重走検知装置
【構成】 媒体検出手段7は、搬送される媒体6の有無を検出し、厚さ検出手段8は、媒体6の厚さを検出する。積分手段10は、厚さ検出手段8からの媒体6の厚さを、媒体検出手段7からの媒体の搬送長さに基づき積分する。基準値記憶手段9には、正常な媒体1枚分の厚さの積分量の基準値が格納されている。演算手段演算手段11は、積分手段10からの媒体6の厚さの積分値と、基準値記憶手段9からの基準値との比を求める。重走判別手段12は、演算手段11で求められた値から媒体6が重走しているか、また、重走している場合は何枚が重なって搬送されているかを判別する。
【効果】 テープ等が貼り付けられた媒体に対して正確な重走判別が行え、かつ3枚以上重なって搬送された媒体でもその重走枚数を検出することができる。
【効果】 テープ等が貼り付けられた媒体に対して正確な重走判別が行え、かつ3枚以上重なって搬送された媒体でもその重走枚数を検出することができる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動入出金機や、自動販売機等に用いられる紙幣等の媒体の重走検知装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動入出金機においては、入金取引や出金取引等の取引に応じて、顧客により投入された紙幣や装置内に格納されている紙幣は1枚ずつ分離され、金種や真偽を鑑別された後集積され、入金あるいは出金の処理が行われる。そして、このような装置で、紙幣等の媒体が確実に1枚ずつ搬送されているかを判別するために重走検知装置が用いられている。このような重走検知装置とは、搬送媒体が1枚であるか、あるいは何枚かが重なっているかを検知する装置であり、搬送される媒体の厚さや透過光量等を予め設定された基準値と比較することで重走を検知していた。
【0003】上記重走検知において、搬送媒体の厚さによりその判別を行う方式では、媒体の厚さを検出するために、媒体に接しかつその厚さに応じて変動する検知ローラが用いられ、また、媒体の透過光量でその判別を行う方式では、透過光量を検出するために、搬送される媒体を挟持する位置関係で、発光ダイオードやホトダイオード、ホトトランジスタ等が設置されている。
【0004】図2は従来の重走検知装置のブロック図である。この重走検知装置は、搬送媒体の厚さにより重走判定を行う方式の装置であり、以下、搬送媒体の厚さによって重走判定を行う構成を説明する。
【0005】図の装置は、媒体検出手段1、厚さ検出手段2、基準値記憶手段3、比較手段4、比較結果判定手段5からなる。媒体検出手段1は搬送される媒体(紙幣等)の到来を検出する手段で、発光ダイオードやホトダイオード等から構成されている。厚さ検出手段2は、搬送される媒体の厚さを検出する手段で、媒体に接してその厚さに応じて変位する検知ローラ等からなるものである。基準値記憶手段3は、1枚の正常な媒体の厚さの上限値を記憶するメモリである。比較手段4は、厚さ検出手段2の出力(検出結果)と、基準値記憶手段3に記憶されている基準値との大小を比較し、その比較結果を比較結果判定手段5に出力する比較器である。また、比較結果判定手段5は、搬送される媒体毎に比較手段4による比較結果を記憶し、図示しない上位装置に比較結果を出力するものである。
【0006】次に、上記構成の重走検知装置の動作について説明する。媒体検出手段1は、搬送される媒体を検知し、比較結果判定手段5に媒体検出信号を出力する。比較結果判定手段5は、媒体検出手段1からの媒体検出信号により、比較手段4の比較結果から重走を判定する準備をする。一方、基準値記憶手段3は、1枚の正常な媒体の厚さの上限基準値を取り出し、これを比較手段4に出力する。比較手段4は、基準値記憶手段3より供給される基準値と、厚さ検出手段2の検出結果とを比較し、その比較結果を比較結果判定手段5に出力する。この比較結果判定手段5は、比較手段4からの比較結果に基づき、媒体が到来する毎に重走判定を行い、その重走判定結果を上位装置に出力する。
【0007】次に、比較手段4および比較結果判定手段5における媒体の重走判定動作について説明する。図3は、その重走判定動作の説明図である。図3において、媒体検出信号aは、媒体検出手段1から出力される信号であり、“0”のとき媒体は検出されず、“1”のとき媒体を検出したことを意味している。基準値bは、基準値記憶手段3に記憶された上限基準値であり、また、厚さ検出信号cは、厚さ検出手段2から出力される媒体の厚さの検出パターンを示している。尚、厚さ検出信号cにおいて、波形が上にいくほど媒体は厚く、下に行くほど媒体は薄くなるように表現されている。上限基準値bは、1枚の正常な媒体の厚さよりその値が大きく、かつ2枚の媒体の厚さより値が小さくなるよう予め設定されている。
【0008】比較結果dは、比較手段4から出力される比較結果であり、厚さ検出信号cが基準値bを越えると“1”となり、越えないと“0”となる。従って、この信号が“0”のとき媒体の厚さは正常で、“1”のとき媒体厚さが2枚以上であるということを意味する。判定結果eは、比較結果判定手段5から出力される判定結果であり、信号が“0”のとき搬送された媒体は正常で、“1”のとき、搬送された媒体が重走であると判定したことを意味する。尚、媒体検出信号a〜判定結果eは、図2中の信号a〜eに対応している。
【0009】図4に、図3の判定動作に対応した媒体例を示す。この図4において、媒体Aは正常搬送状態、媒体Bは2枚の媒体が殆どずれずに重なって搬送されている状態、媒体Cは、2枚の媒体が大きくずれて搬送されている状態である。
【0010】先ず、媒体Aの場合、その媒体Aが搬送されると、媒体検出手段1は媒体Aの到来を検出し、媒体検出信号aが“0”から“1”となる。媒体検出信号が“0”から“1”に変化したことで、比較結果判定手段5は、出力を“0”にして、到来した媒体の重走を判定する準備をする。媒体Aは上述したように、正常な1枚の搬送媒体であるため、その厚さ検出信号cは、基準値bよりも小さな値である。従って、比較結果dは“0”のままであり、判定結果eも“0”で、媒体Aは正常であると判定される。
【0011】次に、媒体Bの場合は、2枚の媒体が殆どずれずに重なって搬送された場合であるため、厚さ検出信号cは基準値bよりも大きな値である。従って、比較結果dは“1”となり、判定結果eは“1”となり、媒体Bは重走であると判定される。そして、媒体Cの場合は、2枚の媒体がずれて重なって搬送された場合であるため、厚さ検出信号cは、媒体が重なっている部分で基準値bよりも大きな値となっている。従って、比較結果dは“1”となり、判定結果eは“1”となって媒体Cは重走であると判定される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の重走検知装置では、媒体が何枚重なって搬送されても、判定結果は単に重走であって、重走した枚数は不明であり、従って、搬送された媒体の枚数が確定できないという問題点があった。また、例えば、媒体の一部分にテープ等を貼り付けた正常搬送状態の媒体と、重走状態の媒体との区別がつかないといった問題点も有していた。
【0013】以下、このような問題点を説明する。図5および図6は、重走判定動作の説明図および媒体例の説明図である。先ず、図6において、媒体Aは、図4の媒体Aと同様に、正常搬送状態の媒体である。また、媒体Dは、3枚の媒体が殆どずれることなく重なって搬送された状態である。更に、媒体Eは、媒体の一部にテープが貼り付けられているものであり、E1 はそのテープ貼り付け部分を示している。また、図5において、媒体検出信号a〜判定結果eは、図3の媒体検出信号a〜判定結果eと同様である。
