説明

重量物の搬送設置装置

【課題】鋼棒等の後付処理が不要で搬送設備が簡略化でき重量物の吊下げ設置作業が容易な搬送設置装置を提供する。
【解決手段】鋼製型枠1の搬送台20は補強鋼材3の下面に固着する板材20aと橇状の足部材20bとこれらを吊下連結する大引材20dと補強鋼材3を挿通して板材20aに螺着し大引材20dより吊り下げ固定する昇降ボルト20eを備える。搬送台20と補強鋼材3を連結した状態で搬送し鋼製型枠を吊下げ設置する際には昇降ボルト20eを緩めて補強鋼材3及び搬送台20の板材20aを降下して鋼製型枠1を主桁6に接地し昇降ボルト20eを取外し搬送台20を撤去すると同時に足部材送り手段21も溶着鋼棒9から離脱する。鋼製型枠1を主桁6に直接吊下げ設置することができ足部材20bを上方に撤去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、重量物の搬送設置装置に関し、特に橋梁の上部構造物を構築する際、主桁の上フランジに沿って重量物を搬送し、これを設置するための重量物搬送設置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の上部構造物を構築する際には、橋桁等を架け渡した後に、様々な重量物、例えば、橋梁床版構築用のコンクリート型枠や、鉄筋等の床版組立資材、あるいはプレキャスト床版などを運搬設置しなければならない。
【0003】
このような重量物を橋桁上に運搬設置する方法としては、クレーンにより橋桁上に直接設置する方法が一般的である。例えば図23に示す床版構築用の鋼製型枠1は、分割された複数の底鋼板2と、これら底鋼板2を一定間隔で連結する補強鋼材3で構成されており、鋼製型枠1のパネル当たり重量は約4t程度となる。
【0004】
この鋼製型枠1をクレーンにて吊り上げ設置するためには、図24に示すように設置箇所の近傍までクレーン4が移動できなければならない。ところが、架橋地点に河川や道路等が交差してクレーンを近接配置できない場合も多く、この場合には図25に示すように、橋桁5を利用して鋼製型枠1等を搬送設置している。
【0005】
図26に示すように橋桁5は橋軸方向に平行な主桁6と、これら主桁6を連結するための横桁7からなり、主桁6の上フランジ8には構築するコンクリート製の床版と一体化を図るためのずれ止めである溶着鋼棒9が適宜間隔で立設している。図27に示すように、鋼製型枠1の底鋼板2は溶着鋼棒9を避けて主桁6に載置するよう分断されており、又図28の断面図にも示すように補強鋼材3は搬送後の設置箇所で溶着鋼棒9を各間隙に挿入し得るよう形成されている。
【0006】
このような重量物を載置する搬送台を備え、主桁の上フランジ上面に搬送台を支持する搬送面を形成し、更に重量物を主桁の所定位置に設置するための重量物吊上げ吊下げ手段とを備える従来の搬送設置装置としては、例えば特許文献1、特許文献2に記載されるような搬送設置装置があった。
【特許文献1】特許第3666870号公報
【特許文献2】特開2008−240347号公報
【0007】
特許文献1に記載される搬送設置装置は、鋼桁の上フランジに軌条支持手段を取付け、この軌条支持手段によって単軌条を上フランジの上方に支持し、この単軌条に駆動台車及び該駆動台車に牽引される荷積み台車を走行可能に設けた構成であった。
【0008】
この構成にて、例えば鋼製型枠を搬送する場合には図29及び図30に示すように、主桁6の上フランジ8の溶着鋼棒9に下部が管体の軌条支持柱111を挿着し、これに軌条112を架け渡して搬送路とすることになる。一方鋼製型枠1の補強鋼材3の下面には搬送台車113を取り付け、この搬送台車113を軌条に上載して牽引搬送することになる。
【0009】
又、特許文献2に記載される搬送設置装置は、主桁上の重量物を、滑り用受台を介して主桁上に支持させ、引込み機により主桁上を滑らせながら搬送するもので、滑り用受台は、主桁上面と接する部分に滑動性を有するものを用いる構成であった。
