重質炭化水素の除去方法
【課題】GTLプロセスにおいてFTオフガスを管式リフォーマー用の燃料に使用した際の、FTオフガスに含まれる重質炭化水素の析出による加熱用のバーナーチップの閉塞を防止する。
【解決手段】FTオフガスに含まれる重質炭化水素を、吸収油との接触、蒸留塔への導入、冷却又は吸着剤への通気により除去し、除去した後のFTオフガスを管式リフォーマーの燃料として使用する。これにより、管式リフォーマーの長時間にわたる安定的な運転が可能となり、FTオフガスの燃料としての有効利用を図ることができる。
【解決手段】FTオフガスに含まれる重質炭化水素を、吸収油との接触、蒸留塔への導入、冷却又は吸着剤への通気により除去し、除去した後のFTオフガスを管式リフォーマーの燃料として使用する。これにより、管式リフォーマーの長時間にわたる安定的な運転が可能となり、FTオフガスの燃料としての有効利用を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GTLプロセスにおいてフィッシャー・トロプシュ反応工程で発生するオフガスを合成ガス製造工程における燃料ガスとして使用する際の、オフガス中に含まれる重質炭化水素の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、燃焼させても大気汚染の原因となる硫黄酸化物や粒子状物質が発生しないこと及び発熱量当りの炭酸ガス発生量が少ないことから、石油系と比較して環境への負荷が少ない燃料系であると考えられている。
【0003】
そのため、世界的に環境問題への対応や資源の多様化への対策が求められる中、エネルギー分野においても、石油の代替燃料としての天然ガスへの注目が高まっている。
【0004】
天然ガスを原料として化学反応によりナフサ、灯油、軽油等の液状合成炭化水素を製造する方法として、GTL(gas−to−liquid)技術が知られている。GTL技術は、一般に、改質反応により合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)を製造する工程(合成ガス製造工程)、フィッシャー・トロプシュ(FT)合成反応により直鎖状の炭化水素を主体とする合成油を合成ガスから製造する工程(FT合成工程)、及び合成油を水素化精製、水素化分解処理することにより製品油とする工程(アップグレーディング工程)からなる。
【0005】
合成ガスは、天然ガスの改質反応により生成される。改質反応を利用して合成ガスを製造する技術としては、スチームリフォーミング法、CO2リフォーミング法、オートサーマルリフォーミング法(ATR)、接触部分酸化法(CPOX)、及び直接部分酸化法(POX)等が知られている。
【0006】
改質反応は、原理的には天然ガスにスチームを添加して以下の反応式(1)に従って合成ガスを生成する水蒸気改質反応と、天然ガスに二酸化炭素を添加するか又は天然ガスに含まれる二酸化炭素を使用して以下の反応式(2)に従って合成ガスを生成する炭酸ガス改質反応とに大別される。なお、下記の式では天然ガス中に主に含まれるメタンの改質反応を例として示している。
【0007】
式(1): CH4 + H2O → CO + 3H2
ΔH298=+206kJ/mol
式(2): CH4 + CO2 → 2CO + 2H2
ΔH298=+248kJ/mol
【0008】
上記の式(1)及び(2)に示すように、これらの改質反応はいずれも吸熱反応であり、反応に必要な熱を外部から供給する必要がある。ATR、CPOX及びPOXでは、原料である天然ガスの一部をそれぞれバーナーや触媒等を用いて完全酸化し、メタン等の炭化水素から二酸化炭素と水が生成する際に発生する熱を用いて改質反応を行わせる。そのため、系全体としては発熱反応となり、外部から必要な熱を導入する必要はない。
【0009】
これに対し、スチームリフォーミング法やCO2リフォーミング法では、触媒を充填した管式リフォーマーを加熱炉内に設置してバーナー燃焼等の加熱手段により、改質反応に必要な熱を外から供給している。
【0010】
スチームリフォーミング法やCO2リフォーミング法では、製造規模を大きくすると反応に必要な熱も大量に必要となり、装置も大型化してしまうため、スケールメリットによる利益を得ることが難しい。そのため、特に大規模製造にはATRやPOXが適しているとされている。
【0011】
しかし、ATRやPOXは天然ガスに酸素を添加する工程を含むため、高価な酸素プラントを必要とする。さらに、天然ガスへの酸素の添加は大きな発熱をもたらすため、爆発等の危険があり、プラントの設計や運営に際して制約が大きい。
【0012】
一方で、スチームリフォーミング法やCO2リフォーミング法は、天然ガスに酸素を導入せず、また反応自体も吸熱反応なので、より安全に合成ガスを製造できるという利点がある。また、スチームリフォーミング法とCO2リフォーミング法とを同時に行うことで、生成する合成ガスの水素/一酸化炭素比をFT合成反応において好ましい2.0に近づけることも可能となっている。
【0013】
スチームリフォーミング法やCO2リフォーミング法における外部からの熱の供給の問題についても、後の工程であるFT合成工程で発生するFTオフガスを管式リフォーマー加熱のための燃料として再利用することにより、GTLプロセス全体のエネルギー効率の向上を図ることができる。FTオフガスとは、FT合成工程において未反応の合成ガスや副次的に発生するメタン等からなるガスのことである。
【0014】
FT合成工程では、水素と一酸化炭素とから炭化水素鎖の1単位(−CH2−)を生成し、これを合成して炭化水素鎖を成長させていく。この反応は全体として発熱反応であり、以下の反応式(3)によって表される。
