説明

重量物支持ケーブルの張力検出装置

【課題】重量物支持ケーブルの張力を長期間高精度に計測し、管理する装置を提供する。
【解決手段】主塔2に連結されて重量物を支持する重量物支持ケーブル4の張力変動を検出する装置であって、主塔側に固定されたアンカーパイプ11と、重量物支持ケーブル4の端部に取り付けられてアンカーパイプ11に貫通されたソケット12との間に配置されて、アンカーパイプ11及びソケット12から受ける圧力を検出する油圧ロードセル14を有し、油圧ロードセル14は、作動油が充填されてピストンが突出した状態で摺動可能に嵌め込まれた複数の油圧シリンダと、各油圧シリンダに連通されて各油圧シリンダに充填された作動油の圧力を平均化する連通路と、連通路により平均化された作動油の圧力を検出する圧力検出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の橋桁、建造物の重量構造物等を吊り下げたケーブルに作用する荷重変動などを長期間計測し、管理するための重量物支持ケーブルの張力検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、斜張橋その他の吊橋は、主塔に連結された橋梁支持ケーブルにより橋桁を直接的に又は間接的に保持している。このような吊橋では、大型車両などの通行により橋梁支持ケーブルに大きな張力が作用するため、特許文献1に示すように、吊橋の架設後に、ロードセルや歪ゲージなどの電気式歪計測器を用いて橋梁支持ケーブルの張力を計測する技術が考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−297777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、橋梁支持ケーブルの一端部の主塔への連結は、ケーブル引き込み用ジャッキなどを用いて、主塔に埋設されたアンカーパイプから橋梁支持ケーブルの先端に固定され、多数本のケーブルを束ねて固着したソケットをケーブル引き込み用ジャッキなどで引っ張り出し、その後、アンカーパイプとソケットとの間に二つ割りしたセンターホール型のベアリングプレートを嵌め込むことにより実現している。また、橋梁支持ケーブルの他端部の橋桁への連結は、ケーブル引き込み用ジャッキなどを用いて、橋桁に埋設されたアンカーパイプから橋梁支持ケーブルのソケットを引き込み、所定の張力を付与し、アンカーパイプとソケットとの間に二つ割りしたセンターホール型のベアリングプレートを嵌め込むことにより実現している。
【0005】
このため、電気式歪計測器を用いて橋梁支持ケーブルの張力を計測する場合は、上端又は下端のアンカーパイプとソケットとの間に、橋梁支持ケーブルが貫通するセンターホール型の電気式歪計測器を嵌め込み、アンカーパイプとソケットとの間の圧力を計測することで、橋梁支持ケーブルの張力を計測している。
【0006】
ところで、吊橋によっては、橋梁支持ケーブルに作用する張力が13MNを超える場合がある。しかしながら、このような張力を計測可能とする二つ割りの電気式歪計測器の精度を確保し製造するのは難しく、製造できたとしても極めて高価となってしまう。
【0007】
また、斜張橋のように斜めに張られた橋梁支持ケーブルの上端部には、鉛直方向下向きの大きな荷重が作用するため、主塔と橋梁支持ケーブルとの連結部では、回転モーメントが発生する。このため、橋梁支持ケーブルよりも鉛直方向上方では、アンカーパイプとソケットとの間の圧力が高くなり、橋梁支持ケーブルよりも鉛直方向下方では、アンカーパイプとソケットとの間の圧力が低くなる。しかも、橋梁支持ケーブルの撓み量が大きくなると、主塔に対する橋梁支持ケーブルの傾動角度が大きくなるため、橋梁支持ケーブルよりも鉛直方向下方では、アンカーパイプとソケットとの間に隙間が生じて圧力がゼロになる一方、橋梁支持ケーブルよりも鉛直方向上方では、アンカーパイプとソケットとの間の圧力が極端に大きくなってしまう。なお、本件発明者らが調査したところ、一般的な斜張橋では、主塔との連結部分において、橋梁支持ケーブルが設計角度から±0.5°程度傾動することが分かった。