【0010】
この構成にて、鋼製型枠を搬送する場合には図31に示すように、主桁6の上フランジ8に主桁軸方向に長軸となる滑り用受台114を載置し、これに高さ調整部材115を介して鋼製型枠1の補強鋼材3を載荷することになる。滑り用受台114は引き込み方向に突き出すガイド面116を備え、上フランジ8に突設するねじ付スタッド117に沿って搬送することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来の主桁上に配置した軌条上を搬送する場合は、重量物を搬送する区間全長に亘り軌条設備を敷設する必要があった。又、軌条を用いた搬送装置では、重量物の搬送の後、主桁上に吊下げ設置する前に、図32に示すように重量物と主桁の間に配置した軌条112及び搬送台車113を抜去しなければならず、その際重量物吊上げ吊下げ手段118にて重量物を一旦吊り上げて保持する必要があった。
【0012】
又、主桁の上の上フランジ上面に平坦な搬送面と確保して搬送する場合は、その搬送面に障害物が存在すると搬送不能となるため、例えば滑り用受台が通過する部分にはスタッドを後付しなければならなかった。従って、このような搬送装置では重量物の搬送の後、工事現場に大型の溶接機材を配備して床版コンクリートと主桁を連結するために所要の溶着鋼棒を立設する必要があった。
【0013】
又この搬送装置においても、重量物を吊下げ設置する際に、滑り用受台等を抜去するため、重量物を一旦吊り上げて保持する必要があった。
【0014】
この発明は、従来の重量物の搬送設置装置が有する上記の問題点を解消すべくなされたものであり、搬送面を確保するための鋼棒等の後付処理が不要で、かつ搬送する区間全長に亘っての搬送設備が簡略化できる重量物の搬送設置装置を提供することを目的としている。
【0015】
又、重量物を設置箇所に搬送した後、重量物を主桁上に直接吊下げ設置することが可能となり、吊下げ設置作業を容易に遂行し得る重量物の搬送設置装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、この発明の重量物の搬送設置装置は、橋梁の上部構造物を構築する際、主桁の上フランジに沿って重量物を搬送するため、この重量物を載置する搬送台と、前記上フランジ上面に形成して前記搬送台を支持する搬送面と、前記重量物を主桁の所定位置に設置する重量物吊上げ吊下げ手段とを備える重量物の搬送設置装置において、前記搬送台は、主桁軸方向に長軸となる足部材を下面に備え、前記搬送面は、前記上フランジ上面に立設する取外し可能な支柱の上面に設ける間隔をあけた足部材送り手段であって、この間隔は前記搬送台を安定的に支持し得るよう前記一の足部材に対して少なくとも1以上の足部材送り手段を配置する間隔であることを特徴とするものである。
【0017】
重量物は、床版構築用のコンクリート型枠、鉄筋等の床版組立資材、あるいはプレキャスト床版など主桁上を搬送するものを広く対象とする。
【0018】
足部材は重量物を支持する適宜長さを有し、搬送時には搬送台と重量物が一体的に移動し得るよう構成する。足部材は、例えば橇状の部材で点在する足部材送り手段に架け渡し、重量物又は搬送台を牽引又は押出すことで順次移動する。
【0019】
支柱は構造部材として架け渡された主桁の上方で搬送台及び重量物を支えるもので、少なくとも搬送台の長さを越える本数設置する。
【0020】
請求項2記載の重量物の搬送設置装置の足部材送り手段は、上フランジ上の溶着鋼棒に挿着する管体支柱と、その上端に固着する板体を備え、この板体が前記足部材の側面に当接し得ることを特徴とするものである。
【0021】