【0015】
式(3): (2n+1)H2 + nCO → CnH2n+2 + nH2O
ΔH298=−167kJ/mol−CO
【0016】
ここで、FT合成反応で生成する炭化水素の炭素数は一定ではなく、さまざまな重合度(n数)の炭化水素が生じる。生成した(−CH2−)のうち炭化水素鎖の成長に使われるものの割合を連鎖成長確率αといい、どの重合度の炭化水素鎖がどの程度生じるかは連鎖成長確率αによって決まる(Andersen−Shultz−Flory分布)。FT合成工程では、GTLの主な目的物である灯軽油留分が多くなるα>0.85や、さらに重質の、分解することにより灯油や軽油を得ることができるワックス留分が多くなるα>0.90で反応が行われる。しかし、この領域でも十分に成長しなかった軽質の炭化水素がわずかながら生じる。また、合成ガスのすべてが反応に使用されるわけではなく、水素及び一酸化炭素の一部は未反応のまま残る。
【0017】
FT合成反応の目的物である炭素数が多く沸点の高い炭化水素は液状の成分として取り出されるが、反応の副生物であるH2O、メタン及びエタン等の軽質の炭化水素、並びに未反応の水素及び一酸化炭素等は、混合されたガス状の成分として取り出される。これらのうち、水素及び一酸化炭素はFT合成反応に再利用することができるため、このガス状の成分を冷却水等により冷却して凝縮することによりH2O等を取り除き、凝縮しなかった水素、一酸化炭素、メタン、エタン及び沸点が低い炭化水素等からなるガスはFT合成反応にリサイクルされる。しかし、メタン等はFT合成反応へ導入されてもそれ以上反応しないため、リサイクルを繰り返すごとにガス状の成分に含まれるメタン等の割合は増加していくことになる。このメタン等がFT合成反応系へ蓄積することを防ぐため、リサイクルする前にガスの一部が抜き出され、オフガス(FTオフガス)として除去される。こうして発生するFTオフガスはメタン等の可燃性の成分を多く含むため、管式リフォーマー加熱のための燃料として用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、FTオフガスにはFT合成反応の生成物である重質炭化水素もわずかながら含まれる。特に炭素数が5以上の重質炭化水素は、加熱されることにより熱分解や重合等を起こして液状または固体状の物質として析出することがある。そのため、オフガスをそのまま管式リフォーマー加熱の燃料として用いた場合、析出した重質炭化水素が加熱用のバーナーチップを閉塞し、バーナーによる安定的な加熱を妨げ、GTLプロセスの効率を低下させる恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、上記課題を解決する手段として本発明を完成させた。すなわち、本発明は、メタンを主成分とする天然ガスとスチーム及び/又は炭酸ガスとを、改質触媒を充填して加熱した管式リフォーマーを通して反応させることにより、水素及び一酸化炭素を主成分とする合成ガスを製造する合成ガス製造工程、該合成ガス製造工程で製造された合成ガスをフィッシャー・トロプシュ反応させた後、ガス状生成物及び未反応合成ガスからなるFTオフガスを分離することにより、フィッシャー・トロプシュ油を製造するフィッシャー・トロプシュ合成工程、並びに該フィッシャー・トロプシュ油を水素化精製又は水素化分解処理することにより各種炭化水素油を製造するアップグレーディング工程からなる、天然ガスから各種炭化水素油を製造する方法において、該FTオフガスに含まれる重質炭化水素を除去し、該除去した後のFTオフガスを管式リフォーマーの燃料として使用することを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の手段によれば、FTオフガスに含まれる炭素数が5以上の重質炭化水素はバーナーに供給される前に除去されるため、これらの熱分解や重合等によるバーナーチップの閉塞を防止することができ、管式リフォーマーの長時間にわたる安定的な運転が可能となる。さらに、FTオフガスの燃料としての有効利用が図れるため、GTL技術全体としてのエネルギー効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に係る重質炭化水素の除去方法を示す図。
【図2】実施例2に係る重質炭化水素の除去方法を示す図。
【図3】実施例3に係る重質炭化水素の除去方法を示す図。
【図4】実施例4に係る重質炭化水素の除去方法を示す図。
【図5】実施例5に係る重質炭化水素の除去方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明においてFTオフガスを合成ガス製造工程の燃料としてリサイクルする態様の一例を説明する。
【0023】
改質反応によって生成された合成ガスは、FT合成工程に設置された気泡塔型反応器に、その底部から流入される。気泡塔型反応器内には、FT合成反応の生成物である液状炭化水素と触媒粒子とからなるスラリーが充填されており、収容されたスラリー内を合成ガスが上昇する際に、一酸化炭素と水素ガスとによるFT合成反応により、炭化水素が生成される。
【0024】
合成された炭化水素のうち液体状のものは、スラリーとして触媒粒子とともに分離器に導入され、そこで触媒粒子等の固体状の成分と液体炭化水素を含んだ液体状の成分とに分離される。分離された固体状の成分は気泡塔型反応器に戻される。液体状の成分は精留塔に供給されて加熱され、沸点の違いにより、ナフサ留分(沸点が約150℃以下)、灯油・軽油留分(沸点が約150〜350℃)、及びワックス留分(沸点が約350℃以上)に分留される。それぞれの留分はその後アップグレーディング工程へ送られる。
