを排出するとともに前記気体状態の軽質油を液化する液化器を備える。
この液化器により、軽質油を液体状態で回収できる。
【0020】
請求項11に記載の発明に係る重質油軽質化装置は、請求項10に記載の重質油軽質化装置において、更に、前記反応器と前記液化器とを連通し、前記液化器から排出されたキャリアガスを前記反応器に戻すキャリアガス配管を備える。
これにより、キャリアガスを繰り返し使用できるので、キャリアガスの使用量をより低減できる。
【0021】
請求項12に記載の発明に係る重質油軽質化方法は、液体状態の重質油を循環させながら、前記液体状態の重質油と該重質油を軽質化させる触媒とを150℃〜300℃の条件下で接触させることにより、前記重質油を軽質化させて軽質油を生成する工程を有する。
これにより、重質油と触媒との接触頻度を高めることができるので、従来に比べて低温の条件としたことによる反応速度の低下によって増加する未反応重質油を、無駄にすることなく利用できる。また、重質油に対し水などの添加物質を混入させる必要がないので、良質な軽質油を得ることができる。
従って、請求項12に記載の発明に係る重質油軽質化方法によれば、従来に比べて低温の条件で、重質油を良質な軽質油に軽質化させることができる。
【0022】
請求項13に記載の発明に係る重質油軽質化方法は、請求項12に記載の重質油軽質化方法において、前記接触は、前記重質油及び前記触媒を含む液相部と、生成された軽質油の少なくとも一部が気体状態となって前記液相部から分離される気相部と、該気相部から気体状態の軽質油を排出する排出口と、を有する反応器の前記液相部で行う。
これにより、液体状態の重質油と触媒との反応場(液相部)から、生成された軽質油の少なくとも一部(反応温度以下の沸点を有する成分)が気体状態で分離される。即ち、触媒周りの反応場は常に重質油で満たされるため、軽質化の反応における反応平衡を軽質化が進む方向にずらすことができる。このため、反応中に前記分離を行わない場合と比較して、軽質化の反応速度を向上でき、従来に比べて低温の条件としたことにより生じる軽質化収量の低下を緩和できる。更に、軽質油は反応場に留まらないため、過度の分解が抑制され、常温において液体で回収できる量が減らない。
以上により、請求項13に記載の重質油軽質化方法によれば、重質油からより多くの軽質油を得ることができる。
【0023】
請求項14に記載の発明に係る重質油軽質化方法は、請求項12又は請求項13に記載の重質油軽質化方法において、前記接触は、重質油の流量(g/h)と触媒量(g)との比[重質油の流量(g/h)/触媒量(g)](1/h)が0.5〜50(1/h)となる条件で行う。
これにより、反応器における重質油と触媒との接触時間が好適な範囲に調整されるので、重質油から得られる軽質油の量をより増大させることができる。
即ち、前記比が0.5以上であると、重質油と触媒との接触頻度向上の効果がより効果的に奏される。一方、前記比が50以下であると、軽質油が、反応場から分離される前に未反応油とともに排出されてしまう現象をより抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来に比べて緩和された条件で、重質油を軽質化させて良質な軽質油を得ることができる重質油軽質化装置及び重質油軽質化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る重質油軽質化装置を模式的に示した図である。
【図2】本発明の第二の実施形態に係る重質油軽質化装置を模式的に示した図である。
【図3】本発明の第三の実施形態に係る重質油軽質化装置を模式的に示した図である。
【図4】本発明の第四の実施形態に係る重質油軽質化装置を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の各実施形態に係る重質油軽質化装置について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
[第一の実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100を模式的に示した図である。
図1に示すように、重質油軽質化装置100は、液体状態の重質油を貯留する重質油貯留器10と、内部に重質油を軽質化させる触媒22を有する反応器20と、反応器20を加熱するための加熱器30と、重質油貯留器10と反応器20とを連通し、重質油貯留器10から反応器20へ重質油HOを送液する送液手段P1を備えた第1の重質油配管40と、重質油貯留器10と反応器20とを連通し、反応器20から排出された未反応の重質油HOを重質油貯留器10に戻す第2の重質油配管70と、を備えて構成されている。
