説明

重量物の水中切離し装置、吊枠、重量物の沈設装置並びに沈設工法

【課題】重量物の水中切離し装置の動作をより確実なものとする。
【解決手段】重量物14の吊り込みの際に、リリースフック62に加わる荷重は、フレーム60の荷重伝達系を構成する部材であるプレート60aを介して、リリースフック62から荷重受け部である留め環64へと伝えられる。よって、リリースフック62を開閉作動させる電動アクチュエータ36自体が、リリースフック62に加わる荷重を受けるものではない。従って、本装置が受けることが可能な荷重を、電動アクチュエータ36の耐用荷重により制限されること無く、フレーム60の荷重伝達系を構成する部材であるプレート60aの強度の如何によって、定めることが可能となる。又、フレーム60に設けられた、電動アクチュエータ36を覆うプロテクタ68により、外的圧力から電動アクチュエータ36を保護し、リリースフック62の確実な開閉作動を確保するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物の沈設のための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工漁礁を構成するための構造物等、重量物の沈設作業は、従来、起重機船のクレーンのワイヤロープに、いわゆるオートリリースフックを取付けて重量物を吊り込み、重量物を着底させることによりワイヤロープの荷重を抜き、オートリリースフックを自動開放して重量物の沈設を行う手法が広く用いられている。そして、重量物を設置目標地点へと正確に沈降させるべく、起重機船の位置をGPSで確認する試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。
又、上記従来の重量物の沈設工法は、比較的水深の浅い海域に重量物を設置する場合には適したものであるが、大水深の海域に大型の重量物を沈設する際には、起重機船から海底までの距離も遠く、かつ、海象、気象の影響もより大きく受けることとなる。そこで、大水深の海域における設置目標地点へと、正確に重量物を沈設させる技術も発明されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−189042号公報
【特許文献2】特開2010−229656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、大水深において重量物の水中切離し装置の動作が確実に実行されているか否かを確認することは困難であり、従来は、ワイヤロープを巻き上げ、重量物の水中切離し装置を水面近く又は水上へと引き上げることにより、最終的な確認を行うことが必要な場合もあった。又、重量物の水中切離し装置の対応荷重を増加させ、外的圧力に対しより強固なものとすることは、重量物の水中切離し装置の動作をより確実にする上でも、必要なことである。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、重量物の水中切離し装置の動作をより確実なものとして、重量物を、大水深の海域に正確かつ効率的に沈設させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)先端部にリリースフックが設けられ、基端部に荷重受け部が設けられたフレームと、前記リリースフックを開閉作動させる電動アクチュエータと、該電動アクチュエータの作動制御信号を受信する、超音波送受波器とを備え、前記電動アクチュエータは、前記フレームの、前記リリースフックと前記荷重受け部とを結ぶ荷重伝達系を構成する部材から除外される態様で、前記フレームに固定されている重量物の水中切離し装置(請求項1)。
本項に記載の重量物の水中切離し装置は、重量物の吊り込みの際に、リリースフックに加わる荷重は、フレームの荷重伝達系を構成する部材を介して、リリースフックから荷重受け部へと伝えられることとなり、リリースフックを開閉作動させる電動アクチュエータ自体が、リリースフックに加わる荷重を受けるものではない。従って、本装置が受けることが可能な荷重は、電動アクチュエータの耐用荷重により制限されること無く、フレームの荷重伝達系を構成する部材の強度の如何によって定められるものとなる。
【0007】
(2)上記(1)項において、前記リリースフックは、前記フレームの先端部に形成されたU字状開放部と、前記フレームに軸着され、U字状開放部を有して、その角度に応じて前記フレームの先端部に形成されたU字状開放部を開閉する可動部と、該可動部を、前記フレームの先端部に形成されたU字状開放部を閉じる位置に固定するストッパーとを備え、該ストッパーは、前記電動アクチュエータに軸着されたサブフックと、前記サブフックと噛合う位置にて前記可動部から突出するキーとを含み、前記サブフックが前記可動部のキーと噛合うことで前記可動部の回転が制限され、前記サブフックが前記電動アクチュエータの動作を受けて前記可動部のキーとの噛合いを開放することで、前記可動部が回転可能となるものである重量物の水中切離し装置(請求項2)。
本項に記載の重量物の水中切離し装置は、リリースフックが、フレームの先端部に形成されたU字状開放部と、フレームに軸着され、U字状開放部を有して、その角度に応じてフレームの先端部に形成されたU字状開放部を開閉する可動部とで構成され、双方のU字状解放部の位相変化によって、ワイヤロープ等吊り下げ対象物の保持と、開放とを確実に行うものである。又、ストッパーによって、リリースフックの可動部を、フレームの先端部に形成されたU字状開放部を閉じる位置に、確実に固定するものである。このストッパーは、電動アクチュエータに軸着されたサブフックと、このサブフックと噛合う位置にて可動部から突出するキーとを含み、サブフックが可動部のキーと噛合うことで可動部の回転が制限され、リリースフックによる吊り下げ対象物の保持が、確実になされる。又、サブフックが電動アクチュエータの動作を受けて可動部のキーとの噛合いを開放することで、可動部が回転可能なる。そして、可動部のU字状開放部にかけ回された吊り下げ対象物の荷重を受けて、可動部が回転することで、リリースフックからの吊り下げ対象物の開放が、確実になされるものである。