【0025】
一方で、気泡塔型反応器の塔頂からは、未反応の合成ガス及び合成された炭化水素のうちガス状のものを含むガス状の成分が放出され、炭化水素回収装置に供給される。炭化水素回収装置としては特に限定されないが、例えば冷却水を用いた熱交換器により上記ガス状の成分を冷却し、凝縮した水及び液体状の炭化水素からなる液体状の成分と、凝縮しなかったガス状の成分とに分離する。分離した液体状の成分からは水を除去し、炭化水素は精留塔に導入する。炭化水素回収装置での分離後に残ったガス状の成分は、主に未反応の合成ガス及びメタンやエタン等の軽質炭化水素を主成分とするが、重質の炭化水素も微量ながら含まれる。このガス状の成分は気泡塔型反応器の底部に再導入されてFT合成反応に再利用されるが、それ以上反応しないメタンやエタン等が気泡塔型反応器内に蓄積することを防止するため、一部は抜き出してオフガス(FTオフガス)として排出され、合成ガス製造工程で改質反応用の管式リフォーマーを加熱するための燃料ガスとして使用される。
【0026】
こうして排出され、改質反応用の燃料ガスとしてリサイクルされるFTオフガスにも、重質の炭化水素も微量ながら含まれることになる。この重質の炭化水素は、燃料ガスとして用いられる際に熱分解や重合等により析出し、バーナーチップに閉塞を起こし、管式リフォーマーを長時間にわたって安定して加熱し続ける上での障害となる。この問題を解決するため、本発明では、FTオフガスを管式リフォーマーの燃料として使用する前に、ガス中に含まれている重質炭化水素を除去する。
【0027】
以下に、本発明において重質炭化水素を除去する方法の実施形態について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されることはない。
本発明の第1の実施形態は、FTオフガスを吸収油と直接接触させることにより、オフガス中の重質炭化水素を吸収油に吸収させる方法である。
【0028】
吸収油としては、FTオフガスに含まれる炭素数が5以上の炭化水素を吸収することができれば特に限定されることはないが、比較的重質の灯油や軽油を用いることが好ましい。例えば、GTLプロセスの最終製品である灯油留分や軽油留分を用いることができるし、GTLプロセス中に適当な中間油があれば、それを用いてもよい。このような中間油としては、上記精留塔で分留された灯油・軽油留分や、それらを水素化精製した生成物等を用いることができる。
【0029】
吸収の条件としても特に限定されることはなく、用いる吸収油等によりそれぞれ好適に設定することができる。ただし、吸収油が蒸発してしまうことを防ぐため、温度は10〜50℃の常温付近、圧力は2.4〜3.2MPaGとすることが好ましい。
【0030】
本発明の第2の実施形態は、FTオフガスを蒸留塔へ導入し、重質炭化水素を蒸留分離する方法である。
【0031】
蒸留塔としては、蒸留によりFTオフガスに含まれる炭素数が5以上の炭化水素を分離することができれば特に限定されることはない。本発明を実施するGTLプロセスにおいて、蒸留塔は新たに設置してもよいし、プロセス内において炭素数が5以上の炭化水素を分離することができる蒸留塔があれば、そこに導入してもよい。例えば、アップグレーディング工程において、前記精留塔の上部から供給されたナフサ留分を水素化処理した生成物(水素化ナフサ)を液体のナフサと軽質炭化水素を主成分とする気体とに分離する際に蒸留塔が用いられるが、この蒸留塔へFTオフガスを導入して、分離後の気体を管式リフォーマーの燃料として使用することができる。
【0032】
また、蒸留の条件としても特に限定されることはないが、例えば塔頂温度は−50〜40℃、圧力は2.4〜3.2MPaGで蒸留することが好ましい。
【0033】
本発明の第3の実施形態は、FTオフガスを冷却し、重質炭化水素を凝縮させて分離する方法である。
【0034】
冷却の条件としては、FTオフガスに含まれる炭素数が5以上の炭化水素を分離することができれば特に限定されることはないが、例えば温度は5〜20℃、圧力は2.4〜3.2MPaGとすることが好ましい。冷却の方法も特に限定されることはなく、例えば冷却水やプロセスで生じた排水を用いた熱交換器等を用いることができる。
【0035】
本発明の第4の実施形態は、吸着剤によりFTオフガスから重質炭化水素を除去する方法である。
【0036】
吸着剤としては、FTオフガスに含まれる炭素数が5以上の炭化水素を分離することができれば特に限定されることはないが、例えば活性炭により吸着する方法を用いることができる。活性炭を用いる場合、吸着装置における操作条件としては、温度は20〜40℃、圧力は0〜3.2MPaGとすることが好ましい。また、活性炭は100〜150℃、0〜0.35MPaGでのスチーミング処理により再生することが好ましい。その際、例えばGTLプロセス内に吸着塔を2塔設置し、吸着と再生を切り替えて運転すれば、連続運転が可能となる。
【0037】
また、上記第1〜第4の実施例は必ずしも単独で用いる必要はない。例えば、FTオフガスを冷却(第2の実施形態)しながら、吸収液へ接触(第1の実施形態)させたり吸着剤(第4の実施形態)を用いたりすると、重畳した効果を得ることが期待されるため好ましい。
【0038】
以下に、本発明のさらなる理解のために実施例を用いて説明するが、これらの実施例はなんら本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0039】
