説明

重質炭酸カルシウム内添紙

【課題】重質炭酸カルシウムを内添填料として配合した紙であって、例えば抄紙速度1,300m/分以上と高速で抄紙しても、ワイヤー磨耗性を充分に低減できるため生産性良く製造可能な、高白色度の紙を提供すること。
【解決手段】パルプおよび内添用填料として重質炭酸カルシウムを含有し、JIS P 8220に準じて離解して得た繊維のうち、繊維長0.2μm以上0.5μm未満の繊維の割合が20%以上40%以下である。更に、再生粒子、好ましくは再生粒子凝集体、および/またはタルクを含有してもよい。さらに、凝結剤を含有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重質炭酸カルシウムを内添して抄紙した紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙のしなやかさや手触りを向上させるため、紙にはパルプ繊維の結合を阻害する填料を含ませており、填料としては炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン等が使用されている。この中でも、酸化チタンおよび炭酸カルシウムは白色度が高いため、高白色を要求される上質紙や塗工紙の内添填料として好適に使用されている。このうち酸化チタンは高価なため、安価な炭酸カルシウムが多く使用されている。
【0003】
炭酸カルシウムとしては、天然石灰石を乾式あるいは湿式で機械粉砕して得られる重質炭酸カルシウムと、生石灰もしくは消石灰に二酸化炭素を吹き込み、中和反応により製造される軽質炭酸カルシウム(沈降性炭酸カルシウム)がある。
【0004】
内添填料として重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムを使用して紙を抄造した場合、高白色度の紙を安価に製造することができる一方で、炭酸カルシウムはタルクやクレーよりも硬度が高いため、抄紙機のワイヤーを摩耗させやすい問題がある。特に重質炭酸カルシウムは天然の石灰石を粉砕して製造するため、粒子表面が断面で形成され角張っており、軽質炭酸カルシウムよりもワイヤーを磨耗させやすい問題がある。ワイヤーが摩耗すると、取り替えのため抄紙機の運転を停止する必要があり、生産性の低下を招く。近年は抄紙機が高速化しており、例えば抄造速度1,300m/分以上と高速な抄紙機において重質炭酸カルシウムを内添填料として使用すると、特にワイヤーの磨耗が進みやすく、交換周期が短くなり生産性に及ぼす影響は一層大きくなっている。
【0005】
重質炭酸カルシウムのプラスチックワイヤー摩耗性を低減させる技術としては、次が開示されている。炭酸カルシウムに例えばかんらん石族第1種以上の珪酸塩鉱物を混合し、ワイヤー摩耗性を改善すると同時に填料歩留まり及び紙の白色度を良好にする技術(特許文献1参照)。重質炭酸カルシウムに、例えばベントナイト等の処理した特殊な粒状組成物を添加したものを填料として使用することにより、ワイヤー摩耗を極めて少なくし品質の優れた中性紙を得る技術(特許文献2、3参照)。重質炭酸カルシウムに平均粒子径2〜50μmの珪砂粒子を添加する技術(特許文献4参照)。重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムの填料と、特定平均粒子径のアルミナ及び/又はジルコニアを填料として併用する技術(特許文献5参照)、カチオン化澱粉と共に抄紙し、プラスチックワイヤー摩耗性を改善する技術(特許文献6参照)。しかしながら上記いずれの方法も、例えば抄造速度1,300m/分以上の高速抄紙において重質炭酸カルシウムを内添填料として使用した場合に、ワイヤーの磨耗を充分に低減することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−45700号公報
【特許文献2】特開昭61−194298号公報
【特許文献3】特開昭62−117899号公報
【特許文献4】特開平08−144190号公報
【特許文献5】特開平10−298894号公報
【特許文献6】特開2007−100287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする主たる課題は、重質炭酸カルシウムを内添填料として配合した紙であって、例えば抄紙速度1,300m/分以上と高速で抄紙しても、重質炭酸カルシウムの歩留りが良好なためワイヤー磨耗性を充分に低減できる、生産性の良い高白色度の紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、パルプおよび内添用填料として重質炭酸カルシウムを含有し、JIS P 8220に準じて離解して得た繊維のうち、繊維長0.2μm以上0.5μm未満の繊維の割合が20%以上40%以下であることを特徴とする紙に関する。
【0009】
好ましくは、前記内添用填料として更に、再生粒子および/またはタルクを含有し、前記再生粒子および/またはタルクの平均粒子径が、前記重質炭酸カルシウムの平均粒子径の5倍以上20倍以下である。
【0010】
好ましくは、前記再生粒子および/またはタルクの平均粒子径が12μm以上23μm以下であり、前記重質炭酸カルシウムに対する、前記再生粒子および/またはタルクの合計の割合が、絶乾重量で85:15〜60:40である。
【0011】
好ましくは、前記紙が凝結剤を含有し、前記凝結剤が、ポリマー成分として、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリダドマック及びポリアクリルアミドからなる群から選ばれる、少なくとも異なる2種類をグラフト重合して得られる凝結剤である。
【0012】
好ましくは、前記凝結剤の形状が、樹形図状である。
【0013】
好ましくは、前記凝結剤の分子量が50万〜300万であり、電荷密度が、10〜25meq/gである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、重質炭酸カルシウムを内添填料として配合した紙でありながら、例えば抄紙速度1,300m/分以上と高速で抄紙しても、重質炭酸カルシウムの歩留りが良好なためワイヤー磨耗性を充分に低減できる、生産性の良い高白色度の紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】再生粒子の製造設備フローの一部構成例
