説明

重量測定装置

【課題】使用環境の急激な温度変化に対応してゼロ点更新を行うとともに、消費電力の削減も実現できる。
【解決手段】使用していないときに無負荷状態における荷重信号の出力値であるゼロ点の更新を行う体重計1であって、本体に加わる荷重を測定し荷重信号を出力する重量測定部36と、温度を検出する温度センサ35aと、温度センサ35aによる前回のゼロ点更新時における検出温度と今回の検出温度との差分が、しきい値を超えるか否かについて判定し、しきい値を超える場合に重量測定部36のゼロ点を更新する制御部31とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の重量を測定する重量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定者の体重を測定するための体重計など、測定対象の重量を測定する重量測定装置が種々提案されている。
【0003】
ところで、重量測定装置は、重量測定装置の姿勢が変化して、常に一定の設置状態であるとは限らない。また、例えば周辺温度等の使用環境の変化や重量測定装置自体の経時的変化等が生じる得る。このため、重量測定装置では、被測定者が本体に載っていない無負荷時における荷重の値に変動が生じ、取得される体重その他の生体情報の測定結果にばらつきが生じる場合がある。
【0004】
従来から、重量測定装置には、被測定者が本体に載っていない無負荷時における荷重の出力値をゼロ点とする、いわゆるゼロ点更新を行う技術が用いられている(例えば、特許文献1及び2)。特許文献1は、所定時間毎にゼロ点更新を行う技術である。特許文献2は、前回のゼロ点更新時における荷重信号と、今回のゼロ点更新時における荷重信号との出力値の差に応じて、次回のゼロ点更新までの更新時間間隔を変更させることで、設置状態や使用環境の変化、経時的変化等に応じてゼロ点更新を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−83610号公報
【特許文献2】特開2009−68984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された所定間隔でゼロ点更新を行う技術では、所定時間毎にゼロ点更新を行っているため、体重計の設置状態や使用環境の変化、経時的変化といった現象が見られないときにまで、ゼロ点更新を頻繁に行うこととなり、無駄な消費電力が増加してしまうという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に開示された技術では、ゼロ点が安定している状態の場合に、ゼロ点の更新時間間隔を長くするため、ゼロ点更新の頻度を低下させて消費電力を抑制できる。しかし、急激な温度変化があった場合には、この変化に対して、即時にゼロ点更新を追従させることができないという問題がある。
【0008】
詳述すると、例えば、最大計量値である秤量が150kgであって、最小表示単位である目量(scale interval)が50gである重量測定装置について、ゼロ点の変動を目量である50g以内に抑えるには、その目量の半分の値である25gの変動が生じる温度(0.5℃)の変化に追従させる必要がある。一方、重量測定装置の設置環境は、様々であり、例えば、4月の北海道、秋田、東京、福岡における室温変化の最大幅は、実測結果から1分で約0.5℃、1日で約15℃となっている。したがって、このような1分間に0.5℃の温度変化が生じるような急激な温度変化が生じている環境下で、被測定者が測定を開始すると、ゼロ点更新が追従しきれないまま荷重を測定することになり、測定値の誤差が大きくなるという問題があった。
【0009】
以上の事情に鑑みて、本発明は、使用環境の急激な温度変化に対応してゼロ点更新を行うとともに、消費電力の削減も実現できる重量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、本発明に係る重量測定装置は、無負荷状態における荷重信号の出力値であるゼロ点の更新を行う重量測定装置であって、本体に加わる荷重を測定し前記荷重信号を出力する重量測定部と、温度を検出して検出温度を出力する温度検出部と、前記重量測定部及び前記温度検出部に電力を供給する電源部と、所定のタイミングで前記温度検出部に電力を供給するように前記電源部を制御し、前回のゼロ点更新時における前記検出温度と、今回の前記検出温度との差分が、しきい値を超えるか否かについて判定し、前記しきい値を超える場合に前記重量測定部に電力を供給して前記荷重信号を取得し、取得した前記荷重信号に基づいてゼロ点を更新する制御部と、を備える。
ここで、「所定のタイミングで前記温度検出部に電力を供給する」とは、電源部から温度検出部に対して所定のタイミングにおいてのみ電力が供給され、当該所定のタイミングを除くタイミングでは電力が供給されないことを示す。