[実施例1]
GTL技術を実行するプラントにおいて、FT合成工程で発生した未反応合成ガスと気体状の炭化水素からなるガスを冷却して気液分離し、表1に示す組成を有するFTオフガスを得た。なお、表1においてCnは炭素数がn個の炭化水素を意味し、C5+は、炭素数が5個以上の炭化水素を意味する。得られたFTオフガスの温度は45℃、圧力は2.75MPaG、流量は1000kmol/h(=15284kg/h)だった。炭素数が5以上の重質炭化水素の含有量は4.32wt%だった。
【0040】
【表1】
【0041】
このFTオフガスを圧力2.7MPaGで10℃まで冷却して、凝縮した液体状の成分と凝縮しなかった燃料ガスとに分離し、液体状の成分に含まれる重質炭化水素を回収した(図1)。その後、燃料ガスに含まれる炭素数が5以上の重質炭化水素の含有量を測定した。
【0042】
[実施例2]
実施例1で得たFTオフガスを蒸留塔に導入して、塔頂から回収される燃料ガスと塔底から回収される液体状の成分とに分離した(図2)。FTオフガスの塔頂での圧力は2.65MPaG、塔底での温度は198℃、塔頂での温度は−37℃だった。その後、塔頂から得られた燃料ガスに含まれる炭素数が5以上の重質炭化水素の含有量を測定した。
【0043】
[実施例3]
実施例1で得たFTオフガスと軽油に相当する吸収油とを、FTオフガスの圧力2.7MPaG、温度48℃の条件下で単段で直接接触させ、吸収油中に吸収された重質炭化水素を回収した(図3)。用いた吸収油の蒸留性状を表2に示す。また、吸収油の流量は10000kg/hとした。その後、燃料ガスに含まれる、吸収油に吸収されなかった炭素数が5以上の重質炭化水素の含有量を測定した。
【0044】
【表2】
【0045】
[実施例4]
実施例3において、さらに吸収油と接触させる際の温度を10℃に冷却し、重質炭化水素を回収した(図4)。吸収油の流量は10000kg/hとした。その後、燃料ガスに含まれる、吸収油に吸収されなかった炭素数が5以上の重質炭化水素の含有量を測定した。
【0046】
[実施例5]
実施例3において、FTオフガスと吸収油とを8段の吸収塔を用いて接触させ、重質炭化水素を回収した(図5)。FTオフガスの圧力は塔頂で2.65MPaG、温度は塔底で49℃、塔頂で50℃だった。また、吸収油の流量は10000kg/hとした。その後、燃料ガスに含まれる、吸収油に吸収されなかった炭素数が5以上の重質炭化水素の含有量を測定した。
【0047】
[実施例6〜8]
実施例3〜5において、用いる吸収液の流量を2倍の20000kg/hにした以外は同条件で実験を行い、それぞれ実施例6〜8とした。
【0048】
各実施例における、重質炭化水素の除去処理後の燃料ガスに含まれる炭素数が5以上の重質炭化水素の含有量、回収液又は吸収液の流量、及びFTオフガスに含まれていた重質炭化水素が燃料ガスと回収液又は吸収液とのうちいずれに分配されたかの割合を、表3に示す。いずれの実施例でも、燃料ガスからの重質炭化水素の除去効果が確認された。
【0049】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GTLプロセスにおいてフィッシャー・トロプシュ反応工程で発生するオフガスを合成ガス製造工程における燃料ガスとして使用する際の、オフガス中に含まれる重質炭化水素の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、燃焼させても大気汚染の原因となる硫黄酸化物や粒子状物質が発生しないこと及び発熱量当りの炭酸ガス発生量が少ないことから、石油系と比較して環境への負荷が少ない燃料系であると考えられている。
【0003】
そのため、世界的に環境問題への対応や資源の多様化への対策が求められる中、エネルギー分野においても、石油の代替燃料としての天然ガスへの注目が高まっている。
【0004】
天然ガスを原料として化学反応によりナフサ、灯油、軽油等の液状合成炭化水素を製造する方法として、GTL(gas−to−liquid)技術が知られている。GTL技術は、一般に、改質反応により合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)を製造する工程(合成ガス製造工程)、フィッシャー・トロプシュ(FT)合成反応により直鎖状の炭化水素を主体とする合成油を合成ガスから製造する工程(FT合成工程)、及び合成油を水素化精製、水素化分解処理することにより製品油とする工程(アップグレーディング工程)からなる。
【0005】
合成ガスは、天然ガスの改質反応により生成される。改質反応を利用して合成ガスを製造する技術としては、スチームリフォーミング法、CO2リフォーミング法、オートサーマルリフォーミング法(ATR)、接触部分酸化法(CPOX)、及び直接部分酸化法(POX)等が知られている。
【0006】
改質反応は、原理的には天然ガスにスチームを添加して以下の反応式(1)に従って合成ガスを生成する水蒸気改質反応と、天然ガスに二酸化炭素を添加するか又は天然ガスに含まれる二酸化炭素を使用して以下の反応式(2)に従って合成ガスを生成する炭酸ガス改質反応とに大別される。なお、下記の式では天然ガス中に主に含まれるメタンの改質反応を例として示している。
【0007】
式(1): CH4 + H2O → CO + 3H2
ΔH298=+206kJ/mol
式(2): CH4 + CO2 → 2CO + 2H2
ΔH298=+248kJ/mol
【0008】