【0008】
(3)上記(2)項において、前記電動アクチュエータは、出没作動するサブフック固定ピンを備え、前記サブフックは、前記サブフック固定ピンと係合する凹部を有し、更に、前記電動アクチュエータには、前記サブフック固定ピンの、前記サブフックの凹部と完全係合する位置又は係合が完全に解除される位置にて、検知信号を出力するセンサを備える重量物の水中切離し装置(請求項3)。
本項に記載の重量物の水中切離し装置は、電動アクチュエータが、出没作動するサブフック固定ピンを備え、この固定ピンがサブフックの凹部と係合することで、リリースフックの可動部を、フレームの先端部に形成されたU字状開放部を閉じる位置に、確実に固定するものである。そして、電動アクチュエータに設けられたセンサから、サブフック固定ピンの、サブフックの凹部と完全係合する位置又は係合が完全に解除される位置にて、検知信号が出力されることで、サブフック固定ピンの位置を介して、リリースフックの開閉を正確に把握するものである。
【0009】
(4)上記(3)項において、前記センサは、前記サブフックの開センサと閉センサとを含む重量物の水中切離し装置(請求項4)。
本項に記載の重量物の水中切離し装置は、サブフックの開センサと閉センサとを含み、開センサの検知信号がON、かつ、閉センサの検知信号がOFFであることの双方を以って、サブフックの開状態を把握するものである。又、開センサの検知信号がOFF、かつ、閉センサの検知信号がONであることの双方を以って、サブフックの閉状態を把握する。すなわち、開センサ及び閉センサの双方の検知信号に基きサブフックの開閉状態を確実に把握するものである。
【0010】
(5)上記(1)から(4)項において、前記フレームには、前記電動アクチュエータを覆うプロテクタが設けられている重量物の水中切離し装置(請求項5)。
本項に記載の重量物の水中切離し装置は、フレームに設けられた、電動アクチュエータを覆うプロテクタにより、外的圧力から電動アクチュエータを保護し、リリースフックの確実な開閉作動を確保するものである。なお、プロテクタは、フレームと別体であっても良く、フレームの一部であっても良い。
【0011】
(6)上記(1)から(5)項において、前記電動アクチュエータは、電池残量確認手段を備える重量物の水中切離し装置(請求項6)。
本項に記載の重量物の水中切離し装置は、電動アクチュエータの電池残量確認手段により、重量物の水中切離し装置が確実に作動することを確認するものである。
【0012】
(7)上記(1)から(6)項において、前記フレームには、接地用ローラが設けられている重量物の水中切離し装置。
本項に記載の重量物の水中切離し装置は、フレームに設けられた接地用ローラによって、接地状態での移動を容易とし、本装置を、クレーンの吊り下げ用ワイヤロープその他の吊下げ手段にセットする際の、取り回し性を向上させるものである。
【0013】
(8)起重機船のクレーンにより重量物を吊り下げる際に用いられる吊枠であって、(1)から(6)項記載の重量物の水中切離し装置が吊下げられる複数のシャックルと、前記重量物の水中切離し装置が吊り下げられたシャックルとは別のシャックルに一端が吊り下げられ他端部が前記重量物の水中切離し装置のリリースフックに連結される玉掛け用ワイヤロープと、トランスポンダー発信器とを備える吊枠(請求項7)。
本項に記載の吊枠は、起重機船を用いて重量物を沈設する際に用いられるものであり、トランスポンダー発信器の信号によって当該吊枠に吊り込まれた重量物の位置を、沈設作業中、常時把握するものである。そして、重量構造部の設置目標地点の許容範囲内への着底を確認した後に、重量物の水中切離し装置のリリースフックを開放することで、重量物に玉掛けされたワイヤロープを解いて吊枠から開放し、重量物を海底に沈設させるものである。
【0014】
(9)上記(8)項において、前記重量物の水中切離し装置及び前記玉掛け用ワイヤロープを少なくとも四組備える吊枠。
本項に記載の吊枠は、少なくとも四組のワイヤロープを重量物に玉掛けすることにより、ワイヤロープ一本あたりの長さを短くして、重量物を安定して吊り込むと共に、ワイヤロープの開放時にワイヤロープの吊筋への引っ掛かりの発生を防止するものである。そして、ワイヤロープの開放時には、各重量物の水中切離し装置のリリースフックを順番に開放して、重量物に玉掛けされたワイヤロープを一本づつ解いて吊枠から順次開放し、重量物を海底に沈降させるものである。
【0015】
(10)上記(8)、(9)項記載の吊枠と共に、起重機船に設置される、トランスポンダー受信器と、前記重量物の水中切離し装置の操作部と、少なくとも起重機船のクレーンブームトップに設置されるGPSとを含む重量物の沈設装置(請求項8)。
本項に記載の重量物の沈設装置は、起重機船を用いて重量物を沈設する際に用いられるものであり、請求項1記載の吊枠に重量物を吊り込み、GPSによって少なくとも起重機船のクレーンブームトップの位置を把握して、クレーンブームトップの位置を重量物の設置目標地点上に移動させて重量物の沈降を開始する。そして、トランスポンダー受信器によって、トランスポンダー発信器の信号を受信し、吊枠に吊り込まれた重量物の位置を、沈設作業中、常時把握するものである。そして、重量構造部の設置目標地点の許容範囲内への着底を確認した後に、重量物の水中切離し装置の操作部によって、吊枠の重量物の水中切離し装置のリリースフックを開放することで、重量物に玉掛けされたワイヤロープを解いて吊枠から開放し、重量物を海底に沈設させるものである。
【0016】