【0014】先ず、媒体Aは上述したため、ここでは説明を省略し、媒体D、Eの場合を説明する。3枚重走した媒体Dの厚さ検出信号cは、2枚重走した媒体Bの厚さ検出信号cの場合よりも大きい値となるが、基準値bを越えているという点では同様であるため、比較結果d、判定結果eは、共に図3の比較結果d、判定結果eと同じとなる。即ち、2枚重走した媒体Bと3枚重走した媒体Dとの判別を行うことができず、その結果、媒体搬送枚数が確定できないことになる。一方、テープが貼り付けられた媒体Eの場合は、本来、正常搬送状態であるにもかかわらず、厚さ検出信号cが、そのテープ貼り付け部分E1 で基準値bを越えてしまうため、重走と誤判別されてしまっていた。
【0015】本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたもので、テープ等を貼り付けた媒体に対しても確実に重走判別が行え、しかも、3枚以上重走して搬送された媒体もその枚数検知が可能な重走検知装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明における第1発明の重走検知装置は、搬送される媒体の有無を検出する媒体検出手段と、前記媒体の厚さを検出する厚さ検出手段と、前記厚さ検出手段で検出された前記媒体の厚さを、前記媒体検出手段によって検出された媒体の搬送長さに基づき積分する積分手段と、予め設定された正常な媒体1枚分の厚さの積分量の基準値を記憶する基準値記憶手段と、前記積分手段の出力した前記媒体の厚さの積分値と、前記基準値との比を求める演算手段と、前記演算手段で求めた値に基づき当該媒体の重走判別を行う重走判別手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0017】第2発明の重走検知装置は、搬送される媒体の有無を検出する媒体検出手段と、前記媒体の厚さを検出する厚さ検出手段と、前記厚さ検出手段で検出された前記媒体の厚さを、前記媒体検出手段によって検出された媒体の搬送長さに基づき積分する積分手段と、予め設定された正常な媒体1枚分の厚さから媒体の複数枚の厚さまでの各枚数分の積分量の基準値を記憶する基準値記憶手段と、前記積分手段の出力した前記媒体の厚さの積分値と、前記基準値記憶手段に記憶された複数の基準値とを比較して、前記積分値とそれぞれの基準値との大小関係を求め、この大小関係に基づき前記媒体が何枚重なって搬送されているかを演算する演算手段と、前記演算手段で求めた値に基づき前記媒体の重走判別を行う重走判別手段とを備えたことを特徴とするものである。ものである。
【0018】
【作用】本発明における第1発明の重走検知装置においては、媒体が所定位置に搬送されると、媒体検出手段は、媒体の到来を検出する。そして、厚さ検出手段は、搬送される媒体の厚さを検出する。積分手段は、厚さ検出手段からの媒体の厚さを、媒体検出手段の検出信号より求められる媒体の搬送長さに基づき積分し、その積分結果を演算手段に出力する。演算手段は、基準値記憶手段に記憶されている基準値と、積分手段からの積分結果との比を求め、これを重走判別手段に出力する。重走判別手段は、演算手段での演算結果に基づき、媒体が重走しているかどうか、そして、重走している場合はその重走枚数を検出する。
【0019】第2発明の重走検知装置においては、媒体検出と媒体の厚さ測定および媒体の厚さの積分処理は、第1発明の重走検知装置と同様に行われる。そして、演算手段は、基準値記憶手段に記憶されている複数の基準値と、積分結果の値をそれぞれ比較し、その大小関係を求め、更に、大小関係から媒体が何枚重なって搬送されているかを演算する。重走判別手段は、演算手段での演算結果に基づき、媒体が重走しているかどうか、そして、重走している場合はその重走枚数を検出する。
【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。
《第1実施例》図1は本発明の重走検知装置の第1実施例を示すブロック図である。図の装置は、媒体検出手段7、厚さ検出手段8、基準値記憶手段9、積分手段10、演算手段11、重走判別手段12からなる。
【0021】媒体検出手段7は、搬送される紙幣等の媒体6の有無を、反射光や透過光等の光学的な手段で検出し、その検出信号(媒体検出信号)を出力する検出手段であり、発光ダイオードやホトトランジスタ、ホトダイオード等の光電変換素子により構成されている。厚さ検出手段8は、搬送される媒体6の厚さを検出する手段であり、媒体6の厚さを電気信号に変換して、その検出信号(厚さ検出信号)を出力するものである。即ち、厚さ検出手段8は、媒体6に接しかつその厚さに応じて変位する検知ローラと、この検知ローラの機械的な変位を、抵抗値や静電容量、インダクタンス等の電気的な変位に変換する変換器により構成されている。基準値記憶手段9は、1枚の正常な媒体の厚さの下限値を記憶する記憶装置である。
【0022】積分手段10は、一方の入力端が厚さ検出手段8の出力端に接続され、他方の入力端が媒体検出手段7の出力端に接続されており、これら媒体検出信号と厚さ検出信号に基づき、搬送される媒体6の1枚(重走状態では1組)毎に、厚さ検出手段8の出力信号(媒体の厚さ)を、搬送される方向の長さについて積分し、その積分結果を出力するものである。
【0023】演算手段11は、積分手段10の出力と、基準値記憶手段9の出力と、媒体検出手段7の出力とを入力し、これらの出力に基づき、媒体6の厚さの積分値と基準値との比を演算する機能を有している。即ち、この演算手段11は、搬送される媒体1枚(または1組)毎に、積分手段10の出力信号(媒体の厚さの積分値)を被除数とし、基準値記憶手段9に記憶される基準値を除数として、これらの除算演算を行い、その除算結果を重走判別手段12に出力するものである。重走判別手段12は、演算手段11の出力を入力し、この入力された演算結果に基づき、重走判別および重走状態である場合は、何枚重走であるかを判別する機能を有している。
【0024】次に、上記のように構成された重走検知装置の動作について説明する。図7は、その動作を説明するための各部の出力信号の波形図である。この図7では、媒体A、媒体B、媒体Cの3組の媒体についての例を示しており、これらの媒体は従来技術の説明で用いた図4の媒体と同じものである。即ち、媒体Aは、媒体6の正常搬送状態、媒体Bは、2枚の媒体6が殆どずれずに重なって搬送されている状態、媒体Cは、2枚の媒体6が大きくずれて搬送されている状態である。また、図7および後述する図8における媒体検出信号a〜除算結果gは、それぞれ図1中の信号a〜gに対応している。
【0025】先ず、媒体検出手段7からの出力は、媒体6を検出しているときは“1”の信号を出力し、媒体を検出していないときは“0”の信号を出力する。図7における媒体検出信号aは、この波形を示している。搬送された媒体6の到来を検知する媒体検出手段7からの出力により、媒体6の到来が通知されると、即ち、媒体検出手段7からの出力が“0”から“1”に変化すると、演算手段11は搬送された媒体6の重走検知のための準備として、直前の媒体6の除算結果をリセットする。
【0026】媒体6が徐々に搬送されるに従って、厚さ検出手段8は搬送される媒体6の厚さを検出し、この検出結果を積分手段10に出力する。厚さ検出手段8により検出された媒体6の厚さ(厚さ検出信号)の一例を図7のcに示す。また、厚さ検出信号cの値は、媒体6の厚さをより厚く検出するにつれて、矢印の“厚い”方向になり、薄く検出するにつれて、“薄い”方向になる。積分手段10は、厚さ検出手段8によって出力された媒体6の厚さ検出信号cを積分して、積分結果fを出力する。積分処理は媒体検出信号aが“1”の間続けられ、媒体検出信号aが“0”の間は積分結果fをリセットし“0”を出力する。また、図7において、破線で示されている基準値Rは、基準値記憶手段9に記憶されている媒体1枚分の厚さの積分値の下限値であり、これは、予め標準的な媒体6の積分値から実験的に求めた基準値である。