このように、アンカーパイプとソケットとの間の圧力が場所によって相違するため、従来の電気式歪計測器では、橋梁支持ケーブルの張力を高精度に計測することができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、橋梁支持ケーブルの上端部又は下端部の少なくともいずれか一方で張力を高精度に計測し、管理することができる重量物支持ケーブルの張力検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る重量物支持ケーブルの張力検出装置は、重量物支持ケーブルの一端を主塔側のアンカーパイプに連結し、他端を重量物側のアンカーパイプに連結して重量物を吊り下げ支持し、この重量物支持ケーブルの張力変動を検出する装置であって、前記主塔側又は重量物側の少なくともいずれか一方の前記アンカーパイプと、前記重量物支持ケーブルの端部に取り付けられて前記アンカーパイプに貫通されたソケットとの間に配置されて、前記アンカーパイプ及び前記ソケットから受ける圧力を検出する油圧ロードセルを有し、前記油圧ロードセルは、 作動油が充填されてピストンが突出した状態で摺動可能に嵌め込まれた複数の油圧シリンダと、前記各油圧シリンダに連通されて前記各油圧シリンダに充填された作動油の圧力を平均化する連通路と、前記連通路により平均化された作動油の圧力を検出する圧力検出部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る重量物支持ケーブルの張力検出装置によれば、複数の油圧シリンダで構成される油圧ロードセルによりアンカーパイプとソケットとの間の圧力を計測するため、小型の油圧シリンダを用いながら、重量物支持ケーブルに作用する13MNを超えるような高い張力を計測することができる。更に、この油圧ロードセルは、複数の油圧シリンダを連通路により連通することで、各油圧シリンダに充填された作動油が互いに出入りして各油圧シリンダのピストンが摺動するため、各油圧シリンダによりアンカーパイプとソケットとの間の圧力を平均化して受けることができる。しかも、アンカーパイプに対してソケットが傾いたとしても、この傾きに追従するように各油圧シリンダのピストンが摺動することで、アンカーパイプとソケットとの間に隙間が生じるのを防止できるため、常に、各油圧シリンダによりアンカーパイプとソケットとの間の圧力を平均化して受けることができる。このため、重量物支持ケーブルの張力を高精度に計測することができる。
【0011】
この場合、油圧ロードセルは、中央部に重量物支持ケーブルが貫通する貫通孔が形成された円環状に形成されており、油圧シリンダは、円周方向に沿って等間隔に配置されていることが好ましい。このように、円環状の油圧ロードセルに油圧シリンダを円周方向に沿って等間隔に配置することで、各油圧シリンダが受ける圧力を更に均一化することができる。
【0012】
また、油圧ロードセルは、円周方向に分割された複数の分割体で構成されており、各分割体に、1又は複数の油圧シリンダを有することが好ましい。このように、油圧ロードセルを分割することで、アンカーパイプからソケットを引っ張り出した後に、重量物支持ケーブルを跨いでアンカーパイプとソケットとの間に嵌め込むことが可能となる。
【0013】
また、アンカーパイプ又はソケットと油圧ロードセルとの間に配置されて、ソケット側からアンカーパイプ側に向けて拡径するアタッチメントを更に有することが好ましい。このように、ソケット側からアンカーパイプ側に向けて拡径するアタッチメントを用いることで、アンカーパイプとソケットとの径の差が埋まるため、重量物支持ケーブルの軸線方向においてアンカーパイプとソケットとを対向させることができる。しかも、アタッチメントによりアンカーパイプ及びソケットからの圧力を拡縮することができるため、油圧ロードセルの配置によらず、効率よくアンカーパイプ及びソケットからの圧力を油圧ロードセルに伝えることができる。
【0014】