「所定のタイミング」は、外部から指定される任意のタイミング、定期的(周期的)に訪れるタイミング、および非定期的に訪れるタイミングを含む。任意のタイミングとは、例えば、当該重量測定装置のユーザーが所定のスイッチを押すタイミングである。この場合には、ユーザーがスイッチを押したことを制御部が検知すると、制御部は、温度検出部に電力を供給するように電源部を制御する。定期的に訪れるタイミングとは、固定の時間間隔で電力を供給する場合の電力供給時点である。これに対し、非定期的に訪れるタイミングとは、可変の時間間隔で電力を供給する場合であって、例えば、温度変化の度合いに応じて時間間隔を可変とした場合の電力供給時点である。よって、温度に急激な変化がない期間においては、その期間に亙って同じ時間間隔で電力が供給されることとなるが、その時間間隔はあくまでも可変である。
【0011】
この態様においては、制御部により、前回のゼロ点更新時における検出温度と今回の検出温度との差分によって、ゼロ点の更新を行う。即ち、ゼロ点が変動した結果ではなく、ゼロ点が変動する原因である温度変化を、ゼロ点の変動修正の条件としている。このため、重量測定部に電力を供給しなくても温度検出部に電力を供給すれば、ゼロ点を更新するか否かを判定することができるので、消費電力を削減することができる。
【0012】
本発明に係る重量測定装置の好適な態様として、前記しきい値が、前記重量測定部の目量の1/8以上1/2以下に相当する温度差に設定されていることが好ましい。目量は、表示可能な重量の最小単位であるところ、温度変化に伴うゼロ点のずれが目量の1/2を超えると、表示される、重量の測定結果に影響を与える。したがって、しきい値は目量の1/2以下に相当する温度差であることが好ましい。一方、しきい値を小さくすると温度検出部の消費電力が増大する。しかしながら、しきい値を目量の1/8以上に相当する温度差に設定すれば、温度検出部の消費電力も問題とならない。この発明によれば、測定精度を確保しつつ、消費電力を削減することができる。
【0013】
本発明に係る重量測定装置の好適な態様として、温度検出部は、所定の周期で温度を検出する。この態様によれば、周期的に温度検出を行うという簡便な制御により消費電力が大きいゼロ点の更新回数を低減させて消費電力を低減させつつ、使用環境の急激な温度変化に追従させた適正なゼロ点更新を実現できる。このとき、例えば、上述した「所定の周期」を、ユーザーによる任意の設定操作や、使用地域又は季節に応じた仕様等に従って、適宜切り替えるようにしてもよく、ユーザーの意思や使用環境に対応させて、消費電力の低減と、ゼロ点更新の精度とのバランスを調整するようにしてもよい。
【0014】
本発明に係る重量測定装置の好適な態様として、制御部は、前回のゼロ点更新時における前記検出温度と今回の前記検出温度との差分に応じて、前記温度検出部における次回の温度検出までの時間間隔を変更することが好ましい。この態様によれば、例えば、温度変化の差が少ない場合には、次回の温度検出までの時間間隔を長くすることで、温度検出のための消費電力を低減させることができる。一方、温度変化の差が大きい場合には、次回の温度検出までの時間間隔を短くすることで、急激な温度変化に追従した適正なゼロ点更新を行うことができる。
【0015】
本発明に係る重量測定装置の好適な態様として、前記温度検出部の消費電流は前記重量測定部の消費電流よりも小さいことが好ましい。具体的には、温度センサとして、温度変化に対する電気抵抗の変化によって温度を測定するサーミスタ(NTCサーミスタや、PTCサーミスタ等)を用い、重量測定部として、荷重をかけると荷重に応じて変形する金属部材からなる起歪体と、起歪体に貼られる歪みゲージとからなるロードセルを用いる。この態様によれば、消費電力が少ない温度測定のみを常時に行い、その温度測定の結果に応じて、消費電力の多いゼロ点の測定を行うこととなるため、消費電力が小さい温度測定を短い間隔で行い、消費電力が大きいゼロ点測定の頻度を最小限に抑えることができるので、電池寿命を長くすることができる。
【0016】
本発明に係る重量測定装置の好適な態様として、重量測定装置は、前記検出温度と前記しきい値とを対応付けたテーブルデータを記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記検出温度に基づき、前記テーブルデータを参照して当該検出温度に対応するしきい値を読み出し、読み出されたしきい値と前記差分とを比較することにより前記判定を行うことが好ましい。この態様によれば、予め記憶部に記憶された検出温度毎のしきい値と比較してゼロ点の更新の有無を判断するので、温度毎に異なるしきい値を設定して重量測定装置の特性に応じた精細なゼロ点更新を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る体重計の斜視図である。