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
(本発明の概要)
本発明では、0.2μm以上0.5μm未満と微細なパルプ繊維をパルプ全体の20%以上40%以下含有させることで、好ましくは内添填料として再生粒子またはタルクを併用し、凝結剤として樹形図状の高分子化合物を含有させることで、内添填料として重質炭酸カルシウムを使用しつつ、例えば抄紙速度1,300m/分以上と高速で抄造しても、重質炭酸カルシウムの歩留りが良好なためワイヤー磨耗性を低減でき、かつ高白色度の紙を得ることができる。
【0018】
(本発明の具体的形態)
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
〔調成工程〕
原料パルプを調成工程において叩解し、繊維長を所定範囲に調整した後、凝結剤や紙力向上剤等の各種薬品が添加されて所定の品質に加工され、抄紙機に送られる。
【0020】
〔パルプ〕
本発明で用いるパルプは、JIS P 8220に準じて離解して得た繊維の繊維長が0.2μm以上0.5μm未満の微細繊維が多いことが好ましい。内添填料として使用する重質炭酸カルシウムは石灰石を粉砕して得られたものであるため微細粒子が多く、この微細粒子の歩留りを向上させるには、パルプ繊維においても微細な繊維を所定量含有させ、パルプ繊維上に微細な重質炭酸カルシウムを留めることが重要となる。0.2μm未満のパルプ繊維では重質炭酸カルシウムを繊維状に留める効果が大きい一方で、0.2μm未満の繊維自身の歩留りが悪いため、結果として重質炭酸カルシウムの歩留りが悪化する。一方、0.5μm以上のパルプ繊維では、繊維長が長いため微細粒子が多い重質炭酸カルシウムを留める効果が少なく、重質炭酸カルシウムの歩留りが向上しない。
【0021】
0.2μm以上0.5μm未満のパルプ繊維の含有量は、パルプ全体の20%以上40%以下、好ましくは25〜30%含有することが必要となる。微細繊維を含有させることで、填料である重質炭酸カルシウムの歩留りを向上させることができ、得られる紙の白色度が向上する。加えて、紙に歩留らずにワイヤーを透過する白水に含まれる重質炭酸カルシウムを低減することができるため、重質炭酸カルシウムとワイヤーとの接触回数が低減でき、ワイヤー磨耗性を充分に改善することができる。特に重質炭酸カルシウムは石灰石を粉砕する過程で微細粒子が多く発生しやすく、パルプへの歩留りが悪いためワイヤーを傷つけやすい。しかしながら離解繊維長0.2μm以上0.5μm未満と微細なパルプ繊維をパルプ全体の20%以上40%以下含有させることで、微細繊維上に微細な重質炭酸カルシウムが歩留り易くなる。離解繊維長が長い繊維が多く、離解繊維長0.2μm以上0.5μm未満のパルプ繊維がパルプ全体の20%を下回ると、重質炭酸カルシウムの微細粒子の歩留りが低下してワイヤー磨耗性が悪化するだけでなく、得られる紙の白色度が低下しやすいため好ましくない。離解繊維長が短い繊維が多く、離解繊維長0.2μm以上0.5μm未満のパルプ繊維がパルプ全体の40%を上回ると、0.2μm未満の微細繊維自体の歩留りが低いため、微細繊維上の重質炭酸カルシウムの歩留りも低下してワイヤー磨耗性が悪化し、得られる紙の白色度も低下しやすいため好ましくない。のみならず、微細繊維が抄紙機系内に堆積しやすくなり、腐敗した繊維が異物となって紙に混入し、異物欠陥が発生しやすくなる可能性もある。
【0022】
<フリーネス>
繊維長の調整は公知の技術で行うことができ、例えばリファイナー等で叩解条件を変更し、フリーネスを調整することで上記範囲内とすることが可能である。フリーネスは、針葉樹晒パルプ(NBKP)のフリーネスであれば500〜600mlが好ましく、より好ましくは520〜580mlである。600mlを超えると叩解が進まず長繊維長分が多くなり、500ml未満であれば短繊維長分が多くなる。同様に広葉樹晒パルプ(LBKP)のフリーネスであれば400〜500mlが好ましく、より好ましくは420〜480mlである。機械パルプのフリーネスについても同様の理由で、100ml〜150mlが好ましく、120ml〜150mlがより好ましい。古紙パルプであれば、280ml〜380mlが好ましく、300ml〜340mlがより好ましい。
【0023】
本発明で用いるパルプとしては特に限定されず、例えば、化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプまたはこれら以外のパルプも使用することができ、これらの中から一種又は二種以上を適宜選択して使用することができる。
【0024】
化学パルプとしては、例えば、未晒針葉樹パルプ(NUKP)、未晒広葉樹パルプ(LUKP)、晒針葉樹パルプ(NBKP)、晒広葉樹パルプ(LBKP)等を使用することができる。
【0025】
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等が挙げられる。
【0026】
古紙パルプとしては、例えば、雑誌古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、新聞古紙、上白古紙等から製造される離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等が挙げられる。
【0027】
また、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどを使用しても良い。
【0028】
基紙を構成する全パルプ100質量部のうち針葉樹晒パルプの配合率は2〜30質量部が好ましく、5〜20質量部が更に好ましい。2質量部未満であれば充分な強度を有する紙が得られないため好ましくなく、30質量部を超過すると、0.2μm以上0.5μm未満にまで叩解した際に、0.2μm未満の微細繊維が多く発生しやすく、微細粒子を含む重質炭酸カルシウムの歩留りが低下するだけでなく、得られる紙の白色度が低下しやすいため好ましくない。叩解前の針葉樹晒パルプは繊維長が2〜5mmと、広葉樹晒パルプの繊維長(0.5〜1.5mm)よりも長いため、針葉樹晒パルプの配合率が高い場合は、繊維長0.2mm以上〜0.5mm未満の繊維がパルプ繊維全体の20%以上40%以下となるよう叩解を進める必要があり、繊維長0.2mm未満の微細繊維が発生しやすく、重質炭酸カルシウムの歩留りが低下してワイヤー磨耗が悪化するだけでなく、得られる紙の白色度も低下しやすいため好ましくない。広葉樹晒パルプの配合率は、針葉樹晒パルプを補完するように、70〜98質量部が好ましく、80〜95質量部がより好ましい。また、古紙パルプは、古紙を再度離解してパルプ化しているため0.2μm未満の微細繊維が多く、使用する場合は叩解の程度を最小限に抑えて0.2μm未満の繊維の発生を抑制する必要がある。このような叩解には粘状叩解が有効である。
