説明

重量測定装置

【課題】設置状態や使用環境の変化、経時的変化等に応じてゼロ点更新を確実に行うとともに、消費電力の削減も実現できる重量測定装置を提供する。
【解決手段】使用していないときに無負荷状態における荷重信号の出力値であるゼロ点の更新を行う重量測定装置であって、本体に加わる荷重を測定し荷重信号を出力する重量測定部と、無負荷状態において重量測定部からの荷重信号を更新時間間隔で受け、重量測定部のゼロ点更新を行う制御手段と、を備え、制御手段は、前回のゼロ点更新時における荷重信号の出力値と、今回のゼロ点更新時における荷重信号の出力値と、の差に応じて、次回のゼロ点更新までの更新時間間隔を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の重量を測定する重量測定装置に関し、特に、使用していないときにゼロ点更新を行う重量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、測定対象の重量を測定する重量測定装置が種々提案されており、特に、被測定者の体重を測定するための体重計が利用されている。このような重量測定装置としての体重計は、一般的には、本体内に重量測定部を有しており、重量測定部としては、荷重をかけると荷重に応じて変形する金属部材からなる起歪体と、起歪体に貼られる歪みゲージ(センサ)と、を有するロードセルが用いられている。被測定者が本体上面に載ったときの荷重によって起歪体が変形し、これに応じて歪みゲージが伸縮すると、歪みゲージの伸縮に応じた抵抗値(出力値)の抵抗変化を荷重信号出力の変化として被測定者の体重を算出するようになっている。
【0003】
このような体重計を使うに際しては、水平となるように体重計を設置し、被測定者が本体に載っていない無負荷時におけるロードセルの出力値をゼロ点とする、いわゆるゼロ点更新を行うことが必要である。これは、被測定者の体重は、被測定者が体重計の本体に載ったときのロードセルの出力値と、無負荷時のロードセルの出力値と、の差に基づいて算出により測定されることによるものである。
【0004】
さらに、被測定者の体重以外の生体情報をも測定可能な機能を備えている多機能型の体重計(例えば、脂肪計付き体重計、体組成計付き体重計)の場合、一般的には、前記重量測定部の他に、被測定者の生体インピーダンスを測定するための電極部材が本体の上面に配される。この電極部材から、被測定者の足裏等を介して人体内へ微弱な定電流を流して測定される生体インピーダンスを用いれば、脂肪率等の種々の生体情報が算出でき推定値として取得することができるが、それらの生体情報の多くは、被測定者の体重をパラメータとして算出されるものであるため、正確な生体情報を取得するためには、前述のゼロ点更新を適確に行うことが重要となる(特許文献1)。
【0005】
このような従来の体重計は、一般的には測定開始スイッチ(スタートボタン)が押されてから、ゼロ点更新を行うようになっており、ゼロ点更新が完了するまでは測定が開始できない状態であるため、被測定者にとっては、体重その他の生体情報を測定しようと考えたとき、即座に本体に載って測定を開始することができず不便である。そこで、被測定者が生体情報を測定したいと考えたときに、即座に生体情報の測定が開始できるように、体重計を使用していないときにゼロ点更新を所定の時間間隔で完了させておき、被測定者が体重計に載ったことを検知して起動し、生体情報の測定を即座に開始できる、いわゆるステップオン型の体重計が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−104273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、重量測定装置は、例えば使用されていない場合には壁などに立て掛けられていたり、電源供給源となる電池を着脱する際に裏返しにされたりするなどのように、重量測定装置の姿勢が変化して、常に一定の設置状態であるとは限らず、また、重量測定装置が使用される環境も様々であり、例えば周辺温度の変化や重量測定装置自体の経時的変化等が生ずることもある。このような重量測定装置の設置状態の変化や使用環境の変化等によっては、ゼロ点に変動が生じてしまうことがあるため、取得される体重その他の生体情報の測定結果が異なる場合が生じてしまう。このような事態を防止するためには、設置状態や使用環境の変化、経時的な変化に対応して、無負荷時のロードセルの出力値であるゼロ点が、測定直前の時間的に最新のデータであるように更新しておくことが好ましい。