この第一の実施形態では、重質油貯留器10が重質油配管(第1の重質油配管40及び第2の重質油配管70)の途中に設けられており、重質油配管(第1の重質油配管40及び第2の重質油配管70)により、反応器20から排出された未反応の重質油HOを、重質油貯留器10を経由させて反応器20に戻すことができるように構成されている。
但し、本発明はこの形態には限定されず、例えば後述する第四の実施形態に示すように、反応器20から排出された未反応の重質油HOを、重質油貯留器10を経由させずに直接反応器20に戻すことができるように構成されていてもよい(後述の第二、第三の実施形態においても同様である)。
【0028】
重質油貯留器10としては、液体状態の重質油が貯留できる内部空間を有する重質油貯留器(例えば、重質油貯留タンク)を用いる。
ここで重質油としては、例えば、A重油(JIS K2205(1991)で規定されている「1種」の重油)またはB重油(JIS K2205(1991)で規定されている「2種」の重油)に相当する重質油を用いる。
重質油貯留器10は、送液ポンプ等の送液手段P1を備える第1の重質油配管40を介して反応器20に連通されている。これにより、重質油貯留器10内の重質油を反応器20に向けて排出できるようになっている。
また、重質油貯留器10は、第2の重質油配管70を介して反応器20に連通されている。これにより、未反応の重質油(軽質化されなかった重質油)を反応器20から重質油貯留器10に戻すことができるようになっている。
【0029】
反応器20としては、キャリアガスCG、気体状態の軽質油LO、及び液体状態の重質油HOを流通できる内部空間を有する反応器を用いる。
即ち、反応器20は、キャリアガスCG及び気体状態の軽質油LOが流通される気相部と、液体状態の重質油HOが流通される液相部と、を有する構成となっている。
ここで、気体状態の軽質油LOは、重質油の軽質化によって得られた軽質油のうち、反応温度(重質油と触媒との接触温度、具体的には150℃〜300℃)以下の沸点を有する成分である。
また、キャリアガスCGとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、等を用いることができる。
【0030】
また、反応器20の液相部には、液体状態の重質油との接触により該液体状態の重質油を軽質化させる触媒22が収容されている。
これにより、反応器20内で、重質油貯留器10から送液された重質油HOと触媒22とを接触させることにより重質油HOを軽質化させて軽質油(反応温度では気体状態の軽質油LOを含む)を生成できるようになっている。
触媒22としては、粉末状、顆粒状、塊状等の固体触媒を用いることができる。
触媒22としては、ゼオライト、シリカ−アルミナ、アルミナ、これらの複合材料を主成分とした材料等を用いることができる。
【0031】
また、図示しないが、反応器20は、液相部の温度、気相部の圧力、重質油の流量等を測定する各種の測定手段を備えていてもよい。
【0032】
また、反応器20は、第1の重質油配管40を介して重質油貯留器10と連通されるとともに、(第1の重質油配管40とは異なる)第2の重質油配管70を介して重質油貯留器10と連通されている。第1の重質油配管40には、重質油貯留器10から反応器20への重質油を送液するための送液手段P1(例えば、送液ポンプ等)が設けられている。
これらの構成により、重質油軽質化装置100では、重質油貯留器10→第1の重質油配管40→反応器20→第2の重質油配管70→重質油貯留器10の順に、液体状態の重質油HOを循環できるようになっており、重質油HOを流しながら触媒22と接触させることができるようになっている。
【0033】
ここで、第1の重質油配管40に設けられた送液手段P1は、重質油貯留器10から反応器20への送液量を調整する送液量調整機能を備えていることが好ましい。
これにより、送液量の調整によって、反応器における重質油と触媒との接触時間を調整できる。前記接触時間を調整することにより、重質油からより多くの軽質油を得ることができる。
例えば、送液量を、反応器内における触媒量(g)に対する前記反応器内における重質油の流量(g/h)の比[反応器内における重質油の流量(g/h)/反応器内における触媒量(g)](1/h)(以下、空間速度(SV)ともいう)が0.5以上50以下となるように調整することで、重質油から得られる軽質油の量(軽質油収量)を増大させることができる。
即ち、前記比が0.5以上であると、重質油と触媒との接触頻度がより向上し、軽質化反応をより促進させることができ、ひいては軽質油収量を増大させることができる。
一方、前記比が50以下であると、軽質油が、反応場から分離される前に未反応油とともに排出されてしまう現象をより抑制でき、ひいては軽質油収量を増大させることができる。
前記空間速度は、より好ましくは0.5以上20以下、更に好ましくは2以上10以下、特に好ましくは2以上5以下である。
【0034】