請求項3記載の足部材送り手段の板体は、転動体を内設する一対の折曲面を有し、この折曲面が前記足部材の側面に当接して案内面を形成するものであり、前記管体支柱は、前記溶着鋼棒に対する旋転防止手段を付設することを特徴とするものである。足部材はローラ等の転動体によって搬送される。転動体の上端が折曲面の内部に位置する場合は、折曲面間に足部材を収容し、折曲面より上部に位置する場合は足部材は断面コ状として足部材送り手段に跨る形状を採る。旋転防止手段は、管体支柱の向きを固定するものである。
【0022】
請求項4記載の足部材送り手段の板体は、底面と一対の折曲面がなす受台が前記足部材を収容する滑り面を形成するものであり、前記管体支柱は、前記溶着鋼棒に対する旋転防止手段を付設することを特徴とするものである。足部材が受台上を滑動し得るように摩擦係数の小さい素材を滑り面及び足部材下面に選定する。
【0023】
請求項5記載の足部材送り手段の板体は、円盤で、上面が前記足部材を載置する滑り面を形成するものであり、周面が前記足部材の側面に当接することを特徴とするものである。足部材は断面コ状として円盤に跨る形状を採る。
【0024】
請求項6記載の重量物の搬送設置装置の足部材は、2以上の前記足部材送り手段に跨る長さを有し、前記重量物を前記足部材上面で支持することを特徴とするものである。搬送面を主桁の上フランジ上面に形成した後、足部材を載置し搬送台上に重量物を載荷する。搬送後、重量物を搬送台の上方に吊り上げ、その間に足部材及び搬送台を引き抜く。その後、重量物を主桁に吊下げ設置する。
【0025】
請求項7記載の重量物の搬送設置装置における重量物は、主桁横断方向に配置する複数の帯体を有し、前記足部材は、隣接するこの帯体の上方に引揚可能な長さでかつ各帯体間に配設するものであり、前記足部材送り手段は、前記重量物の設置位置で前記帯体の下方に位置しないよう配設し、前記重量物吊上げ吊下げ手段は、前記足部材と連結して下方に搬送台を支持し、搬送時にはこの搬送台下面が前記足部材送り手段の搬送面と同一の高さとなるよう前記帯体を吊上げ、設置時には前記帯体を降下するものであることを特徴とするものである。
【0026】
重量物は、足部材を上方に引揚撤去可能な帯体間の開口部を有する。搬送面に足部材を載置し、これに連結する重量物吊上げ吊下げ手段で搬送台に重量物を載荷する。搬送台は、例えば帯体の下面に固着して配置し、これを保持することで重量物全体を支持する。載荷時には、足部材及び重量物吊上げ吊下げ手段を重量物と連結し、一体化したものを別の揚重機により搬送面に据え付ける。
【0027】
足部材は点在する搬送面を順次移動するが、支持面が途切れぬよう搬送台下面と足部材下面を同一高さに調整する。
【0028】
設置箇所では、足部材で支持しながら重量物を降下し、主桁に接地し、その荷重を預ける。その後、重量物吊上げ吊下げ手段を解放し、足部材を重量物の開口部を利用して上方に引き揚げる。
【0029】
請求項8記載の重量物の搬送設置装置における重量物は、主桁横断方向に配置する複数の帯体を有し、前記足部材は、一端に一の前記帯体を載置する受面、他端に隣接する前記帯体に載架する蓋部を設け、前記帯体に対して抜出可能な長さであり、前記重量物吊上げ吊下げ手段は、搬送時には一の前記足部材の蓋部と他の前記足部材の受面間に前記帯体を挟持しながら連続する足部材が前記足部材送り手段上を移動し得るよう搬送台を維持し、設置時には前記足部材送り手段を支点として前記足部材を傾けて前記重量物を降下することを特徴とするものである。
【0030】
足部材は蓋部と受面を重合することで略連続した形状となり得る。載荷時には、重量物吊上げ吊下げ手段にて搬送台とこれに載置する帯体を支持する。蓋部と受面間に帯体及び搬送台を挟持し、一体連続化した足部材を別の揚重機により搬送面に据え付ける。
【0031】
設置箇所では、各足部材に足部材送り手段を位置し、重量物吊上げ吊下げ手段にて搬送台及び帯体を降下させる。この時足部材は、受台を下方に蓋部を上方に天秤状に傾ける。重量物を主桁に接地し、その荷重を預けた後、重量物吊上げ吊下げ手段を解放し、傾斜する足部材を重量物の開口部を利用して上方に引き揚げる。