上記の式(1)及び(2)に示すように、これらの改質反応はいずれも吸熱反応であり、反応に必要な熱を外部から供給する必要がある。ATR、CPOX及びPOXでは、原料である天然ガスの一部をそれぞれバーナーや触媒等を用いて完全酸化し、メタン等の炭化水素から二酸化炭素と水が生成する際に発生する熱を用いて改質反応を行わせる。そのため、系全体としては発熱反応となり、外部から必要な熱を導入する必要はない。
【0009】
これに対し、スチームリフォーミング法やCO2リフォーミング法では、触媒を充填した管式リフォーマーを加熱炉内に設置してバーナー燃焼等の加熱手段により、改質反応に必要な熱を外から供給している。
【0010】
スチームリフォーミング法やCO2リフォーミング法では、製造規模を大きくすると反応に必要な熱も大量に必要となり、装置も大型化してしまうため、スケールメリットによる利益を得ることが難しい。そのため、特に大規模製造にはATRやPOXが適しているとされている。
【0011】
しかし、ATRやPOXは天然ガスに酸素を添加する工程を含むため、高価な酸素プラントを必要とする。さらに、天然ガスへの酸素の添加は大きな発熱をもたらすため、爆発等の危険があり、プラントの設計や運営に際して制約が大きい。
【0012】
一方で、スチームリフォーミング法やCO2リフォーミング法は、天然ガスに酸素を導入せず、また反応自体も吸熱反応なので、より安全に合成ガスを製造できるという利点がある。また、スチームリフォーミング法とCO2リフォーミング法とを同時に行うことで、生成する合成ガスの水素/一酸化炭素比をFT合成反応において好ましい2.0に近づけることも可能となっている。
【0013】
スチームリフォーミング法やCO2リフォーミング法における外部からの熱の供給の問題についても、後の工程であるFT合成工程で発生するFTオフガスを管式リフォーマー加熱のための燃料として再利用することにより、GTLプロセス全体のエネルギー効率の向上を図ることができる。FTオフガスとは、FT合成工程において未反応の合成ガスや副次的に発生するメタン等からなるガスのことである。
【0014】
FT合成工程では、水素と一酸化炭素とから炭化水素鎖の1単位(−CH2−)を生成し、これを合成して炭化水素鎖を成長させていく。この反応は全体として発熱反応であり、以下の反応式(3)によって表される。
【0015】
式(3): (2n+1)H2 + nCO → CnH2n+2 + nH2O
ΔH298=−167kJ/mol−CO
【0016】
ここで、FT合成反応で生成する炭化水素の炭素数は一定ではなく、さまざまな重合度(n数)の炭化水素が生じる。生成した(−CH2−)のうち炭化水素鎖の成長に使われるものの割合を連鎖成長確率αといい、どの重合度の炭化水素鎖がどの程度生じるかは連鎖成長確率αによって決まる(Andersen−Shultz−Flory分布)。FT合成工程では、GTLの主な目的物である灯軽油留分が多くなるα>0.85や、さらに重質の、分解することにより灯油や軽油を得ることができるワックス留分が多くなるα>0.90で反応が行われる。しかし、この領域でも十分に成長しなかった軽質の炭化水素がわずかながら生じる。また、合成ガスのすべてが反応に使用されるわけではなく、水素及び一酸化炭素の一部は未反応のまま残る。
【0017】
FT合成反応の目的物である炭素数が多く沸点の高い炭化水素は液状の成分として取り出されるが、反応の副生物であるH2O、メタン及びエタン等の軽質の炭化水素、並びに未反応の水素及び一酸化炭素等は、混合されたガス状の成分として取り出される。これらのうち、水素及び一酸化炭素はFT合成反応に再利用することができるため、このガス状の成分を冷却水等により冷却して凝縮することによりH2O等を取り除き、凝縮しなかった水素、一酸化炭素、メタン、エタン及び沸点が低い炭化水素等からなるガスはFT合成反応にリサイクルされる。しかし、メタン等はFT合成反応へ導入されてもそれ以上反応しないため、リサイクルを繰り返すごとにガス状の成分に含まれるメタン等の割合は増加していくことになる。このメタン等がFT合成反応系へ蓄積することを防ぐため、リサイクルする前にガスの一部が抜き出され、オフガス(FTオフガス)として除去される。こうして発生するFTオフガスはメタン等の可燃性の成分を多く含むため、管式リフォーマー加熱のための燃料として用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、FTオフガスにはFT合成反応の生成物である重質炭化水素もわずかながら含まれる。特に炭素数が5以上の重質炭化水素は、加熱されることにより熱分解や重合等を起こして液状または固体状の物質として析出することがある。そのため、オフガスをそのまま管式リフォーマー加熱の燃料として用いた場合、析出した重質炭化水素が加熱用のバーナーチップを閉塞し、バーナーによる安定的な加熱を妨げ、GTLプロセスの効率を低下させる恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、上記課題を解決する手段として本発明を完成させた。