(11)上記(10)項記載の重量構造部の沈設装置を用いた沈設工法であって、前記GPSを用いて起重機船を沈降目標位置近傍に位置決めし、前記吊枠に重量物を吊り込み、前記クレーンブームトップの位置を重量物の設置目標地点上に移動させて重量物の沈降を開始し、沈設完了までの間、前記トランスポンダー受信器によって前記トランスポンダー発信器の位置を把握し、重量構造部の設置目標地点の許容範囲内での着底が確認された後、前記超音波式切離し装置のリリースフックを開放する重量物の沈設工法(請求項9)。
本項に記載の重量物の沈設工法は、GPSを用いて起重機船を沈降目標位置近傍に位置決めし、吊枠に重量物を安定的に吊り込み、GPSによって少なくとも起重機船のクレーンブームトップの位置を把握して、クレーンブームトップの位置を重量物の設置目標地点上に移動させて重量物の沈降を開始する。そして、トランスポンダー受信器によって、トランスポンダー発信器の信号を受信し、吊枠に吊り込まれた重量物の位置を、沈設作業中、常時把握する。そして、重量構造部の設置目標地点の許容範囲内への着底を確認した後に、重量物の水中切離し装置の操作部によって、吊枠の重量物の水中切離し装置のリリースフックを開放することで、重量物に玉掛けされたワイヤロープを解いて吊枠から開放し、海底の設置目標地点の許容範囲内に重量物を沈設するものである。
【0017】
(12)上記(11)項記載の重量構造部の沈設工法であって、重量構造部の設置目標地点の許容範囲内での着底が確認された後、一旦重量物を水底から離間させ、前記超音波式切離し装置のリリースフックを開放する重量物の沈設工法(請求項10)。
本項に記載の重量物の沈設工法は、重量構造部の設置目標地点の許容範囲内での着底が確認された後、一旦重量物を水底から離間させるよう吊上げることで、玉掛け用ワイヤロープに荷重が掛かり、タルミのない状態とする。この状態で、超音波式切離し装置のリリースフックを開放することで、玉掛け用ワイヤロープのリリースを確実に行い、海底の設置目標地点の許容範囲内に重量物を沈設するものである。なお、一旦重量物を水底から離間させる際の離間高さは、当然に、重量物が着底時に損傷しない程度の高さとする。
【0018】
(13)上記(11)、(12)項において、前記重量構造部の着底が確認された時点で、着底位置が設置目標地点の許容範囲を外れている場合には、重量物を必要な位置まで引き上げて前記クレーンブームトップの位置を修正し、再度、重量物の沈降を開始する重量物の沈設工法(請求項11)。
本項に記載の重量物の沈設工法は、重量構造部の着底が確認された時点で、着底位置が設置目標地点の許容範囲を外れている場合には、重量物を必要な位置まで引き上げてクレーンブームトップの位置を修正することにより、吊枠に吊り込まれた重量物の位置を適切に補正する。そして、再度、重量物の沈降を開始することにより、重量物を、海底の設置目標地点の許容範囲内に正確に沈設するものである。
【0019】
(14)上記(11)から(13)項において、前記吊枠に重量物を吊り込む前段階で、前記重量物の水中切離し装置の、前記リリースフックの開閉確認を行う重量物の沈設工法(請求項12)。
本項に記載の重量物の沈設工法は、吊枠に重量物を吊り込む前段階で、リリースフックの開閉確認を行うことで、玉掛け用ワイヤロープのリリースを確実に行い、海底の設置目標地点の許容範囲内に重量物を沈設するものである。
【0020】
(15)上記(11)から(14)項において、前記吊枠に重量物を吊り込む前段階で、前記重量物の水中切離し装置の、前記電動アクチュエータの電池残量確認を行う重量物の沈設工法(請求項13)。
本項に記載の重量物の沈設工法は、吊枠に重量物を吊り込む前段階で、電動アクチュエータの電池残量確認を行うことで、重量物の水中切離し装置が確実に作動することを確認した上で、重量物の沈設作業を進め、玉掛け用ワイヤロープのリリースを確実に行い、海底の設置目標地点の許容範囲内に重量物を沈設するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明はこのように構成したので、重量物の水中切離し装置の動作をより確実なものとして、重量物を、大水深の海域に正確かつ効率的に沈設させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る、重量物の水中切離し装置の単体図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は下面図、(e)は(b)のA−A断面図である。
【図2】図1に示される重量物の水中切離し装置の、リリースフックの可動部の単体図であり、(a)は正面図(部分断面図)、(b)は斜視図である。
【図3】図2に示されたリリースフックの可動部に係合するサブフックの単体図であり、(a)は側面図、(b)は正面図(部分断面図)である。
【図4】図1に示される重量物の水中切離し装置のフックの、サブフックの固定ピン及び開センサの動作を示す断面図であり、(a)はロック閉状態を、(b)はロック開状態を示すものである。
【図5】図4の反対方向から見た断面図であり、サブフックの固定ピン及び閉センサの動作を示すものであり、(a)はロック閉状態を、(b)はロック開状態を示すものである。
【図6】図1に示される重量物の水中切離し装置を備える吊枠、及び、重量物の沈設装置を示すものであり(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図7】図6に示される吊枠の単体図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の矢視A図、(c)は(a)の矢視B図である。
【図8】図6に示される吊枠に重量物が吊り込まれた状態を示す斜視図である。
【図9】図6に示される重量構造部の沈設装置を用いた沈設工法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態に係る重量物の沈設装置10は、図6に示されるように、起重機船12を用いて重量物14を水底に沈設する際に用いられるものであり、特に大水深の海域への沈設作業に適したものである。具体的には、図示の重量物14は、20t〜50t程度の魚礁ブロックであり、水深300m前後の海域を設置の対象としている。そして、重量物の沈設装置10は、起重機船12のクレーン16に吊り下げられる吊枠18と、重量物の水中切離し装置22を含むものである。この吊枠18は、図7、図8にも示されるように、複数のシャックル20を備え、図1に示される重量物の水中切離し装置22が、シャックル20に吊り下げられている。又、重量物の水中切離し装置22が吊下げられていない別のシャックル20に一端が吊り下げられ他端部が重量物の水中切離し装置22のリリースフックに連結される玉掛け用ワイヤロープ24と、トランスポンダー発信器26(図6、図8)とを備えるものである。
【0024】
吊枠18は、重量物14の重さに耐え得るだけの強度と、重量物14を安定して吊り込むための形状および大きさを有しており、図7、図8に示される例では、円筒鋼管を日の字状に組み合わせることで、上記要請を満たすように構成されている。また、起重機船12の甲板への搭載時の安定性を確保するために、複数の脚28を備えている。なお、図7中符号30で示される部分は、トランスポンダー発信器26の取付部である。また、吊枠18の下面に設けられたシャックル20Aは、重量物の水中切離し装置22及び玉掛け用ワイヤロープ24を掛けるためのものであり、図示の例では、重量物の水中切離し装置22及び玉掛け用ワイヤロープ24を四組吊り下げるために、八個設けられている。一方、吊枠の上面に設けられたシャックル20Bは、クレーン16の吊り下げ用ワイヤロープ32を掛けるためのものであり、図示の例では、吊枠18の四隅近傍に四個設けられている。
【0025】
重量物の水中切離し装置22は、図1に示されるように、フレーム60を備えている。図示のフレーム60は、鋼製の二枚のプレート60aの間に複数のカラー60bを配置し、かつ、各カラー60bに挿通されるようにして、複数のボルト60cでプレート60a同士を固定したものである。又、フレーム60には、取り扱い用のハンドル60dが設けられている。更に、二枚のプレート60aに挟まれるようにして、接地用ローラ70が設けられている。図示の接地用ローラ70には、ウレタンローラが用いられている。
又、フレーム60の先端部にはリリースフック62が、基端部には吊枠18のシャックル20に吊り下げられるための荷重受け部として、留め環64が設けられている。リリースフック62及び留め環64は、各々、フレーム60のプレート60aに対して、軸62a、64aによって軸着されており、プレート60aが、フレーム60の、リリースフック62と留め環64とを結ぶ、荷重伝達系を構成する部材となっている。
【0026】
又、フレーム60のプレート60aには、リリースフック62を開閉作動させる電動アクチュエータ36が固定されている。図示の電動アクチュエータ36は、フレーム60の、リリースフック62と留め環64とを結ぶ線と平行に配置され、ステー66を介してフレーム60に固定されている。よって、電動アクチュエータ36は、リリースフック62と荷重受け部64とを結ぶ荷重伝達系を構成する部材であるプレート60aに対し、加重負担の観点からは除外される態様となっている。この電動アクチュエータ36には、作動制御信号を受信して伸縮作動制御するための、超音波送受波器34を備えている。又、電動アクチュエータ36は、電池残量確認手段として、次作業を完了することが出来ない状態まで電池残量が減少した時点で点灯する、LED等の表示灯36aを備えている。
【0027】
更に、電動アクチュエータ36を覆うプロテクタ68が、フレーム60のプレート60aに固定されている。図示の例では、プロテクタ68は、棒材を枠状に組合せて構成されたものであるが、例えば、プレート60aを拡大し、電動アクチュエータ36を二枚のプレート60a自体で挟持する構成として、プレート60aをプロテクタとしても用いることも可能である。
【0028】
リリースフック62は、フレーム60のプレート60aの先端部に形成された、U字状開放部60e(図1(b)にのみ示す。)と、可動部72(図2参照)とを有している。可動部72は、プレート60aに固定された軸62aに対し回転自在に軸着され、U字状開放部72aを有するものである。そして、軸62aを中心として回転することにより、フレーム60に対する角度が変更され、その角度に応じて、フレーム60のプレート60aの先端部に形成されたU字状開放部60eを開閉するものであり、図1(b)には、実線で閉状態が、二点差線で開状態が示されている。
【0029】
又、リリースフック62には、可動部72を、フレーム60のプレート60aの先端部に形成されたU字状開放部60eを閉じる位置に固定する、ストッパー74を備えている。ストッパー74は、主に図1(b)に示されるように、電動アクチュエータ36に軸着されたサブフック76(図3参照)と、可動部72からサブフック76と噛合う位置にて突出するキー72b(図2参照)とを含んでいる。又、図3に示されるように、サブフック76には、可動部72のキー72bと噛合うU字状開放部72aを備えている。なお、図2において、符号72cは、プレート60aに固定された軸62aに対する挿通穴を、符号72dは、可動部72を閉状態により強固に位置決めするための、セット棒78(図1(b)にのみ、点線で示す。)を差し込むための穴である。
そして、ストッパー74は、図1(b)に実線で示されるように、サブフック76(のU字状開放部76a)が、可動部72のキー72bと噛合うことで可動部72の回転が制限される。又図1(b)に二点差線で示されるように、サブフック76が電動アクチュエータ36の動作を受けて可動部72のキー72bとの噛合いを開放することで、可動部72が回転可能となる。
【0030】
又、電動アクチュエータ36には、図4、図5に示されるように、その先端部から出没作動するサブフック固定ピン80を備えている。そして、サブフック76には、図3に示されるように、サブフック固定ピン80と係合する凹部76bを有している。なお、図3中の符号76cは、サブフック76を電動アクチュエータ36の先端部に軸着するための軸74aの挿通穴である。そして、図4、図5に示されるように、電動アクチュエータ36の先端部には、U字状開放部82aを有するブラケット82が設けられており、このブラケットに対し軸74aを介して、サブブック76が軸着されているものである。
更に、図4に示されるように、電動アクチュエータ36には、サブフック固定ピン80の、サブフック76の凹部76aとの係合が、完全に解除される位置(図4(b)、図5(b)参照)にて、検知信号を出力する開センサ84を備えている。又、図5に示されるように、サブフック固定ピン80の、サブフック76の凹部76aとが完全係合する位置(図4(a)、図5(a)参照)にて、検知信号を出力する閉センサ86を備えている。
【0031】
図示の例では、電動アクチュエータ36の内部には、固定ブロック88と、サブフック固定ピン80が固定された可動ブロック90とが設けられている。そして、図4(b)に示されるように、サブフック固定ピン80が、電動アクチュエータ36のエンドキャップ92のガイド穴92b内に完全に没入し、サブフック76の凹部76aに対するサブフック固定ピン80の係合が完全に解除される位置へと、可動ブロック90が上昇したとき、固定ブロック88に固定された開センサ84の接触子84a(図4(a)参照)が、可動ブロック90に当接する。そして、開センサ84は、ストッパー74のロック開の確認信号を出力するものである。
【0032】
一方、図5(a)に示されるように、サブフック固定ピン80が、電動アクチュエータ36のエンドキャップ92のガイド穴92bから突出し、サブフック76の凹部76aに対しサブフック固定ピン80が完全に係合する位置へと、可動ブロック90が下降したとき、可動ブロック90に固定された閉センサ86の接触子86a(図5(b)参照)が、エンドキャップ90に形成された検知溝92aの底面に当接する。そして、閉センサ86は、ストッパー74のロック閉の確認信号を出力するものである。
なお、図4、図5の符号84b、86bは、各開センサ84、86の検知信号を、超音波送受波器34へと伝達するための信号線である。
【0033】
そして、図1(b)に実線で示されるように、フレーム60のプレート60aの先端部に形成されたU字状開放部60eに対し、可動部72のU字状開放部72aが交差するように可動部72を位置決めして、ストッパー74を構成する可動部72のキー72bを、サブフック76のU字状開放部72aに噛合わせることで、フレーム60のプレート60aの先端部に形成されたU字状開放部60eが閉じられ、玉掛け用ワイヤロープ24のシンブル24aは、フレーム60のプレート60aの先端部及び可動部72の双方によって係止される。一方、図1の状態から電動アクチュエータ36を作動させ、ストッパー74をロック開状態とすることで、軸74aを中心として図1(a)の反時計回りにサブフック76を回転させ、可動部72のキー72bとサブフック76のU字状開放部76aとの噛合いを解除すると、可動部72は玉掛け用ワイヤロープ24のシンブル24aからの荷重を受けて、可動部72は軸62aを中心として図1(a)の時計回りに回転し、フレーム60のプレート60aの先端部に形成されたU字状開放部60eが開放される。よって、シンブル24aはプレート60aの先端部に形成されたU字状開放部60eから下方へとすり抜けるようにして、落下することとなる。
【0034】
又、本発明の実施の形態に係る重量物の沈設装置10は、図6に示されるように、起重機船12に設置されるトランスポンダー受信器48と、重量物の水中切離し装置22の操作部50と、GPS(DGPS)52とを含むものである。重量物の水中切離し装置22の操作部50は、計測室54内に設置されている。GPS52は、図示の例では、主として起重機船12の位置を把握するためのGPS52A、52Bと、主としてクレーンブームトップに設置されるGPS52Cの三つが用いられている。又、詳しい説明は省略するが、計測室54には、GPS52による位置把握システムも設置されている。
なお、図6中符号56で示される部分は、クレーン16の操作室である。又、符号58で示される部分は、クレーン荷重を把握するための歪ゲージであり、クレーン16のブームトップに設置されるGPS52Cと併せて、クレーンブームトップの位置が正確に把握されるものである。
【0035】
続いて、図9を参照しながら、重量物の沈設装置10を用いた沈設工法について説明する。なお、図9中S10は港での作業を、S30は重量物の沈設海域での作業を表している。
(S10)港にて、起重機船12に重量物14である魚礁ブロックを積み込む。又、必要に応じ、重量物の水中切離し装置22の、リリースフック62の開閉確認等の点検を行う。
(S200)曳舟によって起重機船12を魚礁ブロックの沈設海域へと曳航する。
(S310)沈設海域に起重機船12を係留する。
(S312)GPS52を用い、起重機船12の船体位置決めを正確に行う。
(S314)起重機船12の甲板上で、吊枠作業(吊枠18のクレーン16への吊り下げ、重量物の水中切離し装置22のセット等)を行う。又、この時点で、重量物の水中切離し装置22の、超音波送受波器34の送受信の確認、各開センサ84、86の検知確認等のアンサーチェックや、リリースフック62の開閉確認、ストッパー74のロック開閉確認等を行う。
(S316)漁礁ブロックに玉掛け用ワイヤロープを玉掛けし、吊枠18に吊り込む。
(S318)GPS52Cによって得られる位置データを参照しながら、起重機船12の移動、クレーン16の旋回、起状を行い、クレーン16のブームトップの座標を目標座標にセットする。
(S320)クレーン16の吊り下げ用ワイヤロープ32を繰出し、魚礁ブロックの沈設を開始する。この際、吊荷重の変化を歪ゲージ58で把握する。又、吊り下げ用ワイヤロープ32の繰出し量、繰出し速度や、トランスボンダー発信器26の信号をトランスボンダー受信機48で受けることにより、吊枠18の水深、水中位置、沈降速度を、常時把握する。
(S322)歪ゲージ58による吊り加重の変化や音響測定から、魚礁ブロックの着底を判断する。
【0036】
(S324)魚礁ブロックの着底が確認された時点で、着底位置が設置座標の許容範囲を外れているか否かを、トランスボンダー発信器26の信号をトランスボンダー受信機48で受けることにより把握する。ここで、着底位置が設置座標の許容範囲を外れている場合には、以下のS325へと移行する。
(S325)クレーン16を操作して、少なくとも吊枠18が目視可能な位置まで、吊枠18を上昇させ、S318に戻る。
(S326)上記S324において、魚礁ブロックの着底位置が設置座標の許容範囲にあることが確認された場合は、クレーン16を操作して吊枠18を微上昇させ(例えば1m程度上昇)、一旦重量物を水底GL(図6)から離間させる。
(S328)重量物の水中切離し装置22を作動させ、リリースフック62を開放し、魚礁ブロックに玉掛けされたワイヤロープ24を解いて吊枠18から開放する。この際、四つの重量物の水中切離し装置22のリリースフック62を順番に開放し、漁礁ブロックに玉掛けされたワイヤロープ24を一本づつ解いて吊枠18から順次開放し、海底GLに沈設させる。
(S330)クレーン16を操作して吊枠18を上昇させ、起重機船12の甲板に戻す。
(S332)最終の魚礁ブロックの沈設作業が完了している場合にはS210へと移行し、曳舟によって起重機船12を港へと曳航する。完了していない場合には、S333へと移行する。
(S333)重量物の水中切離し装置22の、電動アクチュエータ36の電池残量確認を行う。電池残量確認作業は、起重機船12の甲板上で、電動アクチュエータ36の表示灯36aの点灯の有無を確認することにより、行うことができる。表示灯36aが点灯していない場合には、S334へと移行する。一方、表示灯36aが点灯している場合(この時点で、次の作業を行うにあたり電池残量が不足している場合)には、S210へと移行し、曳舟によって起重機船12を港へと曳航する。
(S334)次の魚礁ブロックの沈設に適した位置へと、起重機船12の転船作業を行い、上記S312以降の作業を繰り返す。
(S220)曳航中に再度電池残量を確認し、電池残量が不足している場合には、電池交換作業と交換後の作動確認を行う(S230)。電池残量が不足していない場合には、S10へと復帰する。なお、S230の電池残量確認作業は、S10にて実施することとしても良い。
【0037】
さて、上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。まず、発明の実施の形態に係る、重量物の水中切離し装置22は、重量物14の吊り込みの際に、リリースフック62に加わる荷重は、フレーム60の荷重伝達系を構成する部材であるプレート60aを介して、リリースフック62から荷重受け部である留め環64へと伝えられる。よって、リリースフック62を開閉作動させる電動アクチュエータ36自体が、リリースフック62に加わる荷重を受けるものではない。従って、本装置が受けることが可能な荷重を、電動アクチュエータ36の耐用荷重により制限されること無く、フレーム60の荷重伝達系を構成する部材であるプレート60aの強度の如何によって、定めることが可能となる。そして、重量物の水中切離し装置22の対応荷重を増加させ、その動作をより確実にすることができる。
【0038】
又、リリースフック62が、フレーム60のプレート60aの先端部に形成されたU字状開放部60eと、フレーム60に軸着され、その角度に応じてフレーム60の先端部に形成されたU字状開放部60eを開閉する、U字状開放部72aを有する可動部72とで構成され、双方のU字状解放部60e、72aの位相変化によって、ワイヤロープ24等の吊り下げ対象物の保持と、開放とを確実に行うことができる。又、ストッパー74によって、リリースフック62の可動部72を、フレーム60の先端部に形成されたU字状開放部60eを閉じる位置に、確実に固定することができる。このストッパー74は、電動アクチュエータ36に軸着されたサブフック76と、このサブフック76と噛合う位置にて可動部から突出するキー72bとを含み、サブフック76が可動部72のキー72bと噛合うことで、可動部72の回転が制限され、リリースフック62によるワイヤロープ24等の吊り下げ対象物の保持が確実になされるものとなる。又、サブフック76が電動アクチュエータ36の動作を受けて可動部72のキー72bとの噛合いを開放することで、可動部72が回転可能なる。そして、可動部72のU字状開放部72aに掛け回された吊り下げ対象物の荷重を受けて、可動部72が回転することで、リリースフック62からの吊り下げ対象物の開放が、確実になされるものである。
【0039】
又、電動アクチュエータ36は、その先端から出没作動するサブフック固定ピン80を備え、このサブフック固定ピン80がサブフック76の凹部76bと係合することで、リリースフック62の可動部72を、フレーム60の先端部に形成されたU字状開放部60eを閉じる位置に、確実に固定することができる。そして、電動アクチュエータ36に設けられた開センサ84、86から、サブフック固定ピン80の、サブフック76の凹部76bと完全係合する位置(図4(a)、図5(a))又は係合が完全に解除される位置(図4(b)、図5(b))にて、検知信号が出力されることで、サブフック固定ピン80の位置を介して、リリースフック62の開閉を正確に把握することができる。
【0040】
更に、サブフック76の開センサ84と閉センサ86とを含み、開センサ84の検知信号がON、かつ、閉センサ86の検知信号がOFFであることの双方を以って、サブフック76の開状態を把握する。又、開センサ84の検知信号がOFF、かつ、閉センサ86の検知信号がONであることの双方を以って、サブフック76の閉状態を把握する。従って、開センサ84及び閉センサ86の双方の検知信号に基き、サブフック76の開閉状態、すなわち、リリースフックの開閉を確実に把握することが可能となる。
なお、1つのセンサによっても、サブフック76の開閉状態を確実に把握できるものである場合には、何れか一方のセンサのみ用いることとしても良い。
【0041】
又、フレーム60に設けられた、電動アクチュエータ36を覆うプロテクタ68により、外的圧力から電動アクチュエータ36を保護し、リリースフック62の確実な開閉作動を確保するものである。
更に、電動アクチュエータ36の電池残量確認手段36aにより、重量物の水中切離し装置22が確実に作動することを確認することが可能となる。
加えて、フレーム60に設けられた接地用ローラ70によって、重量物の水中切離し装置22の接地状態での移動を容易とし、重量物の水中切離し装置22を、クレーン16の吊り下げ用ワイヤロープ32その他の吊下げ手段にセットする際の、取り回し性を向上させることができる。
【0042】
又、発明の実施の形態に係る吊枠18を用いることにより、トランスポンダー発信器26の信号によって吊枠18に吊り込まれた重量物14の位置を、沈設作業中、常時把握することができる。そして、重量構造部14の設置目標地点の許容範囲内への着底を確認した後に、重量物の水中切離し装置22のリリースフック62を開放することで、重量物14に玉掛けされたワイヤロープ24を解いて吊枠18から開放し、重量物14を海底に沈設させることができる。
【0043】
しかも、少なくとも四組のワイヤロープ24を重量物14に玉掛けすることにより、ワイヤロープ24一本あたりの長さを短くして、重量物14を安定して吊り込むと共に、ワイヤロープ24の開放時にワイヤロープ24の吊筋への引っ掛かりの発生を防止することができる。そして、ワイヤロープ24の開放時には、各重量物の水中切離し装置22のリリースフック62を順番に開放して、重量物14に玉掛けされたワイヤロープ24を一本づつ解いて吊枠18から順次開放し、重量物14を海底に沈降させることができる。
なお、重量物の重さが比較的軽い場合や、比較的水深の浅い海域に重量物を設置する場合には、重量物の水中切離し装置22を、吊枠18と組合せることなく、単体で用いて、重量物の沈設作業を行うことも可能である。
【0044】
又、本発明の実施の形態に係る重量物の沈設装置10は、起重機船12を用いて重量物14を沈設する際に用いられるものであり、吊枠18に重量物14を吊り込み、GPS52によって少なくとも起重機船のクレーン16のブームトップの位置を把握して、クレーン16のブームトップの位置を重量物14の設置目標地点に移動させて(S318)、重量物14の沈降を開始する(S320)。そして、トランスポンダー受信器48によって、トランスポンダー発信器26の信号を受信し、吊枠18に吊り込まれた重量物14の位置を、沈設作業中、常時把握するものである。そして、重量構造部14の設置目標地点の許容範囲内への着底を確認した後に(S322)、重量物の水中切離し装置22の操作部50によって、吊枠18の重量物の水中切離し装置22のリリースフック62を開放することで、重量物14に玉掛けされたワイヤロープ24を解いて吊枠18から開放し、重量物14を海底GLに沈設させることができる。
【0045】
又、重量物の沈設作業時に、重量構造部14の設置目標地点の許容範囲内での着底が確認された後(S322)、一旦重量物を水底から離間させるよう吊上げることで(S330)、玉掛け用ワイヤロープ24に荷重が掛かりタルミのない状態とする。この状態で、超音波式切離し装置22のリリースフック62を開放することで、玉掛け用ワイヤロープ24のリリースを確実に行い、海底GLの設置目標地点の許容範囲内に重量物14を沈設することができる。
【0046】
又、重量構造部14の着底が確認された時点で、着底位置が設置目標地点の許容範囲を外れている場合には(S324)、重量物14を必要な位置まで引き上げて(S325)クレーンブームトップの位置を修正することにより(S318)、吊枠に吊り込まれた重量物の位置を補正する。そして、再度、重量物の沈降を開始することにより(S320〜)、重量物14を、海底GLの設置目標地点の許容範囲内に正確に沈設することができる。
【0047】
しかも、吊枠18に重量物14を吊り込む前段階(S312)で、リリースフック62の開閉確認を行うことで、玉掛け用ワイヤロープ24のリリースを確実に行い、海底の設置目標地点の許容範囲内に重量物14を沈設することが可能となる。
又、重量物14を沈設完了後、再度吊枠18に重量物14を吊り込む前段階(S220、S333)で、電動アクチュエータ36の電池残量確認を行うことで、重量物の水中切離し装置22が確実に作動することを確認した上で、重量物14の沈設作業を進め、玉掛け用ワイヤロープ24のリリースを確実に行い、海底の設置目標地点の許容範囲内に重量物14を沈設することが可能となる。
【0048】
なお、本発明者らの効果確認試験によれば、重量物14の設置目標地点の許容範囲を±30mに設定し、89個の魚礁ブロック(重量20t〜43t)を、水深約270mの海底に沈設させたところ、86個については再浮上することなく沈設することができ、3個については、再浮上の後の沈設作業で所定の精度を満足し、沈設を完了することが可能であった。
【0049】
10:重量物の沈設装置、12:起重機船、14:重量物、16:クレーン、18:吊枠、 20、20A、20B:シャックル、22:重量物の水中切離し装置、22a:リリースフック、24:玉掛け用ワイヤロープ、26:トランスポンダー発信器、32:吊り下げ用ワイヤロープ、34:超音波送受波器、36:電動アクチュエータ、36a:表示灯、48:トランスポンダー受信器、 52、52A、52B、52C:GPS、60:フレーム、60a:プレート、60e:U字状開放部、62:リリースフック、64:留め環、68:プロテクタ、70:接地用ローラ、72:可動部、72a:U字状開放部、74:ストッパー、76:サブフック、76b:凹部、80:サブフック固定ピン、84:開センサ、86:閉センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にリリースフックが設けられ、基端部に荷重受け部が設けられたフレームと、前記リリースフックを開閉作動させる電動アクチュエータと、該電動アクチュエータの作動制御信号を受信する、超音波送受波器とを備え、
前記電動アクチュエータは、前記フレームの、前記リリースフックと前記荷重受け部とを結ぶ荷重伝達系を構成する部材から除外される態様で、前記フレームに固定されていることを特徴とする重量物の水中切離し装置。
【請求項2】
前記リリースフックは、前記フレームの先端部に形成されたU字状開放部と、前記フレームに軸着され、U字状開放部を有して、その角度に応じて前記フレームの先端部に形成されたU字状開放部を開閉する可動部と、該可動部を、前記フレームの先端部に形成されたU字状開放部を閉じる位置に固定するストッパーとを備え、
該ストッパーは、前記電動アクチュエータに軸着されたサブフックと、前記サブフックと噛合う位置にて前記可動部から突出するキーとを含み、前記サブフックが前記可動部のキーと噛合うことで前記可動部の回転が制限され、前記サブフックが前記電動アクチュエータの動作を受けて前記可動部のキーとの噛合いを開放することで、前記可動部が回転可能となるものであることを特徴とする請求項1記載の重量物の水中切離し装置。
【請求項3】
前記電動アクチュエータは、出没作動するサブフック固定ピンを備え、前記サブフックは、前記サブフック固定ピンと係合する凹部を有し、更に、前記電動アクチュエータには、前記サブフック固定ピンの、前記サブフックの凹部と完全係合する位置又は係合が完全に解除される位置にて、検知信号を出力するセンサを備えることを特徴とする請求項2記載の重量物の水中切離し装置。
【請求項4】
前記センサは、前記サブフックの開センサと閉センサとを含むことを特徴とする請求項3記載の重量物の水中切離し装置。
【請求項5】
前記フレームには、前記電動アクチュエータを覆うプロテクタが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の重量物の水中切離し装置。
【請求項6】
前記電動アクチュエータは、電池残量確認手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の重量物の水中切離し装置。
【請求項7】
起重機船のクレーンにより重量物を吊り下げる際に用いられる吊枠であって、請求項1から5のいずれか1項記載の重量物の水中切離し装置が吊下げられる複数のシャックルと、前記重量物の水中切離し装置が吊り下げられたシャックルとは別のシャックルに一端が吊り下げられ他端部が前記重量物の水中切離し装置のリリースフックに連結される玉掛け用ワイヤロープと、トランスポンダー発信器とを備えることを特徴とする吊枠。
【請求項8】
請求項7記載の吊枠と共に、起重機船に設置される、トランスポンダー受信器と、前記重量物の水中切離し装置の操作部と、少なくとも起重機船のクレーンブームトップに設置されるGPSとを含むことを特徴とする重量物の沈設装置。
【請求項9】
請求項8記載の重量構造部の沈設装置を用いた沈設工法であって、前記GPSを用いて起重機船を沈降目標位置近傍に位置決めし、前記吊枠に重量物を吊り込み、前記クレーンブームトップの位置を重量物の設置目標地点上に移動させて重量物の沈降を開始し、沈設完了までの間、前記トランスポンダー受信器によって前記トランスポンダー発信器の位置を把握し、重量構造部の設置目標地点の許容範囲内での着底が確認された後、前記超音波式切離し装置のリリースフックを開放することを特徴とする重量物の沈設工法。
【請求項10】
重量構造部の設置目標地点の許容範囲内での着底が確認された後、一旦重量物を水底から離間させ、前記超音波式切離し装置のリリースフックを開放することを特徴とする請求項9記載の重量物の沈設工法。
【請求項11】
前記重量構造部の着底が確認された時点で、着定位置が設置目標地点の許容範囲を外れている場合には、重量物を必要な位置まで引き上げて前記クレーンブームトップの位置を修正し、再度、重量物の沈降を開始することを特徴とする請求項9又は10記載の重量物の沈設工法。
【請求項12】
前記吊枠に重量物を吊り込む前段階で、前記重量物の水中切離し装置の、前記リリースフックの開閉確認を行うことを特徴とする請求項9から11のいずれか1項記載の重量物の沈設工法。
【請求項13】
前記吊枠に重量物を吊り込む前段階で、前記重量物の水中切離し装置の、前記電動アクチュエータの電池残量確認を行うことを特徴とする請求項9から12のいずれか1項記載の重量物の沈設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−241393(P2012−241393A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111478(P2011−111478)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【Fターム(参考)】