説明

重量物梱包箱

【課題】大型重量物の梱包箱として段ボールの重合部における強固な結合強度を確保するとともに、開梱の際は、容易に開口部を形成することによって、被梱包物が薄型テレビ等の大型で重量があっても、持ち上げることなく開口部から前方へ滑らせるようにして取り出すことができ、かつ、リサイクルの際に異種材の選別を必要としない梱包箱を提供することを目的とする。
【解決手段】前面、左右の側面及び後面を備えた周壁を形成し、その下端から延びる底面片を閉じ、上端から延びる蓋面片を閉じて封緘し、かつ、前記前面を開いて物品を取り出す梱包箱において、前記前面の左右端部を夫々左右の前記側面に結合することを特徴とする梱包箱。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型で重量のある電子機器、電気製品等家電製品の梱包箱である。 特に、本発明は、被梱包物である液晶テレビ、プラズマテレビ又はプロジェクションテレビ等の大型薄型テレビ等の大型重量物を梱包するのに適した梱包箱に関するものであって、開梱作業時に、梱包箱の前面を開口することによって、大型で重量のある被梱包物を持ち上げることなく前方に滑らすことによって、取り出し易くした段ボール製の重量物梱包箱に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の梱包箱では、箱状にするために段ボールの一辺または二辺の端部を、例えば、接着剤によって結合するか、又はステープル等の金属釘によってかしめて結合する手段が採用されている。そして、梱包箱の中には、輸送又は保管中の振動や衝撃から中の家電製品を保護する目的で、発砲スチロール、発砲ポリプロピレン、発砲ポリエチレン等の緩衝材を、被梱包物である家電製品に当接させた状態で梱包するのが一般的である。
【0003】
しかしながら、上記の接着剤によって結合する手段では、段ボール表面の部分を貼り合わせているだけなので、段ボール同士の結合強度が弱くなるという問題点がある。また、ステープル等の金属釘によりかしめて結合する手段の場合、金属釘であることから、梱包用の段ボール箱として使用する場合は被梱包物に損傷を与えるという問題点を起すことがある。さらに、これらの各結合手段においては、段ボール箱をリサイクルする場合、その結合手段に使用されている接着剤や金属釘等は段ボール箱の原料であるパルプとは異質なものであるため、そのリサイクルの処理のため選別することが必要等種々の問題点がある。
【0004】
テレビは近年大型、ワイド化の傾向が進み、高インチのテレビが一般家庭に普及している。ところで、梱包される製品が大型重量物になってくると、使用する段ボール製の梱包箱自体も大型化してくるので製造が容易でなく、また梱包或いは開梱作業の際困難が生ずる。従来、このような開梱作業の課題に対する対策として、梱包箱の一部を展開することにより、その開いた箇所から被梱包物を取り出す方法が提案されている(例えば特許文献1)。即ち、この提案の詳細は以下の通りであって、開閉可能な側面部及び開閉可能な天面部を閉じた状態にすることにより、大型テレビの受像機の外装段ボール箱が工場出荷後に輸送可能な状態となる。次に、開閉可能な側面部及び開閉可能な天面部を開いた状態にすることにより大型テレビの受像機が取り出し易い状態となる。しかしながら、この方法では被梱包物を取り出すときに展開していない側壁袖片が邪魔をするために取り出し作業が容易でない。
【0005】
近年、家電製品の中でも特に液晶テレビ、プラズマテレビは大型で薄型化が進み、ディスプレイ装置がワイドになっている。その結果、輸送に際して従来の段ボール製の梱包箱を使用した場合、中から大型の重いテレビを取り出す際に持ち上げなければならず、開梱作業は困難であった。このような薄型テレビを梱包するために使用する梱包箱の例を図11に示す。図(a)に梱包箱の上箱210を示し、図(b)に薄型テレビのディスプレイ部である被梱包物本体T1を示し、図(c)に梱包箱の下箱となるトレー220を示す。上箱210と下方のトレー220が合体して梱包箱を形成する。図(a)の上箱210は、前面に連接する一方の側面、後面及び他方の側面によって周壁が形成された底無しの角筒体である。この前面下方の左右に挿通孔211、211を備える。