【0027】演算手段11は、媒体検出信号aが“1”から“0”に変化するときの積分結果fを、基準値記憶手段9に記憶されている媒体6の1枚分の厚さの積分値で除算演算し、その商を重走判別手段12に出力する。図7のgに除算結果の出力を示す。同図の除算結果gにおいて、破線で表示されているのは、下から“1”、“2”…であり、これは搬送枚数が1枚、2枚…を意味する。重走判別手段12は、演算手段11の演算結果が“1”であった場合は、重走なしと判定し、“2”であった場合は2枚重走であると判別し、この判別結果を図示しない上位装置に出力する。
【0028】媒体Aのように正常な媒体が搬送されると、その厚さ検出信号cの積分結果fの最大値、即ち媒体Aの1枚分の厚さの積分値をIA とすると、IA は基準値記憶手段9に記憶されている基準値Rの1倍以上でかつ2倍より小となる。同様に、媒体Bや媒体Cの検出信号cの積分結果fの値をそれぞれIB 、IC とすると、どちらも基準値記憶手段9に記憶される基準値Rの2倍以上でかつ3倍より小となる。これを式で表現すると、それぞれ下記の式(1)〜式(3)となる。
R≦IA <2R …(1)
2R≦IB <3R …(2)
2R≦IC <3R …(3)
【0029】演算手段11は、媒体A、B、Cのそれぞれ1組分の厚さの積分値IA 、IB、IC を、基準値記憶手段9に記憶されている基準値Rで除算し、その商を重走判別手段12に出力する。従って、媒体A、B、Cに対応するそれぞれの出力は1,2,2となる。そして、重走判別手段12は、この演算結果に基づき、媒体Aは正常搬送状態(搬送枚数は1枚)、媒体Bおよび媒体Cは2枚重走状態であると判定する。
【0030】次に、従来の重走検知装置では問題のあった3枚重走とテープの貼り付けられた媒体についての例を説明する。図8は、これを説明するための波形図である。同図において、媒体Dと媒体Eは、図6で示した媒体D、Eと同様である。このような媒体D、媒体Eに対して、上記媒体A、B、Cへの処理と同様に、その積分結果fを求め、これらの積分結果fをそれぞれID 、IE とすると、ID 、IE と基準値Rとの関係は、下記の式(4)と式(5)のようになる。
3R≦ID <4R …(4)
R≦IE <2R …(5)
【0031】従って、演算手段11から出力される媒体Dと媒体Eの出力はそれぞれ3,1となり、3枚重走である場合はその枚数まで判別できる等、搬送された媒体の正確な枚数を検知することができる。しかも、従来は重走状態と誤判別していた媒体Eも正確に重走判別することができる。
【0032】尚、媒体6の重走判別を媒体の厚さの平均値に基づき行うことも考えられるが、このような平均値に基づく判別に比べ、上記第1の実施例のように、媒体6の厚さの積分値に基づく判別は次のような利点を有しているものである。例えば、複数枚の媒体がずれた状態で搬送されている場合、この媒体の厚さの平均値は、必ずしも重走枚数分の厚さの値とはならないものである。例えば、上述した媒体Cのような場合、大きくずれているために、その厚さの平均値は2枚分とはならず、このような平均値で基準値との除算演算を行うと、“重走なし”という誤判別結果となってしまう。
【0033】これに対して、上記実施例のように、媒体6の厚さの積分値を用いれば、たとえ、媒体6が大きくずれた状態(即ち、わずかしか重なっていない状態)で搬送されたとしても、正確な重走枚数を演算することができる等、媒体6のずれ状態とは無関係に確実な重走判定が行え、しかも、媒体Eのように媒体6の一部分にテープ等が貼り付けられているものに対しても、正確な判別を行うことができるのである。
【0034】《第2実施例》図9は、本発明による重走検知装置の第2実施例を示すブロック図である。図の装置は、媒体検出手段7、厚さ検出手段8、積分手段10、基準値記憶手段13、演算手段14、重走判別手段15からなる。ここで、媒体検出手段7、厚さ検出手段8および積分手段10は、上記第1実施例と同様の構成であるため、対応する部分に同一符号を付してその説明は省略する。
【0035】基準値記憶手段13は、複数の基準値を記憶する記憶装置であり、第1の基準値記憶部13−1、第2の基準値記憶部13−2、…第nの基準値記憶部13−nから構成されている。第1の基準値記憶部13−1は、1枚の正常な媒体6の厚さの下限値を記憶し、第2の基準値記憶部13−2は、2枚の正常な媒体6の厚さの下限値を記憶する機能を有し、以下同様に、第nの基準値記憶部13−nはn枚の正常な媒体の厚さの下限値を記憶するものである。
【0036】演算手段14は、積分手段10の出力した媒体の厚さの積分値と、第1〜第nの基準値記憶部13−1〜13−nの出力値とを比較し、その比較結果に基づき、媒体が何枚重なって搬送されているかを演算する手段であり、複数の比較手段16−1、16−2、…、16−nと、プライオリティ・エンコーダ17から構成されている。
【0037】第1の比較手段16−1は、媒体検出手段7からの媒体検出信号に基づき、搬送される媒体6の媒体有り状態(正常搬送状態では1枚、重走状態では1組)毎に、積分手段10の出力信号(媒体の厚さの積分値)と、第1の基準値記憶部13−1に記憶されている基準値とを比較するものであり、以下、同様に、第2の比較手段16−2は、搬送される媒体1枚(または1組)毎に、積分手段10の出力信号(媒体の厚さの積分値)と、第2の基準値記憶部13−2に記憶されている基準値とを比較するものであり、比較手段16−nは、搬送される媒体1枚(または1組)毎に、積分手段10の出力信号(媒体の厚さの積分値)と、第nの基準値記憶部13−nに記憶されている基準値とを比較するものである。
【0038】また、プライオリティ・エンコーダ17は、そのLSB(最下位ビット)の入力端が比較手段16−1の出力端に接続され、LSBから2番目の入力端が比較手段16−2の出力端に接続され、同様に、MSB(最上位ビット)の入力端が比較手段16−nの出力端に接続されており、媒体検出手段7からの出力に基づき、搬送される媒体1枚(または1組)毎に、MSBからLSBに入力される比較結果に重みを付け、数値としてその比較結果を重走判別手段15に出力する機能を有している。
【0039】次に、上記のように構成された第2実施例の動作について説明する。図10は、その動作を説明するための各部の波形図である。また、この図10では、媒体A、媒体B、媒体Cの3組の媒体についての例を示しているが、これらの媒体は従来技術の説明で用いた図4の媒体A、B、Cと同じものである。そして、図10および後述する図11における媒体検出信号a〜エンコーダ出力jは、それぞれ図9中の信号a〜jに対応している。
【0040】媒体検出手段7からの出力は、媒体6を検出しているときは“1”の信号を出力し、媒体6を検出していないときは“0”の信号を出力する。図10の媒体検出信号aは、この検出信号を示している。各比較手段16−1〜16−nは、搬送された媒体6の到来を検知する媒体検出手段7からの出力により、媒体の到来を通知されると、即ち、媒体検出手段7からの出力が“0”から“1”に変化すると、搬送された媒体6の重走検知のための準備として、直前の媒体6の比較結果をリセットする。
【0041】媒体6が徐々に搬送されるにしたがって、厚さ検出手段8は、搬送される媒体6の厚さを検出し、積分手段10に出力する。厚さ検出手段8により検出された媒体の厚さ(厚さ検出信号)の一例を図10のcに示す。また、図10のcにおいて、媒体6の厚さをより厚く検出するにつれて、厚さ検出信号cは同図矢印の“厚い”方向になり、薄く検出するにつれて、“薄い”方向になる。積分手段10は、厚さ検出手段8によって出力される媒体6の厚さ検出信号cを積分して、積分結果fを出力する。積分処理は媒体検出信号aが“1”の間続けられ、検出信号aが“0”の間は積分結果fをリセットし“0”を出力する。
【0042】尚、図10の第1の基準値R1 は、第1の基準値記憶部13−1に記憶されている媒体1枚分の厚さの積分値の下限値、第2の基準値R2 は、第2の基準値記憶13−2に記憶されている媒体2枚分の厚さの積分値の下限値を示している。
【0043】比較手段16−1は、媒体検出信号aが“1”から“0”に変化するときの積分結果fを、第1の基準値記憶部13−1に記憶されている第1の基準値R1 と比較し、その比較結果を出力する。図10のh−1にその比較結果の出力を示す。同図h−1において、積分結果が第1の基準値R1 以上のとき“1”の信号を出力し、そうでないときは“0”の信号を出力する。
【0044】また、比較手段16−2も、媒体検出信号aが“1”から“0”に変化するときの積分結果fを、第2の基準値記憶部13−2に記憶されている第2の基準値R2 と比較し、その比較結果を出力する。図10のh−2にその比較結果の出力を示す。同図h−2において、積分結果が第2の基準値R2 以上のとき“1”の信号を出力し、そうでないときは“0”の信号を出力する。同様に、比較手段16−nは、媒体検出信号aが“1”から“0”に変化するときの積分結果fを、第nの基準値記憶部13−nに記憶されている第nの基準値Rn と比較し、その比較結果を出力する。積分結果が第nの基準値Rn 以上のとき“1”の信号を出力し、そうでないときは“0”の信号を出力する。
【0045】媒体Aのように正常な1枚の媒体6が搬送されると、その厚さ検出信号cの積分結果fの最大値、即ち、媒体Aの1枚分の厚さの積分値をIA とすると、IAは第1の基準値記憶部13−1に記憶されている第1の基準値R1 以上でかつ第2の基準値記憶部13−2に記憶されている第2の基準値R2 より小となる。従って、比較手段16−1の出力は“1”となり、また、比較手段16−2から比較手段16−nの出力は、全て“0”となる。
【0046】同様に、媒体Bや媒体Cの出力信号cの積分結果fの値をそれぞれIB 、ICとすると、どちらも第1の基準値記憶部13−1に記憶されている第1の基準値R1 以上でかつ第2の基準値記憶部13−2に記憶されている第2の基準値R2以上であり、かつ第3の基準値記憶部13−3に記憶されている第3の基準値R3 より小となる。従って、比較手段16−1の出力と比較手段16−2の出力は、共に“1”となり、また、比較手段16−3から比較手段16−nまでの出力は全て“0”となる。
【0047】プライオリティ・エンコーダ17は、媒体検出信号aが“1”から“0”に変化するとき、各比較手段16−1〜16−nの出力に重みをつけて数値に変換する。例えば、媒体Aの場合は、その入力が「1、0、0、…、0」であるため、その出力jは、“1”となり、媒体Bと媒体Cの場合は、その入力が「1、1、0、…、0」であるため、その出力jは“2”となる。そして、重走判別手段15は、プライオリティ・エンコーダ17からの出力jに基づき、出力jの値が“1”の場合は、重走なし、また、出力jの値が“2”の場合は、2枚重走状態と判断する。
【0048】次に、従来の技術では問題のあった3枚重走とテープ等の貼り付けられた媒体6についての例を説明する。図11は、これらの媒体の場合を説明するための図である。同図において、媒体Dと媒体Eは図6の媒体と同じものである。また、図中、媒体検出信号a、厚さ検出信号c、積分結果f、比較結果h−1、h−2、h−3、エンコーダ出力jは、それぞれ図10における信号と同様の出力信号を示している。
【0049】先ず、媒体Dから媒体Eに対する上記第1実施例の動作と同様に、媒体Dと媒体Eに対してその積分結果fを求める。そして、これをそれぞれID 、IE とすると、ID は、第3の基準値記憶部13−3に記憶されている第3の基準値R3以上で、かつ図示省略した第4の基準値記憶部13−4に記憶されている第4の基準値R4 より小となる。また、IE は第1の基準値記憶部13−1に記憶されている第1の基準値R1 以上で、かつ第2の基準値記憶部13−2に記憶されている第2の基準値R2 より小となる。
【0050】従って、媒体Dと媒体Eに対応するプライオリティ・エンコーダ17のそれぞれの入力は、「1、1、1、0、…0」、「1、0、0、0、…0」となる。その結果、プライオリティ・エンコーダ17の出力jは、それぞれ3、1となり、搬送された媒体6の正確な枚数を検知することができる。
【0051】尚、上記第2実施例では、演算手段14を、複数の比較手段16−1〜16−nと、プライオリティ・エンコーダ17とで構成したが、これに限定されるものではなく、ある値(本実施例では積分結果f)を複数の基準値と比較し、その値を符号化するものであれば、他の構成であってもよい。
【0052】また、媒体6としては、自動入出金機等に用いられる紙幣だけでなく、一般の文書処理装置等に用いられる紙葉類等であってもよく、このような場合でも上記実施例と同様の効果を奏する。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、第1発明の重走検知装置によれば、搬送される媒体の厚さを積分し、この積分結果と、予め設定した正常な媒体1枚分の厚さの積分値との比を求め、この比に基づき重走判定を行うようにし、また、第2発明の重走検知装置によれば、搬送される媒体の厚さの積分値と、正常な媒体の各枚数分の基準値とを比較し、この比較結果に基づき媒体が何枚重なって搬送されているかを演算するようにしたので、3枚以上重なって搬送されている場合でも、その重走枚数が正確に判別でき、しかも、テープ等が貼り付けられた媒体の場合の誤判別を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の重走検知装置の第1実施例のブロック図である。
【図2】従来の重走検知装置のブロック図である。
【図3】従来の重走検知装置における各部の動作波形図である。
【図4】従来および本発明の重走検知装置における媒体例の説明図である。
【図5】従来の重走検知装置における他の媒体状態での各部の動作波形図である。
【図6】従来および本発明の重走検知装置における他の媒体状態での媒体例の説明図である。
【図7】本発明の重走検知装置の第1実施例における各部の動作波形図である。
【図8】本発明の重走検知装置の第1実施例における他の媒体状態の場合の各部の動作波形図である。
【図9】本発明の重走検知装置の第2実施例のブロック図である。
【図10】本発明の重走検知装置の第2実施例における各部の動作波形図である。
【図11】本発明の重走検知装置の第2実施例における他の媒体状態の場合の各部の動作波形図である。
【符号の説明】
7 媒体検出手段
8 厚さ検出手段
9、13 基準値記憶手段
10 積分手段
11、14 演算手段
12、15 重走判別手段
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動入出金機や、自動販売機等に用いられる紙幣等の媒体の重走検知装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動入出金機においては、入金取引や出金取引等の取引に応じて、顧客により投入された紙幣や装置内に格納されている紙幣は1枚ずつ分離され、金種や真偽を鑑別された後集積され、入金あるいは出金の処理が行われる。そして、このような装置で、紙幣等の媒体が確実に1枚ずつ搬送されているかを判別するために重走検知装置が用いられている。このような重走検知装置とは、搬送媒体が1枚であるか、あるいは何枚かが重なっているかを検知する装置であり、搬送される媒体の厚さや透過光量等を予め設定された基準値と比較することで重走を検知していた。
【0003】上記重走検知において、搬送媒体の厚さによりその判別を行う方式では、媒体の厚さを検出するために、媒体に接しかつその厚さに応じて変動する検知ローラが用いられ、また、媒体の透過光量でその判別を行う方式では、透過光量を検出するために、搬送される媒体を挟持する位置関係で、発光ダイオードやホトダイオード、ホトトランジスタ等が設置されている。
【0004】図2は従来の重走検知装置のブロック図である。この重走検知装置は、搬送媒体の厚さにより重走判定を行う方式の装置であり、以下、搬送媒体の厚さによって重走判定を行う構成を説明する。