そして、この張力検出装置は、重量物支持ケーブルが重量物としての橋梁を直接支持する斜張橋に用いられ、油圧ロードセルは、主塔側の最上部のアンカーパイプに連結されて重量物支持ケーブルの張力変動を検出することとすることができる。斜張橋では、主塔側の最上部に連結される重量物支持ケーブルに最も大きな張力が作用するため、この重量物支持ケーブルの張力変動を検出することで、斜張橋の耐久性、安全性などを効果的に判断することができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、重量物支持ケーブルの一端を主塔側のアンカーパイプに連結し、他端を重量物側のアンカーパイプに連結して重量物を吊り下げ支持し、この重量物支持ケーブルの張力変動を検出する装置であって、前記主塔側又は重量物側の少なくともいずれか一方の前記アンカーパイプと、前記重量物支持ケーブルの端部に取り付けられて前記アンカーパイプに貫通されたソケットとの間に配置されて、前記アンカーパイプ及び前記ソケットから受ける圧力を検出する油圧ロードセルを有し、前記油圧ロードセルは、作動油が充填されてピストンが突出した状態で摺動可能に嵌め込まれた複数の油圧シリンダと、前記各油圧シリンダに連通されて前記各油圧シリンダに充填された作動油の圧力を平均化する連通路と、前記連通路により平均化された作動油の圧力を検出する圧力検出部とを備えたので、次の効果を有する。
複数の油圧シリンダで構成される油圧ロードセルによりアンカーパイプとソケットとの間の圧力を計測するため、小型の油圧シリンダを用いながら、重量物支持ケーブルに作用する13MNを超えるような高い張力を計測することができる。更に、この油圧ロードセルは、複数の油圧シリンダを連通路により連通することで、各油圧シリンダに充填された作動油が互いに出入りして各油圧シリンダのピストンが摺動するため、各油圧シリンダによりアンカーパイプとソケットとの間の圧力を平均化して受けることができる。しかも、アンカーパイプに対してソケットが傾いたとしても、この傾きに追従するように各油圧シリンダのピストンが摺動することで、アンカーパイプとソケットとの間に隙間が生じるのを防止できるため、常に、各油圧シリンダによりアンカーパイプとソケットとの間の圧力を平均化して受けることができる。このため、重量物支持ケーブルの張力を高精度に計測することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、前記油圧ロードセルは、中央部に前記重量物支持ケーブルが貫通する貫通孔が形成された円環状に形成されており、前記複数の油圧シリンダは、円周方向に沿って等間隔に配置されているので、円環状の油圧ロードセルに油圧シリンダを円周方向に沿って等間隔に配置することで、各油圧シリンダが受ける圧力を更に均一化することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、前記油圧ロードセルは、円周方向に分割された複数の分割体で構成されており、前記各分割体に、1又は複数の前記油圧シリンダを有するので、油圧ロードセルを分割することで、アンカーパイプからソケットを引っ張り出した後に、重量物支持ケーブルを跨いでアンカーパイプとソケットとの間に嵌め込むことが可能となる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、前記アンカーパイプ又は前記ソケットと前記油圧ロードセルとの間に配置されて、前記ソケット側から前記アンカーパイプ側に向けて拡径するアタッチメントを更に有するので、ソケット側からアンカーパイプ側に向けて拡径するアタッチメントを用いることで、アンカーパイプとソケットとの径の差が埋まるため、重量物支持ケーブルの軸線方向においてアンカーパイプとソケットとを対向させることができる。しかも、アタッチメントによりアンカーパイプ及びソケットからの圧力を拡縮することができるため、油圧ロードセルの配置によらず、効率よくアンカーパイプ及びソケットからの圧力を油圧ロードセルに伝えることができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、前記重量物支持ケーブルが前記重量物としての橋桁を直接支持する斜張橋に用いられ、前記油圧ロードセルは、前記主塔側の最上部のアンカーパイプに連結されて前記重量物支持ケーブルの張力変動を検出するので、斜張橋では、主塔の最上部に連結される重量物支持ケーブルに最も大きな張力が作用するため、この重量物支持ケーブルの張力変動を検出することで、斜張橋の耐久性などを効果的に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1における主塔と重量物支持ケーブルとの連結部を示した断面図である。
【図2】油圧ロードセルの一部切り欠いた平面図である。
【図3】図2の一部切り欠いた正面図である。
【図4】図3に示す油圧ロードセルの一部拡大断面図である。
【図5】実施例2における主塔と重量物支持ケーブルとの連結部を示した断面図である。
【図6】実施例3における主塔と重量物支持ケーブルとの連結部を示した断面図である。
【図7】斜張橋の一部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、主塔に連結されて橋桁を支持する重量物支持ケーブルの張力変動を検出する重量物支持ケーブルの張力検出装置であって、前記主塔に固定されたアンカーパイプと、前記重量物支持ケーブルの端部に取り付けられて前記アンカーパイプに貫通されたソケットと、の間に配置されて、前記アンカーパイプ及び前記ソケットから受ける圧力を検出する油圧ロードセルを有し、前記油圧ロードセルは、作動油が充填されてピストンが突出した状態で摺動可能に嵌め込まれた複数の油圧シリンダと、前記各油圧シリンダに連通されて前記各油圧シリンダに充填された作動油の圧力を平均化する連通路と、前記連通路により平均化された作動油の圧力を検出する圧力検出部とを備える。
【0022】
前記油圧ロードセルは、中央部に前記重量物支持ケーブルが貫通する貫通孔が形成された円環状に形成されており、前記油圧シリンダは、円周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0023】
前記油圧ロードセルは、円周方向に分割された複数の分割体で構成されており、 前記各分割体に、1又は複数の前記油圧シリンダを有する。
【0024】
前記アンカーパイプ又は前記ソケットと前記油圧ロードセルとの間に配置されて、前記ソケット側から前記アンカーパイプ側に向けて拡径するアタッチメントを更に有する。
【0025】
前記重量物支持ケーブルが前記橋桁を直接支持する斜張橋に用いられ、前記油圧ロードセルは、前記主塔の最上部に連結される前記重量物支持ケーブルの張力変動を検出する。
【実施例1】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明に係る重量物支持ケーブルの張力検出装置の好適な実施例1について詳細に説明する。本実施例1は、建造物の重量物として、斜張橋において橋桁を支持する重量物支持ケーブルの張力変動を検出する装置に適用したものである。後述するように、本発明は、斜張橋の例に限られるものではない。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
まず、図7を参照して、斜張橋の基本構成について簡単に説明する。
【0027】
図7に示すように、斜張橋1は、河川に立設された主塔2と、車両などが通行する橋桁3と、主塔2と橋桁3とに連結されて橋桁3を支持する複数本の重量物支持ケーブル4とで構成されている。
【0028】
前記主塔2は、橋桁3を挟み込むように橋桁3の幅方向両側に2面吊りで配置されている例を示している。しかし、本発明は、1面吊りであってもよい。この主塔2は、第一主塔部2aと第二主塔部2bが中間に空洞をもって一体に設けられて河川底に立設される。前記第一主塔部2aと第二主塔部2bとの上端部は、連結部2cである。なお、第一主塔部2aと第二主塔部2bとは一体構成であるため、以下の説明では、特に区別する場合を除き主塔2として説明する。
【0029】
前記各重量物支持ケーブル4は、互いに交差することなく張設されている。そして、主塔2側の連結部5が上下方向に複数設けられるとともに、橋桁3側の連結部6が水平方向に複数設けられており、主塔2の最も下方の連結部5に連結される重量物支持ケーブル4は、橋桁3の最も主塔2に近接した連結部6に連結され、主塔2の最も上方の連結部5に連結される重量物支持ケーブル4は、橋桁3の最も主塔2から離間した連結部6に連結される。なお、斜張橋1は、主塔2、橋桁3及び複数本の重量物支持ケーブル4を一組とし、斜張橋1を架設する河川の幅に応じて、これらの組が複数連結される。
【0030】
図1は、実施例1における主塔2と重量物支持ケーブル4との連結部を示した断面図である。図1に示すように、主塔2には、重量物支持ケーブル4と連結される連結部5に、重量物支持ケーブル4の張設方向に向いた貫通孔10が形成されている。そして、この貫通孔10には、重量物支持ケーブル4を固定するためのアンカーパイプ11が埋設されている。
【0031】
前記アンカーパイプ11は、略円筒状に形成されており、重量物支持ケーブル4が挿通可能となっている。このアンカーパイプ11における橋桁3の反対側の端部11aは、外径が橋桁3側から橋桁3の反対側に向けて拡径して、肉厚となっている。これにより、アンカーパイプ11は、主塔2から橋桁3側に抜け落ちるのが防止され、また、橋桁3の反対側の端面11bは、橋桁3側からの荷重を大きな面積で受け止めることが可能となっている。
【0032】
前記主塔2に連結される重量物支持ケーブル4の端部は、複数本のピアノ線が亜鉛などの金属で固められて拡径化しており、アンカーパイプ11に貫通される略円筒状のソケット12が固定されている。
【0033】
前記アンカーパイプ11の内径は、ソケット12が挿通するために、ソケット12の外径よりもやや大きくなっている。ソケット12の内径は、拡径化された重量物支持ケーブル4の端部を係止するために、橋桁3の反対側から橋桁3側に向けて狭まるテーパ状に形成されている。このソケット12は、橋桁3側に階段状の段部12aが形成されており、この段部12aにより橋桁3側からの荷重を受け止めることが可能となっている。なお、図1では、ソケット12に2段の段部12aが形成されたソケット12を示しているが、段部12aは、1段であってもよく、3段以上であってもよい。
【0034】
そして、アンカーパイプ11と、アンカーパイプ11を貫通したソケット12との間に、ベアリングプレート13と、本発明による油圧ロードセル14と、アタッチメント15とが嵌め込まれる。
【0035】
前記ベアリングプレート13は、中央部に重量物支持ケーブル4が貫通される貫通孔が形成されたセンターホール型の円環状に形成されている。このベアリングプレート13は、円周方向に沿って二つ割りされている。このため、アンカーパイプ11からソケット12をケーブル引き込み用ジャッキなどで引っ張り出した後に、重量物支持ケーブル4を跨いでアンカーパイプ11とソケット12との間に嵌め込むことが可能となっている。また、このベアリングプレート13は、外径がアンカーパイプ11の内径よりも大きくなっており、内径がソケット12の外形よりも小さくなっている。このため、アンカーパイプ11とソケット12との間に嵌め込まれたベアリングプレート13に、アンカーパイプ11の端面11b及びソケット12の段部12aが直接的又は間接的に係止され、ソケット12がアンカーパイプ11から引き出された状態を維持することが可能となっている。
【0036】
前記油圧ロードセル14は、ベアリングプレート13とアタッチメント15との間に配置されて、アンカーパイプ11とソケット12との間の圧力を測定する油圧式圧力測定装置である。
【0037】
図2は、油圧ロードセル14の一部切り欠いた平面図、図3は、図2に示すIII−III線断面図、図4は、図3に示す油圧ロードセルの一部拡大図である。図2〜4に示すように、油圧ロードセル14は、中央部に重量物支持ケーブル4が貫通される貫通孔が形成されたセンターホール型の円環状に形成されている。この油圧ロードセル14は、円周方向に沿って二つ割りされて第一分割体14aと第二分割体14bとを構成しており、第一分割体14aと第二分割体14bとは、連結部材16aと連結部材16bとで連結されている。このため、油圧ロードセル14は、ベアリングプレート13と同様に、アンカーパイプ11からソケット12を引っ張り出した後に、重量物支持ケーブル4を跨いでアンカーパイプ11とソケット12との間に嵌め込むことが可能となっている。なお、油圧ロードセル14は、第一分割体14aと第二分割体14bとの軽量化のため、第一分割体14aと第二分割体14bの一部を切り欠いている。
【0038】
このように二つ割りされる油圧ロードセル14は、ベアリングプレート13に当接される油圧ロードセル本体17と、アタッチメント15に当接される上部プレート18とを備えており、油圧ロードセル本体17と上部プレート18とは、油圧ロードセル14の厚み方向(図3の上下方向)に伸縮自在に連結されている。
【0039】
油圧ロードセル本体17には、上部プレート18に当接されるピストン20が嵌め込まれた12個の油圧シリンダ21が設けられている。これらのピストン20は、円周方向に沿って等間隔に配置されており、第一分割体14aと第二分割体14bに、それぞれ油圧シリンダ21が6個ずつ等間隔で設けられている。
【0040】
前記油圧シリンダ21には、作動油が充填されて上部プレート18側に開口を有する油圧シリンダ室21aが形成されており、油圧シリンダ室21aには、ピストン20が油圧ロードセル14の厚み方向に摺動可能に嵌め込まれている。このため、油圧ロードセル本体17は、上部プレート18から圧力を受けるピストン20を、油圧シリンダ21に充填された作動油の油圧で受け止めることが可能となっている。
【0041】
更に油圧ロードセル本体17には、各油圧シリンダ21の油圧シリンダ室21aを連通して各油圧シリンダ室21aに充填される作動油の圧力を平均化(イコライズ)する連通路23と、連通路23に連通されてジャッキの原理により油圧シリンダ室21aに充填される作動油の油圧を調整する油圧調整装置24と、連通路23に連通されて作動油の油圧を電気信号に変換する圧力変換器25とが設けられている。
【0042】
具体的に説明すると、第一分割体14aに設けられる各油圧シリンダ21の油圧シリンダ室21aは、連通路23aにより連通され、第二分割体14bに設けられる各油圧シリンダ21の油圧シリンダ室21aは、連通路23bにより連通され、連通路23aと連通路23bとは、第一分割体14aと第二分割体14bとを跨ぐ連通路23cにより連通されている。なお、油圧調整装置24及び圧力変換器25は、連通路23の如何なる位置に連通されてもよく、例えば、図2に示すように、油圧調整装置24は連通路23cに連通され、圧力変換器25は連通路23bに連通される。
【0043】
そして、油圧調整装置24による油圧の調整により、ピストン20が上部プレート18に対向する油圧ロードセル本体17の上面17aから所定の高さだけ突出しており、油圧ロードセル本体17の上面17aと上部プレート18との間にピストン20を介した空間Sが形成されている。このとき、油圧ロードセル本体17は、連通路23により各油圧シリンダ室21aに充填された作動油が相互に出入り可能となるため、各油圧シリンダ21に充填される作動油の圧力が平均化された状態で、ピストン20が油圧ロードセル14の厚み方向に摺動可能となる。このため、各ピストン20が摺動することにより、油圧ロードセル本体17に対して上部プレート18が傾動することが可能となる。また、油圧ロードセル本体17に対して上部プレート18が傾動しても、各ピストン20が摺動することにより、全てのピストン20が上部プレート18に当接された状態が維持される。
【0044】
なお、油圧ロードセル本体17の上面17aと上部プレート18との間の空間S、又は、油圧ロードセル本体17の上面17aよりも上部プレート18側におけるピストン20のストローク長は、予想される重量物支持ケーブル4の傾動角度に応じて、上部プレート18が油圧ロードセル本体17の上面17aに当接することなく、かつ、ピストン20が上部プレート18から離間しない範囲に調整される。例えば、油圧ロードセルの直径が600mmである場合は、傾斜角を考慮すると空間Sの幅を5mm以上とすることが好ましい。
【0045】
また、各ピストン20は、上部プレート18に当接する先端面20aが湾曲している。このため、上部プレート18とピストン20とが点接触又は極小さい領域での面接触となるため、油圧ロードセル本体17に対して上部プレート18が傾いたとしても、上部プレート18から受ける圧力がピストン20の中心方向に向けられる。これにより、上部プレート18から受ける圧力が発散するのを抑制することができる。
【0046】
図1に示すように、アタッチメント15は、油圧ロードセル14とソケット12との間に配置されて、外径がソケット12側からベアリングプレート13側に向けて拡径するテーパ状に形成されている。このアタッチメント15は、台形断面を有する円環状に形成されており、内径がベアリングプレート13の内径よりも小さく、ソケット12に当接する一方端面15aの外径がソケット12の外径と略同一寸法、ベアリングプレート13に当接する他方端面15bの外径がベアリングプレート13の外径と略同一寸法に形成されている。なお、アタッチメント15も、ベアリングプレート13及び油圧ロードセル14と同様に、二つ割りにされている。
【0047】
そして、このように構成される油圧ロードセル14は、以下に説明するように、重量物支持ケーブル4を主塔2に連結する際に設置する。
【0048】
まず、図1に示すように、ケーブル引き込み用ジャッキを用いて、主塔2側に埋設されたアンカーパイプ11から重量物支持ケーブル4の先端に固定されたソケット12を引っ張り出す。
【0049】
そして、ソケット12がアンカーパイプ11から完全に引っ張り出されたまま、アンカーパイプ11からソケット12に向けて、ベアリングプレート13、油圧ロードセル14、アタッチメント15の順に配置されるように、ベアリングプレート13、油圧ロードセル14及びアタッチメント15をアンカーパイプ11とソケット12との間に嵌め込む。
【0050】
ここで、油圧ロードセル14をアンカーパイプ11とソケット12との間に嵌め込む手順について説明する。
図2に示すように、油圧ロードセル14は、連結部材16a及び連結部材16bにより二つ割りされた第一分割体14aと第二分割体14bとが連結されているため、まず、連結部材16a及び連結部材16bを取り外して第一分割体14aと第二分割体14bとに分離する。そして、重量物支持ケーブル4を跨ぐように連結部材16a及び連結部材16bをアンカーパイプ11とソケット12との間に嵌め込み、再度連結部材16a及び連結部材16bにより第一分割体14aと第二分割体14bとを連結する。なお、ベアリングプレート13及びアタッチメント15も、油圧ロードセル14と同様にして油圧ロードセル14をアンカーパイプ11とソケット12との間に嵌め込む。
【0051】
次に、油圧調整装置24により油圧シリンダ室21aに充填される作動油の油圧を調整して、ピストン20を油圧ロードセル本体17の上面17aから所定の高さだけ突出させる。
【0052】
次に、図1に示すように、アンカーパイプ11、ベアリングプレート13、油圧ロードセル14、アタッチメント15及びソケット12が、重量物支持ケーブル4を中心軸とした同心円上に配置した状態で、ベアリングプレート13をアンカーパイプ11の端面11bに係止させるとともに、ソケット12の段部12aをアタッチメント15の一方端面15aに係止させる。
【0053】
これにより、重量物支持ケーブル4が主塔2に連結され、橋桁3を支持する重量物支持ケーブル4の張力がアンカーパイプ11に対するソケット12の圧力となって現れる。そこで、油圧ロードセル14の圧力変換器25により作動油の圧力を計測して、重量物支持ケーブル4の張力変動を求める。なお、圧力変換器25が計測した作動油の圧力から重量物支持ケーブル4の張力への換算は、事前に実験などにより求められる所定の換算式により求めることができる。
【実施例2】
【0054】
前記実施例1では、アンカーパイプ11とソケット12との間にベアリングプレート13、油圧ロードセル14、アタッチメント15の順に嵌め込んだが、この例に限られるものではなく、図5に示すように、アンカーパイプ11とソケット12との間にアタッチメント15、油圧ロードセル14、ベアリングプレート13の順に嵌め込むようにしてもよい。
【実施例3】
【0055】
前記実施例1及び2では、ベアリングプレート13、油圧ロードセル14、アタッチメント15は、二つ割り、三つ割などとし、アンカーパイプ11とソケット12との間に側方から嵌め込むようにしたが、これに限られるものではなく、アンカーパイプ11の端部に、分割しない円環状の油圧ロードセル14を円環状のベアリングプレート13又はアタッチメント15を介在して予め取り付けておき、二つ割り、三つ割などのアタッチメント15又はベアリングプレート13を嵌め込むようにしてもよい。ただし、この場合、予め取り付けておいた油圧ロードセル14の内側には、ソケット12が通るだけの孔を必要とするので、それだけ油圧ロードセル14の内径を大きくする必要がある。
【実施例4】
【0056】
前記実施例では、主塔2側の連結部5に本発明に係る張力検出装置を取り付けた例を示した。しかし、これに限られるものではなく、橋桁3側の連結部6におけるアンカーパイプに本発明に係る張力検出装置を取り付けるようにしてもよい。さらに、主塔2側の連結部5と、橋桁3側の連結部6の両方におけるアンカーパイプに本発明に係る張力検出装置を取り付けるようにしてもよい。
この場合において、主塔2側の連結部5に本発明に係る張力検出装置を取り付けた場合には、重量物支持ケーブル4の引っ張り力の他に重量物支持ケーブル4の荷重が付加される。しかし、橋桁3側の連結部6におけるアンカーパイプに本発明に係る張力検出装置を取り付けた場合には、重量物支持ケーブル4の引っ張り力だけが作用する。
前記実施例では、重量物支持ケーブル4は、斜長橋の橋桁を吊り下げる例を示したが、これに限るものではなく、その他の吊り橋の橋桁等を吊り下げる例であってもよいし、さらに、橋梁以外の建造物の重量構造物等を主塔で吊り下げる例であっても本発明は利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1:斜張橋、2:主塔、2a:第一主塔部、2b:第二主塔部、2c:連結部、3:橋桁、4:重量物支持ケーブル、5:連結部、6:連結部、10:貫通孔、11: アンカーパイプ、11a: 端部、11b :端面、12:ソケット、12a:段部、13:ベアリングプレート、14:油圧ロードセル、14a:第一分割体、14b:第二分割体、15:アタッチメント、15a:一方端面、15b:他方端面、16a:連結部材、16b:連結部材、17:油圧ロードセル本体、17a:上面、18:上部プレート、20:ピストン、20a:先端面、21:油圧シリンダ、21a:油圧シリンダ室、23:連通路、23a:連通路、23b:連通路、23c:連通路、24:油圧調整装置、25:圧力変換器、S:空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物支持ケーブルの一端を主塔側のアンカーパイプに連結し、他端を重量物側のアンカーパイプに連結して重量物を吊り下げ支持し、この重量物支持ケーブルの張力変動を検出する装置であって、
前記主塔側又は重量物側の少なくともいずれか一方の前記アンカーパイプと、前記重量物支持ケーブルの端部に取り付けられて前記アンカーパイプに貫通されたソケットとの間に配置されて、前記アンカーパイプ及び前記ソケットから受ける圧力を検出する油圧ロードセルを有し、
前記油圧ロードセルは、
作動油が充填されてピストンが突出した状態で摺動可能に嵌め込まれた複数の油圧シリンダと、
前記各油圧シリンダに連通されて前記各油圧シリンダに充填された作動油の圧力を平均化する連通路と、
前記連通路により平均化された作動油の圧力を検出する圧力検出部と
を備えることを特徴とする重量物支持ケーブルの張力検出装置。
【請求項2】
前記油圧ロードセルは、中央部に前記重量物支持ケーブルが貫通する貫通孔が形成された円環状に形成されており、
前記複数の油圧シリンダは、円周方向に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の重量物支持ケーブルの張力検出装置。
【請求項3】
前記油圧ロードセルは、円周方向に分割された複数の分割体で構成されており、 前記各分割体に、1又は複数の前記油圧シリンダを有することを特徴とする請求項2に記載の重量物支持ケーブルの張力検出装置。
【請求項4】
前記アンカーパイプ又は前記ソケットと前記油圧ロードセルとの間に配置されて、前記ソケット側から前記アンカーパイプ側に向けて拡径するアタッチメントを更に有することを特徴とする、請求項1,2又は3記載の重量物支持ケーブルの張力検出装置。
【請求項5】
前記重量物支持ケーブルが前記重量物としての橋桁を直接支持する斜張橋に用いられ、
前記油圧ロードセルは、前記主塔側の最上部のアンカーパイプに連結されて前記重量物支持ケーブルの張力変動を検出することを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の重量物支持ケーブルの張力検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−117215(P2012−117215A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265340(P2010−265340)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(592182573)オックスジャッキ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】