一方、図(c)に示す梱包箱のトレー220は、前面に連接する一方の側面、後面及び他方の側面によって形成された有底の箱体である。このトレーにも、前面の左右に挿通孔221、221を備え、これら挿通孔の位置は上箱210における挿通孔の位置に対応する。高インチのテレビは一般家庭にも普及しており、例えば42インチの薄型テレビでは、幅寸法は1メートルを超え、重量は30kg以上になる。そのうえ、テレビの台座の高さが加わってテレビ全体の寸法が嵩張るので、分解して梱包することになる。高インチのテレビを梱包する際、ディスプレイ部の被梱包物本体T1とその台座T2に分解すれば嵩張らず効率的に梱包できる。図(c)に示すように、トレー220の中の底周壁にそって適宜緩衝材Sを配置し、緩衝材Sの適当な位置に台座T2を収める。次いで、上方から大型の被梱包物本体T1を左右の緩衝材S、Sの凹み部へ架けるようにして載置する。そして、上箱210を下方のトレー220側面の外側から被せる。上箱210の左右の挿通孔211、211とトレー220の挿通孔221、221の位置が重なるので、これらの挿通孔を貫通するように、外側からジョイント具J、Jを挿着する。次いで、ジョイント具J、Jをロックすることによって上箱210とトレー220とを合体し、封緘する。一方、梱包箱から被梱包物本体T1を取り出す際は、下方のジョイント具J、Jのロック状態を解除し、上箱210をトレー220から切り離す。次いで、被梱包物本体T1を持ち上げて外に取り出す。しかしながら、この場合大型で重量のある被梱包物本体T1をトレーの前面より高く持ち上げなければならず、開梱の作業性に課題が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−114853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の通りであって、特許文献1に代表されるように、まとめると、従来の重量物梱包箱には次のような問題点がある。
【0008】
開梱の際、梱包箱の開口の下部に段差があるので、大型で重量のある薄型テレビ等の被梱包物を取り出す祭、嵩張って持ち上げ難く、或いは重くて持ち上げることが容易ではない。
【0009】
その他、梱包箱は段ボールのパルプ材の他ステープル等異種材料から構成されているので、リサイクルの際そのまま処理することができない。異種の材料の梱包材を段ボールから分別する必要があり、その処理にあってはリサイクル費用が高くなる。
【0010】
そこで、本発明は、上記した従来の梱包箱における開口部の問題点に鑑み、大型重量物の梱包箱として段ボールの重合部における強固な結合強度を確保するとともに、開梱の際は、容易に開口部を形成することによって、被梱包物が薄型テレビ等の大型で重量があっても、持ち上げることなく開口部から前方へ滑らせるようにして取り出すことができ、かつ、リサイクルの際に異種材の選別を必要としない梱包箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者等は、梱包箱における端部の結合手段として、紙袋等の開口部における糸の縫製手段に着目し、これを段ボール同士の結合へと発展させることを着想し、この着想に基づき試作したところ、開梱の際に作業性がよいといいう知見を得た。本発明の梱包箱はかかる知見を基に具現化したもので、請求項1の発明は、前面、左右の側面及び後面を備えた周壁を形成し、その下端から延びる底面片を閉じ、上端から延びる蓋面片を閉じて封緘し、かつ、前記前面を開いて物品を取り出す梱包箱において、前記前面の左右端部を夫々左右の前記側面に結合することを特徴とする梱包箱である。請求項2の発明は、請求項1の発明の上記特徴に加えて、左右の前記側面は、これから直角に折れ曲がる継ぎ代を夫々備え、前記前面の端部裏側に前記継ぎ代が重なる重合部を形成し、この重合部を糸が貫通して縫製されることを特徴とする梱包箱である。