【図2】同実施形態に係る重量測定装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態に係る重量測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】変形例に係る周期可変用テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<A:構成>
図1は、本実施形態に係る体重計1の外観を示す図である。本実施形態では、被測定者が体重計に載ったことを検知して起動し、生体情報の測定を即座に開始できる、いわゆるステップオン型の体組成計機能を有する重量測定装置に、本発明を適用した場合を例に説明する。
【0019】
図1に示すように、体重計1は、略箱形に形成された本体2と、本体2の裏面側に設けられて本体2を支持する脚部(図に示さず)とを備える。本体2は、樹脂(例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体))等を成形してなるカバー部材2a及び底板部材2bを組み合わせて略箱状に形成されている。なお、体重計1の製品としての強度を考慮して、本体2は、カバー部材2aを前述のように樹脂製とし、底板部材2bは金属製として、これらを組み合わせて形成してもよい。
【0020】
また、図1に示すように、本体2のカバー部材2aの上面には、表示部21と、入力部22(22a,22b,22c)と、測定電極23(23a,23b,23c,23d)とを備える。
【0021】
測定電極23は、被測定者の足裏に接触させて被測定者の体脂肪率の測定を行うための電極である。本実施形態では、薄板状である4つの測定電極23(第1の電流印加用電極23a、第2の電流印加用電極23b、第1の電圧測定用電極23c及び第2の電圧測定用電極23d)を有し、これらはカバー部材2aの上面において互いに離間して配置されている。
【0022】
これら測定電極23の配置は以下のとおりである。第1の電流印加用電極23aと第2の電流印加用電極23bとは、互いにX方向に離れた位置に配置される。より具体的には、第1の電流印加用電極23aは被測定者の左足が載せられる位置に対応して配置され、第2の電流印加用電極23bは被測定者の右足が載せられる位置に対応して配置される。また、第1の電圧測定用電極23cは、第1の電流印加用電極23aから見てY方向の正側に隣り合うように配置され、被測定者の左足が載せられる位置に対応して配置される。第2の電圧測定用電極23dは、第2の電流印加用電極23bから見てY方向の正側に隣り合うように配置され、被測定者の右足が載せられる位置に対応して配置される。
【0023】
なお、測定電極23を保持する構造は適宜採択可能であるが、例えば、測定電極23を嵌め込み可能な凹部(図に示さず)をカバー部材2aに形成し、測定電極23とカバー部材2aの上面とが面1となるように嵌め込んで保持するのが好適である(図1参照)。
【0024】
さらに、図1に示すように、本体2のカバー部材2aには、測定電極23の他に、表示部21、及び入力部22が設けられている。表示部21は、本体内部に備えられた演算処理手段である制御部31から送られてくるデータを表示するためのデータ表示手段であって、主として被測定者の各種生体情報の表示や操作の案内表示などを行う。表示部21としては、一例として、フルドットLCD(Liquid Crystal Display)などの液晶を用いたものを採用すればよい。
【0025】
また、入力部22は、被測定者の生体情報(例えば性別、年齢、身長)の入力や、体重計1の各種設定を行うための入力手段であり、本実施形態では、設定キー22aと、アップキー22bと、ダウンキー22cとを含む。ここで、アップキー22b及びダウンキー22cは、情報の選択や数値の切り替えを行い、設定キー22aは選択した情報や切り替えた数値の設定をする。
【0026】
なお、本実施形態においては、一例として、表示部21の側部に3つのボタン式の入力部22として構成としたが、個数・形状・操作方法は特にこれに限られず、タッチセンサ式、ダイヤル式など適宜採択可能である。また、本体2の側面において、被測定者が足による操作が可能なフットスイッチを設けてもよい。また、表示部21と入力部22とを、例えばタッチパネル機能を備えた液晶表示パネルとして一体的に構成してもよい。入力された被測定者の生体情報や設定事項は、記憶部34に記憶させたり、表示部21に表示されるようになっている。
【0027】