また、第2の重質油配管70にはバルブV1が設けられており、これにより、反応器20からの重質油HOの排出量を調整できるようになっている。
前記送液量の調整に加え、この排出量の調整により、反応器における重質油と触媒との接触時間を調整できる。
但し、このバルブV1は省略されていてもよい。
また、送液手段P1(例えば、前記送液量調整機能を備えた送液手段)は、第1の重質油配管40に代えて、または第1の重質油配管40に加えて、第2の重質油配管70に配置されていてもよい。
【0035】
また、この実施形態では、反応器20にキャリアガス配管24が接続されている。これにより、不図示のキャリアガス供給手段(例えば、ガスボンベ等)から、キャリアガス配管24を通して反応器20内にキャリアガスCGを供給できるようになっている。
【0036】
また、この実施形態では、反応器20に対向する位置に、反応器20を加熱するための加熱器30(ヒーター)が設けられている。
これにより、反応器20を加熱することで、反応器20内での重質油HOと触媒22との接触を、150℃〜300℃の温度条件下で行えるようになっている。
【0037】
また、この実施形態では、反応器20から排出された気体状態の軽質油LOを液化させる液化器50と、反応器20と液化器50とを連通する軽質油配管60と、が設けられている。
これにより、反応器20から排出された気体状態の軽質油LOを、液化器50内で液化できるようになっている。
液化器50としては、気体状態の軽質油LOを該軽質油LOの沸点以下にまで冷却できる冷却器(クーラー等)を用いることができる。
【0038】
また、この実施形態では、液化器50には配管86が連通されており、液化器50からキャリアガスCGを排出できるようになっている。
また、この実施形態では、配管84によって液化器50と連通された軽質油貯留器80が設けられている。液化器50で生じた液体状態の軽質油LOは、この軽質油貯留器80に貯留される。
軽質油貯留器80としては、例えば、液体状態の軽質油LOを貯留できる内部空間を有する貯留タンクを用いる。
【0039】
次に、第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100における、重質油の軽質化の動作の一例について説明する。
【0040】
まず初期状態として、重質油貯留器10内に、軽質化の対象となる液体状態の重質油を入れるとともに、反応器20にキャリアガスCGを流通させる。第2の重質油配管70に備えられたバルブV1は開放させておく。
【0041】
次に、送液手段P1を作動させて、重質油貯留器10から反応器20に向けて重質油を送液し、反応器20内で重質油HOと触媒22とを接触させる。
この接触は、加熱器30による加熱により150℃〜300℃の条件で行う。この加熱温度(反応温度)は、生成したい軽質油の蒸留温度の上限とすることが好ましい。
接触時の反応器20内の圧力には特に限定はないが、大気圧程度(例えば、0.08〜0.12MPa程度。以下同じ。)とすることができる。
【0042】
反応器20における前記接触により、液体状態の重質油HOが軽質化されて気体状態の軽質油LOが生成される。
生じた気体状態の軽質油LO及び外部から供給されたキャリアガスCGは、反応器20から排出され、軽質油配管60を通って液化器50に至る。
液化器50では、気体状態の軽質油LO及びキャリアガスCGが、例えば−20〜30℃程度(より好ましくは1〜10℃程度)に冷却され、気体状態の軽質油LOが液体状態の軽質油LOに液化される。
液体状態の軽質油LOは配管84を通って軽質油貯留器80に回収される。
一方、液化器50に供給されたキャリアガスCGは、配管86を通って外部に排出される。
【0043】
反応器20において、軽質化されなかった未反応の重質油HOは反応器20から第2の重質油配管70に排出され、第2の重質油配管70を通って重質油貯留器10に戻される。
重質油貯留器10に戻された未反応の重質油HOは、再び、反応器20に送液され、反応器20内で触媒22と150℃〜300℃の条件下で接触する。
【0044】
重質油軽質化装置100における、重質油の軽質化では、以上の動作が繰り返される。
このように、重質油軽質化装置100では、液体状態の重質油HOを、重質油貯留器10→第1の重質油配管40→反応器20→第2の重質油配管70→重質油貯留器10の順に循環させながら、重質油HOと触媒22との接触を連続的に行う。これにより、反応器20における重質油HOと触媒22との接触頻度を高めることができるので、軽質化の条件を従来に比べて低温の150℃〜300℃としたことによる反応速度低下により増加する未反応油を無駄にすることなく軽質化に繰り返し利用することができる。
更に、反応器20では、生成された気体状態の軽質油LOを排出しながら重質油HOの軽質化を行うので、過度の軽質化を抑制することにより軽質油の収率を向上させることができる。また、軽質化反応における反応平衡を軽質化が進む方向にずらすことができ、軽質化の反応速度を向上させることができる。