【0008】
したがって、ステップオン型の体重計において、測定直前の最新のゼロ点を取得しておくという観点からすれば、体重計を使用していないときに行うゼロ点更新の更新時間間隔を短く設定しておくことが望ましい。しかしながら、体重計の設置状態や使用環境の変化、経時的変化といった現象が見られないときにまで、ゼロ点更新を常に短い時間間隔で行うことは、無駄な消費電力が増加してしまい、好ましくない。
【0009】
そこで、本発明は、設置状態や使用環境の変化、経時的変化等に応じてゼロ点更新を行うとともに、消費電力の削減も実現できる重量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の重量測定装置は、使用していないときに無負荷状態における荷重信号の出力値であるゼロ点の更新を行う重量測定装置であって、本体に加わる荷重を測定し荷重信号を出力する重量測定部と、無負荷状態において前記重量測定部からの荷重信号を更新時間間隔で受け、前記重量測定部のゼロ点更新を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前回のゼロ点更新時における荷重信号の出力値と、今回のゼロ点更新時における荷重信号の出力値と、の差に応じて、次回のゼロ点更新までの更新時間間隔を変更することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の重量測定装置において、前記制御手段は、前記出力値の差が所定値未満の場合には、前記更新時間間隔を長くし、前記出力値の差が所定値以上の場合には、前記更新時間間隔を短くすることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の重量測定装置において、前記制御手段は、前回のゼロ点更新時における荷重信号の出力値と、今回のゼロ点更新時における荷重信号の出力値と、の差を検知して、次回のゼロ点更新までの更新時間間隔を一定間隔で変更することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の重量測定装置において、前記制御手段は、前記出力値の差が大きくなるに従い、前記更新時間間隔を短くすることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の重量測定装置において、前記制御手段は、前記出力値の差が小さくなるに従い、前記更新時間間隔を長くすることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の重量測定装置において、前記制御手段は、前記出力値の差の推移に応じて更新時間間隔を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の重量測定装置によれば、前回設定されたゼロ点と新たに取得されたゼロ点と、の差の大きさに応じて、次回のゼロ点更新が行われるまでの更新時間間隔を変更することができる。従って、設置状態や使用環境の変化、経時的変化が生じている場合には更新時間間隔を短くして、その設置状態等の変化に対応してゼロ点更新を行うことができ、重量の測定精度を高く維持することができる。他方、設置状態等の大きな変化が見られない場合には、次回のゼロ点更新までの時間間隔を長くして、ゼロ点更新の回数を減らすことにより、重量測定装置の消費電力を大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明による重量測定装置を、いわゆるステップオン型の体脂肪計付き体重計に適用した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、実施形態に係る体脂肪計付き体重計1の斜視図、図2は、図1の体脂肪計付き体重計のブロック図、図3は、図1の体脂肪計付き体重計のゼロ点更新の処理についてのフローチャートである。なお、図3では、本体3の内部に配置されている制御部(制御手段)29、記憶部25、体重測定部47が示されているが、図1では内部機構となるため図示を割愛した。
【0018】