図2は、図1の体重計1の内部構成を示すブロック図である。なお、本実施形態中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0028】
図2に示すように、体重計1には、前述の表示部21、測定電極23及び入力部22の他、電流発生部32と、電圧測定部33と、重量測定部36と、電源部37と、記憶部34と、制御部31と、温度検出部35とを備える。
【0029】
電源部37は、制御部31の制御の下、体重計1の電気系統各部に電力を供給する手段である。本実施形態では、電源としては、体重計1を作動させる電力を供給する電池又は外部電源を利用できるようになっている。本実施形態の体重計1は、体重計1が測定に使用されていない状態(以下、無負荷状態という。)では、測定処理に要される電力の供給が停止され、後述するゼロ点更新処理及び体重計1に被測定者が載ったか否かの判別処理に必要な電力のみが供給される。一方、被測定者が載ったと判別された後、即ち、体重計1が測定に使用されている状態(以下、使用状態という。)では、測定処理に要される電力の供給がなされるようになっている。このため、無負荷状態では、例えば表示部21には通電されないので何も表示がなされない。また、無負荷状態におけるゼロ点更新処理では、温度検出部35に対しては、所定のタイミングで電力が供給され、重量測定部36に対しては、温度検出部35による温度検出の結果に基づいてゼロ点を更新すると判定された場合に電力が供給される。
【0030】
電流発生部32は、第1の電流印加用電極23aと電流印加用電極23bとの間に流れる交流電流を出力する手段である。本実施形態では、電流発生部32から出力される交流電流の周波数は50kHZに設定される。電圧測定部33は、第1の電圧測定用電極23cと第2の電圧測定用電極23dとの間の電圧を測定する手段である。
【0031】
重量測定部36は、本体2に加わる荷重を測定し荷重信号を出力する手段である。本実施形態において、重量測定部36には、荷重をかけると荷重に応じて変形する金属部材からなる起歪体と、起歪体に貼られる歪みゲージとからなるロードセル36aが備えられる。そして、起歪体は、その一端が本体2に支持され、他端が脚部(図に示さず)に支持されるように配置される。即ち、起歪体が、その撓み方向において本体2と脚部とに挟まれるように配置される。これにより、被測定者が本体2の上面に載ったときの荷重により起歪体が撓むと、歪みゲージが伸縮して歪みゲージの伸縮に応じた抵抗値(出力値)が変化し、その抵抗変化が荷重信号として測定される。そして、その荷重信号は、A/Dコンバータ36bにおいてデジタル信号に変換されて制御部31へ入力される。
【0032】
また、この例では、温度検出部35の消費電流は重量測定部36の消費電流より小さい。具体的に、本実施形態では、ロードセル36aの抵抗値は750Ωであり、消費電流は数mAとなっているが、温度検出部35の温度センサ35aの抵抗値は、数十キロΩとなっており、消費電流は数十μAとなっている。なお、温度検出部35の消費電流が重量測定部36の消費電流より小さくなくてもよい。
【0033】
記憶部34は、各種の情報データやプログラム等を蓄積するメモリ手段(例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory))であり、ゼロ点を記憶している。ゼロ点は、無負荷状態における荷重信号の大きさである。ロードセル36aの特性は、温度や体重計1が設置される面の傾きによって変化する。このため、無負荷状態であっても荷重信号は一定ではなく、変化する。この体重計1では、無負荷状態における荷重信号の大きさをゼロ点として記憶し、荷重が掛った場合に測定された荷重信号からゼロ点を差し引くことによって、補正された荷重信号を求めている。
【0034】
また、記憶部34には、しきい値が予め記憶されている。しきい値とは、ロードセル36aの温度特性に基づいて定められた、ゼロ点更新を行うべき基準となる温度変化の値である。この例のしきい値は、表示部21に表示される最小表示単位である目量に応じた値となっている。体重計1の表示部21に表示される最小表示単位の値は、補正された荷重信号値を四捨五入して表示させている。よって、しきい値は、目量の半分にあたる重量値の変動が生じる温度変化を基準に設定されている。例えば、体重計の目量が50gである場合には、50gの半分の値である25gの変動を生じさせる温度変化の値(例えば、0.5℃)がしきい値として設定される。ここで、しきい値は、体重計1に実際に使用されるロードセル36aの温度特性を予め測定して定めてもよいし、あるいは、多数のロードセル36aの温度特性の平均値としてもよい。
【0035】