【発明の効果】
【0032】
この発明の重量物の搬送設置装置は、搬送台として主桁軸方向に長軸となる足部材を備え、取外し可能な支柱に足部材を支持する足部材送り手段を設けたもので、支柱は少なくとも搬送台の長さを越える本数設置すれば足り、しかも点在する搬送面となるため、区間全長に亘り軌条設備を敷設する従来の軌条搬送装置に比べ、大幅に設備の簡略化が可能となる。
【0033】
又搬送面は、主桁の上フランジ上面に突設する溶着鋼棒に対して取外し可能に挿着立設できるので、搬送面に障害物が存在することなく、溶着鋼棒の後付作業は不要となる。
【0034】
請求項2記載の重量物の搬送設置装置の足部材送り手段は、管体支柱の上端に固着する板体が足部材の側面に当接し得るので、足部材が搬送面から逸脱しない構成となる。
【0035】
請求項3記載の足部材送り手段は、転動体と、足部材案内面と、旋転防止手段を設けるので、重量物の搬送に要する牽引荷重等が小さくでき、かつ安定的な送り作業ができる。
【0036】
請求項4記載の足部材送り手段は、足部材下面と受台に摩擦係数の小さい素材を選定するだけで滑り面が形成でき、ローラ等の設備が不要となるので、構成が簡易となる。
【0037】
請求項5記載の足部材送り手段は、板体を円盤とするので、支柱の旋転防止手段が不要となり構成がより簡易になる。
【0038】
請求項6記載の重量物の搬送設置装置の足部材は、2以上の前記足部材送り手段に跨る長さを有し、重量物をその足部材上面で支持するので、足部材及び搬送台の構成が簡易で、重量物も特に形状の限定を必要としない。
【0039】
請求項7記載の重量物の搬送設置装置は、足部材が重量物の開口部に対して引揚可能な長さで、又重量物吊上げ吊下げ手段が搬送台下面を搬送面と同一の高さとなるよう吊上げるので足部材を搬送面に沿って移動することができ、設置箇所では重量物を主桁に直接吊下げ設置することができる。即ち、設置時に重量物を吊り上げて搬送台等を引き抜く必要がなく、吊下げ設置した後、開口部を利用して足部材を上方に撤去することができ、吊下げ作業が非常に簡易になる。
【0040】
請求項8記載の重量物の搬送設置装置は、蓋部と受面を重合することで略連続した形状の足部材となるため、搬送を安定的に行なえる。又各足部材が重量物の開口部に対して引揚可能な長さであるので、設置箇所で重量物を主桁に直接吊下げ設置すること、及び足部材を上方撤去することが可能となるため、吊下げ作業が非常に簡易になる。又重量物吊上げ吊下げ手段は、足部材を傾けることで重量物の降下を可能とするので、この吊上げ吊下げ手段も簡易な構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
次にこの発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は橋桁に鋼製型枠及びその搬送設置装置を載荷する際の分解斜視図、図2は図1のII−II断面の一部を省略した断面図である。
【0042】
橋桁の主桁6の上フランジ8には溶着鋼棒9が3本横並びで適宜間隔に立設する。この主桁6上に設置する鋼製型枠1は、底鋼板2を帯体である補強鋼材3で連結している。この鋼製型枠1の搬送台10は、各補強鋼材3の下面に固着する板材10aと、主桁軸方向に長軸となる橇状の足部材10bと、補強鋼材3を挿通して板材10aを足部材10bに固定するボルト10c備える。
【0043】
搬送台10の搬送面を形成するための足部材送り手段11は、中央の溶着鋼棒9に挿着する管体支柱11aと、その上端に固着する板体11bを備え、管体支柱11aには、旋転防止手段である横棒11cを固着する。この横棒11cは隣接する2本の溶着鋼棒9に当接し得る長さである。
【0044】