【0029】
上述のとおり、本発明においては、重質炭酸カルシウムの歩留りを向上させるため、フリーネスを500〜600mlに調整した針葉樹晒パルプを2〜30質量部、フリーネスを400〜500mlに調整した広葉樹晒パルプを70〜98質量部使用し、全体として繊維長0.2mm以上0.5mm未満の繊維がパルプ繊維全体の20%以上40%以下、好ましくは25〜30%を占めるように調整することが好ましい。更に、0.2mm以上0.5mm未満の繊維を好適に歩留らせるため、より長い繊維である、繊維長0.5mm以上1.2mm未満の繊維がパルプ繊維全体の55〜85%、好ましくは60〜80%を占めるように調整することで、特に0.2mm以上0.5mm未満の微細繊維および重質炭酸カルシウムの歩留りを向上させることができ、高い白色度の紙が得られるだけでなく、ワイヤー磨耗性を改善することができる。
【0030】
〔填料〕
填料としては、重質炭酸カルシウムを含むことが必須である。
【0031】
重質炭酸カルシウムの粒子径は、歩留りを向上させワイヤーの磨耗を防止するためには大きい方が好ましいが、白色度向上効果を高めるためには、粒子径が小さく比表面積が大きい方が好ましい。重質炭酸カルシウム粒子の歩留り向上および白色度向上効果の双方を良好とするためには、適度に細かい粒子径とすることが必要であり、好ましくは平均粒子径が0.5〜2.0μm程度である。平均粒子径が0.5μmを下回ると、上述のとおり0.2μm以上0.5未満μmの繊維がパルプ全体の20%以上40%以下であるパルプを使用し、上記のとおり樹形図状であり、特定の分子量、電荷密度を有する凝結剤を所定量、および、上記の特定の分子量、電荷密度を有する凝集剤を所定量添加したとしても、充分に重質炭酸カルシウムを歩留らせにくくなるため好ましくない。平均粒子径が2.0μmを超過すると、重質炭酸カルシウムの比表面積が小さく白色度が低下しやすくなるため好ましくないだけでなく、パルプ繊維同士の結合が局所的に阻害されやすくなり、表面強度が低下する可能性もあるため好ましくない。なお、本願明細書でいう平均粒子径は、電子顕微鏡で撮影した顔料粒子について、粒子を内包できる最小の円(粒子の外接円)の直径に基づいて算出した。
【0032】
重質炭酸カルシウムの添加量はパルプ100質量部に対して絶乾重量で2〜10質量部が好ましく、3〜8質量部がより好ましい。2質量部を下回ると、充分な白色度が得られず、10質量部を上回ると、ワイヤー磨耗性や表面強度が悪化しやすいため好ましくない。
【0033】
重質炭酸カルシウム以外にも、一般に抄紙用途で使用される填料を併用することができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク、シリカ、クレー、コロイド状含水シリカ(通称ホワイトカーボン)、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子、製紙スラッジや脱墨フロスから再生した再生粒子や再生粒子凝集体等の公知の填料を使用することができる。これらの無機質填料の形状については特に制限はなく、粒状、張り状、紡錘状、板状、無定形など種々のものが使用できる。
【0034】
この中でも、タルクおよび/または再生粒子、好ましくは再生粒子凝集体を併用することで、0.2μm以上0.5μm未満の微細なパルプ繊維の歩留りを向上でき、つまりは微細粒子が多い重質炭酸カルシウムを効果的に紙に歩留らせることができ、より白色度が高い紙を、ワイヤーの磨耗を少なく製造することができるため好ましい。特に再生粒子凝集体のうち、後述する一次焼成温度を300℃以上500℃未満として得られた再生粒子凝集体は、500℃以上の温度で焼成した再生粒子凝集体に比べて高い白色度を有しており、得られる紙の白色度も向上しやすいため好ましい。
【0035】
タルクが好ましい理由は、板状であり粒子表面のアニオン性が強いことから、上述の凝結剤を混合した微細なパルプ繊維や重質炭酸カルシウム粒子と凝集しやすく、歩留りが高くなり易いためと考えられる。再生粒子凝集体が好ましい理由は、そのランチュウの肉瘤状の形状が、0.2μm以上0.5μm未満の微細繊維および微細粒子が多い重質炭酸カルシウムの歩留りを向上させやすいためと考えられる。
【0036】
タルクおよび再生粒子、好ましくは再生粒子凝集体としては、一般に公知の薬品をそのまま用いることができるが、好ましくは平均粒子径が12μm以上23μm以下と大きい粒子を用いることが好ましい。平均粒子径が12μm未満と小さい粒子では、0.2μm以上0.5μm未満と小さい微細繊維と共に脱落して歩留りにくく、タルクおよび/または再生粒子、好ましくは再生粒子凝集体に付着した0.2μm以上0.5μm未満の微細繊維および微細粒子である重質炭酸カルシウムの歩留りをも低下させるため好ましくない。23μmよりも大きいと歩留りが低下する可能性は少ない一方で、粒子が大きくなるためパルプ繊維同士の結合を阻害しやすくなり、局所的に表面強度が弱くなる可能性があるため好ましくない。
【0037】
重質炭酸カルシウムとタルクまたは再生粒子、好ましくは再生粒子凝集体の割合は、絶乾重量で85:15〜60:40が好ましく、80:20〜65:35がより好ましい。85:15を超過し重質炭酸カルシウムが多くなると、0.2μm以上0.5μm未満の微細繊維および微細粒子の多い重質炭酸カルシウムの歩留りが低下しやすく、白色度に劣るだけでなくワイヤー磨耗性が悪化しやすいため好ましくない。60:40を下回り、タルクまたは再生粒子、好ましくは再生粒子凝集体が多くなると、充分な白色度が得られにくいため好ましくない。
【0038】
填料の添加量は、重質炭酸カルシウム、タルク、再生粒子、好ましくは再生粒子凝集体の合計で、パルプ100質量部に対して絶乾質量で2〜10質量部が好ましく、3〜8質量部がより好ましい。2質量部を下回ると充分な白色度向上効果が得られず、10質量部を超過するとワイヤー磨耗性が悪化するため好ましくない。