すなわち、本発明は、メタンを主成分とする天然ガスとスチーム及び/又は炭酸ガスとを、改質触媒を充填して加熱した管式リフォーマーを通して反応させることにより、水素及び一酸化炭素を主成分とする合成ガスを製造する合成ガス製造工程、該合成ガス製造工程で製造された合成ガスをフィッシャー・トロプシュ反応させた後、ガス状生成物及び未反応合成ガスからなるFTオフガスを分離することにより、フィッシャー・トロプシュ油を製造するフィッシャー・トロプシュ合成工程、並びに該フィッシャー・トロプシュ油を水素化精製又は水素化分解処理することにより各種炭化水素油を製造するアップグレーディング工程からなる、天然ガスから各種炭化水素油を製造する方法において、該FTオフガスに含まれる重質炭化水素を除去し、該除去した後のFTオフガスを管式リフォーマーの燃料として使用することを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の手段によれば、FTオフガスに含まれる炭素数が5以上の重質炭化水素はバーナーに供給される前に除去されるため、これらの熱分解や重合等によるバーナーチップの閉塞を防止することができ、管式リフォーマーの長時間にわたる安定的な運転が可能となる。さらに、FTオフガスの燃料としての有効利用が図れるため、GTL技術全体としてのエネルギー効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に係る重質炭化水素の除去方法を示す図。
【図2】実施例2に係る重質炭化水素の除去方法を示す図。
【図3】実施例3に係る重質炭化水素の除去方法を示す図。
【図4】実施例4に係る重質炭化水素の除去方法を示す図。
【図5】実施例5に係る重質炭化水素の除去方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明においてFTオフガスを合成ガス製造工程の燃料としてリサイクルする態様の一例を説明する。
【0023】
改質反応によって生成された合成ガスは、FT合成工程に設置された気泡塔型反応器に、その底部から流入される。気泡塔型反応器内には、FT合成反応の生成物である液状炭化水素と触媒粒子とからなるスラリーが充填されており、収容されたスラリー内を合成ガスが上昇する際に、一酸化炭素と水素ガスとによるFT合成反応により、炭化水素が生成される。
【0024】
合成された炭化水素のうち液体状のものは、スラリーとして触媒粒子とともに分離器に導入され、そこで触媒粒子等の固体状の成分と液体炭化水素を含んだ液体状の成分とに分離される。分離された固体状の成分は気泡塔型反応器に戻される。液体状の成分は精留塔に供給されて加熱され、沸点の違いにより、ナフサ留分(沸点が約150℃以下)、灯油・軽油留分(沸点が約150〜350℃)、及びワックス留分(沸点が約350℃以上)に分留される。それぞれの留分はその後アップグレーディング工程へ送られる。
【0025】
一方で、気泡塔型反応器の塔頂からは、未反応の合成ガス及び合成された炭化水素のうちガス状のものを含むガス状の成分が放出され、炭化水素回収装置に供給される。炭化水素回収装置としては特に限定されないが、例えば冷却水を用いた熱交換器により上記ガス状の成分を冷却し、凝縮した水及び液体状の炭化水素からなる液体状の成分と、凝縮しなかったガス状の成分とに分離する。分離した液体状の成分からは水を除去し、炭化水素は精留塔に導入する。炭化水素回収装置での分離後に残ったガス状の成分は、主に未反応の合成ガス及びメタンやエタン等の軽質炭化水素を主成分とするが、重質の炭化水素も微量ながら含まれる。このガス状の成分は気泡塔型反応器の底部に再導入されてFT合成反応に再利用されるが、それ以上反応しないメタンやエタン等が気泡塔型反応器内に蓄積することを防止するため、一部は抜き出してオフガス(FTオフガス)として排出され、合成ガス製造工程で改質反応用の管式リフォーマーを加熱するための燃料ガスとして使用される。
【0026】
こうして排出され、改質反応用の燃料ガスとしてリサイクルされるFTオフガスにも、重質の炭化水素も微量ながら含まれることになる。この重質の炭化水素は、燃料ガスとして用いられる際に熱分解や重合等により析出し、バーナーチップに閉塞を起こし、管式リフォーマーを長時間にわたって安定して加熱し続ける上での障害となる。この問題を解決するため、本発明では、FTオフガスを管式リフォーマーの燃料として使用する前に、ガス中に含まれている重質炭化水素を除去する。
【0027】
以下に、本発明において重質炭化水素を除去する方法の実施形態について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されることはない。
本発明の第1の実施形態は、FTオフガスを吸収油と直接接触させることにより、オフガス中の重質炭化水素を吸収油に吸収させる方法である。
【0028】
吸収油としては、FTオフガスに含まれる炭素数が5以上の炭化水素を吸収することができれば特に限定されることはないが、比較的重質の灯油や軽油を用いることが好ましい。例えば、GTLプロセスの最終製品である灯油留分や軽油留分を用いることができるし、GTLプロセス中に適当な中間油があれば、それを用いてもよい。このような中間油としては、上記精留塔で分留された灯油・軽油留分や、それらを水素化精製した生成物等を用いることができる。
【0029】
吸収の条件としても特に限定されることはなく、用いる吸収油等によりそれぞれ好適に設定することができる。ただし、吸収油が蒸発してしまうことを防ぐため、温度は10〜50℃の常温付近、圧力は2.4〜3.2MPaGとすることが好ましい。
【0030】
本発明の第2の実施形態は、FTオフガスを蒸留塔へ導入し、重質炭化水素を蒸留分離する方法である。
【0031】
蒸留塔としては、蒸留によりFTオフガスに含まれる炭素数が5以上の炭化水素を分離することができれば特に限定されることはない。本発明を実施するGTLプロセスにおいて、蒸留塔は新たに設置してもよいし、プロセス内において炭素数が5以上の炭化水素を分離することができる蒸留塔があれば、そこに導入してもよい。例えば、アップグレーディング工程において、前記精留塔の上部から供給されたナフサ留分を水素化処理した生成物(水素化ナフサ)を液体のナフサと軽質炭化水素を主成分とする気体とに分離する際に蒸留塔が用いられるが、この蒸留塔へFTオフガスを導入して、分離後の気体を管式リフォーマーの燃料として使用することができる。