板体11bは底面と一対の折曲面がなす受台が足部材10bを収容する滑り面を形成するものであり、折曲面は足部材10bの側面に当接することで搬送ガイドとなる。板体11bの底面は足部材10bが滑動し得るよう摩擦係数の小さい素材を選定する。
【0045】
搬送台10の足部材10bは、図3の断面図に示すように2以上の足部材送り手段11に跨る長さを有し、足部材送り手段11がなす搬送面を所定位置まで滑動した後、載荷物を吊下げ設置する。この吊下げ設置手順を図4乃至図6に基づき説明する。図4は鋼製型枠を吊下げ設置し、その搬送設置装置を取り除く際の分解斜視図、図5は図4のV−V断面の一部を省略した断面図、図6は鋼製型枠設置後の断面図である。
【0046】
搬送設置装置の一部を構成する重量物吊上げ吊下げ手段12は、溶着鋼棒9に挿着可能な複数枚の門型支柱12aと、その上端に架け渡す梁12bと、この梁12b上に設置する巻上機12cを備える。重量物吊上げ吊下げ手段12は、鋼製型枠1を主桁6の所定位置まで搬送した後、当該箇所で組み立てる。
【0047】
図5に示すように、巻上機12cのワイヤ12dを鋼製型枠1の補強鋼材3と搬送台10の板材10aに掛止し、ボルト10cを足部材10bから取外す。その後、ワイヤ12dを巻き上げ、鋼製型枠1を上方に吊り上げた状態で、足部材10bを引き抜く。
【0048】
その後、図6に示すように鋼製型枠1を降下して主桁6に接地し、その荷重を預けた後、ワイヤ12dの掛止を解き、重量物吊上げ吊下げ手段12を撤去すると同時に、足部材送り手段11も溶着鋼棒9から離脱する。
【0049】
次に別の実施の形態を図7乃至図11に基づき説明する。図7は別の実施の形態の搬送設置装置を橋桁に載置する際の分解斜視図、図8は図7のVIII−VIII断面の一部を省略した断面図、図9は別の実施の形態の搬送時の鋼製型枠及び搬送設置装置の一部を省略した断面図、図10は別の実施の形態で鋼製型枠を吊下げ設置する際の断面図、図11は別の実施の形態で搬送設置装置を取り除く際の断面図である。なお、図7乃至図11で図1乃至図6で説明した部材と同一の構成・作用を示す部材は同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
鋼製型枠1の搬送台20は、各補強鋼材3の下面に固着する断面コ字状の板材20aと、主桁軸方向に長軸となる複数本の橇状の足部材20bと、これら直列に配置する足部材20bを吊下連結する束材20c及び大引材20dと、補強鋼材3を挿通して板材20aに螺着し、大引材20dより吊り下げ固定する昇降ボルト20eを備える。この昇降ボルト20eは搬送台20の一部を構成すると共に吊上げ吊下げ手段にもなる。
【0051】
搬送台20の搬送面を形成するための足部材送り手段21は、溶着鋼棒9に挿着する管体支柱21aと、その上端に固着する円盤21bを備える。円盤21bの上面は断面コ字状の足部材20bを載置する滑り面を形成し、周面は足部材20bの内側面に当接する。この場合は旋転防止手段が不要となる。
【0052】
搬送台20の足部材20bは、図8の断面図に示すように1の足部材送り手段21に対応する長さ及びピッチを有し、足部材送り手段21が主桁6上に搬送面を形成した後、図9に示すように搬送台20と補強鋼材3を連結した状態で載置する。この時昇降ボルト20eを調整して下端の板材20aが足部材20bの高さと一致するようにする。この調整により、搬送台20は足部材送り手段21の搬送面を途切れることなくスムーズに所定位置まで滑動することができる。
【0053】
鋼製型枠を吊下げ設置する際には図10に示すように、足部材20bを対応する足部材送り手段21上に載置し、昇降ボルト20eを緩めて補強鋼材3及び搬送台20の板材20aを降下して鋼製型枠1を主桁6に接地し、その荷重を預けた後、図11に示すように昇降ボルト20eを板材20aから取外し、搬送台20を撤去すると同時に、足部材送り手段21も溶着鋼棒9から離脱する。