また、記憶部34には、被測定者の体脂肪率、体脂肪量、皮下脂肪厚、内臓脂肪面積、内臓脂肪量、皮下脂肪面積、皮下脂肪量などを演算するための各種の演算式が記憶される。また、入力部22によって入力される身体特定情報(性別、身長、年齢など)や前回のゼロ点更新時における検出温度なども記憶されている。
【0036】
制御部31は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサの演算処理装置であり、各機器と電気的に接続されて各動作を制御して、体重の測定などの種々の処理を行う。この制御部31における体重測定機能は、体重計1の本体2に被測定者が載ったことを判別した後、即座に、重量測定部36による体重測定を開始するように指示を行う。具体的には、制御部31は、本体2に荷重が掛っていないときの重量測定部36からの荷重信号(いわゆるゼロ点)を記憶部34から取得するとともに、荷重がかかったときの荷重信号を重量測定部36から取得する。そして、この2つの荷重信号の差から体重を演算により求め、被測定者の体重を測定する。制御部31は、このようにして取得した被測定者の体重を、記憶部34に記憶するとともに、表示部21に表示する。
【0037】
なお、体重計1の本体2に被測定者が載ったことの判別処理のための手段は、適宜採択可能である。一例としては、無負荷状態における重量測定部36の出力値の変化を制御部31において監視する。この監視は、1秒又は2秒毎(温度検出の周期よりも短い周期)で行う。そして、急激な出力値の変化が現れた時点をもって、又は、所定の出力値を超えた時点(例えば、4kg程度の出力値)をもって、体重計1に被測定者が載ったと判断する。また、例えば、本体2の底面部分に備えられた機械式スイッチによるオン/オフ信号で無負荷状態を検知するようにしてもよい。なお、重量測定部36において無負荷状態であるか否かは、正確な荷重の測定を必要としないので、消費電力は小さくてもよい。
【0038】
また、制御部31は、使用していないときに、即ち無負荷状態における荷重信号の出力値であるゼロ点の更新を行う機能とタイマ機能を備えている。具体的に、制御部31は、ゼロ点の更新を行うか否かの判定を行い、更新すると判定した場合には、重量測定部36に対して、本体2の無負荷状態における荷重信号を出力するように指示を行う。そして、その荷重信号を現在のゼロ点として記憶部34に保存する。このゼロ点の更新を行うか否かの判定は、制御部31において、温度検出部35による前回のゼロ点更新時における検出温度と今回の検出温度との差分が、しきい値を超えるか否かによって行われる。具体的には、制御部31は、記憶部34に記憶されたしきい値を読み出し、読み出されたしきい値と上記差分とを比較することにより判定を行う。なお、制御部31は、このゼロ点の更新において、別制御として重量測定部36が無負荷状態か否かを判断しており、重量測定部36が無負荷状態の際に、ゼロ点更新の要否についての判定を実行する。
【0039】
温度検出部35は、温度センサ35aによって温度を検出する測定手段である。この温度センサ35aは、適宜採択可能である。本実施形態では、温度変化に対する電気抵抗の変化によって温度を測定するサーミスタ(NTCサーミスタや、PTCサーミスタ等)が採用されている。そして、このサーミスタで測定された電気抵抗の信号はA/Dコンバータ35bによってデジタル信号に変換されて制御部31に向けて送出される。
また、温度検出部35は所定のタイミングで温度を検出する。この場合、制御部31は、所定のタイミングで電力を温度検出部35に供給するように電源部37を制御する。この結果、電源部37は、温度検出部35が温度を検出する場合にのみ電力を温度検出部35に供給する。本実施形態では約1分に1回の周期で温度を検出する。そして、これと同じ周期で、温度検出部35に対して電力が供給される。すなわち、制御部31は、所定の周期で電力を温度検出部35に供給するように電源部37を制御する。これによって、消費電力が削減される。なお、この周期は、ユーザーによる任意の設定操作や、使用地域又は季節に応じた仕様等に従って、適宜切り替えるようにしてもよい。また、ユーザーの意思や使用環境に対応させて、消費電力の低減と、ゼロ点更新の精度とのバランスを調整するようにしてもよい。
【0040】
<B:重量測定装置の動作>
次に、体重計1におけるゼロ点の更新における動作について、以下、図3を参照しながら、その具体的な内容について説明する。図3は、本実施形態に係る体重計1のゼロ点更新の処理を示すフローチャートである。なお、制御部31は、このゼロ点の更新において、別制御として重量測定部36が無負荷状態か否かを判断しており、ここでは、重量測定部36が無負荷状態の際にイベントが発生し、そのイベント発生を受けて、ゼロ点更新の要否についての判定を実行するものとする。
【0041】