【0045】
従って、重質油軽質化装置100によれば、従来に比べて緩和された条件で(即ち、従来に比べて低温かつ低圧の条件で)重質油を軽質化させて良質な軽質油を得ることができる。また、重質油に対し水などの添加物質を混入させる必要がないので、良質な軽質油を得ることができる。
重質油軽質化装置100では、軽質化の反応の条件が従来に比べて低温であるため、例えば太陽熱や工場廃熱などの未利用のエネルギーを反応熱源として有効利用して重質油の軽質化を行うことができる。
【0046】
以上で説明した重質油の軽質化では、更に、反応器20における空間速度(SV)(比[反応器内における重質油の流量/反応器内における触媒量];単位1/h)を前述の好ましい範囲に調整することで、軽質油収量を更に増大させることができる。
反応器20における空間速度(SV)の調整は、例えば、送液手段P1として送液量調整機能を備えた送液手段を用い、該送液手段による重質油の送液量の調整によって行うことができる。
【0047】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
なお、上記第一の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品、部分については、上記第一の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0048】
[第二の実施形態]
図2は、本発明の第二の実施形態に係る重質油軽質化装置200を模式的に示した図である。
図2に示すように、第二の実施形態に係る重質油軽質化装置200の構成は、第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100の構成において、ヒーターである加熱器30を熱交換器である加熱器120に変更したこと以外は第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100と同一の構成である。
加熱器120は、外部から供給された高温ガスHGの熱を蓄熱し、蓄熱された熱で前記反応器を加熱する熱交換器である。
ここで、高温ガスとしては、例えば150〜350℃の高温ガス(但し反応温度と熱交換器の性能とに依存する)を用いることができる。高温ガスとしては、工場排ガス等から得られた高温ガスや水蒸気を利用することができる。
【0049】
第二の実施形態に係る重質油軽質化装置200におけるその他の構成、好ましい範囲、及び変形例は、第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100と同様である。重質油を軽質化させる基本的な動作も、第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100と同様である。
【0050】
[第三の実施形態]
図3は、本発明の第三の実施形態に係る重質油軽質化装置300を模式的に示した図である。
図3に示すように、第三の実施形態に係る重質油軽質化装置300は、以下の点で、第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100と異なる。
即ち、重質油軽質化装置300は、重質油軽質化装置100におけるキャリアガス配管24と同様の、外部から反応器20にキャリアガスを供給するためのキャリアガス配管124を備えているが、更に、このキャリアガス配管124と液化器50とを連通するキャリアガス配管186を備えている。これにより、キャリアガス配管124及びキャリアガス配管186によって、反応器20と液化器50とが連通されている。
また、キャリアガス配管186には送気手段P2(例えば、送気ブロア等)が設けられており、これにより、液化器50から反応器20に向けてキャリアガスCGを送気できるようになっている。
なお、送気手段P2は省略することもできる。
【0051】
更に、重質油軽質化装置300は、重質油軽質化装置100における軽質油配管60と同様の、反応器20と液化器50とを連通する軽質油配管160を備えているが、更に、この軽質油配管160の途中に分離器150が備えられている。
分離器150は、気体状態の軽質油LOから高沸点成分HBを分離するものである。分離器150としては、高沸点成分HBを該高沸点成分HBの沸点以下にまで冷却できる冷却器(クーラー等)を用いることができる。
【0052】
更に、重質油軽質化装置300は、重質油軽質化装置100と同様に、反応器20を過熱するための加熱器130を有しているが、この加熱器130が燃焼器(バーナー、触媒燃焼器、等)となっている。
そして、加熱器130が、配管132によって分離器150と連通されるとともに、配管134によって重質油貯留器10と連通されている。