【0039】
尚、本発明で使用できる再生粒子および再生粒子凝集体は、次の製造方法で得ることができる。
【0040】
(再生粒子および再生粒子凝集体の製造工程)
再生粒子は、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料として、前記主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て得られる。前記燃焼工程が、第1燃焼炉と、第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する、後の第2燃焼炉とを有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、前記第1燃焼炉は300℃以上〜500℃未満で燃焼処理を行う。
【0041】
次に再生粒子の製造工程を詳述する。
【0042】
図1に、再生粒子の製造設備フローの一部構成例(乾燥・燃焼工程、及び燃焼工程を含む設備例)を示した。本設備には、各種センサーが備わっており、被燃焼物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行っている。
【0043】
図示しない、古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、種々の操作を経て、同じく図示しない公知の脱水設備により脱水される。脱水後の原料は、40%以上、望ましは90%未満、特には45%〜70%、より好適には50%超〜60%の高含水状態とすることが望ましい。
【0044】
かかる脱水後の原料10は、望ましくは、粉砕機(または解砕機)により40mm以下の粒子径に粉砕しておく。かかる原料10が貯槽12から切り出されて、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉である、第1燃焼炉14の一方側から装入機15により装入される。第1燃焼炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が第1燃焼炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、第1燃焼炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
【0045】
ここで、第1燃焼炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.2%〜20%となるようにするのが望ましい。炉内温度としては、300℃以上〜500℃未満、より望ましくは400℃以上〜500℃未満、特に400℃以上〜450℃未満が望ましい。熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
【0046】
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。排ガス中に含まれる燃焼物の微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再利用される。排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、第1燃焼炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収するようにしてある。排ガスの処理は、排ガス中に含まれる有害物質の除去に有効である。
【0047】
第1燃焼炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉である、第2燃焼炉32に装入される。この装入される燃焼物の粒径としては、40mm以下が好適である。第2燃焼炉32での熱源としては、第2燃焼炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気による調整が好適であり、したがって、電気ヒーターにより間接的に第1燃焼炉14から得られる燃焼物を再び燃焼させる外熱式の第2燃焼炉32であることが望ましい。
【0048】
第2燃焼炉32においては、酸素濃度を調整する空気あるいは酸素の供給機構(図示せず)にて酸素濃度が5%〜20%、望ましくは10%〜20%、特に望ましくは10%〜15%となるように燃焼するのが望ましい。温度としては、550℃〜780℃、望ましくは600℃〜750℃が望ましい。また、第2燃焼炉32内での滞留時間は60分以上、より好適には60分〜240分、特には90分〜150分、最適には120分〜150分が、残カーボンを完全に燃焼させるに望ましい。
【0049】
燃焼が終了した再生粒子は、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により選別され、湿式粉砕機等を用いた粉砕工程で目的の粒子径に調整された燃焼物が燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。
【0050】
なお、脱墨フロスを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混入させたものを原料とした燃焼物であってもよい。
【0051】
本実施形態の紙では、以上の再生粒子を内添填料として用いることができる。この再生粒子は、脱墨フロスを焼成して得られる循環使用が可能なものであるので、廃棄物としての埋立等の処分が不要であり、環境負荷の低減と、省資源化に大きく貢献するものである。また、原料が古紙処理工程で生じる脱墨フロスであるので、安価であり、新たな天然無機鉱物の使用量を抑えることができ、製造コストが充分に削減されるという利点がある。
【0052】
加えて、第1燃焼炉の炉内温度が、300℃以上〜500℃未満と低温であるため、特に内添填料として用いた場合に、白色度の高い紙が得られやすいため好ましい。
【0053】