図1に示すように、実施形態の体脂肪計付き体重計1(以下、体重計1という。)は、略箱形に形成された本体3と、本体3の裏面側に設けられて本体3を支持する脚部(図に示さず)とを備える。本体3には、電極部材30と、生体インピーダンス測定部48と、体重測定部47(重量測定部)と、表示部21と、操作部22と、記憶部25と、制御部29と、電力を供給する電源(図に示さず)と、が設けられている。以下に、各部材の詳細な構成について説明する。
【0019】
本体3は、樹脂(例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体))等を成形してなるカバー部材3a及び底板部材3bを組み合わせて略箱状に形成されている。なお、体重計1の製品としての強度を考慮して、本体3は、カバー部材3aを前述のように樹脂製とし、底板部材3bは金属製として、これらを組み合わせて形成してもよい。
【0020】
また、図1に示すように、本体3のカバー部材3aの上面には、薄板状の4つの電極部材30(通電電極31a、32a、測定電極31b、32b)が保持されており、これらはカバー部材3aの上面において互いに離間して配置されている。電極部材30を保持する構造は適宜採択可能であるが、例えば、電極部材30を嵌め込み可能な凹部(図に示さず)をカバー部材3aに形成し、電極部材30とカバー部材3aの上面とが面一となるように嵌め込んで保持するのが好適である(図1参照)。
【0021】
さらに、図1に示すように、本体3のカバー部材3aには、電極部材30のほかに、表示部21、及び操作部22が設けられている。表示部21は、制御部29から送られてくるデータを表示するためのデータ表示手段であって、主として被測定者の各種生体情報の表示や操作の案内表示などを行う。表示部21としては、一例として、フルドットLCD(Liquid Crystal Display)などの液晶を用いたものを採用すればよい。また、操作部22は、被測定者の生体情報(例えば性別、年齢、身長)の入力や、体重計1の各種設定を行うための操作部分である。本実施形態においては、一例として、表示部21の手前側に3つのボタン式の操作部22として構成としたが、個数・形状・操作方法は特にこれに限られず、タッチセンサ式、ダイヤル式など適宜採択可能であり、本体3の側面において、被測定者が足による操作が可能なフットスイッチを設けてもよい。また、表示部21と操作部22とを、例えばタッチパネル機能を備えた液晶表示パネルとして一体的に構成してもよい。入力された被測定者の生体情報や設定事項は、記憶部25に記憶させたり、表示部21に表示されるようになっている。
【0022】
図2のブロック図に示すように、制御部29は、表示部21、操作部22、体重測定部47、及び生体インピーダンス測定部48に電気的に接続されており、各動作を司っている。さらに、制御部29には、電源(図に示さず)、及び記憶部(例えば、RAM(Random Access Memory))25が接続されている。
【0023】
電源としては、体重計1を作動させる電力を供給する電池又は外部電源を利用できるようになっている。本実施形態の体重計1は、体重計1が測定に使用されていない状態(以下、不使用状態という。)では、測定処理に要される電力の供給が停止され、後述するゼロ点更新処理及び体重計1に被測定者が載ったか否かの判別処理に必要な電力のみが供給され、一方、被測定者が載ったと判別された後、即ち、体重計1が測定に使用されている状態(以下、使用状態という。)では、測定処理に要される電力の供給がなされるようになっている。このため、不使用状態では、例えば表示部21には通電されないので何も表示がなされない。
【0024】
本体3の内部には、本体3に載った被測定者による荷重(体重、重量)を測定する体重測定部47(重量測定部)が設けられている。より具体的には、体重測定部47は、例えば、荷重をかけると荷重に応じて変形する金属部材からなる起歪体と、起歪体に貼られる歪みゲージと、からなるロードセルを用いればよく、本体3は起歪体の一端に支持され、起歪体の他端が脚部(図に示さず)に支持されるように構成する。これにより、被測定者が本体3の上面に載ったときの荷重により起歪体が撓むと、歪みゲージが伸縮して歪みゲージの伸縮に応じた抵抗値(出力値)が変化し、その抵抗変化を荷重信号出力の変化として体重を測定する。すなわち、制御部29は、本体3に負荷がかかっていないときの体重測定部47からの抵抗値(出力値)(いわゆるゼロ点)と、荷重が掛かったときの抵抗値(出力値)と、の差から体重を演算により求め、被測定者の体重が測定されるようになっている。このようにして取得された被測定者の体重は、記憶部25において記憶されるとともに、表示部21において表示されるようになっている。なお、後述のように、ゼロ点の更新のために、制御部29による指示のもと、本体3に負荷がかかっていないときの体重測定部47からの抵抗値(出力値)(いわゆるゼロ点)を所定の時間間隔で制御部29に出力するようになっている。