加熱器130は、外部から配管136を通して空気を供給しながら、分離器150から供給された高沸点成分及び重質油貯留器10から供給された重質油HOを燃焼させることができるようになっている。この燃焼により生じた熱により、反応器20を加熱する。
【0053】
第三の実施形態に係る重質油軽質化装置300におけるその他の構成、好ましい範囲、及び変形例は、第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100と同様である。重質油を軽質化させる基本的な動作も、第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100と同様である。
【0054】
次に、第三の実施形態に係る重質油軽質化装置300における、重質油の軽質化の動作の一例について、第一の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0055】
重質油軽質化装置300における重質油の軽質化では、反応器20から排出された気体状態の軽質油LOがキャリアガスCGとともに分離器150に送気される。分離器150では、気体状態の軽質油LO及びキャリアガスCGが、反応温度より20℃程度低い温度(例えば130〜280℃程度)に冷却され、気体状態の軽質油LOから高沸点成分HBが分離される。得られた高沸点成分HBは配管132を介して加熱器130に供給される。
更に、加熱器130には重質油貯留器10から重質油HOが供給される。
更に、加熱器130には、外部から配管136を介して空気が供給される。
加熱器130は、上記で供給された高沸点成分HB及び重質油HOを燃焼させ、燃焼により生じた熱で反応器20を加熱する。
以上のように、重質油軽質化装置300では、もともと系内に存在していた重質油HO及び該重質油HOから軽質油LOを経て生成された高沸点成分HBを反応器の加熱に利用するので、反応温度の微調整や反応変動への対応を行うことができる。
【0056】
更に、分離器150からは、高沸点成分HBが除かれた気体状態の軽質油LOと、キャリアガスと、が排出される。キャリアガスCGは、予め作動させておいた送気手段P2の作用により、分離器150→軽質油配管160→液化器50→キャリアガス配管186→キャリアガス配管124→反応器20→軽質油配管160→分離器150の経路で輸送される。
以上のように、重質油軽質化装置300では、上記経路でキャリアガスを循環させてキャリアガスを繰り返し使用できるので、重質油の軽質化に用いるキャリアガスの使用量をより低減できる。
【0057】
更に、重質油軽質化装置300では、高沸点成分HBが除かれた気体状態の軽質油LOが液化器50で液化されるので、より良質な軽質油を得ることができる。
【0058】
以上、第三の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、第三の実施形態では、一端が液化器50に接続されたキャリアガス配管186の他端は、外部からキャリアガスを供給するためのキャリアガス配管124に接続されているが(即ち、外部からのキャリアガスの供給経路とキャリアガスの循環経路とが一部重複しているが)、キャリアガス配管186の他端は、反応器20に直接接続されていてもよい。即ち、外部からのキャリアガスの供給経路と、キャリアガスの循環経路と、が分離されていてもよい。
また、第三の実施形態では、加熱器130が、分離器150及び重質油貯留器10の両方に連通されているが、加熱器130は、分離器150及び重質油貯留器10のいずれか一方に連通されていてもよい。
【0059】
また、第三の実施形態に係る重質油軽質化装置300の変形例として、分離器150で分離された高沸点成分HBを反応器20に戻す戻し配管を備えた構成の重質油軽質化装置が挙げられる。この変形例によれば、反応器20の反応温度を、生成したい軽質油の蒸留温度の上限よりも高く設定することで反応速度を増加させることができる。この変形例では、生成された軽質油は蒸留温度上限よりも沸点が高い成分を含むが、この成分は分離器150で分離されるため、最終的に得られる軽質油の蒸留性状を変えずに収量を増加させることができる。
【0060】
[第四の実施形態]
図4は、本発明の第四の実施形態に係る重質油軽質化装置400を模式的に示した図である。
図4に示すように、第四の実施形態に係る重質油軽質化装置400の構成は、第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100の構成において、反応器20から排出された重質油HO(未反応油)を重質油貯留器10に供給する重質油配管70を、反応器20から排出された重質油HO(未反応油)を再び反応器20に戻す重質油配管71に変更したこと以外は第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100と同一の構成である。