【0054】
この場合には設置箇所で鋼製型枠1を主桁6に直接吊下げ設置することができ、設置時に鋼製型枠1を吊り上げて搬送台20を引き抜く必要がなく、吊下げ設置した後、補強材3間の開口部を利用して足部材20bを上方に撤去することができ、吊下げ作業が非常に簡易になる。
【0055】
次に他の実施の形態を図12乃至図16に基づき説明する。図12は他の実施の形態の搬送設置装置を橋桁に載置する際の分解斜視図、図13は図12のXIII−XIII断面の一部を省略した断面図、図14は他の実施の形態の搬送時の鋼製型枠及び搬送設置装置の一部を省略した断面図、図15は他の実施の形態で鋼製型枠を吊下げ設置する際の断面図、図16は他の実施の形態で搬送設置装置を取り除く際の断面図である。なお、図12乃至図16で図1乃至図11で説明した部材と同一の構成・作用を示す部材は同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
鋼製型枠1の搬送台30は、各補強鋼材3の下面に固着する板材30aと、主桁軸方向に長軸となる複数本の橇状の足部材30bを備える。足部材30bは、一端に一の補強鋼材3に固着する板材30aを載置する受面30c、他端に隣接する補強鋼材3に固着する板材30aに載架する蓋部30dを設け、この蓋部30d及びを補強鋼材3を挿通して板材30aに螺着し得る昇降ボルト30eを備える。この昇降ボルト30eも搬送台30の一部を構成すると共に吊上げ吊下げ手段にもなる。
【0057】
載荷時には、蓋部30dと受面30c間に補強鋼材3及び板材30aを挟持し、昇降ボルト30eにて蓋部30dを板材30a方向に押圧し、足部材30bを略連続した形状として図示しない揚重機により足部材送り手段21の円盤21bが形成する搬送面に据え付ける。足部材30bは断面略コ字状で円盤21b上を滑動する。
【0058】
鋼製型枠1を吊下げ設置する際には、足部材30bを対応する足部材送り手段21上に載置し、次に図15に示すように昇降ボルト30eを緩めて補強鋼材3及び搬送台30の板材30aを降下させる。この時足部材送り手段21を支持点として足部材30bは、受台30cを下方に蓋部30dを上方にして天秤状態で傾く。昇降ボルト30eを挿通する蓋部30dの孔30fはこの傾きが可能なように下面を長孔に形成する。
【0059】
鋼製型枠1を主桁6に接地し、その荷重を預けた後、図16に示すように昇降ボルト30eを板材30aから取外し、搬送台30を傾けながら撤去すると同時に、足部材送り手段21も溶着鋼棒9から離脱する。
【0060】
この場合も設置箇所で鋼製型枠1を主桁6に直接吊下げ設置することができ、足部材30bも上方に撤去することができる。又、足部材送り手段21を利用する天秤状態で鋼製型枠1の吊下げと足部材30bの抜き取り作業を同時に行なうことができるので搬送設置装置がより簡略化される。
【0061】
以上説明した重量物の搬送設置装置は直線状の搬送台を用いているが、重量物を安定的に搬送するため、搬送台と重量物の連結部材を複数列とするものでもよい。この実施形態を図17乃至図20に示す。図17は図1の搬送設置装置の連結部材を複数とする実施形態の分解斜視図、図18は図7の搬送設置装置の連結部材を複数とする実施形態の分解斜視図、図19は図18の別の実施形態の分解斜視図、図20は図12の搬送設置装置の連結部材を複数とする実施形態の分解斜視図である。
【0062】
図17乃至図20において図1乃至図16で説明した部材と同一の構成・作用を示す部材は同一の符号を付して詳細な説明は省略する。図17では足部材10bに跳出板10dを固着し、夫々の端部を補強鋼材3を挿通するボルト10cによって固定している。
【0063】