【0025】
生体インピーダンス測定部48は、被測定者の足裏(つま先)に接触可能な通電電極31a、32aに接続されて所定の微弱な定電流を付与する定電流供給部(図に示さず)と、被測定者の足裏(かかと)に接触可能な測定電極31b、32bに接続されて人体の電位差を測定するための電圧測定部(図に示さず)と、を有する。本実施形態では、通電電極31aと測定電極31bの対は、左足の裏に接するように、そして、通電電極32aと測定電極32bの対は、右足の裏に接するように配置されている。これにより、被測定者が体重計1に載った場合に、定電流供給部は通電電極31a、32aから、両足のつま先間に、両脚部(下半身)を介して電流を流し、この電流経路に発生する電位差(電圧)をかかと間で測定することにより、測定された電圧値及び印加した電流値から被測定者の生体インピーダンスを求めるようになっている。このようにして求められた被測定者の生体インピーダンスは、生体インピーダンス測定部48から制御部29に出力される。
【0026】
制御部29は、体重計1の本体3に被測定者が載ったことを判別した後、即座に、体重測定部47による体重測定、及び、生体インピーダンス測定部48による生体インピーダンス測定をそれぞれ開始するように指示を行う。体重計1の本体3に被測定者が載ったことの判別処理のための手段は、適宜採択可能であるが、一例としては、不使用状態における体重測定部47の出力値の変化を制御部29において監視しておき、急激な出力値の変化が現れた時点をもって、又は、所定の出力値を超えた時点をもって、体重計1に被測定者が載ったと判断する方法を採択すればよい。
【0027】
制御部29は、体重測定部47により取得された体重と、生体インピーダンス測定部48により取得された生体インピーダンスと、操作部22によって入力された被測定者の生体情報(例えば性別・年齢・身長)などをパラメータとして、脂肪率その他の生体情報を算出するために予め定められた回帰式に適用して演算する。このような演算によって求める生体情報としては、脂肪率の他、内臓脂肪レベル、体水分量、筋肉量、基礎代謝量、骨量、除脂肪量、体細胞量、血圧、内臓脂肪面積、BMI(Body Math Index)、肥満度、細胞内液量、細胞外液量などの種々のものがあり、本発明に係る重量測定装置の利用目的に応じて適宜採択すればよい。演算により取得された脂肪率等の生体情報は、表示部21に表示したり、記憶部25に保存される。
【0028】
制御部29は、体重計1が不使用状態にあるとき、いわゆるゼロ点の更新処理を行う。制御部29は、体重測定部47に対して、更新時間間隔ごとに本体3の無負荷状態における出力値(ゼロ点)を出力するように指示を行い、記憶部25に保存する。
【0029】
以下に、体重計1のゼロ点更新の処理について図3を参照して説明する。なお、ゼロ点及び更新時間間隔の初期値は、製品の出荷時に予め適当に設定されていればよいが、体重計を最初に使用する際に被測定者により再設定できるようにしてもよい。
【0030】
まず、体重計1の不使用状態を基準として(ステップS1)、体重計1が不使用状態となってからの時間経過が制御部29のタイマによりカウントされ、現在設定されている更新時間間隔を経過したか否かの判別処理が制御部29により行われる(ステップS2)。更新時間間隔が経過した場合には、制御部29は、記憶部25に保存されている現在のゼロ点を示す出力信号値(前回のゼロ点更新時の荷重信号の出力値)を読み出す(ステップS3)とともに、今回のゼロ点更新で使用される体重測定部47としてのロードセルからの荷重信号出力値(今回のゼロ点更新時の荷重信号の出力値)を検出する(ステップS4)。
【0031】