重質油配管71には送液手段P4(例えば、送液ポンプ等)が設けられており、この送液手段P4を作動させることにより、重質油を循環させることができるようになっている。
【0061】
重質油軽質化装置400では、送液手段P4を作動させることにより、液体状態の重質油HOを、反応器20→重質油配管71→反応器20の順に循環させながら、重質油HOと触媒22との接触を連続的に行うことができる。
このとき、反応器20における液相部の体積を一定に保つために、重質油貯留器10から反応器20への重質油HOの送液量を減少させることや、重質油貯留器10から反応器20への重質油HOの送液を止めることも好ましい。
【0062】
第四の実施形態に係る重質油軽質化装置400におけるその他の構成、好ましい範囲、及び変形例は、第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100と同様である。重質油を軽質化させる基本的な動作も、第一の実施形態に係る重質油軽質化装置100と同様である。
なお、重質油軽質化装置400では、一端が反応器20に接続された重質油配管71の他端は、反応器20に接続されているが、重質油配管71の他端は重質油配管40に接続されていてもよい。即ち、重質油貯留器10から反応器20への重質油の供給経路と、重質油の循環経路と、が一部重複していてもよい。
【0063】
以上、本発明の第一〜第四の実施形態に係る重質油軽質化装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
また、第一〜第四の実施形態(各変形例を含む)は、適宜組み合わせてもよい。
例えば、重質油軽質化装置100における加熱器30として、重質油軽質化装置300における加熱器130のような燃焼器(重質油貯留器に配管を介して連通され、重質油貯留器から供給された重質油を燃焼させる燃焼器)を用いてもよい。
また、第二の実施形態に係る重質油軽質化装置200又は第三の実施形態に係る重質油軽質化装置300の構成において、反応器20から排出された重質油HO(未反応油)を重質油貯留器10に供給する重質油配管70を、反応器20から排出された重質油HO(未反応油)を再び反応器20に戻す重質油配管(例えば、図4中の重質油配管71)に変更してもよい。
また、本発明における、重質油貯留器、反応器、液化器、分離器、重質油配管や軽質油配管等の各種配管の材質には特に限定はなく、例えばステンレス鋼(SUS)等、公知の材質から適宜選択することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0065】
〔実施例1〕
図1に示す重質油軽質化装置100を用い、重質油の軽質化を行った。
重質油HOとしては、動粘度が8cSt(50℃)であり、蒸留特性が0〜90%留出温度320〜450℃の物性となるA重油相当の重質油を用いた。
触媒22としては、ゼオライトを主成分とする触媒を0.75g用いた。
反応器20における反応温度(重質油の温度)は250℃とした。
反応器20の反応圧力は、0.1MPaとした。
加熱器30としては、ヒーターを用いた。
キャリアガスCGとしては窒素を用いた。
液化器50における冷却温度は25℃とした。
反応時間(重質油軽質化装置の作動時間)は、6時間とした。
【0066】
上記条件の下、送液量調整機能を備えた送液手段P1による重質油の送液量の調整により、反応器20における空間速度(SV)[1/h]を種々変化させて重質油の軽質化を行った。
表1に、空間速度(SV)と軽質油量(最終的に得られた軽質油の質量)との関係を示す。軽質油量は、空間速度(SV)が0.0[1/h]の場合の軽質油量を1.00としたときの相対値である。
【0067】
【表1】

【0068】
表1に示すように、空間速度(SV)が0.0[1/h]である条件1と比較して、空間速度(SV)が0.0[1/h]を超える条件2〜7では、軽質油量が増大することが確認された。
【0069】
〔実施例2〕
実施例1において、A重油相当の重質油を、動粘度が20cSt(50℃)であるB重油相当の重質油に変更したこと以外は実施例1と同様にして重質油の軽質化を行ったところ、実施例1と同様の効果が確認された。
【符号の説明】
【0070】
10 重質油貯留器
20 反応器
22 触媒
24、124、186キャリアガス配管
30、120、130 加熱器
40 第1の重質油配管
50 液化器
60、160 軽質油配管
70 第2の重質油配管
80 軽質油貯留器
100、200、300 重質油軽質化装置
124、186キャリアガス配管
150 分離器
CG キャリアガス
HB 高沸点成分
HO 重質油
LO 軽質油
HG 高温ガス
P1 送液手段