請求項3の発明は、請求項1の発明の上記特徴に加えて、左右の前記前面は、これから直角に折れ曲がる前面袖を夫々備え、前記側面の裏側に前記前面袖が重なる重合部を形成し、かつ、これら重合部を挿通する挿通孔を設け、これらの挿通孔にジョイント具を着脱自在に挿着することを特徴とする梱包箱である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の重量物梱包箱では、開梱に際し、前面における縫製部位から糸を抜き、或いは前面におけるジョイント具による結合部位を解除することによって、前面を梱包箱から容易に分離して前面を開放することができる。即ち、梱包箱の前面と継ぎ代、或いは前面袖と側面との結合を解除するだけで、前面を底部まで全部取り外し、その開口部から被梱包物を取り出すことができる。その際、大型で重量のある家電製品等の被梱包物を持ち上げることなく水平に滑らすだけなので、力を掛けることなく開口部から被梱包物を取り出すことができる。また、梱包箱にステープル等の金属釘のような留め金具を一切使用せず、かつ、使用する糸又は樹脂製のジョイント具を梱包箱から独立して分離、除去することができる。従って、梱包箱を廃棄、回収する際は、段ボールのパルプとは異種材が混入しないので、梱包箱のリサイクルの際選別作業を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の梱包箱200Aの展開図の一部で、段ボール101Aである。
【図2】同上、段ボール102Aである。
【図3】同上、梱包箱200Aの斜視図である。
【図4】同上、梱包箱200Aの前面壁を開く途中の状態の斜視図である。
【図5】同上、梱包箱200Aの前面壁を開いた状態の斜視図である。
【図6】実施例2の梱包箱200Bの展開図の一部で、段ボール101Bである。
【図7】同上、段ボール102Bである。
【図8】同上、梱包箱200Bの斜視図である。
【図9】同上、梱包箱200Bの前面壁を開く途中の状態の斜視図である。
【図10】同上、梱包箱200Bの前面壁を開いた状態の斜視図である。
【図11】従来の梱包箱における被梱包物を梱包する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【実施例1】
【0015】
先ず、本発明の実施例1ついて、図1〜図5を参照しながら説明する。図1は、本実施例の梱包箱200Aの展開図の一部で、段ボール101Aである。図2は、同上、段ボール102Aである。図3は、梱包箱200Aの斜視図である。図4は、梱包箱200Aの前面を開く途中の状態の斜視図である。図5は、梱包箱200Aの前面を開いた状態の斜視図である。なお、正面図、側面図及び断面図における上下を上下方向と称し、左右を左右方向と称し、また、平面図、正面図、側面図、断面図及び斜視図における物体の天地を上下方向と称する。他の実施例についても同様である。
【0016】
ほぼ矩形状をした段ボール101Aには、所定の箇所に複数の折り目を設けてあるので、それらの設け方について以下に説明する。図1に示すように、段ボール101Aは上下、左右に対称であり、左右方向の折り目に沿って、上下方向に蓋部10、側面部20及び底部30に三分割される。段ボールの上下及び左右の方向については、上記の通りとし、他の実施例についても同様である。図中の点線は折り目を示し、他の図或いは実施例についても同様である。上下方向に蓋部、側面部及び底部に三分割されるように、上方に折り目Cを左右方向に貫通して備え、これに平行に下方に折り目Dを左右方向に貫通して備える。そして、これらの折り目に対し直角方向に左から折り目E、折り目F、折り目F及び折り目Eを夫々平行に上下方向に貫通して備える。一段目の蓋部10は折り目を介して左右に蓋面片11、12及び11に分割される。二段目の側面部20については、折り目を介して左右に継ぎ代21、側面22、後面23、側面22及び継ぎ代21に分割される。そして、三段目の底部30は底面片31、32及び31に分割される。ここで、図示のように側面22には折り目を介して端部に継ぎ代21を備え、側面22と継ぎ代21を総称して側面という。
【0017】
他方のほぼ矩形状をした段ボール102Aにも、所定の箇所に複数の折り目を設けてある。図2に示すように、段ボール102Aは上下、左右に対称である。段ボール102Aは、左右方向の折り目に沿って、上下方向に蓋面片12’、前面23’及び底面片32‘に三分割される。上下方向に蓋面片、前面及び底面に三分割されるように、上方に折り目Gを左右方向に貫通して備え、これに平行に下方に折り目Hを左右方向に貫通して備える。