【0032】
また、蒸留の条件としても特に限定されることはないが、例えば塔頂温度は−50〜40℃、圧力は2.4〜3.2MPaGで蒸留することが好ましい。
【0033】
本発明の第3の実施形態は、FTオフガスを冷却し、重質炭化水素を凝縮させて分離する方法である。
【0034】
冷却の条件としては、FTオフガスに含まれる炭素数が5以上の炭化水素を分離することができれば特に限定されることはないが、例えば温度は5〜20℃、圧力は2.4〜3.2MPaGとすることが好ましい。冷却の方法も特に限定されることはなく、例えば冷却水やプロセスで生じた排水を用いた熱交換器等を用いることができる。
【0035】
本発明の第4の実施形態は、吸着剤によりFTオフガスから重質炭化水素を除去する方法である。
【0036】
吸着剤としては、FTオフガスに含まれる炭素数が5以上の炭化水素を分離することができれば特に限定されることはないが、例えば活性炭により吸着する方法を用いることができる。活性炭を用いる場合、吸着装置における操作条件としては、温度は20〜40℃、圧力は0〜3.2MPaGとすることが好ましい。また、活性炭は100〜150℃、0〜0.35MPaGでのスチーミング処理により再生することが好ましい。その際、例えばGTLプロセス内に吸着塔を2塔設置し、吸着と再生を切り替えて運転すれば、連続運転が可能となる。
【0037】
また、上記第1〜第4の実施例は必ずしも単独で用いる必要はない。例えば、FTオフガスを冷却(第2の実施形態)しながら、吸収液へ接触(第1の実施形態)させたり吸着剤(第4の実施形態)を用いたりすると、重畳した効果を得ることが期待されるため好ましい。
【0038】
以下に、本発明のさらなる理解のために実施例を用いて説明するが、これらの実施例はなんら本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0039】
[実施例1]
GTL技術を実行するプラントにおいて、FT合成工程で発生した未反応合成ガスと気体状の炭化水素からなるガスを冷却して気液分離し、表1に示す組成を有するFTオフガスを得た。なお、表1においてCnは炭素数がn個の炭化水素を意味し、C5+は、炭素数が5個以上の炭化水素を意味する。得られたFTオフガスの温度は45℃、圧力は2.75MPaG、流量は1000kmol/h(=15284kg/h)だった。炭素数が5以上の重質炭化水素の含有量は4.32wt%だった。
【0040】
【表1】
【0041】
このFTオフガスを圧力2.7MPaGで10℃まで冷却して、凝縮した液体状の成分と凝縮しなかった燃料ガスとに分離し、液体状の成分に含まれる重質炭化水素を回収した(図1)。その後、燃料ガスに含まれる炭素数が5以上の重質炭化水素の含有量を測定した。
【0042】
[実施例2]
実施例1で得たFTオフガスを蒸留塔に導入して、塔頂から回収される燃料ガスと塔底から回収される液体状の成分とに分離した(図2)。FTオフガスの塔頂での圧力は2.65MPaG、塔底での温度は198℃、塔頂での温度は−37℃だった。その後、塔頂から得られた燃料ガスに含まれる炭素数が5以上の重質炭化水素の含有量を測定した。
【0043】
[実施例3]
実施例1で得たFTオフガスと軽油に相当する吸収油とを、FTオフガスの圧力2.7MPaG、温度48℃の条件下で単段で直接接触させ、吸収油中に吸収された重質炭化水素を回収した(図3)。用いた吸収油の蒸留性状を表2に示す。また、吸収油の流量は10000kg/hとした。その後、燃料ガスに含まれる、吸収油に吸収されなかった炭素数が5以上の重質炭化水素の含有量を測定した。
【0044】
【表2】
【0045】
[実施例4]
実施例3において、さらに吸収油と接触させる際の温度を10℃に冷却し、重質炭化水素を回収した(図4)。吸収油の流量は10000kg/hとした。その後、燃料ガスに含まれる、吸収油に吸収されなかった炭素数が5以上の重質炭化水素の含有量を測定した。
【0046】
[実施例5]
実施例3において、FTオフガスと吸収油とを8段の吸収塔を用いて接触させ、重質炭化水素を回収した(図5)。FTオフガスの圧力は塔頂で2.65MPaG、温度は塔底で49℃、塔頂で50℃だった。また、吸収油の流量は10000kg/hとした。その後、燃料ガスに含まれる、吸収油に吸収されなかった炭素数が5以上の重質炭化水素の含有量を測定した。
【0047】
[実施例6〜8]
実施例3〜5において、用いる吸収液の流量を2倍の20000kg/hにした以外は同条件で実験を行い、それぞれ実施例6〜8とした。
【0048】
各実施例における、重質炭化水素の除去処理後の燃料ガスに含まれる炭素数が5以上の重質炭化水素の含有量、回収液又は吸収液の流量、及びFTオフガスに含まれていた重質炭化水素が燃料ガスと回収液又は吸収液とのうちいずれに分配されたかの割合を、表3に示す。いずれの実施例でも、燃料ガスからの重質炭化水素の除去効果が確認された。
【0049】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンを主成分とする天然ガスとスチーム及び/又は炭酸ガスとを、改質触媒を充填して加熱した管式リフォーマーを通して反応させることにより、水素及び一酸化炭素を主成分とする合成ガスを製造する合成ガス製造工程、