本発明では前記製造工程により得られた再生粒子をそのまま使用してもよいし、特許第3907688号公報や、特許第3935496号公報に記載の方法でシリカ被覆したものを使用してもよい。具体的には、前記製造工程で得られた再生粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散しスラリーを調製した後に、加熱攪拌しながら、液温70〜100℃で硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸の希釈液を添加し、シリカゾルを生成させ、最終反応液のpHを8.0〜11.0の範囲に調整することにより、再生粒子表面に粒子径10〜20nmのシリカゾル粒子を生成させて得られた白色顔料を使用できる。このシリカ被覆再生粒子は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜62:29〜55:9〜35の質量割合とすることで、シリカ析出効果による吸油性、不透明性を向上させることができる。
【0054】
上記方法で製造した再生粒子は、個々の粒子が幾つか集まって凝集した再生粒子凝集体を形成しており、ランチュウの肉瘤状のような、不定形な形をしている。この不定形性により、0.2μm以上0.5μm未満のパルプ繊維および微細粒子の多い重質炭酸カルシウムの歩留りを向上させることができ、白色度の向上とワイヤー磨耗の低減を図ることができるとの利点がある。
【0055】
上述のごとく、微細粒子を多く含む重質炭酸カルシウムの歩留りを向上させるためには、繊維長0.2mm以上0.5mm未満の繊維がパルプ繊維全体の20%以上40%以下、好ましくは25〜30%を占めることに加え、平均粒子径が12μm以上23μm以下のタルクおよび/または再生粒子、好ましくは再生粒子凝集体を、重質炭酸カルシウムに対して85:15〜60:40、好ましくは80:20〜65:35の割合で内添して抄造すると、重質炭酸カルシウムの歩留りが良く、白色度に優れた紙を効率的に得ることができる。更には、再生粒子凝集体として、後述する一次焼成温度が300℃以上500℃未満で製造した再生粒子凝集体を用いると、より白色度に優れた紙が得られるため好ましい。
【0056】
本形態においては、重質炭酸カルシウムやタルクおよび/または再生粒子、好ましくは再生粒子凝集体の歩留りを更に向上させるため、次に記載する凝結剤および凝集剤を組み合わせることが好ましい。
【0057】
<凝結剤>
本形態においては、微細繊維および微細粒子を含む重質炭酸カルシウムをパルプ繊維に効果的に吸着させるため、凝結剤を添加する。凝結剤の種類としては、2種類以上のポリマー成分をグラフト重合して得られる凝結剤が好ましい。前記ポリマー成分としては、例えば、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリダドマック、PDADMAC)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリル酸塩、メタクリル酸塩等があげられる。これらの中でも、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリダドマック及びポリアクリルアミドからなる群から選ばれる2種類以上のポリマー成分をグラフト重合して得られる凝結剤が好ましい。更に好ましくはポリエチレンイミンを主鎖とし、ポリアミン、又はポリダドマックをグラフト鎖としたものであり、特に好ましくはポリアミンをグラフト鎖としたものである。これらの構造の凝結剤を用いることにより、従来の一種類の成分からなる凝結剤に比べて、0.2μm以上0.5μm未満の微細繊維の歩留りを向上でき、微細粒子を多く含む重質炭酸カルシウムの歩留りを向上させることができる。
【0058】
また、2種類以上のポリマー成分の重合状態は、2種類以上の成分が交互に、またはランダムに入り混じったランダム共重合体とするのは好ましくない。ランダム共重合体では、各成分の特性が組み合わさって均一な凝集性能を示すため、従来の一種類の成分からなる凝結剤と同様に、微細繊維や微細填料粒子の歩留り向上を充分に満足させにくい。凝集能力を有する主鎖に対し、同じく凝集能力を有するグラフト鎖をグラフト重合することで、微細繊維の歩留り向上と、微細な粒子を多く含む重質炭酸カルシウムの歩留り向上の双方の効果を得ることができ、白色度に優れた紙を、ワイヤー磨耗性を良好に抄造することができる。
【0059】
前記凝結剤の形状は、主鎖のみの直鎖状であってもよく、主鎖に対して複数本のグラフト鎖がグラフト重合した枝分かれ状であっても良く、主鎖に結合したグラフト鎖に更に、グラフト鎖成分や主鎖成分がグラフト重合した樹形図状(枝葉状)であっても良く、主鎖に結合したグラフト鎖同士が架橋した網目状であっても良く、主鎖あるいはグラフト鎖の一部が結晶化したミセル状であっても良い。より好ましくは、効率よく微細な重質炭酸カルシウムを微細繊維に吸着でき、微細繊維をパルプ繊維に吸着できる網目状または樹形図状であり、最も好ましくは樹形図状である。
【0060】
主鎖に対するグラフト鎖の割合は、構造や分子量によって異なるが、概ね5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。5質量%を下回ると、微細な重質炭酸カルシウムおよび微細繊維の歩留りが低下しやすく、ワイヤー磨耗性に劣り、70質量%を上回ると、グラフト鎖が大きく凝集能力が増加しすぎて、地合が悪化しやすいため好ましくない。
【0061】
前記凝結剤の分子量は、50万〜300万が好ましく、100万〜200万がより好ましい。分子量が50万を下回ると、微細な重質炭酸カルシウムおよび微細繊維の歩留りが低下しやすく、得られる紙の白色度が低下しやすいだけでなく、ワイヤー磨耗性に劣るため好ましくない。分子量が300万を超過すると、微細繊維の周囲に微細な重質炭酸カルシウムが集中しやすく、表面強度が低下するだけでなく地合も悪化しやすい。尚、本発明で言う分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)によって測定した重量平均分子量を言う。
【0062】
前記凝結剤は正電荷(カチオン性)であることが好ましい。電荷密度は、10〜25meq/gが好ましく、15〜20meq/gが更に好ましい。25meq/gを超過すると、微細繊維やアニオントラッシュを集めて異物化し易いだけでなく、地合が低下しやすいため好ましくない、10meq/gを下回ると、微細繊維や重質炭酸カルシウムが凝集しにくく、得られる紙の表面強度が低下しやすくなる。尚、本発明の電荷密度は、規定液にアニオン性高分子を用いたコロイド滴定法によって測定した。