図18では大引材20dに跳出部20fを対称に突設し、夫々の端部を挿通する昇降ボルト20eを補強鋼材3に螺着して固定している。図19は図18の大引材20dを二列として梯子状に形成するものである。図20は図12の足部材30bの蓋部30cに跳出部30fを設け夫々の端部を挿通する昇降ボルト30eを補強鋼材3に螺着して固定するものである。
【0064】
また、以上説明した重量物の搬送設置装置で使用する足部材送り手段は、搬送面として滑り面を用いていたが、ローラ等の転動体を用いるものでもよい。この実施形態を図21及び図22に示す。これらの足部材送り手段31は中央の溶着鋼棒9に挿着する管体支柱31aと、その上端に固着する折曲板体31bを備え、管体支柱31aには、旋転防止手段である横棒31cを固着し、折曲板体31bの間には転動体31dが設けられる。
【0065】
図21に示すように転動体31dの上端が折曲板体31bの内部に位置する場合は、折曲板体31b間に足部材10bを収容する。図22のように折曲板体31bより転動体31dの上端が上部に位置する場合は断面コ字状の足部材20bが適用される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
この発明の重量物の搬送設置装置は、橋梁の上部構造物に対してのみならず、桁の上フランジに沿って重量物を搬送設置する場合の一般土木建築構造物に対しても広くて適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】橋桁に鋼製型枠及び搬送設置装置を載荷する際の分解斜視図である。
【図2】図1のII−II断面の一部を省略した断面図である。
【図3】搬送時の鋼製型枠及び搬送設置装置の一部を省略した断面図である。
【図4】鋼製型枠を吊下げ設置し搬送設置装置を取り除く際の分解斜視図である。
【図5】図4のV−V断面の一部を省略した断面図である。
【図6】鋼製型枠設置後の断面図である。
【図7】別の実施の形態の搬送設置装置を橋桁に載置する際の分解斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIII断面の一部を省略した断面図である。
【図9】別の実施の形態の搬送時の鋼製型枠及び搬送設置装置の一部を省略した断面図である。
【図10】別の実施の形態で鋼製型枠を吊下げ設置する際の断面図である。
【図11】別の実施の形態で搬送設置装置を取り除く際の断面図である。
【図12】他の実施の形態の搬送設置装置を橋桁に載置する際の分解斜視図である。
【図13】図12のXIII−XIII断面の一部を省略した断面図である。
【図14】他の実施の形態の搬送時の鋼製型枠及び搬送設置装置の一部を省略した断面図である。
【図15】他の実施の形態で鋼製型枠を吊下げ設置する際の断面図である。
【図16】他の実施の形態で搬送設置装置を取り除く際の断面図である。
【図17】図1の搬送設置装置の連結部材を複数とする実施形態の分解斜視図である。
【図18】図7の搬送設置装置の連結部材を複数とする実施形態の分解斜視図である。
【図19】図18の別の実施形態の分解斜視図である。
【図20】図12の搬送設置装置の連結部材を複数とする実施形態の分解斜視図である。
【図21】足部材送り手段の別の実施形態を示す斜視図である。
【図22】他の実施形態の足部材送り手段を示す斜視図である。
【図23】床版構築用鋼製型枠の斜視図である。
【図24】鋼製型枠をクレーンを用いて橋桁に載置する斜視図である。
【図25】鋼製型枠を橋桁上を搬送載置する斜視図である。
【図26】橋桁の斜視図である。
【図27】橋桁上に載置する鋼製型枠の斜視図である。
【図28】図27のA−A断面の一部を省略した断面図である。
【図29】従来の搬送装置に鋼製型枠を載荷して搬送する際の斜視図である。
【図30】図29のB−B断面の一部を省略した断面図である。
【図31】従来の他の搬送装置に鋼製型枠を載荷して搬送する際の断面を示す斜視図である。