まず、制御部31は、無負荷状態をイベント発生の条件としており(ステップS1)、無負荷状態である場合に温度測定を行うための測定時間が経過したかを判断する(ステップS2)。具体的には、体重計1が無負荷状態となってからの時間経過をタイマによりカウントし、制御部31は、現在設定されている温度測定の測定時間を経過したか否かの判別処理を実行する(ステップS2)。具体的には、温度測定の測定時間間隔が「T」であるとすれば、制御部31は、タイマに測定時間間隔Tをセットし、タイマ値がゼロになったか否かを判定する。タイマ値がゼロの場合はステップS2の判定結果は「Yes」となり、制御部31は、タイマに測定時間間隔Tを再びセットし、処理をステップS3に進める。一方、タイマ値がゼロでない場合はステップS2の判定結果は「No」となり、タイマ値がゼロとなるまでステップS2の処理を繰り返す。
【0042】
ステップS3において、制御部31は、記憶部34に保存されている前回のゼロ点更新時における検出温度を読み出した後(ステップS3)、温度検出部35に対して電力を供給するように電源部37を制御することにより温度を測定する。そして、測定された検出温度を今回の検出温度として取得する(ステップS4)。なおステップS3とステップS4の順序は逆であってもよい。
【0043】
次に、制御部31は、読み出された前回のゼロ点更新時における検出温度と、新たに検出された、今回の検出温度との差分を演算し、前回のゼロ点更新時における検出温度と今回の検出温度との差分が、しきい値を超えるか否かについて判定する(ステップS5)。
【0044】
検出温度の差分がしきい値を超える場合には(ステップS5でYes)、制御部31は、重量測定部36のゼロ点を更新する処理を行う。具体的には、制御部31は、重量測定部36に対して電力を供給するように電源部37を制御する。電力が供給されると、重量測定部36は、被測定者が本体に載っていない無負荷時におけるロードセル36aの荷重信号値を取得する(ステップS6)。すなわち、制御部31は重量測定部36が荷重信号を出力できるように電源部37を制御する。制御部31は、重量測定部36から荷重信号値を取得して、この出力値を最新のゼロ点データとして記憶部34に記憶させる(ステップS7)。
【0045】
検出温度の差が比較的大きい場合は、体重計1が配置されている場所の周辺温度などの環境変化(例えばロードセル36aに用いる起歪体の温度特性による歪み方の微細な相違)に起因してゼロ点が変動し、ロードセル36aの出力値に差が生じる事態が発生している状況である。この場合には、ゼロ点更新を行うこととして、温度変化に対応した最新のゼロ点を用いた生体情報(特に体重)の測定ができるような構成としている。反対に、検出温度の差分がしきい値を超えない場合には(ステップS5でNo)、制御部31は、体重計1の周辺温度などの環境変化に特段の変化がないものと判別し、ゼロ点測定を行わず、前述したステップS2に戻り、検出温度の読み出しと温度測定処理(ステップS2〜ステップS4)が繰り返される。
【0046】
このように検出温度の差分がしきい値を超えないということは、体重計1の使用環境等の変化はないものと考えられるので、ゼロ点更新を行わない。この場合には、重量測定部36に対してはゼロ点更新のための電力が供給されないので、ゼロ点更新によって消費する電力の節約が可能となり好ましい。
【0047】
最後に、被測定者が本体2に載ったか否かの判別が、制御部31において行われる(ステップS8)。被測定者が載ったと判別されると(ステップS8でYes)、ゼロ点の更新処理が終了し、体重計1は使用状態となる。反対に、被測定者が載っていないと制御部31により判別された場合には(ステップS8においてNo)、前述したステップS2に戻り、ゼロ点更新処理(ステップS2〜ステップS7)が繰り返される。
【0048】
上記説明したように、本実施形態の体重計1は、制御部31により、温度センサ35aによる前回のゼロ点更新時における検出温度と、今回の検出温度との差分によって、ゼロ点の更新を行う。即ち、ゼロ点が変動した結果ではなく、ゼロ点が変動する原因である温度変化を、ゼロ点の変動修正の条件とている。詳述すると、体重計1は、消費電力の小さい温度センサ35aによる温度検出のみを定期的に行う。そして、検出温度の差分が所定のしきい値よりも小さい場合、即ち、温度変化が小さい場合には、ゼロ点の更新は行わない。一方、検出温度の差分が所定のしきい値よりも大きい場合、即ち、温度変化が大きい場合にのみ、ゼロ点の更新を行う。このため、消費電力が大きいゼロ点の更新回数を低減させることによって消費電力を低減させ、電池寿命を長くできるとともに、急激な温度変化に追従した適正なゼロ点更新を実現できる。
【0049】