【0018】
段ボール101A及び段ボール102Aは以上の構成であり、夫々を折り上げるとともに前面の左右端部を夫々左右の側面に結合することによって梱包箱を形成する手順について以下に説明する。
【0019】
先ず、一方の段ボール101Aを夫々の折り目の位置から各部位を手前側に折り曲げる。上方の折り目Cの位置から、蓋面片11、蓋面片12、蓋面片11を図1の手前側に直角に折り曲げる。同様に、下方の折り目Dの位置から底面片31、底面片32、底面片31を内側に手前側に直角に折り曲げる。次いで、左右の折り目F、Fの位置から側面22、22を手前側に直角に折り曲げる。この時、上方では蓋面片12の内側に左右の蓋面片11、11が位置し、一方下方では底面片32の内側に底面片31、31が位置する。このようにして、後面23を囲うように四方の蓋面片、底面片及び側面が直立する。最後に、左右の継ぎ代21、21を内側へ直角に折り曲げる。次に、他方の段ボール102Aを上下の折り目G、Hの部位から、蓋面片12‘、底面片32’を裏側へ直角に折り曲げる。
【0020】
次に、一方の段ボール101Aを折り曲げたものに、他方の段ボール102Aを折り曲げたものを合体する。そのために先ず、段ボール101A側の後面23と段ボール102A側の前面23‘を凹み側同士で対向させる。この時、前面、左右の側面及び後面から周壁が形成され、蓋面側では、段ボール101A側の上下の蓋面片11、11の上に段ボール102A側の蓋面片12’が被さる。同時に、段ボール102A側の前面23‘の左右端部を、段ボール101A側の左右の継ぎ代21、21に重ねる。次いで、この段ボールの重合部に糸を貫通して縫製することによって、段ボール101A側と段ボール102A側とが結合され、図3に示すように箱状の梱包箱200Aが形成される。図3(a)に梱包箱200Aの斜視図を示し、前面23‘の左右両端部において上下方向に糸Lを夫々2列縫製する。図3(a)におけるX―X矢視断面を図3(b)に示す。前面23’の端部裏側に継ぎ代21が重なるように重合部が形成され、図示のように、糸Lが重合部を貫通して前面23‘と継ぎ代21とが縫製されることによって、段ボール101Aを折り曲げたものと段ボール102Aを折り曲げたものとが凹み側同士で対向して合体する。そして、被梱包物を梱包する際、直角に折り曲がった底面片31、31の外側から被せるように底面片32と底面片32’を直角に折り曲げる。次いで、底面片32と底面片32’の突き合わせ、そのスリット部を覆うように左右方向にテープを貼着することによって梱包箱の底面が形成される。
【0021】
以上のようにして段ボール101Aと段ボール102Aとから梱包箱200Aへと折り上げられ、次に図3を参照しながら作用について説明する。
【0022】
段ボール重合部の結合手段は、段ボールと同種の材質からなる天然繊維或いはレ−ヨンン等の化学繊維から構成された糸を使用し、段ボール重合部の厚さ方向に糸を貫通させることによって縫製される。この場合、複数列の縫製が望ましいが単列でもよい。また、縫製の縫い方は単環縫い、二重環縫い、二重環千鳥縫い等が望ましい。そして、本実施例では、これらの中から用途に応じて適当な縫い方を採用することによって、段ボール同士の重合部を強固に結合する。そして、開梱の際は糸の最終の縫い目を解くことによって、全て一本の糸によって抜くことができ、素早く段ボールの分解が可能となる。また、縫い目を途中で切っても段ボール同士の結合が解除されることなく、結合を保つことができる。糸は段ボールのパルプ材と同種の材質からなる天然繊維を使用した場合は、リサイクルの際分別を必要とせず好適である。或いは、パルプ材とは異質の糸を使用した場合でも、糸を梱包箱から容易に除去できるのでリサイクルの際問題が発生しない。
【0023】