【図32】軌条及び搬送台車を抜去する従来の搬送設置装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
1 鋼製型枠
3 補強鋼材
6 主桁
9 溶着鋼棒
20 搬送台
20a 板材
20b 足部材
20d 大引材
20e 昇降ボルト
21 足部材送り手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の上部構造物を構築する際、主桁の上フランジに沿って重量物を搬送するため、この重量物を載置する搬送台と、前記上フランジ上面に形成して前記搬送台を支持する搬送面と、前記重量物を主桁の所定位置に設置する重量物吊上げ吊下げ手段とを備える重量物の搬送設置装置において、前記搬送台は、主桁軸方向に長軸となる足部材を下面に備え、前記搬送面は、前記上フランジ上面に立設する取外し可能な支柱の上面に設ける間隔をあけた足部材送り手段であって、この間隔は前記搬送台を安定的に支持し得るよう前記一の足部材に対して少なくとも1以上の足部材送り手段を配置する間隔であることを特徴とする重量物の搬送設置装置。
【請求項2】
前記足部材送り手段は、上フランジ上の溶着鋼棒に挿着する管体支柱と、その上端に固着する板体を備え、この板体が前記足部材の側面に当接し得ることを特徴とする請求項1記載の重量物の搬送設置装置。
【請求項3】
前記板体は、転動体を内設する一対の折曲面を有し、この折曲面が前記足部材の側面に当接して案内面を形成するものであり、前記管体支柱は、前記溶着鋼棒に対する旋転防止手段を付設することを特徴とする請求項2記載の重量物の搬送設置装置。
【請求項4】
前記板体は、底面と一対の折曲面がなす受台が前記足部材を収容する滑り面を形成するものであり、前記管体支柱は、前記溶着鋼棒に対する旋転防止手段を付設することを特徴とする請求項2記載の重量物の搬送設置装置。
【請求項5】
前記板体は、円盤で、上面が前記足部材を載置する滑り面を形成するものであり、周面が前記足部材の側面に当接することを特徴とする請求項2記載の重量物の搬送設置装置。
【請求項6】
前記足部材は、2以上の前記足部材送り手段に跨る長さを有し、前記重量物を前記足部材上面で支持することを特徴とする請求項1記載の重量物の搬送設置装置。
【請求項7】
前記重量物は、主桁横断方向に配置する複数の帯体を有し、前記足部材は、隣接するこの帯体の上方に引揚可能な長さでかつ各帯体間に配設するものであり、前記足部材送り手段は、前記重量物の設置位置で前記帯体の下方に位置しないよう配設し、前記重量物吊上げ吊下げ手段は、前記足部材と連結して下方に搬送台を支持し、搬送時にはこの搬送台下面が前記足部材送り手段の搬送面と同一の高さとなるよう前記帯体を吊上げ、設置時には前記帯体を降下するものであることを特徴とする請求項1記載の重量物の搬送設置装置。
【請求項8】
前記重量物は、主桁横断方向に配置する複数の帯体を有し、前記足部材は、一端に一の前記帯体を載置する受面、他端に隣接する前記帯体に載架する蓋部を設け、前記帯体に対して抜出可能な長さであり、前記重量物吊上げ吊下げ手段は、搬送時には一の前記足部材の蓋部と他の前記足部材の受面間に前記帯体を挟持しながら連続する足部材が前記足部材送り手段上を移動し得るよう搬送台を維持し、設置時には前記足部材送り手段を支点として前記足部材を傾けて前記重量物を降下することを特徴とする請求項1記載の重量物の搬送設置装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−7392(P2012−7392A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144671(P2010−144671)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000200367)川田工業株式会社 (41)
【Fターム(参考)】