また、本実施形態において、制御部31は、重量測定部36が無負荷状態において、判定を実行するので、体重計1に人や物が載置されていない無負荷の状態でゼロ点更新の要否を判定することができ、重量の負荷による影響を回避して、温度の変化や、重量測定装置の経時的変化に基づいてのみ、ゼロ点の変動修正を行うことができる。
【0050】
<C:変形例>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の変形が可能である。また、以下に示す変形例のうちの2以上の変形例を組み合わせることもできる。
【0051】
(1)変形例1
上述した実施形態では、本発明に係る重量測定装置を体組成計機能付き体重計1に適用した場合を説明した。しかしながら、本発明に係る重量測定装置の形態は、上述の実施形態には限定されず、体重のみを測定するだけの体重計という態様とすることもできる。さらには、本発明に係る重量測定装置は、上記実施形態に示す体重計のような生体を測定対象とした生体測定装置のみならず、質量計(例えば調理用秤)などのように、物体の重量を測定・計測する装置であっても適用が可能である。この場合の重量測定部としては、上記実施形態に示す体重計1における重量測定部36と同様に、起歪体と、起歪体に貼られる歪みゲージとからなるロードセルを用いればよい。
【0052】
(2)変形例2
また、本実施形態においては、一定のしきい値を用いてゼロ点を測定するか否かを判定したが、ユーザーによる任意の設定操作や、使用地域又は季節に応じた仕様等に従って、適宜切り替えるようにしてもよい。また、ユーザーの意思や使用環境に対応させて、消費電力の低減と、ゼロ点更新の精度とのバランスを調整するようにしてもよい。
また、本発明は、しきい値を検出温度によって変化させてもよい。目量の半分に相当する温度差が体重計1の測定温度範囲で一定の場合には上述した実施形態で説明したように一定のしきい値でよい。しかしながら、目量の半分に相当する温度差が温度によって変化する場合には、しきい値を検出温度によって変化させることが好ましい。例えば、温度が5度の場合に、目量の半分に相当する温度差が0.5度であり、温度が25度の場合に、目量の半分に相当する温度差が0.8度である場合には、検出温度が5度の場合にはしきい値を0.5度とし、検出温度が25度の場合はしきい値を0.8度とすればよい。具体的には、温度検出部35による検出温度としきい値とを対応付けたテーブルデータを記憶部34に記憶する。そして、ステップS5において前回のゼロ点更新時の検出温度と今回の検出温度との差分としきい値とを比較する時に、制御部31は記憶部34から現在の検出温度に対応するしきい値を読み出し、これを用いて判定処理を実行することが好ましい。これにより、目量の半分に相当する温度差が環境温度に応じて変化しても、適切なタイミングにゼロ点の測定を実行することができ、測定精度を維持しつつ、消費電力を削減することができる。
【0053】
(3)変形例3
上述した実施形態では、制御部31が、一定周期で温度検出部35から温度検出を行う態様が例示されている。すなわち、制御部31が、固定の時間間隔で温度検出部35に対して電力を供給する態様が例示されている。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ユーザーが所定のスイッチ(図示せず)を押す任意のタイミングで温度検出を行うようにしてもよい。
また、例えば、制御部31が、温度センサによる前回のゼロ点更新時における検出温度と今回の検出温度との差分に応じて、次回の温度検出までの検出時間間隔を変更する態様とすることもできる。すなわち、温度変化の度合いに応じた可変の時間間隔で、温度検出部35に対して電力を供給するようにしてもよい。
【0054】
図4は、本変形例に係る周期可変用テーブルの一例を示す図である。同図に示されるように、本変形例では、温度センサによる前回のゼロ点更新時における検出温度と今回の検出温度との差分(ΔTP=今回の検出温度−前回のゼロ点更新時における検出温度)と、温度検出部35における検出時間間隔とを対応付けた周期可変用テーブルデータTBLを記憶部34にさらに記憶しておく。制御部31は、温度検出部35による前回のゼロ点更新時における検出温度と今回の検出温度との差分ΔTPを求め、周期可変用テーブルデータTBLを参照して検出温度の差分ΔTPに対応する検出時間間隔を読み出す。そして、読み出された検出時間間隔を用いて次回の温度検出までの時間間隔の設定を行う。なお、本変形例では、制御部31は、検出温度の差分が大きいほど、前回の検出時間間隔に比較して、次回の温度検出までの時間(検出時間間隔)を短くする設定を行うようにする。逆に検出温度の差分が小さいほど、次回の温度検出までの時間を長く設定する。
【0055】
この場合には、温度変化の差が少ない場合には、次回の温度検出までの時間間隔を長くすることで、温度検出のための消費電力を低減させることができる。一方、温度変化の差が大きい場合には、次回の温度検出までの時間間隔を短くすることで、急激な温度変化に追従した適正なゼロ点更新を行うことができる。