【0063】
前記凝結剤の添加量は、パルプ100質量部に対して0.01〜0.15質量部が好ましく、0.03〜0.10質量部が更に好ましい。0.15質量部を超過すると、微細繊維の周囲に凝結剤が集中しやすく、異物欠陥となりやすいだけでなく、地合が低下しやすいため好ましくない。0.01質量部を下回ると、微細な重質炭酸カルシウムおよび微細繊維の歩留りが低下し、白色度が低下しやすいだけでなく、ワイヤー磨耗性も悪化しやすいため好ましくない。
【0064】
本発明では、微細粒子の多い重質炭酸カルシウムの歩留りを向上させるために、0.2μm以上0.5μm未満の微細繊維がパルプ全体の20%以上40%以下と多いパルプに加えて、2種類以上のポリマー成分をグラフト重合した凝結剤を使用することにより、重質炭酸カルシウムの歩留りを向上でき、白色度が高い紙を得られ、抄紙機においてはワイヤー磨耗を抑制できる。更に、主鎖とグラフト鎖の割合を5〜70質量%、好ましくは10〜50質量%とし、樹形図状にグラフト重合して、分子量50万〜300万、好ましくは100万〜200万であり、かつ、電荷密度は、10〜25meq/g、好ましくは15〜20meq/gであり、パルプ100質量部に対して0.01〜0.15質量部、好ましくは0.03〜0.10質量部を添加することで、本発明の目的である、重質炭酸カルシウムの歩留りを更に向上でき、更に高白色度の紙が得られ、かつワイヤー磨耗性を充分に改善した紙を得ることができる。
【0065】
<凝集剤>
本形態においては、前記凝結剤を添加した後、さらに当該パルプの調製段階に続く抄紙工程前段で、特定の凝集剤を添加することにより、更に0.2μm以上0.5μm未満の微細繊維および微細粒子の多い重質炭酸カルシウムの歩留り向上による白色度の向上と、ワイヤー磨耗性の向上効果を達成できる。凝集剤の成分としては、ベントナイトやコロイダルシリカなどの無機凝集剤、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンイミン(PEI)等の有機高分子系凝集剤のいずれをも用いることができる。但し、より好ましくはポリビニルアミン、ポリアクリルアミド、特に好ましくはポリアクリルアミドが、凝集能力が高いため好ましい。ポリアクリルアミドを添加した後に抄紙する場合、凝集物が発生しやすくなる可能性があるため、凝集剤はスクリーンの前に添加し、添加後に発生する凝集物をスクリーンで一旦、破壊し、適度に凝集性を弱めることが好ましい。かかるスクリーンは、目開きが0.33〜0.37mmのスリットタイプが、凝集物の発生抑制効果に優れるため好ましい。
【0066】
凝集剤の分子量は、好ましくは1000万〜2000万であり、更に好ましくは1200万〜1600万である。2000万を超過すると、微細繊維や微細な重質炭酸カルシウム粒子を集めすぎて地合が悪化しやすくなり、1000万を下回ると、適度に繊維が凝集せず、得られる紙の表面強度が低下するため好ましくない。
【0067】
凝集剤の電荷密度は、好ましくは1〜10meq/gであり、更に好ましくは1〜5meq/gである。10meq/gを超過すると、微細繊維や微細な重質炭酸カルシウム粒子を集めて地合が悪化しやすくなり、1meq/gを下回ると、微細繊維や微細な重質炭酸カルシウム粒子を集め難く、紙表面が粗くなり表面強度が低下しやすくなる。
【0068】
凝集剤の添加量は、パルプ100質量部に対して、好ましくは0.05〜0.30質量部であり、更に好ましくは0.10〜0.20質量部である。0.30質量部を超過すると、微細繊維や微細な重質炭酸カルシウム粒子を集めすぎて地合が悪化しやすくなり、0.05質量部下回ると、適度に繊維が凝集せず、表面強度が低下しやすいため好ましくない。
【0069】
また、凝集剤の添加は、微細繊維を含むパルプ繊維と凝結剤を混合してから20分以上40分以下の間に添加することが好ましい。20分未満では、微細繊維および微細な重質炭酸カルシウム粒子が歩留りにくく、40分を超過すると、凝集物が発生して地合が悪化しやすい。
【0070】
このように、分子量が1000万〜2000万、好ましくは1200万〜1600万であり、電荷密度が1〜10meq/g、好ましくは1〜5meq/gである凝集剤を、パルプ100質量部に対して0.05〜0.30質量部、好ましくは0.10〜0.20質量部添加することで、前記特定の凝結剤、特に樹形図状のグラフト重合体により形成された、微細繊維および微細な重質炭酸カルシウム粒子が多く凝集している状態を、そのまま紙に抄き込むことができるため、重質炭酸カルシウムの歩留りを向上させる効果が得られる。逆に、上記特定の凝集剤を用いない場合には、微細繊維が歩留りにくいため微細な重質炭酸カルシウム粒子が歩留りにくくなり、0.2μm以上0.5μm未満の微細繊維および微細な重質炭酸カルシウム粒子の双方の歩留りを向上しにくくなり、白色度が低下しやすく、ワイヤー磨耗性も低下しやすいため好ましくない。
【0071】
上述のごとく、微細粒子を多く含む重質炭酸カルシウムの歩留りを向上させるためには、繊維長0.2mm以上0.5mm未満の繊維がパルプ繊維全体の20%以上40%以下、好ましくは25〜30%を占めることに加え、タルクおよび/または再生粒子、好ましくは再生粒子凝集体を併用し、更に2種類以上のポリマー成分をグラフト重合した上記の分子量、電荷密度を有する樹形図状の凝結剤および上記の分子量、電荷密度を有する凝集剤を、所定量配合することで、微細な重質炭酸カルシウム粒子の歩留りを効果的に向上させることができ、特に白色度が高い紙となり、ワイヤー磨耗性にも優れるため好ましい。尚、これらの組み合わせを行うことにより、従来は灰分歩留りが50%程度であったものが、70%以上に向上でき、重質炭酸カルシウム等の内添填料の歩留りを特に向上させることができる。
【0072】
<その他薬品>
本形態においては、上記の凝結剤、凝集剤以外にも、必要に応じて填料、内添サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、嵩高剤、カチオン化剤、紙力増強剤、消泡剤、着色剤、染料等の各種製紙助剤等を添加しても良い。
【0073】
〔抄紙工程〕
本形態において使用できる抄紙設備としては、特に限定されないが、微細繊維の歩留りを向上させるには、ギャップフォーマからなるワイヤーパート、オープンドローのないストレートスルー型からなるプレスパート、シングルデッキドライヤーからなるプレドライヤーパートを組み合わせることが好ましい。