次に、被梱包物の梱包について説明する。梱包する際、梱包箱の底部における対向する底面片32と底面片32’の突き合わせ、そのスリット部を覆うように左右方向にテープを貼着して梱包箱の底面を形成する。次に梱包箱の中の底面に緩衝材を載置する。テレビは近年大型、ワイド化の傾向が進み、例えば42インチプラズマテレビでは、製品寸法は幅寸法1080mm、高さ寸法710mm、重量は32kgにも及ぶ。そのうえ、台座の高さが加わりテレビ全体の寸法がおおきくなって嵩張るので、分解して梱包することになる。薄型テレビを梱包する際、ディスプレイ部からなる被梱包物本体とその台座に分解すると嵩張らないので効率的に梱包できる。緩衝材の凹みへ分解した台座を載置する。次いで、上方から被梱包物本体を緩衝材の凹み部へ架けるようにして載置する。そして、蓋部の蓋面片12と蓋面片12‘の突き合わせ、そのスリット部を覆うように左右方向にテープを貼着することによって梱包箱の蓋を閉じ、封緘する。
【0024】
一方、開梱する際、梱包箱の上面の蓋面片12、12‘の突き合わせスリット部における貼着したテープを剥がす。次に、前面左右端部の縫製部の糸を抜くことによって、前面23‘が段ボール同士の結合から解かれて手前に倒れ、その状態を図4に示す。梱包箱200Aの中には、緩衝剤Sの凹みに例えば液晶テレビのディスプレイ部(図示なし)が梱包されている。さらに進んで前面23‘が前方に開ききった状態を図5に示す。梱包箱200Aの前方は底面位置から開口部が形成される。そのことによって、緩衝剤Sの凹みに載置された液晶テレビを持ち上げることなく水平に滑らせて横移動させながら外に取り出すことができる。
【実施例2】
【0025】
次に、本発明の実施例2ついて、図6〜図10を参照しながら説明する。図6は、本実施例の梱包箱200Bの展開図の一部で、段ボール101Bである。図7は、同上、段ボール102Bである。図8は、梱包箱200Bの斜視図である。図9は、梱包箱200Bの前面を開く途中の状態の斜視図である。図10は、梱包箱200Bの前面を開いた状態の斜視図である。
【0026】
本実施例の実施例1との主たる相違点は、梱包箱を形成する過程において重合部の段ボール同士の結合手段が異なるところにある。以下、実施例1と相違する箇所について主に説明する。
【0027】
ほぼ矩形状をした段ボール101Bには、所定の箇所に複数の折り目を設けてあるので、それらの設け方について以下に説明する。図6に示すように、段ボール101Bは上下、左右対称であり、左右方向の折り目に沿って、上下方向に蓋部10、側面部20及び底部30に三分割される。上下方向に三分割されるように、上方に折り目Jを左右方向に貫通して備え、これに平行に下方に折り目Kを左右方向に貫通して備える。そして、これらの折り目に対し直角方向に左右に折り目L、Lを夫々平行に上下方向に備える。一段目の蓋部10は折り目を介して左右に蓋面片11、12及び蓋面片11に分割される。二段目の側面部20は、折り目を介して左右に側面22、後面23及び側面22に分割される。左右の側面22には左右端に沿って上下に挿通孔221、221を備える。そして、三段目の底部30は底面片31、32及び31に分割される。以上の通り、本段ボール101Bは、図1に示す段ボール101Aにおける左右の継ぎ代が無く、かつ、側面に挿通孔を有する構成が本実施例の特徴である。
【0028】
他方のほぼ矩形状をした段ボール102Bにも、所定の箇所に複数の折り目を設けてある。図7に示すように、段ボール102Bは左右対称であり、左右方向の折り目に沿って、上下方向に蓋部10、側面部20及び底部30に三分割され、上方に折り目Mを左右方向に貫通して備え、これに平行に下方に折り目Nを左右方向に貫通して備える。そして、これらの折り目に対し直角方向に左右に折り目P、Qを夫々平行に上下方向に備える。一段目の蓋部10は蓋面片12‘により構成され、三段目の底部30は底面片32’により構成される。二段目の側面部20については、折り目を介して左右に前面袖22’、前面23‘及び前面袖22’に分割される。前面袖22’には上下に挿通孔222、222を備える。以上の通り、図1の段ボール102Aに加えて左右に狭幅の前面袖22’、22‘を有し、かつ、側面22に挿通孔を有する構成が本実施例の特徴である。ここで、図示のように前面23‘には折り目を介して端部に前面袖22’を備え、前面23‘と前面袖22’を総称して前面という。
【0029】
段ボール101B及び段ボール102Bは以上の構成であり、夫々を折り上げるとともに前面の左右端部を夫々左右の側面に結合することによって梱包箱を形成する手順について以下に説明する。
【0030】