P2 送気手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状態の重質油を貯留する重質油貯留器と、
前記重質油を軽質化させる触媒を内部に有し、前記重質油貯留器から送液された液体状態の前記重質油と前記触媒とを150℃〜300℃の条件下で接触させることにより前記重質油を軽質化させて軽質油を生成するとともに未反応の重質油を排出する反応器と、
前記反応器を加熱するための加熱器と、
前記反応器から排出された前記未反応の重質油を前記反応器に戻す重質油配管と、
を備えた重質油軽質化装置。
【請求項2】
更に、前記重質油貯留器から前記反応器への送液量を調整する送液量調整機能を有する送液手段を備えた請求項1に記載の重質油軽質化装置。
【請求項3】
前記反応器は、前記重質油及び前記触媒を含む液相部と、生成された軽質油の少なくとも一部が気体状態となって前記液相部から分離される気相部と、該気相部から気体状態の軽質油を排出する排出口と、を有する請求項1又は請求項2に記載の重質油軽質化装置。
【請求項4】
更に、前記重質油貯留器から前記反応器への送液量を、前記反応器内における触媒量(g)に対する前記反応器内における重質油の流量(g/h)の比[反応器内における重質油の流量(g/h)/反応器内における触媒量(g)](1/h)が0.5〜50(1/h)となるように調整する送液量調整機能を有する送液手段を備えた請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の重質油軟質化装置。
【請求項5】
前記重質油貯留器は、前記重質油配管の途中に設けられている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置。
【請求項6】
前記反応器は、キャリアガスを前記気相部に供給するキャリアガス供給口を有し、前記キャリアガス供給口から供給されたキャリアガスを前記気体状態の軽質油とともに前記排出口から排出する請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置。
【請求項7】
前記加熱器が、外部から供給された高温ガスの熱を蓄熱し、蓄熱された熱で前記反応器を加熱する熱交換器である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置。
【請求項8】
前記加熱器が、前記重質油貯留器に連通され、前記重質油貯留器から供給された前記重質油を燃焼させ、燃焼により生じた熱で前記反応器を加熱する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置。
【請求項9】
更に、前記反応器の気相部から排出された前記気体状態の軽質油から高沸点成分を分離する分離器を備え、
前記加熱器が、前記分離器に連通され、前記分離器から供給された高沸点成分を燃焼させ、燃焼により生じた熱で前記反応器を加熱する請求項3〜請求項6、及び請求項8のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置。
【請求項10】
更に、前記反応器の気相部から排出された前記キャリアガス及び前記気体状態の軽質油が供給され、前記キャリアガスを排出するとともに前記気体状態の軽質油を液化する液化器を備えた請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の重質油軽質化装置。
【請求項11】
更に、前記反応器と前記液化器とを連通し、前記液化器から排出されたキャリアガスを前記反応器に戻すキャリアガス配管を備えた請求項10に記載の重質油軽質化装置。
【請求項12】
液体状態の重質油を循環させながら、前記液体状態の重質油と該重質油を軽質化させる触媒とを150℃〜300℃の条件下で接触させることにより、前記重質油を軽質化させて軽質油を生成する工程を有する重質油軽質化方法。
【請求項13】
前記接触は、前記重質油及び前記触媒を含む液相部と、生成された軽質油の少なくとも一部が気体状態となって前記液相部から分離される気相部と、該気相部から気体状態の軽質油を排出する排出口と、を有する反応器の前記液相部で行う請求項12に記載の重質油軽質化方法。
【請求項14】
前記接触は、重質油の流量(g/h)と触媒量(g)との比[重質油の流量(g/h)/触媒量(g)](1/h)が0.5〜50(1/h)となる条件で行う請求項12又は請求項13に記載の重質油軽質化方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−91690(P2013−91690A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233398(P2011−233398)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】