【0074】
<ワイヤーパート(ヘッドボックス)>
調成されたパルプスラリーは、ヘッドボックスを経由してワイヤーパートに送られる。ワイヤーパートとしては、長網フォーマや、長網フォーマにオントップフォーマを組み合わせたもの、あるいはツインワイヤーフォーマなど、特に限定されないが、ヘッドボックスから噴出された紙料ジェットを2枚のワイヤーで直ちに挟み込むギャップタイプのギャップフォーマが、両面から脱水するため、パルプ繊維の移動が抑制され、地合が良いため好ましい。
【0075】
<プレスパート>
ワイヤーパートでの紙層は、プレスパートに移行され、さらに脱水が行われる。プレス機としては、ストレートスルー型、インバー型、リバース型のいずれであってもよく、またこれらの組み合わせも使用することができるが、オープンドローを無くしたストレートスルー型が、紙を保持しやすく、断紙などの操業トラブルが少ないため、好ましい。脱水方式としては、通常行われているサクションロール方式やグルーブドプレス方式等の方法を使用することができるが、脱水性が高いシュープレスを用いると、紙に掛かる線圧が低減でき、地合の悪化を軽減することができるため好ましい。
【0076】
<プレドライヤーパート>
プレスパートを通った湿紙は、シングルデッキ方式のプレドライヤーパートに移行し、乾燥が図られる。プレドライヤーパートは、断紙が少なく高効率に乾燥を行えるノーオープンドロー形式のシングルデッキドライヤーが好ましい。ダブルデッキ方式にて乾燥する方式も可能だが、キャンバスマーク、断紙、シワ、紙継ぎ等の操業性の面で、シングルデッキ方式に劣るため好ましくない。
【0077】
以上のようにして得られた紙は、微細粒子を多く含む重質炭酸カルシウムを内添填料として含有した紙でありながら、0.2μm以上0.5μm未満のパルプ繊維をパルプ全体の20%以上40%以下含み、更には粒子径が12μm以上23μm以下と重質炭酸カルシウムの平均粒子径よりも5倍以上20倍以下大きい平均粒子径を有するタルクまたは再生粒子、好ましくは再生粒子凝集体を、重質炭酸カルシウムに対して85:15〜60:40、好ましくは80:20〜65:35の割合で含有するため、重質炭酸カルシウムの歩留りが良好であり、白色度に優れた紙を、ワイヤー磨耗性が良好な状態で効率的に製造することができる。
【実施例】
【0078】
次に、本発明の紙を、実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0079】
まず、原料パルプとしてNBKP10質量%およびLBKP90質量%を、表1に記載のフリーネスに調整して混合し、このパルプ100質量部(絶乾量)に対して、各々固形分で、カチオン化澱粉(品番:アミロファックスT−2600、アベベジャパン(株)製)1質量部、表1に記載の填料、凝結剤0.08質量部、凝集剤0.15質量部を添加してパルプスラリーを得た。用いた薬品は次のとおり。
【0080】
・填料
a)重質炭酸カルシウム
品番:ハイドロカーブ60、オミヤコーリア社製、平均粒子径:2.13μm
b)タルク
品番:タルクNTL、日本タルク社製、平均粒子径:12μm
c)クレー
品番:Contour1500、イメリス社製、平均粒子径:2.5μm
d)再生粒子凝集体
再生粒子A:特許第3869455号公報の製法に準じて粒径を調整して製造した。具体的には、古紙の処理工程から排出される脱墨フロスを水分率60%まで脱水し(脱水工程)、120℃で乾燥して(乾燥工程)焼成工程入口での水分率が3%になるようにし、第1焼成工程で未燃分が7%となるように550℃で焼成し、第2焼成工程で未燃分が12質量%となるように焼成し(焼成工程)、粒子径500μmの再生粒子凝集体を製造した。
【0081】
再生粒子B:第1焼成工程で400℃で焼成した以外は、再生粒子Aと同様に製造した再生粒子凝集体を使用した。
【0082】
上記填料は、湿式粉砕機(品番:プラネタリーミル、セイシン企業製)を用いて粉砕し、平均粒子径が表1に記載の数値となるまで粉砕して調製した。
【0083】
尚、本発明の平均粒子径は次のように測定した。得られた紙をA4サイズに切り出し、市販のセロハンテープを用い表裏両面を覆うよう貼りつける。貼りつけた後、片面側のセロハンテープを紙ごと剥がし、紙を厚み方向で略中央から剥れるようにして、紙を厚み方向で略2分割する。剥離後の紙2枚について、各々、短辺を上辺として、上辺から下にAcm、左辺からAcmの地点で、縦横5mm角のサンプルを切り出した。ここでAは1〜5の整数であり、表裏合わせて10サンプルを採取した。切り出したサンプルの剥離面(紙の内部の面)を、走査電子顕微鏡(型番:S−2150、(株)日立製作所製)を用いて倍率12000倍で写真撮影した。写真の上辺から下にBcm、左辺からBcmの地点に最も近く、かつ粒子全体が撮影されている填料粒子について、粒子径を測定した。ここでBは1〜5の整数であり、1サンプルから5個の粒子の粒子径を求め、合計50個の顔料粒子について粒子径を求めた後、50個の粒子径を単純平均して平均粒子径とした。顔料粒子は真円ではないため、顔料粒子を内包できる最小の円の直径を粒子径とした。
【0084】
・凝結剤(全て正電荷であり、カチオン性を有する)
a)PEI−PAmグラフト重合物(ポリアミングラフトポリエチレンイミン(品番:SC924、ハイモ(株)製)、主鎖に対するグラフト鎖の割合:30質量%)尚、実施例28および29では重合体の形状を、実施例30〜32では分子量を、実施例33〜36では電荷密度を表に記載のとおり調整した凝結剤を用いた。
b)PDADMAC−PAmグラフト重合物(ポリアミングラフトポリDADMAC)
c)ポリアクリル酸Na−PAmグラフト重合物(ポリアミングラフトポリアクリル酸ナトリウム)
d)PEI−PDADMACグラフト重合物(ポリDADMACグラフトポリエチレンイミン)
【0085】
・凝集剤
a)カチオンPAM(品番:ND270、ハイモ(株)製)尚、実施例39〜42では分子量を、実施例43〜46では電荷密度を表に記載のとおり調整した凝集剤を用いた。
b)コロイダルシリカ(品番:NP442、エカケミカルス(株)製)
c)ポリエチレンイミン(品番:ポリミンPR8150、BASF社製)