該合成ガス製造工程で製造された合成ガスをフィッシャー・トロプシュ合成反応させた後、ガス状生成物及び未反応合成ガスからなるFTオフガスを分離することにより、フィッシャー・トロプシュ油を製造するフィッシャー・トロプシュ合成工程、並びに
該フィッシャー・トロプシュ油を水素化精製又は水素化分解処理することにより各種炭化水素油を製造するアップグレーディング工程からなり、さらに
該FTオフガスを管式リフォーマーの燃料としてリサイクルする、天然ガスから各種炭化水素油を製造する方法において、
リサイクルする前に該FTオフガスに含まれる重質炭化水素を除去することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記重質炭化水素は炭素数が5以上の炭化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記FTオフガスを吸収油と直接接触させることにより重質炭化水素を除去することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸収油は灯油又は軽油である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記FTオフガスを蒸留することにより重質炭化水素を除去することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記FTオフガスを冷却することにより重質炭化水素を除去することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
吸着剤によりFTオフガスから重質炭化水素を除去することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記吸着剤は活性炭である、請求項7に記載の方法。
【請求項1】
メタンを主成分とする天然ガスとスチーム及び/又は炭酸ガスとを、改質触媒を充填して加熱した管式リフォーマーを通して反応させることにより、水素及び一酸化炭素を主成分とする合成ガスを製造する合成ガス製造工程、
該合成ガス製造工程で製造された合成ガスをフィッシャー・トロプシュ合成反応させた後、ガス状生成物及び未反応合成ガスからなるFTオフガスを分離することにより、フィッシャー・トロプシュ油を製造するフィッシャー・トロプシュ合成工程、並びに
該フィッシャー・トロプシュ油を水素化精製又は水素化分解処理することにより各種炭化水素油を製造するアップグレーディング工程からなり、さらに
該FTオフガスを管式リフォーマーの燃料としてリサイクルする、天然ガスから各種炭化水素油を製造する方法において、
リサイクルする前に該FTオフガスに含まれる重質炭化水素を除去することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記重質炭化水素は炭素数が5以上の炭化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記FTオフガスを吸収油と直接接触させることにより重質炭化水素を除去することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸収油は灯油又は軽油である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記FTオフガスを蒸留することにより重質炭化水素を除去することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記FTオフガスを冷却することにより重質炭化水素を除去することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
吸着剤によりFTオフガスから重質炭化水素を除去することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記吸着剤は活性炭である、請求項7に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−214528(P2012−214528A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78804(P2011−78804)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(504117958)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (101)
【出願人】(509001630)国際石油開発帝石株式会社 (57)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(591090736)石油資源開発株式会社 (70)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(504117958)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (101)
【出願人】(509001630)国際石油開発帝石株式会社 (57)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(591090736)石油資源開発株式会社 (70)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)
【Fターム(参考)】
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