【0056】
(4)変形例4
上述した実施形態では、しきい値を、重量測定部36の目量の1/2に相当する温度差に設定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、重量測定部36の目量の1/2以下に相当する温度差に設定してもよい。目量は、表示可能な重量の最小単位であるところ、温度変化に伴うゼロ点のずれが目量の1/2を超えると、表示される重量の測定結果に影響を与える。したがって、しきい値は目量の1/2以下に相当する温度差であることが好ましい。一方、しきい値を小さくすると温度検出部35の消費電力が増大する。しかしながら、体重計1を日常的に使用する場合に、環境温度は急激に変化するものではない。このため、しきい値を目量の1/8以上に相当する温度差に設定すれば、温度検出部35の消費電力も問題とならない。そこで、しきい値を重量測定部36の目量の1/8以上1/2以下に相当する温度差に設定することが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
1……体重計、2……本体、2a……カバー部材、2b……底板部材、3……本体、21……表示部、22……入力部、22a……設定キー、22b……アップキー、22c……ダウンキー、23……測定電極、23a,23b……電流印加用電極、23c,23d……電圧測定用電極、31……制御部、32……電流発生部、33……電圧測定部、34……記憶部、35……温度検出部、35a……温度センサ、35b……A/Dコンバータ、36……重量測定部、36a……ロードセル、36b……A/Dコンバータ、37……電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無負荷状態における荷重信号の出力値であるゼロ点の更新を行う重量測定装置であって、
本体に加わる荷重を測定し前記荷重信号を出力する重量測定部と、
温度を検出して検出温度を出力する温度検出部と、
前記重量測定部及び前記温度検出部に電力を供給する電源部と、
所定のタイミングで前記温度検出部に電力を供給するように前記電源部を制御し、前回のゼロ点更新時における前記検出温度と、今回の前記検出温度との差分が、しきい値を超えるか否かについて判定し、前記しきい値を超える場合に前記重量測定部に電力を供給して前記荷重信号を取得し、取得した前記荷重信号に基づいてゼロ点を更新する制御部と、
を備えることを特徴とする重量測定装置。
【請求項2】
前記しきい値が、前記重量測定部の目量の1/8以上1/2以下に相当する温度差に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の重量測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、所定の周期で前記温度検出部に電力を供給するように前記電源部を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の重量測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前回のゼロ点更新時における前記検出温度と今回の前記検出温度との差分に応じて、前記温度検出部における次回の温度検出までの時間間隔を変更することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の重量測定装置。
【請求項5】
前記温度検出部の消費電流は前記重量測定部の消費電流よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の重量測定装置。
【請求項6】
前記重量測定装置は、前記検出温度と前記しきい値とを対応付けたテーブルデータを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出温度に基づき、前記テーブルデータを参照して当該検出温度に対応するしきい値を読み出し、読み出されたしきい値と前記差分とを比較することにより前記判定を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の重量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79935(P2013−79935A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108357(P2012−108357)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)