一方の段ボール101Bを夫々の折り目の位置から各部位を手前側に折り曲げる。先ず、上方の折り目Jの位置から、蓋面片11、蓋面片12、蓋面片11を図1の手前側に直角に折り曲げる。同様に、下方の折り目Kの位置から底面片31、底面片32、底面片31を内側に手前側に直角に折り曲げる。次いで、左右の折り目L、Lの位置から側面22、22を手前側に直角に折り曲げる。この時、上方では蓋面片12の内側に左右の蓋面片11、11が位置し、一方下方では底面片32の内側に底面片31、31が位置する。このようにして、後面23を囲うように四方の蓋面片、底面片及び側面が後面23に対して直立する。次に、他方の段ボール102Bを上下の折り目M、Nの部位から、蓋面片12‘、底面片32’を裏側に直角に折り曲げるとともに、左右の折り目P、Qの位置から前面袖22’、22’を裏側へ直角に折り曲げる。
【0031】
次に、一方の段ボール101Bを折り曲げたものに、他方の段ボール102Bを折り曲げたものを合体する。先ず、段ボール101B側の後面23と段ボール102B側の前面23‘を凹み側同士で対向させる。この時、前面、左右の側面及び後面からなる周壁が形成され、蓋面側では、段ボール101B側の上下の蓋面片11、11の上に段ボール102B側の蓋面片12’が被さる。同時に、段ボール101B側の左右の側面22、22の内側へ挟まれるように、段ボール102B側の左右の前面袖22’、22’が重なる。次いで、この段ボールの重合部にジョイント具Jを挿着することによって、段ボール101B側と段ボール102A側とが合体され、図8に示すように箱状の梱包箱200Bが形成される。図(a)に梱包箱200Bの斜視図を示し、左右側面22、22の上下二箇所に夫々図(b)に示すジョイント具Jを挿着する。図(a)におけるY―Y矢視断面を、図(c)に示す。段ボール101B側の側面22の裏側に、段ボール102B側の前面袖22‘が重なる重合部が形成され、ジョイント具Jが重合部を挿通して側面22と前面袖22’とを挟着、ロックすることによって、段ボール101Bを折り曲げたものと段ボール102Bを折り曲げたものとが合体する。そして、被梱包物を梱包する際、底面片31、31を内側に直角に折り曲げ、その外側から被せるように底面片32と底面片32’を折り曲げる。次いで、底面片32と底面片32’の突き合わせ、そのスリット部を覆うように左右方向にテープを貼着することによって梱包箱の底面が形成される。左右側面に重なった挿通孔が夫々上下に2箇所形成され、これらの挿通孔を挿通するように、外側からジョイント具Jを挿着、ロックすることによって段ボール101B側と段ボール102B側とが合体する。そして、被梱包物本体を中の緩衝材に上に載置した後、最後に、蓋部の蓋面片12と蓋面片12‘の突き合わせ、そのスリット部を覆うように左右方向にテープを貼着することによって梱包箱の蓋を閉じ、封緘する。
【0032】
以上のようにして段ボール101Bと段ボール102Bから梱包箱200Bへと折り上げられ、次に図8を参照しながらジョイント具の作用について説明する。
【0033】
ジョイント具Jは合成樹脂製で、段ボールの重合部に形成された挿通孔に挿着、ロックさせることによって梱包箱が形成される。図8(a)に示す梱包箱200Bにおいて、段ボール102B側の前面23‘が手前に位置し、これに段ボール101B側の後面23が対向する。これらと直角方向で左右に側面22、22が対向し、これらの裏側で前面23’寄りに段ボール102B側の前面袖22’が重なり、段ボール同士の重合部が形成される。この重合部において、側面22の挿通孔221と前面袖22’の挿通孔222の夫々の孔の位置が重なり、ジョイント具Jがこれらの孔を挿通する。図(b)にジョイント具Jの詳細を示し、中央のフレーム51の裏側に係止片52、53を上下に備え、かつ、フレーム51に囲まれるように摘み54を備える。図(c)には、図(a)におけるジョイント具Jの挿通部位のY―Y矢視図を示す。側面22の挿通孔222と前面袖22’の挿通孔221とが重なって孔の位置が一致するので、側面22と前面袖22’との重合部を挿通する挿通孔が形成される。これにジョイントJを挿通させ、側面22と前面袖22’とがロックされ、段ボール101Bを折り曲げたものと段ボール102Bを折り曲げたものとが凹み側同士で対向して合体する。