次に、制御部29は、読み出された現在のゼロ点を示す荷重信号出力値と、新たに検出された荷重信号出力値と、の差を演算する(ステップS5)。制御部29により演算された出力値の差の大きさに応じて、現在設定されている更新時間間隔を新たな更新時間間隔に変更するとともに(ステップS6)、新たに検出された荷重信号出力値を最新のゼロ点データとして記憶部25に記憶させることにより、ゼロ点更新を行う(ステップS7)。本実施形態では、体重測定部47であるロードセルからの荷重信号の出力値の差が所定値以上である場合には、制御部29は、前回の更新時間間隔に比較して、次回のゼロ点検出までの時間(更新時間間隔)を短くする設定を行うようにする。このように荷重信号出力値の差が比較的大きいということは、体重計1の設置状態(姿勢)の変化(例えば壁などに立て掛けられていた状態から床面に水平に置かれた状態とされた場合、電源供給源となる電池を着脱する際に裏返しにされた場合など)や、体重計1が配置されている場所の周辺温度などの環境変化(例えばロードセルに用いる起歪体の温度特性による歪み方の微細な相違)、経時的変化(例えば衝撃等によるロードセルの本体3への固定状態の微細なズレなど)に起因してゼロ点が変動し、ロードセルの出力値に差が生じる事態が発生している状況であることが考えられるため、こまめなゼロ点更新を行うこととして、このような変化に対応した最新のゼロ点を用いた生体情報(特に体重)の測定ができるように、更新時間間隔を短くする構成としている。
【0032】
反対に、荷重信号の出力値の差が所定値未満の場合には、制御部29は、体重計1の設置状態や使用環境等に特段の変化がないものと判別し、次回のゼロ点更新までの更新時間間隔を、前回更新時間間隔に比較して長くなるように変更し(ステップS6)、今回得られた荷重信号出力値(今回のゼロ点更新時の荷重信号の出力値)を新しいゼロ点として更新する(ステップS7)。このように荷重信号出力値の差が比較的小さいということは、体重計1の設置状態や使用環境等の変化はないものと考えられるので、こまめにゼロ点更新を行う必要はなく、更新時間間隔を長く設定しておくことによって、ゼロ点更新によって消費する電力の節約が可能となり好ましい。
【0033】
新たに設定する更新時間間隔については、(1)荷重信号の出力値の差が生じたことを検知して、常に一定の間隔だけ長くする、又は短くするという設定にしてもよいし、(2)出力値の差が大きくなるに従い更新時間間隔を短く設定し、出力値の差が小さくなるに従い更新時間間隔を長く設定する、即ち、出力値の差が大きければ大きい程、更新時間間隔を短く、出力値の差が小さければ小さい程、更新時間間隔を長く設定する、というように、毎回のゼロ点更新毎に異なる間隔で長くしたり、短くするようにしてもよい。また、(3)毎回のゼロ点更新時に演算する出力値の差を、データとして記憶部25に保存しておき、その推移に応じて更新時間間隔を変更するようにしてもよく、この場合、例えば、直近数回分のゼロ点更新時において演算した出力値の差が、漸次大きくなっているときには更新時間間隔を短く設定し、漸次小さくなっているときには更新時間間隔を長く設定するようにすればよい。(1)のように設定する場合には、制御部29における処理作業が簡略化されプログラミングを簡単に行うことができ、ひいては生産コストの低減を図れ、また、(2)及び(3)のように設定する場合には、体重計1の設置状態や使用環境の変化、経時的変化が生じている場合や収束した場合に更に適切に対応できる点で好適である。
【0034】
最後に、被測定者が本体3に載ったか否かの判別が、制御部29において行われる(ステップS8)。被測定者が載ったと判別されると(ステップS8でYes)、ゼロ点の更新処理が終了し、体重計1は使用状態となる。反対に、被測定者が載っていないと制御部29により判別された場合には(ステップS8においてNo)、前述したステップS2に戻り、ゼロ点更新処理(ステップS2〜ステップS7)が繰り返される。
【0035】
上記説明したように、本実施形態の体重計1は、体重計1の設置状態や使用環境の変化、体重計1自体の経時変化の有無に応じて、ゼロ点検出の更新時間間隔を変える構成であるので、ゼロ点を正確に更新することによって生体情報を高精度で測定できるとともに、消費電力を抑えることが同時に実現できる。
【0036】
さらに、前回のゼロ点更新時に得られた荷重信号の出力値と、今回のゼロ点更新時に得られた荷重信号出力値との差が、所定値以上の場合には、体重測定部の異常を被測定者に知らせるメッセージを表示部に示す構成とすることも可能である。
【0037】