【0005】図の装置は、媒体検出手段1、厚さ検出手段2、基準値記憶手段3、比較手段4、比較結果判定手段5からなる。媒体検出手段1は搬送される媒体(紙幣等)の到来を検出する手段で、発光ダイオードやホトダイオード等から構成されている。厚さ検出手段2は、搬送される媒体の厚さを検出する手段で、媒体に接してその厚さに応じて変位する検知ローラ等からなるものである。基準値記憶手段3は、1枚の正常な媒体の厚さの上限値を記憶するメモリである。比較手段4は、厚さ検出手段2の出力(検出結果)と、基準値記憶手段3に記憶されている基準値との大小を比較し、その比較結果を比較結果判定手段5に出力する比較器である。また、比較結果判定手段5は、搬送される媒体毎に比較手段4による比較結果を記憶し、図示しない上位装置に比較結果を出力するものである。
【0006】次に、上記構成の重走検知装置の動作について説明する。媒体検出手段1は、搬送される媒体を検知し、比較結果判定手段5に媒体検出信号を出力する。比較結果判定手段5は、媒体検出手段1からの媒体検出信号により、比較手段4の比較結果から重走を判定する準備をする。一方、基準値記憶手段3は、1枚の正常な媒体の厚さの上限基準値を取り出し、これを比較手段4に出力する。比較手段4は、基準値記憶手段3より供給される基準値と、厚さ検出手段2の検出結果とを比較し、その比較結果を比較結果判定手段5に出力する。この比較結果判定手段5は、比較手段4からの比較結果に基づき、媒体が到来する毎に重走判定を行い、その重走判定結果を上位装置に出力する。
【0007】次に、比較手段4および比較結果判定手段5における媒体の重走判定動作について説明する。図3は、その重走判定動作の説明図である。図3において、媒体検出信号aは、媒体検出手段1から出力される信号であり、“0”のとき媒体は検出されず、“1”のとき媒体を検出したことを意味している。基準値bは、基準値記憶手段3に記憶された上限基準値であり、また、厚さ検出信号cは、厚さ検出手段2から出力される媒体の厚さの検出パターンを示している。尚、厚さ検出信号cにおいて、波形が上にいくほど媒体は厚く、下に行くほど媒体は薄くなるように表現されている。上限基準値bは、1枚の正常な媒体の厚さよりその値が大きく、かつ2枚の媒体の厚さより値が小さくなるよう予め設定されている。
【0008】比較結果dは、比較手段4から出力される比較結果であり、厚さ検出信号cが基準値bを越えると“1”となり、越えないと“0”となる。従って、この信号が“0”のとき媒体の厚さは正常で、“1”のとき媒体厚さが2枚以上であるということを意味する。判定結果eは、比較結果判定手段5から出力される判定結果であり、信号が“0”のとき搬送された媒体は正常で、“1”のとき、搬送された媒体が重走であると判定したことを意味する。尚、媒体検出信号a〜判定結果eは、図2中の信号a〜eに対応している。
【0009】図4に、図3の判定動作に対応した媒体例を示す。この図4において、媒体Aは正常搬送状態、媒体Bは2枚の媒体が殆どずれずに重なって搬送されている状態、媒体Cは、2枚の媒体が大きくずれて搬送されている状態である。
【0010】先ず、媒体Aの場合、その媒体Aが搬送されると、媒体検出手段1は媒体Aの到来を検出し、媒体検出信号aが“0”から“1”となる。媒体検出信号が“0”から“1”に変化したことで、比較結果判定手段5は、出力を“0”にして、到来した媒体の重走を判定する準備をする。媒体Aは上述したように、正常な1枚の搬送媒体であるため、その厚さ検出信号cは、基準値bよりも小さな値である。従って、比較結果dは“0”のままであり、判定結果eも“0”で、媒体Aは正常であると判定される。
【0011】次に、媒体Bの場合は、2枚の媒体が殆どずれずに重なって搬送された場合であるため、厚さ検出信号cは基準値bよりも大きな値である。従って、比較結果dは“1”となり、判定結果eは“1”となり、媒体Bは重走であると判定される。そして、媒体Cの場合は、2枚の媒体がずれて重なって搬送された場合であるため、厚さ検出信号cは、媒体が重なっている部分で基準値bよりも大きな値となっている。従って、比較結果dは“1”となり、判定結果eは“1”となって媒体Cは重走であると判定される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の重走検知装置では、媒体が何枚重なって搬送されても、判定結果は単に重走であって、重走した枚数は不明であり、従って、搬送された媒体の枚数が確定できないという問題点があった。また、例えば、媒体の一部分にテープ等を貼り付けた正常搬送状態の媒体と、重走状態の媒体との区別がつかないといった問題点も有していた。
【0013】以下、このような問題点を説明する。図5および図6は、重走判定動作の説明図および媒体例の説明図である。先ず、図6において、媒体Aは、図4の媒体Aと同様に、正常搬送状態の媒体である。また、媒体Dは、3枚の媒体が殆どずれることなく重なって搬送された状態である。更に、媒体Eは、媒体の一部にテープが貼り付けられているものであり、E1 はそのテープ貼り付け部分を示している。また、図5において、媒体検出信号a〜判定結果eは、図3の媒体検出信号a〜判定結果eと同様である。
【0014】先ず、媒体Aは上述したため、ここでは説明を省略し、媒体D、Eの場合を説明する。3枚重走した媒体Dの厚さ検出信号cは、2枚重走した媒体Bの厚さ検出信号cの場合よりも大きい値となるが、基準値bを越えているという点では同様であるため、比較結果d、判定結果eは、共に図3の比較結果d、判定結果eと同じとなる。即ち、2枚重走した媒体Bと3枚重走した媒体Dとの判別を行うことができず、その結果、媒体搬送枚数が確定できないことになる。一方、テープが貼り付けられた媒体Eの場合は、本来、正常搬送状態であるにもかかわらず、厚さ検出信号cが、そのテープ貼り付け部分E1 で基準値bを越えてしまうため、重走と誤判別されてしまっていた。
【0015】本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたもので、テープ等を貼り付けた媒体に対しても確実に重走判別が行え、しかも、3枚以上重走して搬送された媒体もその枚数検知が可能な重走検知装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明における第1発明の重走検知装置は、搬送される媒体の有無を検出する媒体検出手段と、前記媒体の厚さを検出する厚さ検出手段と、前記厚さ検出手段で検出された前記媒体の厚さを、前記媒体検出手段によって検出された媒体の搬送長さに基づき積分する積分手段と、予め設定された正常な媒体1枚分の厚さの積分量の基準値を記憶する基準値記憶手段と、前記積分手段の出力した前記媒体の厚さの積分値と、前記基準値との比を求める演算手段と、前記演算手段で求めた値に基づき当該媒体の重走判別を行う重走判別手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0017】第2発明の重走検知装置は、搬送される媒体の有無を検出する媒体検出手段と、前記媒体の厚さを検出する厚さ検出手段と、前記厚さ検出手段で検出された前記媒体の厚さを、前記媒体検出手段によって検出された媒体の搬送長さに基づき積分する積分手段と、予め設定された正常な媒体1枚分の厚さから媒体の複数枚の厚さまでの各枚数分の積分量の基準値を記憶する基準値記憶手段と、前記積分手段の出力した前記媒体の厚さの積分値と、前記基準値記憶手段に記憶された複数の基準値とを比較して、前記積分値とそれぞれの基準値との大小関係を求め、この大小関係に基づき前記媒体が何枚重なって搬送されているかを演算する演算手段と、前記演算手段で求めた値に基づき前記媒体の重走判別を行う重走判別手段とを備えたことを特徴とするものである。ものである。
【0018】
【作用】本発明における第1発明の重走検知装置においては、媒体が所定位置に搬送されると、媒体検出手段は、媒体の到来を検出する。そして、厚さ検出手段は、搬送される媒体の厚さを検出する。積分手段は、厚さ検出手段からの媒体の厚さを、媒体検出手段の検出信号より求められる媒体の搬送長さに基づき積分し、その積分結果を演算手段に出力する。演算手段は、基準値記憶手段に記憶されている基準値と、積分手段からの積分結果との比を求め、これを重走判別手段に出力する。重走判別手段は、演算手段での演算結果に基づき、媒体が重走しているかどうか、そして、重走している場合はその重走枚数を検出する。
【0019】第2発明の重走検知装置においては、媒体検出と媒体の厚さ測定および媒体の厚さの積分処理は、第1発明の重走検知装置と同様に行われる。そして、演算手段は、基準値記憶手段に記憶されている複数の基準値と、積分結果の値をそれぞれ比較し、その大小関係を求め、更に、大小関係から媒体が何枚重なって搬送されているかを演算する。重走判別手段は、演算手段での演算結果に基づき、媒体が重走しているかどうか、そして、重走している場合はその重走枚数を検出する。
【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。
《第1実施例》図1は本発明の重走検知装置の第1実施例を示すブロック図である。図の装置は、媒体検出手段7、厚さ検出手段8、基準値記憶手段9、積分手段10、演算手段11、重走判別手段12からなる。
【0021】媒体検出手段7は、搬送される紙幣等の媒体6の有無を、反射光や透過光等の光学的な手段で検出し、その検出信号(媒体検出信号)を出力する検出手段であり、発光ダイオードやホトトランジスタ、ホトダイオード等の光電変換素子により構成されている。厚さ検出手段8は、搬送される媒体6の厚さを検出する手段であり、媒体6の厚さを電気信号に変換して、その検出信号(厚さ検出信号)を出力するものである。即ち、厚さ検出手段8は、媒体6に接しかつその厚さに応じて変位する検知ローラと、この検知ローラの機械的な変位を、抵抗値や静電容量、インダクタンス等の電気的な変位に変換する変換器により構成されている。基準値記憶手段9は、1枚の正常な媒体の厚さの下限値を記憶する記憶装置である。
【0022】積分手段10は、一方の入力端が厚さ検出手段8の出力端に接続され、他方の入力端が媒体検出手段7の出力端に接続されており、これら媒体検出信号と厚さ検出信号に基づき、搬送される媒体6の1枚(重走状態では1組)毎に、厚さ検出手段8の出力信号(媒体の厚さ)を、搬送される方向の長さについて積分し、その積分結果を出力するものである。
【0023】演算手段11は、積分手段10の出力と、基準値記憶手段9の出力と、媒体検出手段7の出力とを入力し、これらの出力に基づき、媒体6の厚さの積分値と基準値との比を演算する機能を有している。即ち、この演算手段11は、搬送される媒体1枚(または1組)毎に、積分手段10の出力信号(媒体の厚さの積分値)を被除数とし、基準値記憶手段9に記憶される基準値を除数として、これらの除算演算を行い、その除算結果を重走判別手段12に出力するものである。重走判別手段12は、演算手段11の出力を入力し、この入力された演算結果に基づき、重走判別および重走状態である場合は、何枚重走であるかを判別する機能を有している。
【0024】次に、上記のように構成された重走検知装置の動作について説明する。図7は、その動作を説明するための各部の出力信号の波形図である。この図7では、媒体A、媒体B、媒体Cの3組の媒体についての例を示しており、これらの媒体は従来技術の説明で用いた図4の媒体と同じものである。即ち、媒体Aは、媒体6の正常搬送状態、媒体Bは、2枚の媒体6が殆どずれずに重なって搬送されている状態、媒体Cは、2枚の媒体6が大きくずれて搬送されている状態である。また、図7および後述する図8における媒体検出信号a〜除算結果gは、それぞれ図1中の信号a〜gに対応している。
【0025】先ず、媒体検出手段7からの出力は、媒体6を検出しているときは“1”の信号を出力し、媒体を検出していないときは“0”の信号を出力する。図7における媒体検出信号aは、この波形を示している。搬送された媒体6の到来を検知する媒体検出手段7からの出力により、媒体6の到来が通知されると、即ち、媒体検出手段7からの出力が“0”から“1”に変化すると、演算手段11は搬送された媒体6の重走検知のための準備として、直前の媒体6の除算結果をリセットする。
【0026】媒体6が徐々に搬送されるに従って、厚さ検出手段8は搬送される媒体6の厚さを検出し、この検出結果を積分手段10に出力する。厚さ検出手段8により検出された媒体6の厚さ(厚さ検出信号)の一例を図7のcに示す。また、厚さ検出信号cの値は、媒体6の厚さをより厚く検出するにつれて、矢印の“厚い”方向になり、薄く検出するにつれて、“薄い”方向になる。積分手段10は、厚さ検出手段8によって出力された媒体6の厚さ検出信号cを積分して、積分結果fを出力する。積分処理は媒体検出信号aが“1”の間続けられ、媒体検出信号aが“0”の間は積分結果fをリセットし“0”を出力する。また、図7において、破線で示されている基準値Rは、基準値記憶手段9に記憶されている媒体1枚分の厚さの積分値の下限値であり、これは、予め標準的な媒体6の積分値から実験的に求めた基準値である。
【0027】演算手段11は、媒体検出信号aが“1”から“0”に変化するときの積分結果fを、基準値記憶手段9に記憶されている媒体6の1枚分の厚さの積分値で除算演算し、その商を重走判別手段12に出力する。図7のgに除算結果の出力を示す。同図の除算結果gにおいて、破線で表示されているのは、下から“1”、“2”…であり、これは搬送枚数が1枚、2枚…を意味する。重走判別手段12は、演算手段11の演算結果が“1”であった場合は、重走なしと判定し、“2”であった場合は2枚重走であると判別し、この判別結果を図示しない上位装置に出力する。
【0028】媒体Aのように正常な媒体が搬送されると、その厚さ検出信号cの積分結果fの最大値、即ち媒体Aの1枚分の厚さの積分値をIA とすると、IA は基準値記憶手段9に記憶されている基準値Rの1倍以上でかつ2倍より小となる。同様に、媒体Bや媒体Cの検出信号cの積分結果fの値をそれぞれIB 、IC とすると、どちらも基準値記憶手段9に記憶される基準値Rの2倍以上でかつ3倍より小となる。これを式で表現すると、それぞれ下記の式(1)〜式(3)となる。
R≦IA <2R …(1)
2R≦IB <3R …(2)
2R≦IC <3R …(3)
【0029】演算手段11は、媒体A、B、Cのそれぞれ1組分の厚さの積分値IA 、IB、IC を、基準値記憶手段9に記憶されている基準値Rで除算し、その商を重走判別手段12に出力する。従って、媒体A、B、Cに対応するそれぞれの出力は1,2,2となる。そして、重走判別手段12は、この演算結果に基づき、媒体Aは正常搬送状態(搬送枚数は1枚)、媒体Bおよび媒体Cは2枚重走状態であると判定する。
【0030】次に、従来の重走検知装置では問題のあった3枚重走とテープの貼り付けられた媒体についての例を説明する。図8は、これを説明するための波形図である。同図において、媒体Dと媒体Eは、図6で示した媒体D、Eと同様である。このような媒体D、媒体Eに対して、上記媒体A、B、Cへの処理と同様に、その積分結果fを求め、これらの積分結果fをそれぞれID 、IE とすると、ID 、IE と基準値Rとの関係は、下記の式(4)と式(5)のようになる。
3R≦ID <4R …(4)
R≦IE <2R …(5)
【0031】従って、演算手段11から出力される媒体Dと媒体Eの出力はそれぞれ3,1となり、3枚重走である場合はその枚数まで判別できる等、搬送された媒体の正確な枚数を検知することができる。しかも、従来は重走状態と誤判別していた媒体Eも正確に重走判別することができる。
【0032】尚、媒体6の重走判別を媒体の厚さの平均値に基づき行うことも考えられるが、このような平均値に基づく判別に比べ、上記第1の実施例のように、媒体6の厚さの積分値に基づく判別は次のような利点を有しているものである。例えば、複数枚の媒体がずれた状態で搬送されている場合、この媒体の厚さの平均値は、必ずしも重走枚数分の厚さの値とはならないものである。例えば、上述した媒体Cのような場合、大きくずれているために、その厚さの平均値は2枚分とはならず、このような平均値で基準値との除算演算を行うと、“重走なし”という誤判別結果となってしまう。
【0033】これに対して、上記実施例のように、媒体6の厚さの積分値を用いれば、たとえ、媒体6が大きくずれた状態(即ち、わずかしか重なっていない状態)で搬送されたとしても、正確な重走枚数を演算することができる等、媒体6のずれ状態とは無関係に確実な重走判定が行え、しかも、媒体Eのように媒体6の一部分にテープ等が貼り付けられているものに対しても、正確な判別を行うことができるのである。
【0034】《第2実施例》図9は、本発明による重走検知装置の第2実施例を示すブロック図である。図の装置は、媒体検出手段7、厚さ検出手段8、積分手段10、基準値記憶手段13、演算手段14、重走判別手段15からなる。ここで、媒体検出手段7、厚さ検出手段8および積分手段10は、上記第1実施例と同様の構成であるため、対応する部分に同一符号を付してその説明は省略する。
【0035】基準値記憶手段13は、複数の基準値を記憶する記憶装置であり、第1の基準値記憶部13−1、第2の基準値記憶部13−2、…第nの基準値記憶部13−nから構成されている。第1の基準値記憶部13−1は、1枚の正常な媒体6の厚さの下限値を記憶し、第2の基準値記憶部13−2は、2枚の正常な媒体6の厚さの下限値を記憶する機能を有し、以下同様に、第nの基準値記憶部13−nはn枚の正常な媒体の厚さの下限値を記憶するものである。
【0036】演算手段14は、積分手段10の出力した媒体の厚さの積分値と、第1〜第nの基準値記憶部13−1〜13−nの出力値とを比較し、その比較結果に基づき、媒体が何枚重なって搬送されているかを演算する手段であり、複数の比較手段16−1、16−2、…、16−nと、プライオリティ・エンコーダ17から構成されている。
【0037】第1の比較手段16−1は、媒体検出手段7からの媒体検出信号に基づき、搬送される媒体6の媒体有り状態(正常搬送状態では1枚、重走状態では1組)毎に、積分手段10の出力信号(媒体の厚さの積分値)と、第1の基準値記憶部13−1に記憶されている基準値とを比較するものであり、以下、同様に、第2の比較手段16−2は、搬送される媒体1枚(または1組)毎に、積分手段10の出力信号(媒体の厚さの積分値)と、第2の基準値記憶部13−2に記憶されている基準値とを比較するものであり、比較手段16−nは、搬送される媒体1枚(または1組)毎に、積分手段10の出力信号(媒体の厚さの積分値)と、第nの基準値記憶部13−nに記憶されている基準値とを比較するものである。
【0038】また、プライオリティ・エンコーダ17は、そのLSB(最下位ビット)の入力端が比較手段16−1の出力端に接続され、LSBから2番目の入力端が比較手段16−2の出力端に接続され、同様に、MSB(最上位ビット)の入力端が比較手段16−nの出力端に接続されており、媒体検出手段7からの出力に基づき、搬送される媒体1枚(または1組)毎に、MSBからLSBに入力される比較結果に重みを付け、数値としてその比較結果を重走判別手段15に出力する機能を有している。
【0039】次に、上記のように構成された第2実施例の動作について説明する。図10は、その動作を説明するための各部の波形図である。また、この図10では、媒体A、媒体B、媒体Cの3組の媒体についての例を示しているが、これらの媒体は従来技術の説明で用いた図4の媒体A、B、Cと同じものである。そして、図10および後述する図11における媒体検出信号a〜エンコーダ出力jは、それぞれ図9中の信号a〜jに対応している。
【0040】媒体検出手段7からの出力は、媒体6を検出しているときは“1”の信号を出力し、媒体6を検出していないときは“0”の信号を出力する。図10の媒体検出信号aは、この検出信号を示している。各比較手段16−1〜16−nは、搬送された媒体6の到来を検知する媒体検出手段7からの出力により、媒体の到来を通知されると、即ち、媒体検出手段7からの出力が“0”から“1”に変化すると、搬送された媒体6の重走検知のための準備として、直前の媒体6の比較結果をリセットする。
【0041】媒体6が徐々に搬送されるにしたがって、厚さ検出手段8は、搬送される媒体6の厚さを検出し、積分手段10に出力する。厚さ検出手段8により検出された媒体の厚さ(厚さ検出信号)の一例を図10のcに示す。また、図10のcにおいて、媒体6の厚さをより厚く検出するにつれて、厚さ検出信号cは同図矢印の“厚い”方向になり、薄く検出するにつれて、“薄い”方向になる。積分手段10は、厚さ検出手段8によって出力される媒体6の厚さ検出信号cを積分して、積分結果fを出力する。積分処理は媒体検出信号aが“1”の間続けられ、検出信号aが“0”の間は積分結果fをリセットし“0”を出力する。
【0042】尚、図10の第1の基準値R1 は、第1の基準値記憶部13−1に記憶されている媒体1枚分の厚さの積分値の下限値、第2の基準値R2 は、第2の基準値記憶13−2に記憶されている媒体2枚分の厚さの積分値の下限値を示している。
【0043】比較手段16−1は、媒体検出信号aが“1”から“0”に変化するときの積分結果fを、第1の基準値記憶部13−1に記憶されている第1の基準値R1 と比較し、その比較結果を出力する。図10のh−1にその比較結果の出力を示す。同図h−1において、積分結果が第1の基準値R1 以上のとき“1”の信号を出力し、そうでないときは“0”の信号を出力する。
【0044】また、比較手段16−2も、媒体検出信号aが“1”から“0”に変化するときの積分結果fを、第2の基準値記憶部13−2に記憶されている第2の基準値R2 と比較し、その比較結果を出力する。図10のh−2にその比較結果の出力を示す。同図h−2において、積分結果が第2の基準値R2 以上のとき“1”の信号を出力し、そうでないときは“0”の信号を出力する。同様に、比較手段16−nは、媒体検出信号aが“1”から“0”に変化するときの積分結果fを、第nの基準値記憶部13−nに記憶されている第nの基準値Rn と比較し、その比較結果を出力する。積分結果が第nの基準値Rn 以上のとき“1”の信号を出力し、そうでないときは“0”の信号を出力する。
【0045】媒体Aのように正常な1枚の媒体6が搬送されると、その厚さ検出信号cの積分結果fの最大値、即ち、媒体Aの1枚分の厚さの積分値をIA とすると、IAは第1の基準値記憶部13−1に記憶されている第1の基準値R1 以上でかつ第2の基準値記憶部13−2に記憶されている第2の基準値R2 より小となる。従って、比較手段16−1の出力は“1”となり、また、比較手段16−2から比較手段16−nの出力は、全て“0”となる。
【0046】同様に、媒体Bや媒体Cの出力信号cの積分結果fの値をそれぞれIB 、ICとすると、どちらも第1の基準値記憶部13−1に記憶されている第1の基準値R1 以上でかつ第2の基準値記憶部13−2に記憶されている第2の基準値R2以上であり、かつ第3の基準値記憶部13−3に記憶されている第3の基準値R3 より小となる。従って、比較手段16−1の出力と比較手段16−2の出力は、共に“1”となり、また、比較手段16−3から比較手段16−nまでの出力は全て“0”となる。
【0047】プライオリティ・エンコーダ17は、媒体検出信号aが“1”から“0”に変化するとき、各比較手段16−1〜16−nの出力に重みをつけて数値に変換する。例えば、媒体Aの場合は、その入力が「1、0、0、…、0」であるため、その出力jは、“1”となり、媒体Bと媒体Cの場合は、その入力が「1、1、0、…、0」であるため、その出力jは“2”となる。そして、重走判別手段15は、プライオリティ・エンコーダ17からの出力jに基づき、出力jの値が“1”の場合は、重走なし、また、出力jの値が“2”の場合は、2枚重走状態と判断する。
【0048】次に、従来の技術では問題のあった3枚重走とテープ等の貼り付けられた媒体6についての例を説明する。図11は、これらの媒体の場合を説明するための図である。同図において、媒体Dと媒体Eは図6の媒体と同じものである。また、図中、媒体検出信号a、厚さ検出信号c、積分結果f、比較結果h−1、h−2、h−3、エンコーダ出力jは、それぞれ図10における信号と同様の出力信号を示している。
【0049】先ず、媒体Dから媒体Eに対する上記第1実施例の動作と同様に、媒体Dと媒体Eに対してその積分結果fを求める。そして、これをそれぞれID 、IE とすると、ID は、第3の基準値記憶部13−3に記憶されている第3の基準値R3以上で、かつ図示省略した第4の基準値記憶部13−4に記憶されている第4の基準値R4 より小となる。また、IE は第1の基準値記憶部13−1に記憶されている第1の基準値R1 以上で、かつ第2の基準値記憶部13−2に記憶されている第2の基準値R2 より小となる。
【0050】従って、媒体Dと媒体Eに対応するプライオリティ・エンコーダ17のそれぞれの入力は、「1、1、1、0、…0」、「1、0、0、0、…0」となる。その結果、プライオリティ・エンコーダ17の出力jは、それぞれ3、1となり、搬送された媒体6の正確な枚数を検知することができる。
【0051】尚、上記第2実施例では、演算手段14を、複数の比較手段16−1〜16−nと、プライオリティ・エンコーダ17とで構成したが、これに限定されるものではなく、ある値(本実施例では積分結果f)を複数の基準値と比較し、その値を符号化するものであれば、他の構成であってもよい。
【0052】また、媒体6としては、自動入出金機等に用いられる紙幣だけでなく、一般の文書処理装置等に用いられる紙葉類等であってもよく、このような場合でも上記実施例と同様の効果を奏する。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、第1発明の重走検知装置によれば、搬送される媒体の厚さを積分し、この積分結果と、予め設定した正常な媒体1枚分の厚さの積分値との比を求め、この比に基づき重走判定を行うようにし、また、第2発明の重走検知装置によれば、搬送される媒体の厚さの積分値と、正常な媒体の各枚数分の基準値とを比較し、この比較結果に基づき媒体が何枚重なって搬送されているかを演算するようにしたので、3枚以上重なって搬送されている場合でも、その重走枚数が正確に判別でき、しかも、テープ等が貼り付けられた媒体の場合の誤判別を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の重走検知装置の第1実施例のブロック図である。
【図2】従来の重走検知装置のブロック図である。
【図3】従来の重走検知装置における各部の動作波形図である。
【図4】従来および本発明の重走検知装置における媒体例の説明図である。
【図5】従来の重走検知装置における他の媒体状態での各部の動作波形図である。
【図6】従来および本発明の重走検知装置における他の媒体状態での媒体例の説明図である。
【図7】本発明の重走検知装置の第1実施例における各部の動作波形図である。
【図8】本発明の重走検知装置の第1実施例における他の媒体状態の場合の各部の動作波形図である。
【図9】本発明の重走検知装置の第2実施例のブロック図である。
【図10】本発明の重走検知装置の第2実施例における各部の動作波形図である。
【図11】本発明の重走検知装置の第2実施例における他の媒体状態の場合の各部の動作波形図である。
【符号の説明】
7 媒体検出手段
8 厚さ検出手段
9、13 基準値記憶手段
10 積分手段
11、14 演算手段
12、15 重走判別手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】 搬送される媒体の有無を検出する媒体検出手段と、前記媒体の厚さを検出する厚さ検出手段と、前記厚さ検出手段で検出された前記媒体の厚さを、前記媒体検出手段によって検出された媒体の搬送長さに基づき積分する積分手段と、予め設定された正常な媒体1枚分の厚さの積分量の基準値を記憶する基準値記憶手段と、前記積分手段の出力した前記媒体の厚さの積分値と、前記基準値との比を求める演算手段と、前記演算手段で求めた値に基づき当該媒体の重走判別を行う重走判別手段とを備えたことを特徴とする重走検知装置。
【請求項2】 搬送される媒体の有無を検出する媒体検出手段と、前記媒体の厚さを検出する厚さ検出手段と、前記厚さ検出手段で検出された前記媒体の厚さを、前記媒体検出手段によって検出された媒体の搬送長さに基づき積分する積分手段と、予め設定された正常な媒体1枚分の厚さから媒体の複数枚の厚さまでの各枚数分の積分量の基準値を記憶する基準値記憶手段と、前記積分手段の出力した前記媒体の厚さの積分値と、前記基準値記憶手段に記憶された複数の基準値とを比較して、前記積分値とそれぞれの基準値との大小関係を求め、この大小関係に基づき前記媒体が何枚重なって搬送されているかを演算する演算手段と、前記演算手段で求めた値に基づき前記媒体の重走判別を行う重走判別手段とを備えたことを特徴とする重走検知装置。
【請求項1】 搬送される媒体の有無を検出する媒体検出手段と、前記媒体の厚さを検出する厚さ検出手段と、前記厚さ検出手段で検出された前記媒体の厚さを、前記媒体検出手段によって検出された媒体の搬送長さに基づき積分する積分手段と、予め設定された正常な媒体1枚分の厚さの積分量の基準値を記憶する基準値記憶手段と、前記積分手段の出力した前記媒体の厚さの積分値と、前記基準値との比を求める演算手段と、前記演算手段で求めた値に基づき当該媒体の重走判別を行う重走判別手段とを備えたことを特徴とする重走検知装置。
【請求項2】 搬送される媒体の有無を検出する媒体検出手段と、前記媒体の厚さを検出する厚さ検出手段と、前記厚さ検出手段で検出された前記媒体の厚さを、前記媒体検出手段によって検出された媒体の搬送長さに基づき積分する積分手段と、予め設定された正常な媒体1枚分の厚さから媒体の複数枚の厚さまでの各枚数分の積分量の基準値を記憶する基準値記憶手段と、前記積分手段の出力した前記媒体の厚さの積分値と、前記基準値記憶手段に記憶された複数の基準値とを比較して、前記積分値とそれぞれの基準値との大小関係を求め、この大小関係に基づき前記媒体が何枚重なって搬送されているかを演算する演算手段と、前記演算手段で求めた値に基づき前記媒体の重走判別を行う重走判別手段とを備えたことを特徴とする重走検知装置。
【図4】
【図1】
【図6】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図6】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開平6−191680
【公開日】平成6年(1994)7月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−358358
【出願日】平成4年(1992)12月25日
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【公開日】平成6年(1994)7月12日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)12月25日
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
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