次に、ギャップフォーマからなるワイヤーパート、オープンドローのないストレートスルー型のプレスパート、シングルデッキドライヤーからなるプレドライヤーパートを経て紙匹を製造した。得られた紙の米坪は、JIS P 8124に準じて測定して64g/mであった。この紙について、以下のとおり評価した。結果は、表1に示す。
【0086】
(a)灰分歩留り
填料を配合していないシート(ブランク)及び填料を配合したシートから紙片を切り取り、105℃で3時間乾燥させた後に絶乾重量を測定する。次に、この絶乾紙片をJIS P 8251:2003「紙,板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準じて灰化し、シート中に含まれる灰分重量を求める。填料歩留り(%)は下記の式より算出した。
填料歩留り={(填料入りシート灰分重量/同絶乾重量−ブランクシート灰分重量/同絶乾重量)}/填料配合率×100
【0087】
(b)離解繊維長
シートをJIS P 8220:1998「パルプ−離解方法」に準じて離解し、メッツォ社製のFiberLabで繊維長分布を求めた。繊維長0.2μm未満、0.2μm以上0.5μm未満、0.5μm未満の繊維について、加重平均した含有割合を求めた。
【0088】
(c)ワイヤー磨耗度
24時間連続操業後のワイヤーについて、ルーペで10倍に拡大し目視で次のとおり評価した。
◎:ワイヤーに微小な傷があるものの、ワイヤーが磨耗しておらず、実使用可能。
○:ワイヤーに傷があるが、ワイヤーの磨耗が僅かであり、実使用可能。
×:ワイヤーに傷があり、ワイヤーの磨耗による欠損が認められ、実使用不可能。
【0089】
(d)白色度
JISP8148:2001「紙,板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準じて測定した。83%以上であれば白色度が特に優れ、81%以上であれば白色度が良好であり、79%以上であれば白色度に劣るものの実使用可能であり、79%以下であれば白色度が低く見栄えに劣る。
【0090】
(e)地合
紙の地合を目視で次のとおり評価した。
◎:地合が均一であり、下記表面強度試験の印刷面の画像が均一であり地合に優れる。
○:地合にムラがあるが、下記表面強度試験の印刷面の画像が均一であり、実使用可能。
×:地合が悪く、下記表面強度試験の印刷面の画像も不均一であり、見栄えに劣るため実使用不可能。
【0091】
(f)表面強度
オフセット印刷機(型番:リソピアL−BT3−1100、三菱重工業(株)製)を使用し、カラーインク(品番:ADVAN、大日本インキ化学工業(株)製)にてカラー4色印刷を5000部行った。この印刷面について、目視及びルーペ(10倍)にて、紙表面のトラレ(紙表面の一部が印刷機のブランケットに取られて、印刷に抜けが生じるトラブル)の発生の程度を、以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:抜けがなく、印刷適性に優れ、実使用可能。
○:抜けが若干発生し、印刷適性が若干劣るが、実使用可能。
×:抜けが発生し、印刷適性に劣り、実使用不可能。
【0092】
【表1】

【0093】
表1より、実施例の紙はいずれも、填料として重質炭酸カルシウムを用い、0.2μm以上0.5μm未満の微細繊維をパルプ全体の20%以上40%以下含んでいるため、重質炭酸カルシウムの歩留りが良好で白色度が高く、ワイヤー磨耗性に優れた紙となる。
【0094】
これに対して、比較例の紙は、重質炭酸カルシウムを含んでいても、0.2μm以上0.5μm未満のパルプ繊維が全パルプの20%以上40%以下含んでいないため、白色度またはワイヤー磨耗度に劣る紙である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明により、重質炭酸カルシウムを内添填料として含み、白色度の高い紙を生産性よく提供することができる。
【符号の説明】
【0096】
10 原料
12 貯槽
14 第1燃焼炉
15 装入機
16 排ガスチャンバー
18 排出チャンバー
20 熱風発生炉
20A バーナー
22 再燃焼室
24 予冷器
26 熱交換器
28 誘引ファン
30 煙突
32 第2燃焼炉
34 冷却機
36 粒径選別機
38 燃焼品サイロ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプおよび内添用填料として重質炭酸カルシウムを含有し、JIS P 8220に準じて離解して得た繊維のうち、繊維長0.2μm以上0.5μm未満の繊維の割合が20%以上40%以下であることを特徴とする紙。
【請求項2】
前記内添用填料として更に、再生粒子および/またはタルクを含有し、前記再生粒子および/またはタルクの平均粒子径が、前記重質炭酸カルシウムの平均粒子径の5倍以上20倍以下であることを特徴とする、請求項1に記載の紙。
【請求項3】
前記再生粒子および/またはタルクの平均粒子径が12μm以上23μm以下であり、前記重質炭酸カルシウムに対する、前記再生粒子および/またはタルクの合計の割合が、絶乾重量で85:15〜60:40であることを特徴とする、請求項2に記載の紙。
【請求項4】
前記紙が凝結剤を含有し、前記凝結剤が、ポリマー成分として、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリダドマック及びポリアクリルアミドからなる群から選ばれる、少なくとも異なる2種類をグラフト重合して得られる凝結剤であることを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の紙。
【請求項5】
前記凝結剤の形状が、樹形図状であることを特徴とする、請求項4に記載の紙。
【請求項6】
前記凝結剤の分子量が50万〜300万であり、電荷密度が、10〜25meq/gであることを特徴とする、請求項4または5に記載の紙。

【図1】
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【公開番号】特開2010−236129(P2010−236129A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85190(P2009−85190)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】