ここで、ジョイント具Jは公知のものを採用したが、図(c)を参照してその作用の要点を説明する。図(b)に示す摘み54を摘まんで奥へ押し、或いは手前に引っ張ることによって、係止片52は部位U1を中心として蝶番のように矢印Vの方向に往復回動する。一方、係止片53は部位U2を中心として蝶番のように矢印W方向に往復回動する。つまり、このジョイント具Jは、摘み54を摘まんで奥へ押すことによって、係止片52、53が上下方向垂直に起立するので、側面22と前面袖22’とがジョイント具に挟着された状態になる。一方、摘み54を摘まんで図の右側へ引っ張ることによって、係止片52は部位U1を中心にして蝶番のように矢印左側へ水平に倒れる。同時に係止片53は部位U2を中心にして蝶番のように矢印左側へ倒れる。この係止片52、53が左側へ倒れた状態において、ジョイント具Jを側面22の挿通孔222と前面袖22’の挿通孔221から右方へ引き出し、着脱が可能となる。このように、ジョイント具Jは重合部を挿通する挿通孔に着脱自在に挿着される。
【0034】
開梱の際、梱包箱の上面の蓋面片12、12‘の対向部における貼着部位のテープを剥がす。次に、左右の側面22、22のジョイント具Jの摘み54を右側へ引っ張ることによって、挿通孔からジョイント具Jが重合部の挿通孔から外れる。同時に、前面23‘が段ボール同士の結合から解かれて手前に倒れ、その状態を図9に示す。さらに進んで前面23‘が前方に開き切った状態を図10に示し、梱包箱200Bの前方は底面位置から開口部が形成される。そのことによって、緩衝剤Sの凹みに載置された液晶テレビを持ち上げることなく水平に横移動させながら外に取り出すことができる。ジョイント具Jは梱包箱200Bから独立して切り離すことができるので、梱包箱をリサイクルする際に異種材が混入することがなく、選別作業を必要としない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
なお、本発明の使途は電子機器、電気製品等家電製品に限らず、家具、陶器、ガラス製品、金属製品等の大型で重量のある製品を梱包する用途に好適である。
【符号の説明】
【0036】
101A、101B、102A、102B 段ボール
200A、200B 梱包箱
210 上箱、220 トレー
211 挿通孔、221 挿通孔
10 蓋部
11、12、12‘ 蓋面片
20 側面部
21 継ぎ代、22 側面、22’ 前面袖、23 後面、23‘ 前面
30 底部
31、32、33、32‘ 底面片
51 フレーム、52、53 係止片、54 摘み
C、D、E、F、G、H、J、K、L、M、N、P、Q 折り目
L 糸
J ジョイント具
S 緩衝材
T1 被梱包物本体、T2 台座
U1、U2 部位
V、W 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面、左右の側面及び後面を備えた周壁を形成し、
その下端から延びる底面片を閉じ、
上端から延びる蓋面片を閉じて封緘し、
かつ、前記前面を開いて物品を取り出す梱包箱において、
前記前面の左右端部を夫々左右の前記側面に結合することを特徴とする梱包箱。
【請求項2】
左右の前記側面は、これから直角に折れ曲がる継ぎ代を夫々備え、
前記前面の端部裏側に前記継ぎ代が重なる重合部を形成し、
この重合部を糸が貫通して縫製されることを特徴とする請求項1記載の梱包箱。
【請求項3】
左右の前記前面は、これから直角に折れ曲がる前面袖を夫々備え、
前記側面の裏側に前記前面袖が重なる重合部を形成し、
かつ、これら重合部を挿通する挿通孔を設け、
これらの挿通孔にジョイント具を着脱自在に挿着することを特徴とする請求項1記載の梱包箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−195169(P2011−195169A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63708(P2010−63708)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(390019493)中央紙器工業株式会社 (26)
【Fターム(参考)】