体重測定部としてのロードセルのゼロ点の変化は、ロードセル(特に起歪体)の温度特性によることが大きい場合が多い。したがって、本実施形態の体重計に温度センサを設ける構成としてもよい。この構成の場合には、温度とロードセルの荷重信号出力値との関係(温度特性)を予め取得しておき、ゼロ点更新時に得られた荷重信号の出力値について、温度変化による誤差を補正した後の値である出力値と、前回のゼロ点更新時に更新したゼロ点を示す荷重信号出力値との差に基づいて、次回までの更新時間間隔を変更、設定する構成とすることもできる。この構成によれば、ゼロ点の変化を生じさせる主原因である温度変化の影響を排除できるので、ゼロ点を更新する更新時間間隔を短くする頻度を少なくでき、待機電力の消費量をさらに削減できる。
【0038】
また、上記実施形態では、本発明に係る重量測定装置を体脂肪計付き体重計に適用した場合を説明したが、本発明は、体重のみを測定するだけの体重計に適用することもできるし、これとは逆に体脂肪を含む種々の生体情報を取得可能な体組成計付きの体重計などに適用することも可能である。さらには、本発明に係る重量測定装置は、上記実施形態に示す体重計のような生体を測定対象とした生体測定装置のみならず、質量計(例えば調理用秤)などのように、物体の重量を測定・計測する装置であっても適用が可能である。この場合の重量測定部としては、上記実施形態に示す体重計1における体重測定部47と同様に、起歪体と、起歪体に貼られる歪みゲージとからなるロードセルを用いればよい。
【0039】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態による体脂肪計付き体重計の斜視図である。
【図2】図1の体脂肪計付き体重計のブロック図である。
【図3】図1の体脂肪計付き体重計のゼロ点更新の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1 体脂肪計付き体重計(重量測定装置)
3 本体
3a カバー部材
3b 底板部材
21 表示部
22 操作部
25 記憶部
29 制御部(制御手段)
47 体重測定部(重量測定部)
48 生体インピーダンス測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用していないときに無負荷状態における荷重信号の出力値であるゼロ点の更新を行う重量測定装置であって、
本体に加わる荷重を測定し荷重信号を出力する重量測定部と、
無負荷状態において前記重量測定部からの荷重信号を更新時間間隔で受け、前記重量測定部のゼロ点更新を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前回のゼロ点更新時における荷重信号の出力値と、今回のゼロ点更新時における荷重信号の出力値と、の差に応じて、次回のゼロ点更新までの更新時間間隔を変更すること
を特徴とする重量測定装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記出力値の差が所定値未満の場合には、前記更新時間間隔を長くし、前記出力値の差が所定値以上の場合には、前記更新時間間隔を短くすることを特徴とする請求項1に記載の重量測定装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前回のゼロ点更新時における荷重信号の出力値と、今回のゼロ点更新時における荷重信号の出力値と、の差を検知して、次回のゼロ点更新までの更新時間間隔を一定間隔で変更することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の重量測定装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記出力値の差が大きくなるに従い、前記更新時間間隔を短くすることを特徴とする請求項1に記載の重量測定装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記出力値の差が小さくなるに従い、前記更新時間間隔を長くすることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の重量測定装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記出力値の差の推移に応じて更新時間間隔を変更することを特徴とする請求項1に記載の重量測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate